(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】インスタントスープパスタ
(51)【国際特許分類】
A23L 7/113 20160101AFI20241112BHJP
A23L 7/109 20160101ALI20241112BHJP
A23L 23/10 20160101ALN20241112BHJP
【FI】
A23L7/113
A23L7/109 B
A23L7/109 E
A23L23/10
(21)【出願番号】P 2021529154
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2020025754
(87)【国際公開番号】W WO2021002373
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2019123593
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】濱口 翔平
(72)【発明者】
【氏名】安藤 歩
(72)【発明者】
【氏名】須田 悠二
(72)【発明者】
【氏名】福井 良明
【審査官】二星 陽帥
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05738896(US,A)
【文献】米国特許第05780091(US,A)
【文献】実開平05-095290(JP,U)
【文献】特開平08-266236(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047636(WO,A1)
【文献】特開2017-201982(JP,A)
【文献】米国特許第06004608(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/109 - 23/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
日経テレコン
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)乾燥状態において、らせんの巻数が10mmあたり平均
1.0~2.0回である、フジッリ型のインスタントパスタ、及び
(2)用時にスープに調製される粉末状及び/又は顆粒状のインスタントスープ
を組み合わせた、インスタントスープパスタ
であって、
該インスタントスープが、用時にスープに調製されたとき、250~45000mPa・sの粘度を有し、
(1)及び(2)を含む混合物に熱湯を注ぐか又は該混合物を熱湯に浸漬して、スープパスタを製造するための、インスタントスープパスタ。
【請求項2】
前記(1)及び(2)を含む混合物が包装容器に格納されて
いる、請求項1記載のインスタントスープパスタ。
【請求項3】
用時にスープに調製される粉末状及び/又は顆粒状のインスタントスープと組み合わせて使用するための、インスタントパスタであって、
該インスタントスープが、用時にスープに調製されたとき、250~45000mPa・sの粘度を有し、
該インスタントパスタ及び該インスタントスープを含む混合物に、熱湯を注ぐか又は該混合物を熱湯に浸漬して、スープパスタを製造するための、
乾燥状態において、らせんの巻数が10mmあたり平均
1.0~2.0回である、フジッリ型のインスタントパスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用時調製時の未膨潤発生率が抑制されたフジッリ型のインスタントパスタ及びインスタントスープを組み合わせたインスタントスープパスタ;用時調製時の未膨潤発生率が抑制されたフジッリ型のインスタントパスタ及びインスタントスープを含む混合物が包装容器に格納された、包装されたインスタントスープパスタ;及びインスタントスープと組み合わせて使用するための、用時調製時の未膨潤発生率が抑制されたフジッリ型のインスタントパスタに関する。
【背景技術】
【0002】
ゆでることなく熱湯を注ぐのみで短時間で湯戻しすることができるインスタントパスタやインスタントスープパスタは、保存性、用時の簡便性等の利点がある。
インスタントスープパスタとして、乾燥インスタントパスタ(フジッリ型)、粉末状のインスタントスープ、その他具材を1つの容器に直充填した形態のインスタントスープパスタ(スープDELI(登録商標)、味の素株式会社)が市販されている。フジッリ型パスタはスープによく絡んで満足感を味わえる利点がある。
