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特許7586055車両用電力制御装置、電力制御方法、及び車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】車両用電力制御装置、電力制御方法、及び車両
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/35 20060101AFI20241112BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241112BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20241112BHJP
   B60L 8/00 20060101ALI20241112BHJP
   B60L 55/00 20190101ALI20241112BHJP
【FI】
H02J7/35 K
H02J7/00 P
H02J3/38 130
B60L8/00
B60L55/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021188841
(22)【出願日】2021-11-19
(65)【公開番号】P2023075747
(43)【公開日】2023-05-31
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 幸範
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-106761(JP,A)
【文献】特開2021-065059(JP,A)
【文献】特開2018-093604(JP,A)
【文献】特開2020-089100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/35
H02J 7/00
H02J 3/38
B60L 8/00
B60L 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に用いられる電力制御装置であって、
ソーラーパネルと、
前記ソーラーパネルで発電された電力を充電可能な高圧バッテリーと、
前記ソーラーパネルで発電された電力を充電可能な補機バッテリーと、
前記ソーラーパネルで発電された電力の出力先を、前記高圧バッテリー、前記補機バッテリー、及び前記車両の外部に設けられる車外設備の少なくとも1つに制御する電力出力制御部と、を備え
前記電力出力制御部は、
前記高圧バッテリーが電力を充電することが不可能な状態である場合、前記ソーラーパネルで発電された電力を前記補機バッテリー及び前記車外設備の少なくとも1つに出力し、
前記高圧バッテリー及び前記補機バッテリーの両方が電力を充電することが不可能な状態である場合、前記ソーラーパネルで発電された電力を前記車外設備のみに出力する、車両用電力制御装置。
【請求項2】
前記高圧バッテリーが電力を充電することが不可能な状態は、前記高圧バッテリーの蓄電率が満充電の上限値以上の状態である、請求項に記載の車両用電力制御装置。
【請求項3】
前記高圧バッテリーが電力を充電することが不可能な状態は、前記高圧バッテリーの温度が充電継続制限の温度以上の状態である、請求項に記載の車両用電力制御装置。
【請求項4】
前記電力出力制御部は、前記高圧バッテリーが電力を充電することが不可能な状態である場合、前記状態を判断した時点、前記車両のユーザーからの指示、予め設定されたスケジュール、及び前記車外設備における電力コストの少なくとも1つに基づいて、前記ソーラーパネルで発電された電力を出力する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両用電力制御装置。
【請求項5】
前記電力出力制御部は、前記車外設備において予め定めた特殊な事態が発生したことを検知した場合、前記高圧バッテリーの状態にかかわらず、前記ソーラーパネルで発電された電力を前記車外設備に出力する、請求項1に記載の車両用電力制御装置。
【請求項6】
ソーラーパネルと、前記ソーラーパネルで発電された電力を充電可能な高圧バッテリーと、前記ソーラーパネルで発電された電力を充電可能な補機バッテリーと、前記ソーラーパネルで発電された電力の出力先を前記高圧バッテリー、前記補機バッテリー、及び車両の外部に設けられる車外設備の少なくとも1つに制御する電力出力制御部と、を備える車両用電力制御装置が実行する電力制御方法であって、
前記高圧バッテリーが電力を充電することが不可能な状態である場合、前記電力出力制御部を介して、前記ソーラーパネルで発電された電力を前記補機バッテリー及び前記車外設備の少なくとも1つに出力し、
