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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】白色積層ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/04 20200101AFI20241112BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20241112BHJP
   C08G 18/72 20060101ALI20241112BHJP
   C08G 18/80 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C08J7/04 B CFD
C08G18/44
C08G18/72
C08G18/80
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021537641
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(86)【国際出願番号】 JP2020027107
(87)【国際公開番号】W WO2021024701
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2019142891
(32)【優先日】2019-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 紀志
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 栄二
(72)【発明者】
【氏名】久保 武士
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-196461(JP,A)
【文献】特開2011-140542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 7/04
C08G 18/44
C08G 18/72
C08G 18/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項3】
前記ポリカーボネート構造を有し且つ分岐構造を有するウレタン樹脂が、ポリカーボネートポリオール成分とポリイソシアネート成分が合成、重合されてなり、前記合成、重合する際のポリカーボネートポリオール成分とポリイソシアネート成分の質量比(ポリカーボネートポリオール成分の質量/ポリイソシアネート成分の質量)がは0.5~3である請求項1又は2に記載の積層ポリエステルフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色積層ポリエステルフィルムに関する。より詳しくは、水付着時のブロッキングが低減され、インキ密着性に優れた情報記録材料や印刷材料として好適な白色積層ポリエステルフィルムに関する。
【0002】
二軸延伸ポリエステルフィルムは、機械的性質、電気的性質、寸法安定性等の優れた特性を有することから、磁気記録材料、包装材料、電気絶縁材料、感光材料、製図材料、写真材料等多くの分野の基材フィルムとして使用されている。しかし、これらの用途においてポリエステルフィルム上に他の材料を塗布積層する場合に、使用される材料によっては接着性が悪いという欠点がある。
【0003】
そこで、ポリエステルフィルムの表面に接着性を付与する方法の一つとして、ポリエステルフィルムの表面に各種樹脂を塗布し、易接着性能を持つ塗布層を設ける方法が知られている。
【0004】
従来の各種インキ密着性タイプのポリエステル系被覆フィルムにおいても、基材ポリエステルフィルムの表面に、特定の樹脂からなる被覆層を設けた方法が多く見られる(例えば、特許文献1参照)。前記被覆層の構成樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、及びアクリル系樹脂等を、単一あるいは2種以上混合したもの、また前記樹脂と特定の架橋剤(メラミン、イソシアネート等)とを混合したものなどが挙げられる。
【0005】
しかしながら、かかる従来技術では、特に冬場のフィルムロール輸送時などで、工場などの屋内と屋外との間で運搬する場合などにおいて、屋内の温度と外気との温度の差によってフィルムロールに結露水が付着し、フィルム表面やその塗布層が互いに貼りつくブロッキングトラブルが起きることがあった。これは、通常の水蒸気を含む空気中での放置後に加圧下で生じるブロッキングとは異なる種類のもので、液体の水を介してはじめて生じるものである。つまり、インキ密着性への密着性と耐ブロッキングを両立することは困難であった。特に紫外線硬化型インキ(UVインキ)への密着性と耐ブロッキングを両立することはきわめて困難であった。これを回避するにはシーズニングが有効であるが完全に回避できるものではなく、シーズニング工程が加わることで加工が遅れ生産性の悪化に繋がることが問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-229355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、水付着時のブロッキング耐性を有し、UVインキへの密着性に優れた白色積層ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、ポリエステルフィルム基材の少なくとも一方の面に塗布層を有しており、前記塗布層が架橋剤、ポリエステル樹脂及び、ポリカーボネート構造と分岐構造を有するウレタン樹脂を含有する組成物が硬化されてなる場合に本発明の課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
即ち、本発明は、以下の構成よりなる。
1. ポリエステルフィルム基材の少なくとも一方の面に塗布層を有する白色積層ポリエステルフィルムであって、前記塗布層が、ポリカーボネート構造を有し且つ分岐構造を有するウレタン樹脂、架橋剤、及びポリエステル樹脂を含有する組成物が硬化されて形成されている白色積層ポリエステルフィルム。
2. 前記架橋剤が3官能以上のブロックイソシアネート基を有する化合物である上記第1に記載の白色積層ポリエステルフィルム。
3. 前記ポリカーボネート構造を有し且つ分岐構造を有するウレタン樹脂が、ポリカーボネートポリオール成分とポリイソシアネート成分が合成、重合されてなり、前記合成、重合する際のポリカーボネートポリオール成分とポリイソシアネート成分の質量比(ポリカーボネートポリオール成分の質量/ポリイソシアネート成分の質量)がは0.5~3である上記第1又は第2に記載の白色積層ポリエステルフィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明の白色積層ポリエステルフィルムは、結露水が付着してもブロッキングが発生せず、UVインキへの密着性に優れる。特に、低線量加工時のUVインキ密着性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(ポリエステルフィルム基材)
本発明においてポリエステルフィルム基材を構成するポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのほか、前記のようなポリエステル樹脂のジオール成分又はジカルボン酸成分の一部を以下のような共重合成分に置き換えた共重合ポリエステル樹脂であり、例えば、共重合成分として、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ポリアルキレングリコールなどのジオール成分や、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、5-ナトリウムイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸成分などを挙げることができる。
【0012】
本発明においてポリエステルフィルム基材のために好適に用いられるポリエステル樹脂は、主に、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレートから選ばれるものである。これらのポリエステル樹脂の中でも、物性とコストのバランスからポリエチレンテレフタレートが最も好ましい。また、これらのポリエステル樹脂から構成されたポリエステルフィルム基材は二軸延伸ポリエステルフィルムであることが好ましく、耐薬品性、耐熱性、機械的強度などを向上させることができる。
【0013】
ポリエステル樹脂の製造の際に用いられる重縮合のための触媒としては特に限定されないが、三酸化アンチモンが安価で、かつ優れた触媒活性をもつ触媒であるため好適である。また、ゲルマニウム化合物、又はチタン化合物を用いることも好ましい。さらに好ましい重縮合触媒としては、アルミニウム及び/又はその化合物とフェノール系化合物を含有する触媒、アルミニウム及び/又はその化合物とリン化合物を含有する触媒、リン化合物のアルミニウム塩を含有する触媒が挙げられる。
【0014】
本発明におけるポリエステルフィルム基材は、強度、腰など実用性の点から、二軸配向フィルムであることが特に好ましい。
【0015】
ポリエステルフィルム基材の層構成は単層構成でも積層構成でも構わないが、A層/B層/A層の積層構造であり、A層に無機粒子を含有し、B層には微細空洞を含有する積層構成とすることは好ましい形態である。表面層であるA層に無機粒子を含有する層を配置することによって、フィルムの滑り性すなわちハンドリング性や隠蔽性を改善することが可能であり、微細空洞を内層であるB層だけに含有させることによって、好ましい白色外観が得られるほか、フィルムのクッション性発現しつつフィルム表面の強度も確保することが可能になる。ここで積層構成を形成する方法は特に限定されないが、共押出しによって行なうことが製造時の安定性や加工コストの観点から好ましい。
【0016】
また、本発明におけるポリエステルフィルム基材は、単層構造でもよいし、複層構造でもよいが、その一部の層もしくは全部の層が不透明であることが好ましい。白色積層ポリエステルフィルムの不透明度を示す光学濃度は、0.3以上であることが好ましく、より好ましくは0.3~4.0であり、特に好ましくは、0.5~3.0である。光学濃度が0.3以上であると、白色積層ポリエステルフィルムの塗布層表面に印刷を施した場合に印刷効果が鮮明となり好ましい。また、光学濃度が4.0以下であると、より優れた印刷効果が期待できて好ましい。
【0017】
上記範囲内の光学濃度を得る方法は特に限定されないが、ポリエステル樹脂中に無機粒子、あるいは当該ポリエステル樹脂と非相溶の熱可塑性樹脂を含有させることにより達成することができる。これらの含有量は特に限定されないが、無機粒子の場合は生成ポリエステルに対し5~35質量%が好ましく、特に好ましくは8~25質量%である。一方、非相溶性の熱可塑性樹脂を含有させる場合は、ポリエステルに対し5~35質量%が好ましく、特に好ましくは8~28質量%である。また、無機粒子と、ポリエステル樹脂に非相溶な熱可塑性樹脂を併用する場合には、ポリエステルフィルム基材に対して、その合計量が40質量%以下とすることが、フィルム強度、腰、製膜安定性の点から好ましい。
【0018】
使用する無機粒子は特に限定されないが、平均粒径が0.1~4.0μmの無機粒子が好ましく、特に好ましくは0.3~1.5μmの無機粒子である。具体的には、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫化亜鉛などの白色顔料が好ましく、これらを混合しても良い。さらに、フィルム中に一般的に含有されている無機粒子、例えばシリカ、アルミナ、タルク、カオリン、クレー、リン酸カルシウム、雲母、ヘクトライト、ジルコニア、酸化タングステン、フッ化リチウム、フッ化カルシウム、硫酸カルシウムなどを併用しても良い。
【0019】
