(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】電源監視装置
(51)【国際特許分類】
H02H 3/16 20060101AFI20241112BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241112BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
H02H3/16 A
H02J7/00 S
H02J1/00 309A
(21)【出願番号】P 2021189768
(22)【出願日】2021-11-23
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】森田 好宣
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-62727(JP,A)
【文献】特開2020-108220(JP,A)
【文献】特開2015-167444(JP,A)
【文献】特開2017-140920(JP,A)
【文献】特開2016-73068(JP,A)
【文献】特開2018-192872(JP,A)
【文献】特開2007-288952(JP,A)
【文献】特開2006-160176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 3/08-3/253
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H02J 1/00-1/16
B60L 1/00-3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1負荷(34)を有する第1系統(ES1)と、第2負荷(36)を有する第2系統(ES2)とを備え、前記第1系統及び前記第2系統が系統間スイッチ(SW)により互いに接続可能となっており、前記第2系統に電源部(16)が接続されている電源システム(100)に適用され、
前記第1系統において、前記第1負荷として複数の電気負荷が並列に接続され、それら各電気負荷に繋がる通電経路にヒューズ(FA)がそれぞれ設けられており、
前記系統間スイッチを閉鎖した状態で前記第1負荷及び前記第2負荷が駆動される場合において、前記第1系統での電圧低下を監視する監視部(22)と、
前記監視部により電圧低下が生じたと判定された場合に、その電圧低下から所定期間において前記系統間スイッチの導通電流を制限した状態で前記系統間スイッチを導通させるスイッチ操作部(24)と、
を備える電源監視装置(20)。
【請求項2】
前記系統間スイッチは、通電時における通電抵抗を可変とする構成を有しており、
前記スイッチ操作部は、前記所定期間において前記系統間スイッチの通電抵抗の調整により前記系統間スイッチの導通電流を制限する、請求項1に記載の電源監視装置。
【請求項3】
前記スイッチ操作部は、前記所定期間において前記系統間スイッチに流れる導通電流を取得し、その導通電流に基づいて前記系統間スイッチの通電抵抗を調整する、請求項2に記載の電源監視装置。
【請求項4】
前記電源部は蓄電装置(16)を含み、
前記蓄電装置のSOCに基づいて、前記所定期間における前記系統間スイッチの導通電流を調整する電流調整部(24)を備える請求項1~3のいずれか一項に記載の電源監視装置。
【請求項5】
前記監視部により電圧低下が生じたと判定された後、その電圧低下からの電圧復帰が生じたことを判定する復帰判定部(40)と、
前記復帰判定部により前記電圧復帰が生じたと判定された場合に、前記スイッチ操作部による前記系統間スイッチの導通電流の制限を解除し、前記系統間スイッチを電流制限無しの導通状態に復帰させる復帰操作部(40)と、を備える請求項1~4のいずれか一項に記載の電源監視装置。
【請求項6】
前記スイッチ操作部は、前記監視部により電圧低下が生じたと判定された後、その電圧低下からの電圧復帰が生じることなく所定の導通期間が経過した場合に、前記系統間スイッチを開放する、請求項5に記載の電源監視装置。
【請求項7】
前記スイッチ操作部は、前記監視部により電圧低下が生じたと判定された後において、前記電源部の放電量及びその相関値である放電パラメータに基づいて、前記導通期間が経過したことの判定を行い、当該電圧低下からの電圧復帰が生じることなく前記導通期間が経過した場合に、前記系統間スイッチを開放する、請求項6に記載の電源監視装置。
【請求項8】
前記電源システムは、前記第1系統に接続される第1電源部(10)と、前記第2系統に接続される前記電源部としての第2電源部(16)を備えており、
前記第1電源部は、前記第1負荷及び前記第2負荷の動作電圧を生成する電圧変換器(12)を含み、
前記第2電源部は、前記電圧変換器の動作電圧により充電可能な蓄電装置(16)を含み、
前記第1系統での電圧低下が生じた場合において、前記電圧変換器による電圧生成を停止させるとともに、前記スイッチ操作部により、前記系統間スイッチの導通電流を制限した状態で前記系統間スイッチを導通させる、請求項1~7のいずれか一項に記載の電源監視装置。
【請求項9】
前記系統間スイッチに導通電流が流れる方向を判定する方向判定部(26)を備え、
前記スイッチ操作部は、前記監視部により電圧低下が生じたと判定され、且つ前記方向判定部により導通電流が前記第1系統から前記第2系統に流れると判定された場合に、前記系統間スイッチを開放する、請求項8に記載の電源監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば車両に適用され、この車両の各種装置に電力を供給する電源システムが知られている。また、電源システムにおいて、車両の運転時に、例えば電動ブレーキ装置や電動ステアリング装置など、車両の運転に必要な機能を実施する電気負荷に異常が生じた場合でも、その機能が失われないようにするために、1つの機能を実施する負荷として第1負荷及び第2負荷を有する装置が知られている。
【0003】
この装置に適用される電源システムとして、例えば特許文献1では、第1負荷を有する第1系統と、第2負荷を有する第2系統とを有するものが知られている。この電源システムでは、各系統を接続する接続経路に系統間スイッチが設けられており、系統間スイッチは、一方の系統で地絡が生じ、接続経路を通じて短絡電流が流れた場合に制御装置により開状態とされる。これにより、短絡が生じていない他方の系統の負荷により車両の運転に必要な機能が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記電源システムにおいて、第1系統の第1負荷として複数の電気負荷が含まれていることが考えられる。かかる構成において、例えば複数の電気負荷のうち1つの電気負荷で地絡が生じた場合には、系統間スイッチが開放されるが、これにより、地絡が生じていない残りの電気負荷の使用が不可になるといった不都合の発生が懸念される。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、地絡発生後にも電気負荷の適正な使用を実現することができる電源監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第1の手段は、第1負荷を有する第1系統と、第2負荷を有する第2系統とを備え、前記第1系統及び前記第2系統が系統間スイッチにより互いに接続可能となっており、前記第2系統に電源部が接続されている電源システムに適用され、前記第1系統において、前記第1負荷として複数の電気負荷が並列に接続され、それら各電気負荷に繋がる通電経路にヒューズがそれぞれ設けられており、前記系統間スイッチを閉鎖した状態で前記第1負荷及び前記第2負荷が駆動される場合において、前記第1系統での電圧低下を監視する監視部と、前記監視部により電圧低下が生じたと判定された場合に、その電圧低下から所定期間において前記系統間スイッチの導通電流を制限した状態で前記系統間スイッチを導通させるスイッチ操作部と、を備える。
