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7586073電極付きヘッドギア、気体供給装置及び電極装着システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】電極付きヘッドギア、気体供給装置及び電極装着システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/256 20210101AFI20241112BHJP
   A61B 5/276 20210101ALI20241112BHJP
【FI】
A61B5/256 110
A61B5/276 300
A61B5/276 200
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021514186
(86)(22)【出願日】2020-04-15
(86)【国際出願番号】 JP2020016521
(87)【国際公開番号】W WO2020213626
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2019078578
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】山下 悦孝
(72)【発明者】
【氏名】小杉 幸夫
【審査官】鳥井 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-260034(JP,A)
【文献】特開2002-177231(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0237923(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05-5/0538
A61B 5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極ユニットを備える電極付きヘッドギアと、前記電極付きヘッドギアに気体を供給する気体供給装置とを含む電極装着システムであって、
電極ユニットは、凸状の電極を複数有し、
前記電極ユニットには、前記電極の凸方向に向けて開口する通気孔が形成され、
電極付きヘッドギアは、前記電極ユニットを前記電極の凸方向に向けて付勢する付勢ユニットを備え、
前記気体供給装置は、前記電極付きヘッドギアが備えられている空間の温度より高い温度に調節された温調気体を前記電極付きヘッドギア内の内部空間に供給する気体供給部を備える電極装着システム。
【請求項2】
前記気体供給部は、前記温調気体を前記内部空間に断続的に供給する請求項1に記載の電極装着システム
【請求項3】
前記気体供給部は、所定湿度以上の霧状の前記温調気体を供給する請求項1または2に記載の電極装着システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳波測定などに用いられる電極付きヘッドギア、気体供給装置及び電極装着システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脳波測定などでは、被験者の頭皮と接触する電極を有する電極付きヘッドギアが広く用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
このような電極付きヘッドギアでは、電極の先端部を頭皮と確実に接触させ、測定対象(頭部)の電気抵抗を抑える(例えば20kΩ以下)ことが重要である。電極数を減らし、電極の先端部を鋭利にすれば、当該電気抵抗を比較的容易に抑制できるが、被験者の不快感や痛みを伴うため、好ましくない。
【0004】
そこで、特許文献1に記載されている電極付きヘッドギアでは、円筒状のリセプタクル部を介して被験者の頭髪が視認できる電極ユニットが採用されている。このため、電極付きヘッドギアを被験者に装着する装着者は、リセプタクル部内の頭髪を掻き分けつつ、電極が接続された円形のゲル状シートをリセプタクル部に挿入できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-177231号公報
【発明の概要】
【0006】
上述した従来の電極付きヘッドギアによれば、電極の先端部を頭皮と確実に接触させ、測定対象(頭部)の電気抵抗を抑制し得るが、頭髪を掻き分ける手間などがあり、改善の余地がある。
【0007】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、被験者の不快感や痛みを回避しつつ、より確実かつ容易に被験者の頭皮に電極の先端部を接触させることができる電極付きヘッドギア、気体供給装置及び電極装着システムの提供を目的とする。
