IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • -チップトレイおよび半導体装置の製造方法 図1
  • -チップトレイおよび半導体装置の製造方法 図2
  • -チップトレイおよび半導体装置の製造方法 図3
  • -チップトレイおよび半導体装置の製造方法 図4
  • -チップトレイおよび半導体装置の製造方法 図5
  • -チップトレイおよび半導体装置の製造方法 図6
  • -チップトレイおよび半導体装置の製造方法 図7
  • -チップトレイおよび半導体装置の製造方法 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】チップトレイおよび半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/673 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
H01L21/68 U
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021209466
(22)【出願日】2021-12-23
(65)【公開番号】P2023094159
(43)【公開日】2023-07-05
【審査請求日】2023-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 隆文
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-184465(JP,A)
【文献】特開2019-51645(JP,A)
【文献】特開平4-109650(JP,A)
【文献】特開昭61-206744(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112435952(CN,A)
【文献】実開昭64-13133(JP,U)
【文献】特開平2-116488(JP,A)
【文献】特開平3-35990(JP,A)
【文献】特開2004-55707(JP,A)
【文献】特開2009-72849(JP,A)
【文献】特開2011-167785(JP,A)
【文献】特開平5-69367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ搭載面を有し、前記チップ搭載面に複数の窪みが設けられた搭載板と、
前記複数の窪みにそれぞれ収納された複数の金属体と、
前記搭載板に設けられた通風路と、
を備え、
前記複数の窪みの各々は、前記金属体を収納する変圧室と、前記変圧室よりも前記チップ搭載面側に設けられた減圧室と、を有し、前記変圧室と前記減圧室の境界で前記金属体よりも幅が小さく、
前記通風路は、前記複数の窪みの複数の前記変圧室と前記搭載板の外部とを繋ぐことを特徴とするチップトレイ。
【請求項2】
前記窪みには、前記変圧室と前記減圧室を区切り、前記金属体よりも幅が小さい貫通孔が形成されたストッパが設けられることを特徴とする請求項1に記載のチップトレイ。
【請求項3】
前記ストッパは、前記窪みの側面から前記貫通孔に近づくほど前記チップ搭載面側に傾斜していることを特徴とする請求項2に記載のチップトレイ。
【請求項4】
前記減圧室は、前記金属体よりも幅が小さいことを特徴とする請求項1に記載のチップトレイ。
【請求項5】
前記変圧室のうち前記減圧室に連なる壁面にはコーティングが設けられることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のチップトレイ。
【請求項6】
前記コーティングは、前記搭載板の母材と比較して変形し易いことを特徴とする請求項5に記載のチップトレイ。
【請求項7】
前記金属体が前記窪みの底部に接した状態で、前記金属体と前記境界の間には隙間が設けられることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載のチップトレイ。
【請求項8】
前記金属体は球体であることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載のチップトレイ。
【請求項9】
前記金属体は長球であることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載のチップトレイ。
【請求項10】
前記通風路の減圧および前記通風路への大気の供給が可能な排気装置を備えることを特徴とする請求項1から9の何れか1項に記載のチップトレイ。
【請求項11】
前記複数の金属体を移動させることが可能な磁力発生部を備えることを特徴とする請求項1から10の何れか1項に記載のチップトレイ。
【請求項12】
前記磁力発生部は永久磁石であることを特徴とする請求項11に記載のチップトレイ。
【請求項13】
