(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】樹脂組成物、樹脂組成物層付き積層体、積層体、フレキシブル銅張積層板、フレキシブルフラットケーブル、及び、電磁波シールドフィルム
(51)【国際特許分類】
C09J 175/06 20060101AFI20241112BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20241112BHJP
C08L 75/06 20060101ALI20241112BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20241112BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20241112BHJP
B32B 27/38 20060101ALI20241112BHJP
B32B 15/095 20060101ALI20241112BHJP
B32B 15/092 20060101ALI20241112BHJP
H01B 7/08 20060101ALI20241112BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C09J175/06
C09J163/00
C08L75/06
C08L63/00 A
B32B27/40
B32B27/38
B32B15/095
B32B15/092
H01B7/08
H05K9/00 W
(21)【出願番号】P 2021561465
(86)(22)【出願日】2020-11-25
(86)【国際出願番号】 JP2020043902
(87)【国際公開番号】W WO2021106960
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2019214475
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】沖村 祐弥
(72)【発明者】
【氏名】沓名 洋典
(72)【発明者】
【氏名】平川 真
(72)【発明者】
【氏名】山田 成志
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-090216(JP,A)
【文献】特開2015-069877(JP,A)
【文献】国際公開第2006/088127(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/046032(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/110326(WO,A1)
【文献】特開2007-154134(JP,A)
【文献】特開2015-008282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 75/00-75/16
C08L 63/00-63/10
C09J 163/00
C09J 175/06
B32B 15/09-15/095
B32B 27/38-27/40
H01B 7/08
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルポリウレタン樹脂(A)と、
エポキシ樹脂(B)と、
金属フィラーとを含有し、
前記ポリエステルポリウレタン樹脂(A)におけるウレタン結合1個当たりの分子量が、200~8,000であり、
前記ポリエステルポリウレタン樹脂(A)の酸価が0.1mgKOH/g~3.0mgKOH/gであり、
前記ポリエステルポリウレタン樹脂(A)におけるウレタン結合1個当たりの分子量は、前記ポリエステルポリウレタン樹脂(A)の数平均分子量Mnを前記ポリエステルポリウレタン樹脂(A)が有する平均ウレタン結合数で除した値である、
接着剤樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリエステルポリウレタン樹脂(A)を構成するジオール成分が、側鎖を有するジオールを含む請求項1に記載の
接着剤樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリエステルポリウレタン樹脂(A)が、数平均分子量が8,000~30,000のポリエステル構造を有するポリエステルポリウレタン樹脂を含む請求項1又は請求項2に記載の
接着剤樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリエステルポリウレタン樹脂(A)の数平均分子量が、10,000~80,000である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の
接着剤樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリエステルポリウレタン樹脂(A)のガラス転移温度が、30℃~150℃である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の
接着剤樹脂組成物。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂(B)の含有量が、
前記ポリエステルポリウレタン樹脂(A)100質量部に対し、1質量部~30質量部である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の
接着剤樹脂組成物。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂(B)が、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂を含む請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の
接着剤樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の
接着剤樹脂組成物からなる
接着剤樹脂組成物層、前記
接着剤樹脂組成物を一部硬化してなるBステージ状の
接着剤樹脂組成物層、又は、前記
接着剤樹脂組成物を硬化してなる硬化層と、
前記
接着剤樹脂組成物層、
前記Bステージ状の
接着剤樹脂組成物層又は
前記硬化層の少なくとも一方の面に接する基材フィルムとを備える
接着剤樹脂組成物層付き積層体。
【請求項9】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の
接着剤樹脂組成物を硬化してなる硬化層を備える
積層体。
【請求項10】
銅箔と、
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の
接着剤樹脂組成物を硬化してなる硬化層と、
基材とを備える
フレキシブル銅張積層板。
【請求項11】
銅配線と、
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の
接着剤樹脂組成物を硬化してなる硬化層と、
被覆材とを備える
フレキシブルフラットケーブル。
【請求項12】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の
接着剤樹脂組成物からなる
接着剤樹脂組成物層、前記
接着剤樹脂組成物を一部硬化してなるBステージ状の
接着剤樹脂組成物層、又は、前記
接着剤樹脂組成物を硬化してなる硬化層を有する
電磁波シールドフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミドフィルムや金属に対する接着力が高く、硬化物が耐熱性及び耐湿熱性を有し、液安定性や加工性に優れた、プリント配線板特にフレキシブルプリント配線板やビルドアップ法多層プリント配線板を製造するための有効な部材としてのポリエステルポリウレタン系樹脂組成物に関する。更には、前記樹脂組成物を離型フィルムに貼着したボンディングフィルム、前記樹脂組成物を基材フィルムに貼着した樹脂組成物層付き積層体、前記樹脂組成物を硬化してなる層を有する積層体、フレキシブル銅張積層板又はフレキシブルフラットケーブル、並びにフレキシブルプリント配線板等に貼着して、電気回路から発生する電磁ノイズを遮蔽する用途に好適に用いられる電磁波シールドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板は、限られたスペースでも立体的且つ高密度の実装が可能であるため、その用途が拡大しつつある。そして、近年、電子機器の小型化、軽量化等に伴い、フレキシブルプリント配線板の関連製品は多様化して、その需要が増大している。このような関連製品としては、ポリイミドフィルムに銅箔を貼り合わせたフレキシブル銅張積層板、フレキシブル銅張積層板に電子回路を形成したフレキシブルプリント配線板、フレキシブルプリント配線板と補強板を貼り合せた補強板付きフレキシブルプリント配線板、フレキシブル銅張積層板或いはフレキシブルプリント配線板を重ねて接合した多層板等があり、例えば、フレキシブル銅張積層板を製造する場合、ポリイミドフィルムと銅箔とを接着させるために、通常、接着剤が用いられる。
【0003】
従来の接着剤組成物、又は、従来の積層体としては、特許文献1~3に記載の方法が知られている。
特許文献1には、(A)25℃で固体の溶剤可溶性ポリアミド樹脂、(B)フェノキシ樹脂、(C)ハロゲン原子を含まないエポキシ樹脂、及び(D)下記一般式(1)で示される構造を有するリン系難燃剤を含有し、前記エポキシ樹脂(C)は、1分子中に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であり、前記フェノキシ樹脂(B)の含有量は、前記ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して100~450質量部であり、前記エポキシ樹脂(C)の含有量は、前記ポリアミド樹脂(A)及び前記フェノキシ樹脂(B)の合計100質量部に対して1~60質量部であり、前記リン系難燃剤(D)の含有量は、前記ポリアミド樹脂(A)及び前記フェノキシ樹脂(B)の合計100質量部に対して5~100質量部であることを特徴とするハロゲンフリー難燃性接着剤組成物が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、分子中に2個以上のカルボキシル基を含み、数平均分子量が5,000~100,000、且つカルボキシル基1個当たりの分子量が1,500~10,000であるポリエステル系重合体(a)、分子中に2個以上のエポキシ基を含むエポキシ樹脂(b)、エポキシ樹脂硬化促進剤(c)を含有し、5℃において5ヶ月以上の期間、熱可塑性を保持し得る硬化性樹脂組成物がポリイミド系フィルム、又はポリエステル系フィルム又は金属箔の少なくとも片面に積層されていることを特徴とする積層体、及び該積層体の硬化性樹脂組成物が硬化されて、金属箔(金属の回路を含む)上に積層されている積層体が記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、カルボキシル基を含有し、酸価(単位:当量/106g)が100以上1000以下であり、数平均分子量が5.0×103以上1.0×105以下であり、ガラス転移温度が-10℃以上70℃以下であるポリウレタン樹脂(a)、窒素原子を含有するエポキシ樹脂(b)、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂(c)、を含有し、前記樹脂(b)の配合比率が、樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂全体の0.1質量%以上20質量%以下である接着剤用樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5846290号公報
