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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】かしめ装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/56 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
B29C65/56
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022003152
(22)【出願日】2022-01-12
(65)【公開番号】P2023102582
(43)【公開日】2023-07-25
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河本 徹
(72)【発明者】
【氏名】太田 裕也
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-123157(JP,A)
【文献】特開2008-168437(JP,A)
【文献】特開平08-132532(JP,A)
【文献】特開平07-117134(JP,A)
【文献】特開平07-009060(JP,A)
【文献】特開昭60-189424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸部(4)を有する樹脂からなる固定部材(2)と、前記凸部を挿入する穴(6)を有する被固定物(3)とをかしめ固定するかしめ装置であって、
フレーム(23)と、
前記フレームに対し、上下動可能なパンチホルダ(26)と、
前記パンチホルダに取り付けられ、先端に前記固定部材の前記凸部を押圧可能な押圧部(17)を有するパンチ(10)と、
前記パンチホルダと機械的に結合されるワーク上面ストッパ(40)とを備え、
前記ワーク上面ストッパは、前記パンチの先端に隙間を介して対向する内壁(50)前記被固定物の前記穴に前記固定部材の前記凸部を挿入するとき前記被固定物の前記凸部の突き出す側の上面(33)に当接可能な当接面であって前記押圧部が前記上面に接近するとき被固定物の損傷発生を防止する当接面(48)を有し、
前記ワーク上面ストッパの前記当接面は、前記押圧部の先端が前記被固定物の前記上面に接近するとき前記被固定物にバリ等の損傷を発生させない程度に前記被固定物の前記上面と同等の水準又は前記上面から離間している水準を保持するかしめ装置。
【請求項2】
前記パンチホルダの延長部(27)を備え、この延長部は前記ワーク上面ストッパと機械的に結合されている請求項1記載のかしめ装置。
【請求項3】
前記押圧部は、前記凸部の天面(5)に当接可能な加圧面(15)と、前記加圧面の外輪部に形成される環状凸部(16)とを有する請求項1記載のかしめ装置。
【請求項4】
前記フレームに対し前記パンチホルダを一方向に付勢する付勢手段(31)を備える請求項1記載のかしめ装置。
【請求項5】
前記フレームに対し前記パンチホルダを相対移動可能に案内するリニアガイド(25)を備える請求項1記載のかしめ装置。
【請求項6】
ベース(21)と、前記フレームを前記ベースに対し上下動する駆動部(22)とを備える請求項1記載のかしめ装置。
【請求項7】
前記ワーク上面ストッパは、前記被固定物に干渉しないように、前記パンチの前記押圧部の近傍に空間を確保する薄肉部(49)を有する請求項1記載のかしめ装置。
【請求項8】
前記ワーク上面ストッパは、前記被固定物に干渉しないように、被固定の前記上面から突き出す凸起(7)の存在を許容する切欠部(43)を有する請求項1記載のかしめ装置。
【請求項9】
前記パンチの先端を加熱するために前記パンチに通電可能であって、前記押圧部が前記凸部を押圧したとき前記凸部を熱溶融変形させて前記固定部材と前記被固定物を熱かしめ固定る請求項1記載のかしめ装置。
【請求項10】
前記押圧部は、前記凸部の天面(5)に当接可能な加圧面(15)と、前記加圧面の外輪部に形成される環状凸部(16)とを有し、
前記環状凸部の内壁に、熱かしめ後の抜けを良くする環状テーパ内壁面(14)を有する請求項記載のかしめ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かしめ装置、及びかしめ固定による成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属の板を打ち抜いて加工するタレットパンチプレスが知られている。
