(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】金型ユニットおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G01K 1/14 20210101AFI20241112BHJP
G01K 7/02 20210101ALI20241112BHJP
G01K 1/143 20210101ALI20241112BHJP
B22D 17/22 20060101ALI20241112BHJP
B22C 9/00 20060101ALI20241112BHJP
B29C 33/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
G01K1/14 L
G01K7/02 Q
G01K1/143
B22D17/22 B
B22C9/00 E
B29C33/00
(21)【出願番号】P 2021200571
(22)【出願日】2021-12-10
【審査請求日】2024-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】武田 章
(72)【発明者】
【氏名】北岡 岳史
(72)【発明者】
【氏名】高坂 博宣
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-003731(JP,A)
【文献】特開平05-209794(JP,A)
【文献】特開昭60-261650(JP,A)
【文献】実開昭56-072236(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/14, 1/143
G01K 1/16
G01K 7/02
B22D 17/22
B22C 9/00
B29C 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面から溶融材料が注入される空間を画定する内表面まで貫通する貫通孔を有する金型と、
前記金型と同じ材料で形成され、前記貫通孔における前記金型の内表面の側の端部を塞ぐように、当該金型に溶接部によって固定される蓋と、
折り返し部を有し、前記貫通孔に通された状態で、前記折り返し部の先端が前記蓋における前記金型の外表面の側の面に固定される熱電対素線と、
前記貫通孔に通された状態で、前記熱電対素線を覆う筒状部材と、
前記筒状部材を支持する支持部材と、
を備え、
前記筒状部材は、前記蓋と、前記支持部材との間に固定され、
前記貫通孔と、前記蓋とは、前記溶接部以外の領域において非接触である
ことを特徴とする金型ユニット。
【請求項2】
前記貫通孔が、前記金型の内表面の側の端部に、前記貫通孔の他の部分よりも拡径された切り欠き部を有する段付き形状である、請求項1に記載の金型ユニット。
【請求項3】
前記蓋が、前記貫通孔の切り欠き部に、前記金型の内表面と略面一となるように配置される、請求項2に記載の金型ユニット。
【請求項4】
前記蓋の周面と前記切り欠き部の周面との間、および、前記蓋の前記金型の外表面の側の面と前記切り欠き部の底面との間が、前記溶接部以外の領域において非接触である、請求項3に記載の金型ユニット。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の金型ユニットの製造方法であって、
蓋における金型の外表面の側の面に熱電対素線を固定する工程と、
前記熱電対素線を筒状部材で覆い、前記筒状部材を前記蓋における前記金型の外表面の側の面に固定し、測定治具を作製する工程と、
前記測定治具を前記金型の貫通孔に挿入する工程と、
前記貫通孔と前記蓋とが非接触となり、かつ、前記蓋が、前記金型の内表面と略面一となる位置に、支持部材によって、前記測定治具を配置する工程と、
前記蓋と、前記金型とを、前記金型の内表面の側の端部において溶接接合する工程と、
