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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】濃度検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/409 20060101AFI20241112BHJP
   G01N 27/41 20060101ALI20241112BHJP
   G01N 27/419 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
G01N27/409 100
G01N27/41 325P
G01N27/419 327P
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022008049
(22)【出願日】2022-01-21
(65)【公開番号】P2023106981
(43)【公開日】2023-08-02
【審査請求日】2024-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】青木 充
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-040726(JP,A)
【文献】特開2018-112086(JP,A)
【文献】特開2000-292411(JP,A)
【文献】特開昭59-142449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/406 - 27/413
G01N 27/416 - 27/419
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定ガスに含まれる特定ガスの濃度を検出するガスセンサ(2)から、前記特定ガスの濃度に応じて値が変化する濃度検出信号を取得し、取得した前記濃度検出信号から高周波成分を抽出した高周波抽出信号を生成するように構成された高周波抽出部(31,S30)と、
前記ガスセンサから前記濃度検出信号を取得し、取得した前記濃度検出信号を、前記高周波抽出部が前記高周波抽出信号を生成するのに要する高周波抽出処理時間だけ遅延させた遅延信号を生成するように構成された遅延部(32,S20)と、
前記遅延部により生成された前記遅延信号から、前記高周波抽出部により生成された前記高周波抽出信号を減算するように構成された減算部(33,S40)と
を備える濃度検出装置(30,7)。
【請求項2】
請求項1に記載の濃度検出装置であって、更に、
前記減算部が前記遅延信号から前記高周波抽出信号を減算することによって生成した減算信号から低周波成分を抽出するように構成された低周波抽出部(36,S45)を備える濃度検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の濃度検出装置であって、更に、
前記高周波抽出部により生成された前記高周波抽出信号に基づいて、前記ガスセンサが備えるセンサ素子(3)の素子抵抗値を算出するように構成された素子抵抗算出部(35,S60)を備える濃度検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス濃度を検出する濃度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、直流電圧に交流電圧を重畳した印加電圧をガスセンサに印加し、このガスセンサから出力される濃度検出信号から高周波成分を除去した信号に基づいてガス濃度を検出し、濃度検出信号から低周波成分を除去した信号に基づいてガスセンサの素子抵抗値を検出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第4419190号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、排気ガス規制が厳しくなる中で、排気ガスセンサの搭載性を向上させるための排気ガスセンサの小型化への要求、および、排気ガスセンサのガス濃度検出精度の向上に対する要求が増加している。
【0005】
排気ガスに含まれる特定ガス(例えば、酸素)の濃度を検出するためには、ガスセンサのセンサ素子を所定の温度に維持する必要がある。このため、ガスセンサにヒータが内蔵され、ヒータへの通電量が制御される。ヒータ通電はデューティ比制御により行われるため、ヒータ通電をオンとオフとの間で切り替えるときに電気ノイズが生じ、ガス濃度検出精度が悪化する。また、車両環境に起因して発生する電磁波などのノイズによってもガス濃度検出精度が悪化する。
【0006】
本開示は、ノイズに起因したガス濃度検出精度の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、高周波抽出部(31,S30)と、遅延部(32,S20)と、減算部(33,S40)とを備える濃度検出装置(30,7)である。