【文献】特開2005-125724号公報
【文献】特開2010-84005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、高温高湿環境下(60℃95%RH)において長期(1,000時間)保管後であっても、導電性及び接着性に優れる硬化物が得られる樹脂組成物を提供することである。
本発明が解決しようとする他の課題は、前記樹脂組成物を用いた樹脂組成物層付き積層体、積層体、フレキシブル銅張積層板、フレキシブルフラットケーブル又は電磁波シールドフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> ポリエステルポリウレタン樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)とを含有し、ポリエステルポリウレタン樹脂(A)におけるウレタン結合1個当たりの分子量が、200~8,000である樹脂組成物。
<2> ポリエステルポリウレタン樹脂(A)を構成するジオール成分が、側鎖を有するジオールを含む<1>に記載の樹脂組成物。
<3> ポリエステルポリウレタン樹脂(A)が、数平均分子量が8,000~30,000のポリエステル構造を有するポリエステルポリウレタン樹脂を含む<1>又は<2>に記載の樹脂組成物。
<4> ポリエステルポリウレタン樹脂(A)の数平均分子量が、10,000~80,000である<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5> ポリエステルポリウレタン樹脂(A)の酸価が、0.1mgKOH/g~20mgKOH/gである<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6> ポリエステルポリウレタン樹脂(A)のガラス転移温度が、30℃~150℃である<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7> エポキシ樹脂(B)の含有量が、ポリエステルポリウレタン樹脂(A)100質量部に対し、1質量部~30質量部である<1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<8> エポキシ樹脂(B)が、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂を含む<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<9> <1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物からなる樹脂組成物層、前記樹脂組成物を一部硬化してなるBステージ状の樹脂組成物層、又は、前記樹脂組成物を硬化してなる硬化層と、前記樹脂組成物層、Bステージ状の樹脂組成物層又は硬化層の少なくとも一方の面に接する基材フィルムとを備える樹脂組成物層付き積層体。
<10> <1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物を硬化してなる硬化層を備える積層体。
<11> 銅箔と、<1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物を硬化してなる硬化層と、基材とを備えるフレキシブル銅張積層板。
<12> 銅配線と、<1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物を硬化してなる硬化層と、被覆材とを備えるフレキシブルフラットケーブル。
<13> <1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物からなる樹脂組成物層、前記樹脂組成物を一部硬化してなるBステージ状の樹脂組成物層、又は、前記樹脂組成物を硬化してなる硬化層を有する電磁波シールドフィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高温高湿環境下(60℃95%RH)において長期(1,000時間)保管後であっても、導電性及び接着性に優れる硬化物が得られる樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、前記樹脂組成物を用いた樹脂組成物層付き積層体、積層体、フレキシブル銅張積層板、フレキシブルフラットケーブル又は電磁波シールドフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本願明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本発明において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する前記複数の物質の合計量を意味する。
本発明において、「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本発明において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
また、本発明において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
また、本明細書において、「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの双方、又は、いずれかを表す。
また、本開示において、「主鎖」とは樹脂を構成する高分子化合物の分子中で相対的に最も長い結合鎖を表し、「側鎖」とは主鎖から枝分かれしている炭素鎖を表す。
更に、本明細書における化合物の一部において、炭化水素鎖を炭素(C)及び水素(H)の記号を省略した簡略構造式で記載する場合もある。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
【0011】
(樹脂組成物)
本発明の樹脂組成物は、ポリエステルポリウレタン樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)とを含有し、ポリエステルポリウレタン樹脂(A)におけるウレタン結合1個当たりの分子量が、200~8,000である。
本発明の樹脂組成物は、接着剤組成物として好適に用いることができ、ポリイミド又は金属接着用接着剤組成物としてより好適に用いることができ、ポリイミドと金属との接着用接着剤組成物として特に好適に用いることができる。
【0012】
従来の樹脂組成物は、得られる硬化物において、高温高湿環境下において長期保管後では、導電性及び接着性が十分でないことを本発明者らは見出した。
本発明者らが鋭意検討した結果、ポリエステルポリウレタン樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)とを含有し、ポリエステルポリウレタン樹脂(A)におけるウレタン結合1個当たりの分子量が、200~8,000であることにより、詳細な機構は不明であるが、これら2種の樹脂が互いに協奏的に作用し、また、互いに補完し、高温高湿環境下において長期保管後であっても、導電性及び接着性に優れる硬化物が得られる樹脂組成物を提供できることを見出した。
【0013】
また、本発明の樹脂組成物は、ポリエステルポリウレタン樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)とを含有し、ポリエステルポリウレタン樹脂(A)におけるウレタン結合1個当たりの分子量が、200~8,000であることにより、初期又ははんだ後の接着性、及び、初期又ははんだ後の導電性にも優れる。
特に、本発明の樹脂組成物は、ポリエステルポリウレタン樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)とを含有し、ポリエステルポリウレタン樹脂(A)におけるウレタン結合1個当たりの分子量が、200~8,000であることにより、ポリイミド及び金属との接着力が高く、はんだ形成後の外観にも優れ、また、耐熱性にも優れ、更に、絶縁信頼性にも優れる。
【0014】
また、本明細書においては、「ポリエステルポリウレタン樹脂(A)」等を「成分(A)」等ともいう。
【0015】
<ポリエステルポリウレタン樹脂(A)>
本発明の樹脂組成物は、ポリエステルポリウレタン樹脂(A)を含有し、ポリエステルポリウレタン樹脂(A)におけるウレタン結合1個当たりの分子量は、200~8,000である。
ポリエステルポリウレタン樹脂(A)は、2以上のエステル結合と2以上のウレタン結合とを有する樹脂であればよいが、ポリエステル鎖と2以上のウレタン結合とを有する樹脂であることが好ましい。
また、ポリエステルポリウレタン樹脂(A)は、その原料としてポリエステルポリオールと、ポリイソシアネートと、鎖延長剤とを少なくとも反応させてなる樹脂であることが好ましく、ポリエステルポリオールと、ポリイソシアネートと、ジオール化合物とを少なくとも反応させてなる樹脂であることがより好ましい。
【0016】
ポリエステルポリウレタン樹脂(A)におけるウレタン結合1個当たりの分子量は、200~8,000であり、導電性、及び、耐熱性の観点から、250~5,000であることが好ましく、300~2,000であることがより好ましく、500~1,500であることが更に好ましく、700~1,000であることが特に好ましい。
なお、本発明におけるポリエステルポリウレタン樹脂(A)におけるウレタン結合1個当たりの分子量は、ポリエステルポリウレタン樹脂(A)の数平均分子量Mn/ポリエステルポリウレタン樹脂(A)が有する平均ウレタン結合数により求める。
【0017】
ポリエステルポリウレタン樹脂(A)におけるポリエステル部分は、酸成分とアルコール成分とから形成されることが好ましい。
酸成分としては、多価カルボン酸化合物が好ましく、ジカルボン酸化合物がより好ましい。また、酸成分としては、スルホカルボン酸化合物等も用いることができる。更に、酸成分としては、芳香族酸が好ましく挙げられる。
アルコール成分としては、多価アルコール化合物が好ましく、ジオール化合物がより好ましい。
また、前記ポリエステル部分は、ヒドロキシカルボン酸化合物により形成されていてもよい。