を含むことを特徴とする金型ユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金型ユニットおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に金型の温度を測定する場合、特許文献1に開示されているように、金型のキャビティー(空間)を画定する内表面(キャビティー面)の近傍まで到達するように当該金型に形成された測定穴の内部にシース型熱電対を挿入し、当該測定穴の底面にシース型熱電対の先端を接触させることで、シース型熱電対を介して金型の温度を測定している。このようなシース型熱電対は、有底筒状体のシースにおける内側底面に熱電対素線の折り返し部の先端が固定された構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、一般的なシース型熱電対は、シースの内側底面に熱電対素線の折り返し部の先端が固定された構成であるため、シースを介して金型の温度が測定されることになる。このとき、金型からシースに伝達された熱が当該シースで放熱され、それ故に、金型の熱が熱電対素線に良好に伝達されず、金型の温度を正確に測定できない場合があった。
【0005】
本開示は、このような課題を鑑みてなされたものであり、金型の温度の測定精度を向上可能な金型ユニットおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る金型ユニットは、
外表面から溶融材料が注入される空間を画定する内表面まで貫通する貫通孔を有する金型と、
前記金型と同じ材料で形成され、前記貫通孔における前記金型の内表面の側の端部を塞ぐように、当該金型に溶接部によって固定される蓋と、
折り返し部を有し、前記貫通孔に通された状態で、前記折り返し部の先端が前記蓋における前記金型の外表面の側の面に固定される熱電対素線と、
前記貫通孔に通された状態で、前記熱電対素線を覆う筒状部材と、
前記筒状部材を支持する支持部材と、
を備え、
前記筒状部材は、前記蓋と、前記支持部材との間に固定され、
前記貫通孔と、前記蓋とは、前記溶接部以外の領域において非接触である。
【0007】
このように、本実施形態の金型ユニットでは、上述したシース型熱電対を用いた場合と異なり、シースを介さずに金型の温度測定を行うことができるため、測定精度をより向上させることができる。また、熱電対素線を覆う筒状部材が蓋と支持部材とで固定された構成となっているため、蓋と金型との間に断熱空間となる隙間(クリアランス)を十分に確保できる。このため、蓋と金型との接触に由来する放熱を抑制できるため、より正確に金型温度を測定できる。
【0008】
ここで、前記貫通孔は、前記金型の内表面の側の端部に、前記貫通孔の他の部分よりも拡径された切り欠き部を有する段付き形状であることが好ましい。
【0009】
また、前記蓋は、前記貫通孔の切り欠き部に、前記金型の内表面と略面一となるように配置されることが好ましい。
【0010】
さらに、前記蓋の周面と前記切り欠き部の周面との間、および、前記蓋の前記金型の外表面の側の面と前記切り欠き部の底面との間が、前記溶接部以外の領域において非接触であることが好ましい。
【0011】
本開示の一態様に係る金型ユニットの製造方法は、
蓋における金型の外表面の側の面に熱電対素線を固定する工程と、
前記熱電対素線を筒状部材で覆い、前記筒状部材を前記蓋における前記金型の外表面の側の面に固定し、測定治具を作製する工程と、
前記測定治具を前記金型の貫通孔に挿入する工程と、
前記貫通孔と前記蓋とが非接触となり、かつ、前記蓋が、前記金型の内表面と略面一となる位置に、支持部材によって、前記測定治具を配置する工程と、
前記蓋と、前記金型とを、前記金型の内表面の側の端部において溶接接合する工程と、
を含む。
【0012】
このように、本実施形態の金型ユニットの製造方法では、金型の貫通孔と蓋とが非接触となるように、筒状部材に覆われた熱電対素線を蓋と支持部材とで固定した状態で、蓋と金型とを溶接する。このため、得られた金型ユニットは、蓋と金型との間に断熱空間となる隙間を十分に確保でき、両者の接触に由来する放熱を抑制できるため、より正確に金型温度を測定できる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、金型の温度の測定精度を向上可能な金型ユニットおよびその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1(a)は、本実施形態の金型ユニットの蓋近傍をキャビティー側からみた概略図であり、