一方、フジッリ型のインスタントパスタと、粉末状のインスタントスープとを1つの容器に直充填すると、パスタのらせんの隙間にインスタントスープが詰まって、用時調製時にインスタントパスタの一部が部分的に湯を吸わず未膨潤となり食感が悪くなることがあり、用時調製時の未膨潤発生率の抑制が課題であった。
用時調製時にインスタントパスタの一部が部分的に未膨潤となることを抑制するために、インスタントパスタのα化度を高める方法、パスタの厚さを薄肉化する方法が知られている(特許文献1、2参照)。ただし、これらの方法では、フジッリ型パスタ本来の弾力のある好ましい食感を損ねてしまうという課題がある。
【0003】
他のインスタントスープパスタとして、パスタを含む調味液全体をフリーズドライブロック化したもの、インスタントパスタとの接触を阻害するためにスープマス(インスタントスープ)のみを小袋へ充填したものが市販されている。これらの製品は生産効率が低く加工費の増加に繋がるという課題がある。また、一部の成分を小袋に充填した製品は、用時に小袋を開けて他の成分と合わせる作業が必要となり、消費者の手間が増える点で好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-38085号公報
【文献】特開2010-268742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、フジッリ型のインスタントパスタと、インスタントスープとを1つの容器に直充填した場合であっても、インスタントパスタの用時調製時の未膨潤発生率が抑制された、インスタントスープパスタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題解決のために鋭意検討したところ、フジッリ型のインスタントパスタのらせんの平均巻数を一定の範囲内とする新発想によって、フジッリ型のインスタントパスタとインスタントスープとを1つの容器に直充填した場合であっても、インスタントパスタの用時調製時の未膨潤発生率が抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1](1)乾燥状態において、らせんの巻数が10mmあたり平均0.75~2.25回である、フジッリ型のインスタントパスタ、及び
(2)用時にスープに調製される粉末状及び/又は顆粒状のインスタントスープ
を組み合わせた、インスタントスープパスタ。
[2]前記インスタントスープが、用時にスープに調製されたとき、250~45000mPa・sの粘度を有する、上記[1]記載のインスタントスープパスタ。
[3](1)乾燥状態において、らせんの巻数が10mmあたり平均0.75~2.25回である、フジッリ型のインスタントパスタ、及び
(2)用時にスープに調製される粉末状及び/又は顆粒状のインスタントスープ
を含む混合物が包装容器に格納されてなることを特徴とする、包装されたインスタントスープパスタ。
[4]前記インスタントスープが、用時にスープに調製されたとき、250~45000mPa・sの粘度を有する、上記[3]記載の包装されたインスタントスープパスタ。
[5]用時にスープに調製される粉末状及び/又は顆粒状のインスタントスープと組み合わせて使用するための、インスタントパスタであって、乾燥状態において、らせんの巻数が10mmあたり平均0.75~2.25回である、フジッリ型のインスタントパスタ。
[6]前記インスタントスープが、用時にスープに調製されたとき、250~45000mPa・sの粘度を有する、上記[5]記載のインスタントパスタ。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フジッリ型のインスタントパスタ及び用時にスープに調製される粉末状及び/又は顆粒状のインスタントスープを組み合わせた、インスタントスープパスタにおいて、らせんの平均巻数を一定の範囲内とすることで、インスタントパスタの用時調製時の未膨潤発生率を抑制することができる。本発明では、インスタントパスタのα化度を高める方法やパスタの厚さを薄肉化する方法といった従来の方法を用いないので、該従来の方法によるフジッリ型パスタ本来の弾力のある好ましい食感を損ねるという問題がない点で、有利である。
本発明の、フジッリ型のインスタントパスタ及び用時にスープに調製される粉末状及び/又は顆粒状のインスタントスープを含む混合物が包装容器に格納されてなる包装されたインスタントスープパスタは、インスタントパスタの用時調製時の未膨潤発生率が抑制されており、生産効率が高く、用時調製時の作業が簡便である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、インスタントパスタの外観を示す写真図であり、該写真図中の上のパスタはスープDELI(登録商標、味の素株式会社)のインスタントパスタであり、下のパスタは本発明のインスタントパスタの一例である。写真図中のマス目は、一辺の長さが10mmの正方形からなる方眼である。