ポリエステルポリウレタン樹脂(A)のポリエステル部分を構成する全酸成分の合計量を100モル%としたとき、接着性、耐熱性及び耐湿熱性の観点から、前記全酸成分のうち、芳香族酸が30モル%以上であることが好ましく、45モル%以上であることがより好ましく、60モル%以上であることが特に好ましい。
【0018】
芳香族酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、5-ヒドロキシイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸が例示できる。また、スルホテレフタル酸、5-スルホイソフタル酸、4-スルホフタル酸、4-スルホナフタレン-2,7-ジカルボン酸、5-(4-スルホフェノキシ)イソフタル酸、スルホテレフタル酸、及び/又は、それらの金属塩、アンモニウム塩等のスルホン酸基又はスルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸、p-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシフェニルプロピオン酸、p-ヒドロキシフェニル酢酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4,4-ビス(p-ヒドロキシフェニル)バレリック酸等の芳香族オキシカルボン酸等を挙げることができる。これらの中でも、接着性の観点から、酸成分としては、テレフタル酸、及び/又は、イソフタル酸を含むことが好ましく、テレフタル酸、及び/又は、イソフタル酸であることが特に好ましい。
また、前記酸成分は、樹脂合成時においては、エステル等の酸化合物の誘導体であってもよい。
【0019】
また、その他の酸成分としては、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸とその酸無水物等の脂環族ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸を挙げることができる。
【0020】
一方、多価アルコール成分は、脂肪族ジオール化合物、脂環族ジオール化合物、芳香族含有ジオール化合物、エーテル結合含有ジオール化合物等が好ましく挙げられる。
脂肪族ジオール化合物の例としては、エチレングリコール、1,2-プロピレンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオ-ル、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、ジメチロールヘプタン、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール等を挙げることができる。
脂環族ジオール化合物の例としては、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジオール、トリシクロデカンジメチロール、スピログリコール、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びプロピレンオキサイド付加物等を挙げることができる。
芳香族含有ジオール化合物の例としては、パラキシレングリコール、メタキシレングリコ-ル、オルトキシレングリコール、1,4-フェニレングリコール、1,4-フェニレングリコールのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びプロピレンオキサイド付加物等の、ビスフェノール類の2つのフェノール性水酸基にエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドをそれぞれ1~数モル付加して得られるグリコール類等を例示できる。
エーテル結合含有ジオール化合物の例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコールエチレンオキサイド付加物、ネオペンチルグリコールプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
これらジオールの中でも、ネオペンチルグリコールや2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール等の側鎖を有するジオールが、エポキシ樹脂等との相溶性及び溶液安定性の理由で好ましい。
すなわち、ポリエステルポリウレタン樹脂(A)を構成するジオール成分は、エポキシ樹脂等との相溶性及び溶液安定性の観点から、側鎖を有するジオールを含むことが好ましい。
中でも、エポキシ樹脂等との相溶性、溶液安定性、及び、導電性の観点から、ポリエステルポリウレタン樹脂(A)を構成する前記鎖延長剤として、側鎖を有するジオールを含むことがより好ましい。すなわち、ポリエステルポリウレタン樹脂(A)は、エポキシ樹脂等との相溶性、溶液安定性、及び、導電性の観点から、その原料としてポリエステルポリオールと、ポリイソシアネートと、側鎖を有するジオールとを少なくとも反応させてなる樹脂であることがより好ましい。
【0021】
また、分子構造の中に、ヒドロキシ基とカルボキシ基を有する、ヒドロキシカルボン酸化合物もポリエステル原料として使用することができ、5-ヒドロキシイソフタル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシフェニチルアルコール、p-ヒドロキシフェニルプロピオン酸、p-ヒドロキシフェニル酢酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4,4-ビス(p-ヒドロキシフェニル)バレリック酸等を例示できる。
【0022】
ポリエステルポリウレタン樹脂(A)のポリエステル部分を構成する成分として、必要により分岐骨格を導入する目的で、ポリエステル部分を構成する全酸成分あるいは全多価アルコール成分に対し、0.1モル%~5モル%程度の3官能以上のポリカルボン酸類及び/又はポリオール類を共重合しても構わない。特に硬化剤と反応させて硬化層を得る場合、分岐骨格を導入することにより、樹脂の末端基濃度(反応点)が増え、架橋密度が高い、硬化層を得ることができる。その場合の3官能以上のポリカルボン酸の例としてはトリメリット酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸(PMDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、2,2’-ビス[(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BSAA)等の化合物等が使用できる。一方、3官能以上のポリオールの例としては、グリセリン、トリメチロ-ルエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が使用できる。3官能以上のポリカルボン酸及び/又はポリオ-ルを使用する場合は、全酸成分あるいは全多価アルコール成分に対し、好ましくは0.1モル%~5モル%、より好ましくは0.1モル%~3モル%の範囲で共重合することがよい。
【0023】
ポリエステルポリウレタン樹脂(A)のポリエステル部分には、必要によりカルボキシ基を導入する目的で、ポリエステル部分を構成する全酸成分あるいは全多価アルコール成分に対し、0.1モル%~10モル%程度の酸付加を行うことができる。酸付加にモノカルボン酸、ジカルボン酸、多官能カルボン酸化合物を用いると、エステル交換により分子量の低下が起こるので、酸無水物を用いることが好ましい。
酸無水物としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、オルソフタル酸、2,5-ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸(PMDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、2,2’-ビス[(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BSAA)等の化合物が使用できる。
酸付加は、ポリエステル重縮合後、バルク状態で直接行う方法と、ポリエステルを溶液化し付加する方法がある。バルク状態での反応は、速度が速いが、多量に酸付加を行うとゲル化が起こることがあり、かつ高温での反応になるので、酸素ガスを遮断し酸化を防ぐ等の注意が必要である。一方、溶液状態での酸付加は、反応は遅いが、多量のカルボキシ基を安定に導入することができる。
【0024】
ポリエステルポリウレタン樹脂(A)の製造に使用するポリイソシアネートは、ジイソシアネート、その二量体(ウレトジオン)、その三量体(イソシアヌレート、トリオール付加物、ビューレット)等の一種、又は、それらの二種以上の混合物であってもよい。例えば、ジイソシアネート成分としては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,6-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアネートジフェニルエーテル、m-キシリレンジイソシアネート、1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、1,4-ジイソシアネ-トメチルシクロヘキサン、4,4’-ジイソシアネートシクロヘキサン、4,4’-ジイソシアネートシクロヘキシルメタン、イソホロンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等が挙げられる。中でも、透明性の観点からは、脂肪族又は脂環族のジイソシアネートが好ましい。更に入手の容易さと経済的な理由で、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが特に好ましい。
【0025】
ポリエステルポリウレタン樹脂(A)を製造する上で、必要により鎖延長剤を使用してもよい。
鎖延長剤としては、ポリエステル部分の構成成分として既に記載したジオール化合物や、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸等の1つのカルボキシ基と2つのヒドロキシ基とを有する化合物等が挙げられる。
中でも、鎖延長剤としては、導電性の観点から、ジオール化合物が好ましく、側鎖を有するジオール化合物がより好ましく、分岐鎖を有するジオール化合物が特に好ましい。
すなわち、ポリエステルポリウレタン樹脂(A)を構成するジオール成分は、導電性の観点から、側鎖を有するジオールを含むことが好ましく、分岐鎖を有するジオール化合物を含むことが特に好ましい。
