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特許7586058エアジェット織機における緯糸搬送ノズル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】エアジェット織機における緯糸搬送ノズル
(51)【国際特許分類】
   D03D 47/30 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
D03D47/30
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021192715
(22)【出願日】2021-11-29
(65)【公開番号】P2023079307
(43)【公開日】2023-06-08
【審査請求日】2024-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 大勝
(72)【発明者】
【氏名】野村 淡陽
(72)【発明者】
【氏名】垣内 夏樹
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-020543(JP,A)
【文献】特開2003-105655(JP,A)
【文献】特開平10-204754(JP,A)
【文献】独国特許発明第03716602(DE,C1)
【文献】特開昭52-091955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D29/00-51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緯糸飛走経路を有する変形筬の前記緯糸飛走経路の入口に向けてエアを噴射することによって緯糸を前記緯糸飛走経路に射出する、エアジェット織機における緯糸搬送ノズルであって、
前記緯糸を導入して案内する緯糸通路を有するスレッドガイドと、
前記スレッドガイドを収容し前記スレッドガイドの外周面に沿って前記緯糸通路の方向にエアを流すエア流路を形成するノズルボディと
を備え、
前記緯糸通路の下流側の緯糸経路に前記エア流路を延長して重ね、
前記スレッドガイドにおける前記緯糸通路を断面円形とし、前記スレッドガイドの先端部を前記緯糸通路の中心軸線に対して斜交する面で切断し、
前記スレッドガイドは、前記ノズルボディから露出する部位に前記面の法線方向に対応する方向を表示する表示部を有するエアジェット織機における緯糸搬送ノズル。
【請求項2】
前記表示部が水平方向且つ前記エアジェット織機の前側方向に位置するときに、前記面の法線方向が、水平方向且つ前記変形筬から離隔する方向となるように前記表示部が形成されている請求項1に記載のエアジェット織機における緯糸搬送ノズル。
【請求項3】
前記表示部が水平方向且つ前記エアジェット織機の前側方向に位置するときに、前記面の法線方向が、水平方向且つ前記変形筬に接近する方向となるように前記表示部が形成されている請求項1に記載のエアジェット織機における緯糸搬送ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアジェット織機における緯糸搬送ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
エアジェット織機の変形筬の緯糸飛走経路入口にエアを噴射することにより、緯糸を射出する緯糸搬送ノズルとしては、例えば特許文献1に記載されているような緯糸搬送ノズルが知られている。この緯糸搬送ノズルにおいては、スレッドガイドにおける緯糸通路を断面円形とし、スレッドガイドの先端部を緯糸通路の中心軸線に対して斜交する平面で切断した形状に形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-20543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の緯糸搬送ノズルでは、緯糸搬送ノズルによって緯入れされた緯糸が目標位置到達タイミングで目標位置に到達するためのエア噴射圧力が、スレッドガイドの取付位置により変化するということが発明者らの研究により明らかとなった。