前記高圧バッテリー及び前記補機バッテリーの両方が電力を充電することが不可能な状態である場合、前記ソーラーパネルで発電された電力を前記車外設備のみに出力する、電力制御方法。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の車両用電力制御装置を搭載した、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ソーラーパネルを備えた車両に搭載される電力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、ソーラーパネルで発電された電力を用いたバッテリー充電機能と、外部電源から供給される電力を用いたバッテリー充電機能とを備えた、電動車両における充電システムが開示されている。
【0003】
この特許文献1に記載された充電システムでは、外部電源の供給電力によるバッテリーの充電が完了した時から所定の時間だけソーラーパネルの発電電力による充電を禁止することで、開放電圧に基づくバッテリーの満充電容量の推定精度の低下を抑制することを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-038248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された充電システムでは、ソーラーパネルの発電電力による充電を禁止している期間中は、ソーラーパネルで電力が発電されていてもバッテリーに充電することができない。このため、ソーラーパネルで発電された電力が無駄となり、電力が有効に活用されていないという課題がある。
【0006】
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、ソーラーパネルで発電された電力を有効に活用できる車両用電力制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示技術の一態様は、車両に用いられる電力制御装置であって、ソーラーパネルと、ソーラーパネルで発電された電力を充電可能な第1のバッテリーと、ソーラーパネルで発電された電力の出力先を第1のバッテリー又は車両の外部のいずれかに制御する電力出力制御部と、を備え、電力出力制御部は、第1のバッテリーが所定の条件を満たす場合に、ソーラーパネルで発電された電力を車両の外部に出力する、車両用電力制御装置である。
【発明の効果】
【0008】
上記本開示の車両用電力制御装置によれば、第1のバッテリーが所定の条件を満たす場合にソーラーパネルで発電された電力を車両の外部に出力するので、ソーラーパネルで発電された電力を有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施形態に係る車両用電力制御装置の概略構成を示す機能ブロック図
図2】電力出力制御部が実行する電力出力制御(第1例)の処理フローチャート
図3】電力出力制御部が実行する電力出力制御(第2例)の処理フローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示のソーラーパネルを備えた車両用電力制御装置では、車両に搭載されるバッテリーが充電できない状態になった場合に、ソーラーパネルで発電された電力を車両外部の設備などに出力する。この出力制御によって、ソーラーパネルで発電された電力を有効に活用する。
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
<実施形態>
[構成]
図1は、本開示の一実施形態に係る車両用電力制御装置10の概略構成を示す機能ブロック図である。図1に例示した車両用電力制御装置10は、ソーラーパネル11と、電力出力制御部12と、高圧バッテリー13と、補機バッテリー14と、処理制御部15と、通知部16と、を備えている。
【0012】
本実施形態に係る車両用電力制御装置10は、例えば高圧バッテリー13に蓄えられた電力を家庭用の電力として供給できるV2H(Vehicle to Home)接続を行うことが可能な車両に搭載され得る。本実施形態では、車両用電力制御装置10を搭載する車両が車外設備20とV2H接続を行って、車両用電力制御装置10から車外設備20に電力を供給する例を説明する。車外設備20は、例えば住宅など、車両の外部に設けられる電力を消費する設備である。
【0013】
ソーラーパネル11は、太陽光の照射を受けて発電する発電装置であり、典型的には太陽電池セルの集合体である太陽電池モジュールである。ソーラーパネル11で発電された電力は、電力出力制御部12に出力される。このソーラーパネル11は、例えば車両のルーフなどに設置することができる。
【0014】
高圧バッテリー13は、車両の駆動に関わる走行モーターなどの機器(図示せず)を動作させるために必要な電力を供給する高電圧のバッテリー(第1のバッテリー)である。高圧バッテリー13は、例えばリチウム電池やニッケル水素電池などの、充放電可能な二次電池で構成されている。この高圧バッテリー13は、ソーラーパネル11で発電した電力によって充電可能に、電力出力制御部12と接続されている。高圧バッテリー13としては、いわゆる駆動用バッテリーを例示できる。