側鎖を有するジオール化合物としては、導電性の観点から、ネオペンチルグリコール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、及び、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことが好ましく、ネオペンチルグリコール及び2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物と、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸とを含むことが特に好ましい。
【0026】
ポリエステルポリウレタン樹脂(A)の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、ポリエステルポリオール及びポリイソシアネート、必要により前記鎖延長剤を一括して反応容器に仕込んでもよいし、分割して仕込んでもよい。いずれにしても、系内のポリエステルポリオール及び鎖延長剤の水酸基価の合計と、ポリイソシアネートのイソシアネート基の合計について、イソシアネート基/ヒドロキシ基の官能基の比率が、好ましくは0.9以上1.1以下、より好ましくは0.98以上1.02以下、特に好ましくは1で反応させる。またこの反応は、イソシアネート基に対して不活性な溶媒の存在下又は非存在下に反応させることにより製造することができる。その溶媒としては、エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸エチル等)、エーテル系溶媒(ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等)、ケトン系溶媒(シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、芳香族炭化水素系溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレン等)及びこれらの混合溶媒が挙げられるが、環境負荷の低減の観点から、酢酸エチル及び/又はメチルエチルケトンが好ましい。反応装置としては、撹拌装置の具備した反応缶に限らず、ニーダー、二軸押出機のような混合混練装置も使用できる。
【0027】
ウレタン反応を促進させるため、通常のウレタン反応において用いられる触媒、例えば、錫系触媒(トリメチルチンラウレート、ジメチルチンジラウレート、トリメチルチンヒドロキサイド、ジメチルチンジヒドロキサイド、スタナスオクトエート等)、鉛系触媒(レッドオレート、レッド-2-エチルヘキソエート等)アミン系触媒(トリエチルアミン、トリブチルアミン、モルホリン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロウンデセン等)等を使用することができる。
【0028】
ポリエステルポリウレタン樹脂(A)におけるポリエステル部分のガラス転移温度(Tg)は、接着性、導電性、及び、耐熱性の観点から、40℃~150℃であることが好ましく、45℃~120℃であることがより好ましく、50℃~90℃であることが更に好ましく、60℃~70℃であることが特に好ましい。
また、ポリエステルポリウレタン樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、接着性、導電性、及び、耐熱性の観点から、30℃~150℃であることが好ましく、40℃~140℃であることがより好ましく、50℃~120℃であることが特に好ましい。
【0029】
ポリエステルポリウレタン樹脂(A)の数平均分子量(Mn)は、導電性、及び、耐熱性の観点から、5,000~100,000であることが好ましく、10,000~80,000であることがより好ましく、20,000~60,000であることが更に好ましく、25,000~50,000であることが特に好ましい。
なお、本発明における樹脂の数平均分子量(Mn)、及び、重量平均分子量(Mw)の値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により得ることができる。
【0030】
ポリエステルポリウレタン樹脂(A)の酸価は、接着性、及び、導電性の観点から、0mgKOH/g~50mgKOH/gであることが好ましく、0.1mgKOH/g~20mgKOH/gであることがより好ましく、0.1mgKOH/g~5mgKOH/gであることが更に好ましく、1.0mgKOH/g~5.0mgKOH/gであることが特に好ましい。
また、ポリエステルポリウレタン樹脂(A)の酸価は、耐熱性の観点からは、20mgKOH/g以下であることが好ましく、5mgKOH/g以下であることが特に好ましい。
本発明における樹脂の酸価の測定方法は、フェノールフタレイン溶液を指示薬として、試料を水酸化カリウムベンジルアルコール溶液で中和滴定して酸価を求めるものとする。
【0031】
また、ポリエステルポリウレタン樹脂(A)は、接着性、導電性、及び、耐熱性の観点から、数平均分子量が1,000~50,000のポリエステル構造を有するポリエステルポリウレタン樹脂を含むことが好ましく、数平均分子量が2,000~40,000のポリエステル構造を有するポリエステルポリウレタン樹脂を含むことがより好ましく、数平均分子量が3,000~30,000のポリエステル構造を有するポリエステルポリウレタン樹脂を含むことが更に好ましく、数平均分子量が8,000~30,000のポリエステル構造を有するポリエステルポリウレタン樹脂を含むことが特に好ましい。
【0032】
本発明の樹脂組成物は、ポリエステルポリウレタン樹脂(A)を、1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
ポリエステルポリウレタン樹脂(A)の含有量は、接着性、導電性、及び、耐熱性の観点から、樹脂組成物において、フィラー成分を除く樹脂固形分の合計量に対して、30質量%~99質量%であることが好ましく、50質量%~95質量%であることがより好ましく、70質量%~90質量%であることが特に好ましい。
なお、フィラー成分を除く樹脂固形分とは、後述する有機フィラー、金属フィラー及び金属フィラー以外の無機フィラーを除いた不揮発成分である樹脂成分(ポリエステルポリウレタン樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)等)及び後述する硬化促進剤をいい、また、前記樹脂成分及び前記硬化促進剤は、常温(25℃)において、固体であっても、液体であってもよい。
更に、接着性、導電性、及び、耐熱性の観点から、本発明の樹脂組成物において、フィラー成分を除く樹脂固形分の合計量に対し、ポリエステルポリウレタン樹脂(A)の含有量が10質量%~70質量%であることが好ましい。
【0033】
<エポキシ樹脂(B)>
本発明の樹脂組成物は、エポキシ樹脂(B)を含有する。
エポキシ樹脂(B)は、接着性や接着後の硬化部における耐熱性等を与える成分である。本発明におけるエポキシ樹脂(B)には、エポキシ基を有する高分子化合物だけでなく、エポキシ基を有する低分子化合物も含まれる。エポキシ樹脂(B)におけるエポキシ基の数は、2以上であることが好ましい。
エポキシ樹脂(B)としては、例えば、オルトフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p-ヒドロキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル等のグリシジルエステル;ビスフェノールAのジグリシジルエーテル及びそのオリゴマー、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、テトラフェニルグリシジルエーテルエタン、トリフェニルグリシジルエーテルエタン、ソルビトールのポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールのポリグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類;フェノールノボラックエポキシ樹脂、o-クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
また、難燃性を付与した臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ターシャリーブチルカテコール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂及びビスフェノールS型エポキシ樹脂等も用いることができる。
中でも、エポキシ樹脂(B)は、接着性、及び、耐熱性の観点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂及び/又はノボラック型エポキシ樹脂を含むことが好ましく、ビスフェノール型エポキシ樹脂及びフェノールノボラック型エポキシ樹脂を含むことがより好ましい。
【0034】
本発明においては、硬化後における高い耐熱性を発現させるために、エポキシ樹脂(B)は、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する化合物を含むことが好ましい。このような化合物を用いると、エポキシ基が2個のエポキシ樹脂を用いた場合に比べて、ポリエステルポリウレタン樹脂(A)との架橋反応性が高くなり、十分な耐熱性が得られる。
エポキシ樹脂(B)における1分子中に3個以上のエポキシ基を有する化合物の含有量は、耐熱性の観点から、エポキシ樹脂(B)の全質量に対し、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることが特に好ましい。
【0035】
本発明の樹脂組成物は、エポキシ樹脂(B)を、1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
エポキシ樹脂(B)の含有量は、接着性、導電性、及び、耐熱性の観点から、ポリエステルポリウレタン樹脂(A)100質量部に対し、0.5質量部~60質量部であることが好ましく、1質量部~30質量部であることがより好ましく、3質量部~25質量部であることが特に好ましい。
【0036】
<有機フィラー>
本発明の樹脂組成物は、得られる硬化物の伸び性、導電性、及び、耐湿熱性の観点から、有機フィラーを含有することが好ましい。
有機フィラーとしては、例えば、(メタ)アクリル樹脂粒子、ポリブタジエン粒子、ナイロン粒子、ポリオレフィン粒子、ポリエステル粒子、ポリカーボネート粒子、ポリビニルアルコール粒子、ポリビニルエーテル粒子、ポリビニルブチラール粒子、シリコーンゴム粒子、ポリウレタン粒子、フェノール樹脂粒子、ポリ四弗化エチレン粒子等が挙げられる。
本発明者らは、有機フィラーと、ポリエステルポリウレタン樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)とを混合した場合に、これら樹脂の相溶性を更に高める効果を見出した。
更に、有機フィラーとしては、これら樹脂の相溶性や液安定性をより向上させる観点から、シリコーン粒子、ポリブタジエン粒子、(メタ)アクリル樹脂粒子、又は、ポリウレタン粒子が特に好ましい。
また、導電性の観点からは、(メタ)アクリル樹脂粒子、又は、ポリウレタン粒子が好ましい。
【0037】
