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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】ハイブリッド式電動車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/30 20160101AFI20241112BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20241112BHJP
   B60W 10/02 20060101ALI20241112BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20241112BHJP
   B60W 10/10 20120101ALI20241112BHJP
   B60W 20/40 20160101ALI20241112BHJP
   F16D 48/06 20060101ALI20241112BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
B60W20/30
B60K6/48 ZHV
B60W10/02 900
B60W10/08 900
B60W10/10 900
B60W20/40
F16D28/00 A
F16D48/06 102
F02D29/02 321B
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021169885
(22)【出願日】2021-10-15
(65)【公開番号】P2023059718
(43)【公開日】2023-04-27
【審査請求日】2024-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】仲西 直器
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 善雄
(72)【発明者】
【氏名】松原 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】河合 祥吾
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-124032(JP,A)
【文献】特開2009-001129(JP,A)
【文献】特開2009-149213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 - 6/547
B60W 10/00 - 20/50
F16H 59/00 - 63/50
F16D 48/06
F02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路に動力伝達可能に連結された電動機と、前記動力伝達経路における前記エンジンと前記電動機との間に設けられた油圧による摩擦係合式のエンジン断接装置と、前記動力伝達経路における前記電動機と前記駆動輪との間に設けられ、複数の油圧式の摩擦係合装置の係合開放状態に応じて動力伝達状態が異なる複数のシフトレンジに切り替えられる変速機と、を備えているハイブリッド式電動車両の制御装置において、
前記変速機の前記シフトレンジを切り替える際に、前記電動機の回転速度を予め定められた高速切替許容回転速度以下まで低下させ、前記複数の摩擦係合装置の中の所定の摩擦係合装置の係合指示圧をステップ的に増加させて急係合させることにより前記シフトレンジを切り替えた後に、前記電動機の回転速度が目標回転速度まで復帰することを許容する、クイックガレージ制御を実行するガレージ制御部と、
前記エンジン断接装置を開放状態から係合状態へ切り替えて前記電動機により前記エンジンをクランキングして始動する際に、前記エンジン断接装置がクランキングトルクを伝達する直前の待機状態となるように該エンジン断接装置の係合指示圧を予め定められた定圧待機圧に保持した後に、該エンジン断接装置を介して前記クランキングトルクが伝達されるように該エンジン断接装置の係合指示圧を増大制御して前記エンジンをクランキングする、エンジン始動制御を実行するエンジン始動制御部と、
を備えており、
前記エンジン始動制御部は、前記クイックガレージ制御の実行中に前記エンジンの始動要求があった時に、前記電動機の回転速度が前記高速切替許容回転速度以下から前記目標回転速度に向かって上昇する復帰過渡時の場合には、前記エンジン断接装置の係合指示圧を、前記定圧待機圧に保持することなく、該エンジン断接装置が前記クランキングトルクを伝達できるように前記定圧待機圧を超えてステップ的に増大させるエンジンステップ始動制御を行なう
ことを特徴とするハイブリッド式電動車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッド式電動車両の制御装置に係り、特に、変速機のシフトレンジを切り替えるガレージ制御の実行中にエンジンを始動する場合の制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンと、前記エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路に動力伝達可能に連結された電動機と、前記動力伝達経路における前記エンジンと前記電動機との間に設けられた油圧による摩擦係合式のエンジン断接装置と、前記動力伝達経路における前記電動機と前記駆動輪との間に設けられ、複数の油圧式の摩擦係合装置の係合開放状態に応じて動力伝達状態が異なる複数のシフトレンジに切り替えられる変速機と、を備えているハイブリッド式電動車両が知られている。そして、上記摩擦係合式のエンジン断接装置や変速機の摩擦係合装置等の摩擦係合装置を係合させる際に、その摩擦係合装置がトルクを伝達する直前の待機状態(油圧アクチュエータのピストンが前進したパック詰め状態)となるように係合指示圧を予め定められた定圧待機圧に保持した後、所定のタイミングで係合指示圧を増大させて摩擦係合装置を係合させる技術が提案されている。例えば特許文献1に記載の初期FILL制御はその一例である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-272380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、未だ公知ではないが、前記ハイブリッド式電動車両の制御に関して、(a) 前記変速機の前記シフトレンジを切り替える際に、前記電動機の回転速度を予め定められた高速切替許容回転速度以下まで低下させ、前記複数の摩擦係合装置の中の所定の摩擦係合装置の係合指示圧をステップ的に増加させて急係合させることにより前記シフトレンジを切り替えた後に、前記電動機の回転速度が目標回転速度まで復帰することを許容する、クイックガレージ制御を実行するガレージ制御部や、(b) 前記エンジン断接装置を開放状態から係合状態へ切り替えて前記電動機により前記エンジンをクランキングして始動する際に、前記エンジン断接装置がクランキングトルクを伝達する係合直前の待機状態となるようにそのエンジン断接装置の係合指示圧を予め定められた定圧待機圧に保持した後に、そのエンジン断接装置を介して前記クランキングトルクが伝達されるようにそのエンジン断接装置の係合指示圧を増大制御して前記エンジンをクランキングする、エンジン始動制御を実行するエンジン始動制御部、を設けることが考えられている。