また、ポリエステル樹脂と非相溶の熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂と混合する場合、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリカーボネート樹脂などを挙げることができる。また、それらの熱可塑性樹脂は混合しても良く、変性したものでも良い。当然のことながら、上記無機粒子と併用することもできる。また必要に応じて、種々の増白剤を添加してもよいことは言うまでもない。
【0020】
粒子の平均粒径の測定方法は、フィルムの断面の粒子を走査型電子顕微鏡で観察を行い、粒子50個を観察し、その平均値をもって平均粒径とする方法で行った。
【0021】
本発明の目的を満たすものであれば、粒子の形状は特に限定されるものでなく、球状粒子、不定形の球状でない粒子を使用できる。不定形の粒子の粒子径は円相当径として計算することができる。円相当径は、観察された粒子の面積をπで除し、平方根を算出し2倍した値である。
【0022】
さらに、本発明の白色積層ポリエステルフィルムは、その見掛け密度が0.3~1.3g/cmである微細空洞含有ポリエステルフィルムであることが好ましい。
【0023】
また、その空洞積層数密度が、クッション性と表面剥離強度の両立の点で、0.20個/μm以上、好ましくは0.25個/μm以上、より好ましくは0.30個/μm以上である白色積層ポリエステルフィルムも好ましい。その結果、得られる白色積層ポリエステルフィルムは、印刷鮮明性や印刷時の加工特性に優れる。ここで、空洞積層数密度(個/μm)は、式:フィルム厚み方向の空洞数(個)/フィルム厚み(μm)で定義される。当該空洞積層数密度の上限は、空洞発現効率の点から0.80個/μmが好ましく、0.55個/μmがより好ましい。同密度を上記の範囲に調節する方法としては、非相溶の熱可塑性樹脂の添加量や種類、粘度などを調節するほか、押出機のスクリュー形状の変更や、溶融樹脂流路へのスタティックミキサー設置などの方法が用いられるが、この限りではない。
【0024】
これらの空洞を含有する白色積層ポリエステルフィルムは、フィルム中に含有する微細空洞がマトリックスであるポリエステルとの界面において光散乱を起こすことにより不透明度が一段と向上し、前記無機粒子の添加を減らすことができるので、特に有用である。さらに、微細空洞を含有せしめることにより、基材フィルム自体を軽量化できるため、取扱いが容易になるとともに、原料コストダウンや輸送コストダウンなど経済的効果も大きなものとなる。
【0025】
この様な、白色積層ポリエステルフィルムを得る方法としては、マトリックスである熱可塑性ポリエステル樹脂に対し、前述の如きポリエステル樹脂に非相溶な熱可塑性樹脂を混練りし、ポリエステル樹脂中に非相溶樹脂を微粒子状に分散させたシートを少なくとも一軸方向に延伸することにより、前記非相溶樹脂微粒子の周囲に空洞を発生させる方法など、既に開示されている公知の方法を用いることができる。
【0026】
また、得られた白色積層ポリエステル系フィルムの厚みは、5~300μmであることが好ましい。特に、その空洞積層数密度が0.20個/μm以上である白色積層ポリエステルフィルムの厚みは、20~300μmが好ましく、さらに好ましくは40~250μmである。
【0027】
印刷材料等に用いた場合の求められる白色性とは、カラー値で表すことができる。特にカラーL値は明度を表す尺度であり、数値が高いほうが白くなる。更にカラーb値は数値が高いと黄色味が強く、数値が低いと青味が強くなる。つまり、L値が高く、b値が低いことが白色性が高いということになり、目視による白味が強いということになる。印刷時の鮮明性が良化することになる。
【0028】
(塗布層)
本発明の白色積層ポリエステルフィルムは、UVインキへの密着性、水付着時のブロッキング耐性を向上させるために、その少なくとも片面に、ポリカーボネート構造を有し且つ分岐構造を有するウレタン樹脂、架橋剤、及びポリエステル樹脂を含有する組成物が硬化されて形成されている塗布層が積層されていることが好ましい。前記の塗布層は、塗布層中の塗布層は、ポリカーボネート構造を有し且つ分岐構造を有するウレタン樹脂やポリエステル樹脂が架橋剤によって架橋された構造となり硬化されて形成されていると考えられるが、その架橋された化学構造そのものを表現することが困難であるため、ポリカーボネート構造を有し且つ分岐構造を有するウレタン樹脂、架橋剤、及びポリエステル樹脂を含有する組成物が硬化されて形成されていると表現している。塗布層は、ポリエステルフィルム基材の両面に設けてもよく、ポリエステルフィルム基材の片面のみに設け、他方の面には異種の樹脂被覆層を設けてもよい。
【0029】
以下、塗布層の各組成について詳説する。
(ポリカーボネート構造を有し且つ分岐構造を有するウレタン樹脂)
本発明におけるポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂は、少なくともポリカーボネートポリオール成分とポリイソシアネート成分に由来するウレタン結合部分と分岐構造を有することが好ましく、さらに必要に応じて鎖延長剤を含むものである。ここでいう分岐構造とは、分子鎖を構成する前記のようないずれかの原料成分の末端官能基数が3個以上存在することによって、合成、重合された後に枝分かれ上の分子鎖構造を形成することによって好適に導入されるものである。
【0030】
本発明におけるポリカーボネート構造を有し且つ分岐構造を有するウレタン樹脂は、その分岐構造によって、分子鎖中の末端官能基数の下限は好ましくは3個であり、さらに好ましくは4個である。3個以上であると、水付着時のブロッキング耐性を向上できて好ましい。本発明におけるポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂は、その分岐構造によって、分子鎖中の末端官能基数の上限は好ましくは6個である。6個以下であると、樹脂を水溶液中に安定して分散できて好ましい。
【0031】
本発明におけるポリカーボネート構造を有し且つ分岐構造を有するウレタン樹脂を合成、重合する際のポリカーボネートポリオール成分とポリイソシアネート成分の質量比(ポリカーボネートポリオール成分の質量/ポリイソシアネート成分の質量)の下限は好ましくは0.5であり、より好ましくは0.6であり、さらに好ましくは0.7であり、特に好ましくは0.8であり、最も好ましくは1.0である。0.5以上であると、UVインキへの密着性を向上でき好ましい。本発明におけるポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂を合成、重合する際のポリカーボネートポリオール成分とポリイソシアネート成分の質量比の上限は好ましくは3.0であり、より好ましくは2.2であり、さらに好ましくは2.0であり、特に好ましくは1.7であり、最も好ましくは1.5である。3.0以下であると水付着時のブロッキング耐性を向上できて好ましい。
【0032】
本発明におけるポリカーボネート構造を有し且つ分岐構造を有するウレタン樹脂を合成、重合するために用いるポリカーボネートポリオール成分には、耐熱、耐加水分解性に優れる脂肪族系ポリカーボネートポリオールを含有することが好ましい。脂肪族系ポリカーボネートポリオールとしては、脂肪族系ポリカーボネートジオール、脂肪族系ポリカーボネートトリオールなどが挙げられるが、好適には脂肪族系ポリカーボネートジオールを用いることができる。本発明におけるポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂を合成、重合するために用いる脂肪族系ポリカーボネートジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,8-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのジオール類の1種または2種以上と、例えば、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲンなどのカーボネート類とを反応させることにより得られる脂肪族系ポリカーボネートジオールなどが挙げられる。
【0033】
本発明における前記のポリカーボネートポリオールの数平均分子量としては、好ましくは1000~3000である。より好ましくは1200~2900、最も好ましくは1500~2800である。1000以上であると、インキ密着性を向上でき好ましい。3000以下であると、水付着時のブロッキング耐性を向上できて好ましい。
【0034】
本発明におけるポリカーボネート構造を有し且つ分岐構造を有するウレタン樹脂の合成、重合に用いるポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート等の芳香族脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート及び4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、および2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、あるいはこれらの化合物を単一あるいは複数でトリメチロールプロパン等とあらかじめ付加させたポリイソシアネート類が挙げられる。前記の芳香族脂肪族ジイソシアネート類、脂環式ジイソシアネート類、または、脂肪族ジイソシアネート類等を使用した場合、黄変の問題がなく好ましい。また、強硬な塗膜になり過ぎず、ポリエステルフィルム基材の熱収縮による応力を緩和でき、接着性が良好となり好ましい。
【0035】
鎖延長剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,6-ヘキサンジオール等のグリコール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトール等の多価アルコール類、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、およびピペラジン等のジアミン類、モノエタノールアミンおよびジエタノールアミン等のアミノアルコール類、チオジエチレングルコール等のチオジグリコール類、あるいは水が挙げられる。
【0036】
ウレタン樹脂中に分岐構造を形成させるためには、例えば、前記のポリカーボネートポリオール成分、ポリイソシアネート、鎖延長剤を適切な温度、時間を設けて反応させたのち、3官能以上の水酸基あるいはイソシアネート基を有する化合物を添加し、さらに反応を進行させる方法が好ましく採用され得る。
【0037】
3官能以上の水酸基を有する化合物の具体例としては、カプロラクトントリオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、ヘキサントリオール、1,2,3-ヘキサントリオール、1,2,3-ペンタントリオール、1,3,4-ヘキサントリオール、1,3,4-ペンタントリオール、1,3,5-ヘキサントリオール、1,3,5-ペンタントリオール、ポリエーテルトリオールなどが挙げられる。前記のポリエーテルトリオールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等のアルコール、ジエチレントリアミン等のような、活性水素を3個有する化合物の1種又は2種以上を開始剤として、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、アミレンオキシド、グリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、t-ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等のモノマーの1種又は2種以上を付加重合することによって得られる化合物が挙げられる。
【0038】
3官能以上のイソシアネート基を有する化合物の具体例としては、1分子中に少なくとも3個以上のイソシアネート(NCO)基を有するポリイソシアネート化合物であればよい。本発明において3官能以上のイソシアネート化合物は、2個のイソシアネート基を有する、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート等のイソシアネートモノマーを変性したビュレット体、ヌレート体、およびアダクト体等が挙げられる。