有機フィラーの平均粒子径は、特に限定されないが、塗布性、及び、塗布厚調整性の観点から、0.5μm~50μmであることが好ましく、1μm~30μmであることがより好ましい。
【0038】
本発明の樹脂組成物は、有機フィラーを、1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
有機フィラーの含有量は、接着性、導電性、及び、硬化性の観点から、前記樹脂組成物において、フィラー成分を除く樹脂固形分の合計量100質量部に対して、1質量部~50質量部であることが好ましく、5質量部~40質量部であることがより好ましく、10質量部~20質量部であることが特に好ましい。
【0039】
<金属フィラー>
本発明の樹脂組成物は、導電性、及び、耐熱性の観点から、金属フィラーを含有することが好ましい。
金属フィラーとしては、導電性、及び、耐熱性の観点から、導電性フィラーであることが好ましく、金、白金、銀、銅、ニッケル等の導電性金属又はその合金からなる金属粒子であることがより好ましい。また、単一組成の粒子ではなく金属や樹脂を核体とし、その被覆層を導電性が高い素材で形成した粒子も、コストダウンの観点から好ましい。前記核体は、ニッケル、シリカ、銅及び樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種の材質からなることが好ましく、導電性の金属又はその合金からなることがより好ましい。前記被覆層は、導電性が優れる材質からなる層であることが好ましく、導電性金属又は導電性ポリマーからなる層であることが好ましい。
導電性金属は、例えば、金、白金、銀、錫、マンガン、及び、インジウム等、並びにその合金が挙げられる。また、導電性ポリマーは、ポリアニリン、ポリアセチレン等が挙げられる。これらの中でも、導電性の面から、銀が好ましい。
【0040】
前記核体と被覆層とからなる粒子は、コスト及び導電性の観点から、核体100質量部に対して、1質量部~40質量部の割合で被覆層を有することが好ましく、5質量部~30質量部の割合で被覆層を有することがより好ましい。
【0041】
前記核体と被覆層からなる粒子は、被覆層が核体を完全に覆っている粒子であることが好ましい。しかし、実際には、核体の一部が露出する場合がある。このような場合でも核体表面面積の70%以上を導電性物質が覆っていれば、導電性を維持しやすい。
【0042】
金属フィラーの形状は、所望の導電性が得られればよく形状は限定されない。具体的には、例えば、球状、フレーク状、葉状、樹枝状、プレート状、針状、棒状、又は、ブドウ状が好ましい。
【0043】
金属フィラーの平均粒子径は、導電性、及び、貯蔵安定性の観点から、1μm~100μmであることが好ましく、3μm~50μmであることがより好ましく、4μm~15μmであることが特に好ましい。
なお、本開示における粒子の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置LS 13320(ベックマン・コールター社製)を使用し、トルネードドライパウダーサンプルモジュールにて、各導電性微粒子粉を測定して得たD50平均粒子径であり、粒子の積算値が50%である粒度の直径の平均粒子径を用いた。なお、屈折率の設定は1.6とした。
なお、金属フィラーの平均粒子径は、電子顕微鏡の拡大画像(約千倍~1万倍)において無作為に選定した約20個の粒子を平均した数値から求めることもできる。この場合の平均粒子径も1μm~100μmが好ましく、3μm~50μmがより好ましい。なお、金属フィラーに長軸方向と短軸方向が有る場合(例えば棒状粒子)は、長軸方向の長さで平均粒子径を算出する。
【0044】
本発明の樹脂組成物は、金属フィラーを、1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
金属フィラーの含有量は、導電性、耐熱性、及び、貯蔵安定性の観点から、前記樹脂組成物において、フィラー成分を除く樹脂固形分の合計量100質量部に対して、1質量部~500質量部であることが好ましく、10質量部~350質量部であることがより好ましく、10質量部~50質量部であることが特に好ましい。
【0045】
本発明の樹脂組成物は、前述した成分以外の他の添加剤を含有していてもよい。
他の添加剤としては、前述した以外の他の熱可塑性樹脂、粘着付与剤、難燃剤、硬化剤、硬化促進剤、カップリング剤、熱老化防止剤、レベリング剤、消泡剤、無機充填剤及び溶剤等を、樹脂組成物の機能に影響を与えない程度に含有することができる。
【0046】
前記他の熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂及びポリビニル系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
前記粘着付与剤としては、例えば、クマロン-インデン樹脂、テルペン樹脂、テルペン-フェノール樹脂、ロジン樹脂、p-t-ブチルフェノール-アセチレン樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、キシレン-ホルムアルデヒド樹脂、石油系炭化水素樹脂、水素添加炭化水素樹脂、テレピン系樹脂等を挙げることができる。これらの粘着付与剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
前記難燃剤は、有機系難燃剤及び無機系難燃剤のいずれでもよい。
有機系難燃剤としては、例えば、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、リン酸グアニジン、ポリリン酸グアニジン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸アミドアンモニウム、ポリリン酸アミドアンモニウム、リン酸カルバメート、ポリリン酸カルバメート、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスジエチルホスフィン酸チタン、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスメチルエチルホスフィン酸チタン、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル、テトラキスジフェニルホスフィン酸チタン等のリン系難燃剤;メラミン、メラム、メラミンシアヌレート等のトリアジン系化合物や、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、トリアゾール系化合物、テトラゾール化合物、ジアゾ化合物、尿素等の窒素系難燃剤;シリコーン化合物、シラン化合物等のケイ素系難燃剤等が挙げられる。
また、無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物;酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化ニッケル等の金属酸化物;炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、ホウ酸亜鉛、水和ガラス等が挙げられる。
これらの難燃剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用することができる。
【0049】
前記硬化剤は、エポキシ樹脂(B)との反応により架橋構造を形成するための成分であり、例えば、脂肪族ジアミン、脂肪族系ポリアミン、環状脂肪族ジアミン及び芳香族ジアミン等のアミン系硬化剤、ポリアミドアミン系硬化剤、脂肪族多価カルボン酸、脂環式多価カルボン酸、芳香族多価カルボン酸及びそれらの酸無水物等の酸系硬化剤;ジシアンジアミドや有機酸ジヒドラジド等の塩基性活性水素系硬化剤;ポリメルカプタン系硬化剤;ノボラック樹脂系硬化剤;ユリア樹脂系硬化剤;メラミン樹脂系硬化剤等が挙げられる。
これらの硬化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
脂肪族ジアミン系硬化剤としては、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミン、ポリメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン、2,5-ジメチルヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0051】
脂肪族ポリアミン系硬化剤としては、ジエチレントリアミン、イミノビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリヘキサテトラミン、テトラエチレンペンタミン、アミノエチルエタノールアミン、トリ(メチルアミノ)ヘキサン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン等が挙げられる。
【0052】
環状脂肪族ジアミン系硬化剤としては、メンセンジアミン、イソフォロンジアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルジシクロへキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N-エチルアミノピペラジン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、メタキシリレンジアミンの水添物等が挙げられる。
【0053】
芳香族ジアミン系硬化剤としては、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジエチルジフェニルメタン、メタキシリレンジアミン等が挙げられる。
【0054】
脂肪族多価カルボン酸系硬化剤及び酸無水物系硬化剤としては、コハク酸、アジピン酸、ドデセニル無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物等が挙げられる。
【0055】
脂環式多価カルボン酸系硬化剤及び酸無水物系硬化剤としては、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、メチルハイミック酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、トリアルキルテトラヒドロフタル酸、メチルシクロジカルボン酸及びそれらの酸無水物等が挙げられる。
【0056】
芳香族多価カルボン酸系硬化剤及び酸無水物系硬化剤としては、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールグリコールビストリメリット酸、グリセロールトリストリメリット酸及びそれらの酸無水物等が挙げられる。
【0057】
ポリメルカプタン系硬化剤としては、メルカプト化エポキシ樹脂やメルカプトプロピオン酸エステル等が挙げられる。
【0058】
ノボラック系硬化剤としては、フェノールノボラック系硬化剤、クレゾールノボラック系硬化剤等が挙げられる。
【0059】
