(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】運転診断装置、運転診断方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
G08G1/00 D
(21)【出願番号】P 2021199596
(22)【出願日】2021-12-08
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 雅人
【審査官】秋山 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-231776(JP,A)
【文献】特開2019-174861(JP,A)
【文献】特開平06-191315(JP,A)
【文献】特開2021-125124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、前記プロセッサは、
車両の車両情報を取得し、
取得した前記車両情報に基づいて前記車両の運転者の運転技量の診断を行い、
基準となる運転技量と新たに診断された運転技量とに基づいて、運転技量が変化している運転項目を特定し、
運転技量が変化している運転項目及び前記運転項目に対応する運転技量を提示
し、
前記運転項目ごとに経時的な運転技量の変化を示した情報を提示し、
運転技量が低下している前記運転項目に係る前記車両の駆動装置の作動閾値を変更し、
運転技量が低下している運転項目を補う車両制御の介入度を変更し、
前記作動閾値又は前記介入度を緩和する旨の確認通知を、前記運転者又はその見守り者に対し確認通知を送付し、前記緩和を承諾する旨の通知を受信した場合、前記作動閾値又は前記介入度の変更を許可する
ように構成されている運転診断装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
過去に診断された運転技量と新たに診断された運転技量とに基づいて、運転技量が変化している運転項目を特定する請求項1に記載の運転診断装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
運転技量が低下している運転項目に関するアドバイスを提示する請求項1又は2に記載の運転診断装置。
【請求項4】
車両の車両情報を取得し、
取得した前記車両情報に基づいて前記車両の運転者の運転技量の診断を行い、
基準となる運転技量と新たに診断された運転技量とに基づいて、運転技量が変化している運転項目を特定し、
運転技量が変化している運転項目及び前記運転項目に対応する運転技量を提示
し、
前記運転項目ごとに経時的な運転技量の変化を示した情報を提示し、
運転技量が低下している前記運転項目に係る前記車両の駆動装置の作動閾値を変更し、
運転技量が低下している運転項目を補う車両制御の介入度を変更し、
前記作動閾値又は前記介入度を緩和する旨の確認通知を、前記運転者又はその見守り者に対し確認通知を送付し、前記緩和を承諾する旨の通知を受信した場合、前記作動閾値又は前記介入度の変更を許可する
処理をコンピュータが実行する運転診断方法。
【請求項5】
車両の車両情報を取得し、
取得した前記車両情報に基づいて前記車両の運転者の運転技量の診断を行い、
基準となる運転技量と新たに診断された運転技量とに基づいて、運転技量が変化している運転項目を特定し、
運転技量が変化している運転項目及び前記運転項目に対応する運転技量を提示
し、
前記運転項目ごとに経時的な運転技量の変化を示した情報を提示し、
運転技量が低下している前記運転項目に係る前記車両の駆動装置の作動閾値を変更し、
運転技量が低下している運転項目を補う車両制御の介入度を変更し、
前記作動閾値又は前記介入度を緩和する旨の確認通知を、前記運転者又はその見守り者に対し確認通知を送付し、前記緩和を承諾する旨の通知を受信した場合、前記作動閾値又は前記介入度の変更を許可する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転者の運転技量を診断する運転診断装置、運転診断方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、操舵アシストを行う場合に、運転者の技量レベルが向上または低下したかを判断する車両用運転支援装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置はステアリング操作だけを技量の判定項目としているが、運転者がどの運転項目の技量が向上し、どの運転項目の技量が低下したかを定量的に示すには改善の余地がある。
【0005】