【0008】
第1系統において第1負荷である複数の電気負荷のうちいずれかで地絡が生じると、該電気負荷に繋がる通電経路を通じて過度に電流が流れ、電源部での電源失陥が懸念されるため、系統間スイッチが開放される。ただしこの場合、第1系統において複数の電気負荷のうち1つの電気負荷で地絡が生じた状況であっても、第1系統全体として使用が不可になってしまう。
【0009】
この点、上記構成では、系統間スイッチを閉鎖した状態で第1負荷及び第2負荷が駆動される場合において、第1系統での電圧低下を監視し、電圧低下が生じたと判定された場合に、その電圧低下から所定期間において系統間スイッチの導通電流を制限した状態で系統間スイッチを導通させるようにした。この場合、第1系統での地絡により第1系統での電圧低下が生じると、その電圧低下から所定期間において系統間スイッチを導通状態とし、第2系統側の電源部から第1系統側に電流を流すことにより、地絡が生じた電気負荷に繋がる通電経路上のヒューズが遮断される。これにより、第1系統において地絡が生じた電気負荷のみを第1系統から離し、残りの電気負荷の使用が可能となる。また、系統間スイッチを導通状態とする場合に、系統間スイッチの導通電流を制限することで、系統間スイッチを導通状態としても、第2系統での電圧低下が抑制される。これにより、第2負荷の動作電圧が確保され、第2負荷の動作に支障が生じることを抑制することができる。
【0010】
第2の手段では、前記系統間スイッチは、通電時における通電抵抗を可変とする構成を有しており、前記スイッチ操作部は、前記所定期間において前記系統間スイッチの通電抵抗の調整により前記系統間スイッチの導通電流を制限する。
【0011】
上記構成によれば、系統間スイッチの通電抵抗を調整することにより、第1系統側から第2系統側に流れる導通電流の制限を実施することができ、ヒューズを適正に遮断することができる。
【0012】
第3の手段では、前記スイッチ操作部は、前記所定期間において前記系統間スイッチに流れる導通電流を取得し、その導通電流に基づいて前記系統間スイッチの通電抵抗を調整する。
【0013】
第1系統での電圧低下に伴い電流制限状態で系統間スイッチを導通させる場合において、電源部のSOCや系統間スイッチの劣化状態によっては、系統間スイッチに流れる導通電流が意図せず低下することが考えられる。この点、上記構成によれば、系統間スイッチの導通電流を適正に制御でき、電源部のSOCや系統間スイッチの劣化状態によらず、第1系統側のヒューズを所望のとおり遮断することができる。
【0014】
第4の手段では、前記電源部は蓄電装置を含み、前記蓄電装置のSOCに基づいて、前記所定期間における前記系統間スイッチの導通電流を調整する電流調整部を備える。
【0015】
上記構成によれば、蓄電装置のSOCが比較的大きい場合には、所定期間における系統間スイッチの導通電流を比較的大きくすることで、ヒューズを早期に遮断することができ、蓄電装置のSOCが比較的小さい場合には、導通電流を比較的小さくすることで、蓄電装置が過放電状態となることを抑制することができる。
【0016】
第5の手段では、前記監視部により電圧低下が生じたと判定された後、その電圧低下からの電圧復帰が生じたことを判定する復帰判定部と、前記復帰判定部により前記電圧復帰が生じたと判定された場合に、前記スイッチ操作部による前記系統間スイッチの導通電流の制限を解除し、前記系統間スイッチを電流制限無しの導通状態に復帰させる復帰操作部と、を備える。
【0017】
上記構成では、ヒューズの遮断に伴い第1系統の電圧が上昇に転じ、電圧低下からの電圧復帰が生じたことが判定されると、系統間スイッチの導通電流の制限が解除される。これにより、第1系統において地絡が生じた電気負荷を第1系統から離した後において、地絡が生じていない残りの電気負荷に対する電力供給を適正なタイミングで再開することができる。
【0018】
第6の手段では、前記スイッチ操作部は、前記監視部により電圧低下が生じたと判定された後、その電圧低下からの電圧復帰が生じることなく所定の導通期間が経過した場合に、前記系統間スイッチを開放する。
【0019】
第1系統では、複数の電気負荷のうちいずれかで地絡が生じるだけでなく、各電気負荷に分岐する前の本経路で地絡が生じることがある。本経路で地絡が生じた場合には、第2系統側の電源部から第1系統側に電流を流してもヒューズが遮断されず、電流を流し続けることで電源部の電力が無用に消費される。
【0020】
この点、上記構成では、第1系統での電圧低下が生じたと判定された後、その電圧低下からの電圧復帰が生じることなく導通期間が経過した場合に、系統間スイッチを開放するようにした。この場合、本経路で地絡が生じている状況下では、第2系統側の電源部から第1系統側に電流を流しても第1系統においてヒューズの遮断が生じることがなく、電圧復帰が生じないことに基づいて系統間スイッチが開放される。これにより、電源部から第1系統側への放電が継続されることが抑制され、電源部の電力が無用に消費されることを抑制することができる。
【0021】
第7の手段では、前記スイッチ操作部は、前記監視部により電圧低下が生じたと判定された後において、前記電源部の放電量及びその相関値である放電パラメータに基づいて、前記導通期間が経過したことの判定を行い、当該電圧低下からの電圧復帰が生じることなく前記導通期間が経過した場合に、前記系統間スイッチを開放する。
【0022】
第2系統側の電源部から第1系統側へ電流制限通電を行う場合、その通電を行う期間内では電源部の蓄電量の低下や、系統間スイッチの温度上昇、電流積算値の増加が生じる。この場合、これら電源部の蓄電量や、系統間スイッチの温度、電流積算値は、電源部の放電量として把握可能なパラメータ(放電パラメータ)である。放電パラメータの変化の状況によれば、電流制限通電を行う期間において、電源部からヒューズ遮断に要する放電が行われたことを把握することができる。この点、上記構成では、放電パラメータに基づいて導通期間が経過したことを判定するようにしたため、適正な期間で電流制限通電を行うことができる。
【0023】