芳香族ジイソシアネートは、例えば1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、および4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートは、例えばトリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、および2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
芳香脂肪族ジイソシアネートは、例えばキシリレンジイソシアネート、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、および1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環族ジイソシアネートは、例えば3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:IPDI、イソホロンジイソシアネート)、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、および1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
ビュレット体とは、イソシアネートモノマーが自己縮合して形成したビュレット結合を有する自己縮合物であり、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体などが挙げられる。
ヌレート体とは、イソシアネートモノマーの3量体であり、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、イソホロンジイソシアネートの3量体、トリレンジイソシアネートの3量体などが挙げられる。
アダクト体とは、上記イソシアネートモノマーと3官能以上の低分子活性水素含有化合物とを反応させてなる、3官能以上のイソシアネート化合物をいい、例えば、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとイソホロンジイソシアネートとを反応させた化合物、などが挙げられる。
【0039】
3官能以上の官能基数を有する鎖延長剤としては、上記鎖延長剤の説明中のトリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトール等の3官能以上の水酸基を有するアルコール類などが該当する。
【0040】
本発明における塗布層は、水系の塗布液を用い後述のインラインコート法により設けることが好ましい。そのため、本発明のウレタン樹脂は水溶性又は水分散性を持つことが望ましい。なお、前記の「水溶性又は水分散性」とは、水、または水溶性の有機溶剤を50質量%未満含む水溶液に対して分散することを意味する。
【0041】
ウレタン樹脂に水分散性を付与させるためには、ウレタン分子骨格中にスルホン酸(塩)基又はカルボン酸(塩)基を導入(共重合)することができる。耐湿性を維持するために、弱酸性であるカルボン酸(塩)基を導入するのが好適である。また、ポリオキシアルキレン基などのノニオン性基を導入することもできる。
【0042】
ウレタン樹脂にカルボン酸(塩)基を導入するためには、例えば、ポリオール成分として、ジメチロールプロパン酸、ジメチロールブタン酸などのカルボン酸基を有するポリオール化合物を共重合成分として導入し、塩形成剤により中和する。塩形成剤の具体例としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミンなどのトリアルキルアミン類、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリンなどのN-アルキルモルホリン類、N-ジメチルエタノールアミン、N-ジエチルエタノールアミンなどのN-ジアルキルアルカノールアミン類が挙げられる。これらは単独で使用できるし、2種以上併用することもできる。
【0043】
水分散性を付与するために、カルボン酸(塩)基を有するポリオール化合物を共重合成分として用いる場合は、ウレタン樹脂中のカルボン酸(塩)基を有するポリオール化合物の組成モル比は、ウレタン樹脂の全ポリイソシアネート成分を100モル%としたときに、3~60モル%であることが好ましく、5~40モル%であることが好ましい。前記組成モル比が3モル%以上の場合は、水分散性が得られて好ましい。また、前記組成モル比が60モル%以下の場合は、耐水性が保たれ耐湿熱性が得られて好ましい。
【0044】
本発明におけるウレタン樹脂は、強硬性向上のため末端にブロックイソシアネート構造を有してもよい。
【0045】
(架橋剤)
本発明において、塗布層形成用組成物が含有する架橋剤としてはブロックイソシアネートが好ましく、3官能以上のブロックイソシアネートがさらに好ましく、4官能以上のブロックイソシアネートが特に好ましい。これらにより水付着時のブロッキング耐性を向上させることが可能である。
【0046】
前記ブロックイソシアネートのNCO当量の下限は好ましくは100であり、より好ましくは120であり、さらに好ましくは130であり、特に好ましくは140であり、最も好ましくは150である。NCO当量が100以上であると塗膜割れが発生するおそれがなく好ましい。NCO当量の上限は好ましくは500であり、より好ましくは400であり、さらに好ましくは380であり、特に好ましくは350であり、最も好ましくは300である。NCO当量が500以下であると、水付着時のブロッキング耐性を向上できて好ましい。
【0047】
前記ブロックイソシアネートのブロック剤の沸点の下限は好ましくは150℃であり、より好ましくは160℃であり、さらに好ましくは180℃であり、特に好ましくは200℃であり、最も好ましくは210℃である。ブロック剤の沸点が高い程、塗布液の塗布後の乾燥工程やインラインコート法の場合はフィルム製膜工程における熱付加によってもブロック剤の揮発が抑制され、微小な塗布面凹凸の発生が抑制され、フィルムの透明性が向上する。ブロック剤の沸点の上限は特に限定しないが、生産性の点から300℃程度が上限であると思われる。沸点は分子量と関係するため、ブロック剤の沸点を高くするためには、分子量の大きなブロック剤を用いることが好ましく、ブロック剤の分子量は50以上が好ましく、60以上がより好ましく、80以上がさらに好ましい。
【0048】
ブロック剤の解離温度の上限は好ましくは200℃であり、より好ましくは180℃であり、さらに好ましくは160℃であり、特に好ましくは150℃であり、最も好ましくは120℃である。ブロック剤は塗布液の塗布後の乾燥工程やインラインコート法の場合はフィルム製膜工程における熱付加により官能基と解離し、再生イソシアネート基が生成される。そのため、ウレタン樹脂などとの架橋反応が進行し、接着性が向上する。ブロックイソシアネートの解離温度が上記温度以下である場合は、ブロック剤の解離が十分進行するため、接着性、特に耐湿熱性が良好となる。
【0049】
本発明において、ブロックイソシアネートに用いる解離温度が120℃以下であり、かつ、ブロック剤の沸点が150℃以上であるブロック剤としては、重亜硫酸塩系化合物:重亜硫酸ソーダなど、ピラゾール系化合物:3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ブロモー3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロー3,5-ジメチルピラゾールなど、活性メチレン系:マロン酸ジエステル(マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジ2-エチルヘキシル)、メチルエチルケトン等、トリアゾール系化合物:1,2,4-トリアゾールなどが挙げられる。なかでも、耐湿熱性、黄変の点から、ピラゾール系化合物が好ましい。
【0050】
本発明において、ブロックイソシアネートの前駆体である3官能以上のポリイソシアネートは、イソシアネートモノマーを導入して好適に得ることができる。例えば、2個のイソシアネート基を有する芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、又は脂環族ジイソシアネート等のイソシアネートモノマーを変性したビュレット体、ヌレート体、およびアダクト体等が挙げられる。
ビュレット体とは、イソシアネートモノマーが自己縮合して形成したビュレット結合を有する自己縮合物であり、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体などが挙げられる。
ヌレート体とは、イソシアネートモノマーの3量体であり、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、イソホロンジイソシアネートの3量体、トリレンジイソシアネートの3量体などが挙げられる。
アダクト体とは、イソシアネートモノマーと3官能以上の低分子活性水素含有化合物とを反応させてなる、3官能以上のイソシアネート化合物をいい、例えば、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとイソホロンジイソシアネートとを反応させた化合物、などが挙げられる。
【0051】
前記のイソシアネートモノマーとしては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、1,4-ナフチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4′-ジイソシアネート、2,2′-ジフェニルプロパン-4,4′-ジイソシアネート、3,3′-ジメチルジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネート、4,4′-ジフェニルプロパンジイソシアネート、3,3′-ジメトキシジフェニル-4,4′-ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネート等の芳香族脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート及び4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、および2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類が挙げられる。透明性、接着性、耐湿熱性の点から、脂肪族、脂環式イソシアネートやこれらの変性体が好ましい。
【0052】
本発明におけるブロックイソシアネートは、水溶性、または、水分散性を付与するために前駆体であるポリイソシアネートに親水基を導入することができる。親水基としては、(1)ジアルキルアミノアルコールの四級アンモニウム塩やジアルキルアミノアルキルアミンの四級アンモニウム塩など、(2)スルホン酸塩、カルボン酸塩、リン酸塩など、(3)アルキル基で片末端封鎖されたポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。親水性部位を導入した場合は(1)カチオン性、(2)アニオン性、(3)ノニオン性となる。なかでも、他の水溶性樹脂はアニオン性のものが多いため、容易に相溶できるアニオン性やノニオン性が好ましい。また、アニオン性は他の樹脂との相溶性に優れ、ノニオン性はイオン性の親水基をもたないため、耐湿熱性を向上させるためにも好ましい。
【0053】
アニオン性の親水基としては、ポリイソシアネートに導入するための水酸基、親水性を付与するためのカルボン酸基を有するものが好ましい。例えば、グリコール酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、オキシ酪酸、オキシ吉草酸、ヒドロキシピバリン酸、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロパン酸、ジメチロールブタン酸、カルボン酸基を有するポリカプロラクトンが挙げられる。カルボン酸基を中和するには、有機アミン化合物が好ましい。例えば、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、エチレンジアミンなどの炭素数1から20の直鎖状、分岐状の1,2または3級アミン、モルホリン、N-アルキルモルホリン、ピリジンなどの環状アミン、モノイソプロパノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルイソプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの水酸基含有アミンなどが挙げられる。