【0015】
補機バッテリー14は、車両の駆動に関わらないヘッドランプやエアコンなどの機器(図示せず)を動作させるために必要な電力を供給する低電圧のバッテリー(第2のバッテリー)である。補機バッテリー14は、例えばリチウム電池や鉛蓄電池などの、充放電可能な二次電池で構成されている。この補機バッテリー14は、ソーラーパネル11で発電した電力によって充電可能に、電力出力制御部12と接続されている。
【0016】
電力出力制御部12は、ソーラーパネル11、高圧バッテリー13、補機バッテリー14、処理制御部15、及び通知部16にそれぞれ接続されている。また、電力出力制御部12は、車外設備20と電気的な接続が可能である。この電力出力制御部12は、電力変換を行うDCDCコンバーターや電気的な接続/遮断を切り替えるリレー回路など(図示せず)を含み、ソーラーパネル11で発電された電力の出力先を制御することができる電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)である。
【0017】
また、電力出力制御部12は、高圧バッテリー13の各種状態(電圧、電流、蓄電率、温度など)を監視しており、高圧バッテリー13の蓄電率(SOC:State Of Charge)や温度に基づいて、ソーラーパネル11で発電された電力の出力先を制御する。発電電力の出力先は、高圧バッテリー13、車外設備20、及び補機バッテリー14である。電力出力制御部12は、高圧バッテリー13の各種状態を、高圧バッテリー13に設けられる各種センサー(図示せず)の情報から取得することができる。また、電力出力制御部12は、ソーラーパネル11の発電状態を監視しており、ソーラーパネル11が充電できる電力を発電しているか否かを判断することができる。
【0018】
この電力出力制御部12は、典型的には、プロセッサ、メモリ、及び入出力インターフェイスなどを含んで構成され、メモリに格納されたプログラムをプロセッサが読み出して実行することによって、上述した各機能を実現する。
【0019】
処理制御部15は、所定の情報に基づいて、電力出力制御部12が行う電力出力制御の実行を制御することができる機能部である。所定の情報としては、車両のユーザーなどからの入力によって指示される、高圧バッテリー13の蓄電率(例えば、所定の距離を走行するために必要な充電量などに基づく蓄電率)や、電力を車外設備20に出力する期間(例えば、午前7時から10時までなどの時間帯)を示すスケジュールの情報、また特殊な事態(例えば、停電などの緊急時)を示す情報などを例示できる。ユーザーなどからの指示は、車両に直接入力されてもよいし、スマートフォンを介して車両に入力されてもよい。また、電力を車外設備20に出力するスケジュールは、車両に対して予め設定されていてもよい。また、特殊な事態を示す情報は、車両用電力制御装置10が車外設備20から取得するようにできる。
【0020】
通知部16は、電力出力制御部12が実行している制御の内容などを車両のユーザーなどに通知することができる機能部である。通知する内容としては、例えば、家庭用に供給したソーラーパネル11の発電電力量や、その電力供給によって節約できた電力コストなど、を例示できる。通知内容は、例えば、車載ナビゲーションやスマートフォンの画面に表示される。この通知部16は、電力出力制御部12が実行している制御の内容をユーザーなどに通知すること以外にも、これから電力出力制御部12が実行する制御の選択をユーザーなどに促す通知であってもよい。
【0021】
[制御]
次に、図2及び図3をさらに参照して、本開示の一実施形態に係る車両用電力制御装置10が行う制御を幾つか説明する。図2は、車両用電力制御装置10の電力出力制御部12が実行する電力出力制御の第1例の処理手順を説明するフローチャートである。図3は、車両用電力制御装置10の電力出力制御部12が実行する電力出力制御の第2例の処理手順を説明するフローチャートである。
【0022】
1.第1例の電力出力制御
図2に示した第1例の電力出力制御処理は、車両用電力制御装置10(車両)が車外設備20と電力供給可能に接続された状態(V2H接続状態)である場合において実行される。
【0023】
(ステップS201)
電力出力制御部12は、ソーラーパネル11が充電できる電力を発電しているか否かを判断する。ここで、充電できる電力とは、充電処理や供給処理のために動作が必要なECUなどの機器が、その充電処理や供給処理を実行するために消費が必要な電力以上の電力をいう。ソーラーパネル11が発電していてもその発電電力が充電処理や供給処理を実行する機器の消費電力より少ない場合には、バッテリー(例えば補機バッテリー14)から電力の持ち出しが生じてしまい、かえって充電効率が劣化するからである。