第8の手段では、前記電源システムは、前記第1系統に接続される第1電源部と、前記第2系統に接続される前記電源部としての第2電源部を備えており、前記第1電源部は、前記第1負荷及び前記第2負荷の動作電圧を生成する電圧変換器を含み、前記第2電源部は、前記電圧変換器の動作電圧により充電可能な蓄電装置を含み、前記第1系統での電圧低下が生じた場合において、前記電圧変換器による電圧生成を停止させるとともに、前記スイッチ操作部により、前記系統間スイッチの導通電流を制限した状態で前記系統間スイッチを導通させる。
【0024】
第1電源部と第2電源部とを備える構成では、いずれの系統でも地絡が生じていない場合に、第1負荷及び第2負荷に対して、第1電源部と第2電源部とによる冗長的な電力供給が行われる。かかる構成において、第1系統での地絡により電圧低下が生じる場合には、第1電源部の電圧変換器による電圧生成が停止される。これにより、電圧変換器での過電流が抑制され、電圧変換器を含む第1電源部の保護を図ることができる。ただしこの場合、第1電源部からの通電によるヒューズの遮断を行うことができない。この点、電流制限状態で系統間スイッチを導通させ、第2電源部の蓄電装置から第1系統側に電流を流すことにより、適正にヒューズ遮断を行うことができる。
【0025】
第9の手段では、前記監視部により電圧低下が生じたと判定された場合に、前記系統間スイッチに導通電流が流れる方向を判定する方向判定部を備え、前記スイッチ操作部は、前記監視部により電圧低下が生じたと判定され、且つ前記方向判定部により導通電流が前記第1系統から前記第2系統に流れると判定された場合に、前記系統間スイッチを開放する。
【0026】
電源システムにおいて系統間スイッチが閉鎖された状態では、第1系統及び第2系統のいずれで地絡が生じても、第1系統での電圧低下が生じる。この場合、第2系統で地絡が生じている場合には、第1系統側でのヒューズ遮断が不要となる。この点、上記構成では、第1系統での電圧低下が生じたと判定された場合に、系統間スイッチに導通電流が流れる方向を判定するとともに、導通電流が第1系統から第2系統に流れると判定された場合に、系統間スイッチを開放するようにした。これにより、系統間スイッチの適正な開閉操作が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】第1実施形態の制御処理の手順を示すフローチャート。
【
図3】車両走行中に第1系統で地絡が生じた場合におけるタイムチャート。
【
図4】車両走行中に第2系統で地絡が生じた場合におけるタイムチャート。
【
図6】第2実施形態の制御処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る電源監視装置を車載の電源システム100に適用した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
図1に示すように、電源システム100は、2つの電源系統を有しており、一方の電源系統である第1系統ES1には、第1電源部としての電源装置10が設けられている。また、他方の電源系統である第2系統ES2には、第2電源部としての蓄電池16が設けられている。
【0030】
電源装置10及び蓄電池16は、一般負荷30及び特定負荷32に電力を供給する電源である。電源装置10は、高圧蓄電池11と、DCDCコンバータ(以下、単にコンバータ)12とを備える。高圧蓄電池11は、蓄電池16の定格電圧(例えば12V)よりも高い電圧(例えば数百V)を出力可能な蓄電池であり、例えばリチウムイオン蓄電池である。コンバータ12は、高圧蓄電池11から供給される電力を降圧して一般負荷30及び特定負荷32の動作電圧を生成する電圧変換器である。また、蓄電池16は、例えばリチウムイオン蓄電池からなる蓄電装置である。
【0031】
一般負荷30は、車両において運転に用いられない電気負荷(以下、単に負荷)であり、例えばエアコン、オーディオ装置、パワーウィンドウ等である。
【0032】
一方、特定負荷32は、車両の運転に用いられる少なくとも1つの機能を実施する負荷であり、例えば車両を操舵する電動パワーステアリング装置50、車輪に制動力を付与する電動ブレーキ装置51、車両周囲の状況を監視する走行監視装置52等である。
【0033】
特定負荷32は、機能毎に冗長さが付与された構成となっており、第1負荷34と第2負荷36とを有することで、それら負荷34,36のいずれか一方に異常が生じた場合でも各機能の全てが失われないようになっている。具体的には、電動パワーステアリング装置50は、第1ステアリングモータ50Aと第2ステアリングモータ50Bとを有している。電動ブレーキ装置51は、第1ブレーキ装置51Aと第2ブレーキ装置51Bとを有している。走行監視装置52は、カメラ52Aとレーザレーダ52Bとを有している。第1ステアリングモータ50Aと第1ブレーキ装置51Aとカメラ52Aとが、第1負荷34に相当し、第2ステアリングモータ50Bと第2ブレーキ装置51Bとレーザレーダ52Bとが、第2負荷36に相当する。
【0034】
第1負荷34と第2負荷36とは、機能毎に冗長に設けられており、第1負荷34と第2負荷36とが協働して各機能を実現するものであるが、それぞれ単独でも各機能の一部を実現可能なものである。例えば電動パワーステアリング装置50では、第1ステアリングモータ50Aと第2ステアリングモータ50Bとにより車両の自由な操舵が可能であり、操舵速度や操舵範囲等に一定の制限がある中で、各ステアリングモータ50A,50Bにより車両の操舵が可能である。
【0035】
第1系統ES1では、電源装置10が、第1系統内経路LA1を介して一般負荷30と第1負荷34とに接続されている。本実施形態では、第1系統内経路LA1により接続された電源装置10、一般負荷30及び第1負荷34により、第1系統ES1が構成されている。なお、本実施形態では、第1系統ES1内において、コンバータ12の低圧側に蓄電池等の蓄電装置が接続されていない。
【0036】
また、第2系統ES2では、蓄電池16が、第2系統内経路LA2を介して第2負荷36に接続されている。本実施形態では、第2系統内経路LA2により接続された蓄電池16及び第2負荷36により、第2系統ES2が構成されている。
【0037】
各系統内経路LA1,LA2は、接続経路LBにより互いに接続されており、その接続経路LBに系統間スイッチSWが設けられている。接続経路LBの一端は、第1系統内経路LA1の接続点PAに接続され、接続経路LBの他端は、第2系統内経路LA2の接続点PBに接続されている。本実施形態では、系統間スイッチSWとして、NチャネルMOSFET(以下、単にMOSFET)が用いられている。なお、本実施形態において、第1系統内経路LA1、第2系統内経路LA2及び接続経路LBが「通電経路」に相当する。
【0038】
接続経路LBには、接続点PAの電圧を検出する電圧センサ27と、系統間スイッチSWに流れる導通電流ISWを検出する電流センサ28と、系統間スイッチSWの温度を検出する温度センサ29と、が設けられている。本実施形態では、電圧センサ27は系統間スイッチSWよりも第2系統ES2側に設けられており、電流センサ28は系統間スイッチSWよりも第1系統ES1側に設けられている。
【0039】
