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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】エンジンシステム
(51)【国際特許分類】
   F02D 19/08 20060101AFI20241112BHJP
   F02D 17/02 20060101ALI20241112BHJP
   F02D 19/02 20060101ALI20241112BHJP
   F02D 19/06 20060101ALI20241112BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20241112BHJP
   F02M 21/04 20060101ALI20241112BHJP
   F02M 27/02 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
F02D19/08 B
F02D17/02 G
F02D19/02 B
F02D19/02 C
F02D19/06 B
F02D19/08 C
F02M21/02 G
F02M21/02 K
F02M21/02 N
F02M21/04 F
F02M27/02 U
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021208033
(22)【出願日】2021-12-22
(65)【公開番号】P2023092809
(43)【公開日】2023-07-04
【審査請求日】2024-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】中谷 規之介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀明
(72)【発明者】
【氏名】河内 浩康
(72)【発明者】
【氏名】竹内 正
(72)【発明者】
【氏名】竹内 秀隆
(72)【発明者】
【氏名】本間 隆行
(72)【発明者】
【氏名】松本 祥平
(72)【発明者】
【氏名】久保 秀人
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-159241(JP,A)
【文献】特開2021-14393(JP,A)
【文献】特開2001-65335(JP,A)
【文献】特開平6-81636(JP,A)
【文献】国際公開第2022/049870(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 19/08
F02D 17/02
F02D 19/02
F02D 19/06
F02M 21/02
F02M 21/04
F02M 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスが水素と共に燃焼するエンジンと、
前記エンジンを始動させるスタータと、
前記エンジンに供給される空気が流れる吸気通路と、
前記エンジンで発生した排気ガスが流れる排気通路と、
前記吸気通路に配設され、前記エンジンに供給される空気の流量を制御する第1流量制御弁と、
前記エンジンに前記燃料ガスを供給する第1燃料供給弁と、
前記燃料ガスを前記水素に分解する触媒を有し、前記燃料ガスを改質して前記水素を含有した改質ガスを生成する改質器と、
前記改質器に供給される空気が流れる第1空気流路と、
前記第1空気流路に配設され、前記改質器に供給される空気の流量を制御する第2流量制御弁と、
前記改質器に前記燃料ガスを供給する第2燃料供給弁と、
前記改質器により生成された前記改質ガスが前記エンジンに向けて流れる改質ガス流路と、
前記燃料ガスを着火させる点火部を有し、前記触媒を加熱するための燃焼ガスを発生させる燃焼器と、
前記燃焼器に供給される空気が流れる第2空気流路と、
前記燃焼器に前記燃料ガスを供給する第3燃料供給弁と、
外気温を検出する外気温検出部と、
前記触媒の温度を検出する触媒温度検出部と、
前記燃焼器の動作環境を検出する動作環境検出部と、
前記外気温検出部により検出された前記外気温と前記触媒温度検出部により検出された前記触媒の温度と前記動作環境検出部により検出された前記燃焼器の動作環境とに基づいて、前記燃焼器の燃焼時間を決定する燃焼時間決定部と、
前記エンジンの始動時に、前記スタータ及び前記点火部をON制御すると共に、前記第1燃料供給弁、前記第2燃料供給弁、前記第3燃料供給弁、前記第1流量制御弁及び前記第2流量制御弁を開くように制御し、その後前記燃焼時間決定部により決定された前記燃焼時間が経過すると、前記点火部をOFF制御すると共に、前記第3燃料供給弁を閉じるように制御する始動制御部とを備えるエンジンシステム。
【請求項2】
前記燃焼時間決定部は、前記外気温に応じた第1時間と前記触媒の温度に応じた第2時間と前記燃焼器の動作環境に応じた第3時間とを設定し、予め決められた基準時間に前記第1時間、前記第2時間及び前記第3時間を加算することにより、前記燃焼時間を決定する請求項1記載のエンジンシステム。
【請求項3】
前記燃焼器の動作環境は、前記燃焼器に供給される前記燃料ガス及び前記空気の少なくとも一方の流量または前記空気に含まれる酸素の濃度に関する状態量である請求項1または2記載のエンジンシステム。
【請求項4】
前記スタータに電力を供給するバッテリを更に備え、
前記動作環境検出部は、前記燃焼器に供給される前記燃料ガス及び前記空気の少なくとも一方の流量または前記空気に含まれる酸素の濃度に関する状態量として、前記バッテリの電圧を検出する請求項3記載のエンジンシステム。
【請求項5】
液体の燃料を気化させて前記燃料ガスを生成する気化器を更に備え、
前記動作環境検出部は、前記燃焼器に供給される前記燃料ガス及び前記空気の少なくとも一方の流量または前記空気に含まれる酸素の濃度に関する状態量として、前記気化器の温度または前記気化器により生成された前記燃料ガスの圧力を検出する請求項3記載のエンジンシステム。
【請求項6】
前記動作環境検出部は、前記燃焼器に供給される前記燃料ガス及び前記空気の少なくとも一方の流量または前記空気に含まれる酸素の濃度に関する状態量として、前記第2空気流路を流れる前記空気の圧力を検出する請求項3記載のエンジンシステム。
【請求項7】
前記燃焼器の動作環境は、前記改質器に要求される前記水素の生成量に関する状態量である請求項1または2記載のエンジンシステム。
【請求項8】
前記動作環境検出部は、前記改質器に要求される前記水素の生成量に関する状態量として、前記エンジンを冷却する冷却水の温度または前記エンジン内のエンジンオイルの温度を検出する請求項7記載のエンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエンジンシステムとしては、例えば特許文献1に記載されているような技術が知られている。特許文献1に記載のエンジンシステムは、機関本体と、この機関本体の各気筒の吸気ポートに接続された吸気枝管と、機関本体の各機関吸気通路に向かってアンモニアを噴射するアンモニア噴射弁と、液体のアンモニアから水素を生成する水素発生装置と、機関本体の各機関吸気通路に向かって水素を噴射する水素噴射弁とを備えている。水素発生装置は、液体のアンモニアが貯留されたタンクと、液体のアンモニアを加熱して気化させる蒸発器と、この蒸発器で生成された気体のアンモニアの一部がアンモニア噴射弁に向けて流れる供給管と、蒸発器で生成された気体のアンモニアを分解する分解器と、この分解器に供給される空気が流れる流入管と、分解器により生成された水素が水素噴射弁に向けて流れる供給管と、分解器の触媒を加熱する電気ヒータとを有している。
【0003】
また、特許文献2には、改質システムが記載されている。特許文献2に記載の改質システムは、燃焼触媒及び改質触媒を有する改質器と、この改質器と連結された供給管と、この供給管に設けられ、アンモニアガス及び空気を供給管内に導入するガス導入部と、このガス導入部により供給管内に導入されたアンモニアガスを着火させる点火部と、改質器の温度を検出する温度センサと、起動時に、アンモニアガス及び空気を供給管内に供給すると共に点火部を点火させる第1制御部と、この第1制御部による制御処理が実行された後、改質器の温度が規定温度以上になると、供給管内へのアンモニアガス及び空気の供給を停止する第2制御部とを備えている。
【0004】
また、特許文献3には、触媒燃焼装置が記載されている。特許文献3に記載の触媒燃焼装置は、触媒燃焼部が内蔵された燃焼筒と、燃焼筒の混合室内に液体燃料を噴霧するメインインジェクタと、燃焼筒の混合室内に燃焼用空気を供給するためのメイン空気導入口と、始動時に燃料の燃焼によって触媒燃焼部を予熱する補助バーナと、自動車の車室外の温度または触媒燃焼装置の内部の温度を検出する温度センサと、始動時に、温度センサにより検出される外気温度または装置の内部温度に応じて補助バーナの予熱時間を設定する予熱時間設定手段を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-211155号公報
【文献】特開2021-95323号公報
【文献】特開2001-65335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のようなエンジンシステムにおいて、上記特許文献2,3に記載の技術を利用して改質器の触媒を加熱する場合には、以下の問題点が存在する。即ち、上記特許文献2に記載のように、温度センサ等の検出値を用いたフィードバック制御では、制御応答が間に合わないため、触媒を過昇温させる可能性がある。また、上記特許文献3に記載のように、外気温度または装置の内部温度に応じて燃焼器の燃焼時間を設定するだけでは、燃焼器の動作環境によっては適切な燃焼時間が得られない。このため、触媒の昇温不足が発生し、所望の水素量が生成されないことがある。
【0007】