その場合に、クイックガレージ制御の実行中にエンジンの始動要求があった場合、エンジン断接装置の係合指示圧を定圧待機圧に保持した後にエンジン断接装置を係合させてエンジンをクランキングすると、始動要求のタイミングによっては、電動機の回転速度がエンジンを始動可能な始動可能回転速度まで復帰してもエンジン断接装置が定圧待機圧のままで、エンジンのクランキングや始動が遅れることがある。すなわち、エンジン断接装置の係合指示圧を定圧待機圧に保持して係合直前の待機状態とする場合、待機状態(パック詰め状態)になるまでに比較的時間が掛かるため、エンジンのクランキングが遅くなり、例えば運転者のアクセルオン操作に基づくエンジン始動要求の場合、所望の駆動力が得られるようになるまでの時間が長くなって運転者にもたつき感を生じさせる可能性がある。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、クイックガレージ制御の実行中にエンジンの始動要求があった場合に、エンジンを速やかにクランキングして始動できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明は、(a-1) エンジンと、(a-2) 前記エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路に動力伝達可能に連結された電動機と、(a-3) 前記動力伝達経路における前記エンジンと前記電動機との間に設けられた油圧による摩擦係合式のエンジン断接装置と、(a-4) 前記動力伝達経路における前記電動機と前記駆動輪との間に設けられ、複数の油圧式の摩擦係合装置の係合開放状態に応じて動力伝達状態が異なる複数のシフトレンジに切り替えられる変速機と、を備えているハイブリッド式電動車両の制御装置において、(b) 前記変速機の前記シフトレンジを切り替える際に、前記電動機の回転速度を予め定められた高速切替許容回転速度以下まで低下させ、前記複数の摩擦係合装置の中の所定の摩擦係合装置の係合指示圧をステップ的に増加させて急係合させることにより前記シフトレンジを切り替えた後に、前記電動機の回転速度が目標回転速度まで復帰することを許容する、クイックガレージ制御を実行するガレージ制御部と、(c) 前記エンジン断接装置を開放状態から係合状態へ切り替えて前記電動機により前記エンジンをクランキングして始動する際に、前記エンジン断接装置がクランキングトルクを伝達する直前の待機状態となるようにそのエンジン断接装置の係合指示圧を予め定められた定圧待機圧に保持した後に、そのエンジン断接装置を介して前記クランキングトルクが伝達されるようにそのエンジン断接装置の係合指示圧を増大制御して前記エンジンをクランキングする、エンジン始動制御を実行するエンジン始動制御部と、を備えており、(d) 前記エンジン始動制御部は、前記クイックガレージ制御の実行中に前記エンジンの始動要求があった時に、前記電動機の回転速度が前記高速切替許容回転速度以下から前記目標回転速度に向かって上昇する復帰過渡時の場合には、前記エンジン断接装置の係合指示圧を、前記定圧待機圧に保持することなく、そのエンジン断接装置が前記クランキングトルクを伝達できるように前記定圧待機圧を超えてステップ的に増大させるエンジンステップ始動制御を行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このようなハイブリッド式電動車両の制御装置によれば、クイックガレージ制御の実行中にエンジンの始動要求があった時に、電動機の回転速度が高速切替許容回転速度以下から目標回転速度に向かって上昇する復帰過渡時の場合には、エンジン断接装置の係合指示圧が定圧待機圧を超えてステップ的に増大させられ、エンジン断接装置が速やかに係合させられるため、電動機によりエンジンを速やかにクランキングして始動することができる。特に、電動機の回転速度が上昇させられる復帰過渡時であるため、その電動機の回転速度が、エンジンを始動可能な始動可能回転速度に達するまでの時間が比較的短く、エンジン断接装置を待機状態に保持することなく係合させることで、エンジンを速やかにクランキングして始動する、という効果が適切に得られる。また、電動機の回転速度が上昇させられる復帰過渡時であるため、クイックガレージ制御で係合させられる変速機の摩擦係合装置は既に係合状態であり、共通の油圧供給源が用いられる場合でも、エンジン断接装置の係合指示圧をステップ的に増大させた際に油圧が不足する可能性は低く、クイックガレージ制御およびエンジンステップ始動制御を適切に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施例である制御装置を備えているハイブリッド式電動車両の駆動系統を説明する概略構成図で、各種制御の為の制御機能および制御系統の要部を併せて示した図である。
図2図1のハイブリッド式電動車両の電子制御装置が機能的に備えているエンジン始動制御部の作動を具体的に説明するフローチャートである。
図3】R→Dレンジ切替に伴うクイックガレージ制御の実行中に図2のフローチャートに従ってエンジン始動制御が行なわれた場合の各部の作動状態の変化を説明するタイムチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、駆動力源としてエンジンおよび電動機を備えているパラレル型のハイブリッド式電動車両の制御装置に適用される。電動機としては、電動機および発電機として択一的に用いることができるモータジェネレータが好適に用いられるが、発電機の機能が得られない電動機を採用することもできる。ハイブリッド式電動車両は、例えばFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型の後輪駆動車両や、途中に前輪側へ動力を分配するトランスファが設けられた前後輪駆動車両、トランスアクスル等のFF(フロントエンジン・フロントドライブ)型の前輪駆動車両など、種々の駆動型式の車両が対象となる。電動機と駆動輪との間に設けられる変速機は、少なくとも複数の油圧式の摩擦係合装置を備えていて動力伝達状態が異なる複数のシフトレンジに切り替えられるもので、例えばDレンジやRレンジ等の走行レンジとNレンジ等の非走行レンジとが可能な遊星歯車式や平行軸式等の有段変速機が好適に用いられるが、前後進を切り替えるだけの前後進切替装置や、前後進切替装置とベルト式等の無段変速機とを組み合わせたものなど、種々の変速機を採用できる。変速機の摩擦係合装置およびエンジン断接装置は、例えば共通の油圧供給源から油圧が供給されるように構成されるが、別々の油圧供給源を設けることもできる。
【0010】
本発明は、例えば(a) 前記電動機と前記変速機との間には、トルクコンバータ等の流体式伝動装置が介在させられ、前記エンジンおよび前記電動機の出力は前記流体式伝動装置を介して前記変速機に伝達されるとともに、(b) 前記ガレージ制御部による前記クイックガレージ制御で前記電動機の回転速度が前記高速切替許容回転速度以下まで低下させられることにより、前記流体式伝動装置を介して前記変速機に入力されるトルクが低下させられる一方、(c) 前記変速機が前進走行可能なDレンジまたは後進走行可能なRレンジの走行レンジにおいて、アクセル開度等の加速要求量が略0で且つ車速が予め定められたクリープ車速以下の低車速時または車両停止時に、所定のクリープトルクが得られるように前記電動機を予め定められたクリープ回転速度で回転させるクリープ制御を実行するクリープ制御部を備えており、(d) 前記ガレージ制御部は、前記クリープ制御の実行中に前記クイックガレージ制御を実行する場合、前記クリープ制御に優先して前記電動機の回転速度を前記高速切替許容回転速度以下まで低下させる、ように構成される。高速切替許容回転速度は、トルクコンバータの出力トルク(変速機の入力トルク)が略0になるような低回転速度が適当で、例えば略0とされるが、摩擦係合装置の急係合によるショックが問題とならない範囲で適当に定めることができる。上記流体式伝動装置の替わりに、遊星歯車装置および差動制御用回転機を有する電気式差動部や、摩擦係合式の発進クラッチ等が設けられても良い。