【
図2】
図2は、
図1に示すインスタントパスタの外観を示す写真図において、インスタントパスタのらせんの巻数の測定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に関するインスタントパスタは、フジッリ型のインスタントパスタである。
本発明において、「インスタントパスタ」とは、ゆでることなく熱湯等を注ぐまたは熱湯等に浸漬するのみで短時間で湯戻しすることができるパスタをいう。
本発明において、「フジッリ型」のパスタとは、らせん状のパスタをいう。
フジッリ型のインスタントパスタの例として、スープDELI(登録商標、味の素株式会社)のインスタントパスタの外観写真を
図1(写真中の上のパスタ)に示す。また本発明のインスタントパスタの一例の外観写真を
図1(写真中の下のパスタ)に示す。
【0011】
本発明に関するインスタントパスタは、乾燥状態において、らせんの巻数が10mmあたり平均0.75~2.25回、好ましくは平均1.0~2.0回、より好ましくは平均1.5~2.0回である。
らせんの巻き方向は、特に限定はされず、らせんをその中心軸線に沿ってたどるにつれて、羽根の最外端部が時計回りに変位する巻き方向であってもよいし、羽根の最外端部が反時計回りに変位する巻き方向であってもよい。ここで、羽根とは、フジッリ型パスタのらせん構造において、機械要素のねじにおけるねじ山のごとく、中心部分から外側に張り出して、中心軸線に沿って回転変位する部分である。
【0012】
本発明において、らせんの巻数の10mmあたりの平均は、以下の方法で算出する。
[インスタントパスタのらせんの巻数の10mmあたりの平均の算出方法]
1.欠けが無く、10mm以上の長さの湾曲していないインスタントパスタ(乾燥状態)の長さ(mm)を測定する。
2.1.のインスタントパスタのらせんの巻数(回)を測定する。
3.「らせんの巻数(回)÷インスタントパスタの長さ(mm)×10(mm)」の式へ1.及び2.で得られた値を挿入し10mmあたりのらせんの巻数を算出する。
4.上記を繰り返し、30検体の平均値を求めることでらせんの巻数の10mmあたりの平均値を得る。
上記2.において、らせんの巻数(回)は、以下の通り測定する。
らせんの1回転を1巻きとし、1.5回転等となる場合は小数点以下は切り捨てにする。すなわち、1回転半の時には2回転に達していないため、1巻き(らせんの巻数1回)とする。具体的には、
図2に示すように、パスタの末端の角の部分(
図2中〇で示す)からパスタの巻きの方向に沿って垂線を下ろし、交差した羽根の回数を巻数としてカウントを行う。
図2の上段サンプルは巻数6(回)、下段サンプルは、巻数4(回)となる。
【0013】
本発明に関するインスタントパスタのらせんは、例えば一重らせん(1枚羽根)、二重らせん(2枚羽根)、三重らせん(3枚羽根)が挙げられ、二重らせんが好ましい。
図1に示す例では、上段のサンプルも、下段の本発明のサンプルも二重らせんである。本発明において、インスタントパスタが多重らせんの場合、10mmあたりの巻数は、各らせんの巻数の合計である。例えば、二重らせんのインスタントパスタの場合、二重らせんを構成する一方のらせんの巻数が10mmあたり2回であり、他方のらせんの巻数が10mmあたり2回であれば、当該インスタントパスタのらせんの巻数は、10mmあたり4回である。
【0014】
本発明に関するインスタントパスタは、乾燥状態において、らせんの巻きの間隔(ピッチ)は、例えば4.4~13.3mm、好ましくは5.0~10.0mm、より好ましくは5.0~6.7mmである。
【0015】
本発明に関するインスタントパスタの長さは、特に限定されないが、例えば15.0~41.0mm、好ましくは18.0~36.0mm、より好ましくは20.0~32.0mmである。
本発明に関するインスタントパスタのらせんの外径(直径)は、特に限定されないが、例えば4.0~8.4mm、好ましくは4.8~7.6mm、より好ましくは5.0~7.0mmである。
本発明に関するインスタントパスタの麺厚(肉厚)は、特に限定されないが、例えば0.30~0.90mm、好ましくは0.35~0.85mm、より好ましくは0.40~0.8mmである。麺厚(肉厚)とは、らせん状の羽根の厚さをいう。
【0016】
本発明に関するインスタントパスタは、公知の方法で製造することができ、例えば、以下の方法で製造できる。