本発明は、運転項目ごとに運転者の運転能力の見える化を図ることを可能とする運転診断装置、運転診断方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の運転診断装置は、プロセッサを備え、前記プロセッサは、車両の車両情報を取得し、取得した前記車両情報に基づいて前記車両の運転者の運転技量の診断を行い、基準となる運転技量と新たに診断された運転技量とに基づいて、運転技量が変化している運転項目を特定し、運転技量が変化している運転項目及び前記運転項目に対応する運転技量を提示するように構成されている。
【0007】
請求項1に記載の運転診断装置は、車両から取得した車両情報を基に、当該車両の運転者の運転診断を行う。具体的に当該運転診断装置では、プロセッサが車両情報に基づいて運転者の運転技量の診断を行い、基準となる運転技量と新たに診断された運転技量とに基づいて、運転技量が変化している運転項目を特定する。そして、プロセッサは、運転技量が変化している運転項目及び当該運転項目に対応する運転技量を、例えば、運転者、並びに、運転者の家族、車両を管理する会社、及びインストラクター等の運転者の見守り者に対して提示する。これにより、当該運転診断装置によれば、運転項目ごとに運転者の運転能力の見える化を図ることができる。
【0008】
請求項2に記載の運転診断装置は、請求項1に記載の運転診断装置において、前記プロセッサは、過去に診断された運転技量と新たに診断された運転技量とに基づいて、運転技量が変化している運転項目を特定する。
【0009】
請求項2に記載の運転診断装置によれば、過去の運転技量との比較により、運転者の運転項目ごとの運転能力の変化を把握させることができる。
【0010】
請求項3に記載の運転診断装置は、請求項1又は2に記載の運転診断装置において、前記プロセッサは、運転技量が低下している運転項目に関するアドバイスを提示する。
【0011】
請求項3に記載の運転診断装置によれば、運転能力の低下に対するアドバイスを運転者及び/又は運転者の見守り者に提示することで、運転者における安全運転の維持を図ることができる。
【0012】
請求項4に記載の運転診断装置は、請求項1~3の何れか1項に記載の運転診断装置において、前記プロセッサは、運転項目ごとに経時的な運転技量の変化を示した情報を提示する。
【0013】
請求項4に記載の運転診断装置によれば、運転項目ごとの運転者の運転能力の変化を提供することができ、これにより、安全運転に対する適切なアドバイスを提供することができる。
【0014】
請求項5に記載の運転診断装置は、請求項1~4の何れか1項に記載の運転診断装置において、前記プロセッサは、運転技量が低下している運転項目に係る前記車両の駆動装置の作動閾値を変更する。
【0015】
請求項5に記載の運転診断装置によれば、運転者の運転技量が低下している場合に車両側で運転者の運転をアシストすることができる。
【0016】
請求項6に記載の運転診断装置は、請求項1~5の何れか1項に記載の運転診断装置において、前記プロセッサは、運転技量が低下している運転項目を補う車両制御の介入度を変更する。
【0017】
請求項6に記載の運転診断装置によれば、運転者の運転技量が低下している場合に車両側で運転者の運転をアシストすることができる。
【0018】
請求項7に記載の運転診断方法は、車両の車両情報を取得し、取得した前記車両情報に基づいて前記車両の運転者の運転技量の診断を行い、基準となる運転技量と新たに診断された運転技量とに基づいて、運転技量が変化している運転項目を特定し、運転技量が変化している運転項目及び前記運転項目に対応する運転技量を提示する処理をコンピュータが実行する。
【0019】
請求項7に記載の運転診断方法は、車両から取得した車両情報を基に、当該車両の運転者の運転診断を行う。具体的に当該運転診断方法では、コンピュータが車両情報に基づいて運転者の運転技量の診断を行い、基準となる運転技量と新たに診断された運転技量とに基づいて、運転技量が変化している運転項目を特定する。そして、コンピュータは、運転技量が変化している運転項目及び当該運転項目に対応する運転技量を、例えば、運転者及び上述した運転者の見守り者に対して提示する。これにより、当該運転診断方法によれば、運転項目ごとに運転者の運転能力の見える化を図ることができる。
【0020】
請求項8に記載のプログラムは、車両の車両情報を取得し、取得した前記車両情報に基づいて前記車両の運転者の運転技量の診断を行い、基準となる運転技量と新たに診断された運転技量とに基づいて、運転技量が変化している運転項目を特定し、運転技量が変化している運転項目及び前記運転項目に対応する運転技量を提示する処理をコンピュータに実行させる。
【0021】