【0008】
本発明の一態様は、電極ユニット(例えば、電極ユニット130)を備える電極付きヘッドギア(電極付きヘッドギア100)であって、前記電極ユニットは、凸状の電極(電極131)を複数有し、前記電極ユニットには、前記電極の凸方向に向けて開口する通気孔(通気孔140a)が形成され、前記電極ユニットを前記電極の凸方向に向けて付勢する付勢ユニット(ソフトバッグ120)を備える。
【0009】
本発明の一態様は、気体供給装置(気体供給装置200)であって、電極付きヘッドギア(例えば、電極付きヘッドギア100)が備えられている空間の温度より高い温度に調節された温調気体を前記電極付きヘッドギアに供給する気体供給部(気体供給部250)を備える。
【0010】
本発明の一態様は、電極ユニットを備える電極付きヘッドギアと、前記電極付きヘッドギアに気体を供給する気体供給装置とを含む電極装着システム(電極装着システム10)であって、電極ユニットは、凸状の電極を複数有し、前記電極ユニットには、前記電極の凸方向に向けて開口する通気孔が形成され、電極付きヘッドギアは、前記電極ユニットを前記電極の凸方向に向けて付勢する付勢ユニットを備え、前記気体供給装置は、前記電極付きヘッドギアが備えられている空間の温度より高い温度に調節された温調気体を前記電極付きヘッドギア内の内部空間に供給する気体供給部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、電極装着システム10及び周辺装置の全体外観図である。
図2図2は、電極付きヘッドギア100の被験者への装着状態を示す図である。
図3図3は、電極付きヘッドギア100の内側平面図である。
図4図4は、図3のF4-F4線に沿った電極付きヘッドギア100の断面図である。
図5図5は、電極ユニット130の単体側面図である。
図6図6は、電極ユニット130の単体側面図である。
図7図7は、気体供給装置200の機能ブロック構成図である。
図8図8は、電極装着システム10の使用手順を示すフロー図である。
図9図9は、電極付きヘッドギア100が被験者の頭部60に装着された状態における電極付きヘッドギア100の断面図である。
図10図10は、変更例に係る電極ユニット130Aの単体側面図である。
図11図11は、変更例に係る電極ユニット130Aの単体平面図である。
図12図12は、変更例に係る電極ユニット130Bの単体側面図である。
図13図13は、変更例に係る電極付きヘッドギア100Aの内側平面図である。
図14図14は、図13のF14-F14線に沿った電極付きヘッドギア100Aの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0013】
(1)電極装着システムの全体概略構成
図1は、電極装着システム10及び周辺装置の全体外観図である。また、図2は、電極付きヘッドギア100の被験者への装着状態を示す図である。
【0014】
図1及び図2に示すように、電極装着システム10は、電極付きヘッドギア100及び気体供給装置200によって構成される。
【0015】
電極付きヘッドギア100は、被験者の頭部60に装着される。電極付きヘッドギア100は、ヘルメット状の外装部110を備え、外装部110には、被験者の頭部60に電極付きヘッドギア100を固定するために、顎紐160が設けられる。
【0016】
電極付きヘッドギア100の内側面には、複数の電極ユニット130(図1において不図示、図5,6参照)が設けられる。
【0017】
電極付きヘッドギア100は、典型的には、被験者の脳波測定(例えば、気分障害やアルツハイマーなどの診断)に用いられる。但し、電極付きヘッドギア100は、脳波測定に限定されず、電極ユニット130を介して頭部60に供給される電流を利用した治療などに用いられてもよい。
【0018】
気体供給装置200は、電極付きヘッドギア100の内部空間120a(図1において不図示、図4参照)に気体を供給する。具体的には、気体供給装置200は、エアホース40を介して電極付きヘッドギア100と接続され、電極付きヘッドギア100の内部空間120aに空気を供給する。
【0019】
また、電極付きヘッドギア100には、電極ケーブル50を介して増幅器20が接続される。増幅器20は、電極ユニット130が検出した電気信号のフィルタリング及び増幅を実行する。
【0020】
測定デバイス30は、増幅器20から出力された電気信号に基づく測定を実行する。本実施形態では、測定デバイス30は、当該電気信号に基づいて被験者の脳波測定を実行する。測定デバイス30は、一般的な汎用のパーソナルコンピュータによって構成されてもよいし、専用の測定装置でもよい。
