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  • 特許-共重合ポリアミドの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】共重合ポリアミドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/28 20060101AFI20241112BHJP
   C08G 69/16 20060101ALI20241112BHJP
   C08G 69/36 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C08G69/28
C08G69/16
C08G69/36
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021545186
(86)(22)【出願日】2020-08-19
(86)【国際出願番号】 JP2020031240
(87)【国際公開番号】W WO2021049266
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-06-19
(31)【優先権主張番号】P 2019166139
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020059701
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 誉将
(72)【発明者】
【氏名】土井 隆志
(72)【発明者】
【氏名】倉知 幸一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤井 博行
(72)【発明者】
【氏名】阿部 真典
(72)【発明者】
【氏名】辻本 地輝
(72)【発明者】
【氏名】山口 久哉
(72)【発明者】
【氏名】槇原 泰久
(72)【発明者】
【氏名】林 哲崇
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-124542(JP,A)
【文献】特表平10-509760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69
C08L 77
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の第1工程及び第2工程を含む、共重合ポリアミドの製造方法。
第1工程:ε-カプロラクタム(A)をその融点69℃以上に加熱して、融解させて融解液とし、69℃~110℃で前記融解液に固体のアジピン酸(B)を添加して、ε-カプロラクタム(A)及びアジピン酸(B)の混合を行い、アジピン酸(B)1モルに対して、ε-カプロラクタム(A)の使用量は、1~20モルである、混合液を調製する工程
第2工程:第1工程で得られた混合液とヘキサメチレンジアミン(C)とを混合した後、反応させて、共重合ポリアミドを得る工程
【請求項2】
第1工程において、アジピン酸(B)1モルに対して、ε-カプロラクタム(A)の使用量が2~15モルである、請求項に記載の共重合ポリアミドの製造方法。
【請求項3】
第1工程において、得られる混合液の色度が0.5未満である、請求項1又は2に記載の共重合ポリアミドの製造方法。
【請求項4】
第2工程において、20~100℃でヘキサメチレンジアミン(C)が添加される、請求項1~のいずれか一項に記載の共重合ポリアミドの製造方法。
【請求項5】
第2工程において、第1工程で得られた混合液とヘキサメチレンジアミン(C)との反応温度が、180~300℃である、請求項1~のいずれか一項に記載の共重合ポリアミドの製造方法。
【請求項6】
第2工程において、第1工程で得られた混合液とヘキサメチレンジアミン(C)との反応圧力が、0.05~0.5MPaである、請求項1~のいずれか一項に記載の共重合ポリアミドの製造方法。
【請求項7】
第2工程において、第1工程で使用されるアジピン酸(B)1モルに対して、ヘキサメチレンジアミン(C)の使用量が、0.01~100モルである、請求項1~のいずれか一項に記載の共重合ポリアミドの製造方法。
【請求項8】
第2工程で得られる共重合ポリアミドの全構成単位中の、ε-カプロラクタム(A)由来の構成単位の割合が10~98モル%であり、アジピン酸(B)由来の構成単位が1~45モル%であり、ヘキサメチレンジアミン(C)由来の構成単位が1~45モル%である、請求項1~のいずれか一項に記載の共重合ポリアミドの製造方法。
【請求項9】
更に、下記第3工程を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の共重合ポリアミドの製造方法。