本発明の目的は、燃焼器の動作環境に関わらず、改質器の触媒を適切な温度まで上昇させることができるエンジンシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るエンジンシステムは、燃料ガスが水素と共に燃焼するエンジンと、エンジンを始動させるスタータと、エンジンに供給される空気が流れる吸気通路と、エンジンで発生した排気ガスが流れる排気通路と、吸気通路に配設され、エンジンに供給される空気の流量を制御する第1流量制御弁と、エンジンに燃料ガスを供給する第1燃料供給弁と、燃料ガスを水素に分解する触媒を有し、燃料ガスを改質して水素を含有した改質ガスを生成する改質器と、改質器に供給される空気が流れる第1空気流路と、第1空気流路に配設され、改質器に供給される空気の流量を制御する第2流量制御弁と、改質器に燃料ガスを供給する第2燃料供給弁と、改質器により生成された改質ガスがエンジンに向けて流れる改質ガス流路と、燃料ガスを着火させる点火部を有し、触媒を加熱するための燃焼ガスを発生させる燃焼器と、燃焼器に供給される空気が流れる第2空気流路と、燃焼器に燃料ガスを供給する第3燃料供給弁と、外気温を検出する外気温検出部と、触媒の温度を検出する触媒温度検出部と、燃焼器の動作環境を検出する動作環境検出部と、外気温検出部により検出された外気温と触媒温度検出部により検出された触媒の温度と動作環境検出部により検出された燃焼器の動作環境とに基づいて、燃焼器の燃焼時間を決定する燃焼時間決定部と、エンジンの始動時に、スタータ及び点火部をON制御すると共に、第1燃料供給弁、第2燃料供給弁、第3燃料供給弁、第1流量制御弁及び第2流量制御弁を開くように制御し、その後燃焼時間決定部により決定された燃焼時間が経過すると、点火部をOFF制御すると共に、第3燃料供給弁を閉じるように制御する始動制御部とを備える。
【0009】
このようなエンジンシステムにおいては、エンジンの始動時に、スタータ及び燃焼器の点火部がONされると共に、燃焼器に燃料ガス及び空気が供給されることで、燃焼器において燃料ガスが着火して燃焼し、燃焼ガスが発生する。そして、燃焼ガスにより改質器の触媒が加熱されると共に、改質器に燃料ガス及び空気が供給されることで、改質器において水素を含む改質ガスが生成され、改質ガスが改質ガス流路を流れてエンジンに供給される。そして、エンジンに燃料ガス及び空気が供給されることで、エンジンにおいて燃料ガスが水素と混合して燃焼する。ここで、外気温、触媒の温度及び燃焼器の動作環境が検出される。そして、外気温と触媒の温度と燃焼器の動作環境とに基づいて、燃焼器の燃焼時間が決定される。そして、エンジンの始動が開始されてから燃焼時間が経過すると、燃焼器の点火部がOFFされると共に、燃焼器への燃料ガスの供給が停止する。このように外気温及び触媒の温度に加えて、燃焼器の動作環境を検出することにより、燃焼器の動作環境に応じた適切な燃焼時間が得られるため、改質器の触媒の過昇温及び昇温不足が防止される。これにより、燃焼器の動作環境に関わらず、改質器の触媒が適切な温度まで上昇する。
【0010】
燃焼時間決定部は、外気温に応じた第1時間と触媒の温度に応じた第2時間と燃焼器の動作環境に応じた第3時間とを設定し、予め決められた基準時間に第1時間、第2時間及び第3時間を加算することにより、燃焼時間を決定してもよい。このような構成では、外気温、触媒の温度及び燃焼器の動作環境を加味した適切な燃焼時間が、単純な計算処理により容易に得られる。
【0011】
燃焼器の動作環境は、燃焼器に供給される燃料ガス及び空気の少なくとも一方の流量または空気に含まれる酸素の濃度に関する状態量であってもよい。燃焼器に供給される燃料ガス及び空気の流量と空気に含まれる酸素の濃度とが変化すると、改質器の触媒の加熱に必要な時間が変わってくる。そこで、燃焼器に供給される燃料ガス及び空気の少なくとも一方の流量または空気に含まれる酸素の濃度に関する状態量を検出することにより、燃焼器の動作環境に応じた適切な燃焼時間が得られる。
【0012】
エンジンシステムは、スタータに電力を供給するバッテリを更に備え、動作環境検出部は、燃焼器に供給される燃料ガス及び空気の少なくとも一方の流量または空気に含まれる酸素の濃度に関する状態量として、バッテリの電圧を検出してもよい。バッテリの電圧が低下すると、スタータの回転数が低下するため、エンジンの回転数が低下する。従って、燃焼器に供給される燃料ガス及び空気の総流量が減少し、燃焼器から改質器に与えられる熱量が低下するため、改質器の触媒の加熱が遅くなる。そこで、バッテリの電圧を検出し、バッテリの電圧を加味して燃焼器の燃焼時間を決定することにより、バッテリの電圧が変化しても、適切な燃焼時間が得られる。
【0013】
エンジンシステムは、液体の燃料を気化させて燃料ガスを生成する気化器を更に備え、動作環境検出部は、燃焼器に供給される燃料ガス及び空気の少なくとも一方の流量または空気に含まれる酸素の濃度に関する状態量として、気化器の温度または気化器により生成された燃料ガスの圧力を検出してもよい。気化器の温度が高くなると、気化器により生成される燃料ガスの圧力が高くなるため、燃焼器に供給される燃料ガスの流量が増加する。従って、燃焼ガスの温度が低下するため、改質器の触媒の加熱が遅くなる。そこで、気化器の温度または気化器により生成された燃料ガスの圧力を検出し、気化器の温度または燃料ガスの圧力を加味して燃焼器の燃焼時間を決定することにより、気化器の温度または燃料ガスの圧力が変化しても、適切な燃焼時間が得られる。
【0014】
動作環境検出部は、燃焼器に供給される燃料ガス及び空気の少なくとも一方の流量または空気に含まれる酸素の濃度に関する状態量として、第2空気流路を流れる空気の圧力を検出してもよい。第2空気流路を流れる空気の圧力が大気圧よりも低くなると、燃焼器に供給される空気に含まれる酸素の濃度が薄くなるため、燃料ガスが燃焼されにくくなる。そこで、第2空気流路を流れる空気の圧力を検出し、空気の圧力を加味して燃焼器の燃焼時間を決定することにより、燃焼器に供給される空気の圧力が変化しても、適切な燃焼時間が得られる。
【0015】
燃焼器の動作環境は、改質器に要求される水素の生成量に関する状態量であってもよい。改質器に要求される水素の生成量が変化すると、改質器の触媒の加熱に必要な時間が変わってくる。そこで、改質器に要求される水素の生成量に関する状態量を検出することにより、燃焼器の動作環境に応じた適切な燃焼時間が得られる。
【0016】
動作環境検出部は、改質器に要求される水素の生成量に関する状態量として、エンジンを冷却する冷却水の温度またはエンジン内のエンジンオイルの温度を検出してもよい。エンジンが冷間始動時よりも高い暖気状態では、改質器に要求される水素の生成量が冷間始動時よりも少なくて済む。そこで、エンジンを冷却する冷却水の温度またはエンジン内のエンジンオイルの温度を検出することにより、エンジンの暖気状態が変化しても、適切な燃焼時間が得られる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、燃焼器の動作環境に関わらず、改質器の触媒を適切な温度まで上昇させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態に係るエンジンシステムを示す概略構成図である。
図2図1に示されたアンモニアエンジンの断面図である。
図3図1に示された燃焼時間決定部により実行される燃焼時間決定処理の手順を示すフローチャートである。
図4図1に示された始動制御部により実行される始動制御処理の手順を示すフローチャートである。
図5】本発明の第2実施形態に係るエンジンシステムを示す概略構成図である。
図6図5に示された燃焼時間決定部により実行される燃焼時間決定処理の手順を示すフローチャートである。
図7】本発明の第3実施形態に係るエンジンシステムを示す概略構成図である。
図8図7に示された燃焼時間決定部により実行される燃焼時間決定処理の手順を示すフローチャートである。
図9】本発明の第4実施形態に係るエンジンシステムを示す概略構成図である。
図10図9に示された燃焼時間決定部により実行される燃焼時間決定処理の手順を示すフローチャートである。
図11】本発明の第5実施形態に係るエンジンシステムを示す概略構成図である。
図12図11に示された燃焼時間決定部により実行される燃焼時間決定処理の手順を示すフローチャートである。
図13】本発明の第6実施形態に係るエンジンシステムを示す概略構成図である。
図14図13に示された燃焼時間決定部により実行される燃焼時間決定処理の手順を示すフローチャートである。
図15】本発明の第7実施形態に係るエンジンシステムを示す概略構成図である。
図16図15に示された燃焼時間決定部により実行される燃焼時間決定処理の手順を示すフローチャートである。
図17図15に示された始動制御部により実行される始動制御処理の手順を示すフローチャートである。
図18図1に示されたエンジンシステムの変形例を示す概略構成図である。
図19図18に示された始動制御部により実行される始動制御処理の手順を示すフローチャートである。
図20図1に示されたエンジンシステムの他の変形例を示す概略構成図である。
図21図20に示された始動制御部により実行される始動制御処理の手順を示すフローチャートである。
図22図1に示されたエンジンシステムの更に他の変形例を示す概略構成図である。
図23図22に示された始動制御部により実行される始動制御処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
図1は、本発明の第1実施形態に係るエンジンシステムを示す概略構成図である。図1において、本実施形態のエンジンシステム1は、車両(図示せず)に搭載されている。エンジンシステム1は、アンモニアエンジン2と、吸気通路3と、排気通路4と、メインインジェクタ5と、メインスロットルバルブ6とを備えている。
【0021】
アンモニアエンジン2は、アンモニアガス(NHガス)を燃料ガスとして使用するエンジンである。アンモニアエンジン2では、難燃性のアンモニアガスを燃焼しやすくするため、助燃材としての水素(H)がアンモニアガスに混合される。ここでは、アンモニアエンジン2は、4気筒エンジンである。
【0022】
アンモニアエンジン2は、図2に示されるように、シリンダ11と、このシリンダ11内に往復移動可能に配置されたピストン12と、このピストン12とクランクシャフト13とを連結するコンロッド14とを有している。