請求項8に記載のプログラムが実行されるコンピュータは、車両から取得した車両情報を基に、当該車両の運転者の運転診断を行う。具体的に当該コンピュータが車両情報に基づいて運転者の運転技量の診断を行い、基準となる運転技量と新たに診断された運転技量とに基づいて、運転技量が変化している運転項目を特定する。そして、コンピュータは、運転技量が変化している運転項目及び当該運転項目に対応する運転技量を、例えば、運転者及び上述した運転者の見守り者に対して提示する。これにより、当該プログラムによれば、運転項目ごとに運転者の運転能力の見える化を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、運転項目ごとに運転者の運転能力の見える化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施形態に係る運転診断システムの概略構成を示す図である。
【
図2】実施形態の車両のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態の車載器の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】実施形態のセンタサーバのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図5】実施形態のセンタサーバの機能構成を示すブロック図である。
【
図6】実施形態のセンタサーバにおいて実行される診断処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】実施形態の車載器において実行される設定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】実施形態の携帯端末又は情報端末において表示される運転技量に係る情報の例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の運転診断装置を含む運転診断システムについて説明する。運転診断システムは、車両の運転者の運転診断を行うと共に、運転診断結果をユーザに通知するシステムである。また、運転診断システムは、運転診断結果に応じて運転者が運転する車両におけるアシスト機能及び安全機能の設定を変更する。
【0025】
(全体構成)
図1に示されるように、本発明の実施形態の運転診断システム10は、車両12と、運転診断装置としてのセンタサーバ30と、携帯端末40と、情報端末42を含んで構成されている。また、車両12には車載器20が搭載されている。車載器20、センタサーバ30、携帯端末40及び情報端末42は、ネットワークNを通じて相互に接続されている。なお、
図1には、1のセンタサーバ30に対して、1台の車両12及び車載器20、1台の携帯端末40、並びに、1台の情報端末42が図示されているが、車両12、車載器20、携帯端末40及び情報端末42の数はこの限りではない。
【0026】
センタサーバ30は、例えば、車両12を製造する製造元、当該製造元が運営する会社などに設置されている。携帯端末40は、車両12の運転者、運転者の家族及び車両12の所有者が所持するスマートフォンが例示される。情報端末42は、車両12がタクシーや運送車両である場合に、当該車両12を管理する管理者向けに設置されたパーソナルコンピューターが例示される。
【0027】
(車両)
図2に示されるように、本実施形態に係る車両12は、車載器20と、複数のECU(Electronic Control Unit)22と、複数の車載機器24と、を含んで構成されている。
【0028】
車載器20は、CPU(Central Processing Unit)20A、ROM(Read Only Memory)20B、RAM(Random Access Memory)20C、車内通信I/F(Interface)20D、及び無線通信I/F20Eを含んで構成されている。CPU20A、ROM20B、RAM20C、車内通信I/F20D、及び無線通信I/F20Eは、内部バス20Gを介して相互に通信可能に接続されている。
【0029】
CPU20Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU20Aは、ROM20Bからプログラムを読み出し、RAM20Cを作業領域としてプログラムを実行する。
【0030】
ROM20Bは、各種プログラム及び各種データを記憶している。本実施形態のROM20Bには、ECU22から車両12の状態及び制御に係る車両情報を収集し、かつ車両12のアシスト機能及び安全機能の設定を行う制御プログラム100が記憶されている。制御プログラム100の実行に伴い、車載器20は、後述する設定処理を含む、各処理を実行する。また、ROM20Bには、後述する車両12の車両制御設定に係る設定情報110が記憶されている。
【0031】
RAM20Cは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。
車内通信I/F20Dは、各ECU22と接続するためのインタフェースである。当該インタフェースは、CANプロトコルによる通信規格が用いられる。車内通信I/F20Dは、外部バス20Hに対して接続されている。
【0032】