高周波抽出部は、ガスセンサ(2)から、特定ガスの濃度に応じて値が変化する濃度検出信号を取得し、取得した濃度検出信号から高周波成分を抽出した高周波抽出信号を生成するように構成される。ガスセンサは、被測定ガスに含まれる特定ガスの濃度を検出する。
【0008】
遅延部は、ガスセンサから濃度検出信号を取得し、取得した濃度検出信号を、高周波抽出部が高周波抽出信号を生成するのに要する高周波抽出処理時間だけ遅延させた遅延信号を生成するように構成される。
【0009】
減算部は、遅延部により生成された遅延信号から、高周波抽出部により生成された高周波抽出信号を減算するように構成される。
このように構成された本開示の濃度検出装置は、濃度検出信号に重畳したノイズを低減することができ、ガス濃度検出精度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1,2実施形態のガスセンサ制御装置の構成を示す図である。
図2】第1実施形態の濃度電流検出回路の構成を示す図である。
図3】第1実施形態のノイズ除去方法を示すタイミングチャートである。
図4】第2実施形態の濃度電流検出回路の構成を示す図である。
図5】第2実施形態のノイズ除去方法を示すタイミングチャートである。
図6】第3,4実施形態のガスセンサ制御装置の構成を示す図である。
図7】第3実施形態の濃度電流検出処理を示すフローチャートである。
図8】第4実施形態の濃度電流検出処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
以下に本開示の第1実施形態を図面とともに説明する。
本実施形態のガスセンサ制御装置1は、車両に搭載され、図1に示すように、ガスセンサ2を制御する。
【0012】
ガスセンサ2は、センサ素子3と、ヒータ4とを備える。
センサ素子3は、車両の排気管に取り付けられ、車両のエンジンから排気管に排出された排気ガスに含まれる酸素の濃度を検出する。センサ素子3は、第1端子3aと第2端子3bとを備える。センサ素子3は、第1端子3aと第2端子3bとの間に所定の定電圧が印加されることによって、排気ガスの酸素濃度に応じた電流値を有する濃度検出電流を第2端子3bから出力する。
【0013】
ヒータ4は、排気ガスの酸素濃度を検出することが可能な状態になるようにセンサ素子3を加熱する。
ガスセンサ制御装置1は、センサ制御部5と、ヒータ制御部6と、マイクロコンピュータ7(以下、マイコン7)と、第1センサ端子8と、第2センサ端子9と、ヒータ端子10とを備える。
【0014】
センサ制御部5は、センサ制御回路11と、D/Aコンバータ12,13と、オペアンプ14,15と、シャント抵抗16と、A/Dコンバータ17とを備える。
センサ制御回路11は、特定用途向IC(すなわち、ASIC)で実現されている。ASICは、Application Specific ICの略である。センサ制御回路11は、濃度電流検出回路30を備える。
【0015】
D/Aコンバータ12は、センサ制御回路11から入力されるデジタル値に対応した電圧値を有するアナログ信号を生成して、オペアンプ14の非反転入力端子へ出力する。
D/Aコンバータ13は、センサ制御回路11から入力されるデジタル値に対応した電圧値を有するアナログ信号を生成して、オペアンプ15の非反転入力端子へ出力する。
【0016】
オペアンプ14の出力端子は、オペアンプ14の反転入力端子に接続されるとともに、第1センサ端子8に接続される。第1センサ端子8は、センサ素子3の第1端子3aに接続される。これにより、オペアンプ14は、センサ制御回路11が指示した第1電圧をセンサ素子3の第1端子3aへ出力するバッファとして機能する。
【0017】
オペアンプ15の出力端子は、オペアンプ15の反転入力端子に接続されるとともに、シャント抵抗16を介して第2センサ端子9に接続される。第2センサ端子9は、センサ素子3の第2端子3bに接続される。これにより、オペアンプ15は、センサ制御回路11が指示した第2電圧をセンサ素子3の第2端子3bへ出力するバッファとして機能する。
【0018】
A/Dコンバータ17は、シャント抵抗16の両端間の電圧をデジタル値に変換して濃度電流検出回路30へ出力する。
センサ制御回路11は、所定の測定周期Trで電圧値が振動する交流電圧が上記の所定の定電圧に重畳されるように、D/Aコンバータ12,13へ出力するデジタル値を変化させる。
【0019】
ヒータ制御部6は、マイコン7から入力されるセンサ素子温度データに基づいて、センサ素子3を所定温度に維持するために必要なデューティ比のPWM信号を、ヒータ端子10を介してヒータ4へ出力する。PWMは、Pulse Width Modulationの略である。
【0020】
マイコン7は、CPU21、ROM22およびRAM23等を備える。マイコン7の各種機能は、CPU21が非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、ROM22が、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。また、このプログラムの実行により、プログラムに対応する方法が実行される。なお、CPU21が実行する機能の一部または全部を、一つあるいは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。