前記磁力発生部は、前記複数の窪みに対応するように設けられた複数のソレノイドコイルであることを特徴とする請求項11に記載のチップトレイ。
【請求項14】
チップ搭載面に複数の窪みが設けられ、前記複数の窪みの各々は、金属体を収納する変圧室と、前記変圧室よりも前記チップ搭載面側に設けられた減圧室と、を有する搭載板の前記チップ搭載面に、少なくとも1つの前記窪みを覆うようにチップを搭載し、
前記チップに覆われた前記窪みの前記変圧室と前記減圧室を減圧して、前記チップを前記チップ搭載面に吸着し、
前記チップを吸着した状態で前記変圧室に大気を供給し、前記変圧室と前記減圧室の圧力差によって前記変圧室と前記減圧室の境界に前記金属体を固定し、前記境界を前記金属体で塞ぐことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記境界が前記金属体で塞がれた状態で、磁力により前記金属体を移動させ前記減圧室に大気を供給して、前記チップを吸着状態から解放することを特徴とする請求項14に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記磁力は永久磁石により供給されることを特徴とする請求項15に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記磁力は前記複数の窪みに対応するように設けられた複数のソレノイドコイルから供給されることを特徴とする請求項15に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、チップトレイおよび半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被検査体の収納トレイが開示されている。この収納トレイは、被検査体を個別に収納するように区画形成された収納部と、この収納部の底面に被検査体を吸引する際に用いられる吸引孔とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-98361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のチップトレイでは、半導体チップはチップサイズに応じた大きさのポケットに収納される。このため、チップサイズ毎にポケットの大きさを変える必要があり、チップサイズ毎に金型が必要となる。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、チップトレイに様々なサイズのチップを搭載可能なチップトレイおよび半導体装置の製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るチップトレイは、チップ搭載面を有し、前記チップ搭載面に複数の窪みが設けられた搭載板と、前記複数の窪みにそれぞれ収納された複数の金属体と、前記搭載板に設けられた通風路と、を備え、前記複数の窪みの各々は、前記金属体を収納する変圧室と、前記変圧室よりも前記チップ搭載面側に設けられた減圧室と、を有し、前記変圧室と前記減圧室の境界で前記金属体よりも幅が小さく、前記通風路は、前記複数の窪みの複数の前記変圧室と前記搭載板の外部とを繋ぐ。
【0007】
本開示に係る半導体装置の製造方法は、チップ搭載面に複数の窪みが設けられ、前記複数の窪みの各々は、金属体を収納する変圧室と、前記変圧室よりも前記チップ搭載面側に設けられた減圧室と、を有する搭載板の前記チップ搭載面に、少なくとも1つの前記窪みを覆うようにチップを搭載し、前記チップに覆われた前記窪みの前記変圧室と前記減圧室を減圧して、前記チップを前記チップ搭載面に吸着し、前記チップを吸着した状態で前記変圧室に大気を供給し、前記変圧室と前記減圧室の圧力差によって前記変圧室と前記減圧室の境界に前記金属体を固定し、前記境界を前記金属体で塞ぐ。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係るチップトレイおよび半導体装置の製造方法では、金属体により減圧室と変圧室の境界を塞ぐことで、チップをチップ搭載面に固定できる。従って、チップトレイに様々なサイズのチップを搭載できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係るチップトレイの平面図である。
図2図1をI-II直線で切断することで得られる断面図である。
図3】実施の形態1に係る窪みの内部を真空引きする工程を説明する図である。
図4】実施の形態1に係る変圧室に大気を供給する工程を説明する図である。
図5】実施の形態1に係る金属体を移動させる工程を説明する図である。
図6】実施の形態1の変形例に係る金属体を移動させる工程を説明する図である。
図7】実施の形態2に係るチップトレイの断面図である。