したがって、ある特定の機台で最適化したエア噴射圧力が、スレッドガイドの取付位置が異なる他の機台で最適となるとは限らないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、目標位置到達タイミングで緯糸を目標位置に到達させるためのエア噴射圧力を、複数の機台間で一定にすることができるエアジェット織機における緯糸搬送ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエアジェット織機における緯糸搬送ノズルは、緯糸飛走経路を有する変形筬の緯糸飛走経路の入口に向けてエアを噴射することによって緯糸を緯糸飛走経路に射出する、エアジェット織機における緯糸搬送ノズルであって、緯糸を導入して案内する緯糸通路を有するスレッドガイドと、スレッドガイドを収容しスレッドガイドの外周面に沿って緯糸通路の方向にエアを流すエア流路を形成するノズルボディとを備え、緯糸通路の下流側の緯糸経路にエア流路を延長して重ね、スレッドガイドにおける緯糸通路を断面円形とし、スレッドガイドの先端部を緯糸通路の中心軸線に対して斜交する面で切断し、スレッドガイドは、ノズルボディから露出する部位に面の法線方向に対応する方向を表示する表示部を有する。
【0007】
また、表示部が水平方向且つエアジェット織機の前側方向に位置するときに、面の法線方向が、水平方向且つ変形筬から離隔する方向となるように表示部が形成されていてもよい。
また、表示部が水平方向且つエアジェット織機の前側方向に位置するときに、面の法線方向が、水平方向且つ変形筬に接近する方向となるように表示部が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エアジェット織機における緯糸搬送ノズルが、緯糸を導入して案内する緯糸通路を有するスレッドガイドと、スレッドガイドを収容しスレッドガイドの外周面に沿って緯糸通路の方向にエアを流すエア流路を形成するノズルボディとを備え、緯糸通路の下流側の緯糸経路にエア流路を延長して重ね、スレッドガイドにおける緯糸通路を断面円形とし、スレッドガイドの先端部を緯糸通路の中心軸線に対して斜交する面で切断し、スレッドガイドは、ノズルボディから露出する部位に面の法線方向に対応する方向を表示する表示部を有するため、目標位置到達タイミングで緯糸を目標位置に到達させるためのエア噴射圧力を、複数の機台間で一定にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態1のエアジェット織機の概略図である。
図2】本発明の実施の形態1のメインノズルの平面断面図である。
図3図2に示すスレッドガイドの流路形成部の先端部を示す斜視図である。
図4図2に示すスレッドガイドを中心軸線に沿って上流側から見た側面図である。
図5図1に示す変形筬の緯糸飛走経路を上流側から見た側面図である。
図6】スレッドガイド角度Rと、エア圧力との関係を示すグラフである。
図7】本発明の実施の形態2のメインノズルの平面断面図である。
図8図7に示すスレッドガイドを中心軸線に沿って上流側から見た側面図である。
図9】第1の変形例に係る輪状部の位置決め部を示す平面断面図である。
図10図9に示す輪状部の側面図である。
図11】第2の変形例に係る輪状部の位置決め部を示す平面断面図である。
図12図11に示す輪状部の側面図である。
図13】第3の変形例に係る先端部の平面断面図である。
図14】第4の変形例に係る先端部の平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1のエアジェット織機について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、実施の形態1のエアジェット織機の概略図である。エアジェット織機100には、給糸装置20と、給糸装置20から引き出された緯糸21を貯留する貯留ドラム22と、貯留ドラム22の下流側で緯糸21を変形筬30に緯入れする緯入れ装置40とが設けられている。貯留ドラム22の下流側には、緯糸21を貯留ドラム22から解放し、又は緯糸21を係止するための電磁ピン23と、緯糸21が貯留ドラム22から解放されたことを検出するためのバルーンセンサ24とが設けられている。
【0011】