【0021】
(2)電極付きヘッドギア100の構成
図3は、電極付きヘッドギア100の内側平面図である。図4は、図3のF4-F4線に沿った電極付きヘッドギア100の断面図である。
【0022】
図3及び図4に示すように、電極付きヘッドギア100は、外装部110、ソフトバッグ120及び電極ユニット130を備える。なお、図3及び図4では、顎紐160(図2参照)の図示は省略されている。
【0023】
外装部110は、被験者の頭部60の形状に沿ったヘルメット状である。外装部110は、電極付きヘッドギア100が容易に装着でき、かつ膨らんだソフトバッグ120が頭部60に密着できるように、硬質かつ軽量な材料で形成されることが好ましい。
【0024】
外装部110は、典型的には、一般的な用途のヘルメットと同様に、ABS樹脂などの熱可塑性樹脂を用いて形成できる。
【0025】
但し、電極ユニット130が検出する電気信号への外部からのノイズ(電波)混入防止を考慮すると、少なくとも外装部110の一部は、導電性を有する部材(例えば、金属、炭素繊維)によって形成されることがより好ましい。或いは、外装部110とソフトバッグ120との間に導電性を有するシート状の部材を介在させることによって、外部からのノイズ(電波)混入を防止してもよい。
【0026】
ソフトバッグ120は、被験者の頭部60に密着する。具体的には、ソフトバッグ120は、気密性を有し、自由に変形できる布またはビニールなどの合成樹脂によって形成される。
【0027】
ソフトバッグ120は、閉空間となる内部空間120aを形成する。具体的には、図4に示すように、ソフトバッグ120は、外装部110の内側面111の一部と密着することによって内部空間120aを形成してもよいし、ソフトバッグ120自体が袋状の形状を有することによって、内部空間120aを形成してもよい。
【0028】
ソフトバッグ120は、エアホース40が接続される接続口150を介して気体(空気)を内部空間120aに供給する気体供給装置200(図1参照)と接続される。
【0029】
気体(空気)が内部空間120aに供給されることによって、内部空間120aが一定の内圧となり、ソフトバッグ120は、図3及び図4に示すような形状に膨らむ。
【0030】
ソフトバッグ120が膨らむと、電極ユニット130の電極131を被験者の頭部60に向けて付勢する。本実施形態において、ソフトバッグ120は、付勢ユニットを構成する。
【0031】
一方、内部空間120aへの気体の供給が遮断されると、内部空間120aの内圧が低下し、ソフトバッグ120は萎んだ状態となる。
【0032】
電極ユニット130は、複数の凸状の電極131を有する。本実施形態では、電極付きヘッドギア100には、複数(6個)の電極ユニット130が設けられる。
【0033】
電極ユニット130は、ソフトバッグ120の内側面121(頭部接触面)から一部が露出するようにソフトバッグ120に設けられる。ソフトバッグ120は、電極ユニット130を電極131の凸方向に向けて付勢する。
【0034】
電極ユニット130には、電極ケーブル50から分離した配線51がそれぞれ接続される。
【0035】
(3)電極ユニット130の形状
図5は、電極ユニット130の単体側面図である。図6は、電極131側の電極ユニット130の単体平面図である。
【0036】
図5及び図6に示すように、電極ユニット130は、電極131及び基部140を有する。本実施形態では、電極ユニット130は、導電性のゴムによって形成され、一定の弾力性を有する。
【0037】
電極131は、凸状であり、先端部132を含む。また、電極131の基端部133は、基部140の表面に連なる。
【0038】
先端部132は、被験者の頭部60、具体的には、被験者の頭皮と接触する部分である。本実施形態では、先端部132は、テーパー状である。
【0039】
本実施形態では、電極ユニット130は、複数(10本)の電極131を有する。電極131は、基部140の表面から突出する。
【0040】
基部140は、円盤状である。基部140の周縁部分は、配線接続部141が設けられる。配線接続部141には、電極ケーブル50から延びる配線51(図4参照)が接続される。
【0041】
基部140の外周部分には、凹部142が形成される。ソフトバッグ120には、電極ユニットの取付孔(不図示)が形成されており、凹部142には、ソフトバッグ120の当該取付孔を形成する開口端部分が嵌め込まれる。
【0042】
また、基部140には、通気孔140aが形成されている。通気孔140aは、ソフトバッグ120の内部空間120aと連通し、電極131の凸方向に向けて開口する。
【0043】