無線通信I/F20Eは、センタサーバ30と通信するための無線通信モジュールである。当該無線通信モジュールは、例えば、5G、LTE、Wi-Fi(登録商標)等の通信規格が用いられる。無線通信I/F20Eは、ネットワークNに対して接続されている。
【0033】
ECU22は、ADAS(Advanced Driver Assistance System)-ECU22A、ステアリングECU22B、ブレーキECU22C及びエンジンECU22Dを少なくとも含む。
【0034】
ADAS-ECU22Aは、先進運転支援システムを統括制御する。ADAS-ECU22Aには、車載機器24を構成する車速センサ24A、ヨーレートセンサ24B、及び外部センサ24Cが接続されている。外部センサ24Cは、車両12の周辺環境の検出に用いられるセンサ群とされている。この外部センサ24Cには、例えば、車両12の周囲を撮像するカメラ、探査波を送信し反射波を受信するミリ波レーダ、及び車両12の前方をスキャンするライダ(Laser Imaging Detection and Ranging)等が含まれる。
【0035】
ステアリングECU22Bは、パワーステアリングを制御する。ステアリングECU22Bには、車載機器24を構成する舵角センサ24D及びステアリングアクチュエータ24Eが接続されている。舵角センサ24Dはステアリングホイールの舵角を検出するセンサである。ステアリングアクチュエータ24Eは、運転者の操作に代わり又は介入して車両12の操舵輪を転舵する駆動装置である。
【0036】
ブレーキECU22Cは、車両12のブレーキシステムを制御する。ブレーキECU22Cには、車載機器24を構成するブレーキアクチュエータ24Fが接続されている。ブレーキアクチュエータ24Fは、運転者の操作に代わり又は介入して車両12のブレーキを操作する駆動装置である。
【0037】
エンジンECU22Dは、車両12のエンジンを制御する。エンジンECU22Dには、車載機器24を構成するスロットルアクチュエータ24G及びセンサ類24Hが接続されている。スロットルアクチュエータ24Gは、運転者の操作に代わり又は介入して車両12のスロットルを操作する駆動装置である。センサ類24Hは、エンジンオイルの油温を測定するための油温センサ、エンジンオイルの油圧を測定するための油圧センサ、及びエンジンの回転数を検知する回転センサを含む。
【0038】
図3に示されるように、本実施形態の車載器20では、CPU20Aが、制御プログラム100を実行することで、収集部200、出力部210及び設定変更部220として機能する。
【0039】
収集部200は、車両12の各ECU22から車載機器24の状態、及び車載機器24から得られる車両12の状態に係る車両情報を取得する機能を有している。車両情報は、車速、加速度、ヨーレート、舵角、アクセル開度、ブレーキペダル踏力又はストローク等の情報を含む。また、車両情報は、外部センサ24Cとしてのカメラにより撮像された車両12外部の撮像画像を含んでいてもよい。
【0040】
出力部210は、収集部200が収集した車両情報をセンタサーバ30に向けて出力する機能を有している。
【0041】
設定変更部220は、センタサーバ30から取得した設定情報を基に、車両12における車両制御設定を変更する機能を有している。車両制御設定では、アシスト機能及び安全機能における作動可否、作動閾値、及び運転者の運転に対する介入度が設定項目として設けられており、これらの設定項目は設定情報を基に変更可能とされている。ここで、アシスト機能としては、ブレーキアシスト、アダプディブクルーズコントロール、及びレーンキープアシスト等が例示される。また、安全機能としては、VSC(Vehicle Stability Control)、TRC(Traction Control system)、誤踏み抑制システム等が例示される。
【0042】
(センタサーバ)
図4に示されるように、センタサーバ30は、CPU30A、ROM30B、RAM30C、ストレージ30D及び通信I/F30Eを含んで構成されている。CPU30A、ROM30B、RAM30C、ストレージ30D及び通信I/F30Eは、内部バス30Gを介して相互に通信可能に接続されている。CPU30A、ROM30B、RAM30C及び通信I/F30Eの機能は、上述した車載器20のCPU20A、ROM20B、RAM20C及び無線通信I/F20Eと同じである。なお、通信I/F30Eは有線による通信を行ってもよい。
【0043】
メモリとしてのストレージ30Dは、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、各種プログラム及び各種データを記憶している。本実施形態のストレージ30Dには、処理プログラム150、車種情報DB(データベース)160、履歴情報DB170、ユーザ情報DB180及び助言情報DB190が記憶されている。なお、ROM30Bが処理プログラム150、車種情報DB160、履歴情報DB170、ユーザ情報DB180及び助言情報DB190を記憶してもよい。