【0021】
濃度電流検出回路30は、図2に示すように、デジタルハイパスフィルタ31と、遅延回路32と、減算器33と、電流値算出回路34と、素子抵抗算出回路35とを備える。
デジタルハイパスフィルタ31は、A/Dコンバータ17から入力されるデジタル信号から低周波成分を除去したデジタル信号を出力する。
【0022】
遅延回路32は、A/Dコンバータ17から入力されるデジタル信号を予め設定された遅延時間だけ遅延させて出力する。
減算器33は、遅延回路32から入力されるデジタル信号のデジタル値から、デジタルハイパスフィルタ31から入力されるデジタル信号のデジタル値を減算した値に対応するデジタル信号を出力する。
【0023】
電流値算出回路34は、減算器33から出力されるデジタル信号に基づいて、センサ素子3から出力される濃度検出電流の電流値を算出し、この電圧値を示すデジタル信号をマイコン7へ出力する。マイコン7は、電流値算出回路34から入力されるデジタル信号に基づいて、酸素濃度を算出する。
【0024】
素子抵抗算出回路35は、デジタルハイパスフィルタ31から出力されるデジタル信号に基づいて、センサ素子3の素子抵抗値を算出し、この素子抵抗値を示すデジタル信号をマイコン7へ出力する。マイコン7は、素子抵抗算出回路35から入力されるデジタル信号に基づいて、センサ素子3の温度を算出する。
【0025】
図3は、A/Dコンバータ17、デジタルハイパスフィルタ31、遅延回路32および減算器33から出力されるデジタル信号の時間変化を示すタイミングチャートである。
図3に示すように、A/Dコンバータ17から出力されるデジタル信号DS1は、濃度検出電流成分C1と、素子抵抗電流成分C2と、ヒータノイズ成分C3と、車両環境ノイズ成分C4とを含む。
【0026】
濃度検出電流成分C1は、濃度検出電流の電流値である。素子抵抗電流成分C2は、測定周期Trで振動する交流電圧に起因して発生する素子抵抗電流の電流値である。素子抵抗電流成分C2は、測定周期Trで増減を繰り返す。
【0027】
ヒータノイズ成分C3は、ヒータ4へ入力されるPWM信号におけるオンとオフとの切り替えに起因して発生するノイズの電流値である。車両環境ノイズ成分C4は、車両内の電磁波などに起因して発生するノイズの電流値である。
【0028】
デジタルハイパスフィルタ31から出力されるデジタル信号DS2は、デジタル信号DS1から低周波成分を除去した信号である。なお、第1実施形態では、素子抵抗電流成分C2の周波数は、デジタルハイパスフィルタ31が抽出することができる周波数範囲に含まれる。したがって、デジタル信号DS2は、素子抵抗電流成分C2と、ヒータノイズ成分C3と、車両環境ノイズ成分C4とを含む。デジタル信号DS2は、デジタルハイパスフィルタ31における処理に起因して、デジタル信号DS1の入力から遅延時間Td1だけ遅延して出力される。
【0029】
遅延回路32から出力されるデジタル信号DS3は、デジタル信号DS1を遅延時間Td1だけ遅延させた信号である。したがって、デジタル信号DS3は、濃度検出電流成分C1と、素子抵抗電流成分C2と、ヒータノイズ成分C3と、車両環境ノイズ成分C4とを含む。
【0030】
減算器33から出力されるデジタル信号DS4は、デジタル信号DS3からデジタル信号DS2を減算した信号である。したがって、デジタル信号DS4は、濃度検出電流成分C1のみを含む。デジタル信号DS4は、減算器33における処理に起因して、デジタル信号DS3の入力から遅延時間Td2だけ遅延して出力される。
【0031】
このように構成されたガスセンサ制御装置1の濃度電流検出回路30は、デジタルハイパスフィルタ31と、遅延回路32と、減算器33とを備える。
デジタルハイパスフィルタ31は、ガスセンサ2から、酸素の濃度に応じて値が変化する濃度検出信号(すなわち、A/Dコンバータ17から出力されるデジタル信号DS1)を取得し、取得した濃度検出信号から高周波成分を抽出した高周波抽出信号を生成するように構成される。ガスセンサ2は、排気ガスに含まれる酸素の濃度を検出する。
【0032】
遅延回路32は、ガスセンサ2から濃度検出信号を取得し、取得した濃度検出信号を、デジタルハイパスフィルタ31が高周波抽出信号を生成するのに要する遅延時間Td1だけ遅延させた遅延信号を生成するように構成される。
【0033】
減算器33は、遅延回路32により生成された遅延信号から、デジタルハイパスフィルタ31により生成された高周波抽出信号を減算するように構成される。
このような濃度電流検出回路30は、濃度検出信号に重畳したノイズを低減することができ、ガス濃度検出精度の低下を抑制することができる。
【0034】
また濃度電流検出回路30は、デジタルハイパスフィルタ31により生成された高周波抽出信号に基づいて、ガスセンサ2が備えるセンサ素子3の素子抵抗値を算出するように構成された素子抵抗算出回路35を備える。これにより、濃度電流検出回路30は、センサ素子3の素子抵抗値を検出することができる。
【0035】