【0011】
エンジン始動制御部によるエンジンステップ始動制御は、例えばクイックガレージ制御で前記電動機の回転速度が前記エンジンを始動可能な始動可能回転速度まで復帰した後に、前記エンジン断接装置が係合させられてエンジンがクランキングされるように、エンジン断接装置の係合指示圧をステップ的に増大させるタイミングが定められる。この係合指示圧を増大させるタイミングは、電動機の回転速度が始動可能回転速度に達した後でも良いし、エンジン断接装置の係合トルクの応答遅れを考慮して始動可能回転速度に達する前でも良い。電動機の回転速度が始動可能回転速度よりも低い段階でエンジン断接装置を係合し、電動機の回転速度を上昇させつつエンジンのクランキング速度を速くすることも可能である。また、エンジンステップ始動制御では、エンジン断接装置の急係合で駆動力変動等の係合ショックを生じる可能性があるため、例えば運転者のアクセルオン操作時等の予め定められた緊急度の高いエンジン始動要求時にだけ実施されるようにしても良いが、バッテリの充電やエンジンの暖気のためなど、他の理由でエンジンを始動する場合にエンジンステップ始動制御を実施することも可能である。
【実施例
【0012】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において、図は説明のために適宜簡略化或いは変形されており、各部の形状や寸法比、角度等は必ずしも正確に描かれていない。
【0013】
図1は、本発明の一実施例である制御装置として電子制御装置90を備えているハイブリッド式電動車両10(以下、単に電動車両10という。)の駆動系統の概略構成図で、電動車両10に関する各種制御のための制御機能および制御系統の要部を併せて示した図である。図1において、電動車両10は、走行用の駆動力源としてエンジン12および回転機MGを備えているパラレル型のハイブリッド式電動車両である。また、電動車両10は、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路に設けられた動力伝達装置16を備えている。駆動輪14は左右の後輪で、電動車両10はFR型の後輪駆動車両である。
【0014】
エンジン12は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関である。エンジン12は、スロットルアクチュエータや燃料噴射装置、点火装置等を含むエンジン制御機器50が電子制御装置90によって制御されることにより、エンジン12の出力トルクであるエンジントルクTe が制御される。回転機MGは、電力から機械的な動力を発生させる電動機としての機能および機械的な動力から電力を発生させる発電機としての機能を有するモータジェネレータで、例えばロータに永久磁石が配置された三相交流同期モータ等であり、インバータ52を介してバッテリ54に接続されている。回転機MGは、電子制御装置90によってインバータ52が制御されることにより、回転機MGのトルクであるMGトルクTmgや回転機MGの回転速度であるMG回転速度Nmgが制御される。回転機MGは、エンジン12に替えて或いはエンジン12に加えて、インバータ52を介してバッテリ54から供給される電力により走行用の動力を発生する。回転機MGはまた、エンジン12の動力や駆動輪14側から入力される被駆動力により回転駆動される際に、発電機として機能するように回生制御されることにより発電を行うとともに、駆動輪14に連結されている場合には回生ブレーキを発生する。回転機MGの発電により発生させられた電力は、インバータ52を介してバッテリ54に蓄積される。バッテリ54は、回転機MGに対して電力を授受する蓄電装置である。回転機MGは、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路に連結された電動機に相当する。
【0015】
動力伝達装置16は、車体に取り付けられる非回転部材であるケース18内において、エンジン12側からK0クラッチ20、トルクコンバータ22、および自動変速機24を直列に備えており、K0クラッチ20とトルクコンバータ22との間の動力伝達経路に回転機MGが連結されている。K0クラッチ20は、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路におけるエンジン12と回転機MGとの間に設けられたクラッチで、回転機MGとエンジン12との間を接続遮断するエンジン断接装置である。トルクコンバータ22は、回転機MGと自動変速機24との間に設けられ、流体である作動油OIL を介して動力伝達する流体式伝動装置であり、K0クラッチ20を介してエンジン12に連結されている。自動変速機24は、トルクコンバータ22に連結されており、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路における回転機MGと駆動輪14との間に設けられた変速機である。動力伝達装置16は、自動変速機24の出力回転部材である変速機出力軸26に連結されたプロペラシャフト28、プロペラシャフト28に連結されたディファレンシャルギヤ30、ディファレンシャルギヤ30に連結された一対のドライブシャフト32等を備えている。また、動力伝達装置16は、エンジン12とK0クラッチ20とを連結するエンジン連結軸34、K0クラッチ20とトルクコンバータ22とを連結するMG連結軸36等を備えており、MG連結軸36に回転機MGのロータが連結されている。
【0016】
K0クラッチ20は、油圧アクチュエータにより押圧される多板式或いは単板式のクラッチにより構成される湿式または乾式(実施例では湿式)の摩擦係合装置である。K0クラッチ20は、油圧制御回路56から供給される調圧されたK0油圧PRk0によりK0クラッチ20のトルク容量であるK0トルクTk0が変化させられることで、係合状態や開放状態などの制御状態が切り替えられる。K0クラッチ20の入力側部材は、エンジン連結軸34と連結されており、エンジン連結軸34と一体的に回転させられる。K0クラッチ20の出力側部材は、MG連結軸36と連結されており、MG連結軸36と一体的に回転させられる。K0クラッチ20の係合状態では、エンジン連結軸34を介して回転機MGのロータおよびポンプ翼車22aとエンジン12とが一体的に回転させられる。一方で、K0クラッチ20の開放状態では、回転機MGのロータおよびポンプ翼車22aとエンジン12との間の動力伝達が遮断される。
【0017】
回転機MGは、ケース18内において、MG連結軸36に動力伝達可能に連結されている。回転機MGは、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路、特にはK0クラッチ20とトルクコンバータ22との間の動力伝達経路に動力伝達可能に連結されている。つまり、回転機MGは、K0クラッチ20を介することなくトルクコンバータ22や自動変速機24と動力伝達可能に連結されている。トルクコンバータ22および自動変速機24は、各々、エンジン12および回転機MGの駆動力源からの駆動力を駆動輪14へ伝達する。
【0018】