第3工程:第2工程で得られた共重合ポリアミドを容器から随時抜き出す工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合ポリアミドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、共重合ポリアミドの製造方法としては、例えば、ジカルボン酸とジアミンとを水中で混合して塩(アミド塩)を形成させた後、当該混合液を加熱・重合させる方法(例えば、非特許文献1参照)、溶融状態としたアジピン酸と溶融状態としたヘキサメチレンジアミンとを混合して加熱・重合させる方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、共重合ポリアミドの製造方法としては、テレフタル酸、ヘキサメチレンジアミン水溶液、カプロラクタム及び水を混合し、アミノカルボン酸塩を形成させた後に、加熱・重合させる方法(例えば、特許文献2(実施例8)参照)、並びに、ω-ラクタム及びジカルボン酸を、ジカルボン酸の融点を超える温度で加熱溶融して重合させて、両末端カルボン酸のオリゴマーを得た後に、ジアミンを加えて、更に縮合反応する方法が開示されている(例えば、特許文献3(実施例1)、特許文献4(比較例301)参照)。
【0004】
更に、特許文献5には、固体のジカルボン酸を液体のラクタム中に混合し、当該混合物をジアミンと反応させて共重合ポリアミドを製造する方法が開示されている。さらに、特許文献5には、アジピン酸とε-カプロラクタムを115℃で混合した例や、ドデカン二酸とラウリンラクタムを115℃で混合し、混合物をデカンジアミンと反応させて無色の共重合ポリアミドを製造した例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-53359号公報
【文献】特開2010-116575号公報
【文献】特開平3-111424号公報
【文献】国際公開第2011/081099号
【文献】特開平9-124542号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】「新ポリマー製造プロセス」 佐伯康治 尾見信二 編著 工業調査会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び2に記載された方法では、ジカルボン酸とジアミンとを水中で混合して塩(アミド塩)を形成させる必要があるため、反応中または反応後に多量の水を除去しなければならず、そのための装置や多大なエネルギーが必要となる問題があった。また、特許文献3及び4に記載の方法では、溶融物を得る温度が高温であるため、得られるポリアミド樹脂の着色(例えば、黄色の着色)が顕著になる恐れがある。
【0008】
特許文献5のように、アジピン酸とカプロラクタムを115℃で混合した場合は、得られるポリアミド樹脂の着色(例えば、黄色の着色)が顕著になる恐れがある。
【0009】
本発明の課題は、効率的に、品質の良い共重合ポリアミドが得られる、共重合ポリアミドの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の課題は、[1]~[10]の共重合ポリアミドの製造方法によって解決される。
[1]下記の第1工程及び第2工程を含む、共重合ポリアミドの製造方法。
第1工程:ε-カプロラクタム(A)と、アジピン酸(B)とを、69℃以上115℃未満で混合して、混合液を調製する工程であって、液体のε-カプロラクタム(A)に、固体のアジピン酸(B)を添加して、ε-カプロラクタム(A)及びアジピン酸(B)の混合を行い、アジピン酸(B)1モルに対して、ε-カプロラクタム(A)の使用量は、1~20モルである、混合液を調製する工程
第2工程:第1工程で得られた混合液とヘキサメチレンジアミン(C)とを混合した後、反応させて、共重合ポリアミドを得る工程
[2]第1工程において、ε-カプロラクタム(A)とアジピン酸(B)との混合が、69℃~110℃で行われる、[1]の共重合ポリアミドの製造方法。
[3]第1工程において、アジピン酸(B)1モルに対して、ε-カプロラクタム(A)の使用量が2~15モルである、[1]又は[2]の共重合ポリアミドの製造方法。
[4]第1工程において、得られる混合液の色度が0.5未満である、[1]~[3]のいずれかの共重合ポリアミドの製造方法。
[5]第2工程において、20~100℃でヘキサメチレンジアミン(C)が添加される、[1]~[4]のいずれかの共重合ポリアミドの製造方法。
[6]第2工程において、第1工程で得られた混合液とヘキサメチレンジアミン(C)との反応温度が、180~300℃である、[1]~[5]のいずれかの共重合ポリアミドの製造方法。
[7]第2工程において、第1工程で得られた混合液とヘキサメチレンジアミン(C)との反応圧力が、0.05~0.5MPaである、[1]~[6]のいずれかの共重合ポリアミドの製造方法。
[8]第2工程において、第1工程で使用されるアジピン酸(B)1モルに対して、ヘキサメチレンジアミン(C)の使用量が、0.01~100モルである、[1]~[7]のいずれかの共重合ポリアミドの製造方法。