【0044】
処理プログラム150は、センタサーバ30を制御するためのプログラムである。処理プログラム150の実行に伴い、センタサーバ30は、車両12の運転者の運転技量を診断する診断処理を含む、各処理を実行する。
【0045】
車種情報DB160は、車種毎の機能、装備、及び諸元等の情報が記憶されたデータベースである。
【0046】
履歴情報DB170には、センタサーバ30に登録されている各運転者の運転診断結果の履歴が記憶されている。
【0047】
ユーザ情報DB180は、運転診断の対象となる運転者の年齢、性別、運転歴等の情報、及び運転診断結果を通知するユーザの通知先等の情報が記憶されている。
【0048】
助言情報DB190は、運転診断結果に応じたアドバイスの情報が記憶されている。例えば、運転診断結果が車両12のブレーキを掛けるタイミングが遅れがちの傾向を示す場合に対応して、車間距離を開けるようにアドバイスする旨の助言情報が設けられている。助言情報は、アドバイスに係るテキストデータのみならず、画像情報及び音声情報を含めることができる。
【0049】
図5に示されるように、本実施形態のセンタサーバ30では、CPU30Aが、処理プログラム150を実行することで、取得部250、診断部260、特定部270、提示部280及び変更指示部290として機能する。
【0050】
取得部250は、車両12の車載器20から、車両12の車両情報を取得する機能を有している。取得部250は、車載器20から任意のタイミングで送信された車両情報を取得する。
【0051】
診断部260は、取得部250が取得した車両情報に基づいて、車両12の運転者の運転技量の診断を行う機能を有している。診断部260は、運転技量として運転項目ごとのスコアを生成する。運転項目は、ステアリング操作、ブレーキ操作及びアクセル操作等の運転者の操作そのものに係る項目、並びに、ふらつき、前方車両との車間距離、加減速等の運転者の運転感覚に係る項目を含む。スコアは、0から100の範囲の数値として算出される。また、スコアに代えて複数の段階に区分されたレベルを生成してもよい。
【0052】
特定部270は、運転技量が変化している運転項目を特定する機能を有している。具体的に特定部270は、基準となる運転技量と、診断部260により新たに診断された運転技量とに基づいて、運転技量が変化している運転項目を特定する。本実施形態では、ある運転者において運転技量が変化している運転項目を特定する場合、特定部270は「基準となる運転技量」として、過去に診断された当該運転者の運転技量を使用する。しかしこの限りではなく、「基準となる運転技量」として、予め比較対象として設定された運転技量、及び同世代の運転者における平均的な運転技量を使用してもよい。
【0053】
提示部280は、運転技量が変化している運転項目及び当該運転項目に対応する運転技量を提示する機能を有している。具体的に、提示部280は、運転技量に係る情報を提示先となるユーザの携帯端末40又は情報端末42に送信する。提示先となるユーザとしては、運転者のみならず、当該運転者の家族、車両12を管理する会社、及びインストラクター等の運転者の見守り者を含む。
【0054】
また、提示部280は、運転技量が低下している運転項目に関するアドバイスを提示することができる(
図8参照)。さらに、提示部280は、運転項目ごとに経時的な運転技量の変化を示した画像を提示することができる(
図8参照)。
【0055】
変更指示部290は、車両12のアシスト機能及び安全機能の設定を変更させる機能を有している。アシスト機能及び安全機能は、駆動装置であるステアリングアクチュエータ24E、ブレーキアクチュエータ24F及びスロットルアクチュエータ24G等の作動閾値を変更することで設定が変更される。本実施形態の変更指示部290は、運転技量が変化している運転項目に係る車両12のアシスト機能及び安全機能に係る作動閾値を変更する。
【0056】
また、アシスト機能及び安全機能自体の作動可否を変更することで、車両制御への介入度を変更することができる。つまり、本実施形態の変更指示部290は、運転技量が低下している運転項目を補うべく、アシスト機能及び安全機能の作動可否を変更する。
【0057】
(制御の流れ)
本実施形態の運転診断システム10で実行される運転診断方法としての処理の流れについて、
図6及び
図7のフローチャートを用いて説明する。車載器20における処理は、車載器20のCPU20Aが、収集部200、出力部210及び設定変更部220として機能することにより実行される。また、センタサーバ30における処理は、センタサーバ30のCPU30Aが取得部250、診断部260、特定部270、提示部280及び変更指示部290として機能することにより実行される。
【0058】
まず、センタサーバ30における診断処理の詳細について説明する。