【0023】
シリンダ11は、シリンダブロック11aと、このシリンダブロック11aの上部に配置されたシリンダヘッド11bとから構成されている。シリンダブロック11a、シリンダヘッド11b及びピストン12により画成される空間は、アンモニアガスが水素と共に燃焼して排気ガスが発生する燃焼室15となっている。
【0024】
シリンダヘッド11bには、燃焼室15と連通する吸気ポート16及び排気ポート17が設けられている。吸気ポート16は、吸気弁18により開閉される。排気ポート17は、排気弁19により開閉される。また、シリンダヘッド11bには、点火プラグ20が取り付けられている。点火プラグ20は、アンモニアガスと空気との混合気に点火して、アンモニアガスを着火させる。
【0025】
吸気通路3は、アンモニアエンジン2の吸気ポート16と接続されている。吸気通路3は、アンモニアエンジン2の燃焼室15に供給される空気が流れる通路である。なお、吸気通路3には、空気中に含まれる塵や埃等の異物を除去するエアクリーナ7が配設されている。
【0026】
排気通路4は、アンモニアエンジン2の排気ポート17と接続されている。排気通路4は、アンモニアエンジン2の燃焼室15で発生した排気ガスが流れる通路である。排気通路4には、排気ガス中に含まれる有害成分である一酸化炭素(CO)、未燃の炭化水素(HC)及び窒素酸化物(NOx)を浄化する三元触媒8と、排気ガス中に含まれるNOxを除去するSCR触媒9とが配設されている。
【0027】
メインインジェクタ5は、アンモニアエンジン2の燃焼室15に向けてアンモニアガスを噴射する電磁式の燃料噴射弁である。メインインジェクタ5は、アンモニアエンジン2にアンモニアガスを供給する第1燃料供給弁を構成している。
【0028】
メインスロットルバルブ6は、吸気通路3に配設されている。メインスロットルバルブ6は、アンモニアエンジン2に供給される空気の流量を制御する電磁式の第1流量制御弁である。
【0029】
また、エンジンシステム1は、アンモニアボンベ21と、気化器22と、改質器23と、空気流路24と、改質スロットルバルブ25と、改質インジェクタ26と、改質ガス流路27と、クーラ28と、流量調整弁29とを備えている。
【0030】
アンモニアボンベ21は、アンモニアを液体状態で貯蔵する容器である。つまり、アンモニアボンベ21は、液体アンモニアを貯蔵する。
【0031】
気化器22は、アンモニアボンベ21に貯蔵された液体アンモニアを気化させてアンモニアガスを生成する。気化器22で発生したアンモニアガスは、アンモニア流路30を流れてメインインジェクタ5に供給されると共に、アンモニア流路31を流れて改質インジェクタ26に供給される。
【0032】
改質器23は、アンモニアガスを燃焼させて発生した熱を利用してアンモニアガスを改質することにより、水素を含有した改質ガスを生成する。改質器23は、改質触媒33を有している。改質触媒33は、改質器23の筐体(図示せず)内に配置されている。
【0033】
改質触媒33は、例えばハニカム構造を有している。改質触媒33は、アンモニアガスを燃焼させると共に、アンモニアガスを水素に分解する触媒である。改質触媒33は、例えばATR(Autothermal Reformer)式アンモニア改質触媒である。改質触媒33としては、例えばコバルト系触媒、ロジウム系触媒、ルテニウム系触媒またはパラジウム系触媒等が使用される。
【0034】
空気流路24は、吸気通路3と改質器23とを接続している。空気流路24の一端は、吸気通路3におけるエアクリーナ7とメインスロットルバルブ6との間に接続されている。空気流路24の他端は、改質器23の入口部に接続されている。空気流路24は、改質器23に供給される空気が流れる第1空気流路である。
【0035】
改質スロットルバルブ25は、空気流路24に配設されている。改質スロットルバルブ25は、改質器23に供給される空気の流量を制御する電磁式の第2流量制御弁である。
【0036】
改質インジェクタ26は、空気流路24にアンモニアガスを噴射する電磁式の燃料噴射弁である。改質インジェクタ26は、空気流路24における改質スロットルバルブ25と改質器23との間にアンモニアガスを噴射する。改質インジェクタ26は、改質器23にアンモニアガスを供給する第2燃料供給弁を構成している。
【0037】
改質ガス流路27は、改質器23と吸気通路3とを接続している。改質ガス流路27の一端は、改質器23の出口部に接続されている。改質ガス流路27の他端は、吸気通路3におけるメインスロットルバルブ6とアンモニアエンジン2との間に接続されている。改質ガス流路27は、改質器23により生成された改質ガスがアンモニアエンジン2に向けて流れる流路である。
【0038】
クーラ28は、改質ガス流路27に配設されている。クーラ28は、アンモニアエンジン2を冷却するエンジン冷却水を用いて、改質ガス流路27を流れる改質ガスを熱交換して冷却する。
【0039】
流量調整弁29は、改質ガス流路27におけるクーラ28よりも下流側に配設されている。流量調整弁29は、アンモニアエンジン2に供給される改質ガスの流量を調整する電磁弁である。なお、流量調整弁29に代えて、電磁式の開閉弁(ON/OFF弁)を使用してもよい。
【0040】
また、エンジンシステム1は、燃焼器35と、空気流路36と、燃焼スロットルバルブ37と、燃焼インジェクタ38とを備えている。
【0041】
燃焼器35は、供給管39を介して改質器23と接続されている。燃焼器35は、改質器23の改質触媒33を加熱するための燃焼ガスを発生させる。燃焼器35は、例えば円筒状の筐体内においてアンモニアガスを旋回流の状態で着火・燃焼させる管状火炎バーナである。燃焼器35は、点火プラグ40を有している。点火プラグ40は、アンモニアガスと空気との混合気に点火して、アンモニアガスを着火させる点火部である。
【0042】
空気流路36は、空気流路24と燃焼器35とを接続している。空気流路36の一端は、空気流路24における改質スロットルバルブ25よりも上流側に分岐して接続されている。空気流路36の他端は、燃焼器35の筐体に接続されている。空気流路36は、燃焼器35に供給される空気が流れる第2空気流路である。
【0043】
燃焼スロットルバルブ37は、空気流路36に配設されている。燃焼スロットルバルブ37は、燃焼器35に供給される空気の流量を制御する電磁式の第3流量制御弁である。
【0044】
燃焼インジェクタ38は、気化器22とアンモニア流路41を介して接続されている。燃焼インジェクタ38は、空気流路36にアンモニアガスを噴射する電磁式の燃料噴射弁である。燃焼インジェクタ38は、空気流路36における燃焼スロットルバルブ37と燃焼器35との間にアンモニアガスを噴射する。燃焼インジェクタ38は、燃焼器35にアンモニアガスを供給する第3燃料供給弁を構成している。
【0045】
また、エンジンシステム1は、吸気温センサ43と、温度センサ44と、スタータ45と、バッテリ46と、電圧センサ47と、ТDCカウンタ48とを備えている。
【0046】
吸気温センサ43は、吸気通路3を流れる空気の温度を外気温として検出する。吸気温センサ43は、外気温を検出する外気温検出部である。
【0047】
温度センサ44は、改質器23の改質触媒33の温度を検出する触媒温度検出部である。ここでは、温度センサ44は、改質器23の筐体内における改質触媒33の下流空間の温度を検出する。
【0048】
なお、温度センサ44は、改質触媒33の温度を直接検出してもよいし、改質器23の筐体内における改質触媒33の上流空間の温度を検出してもよい。また、温度センサ44により改質器23の筐体の内壁の温度または表面温度を検出することで、改質触媒33の温度を検出してもよい。
【0049】
スタータ45は、アンモニアエンジン2を始動させる。スタータ45は、特に図示はしないが、セルモータ及び複数のギヤ等を有している。バッテリ46は、スタータ45に電力を供給する。
【0050】
電圧センサ47は、バッテリ46の電圧を検出するセンサである。電圧センサ47は、燃焼器35の動作環境を検出する動作環境検出部を構成している。バッテリ46の電圧が変化すると、スタータ45の回転数が変化し、アンモニアエンジン2の回転数が変化するため、燃焼器35に供給されるアンモニアガス及び空気の総流量が変化する。従って、バッテリ46の電圧は、燃焼器35の動作環境として、燃焼器35に供給されるアンモニアガス及び空気の流量に関する状態量に相当する。
【0051】
ТDCカウンタ48は、アンモニアエンジン2のピストン12(図2参照)が上死点(TDC)に到達した回数をカウントする。アンモニアエンジン2の始動時は、アンモニアエンジン2の回転数が一定であるため、ピストン12が上死点に到達する周期(時間)は一定である。
【0052】
また、エンジンシステム1は、エンジンECU49と、コントローラ50とを備えている。エンジンECU49及びコントローラ50は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。
【0053】
エンジンECU49は、アンモニアエンジン2を制御するECU(電子制御ユニット)である。具体的には、エンジンECU49は、吸気行程、圧縮行程、膨張行程(燃焼行程)及び排気行程という4つの行程で1サイクルとなるようにアンモニアエンジン2の吸気弁18、排気弁19及び点火プラグ20(図2参照)を制御する。エンジンECU49は、吸気行程において吸気弁18を開くように制御する。エンジンECU49は、膨張行程において点火プラグ20をОN制御する。エンジンECU49は、排気行程において排気弁19を開くように制御する。
【0054】
コントローラ50は、燃焼時間決定部51と、始動制御部52とを有している。燃焼時間決定部51は、吸気温センサ43により検出された外気温と温度センサ44により検出された改質触媒33の温度と電圧センサ47により検出されたバッテリ46の電圧とに基づいて、燃焼器35の燃焼時間を決定する。
【0055】