[9]第2工程で得られる共重合ポリアミドの全構成単位中の、ε-カプロラクタム(A)由来の構成単位の割合が10~98モル%であり、アジピン酸(B)由来の構成単位が1~45モル%であり、ヘキサメチレンジアミン(C)由来の構成単位が1~45モル%である、[1]~[8]のいずれかの共重合ポリアミドの製造方法。
[10]更に、下記第3工程を含む、[1]~[9]のいずれかの共重合ポリアミドの製造方法。
第3工程:第2工程で得られた共重合ポリアミドを容器から随時抜き出す工程
【発明の効果】
【0011】
本発明により、効率的に、品質の良い共重合ポリアミドが得られる、共重合ポリアミドの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、共重合ポリアミドの製造方法において使用する製造装置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[共重合ポリアミドの製造方法]
共重合ポリアミドの製造方法は、下記の第1工程及び第2工程を含む。
第1工程:ε-カプロラクタム(A)と、アジピン酸(B)とを、69℃以上115℃未満で混合して、混合液を調製する工程であって、液体のε-カプロラクタム(A)に、固体のアジピン酸(B)を添加して、ε-カプロラクタム(A)及びアジピン酸(B)の混合を行い、アジピン酸(B)1モルに対して、ε-カプロラクタム(A)の使用量は、1~20モルである、混合液を調製する工程
第2工程:第1工程で得られた混合液とヘキサメチレンジアミン(C)とを混合した後、反応させて、共重合ポリアミドを得る工程
【0014】
なお、以下、ε-カプロラクタム(A)、アジピン酸(B)、ヘキサメチレンジアミン(C)を総称して「原料」と称することがあり、また個別の各原料と称することがある。また、「以下」は「同じ又は未満」を意味し、「以上」は「同じ又は超える」を意味する。
【0015】
共重合ポリアミドの製造方法によって、効率的に共重合ポリアミドが得られる。即ち、共重合ポリアミドを製造する工程において生成する水は、共重合の際に発生する水が主成分である。そのため、水溶液を用いる際に生じる、多量の水を除去することなどの煩雑な操作を必要としない。また、共重合ポリアミドの製造方法によって、品質の良い共重合ポリアミドが得られる。即ち、得られる共重合ポリアミドの着色(例えば、黄変)が低減されているか、又はほとんどない。
共重合ポリアミドの製造方法は、連続式で行ってもよく、半回分式又は回分式で行ってもよい。
【0016】
(共重合ポリアミド)
共重合ポリアミドの製造方法の生成物である共重合ポリアミドは、ε-カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸共重合体(ポリアミド6/66)であり、ε-カプロラクタム(A)由来の構成単位、アジピン酸(B)由来の構成単位、並びにヘキサメチレンジアミン(C)由来の構成単位を有する。
【0017】
共重合ポリアミドの全構成単位(ε-カプロラクタム(A)由来の構成単位、アジピン酸(B)由来の構成単位、及びヘキサメチレンジアミン(C)由来の構成単位の合計モル数)中の各構成単位の好適な割合は、ε-カプロラクタム(A)由来の構成単位の割合が10~98モル%であり、アジピン酸(B)由来の構成単位が1~45モル%であり、ヘキサメチレンジアミン(C)由来の構成単位が1~45モル%である。ここで、共重合ポリアミドの構成単位の含有割合は、各原料の仕込み量から求めることができる。
【0018】
(第1工程)
第1工程は、ε-カプロラクタム(A)と、アジピン酸(B)とを、69~115℃で混合して、混合液を調製する工程であって、液体のε-カプロラクタム(A)に、固体のアジピン酸(B)を添加して、ε-カプロラクタム(A)及びアジピン酸(B)の混合を行い、アジピン酸(B)1モルに対して、ε-カプロラクタム(A)の使用量は、1~20モルである、混合液を調製する工程である。
【0019】
ε-カプロラクタム(A)及びアジピン酸(B)は、共重合ポリアミドを製造する工程中における着色や劣化を防ぐために、予め酸素を除去しておくのが望ましい。
【0020】
第1工程において、ε-カプロラクタム(A)とアジピン酸(B)との混合は、69℃以上115℃未満で行う。具体的には、第1工程において、ε-カプロラクタム(A)をその融点69℃以上に加熱して、融解させて液体(融解液)とし、69℃以上115℃未満で前記液体(融解液)にアジピン酸(B)を固体状態で添加する方法で混合が行われる。
【0021】