第1系統内経路LA1には、第1負荷34に含まれる複数の負荷及び一般負荷30が並列に接続されており、それら各電気経路に繋がる第1分岐経路LC1にヒューズFAがそれぞれ設けられている。ヒューズFAは、過剰電流が流れることで溶断し、対応する負荷等への電力の入出力を遮断する。なおヒューズFAは、溶断式のヒューズに限られず、例えば、過電流を検出した場合に電流を遮断する半導体ヒューズでもよければ、化学ヒューズでもよい。各第1分岐経路LC1は、分岐する前の第1本経路LD1に接続されており、第1本経路LD1を介して電源装置10に接続されている。
【0040】
第2系統内経路LA2には、第2負荷36に含まれる複数の負荷が並列に接続されており、それら各電気経路に繋がる第2分岐経路LC2にヒューズFAが設けられている。各第2分岐経路LC2は、分岐する前の第2本経路LD2に接続されており、第2本経路LD2を介して蓄電池16に接続されている。
【0041】
制御装置40は、CPU、ROM、RAM、フラッシュメモリ等からなる周知のマイクロコンピュータを備えている。CPUは、ROM内の演算プログラムや制御データを参照して、手動運転及び自動運転するための種々の機能を実現する。具体的には、制御装置40は、系統間スイッチSWの開閉状態を制御する。また、制御装置40は、コンバータ12の動作状態と動作停止状態とを切り替える。
【0042】
また、制御装置40は、上述した特定負荷32を用いて、LKA(Lane Keeping Assist)、ACC(Adaptive Cruise Control)、PCS(Pre-Crash Safety)等の運転支援機能を実施可能である。制御装置40は、車両の走行モードを、運転支援制御を用いる支援モードと、運転支援制御を用いない通常モードとに切り替え可能であり、車両は各走行モードによる走行が可能となっている。
【0043】
制御装置40は、報知部44、IGスイッチ45及び入力部46に接続されている。報知部44は、視覚または聴覚的にドライバに報知する装置であり、例えば車室内に設置されたディスプレイやスピーカである。IGスイッチ45は、車両の起動スイッチである。制御装置40は、IGスイッチ45の開閉状態を監視する。入力部46は、ドライバの操作を受け付ける装置であり、例えばハンドル操作入力装置、シフトレバー操作入力装置、アクセルペダル操作入力装置、ブレーキペダル操作入力装置、及び音声入力装置である。
【0044】
電源システム100は、コンバータ監視装置13を備えている。コンバータ監視装置13は、コンバータ制御部14及び制御部電源15を有する。制御部電源15は、第1系統内経路LA1に接続されており、第1系統内経路LA1から電力の供給を受けてコンバータ制御部14の駆動電圧を生成する。コンバータ制御部14は、コンバータ12及び制御部電源15に接続されており、制御部電源15から供給される駆動電圧によりコンバータ12の動作状態と動作停止状態とを切り替える切替回路が内蔵されたハード回路である。コンバータ制御部14は、コンバータ12の動作状態において、第1系統ES1での電圧低下により第1系統内経路LA1の電圧が所定の閾値電圧Vthよりも低下した場合には、コンバータ12を動作状態から動作停止状態に切り替え、コンバータ12による電圧生成を停止させる。
【0045】
また、電源システム100は、スイッチ監視装置21を備えている。スイッチ監視装置21は、監視部22及びスイッチ制御部23を有する。監視部22は、電圧センサ27に接続されており、電圧センサ27により検出された電圧値が閾値電圧Vthよりも低下したことを判定する電圧判定回路が内蔵されたハード回路である。スイッチ制御部23は、監視部22及び系統間スイッチSW等に接続されており、監視部22の判定結果に基づいて、系統間スイッチSWのゲート端子に入力される電圧を調整する電圧調整回路が内蔵されたハード回路である。スイッチ制御部23により系統間スイッチSWのゲート端子に入力される電圧が調整されることで、系統間スイッチSWの開閉状態が切り替えられる。
【0046】
監視部22は、制御装置40により系統間スイッチSWが閉鎖された状態で第1負荷34及び第2負荷36が駆動される場合において、第1系統ES1での電圧低下を監視する。例えば、監視部22により第1系統ES1での電圧低下が生じたと判定された場合、系統間スイッチSWが開放され、第1系統ES1と第2系統ES2とが電気的に絶縁されることで、短絡が生じていない第2系統ES2の第2負荷36により車両の運転に必要な機能が確保される。
【0047】
ところで、電源システム100における電源異常として、第1負荷34に含まれる複数の負荷のうち1つで地絡が生じた場合に、系統間スイッチSWが開放されると、第1負荷34に含まれる複数の負荷のうち地絡が生じていない残りの負荷の使用が不可になるといった不都合の発生が懸念される。
【0048】
つまり、第1負荷34に含まれる複数の負荷のうち1つで地絡が生じた場合には、コンバータ制御部14によりコンバータ12の電圧生成が停止される。この場合、系統間スイッチSWが開放されると、第1系統ES1において、地絡が生じた負荷に繋がる第1分岐経路LC1上のヒューズFAを遮断する電力源が失われる。その結果、地絡が生じていない残りの負荷の使用が不可になる。
【0049】
本実施形態では、IGスイッチ45のオン後において、制御装置40が系統間スイッチSWをオンし、その状態で電源装置10から両系統ES1,ES2の各負荷34,36に対して電力が供給される。また、系統間スイッチSWのオン状態下において監視部22により第1系統ES1での電圧低下が生じたと判定された場合には、スイッチ制御部23に含まれるスイッチ操作部24が、その電圧低下から一時的に、すなわち電圧低下から所定期間において、系統間スイッチSWの導通電流ISWを制限した状態で系統間スイッチSWを導通させる状態、つまりハーフオン状態とする。
【0050】
電源異常が生じた場合におけるスイッチ制御部23の対応について説明する。スイッチ制御部23は、スイッチ操作部24、期間判定部25、及び方向判定部26を含むハード回路である。
【0051】
スイッチ操作部24は、監視部22により第1系統ES1での電圧低下が生じたと判定された場合に、系統間スイッチSWをハーフオン状態とする。これにより、第2系統ES2側の蓄電池16から第1系統ES1側への通電が行われ、地絡が生じた負荷に繋がる通電経路上のヒューズFAが遮断される。スイッチ操作部24は、系統間スイッチSWをハーフオン状態とする場合に、系統間スイッチSWの主端子間の通電抵抗を調整することにより、系統間スイッチSWの導通電流ISWを制限する。この場合、スイッチ操作部24は、制御装置40から取得される蓄電池16のSOCに基づいて、系統間スイッチSWの導通電流ISWを調整する。具体的には、スイッチ操作部24は、蓄電池16のSOCが大きいほど導通電流ISWの目標電流値が大きくなるように目標電流値を設定し、電流センサ28を用いて取得される導通電流ISWの大きさが目標電流値となるように系統間スイッチSWの通電抵抗をフィードバック制御する。なお、本実施形態において、スイッチ操作部24が「電流調整部」に相当する。
【0052】