始動制御部52は、アンモニアエンジン2の始動時に、スタータ45及び燃焼器35の点火プラグ40をON制御すると共に、メインインジェクタ5、メインスロットルバルブ6、改質スロットルバルブ25、改質インジェクタ26、流量調整弁29、燃焼スロットルバルブ37及び燃焼インジェクタ38を開くように制御する。
【0056】
また、始動制御部52は、アンモニアエンジン2の始動を開始してから、燃焼時間決定部51により決定された燃焼時間が経過すると、燃焼器35の点火プラグ40をOFF制御すると共に、燃焼スロットルバルブ37及び燃焼インジェクタ38を閉じるように制御する。
【0057】
図3は、燃焼時間決定部51により実行される燃焼時間決定処理の手順を示すフローチャートである。本処理は、イグニッションスイッチ53(図1参照)がON操作されると実行される。
【0058】
本処理において、基準TDCカウント値xが予め設定されている。基準TDCカウント値xは、燃焼器35による燃焼の基準時間に相当するТDCカウンタ48のカウント値である。基準TDCカウント値xは、通常状態において改質器23の改質触媒33が反応温度に達するような値である。反応温度は、改質触媒33が改質可能となる温度である。
【0059】
図3において、燃焼時間決定部51は、まず吸気温センサ43により検出された外気温Toを取得する(手順S101)。そして、燃焼時間決定部51は、外気温Toが閾値Td1以上であり且つ閾値Tu1以下であるかどうかを判断する(手順S102)。閾値Td1は、例えば10℃である。閾値Tu1は、例えば50℃である。
【0060】
燃焼時間決定部51は、外気温Toが閾値Td1以上であり且つ閾値Tu1以下であるという条件を満たしていると判断したときは、加算カウント値C1を±0カウントに設定する(手順S103)。加算カウント値C1は、外気温Toに応じた第1時間に相当する。加算カウント値C1が±0カウントであるときは、例えば第1時間は0秒である。
【0061】
燃焼時間決定部51は、外気温Toが閾値Td1以上であり且つ閾値Tu1以下であるという条件を満たしていないと判断したときは、外気温Toが閾値Td1よりも低いかどうかを判断する(手順S104)。燃焼時間決定部51は、外気温Toが閾値Td1よりも低いと判断したときは、加算カウント値C1を+1カウントに設定する(手順S105)。加算カウント値C1が+1カウントであるときは、例えば第1時間は+0.1秒である。
【0062】
燃焼時間決定部51は、外気温Toが閾値Td1よりも低くない、つまり外気温Toが閾値Tu1よりも高いと判断したときは、加算カウント値C1を-1カウントに設定する(手順S106)。加算カウント値C1が-1カウントであるときは、例えば第1時間は-0.1秒である。
【0063】
燃焼時間決定部51は、手順S103,S105,S106の何れかを実行した後、温度センサ44により検出された改質触媒33の温度Tcを取得する(手順S107)。そして、燃焼時間決定部51は、改質触媒33の温度Tcが閾値Td2以上であり且つ閾値Tu2以下であるかどうかを判断する(手順S108)。閾値Td2は、例えば10℃である。閾値Tu2は、例えば100℃である。
【0064】
燃焼時間決定部51は、改質触媒33の温度Tcが閾値Td2以上であり且つ閾値Tu2以下であるという条件を満たしていると判断したときは、加算カウント値C2を±0カウントに設定する(手順S109)。加算カウント値C2は、改質触媒33の温度Tcに応じた第2時間に相当する。加算カウント値C2が±0カウントであるときは、例えば第2時間は0秒である。
【0065】
燃焼時間決定部51は、改質触媒33の温度Tcが閾値Td2以上であり且つ閾値Tu2以下であるという条件を満たしていないと判断したときは、改質触媒33の温度Tcが閾値Td2よりも低いかどうかを判断する(手順S110)。燃焼時間決定部51は、改質触媒33の温度Tcが閾値Td2よりも低いと判断したときは、加算カウント値C1を+1カウントに設定する(手順S111)。加算カウント値C2が+1カウントであるときは、例えば第2時間は+0.1秒である。
【0066】
燃焼時間決定部51は、改質触媒33の温度Tcが閾値Td2よりも低くない、つまり改質触媒33の温度Tcが閾値Tu2よりも高いと判断したときは、加算カウント値C2を-1カウントに設定する(手順S112)。加算カウント値C2が-1カウントであるときは、例えば第2時間は-0.1秒である。
【0067】
燃焼時間決定部51は、手順S109,S111,S112の何れかを実行した後、電圧センサ47により検出されたバッテリ46の電圧Vcを取得する(手順S113)。そして、燃焼時間決定部51は、バッテリ46の電圧Vcが閾値Vd以上であり且つ閾値Vu以下であるかどうかを判断する(手順S114)。閾値Vdは、例えば9Vである。閾値Vuは、例えば12Vである。
【0068】
燃焼時間決定部51は、バッテリ46の電圧Vcが閾値Vd以上であり且つ閾値Vu以下であるという条件を満たしていると判断したときは、加算カウント値C3を±0カウントに設定する(手順S115)。加算カウント値C3は、バッテリ46の電圧Vcに応じた第3時間に相当する。加算カウント値C3が±0カウントであるときは、例えば第3時間は0秒である。
【0069】
燃焼時間決定部51は、バッテリ46の電圧Vcが閾値Vd以上であり且つ閾値Vu以下であるという条件を満たしていないと判断したときは、バッテリ46の電圧Vcが閾値Vdよりも低いかどうかを判断する(手順S116)。燃焼時間決定部51は、バッテリ46の電圧Vcが閾値Vdよりも低いと判断したときは、加算カウント値C3を+1カウントに設定する(手順S117)。加算カウント値C3が+1カウントであるときは、例えば第3時間は+0.1秒である。
【0070】
燃焼時間決定部51は、バッテリ46の電圧Vcが閾値Vdよりも低くない、つまりバッテリ46の電圧Vcが閾値Vuよりも高いと判断したときは、加算カウント値C3を-1カウントに設定する(手順S118)。加算カウント値C3が-1カウントであるときは、例えば第3時間は-0.1秒である。
【0071】
燃焼時間決定部51は、手順S115,S117,S118の何れかを実行した後、基準TDCカウント値xに加算カウント値C1~C3を加算することにより、燃焼時間カウント値を算出する(手順S119)。燃焼時間カウント値は、燃焼器35の燃焼時間に相当する。そして、燃焼時間決定部51は、燃焼時間カウント値を始動制御部52に出力する(手順S120)。
【0072】
なお、本処理では、加算カウント値C1~C3は、条件に応じて±0カウント、+1カウント及び-1カウントにそれぞれ設定されているが、特にその値には限られない。
【0073】
図4は、始動制御部52により実行される始動制御処理の手順を示すフローチャートである。本処理も、イグニッションスイッチ53がON操作されると実行される。
【0074】
図4において、始動制御部52は、まずスタータ45をОN制御する(手順S131)。これにより、アンモニアエンジン2がクランキングされる。
【0075】
続いて、始動制御部52は、燃焼器35の点火プラグ40をОN制御する(手順S132)。そして、始動制御部52は、燃焼インジェクタ38を開くように制御する(手順S133)。そして、始動制御部52は、燃焼スロットルバルブ37を開くように制御する(手順S134)。これにより、燃焼器35にアンモニアガス及び空気が供給され、燃焼器35においてアンモニアガスが着火して燃焼し、燃焼ガスが発生する。そして、燃焼ガスにより改質器23が加熱される。
【0076】
なお、始動制御部52は、手順S132~S134を上記とは異なる順番で実行してもよいし、或いは手順S132~S134を同時に実行してもよい。
【0077】
また、始動制御部52は、上記の手順S131を実行した後、流量調整弁29を開くように制御する(手順S135)。そして、始動制御部52は、改質インジェクタ26を開くように制御する(手順S136)。そして、始動制御部52は、改質スロットルバルブ25を開くように制御する(手順S137)。これにより、改質器23にアンモニアガス及び空気が供給される。
【0078】
なお、始動制御部52は、手順S135~S137を上記とは異なる順番で実行してもよいし、或いは手順S135~S137を同時に実行してもよい。
【0079】
また、始動制御部52は、上記の手順S131を実行した後、アンモニアエンジン2の点火プラグ20をОNするための制御信号をエンジンECU49に出力する(手順S138)。そして、始動制御部52は、メインインジェクタ5を開くように制御する(手順S139)。そして、始動制御部52は、メインスロットルバルブ6を開くように制御する(手順S140)。これにより、アンモニアエンジン2にアンモニアガス及び空気が供給される。
【0080】
なお、始動制御部52は、手順S138~S140を上記とは異なる順番で実行してもよいし、或いは手順S138~S140を同時に実行してもよい。
【0081】
始動制御部52は、上記の手順S132~S140を実行した後、ТDCカウンタ48のカウント値を取得する(手順S141)。そして、始動制御部52は、スタータ45がON制御されてからのТDCカウンタ48のカウント値が、燃焼時間決定部51により決定された燃焼時間カウント値に到達したかどうかを判断する(手順S142)。つまり、始動制御部52は、燃焼時間決定部51により決定された燃焼時間が経過したかどうかを判断する。始動制御部52は、ТDCカウンタ48のカウント値が燃焼時間カウント値に到達していないと判断したときは、手順S141を再度実行する。
【0082】
始動制御部52は、ТDCカウンタ48のカウント値が燃焼時間カウント値に到達したと判断したときは、燃焼器35の点火プラグ40をОFF制御する(手順S143)。そして、始動制御部52は、燃焼インジェクタ38を閉じるように制御する(手順S144)。そして、始動制御部52は、燃焼スロットルバルブ37を閉じるように制御する(手順S145)。これにより、燃焼器35へのアンモニアガス及び空気の供給が停止し、燃焼器35によるアンモニアガスの燃焼が終了する。
【0083】
なお、始動制御部52は、手順S143~S145を上記とは異なる順番で実行してもよいし、或いは手順S143~S145を同時に実行してもよい。