トルクコンバータ22は、MG連結軸36と連結されたポンプ翼車22a、および自動変速機24の入力回転部材である変速機入力軸38と連結されたタービン翼車22bを備えている。ポンプ翼車22aは、K0クラッチ20を介してエンジン12と連結されていると共に、直接的に回転機MGと連結されている。ポンプ翼車22aはトルクコンバータ22の入力部材であり、タービン翼車22bはトルクコンバータ22の出力部材である。MG連結軸36は、トルクコンバータ22の入力回転部材でもある。変速機入力軸38は、タービン翼車22bによって回転駆動されるタービン軸と一体的に形成されたトルクコンバータ22の出力回転部材でもある。トルクコンバータ22は、ポンプ翼車22aとタービン翼車22bとを連結するLUクラッチ40を備えている。LUクラッチ40は、トルクコンバータ22の入出力回転部材を連結する直結クラッチ、すなわち公知のロックアップクラッチである。
【0019】
LUクラッチ40は、油圧制御回路56から供給される調圧されたLU油圧PRluによりLUクラッチ40のトルク容量であるLUクラッチトルクTluが変化させられることで、作動状態つまり制御状態が切り替えられる。LUクラッチ40の制御状態としては、LUクラッチ40が開放された状態である完全開放状態、LUクラッチ40が滑りを伴って係合された状態であるスリップ状態、およびLUクラッチ40が係合された状態である完全係合状態がある。LUクラッチ40が完全開放状態とされることにより、トルクコンバータ22はトルク増幅作用が得られるトルクコンバータ状態とされる。また、LUクラッチ40が完全係合状態とされることにより、トルクコンバータ22はポンプ翼車22aおよびタービン翼車22bが一体回転させられるロックアップ状態とされる。
【0020】
自動変速機24は、例えば1組または複数組の遊星歯車装置と、複数の係合装置CBと、を備えている、公知の遊星歯車式の自動変速機である。係合装置CBは、油圧アクチュエータにより押圧される多板式或いは単板式のクラッチやブレーキ、油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキにより構成される、油圧式の摩擦係合装置である。係合装置CBは、各々、油圧制御回路56から供給される調圧されたCB油圧PRcbによりそれぞれのトルク容量であるCBトルクTcbが変化させられることで、係合状態や開放状態などの制御状態が切り替えられる。
【0021】
自動変速機24は、係合装置CBのうちの何れかの係合装置が係合させられることによって、変速比γat(=AT入力回転速度Ni /AT出力回転速度No )が異なる複数の前進ギヤ段および後進ギヤ段を形成することができる有段変速機である。自動変速機24は、電子制御装置90によって、ドライバー(=運転者)のアクセル操作や車速V等の運転状態に応じて形成されるギヤ段が切り替えられる、すなわち複数のギヤ段が選択的に形成される。また、複数の係合装置CBが総て開放されると、動力伝達を遮断するニュートラルになる。AT入力回転速度Ni は、変速機入力軸38の回転速度であり、自動変速機24の入力回転速度である。AT入力回転速度Ni は、トルクコンバータ22の出力回転部材の回転速度でもあり、トルクコンバータ22の出力回転速度であるタービン回転速度Nt と同値である。AT出力回転速度No は、変速機出力軸26の回転速度であり、自動変速機24の出力回転速度である。
【0022】
動力伝達装置16において、エンジン12から出力される動力は、K0クラッチ20が係合させられた場合に、エンジン連結軸34から、K0クラッチ20、MG連結軸36、トルクコンバータ22、自動変速機24、プロペラシャフト28、ディファレンシャルギヤ30、およびドライブシャフト32等を順次介して駆動輪14へ伝達される。また、回転機MGから出力される動力は、K0クラッチ20の制御状態に拘わらず、MG連結軸36から、トルクコンバータ22、自動変速機24、プロペラシャフト28、ディファレンシャルギヤ30、およびドライブシャフト32等を順次介して駆動輪14へ伝達される。
【0023】
電動車両10は、機械式のオイルポンプであるMOP58、電動式のオイルポンプであるEOP60、ポンプ用モータ62等を備えている。MOP58は、ポンプ翼車22aに連結されており、駆動力源(エンジン12、回転機MG)により回転駆動されて動力伝達装置16にて用いられる作動油OIL を吐出する。ポンプ用モータ62は、EOP60を回転駆動するためのEOP60専用の電動機である。EOP60は、ポンプ用モータ62により回転駆動されて作動油OIL を吐出するもので、電動車両10の停止時を含めた任意のタイミングで作動油OIL を吐出することができる。MOP58やEOP60が吐出した作動油OIL は、油圧制御回路56へ供給される。油圧制御回路56は、MOP58および/またはEOP60が吐出した作動油OIL を元にして各々調圧した、CB油圧PRcb、K0油圧PRk0、LU油圧PRluなどを出力する。作動油OIL は、トルクコンバータ22に供給されて動力伝達に用いられる他、各部の潤滑や冷却にも用いられる。作動油OIL は、ケース18の下部に設けられたオイルパン等の油溜に蓄積されるとともに、MOP58および/またはEOP60により汲み上げられて油圧制御回路56へ供給される。MOP58およびEOP60は、油圧制御回路56の油圧供給源で、エンジン断接装置であるK0クラッチ20および自動変速機24の係合装置CBには、共通の油圧供給源から油圧が供給されて係合させられる。
【0024】
電動車両10は、各種の制御を実行する制御装置として電子制御装置90を備えている。電子制御装置90は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより電動車両10の各種制御を実行する。電子制御装置90は、必要に応じてエンジン制御用、MG制御用、油圧制御用等の複数のコンピュータを含んで構成される。
【0025】
電子制御装置90には、電動車両10に備えられた各種センサ等(例えばエンジン回転速度センサ70、タービン回転速度センサ72、出力回転速度センサ74、MG回転速度センサ76、アクセル開度センサ78、スロットル弁開度センサ80、ブレーキスイッチ82、バッテリセンサ84、油温センサ86、レバーポジションセンサ88など)による検出値に基づく各種信号等(例えばエンジン12の回転速度であるエンジン回転速度Ne 、AT入力回転速度Ni と同値であるタービン回転速度Nt 、車速Vに対応するAT出力回転速度No 、回転機MGの回転速度であるMG回転速度Nmg、アクセルペダル等のアクセル操作部材79の操作量で運転者の加速要求量を表すアクセル開度θacc 、電子スロットル弁の開度であるスロットル弁開度θth、ホイールブレーキを作動させる為のブレーキペダルが運転者によって操作されている状態を示す信号であるブレーキON信号Bon、バッテリ54のバッテリ温度THbat やバッテリ充放電電流Ibat やバッテリ電圧Vbat 、油圧制御回路56内の作動油OIL の温度である油温THoil 、電動車両10に備えられたシフトレバー64の操作ポジションPOSshを表す信号など)が、それぞれ供給される。MG回転速度Nmgはトルクコンバータ22の入力回転速度Ntci と同値で、タービン回転速度Nt はトルクコンバータ22の出力回転速度Ntco と同値である。
【0026】