期間判定部25は、監視部22により第1系統ES1での電圧低下が生じたと判定された場合において、その電圧低下から所定の導通期間が経過したことを判定する。具体的には、期間判定部25は、制御装置40から蓄電池16の蓄電状態を示すSOC(State Of Charge)を取得し、監視部22により第1系統ES1での電圧低下が生じたと判定されてからのSOCの変化量であるΔSOCが所定の閾値変化量よりも大きくなったことに基づいて、電圧低下から所定の導通期間が経過したことを判定する。
【0053】
第1系統ES1では、第1負荷34に含まれるいずれかの負荷で地絡が生じること以外に、各負荷に分岐する前の第1本経路LD1で地絡が生じることが考えられる。この場合、蓄電池16から第1系統ES1側に電流を流してもヒューズFAが遮断されず、電流を流し続けることで蓄電池16の電力が無用に消費される。そこで、スイッチ操作部24は、第1系統ES1での電圧低下が生じた後において、期間判定部25により所定の導通期間が経過したと判定された場合に、系統間スイッチSWを開放する。
【0054】
また、電源システム100では、第2系統ES2で地絡が生じることも考えられ、かかる状況では、第1系統ES1側でのヒューズ遮断が不要であり、系統間スイッチSWが遮断される。この場合、第1系統ES1及び第2系統ES2のいずれで地絡が生じたかに応じて、系統間スイッチSWに流れる導通電流ISWの向きが変わる。そこで、方向判定部26は、電流センサ28を用いて系統間スイッチSWに導通電流ISWが流れる方向を判定する。
【0055】
スイッチ操作部24は、第1系統ES1での電圧低下が生じる場合において、方向判定部26により導通電流ISWが第2系統ES2から第1系統ES1に流れていると判定されれば、系統間スイッチSWをハーフオン状態とし、方向判定部26により導通電流ISWが第1系統ES1から第2系統ES2に流れていると判定されれば、系統間スイッチSWを開放する。
【0056】
次に、電源異常が生じた場合における制御装置40の対応について説明する。
図2に、制御装置40が実施する電源異常時の制御処理のフローチャートを示す。制御装置40は、IGスイッチ45が閉鎖されると、所定周期で制御処理を繰り返し実施する。
【0057】
制御処理を開始すると、まずステップS21では、第1異常フラグF1が「1」であるか否かを判定する。ここで第1異常フラグF1は、第1系統ES1に異常が発生していない場合に「0」に設定されており、第1系統ES1に異常が発生すると、「1」に設定される。第1異常フラグF1が「0」であると判定した場合、ステップS22に進む。第1異常フラグF1が「1」であると判定した場合、ステップS31に進む。
【0058】
ステップS22では、第2異常フラグF2が「1」であるか否かを判定する。ここで第2異常フラグF2は、第2系統ES2に異常が発生していない場合に「0」に設定されており、第2系統ES2に異常が発生すると、「1」に設定される。第2異常フラグF2が「0」であると判定した場合、ステップS23に進む。第2異常フラグF2が「1」であると判定した場合、ステップS41に進む。
【0059】
ステップS23では、第1系統ES1に異常が発生しているか否かを判定する。第1系統ES1に異常が発生していない場合、ステップS24において、第2系統ES2に異常が発生しているか否かを判定する。制御装置40は、監視部22及び方向判定部26から判定結果を取得し、これらの判定結果に基づいて、第1系統ES1又は第2系統ES2に異常が発生しているか否かを判定する。なお、本実施形態において、異常は、地絡や短絡等の電源失陥異常である。
【0060】
第1系統ES1に異常が発生していると判定した場合、ステップS25において、制御対象の負荷を、第1,第2負荷34,36から第2負荷36に切り替える。続くステップS26では、第1異常フラグF1を「1」に切り替える。続くステップS27では、報知部44を介してドライバに異常発生を報知し、本処理を一旦終了する。
【0061】
また、第2系統ES2に異常が発生していると判定した場合、ステップS28において、制御対象の負荷を、第1,第2負荷34,36から第1負荷34に切り替える。続くステップS29では、第2異常フラグF2を「1」に切り替え、ステップS27に進む。一方、第1,第2系統ES1,ES2のいずれにも異常が発生していないと判定した場合、本処理を一旦終了する。
【0062】
ステップS31では、第1系統ES1での電圧低下からの電圧復帰が生じたことを判定する。例えば第1系統ES1において、第1負荷34に含まれる複数の負荷及び一般負荷30の少なくとも1つで地絡が生じた場合、スイッチ操作部24により系統間スイッチSWがハーフオン状態とされることで蓄電池16から地絡が生じた負荷に電流が流れる。これにより、該負荷に対応するヒューズFAが溶断すると、第1系統ES1で電圧復帰が生じる。
【0063】
電圧復帰が生じている場合、ステップS32において、スイッチ操作部24による系統間スイッチSWの導通電流ISWの制限を開放し、系統間スイッチSWを電流制限なしの導通状態に復帰させる。なお、本実施形態において、ステップS31の処理が「復帰判定部」に相当し、ステップS32の処理が「復帰操作部」に相当する。
【0064】
ステップS33では、コンバータ12を動作停止状態から動作状態に切り替える。続くステップS34では、制御対象の負荷を、第1負荷34から第1,第2負荷34,36に切り替え、第1負荷34の制御を再開する。続くステップS35では、報知部44を介してドライバに電圧復帰を報知し、本処理を一旦終了する。
【0065】
一方、電圧復帰が生じていない場合、ステップS36において、蓄電池16のSOCを算出し、本処理を一旦終了する。ステップS32で算出された蓄電池16のSOCは、スイッチ操作部24及び期間判定部25に送信される。
【0066】
ステップS41では、第2系統ES2での電圧低下からの電圧復帰が生じたことを判定する。例えば第2系統ES2において、第2負荷36に含まれる複数の負荷の少なくとも1つで地絡が生じた場合、スイッチ操作部24により系統間スイッチSWが開状態とされる。この場合、第2系統ES2において、蓄電池16から地絡が生じた負荷に電流が流れることにより、該負荷に対応するヒューズFAが溶断すると、第2系統ES2で電圧復帰が生じる。
【0067】
電圧復帰が生じている場合、ステップS42において、系統間スイッチSWを開放する。続くステップS43では、制御対象の負荷を、第2負荷36から第1,第2負荷34,36に切り替え、第2負荷36の制御を再開する。続くステップS44では、報知部44を介してドライバに電圧復帰を報知し、本処理を一旦終了する。一方、電圧復帰が生じていない場合、本処理を一旦終了する。
【0068】
図3は、車両走行中に第1系統ES1で地絡が生じた場合における第1系統内経路LA1の第1電圧V1と第2系統内経路LA2の第2電圧V2との推移を示す。ここで第1電圧V1は接続点PAの電圧であり、第2電圧V2は接続点PBの電圧である。
【0069】
図3において、(A)は、系統間スイッチSWの開閉状態の推移を示し、(B)は、コンバータ12の動作状態の推移を示し、(C)は、特定ヒューズの導通状態の推移を示す。ここで特定ヒューズは、地絡が生じた負荷に繋がる分岐経路LC1,LC2上のヒューズFAを意味し、本経路LD1,LD2で地絡が生じた場合には、特定ヒューズは存在しない。