【0084】
また、始動制御部52は、手順S142においてТDCカウンタ48のカウント値が燃焼時間カウント値に到達したと判断したときは、改質インジェクタ26の開度を制御する(手順S146)。そして、始動制御部52は、改質スロットルバルブ25の開度を制御する(手順S147)。このとき、始動制御部52は、改質器23による改質動作に適した空燃比となるように改質インジェクタ26及び改質スロットルバルブ25の開度を制御する。
【0085】
なお、始動制御部52は、手順S146,S147を上記とは異なる順番で実行してもよいし、或いは手順S146,S147を同時に実行してもよい。
【0086】
また、始動制御部52は、手順S142においてТDCカウンタ48のカウント値が燃焼時間カウント値に到達したと判断したときは、アンモニアエンジン2の点火プラグ20の点火タイミングを変更するための制御信号をエンジンECU49に出力する(手順S148)。そして、始動制御部52は、メインインジェクタ5の開度を制御する(手順S149)。そして、始動制御部52は、メインスロットルバルブ6の開度を制御する(手順S150)。このとき、始動制御部52は、アンモニアエンジン2の状態に適した空燃比となるようにメインインジェクタ5及びメインスロットルバルブ6の開度を制御する。
【0087】
なお、始動制御部52は、手順S148~S150を上記とは異なる順番で実行してもよいし、或いは手順S148~S150を同時に実行してもよい。
【0088】
以上のようなエンジンシステム1において、車両のイグニッションスイッチ53がON操作されると、スタータ45がОNすることで、アンモニアエンジン2がクランキングされる。また、燃焼器35の点火プラグ40がONすると共に、燃焼インジェクタ38、燃焼スロットルバルブ37、流量調整弁29、改質インジェクタ26、改質スロットルバルブ25、メインインジェクタ5及びメインスロットルバルブ6が開弁する。すると、燃焼器35、改質器23及びアンモニアエンジン2にアンモニアガス及び空気が供給される。
【0089】
また、吸気温センサ43により外気温が検出され、温度センサ44により改質器23の改質触媒33の温度が検出され、電圧センサ47によりバッテリ46の電圧が検出される。そして、外気温、改質触媒33の温度及びバッテリ46の電圧に基づいて、燃焼器35の燃焼時間カウント値が算出される。
【0090】
燃焼器35の点火プラグ40がONすると共に、燃焼器35にアンモニアガス及び空気が供給されると、アンモニアガスが着火して燃焼する。具体的には、下記式のように、アンモニアと空気中の酸素とが化学反応し、高温の燃焼ガスが生成される(発熱反応)。
NH+3/4O→1/2N+3/2HO …(A)
【0091】
高温の燃焼ガスは、燃焼器35から供給管39内を流れて改質器23に供給される。そして、燃焼ガスの熱によって改質器23の改質触媒33が加熱されることで、改質触媒33の温度が上昇する。そして、改質触媒33の温度が活性温度(燃焼可能温度)に達すると、改質触媒33によりアンモニアガスが燃焼することで、上記(A)式の発熱反応が起こり、改質触媒33の自己熱によって改質触媒33の温度が更に上昇する。
【0092】
その後、ТDCカウンタ48のカウント値が燃焼時間カウント値に達すると、燃焼器35の点火プラグ40がОFFすると共に、燃焼インジェクタ38及び燃焼スロットルバルブ37が閉弁することで、燃焼器35へのアンモニアガス及び空気の供給が停止する。これにより、燃焼器35によるアンモニアガスの燃焼が終了する。
【0093】
また、ТDCカウンタ48のカウント値が燃焼時間カウント値に達すると、改質触媒33の温度が反応温度(前述)に達するため、改質触媒33によりアンモニアガスが改質される。具体的には、下記式のように、アンモニアの分解反応が起こり(吸熱反応)、水素を含む改質ガスが生成される。改質ガスは、改質ガス流路27及び吸気通路3を流れてアンモニアエンジン2に供給される。
NH→3/2H+1/2N …(B)
【0094】
また、ТDCカウンタ48のカウント値が燃焼時間カウント値に達すると、改質インジェクタ26、改質スロットルバルブ25、メインインジェクタ5及びメインスロットルバルブ6の開度が制御されることで、改質器23及びアンモニアエンジン2に供給されるアンモニアガス及び空気の流量が制御される。そして、アンモニアエンジン2において、アンモニアガスが改質ガス中の水素と共に燃焼する。これにより、アンモニアエンジン2の始動動作が完了し、定常状態に移行する。
【0095】
以上のように本実施形態にあっては、アンモニアエンジン2の始動時に、スタータ45及び燃焼器35の点火プラグ40がONされると共に、燃焼器35にアンモニアガス及び空気が供給されることで、燃焼器35においてアンモニアガスが着火して燃焼し、燃焼ガスが発生する。そして、燃焼ガスにより改質器23の改質触媒33が加熱されると共に、改質器23にアンモニアガス及び空気が供給されることで、改質器23において水素を含む改質ガスが生成され、改質ガスが改質ガス流路27を流れてアンモニアエンジン2に供給される。そして、アンモニアエンジン2にアンモニアガス及び空気が供給されることで、アンモニアエンジン2においてアンモニアガスが水素と混合して燃焼する。ここで、外気温、改質触媒33の温度及び燃焼器35の動作環境が検出される。そして、外気温と改質触媒33の温度と燃焼器35の動作環境とに基づいて、燃焼器35の燃焼時間が決定される。そして、アンモニアエンジン2の始動が開始されてから燃焼時間が経過すると、燃焼器35の点火プラグ40がOFFされると共に、燃焼器35へのアンモニアガスの供給が停止する。このように外気温及び改質触媒33の温度に加えて、燃焼器35の動作環境を検出することにより、燃焼器35の動作環境に応じた適切な燃焼時間が得られるため、改質器23の改質触媒33の過昇温及び昇温不足が防止される。これにより、燃焼器35の動作環境に関わらず、改質器23の改質触媒33が適切な温度まで上昇する。その結果、改質触媒33の劣化を防ぐと共に、改質器23により所望の水素量を生成することができる。
【0096】
また、本実施形態では、外気温に応じた加算カウント値C1と改質触媒33の温度に応じた加算カウント値C2と燃焼器35の動作環境に応じた加算カウント値C3とが設定され、予め決められた基準TDCカウント値xに加算カウント値C1~C3を加算することにより、燃焼器35の燃焼時間が決定される。このため、外気温、改質触媒33の温度及び燃焼器35の動作環境を加味した適切な燃焼時間が、単純な計算処理により容易に得られる。
【0097】
また、本実施形態では、燃焼器35の動作環境は、燃焼器35に供給されるアンモニアガス及び空気の流量に関する状態量である。燃焼器35に供給されるアンモニアガス及び空気の流量が変化すると、改質器23の改質触媒33の加熱に必要な時間が変わってくる。そこで、燃焼器35に供給されるアンモニアガス及び空気の流量に関する状態量を検出することにより、燃焼器35の動作環境に応じた適切な燃焼時間が得られる。
【0098】
また、本実施形態では、燃焼器35に供給されるアンモニアガス及び空気の流量に関する状態量として、スタータ45に電力を供給するバッテリ46の電圧が検出される。バッテリ46の電圧が低下すると、スタータ45のセルモータの回転数が低下するため、アンモニアエンジン2のクランキング時のエンジン回転数が低下する。従って、燃焼器35に供給されるアンモニアガス及び空気の総流量が減少し、燃焼器35から改質器23に与えられる熱量が低下するため、改質器23の改質触媒33の加熱が遅くなる。そこで、バッテリ46の電圧を検出し、バッテリ46の電圧を加味して燃焼器35の燃焼時間を決定することにより、バッテリ46の電圧が変化しても、適切な燃焼時間が得られる。
【0099】
また、本実施形態では、既設のТDCカウンタ48を有効利用して、燃焼器35による燃焼動作の停止タイミングであるかどうかを判定することができる。
【0100】
図5は、本発明の第2実施形態に係るエンジンシステムを示す概略構成図である。図5において、本実施形態のエンジンシステム1Aは、上記の第1実施形態における電圧センサ47に代えて、温度センサ61を備えている。
【0101】
温度センサ61は、気化器22の温度を検出するセンサである。温度センサ61は、燃焼器35の動作環境を検出する動作環境検出部を構成している。気化器22の温度が変化すると、気化器22により生成されるアンモニアガスの圧力が変化するため、燃焼器35に供給されるアンモニアガスの流量が変化する。従って、気化器22の温度は、燃焼器35の動作環境として、燃焼器35に供給されるアンモニアガスの流量に関する状態量に相当する。
【0102】
また、エンジンシステム1Aは、上記の第1実施形態におけるコントローラ50に代えて、コントローラ50Aを備えている。コントローラ50Aは、燃焼時間決定部51Aと、上記の始動制御部52とを有している。
【0103】
燃焼時間決定部51Aは、吸気温センサ43により検出された外気温と温度センサ44により検出された改質触媒33の温度と温度センサ61により検出された気化器22の温度とに基づいて、燃焼器35の燃焼時間を決定する。
【0104】
図6は、燃焼時間決定部51Aにより実行される燃焼時間決定処理の手順を示すフローチャートであり、図3に対応している。
【0105】
図6において、燃焼時間決定部51Aは、上記の手順S109,S111,S112の何れかを実行した後、温度センサ61により検出された気化器22の温度Tgを取得する(手順S113A)。そして、燃焼時間決定部51Aは、気化器22の温度Tgが閾値Td3以上であり且つ閾値Tu3以下であるかどうかを判断する(手順S114A)。
【0106】
燃焼時間決定部51Aは、気化器22の温度Tgが閾値Td3以上であり且つ閾値Tu3以下であるという条件を満たしていると判断したときは、加算カウント値C3を±0カウントに設定する(手順S115)。
【0107】
燃焼時間決定部51Aは、気化器22の温度Tgが閾値Td3以上であり且つ閾値Tu3以下であるという条件を満たしていないと判断したときは、気化器22の温度Tgが閾値Td3よりも低いかどうかを判断する(手順S116A)。燃焼時間決定部51Aは、気化器22の温度Tgが閾値Td3よりも低いと判断したときは、加算カウント値C3を+1カウントに設定する(手順S117)。