特許文献1に開示されるパンチングプレスは、ラムを動かしてパンチとダイを協働し、ワークにパンチング加工を行なう。このものは、パンチの頭部に凸部を形成し、この凸部に嵌入する穴を備えたレギュレータプレートを移動することで、パンチの移動ストロークを規制するパンチ位置調整装置を設けている。
このパンチ位置調整装置は、レギュレータプレートを介してパンチの移動量を規制し、ワークの板厚、材質に応じてパンチのフィードクリアランスを変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-192755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のパンチングプレスによると、レギュレータプレートを移動可能にしたパンチ位置調整装置を駆動し、パンチの移動ストロークを規制している。ワークの板厚、材質等に応じてパンチ位置調整装置を作動し、パンチの移動ストロークを規制することにより、フィードクリアランスを調節可能にしている。
【0005】
このパンチングプレスは、打ち抜き加工時のパンチ移動ストロークを規制する装置として、パンチの駆動装置と別にパンチ位置調整装置を設けるから、装置が複雑化し大型化する。またワークにパンチングによる打ち抜き加工を行うものである。
【0006】
本発明は、パンチングする点において特許文献1と共通するが、ワークに打ち抜き加工をするのではなく、ワークに相当する固定部材と被固定物とをかしめ固定するものであり、解決しようとする課題が特許文献1とは異なる。
【0007】
本発明の目的は、被固定物の穴に固定部材の凸部を挿通し、凸部を天面側から押し潰して形成するボス部で固定部材と被固定物を結合するに際し、ワークとパンチ先端との接近に伴うワークの損傷の発生を防止するかしめ装置及びかしめ固定による成形品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1発明に係るかしめ装置は、凸部(4)を有する樹脂からなる固定部材(2)と、前記凸部を挿入する穴(6)を有する被固定物(3)とをかしめ固定するかしめ装置であって、
フレーム(23)と、
前記フレームに対し、上下動可能なパンチホルダ(26)と、
前記パンチホルダに取り付けられ、先端に前記固定部材の前記凸部を押圧可能な押圧部(17)を有するパンチ(10)と、
前記パンチホルダと機械的に結合されるワーク上面ストッパ(40)とを備え、
前記ワーク上面ストッパは、前記パンチの先端に隙間を介して対向する内壁(50)前記被固定物の前記穴に前記固定部材の前記凸部を挿入するとき前記被固定物の前記凸部の突き出す側の上面(33)に当接可能な当接面であって前記押圧部が前記上面に接近するとき被固定物の損傷発生を防止する当接面(48)を有し、
前記ワーク上面ストッパの前記当接面は、前記押圧部の先端が前記被固定物の前記上面に接近するとき前記被固定物にバリ等の損傷を発生させない程度に前記被固定物の前記上面と同等の水準又は前記上面から離間している水準を保持する
【0009】
本発明の第2の発明に係る成形品の製造方法は、かしめ固定による成形品の製造方法であって、固定部材(2)の凸部(4)に被固定物(3)の穴(6)を挿入したワーク(1)を搬入するステップと、前記固定部材の前記凸部の天面(5)に、中実円筒状のパンチ(10)の押圧部(17)を当接し加圧を開始するステップと、加圧開始後、前記パンチの前記押圧部がワーク上面に当接する前に前記押圧部のワークへの食い込みを規制するように、ワーク上面ストッパ(40)がワーク上面(33)に当接するステップと、当接後にワークに対し前記押圧部を加圧する動作を解除するステップと、ワークに対し前記パンチ及び前記ワーク上面ストッパを離間する動作に移行するステップとを含む。
【0010】
本発明の第3発明に係る成形品の製造方法は、熱かしめ固定による成形品の製造方法であって、固定部材(2)の凸部(4)に被固定物(3)の穴(6)を挿入したワーク(1)を搬入するステップと、前記固定部材の前記凸部の天面に、加熱された中実円筒状のパンチ(10)の押圧部(17)を当接し加圧を開始するステップと、加圧開始後、前記パンチの前記押圧部がワーク上面に当接する前に前記押圧部のワークへの食い込みを規制するように、ワーク上面ストッパ(40)がワーク上面(33)に当接するステップと、当接後に熱かしめ動作を終了するステップと、終了後、ワークに対し前記押圧部を加圧する動作を解除するステップと、ワークに対し前記パンチ及び前記ワーク上面ストッパを離間する動作に移行するステップとを含む。