緯入れ装置40には、タンデムノズル60及びメインノズル50が設けられている。タンデムノズル60及びメインノズル50は、エアタンク41から供給される圧縮空気(エア)を噴射する。また、タンデムノズル60及びメインノズル50には、図示しない電磁弁が設けられており、電磁弁の開閉によりエアの噴射及びエアの噴射停止が切り替えられる。タンデムノズル60は、エアを噴射することにより貯留ドラム22から緯糸21を引き出し、下流側に設けられたメインノズル50に射出する。
【0012】
メインノズル50は、タンデムノズル60から射出された緯糸21を変形筬30の緯糸飛走経路31の入口に向けて噴射する。変形筬30の緯糸飛走経路31に沿って、サブタンク35に接続された電磁弁であるサブノズルバルブ34と、サブノズルバルブ34に接続されたサブノズル32とがそれぞれ複数設けられている。サブノズル32は、サブノズルバルブ34の開閉によりエアを噴射することで、緯糸21を緯糸飛走経路31に沿ってメインノズル50の設けられている側、すなわち図1におけるエアジェット織機100の左端の上流側から、右端の下流側へ搬送する。なお、メインノズルは緯糸搬送ノズルを構成している。
【0013】
変形筬30の右端側には、緯糸の飛走状態を検出するRHフィーラ12が設けられている。RHフィーラ12は、エアジェット織機100の主制御装置11に接続されている。主制御装置11は、電磁ピン23、バルーンセンサ24、タンデムノズル60、メインノズル50、サブノズルバルブ34及びRHフィーラ12に接続されており、エアジェット織機100を構成するこれらの要素を制御する。また、バルーンセンサ24及びRHフィーラ12の検出結果は主制御装置11に入力される。さらに、主制御装置11は、ファンクションパネル13に接続されている。ファンクションパネル13は、エアジェット織機100の状態を表示し、またユーザがエアジェット織機100を操作するためのタッチパネルである。
【0014】
図2は、メインノズル50をエアジェット織機100(図1参照)の機台の鉛直方向上側から見たときの平面断面図である。図2に示す矢印Y1方向は、エアジェット織機100の機台の後側方向であって、変形筬30が位置する側の方向であり、矢印Y2方向は、エアジェット織機100の機台の前側方向である。なお、図2以下の説明において、上流側とは図1のエアジェット織機100における左端側に対応し、下流側とは図1のエアジェット織機100おける右端側に対応する。
【0015】
メインノズル50は、円筒形のノズルボディ51と、ノズルボディ51の筒内51aに嵌入された加速管52と、ノズルボディ51の筒内51aに螺合されて収容されたスレッドガイド53と、スレッドガイド53をノズルボディ51に固定するためのロックナット54とを有している。
【0016】
スレッドガイド53の下流側端部は円錐面形状の流路形成部53aを形成している。流路形成部53aには、周方向に所定の間隔を開けて複数配置された位置決めフィン53bが形成されている。また、スレッドガイド53の上流側端部には、ノズルボディ51から露出し、スレッドガイド53の径方向外側に突出している輪状部53fが形成されている。さらに、スレッドガイド53の輪状部53fの下流側には、ノズルボディ51の筒内51aに形成されたノズルボディねじ部51cに螺合する、スレッドガイドねじ部53hが形成されている。スレッドガイド53のスレッドガイドねじ部53hと、輪状部53fとの間の部分は、ノズルボディ51から露出している。スレッドガイドねじ部53hには、ロックナット54が螺合している。また、スレッドガイド53の内部には円形断面を有する緯糸通路53dが形成されている。すなわち、緯糸通路53dは断面円形である。
【0017】
加速管52には、ノズルボディ51に篏合されている基管52aと、基管52aの径方向内側に篏合された細管52bとが形成されている。スレッドガイド53の流路形成部53aの下流端部である先端部53cは、基管52aの内側テーパ部52cの径方向内側に挿入されている。ノズルボディ51の筒内51aと先端部53cとの間、及び内側テーパ部52cと先端部53cの間には、環状のエア流路55が形成されている。すなわち、スレッドガイド53の外周面に沿って緯糸通路53dの方向にエアを流すエア流路が形成されている。加速管52の基管52a及び細管52bは、牽引通路52dを構成している。
【0018】