【0108】
燃焼時間決定部51Aは、気化器22の温度Tgが閾値Td3よりも低くない、つまり気化器22の温度Tgが閾値Tu3よりも高いと判断したときは、加算カウント値C3を-1カウントに設定する(手順S118)。その後、燃焼時間決定部51Aは、上記の手順S119,S120を順次実行する。
【0109】
このような本実施形態においては、燃焼器35の動作環境は、燃焼器35に供給されるアンモニアガスの流量に関する状態量である。燃焼器35に供給されるアンモニアガスの流量が変化すると、改質器23の改質触媒33の加熱に必要な時間が変わってくる。そこで、燃焼器35に供給されるアンモニアガスの流量に関する状態量を検出することにより、燃焼器35の動作環境に応じた適切な燃焼時間が得られる。
【0110】
また、本実施形態では、燃焼器35に供給されるアンモニアガスの流量に関する状態量として、気化器22の温度が検出される。気化器22の温度が高くなると、気化器22により生成されるアンモニアガスの圧力が高くなるため、燃焼器35に供給されるアンモニアガスの流量が増加する。従って、燃焼ガスの温度が低下するため、改質器23の改質触媒33の加熱が遅くなる。そこで、気化器22の温度を検出し、気化器22の温度を加味して燃焼器35の燃焼時間を決定することにより、気化器22の温度が変化しても、適切な燃焼時間が得られる。
【0111】
図7は、本発明の第3実施形態に係るエンジンシステムを示す概略構成図である。図7において、本実施形態のエンジンシステム1Bは、上記の第1実施形態における電圧センサ47に代えて、圧力センサ63を備えている。
【0112】
圧力センサ63は、気化器22により生成されたアンモニアガスの圧力を検出するセンサである。圧力センサ63は、燃焼器35の動作環境を検出する動作環境検出部を構成している。気化器22により生成されたアンモニアガスの圧力が変化すると、第2実施形態で上述した通り、燃焼器35に供給されるアンモニアガスの流量が変化する。従って、気化器22により生成されたアンモニアガスの圧力は、燃焼器35の動作環境として、燃焼器35に供給されるアンモニアガスの流量に関する状態量に相当する。
【0113】
また、エンジンシステム1Bは、上記の第1実施形態におけるコントローラ50に代えて、コントローラ50Bを備えている。コントローラ50Bは、燃焼時間決定部51Bと、上記の始動制御部52とを有している。
【0114】
燃焼時間決定部51Bは、吸気温センサ43により検出された外気温と温度センサ44により検出された改質触媒33の温度と圧力センサ63により検出されたアンモニアガスの圧力とに基づいて、燃焼器35の燃焼時間を決定する。
【0115】
図8は、燃焼時間決定部51Bにより実行される燃焼時間決定処理の手順を示すフローチャートであり、図3に対応している。
【0116】
図8において、燃焼時間決定部51Bは、上記の手順S109,S111,S112の何れかを実行した後、圧力センサ63により検出されたアンモニアガスの圧力Pgを取得する(手順S113B)。そして、燃焼時間決定部51Bは、アンモニアガスの圧力Pgが閾値Pd1以上であり且つ閾値Pu1以下であるかどうかを判断する(手順S114B)。
【0117】
燃焼時間決定部51Bは、アンモニアガスの圧力Pgが閾値Pd1以上であり且つ閾値Pu1以下であるという条件を満たしていると判断したときは、加算カウント値C3を±0カウントに設定する(手順S115)。
【0118】
燃焼時間決定部51Bは、アンモニアガスの圧力Pgが閾値Pd1以上であり且つ閾値Pu1以下であるという条件を満たしていないと判断したときは、アンモニアガスの圧力Pgが閾値Pd1よりも低いかどうかを判断する(手順S116B)。燃焼時間決定部51Bは、アンモニアガスの圧力Pgが閾値Pd1よりも低いと判断したときは、加算カウント値C3を+1カウントに設定する(手順S117)。
【0119】
燃焼時間決定部51Bは、アンモニアガスの圧力Pgが閾値Pd1よりも低くない、つまりアンモニアガスの圧力Pgが閾値Pu1よりも高いと判断したときは、加算カウント値C3を-1カウントに設定する(手順S118)。その後、燃焼時間決定部51Bは、上記の手順S119,S120を順次実行する。
【0120】
このような本実施形態では、燃焼器35に供給されるアンモニアガスの流量に関する状態量として、気化器22により生成されたアンモニアガスの圧力が検出される。気化器22により生成されたアンモニアガスの圧力が高くなると、上記の第2実施形態と同様に、燃焼器35に供給されるアンモニアガスの流量が増加し、燃焼ガスの温度が低下するため、改質器23の改質触媒33の加熱が遅くなる。そこで、気化器22により生成されたアンモニアガスの圧力を検出し、アンモニアガスの圧力を加味して燃焼器35の燃焼時間を決定することにより、気化器22により生成されたアンモニアガスの圧力が変化しても、適切な燃焼時間が得られる。
【0121】
図9は、本発明の第4実施形態に係るエンジンシステムを示す概略構成図である。図9において、本実施形態のエンジンシステム1Cは、上記の第1実施形態における電圧センサ47に代えて、吸気圧センサ65を備えている。
【0122】
吸気圧センサ65は、空気流路36を流れる空気の圧力を検出するセンサである。吸気圧センサ65は、燃焼器35の動作環境を検出する動作環境検出部を構成している。空気流路36を流れる空気の圧力が変化すると、燃焼器35に供給される空気に含まれる酸素の濃度が変化する。従って、空気流路36を流れる空気の圧力は、燃焼器35の動作環境として、燃焼器35に供給される空気に含まれる酸素の濃度に関する状態量に相当する。
【0123】
また、エンジンシステム1Cは、上記の第1実施形態におけるコントローラ50に代えて、コントローラ50Cを備えている。コントローラ50Cは、燃焼時間決定部51Cと、上記の始動制御部52とを有している。
【0124】
燃焼時間決定部51Cは、吸気温センサ43により検出された外気温と温度センサ44により検出された改質触媒33の温度と吸気圧センサ65により検出された空気の圧力とに基づいて、燃焼器35の燃焼時間を決定する。
【0125】
図10は、燃焼時間決定部51Cにより実行される燃焼時間決定処理の手順を示すフローチャートであり、図3に対応している。
【0126】
図10において、燃焼時間決定部51Cは、上記の手順S109,S111,S112の何れかを実行した後、吸気圧センサ65により検出された空気の圧力Piを取得する(手順S113C)。そして、燃焼時間決定部51Cは、空気の圧力Piが閾値Pd2以上であり且つ閾値Pu2以下であるかどうかを判断する(手順S114C)。
【0127】
燃焼時間決定部51Cは、空気の圧力Piが閾値Pd2以上であり且つ閾値Pu2以下であるという条件を満たしていると判断したときは、加算カウント値C3を±0カウントに設定する(手順S115)。
【0128】
燃焼時間決定部51Cは、空気の圧力Piが閾値Pd2以上であり且つ閾値Pu2以下であるという条件を満たしていないと判断したときは、空気の圧力Piが閾値Pd2よりも低いかどうかを判断する(手順S116C)。燃焼時間決定部51Cは、空気の圧力Piが閾値Pd2よりも低いと判断したときは、加算カウント値C3を+1カウントに設定する(手順S117)。
【0129】
燃焼時間決定部51Cは、空気の圧力Piが閾値Pd2よりも低くない、つまり空気の圧力Piが閾値Pu2よりも高いと判断したときは、加算カウント値C3を-1カウントに設定する(手順S118)。その後、燃焼時間決定部51Cは、上記の手順S119,S120を順次実行する。
【0130】
このような本実施形態においては、燃焼器35の動作環境は、燃焼器35に供給される空気に含まれる酸素の濃度に関する状態量である。燃焼器35に供給される空気に含まれる酸素の濃度が変化すると、改質器23の改質触媒33の加熱に必要な時間が変わってくる。そこで、燃焼器35に供給される空気に含まれる酸素の濃度に関する状態量を検出することにより、燃焼器35の動作環境に応じた適切な燃焼時間が得られる。
【0131】
また、本実施形態では、燃焼器35に供給される空気に含まれる酸素の濃度に関する状態量として、空気流路36を流れる空気の圧力が検出される。空気流路36を流れる空気の圧力が大気圧よりも低くなると、燃焼器35に供給される空気に含まれる酸素の濃度が薄くなるため、燃料ガスが燃焼されにくくなる。そこで、空気流路36を流れる空気の圧力を検出し、空気の圧力を加味して燃焼器35の燃焼時間を決定することにより、燃焼器35に供給される空気の圧力が変化しても、適切な燃焼時間が得られる。
【0132】
図11は、本発明の第5実施形態に係るエンジンシステムを示す概略構成図である。図11において、本実施形態のエンジンシステム1Dは、上記の第1実施形態における電圧センサ47に代えて、水温センサ67を備えている。
【0133】
水温センサ67は、アンモニアエンジン2を冷却する冷却水の温度を検出するセンサである。水温センサ67は、燃焼器35の動作環境を検出する動作環境検出部を構成している。アンモニアエンジン2の暖気状態が変化すると、改質器23に要求される水素の生成量が変化する。従って、水温センサ67は、燃焼器35の動作環境として、改質器23に要求される水素の生成量に関する状態量に相当する。
【0134】
また、エンジンシステム1Dは、上記の第1実施形態におけるコントローラ50に代えて、コントローラ50Dを備えている。コントローラ50Dは、燃焼時間決定部51Dと、上記の始動制御部52とを有している。
【0135】
燃焼時間決定部51Dは、吸気温センサ43により検出された外気温と温度センサ44により検出された改質触媒33の温度と水温センサ67により検出された冷却水の温度とに基づいて、燃焼器35の燃焼時間を決定する。
【0136】
図12は、燃焼時間決定部51Dにより実行される燃焼時間決定処理の手順を示すフローチャートであり、図3に対応している。
【0137】