図8】実施の形態2の変形例に係るチップトレイの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
各実施の形態に係るチップトレイおよび半導体装置の製造方法について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るチップトレイ100の平面図である。チップトレイ100は、チップ搭載面11を有する搭載板10を備える。チップ搭載面11には、複数の窪み20が設けられる。窪み20はチップ搭載面11に等間隔に設けられる。チップ搭載面11に設けられる窪み20の数および配置は限定されない。チップ搭載面11には半導体チップであるチップ1a、1bが搭載される。チップ搭載面11には、複数の形状のチップ1a、1bを搭載できる。
【0012】
図2は、図1をI-II直線で切断することで得られる断面図である。チップ搭載面11の高さは一定である。窪み20はチップ搭載面11から搭載板10の裏面に向かって伸長している。複数の窪みには、それぞれ金属体30が収納される。金属体30は、例えば球体である。金属体30の直径W3は、窪み20の幅W1よりも小さい。複数の窪み20の各々は、金属体30を収納する変圧室21と、変圧室21よりもチップ搭載面11側に設けられた減圧室22を有する。窪み20は、変圧室21と減圧室22の境界で金属体30よりも幅が小さい。金属体30が窪み20の底部に接した状態で、変圧室21と減圧室22の境界と、金属体30との間には隙間が設けられる。
【0013】
窪み20には、変圧室21と減圧室22を区切るストッパ23が設けられる。ストッパ23には、中央部に金属体30よりも幅が小さい貫通孔23aが形成されている。この貫通孔23aが変圧室21と減圧室22の境界を形成する。ストッパ23は、窪み20の側面から貫通孔23aに近づくほど、チップ搭載面11側に傾斜している。
【0014】
搭載板10には通風路40が設けられる。通風路40は、複数の窪み20の複数の変圧室21と搭載板10の外部とを繋ぐ。通風路40は複数の変圧室21を連結する。金属体30の直径W3は通風路40の幅T2より大きい。
【0015】
例えば、窪み20の幅W1は3mm、金属体30の直径W3は2mm、通風路40の幅T2は0.8mmである。また、チップ搭載面11から通風路40までの距離T1は例えば9.2mmであり、搭載板10の厚さは10mmである。また、窪み20の間隔W2は例えば2mmである。
【0016】
次に、本実施の形態のチップトレイ100を用いた半導体装置の製造方法を説明する。まず、搭載板10のチップ搭載面11に、少なくとも1つの窪み20を覆うようにチップ1bを搭載する。
【0017】
次に、チップ1bに覆われた窪み20の変圧室21と減圧室22を減圧して、チップ1bをチップ搭載面11に吸着する。図3は、実施の形態1に係る窪み20の内部を真空引きする工程を説明する図である。搭載板10には、通風路40の減圧および通風路40への大気の供給が可能な排気装置60が接続される。排気装置60の真空引きにより、チップ1bに覆われた窪み20の内部の気圧が低下するとともに、チップ1bはチップ搭載面11に引き付けられる。矢印81、82は、このときの大気の流れを示す。この際、金属体30は通風路40および貫通孔23aを塞がず、真空引きを妨げない。
【0018】
次に、チップ1bを吸着した状態で変圧室21に大気を供給する。図4は、実施の形態1に係る変圧室21に大気を供給する工程を説明する図である。排気装置60は、窪み20の内部の気圧を十分低下させた状態で、真空引きを中止し、大気を通風路40へ流入させる。矢印83はこのときの大気の流れを示す。このとき、変圧室21と減圧室22の圧力差によって変圧室21と減圧室22の境界に金属体30が固定される。これにより、変圧室21と減圧室22の境界である貫通孔23aが金属体30で塞がれる。このため、減圧室22は大気圧である変圧室21よりも気圧が低い真空状態に維持される。従って、チップ1bを吸着状態に維持して、チップ搭載面11に固定できる。
【0019】
チップ1bをチップトレイ100に固定して搬送した後、チップ1bをチップトレイ100から取り外す。図5は、実施の形態1に係る金属体30を移動させる工程を説明する図である。この工程では、貫通孔23aが金属体30で塞がれた状態で、磁力により金属体30を移動させる。これにより、減圧室22に大気を供給して、チップ1bを吸着状態から解放する。
【0020】
このとき、搭載板10の下方に、複数の金属体30を移動させることが可能な磁力発生部を配置する。磁力発生部は例えば永久磁石50である。永久磁石50により供給される磁力により、ストッパ23に固定されていた金属体30を、矢印84に示されるように窪み20の底部側へ移動させる。これにより真空状態が破壊され、チップ1bが解放される。次に、チップ1bに搬送後の処理を施し、半導体装置が完成する。
【0021】