ノズルボディ51には、筒内51aに連通し、メインノズル50の軸方向に対して直交するように矢印Y2方向に沿って延びる接続ポート51bが形成されている。接続ポート51bには、エア供給パイプ56が接続されている。エア供給パイプ56から供給されたエアは、エア流路55、基管52a及び細管52bを流れる。また、緯糸21はエアによりスレッドガイド53の緯糸通路53dと、加速管52内の牽引通路52d内に導入されて案内される。すなわち、牽引通路52dは、緯糸通路53dの下流側の緯糸経路を構成しており、エア流路55が延長されて重ねられている。
【0019】
図3は、図2に示すスレッドガイド53の流路形成部53aの先端部53cを示す斜視図である。図2及び図3を参照すると、先端部53cには、偏向流入部53eが形成されている。偏向流入部53eは、先端部53cを緯糸通路53dの中心軸線Lに対して斜交し、スレッドガイド53の下流側に面する平面Sで切断して形成されている。すなわち、偏向流入部53eは、単一面である平面S上に配置されている。また、平面Sに対して直交し且つ下流側に延びる法線Mは、エアジェット織機100(図1参照)の機台の前側方向である矢印Y2方向に接近する方向、すなわち変形筬30から離れる方向に延びている。
【0020】
図4は、図2に示すスレッドガイド53を中心軸線Lに沿って上流側から見た側面図である。図2及び図4を参照すると、スレッドガイド53の上流側端部の輪状部53fの外周面には、径方向に沿って形成された円錐状の位置決め部53gが設けられている。図4に示すように位置決め部53gは、スレッドガイド53を中心軸線Lに沿って上流側から見たときに、中心軸線Lに対する偏向流入部53eの最も上流側の点Aの方向と、中心軸線Lに対する位置決め部53gの方向とが一致する線N上にあるように形成される。これにより、位置決め部53gの先端の方向が、スレッドガイド53の偏向流入部53eが形成する平面Sに対して直交する法線Mの接近する方向であるY2方向を表示している。すなわち、位置決め部53gは、緯糸通路53dの中心軸線Lに対して斜交する平面Sの法線M方向に対応する方向を表示する表示部を構成している。
【0021】
この円錐形状の位置決め部53gは、例えば輪状部53fの外周部に対してドリル等の穴開け工具による加工を施すこと等により容易に形成することができる。また、この位置決め部53gは、輪状部53fの外周面に形成されているため、エアジェット織機100を機台前側から見たときの視認性が良好である。
【0022】
次に、本実施の形態1のエアジェット織機の動作について説明する。図1に示すエアジェット織機100が運転される前には、図2に示すメインノズル50が組み立てられる。メインノズル50が組み立てられるときには、ノズルボディ51の筒内51aに加速管52が嵌入される。次に、スレッドガイド53のスレッドガイドねじ部53hに、ロックナット54が螺合される。次に、スレッドガイド53がノズルボディ51の筒内51aに挿入され、スレッドガイドねじ部53hが筒内51aのノズルボディねじ部51cにねじ込まれて螺合される。
【0023】
このとき、スレッドガイド53の輪状部53fに形成された位置決め部53gが、矢印Y2方向、すなわちエアジェット織機100(図1参照)の水平前側方向(に位置するように、スレッドガイド53がノズルボディ51に螺合される。これにより、スレッドガイド53の偏向流入部53eが形成する平面Sに対して直交する法線Mが水平方向且つエアジェット織機100の機台の前側方向(変形筬30から離隔する方向)に接近する方向、すなわち水平方向且つ矢印Y2方向に接近する方向に延び、偏向流入部53eの最も上流側の点Aが矢印Y2に接近する方向、すなわち変形筬30に離隔する方向に位置している。
【0024】
次に、図1に示すように、主制御装置11によりメインノズル50とタンデムノズル60と電磁弁及びサブノズルバルブ34とが制御され、メインノズル50からエアが噴射されることでメインノズル50から緯糸21が緯入れされて変形筬30の緯糸飛走経路31内を緯糸21が飛走する。このとき、緯糸21を緯入れするために貯留ドラム22から緯糸21が解放されたときの基準時間から、緯糸21がRHフィーラ12に検知されるまでの時間を緯入れ目標位置到達タイミングTwとする。
【0025】