シフトレバー64は運転席の近傍に配置され、自動変速機24の動力伝達状態であるシフトレンジを切り替えるために運転者によって操作されるシフト操作部材で、複数の操作ポジションPOSshを備えている。操作ポジションPOSshとして、例えばP、R、N、Dの複数のポジションが設けられており、シフトレンジとしてP、R、N、Dの各レンジを選択することができる。Pポジションは、自動変速機24が動力伝達を遮断するニュートラル状態とされ且つ機械的に変速機出力軸26の回転が阻止される駐車用のP(パーキング)レンジを選択する操作ポジションである。ニュートラル状態は、自動変速機24の総ての係合装置CBが開放された状態である。Rポジションは、自動変速機24が後進ギヤ段とされる後進走行用のR(リバース)レンジを選択する操作ポジションである。Nポジションは、Pポジションと同様に自動変速機24がニュートラル状態とされるN(ニュートラル)レンジを選択する操作ポジションである。Dポジションは、例えば自動変速機24の複数の前進ギヤ段を車速Vやアクセル開度θacc 等の運転状態に応じて自動的に切り替えて走行する前進走行用のD(ドライブ)レンジを選択する操作ポジションである。シフトレバー64は、P、R、N、Dの各操作ポジションPOSshに位置決め保持されるものでも良いが、所定のホームポジションへ自動的に戻される自動復帰型でも良い。また、シフト操作部材として、上記各シフトレンジを選択する押釦スイッチ等が用いられても良い。
【0027】
電子制御装置90からは、電動車両10に備えられた各装置(例えばエンジン制御機器50、インバータ52、油圧制御回路56、ポンプ用モータ62など)に各種指令信号(例えばエンジン12を制御するためのエンジン制御指令信号Se 、回転機MGを制御するためのMG制御指令信号Smg、係合装置CBを制御するためのCB油圧制御指令信号Scb、K0クラッチ20を制御するためのK0油圧制御指令信号Sk0、LUクラッチ40を制御するためのLU油圧制御指令信号Slu、EOP60を制御するためのEOP制御指令信号Seop など)が、それぞれ出力される。油圧制御回路56には、CB油圧制御指令信号Scb、K0油圧制御指令信号Sk0、およびLU油圧制御指令信号Sluに従って油路を切り替えたり油圧を制御したりする複数のソレノイドバルブが設けられている。CB油圧制御指令信号Scbは、複数の係合装置CBの各係合油圧であるCB油圧PRcbを個別に制御するもので、係合装置CBの係合指示圧に相当する。また、K0油圧制御指令信号Sk0は、K0クラッチ20の係合油圧であるK0油圧PRk0を制御するもので、K0クラッチ20の係合指示圧に相当する。
【0028】
電子制御装置90は、電動車両10における各種制御を実現する為に、ハイブリッド制御部92、変速制御部94、クリープ制御部96、およびエンジン始動制御部98を機能的に備えている。
【0029】
ハイブリッド制御部92は、エンジン12および回転機MGの作動を協調して制御する機能を有し、エンジン12を制御するエンジン制御部92a、および回転機MGを制御するMG制御部92bを備えている。ハイブリッド制御部92は、例えば駆動要求量マップにアクセル開度θacc および車速Vを適用することで、運転者による電動車両10に対する駆動要求量を算出する。駆動要求量は、例えば駆動輪14における要求駆動トルクTrdem等である。ハイブリッド制御部92は、伝達損失、補機負荷、自動変速機24の変速比γat、トルクコンバータ22のトルク比、バッテリ54の充電可能電力Winや放電可能電力Wout 等を考慮して、例えば上記要求駆動トルクTrdemを実現するために必要なトルクコンバータ22の入力トルクである要求入力トルクTindem を求め、その要求入力トルクTindem が得られるように、エンジン12を制御するエンジン制御指令信号Se を出力するとともに、回転機MGを制御するMG制御指令信号Smgを出力する。バッテリ54の充電可能電力Winや放電可能電力Wout は、例えばバッテリ温度THbat およびバッテリ54の充電状態値SOC[%]に基づいて電子制御装置90により算出される。バッテリ54の充電状態値SOCは、バッテリ54の充電状態すなわち蓄電残量を示す値であり、例えばバッテリ充放電電流Ibat およびバッテリ電圧Vbat などに基づいて算出できる。
【0030】
ハイブリッド制御部92は、回転機MGの出力のみで要求入力トルクTindem を賄える場合には、バッテリ54からの電力のみで回転機MGを駆動して走行するモータ走行モードであるBEV(Battery Electric Vehicle)走行モードとする。BEV走行モードでは、K0クラッチ20を開放状態としてエンジン12を停止させ、回転機MGのみを駆動力源として用いて走行するBEV走行を行う。このBEV走行モードにおいては、要求入力トルクTindem を実現するようにMGトルクTmgを制御する。一方で、ハイブリッド制御部92は、少なくともエンジン12の出力を用いないと要求入力トルクTindem を賄えない場合には、エンジン走行モードであるHEV(Hybrid Electric Vehicle )走行モードとする。HEV走行モードでは、K0クラッチ20を係合状態として少なくともエンジン12を駆動力源として用いて走行するエンジン走行すなわちHEV走行を行う。このHEV走行モードにおいては、要求入力トルクTindem の全部または一部を実現するようにエンジントルクTe を制御し、要求入力トルクTindem に対してエンジントルクTe では不足するトルク分を補うようにMGトルクTmgを制御する。他方で、ハイブリッド制御部92は、回転機MGの出力のみで要求入力トルクTindem を賄える場合であっても、エンジン12等の暖機が必要な場合などには、HEV走行モードを成立させる。このように、ハイブリッド制御部92は、要求入力トルクTindem 等に基づいて、HEV走行中にエンジン12を自動停止したり、そのエンジン停止後にエンジン12を再始動したり、BEV走行中にエンジン12を始動したり、停車中にエンジン12を自動停止したり、エンジン12を始動したりして、BEV走行モードとHEV走行モードとを切り替える。
【0031】
変速制御部94は、Dレンジが選択された場合に、例えば車速Vやアクセル開度θacc 等の運転状態を変数として予め定められた変速マップ等を用いて自動変速機24の変速判断を行い、必要に応じて自動変速機24の複数の前進ギヤ段を自動的に切り替えるためのCB油圧制御指令信号Scbを油圧制御回路56へ出力する自動変速制御を実行する。また、シフトレバー64または運転席の近傍に設けられたマニュアル変速操作部材が運転者によって操作され、変速指示信号が供給された場合には、その変速指示に従って自動変速機24の前進ギヤ段を切り替えるマニュアル変速制御を実行する。
【0032】
変速制御部94はまた、シフトレバー64が操作されて操作ポジションPOSshが切り替えられた場合に、その切り替えられた操作ポジションPOSshに応じて自動変速機24のシフトレンジを切り替えるガレージ制御部94aを備えている。ガレージ制御部94aは、シフトレバー64がDポジションおよびRポジションの一方から他方へ切り替える反転シフト操作が行なわれた場合に、その反転シフト操作に従って自動変速機24をDレンジおよびRレンジの一方から他方へ切り替える反転レンジ切替を実行する他、PレンジおよびNレンジの非走行レンジとDレンジおよびRレンジの走行レンジとの間でシフトレンジを切り替える各種のレンジ切替を実行する。これ等のレンジ切替には、必要に応じて車速制限が設けられる。反転シフト操作は、具体的にはDポジションからRポジションへ操作するD→Rシフト操作、またはRポジションからDポジションへ操作するR→Dシフト操作で、Nポジションを経由しても良い。D→Rシフト操作が行なわれると、ガレージ制御部94aは自動変速機24をDレンジからRレンジに切り替えるための反転レンジ切替、すなわち前進ギヤ段から後進ギヤ段に切り替えるためのCB油圧制御指令信号Scbを油圧制御回路56へ出力するD→Rレンジ切替を実行する。また、R→Dシフト操作が行なわれると、ガレージ制御部94aは自動変速機24をRレンジからDレンジに切り替えるための反転レンジ切替、すなわち後進ギヤ段から前進ギヤ段に切り替えるためのCB油圧制御指令信号Scbを油圧制御回路56へ出力するR→Dレンジ切替を実行する。