ε-カプロラクタム(A)とアジピン酸(B)との混合が、69℃以上115℃未満で行われることで、融解液(液体)のε-カプロラクタム(A)に、固体のアジピン酸(B)を添加して、モノマー(A)とアジピン酸(B)との混合が行われるため、操作性や均一性に優れる。また、ε-カプロラクタム(A)とアジピン酸(B)との混合温度を前記範囲とすることで、ε-カプロラクタム(A)やアジピン酸(B)の熱劣化や、ε-カプロラクタム(A)とアジピン酸(B)との反応を抑止することができる。ε-カプロラクタム(A)とアジピン酸(B)との混合が、115℃以上で行われると、得られる共重合ポリアミドの着色(例えば、黄色の着色)が顕著になる場合がある。得られる共重合ポリアミドの品質がより優れる観点から、ε-カプロラクタム(A)とアジピン酸(B)との混合が温度は、69℃~110℃で行われることがより好ましく、69℃~100℃で行われることが更に好ましく、69℃~85℃で行われることが特に好ましい。
【0022】
第1工程において、アジピン酸(B)1モルに対して、ε-カプロラクタム(A)の使用量(混合量)は、1~20モルである。得られる共重合ポリアミドの品質がより優れる観点から、第1工程において、アジピン酸(B)1モルに対して、ε-カプロラクタム(A)の使用量は、2~15モルであることが好ましく、3~10モルであることが特に好ましい。
【0023】
目的とする共重合ポリアミドの着色を防ぐために、第1工程を、酸素の非存在下で行うか、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。ここで、不活性ガスとしては、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等)、窒素等が挙げられる。不活性ガスは、1種類でもよく、2種類以上の組み合わせであってもよい。
【0024】
第1工程により、ε-カプロラクタム(A)とアジピン酸(B)とを含む混合液が得られる。なお、最終生成物である共重合ポリアミドが着色するのを防ぐ観点から、第1工程で得られる混合液の色度は、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下、更に好ましくは0.7以下、特に好ましくは0.5未満である。混合液の色度は、後述する実施例において述べる方法により測定することができる。
【0025】
第1工程で得られる混合液は、第2工程に先立って、混合液(液体状態の混合物)として保存されていてもよく、室温(例えば、25℃)等に冷却されて、固体混合物(固体状態の混合物)又はスラリー(例えば、ε-カプロラクタム(A)の融解液に、固体状態のアジピン酸(B)の一部が分散しているスラリー状の混合物)として保存されていてもよい。ここで、当該混合物及び当該混合物に含まれる成分の融点や、ε-カプロラクタム(A)の融解液に対するアジピン酸(B)の飽和溶解量に応じて、第1工程で得られた混合液は、室温において、固体混合物、スラリー又は混合液であり得る。そして、固体混合物又はスラリーを第2工程の原料として用いる場合は、前記固体混合物又はスラリーを加熱するなどして、混合液とすることができる。これにより、第2工程における「第1工程で得られた混合液」として用いることができる。冷却の方法は、公知の冷却装置を用いるか、混合液を室温で放置することが挙げられる。また、混合液を得るための加熱温度としては、均一な混合液を得るための加熱温度が挙げられる。
【0026】
第1工程で得られる混合液は、第2工程を行う容器への移送の観点から、混合液を加熱するなどして均一な混合液としておくのが特に好ましい。ここで、「均一」とは、ε-カプロラクタム(A)中にアジピン酸(B)が実質的に完全に溶解して1の溶液を形成していることを意味する。なお、後の工程に影響を与えない範囲において、ε-カプロラクタム(A)の融解液中にアジピン酸(B)が溶解せずに分散していても良い。即ち、共重合ポリアミドの製造方法は、第2工程の前に、第1工程で得られる混合液を加熱して均一な混合液を得る工程を含むのが好ましい。加熱温度は、69℃以上115℃未満であることが好ましく、69℃~110℃であることがより好ましく、69℃~100℃であることが更に好ましく、69℃~85℃であることが特に好ましい。
【0027】
(第2工程)
第2工程は、第1工程で得られた混合液(即ち、ε-カプロラクタム(A)とアジピン酸(B)を含む混合液)とヘキサメチレンジアミン(C)とを混合した後、反応させて、共重合ポリアミドを得る工程である。第2工程において、原料(ε-カプロラクタム(A)、アジピン酸(B)及びヘキサメチレンジアミン(C))が反応することによって、共重合ポリアミドが得られる。
【0028】
ヘキサメチレンジアミン(C)は、前記した通りである。また、ヘキサメチレンジアミン(C)は、高濃度のヘキサメチレンジアミン(C)の水溶液(例えば、80質量%のヘキサメチレンジアミン(C)の水溶液)として使用してもよい。なお、ヘキサメチレンジアミン(C)は、共重合ポリアミドを製造する工程中における着色や劣化を防ぐために、予め酸素を除去しておくのが望ましい。
【0029】
第1工程で得られた混合液が、加熱されて均一な混合液となっている場合には、その状態を維持するためにヘキサメチレンジアミン(C)をあらかじめ加熱しておくのが好ましい。この場合、第2工程において、好ましくは20~100℃、より好ましくは30~90℃、特に好ましくは40~80℃でヘキサメチレンジアミン(C)が添加される。