図6のステップS100において、CPU30Aは車両12、すなわち車載器20から送信された車両情報を取得する。
【0059】
ステップS101において、CPU30Aは運転者を特定する。具体的にCPU30Aは、車両情報と共に車載器20から送信された運転者情報に基づいて運転者を特定する。なお、同ステップにおいて、CPU30Aは、車両情報に基づいて解析された運転傾向から運転者を特定してもよい。
【0060】
ステップS102において、CPU30Aは運転技量判定を実行する。具体的に、CPU30Aは車種情報DB160を基に車両情報に対して車種別の補正を行った上で、スコア化された運転者の運転技量を算出する。
【0061】
ステップS103において、CPU30Aは比較処理を実行する。具体的に、CPU30Aは、運転項目ごとに運転者の過去の運転技量とステップS102において算出された運転技量とを比較する。これにより、運転技量が変化している運転項目が特定される。なお、現在と過去との運転技量のスコアの差が所定値以下の場合は、運転技量が変化しているとはせずに、当該スコアの差が所定値を超えた場合に運転技量が変化しているとして比較処理を行ってもよい。
【0062】
ステップS104において、CPU30Aは通知情報を生成する。具体的に、CPU30Aは、少なくとも運転技量が低下した運転項目及び当該運転項目の運転技量、並びに、助言情報DB190から取得した助言の内容、を通知情報として生成する。
【0063】
ステップS105において、CPU30Aは通知情報を送信する。すなわち、CPU30Aはユーザ情報DB180から取得した通知先であるユーザの携帯端末40及び/又は情報端末42に対して通知情報を送信する。これにより、
図8に示すような、運転診断レポート50が携帯端末40又は情報端末42の画面に表示される。
【0064】
ステップS106において、CPU30Aは車両12に適用される車両制御設定を更新する。これにより、CPU30Aはアシスト機能及び安全機能の作動可否、及び作動閾値の少なくとも一方に変更を加えることができる。
【0065】
ステップS107において、CPU30Aは車両12における車両制御設定を変更したか否かを判定する。CPU30Aは車両制御設定を変更したと判定した場合(ステップS107でYESの場合)、ステップS108に進む。一方、CPU30Aは車両制御設定を変更していないと判定した場合(ステップS107でNOの場合)、ステップS109に進む。
【0066】
ステップS108において、CPU30Aは設定情報を車両12に送信する。詳しくは、CPU30Aは更新された車両制御設定に対応する設定情報を車両12の車載器20に対して送信する。
【0067】
ステップS109において、CPU30Aは運転診断結果を保存する。すなわち、CPU30Aは、運転診断結果である各運転項目ごとの運転技量に係るデータを履歴情報DB170に記憶する。そして、CPU30Aは診断処理を終了させる。
【0068】
次に、車載器20における設定処理の詳細について説明する。
図7のステップS200において、CPU20Aは設定情報を受信したか否かを判定する。CPU20Aは設定情報を受信したと判定した場合(ステップS200でYESの場合)、ステップS201に進む。一方、CPU20Aは設定情報を受信していないと判定した場合(ステップS200でNOの場合)、ステップS200を繰り返す。
【0069】
ステップS201において、CPU20Aは車両制御設定が緩和されるか否かを判定する。CPU20Aは車両制御設定が緩和されると判定した場合(ステップS201でYESの場合)、ステップS202に進む。一方、CPU20Aは車両制御設定が緩和されないと判定した場合(ステップS201でNOの場合)、ステップS204に進む。
【0070】
ステップS202において、CPU20Aは確認通知を送信する。具体的にCPU20Aは、アシスト機能及び安全機能の作動停止や作動閾値の緩和を行うことを運転者の見守り者に確認させる通知を、当該見守り者の携帯端末40及び情報端末42の少なくとも何れかに対して送信する。
【0071】
ステップS203において、CPU20Aは承諾結果を受信したか否かを判定する。承諾結果とは、アシスト機能及び安全機能の作動停止や作動閾値の緩和を行うことが運転者の見守り者に承諾されたことを示す通知であって、確認通知を送信した携帯端末40又は情報端末42から返信される。CPU20Aは承諾結果を受信したと判定した場合(ステップS203でYESの場合)、ステップS204に進む。一方、CPU20Aは承諾結果を受信していないと判定した場合(ステップS203でNOの場合)、ステップS200に戻る。
【0072】
ステップS204において、CPU20Aは車両制御設定の反映を行う。具体的に、CPU20Aは対象となるアシスト機能及び安全機能の作動停止や作動閾値を変更させる。
【0073】