【0033】
例えば自動変速機24の複数の係合装置CBの中、第1係合装置CB1および第3係合装置CB3が係合状態とされることで、複数の前進ギヤ段の中で例えば変速比γatが最も大きい第1速ギヤ段が形成されて自動変速機24がDレンジとされ、第2係合装置CB2および第3係合装置CB3が係合状態とされることで、後進ギヤ段が形成されて自動変速機24がRレンジとされる場合、前記D→Rレンジ切替では、第1係合装置CB1を開放するとともに第2係合装置CB2を係合させるようにCB1油圧PRcb1 、CB2油圧PRcb2 が制御される。また、前記R→Dレンジ切替では、第2係合装置CB2を開放するとともに第1係合装置CB1を係合させるようにCB2油圧PRcb2 、CB1油圧PRcb1 が制御される。
【0034】
ここで、ガレージ制御部94aは、反転レンジ切替を含むレンジ切替の際に複数の係合装置CBの何れかを係合させる場合、その係合側係合装置CBcon の油圧PRcon の指示圧を漸増させてその係合側係合装置CBcon を滑らかに係合させる通常ガレージ制御の他に、係合側係合装置CBcon の油圧PRcon の指示圧をステップ的に増加させてその係合側係合装置CBcon を急係合させ、レンジ切替を短時間で実行するクイックガレージ制御を実行する機能を有する。例えば、前記D→Rレンジ切替では第2係合装置CB2が係合側係合装置CBcon であり、その第2係合装置CB2の油圧PRcb2 の指示圧を、通常ガレージ制御では所定の増加率で漸増させる一方、クイックガレージ制御ではステップ的に増加させるのである。また、R→Dレンジ切替では第1係合装置CB1が係合側係合装置CBcon であり、その第1係合装置CB1の油圧PRcb1 の指示圧を、通常ガレージ制御では所定の増加率で漸増させる一方、クイックガレージ制御ではステップ的に増加させるのである。この場合、自動変速機24の入力トルクが高いと係合側係合装置CBcon の急係合によってショックが発生するため、トルクコンバータ22の入力回転速度Ntci であるMG回転速度Nmgを予め定められた高速切替許容回転速度nquick以下まで低下させることにより、トルクコンバータ22の出力トルクすなわち自動変速機24の入力トルクを十分に低下させた状態で、係合側係合装置CBcon を急係合させるクイックガレージ制御を行なう。高速切替許容回転速度nquickは、係合側係合装置CBcon の急係合によるショックが所定の許容範囲内となるように予め実験やシミュレーション等によって定められ、例えば0或いは0に近い回転速度が望ましい。高速切替許容回転速度nquickが、車速Vやタービン回転速度Nt 等の車両状態に応じて可変設定されても良い。クイックガレージ制御では、MG回転速度Nmgが高速切替許容回転速度nquick以下とされて電動車両10の駆動トルクTr が制限されるため、例えば車速Vが所定車速以下の低速走行時または停車時、アクセル開度θacc が略0のアクセルオフ時、ブレーキON信号Bonが供給されているブレーキオン時、路面勾配が所定値以下の平坦路など、予め定められたクイック実行条件を満たした場合に実行される。
【0035】
図3は、R→Dシフト操作に伴って、時間t1でクイックガレージ制御が開始されてR→Dレンジ切替が実施された場合のタイムチャートの一例で、開放側係合装置CBopである第2係合装置CB2の油圧PRcb2 を低下させた後に、係合側係合装置CBcon である第1係合装置CB1の油圧PRcb1 の指示圧をステップ的に増加させることにより、その第1係合装置CB1を速やかに係合させてR→Dレンジ切替を短時間で実行することができる。R→Dシフト操作が行なわれた時間t1では、アクセル開度θacc が略0のアクセルオフであるが、クリープ制御部96によるクリープ制御でトルクコンバータ22の入力回転速度Ntci であるMG回転速度Nmgが、所定のクリープトルクTcreep が得られるように予め定められたクリープ回転速度ncreepとされている。このため、ガレージ制御部94aは、係合側係合装置CBcon の係合指示圧である第1係合装置CB1の油圧PRcb1 の指示圧をステップ的に増加させるのに先立って、クリープ制御に優先してMG回転速度Nmgを高速切替許容回転速度nquick以下まで所定の変化率で低下させ、クリープトルクTcreep を十分に低減したクリープカット状態にする。これにより、係合側係合装置CBcon の急係合に起因してショックが発生することを抑制しつつ、R→Dレンジ切替を短時間で行なうことができる。
【0036】
係合側の油圧PRcb1 が上昇して第1係合装置CB1が略係合させられ、R→Dレンジ切替が略完了したら(図3の時間t2)、ガレージ制御部94aは、MG回転速度Nmgの制限を解除して所定の目標回転速度Nmgt まで復帰することを許容する。R→Dレンジ切替が略完了したか否か、すなわち第1係合装置CB1が略係合させられたか否かは、例えば油圧PRcb1 の指示圧をステップ的に増加させる係合制御開始時からの経過時間に基づいて判断することが可能で、その経過時間に基づいてMG回転速度Nmgの制限を解除するタイミングが定められる。また、R→Dレンジ切替の図3の場合、自動変速機24はDレンジとなるため、クリープ制御部96によるクリープ制御のクリープ回転速度ncreepが目標回転速度Nmgt となり、MG回転速度Nmgがそのクリープ回転速度ncreepまで所定の変化率で上昇させられる。
【0037】
その場合に、反転レンジ切替では自動変速機24の前後進ギヤ段が切り替えられる際にクリープトルクTcreep が反転し、ギヤ機構である自動変速機24およびディファレンシャルギヤ30の各部のバックラッシに起因してガタ打ちショックが発生する可能性がある。このため、本実施例ではトルクコンバータ22の入力回転速度Ntci であるMG回転速度Nmgが、図3に示すようにクリープ回転速度ncreepよりも低い予め定められたガタ詰め回転速度nstuffに所定時間停滞するようにMGトルクTmgを制御するガタ詰め制御が行なわれる。すなわち、入力回転速度Ntci が比較的低回転のガタ詰め回転速度nstuffに保持されると、トルクコンバータ22の出力トルクすなわち自動変速機24やディファレンシャルギヤ30に伝達されるトルクが小さいため、回転方向の反転に伴うバックラッシのガタ詰め速度が低減されてガタ打ちショックが抑制される。
【0038】