【0024】
ソーラーパネル11が充電できる電力を発電している場合は(ステップS201、はい)、ステップS202に処理が進む。一方、ソーラーパネル11が充電できる電力を発電していない場合は(ステップS201、いいえ)、充電できる電力が発電されるまでステップS201の判断が繰り返される。
【0025】
(ステップS202)
電力出力制御部12は、高圧バッテリー13が所定の条件を満たすか否かを判断する。具体的には、電力出力制御部12は、高圧バッテリー13が電力を充電することが不可能な状態であるか否かを判断する。高圧バッテリー13に電力を充電することが不可能な状態とは、例えば、高圧バッテリー13の蓄電率が満充電になっている状態や、高圧バッテリー13の蓄電率が車両のユーザーなどによって指定された蓄電率に達している状態や、高圧バッテリー13の温度が高過ぎることによって充電行為が停止(又は制限)されている状態、などである。この判断は、高圧バッテリー13から取得する各種の状態や、処理制御部15からの指示に基づいて行うことができる。よって、電力出力制御部12が判断する所定の条件としては、高圧バッテリー13の蓄電率が第1の閾値(例えば、満充電の上限値)以上であるという条件や、高圧バッテリー13の温度が第2の閾値(例えば、充電継続制限の温度)以上であるという条件、などとすることができる。
【0026】
高圧バッテリー13が電力を充電することが可能な状態である場合は(ステップS202、いいえ)、ステップS203に処理が進む。一方、高圧バッテリー13が電力を充電することが不可能な状態である場合は(ステップS202、はい)、ステップS204に処理が進む。
【0027】
(ステップS203)
電力出力制御部12は、ソーラーパネル11で発電された電力の出力先を高圧バッテリー13に設定して(切り替えて)、ソーラーパネル11で発電された電力を高圧バッテリー13に充電する制御を実行する。この制御によって、ソーラーパネル11の発電電力が無駄なく高圧バッテリー13に蓄えられる。ソーラーパネル11の発電電力を用いた高圧バッテリー13への充電制御が実行されると、ステップS205に処理が進む。
【0028】
(ステップS204)
電力出力制御部12は、ソーラーパネル11で発電された電力の出力先を車外設備20に設定して(切り替えて)、ソーラーパネル11で発電された電力を車外設備20に出力(供給)する制御を実行する。この制御によって、ソーラーパネル11の発電電力が車外設備20に提供される。ソーラーパネル11で発電された電力を車外設備20に出力(供給)する手法には、次の4つの手法を例示することができる。
【0029】
・手法1-1:自動的に出力
高圧バッテリー13が電力を充電することが不可能な状態であると判断した時点で、電力出力制御部12が、ソーラーパネル11で発電された電力を自動的に車外設備20に出力する手法である。
【0030】
・手法1-2:ユーザーなどの回答を受けて出力
高圧バッテリー13が電力を充電することが不可能な状態であると判断した時点で、電力出力制御部12が、ユーザーなどに問い合わせを行う。そして、この問い合わせに対する回答(指示)をユーザーなどから受けた後で、電力出力制御部12が、ソーラーパネル11で発電された電力を車外設備20に出力する手法である。
【0031】
・手法1-3:指定されたスケジュールに従って出力
高圧バッテリー13が電力を充電することが不可能な状態であると判断した場合であって、車両のユーザーなどから指示された又は車両に対して車外設備20への出力に関する予め設定されたスケジュールがある場合、電力出力制御部12が、このスケジュールに従ってソーラーパネル11で発電された電力を車外設備20に出力する手法である。この手法1-3は、電力の出力が連続的に行われる上記手法1-1と比べて、電力の出力が指定されたスケジュールに基づいて間欠的に行われることが異なる。
【0032】
・手法1-4:電力コストが最小となるように出力
高圧バッテリー13が電力を充電することが不可能な状態であると判断した場合、車外設備20における電力コストが最小となるように、ソーラーパネル11の発電電力を出力する手法である。例えば、車外設備20が住宅などである場合には、車両から住宅に供給した総電力量と電力会社が定めた家庭用電力価格とに基づいて算出される電力コスト(=(総電力量)×(家庭用電力価格))が最小となるように、電力の出力が制御される。より具体的には、家庭用電力価格が高い日中には、ソーラーパネル11から供給される電力をもっぱら消費し、家庭用電力価格が安い夜間には、電力会社の商用電力を多く使用するなどのように、電力出力制御部12が車外設備20に電力を供給する供給量や時間帯を適切に制御する。
【0033】