図12において、燃焼時間決定部51Dは、上記の手順S109,S111,S112の何れかを実行した後、水温センサ67により検出された冷却水の温度Twを取得する(手順S113D)。そして、燃焼時間決定部51Dは、冷却水の温度Twが閾値Td4以上であり且つ閾値Tu4以下であるかどうかを判断する(手順S114D)。
【0138】
燃焼時間決定部51Dは、冷却水の温度Twが閾値Td4以上であり且つ閾値Tu4以下であるという条件を満たしていると判断したときは、加算カウント値C3を±0カウントに設定する(手順S115)。
【0139】
燃焼時間決定部51Dは、冷却水の温度Twが閾値Td4以上であり且つ閾値Tu4以下であるという条件を満たしていないと判断したときは、冷却水の温度Twが閾値Td4よりも低いかどうかを判断する(手順S116D)。燃焼時間決定部51Dは、冷却水の温度Twが閾値Td4よりも低いと判断したときは、加算カウント値C3を+1カウントに設定する(手順S117)。
【0140】
燃焼時間決定部51Dは、冷却水の温度Twが閾値Td4よりも低くない、つまり冷却水の温度Twが閾値Tu4よりも高いと判断したときは、加算カウント値C3を-1カウントに設定する(手順S118)。その後、燃焼時間決定部51Dは、上記の手順S119,S120を順次実行する。
【0141】
このような本実施形態においては、燃焼器35の動作環境は、改質器23に要求される水素の生成量に関する状態量である。改質器23に要求される水素の生成量が変化すると、改質器23の改質触媒33の加熱に必要な時間が変わってくる。そこで、改質器23に要求される水素の生成量に関する状態量を検出することにより、燃焼器35の動作環境に応じた適切な燃焼時間が得られる。
【0142】
また、本実施形態では、改質器23に要求される水素の生成量に関する状態量として、アンモニアエンジン2を冷却する冷却水の温度が検出される。アンモニアエンジン2が冷間始動時よりも高い暖気状態では、改質器23に要求される水素の生成量が冷間始動時よりも少なくて済む。そこで、アンモニアエンジン2を冷却する冷却水の温度を検出することにより、アンモニアエンジン2の暖気状態が変化しても、適切な燃焼時間が得られる。
【0143】
図13は、本発明の第6実施形態に係るエンジンシステムを示す概略構成図である。図13において、本実施形態のエンジンシステム1Eは、上記の第1実施形態における電圧センサ47に代えて、油温センサ69を備えている。
【0144】
油温センサ69は、アンモニアエンジン2内のエンジンオイルの温度を検出するセンサである。油温センサ69は、燃焼器35の動作環境を検出する動作環境検出部を構成している。第5実施形態で上述した通り、アンモニアエンジン2の暖気状態が変化すると、改質器23に要求される水素の生成量が変化する。従って、油温センサ69は、燃焼器35の動作環境として、改質器23に要求される水素の生成量に関する状態量に相当する。
【0145】
また、エンジンシステム1Eは、上記の第1実施形態におけるコントローラ50に代えて、コントローラ50Eを備えている。コントローラ50Eは、燃焼時間決定部51Eと、上記の始動制御部52とを有している。
【0146】
燃焼時間決定部51Eは、吸気温センサ43により検出された外気温と温度センサ44により検出された改質触媒33の温度と油温センサ69により検出されたエンジンオイルの温度とに基づいて、燃焼器35の燃焼時間を決定する。
【0147】
図14は、燃焼時間決定部51Eにより実行される燃焼時間決定処理の手順を示すフローチャートであり、図3に対応している。
【0148】
図14において、燃焼時間決定部51Eは、上記の手順S109,S111,S112の何れかを実行した後、油温センサ69により検出されたエンジンオイルの温度Thを取得する(手順S113E)。そして、燃焼時間決定部51Eは、エンジンオイルの温度Thが閾値Td5以上であり且つ閾値Tu5以下であるかどうかを判断する(手順S114E)。
【0149】
燃焼時間決定部51Eは、エンジンオイルの温度Thが閾値Td5以上であり且つ閾値Tu5以下であるという条件を満たしていると判断したときは、加算カウント値C3を±0カウントに設定する(手順S115)。
【0150】
燃焼時間決定部51Eは、エンジンオイルの温度Thが閾値Td5以上であり且つ閾値Tu5以下であるという条件を満たしていないと判断したときは、エンジンオイルの温度Thが閾値Td5よりも低いかどうかを判断する(手順S116E)。燃焼時間決定部51Eは、エンジンオイルの温度Thが閾値Td5よりも低いと判断したときは、加算カウント値C3を+1カウントに設定する(手順S117)。
【0151】
燃焼時間決定部51Eは、エンジンオイルの温度Thが閾値Td5よりも低くない、つまりエンジンオイルの温度Thが閾値Tu5よりも高いと判断したときは、加算カウント値C3を-1カウントに設定する(手順S118)。その後、燃焼時間決定部51Eは、上記の手順S119,S120を順次実行する。
【0152】
このような本実施形態では、改質器23に要求される水素の生成量に関する状態量として、アンモニアエンジン2内のエンジンオイルの温度が検出される。第5実施形態で上述した通り、アンモニアエンジン2が冷間始動時よりも高い暖気状態では、改質器23に要求される水素の生成量が冷間始動時よりも少なくて済む。そこで、アンモニアエンジン2内のエンジンオイルの温度を検出することにより、アンモニアエンジン2の暖気状態が変化しても、適切な燃焼時間が得られる。
【0153】
図15は、本発明の第7実施形態に係るエンジンシステムを示す概略構成図である。図15において、本実施形態のエンジンシステム1Fは、上記の第1実施形態におけるコントローラ50に代えて、時間を計測するタイマ55が内蔵されたコントローラ50Fを備えている。コントローラ50Fは、燃焼時間決定部51Fと、始動制御部52Fとを有している。
【0154】
図16は、燃焼時間決定部51Fにより実行される燃焼時間決定処理の手順を示すフローチャートであり、図3に対応している。本処理では、燃焼の基準時間t0が予め設定されている。基準時間t0は、通常状態において改質器23の改質触媒33が反応温度に達するような値である。
【0155】
図16において、燃焼時間決定部51Fは、上記の手順S101において外気温Toが閾値Td1以上であり且つ閾値Tu1以下であるという条件を満たしていると判断したときは、加算時間t1を±0秒に設定する(手順S103F)。加算時間t1は、外気温Toに応じた第1時間に相当する。
【0156】
燃焼時間決定部51Fは、上記の手順S104において外気温Toが閾値Td1よりも低いと判断したときは、加算時間t1を+0.1秒に設定する(手順S105F)。燃焼時間決定部51Fは、外気温Toが閾値Tu1よりも高いと判断したときは、加算時間t1を-0,1秒に設定する(手順S106F)。
【0157】
その後、燃焼時間決定部51Fは、上記の手順S108において改質触媒33の温度Tcが閾値Td2以上であり且つ閾値Tu2以下であるという条件を満たしていると判断したときは、加算時間t2を±0秒に設定する(手順S109F)。加算時間t2は、改質触媒33の温度Tcに応じた第2時間に相当する。
【0158】
燃焼時間決定部51Fは、上記の手順S110において改質触媒33の温度Tcが閾値Td2よりも低いと判断したときは、加算時間t2を+0.1秒に設定する(手順S111F)。燃焼時間決定部51Fは、改質触媒33の温度Tcが閾値Tu2よりも高いと判断したときは、加算時間t2を-0.1秒に設定する(手順S112F)。
【0159】
その後、燃焼時間決定部51Fは、上記の手順S114においてバッテリ46の電圧Vcが閾値Vd以上であり且つ閾値Vu以下であるという条件を満たしていると判断したときは、加算時間t3を±0秒に設定する(手順S115F)。加算時間t3は、バッテリ46の電圧Vcに応じた第3時間に相当する。
【0160】
燃焼時間決定部51Fは、上記の手順S116においてバッテリ46の電圧Vcが閾値Vdよりも低いと判断したときは、加算時間t3を+0.1秒に設定する(手順S117F)。燃焼時間決定部51Fは、バッテリ46の電圧Vcが閾値Vuよりも高いと判断したときは、加算時間t3を-0.1秒に設定する(手順S118F)。
【0161】
続いて、燃焼時間決定部51Fは、基準時間t0に加算時間t1~t3を加算することにより、燃焼器35の燃焼時間を算出する(手順S119F)。そして、燃焼時間決定部51Fは、燃焼器35の燃焼時間を始動制御部52Fに出力する(手順S120F)。
【0162】
なお、本処理では、加算時間t1~t3は、条件に応じて±0秒、+0.1秒及び-0.1秒にそれぞれ設定されているが、特にその値には限られない。
【0163】
図17は、始動制御部52Fにより実行される始動制御処理の手順を示すフローチャートであり、図4に対応している。
【0164】
図17において、始動制御部52Fは、上記の手順S131~S140を実行した後、タイマ55の計測時間を取得する(手順S141F)。そして、始動制御部52Fは、スタータ45がON制御されてからのタイマ55の計測時間が、燃焼時間決定部51Fにより決定された燃焼時間に到達したかどうかを判断する(手順S142F)。つまり、始動制御部52Fは、燃焼時間決定部51Fにより決定された燃焼時間が経過したかどうかを判断する。
【0165】
始動制御部52Fは、タイマ55の計測時間が燃焼時間に到達していないと判断したときは、手順S141Fを再度実行する。始動制御部52Fは、タイマ55の計測時間が燃焼時間に到達したと判断したときは、上記の手順S143~S150を実行する。
【0166】
以上のような本実施形態においても、外気温及び改質触媒33の温度に加えて、燃焼器35の動作環境を検出することにより、燃焼器35の動作環境に応じた適切な燃焼時間が得られるため、改質器23の改質触媒33の過昇温及び昇温不足が防止される。これにより、燃焼器35の動作環境に関わらず、改質器23の改質触媒33が適切な温度まで上昇する。
【0167】
また、本実施形態では、タイマ55を使用することにより、ТDCカウンタ48が搭載されていなくても、燃焼器35による燃焼動作の停止タイミングであるかどうかを判定することができる。