次に、本実施の形態の効果について説明する。本実施の形態では、金属体30により変圧室21と減圧室22の境界を塞ぐことで、チップ1bをチップ搭載面11に固定できる。このため、チップトレイ100にポケットを設ける必要がなく、同一形状のチップトレイ100に様々なサイズのチップを搭載できる。
【0022】
また、チップトレイを重ねて搬送する際に、チップがトレイ内でばらけないようにトレイ間に層間紙を挿入する場合がある。一般に層間紙は使い捨てであり、搬送のためのコストが上昇するおそれがあった。これに対し本実施の形態では、チップ1bをチップトレイ100に真空吸着させるため、チップトレイ100内でチップ1bがばらけることを抑制できる。従って、層間紙を省略でき、搬送コストを抑制できる。
【0023】
また、チップ1bをチップトレイ100から解放する際には、永久磁石50により複数のチップ1bを一括して効率よく開放できる。
【0024】
図6は、実施の形態1の変形例に係る金属体30を移動させる工程を説明する図である。磁力発生部は、複数の窪み20に対応するように設けられた複数のソレノイドコイル52であっても良い。ソレノイドコイル52に電流を流すことで磁力が発生する。ソレノイドコイル52は、例えば搭載板10内部に含まれない外付けの機構である。
【0025】
複数のソレノイドコイル52において、通電されたコイルのみが磁力を供給する。図6の例では、複数のコイル52a、52bのうちコイル52aのみに通電されている。このため、コイル52aに対応する金属体30のみが矢印84に示される方向に移動している。このように、複数の窪み20から真空を破壊する窪み20を選択することができる。つまり、解放するチップを選択できる。特に、チップトレイ100に様々なサイズのチップを搭載する場合、真空を破壊する窪み20を選択できることは効果的である。
【0026】
本実施の形態の窪み20は平面視で円形である。これに限らず、窪み20は平面視で楕円形または多角形等であっても良い。
【0027】
これらの変形は、以下の実施の形態に係るチップトレイおよび半導体装置の製造方法について適宜応用することができる。なお、以下の実施の形態に係るチップトレイおよび半導体装置の製造方法については実施の形態1との共通点が多いので、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0028】
実施の形態2.
図7は、実施の形態2に係るチップトレイ200の断面図である。本実施の形態では、搭載板210に設けられた窪み220の構造が窪み20と異なる。他の構成は実施の形態1の構成と同様である。本実施の形態の窪み220は、金属体30を収納する変圧室221と、変圧室221よりも幅が小さい減圧室222を有する。減圧室222は、金属体30よりも幅が小さい。このため、本実施の形態においても、変圧室221と減圧室222の圧力差によって変圧室221と減圧室222の境界に金属体30を固定し、境界を金属体30で塞ぐことができる。
【0029】
変圧室221の幅は、減圧室222に近づくほど狭くなる。変圧室221のうち減圧室222に連なる壁面にはコーティング224が設けられる。コーティング224は、減圧室222の真空状態の破壊を抑制するために設けられる。コーティング224は、搭載板210の母材と比較して変形し易い。コーティング224の厚さは、例えば10μmである。コーティング224は、例えばゴムまたは樹脂で形成される。変圧室221と減圧室222の境界が金属体30で塞がれた状態で、コーティング224と金属体30が密着する。これにより、減圧室222の真空状態を維持し易くできる。
【0030】
図8は、実施の形態2の変形例に係るチップトレイ300の断面図である。金属体30は球体に限らない。金属体30の形状として、真球に限らず、変圧室221と減圧室222の境界を塞ぐことが可能なあらゆる形状を採用できる。例えば長球である金属体330を採用しても良い。これにより、金属体330と窪み220の壁面との接触面積を大きくすることができる。従って、真空保持力を向上できる。
【0031】
コーティング224は、実施の形態1のストッパ23の変圧室21側の面に設けられても良い。また、金属体330は実施の形態1に適用されても良い。各実施の形態で説明した技術的特徴は適宜に組み合わせて用いても良い。
【符号の説明】
【0032】
1a、1b チップ、10 搭載板、11 チップ搭載面、20 窪み、21 変圧室、22 減圧室、23 ストッパ、23a 貫通孔、30 金属体、40 通風路、50 永久磁石、52 ソレノイドコイル、52a コイル、60 排気装置、100、200 チップトレイ、210 搭載板、220 窪み、221 変圧室、222 減圧室、224 コーティング、300 チップトレイ、330 金属体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8