以上説明した実施形態において、濃度電流検出回路30は濃度検出装置に相当し、デジタルハイパスフィルタ31は高周波抽出部に相当し、遅延回路32は遅延部に相当し、減算器33は減算部に相当する。
【0036】
また、排気ガスは被測定ガスに相当し、酸素は特定ガスに相当し、デジタル信号DS1は濃度検出信号に相当し、遅延時間Td1は高周波抽出処理時間に相当し、素子抵抗算出回路35は素子抵抗算出部に相当する。
[第2実施形態]
以下に本開示の第2実施形態を図面とともに説明する。なお第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分を説明する。共通する構成については同一の符号を付す。
【0037】
第2実施形態のガスセンサ制御装置1は、濃度電流検出回路30の構成が変更された点が第1実施形態と異なる。
第2実施形態の濃度電流検出回路30は、図4に示すように、素子抵抗算出回路35が省略された点と、デジタルローパスフィルタ36が追加された点とが第1実施形態と異なる。
【0038】
デジタルローパスフィルタ36は、減算器33から入力されるデジタル信号から高周波成分を除去したデジタル信号を電流値算出回路34へ出力する。
図5は、A/Dコンバータ17、デジタルハイパスフィルタ31、遅延回路32、減算器33およびデジタルローパスフィルタ36から出力されるデジタル信号の時間変化を示すタイミングチャートである。
【0039】
図5に示すように、A/Dコンバータ17から出力されるデジタル信号DS11は、濃度検出電流成分C1と、素子抵抗電流成分C2と、ヒータノイズ成分C3と、車両環境ノイズ成分C4とを含む。
【0040】
デジタルハイパスフィルタ31から出力されるデジタル信号DS12は、デジタル信号DS11から低周波成分を除去した信号である。なお、第2実施形態では、素子抵抗電流成分C2の周波数は、デジタルハイパスフィルタ31が抽出することができる周波数範囲に含まれない。したがって、デジタル信号DS12は、ヒータノイズ成分C3と、車両環境ノイズ成分C4とを含む。デジタル信号DS12は、デジタルハイパスフィルタ31における処理に起因して、デジタル信号DS11の入力から遅延時間Td1だけ遅延して出力される。
【0041】
遅延回路32から出力されるデジタル信号DS13は、デジタル信号DS11を遅延時間Td1だけ遅延させた信号である。したがって、デジタル信号DS13は、濃度検出電流成分C1と、素子抵抗電流成分C2と、ヒータノイズ成分C3と、車両環境ノイズ成分C4とを含む。
【0042】
減算器33から出力されるデジタル信号DS14は、デジタル信号DS13からデジタル信号DS12を減算した信号である。したがって、デジタル信号DS14は、濃度検出電流成分C1と、素子抵抗電流成分C2とを含む。デジタル信号DS14は、減算器33における処理に起因して、デジタル信号DS13の入力から遅延時間Td2だけ遅延して出力される。
【0043】
デジタルローパスフィルタ36から出力されるデジタル信号DS15は、デジタル信号DS14から高周波成分を除去した信号である。したがって、デジタル信号DS14は、濃度検出電流成分C1のみを含む。デジタル信号DS15は、デジタルローパスフィルタ36における処理に起因して、デジタル信号DS14の入力から遅延時間Td3だけ遅延して出力される。
【0044】
このように構成されたガスセンサ制御装置1の濃度電流検出回路30は、デジタルハイパスフィルタ31、遅延回路32および減算器33に加えて、さらに、デジタルローパスフィルタ36を備える。デジタルローパスフィルタ36は、減算器33が遅延信号から高周波抽出信号を減算することによって生成した減算信号から低周波成分を抽出するように構成される。
【0045】
このような濃度電流検出回路30は、デジタルハイパスフィルタ31が抽出することができる周波数範囲に素子抵抗電流成分C2の周波数が含まれない場合において、濃度検出信号に重畳したノイズを低減することができ、ガス濃度検出精度の低下を抑制することができる。
【0046】
以上説明した実施形態において、デジタルローパスフィルタ36は低周波抽出部に相当し、デジタル信号DS11は濃度検出信号に相当する。
[第3実施形態]
以下に本開示の第3実施形態を図面とともに説明する。なお第3実施形態では、第1実施形態と異なる部分を説明する。共通する構成については同一の符号を付す。
【0047】
第3実施形態のガスセンサ制御装置1は、図6に示すように、濃度電流検出回路30が省略された点と、A/Dコンバータ17がデジタル信号をマイコン7へ出力する点と、マイコン7が濃度電流検出処理を実行する点とが第1実施形態と異なる。
【0048】
次に、マイコン7が実行する濃度電流検出処理の手順を説明する。濃度電流検出処理は、マイコン7の動作中において、予め設定された信号取得周期が経過する毎に実行される処理である。
【0049】
濃度電流検出処理が実行されると、マイコン7のCPU21は、図7に示すように、まずS10にて、A/Dコンバータ17から入力されたデジタル信号のうち、直近の信号取得周期分のデジタル信号を取得する。
【0050】