【0030】
なお、前記混合液とヘキサメチレンジアミン(C)との混合方法や供給方法は特に限定されないが、送液可能なフィードポンプや、供給ラインへ公知の流量計や濃度計、バルブ等を取り付けられた供給可能なシステムにより、定量的に供給・混合させるのが好ましい。
【0031】
第2工程において、第1工程で得られた混合液とヘキサメチレンジアミン(C)との反応温度は、原料が重合反応して、所望の共重合ポリアミドが得られる温度であれば特に限定されないが、180~300℃であることが好ましく、190~280℃であることがより好ましく、200~260℃であることが特に好ましい。この温度範囲とすることで、重合時間が短縮されるとともに、分解やゲル化などの副反応を抑止することができる。
【0032】
また、第2工程において、第1工程で得られた混合液とヘキサメチレンジアミン(C)との反応圧力は特に制限されないが、0.05~0.5MPaであることが好ましく、0.1MPa(絶対圧基準)であることが特に好ましい。当該圧力に調整するために、例えば、ナッシュポンプ、メカニカルブースター、スチームエジェクター等の公知の真空設備を使用することができる。
【0033】
第2工程において、ヘキサメチレンジアミン(C)の使用割合(混合割合)は、目的とする共重合ポリアミドの種類に応じて適宜調整できる。第2工程において、第1工程で使用されるアジピン酸(B)1モルに対して、ヘキサメチレンジアミン(C)の使用量は、0.01~100モルであることが好ましく、0.1~10モルであることがより好ましく、0.5~5モルであることが特に好ましい。
【0034】
第2工程は、目的とする共重合ポリアミドの着色を防ぐために、酸素の非存在下で行うか、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスは、第1工程において前記したとおりである。
第2工程により、ε-カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸共重合体(ポリアミド6/66)が得られる。なお、ポリアミド6/66における、構成単位の含有割合は、原料成分の仕込み量に応じて適宜設定できる。
【0035】
<重合触媒>
第2工程は、生産性を向上させるために、公知の重合触媒の存在下で行うことができる。そのような重合触媒としては、具体的には、例えば、
リン酸;
リン酸ナトリウム、リン酸マグネシウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸バナジウム、リン酸マンガン、リン酸ニッケル、リン酸コバルトなどのリン酸塩;
次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸マグネシウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸バナジウム、次亜リン酸マンガン、次亜リン酸ニッケル、次亜リン酸コバルトなどの次亜リン酸塩;
モノメチルリン酸エステル、ジメチルリン酸エステル、モノエチルリン酸エステル、ジエチルリン酸エステル、プロピルリン酸エステル、イソプロピルリン酸エステル、ジプロピルリン酸エステル、ジイソプロピルリン酸エステル、ブチルリン酸エステル、イソブチルリン酸エステル、ジブチルリン酸エステル、ジイソブチルリン酸エステル、モノフェニルリン酸エステル、ジフェニルリン酸エステルなどの酸性リン酸エステル;
トリメチルリン酸、トリエチルリン酸、トリ-n-プロピルリン酸、トリ-i-プロピルリン酸、トリ-n-ブチルリン酸、トリ-i-ブチルリン酸、トリフェニルリン酸、トリ-n-ヘキシルリン酸、トリ-n-オクチルリン酸、トリ(2-エチルヘキシル)リン酸、トリデシルリン酸などのリン酸エステル;
ジメチル亜リン酸、ジエチル亜リン酸、ジ-n-プロピル亜リン酸、ジ-i-プロピル亜リン酸、ジ-n-ブチル亜リン酸、ジ-i-ブチル亜リン酸、ジフェニル亜リン酸、ジ-n-ヘキシル亜リン酸、ジ-n-オクチル亜リン酸、ジ(2-エチルヘキシル)亜リン酸、ジデシル亜リン酸などの亜リン酸エステル;
が挙げられるが、好ましいのは次亜リン酸塩であり、更に好ましいのは次亜リン酸ナトリウムである。
重合触媒は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0036】
前記重合触媒の供給方法や添加方法は特に限定されず、水溶液や水スラリーにして単独で反応器に供給するか、各原料((A)、(B)または(C))にあらかじめ存在させておいても良い。前記重合触媒の使用量は、特に限定されないが、リン原子を含有する触媒を使用する場合には、原料の総質量に対して、リン原子換算で0.1~1000質量ppmであることが好ましい。
【0037】
(第3工程)