なお、電力出力制御部12などが、車外設備20において停電などの電力を必要とする特殊な事態(緊急事態)が発生したことを検知した場合には、高圧バッテリー13が電力を充電することが可能な状態であるか不可能な状態であるかにかかわらず、かつ、上述したいずれの手法にかかわらず、直ちにソーラーパネル11で発電された電力を車外設備20に出力(供給)する制御を実行するようにしてもよい。
【0034】
ソーラーパネル11の発電電力を用いた車外設備20への充電制御が実行されると、ステップS205に処理が進む。
【0035】
(ステップS205)
電力出力制御部12は、ソーラーパネル11で発電された電力を、高圧バッテリー13に出力しているのか車外設備20に出力しているのかを示す充電制御の状態を、車両のユーザーなどに通知するよう、通知部16に対して指示を行う。また、電力出力制御部12は、車外設備20における電力コストやコスト低減効果などを車両のユーザーなどに通知するよう、通知部16に対して指示を行う。なお、この通知は必須ではなく、省略しても構わない。また、電力コストやコスト低減効果などの通知については、通知のタイミングや通知の内容(前回の実績、これまでの積算値など)も任意に設定可能である。車両による充電制御の状態や車外設備20の電力コストなどの通知が行われると、ステップS201に処理が進む。
【0036】
この第1例の電力出力制御では、高圧バッテリー13が電力を充電することが不可能な状態である場合には、ソーラーパネル11で発電された電力を車外設備20に出力(供給)する。この制御によって、ソーラーパネル11で発電された電力を有効に活用することができる。
【0037】
2.第2例の電力出力制御
図3に示した第2例の電力出力制御処理は、車両用電力制御装置10(車両)が車外設備20と電力供給可能に接続された状態(V2H接続状態)である場合において実行される。
【0038】
(ステップS301)
電力出力制御部12は、ソーラーパネル11が充電できる電力を発電しているか否かを判断する。充電できる電力は、上記第1例において説明したとおりである。ソーラーパネル11が充電できる電力を発電している場合は(ステップS301、はい)、ステップS302に処理が進む。一方、ソーラーパネル11が充電できる電力を発電していない場合は(ステップS301、いいえ)、充電できる電力が発電されるまでステップS301の判断が繰り返される。
【0039】
(ステップS302)
電力出力制御部12は、高圧バッテリー13が所定の条件を満たすか否か、つまり高圧バッテリー13が電力を充電することが不可能な状態であるか否か、を判断する。高圧バッテリー13に電力を充電することが不可能な状態及び所定の条件は、上記第1例において説明したとおりである。高圧バッテリー13が電力を充電することが可能な状態である場合は(ステップS302、いいえ)、ステップS303に処理が進む。一方、高圧バッテリー13が電力を充電することが不可能な状態である場合は(ステップS302、はい)、ステップS304に処理が進む。
【0040】
(ステップS303)
電力出力制御部12は、ソーラーパネル11で発電された電力の出力先を高圧バッテリー13に設定して(切り替えて)、ソーラーパネル11で発電された電力を高圧バッテリー13に充電する制御を実行する。この制御によって、ソーラーパネル11の発電電力が無駄なく高圧バッテリー13に蓄えられる。ソーラーパネル11の発電電力を用いた高圧バッテリー13への充電制御が実行されると、ステップS305に処理が進む。
【0041】
(ステップS304)
電力出力制御部12は、ソーラーパネル11で発電された電力の出力先を車外設備20及び補機バッテリー14に設定して(切り替えて)、ソーラーパネル11で発電された電力を車外設備20及び補機バッテリー14に出力(供給)する制御を実行する。この制御によって、ソーラーパネル11の発電電力が車外設備20と補機バッテリー14との両方に提供される。ソーラーパネル11で発電された電力を車外設備20に出力(供給)する手法には、次の4つの手法を例示することができる。
【0042】
・手法2-1:自動的に出力
高圧バッテリー13が電力を充電することが不可能な状態であると判断した時点で、電力出力制御部12が、ソーラーパネル11で発電された電力を自動的に車外設備20及び補機バッテリー14に出力する手法である。
【0043】
・手法2-2:ユーザーなどの回答を受けて出力
高圧バッテリー13が電力を充電することが不可能な状態であると判断した時点で、電力出力制御部12が、ユーザーなどに問い合わせを行う。そして、この問い合わせに対する回答(指示)をユーザーなどから受けた後で、電力出力制御部12が、ソーラーパネル11で発電された電力を車外設備20及び補機バッテリー14の一方又は両方に出力する手法である。
【0044】
・手法2-3:指定されたスケジュールに従って出力