【0011】
本発明の第1の発明に係るかしめ装置によると、かしめ開始後にパンチの先端部が下降し、凸部の天面が押圧されるが、このとき、パンチホルダと機械的に結合されるワーク上面ストッパは、当接面がワークの被固定物のワーク上面に当接する。
これにより、かしめ装置の稼働時、パンチの先端部がワークに対して接近するとき、ワーク上面に対しパンチ先端の押圧部先端が接触する前に、パンチホルダと機械的に結合されたワーク上面ストッパの当接面(下面)がワークの上面に当接する。
したがって、かしめに要するストローク量だけパンチを下降することができる。ワークやパレットの寸法の不均一などの影響を受けることなしに、パンチがワークに食い込むことはない。
【0012】
かしめ装置に対するワーク上面の高さが不均一であっても、パンチの先端部の下降端の位置はワーク上面に対し一定となる。これにより、かしめ固定時のバリ発生等の損傷の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第一実施形態に係るかしめ装置の正面図。
図2】本発明の第一実施形態に係るかしめ装置のパンチの先端部の拡大断面図。
図3】本発明の第一実施形態に係るかしめ装置のワーク上面ストッパの拡大断面図。
図4】本発明の第一実施形態に係るかしめ装置の要部拡大模式的断面図。
図5】本発明の第一実施形態のワーク上面ストッパの斜視図。
図6】本発明の第一実施形態に係るかしめ装置の要部の作動を示すもので、(A)は押圧前の模式的断面図、(B)は押圧後の模式的断面図。
図7】本発明の第一実施形態の作動の工程を示す模式的説明図。
図8図7(B)のVIII部分の拡大模式的説明図。
図9図7(C)のIX部分の拡大模式的説明図。
図10】比較形態に係るかしめ装置のバリ発生を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の複数の実施形態によるかしめ装置及び成形品の製造方法を図面に基づき説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0015】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態のかしめ装置及び成形品の製造方法について図1から図9に基づいて説明する。
【0016】
本実施形態のかしめ装置は、熱かしめ固定により成形品を製造する熱かしめ装置である。この熱かしめ装置は、電熱式パンチを用いた装置である。
【0017】
図1に示すように、熱かしめ装置20は、ベース21に取り付けられる駆動部22よりフレーム23が上下に移動可能になっている。このフレーム23の側面に形成されるガイドレール24に対して相対移動可能にリニアガイド25が設けられ、このリニアガイド25にパンチフォルダ26が固定されている。
【0018】
パンチフォルダ26は、フレーム23に対し圧縮コイルスプリング31により図1に示す下方向に付勢され、ストッパ32により下方向への移動が規制されている。
中実円筒状のパンチ10は、パンチホルダ26に固定される。パンチ10の先端部12は、図6(A)に示すように、ワーク1を熱溶着により固定部材2と被固定物3を熱かしめ固定する。
【0019】
図1にはワークを図示しないが、パンチホルダ26は、パンチ10を固定する箇所をもつホルダ本体261と、ホルダ本体261の別の箇所から下方にパンチ10の軸方向に沿ってパンチ10の近傍で下方に延びるパンチホルダ延長部27とを形成している。
【0020】
パンチホルダ延長部27は、パンチ10の先端部12がワークを加圧する方向に延びて形成されている。パンチホルダ延長部27の下端にワーク上面ストッパ40の一端41が固定されている。
【0021】
パンチ10の先端12は、図2に示すように、外壁が先細状の環状テーパ面13、内壁が先に向けて拡がる環状テーパ面14が形成されている。パンチ10の先端12の底面は凹状の曲面15を有する。このパンチ10の曲面15は、固定部材1の凸部3の天面を押圧可能である。パンチ10の先端12に形成される押圧部17は、パンチ10の先端12に環状凸部16を形成する。環状凸部16は、外壁の環状テーパ面13と内壁の環状テーパ面14により形成されている。