インスタントパスタの製造方法として、粉砕穀類生成物及び水を含む混合物を調製し、混練を行うことで形成混合物を得る。当該混練工程は、ピンミキサー、ニーダーなどの一般的な混練装置を使用して常法により行えば良い。形成混合物を、ダイスの通過孔(1重~3重のらせんに応じた数の羽根を有する)を通して押し出し成形してパスタを形成し、パスタは蒸気等により予備加熱し、水に浸水し吸水させ、その後浸水パスタを乾燥することにより得られる。
上記押し出し成形において、らせんの巻数は、主として、前記ダイスの通過孔の3次元的な形状によって決定することができる。該ダイスの通過孔は、形成混合物がらせん状にねじれながら乾燥前の当該パスタの形状となって押し出されて行くように、3次元的に回転方向付けされる。また、らせんの巻数は、前記ダイスの通過孔の形状に加えて、形成混合物をダイスから押し出す際の押し出し速度を調節することによっても調整することができる。本発明に関するインスタントパスタのらせんの巻数が、乾燥後に10mmあたり平均0.75~2.25回(好ましくは平均1.0~2.0回、より好ましくは平均1.5~2.0回)となるように、乾燥による収縮を考慮し、かつ、ダイスの通過孔と押し出し速度を調整し、乾燥前のらせんの巻数を決定することが好ましい。
【0017】
本発明のインスタントスープパスタは、上述の本発明に関するインスタントパスタと、用時にスープに調製される粉末状及び/又は顆粒状のインスタントスープとを組み合わせることを特徴とする。
本発明において、「インスタントスープ」とは、熱湯等を注ぐのみで短時間で調理することができるスープをいう。スープの種類は特に限定されず、例えば、ポタージュスープ、クリームスープ、チャウダースープ、ミネストローネ、ビスク等が挙げられる。
【0018】
本発明において、用時にスープに調製される粉末状又は顆粒状のインスタントスープは、用時にスープに調製されたとき、例えば250~45000mPa・s、好ましくは500~25000mPa・s、より好ましくは1000~10000mPa・sの粘度を有する。
本明細書において、スープの粘度は、例えば、BII形粘度計(東機産業(株))を用いて一定の測定条件(4rpm)で分析することにより測定することができる。
【0019】
本発明において、用時にスープに調製される粉末状及び/又は顆粒状のインスタントスープの粒径は、粉末状インスタントスープの場合、例えば100~400μm、好ましくは140~350μm、より好ましくは180~300μmであり、顆粒状インスタントスープの場合、例えば200~800μm、好ましくは250~750μm、より好ましくは300~700μmである。
本発明において、粒径はレーザー回折・散乱法によって得られた粒度分布における頻度基準での積算値50%での粒径(メジアン径)を意味し、粒径は、具体的には、例えば、レーザー回折/散乱式粒度測定装置(例えば、HORIBA製、LA-920)を用いて測定することができる。
【0020】
本発明において用いられるインスタントスープは、公知の方法で製造することができ、例えば以下の方法で製造できる。
澱粉類、増粘多糖類、粉乳類、穀粉、野菜・果実パウダー、調味料、香辛料、賦形剤、食用油脂等を含む原料を、混合機、造粒機等を用いて混合及び/又は顆粒化を行うことにより製造することができる。また本発明で言う顆粒化とは造粒したものだけでなく、粉末を混合させたものも含まれる。また造粒方法に特に限定は無いが安定製造の点や製造コストの点から流動層造粒が特に好ましい。
【0021】
本発明のインスタントスープパスタにおいて、本発明に関するインスタントパスタと用時にスープに調製される粉末状及び/又は顆粒状のインスタントスープとの配合割合は、該インスタントパスタ1重量部に対して、該インスタントスープが、例えば0.5~2.5重量部、好ましくは0.7~2.0重量部、さらに好ましくは0.8~1.5重量部である。
【0022】
本発明はまた、(1)乾燥状態において、らせんの巻数が10mmあたり平均0.75~2.25回(好ましくは平均1.0~2.0回、より好ましくは平均1.5~2.0回)である、フジッリ型のインスタントパスタ、及び(2)用時にスープに調製される粉末状及び/又は顆粒状のインスタントスープを含む混合物が包装容器に格納されてなることを特徴とする、包装されたインスタントスープパスタに関する。
(1)のインスタントパスタ及び(2)のインスタントスープは、本発明のインスタントスープパスタについて上述した通りである。
【0023】
本発明の包装されたインスタントスープパスタにおいて、成分(1)及び成分(2)を含む混合物は、成分(1)及び成分(2)のみから構成されていてもよく、その他の成分(例えば、乾燥パセリ、クルトン等の具材)を含有していてもよい。
【0024】