【0168】
以上、本発明の実施形態について幾つか説明してきたが、本発明は上記実施形態には限定されない。例えば、上記の第1~第6実施形態を組み合わせて実施してもよい。
【0169】
また、上記実施形態では、スタータ45がONされた後、燃焼インジェクタ38及び燃焼スロットルバルブ37の開制御と、改質インジェクタ26及び改質スロットルバルブ25の開制御と、メインインジェクタ5及びメインスロットルバルブ6の開制御とが並行して実行されているが、これらのバルブの開制御シーケンスとしては、特にそのような形態には限られない。例えば、アンモニアエンジン2において未燃のアンモニアガスの量を減らすために、燃焼インジェクタ38及び燃焼スロットルバルブ37の開制御を行った後に、改質インジェクタ26の開制御を実行してもよい。
【0170】
また、燃焼器35の燃焼時間が経過した後、改質インジェクタ26及び改質スロットルバルブ25の開度制御と、メインインジェクタ5及びメインスロットルバルブ6の開度御とが並行して実行されているが、これらのバルブの開度制御シーケンスとしては、特にそのような形態には限られない。
【0171】
また、上記実施形態では、燃焼器35の燃焼時間が経過すると、燃焼器35の点火プラグ40がOFFされると共に、燃焼インジェクタ38及び燃焼スロットルバルブ37が閉弁されているが、アンモニアエンジン2の状態によっては、燃焼器35の燃焼時間が経過する前に、燃焼器35の点火プラグ40をOFFすると共に、燃焼インジェクタ38及び燃焼スロットルバルブ37を閉弁してもよい。つまり、遅くとも燃焼器35の燃焼時間が経過したときに、燃焼器35によるアンモニアガスの燃焼動作を完了すればよい。
【0172】
図18は、図1に示されたエンジンシステム1の変形例を示す概略構成図である。図18において、本変形例のエンジンシステム1Gは、上記の第1実施形態における構成に加え、Oセンサ71~73を備えている。
【0173】
センサ71は、燃焼器35の下流である供給管39内を流れる酸素の濃度を検出するセンサである。Oセンサ72は、改質器23の下流である改質ガス流路27を流れる酸素の濃度を検出するセンサである。Oセンサ73は、アンモニアエンジン2の下流である排気通路4を流れる酸素の濃度を検出するセンサである。
【0174】
また、エンジンシステム1Gは、上記の第1実施形態におけるコントローラ50に代えて、コントローラ50Gを備えている。コントローラ50Gは、上記の燃焼時間決定部51と、始動制御部52Gとを有している。
【0175】
図19は、始動制御部52Gにより実行される始動制御処理の手順を示すフローチャートであり、図4に対応している。
【0176】
図19において、始動制御部52Gは、上記の手順S131~S140を実行した後、Oセンサ71~73の検出値を取得する(手順S161)。そして、始動制御部52Gは、供給管39内、改質ガス流路27及び排気通路4を流れる酸素の濃度の何れかが規定値以上であるかどうかを判断する(手順S162)。
【0177】
始動制御部52Gは、供給管39内、改質ガス流路27及び排気通路4を流れる酸素の濃度の何れかが規定値以上であると判断したときは、上記の手順S141~S150を実行する。始動制御部52Gは、供給管39内、改質ガス流路27及び排気通路4を流れる酸素の濃度が全て規定値よりも低いと判断したときは、上記の手順S141,S142を実行せずに、上記の手順S143~S150を実行する。
【0178】
アンモニアエンジン2が正常に燃焼すると、供給管39内、改質ガス流路27及び排気通路4を流れる酸素の濃度が低くなる。従って、燃焼時間決定部51により決定された燃焼時間が経過する前であっても、燃焼器35による燃焼を終了してもよい。
【0179】
図20は、図1に示されたエンジンシステム1の他の変形例を示す概略構成図である。図20において、本変形例のエンジンシステム1Hは、上記の第1実施形態における構成に加え、回転変動検知部75を備えている。回転変動検知部75は、例えばアンモニアエンジン2のクランクシャフト13(図2参照)の回転周期(回転周波数)の変動量を検出することにより、アンモニアエンジン2の回転変動量を検知する。
【0180】
また、エンジンシステム1Hは、上記の第1実施形態におけるコントローラ50に代えて、コントローラ50Hを備えている。コントローラ50Hは、上記の燃焼時間決定部51と、始動制御部52Hとを有している。
【0181】
図21は、始動制御部52Hにより実行される始動制御処理の手順を示すフローチャートであり、図4に対応している。
【0182】
図21において、始動制御部52Hは、上記の手順S131~S140を実行した後、回転変動検知部75の検知データを取得する(手順S164)。そして、始動制御部52Hは、アンモニアエンジン2の回転変動量が規定値以下であるかどうかを判断する(手順S165)。
【0183】
始動制御部52Hは、アンモニアエンジン2の回転変動量が規定値以下であると判断したときは、上記の手順S141~S150を実行する。始動制御部52Hは、アンモニアエンジン2の回転変動量が規定値よりも大きいと判断したときは、上記の手順S141,S142を実行せずに、上記の手順S143~S150を実行する。
【0184】
アンモニアエンジン2が正常に燃焼すると、クランクシャフト13の回転周波数が高くなることで、アンモニアエンジン2の回転変動量が大きくなる。従って、燃焼時間決定部51により決定された燃焼時間が経過する前であっても、燃焼器35による燃焼を終了してもよい。
【0185】
図22は、図1に示されたエンジンシステム1の更に他の変形例を示す概略構成図である。図22において、本変形例のエンジンシステム1Kは、上記の第1実施形態における構成に加え、圧力センサ77を備えている。圧力センサ77は、アンモニアエンジン2の上流側の圧力(吸気圧)を検出するセンサである。具体的には、圧力センサ77は、吸気通路3におけるメインスロットルバルブ6とアンモニアエンジン2との間の圧力を検出する。
【0186】
また、エンジンシステム1Kは、上記の第1実施形態におけるコントローラ50に代えて、コントローラ50Kを備えている。コントローラ50Kは、上記の燃焼時間決定部51と、始動制御部52Kとを有している。
【0187】
図23は、始動制御部52Kにより実行される始動制御処理の手順を示すフローチャートであり、図4に対応している。
【0188】
図23において、始動制御部52Kは、上記の手順S131~S140を実行した後、圧力センサ77の検出値を取得する(手順S167)。そして、始動制御部52Kは、アンモニアエンジン2の吸気圧が規定値以上であるかどうかを判断する(手順S168)。
【0189】
始動制御部52Kは、アンモニアエンジン2の吸気圧が規定値以上であると判断したときは、上記の手順S141~S150を実行する。始動制御部52Kは、アンモニアエンジン2の吸気圧が規定値よりも低いと判断したときは、上記の手順S141,S142を実行せずに、上記の手順S143~S150を実行する。
【0190】
アンモニアエンジン2が正常に燃焼すると、クランクシャフト13の回転周波数が高くなるため、アンモニアエンジン2内の負圧が高くなる。従って、燃焼時間決定部51により決定された燃焼時間が経過する前であっても、燃焼器35による燃焼を終了してもよい。
【0191】
また、上記実施形態では、燃焼スロットルバルブ37が備えられているが、燃焼スロットルバルブ37の使用時間が短い場合には、燃焼スロットルバルブ37は特に無くてもよい。
【0192】
また、上記実施形態では、温度センサ44により改質器23の何れかの箇所の温度を検出することにより、改質触媒33の現在の温度が検出されているが、特にそのような形態には限られない。例えば、車両の運転停止時の改質触媒33の温度を温度センサ44により検出し、運転停止時の改質触媒33の温度と、アンモニアエンジン2の停止から再始動までの時間とを用いて、アンモニアエンジン2の再始動時の改質触媒33の温度を判定してもよい。
【0193】
また、上記実施形態では、改質器23は、アンモニアガスを燃焼させる機能とアンモニアガスを水素に分解する機能とを併せ持った改質触媒33を有しているが、特にそのような形態には限られない。改質器23は、アンモニアガスを燃焼させる燃焼触媒と、アンモニアガスを水素に分解する改質触媒とを別々に有していてもよい。
【0194】
また、上記実施形態では、燃料としてアンモニアガスが使用されているが、本発明は、燃料として炭化水素等を使用するエンジンシステムにも適用可能である。
【符号の説明】
【0195】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H,1K…エンジンシステム、2…アンモニアエンジン(エンジン)、3…吸気通路、4…排気通路、5…メインインジェクタ(第1燃料供給弁)、6…メインスロットルバルブ(第1流量制御弁)、23…改質器、24…空気流路(第1空気流路)、25…改質スロットルバルブ(第2流量制御弁)、26…改質インジェクタ(第2燃料供給弁)、27…改質ガス流路、33…改質触媒(触媒)、35…燃焼器、36…空気流路(第2空気流路)、38…燃焼インジェクタ(第3燃料供給弁)、40…点火プラグ(点火部)、43…吸気温センサ(外気温検出部)、44…温度センサ(触媒温度検出部)、45…スタータ、46…バッテリ、47…電圧センサ(動作環境検出部)、51,51A,51B,51C,51D,51E,51F…燃焼時間決定部、52,52F,52G,52H,52K…始動制御部、61…温度センサ(動作環境検出部)、63…圧力センサ(動作環境検出部)、65…吸気圧センサ(動作環境検出部)、67…水温センサ(動作環境検出部)、69…油温センサ(動作環境検出部)、x…基準TDCカウント値(基準時間)、C1…加算カウント値(第1時間)、C2…加算カウント値(第2時間)、C3…加算カウント値(第3時間)、t0…基準時間、t1…加算時間(第1時間)、t2…加算時間(第2時間)、t3…加算時間(第3時間)。
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