共重合ポリアミドの製造方法は、更に、第3工程を含むことができる。第3工程は、第2工程で生成した共重合ポリアミドを容器から随時抜き出す工程である。共重合ポリアミドの製造方法が、更に、第3工程を含むことで、連続して共重合ポリアミドを製造することができる。
【0038】
第3工程において、容器からの随時の抜き出しは、例えば、連続式、半回分式又は回分式で抜き出すことが挙げられる。また、第3工程において、第2工程で生成した共重合ポリアミドの抜き出す具体的な方法としては、例えば、容器(例えば、反応器)の底部に到達したポリマーを抜き出し口から抜き出すことが挙げられる。この抜き出し操作は特に限定されないが、連続して安定的かつ定量的に抜き出すには、反応器底部に多孔板、ギヤポンプ、ボールバルブなどの排出装置を使用することが望ましい。
【0039】
<好ましい態様>
第1工程及び第2工程の両方を、酸素の非存在下で行うか、前記した不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0040】
(反応装置)
共重合ポリアミドの製造方法において使用する製造装置は、例えば、図1で示されるような、第1工程を行う容器1、ヘキサメチレンジアミン(C)を備える容器2、第2工程を行う反応器から構成される。これらの容器及び反応器の材質は、原料との接触によって腐食や劣化をせず、加熱によって軟化溶融しなければ特に制限はない。
【0041】
前記反応器としては槽型連続反応装置、管型連続反応装置など公知の反応器が使用され、生産量などに応じて、反応器の数を変更することもでき、複数の反応器を使用する場合には直列もしくは並列配置とすることもできる。
【0042】
前記反応器は、水(原料中に含まれる水や生成した水)や、各原料を留去するために精留塔が備えられていることが望ましく、反応圧力を制御するために、例えば、ナッシュポンプ、メカニカルブースター、スチームエジェクターなど公知の減圧設備を備えていても良い。
精留塔上部に熱交換器を設置して、留出ガスを凝縮させ還流操作を行うことで分離効率を上げることが望ましい。なお、本発明の効果を損なわない範囲において、前記以外の必要な装置、機器を取り付けても構わない。
【0043】
なお、精留塔は、インターナルとしてトレイ(棚段)及び/又は充填物を有する塔であることが好ましい。ここでインターナルとは、塔内部において実際に気液の接触を行わせる部分のことを意味する。
前記トレイとしては、例えば、泡鍾トレイ、多孔板トレイ、リップルトレイ、バラストトレイ、バルブトレイ、向流トレイ、ユニフラックストレイ、スーパーフラックトレイ、マックスフラックトレイ、デュアルフロートレイ、グリッドプレートトレイ、ターボグリッドプレートトレイ、キッテルトレイ、オールダーショウ型多孔板などが好適に使用される。
前記充填物としては、例えば、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、ベルルサドル、インタロックスサドル、ディクソンパッキング、マクマホンパッキング、ヘリパック等の不規則充填物やメラパック、ジェムパック、テクノパック、フレキシパック、スルザーパッキング、グッドロールパッキング、グリッチグリッドなどの規則充填物が好適に使用される。
【実施例
【0044】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0045】
(色度の測定方法)
精製水1Lに塩化白金酸カリウム中の白金1mg及び塩化コバルト中のコバルト0.5mgを含むときの呈色を色度1とする各色度の標準液を作成し、各色度標準液の波長370nm吸光度を測定する。そして、色度と吸光度の検量線を作成する。次に、第1工程で得られた混合液の50重量%水溶液の波長370nm吸光度を測定する。その吸光度が一致する色度を、第1工程で得られた混合液の色度とした。
【0046】
(黄色の着色の確認方法)
得られた共重合ポリアミドについて、JIS K 7373に準拠し、カラーメーター(日本電色工業社製、ZE6000)を用いて黄色度を測定した。
【0047】
実施例1(共重合ポリアミド(ポリアミド6/66)の製造)
(第1工程)
窒素雰囲気にて、容器1(容量:1L)にε-カプロラクタムを加え80℃に加熱して融解させた後、攪拌させながらアジピン酸を加えて同温度で24時間保持して混合液を得た(アジピン酸含有量:12質量%、ε-カプロラクタム/アジピン酸=778/82(モル比))。
なお、得られた混合液の色度は0.5未満であった。
(第2工程)
窒素雰囲気にて、容器2(容量:1L)に80質量%ヘキサメチレンジアミン水溶液を加え、攪拌しながら加熱して液温を60℃とした。次いで、容器1から第1工程で得られた混合液を56.5g/h(ε-カプロラクタム:439.4ミリモル/h、アジピン酸:46.5ミリモル/h)で、前記ヘキサメチレンジアミン水溶液を6.9g/h(ヘキサメチレンジアミン:47.8ミリモル/h)で内容積1Lの攪拌装置を有する槽型反応器に供給した後、230℃に加熱して水を留去しながら4時間重合反応させて、共重合ポリアミド得た。