【0054】
ノニオン性の親水基としては、アルキル基で片末端封鎖されたポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールのエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドの繰り返し単位が3~50が好ましく、より好ましくは、5~30である。繰り返し単位が小さい場合は、樹脂との相溶性が悪くなり、ヘイズが上昇し、大きい場合は、高温高湿下の接着性が低下する場合がある。本発明のブロックイソシアネートは水分散性向上のために、ノニオン系、アニオン系、カチオン系、両性界面活性剤を添加することができる。例えばポリエチレングリコール、多価アルコール脂肪酸エステル等のノニオン系、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩等のアニオン系、アルキルアミン塩、アルキルベタイン等のカチオン系、カルボン酸アミン塩、スルホン酸アミン塩、硫酸エステル塩等の界面活性剤などが挙げられる。
【0055】
また、水以外にも水溶性の有機溶剤を含有することができる。例えば、反応に使用した有機溶剤やそれを除去し、別の有機溶剤を添加することもできる。
【0056】
(ポリエステル樹脂)
本発明における塗布層を形成するのに用いるポリエステル樹脂は、直鎖状のものであってもよいが、より好ましくは、ジカルボン酸と、分岐構造を有するジオールとを構成成分とするポリエステル樹脂であることが好ましい。ここで言うジカルボン酸は、その主成分がテレフタル酸、イソフタル酸又は2,6-ナフタレンジカルボン酸である他アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が、挙げられる。また、分岐したグリコールとは枝分かれしたアルキル基を有するジオールであって、例えば、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-イソプロピル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-n-ヘキシル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-n-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-n-ヘキシル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジ-n-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-n-ブチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、及び2,2-ジ-n-ヘキシル-1,3-プロパンジオールなどが挙げられる。
【0057】
ポリエステル樹脂は、上記のより好ましい態様である分岐したグリコール成分は全グリコール成分の中に、好ましくは10モル%以上の割合で、さらに好ましくは20モル%以上の割合で含有されるものと言える。10モル%以下であると、結晶性が高くなり、塗布層の接着性が低下することがある。全グリコール成分の中のグリコール成分上限は、好ましくは80モル%以下であり、より好ましくは70質量%である。80モル%以上であると、副生成物であるオリゴマー濃度が増加し、塗布層の透明性に影響することがある。上記化合物以外のグリコール成分としてはエチレングリコールが最も好ましい。少量であれば、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールまたは1,4-シクロヘキサンジメタノールなどを用いても良い。
【0058】
上記ポリエステル樹脂の構成成分としてのジカルボン酸としては、テレフタル酸又はイソフタル酸であるのが最も好ましい。上記ジカルボン酸の他に、共重合ポリエステル系樹脂に水分散性を付与させるため、5-スルホイソフタル酸等を1~10モル%の範囲で共重合させるのが好ましく、例えば、スルホテレフタル酸、5-スルホイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸等を挙げることができる。ナフタレン骨格を有するジカルボン酸を含有するポリエステル樹脂を使用してもよいが、UVインキへの密着性の低下を抑制するために、その量的割合は全カルボン酸成分中で5モル%以下であることが好ましく、使用しなくともよい。
【0059】
塗布液中のポリエステル樹脂、ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂及び架橋剤の固形分の総和を100質量%とするとき、架橋剤の含有率の下限は好ましくは5質量%であり、より好ましくは7質量%であり、さらに好ましくは10質量%である。5質量%以上であると、水付着時のブロッキング耐性を向上できて好ましい。架橋剤の含有率の上限は好ましくは50質量%であり、より好ましくは40質量%であり、さらに好ましくは35質量%であり、最も好ましくは30質量%である。50質量%以下であるとUVインキへの密着性が高くなり、好ましい。
【0060】
塗布液中のポリエステル樹脂、ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂及び架橋剤の固形分の総和を100質量%とするとき、ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂の含有率の下限は好ましくは5質量%である。5質量%以上であると、UVインキへの密着性を向上でき好ましい。ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂の含有率の上限は好ましくは50質量%であり、より好ましくは40質量%であり、さらに好ましくは30質量%であり、最も好ましくは20質量%である。ウレタン樹脂の含有率は50質量%以下であると、水付着時のブロッキング耐性を向上できて好ましい。
【0061】
塗布液中のポリエステル樹脂、ウレタン樹脂及び架橋剤の固形分の総和を100質量%とするとき、ポリエステル樹脂含有率の下限は好ましくは10質量%であり、より好ましくは20質量%であり、さらに好ましくは30質量%であり、特に好ましくは35質量%であり、最も好ましくは40質量%である。ポリエステル樹脂の含有率は10質量%以上であると、塗布層とポリエステルフィルム基材の密着性が良好となり好ましい。ポリエステル樹脂の含有率の上限は好ましくは70質量%であり、より好ましくは67質量%であり、さらに好ましくは65質量%であり、特に好ましくは62質量%であり、最も好ましくは60質量%である。ポリエステル樹脂の含有率が70質量%以下であると、UVインキ加工後の耐湿熱性が良好となり好ましい。
【0062】
(添加剤)
本発明における塗布層中には、本発明の効果を阻害しない範囲において公知の添加剤、例えば界面活性剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の粒子、帯電防止剤、核剤等を添加しても良い。
【0063】
本発明においては、塗布層を形成する組成物中に、さらに帯電防止剤が含まれている場合が、得られたフィルムをラベル化するための種々の工程、例えば粘着剤のコート、印刷、断裁、打ち抜きなどにおける静電気トラブルの発生を防止できるため、特に好ましい。帯電防止剤としては、塗布型の帯電防止剤として一般的に用いられているもの( 例えば、第4 級アンモニウム塩系帯電防止剤) 、粒子状のカーボンブラック、ニッケル、銅などの金属紛、酸化スズ、酸化亜鉛などの金属酸化物、繊維状の黄銅、ステンレス、アルミニウム等の金属コートファイバー、鱗片状黒鉛、アルミニウムフレーク、銅フレーク等の導電性フィラー、スルホン化ポリアニリン、ポリピロールなどの導電性ポリマーが、本発明の効果を阻害しない範囲で、任意に使用することができる。
【0064】
塗布層面の光沢度を低下させるために、塗布層中に不活性粒子を含有させてもよい。
【0065】
前記の不活性粒子としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、シリカ、アルミナ、タルク、カオリン、クレー、リン酸カルシウム、雲母、ヘクトライト、ジルコニア、酸化タングステン、フッ化リチウム、フッ化カルシウムなどの無機粒子や、ポリスチレン系、ポリアクリル系、メラミン系、ベンゾグアナミン系、シリコーン樹脂などの有機ポリマー系粒子等が挙げられる。これらは1種でも良いが、2種以上併用しても良い。
【0066】
前記の不活性粒子の平均粒径は、0.1~2.4μmが好ましく、さらに好ましくは0.3~2.0μmである。不活性粒子の平均粒径が0.04μm以下であると、フィルム表面の光沢度が上昇する可能性がある。逆に、2.4μmを越えると、粒子が塗布層から脱落し、粉落ちの原因になる傾向がある。
【0067】
なお、平均粒径の測定方法は上述の通りである。そして、本発明の目的を満たすものであれば、粒子の形状は特に限定されるものでなく、球状粒子、不定形の球状でない粒子を使用できる。不定形の粒子の粒径は円相当径として計算することができる。
【0068】
塗布層面の光沢度を上昇させたい場合には、塗布層中に粒子を含有させないことも好ましい。
【0069】
(白色積層ポリエステルフィルムの製造)
本発明の白色積層ポリエステルフィルムの製造方法は任意であり、特に制限されるものではないが、例えば前述の組成からなる混合物を溶融させシート状に押出し成形して未延伸フィルムとした後、この未延伸フィルムを延伸するという一般的な方法を用いることができる。
【0070】
本発明の白色積層ポリエステルフィルムは、フィルム原料を溶融、押出し成形する工程で、ポリエステル樹脂中にポリエステル樹脂と非相溶な熱可塑性樹脂を分散させている。本発明の実施例では、ポリエステル樹脂およびポリエステル樹脂と非相溶な熱可塑性樹脂はペレット形状で供給されているものを用いたが、これに限定されるものではない。
【0071】
フィルム状に溶融成形するため押出機に投入する原料は、目的の組成に応じてこれらの樹脂をペレット混合して準備する。しかしながら、本発明の基材の空洞含有ポリエステルフィルム原料として、ポリエステル樹脂とポリオレフィン系樹脂を用いた場合、樹脂の比重が両者で大きく異なるため、一度混合したペレットが押出機に供給される過程で偏析しないような工夫を加えることが好ましい。偏析を防ぐための好適な方法として、事前に原料樹脂の一部または全部を組み合わせて混練りペレタイズし、マスターバッチペレットとする方法が挙げられる。本発明の実施例ではこの方法を用いたが、本発明の効果を妨げない限り特に限定されるものではない。
【0072】
また、これらの非相溶な樹脂の混合系の押出しにおいては、溶融状態で混合して微分散させた後も、樹脂の界面エネルギーを減少させようという働きから再凝集する性質がある。これは未延伸フィルムを押出成形する際に空洞発現剤を粗分散化させ、求める物性発現の妨げとなる現象である。
【0073】
これを防ぐため、本発明のフィルムを成形する際には、より混合効果の高い二軸押出機を用いて、空洞発現剤をあらかじめ微分散させておくことが好ましい。また、これが困難な場合には、補助的な手段として、押出機から静的混合器を介して、原料樹脂をフィードブロックまたはダイスに供給することも好ましい。ここで用いる静的混合器としては、スタティックミキサーやオリフィス等を用いることができる。ただし、これらの方法を採用した場合には、メルトライン中で熱劣化した樹脂を滞留させることもあり、注意が必要である。
【0074】