高圧バッテリー13が電力を充電することが不可能な状態であると判断した場合であって、車両のユーザーなどから指示された又は車両に対して車外設備20への出力に関する予め設定されたスケジュールがある場合、電力出力制御部12が、このスケジュールに従ってソーラーパネル11で発電された電力を車外設備20及び補機バッテリー14の一方又は両方に出力する手法である。この手法2-3は、電力の出力が連続的に行われる上記手法2-1と比べて、電力の出力が指定されたスケジュールに基づいて間欠的に行われることとなる。
【0045】
・手法2-4:電力コストが最小となるように出力
高圧バッテリー13が電力を充電することが不可能な状態であると判断した場合、車外設備20における電力コストが最小となるように、ソーラーパネル11の発電電力を出力する手法である。例えば、車外設備20が住宅などである場合には、車両から住宅に供給した総電力量と電力会社が定めた家庭用電力価格とに基づいて算出される電力コスト(=(総電力量)×(家庭用電力価格))が最小となるように、車外設備20への電力の出力が制御される。より具体的には、家庭用電力価格が高い日中には、ソーラーパネル11から供給される電力をもっぱら消費し(補機バッテリー14への出力を制限するなど)、家庭用電力価格が安い夜間には、電力会社の商用電力を多く使用するようにする(補機バッテリー14への出力を優先するなど)、などのように、電力出力制御部12が車外設備20及び補機バッテリー14に電力を供給する供給量や時間帯を適切に制御する。
【0046】
なお、電力出力制御部12などが、車外設備20において停電などの電力を必要とする特殊な事態(緊急事態)が発生したことを検知した場合には、高圧バッテリー13が電力を充電することが可能な状態であるか不可能な状態であるかにかかわらず、かつ、上述したいずれの手法にかかわらず、直ちにソーラーパネル11で発電された電力を車外設備20及び補機バッテリー14に出力(供給)する制御を実行するようにしてもよい。
【0047】
また、上記ステップS304の処理を行う前に、補機バッテリー14が電力を充電することが不可能な状態(満充電状態など)であるか否かをさらに判断してもよい。この判断において、補機バッテリー14が電力を充電することが不可能な状態である場合には、ソーラーパネル11で発電された電力の出力先を車外設備20のみに設定するようにしてもよい。
【0048】
ソーラーパネル11の発電電力を用いた車外設備20及び補機バッテリー14への充電制御が実行されると、ステップS305に処理が進む。
【0049】
(ステップS305)
電力出力制御部12は、ソーラーパネル11で発電された電力を、高圧バッテリー13に出力しているのか車外設備20及び補機バッテリー14に出力しているのかを示す充電制御の状態を、車両のユーザーなどに通知するよう通知部16に対して指示を行う。また、電力出力制御部12は、車外設備20における電力コストやコスト低減効果などを車両のユーザーなどに通知するよう、通知部16に対して指示を行う。この通知については、上記第1例において説明したとおりである。車両による充電制御の状態や車外設備20の電力コストなどの通知が行われると、ステップS301に処理が進む。
【0050】
この第2例の電力出力制御では、高圧バッテリー13が電力を充電することが不可能な状態である場合には、ソーラーパネル11で発電された電力を車外設備20及び補機バッテリー14の一方又は両方に出力(供給)する。この制御によって、ソーラーパネル11で発電された電力を上述の第1例よりもさらに有効に活用することができる。
【0051】
<作用・効果>
以上のように、本開示の一実施形態に係る車両用電力制御装置10によれば、高圧バッテリー13が電力を充電することが不可能な状態である場合に、ソーラーパネル11で発電された電力の出力先を車外設備20に設定して、ソーラーパネル11で発電された電力を車外設備20のみに出力する。又は、ソーラーパネル11で発電された電力の出力先を車外設備20及び補機バッテリー14に設定して、車外設備20と補機バッテリー14との一方又は両方に出力する。
【0052】
この制御によって、本実施形態に係る車両用電力制御装置10では、ソーラーパネル11で発電された電力を有効に活用することができる。
【0053】
以上、本開示技術の一実施形態を説明したが、本開示は、電力制御装置だけでなく、電力制御装置が行う電力制御方法、その電力制御方法のプログラム、そのプログラムを記憶したコンピューター読み取り可能な非一時的記憶媒体、電力制御装置を備えた車両などとして捉えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本開示の電力制御装置は、ソーラーパネルで発電された電力を利用する車両などに利用可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 電力制御装置
11 ソーラーパネル
12 電力出力制御部
13 高圧バッテリー
14 補機バッテリー
15 処理制御部
16 通知部
20 車外設備
図1
図2
図3