【0022】
ワーク上面ストッパ40は、一端41が、パンチホルダ延長部27の下端に接合され、他端42が、図5に示すように、切欠部43を有する。この切欠部43で形成される空間に、図1及び図4に示すように、図2に示すパンチ10の先端部12が位置する。
ワーク上面ストッパ40は、パンチ10の先端部12の一部に隙間を介して対向する内壁50を有する。
【0023】
内壁50は、パンチ10の先端部12の外壁の一部に隙間を介して対面し、図3及び図4に示すように、切欠部43を形成し、大円弧面状の大径部44、斜面部45、小円弧面状の小径部46、径内方向突出部47を有する。
当接部47は、径内方向突出部471を有し、下面は当接面48を形成する。内壁50は、パンチ10の先端部12の外壁に隙間を介して対向する。
【0024】
当接部47の外面は当接面48を形成している。当接面48は、被固定物3の凸部4の突き出す側の上面33に当接可能に可能になっている。これにより、かしめ装置の稼働時、パンチ10が下降し、ワークに対して接近するとき、パンチ先端の位置水準と被固定物の上面位置水準との差異(変位)ついてパンチ先端位置と被固定物の上面位置との離間距離を規制することとした。
【0025】
切欠部43は薄肉部49を形成している。薄肉部49は、ワークをもつ成形品が複雑形状である場合、複雑形状部の隙間あるいは小空間を利用して、その空間に入り込むことができる。
【0026】
ワーク上面ストッパ40の切欠部43は、パンチ10の先端部12の挿入を許容する空間と、被固定物3との干渉を回避する空間を形成する。
【0027】
これにより、ワーク側の被固定物3の突起などの特定径状部7に干渉することなしに、パンチ10の先端部12を被固定物3に接近することができる。したがって、熱かしめ固定可能なワーク形状の許容範囲を広げられる。
【0028】
図示しない制御装置としてのPLC(プログラマブルロジックコントローラ)は、パンチ10への通電を制御し、パンチ10の押圧部17の温度制御を行う。あらかじめ定められた手順に従ってトランスを経由しパンチ10への通電量を制御し、パンチ10を加熱する。
【0029】
次に、作用について説明する。
結合する対象となるワーク1は、熱可塑性樹脂からなる固定部材2と熱可塑性樹脂からなる被固定物3とからなる。固定部材2は、外面に凸部4を有し、被固定物3はこの凸部4を嵌合する穴6を有する。ワーク1は、被固定物の穴に固定部材の凸部を挿入した状態にある。この状態のワークは、成形前の成形品70に相当する。
【0030】
図6(A)は、熱かしめ装置20のパンチ10の先端が固定部材2の凸部3の天面5に当接した状態を示す。
図6(B)は、図6(A)に示す状態から、パンチ10の先端の押圧部11により押圧される凸部4の突出部が熱溶融変形し、ボス部8となった状態を示す。この状態で、固定部材2と被固定物3とがかしめ結合された状態を示す。この状態のワークは、成形後の成形品に相当する。
(作動について)
【0031】
次に、本実施形態の熱かしめ装置の作動について、図6図7図8図9に基づいて説明する。
【0032】
ワークは、被固定物3の凸部4が固定部材2の穴6に挿入された状態で、熱かしめ装置20の下方に搬入される。
【0033】
複数個の凸部4を有するワークに相当する成形前の成形品70は、図7(A)に示すように、パレット80に載置され、熱かしめ装置20の下方に搬入される。
【0034】
熱かしめ装置20は、図7(A)に示すように、かしめ動作開始前、パンチ10の先端部12は、上空の初期位置にある。かしめ動作開始前、パンチ10の下方に、成形前の成形品70を載せたパレット80が搬入される。
【0035】
次に、駆動部22の駆動によりフレーム23が下降し、図7(A)に示すパンチ10は、図7(B)に示す位置に下降する。
熱かしめ装置20のパンチ10に通電し、加熱したパンチ10を矢印方向に図7に示す距離aだけ下降し、図6(A)に示すように、パンチ10の先端12の押圧部17の加圧面15を被固定物5の凸部4の天面5に接し、押圧を開始する。
【0036】
押圧開始直後に付勢手段に相当する図1に示す圧縮コイルスプリング31が収縮して撓み、その後にパンチ10の先端部12はさらに下降し、凸部の天面5から熱溶融変形し、図6(B)に示す溶着ボス部8が形成される。