次に、本実施の形態1で得られる効果を説明する。図5は、変形筬30(図1参照)の緯糸飛走経路31を、上流側から見た側面図である。緯糸飛走経路31は、上壁面31aと、奥壁面31bと、下壁面31cとにより囲まれた通路である。図2に示すように、平面Sに対して直交する法線Mが水平方向且つ矢印Y2方向に接近する方向に延びている場合にメインノズル50からエアを噴射したときには、図5に示すように、緯糸飛走経路31の最上流側における噴射エアの圧力が最も高い箇所である圧力中心が、点C1に位置している。この点C1は、奥壁面31bから距離P1に位置している。
【0026】
また、本実施の形態1のエアジェット織機100において、次の測定を実施した。メインノズル50のスレッドガイド53をノズルボディ51に螺合させたときの、ノズルボディ51に対するスレッドガイド53の角度であるスレッドガイド角度Rを種々の角度に設定した。なお、スレッドガイド角度Rは、ノズルボディ51とスレッドガイド53との螺合により任意の角度を取り得る。また、該スレッドガイド角度Rの変化に対応して、緯糸通路53dの中心軸線Lに対して斜交する偏向流入部53eの平面Sの向き及び法線Mの延びる方向が変化する。そして、各スレッドガイド角度Rにおいて、予め設定した一定の値の緯入れ目標位置到達タイミングTwで緯糸21をRHフィーラ12に到達させるために必要なメインノズル50のエア圧力を測定した。
【0027】
図6は、この測定におけるスレッドガイド角度Rと、エア圧力との関係を示すグラフである。なお、このときスレッドガイド角度Rは、図2に示すように、偏向流入部53eの平面Sに直交する法線Mが、水平方向且つエアジェット織機100の機台の前側方向に、すなわち水平方向且つ矢印Y2方向に接近する方向に延びている場合を180°、540°、900°……としている。また、後に詳説するように、法線Mが、水平方向且つエアジェット織機100の機台の後側方向に、すなわち水平方向且つ矢印Y1方向に接近する方向に延びている場合を0°、360°、720°……としている。さらに、法線Mが、鉛直方向に且つエアジェット織機100の機台の上側に延びている場合を90°、450°、810°……としている。さらにまた、法線Mが、鉛直方向に且つエアジェット織機100の機台の下側に延びている場合を270°、630°、990°……としている。
【0028】
本実施の形態1のように、図2に示すメインノズル50のスレッドガイド53の偏向流入部53eの平面Sに直交する法線Mが水平方向且つ矢印Y2方向に接近する方向に延びている場合、すなわちスレッドガイド角度Rが180°、540°、900°……である場合には、図5に示すように緯糸飛走経路31の最上流側における噴射されたエアの圧力中心が点C1に位置している。点C1は奥壁面31bから距離P1離れており、このときに緯糸飛走経路31における緯糸21の飛走効率が向上する。そのため、図6に示すように、スレッドガイド角度Rが180°、540°、900°……以外のときと比較して、目標位置到達タイミングTwで緯糸21を目標位置に到達させるために必要なエアの圧力が小さくなり、メインノズル50から噴射するエアの量を低減することができる。
【0029】
また、スレッドガイド53の位置決め部53gを一定の位置にすることで、目標位置到達タイミングTwで緯糸21を目標位置に到達させるために必要なエア噴射圧力を、複数のエアジェット織機100の機台間で一定にすることができる。
【0030】
このように、本実施の形態1に係る緯糸搬送ノズルは、緯糸飛走経路31を有する変形筬30の緯糸飛走経路31の入口に向けてエアを噴射することによって緯糸21を緯糸飛走経路31に射出する、エアジェット織機100における緯糸搬送ノズルであって、緯糸21を導入して案内する緯糸通路53dを有するスレッドガイド53と、スレッドガイド53を収容しスレッドガイド53の外周面に沿って緯糸通路53dの方向にエアを流すエア流路55を形成するノズルボディ51とを備える。また、緯糸通路53dの下流側の牽引通路52dにエア流路55を延長して重ね、スレッドガイド53における緯糸通路53dを断面円形とし、スレッドガイド53の先端部53cを緯糸通路53dの中心軸線Lに対して斜交する平面Sで切断する。そして、スレッドガイド53は、ノズルボディ51から露出する部位に平面Sの法線方向に対応する方向を表示する位置決め部53gを有するため、目標位置到達タイミングTwで緯糸21を目標位置に到達させるためのエア噴射圧力を、複数の機台間で一定にすることができる。