【0070】
また、(D)は、第1電圧V1の推移を示し、(E)は、第2電圧V2の推移を示し、(F)は、導通電流ISWの推移を示す。導通電流ISWは、第2系統ES2側から第1系統ES1側に流れる電流を正とする。
【0071】
図3に示すように、時刻t1以前は、制御装置40により系統間スイッチSWが閉鎖されているとともに、制御装置40によりコンバータ12が動作状態となっている。また、第1,第2電圧V1,V2が閾値電圧Vthを超えて上昇しており、コンバータ12の動作電圧により蓄電池16が適宜充電される。
【0072】
車両走行中では、第1系統ES1及び第2系統ES2のいずれか一方で異常が発生したか否かが判定される。
図3では、時刻t1に第1系統ES1で地絡が発生する。これにより、第1電圧V1が低下し、第2系統ES2側から第1系統ES1側に流れる導通電流ISWが増大する。時刻t2に第1電圧V1が閾値電圧Vthまで低下すると、コンバータ制御部14によりコンバータ12が動作状態から動作停止状態に切り替えられ、コンバータ12による電圧生成が停止される。
【0073】
また、第1電圧V1が閾値電圧Vthまで低下すると、監視部22により第1系統ES1での電圧低下が生じたことが判定され、スイッチ操作部24により系統間により系統間スイッチSWがハーフオン状態とされる。これにより、第2電圧V2が、閾値電圧Vthよりも高い制限電圧VSまで上昇し、閾値電圧Vthよりも低く設定された第2負荷36の動作下限電圧VLまで低下することが抑制される。
【0074】
系統間スイッチSWがハーフオン状態とされる場合には、導通電流ISWの大きさが目標電流値となるように、系統間スイッチSWの通電抵抗がフィードバック制御される。ここで目標電流値は、蓄電池16からの電力供給により第2負荷36の動作電圧を確保でき、かつ特定ヒューズを溶断できる電流値である。導通電流ISWの大きさが目標電流値となるようにフィードバック制御されることで、第2負荷36の動作に支障が生じることを抑制しつつ、特定ヒューズを溶断し、第1系統ES1において地絡が生じた負荷のみを第1系統ES1から離すことができる。
【0075】
図3では、第1系統ES1の負荷30,34で地絡が生じた場合における各値の推移が実線で示されており、第1系統ES1の第1本経路LD1で地絡が生じた場合における各値の推移が破線で示されている。
【0076】
図3に実線で示すように、第1系統ES1の負荷30,34で地絡が発生した場合、時刻t3に特定ヒューズが溶断されると、第1電圧V1が上昇し、導通電流ISWが減少する。この場合、時刻t2から時刻t3までの期間が、所定期間に相当する。
【0077】
制御装置40は、系統間スイッチSWよりも第2系統ES2側に設けられた電圧センサ27を用いて第2電圧V2を取得しており、時刻t3に第2電圧V2が制限電圧VSから上昇すると、制御装置40により第1系統ES1での電圧復帰が生じたことが判定される。本実施形態では、制御装置40は、時刻t3から規定期間経過後の時刻t4に第1系統ES1での電圧復帰が生じたと判定する。ここで規定期間は、例えば第1電圧V1がゼロから閾値電圧Vthまで上昇するのに必要な期間である。
【0078】
この判定に基づいて、時刻t6に制御装置40により系統間スイッチSWが開放、つまり電流制限無しの導通状態とされるとともに、制御装置40によりコンバータ12が動作停止状態から動作状態に切り替えられる。これにより、第1系統ES1における残りの負荷30,34の使用が可能となるとともに、残りの負荷30,34への冗長的な電力供給が可能となる。
【0079】
なお、時刻t3~時刻t6の期間では、特定ヒューズが溶断されているものの、系統間スイッチSWがハーフオン状態とされているため、第2電圧V2は第1電圧V1よりも低くなっている。
【0080】
一方、
図3に破線で示すように、時刻t5に蓄電池16のΔSOCが閾値変化量まで上昇しても第1系統ES1での電圧低下が継続している場合、スイッチ操作部24により系統間スイッチSWが開放される。これにより、導通電流ISWがゼロとなり、蓄電池16の容量低下が抑制される。この場合、時刻t2から時刻t5までの期間が、導通期間に相当する。
【0081】
図4は、車両走行中に第2系統ES2で地絡が生じた場合における第1電圧V1と第2電圧V2との推移を示す。なお、
図4の(A)~(G)は、
図3の(A)~(G)と同一であるため、重複した説明を省略する。
【0082】
図4では、時刻t11に第2系統ES2で地絡が発生する。これにより、第2電圧V2が低下し、第1系統ES1側から第2系統ES2側に流れる導通電流ISWが増大する。第2電圧V2の低下に伴い、時刻t12に第1電圧V1が閾値電圧Vthまで低下すると、監視部22により第1系統ES1での電圧低下が生じたことが判定されるとともに、方向判定部26により、導通電流ISWが第1系統ES1側から第2系統ES2側に流れていることが判定される。これらの判定に基づいて、スイッチ操作部24により第2系統ES2で地絡が発生したと判定されると、系統間スイッチSWが開放される。
【0083】
第2系統ES2で地絡が生じた場合、系統間スイッチSWが開放されることで、第1系統ES1の負荷30,34の動作電圧が確保される。また、系統間スイッチSWが開放されても、第2系統ES2には、特定ヒューズを遮断するための電力源としての蓄電池16が存在するため、蓄電池16からの電力供給により特定ヒューズを溶断できる。これにより、第1系統ES1の負荷30,34の動作に支障が生じることを抑制しつつ、特定ヒューズを溶断し、第2系統ES2において地絡が生じた第2負荷36のみを第2系統ES2から離すことができる。
【0084】
図4では、第2系統ES2の第2負荷36で地絡が生じた場合における各値の推移が実線で示されており、第2系統ES2の第2本経路LD2で地絡が生じた場合における各値の推移が破線で示されている。
【0085】
図4に実線で示すように、第2系統ES2の第2負荷36で地絡が発生した場合、時刻t13に特定ヒューズが溶断されると、第2電圧V2が上昇する。時刻t14に第2電圧V2が閾値電圧Vthまで上昇すると、制御装置40により第2系統ES2での電圧復帰が生じたことが判定される。この判定に基づいて、時刻t15に制御装置40により系統間スイッチSWが開放される。これにより、第2系統ES2における残りの負荷の使用が可能となるとともに、残りの負荷への冗長的な電力供給が可能となる。
【0086】
一方、
図4に破線で示すように、蓄電池16のΔSOCが閾値変化量まで上昇しても第2系統ES2での電圧低下が継続している場合、系統間スイッチSWは開放された状態に維持される。
【0087】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0088】