そしてCPU21は、S20にて、S10で取得した信号取得周期分のデジタル信号を遅延時間Td1だけ遅延させる。さらにCPU21は、S30にて、S10で取得した信号取得周期分のデジタル信号から低周波成分を除去する。
【0051】
次にCPU21は、S40にて、S20の処理で得られたデジタル信号から、S30の処理で得られたデジタル信号を減算する。
そしてCPU21は、S50にて、S40の処理で得られたデジタル信号に基づいて、濃度検出電流値を算出する。さらにCPU21は、S60にて、S30の処理で得られたデジタル信号に基づいて、素子抵抗値を算出し、濃度電流検出処理を終了する。
【0052】
このように構成されたガスセンサ制御装置1のマイコン7は、ガスセンサ2から、酸素の濃度に応じて値が変化する濃度検出信号(すなわち、A/Dコンバータ17から出力されるデジタル信号DS1)を取得し、取得した濃度検出信号から高周波成分を抽出した高周波抽出信号を生成するように構成される。
【0053】
マイコン7は、ガスセンサ2から濃度検出信号を取得し、取得した濃度検出信号を、高周波抽出信号を生成するのに要する遅延時間Td1だけ遅延させた遅延信号を生成するように構成される。
【0054】
マイコン7は、生成された遅延信号から、生成された高周波抽出信号を減算するように構成される。
このようなマイコン7は、濃度検出信号に重畳したノイズを低減することができ、ガス濃度検出精度の低下を抑制することができる。
【0055】
またマイコン7は、生成された高周波抽出信号に基づいて、ガスセンサ2が備えるセンサ素子3の素子抵抗値を算出するように構成される。これにより、マイコン7は、センサ素子3の素子抵抗値を検出することができる。
【0056】
以上説明した実施形態において、マイコン7は濃度検出装置に相当し、S30は高周波抽出部としての処理に相当し、S20は遅延部としての処理に相当し、S40は減算部としての処理に相当し、S60は素子抵抗算出部としての処理に相当する。
【0057】
[第4実施形態]
以下に本開示の第4実施形態を図面とともに説明する。なお第4実施形態では、第3実施形態と異なる部分を説明する。共通する構成については同一の符号を付す。
【0058】
第4実施形態のガスセンサ制御装置1は、濃度電流検出処理が変更された点が第3実施形態と異なる。
第4実施形態の濃度電流検出処理は、S45の処理が追加された点と、S50の代わりにS55の処理を実行する点と、S60の処理が省略された点とが第3実施形態と異なる。
【0059】
すなわち、図8に示すように、S40の処理が終了すると、CPU21は、S45にて、S40の処理で得られたデジタル信号から高周波成分を除去する。そしてCPU21は、S55にて、S45の処理で得られたデジタル信号に基づいて、濃度検出電流値を算出し、濃度電流検出処理を終了する。
【0060】
このように構成されたガスセンサ制御装置1のマイコン7は、更に、遅延信号から高周波抽出信号を減算することによって生成した減算信号から低周波成分を抽出するように構成される。
【0061】
このようなマイコン7は、S30の処理で抽出することができる周波数範囲に素子抵抗電流成分C2の周波数が含まれない場合において、濃度検出信号に重畳したノイズを低減することができ、ガス濃度検出精度の低下を抑制することができる。
【0062】
以上説明した実施形態において、S45は低周波抽出部としての処理に相当する。
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。
【0063】
本開示に記載のガスセンサ制御装置1およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載のガスセンサ制御装置1およびその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載のガスセンサ制御装置1およびその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されてもよい。ガスセンサ制御装置1に含まれる各部の機能を実現する手法には、必ずしもソフトウェアが含まれている必要はなく、その全部の機能が、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0064】
上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加または置換してもよい。
【0065】
上述したガスセンサ制御装置1の他、当該ガスセンサ制御装置1を構成要素とするシステム、当該ガスセンサ制御装置1としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実体的記録媒体、濃度検出方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0066】
2…ガスセンサ、3…センサ素子、4…ヒータ、7…マイコン、30…濃度電流検出回路、31…デジタルハイパスフィルタ、32…遅延回路、33…減算器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8