なお、重合反応時の水の留去量は3.0g/hであった。また、得られた共重合ポリアミドには黄色の着色が観察されなかった。
【0048】
実施例2(共重合ポリアミド(ポリアミド6/66)の製造)
(第1工程)
窒素雰囲気にて、容器1(容量:1L)にε-カプロラクタムを加え80℃に加熱して融解させた後、攪拌させながらアジピン酸を加えて同温度で12時間保持して混合液を得た(アジピン酸含有量:12質量%、ε-カプロラクタム/アジピン酸=778/82(モル比))。
なお、得られた混合液の色度は0.5未満であった。
【0049】
(第2工程)
窒素雰囲気にて、容器2(容量:1L)に80質量%ヘキサメチレンジアミン水溶液を加え、攪拌しながら加熱して液温を60℃とした。次いで、容器1から第1工程で得られた混合液を56.5g/h(ε-カプロラクタム:439.4ミリモル/h、アジピン酸:46.5ミリモル/h)で、前記ヘキサメチレンジアミン水溶液を6.9g/h(ヘキサメチレンジアミン:47.8ミリモル/h)で管型反応器(長さが620mm、内径20mm)に供給した後、230℃に加熱して水を留去しながら重合反応させた。
なお、重合反応時の水の留去量は3.0g/hであった。
【0050】
(第3工程)
第2工程における供給開始から2.7時間後、反応器下部の抜き出し口から生成した共重合ポリアミドを取得した。得られた共重合ポリアミドには黄色の着色が観察されなかった。なお、第3工程を行っている間、第1工程及び第2工程が行われており、留去する水の量が少なく、効率的かつ連続的に共重合ポリアミドを製造することができた。
【0051】
実施例3(共重合ポリアミド(ポリアミド6/66)の製造)
(第1工程)
窒素雰囲気にて、容器1(容量:1L)にε-カプロラクタムを加え110℃に加熱して融解させた後、攪拌させながらアジピン酸を加えて同温度で24時間保持して混合液を得た(アジピン酸含有量:12質量%、ε-カプロラクタム/アジピン酸=778/82(モル比))。
なお、得られた混合液の色度は0.7であった。
(第2工程)
窒素雰囲気にて、容器2(容量:1L)に80質量%ヘキサメチレンジアミン水溶液を加え、攪拌しながら加熱して液温を60℃とした。次いで、容器1から第1工程で得られた混合液を56.5g/h(ε-カプロラクタム:439.4ミリモル/h、アジピン酸:46.5ミリモル/h)で、前記ヘキサメチレンジアミン水溶液を6.9g/h(ヘキサメチレンジアミン:47.8ミリモル/h)で内容積1Lの攪拌装置を有する槽型反応器に供給した後、230℃に加熱して水を留去しながら4時間重合反応させて、共重合ポリアミド得た。
なお、重合反応時の水の留去量は3.0g/hであった。また、得られた共重合ポリアミドには黄色の着色が観察されなかった。
【0052】
実施例4(共重合ポリアミド(ポリアミド6/66)の製造)
(第1工程)
窒素雰囲気にて、容器1(容量:1L)にε-カプロラクタムを加え80℃に加熱して融解させた後、攪拌させながらアジピン酸を加えて同温度で24時間保持して混合液を得た(アジピン酸含有量:20質量%、ε-カプロラクタム/アジピン酸=399.4/77.3(モル比))。
なお、得られた混合液の色度は0.5未満であった。
(第2工程)
窒素雰囲気にて、容器2(容量:1L)に80質量%ヘキサメチレンジアミン水溶液を加え、攪拌しながら加熱して液温を60℃とした。次いで、容器1から第1工程で得られた混合液を56.5g/h(ε-カプロラクタム:399.4ミリモル/h、アジピン酸:77.3ミリモル/h)で、前記ヘキサメチレンジアミン水溶液を11.6g/h(ヘキサメチレンジアミン:79.8ミリモル/h)で内容積1Lの攪拌装置を有する槽型反応器に供給した後、230℃に加熱して水を留去しながら4時間重合反応させて、共重合ポリアミド得た。
なお、重合反応時の水の留去量は3.5g/hであった。また、得られた共重合ポリアミドには黄色の着色が観察されなかった。
【0053】
比較例1(共重合ポリアミド(ポリアミド6/66)の製造)
窒素雰囲気にて、容器1(容量:1L)にε-カプロラクタムを加え80℃に加熱して融解させた後、攪拌させながら24時間保持した。
窒素雰囲気にて、容器2(容量:1L)にアジピン酸、水、80質量%ヘキサメチレンジアミン水溶液の順で加え、アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる50質量%アミド塩水溶液を得た後、水溶液の温度を60℃で保持した。
容器1からε-カプロラクタムを49.7g/h(ε-カプロラクタム:439.4ミリモル/h)で、容器2から前記アミド塩水溶液を24.4g/h(アジピン酸:46.5ミリモル/h、ヘキサメチレンジアミン:46.5ミリモル/h)で、管型反応器(長さが600mm、内径20mm)に供給した後、230℃に加熱して水を留去しながら重合反応させた。
なお、重合反応時の水の留去量は13g/hであった。