図1(b)は、
図1(a)のA-A矢視断面図である。
【
図2】本実施形態の金型ユニットを示す模式的断面図である。
【
図3】本実施形態の金型ユニットと従来の金型ユニットを用いて測定した金型温度履歴の一例を示すグラフである。
【
図4】本実施形態の金型ユニットの製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上述したように、一般的なシース型熱電対を用いた場合は、シースを介して金型の温度を測定するため、金型からシースに伝達された熱が当該シースで放熱され、金型の熱が熱電対素線に良好に伝達されず、金型の温度を正確に測定できない場合があった。
【0016】
一方、本実施形態の金型ユニットを用いた金型温度測定方法では、熱電対素線により直接、金型と同一の材料で構成される蓋の温度を測定できるため、シースによる放熱を回避できる。また、本実施形態の金型ユニットでは、蓋(薄板、板状部材)を支持部材により支持された筒状部材(円管)で金型の外表面側(金型の裏側)から支えている。このため、蓋と金型との間の隙間(空気断熱層)を確実に確保することができるため、熱が分散せず、より正確な温度測定が可能となる。
【0017】
以下、本開示を適用した具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本開示が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0018】
図1(a)は、本実施形態の金型ユニットの蓋近傍をキャビティー側から見た図である。
図1(b)は、
図1(a)のA-A矢視断面図である。また、
図2は、本実施形態の金型ユニットを示す模式的断面図である。
【0019】
本実施形態の金型ユニット1は、
図1(a)、(b)及び
図2に示すように、金型2と、後述する測定治具と、当該測定治具(具体的には、筒状部材5)を支持する支持部材8とを備えている。金型2は、例えば、ダイカスト鋳造などに用いられる金型である。但し、金型2は、ダイカスト鋳造に用いられる金型に限らず、溶融材料が注入される空間を画定するキャビティーを形成する金型であればよい。
【0020】
金型2は、キャビティーの少なくとも一部を形成する内表面(キャビティー面)2a、当該内表面2aに対向する外表面2f、及び、外表面2fから内表面2aまで貫通する貫通孔2bを備えている。貫通孔2bは、例えば、円柱形状であり、貫通孔2bの周面における内表面2aの側の端部に拡径された切り欠き部2cが形成されている。つまり、貫通孔2bは、内表面2aの側の端部が他の部分に対して直径が大きい段付き形状である。但し、貫通孔2bは、円柱形状でなくてもよく、多角形状でもよい。このように、本実施形態の金型ユニット1は、貫通孔2bが、金型2の内表面2aの側の端部に、貫通孔2bの他の部分よりも拡径された切り欠き部2cを有する段付き形状であることが好ましい。
【0021】
測定治具(熱電対装置)は、熱電対素線3及び蓋4を備えている。蓋4は、金型2と等しい材料で形成されており、金型2の貫通孔2bにおける内表面2aの側の端部を塞ぐ。詳細には、蓋4は、
図1(a)に示すように、円板形状であり、
図2に示すように、金型2の貫通孔2bの切り欠き部2cの直径R1に対して、若干、小さい直径R2を有する。そして、蓋4は、金型2の貫通孔2bの切り欠き部2cの深さD1に対して、若干、薄い厚さD2を有する。
これらの長さR1、R2、D1及びD2は、本発明の効果が得られる範囲で適宜設定でき、特に限定されない。なお、本実施形態の金型ユニットでは、金型2の温度が蓋4の厚さ方向に素早く伝達され、かつ金型2への溶融材料の注入圧力に耐え得る厚さに形成することができる。例えば、蓋4の厚さは、2mm程度とすることができる。しかしながら、蓋4の厚さは、金型2に注入される溶融材料の注入圧等に応じて、適宜、変更することができる。
【0022】