図1に戻って、クリープ制御部96は、シフトレバー64がDポジションまたはRポジションの走行ポジションで自動変速機24がDレンジまたはRレンジの走行レンジとされた状態において、加速要求量に対応するアクセル開度θacc が略0で且つ車速Vが予め定められたクリープ車速以下の低車速時または車両停止時に、電動車両10の駆動トルクTr として所定のクリープトルクTcreep が得られるように、トルクコンバータ22の入力回転速度Ntci (=Nmg)を制御するクリープ制御を実行する。K0クラッチ20が開放されてエンジン12が動力伝達経路から切り離された状態では、回転機MGを制御してトルクコンバータ22を介してクリープトルクTcreep を発生させる。すなわち、LUクラッチ40が完全開放状態でトルクコンバータ22を介してMG連結軸36から変速機入力軸38側へ動力が伝達される状態において、トルクコンバータ22の入力回転速度Ntci が予め定められたクリープ回転速度ncreepとなるようにMGトルクTmgを制御することにより、所定のクリープトルクTcreep を発生させることができる。クリープ回転速度ncreepは、例えばエンジン12のアイドル回転速度Neidlと同程度の回転速度が定められるが、アイドル回転速度Neidlとは関係なく独自に設定しても良い。また、DレンジとRレンジとで異なるクリープ回転速度ncreepが定められても良いし、トルクコンバータ22内を流通する作動油OIL の油温THoil 等に応じて可変設定されても良い。K0クラッチ20の係合時には、エンジン12をアイドル回転速度Neidl等で作動させることにより、所定のクリープトルクTcreep を発生させることができる。
【0039】
エンジン始動制御部98は、K0クラッチ20が開放されたエンジン12の停止中に、アクセル操作部材79が操作されるなどしてエンジン始動要求があった場合に、K0クラッチ20を係合して回転機MGによりエンジン12をクランキングするとともに、エンジン回転速度Ne が予め定められた始動可能回転速度negstartに達したら、燃料噴射や点火等の起爆制御を行なってエンジン12が自力回転するように始動する、エンジン始動制御を行なう。エンジン12をクランキングするためのK0クラッチ20の係合制御は、K0油圧制御指令信号Sk0を油圧制御回路56へ出力してK0油圧PRk0を制御することによって実行され、通常は、K0クラッチ20の係合指示圧であるK0油圧PRk0の指示圧を、予め定められた定圧待機圧ppack に保持することにより、油圧アクチュエータのパック詰めを行う。油圧アクチュエータのパック詰めは、ピストンを前進させてK0クラッチ20が係合トルクを持つ直前の状態、すなわちクランキングトルクを伝達する直前の待機状態とする動作で、定圧待機圧ppack はリターンスプリング等に基づいて予め設定される。そして、パック詰めが完了した後に、K0クラッチ20を介してクランキングトルクが伝達されるようにK0油圧PRk0を増大制御し、K0クラッチ20をスリップ係合させてエンジン12をクランキングすることにより、エンジン回転速度Ne を始動可能回転速度negstart以上まで上昇させる。パック詰めには時間が掛かるが、その後にK0クラッチ20を滑らかに係合させることが可能であり、K0クラッチ20の急係合に起因する駆動力変動等のショックを抑制しつつ、所定のタイミングでK0クラッチ20を係合させてエンジン12を速やかにクランキングすることができる。
【0040】
図3のタイムチャートにおけるK0油圧PRk0およびK0クラッチトルクTk0の欄に比較例として示した破線は、K0油圧PRk0の指示圧を定圧待機圧ppack に保持してパック詰めを行なった後にK0クラッチ20を係合させてクランキングする場合で、定圧待機後にK0油圧PRk0が上昇させられてK0クラッチトルクTk0が上昇し始める時間t6以後に、K0クラッチ20のスリップ係合でエンジン回転速度Ne が上昇させられる。K0クラッチ20のスリップ係合でエンジン回転速度Ne を引き上げる際には、エンジン12のイナーシャ等により駆動トルク変動が生じるため、この駆動トルク変動が抑制されるように回転機MGのトルクTmgを制御するクランキングトルク補償制御を実行する。具体的には、エンジン回転速度Ne の引き上げに拘らず前記要求入力トルクTindem が維持されるように、K0クラッチトルクTk0に相当するクランキングトルク分だけMGトルクTmgが増大させられる。
【0041】
エンジン始動制御部98はまた、前記クイックガレージ制御の実行中にエンジン12の始動要求があった場合に、予め定められたステップ始動条件を満たした時には、図3のK0油圧PRk0の欄に実線で示すように、K0油圧PRk0の指示圧を、前記定圧待機圧ppack に保持することなく、K0クラッチ20がクランキングトルクを伝達できるように定圧待機圧ppack を超えてステップ的に増大させ、K0クラッチ20を速やかに係合させてエンジン12をクランキングするエンジンステップ始動制御を行なう。すなわち、クイックガレージ制御では、MG回転速度Nmgが高速切替許容回転速度nquick以下とされ、係合側係合装置CBcon が係合した後にMG回転速度Nmgの制限が解除されて目標回転速度Nmgt まで復帰することが許容されるため、エンジン始動要求のタイミングによっては、MG回転速度Nmgが始動可能回転速度negstartを超えても、K0クラッチ20の係合によるエンジン12のクランキングを速やかに実施できない可能性がある。例えば図3のK0油圧PRk0の欄に破線で示すように、エンジン始動要求があった時間t3で通常のエンジン始動制御すなわちK0油圧PRk0の指示圧を定圧待機圧ppack に保持する制御を開始した場合、K0クラッチトルクTk0が上昇し始める時間t6以後にK0クラッチ20のスリップ係合でエンジン回転速度Ne が上昇させられるようになり、MG回転速度Nmgが始動可能回転速度negstartに達する時間t4よりも大幅に遅くなる。これに対し、図3のK0油圧PRk0の欄に実線で示すように、MG回転速度Nmgが始動可能回転速度negstartに達した時間t4でエンジンステップ始動制御を開始した場合には、時間t5でK0クラッチ20のスリップ係合によりエンジン回転速度Ne が上昇させられるようになり、エンジン12を速やかに始動できる。このエンジンステップ始動制御においても、K0クラッチ20のスリップ係合でエンジン回転速度Ne が引き上げられる時間t5以後に、エンジン12のイナーシャ等によって生じる駆動トルク変動が抑制されるようにMGトルクTmgを制御するクランキングトルク補償制御を実行する。
【0042】
図2は、エンジンステップ始動制御を具体的に説明するフローチャートで、ステップS1~S8(以下、ステップを省略して単にS1~S8という。)に従って信号処理を実行する。図2のS2、S3、S4の各判断が何れもYES(肯定)であることが、ステップ始動条件に相当する。
【0043】
図2のS1では、ガレージ制御部94aがクイックガレージ制御を実行中か否かを判断し、クイックガレージ制御を実行中の場合はS2以下を実行するが、実行中でなければそのまま終了する。クイックガレージ制御を実行中か否かは、例えば実行中か否かを表すフラグを設け、そのフラグで判断することができるが、CB油圧制御指令信号ScbやMG制御指令信号Smg、或いはアクセル開度θacc 、MG回転速度Nmgなどの車両状態等から判断することも可能である。
【0044】
S2では、エンジン始動要求があるか否かを判断し、エンジン始動要求がある場合はS3以下を実行するが、エンジン始動要求が無ければそのまま終了する。エンジン始動要求の前提として、K0クラッチ20が開放されてエンジン12が停止状態であることが条件であり、その上で、運転者のアクセル操作部材79の操作でアクセル開度θacc が所定値以上になるアクセルオン、バッテリ54の充電、エンジン12の暖気などの理由で、ハイブリッド制御部92等からエンジン始動要求が供給されたか否かを判断する。本実施例では、エンジン始動要求の理由を問わず、総てのエンジン始動要求に対してS3以下を実行するが、K0油圧PRk0の指示圧をステップ的に増大させるエンジンステップ始動制御では、回転機MGによるクランキングトルク補償制御に拘らず、K0クラッチ20の急係合で駆動力変動等のショックが生じる可能性があるため、運転者のアクセルオン操作時等の予め定められた緊急度の高いエンジン始動要求時だけS3以下を実行するようにしても良い。すなわち、S2の判断がYESの場合に、S2に続いて緊急度の高いエンジン始動要求か否かを判断し、緊急度の高いエンジン始動要求の場合はS3以下を実行し、緊急度が高くない場合はS8の通常のエンジン始動制御を実行するようにしても良い。