気体供給装置200から内部空間120aに供給された気体(空気)は、通気孔140aから電極131の凸方向に向けて排出される。つまり、電極131の先端部132及び通気孔140aは、ソフトバッグの内側面111(頭部接触面)から露出する。
【0044】
(3)気体供給装置の構成
図7は、気体供給装置200の機能ブロック構成図である。図7に示すように、気体供給装置200は、エアタンク210、コンプレッサ220、温度調整部230、湿度調整部240及び気体供給部250を備える。
【0045】
エアタンク210は、気体、具体的には空気を蓄える。コンプレッサ220は、エアタンク210に圧縮された空気を送り込む。
【0046】
温度調整部230は、エアタンク210に蓄えられている空気の温度を調整する。具体的には、温度調整部230は、エアタンク210に蓄えられている空気の温度を測定し、エアタンク210に蓄えられている空気を設定温度になるように加温する。
【0047】
設定温度は、電極付きヘッドギアが備えられている空間の温度より高い温度であることが好ましい。また、設定温度は、被験者、つまり、ヒトの体温よりも少し高い温度であることがより好ましい。但し、この場合、41度以下とすることが妥当である。
【0048】
湿度調整部240は、エアタンク210に蓄えられている空気の温度を調整する。具体的には、湿度調整部240は、エアタンク210に蓄えられている空気の湿度を測定し、エアタンク210に蓄えられている空気を設定湿度になるように加湿する。
【0049】
設定湿度は、エアタンク210に蓄えられている空気がソフトバッグ120の内部空間120a及び電極ユニット130の通気孔140aを介して被験者の頭部60に供給された際に、結露せずに可能な限り高い湿度とすることが好ましい。一般的には、このような湿度(相対湿度)は、80~90%である。これにより、霧状の空気を通気孔140aから排出できる。
【0050】
気体供給部250は、エアタンク210に蓄えられている空気を電極付きヘッドギア100に供給する。
【0051】
具体的には、気体供給部250は、気体供給装置200に入力された供給指示に基づいて、エアタンク210に蓄えられている空気をソフトバッグ120の内部空間120aに供給する。気体供給装置200に対する供給指示は、気体供給装置200の前面に設けられた操作部(不図示)を介して入力されてもよいし、有線または無線通信などによって、外部の装置(不図示)から入力されてもよい。
【0052】
本実施形態では、気体供給部250は、温度調整部230によって設定温度に調節され、かつ湿度調整部240によって設定湿度に調整された空気(温調気体)をソフトバッグ120の内部空間120aに供給する。供給される空気(温調気体)は、上述したように、電極付きヘッドギアが備えられている空間の温度より高い温度、好ましくはヒトの体温よりも少し高い温度に設定されるとともに、所定湿度以上の霧状である。
【0053】
また、気体供給部250は、設定温度及び設定湿度に調整された空気(温調気体)をソフトバッグ120の内部空間120aに断続的に供給してもよい。
【0054】
具体的には、気体供給部250は、所定の周波数(周期)に従って、空気の供給と停止を繰り返す。このような空気は、波動空気と呼ばれてもよい。当該周波数は、0.5Hz~10Hz程度であることが好ましい。
【0055】
(4)電極装着システムの使用手順
図8は、電極装着システム10の使用手順を示すフロー図である。図8に示すフロー図は、被験者の脳波を測定する例を示す。
【0056】
図8に示すように、電極装着システム10の操作者(医療従事者など)は、電極付きヘッドギア100を被験者の頭部60に装着する(S10)。具体的には、操作者は、ソフトバッグ120が萎んだ状態の電極付きヘッドギア100を被験者の頭部60に装着し、顎紐160を被験者の顎に係止する。
【0057】
次いで、操作者は、エアホース40を電極付きヘッドギア100の接続口150に接続する(S20)。エアホース40の他端は、気体供給装置200に接続されている。なお、ここでは、電極ケーブル50は、予め増幅器20を介して測定デバイス30と接続されているものとする。
【0058】
操作者は、気体供給装置200から電極付きヘッドギア100のソフトバッグ120に空気を供給する(S30)。
【0059】
具体的には、操作者は、気体供給装置200を操作し、ソフトバッグ120の内部空間120aに空気を供給する。
【0060】
ソフトバッグ120の内部空間120aに空気を供給する初期段階では、圧力を高めた空気を供給し、ソフトバッグ120を確実に膨らませ、被験者の頭部60に密着させることが好ましい。
【0061】
ソフトバッグ120が規定サイズまで膨らみきると、電極ユニット130に形成された通気孔140aから空気が排出される。