本発明の樹脂組成物が前記硬化剤を含有する場合、硬化剤の含有量は、その官能基当量が、接着性、及び、耐熱性の観点から、エポキシ樹脂(B)のエポキシ基1モル当量に対して、好ましくは0.2モル当量~2.5モル当量の範囲、より好ましくは0.4モル当量~2.0モル当量の範囲となるように設定される。
【0060】
前記硬化促進剤は、エポキシ樹脂(B)の反応を促進させる目的で使用する成分であり、第三級アミン系硬化促進剤、第三級アミン塩系硬化促進剤及びイミダゾール系硬化促進剤等を使用することができる。
これらの硬化促進剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0061】
第三アミン系硬化促進剤としては、ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、テトラメチルグアニジン、トリエタノールアミン、N,N’-ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン等が挙げられる。
【0062】
第三アミン塩系硬化促進剤としては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセンの、ギ酸塩、オクチル酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、o-フタル酸塩、フェノール塩又はフェノールノボラック樹脂塩や、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネンの、ギ酸塩、オクチル酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、o-フタル酸塩、フェノール塩又はフェノールノボラック樹脂塩等が挙げられる。
【0063】
イミダゾール系硬化促進剤としては、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-メチル-4-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0064】
本発明の樹脂組成物が硬化促進剤を含有する場合、前記硬化促進剤の含有量は、接着性、及び、耐熱性の観点から、エポキシ樹脂(B)100質量部に対して、1質量部~10質量部であることが好ましく、2質量部~5質量部であることがより好ましい。
【0065】
また、前記カップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトシキシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、イミダゾールシラン等のシラン系カップリング剤;チタネート系カップリング剤;アルミネート系カップリング剤;ジルコニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
前記熱老化防止剤としては、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノ-ル、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネ-ト、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネ-ト〕メタン等のフェノ-ル系酸化防止剤;ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネ-ト、ジミリスチル-3,3’-ジチオプロピオネ-ト等のイオウ系酸化防止剤;トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
前記無機充填剤は、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、カーボンブラック、タルク、シリカ等からなる粉体が挙げられる。これらは、1種単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
本発明の樹脂組成物は、ポリエステルポリウレタン樹脂(A)、及び、エポキシ樹脂(B)、並びに、必要に応じ、その他成分を混合することにより調製することができる。
本発明の樹脂組成物は、溶液又は分散液の状態で好ましく用いられることから、溶剤を含有することが好ましい。
溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、イソブチルアルコール、n-ブチルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジアセトンアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類;トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテ-ト、3-メトキシブチルアセテート等のエステル類;ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類等が挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の樹脂組成物が溶剤を含む溶液又は分散液であると、被着体への塗工及び樹脂組成物層の形成を円滑に行うことができ、所望の厚さの樹脂組成物層を容易に得ることができる。
【0069】
本発明の樹脂組成物が溶剤を含む場合、塗膜形成性を含む作業性等の観点から、溶剤は、固形分濃度が、好ましくは3質量%~80質量%、より好ましくは10質量%~50質量%の範囲となるように用いられる。
【0070】
本発明の樹脂組成物による好適な被着体は、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、アラミド樹脂、液晶ポリマー等の高分子材料;銅、アルミニウム、ステンレス等の金属材料等からなる物体である。被着体の形状は、特に限定されない。そして、被着体としての、同一材料又は異なる材料からなる2つの部材同士を、本発明の樹脂組成物により接着させて、一体化した複合化物を製造することができる。また、以下のカバーレイフィルム、ボンディングシート等のように、接着性を有する樹脂組成物層を有する製品を製造することができる。
【0071】
(樹脂組成物層付き積層体、及び、積層体)
本発明の樹脂組成物層付き積層体は、本発明の樹脂組成物からなる樹脂組成物層、本発明の樹脂組成物を一部硬化してなるBステージ状の樹脂組成物層、又は、本発明の樹脂組成物を硬化してなる硬化層(以下、「各樹脂組成物層」と総称する。)を有する積層体であり、このうち前記Bステージ状の樹脂組成物層又は前記硬化層を有する積層体が好ましい。
本発明の樹脂組成物層付き積層体は、各樹脂組成物層と、前記各樹脂組成物層の少なくとも一方の面に接する基材フィルムとを備えることが好ましい。
本発明において、樹脂組成物層がBステージ状であるとは、樹脂組成物層の一部が硬化し始めた半硬化状態をいい、加熱等により、樹脂組成物層の硬化が更に進行する状態である。
また、本発明の樹脂組成物からなる前記樹脂組成物層は、溶剤を含む樹脂組成物を用いる場合、本発明の樹脂組成物が溶剤の少なくとも一部を除去した層であることが好ましい。
本発明の積層体は、本発明の樹脂組成物からなる樹脂組成物を硬化してなる硬化層を有する積層体であり、本発明の樹脂組成物を硬化してなる硬化層と、前記硬化層の少なくとも一方の面に接する基材とを備えることが好ましい。
【0072】
本発明の樹脂組成物層付き積層体、及び、本発明の積層体は、基材を有することが好ましく、基材上に本発明の樹脂組成物からなる各樹脂組成物層を有することがより好ましい。
基材としては、特に制限はなく、公知の基材を用いることができる。
また、基材としては、フィルム状の基材(基材フィルム)であることが好ましい。
基材フィルムとしては、樹脂フィルムであることが好ましく、ポリイミドフィルム又はアラミドフィルムであることがより好ましく、ポリイミドフィルムであることが特に好ましい。
前記ポリイミドフィルム又はアラミドフィルムは、電気的絶縁性を有するものであれば、特に限定されず、ポリイミド樹脂又はアラミド樹脂のみからなるフィルム、その樹脂と添加剤とを含むフィルム等とすることができ、樹脂組成物層が形成される側には、表面処理が施されていてもよい。
また、基材フィルムとしては、剥離性フィルムを用いることもできる。
前記基材の厚さは、特に制限はないが、3μm~125μmであることが好ましい。
また、前記樹脂組成物層の厚さは、5μm~50μmであることが好ましく、10μm~40μmであることがより好ましい。
【0073】
本発明の樹脂組成物層付き積層体を製造する方法としては、例えば、溶剤を含む本発明の樹脂組成物を、ポリイミドフィルム等の基材フィルムの表面に塗布して樹脂組成物層を形成した後、前記樹脂組成物層から前記溶剤の少なくとも一部を除去することにより、樹脂組成物層を有する積層体を製造することができ、さらに溶剤を除去する過程で樹脂組成物層の一部が硬化を始めBステージ状の樹脂組成物層を有する積層体を製造することができる。
前記溶剤を除去するときの乾燥温度は、40℃~250℃であることが好ましく、70℃~170℃であることがより好ましい。
乾燥は、樹脂組成物が塗布された積層体を、熱風乾燥、遠赤外線加熱、及び高周波誘導加熱等がなされる炉の中を通過させることにより行われる。
本発明の樹脂組成物層付き積層体は、必要に応じて、各樹脂組成物層の表面に、保管等のため、離型性フィルムを更に有していてもよい。
前記離型性フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、シリコーン離型処理紙、ポリオレフィン樹脂コート紙、ポリメチルペンテン(TPX)フィルム、フッ素系樹脂フィルム等の公知のものが用いられる。
【0074】
前記Bステージ状の樹脂組成物層の厚さは、3μm~100μmであることが好ましく、5μm~70μmであることがより好ましく、5μm~50μmであることが更に好ましく、10μm~40μmであることが特に好ましい。
前記基材フィルム及び各樹脂組成物層の厚さは用途により選択されるが、電気特性を向上させるために基材フィルムはより薄くなる傾向にある。前記基材フィルムの好ましい厚さとしては、前述した前記基材の好ましい厚さと同様である。
本発明の樹脂組成物層付き積層体においては、各樹脂組成物層の厚さ(A)と、基材フィルムの厚さ(B)との比(A/B)は、1以上10以下であることが好ましく、1以上5以下であることがより好ましい。更に、各樹脂組成物層の厚さが、基材フィルムの厚さより厚いことが好ましい。
【0075】
本発明の積層体を製造する方法としては、例えば、基材フィルムの表面に、溶剤を含む本発明の樹脂組成物を塗工した後、本発明の樹脂組成物層付き積層体の場合と同様にして乾燥し、次いで、形成した樹脂組成物層の表面と被着体とを面接触させ、ラミネート、例えば、80℃~150℃で熱ラミネートを行う。次いで、この積層体(基材フィルム/樹脂組成物層/被着体)を加熱圧着し、更にアフターキュアにより樹脂組成物層を硬化し硬化層とする方法が好適に挙げられる。