【0045】
S3では、クイックガレージ制御の復帰中か否か、すなわち係合側係合装置CBcon が略係合させられてMG回転速度Nmgの制限が解除され、目標回転速度Nmgt へ復帰することが許容される図3の時間t2以後か否かを、例えばMG回転速度Nmgの変化等に基づいて判断する。図3では、第1係合装置CB1が係合側係合装置で、油圧PRcb1 の指示圧をステップ的に増加させる係合制御開始時からの経過時間に基づいてMG回転速度Nmgの制限を解除するタイミングが定められる場合には、その経過時間からクイックガレージ制御の復帰中か否かを判断しても良い。また、S4では、MG回転速度Nmgが予め定められたステップ始動判定回転速度njdg以上か否かを判断し、S3およびS4の判断が何れもYESの場合はS5以下を実行するが、何れか一方でもNO(否定)の場合はS8の通常のエンジン始動制御を実行する。通常のエンジン始動制御は、図3のK0油圧PRk0の欄に破線で示すように、K0油圧PRk0の指示圧を定圧待機圧ppack に所定時間保持する制御で、MG回転速度Nmgが始動可能回転速度negstartに達した後に、K0油圧PRk0を上昇させてエンジン12をクランキングして始動する。
【0046】
S4におけるステップ始動判定回転速度njdgは、始動可能回転速度negstartを基準として、それよりも所定回転速度α(図3参照)だけ低い回転速度である。所定回転速度αは、図3のK0油圧PRk0の欄に実線で示したようにMG回転速度Nmgが始動可能回転速度negstartに達した時にエンジンステップ始動制御を開始した場合と、破線で示した通常のエンジン始動制御を直ちに実施した場合とを比較して、エンジンステップ始動制御の方がエンジン12のクランキングが早く行なわれる場合にNmg≧njdgになってS4の判断がYESになるように、通常のエンジン始動制御でK0油圧PRk0の指示圧を定圧待機圧ppack に保持する時間や、クイックガレージ制御でMG回転速度Nmgを復帰させる際の変化率等に基づいて、予め実験やシミュレーション等によって定められる。定圧待機圧ppack の保持時間やMG回転速度Nmgの変化率等が一定で、クランキングまでの所要時間が略一定であれば、上記所定回転速度αとして一定値が定められるが、制御条件の変化などでクランキングまでの所要時間が変化する場合には、それに合わせて所定回転速度αが可変設定されるようにすることが望ましい。
【0047】
図3は、アクセル操作部材79のオン操作に伴って時間t3でエンジン始動要求が為された場合で、MG回転速度Nmgがステップ始動判定回転速度njdgよりも高いため、S4の判断がYESになってS5が実行される。S5では、MG回転速度Nmgが始動可能回転速度negstart以上か否かを判断し、Nmg≧negstartの場合にはS6のエンジンステップ始動制御を実行する。Nmg<negstartの場合はS7でエンジン始動制御の実行を遅延し、一連の信号処理を終了した後にS1以下を実行するが、MG回転速度Nmgはステップ始動判定回転速度njdgよりも高いため、通常はS1~S4の判断は何れもYESでS5が繰り返され、Nmg≧negstartになってS5の判断がYESになったらS6でエンジンステップ始動制御を開始する。図3の場合、エンジン始動要求が為された時間t3ではNmg<negstartであり、Nmg≧negstartになる時間t4まで待って、K0油圧PRk0の欄に実線で示すようにエンジンステップ始動制御が開始される。この場合、時間t5でエンジン12のクランキングが開始されるが、破線で示すようにエンジン始動要求が為された時間t3で通常のエンジン始動制御を開始した場合には、時間t6でエンジン12のクランキングが開始されるため、本実施例の方が時間βだけ早くエンジン12をクランキングして始動することができる。これにより、運転者のアクセルオン操作による駆動力要求時間(時間t3)から、エンジン12により所定の駆動力が得られるようになるまでの応答性が向上する。
【0048】
ここで、図3のK0油圧PRk0の欄に実線で示すように、K0油圧PRk0の指示圧をステップ的に増大させてK0クラッチ20を速やかに係合させる場合でも、指示圧の出力から実際にK0クラッチ20が係合トルクを発生してエンジン12のクランキングが開始されるまでには所定の遅れ時間tlag(=t5-t4)があるため、その遅れ時間tlagだけS6のエンジンステップ始動制御の開始時間を早くしても良い。例えば、クイックガレージ制御の復帰時におけるMG回転速度Nmgの変化率に基づいて、遅れ時間tlagに相当する前出し回転速度を求め、始動可能回転速度negstartよりもその前出し回転速度分だけ低い回転速度まで復帰した段階で、S6のエンジンステップ始動制御を開始するようにしても良い。
【0049】
このように本実施例の電動車両10の電子制御装置90が備えているエンジン始動制御部98によれば、クイックガレージ制御の実行中にエンジン12の始動要求があった時に、MG回転速度Nmgが高速切替許容回転速度nquick以下から目標回転速度Nmgt に向かって上昇する復帰過渡時の場合には、一定の条件下(S4、S5の判断がYES)でK0クラッチ20の油圧PRk0の指示圧が定圧待機圧ppack を超えてステップ的に増大させられるS6のエンジンステップ始動制御が実行され、K0クラッチ20が速やかに係合させられるため、回転機MGによりエンジン12を速やかにクランキングして始動することができる。特に、MG回転速度Nmgが上昇させられる復帰過渡時であるため、そのMG回転速度Nmgが始動可能回転速度negstartに達するまでの時間が比較的短く、K0クラッチ20を待機状態に保持することなく係合させることで、エンジン12を速やかにクランキングして始動する、という効果が適切に得られる。また、MG回転速度Nmgが上昇させられる復帰過渡時であるため、クイックガレージ制御で係合させられる係合側係合装置CBcon は既に係合状態であり、共通の油圧供給源(MOP58、EOP60)が用いられる油圧制御回路56であっても、K0クラッチ20の油圧PRk0の指示圧をステップ的に増大させた際に油圧が不足する可能性は低く、クイックガレージ制御およびエンジンステップ始動制御を適切に実施することができる。
【0050】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0051】
10:ハイブリッド式電動車両 12:エンジン 14:駆動輪 16:動力伝達装置(動力伝達経路) 20:K0クラッチ(エンジン断接装置) 24:自動変速機(変速機) 90:電子制御装置(制御装置) 94a:ガレージ制御部 98:エンジン始動制御部 MG:回転機(電動機) CB、CB1、CB2、CB3:係合装置(変速機の摩擦係合装置) PRcb1 :第1係合装置CB1の油圧(係合側係合装置の係合圧) PRk0:K0油圧(エンジン断接装置の係合圧) Nmg:MG回転速度(電動機の回転速度) Nmgt :目標回転速度 nquick:高速切替許容回転速度 ppack:定圧待機圧
図1
図2
図3