本発明において、包装容器は、インスタントパスタ、インスタントスープ、インスタントスープパスタ、インスタントラーメン等のインスタント食品において通常使用されるものを使用することができる。包装容器は、袋、カップ等であってもよい。
【0025】
本発明はまた、用時にスープに調製される粉末状及び/又は顆粒状のインスタントスープと組み合わせて使用するための、インスタントパスタであって、乾燥状態において、らせんの巻数が10mmあたり平均0.75~2.25回(好ましくは平均1.0~2.0回、より好ましくは平均1.5~2.0回)である、フジッリ型のインスタントパスタに関する。
「用時にスープに調製される粉末状及び/又は顆粒状のインスタントスープ」及び「フジッリ型のインスタントパスタ」は、本発明のインスタントスープパスタについて上述した通りである。
【0026】
フジッリ型のパスタは、とろみのあるポタージュスープと組み合わせることで、パスタにスープがからまって、おいしさが増す利点がある。また、インスタントパスタとインスタントスープを組み合わせたインスタントスープパスタでは、生産効率の点からは、該パスタと該スープが個々に包装されずに1つの包装容器に直接格納されることが好ましい。
しかし、上述したように、フジッリ型のインスタントパスタとインスタントスープを1つの包装容器に直接格納すると、パスタのらせんの隙間にインスタントスープの粉末又は顆粒が詰まるので、用時にインスタントスープが十分溶解せず、その結果インスタントパスタの湯戻りが局所的に阻害され、食感が悪くなる問題がある。特に、ポタージュのようなインスタントスープでは、とろみを出すためにデンプン等を多く含有するので、用時にインスタントスープを十分溶解させることがさらに難しい。
本発明においては、フジッリ型のインスタントパスタのらせんの平均巻数を一定の範囲内とする新発想によって、フジッリ型のインスタントパスタとポタージュのようなインスタントスープを1つの包装容器に直接格納した場合であっても、用時にインスタントスープを十分溶解させることができるインスタントスープパスタの提供を可能とした。本発明によれば、インスタントパスタのα化度や厚さを変えずに用時調製時の未膨潤発生の抑制を可能とするので、フジッリ型パスタ本来の好ましい食感を維持しつつ、用時調製時の部分的な未膨潤に起因する不快な食感を改善することができる。
【実施例】
【0027】
以下に、実施例及び試験例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例及び試験例によって限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例において、インスタントパスタの平均巻数は、上記した[インスタントパスタのらせんの巻数の10mmあたりの平均の算出方法]による値を示す。
【0028】
[実施例1]
小麦粉及び水を含む混合物を調製し、混錬して形成混合物を得た。得られた形成混合物を押し出し成形してパスタを形成し、パスタは蒸気により予備加熱し、水に浸水し吸水させ、その後浸水パスタを乾燥することにより実施例1のインスタントパスタを得た。この際、押し出し成形後のインスタントパスタ(乾燥状態)の巻数が平均0.75(回/10 mm)となるよう押し出しの型を調整した。
【0029】
[実施例2]
押し出し成形後のインスタントパスタ(乾燥状態)の巻数が平均1.0(回/10 mm)となる押し出しの型を用いた以外は、実施例1と同じ方法で、実施例2のインスタントパスタを得た。
【0030】
[実施例3]
押し出し成形後のインスタントパスタ(乾燥状態)の巻数が平均1.25(回/10 mm)となる押し出しの型を用いた以外は、実施例1と同じ方法で、実施例3のインスタントパスタを得た。
【0031】
[実施例4]
押し出し成形後のインスタントパスタ(乾燥状態)の巻数が平均1.5(回/10 mm)となる押し出しの型を用いた以外は、実施例1と同じ方法で、実施例4のインスタントパスタを得た。
【0032】
[実施例5]
押し出し成形後のインスタントパスタ(乾燥状態)の巻数が平均2.0(回/10 mm)となる押し出しの型を用いた以外は、実施例1と同じ方法で、実施例5のインスタントパスタを得た。
【0033】
[実施例6]
押し出し成形後のインスタントパスタ(乾燥状態)の巻数が平均2.25(回/10 mm)となる押し出しの型を用いた以外は、実施例1と同じ方法で、実施例6のインスタントパスタを得た。
【0034】
[比較例1]
押し出し成形後のインスタントパスタ(乾燥状態)の巻数が平均0.25(回/10 mm)となる押し出しの型を用いた以外は、実施例1と同じ方法で、比較例1のインスタントパスタを得た。
【0035】
[比較例2]