加熱圧着の条件は、圧着可能であれば、特に制限はないが、好ましくは、150℃~200℃、及び、圧力1MPa~3MPaの条件で1分間~60分間とすることができる。また、アフターキュアの条件は、特に制限はないが、好ましくは100℃~200℃、30分~4時間とすることができる。
硬化層の厚さは、3μm~100μmであることが好ましく、5μm~70μmであることがより好ましく、5μm~50μmであることが更に好ましく、10μm~40μmであることが特に好ましい。
被着体は、特に制限はなく、前述したものが挙げられる。中でも、金属被着体が好ましく挙げられ、銅箔、又は、めっきされた銅箔がより好ましく挙げられ、金めっきされた銅箔が特に好ましく挙げられる。
また、被着体の形状及び大きさ等についても、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。
【0076】
また、本発明の積層体の一実施態様としては、フレキシブル銅張積層板が挙げられる。
すなわち、本発明のフレキシブル銅張積層板は、銅箔と、本発明の樹脂組成物を硬化してなる硬化層と、基材とを備えるフレキシブル銅張積層板であることが好ましく、銅箔と、本発明の樹脂組成物を硬化してなる硬化層と、基材とが少なくとも積層してなるフレキシブル銅張積層板であることがより好ましく、銅箔と、本発明の樹脂組成物を硬化してなる硬化層と、ポリイミドフィルム又はアラミドフィルムとが少なくとも積層してなるフレキシブル銅張積層板であることが特に好ましい。
本発明のフレキシブル銅張積層板において、前記硬化層及び前記銅箔は、前記基材、例えば、ポリイミドフィルム又はアラミドフィルムの両面に形成されていてもよい。本発明の樹脂組成物は、銅を含む物品との接着性に優れるので、本発明のフレキシブル銅張積層板は、一体化物として安定性に優れる。
本発明のフレキシブル銅張積層板における前記基材としては、前記積層体において前述したものが好ましく挙げられる。
【0077】
前記ポリイミドフィルム又はアラミドフィルムの構成は、前述した本発明の積層体におけるポリイミドフィルム又はアラミドフィルムと同様である。
前記硬化層の厚さは、特に制限はないが、3μm~50μmであることが好ましく、10μm~40μmであることがより好ましい。
また、前記銅箔は、特に限定されず、電解銅箔、圧延銅箔等を用いることができる。
更に、前記銅箔は、金又は銀等の公知の金属又は合金によりめっきされたものであってもよい。
【0078】
また、本発明の積層体の他の一実施態様としては、フレキシブルフラットケーブルが挙げられる。
すなわち、本発明のフレキシブルフラットケーブルは、銅配線と、本発明の樹脂組成物を硬化してなる硬化層と、被覆材とを備えるフレキシブルフラットケーブルであることが好ましく、銅配線と、本発明の樹脂組成物を硬化してなる硬化層と、被覆材とを備え、前記銅配線と前記被覆材との間に前記硬化層を有するフレキシブルフラットケーブルであることがより好ましい。本発明の樹脂組成物は、銅を含む物品との接着性に優れるので、本発明のフレキシブルフラットケーブルは、一体化物として安定性に優れる。
前記銅配線の太さ、長さ、及び、断面形状等の形状は、特に制限はなく、所望に応じ適宜選択することができる。
中でも、断面形状が直方体である銅配線が好ましく挙げられる。
前記被覆材の材質としては、絶縁性の材質であれば特に制限はないが、樹脂が好ましく、熱可塑性樹脂がより好ましい。
前記被覆材の材質として具体的には、例えば、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等が挙げられる。
ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート等が好ましく挙げられる。
また、前記被覆材の厚さ、長さ、及び、断面形状等の形状は、特に制限はなく、所望に応じ適宜選択することができる。
前記硬化層の厚さは、特に制限はないが、3μm~50μmであることが好ましく、10μm~40μmであることがより好ましい。
【0079】
また、本発明のフレキシブルフラットケーブルの作製方法は、特に制限はないが、例えば、樹脂フィルム/樹脂組成物層/銅配線/樹脂組成物層/別の樹脂フィルムとなるように積層体を作製し、前記積層体を80℃~150℃で熱圧着させ、更にアフターキュアにより樹脂組成物層を硬化する方法が好ましく挙げられる。アフターキュアの条件は、例えば、100℃~200℃、30分~4時間とすることができる。
前記樹脂フィルムの厚さとしては、特に制限はないが、9μm~50μmのものが挙げられる。
【0080】
本発明の樹脂組成物層付き積層体の一実施態様としては、ボンディングフィルム、カバーレイフィルム、電磁波シールドフィルム等が挙げられる。
【0081】
-ボンディングフィルム-
本発明のボンディングフィルムは、本発明の樹脂組成物からなる層、又は、本発明の樹脂組成物を一部硬化してなるBステージ状の樹脂組成物層を有するものであり、そのうちBステージ状の樹脂組成物層が好ましい。
また、本発明のボンディングフィルムは、前記樹脂組成物層又は前記Bステージ状の樹脂組成物層の少なくとも一方の面に接する離型性フィルムを備えることが好ましい。
なお、本発明のボンディングフィルムは、2枚の離型性フィルムの間に樹脂組成物層を備える態様であってもよい。
前記離型性フィルムとしては、前述したような公知のものが用いられる。
前記離型性フィルムの厚さは、20μm~100μmであることが好ましい。
また、前記樹脂組成物層の厚さは、3μm~100μmであることが好ましく、10μm~60μmであることがより好ましい。
【0082】
本発明のボンディングシートを製造する方法としては、例えば、離型性フィルムの表面に、溶剤を含む本発明の樹脂組成物を塗工した後、前述した本発明の樹脂組成物層付き積層体の場合と同様にして乾燥する方法が好ましく挙げられる。
【0083】
-カバーレイフィルム-
本発明のカバーレイフィルムは、本発明の各樹脂組成物層を有するものであり、このうちBステージ状の樹脂組成物層又は硬化層が好ましい。本発明のカバーレイフィルムは、各樹脂組成物層の少なくとも一方の面に接するポリイミドフィルム又はアラミドフィルム等の離型性フィルム以外の基材フィルムを備えることが好ましい。
なお、本発明のカバーレイフィルムは、各樹脂組成物層における基材フィルム側と反対側に剥離性フィルムを備える態様であってもよい。
前記基材フィルムとしては、前述したような公知のものが用いられる。
前記基材フィルムの厚さは、3μm~125μmであることが好ましい。
また、前記樹脂組成物層の厚さは、3μm~100μmであることが好ましく、10μm~60μmであることがより好ましい。
【0084】
本発明のカバーレイフィルムを製造する方法としては、例えば、基材フィルムの表面に、溶剤を含む本発明の樹脂組成物を塗工した後、前述した本発明の樹脂組成物層付き積層体の場合と同様にして乾燥する方法が好ましく挙げられる。
【0085】
-電磁波シールドフィルム-
本発明の電磁波シールドフィルムは、前述した各樹脂組成物層を有するものであり、このうちBステージ状の樹脂組成物層又は硬化層が好ましい。本発明の電磁波シールドフィルムは、各樹脂組成物層の少なくとも一方の面に接する基材フィルム(離型性フィルムを含む。)を備えていてもよい。
また、本発明の電磁波シールドフィルムは、各樹脂組成物層と、保護層とを有することが好ましい。
保護層としては、絶縁性樹脂組成物からなる層であれば特に限定されず、公知の任意のものを使用することができる。また、保護層は、本発明の樹脂組成物に使用される樹脂成分を使用してもよい。更に、保護層は、組成や硬度が異なる2以上の層から形成されていてもよい。
また、保護層には、必要に応じて硬化促進剤、粘着性付与剤、酸化防止剤、顔料、染料、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤、充填剤、難燃剤、粘度調節剤、ブロッキング防止剤等が含まれていてもよい。
【0086】
本発明の電磁波シールドフィルムにおける各樹脂組成物層の厚さは、特に制限はないが、導電性、及び、グランド回路との接続性の観点から、3μm~30μmであることが好ましい。
【0087】
次に本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法の具体的態様について説明する。
例えば、剥離性フィルムの一方の面に保護層用樹脂組成物をコーティング及び乾燥し、保護層を形成し、前記保護層上に、本発明の樹脂組成物をコーティング及び乾燥し、樹脂組成物層を形成する方法等を挙げることができる。
例示したような製造方法により、各樹脂組成物層/保護層/剥離性フィルムという積層状態の電磁波シールドフィルムを得ることができる。
【0088】
樹脂組成物層及び保護層を設ける方法としては、従来公知のコーティング方法、例えば、グラビアコート方式、キスコート方式、ダイコート方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、スプレーコート方式、バーコート方式、スピンコート方式、ディップコート方式等により行うことができる。
【0089】
本発明の電磁波シールドフィルムは、例えば、熱プレスによってプリント配線板上に接着させることができる。各樹脂組成物層は、加熱により軟かくなり、加圧により、プリント配線板上に設けられたグランド部に流れ込む。これによって、グランド回路と導電性接着剤とが電気的に接続され、シールド効果を高めることができる。
【実施例】
【0090】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。また、以下において「部」及び「%」は、特に断らない限り、「質量部」及び「質量%」をそれぞれ意味する。
【0091】
1.原料
1-1.ポリエステルポリウレタン樹脂(A)
使用するポリエステルは、市販品又は合成品を用いた。
市販品は、東亞合成株式会社製のアロンメルトPES-360HVXM30及びアロンメルトPES-310S30を用いた。
PES-360HVXM30の数平均分子量は20,000、ガラス転移点は65℃であった。
PES-310S30の数平均分子量は20,000、ガラス転移点は8℃であった。
【0092】
<ポリエステル(PES-1)の合成>
撹拌装置、窒素導入管、留出管、温度計を備えたフラスコに、テレフタル酸ジメチル201質量部、エチレングリコール86質量部、ネオペンチルグリコール140質量部、トリメチロールプロパン0.9質量部及び触媒として酢酸亜鉛を0.22質量部仕込み、窒素を導入しながら昇温し、150℃~180℃でメタノールを留出させた後、イソフタル酸183質量部、トリメチロールプロパン0.6質量部及び三酸化アンチモン0.12質量部加えて、180℃~210℃で水を留出させた後、引き続き、徐々に減圧にしながら、230℃で200Paの減圧下で6時間反応を続けた。
得られたポリエステル樹脂Aは、数平均分子量7,000、ガラス転移点60℃であった。NMR分析によるモノマー組成は、モル比でテレフタル酸/イソフタル酸/エチレングリコール/ネオペンチルグリコール=48/52/43/56であった。