なお、ポリエステル樹脂中で一旦微粒子状に分散した非相溶樹脂は、低せん断の溶融状態下で、非相溶樹脂の再凝集が時間とともに進行する傾向があるので、押出機からダイスに至るメルトライン中の滞留時間を減少させることが根本的な解決方法である。本発明において、メルトライン中での滞留時間を30分以下とすることが好ましく、15分以下とすることがより好ましい。
【0075】
上記の様にして得た未延伸フィルムを延伸、配向処理する条件は、フィルムの物性と密接に関係する。以下では、最も一般的な逐次二軸延伸方法、特に未延伸フィルムを長手方向次いで幅方向に延伸する方法を例にとり、延伸、配向条件を説明する。
【0076】
縦延伸工程では、80~120℃に加熱したロールで長手方向に2.5~5.0倍に延伸して、一軸延伸フィルムを得る。熱手段としては、加熱ロールを用いる方法でも非接触の加熱方法を用いる方法でもよく、それらを併用してもよい。次いで一軸延伸フィルムをテンターに導入し、幅方向に(Tm-10℃)以下の温度で2.5~5.0倍に延伸する。但し、Tmはポリエステルの融点を意味する。
【0077】
また、上記の二軸延伸フィルムに対し、必要に応じて熱処理を施す。熱処理はテンター中で行うのが好ましく、(Tm-60℃)~Tmの範囲で行うのが好ましい。
【0078】
塗布層はフィルムの製造後、もしくは製造工程において設けることができる。特に、生産性の点からフィルム製造工程の任意の段階、すなわち未延伸あるいは一軸延伸後のPETフィルムの少なくとも片面に、塗布液を塗布し、塗布層を形成することが好ましい。
【0079】
この塗布液をPETフィルムに塗布するための方法は、公知の任意の方法を用いることができる。例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ダイコーター法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、含浸コート法、カーテンコート法、などが挙げられる。これらの方法を単独で、あるいは組み合わせて塗工することができる。
【0080】
本発明において塗布層の厚みは、0.001~2.00μmの範囲で適宜設定することができるが、加工性と接着性とを両立させるには0.01~1.00μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.02~0.80μm、さらに好ましくは0.05~0.50μmである。塗布層の厚みが0.001μm以上であると、接着性が良好であり好ましい。塗布層の厚みが2.00μm以下であると、ブロッキングを生じ難く好ましい。
【0081】
従来から、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、及びアクリル系樹脂等を、単一あるいは2種以上混合したもの、また前記樹脂と特定の架橋剤(メラミン、イソシアネート等)とを混合したものなどを含む塗布層を有するポリエステルフィルムの中には、通常の水蒸気を含む環境に放置された場合の耐ブロッキング性を満足するものは多くあった。しかしながら、冬場に、屋外と屋内の間で運搬する際に結露してフィルム表面や塗布層表面に液体の水が付着する場合があり、その時のポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂及び架橋剤を含む塗布層を有するポリエステルフィルムはブロッキングを起こす問題があった。しかしながら、本発明の白色積層ポリエステルフィルムは、通常の水蒸気を含む環境に放置された場合の耐ブロッキング性のみならず、冬場に室内と屋外の間で運搬される易接着性ポリエステルフィルムについて環境温度の変化に伴い結露してフィルム表面や塗布層表面に液体の水が付着する場合にも、ブロッキングを生じるおそれがない。
【実施例
【0082】
次に、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。まず、以下に本発明で用いた評価方法について説明する。
【0083】
(1)水付着時のブロッキング耐性評価
後述する実施例で製造した易接着性ポリエステルフィルムを幅方向に10cm、長手方向に1.5cmにカットする。カットしたフィルムの塗布層面の端部に、幅方向に1.5cm長手方向に1.5cmのフィルムを重ねる。反対側の端部の塗布層面の上に、水滴を0.03g垂らす。その後幅方向に10cm、長手方向に1.5cmにカットしたフィルムの塗布層面同士を重ね合わせ、水滴を落とした側からフィルムを重ねた側へ空気が入らないように均一にロールをかける。その後、サンプルをオーブン(50℃)に24時間投入する。その後、フィルムを剥離し、その剥離状態を下記の基準で判定した。
○:塗布層の転移がなく軽く剥離できる。
△:塗布層は維持されているが、部分的に塗布層の表層が相手面に転移している。
×:2枚のフィルムが固着し剥離できないもの、あるいは剥離できてもフィルム基材が劈開している。
【0084】
(2)UVインキとの密着性
積層ポリエステルフィルムの塗布層上に、UVインキ[T&K TOKA(株)製、商品名「BEST CURE UV161藍S」]を用いて、印刷機[(株)明製作所製、商品名「RIテスター」]にて印刷を施し、次いで、インキ層を塗布したフィルムに高圧水銀灯を用いて40mJ/cmの紫外線を照射し、紫外線硬化型インキを硬化させた。次いで、ニチバン製セロハン粘着テープ(CT405AP-24)を用い、幅24mm、長さ50mmを切り出し、インキ層表面に空気が混入しないようハンディゴムローラーで完全に付着させる。その後、垂直にセロハン粘着テープを引き剥がして、24mm×50mmの領域において、印刷層の残存した面積を観察し、下記の基準で判断した。
○:印刷層の残存面積が全体の99%以上
△:印刷層の残存面積が全体の90%以上、99%未満
×:印刷層の残存面積が全体の90%未満
【0085】
(3)ポリカーボネートポリオールの数平均分子量の測定方法
ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂をプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR)により測定すると、4.1ppm付近にOCOO結合に隣接するメチレン基由来のピークが観測される。また、当該ピークより0.2ppm程高磁場に、ポリイソシアネートとポリカーボネートポリオールとの反応で生じたウレタン結合に隣接するメチレン基由来のピークが観測される。これら2種類のピークの積分値とポリカーボネートポリオールを構成するモノマーの分子量からポリカーボネートポリオールの数平均分子量を算出した。
【0086】
(4)見かけ密度
フィルムを5.00cm四方の正方形に4枚切り出して試料とした。これを4枚重ねにして、その厚みマイクロメーターを用いて有効数字4桁で10点測定し、重ね厚みの平均値を求めた。この平均値を4で除し、小数第4位の桁を四捨五入し、一枚あたりの平均のフィルム厚み(t:μm)を小数第3位の桁で求めた。また、同試料4枚の質量(w:g)を自動上皿天秤により有効数字4桁まで測定し、下記式により見かけ密度を求めた。なお、見かけ密度は有効数字3桁に丸めた。
見かけ密度(g/cm)=w×10/(5.00×5.00×t×4)
【0087】
(5)光学濃度
ポリエステル系フィルムの不透明度マクベス濃度計TR-927型を使用し、Gフィルターを介した光の透過率を測定し、得られた光線透過率から光学濃度を計算し、不透明度の指標とした。光学濃度は、光線透過率(範囲:0~100%)の逆数の対数(Log10)として表される。光学濃度の値が大きい程、不透明度が高いことを示す。
【0088】
(6)L値、b値
JIS-8722に準拠し、色差計(日本電色工業社製、ZE6000)を用いて、反射のカラーL値及びカラーb値を測定した。
【0089】
(ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂A-1の重合)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、水添m-キシリレンジイソシアネート27.5質量部、ジメチロールプロパン酸6.5質量部、数平均分子量1800のポリヘキサメチレンカーボネートジオール60質量部、ネオペンチルグリコール6質量部、及び溶剤としてアセトン84.00質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、トリメチロールプロパン5質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において1時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン5.17質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450gを添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、ポリウレタンプレポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトンおよび水の一部を除去することにより、固形分34質量%の水分散性ウレタン樹脂溶液(A-1)を調製した。
【0090】
(ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂A-2の重合)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート25質量部、ジメチロールプロパン酸5質量部、数平均分子量2600のポリヘキサメチレンカーボネートジオール52質量部、ネオペンチルグリコール6質量部、及び溶剤としてアセトン84.00質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、ヘキサメチレンジイソシアネートを原料としたイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ製、デュラネートTPA、3官能)18質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において1時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。その後、反応液温度を50℃に下げ、メチルエチルケトオキシム8質量部を滴下した。この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン5.17質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450gを添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、ポリウレタンプレポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトンおよび水の一部を除去することにより、固形分35質量%の水分散性ウレタン樹脂溶液(A-2)を調製した。
【0091】
(ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂A-3の重合)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート22質量部、数平均分子量700のポリエチレングリコールモノメチルエーテル20質量部、数平均分子量2100のポリヘキサメチレンカーボネートジオール53質量部、ネオペンチルグリコール5質量部、及び溶剤としてアセトン84.00質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、ヘキサメチレンジイソシアネートを原料としたイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ製、デュラネートTPA、3官能)16質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において1時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。その後、反応液温度を50℃に下げ、メチルエチルケトオキシム7質量部を滴下した。この反応液を40℃にまで降温した後、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450gを添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、ポリウレタンプレポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトンおよび水の一部を除去することにより、固形分35質量%の水分散性ウレタン樹脂溶液(A-3)を調製した。