ステップS205において、CPU20Aは車両制御設定の変更完了を通知する。具体的に、CPU20Aはアシスト機能及び安全機能の設定が変更された旨の情報を、運転者の見守り者の携帯端末40又は情報端末42に対して送信する。また、車両12のメータディスプレイ等にアシスト機能及び安全機能の設定が変更された旨を表示させる。そして、ステップS200に戻る。
【0074】
(まとめ)
本実施形態の運転診断装置としてのセンタサーバ30は、車両12から取得した車両情報を基に、車両12の運転者の運転診断を行う。具体的にセンタサーバ30では、CPU30Aが車両情報に基づいて運転者の運転技量の診断を行い、基準となる運転技量と新たに診断された運転技量とに基づいて、運転技量が変化している運転項目を特定する。そして、CPU30Aは、運転技量が変化している運転項目及び当該運転項目に対応する運転技量を、例えば、運転者、及び運転者の見守り者に対して提示する。これにより、本実施形態によれば、運転項目ごとに運転者の運転能力の見える化を図ることができる。
【0075】
特に本実施形態のセンタサーバ30では、過去に診断された運転技量と新たに診断された運転技量とに基づいて、運転技量が変化している運転項目を特定する。そのため、本実施形態によれば、過去の運転技量との比較により、運転者の運転項目ごとの運転者の運転能力の変化を把握させることができる。
【0076】
また、本実施形態によれば、運転項目ごとに経時的な運転技量の変化が示される。例えば、
図8に示されるように、運転診断結果として携帯端末40又は情報端末42の画面に運転診断レポート50を表示させた場合、全ての運転項目を加味した総合評価52の他に、運転項目ごとのスコアをまとめた運転項目別結果54が表示される。運転項目別結果54では、前回(例えば6カ月前)からのスコアの変化を示すことで、経時的な運転技量の変化が提供される。つまり、本実施形態では運転項目ごとの運転者の運転能力の変化を提供することができ、これにより、安全運転に対する適切なアドバイス(例えば、
図8のアドバイス56)を提供することができる。
【0077】
また、本実施形態のセンタサーバ30では、CPU30Aは、運転技量が低下している運転項目に関するアドバイスを提示する。
図8の例では、車間距離の運転項目に係る運転技量の低下に対して、車間距離を開けるよう旨のアドバイス56が提供される。そのため、本実施形態によれば、運転能力の低下に対するアドバイスを運転者に提示することで、又は、運転者の見守り者に提示し、見守り者から運転者にアドバイスを行うことで、車両12の安全運転の維持を図ることができる。なお、
図8に示されるように、車間距離に係る運転技量の低下に関するアドバイス56に合わせて、運転技量の低下から読み取れる事象(例えば、認知力の低下)に係るコメント58を見守り者に提示することで、見守り者に対し運転者の運転能力が低下している原因を提供することができる。
【0078】
また、本実施形態のセンタサーバ30は、運転技量が低下している運転項目に係る車両12の駆動装置の作動閾値を変更したり、当該運転項目を補う車両制御の介入度を変更したりする。そのため、本実施形態によれば、運転者の運転技量が低下している場合に車両12側で運転者の運転をアシストすることができる。
[備考]
上記実施形態では、センタサーバ30を運転診断装置としたが、この限りではなく、車載器20を運転診断装置としてもよい。この場合、車載器20は当該車載器20が搭載された車両12の車両情報を収集し、診断処理を実行し、設定処理を実行する。
【0079】
なお、上記実施形態でCPU20A及びCPU30Aがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した各種処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、上述した各処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0080】
また、上記実施形態において、各プログラムはコンピュータが読み取り可能な非一時的記録媒体に予め記憶(インストール)されている態様で説明した。例えば、車載器20における制御プログラム100はROM20Bに予め記憶され、センタサーバ30における処理プログラム150はストレージ30Dに予め記憶されている。しかしこれに限らず、各プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0081】
上記実施形態で説明した処理の流れは、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【符号の説明】
【0082】
12 車両
24E ステアリングアクチュエータ(駆動装置)
24F ブレーキアクチュエータ(駆動装置)
24G スロットルアクチュエータ(駆動装置)
30 センタサーバ(運転診断装置)
30A CPU(プロセッサ)
150 処理プログラム(プログラム)