本実施形態では、系統間スイッチSWを閉鎖した状態で第1負荷34及び第2負荷36が駆動される場合において、第1系統ES1での電圧低下を監視し、電圧低下が生じたと判定された場合に、その電圧低下から所定期間において系統間スイッチSWの導通電流ISWを制限した状態で系統間スイッチSWを導通させる状態、つまりハーフオン状態とする。この場合、第1系統ES1での地絡により第1系統ES1での電圧低下が生じると、その電圧低下から所定期間において系統間スイッチSWを導通状態とし、第2系統ES2側の蓄電池16から第1系統ES1側に電流を流すことにより、地絡が生じた負荷に繋がる第1分岐経路LC1上のヒューズFAが遮断される。これにより、第1系統ES1において地絡が生じた負荷のみを第1系統ES1から離し、残りの負荷の使用が可能となる。また、系統間スイッチSWを導通状態とする場合に、系統間スイッチSWの導通電流ISWを制限することで、系統間スイッチSWを導通状態としても、第2系統ES2での電圧低下が抑制される。これにより、第2負荷36の動作電圧が確保され、第2負荷36の動作に支障が生じることを抑制することができる。
【0089】
本実施形態では、スイッチ操作部24は、所定期間において系統間スイッチSWの通電抵抗の調整により系統間スイッチSWの導通電流ISWを制限する。系統間スイッチSWの通電抵抗の調整することにより、第1系統ES1側から第2系統ES2側に流れる導通電流ISWの制限を実施することができ、ヒューズFAを適正に遮断することができる。
【0090】
第1系統ES1での電圧低下に伴い電流制限状態で系統間スイッチSWを導通させる場合において、蓄電池16のSOCや系統間スイッチSWの劣化状態によっては、系統間スイッチSWに流れる導通電流ISWが意図せず低下することが考えられる。この点、本実施形態では、所定期間において系統間スイッチSWに流れる導通電流ISWに基づいて系統間スイッチSWの通電抵抗を調整する。これにより、蓄電池16のSOCや系統間スイッチSWの劣化状態によらず、第1系統ES1側のヒューズFAを所望のとおり遮断することができる。
【0091】
本実施形態では、蓄電池16のSOCに基づいて、所定期間における系統間スイッチSWの導通電流ISWを調整する。これにより、蓄電池16のSOCが比較的大きい場合には、導通電流ISWを比較的大きくすることで、ヒューズFAを早期に遮断することができ、蓄電池16のSOCが比較的小さい場合には、導通電流ISWを比較的小さくすることで、蓄電池16が過放電状態となることを抑制することができる。
【0092】
本実施形態では、ヒューズFAの遮断に伴い第1電圧V1が上昇に転じ、電圧低下からの電圧復帰が生じたことが判定されると、系統間スイッチSWの導通電流ISWの制限が解除される。これにより、第1系統ES1において地絡が生じた負荷を第1系統ES1から離した後において、地絡が生じていない残りの負荷に対する電力供給を適正なタイミングで再開することができる。
【0093】
第1系統ES1では、第1負荷34に含まれる複数の負荷及び一般負荷30の少なくとも1つで地絡が生じるだけでなく、各第1分岐経路LC1に分岐する前の第1本経路LD1で地絡が生じることがある。第1本経路LD1で地絡が生じた場合には、第2系統ES2側の蓄電池16から第1系統ES1側に導通電流ISWを流しても、ヒューズFAを遮断することができず、導通電流ISWを流し続けることで蓄電池16の電力が無用に消費される。
【0094】
この点、本実施形態では、第1系統ES1での電圧低下が生じたと判定された後、その電圧低下からの電圧復帰が生じることなく導通期間が経過した場合に、系統間スイッチSWを開放するようにした。この場合、第1本経路LD1で地絡が生じている状況下では、第2系統ES2側の蓄電池16から第1系統ES1側に導通電流ISWを流しても第1系統ES1においてヒューズFAの遮断が生じることがなく、電圧復帰が生じないことに基づいて系統間スイッチSWが開放される。これにより、蓄電池16から第1系統ES1側への放電が継続されることが抑制され、蓄電池16の電力が無用に消費されることを抑制することができる。
【0095】
第2系統ES2側の蓄電池16から第1系統ES1側へ電流制限通電を行う場合、その通電を行う期間内では蓄電池16のSOCの低下が生じる。この場合、蓄電池16のSOCは、蓄電池16の放電量として把握可能なパラメータ(放電パラメータ)である。また、放電パラメータの変化の状況によれば、電流制限通電を行う期間において、蓄電池16からヒューズ遮断に要する放電が行われたことを把握することができる。この点、本実施形態では、放電パラメータである蓄電池16のSOCに基づいて導通期間が経過したことを判定するようにしたため、適正な期間で電流制限通電を行うことができる。
【0096】
電源装置10と蓄電池16とを備える構成では、いずれの系統ES1,ES2でも地絡が生じていない場合に、第1負荷34及び第2負荷36に対して、電源装置10と蓄電池16とによる冗長的な電力供給が行われる。かかる構成において、第1系統ES1での地絡により電圧低下が生じる場合には、電源装置10のコンバータ12による電圧生成が停止される。これにより、コンバータ12での過電流が抑制され、コンバータ12を含む電源装置10の保護を図ることができる。ただしこの場合、電源装置10からの通電によるヒューズFAの遮断を行うことができない。この点、本実施形態では、電流制限状態で系統間スイッチSWを導通させ、第2系統ES2側の蓄電池16から第1系統ES1側に電流を流すことにより、適正にヒューズ遮断を行うことができる。
【0097】
電源システム100において系統間スイッチSWが閉鎖された状態では、第1系統ES1及び第2系統ES2のいずれで地絡が生じても、第1系統ES1での電圧低下が生じる。この場合、第2系統ES2で地絡が生じている場合には、第1系統ES1側でのヒューズ遮断が不要となる。この点、本実施形態では、第1系統ES1での電圧低下が生じたと判定された場合に、系統間スイッチSWに導通電流ISWが流れる方向を判定するとともに、導通電流ISWが第1系統ES1から第2系統ES2に流れると判定された場合に、系統間スイッチSWを開放するようにした。これにより、系統間スイッチSWの適正な開閉操作が実現できる。
【0098】
(第1実施形態の変形例)
スイッチ操作部24は、蓄電池16のSOCを用いてに導通期間が経過したと判定することに代えて、第1系統ES1での電圧低下からの経過時間を用いて導通期間が経過したと判定するようにしてもよい。また、第1系統ES1で電圧低下が生じてからの導通電流ISWの積算値である電流積算値を取得し、この電流積算値が所定の閾値積算値よりも大きくなった場合に導通期間が経過したと判定するようにしてもよい。さらに、温度センサ29を用いて取得された系統間スイッチSWの温度が閾値温度よりも高くなった場合に所定期間が経過したと判定するようにしてもよい。
【0099】
第2系統ES2側の蓄電池16から第1系統ES1側への放電時には、時間経過に伴い放電量が増加するとともに、放電量の増加に応じて電流積算値の増加や系統間スイッチSWの温度上昇が生じる。そのため、第1系統ES1で電圧低下が生じてからの経過時間や、導通電流ISWの電流積算値の増加量を用いて所定期間が経過したことを判定することで、蓄電池16が過放電状態となることを抑制することができる。また、系統間スイッチSWの温度上昇量を用いて所定期間が経過したことを判定することで、蓄電池16が過放電状態となることを抑制しつつ、電流積算値の増大により系統間スイッチSWの温度が過度に上昇することを抑制することができる。