【0092】
(ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂A-4の重合)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート22質量部、ジメチロールブタン酸3質量部、数平均分子量2000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール73質量部、ネオペンチルグリコール2質量部、及び溶剤としてアセトン84.00質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、トリメチロールプロパン4質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において1時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン8.77質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450gを添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、ポリウレタンプレポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトンおよび水の一部を除去することにより、固形分34質量%の水分散性ウレタン樹脂溶液(A-4)を調製した。
【0093】
(ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂A-5の重合)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート47質量部、数平均分子量700のポリエチレングリコールモノメチルエーテル21質量部、数平均分子量1200のポリヘキサメチレンカーボネートジオール20質量部、ネオペンチルグリコール12質量部及び溶剤としてアセトン84.00質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、トリメチロールプロパン4質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において1時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン8.77質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450gを添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、ポリウレタンプレポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトンおよび水の一部を除去することにより、固形分34質量%の水分散性ウレタン樹脂溶液(A-5)を調製した。
【0094】
(ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂A-6の重合)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、4.4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート23.5質量部、ジメチロールブタン酸4.5質量部、数平均分子量2000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール70質量部、ネオペンチルグリコール2質量部、及び溶剤としてアセトン84.00質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン8.77質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450gを添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、ポリウレタンプレポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトンおよび水の一部を除去することにより、固形分34質量%の水分散性ウレタン樹脂溶液(A-6)を調製した。
【0095】
(ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂A-7の重合)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、水添m-キシリレンジイソシアネート27.5質量部、ジメチロールプロパン酸6.5質量部、数平均分子量1800のポリヘキサメチレンカーボネートジオール60質量部、ネオペンチルグリコール6質量部、及び溶剤としてアセトン84.00質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン5.17質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450gを添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、ポリウレタンプレポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトンおよび水の一部を除去することにより、固形分34質量%の水分散性ウレタン樹脂溶液(A-7)を調製した。
【0096】
(ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂A-8の重合)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、1,6-ヘキサンジオールとジエチルカーボネートからなる数平均分子量が2000のポリカーボネートポリオールを400質量部、ネオペンチルグリコールを10.4質量部、イソホロンジイソシアネート58.4質量部、ジメチロールブタン酸が74.3質量部及び溶剤としてアセトン320質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。この反応液を40℃にまで降温した後、イソホロンジアミンを添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水1200gを添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、ポリウレタンプレポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトンおよび水の一部を除去することにより、固形分34質量%の水分散性ウレタン樹脂溶液(A-8)を調製した。
【0097】
(ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂A-9の重合)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート50質量部、数平均分子量700のポリエチレングリコールモノメチルエーテル21質量部、数平均分子量1200のポリヘキサメチレンカーボネートジオール35質量部、ネオペンチルグリコール13質量部及び溶剤としてアセトン84.00質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、トリメチロールプロパン1.2質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において1時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン8.77質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450gを添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、ポリウレタンプレポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトンおよび水の一部を除去することにより、固形分34質量%の水分散性ウレタン樹脂溶液(A-9)を調製した。
【0098】
(ポリカーボネートポリオール成分を含有しないウレタン樹脂A-10の重合)
テレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコール、およびネオペンチルグリコールを構成成分とする分子量5000のポリエステルポリオール75質量部、水添m-キシリレンジイソシアネート30質量部、エチレングリコール7質量部、およびジメチロールプロピオン酸6質量部及び溶剤としてアセトン84.00質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン5.17質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450gを添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、ポリウレタンプレポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトンおよび水の一部を除去することにより、固形分34質量%の水分散性ウレタン樹脂溶液(A-10)を調製した。
【0099】
(ポリカーボネートポリオール成分を含有しないウレタン樹脂A-11の重合)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート54量部、エチレングリコール及びアジピン酸を構成成分とする数平均分子量1500のポリエステルポリオール38質量部、トリメチロールプロパン0.8質量部及び溶剤としてアセトン84.00質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、硫酸水素ナトリウム4質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において1時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン8.77質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450gを添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、ポリウレタンプレポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトンおよび水の一部を除去することにより、固形分34質量%の水分散性ウレタン樹脂溶液(A-11)を調製した。
【0100】
(ブロックイソシアネート架橋剤B-1の重合)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネートを原料としたイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ製、デュラネートTPA)66.04質量部、N-メチルピロリドン17.50質量部に3,5-ジメチルピラゾール(解離温度:120℃、沸点:218℃)95質量部を滴下し、窒素雰囲気下、70℃で1時間保持した。その後、ジメチロールプロパン酸30質量部を滴下した。反応液の赤外スペクトルを測定し、イソシアネート基の吸収が消失したことを確認後、N,N-ジメチルエタノールアミン5.59質量部、水132.5質量部を加え、固形分40質量%のブロックポリイソシアネート水分散液(B-1)を得た。当該ブロックイソシアネート架橋剤の官能基数は4、NCO当量は280である。