【0037】
このとき、パンチホルダ26のホルダ本体261と機械的に結合されるワーク上面ストッパ40は、当接面48が、ワーク1の被固定物3のワーク上面33に当接する。これにより、熱かしめ装置20の稼働時、パンチ10の先端12がワークに対して接近するとき、ワーク上面33に対しパンチ先端の押圧部先端が接触する前に、パンチホルダと機械的に結合されたワーク上面ストッパ40の当接面48(下面)がワークの上面33に当接する。
したがって、かしめに要するストローク量だけパンチ10を下降することができる。
【0038】
かしめ部分のワーク上面33とフレーム23の上端との距離を、図7(A) (B)(C)に表示したように、かしめ動作開始前L1、パンチ下降後押圧開始前L2、パンチ下降後押圧終了後L3とすると、関係式は次のとおりである。

L2<L3<L1
【0039】
図7(C)に示すように、パンチ10の先端の位置水準と被固定物3の上面位置水準との差異(変位)ついて、パンチ先端位置と被固定物の上面位置との離間距離を規制することとした。
【0040】
これにより、熱かしめ装置の下方に成形前の成形品70が搬入されたとき、熱かしめ装置に対するワーク上面の高さが不均一であっても、パンチ10の先端部12の下降端の位置はワーク上面33に対し一定となる。これにより、後述する比較形態との対比で説明するように、熱かしめ固定時のバリ発生を防止することができる。
【0041】
本実施形態は、熱可塑性樹脂成形品(樹脂基材)へ被固定物を固定する際、熱可塑性樹脂成形品の一部に溶着ボスというかしめ用の凸部を形成しておき、この溶着ボスを被固定物側に形成した固定孔内に通してその先端を固定孔内から突き出し、この突き出した凸部の天面にパンチ先端の押圧部を押し当て、パンチ先端の熱で凸部の先端天面側を熱溶融変形し、凸部を押し潰すことにより、熱可塑性樹脂成形品に被固定物を熱かしめする。
【0042】
本発明の適用例としては、樹脂ケースのボスかしめ、プリント基板のピンかしめ、レンズの樹脂鏡枠かしめ、精密成型品と部品の組込などに適用することができる。
【0043】
(比較形態との対比)
本実施形態と比較形態とを対比して説明する。
図10に示す比較形態に係る熱かしめ装置は、ワーク表面ストッパを有しない点が上記の実施形態と異なる。
【0044】
比較形態及び本実施形態のいずれも、ワークをパレットに載せて熱かしめ装置に搬入した後、上方からパンチを下降し、加熱されたパンチの加圧面65をワーク1の凸部4に押圧し、凸部4を熱溶融変形し、固定部材と被固定物とをかしめ固定する。
【0045】
しかし、比較形態に係る熱かしめ装置によると、パンチ60の先端が下降するに従い、パンチ先端の環状凸部66が被固定物の上面に食い込み、図10に示す食い込み量δが生じ、成形品としての被固定物3の上面にバリ等の損傷が発生する。
【0046】
バリの発生の一つの要因は、熱かしめ装置の下方に搬入されるワーク1の高さ位置(被固定物の上面位置)はワーク間で不均一であることである。ワークの被固定物の上面位置水準については、ワーク間で均一(一様)ではない。
【0047】
これに対し、本実施形態では、このバリ発生を防止するため、熱かしめ装置の稼働時におけるパンチ先端の下端の移動量を規制した。
【0048】
本実施形態では、熱かしめ固定時にパンチがワークに向かって接近する方向に移動(下降)するとき、ワークの上面(被固定物)の上面に対しパンチ先端の押圧部先端が接触する前に、ワーク上面ストッパの下面がワークの上面に当接する。
【0049】
したがって、パンチが上下動するに際し、ワーク上面ストッパ下面の水準とパンチ先端位置との水準の差分が一定となっているから、ワーク上面に対するパンチ下降時のパンチ先端位置とワーク上面位置との間に一定の離間距離が保持される。これにより、パレットに載せられたワーク高さの不均一があっても、パンチの先端が被固定物の上面に食い込む前にパンチの先端が被固定物の上面に食い込むのを防止する。
したがって、ワーク上面でバリ発生等の損傷の発生を防止することができる。
(本発明の実施態様について)
【0050】
本発明の第1発明に係るかしめ装置の実施態様は、次のようである。
前記ワーク上面ストッパの前記当接面は、前記押圧部の先端が被固定物の前記凸部を形成する側の面に近接するとき、被固定物にバリ等の損傷を発生させない程度に前記押圧部が被固定物の上面(33)と同等の水準又は前記上面から離間している水準を保持する当接面である。