ε-カプロラクタムの供給開始から2.7時間後、反応器下部の抜き出し口から生成した共重合ポリアミドを取得した。得られた共重合ポリアミドには黄色の着色が観察されなかった。なお、共重合ポリアミドを抜き出している間、アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとε-カプロラクタムの反応が起こっており、連続的に共重合ポリアミドを製造することができた。しかしながら、留去する水の量が多く、効率的とは言えるものではなかった。
【0054】
比較例2(共重合ポリアミド(ポリアミド6/66)の製造)
(第1工程)
窒素雰囲気にて、容器1(容量:1L)にε-カプロラクタムを加え120℃に加熱して融解させた後、攪拌させながらアジピン酸を加えて同温度で12時間保持して混合液を得た(アジピン酸含有量:12質量%、ε-カプロラクタム/アジピン酸=778/82(モル比))。
なお、得られた混合液の色度は6.4であった。
(第2工程)
窒素雰囲気にて、容器2(容量:1L)に80質量%ヘキサメチレンジアミン水溶液を加え、攪拌しながら加熱して液温を60℃とした。次いで、容器1から第1工程で得られた混合液を56.5g/h(ε-カプロラクタム:439.4ミリモル/h、アジピン酸:46.5ミリモル/h)で、前記ヘキサメチレンジアミン水溶液を6.9g/h(ヘキサメチレンジアミン:47.8ミリモル/h)で管型反応器(長さが620mm、内径20mm)に供給した後、230℃に加熱して水を留去しながら重合反応させた。
なお、重合反応時の水の留去量は3.0g/hであった。
(第3工程)
第2工程における供給開始から2.7時間後、反応器下部の抜き出し口から生成した共重合ポリアミドの取得を開始した。なお、第3工程を行っている間、第1工程及び第2工程が行われており、留去する水の量が少なく、効率的かつ連続的に共重合ポリアミドを製造することができた。ただし、得られた共重合ポリアミドには黄色の着色が観察された。
【0055】
比較例3(共重合ポリアミド(ポリアミド6/66)の製造)
(第1工程)
窒素雰囲気にて、容器1(容量:1L)にε-カプロラクタムを加え160℃(アジピン酸の融点(152℃)以上)に加熱して融解させた後、攪拌させながらアジピン酸を加えて同温度で24時間保持して混合液を得た(アジピン酸含有量:12質量%、ε-カプロラクタム/アジピン酸=778/82(モル比))。
なお、得られた混合液の色度は5.5であった。
(第2工程)
窒素雰囲気にて、容器2(容量:1L)に80質量%ヘキサメチレンジアミン水溶液を加え、攪拌しながら加熱して液温を60℃とした。次いで、容器1から第1工程で得られた混合液を56.5g/h(ε-カプロラクタム:439.4ミリモル/h、アジピン酸:46.5g/h)で、容器2から前記ヘキサメチレンジアミン水溶液を6.9g/h(ヘキサメチレンジアミン:47.8ミリモル/h)で、管型反応器(長さが600mm、内径20mm)に供給した後、230℃に加熱して水を留去しながら重合反応させた。
なお、重合反応時の水の留去量は3.0g/hであった。
(第3工程)
第2工程における供給開始から2.7時間後、反応器下部の抜き出し口から生成した共重合ポリアミドを取得した。なお、第3工程を行っている間、第1工程及び第2工程が行われており、留去する水の量が少なく、効率的かつ連続的に共重合ポリアミドを製造することができた。ただし、得られた共重合ポリアミドには黄色の着色が観察された。
【0056】
結果を表1にまとめる。
【0057】
【表1】
【0058】
以上の結果により、実施例では比較例に比べて、留去する水の量が少なく、効率的に、共重合ポリアミドを製造することができていることが分かる。また、本発明の共重合ポリアミドの製造方法は、回分式(実施例1)のみならず、連続式(実施例2)にも好適に適用できることがわかる。さらに、第3工程を含む実施例2の場合は、連続的に、品質の良い共重合ポリアミドを製造することができた。実施例3及び4との比較により、混合温度が低くなると、第1工程で得られる混合液の色度が小さくなった。
【0059】
一方、比較例1は、アジピン酸(B)とヘキサメチレンジアミン(C)とを水中で混合して塩(アミド塩)を形成させた後、当該混合液を加熱・重合させる方法であるため、留去する水の量が多かった。よって、比較例1では、効率的に共重合ポリアミドを製造することができなかった。
【0060】
比較例2及び3は、ε-カプロラクタム(A)とアジピン酸(B)とを115℃以上の温度で混合しているため、第1工程で得られる混合液の着色が観察された。また、第1工程で得られる混合液の色度がより大きい比較例2及び3は、得られた共重合ポリアミドには黄色の着色が観察された。よって、比較例2及び3では、品質の良い共重合ポリアミドを製造することができなかった。以上より、ε-カプロラクタムとアジピン酸との混合温度が115℃である例のみが記載された特許文献5(特開平9-124542号公報)では、品質の良い共重合ポリアミドを製造することができないと言える。
図1