押し出し成形後のインスタントパスタ(乾燥状態)の巻数が平均0.5(回/10 mm)となる押し出しの型を用いた以外は、実施例1と同じ方法で、比較例2のインスタントパスタを得た。
【0036】
[比較例3]
押し出し成形後のインスタントパスタ(乾燥状態)の巻数が平均2.5(回/10 mm)となる押し出しの型を用いた以外は、実施例1と同じ方法で、比較例3のインスタントパスタを得た。
【0037】
[比較例4]
押し出し成形後のインスタントパスタ(乾燥状態)の巻数が平均3.0(回/10 mm)となる押し出しの型を用いた以外は、実施例1と同じ方法で、比較例4のインスタントパスタを得た。
【0038】
[比較例5]
押し出し成形後のインスタントパスタ(乾燥状態)の巻数が平均3.5(回/10 mm)となる押し出しの型を用いた以外は、実施例1と同じ方法で、比較例5のインスタントパスタを得た。
【0039】
[比較例6]
押し出し成形後のインスタントパスタ(乾燥状態)の巻数が平均4.0(回/10 mm)となる押し出しの型を用いた以外は、実施例1と同じ方法で、比較例6のインスタントパスタを得た。
【0040】
[試験例1]
実施例1~6及び比較例1~6のインスタントパスタについて、スープパスタを調製した際の未膨潤発生率を、下記の[インスタントパスタの部分的な未膨潤率測定方法]により調べた。結果を表1に示す。
[インスタントパスタの部分的な未膨潤率測定方法]
1.スープDELI(登録商標、味の素株式会社)16oz容器に1食あたりの粉末状のインスタントスープ、実施例又は比較例のインスタントパスタ、具材を計量して入れた。粉末状のインスタントスープ、具材は、市販のインスタントスープパスタ製品(商品名:スープDELI(登録商標)ポルチーニ香るきのこのクリームスープパスタ(容器入)、味の素株式会社)に使用されている粉末状のインスタントスープ、具材を使用した。
2.容器に入れた、粉末状のインスタントスープ、インスタントパスタ及び具材を30秒間、120rpmの撹拌速度でスパチュラにてよく撹拌し、混合した。
3.ポットの設定温度を98℃に設定し、沸騰させた。容器の内側の線まで注湯(湯量約200ml)後、10秒放置した。
4.15秒間、120rpmの撹拌速度でスプーンにて撹拌し、スープパスタを製造した。
5.注湯3分後に、4.で得たスープパスタを10Mesh(目開き1.7mm)の篩いに静かに注いで、スープをろ過した。
6.パスタの全本数、未膨潤パスタの数をそれぞれ数え、未膨潤発生率(未膨潤パスタの数/パスタの全本数)を算出した。
【0041】
[試験例2]
試験例1の[インスタントパスタの部分的な未膨潤率測定方法]の工程4.で得たスープパスタについて、専門パネラー2名による食感及び味覚の官能評価を行った。結果は、2名での合議により決定した。評価基準は以下の通りである。結果を表1に示す。
(食感)
◎:未膨潤発生率が非常に少なく好ましい
〇:未膨潤発生率が少なく好ましい
△:未膨潤発生率が多く好ましくない
×:未膨潤発生率が非常に多く好ましくない
(味覚)
◎:スープとパスタの絡みが非常に良好で好ましい
〇:スープとパスタの絡みが良好で好ましい
△:スープとパスタの絡みが悪く好ましくない
×:スープとパスタの絡みが非常に悪く好ましくない
【0042】
【0043】
上記表1の結果の通り、10mm当たりの巻きを緩めるほど(すなわち、10mm当たりの巻数を減らすほど)、未膨潤の発生頻度は低くなり食感に関しては良好な結果が得られている。しかし、巻きを緩めることによりスープとインスタントパスタの絡みが悪くなり、味覚官能品質が低下傾向にあることがわかる。一方、10mm当たりの巻数を増やすと絡みはよくなりスープとの相性は良い傾向になるが、インスタントパスタの未膨潤率は大きく増加し、それに伴い食感の官能品質の低下が生じている。
フジッリ型のインスタントパスタは元々スープ部分をスターラーの様に撹拌する役割があるが、巻きを緩めることでより強くプロペラの様に撹拌できるようになり、スープ部がきちんと一様に溶解しパスタ全体が吸水し易くなることで未膨潤率の改善が生じたと考えられる。
上記の結果より、良好な官能品質(食感及び味覚)を持ち、未膨潤発生率が抑制されたインスタントパスタの巻数は10mm当たり平均0.75~2.25回程度であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、インスタントパスタの用時調製時の未膨潤発生率が抑制され、かつ良好な官能品質(食感及び味覚)を持つ、インスタントスープパスタを提供することができる。
【0045】
本出願は、日本で出願された特願2019-123593を基礎としており、その内容は本明細書にすべて包含されるものである。