これにより、パンチの先端がワークに食い込むことを防止し、バリ発生を抑制し、成形品の品質を向上することができる。
【0051】
前記押圧部は、前記凸部の天面(5)に当接可能な加圧面(15)と、前記加圧面の外輪部に形成される環状凸部(16)とを有する。
これにより、凸部を塑性変形し、ボス部を形成して成形品のかしめ固定を確実なものにすることができる。
【0052】
かしめ装置は、前記フレームに対し前記パンチホルダを一方向に付勢する付勢手段(31)を備えるようにしてもよい。
これにより、パンチの押圧時の衝撃力を吸収し、凸部の変形によるボス部を適切に形成し、かしめ固定された品質の良好な成形品を製造することができる。
【0053】
かしめ装置は、前記フレームに対し前記パンチホルダを相対移動可能に案内するリニアガイド(25)を備えるようにしてもよい。前記の付勢手段による撓みと相まってパンチの押圧時の衝撃力を吸収し、凸部の変形によるボス部を適切に形成し、かしめ固定された品質の良好な成形品を製造することができる。
【0054】
かしめ装置は、ベース(21)と、前記フレームを前記ベースに対し上下動する駆動部(22)とを備える。フレームの上下動に伴いパンチの上下動を連動し、かしめ装置を駆動することができる。
【0055】
前記ワーク上面ストッパは、前記被固定物に干渉しないように、前記パンチの前記押圧部の近傍に空間を確保する薄肉部(49)を有するようにしてもよい。
これにより、成形前の成形品は、複雑な形状を有していても、凸部の周囲に小空間があれば、その空間に薄肉部を挿入できれば、ワーク上面ストッパはかしめ稼働時のストッパ機能を果たすから、複雑形状の成形前の成形品に対応可能な利便性の高いかしめ装置となるという効果がある。
【0056】
前記ワーク上面ストッパは、前記被固定物に干渉しないように、被固定の前記上面から突き出す凸起(7)の存在を許容する切欠部(43)を有するようにしてもよい。
上記同様に、成形前の成形品は、複雑な形状を有していても、凸部の周囲に小空間があれば、その空間に薄肉部を挿入できれば、ワーク上面ストッパはかしめ稼働時のストッパ機能を果たすから、複雑形状の成形前の成形品に対応可能な利便性の高いかしめ装置となるという効果がある。
【0057】
かしめ装置は、前記パンチの先端を加熱するために前記パンチに通電可能であって、前記押圧部が前記凸部を押圧したとき前記凸部を熱溶融変形可能である熱かしめ固定によるかしめ装置に適用することができる。
【0058】
熱かしめ装置の場合、前記環状凸部の内壁に、熱かしめ後の抜けを良くする環状テーパ内壁面(14)を有するようにすることもできる。これにより、成形後の成形品の品質を向上することができる。
(他の実施形態)
【0059】
本発明は、熱かしめ固定による成形品の製造方法について説明したが、パンチを通電による加熱することなしに、押圧部の加圧により固定部材に被固定物をかしめ固定するかしめ装置にも適用することができる。
【0060】
本発明は、熱を付与しない常温式パンチによるかしめ装置に適用することができる。
上記実施形態では、電熱式パンチを用いた熱かしめ装置について説明したが、本発明は、熱かしめ装置の場合に電熱式以外の加熱方式のものであってもよい。
【0061】
本発明の上記実施形態の被固定物については、樹脂材料を用いたが、金属材料、無機材料その他の材料であってもよい。
上記実施形態に示したワーク上面ストッパは一実施形態を示したもので、本発明のワーク上面ストッパの形状はこれに限らないことはもちろんである。
【0062】
以上、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 ワーク、
2 固定部材、
3 被固定物、
4 凸部、
5 天面、
6 穴、
10 パンチ、
12 先端部、
15 曲面(加圧面)
16 環状凸部、
17 押圧部、
20 熱かしめ装置、
21 ベース、
22 駆動部、
23 フレーム、
25 リニアガイド、
27 パンチホルダ延長部、
31 圧縮コイルスプリング(付勢手段)、
33 ワーク上面、
40 ワーク上面ストッパ、
43 切欠部、
48 当接面、
49 薄肉部、
50 内壁、
70 成形品、
80 パレット。
図1
図2
図3
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図10