【0062】
図9は、電極付きヘッドギア100が被験者の頭部60に装着された状態における電極付きヘッドギア100の断面図である。図9に示すように、接続口150の孔部150aから流入した空気流Fは、ソフトバッグ120を膨らませ、内部空間120aを拡張する。
【0063】
また、ソフトバッグ120が規定サイズまで膨らみきると、空気流Fは、電極ユニット130に形成された通気孔140aからソフトバッグ120の外部に噴き出す。具体的には、空気流Fは、通気孔140aから被験者の頭部60に向けて噴き出す。
【0064】
なお、上述したように、気体供給装置200からソフトバッグ120の内部空間120aに供給される空気は、設定温度及び設定湿度に調整されている。また、ソフトバッグ120の内部空間120aには、所定の周波数に従って断続的に空気が供給されてもよい。
【0065】
このような空気流Fが通気孔140aからソフトバッグ120の外部に勢いよく噴き出すと、空気流Fによって被験者の頭髪61が掻き分けられた空間が形成されるため、電極ユニット130の電極131が被験者の頭皮まで容易に到達する。
【0066】
次いで、操作者は、電極ユニット130の電極131が被験者の頭皮に接触したか否かを確認する(S40)。具体的には、操作者は、電極131の先端部132が被験者の頭皮に接触したか否かを確認する。
【0067】
なお、操作者は、例えば、電極ユニット130が検出した電気信号の値によって電極131の先端部132が被験者の頭皮に接触したことを確認し得る。
【0068】
操作者は、電極ユニット130の電極131が被験者の頭皮に接触したことを確認すると、被験者の脳波測定を開始する(S50)。
【0069】
脳波測定の段階では、ソフトバッグ120の内部空間120aに供給される空気の圧力は、S30の電極131の装着段階よりも少し低下させてよい。つまり、ソフトバッグ120の膨らみが維持される程度の圧力によって内部空間120aに空気が供給され続ければよい。
【0070】
(5)作用・効果
上述した実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。具体的には、電極付きヘッドギア100の電極ユニット130には、電極131の凸方向に向けて開口する通気孔140aが形成される。また、電極付きヘッドギア100は、電極ユニット130を電極131の凸方向に向けて付勢するソフトバッグ120(付勢ユニット)を備える。
【0071】
このため、膨らんだソフトバッグ120が被験者の頭部60に密着することによって、電極ユニット130が被験者の頭部60に向けて付勢される。また、通気孔140aを介して気体供給装置200から供給された空気が排出される、具体的には、勢いよく噴き出すため、被験者の頭髪61が掻き分けられ、頭髪61に邪魔されずに電極131が被験者の頭皮まで容易に到達する。
【0072】
これにより、被験者の不快感や痛みを回避しつつ、より確実かつ容易に被験者の頭皮に電極131の先端部132を接触させることができる。この結果、測定対象(頭部60)の電気抵抗が抑制し得る。
【0073】
なお、電気抵抗の抑制などを目的として、導電性のペーストまたはジェルを用いつつ、被験者の頭部60に電極を装着する方法が知られている。しかしながら、装着には専門的な知識が必要となること、測定後に洗髪が必要であり、被験者に負担が掛かること、及び電極による頭皮への刺激が強いことが課題である。
【0074】
電極付きヘッドギア100の装着では、ペーストやジェルは用いられない。また、空気流Fによって頭髪61が掻き分けられるため、電極131は、被験者の頭皮に軽く接触する程度の力で付勢されていればよい。これにより、電極131による頭皮への刺激も少ない。
【0075】
本実施形態では、被験者の頭部60に密着するソフトバッグ120が用いられ、内部空間120aには、気体供給装置200からの空気が供給される。
【0076】
このため、ソフトバッグ120は、頭部60の形状に追従し易く、電極ユニット130の位置が頭部60の形状にフィットし易い。つまり、さらに確実に電極131が被験者の頭皮と接触し得る。さらに、ソフトバッグ120は、頭部60の形状に追従し易いため、広範な頭部60のサイズに対応し得る。
【0077】
本実施形態では、電極131の先端部132及び通気孔140aは、ソフトバッグ120の内側面121(頭部接触面)から露出する。このため、ソフトバッグ120が膨らんだ状態において、より確実に被験者の頭髪61を掻き分け、電極131の先端部132を被験者の頭皮に接触させることができる。
【0078】