【0031】
また、位置決め部53gが水平方向且つエアジェット織機100の前側方向に位置するときに、平面Sの法線M方向が、水平方向且つ変形筬30から離隔する方向となるように位置決め部53gが形成されているため、この状態でロックナット54を締めることで、目標位置到達タイミングTwで緯糸21を目標位置に到達させるために必要なメインノズル50のエアの圧力が最小となるスレッドガイド角度Rでスレッドガイド53を取り付けることができ、スレッドガイド角度Rの調整が容易となる。
【0032】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2のエアジェット織機について説明する。なお、以下の実施の形態において、実施の形態1の図1図6の参照符号と同一の符号は、同一又は同様な構成要素であるのでその詳細な説明は省略する。本実施の形態2のエアジェット織機は、実施の形態1に係るメインノズル50のスレッドガイド53の偏向流入部53eが配置されている平面Sの角度を変更したものである。
【0033】
図7は、実施の形態2のメインノズル50をエアジェット織機100(図1参照)の鉛直方向上方から見たときの平面断面図である。図7を参照すると、メインノズル50のスレッドガイド53は、先端部53cの偏向流入部53eが配置されている平面Sに対して直交する法線Mが、水平方向且つエアジェット織機100の機台の後側方向、すなわち水平方向且つ矢印Y1方向に接近する方向に延び、偏向流入部53eの最も上流側の点Aが矢印Y1に接近する方向、すなわち変形筬30に接近する方向に位置している。
【0034】
図8は、図7に示すスレッドガイド53を中心軸線Lに沿って上流側から見た側面図である。図7及び図8を参照すると、スレッドガイド53の輪状部53fに設けられた位置決め部53gは、スレッドガイド53を中心軸線Lに沿って上流側から見たときに、中心軸線Lに対する偏向流入部53eの最も上流側の点Aの方向に対して、中心軸線Lを中心に180°回転した方向に形成されている。すなわち、本実施の形態2のスレッドガイド53は実施の形態1のスレッドガイド53に対して、位置決め部53gと点Aとの位置関係が中心軸線Lに対して180°異なっている。その他の構成は実施の形態1と同じである。
【0035】
次に、本実施の形態2で得られる効果を説明する。図7及び図8に示すように、平面Sに対して直交する法線Mが水平方向且つ矢印Y1に接近する方向に延びている場合にメインノズル50からエアを噴射したときには、図5に示すように、緯糸飛走経路31の最上流側における噴射エアの圧力が最も高い箇所である圧力中心が、点C2に位置している。この点C2は、奥壁面31bから距離P2に位置しており、この距離P2は、実施の形態1における噴射エアの圧力中心の点C1と奥壁面31bとの距離P1よりも長い距離である。
【0036】
本実施の形態2のように、図7に示すメインノズル50のスレッドガイド53の偏向流入部53eの平面Sに直交する法線Mが、水平方向且つ矢印Y1方向に接近する方向に延びている場合、すなわちスレッドガイド角度Rが0°、360°、720°……である場合には、図5に示すように緯糸飛走経路31の最上流側における噴射されたエアの圧力中心が、点C2に位置している。このときは、図6に示すように、スレッドガイド角度Rが0°、360°、720°……以外のときと比較して、目標位置到達タイミングTwで緯糸21を目標位置に到達させるために必要なエアの圧力が大きくなるため、メインノズル50による緯糸21の緯入れ制御が容易になるという利点を有する。
【0037】
このように、位置決め部53gが水平方向且つエアジェット織機100の前側方向に位置するときに、平面Sの法線M方向が、水平方向且つ変形筬30に接近する方向となるように位置決め部53gが形成されているため、目標位置到達タイミングTwで緯糸21を目標位置に到達させるための必要なエアの圧力が大きくなり、メインノズル50による緯糸21の緯入れ制御が容易になる。
【0038】