合成したポリエステル樹脂を180質量部とり、トルエン378質量部、及び、メチルイソブチルケトン42質量部加えて、ポリエステル溶液とした。
【0093】
<ポリエステルポリウレタン樹脂a1~a9の作製>
下記の方法で得られたポリエステルポリウレタン樹脂a1~a9を用いた。
【0094】
(1)ポリエステルポリウレタン樹脂a1の作製
撹拌機、還流脱水装置及び蒸留管を備えたフラスコに、PES-360HVXM30 600質量部、トルエン100質量部、ネオペンチルグリコール20質量部を仕込んだ。温度を120℃に昇温して水を含む溶媒を100質量部留出させた後に、温度を105℃に下げ、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸0.4質量部仕込み溶解させた。その後、ヘキサメチレンジイソシアネート34質量部添加し、30分後にジラウリン酸ジブチルすずを0.2質量部加えた。6時間反応を継続した後、トルエン/2-プロパノールで希釈して固形分濃度を30%に調整したポリエステルポリウレタン樹脂a1の溶液を得た。ポリエステルポリウレタン樹脂a1の数平均分子量は36,000であり、酸価は2mgKOH/gであった。
【0095】
(2)ポリエステルポリウレタン樹脂a2~a9の作製>
ポリエステルポリウレタン樹脂a1の作製において、表1に記載のポリエステル、ジオール及びジイソシアネートをそれぞれ表1に記載の質量部になるように変更したこと以外は、ポリエステルポリウレタン樹脂a1の作製と同様にして、ポリエステルポリウレタン樹脂a2~a9をそれぞれ作製した。
【0096】
【0097】
1-2.エポキシ樹脂(B)
下記の市販品を用いた。
(1)エポキシ樹脂b1
DIC(株)製ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂「EPICLON N-865」(商品名)
(2)エポキシ樹脂b2
三菱ケミカル(株)製ビスフェノールA型エポキシ樹脂「jER 1055」(商品名)
【0098】
1-3.難燃剤
クラリアント社製ジメチルホスフィン酸アルミニウム「Exolit OP935」(商品名)
【0099】
1-4.硬化促進剤
四国化成工業(株)製イミダゾール系硬化促進剤「キュアゾールC11-Z」(商品名)
【0100】
1-5.溶剤
トルエン、メチルイソブチルケトン及び2-プロパノールからなる混合溶媒(質量比=100:20:20)
【0101】
(実施例1~8、並びに、比較例1及び2)
撹拌装置付きフラスコに、表2に記載の上記の原料を表2に記載の質量割合で添加し、60℃加温下で6時間撹拌して、溶剤に成分(A)、成分(B)、硬化促進剤を溶解させ、難燃剤を分散させることにより、液状接着剤組成物(樹脂組成物)を製造した。その後、これらすべての液状接着剤組成物を用いて、カバーレイフィルム、ボンディングシート、並びに、接着試験片A、B及びCを作製し、下記の(i)~(vi)の評価を行った。
【0102】
(1)カバーレイフィルムの作製
厚さ25μmポリイミドフィルムの表面に、液状接着剤組成物を、乾燥後の厚さが15μmとなるようロール塗布し、120℃で2分間乾燥させて、接着剤層を有するカバーレイフィルムを得た。
【0103】
(2)接着試験片Aの作製
福田金属箔粉工業株式会社製厚さ35μmの圧延処理銅箔を用意した。そして、鏡面を上記カバーレイフィルムの接着剤層面に接触するように重ね合わせ、150℃、0.3MPa、1m/分の条件でラミネートを行った。得られた積層体(ポリイミドフィルム/接着剤層/銅箔)を、150℃、3MPaの条件で5分間加熱して圧着した後、更に、オーブンにて160℃で2時間のアフターキュアを行うことにより、接着試験片Aを得た。
【0104】
(3)接着試験片Bの作製
くし型テストパターン(線幅100μm、線間100μm)を有する基板の全表面に、上記カバーレイフィルムにおける被膜(接着性層)を面接触させ、オーブン内にて、150℃、及び圧力3MPaの条件で5分間加熱圧着した後に、更にオーブンにて160℃で2時間のアフターキュアを行い、絶縁信頼性評価用の試験片Bとした。
【0105】
(4)ボンディングシートの作製
厚さ35μmの離型性ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意した。そして、その表面に、液状接着剤組成物に福田金属箔粉工業(株)製銅粉「FCC-115A」を樹脂固形分全体の15質量%になるように配合した混合物を、乾燥後の厚さが25μmとなるようロ-ル塗布し、140℃で2分間乾燥させて、接着剤層を有するボンディングシートを得た。
【0106】
(5)接着試験片Cの作製
厚さ300μmの、ニッケルめっきされたSUS304板、及び、厚さ25μmのポリイミドフィルムの表面に銅の回路パターンが形成されており、回路パターン上に、直径1mmのスルーホールを有する厚さ37.5μmのカバーレイフィルムが積層された、フレキシブルプリント配線板を用意した。初めに、SUS304板のニッケルめっき処理面を上記ボンディングシートの接着剤層面に接触するように重ね合わせ、150℃、0.3MPa、1m/分の条件でラミネ-トを行い、積層体(SUS板/接着剤層/離型性PETフィルム)を得た。その後、離型性PETフィルムを剥がして、露出した接着剤層の表面に、フレキシブルプリント配線板(厚みさ25μmのポリイミド上に銅箔回路が形成されており、その銅箔回路上に直径1mmのスルーホールを有する厚み37.5μmのカバーレイフィルムが積層された配線板)に150℃、3MPaの条件で5分間加熱圧着した後、更にオーブンにて160℃で2時間のアフターキュアを行うことにより、接着試験片C(SUS板/接着剤層/フレキシブルプリント配線板)を作製した。
【0107】
(i)はく離接着強さ
接着性を評価するために、JIS C 6481(1996)「プリント配線板用銅張積層板試験方法」に準拠し、温度23℃及び引張速度50mm/分の条件で、各接着試験片Aの銅箔をポリイミドフィルムから剥がすときの180°はく離接着強さ(N/mm)を測定した。測定時の接着試験片の幅は10mmとした。その結果、剥離強度が0.5N/mm以上のものを「A」、0.35N/mm以上0.5N/mm未満のものを「B」、0.35N/mm未満のものを「C」として表示した。
【0108】
(ii)長期湿熱試験後のはく離接着強さ
60℃95%RHの雰囲気下1,000時間置いた後の接着試験片Aの接着性を評価するために、JIS C 6481(1996)「プリント配線板用銅張積層板試験方法」に準拠し、温度23℃及び引張速度50mm/分の条件で、各接着試験片Aの銅箔をポリイミドフィルムから剥がすときの180°はく離接着強さ(N/mm)を測定した。測定時の接着試験片の幅は10mmとした。その結果、初期と比べて剥離強度減少率が15%未満のものを「A」、15%以上30%未満のものを「B」、30%以上50%未満のものを「C」、50%以上のものを「D」として表示した。
【0109】
(iii)はんだ耐熱性(はんだ時の外観、及び、はんだ後のはく離接着強さ)
JIS C 6481(1996)に準拠し、下記の条件で試験を行った。
ポリイミドフィルムの面を上にして、上記接着試験片Aを260℃のはんだ浴に60秒間浮かべ、接着剤層の膨れ、剥がれ等の外観異常の有無を目視により評価した。その結果、膨れ及び剥がれ等の外観異常が確認されなかったものを「A」、膨れ及び剥がれ等の外観異常がわずかに確認されたものを「B」、膨れ及び剥がれ等の外観異常が確認されたものを「C」として表示した。
更に、上記はんだ浴から取出した試験片をJIS C 6481(1996)に準拠し、23℃において、ポリイミドフィルムを銅箔から剥がすときの180°はく離接着強さ(N/cm)を測定した。測定時の接着試験片の幅は10mmとし、引張速度は50mm/分とした。その結果、初期と比べて剥離強度減少率が15%未満のものを「A」、15%以上30%未満のものを「B」、30%以上50%未満のものを「C」、50%以上のものを「D」として表示した。
【0110】
(iv)絶縁信頼性
上記接着剤試験片Bを、温度85℃、湿度85%RHの雰囲気中、直流電圧50Vを、1000時間印加した。その後、パターン間の抵抗値を測定し、絶縁信頼性を下記基準で判定した。実用上、十分な絶縁信頼性が得られていると判断できる抵抗値が107Ω以上のものを「A」、抵抗値が107Ω未満のものを「F」として表示した。
【0111】
(v)導電性(接続抵抗)
上記接着試験片C(SUS板/接着剤層/フレキシブルプリント配線板)のSUS板とフレキシブルプリント配線板の銅箔回路との間の接続抵抗値を抵抗値測定器で測定した。その結果、接続抵抗値が0.5Ω未満のものを「A」、0.5Ω以上1Ω未満のものを「B」、1Ω以上3Ω以下のものを「C」、3Ωを超えたものを「D」として表示した。
【0112】
(vi)導電性(接続抵抗)はんだ処理後
上記接着試験片Cを260℃のはんだ浴に60秒間浮かべた。その後、はんだ浴から取出した接着試験片CのSUS板とフレキシブルプリント配線板の銅箔回路との間の接続抵抗値を抵抗値測定器で測定した。その結果、接続抵抗値が0.5Ω未満のものを「A」、接続抵抗値が0.5Ω以上1Ω未満のものを「B」、1Ω以上3Ω以下のものを「C」、3Ωを超えたものを「D」として表示した。
【0113】
(vii)導電性(接続抵抗)長期信頼性試験後
上記接着試験片Cを60℃、95%RHの恒温恒湿槽に1,000時間放置した。その後、接着試験片BのSUS板とフレキシブルプリント配線板の銅箔回路との間の接続抵抗値を抵抗値測定器で測定した。その結果、接続抵抗値が0.5Ω未満のものを「A」、接続抵抗値が0.5Ω以上1Ω未満のものを「B」、1Ω以上3Ω以下のものを「C」、3Ωを超えたものを「D」として表示した。
【0114】
(viii)接着剤組成物の貯蔵安定性
表1に記載の組成を有する実施例1~8又は比較例1若しくは2の接着剤組成物を、それぞれガラス瓶に入れ密封し、5℃で所定時間保管し組成物の結晶性を観察した。所定時間保管後、接着剤組成物のゲル化又は液分離が確認された時点までの保管時間に基づき、以下の評価基準により評価を行った。
<評価基準>
A:1週間以上
F:1週間未満
【0115】
【0116】
前記表2に示す結果から明らかなように、実施例1~8の樹脂組成物は、比較例1又は2の樹脂組成物に比べ、高温高湿環境下において長期保管後であっても、導電性及び接着性に優れた硬化物(接着物)が得られた。
また、前記表2に示す結果から明らかなように、実施例1~8の樹脂組成物は、初期及びはんだ後の接着性に優れ、はんだ形成後の外観にも優れ、絶縁信頼性、また、貯蔵安定性にも優れる。
【0117】
2019年11月27日に出願された日本国特許出願第2019-214475号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び、技術規格は、個々の文献、特許出願、及び、技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。