本実施形態では、ソフトバッグ120の外側には、被験者の頭部60の形状に沿ったヘルメット状の外装部110が設けられ、外装部110は、導電性を有する部材(金属など)によって形成される。このため、電極ユニット130が検出する電気信号への外部からのノイズ(電波)混入を効果的に防止し得る。
【0079】
(6)その他の実施形態
以上、実施例に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0080】
例えば、上述した電極ユニット130は、次のように変更してもよい。図10は、変更例に係る電極ユニット130Aの単体側面図である。図11は、変更例に係る電極ユニット130Aの単体平面図である。
【0081】
図10及び図11に示すように、電極ユニット130Aは、複数の凸状の電極131Aを有する。具体的には、電極ユニット130Aは、3本の電極131Aを有する。なお、電極ユニット130Aが有する電極131Aの数は、3本以下であることが好ましい。
【0082】
電極131Aは、電極ユニット130の電極131(図5,6参照)と比較すると、三角錐状である。つまり、電極131Aの凸方向に直交する方向に沿った断面は、三角形である。
【0083】
また、電極131Aの先端部134は、電極131の先端部132のようにテーパー状ではなく、フラットな平面状ある。なお、電極ユニット130Aにも、電極ユニット130と同形状の通気孔140aが形成される。
【0084】
電極ユニット130Aによれば、断面が三角形である電極131Aの角部が、被験者の頭皮とより確実に接触し易く、必要な電極131Aの数も抑制し得る。
【0085】
図12は、変更例に係る電極ユニット130Bの単体側面図である。図12に示すように、電極ユニット130Bは、バイブレータ135を有する。
【0086】
バイブレータ135は、基部140内部に組み込まれており、電極ユニット130Bを振動させる。バイブレータ135としては、スマートフォンなどに組み込まれているバイブレータと同様の方式(例えば、リニア共振アクチュエータ、偏心回転モータ)を適用し得る。
【0087】
これにより、電極ユニット130Bのさらに確実に被験者の頭皮に電極131を接触させることができる。
【0088】
図13は、変更例に係る電極付きヘッドギア100Aの内側平面図である。図14は、図13のF14-F14線に沿った電極付きヘッドギア100Aの断面図である。
【0089】
図13及び図14に示すように、電極付きヘッドギア100Aは、電極付きヘッドギア100のようにソフトバッグ120を備えていない。代わりに、外装部110Aには、複数の付勢板状部115が形成される。
【0090】
付勢板状部115のそれぞれには、1個の電極ユニット130Cが取り付けられている。付勢板状部115は、電極ユニット130Cを電極131の凸方向に向けて付勢する。本変更例において、外装部110Aは、付勢ユニットを構成する。
【0091】
電極ユニット130Cには、気体供給装置200からの空気が供給されるエアホース152が接続される。
【0092】
電極ユニット130Cには、エアホース152と連通する通気孔140bが形成される。気体供給装置200から供給される空気は、エアホース152及び通気孔140bを介して外部に噴き出す。
【0093】
また、上述した実施形態では、気体供給装置200から供給される気体は、空気であることを例として説明したが、当該気体は、必ずしも空気に限定されない。
【0094】
さらに、上述した実施形態では、気体供給装置200から供給される気体は、設定温度及び設定湿度に調整されていたが、当該気体は、必ずしも設定温度に調整されていなくてもよいし、設定湿度に調整されていなくても構わない。
【0095】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0096】
10 電極装着システム
20 増幅器
30 測定デバイス
40 エアホース
50 電極ケーブル
51 配線
60 頭部
61 頭髪
100, 100A 電極付きヘッドギア
110, 110A 外装部
111 内側面
115 付勢板状部
120 ソフトバッグ
121 内側面
120a 内部空間
130, 130A, 130B, 130C 電極ユニット
131, 131A 電極
132 先端部
133 基端部
134 先端部
135 バイブレータ
140 基部
140a, 140b 通気孔
141 配線接続部
142 凹部
150 接続口
150a 孔部
152 エアホース
160 顎紐
200 気体供給装置
210 エアタンク
220 コンプレッサ
230 温度調整部
240 湿度調整部
250 気体供給部
F 空気流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14