【0101】
(ブロックイソシアネート架橋剤B-2の重合)
攪拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネートを原料としたイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ製、デュラネートTPA)100質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート55質量部、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(平均分子量750)30質量部を仕込み、窒素雰囲気下、70℃で4時間保持した。その後、反応液温度を50℃に下げ、メチルエチルケトオキシム47質量部を滴下した。反応液の赤外スペクトルを測定し、イソシアネート基の吸収が消失したことを確認し、水210質量部を加え固形分40質量%のオキシムブロックイソシアネート架橋剤(B-2)を得た。当該ブロックイソシアネート架橋剤の官能基数は3、NCO当量は170である。
【0102】
(カルボジイミドB-3の重合)
攪拌機、温度計、還流冷却器を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネート168質量部とポリエチレングリコールモノメチルエーテル(M400、平均分子量400)220質量部を仕込み、120℃で1時間、攪拌し、更に4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート26質量部とカルボジイミド化触媒として3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド3.8質量部(全イソシアネートに対して2質量%)を加え、窒素気流下185℃で更に5時間撹拌した。反応液の赤外スペクトルを測定し、波長220~2300cm-1の吸収が消失したことを確認した。60℃まで放冷し、イオン交換水を567質量部加え、固形分40質量%のカルボジイミド水性樹脂液(B-3)を得た。
【0103】
(ブロックイソシアネート架橋剤B-4の重合)
ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物とマレイン酸とのポリエステル(分子量2000)200質量部に、ヘキサメチレンジイソシアネート33.6質量部を添加し、100℃で2時間反応を行った。次いで系の温度を一旦50℃まで下げ、30%重亜硫酸ナトリウム水溶液73質量部を添加し、45℃で60分間攪拌を行った後、水718質量部で希釈し、固形分20質量%のブロックポリイソシアネート水分散液(B-1)を得た。当該ブロックイソシアネート架橋剤の官能基数は2、NCO当量は1300である。
【0104】
(ポリエステル樹脂の重合 C-1)
攪拌機、温度計、および部分還流式冷却器を具備するステンレススチール製オートクレーブに、ジメチルテレフタレート194.2質量部、ジメチルイソフタレート184.5質量部、ジメチル-5-ナトリウムスルホイソフタレート14.8質量部、ジエチレングリコール233.5質量部、エチレングリコール136.6質量部、およびテトラ-n-ブチルチタネート0.2質量部を仕込み、160℃から220℃の温度で4時間かけてエステル交換反応を行なった。次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、30Paの減圧下で1時間30分反応させ、共重合ポリエステル樹脂(C-1)を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂(C-1)は、淡黄色透明であった。共重合ポリエステル樹脂(C-1)の還元粘度を測定したところ,0.70dl/gであった。DSCによるガラス転移温度は40℃であった。
【0105】
(ポリエステル水分散体の調製 Cw-1)
攪拌機、温度計と還流装置を備えた反応器に、ポリエステル樹脂(C-1)25質量部、エチレングリコールn-ブチルエーテル10質量部を入れ、110℃で加熱、攪拌し樹脂を溶解した。樹脂が完全に溶解した後、水65質量部をポリエステル溶液に攪拌しつつ徐々に添加した。添加後、液を攪拌しつつ室温まで冷却して、固形分25質量%の乳白色のポリエステル水分散体(Cw-1)を作製した。
【0106】
(ポリエステル樹脂の重合 C-2)
攪拌機、温度計、及び部分還流式冷却器を具備するステンレススチール製オートクレーブに、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル342.0質量部、ジメチルテレフタレート35.0質量部、ジメチル-5-ナトリウムスルホイソフタレート35.5質量部、エチレングリコール198.6質量部、1,6-ヘキサンジオール118.2質量部、及びテトラ-n-ブチルチタネート0.4質量部を仕込み、160℃から220℃まで4時間かけてエステル交換反応を行なった。さらに、セバシン酸60.7質量部を加え、エステル化反応を行なった.次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、30Paの減圧下で1時間30分反応させ、共重合ポリエステル樹脂(C-2)を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂は、淡黄色透明であった。
【0107】
(ポリエステル水分散体の調製 Cw-2)
攪拌機、温度計と還流装置を備えた反応器に、共重合ポリエステル樹脂(C-2)25質量部、エチレングリコール-n-ブチルエーテル15質量部を入れ、110℃で加熱、攪拌し樹脂を溶解した。樹脂が完全に溶解した後、水55質量部をポリエステル溶液に攪拌しつつ徐々に添加した。添加後、液を攪拌しつつ室温まで冷却して、固形分25質量%の乳白色のポリエステル水分散体(Cw-2)を作製した。
【0108】
(ポリエステル樹脂の重合 C-3)
攪拌機、温度計、および部分還流式冷却器を具備するステンレススチール製オートクレーブに、ジメチルテレフタレート194.2質量部、ジメチルイソフタレート184.5質量部、ジメチル-5-ナトリウムスルホイソフタレート14.8質量部、ネオペンチルグリコール185質量部、エチレングリコール188質量部、およびテトラ-n-ブチルチタネート0.2質量部を仕込み、160℃から220℃の温度で4時間かけてエステル交換反応を行なった。次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、30Paの減圧下で1時間30分反応させ、共重合ポリエステル樹脂(C-3)を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂(C-3)は、淡黄色透明であった。共重合ポリエステル樹脂(C-3)の還元粘度を測定したところ,0.40dl/gであった。DSCによるガラス転移温度は65℃であった。
【0109】
(ポリエステル水分散体の調製 Cw-3)
攪拌機、温度計と還流装置を備えた反応器に、ポリエステル樹脂(C-3)25質量部、エチレングリコールn-ブチルエーテル10質量部を入れ、110℃で加熱、攪拌し樹脂を溶解した。樹脂が完全に溶解した後、水65質量部をポリエステル溶液に攪拌しつつ徐々に添加した。添加後、液を攪拌しつつ室温まで冷却して、固形分25質量%の乳白色のポリエステル水分散体(Cw-3)を作製した。
【0110】
(実施例1)
(1)塗布液の調製
水とイソプロパノールの混合溶媒に、下記の塗剤を混合し、ウレタン樹脂溶液(A-1)/架橋剤(B-1)/ポリエステル水分散体(Cw-1)の固形分質量比が25/26/49になる塗布液を作成した。

ウレタン樹脂溶液(A-1) 6.30質量部
架橋剤(B-1) 5.50質量部
ポリエステル水分散体(Cw-1) 17.00質量部
粒子 23.00質量部
(平均粒径0.45μmのシリカ粒子、 固形分濃度40.00質量%)
界面活性剤 0.15質量部
(シリコーン系、固形分濃度10質量%)
【0111】
(2)白色積層ポリエステルフィルムの製造
(マスターペレットの調製)
溶融粘度(ηO)が1,300ポイズのポリメチルペンテン樹脂(三井化学社製、DX820)60質量%、溶融粘度(ηS)が3,900ポイズのポリスチレン樹脂(日本ポリスチ社製、G797N)20質量%、および溶融粘度が2,000ポイズのポリプロピレン樹脂(グランドポリマー社製、J104WC)20質量%をペレット混合したものを285℃に温調したベント式二軸押出機に供給し、予備混練りした。この溶融樹脂を連続的にベント式単軸混練機に供給、混練りして押出し、得られたストランドを冷却、切断して空洞発現剤マスターペレット(M1)を調製した。
【0112】
また、公知の方法で製造した固有粘度0.62dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂50質量%に平均粒径0.3μmのアナターゼ型二酸化チタン粒子(富士チタン社製、TA-300)50質量%を混合したものをベント式2軸押出し機に供給して予備混練りした。この溶融樹脂を連続的にベント式単軸混練り機に供給し、混練して押出した。得られたストランドを冷却し、切断して二酸化チタン含有マスターペレット(M2)を調製した。
【0113】
(フィルム原料の調製)
140℃で8時間の真空乾燥を施した固有粘度0.62dl/gの前記ポリエチレンテレフタレート樹脂81質量%と90℃で4時間の真空乾燥を施した上記マスターペレット(M1)9質量%、及び上記マスターペレット(M2)10質量%をペレット混合して、フィルム原料(C1)とした。
【0114】
(未延伸フィルムの作製)
前記のフィルム原料(C1)を285℃に温調したB層用押出機に、フィルム原料(C1)に用いたものと同じポリエチレンテレフタレート樹脂70質量%および上記マスターペレット(M2)30質量%を混合したものを、290℃に温調したA層用押出機にそれぞれ別に供給した。B層用押出機より吐出される溶融樹脂はオリフィスを介し、またA層用押出機より吐出される樹脂はスタティックミキサーを介してフィードブックに導き、フィルム原料(C1)からなる層(B層)とポリエチレンテレフタレート樹脂とマスターペレット(M2)からなる層(A層)をA層/B層/A層の順に積層した。
【0115】
この溶融樹脂を、25℃に調温した冷却ロール上にTダイよりシート状に共押出し、静電印加法にて密着固化させ、厚み510μmの未延伸フィルムを作製した。なお、各押出機の吐出量は、各層の厚み比が1対8対1になるよう調整した。このとき溶融樹脂がメルトラインに滞留する時間はおよそ12分、Tダイより受けるせん断速度は約150/秒であった。
【0116】
(二軸延伸フィルムの作製)
得られた未延伸フィルムを、加熱ロールを用いて65℃に均一加熱し、周速が異なる二対のニップロール(低速ロール:2m/分、高速ロール:6.8m/分)間で3.4倍に縦延伸した。このとき、フィルムの補助加熱装置として、ニップロール中間部に金反射膜を備えた赤外線加熱ヒータ(定格出力:20W/cm)をフィルムの両面に対向してフィルム面から1cmの位置に設置し加熱した。このようにして得られた一軸延伸フィルムの片面に、前記の塗布液をリバースキスコート法により延伸前の樹脂固形分厚みが0.9μmとなる様に塗布した。塗布後テンターに導き、乾燥しつつ150℃に加熱して3.7倍に横延伸し、幅固定して220℃で5秒間の熱処理を施し、更に200℃で幅方向に4%緩和させることにより、厚さ50μmの白色積層ポリエステルフィルムを得た。本フィルムの見かけ密度は1.10g/cm、光学濃度は0.8であった。評価結果を表1に示す。
【0117】
(実施例2)
塗布液のウレタン樹脂を(A-2)に、ポリエステル水分散体を(Cw-3)に変更した以外は、実施例1と同様にして、白色積層ポリエステルフィルムを得た。
【0118】
(実施例3)
(1)塗布液の調製
ウレタン樹脂を(A-3)に変更した以外は、実施例1と同様にして、塗布液を作製した。
【0119】
(2)白色積層ポリエステルフィルムの製造
(マスターペレットの調製)