このような蓋4は、金型2の貫通孔2bの切り欠き部2cに収容され、蓋4における内表面2aの側に配置される一方の面4aが金型2の内表面2aと略面一に配置された状態で、蓋4における内表面2aの側の角部が金型2に溶接接合されている。このように、本実施形態の金型ユニット1では、金型2と同じ材料で形成される蓋4が、貫通孔2bにおける金型2の内表面2aの側の端部を塞ぐように、金型2に溶接部(第3の溶接部)7によって固定されている。また、蓋4は、上述したように、貫通孔2bの切り欠き部2cに、金型2の内表面2aと略面一となるように配置されることが好ましい。
【0023】
なお、本実施形態の金型ユニットでは、熱電対素線3を覆う筒状部材5が、貫通孔2bに通された状態で、蓋4と、筒状部材5を支持する支持部材8との間に例えば溶接により固定されている。
筒状部材5及び支持部材8をそれぞれ構成する材料は、特に限定されず、本発明の効果が得られる範囲で適宜従来公知の材料を使用できる。
筒状部材5の形状は、熱電対素線3を覆うことができ、蓋4と支持部材8とで固定されることができれば、特に限定されず、例えば、中空円柱形状、中空多角柱形状とすることができる。
支持部材8の形状も筒状部材5を支持固定できるものであれば、特に限定されず、様々な形状を採用できる。支持部材8の形状は例えば、円柱形状、多角柱形状とすることができる。支持部材8の筒状部材5を固定する側の面は、固定される筒状部材5の開口面積よりも大きい面積を有している。
【0024】
上述した構成を有する本実施形態の金型ユニットは、蓋4と金型2における貫通孔2bの切り欠き部2cとの間に隙間、すなわち、断熱空間6が形成されている。詳細には、蓋4の周面4cと金型2における貫通孔2bの切り欠き部2cの周面2dとの間、及び蓋4の一方の面4aに対して逆側の他方の面4bと金型2における貫通孔2bの切り欠き部2cの底面2eとの間に断熱空間6が形成されている。このように、本実施形態の金型ユニットでは、貫通孔2bと蓋4とは、例えば、蓋4の周面4cと切り欠き部2cの周面2dとの間、および、蓋4の金型2の外表面2fの側の面(他方の面4b)と切り欠き部2cの底面2eとの間が、溶接部7以外の領域において非接触となっている。すなわち、本実施形態の金型ユニット1は、支持部材8で支持された筒状部材5で蓋4を支えて、蓋4を金型2から浮かせた状態で配置し、蓋の側面(周面4c)及び底面(他方の面4b)は、金型2との間に隙間が設けられている。
【0025】
これにより、金型ユニット1を用いて溶融材料を成形する際に、蓋4に伝わった熱が溶接部7を介して金型2に伝わる構成とされている。言い換えれば、蓋4の周面4c全域及び他方の面4bから金型2に伝熱され難い構成とされている。
【0026】
熱電対素線3は、略U字形状に形成されており、折り返し部3aを備えている。熱電対素線3の材料としては、一般的な熱電対素線と等しい材料で構成することができ、例えば、熱電対素線3の周面の一部が絶縁性の被覆材で被覆されていてもよい。熱電対素線3は、貫通孔2bに通された状態で、熱電対素線3の折り返し部3aの先端が、蓋4における金型2の外表面2fの側の面、すなわち、蓋4の他方の面4bに、例えば溶接により固定されている。
【0027】
なお、金型温度の測定精度を向上させる方法としては、例えば、溶接部7を形成する際の収縮を利用する方法も考えられる。この方法の場合、溶接部7の収縮によって、蓋4が金型2のキャビティーの側に引き込まれ、蓋4の他方の面4bと金型2における貫通孔2bの切り欠き部2cの底面2eとの間に隙間が形成される。しかしながら、この方法では溶接による収縮度合によって、上記隙間の間隔が左右されてしまう。このため、当該隙間の形成が不十分であると、蓋4と金型2との隙間が十分に確保できずに接触部にて伝熱し熱が分散する可能性がある。一方、本実施形態の金型ユニットでは、支持部材8と蓋4とで、熱電対素線3を覆う筒状部材5を固定することで、蓋4と金型2との接触面積を減少させ、貫通孔2bと蓋4との間に十分な隙間(断熱空間)を確実に確保できるため、より正確に金型温度を測定できる。
【0028】
ここで、
図3に、本実施形態の金型ユニットと従来の金型ユニットを用いて測定した金型温度履歴のグラフの一例を示す。このグラフに示すように、本実施形態の金型ユニットを用いた熱電対高精度測定方法では、従来の方法と比較して、金型温度(蓋に入熱する温度)がよりシャープな形状で測定できており、その時点の金型温度をより正確に測定できていることが分かる。