なお、本発明の実施の形態2では、スレッドガイド53を中心軸線Lに沿って上流側から見たときに、中心軸線Lに対する偏向流入部53eの最も上流側の点Aの方向に対して、中心軸線Lを中心に180°回転した方向に位置決め部58gが形成されていたが、これに限定されるものではない。例えば、実施の形態1のスレッドガイド53のように、スレッドガイド53を中心軸線Lに沿って上流側から見たときに、中心軸線Lに対する偏向流入部53eの最も上流側の点Aの方向と、中心軸線Lに対する位置決め部53gの方向とが一致する線N上にあるように形成されるスレッドガイド53を用いて、このスレッドガイド53を偏向流入部53eの最も上流側の点Aが矢印Y1に接近する方向、すなわち変形筬30に接近する方向に位置する角度で固定してもよい。
【0039】
また、本発明の実施の形態1及び実施の形態2に記載のスレッドガイド53を、実施の形態1及び実施の形態2に示したスレッドガイド角度R以外の任意のスレッドガイド角度Rで用いてもよい。
【0040】
また、本発明の実施の形態1及び実施の形態2では、図2及び図4に示すスレッドガイド53の輪状部53fに設けられた位置決め部53gは円錐状に形成されていたが、これに限定されるものではなく、位置決め部53gに代えてその他の形状の位置決め部を設けてもよい。図9は、第1の変形例に係る輪状部53fの位置決め部53iを示す平面断面図であり、図10図9に示す輪状部53fの側面図である。図9及び図10に示すように、位置決め部53iが輪状部53fの径方向に沿って延びる円柱形状に形成されていてもよい。この円柱形状の位置決め部53iは、例えば輪状部53fの外周部に対してドリル等の穴開け工具による加工を施すこと等により容易に形成することができる。
【0041】
図11は、第2の変形例に係る輪状部53fの位置決め部53jを示す平面断面図であり、図12図11に示す輪状部53fの側面図である。図11及び図12に示すように、位置決め部53jはメインノズル50の中心軸線Lに沿って延びる、V字型溝状形状に形成されていてもよい。このV字型溝状形状の位置決め部53jは、輪状部53fの外周面にメインノズル50の中心軸線Lに沿ってV溝加工を行うことにより容易に形成することができる。
【0042】
また、本発明の実施の形態1及び実施の形態2では、スレッドガイド53の位置決め部53g,53i及び53jは輪状部53fに形成されていたが、スレッドガイド53のスレッドガイドねじ部53hと、輪状部53fとの間のノズルボディ51から露出している部分に形成されていてもよい。
【0043】
また、本発明の実施の形態1及び実施の形態2では、スレッドガイド53の先端部53cの偏向流入部53eは、中心軸線Lに対して斜交し、スレッドガイド53の下流側に面する平面Sで切断して形成されていたが、これ以外の形状に形成されていてもよい。図13は、第3の変形例に係る先端部53cの平面断面図である。図13に示すように、スレッドガイド53の先端部53cを、単一面であって先端部53cよりも下流側に中心が位置する円周面D1で切断して偏向流入部53eを形成してもよい。なお、円周面D1は中心軸線L(図2参照)に斜交する面である。
【0044】
図14は、第4の変形例に係る先端部53cの平面断面図である。図14に示すように、先端部53cを、単一面であって先端部53cよりも上流側に中心が位置する円周面D2で切断して偏向流入部53eを形成してもよい。なお、円周面D2は中心軸線L(図2参照)に斜交する面である。
【0045】
図13の第3の変形例及び図14の第4の変形例のように、先端部53cを円周面D1又は円周面D2で切断して偏向流入部53eを形成する場合であっても、円周面D1又は円周面D2に対する法線Mを実施の形態1又は2と同様に水平方向且つエアジェット織機100の変形筬30に離隔する方向又は接近する方向に設定することにより、実施の形態1又は実施の形態2と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0046】
21 緯糸、30 変形筬、31 緯糸飛走経路、51 ノズルボディ、52d 牽引通路(緯糸経路)、53 スレッドガイド、53c 先端部、53d 緯糸通路、53g,53i,53j 位置決め部、55 エア流路、100 エアジェット織機、D1 円周面(斜交する面)、D2 円周面(斜交する面)、L 中心軸線、M 法線、S 平面(斜交する面)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図11
図12
図13
図14