極限粘度0.62のポリエチレンテレフタレート樹脂50質量%に平均粒径0.3μm(電顕法)のアナタース型二酸化チタンを50質量%混合したものをベント式2軸押出機に供給し、混練りして酸化チタン含有マスターペレット(M3)を製造した。
【0120】
(未延伸フィルムの作製)
極限粘度0.62のポリエチレンテレフタレート樹脂85質量%、およびMFR=2.5、Mw=320000、Mw/Mn=4.0、荷重たわみ温度=92℃のポリプロピレン樹脂10質量%、前記酸化チタン含有マスターペレット(M3)5質量%を混合して真空乾燥を施し、空洞含有ポリエステルB層の原料とした。一方、前記酸化チタン含有マスターペレット(M3)30質量%と極限粘度0.62のポリエチレンテレフタレート樹脂70質量%とをペレット混合して真空乾燥を施し、無機粒子含有ポリエステルA層の原料とした。これらの原料を別々の押出機に供給し、285℃で溶融し、空洞含有ポリエステルB層と無機粒子含有ポリエステルA層とがA/B/Aの順になるよう積層し、厚み比率が10/80/10となるようにフィードブロックで接合し、Tダイから30℃に調節された冷却ドラム上に押し出し、2種3層構成の未延伸フィルムを製造した。
【0121】
(二軸延伸フィルムの作製)
得られた未延伸フィルムを、加熱ロールを用いて70℃に均一加熱し、周速が異なる2対のニップロール間で3.4倍に縦延伸した。このとき、フィルムの補助加熱装置として、ニップロール中間部に金反射膜を備えた赤外線加熱ヒータ(定格20W/cm)をフィルムの両面に対向して設置(フィルム表面から1cmの距離)、加熱した。このようにして得られた一軸延伸フィルムの片面に、上記の塗布液をリバースキスコート法により延伸前の樹脂固形分厚みが0.9μmとなる様に塗布した。塗布後テンターに導き、乾燥しつつ140℃に加熱して4.0倍に横延伸し、幅固定して、235℃で熱処理を施し、更に210℃で幅方向に3%緩和させることにより、厚み50μmの白色積層ポリエステルフィルムを得た。本フィルムの見かけ密度は1.09g/cm、光学濃度は0.6、L値は94.4 b値は1.6であった。
【0122】
(実施例4)
塗布液の架橋剤を(B-2)に変更した以外は、実施例1と同様にして、白色積層ポリエステルフィルムを得た。
【0123】
(実施例5)
塗布液のウレタン樹脂を(A-2)に、架橋剤を(B-2)に変更した以外は、実施例1と同様にして、白色積層ポリエステルフィルムを得た。
【0124】
(実施例6)
塗布液のウレタン樹脂を(A-3)に、架橋剤を(B-2)に変更した以外は、実施例1と同様にして、白色積層ポリエステルフィルムを得た。
【0125】
(実施例7)
塗布液において、水とイソプロパノールの混合溶媒に、下記の塗剤を混合し、ウレタン樹脂溶液(A-2)/架橋剤の合計(B-1、B-2)/ポリエステル水分散体(Cw-1)の固形分質量比が25/26/49になるように変更した以外は、実施例1と同様にして、白色積層ポリエステルフィルムを得た。

ウレタン樹脂溶液(A-2) 6.30質量部
架橋剤(B-1) 3.73質量部
架橋剤(B-2) 1.77質量部
ポリエステル水分散体(Cw-1) 17.00質量部
粒子 23.00質量部
(平均粒径0.45μmのシリカ粒子、 固形分濃度40.00質量%)
界面活性剤 0.15質量部
(シリコーン系、固形分濃度10質量%)
【0126】
(実施例8)
塗布液のウレタン樹脂を(A-3)に、ポリエステル水分散体を(Cw-3)に変更した以外は、実施例7と同様にして、白色積層ポリエステルフィルムを得た。
【0127】
(実施例9)K24イ号本命
塗布液において、水とイソプロパノールの混合溶媒に、下記の塗剤を混合し、ウレタン樹脂溶液(A-3)/架橋剤(B-2)/ポリエステル水分散体(Cw-1)の固形分質量比が27/14/59になるになるように変更した以外は、実施例1と同様にして、白色積層ポリエステルフィルムを得た。

ウレタン樹脂溶液(A-3) 7.00質量部
架橋剤(B-2) 3.00質量部
ポリエステル水分散体(Cw-1) 21.00質量部
粒子 23.00質量部
(平均粒径0.45μmのシリカ粒子、 固形分濃度40.00質量%)
界面活性剤 0.15質量部
(シリコーン系、固形分濃度10質量%)
帯電防止剤 2.00質量部
(第4級アンモニウム塩系帯電防止剤、固形分濃度17.50質量%)
【0128】
(実施例10)
塗布液において、水とイソプロパノールの混合溶媒に、下記の塗剤を混合し、ウレタン樹脂溶液(A-3)/架橋剤(B-2)/ポリエステル水分散体(Cw-1)の固形分質量比が28/11/61になるになるように変更した以外は、実施例1と同様にして、白色積層ポリエステルフィルムを得た。

ウレタン樹脂溶液(A-3) 12.00質量部
架橋剤(B-2) 4.00質量部
ポリエステル水分散体(Cw-1) 35.00質量部
粒子 27.00質量部
(平均粒径2μmのベンゾグアナミンホルムアルデヒド縮合物粒子、
固形分濃度40.00質量%)MB6
界面活性剤 0.15質量部
(シリコーン系、固形分濃度10質量%)
帯電防止剤 2.00質量部
(第4級アンモニウム塩系帯電防止剤、固形分濃度17.50質量%)
【0129】
(実施例11)
塗布液において、水とイソプロパノールの混合溶媒に、下記の塗剤を混合し、ウレタン樹脂溶液(A-1)/架橋剤(B-1)/ポリエステル水分散体(Cw-1)の固形分質量比が22/10/68になるになるように変更した以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。

ウレタン樹脂溶液(A-1) 5.80質量部
架橋剤(B-1) 2.20質量部
ポリエステル水分散体(Cw-1) 24.00質量部
粒子 23.00質量部
(平均粒径0.45μmのシリカ粒子、 固形分濃度40.00質量%)
界面活性剤 0.15質量部
(シリコーン系、固形分濃度10質量%)
【0130】
(実施例12)
塗布液のウレタン樹脂を(A-2)に変更した以外は、実施例11と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0131】
(実施例13)
塗布液のウレタン樹脂を(A-3)に変更した以外は、実施例11と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0132】
(実施例14)
塗布液の架橋剤を(B-3)に、ポリエステル水分散体を(Cw-3)に変更した以外は、実施例11と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0133】
(実施例15)
塗布液のウレタン樹脂を(A-4)に変更した以外は、実施例11と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0134】
(実施例16)
塗布液のウレタン樹脂を(A-5)に変更した以外は、実施例11と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0135】
(実施例17)
塗布液のウレタン樹脂を(A-3)に、架橋剤を(B-2)に変更した以外は、実施例11と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0136】
(実施例18)
塗布液のウレタン樹脂を(A-3)に、粒子を平均粒径1μmの炭酸カルシウム粒子(固形分濃度40.00質量%)に変更した以外は、実施例11と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0137】
(実施例19)
塗布液のウレタン樹脂を(A-9)に変更した以外は、実施例11と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0138】
(比較例1)
塗布液のウレタン樹脂を(A-6)に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0139】
(比較例2)
塗布液のウレタン樹脂を(A-7)に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0140】
(比較例3)
塗布液のウレタン樹脂を(A-6)に変更した以外は、実施例11と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0141】
(比較例4)
塗布液のウレタン樹脂を(A-7)に変更した以外は、実施例11と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0142】
(比較例5)
塗布液のウレタン樹脂溶液(A-6)/架橋剤(B-1)/ポリエステル水分散体(Cw-2)の固形分質量比が38/7/55になるになるように変更した以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0143】
(比較例6)
塗布液のウレタン樹脂溶液(A-8)/架橋剤(B-4)/ポリエステル水分散体(Cw-2)の固形分質量比が22/12/66になるになるように変更した以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0144】
表1に示すように、各実施例においては、水付着時のブロッキング耐性、UVインキとの密着性において満足できる結果が得られた。一方、比較例1~6では、ポリエステルフィルム基材の少なくとも一方の面に形成された塗布層が分岐構造を有するウレタン樹脂を含有しないため、水付着時のブロッキング耐性が満足できるものではなかった。
【0145】
(比較例7)
塗布液において、水とイソプロパノールの混合溶媒に、下記の塗剤を混合し、ウレタン樹脂溶液(A-1)/架橋剤(B-1)の固形分比が70/30になるになるように変更した以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。

ウレタン樹脂溶液(A-1) 15.00質量部
架橋剤(B-1) 5.50質量部
粒子 23.00質量部
(平均粒径0.45μmのシリカ粒子、 固形分濃度40.00質量%)
界面活性剤 0.15質量部
(シリコーン系、固形分濃度10質量%)
【0146】
(比較例8)
塗布液において、水とイソプロパノールの混合溶媒に、下記の塗剤を混合し、ウレタン樹脂溶液(A-1)/架橋剤(B-1)の固形分比が20/80になるになるように変更した以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。

ウレタン樹脂溶液(A-1) 4.70質量部
架橋剤(B-1) 16.00質量部
粒子 23.00質量部
(平均粒径0.45μmのシリカ粒子、 固形分濃度40.00質量%)
界面活性剤 0.15質量部
(シリコーン系、固形分濃度10質量%)
【0147】
表1に示すように、比較例7、8では、ポリエステルフィルム基材の少なくとも一方の面に形成された塗布層がポリエステル樹脂を含有しないため、塗布層と基材間での密着性が低下し、UVインキへの密着性において満足できるものではなかった。
【0148】
(比較例9)
ウレタン樹脂を(A-10)に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0149】
(比較例10)
ウレタン樹脂を(A-11)に変更した以外は、実施例11と同様にして、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0150】
表1に示すように、比較例9、10では、ポリエステルフィルム基材の少なくとも一方の面に形成された塗布層がポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂を含有しないため、UVインキへの密着性において満足できるものではなかった。
【0151】
表1に各実施例、比較例の評価結果を整理する。
【0152】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明によれば、ラベル用途などの分野において好適に使用できる白色積層ポリエステルフィルムの提供が可能となった。