【0029】
図4に、本実施形態の金型ユニットの製造方法を説明するための図を示す。本実施形態の金型ユニットの製造方法は、上述した本実施形態の金型ユニットを製造するための方法であり、以下の工程を含む。なお、
図1~
図2に記載の本実施形態の金型ユニットも参照されたい。
・蓋4における金型2の外表面2fの側の面に熱電対素線3を固定する工程(熱電対素線固定工程)。
・熱電対素線3を筒状部材5で覆い、筒状部材5を蓋4における金型2の外表面2fの側の面に固定し、測定治具11を作製する工程(測定治具作製工程)。
・測定治具11を金型2の貫通孔2bに挿入する工程(測定治具挿入工程)。
・貫通孔2bと蓋4とが非接触となり、かつ、蓋4が、金型2の内表面2aと略面一となる位置に、支持部材8によって、測定治具11を配置する工程(測定治具配置工程)。
・蓋4と、金型2とを、金型2の内表面2aの側の端部において溶接接合する工程(溶接工程)。
【0030】
具体的には、まず、
図4(a)に示すように、蓋4における金型2の外表面2fの側の面に熱電対素線3を固定する(熱電対素線固定工程)。固定方法は特に限定されないが、ここでは、第1の溶接部9において、蓋4に、熱電対素線3を溶接接合している。
【0031】
次に、
図4(b)に示すように、筒状部材5を矢印の方向に移動させ、熱電対素線3を筒状部材5で覆う。そして、
図4(c)に示すように、筒状部材5を蓋4における金型2の外表面2fの側の面に固定し、測定治具11を作製する(測定治具作製工程)。この際、筒状部材5の金型2への固定方法は特に限定されないが、ここでは、第2の溶接部10において、筒状部材5の蓋4側の先端を蓋4に溶接接合している。
【0032】
続いて、
図4(d)に示すように、矢印に示す方向に測定治具11を移動させ、測定治具11を金型2の貫通孔2bに挿入する(測定治具挿入工程)。さらに、
図4(e)に示すように、貫通孔2bと蓋4とが非接触となり、かつ、蓋4が、金型2の内表面2aと略面一となる位置に、支持部材8によって、測定治具11を配置する(測定治具配置工程)。この際、支持部材8で支持された筒状部材5で蓋4を支えて、蓋4を金型2から浮かせた状態で配置し、蓋の側面及び底面(他方の面4b)は、金型2との間に隙間(例えば、隙間12)が設けられるようにする。続いて、
図4(f)に示すように、蓋4と、金型2とを、金型2の内表面2aの側の端部(第3の溶接部7)において溶接接合する(溶接工程)。
【0033】
そして、熱電対素線3の端部を夫々、図示を省略した測定器に電気的に接続すると、金型2の温度(即ち、金型2の内表面2a近傍の温度)を測定可能な状態にすることができる。このような金型ユニット1において、金型2のキャビティー内に溶融材料が注入されると、蓋4を介して金型2の内表面2a近傍の温度が測定される。
【0034】
上記製造方法より得られる本実施形態の金型ユニット1では、シース型熱電対を用いた場合と異なり、シースを介さずに金型の温度測定を行うことができるため、測定精度を向上させることができる。また、熱電対素線を覆う筒状部材が蓋と支持部材とで固定された構成となっているため、蓋と金型との間に断熱空間となる隙間(クリアランス)を十分に確保できる。このため、蓋4に伝わった熱が金型2に伝わる伝熱経路が溶接部7に限られ、蓋4から金型2への伝熱を抑制することができる。また、蓋4を金型2と同じ材料で形成している。これにより、金型2の内表面2a近傍の温度を精度良く測定することができる。
【0035】
本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 金型ユニット
2 金型
2a 内表面(キャビティー面)
2b 貫通孔
2c 切り欠き部
2d 金型における貫通孔の切り欠き部の周面
2e 金型における貫通孔の切り欠き部の底面
2f 外表面
3 熱電対素線
3a 折り返し部
4 蓋
4a 蓋の一方の面
4b 蓋の他方の面
4c 蓋の周面
5 筒状部材
6 断熱空間
7 溶接部(第3の溶接部)
8 支持部材
9 第1の溶接部
10 第2の溶接部
11 測定治具
12 隙間