【0100】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に
図5、
図6を参照しつつ説明する。
【0101】
図5に示すように、本実施形態では、電源装置10が第2系統ES2に設けられている。つまり、本実施形態では、第1,第2負荷34,36及び一般負荷30に電力供給する電源部が、第2系統ES2のみに設けられており、第1系統ES1に設けられていない点で、第1実施形態と異なる。また、本実施形態では、コンバータ監視装置13は設けられていない。
【0102】
図6に、本実施形態における制御処理のフローチャートを示す。
図6において、先の
図2に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0103】
本実施形態では第1系統ES1に電源部が設けられていないため、第2系統ES2に異常が発生すると、異常が発生していない第1系統ES1側の第1負荷34に電力供給することができない。そのため、制御装置40は、第2系統ES2に異常が発生すると、第2異常フラグF2を設定することなく第1,第2負荷34,36の制御を停止する。
【0104】
具体的には、本実施形態の制御処理では、ステップS21において、第1異常フラグF1が「0」であると判定した場合、ステップS23に進む。また、ステップS24において、第1系統ES1に異常が発生していると判定した場合、ステップS51において、第1,第2負荷34,36の制御を停止する。続くステップS52では、報知部44を介してドライバに制御停止を報知し、本処理を一旦終了する。
【0105】
以上詳述した電源システム100は、電源装置10及び蓄電池16が設けられたメイン系統である第2系統ES2と、電源部を有しないサブ系統である第1系統ES1とを備える。本実施形態では、上記構成において、サブ系統に含まれる複数の負荷の少なくとも1つで地絡が生じた場合、系統間スイッチSWがハーフオン状態とされる。これにより、メイン系統の負荷の動作に支障が生じることを抑制しつつ、サブ系統において地絡が生じた負荷のみをサブ系統から離すことができ、残りの負荷の使用が可能となる。
【0106】
(その他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、次のように実施されてもよい。
【0107】
各負荷34,36は、例えば以下の装置であってもよい。
【0108】
・車両に走行用動力を付与する走行用モータとその駆動回路であってもよい。この場合、第1,第2負荷34,36のそれぞれは、例えば3相の永久磁石同期モータと3相インバータ装置である。
【0109】
・制動時の車輪のロックを防止するアンチロックブレーキ装置であってもよい。この場合、第1,第2負荷34,36のそれぞれは、例えば制動時のブレーキ油圧を独立に調整できるABSアクチュエータである。
【0110】
・各負荷34,36は、必ずしも同じ構成の組合せである必要がなく、同等の機能を異なる形式の機器で実現する組合せであってもよい。また、第1,第2負荷34,36は、それぞれが異なる負荷ではなく、同一の負荷であってもよい。つまり、第1,第2負荷34,36が、第1系統内経路LA1及び第2系統内経路LA2の両方から電力供給を受ける同一の負荷であってもよい。
【0111】
・各負荷34,36は、同一機能を実現するための構成要素であってもよい。この場合、第1,第2負荷34,36のそれぞれは、例えば電動パワーステアリング装置のアクチュエータと電動パワーステアリングECUである。この場合、電動パワーステアリングECUは、第1系統内経路LA1及び第2系統内経路LA2の両方から電力供給を受けてもよい。
【0112】
・上記実施形態では、通常モードにおいて実施される制御処理について説明したが、制御処理は、支援モードにおいて実施されてもよい。この場合、支援モード中に、第1系統ES1の負荷30,34又は第2系統ES2の第2負荷36のいずれかで地絡が生じた場合、特定ヒューズの溶断により第1,第2負荷34,36を用いた制御が可能となることから、支援モードを継続するようにしてもよい。一方、第1系統ES1の第1本経路LD1又は第2系統ES2の第2本経路LD2で地絡が生じた場合、第1負荷34及び第2負荷36のうち一方の負荷の使用が不可となることから、支援モードから通常モードに切り替えるようにしてもよい。
【0113】
・上記実施形態では、系統間スイッチSWがMOSFETである例を示したが、これに限られない。
図7(A)~(C)に示すように、系統間スイッチSWが接点切替式のスイッチ(以下、メカスイッチ)SW1~SW3及び抵抗素子R1,R2により構成されていてもよい。この場合、
図7(B),(C)に示すように、系統間スイッチSWに抵抗値が互いに異なる複数の抵抗素子R1,R2が含まれることで、ハーフオン状態における系統間スイッチSWの通電抵抗を調整することが可能となる。なお、系統間スイッチSWに含まれる抵抗素子R1,R2の数は、1個又は2個に限られず3個以上であってもよい。
【0114】
また、
図7(D)に示すように、抵抗素子が可変抵抗RAであり、メカスイッチSWAにより可変抵抗RAを通る経路と可変抵抗RAを通らない経路とを切り替えるようにしてもよい。
【0115】
・上記実施形態では、電圧センサ27が、系統間スイッチSWよりも第2系統ES2側に設けられている例を示したが、系統間スイッチSWよりも第1系統ES1側に設けられていてもよい。これにより、第1系統ES1で地絡が発生した場合において、第1電圧V1に基づいて第1系統ES1での電圧復帰が生じたことを判定することができる。
【0116】
・上記実施形態では、所定期間が経過したことを、蓄電池16のSOC等の放電パラメータの変化の状況により判定する例を示したが、これに限られない。例えば、所定期間は、蓄電池16の予想放電量に基づいて予め定められた設定期間であってもよい。
【0117】
・上記実施形態では、第1,第2系統ES1,ES2での電圧復帰後における系統間スイッチSWの開放を制御装置40が実施する例を示したが、スイッチ操作部24が上記開放動作を実施するようにしてもよい。
【0118】
・上記実施形態では、第1,第2系統ES1,ES2で電圧復帰が生じなかった場合における系統間スイッチSWの開放をスイッチ操作部24が実施する例を示したが、制御装置40が上記開放動作を実施するようにしてもよい。
【0119】
・上記実施形態では、監視部及びスイッチ制御部が、各種回路が内蔵されたハード回路により構成されている例を示したが、これに限られない。CPU、ROM、RAM、フラッシュメモリ等からなるマイクロコンピュータにより構成されていてもよい。
【0120】
・上記実施形態では、電源部がリチウムイオン蓄電池である例を示したが、これに限られない。電源部は、例えば他の種類の蓄電池であってもよければ、電気二重層キャパシタであってもよい。
【符号の説明】
【0121】
16…蓄電池、20…電源監視装置、22…監視部、24…スイッチ操作部、34…第1負荷、36…第2負荷、100…電源システム、ES1…第1系統、ES2…第2系統、FA…ヒューズ、SW…系統間スイッチ。