(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 29/02 20060101AFI20241112BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20241112BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20241112BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20241112BHJP
B60W 10/02 20060101ALI20241112BHJP
B60W 20/00 20160101ALI20241112BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
F02D29/02 321C
B60L50/16 ZHV
B60L15/20 K
B60K6/48
B60W10/02 900
B60W20/00
B60W10/06 900
(21)【出願番号】P 2022008717
(22)【出願日】2022-01-24
【審査請求日】2023-11-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄大
(72)【発明者】
【氏名】上浦 響
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-182580(JP,A)
【文献】特開2021-41807(JP,A)
【文献】特開昭58-18535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/02
F01P 7/16
B60W 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸を有する内燃機関と、
前記クランク軸から駆動輪までの駆動力の伝達経路の一部である出力軸を有するモータジェネレータと、
前記クランク軸及び前記出力軸の間に介在しているクラッチと、
前記クランク軸に機械的に連結されており、前記クランク軸の回転に連動して冷却水を圧送するウォーターポンプと、
前記内燃機関の冷却水温を検出する水温センサと、を備え、
前記クラッチは、前記クランク軸及び前記出力軸の間でトルク伝達が可能な係合状態と、前記クランク軸及び前記出力軸の間でトルク伝達が不可能な開放状態と、に切り替え可能である車両に適用される制御装置であって、
予め定められた条件が満たされたときに、前記クラッチを開放状態にし、且つ前記内燃機関の駆動を停止する機関停止処理を実行可能であり、
前記条件は、前記水温センサが検出した冷却水温が、100度以上の温度として定められた第1温度以下であることを含
み、
前記条件が満たされたときに、前記水温センサが検出した冷却水温が、前記第1温度よりも低い温度として定められた第2温度以上である場合には、前記クラッチを開放状態にして前記内燃機関を駆動させる冷却水流通処理を実行した後に、前記機関停止処理を実行する
車両の制御装置。
【請求項2】
前記冷却水流通処理を、前記条件が満たされたときに前記水温センサが検出した冷却水温が高いほど、長い時間実行する
請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記冷却水流通処理中は、前記内燃機関の機関回転数を、当該内燃機関が自立して駆動を継続可能な最小限のアイドル回転数に維持する
請求項1又は2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記第1温度と前記第2温度との差は、5度以下である
請求項1~3のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の車両は、内燃機関と、モータジェネレータと、クラッチと、を備えている。内燃機関及びモータジェネレータは、車両の駆動源である。内燃機関は、クランク軸を備えている。モータジェネレータは、出力軸を備えている。クラッチは、内燃機関のクランク軸とモータジェネレータの出力軸との間に介在している。また、クラッチは、係合状態・開放状態を切り替え可能である。クラッチが係合状態の場合、内燃機関のトルクは、モータジェネレータの出力軸に伝達可能である。一方で、クラッチが開放状態の場合、内燃機関のトルクは、モータジェネレータの出力軸に伝達されない。
【0003】
また、特許文献1に記載の車両は、制御装置を備えている。制御装置は、内燃機関を駆動源として走行するエンジン走行モードと、モータジェネレータのみを駆動源として走行するEV走行モードと、を選択可能である。制御装置は、エンジン走行モードを選択する場合、クラッチを係合状態にする。また、制御装置は、EV走行モードを選択する場合、クラッチを開放状態にして、内燃機関の駆動を停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のような車両に対して、機械式のウォーターポンプが設けられることがある。当該ウォーターポンプは、クランク軸に連結している。そのため、ウォーターポンプは、クランク軸の回転に連動して駆動する。ウォーターポンプが駆動すると、内燃機関のウォータジャケット内を冷却水が流通する。
【0006】
特許文献1に記載のような車両がEV走行モードで走行している場合、内燃機関の駆動が停止されている。それに伴い、機械式のウォーターポンプも駆動が停止されるので、ウォータジャケット内の冷却水の流通も止まる。しかしながら、内燃機関の駆動を停止した直後は、内燃機関の温度が依然として高い場合がある。この場合、ウォータジャケット内を冷却水が流通していないにも拘わらず、冷却水が内燃機関から受熱することになる。そのため、冷却水が過熱されて沸騰するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、クランク軸を有する内燃機関と、前記クランク軸から駆動輪までの駆動力の伝達経路の一部である出力軸を有するモータジェネレータと、前記クランク軸及び前記出力軸の間に介在しているクラッチと、前記クランク軸に機械的に連結されており、前記クランク軸の回転に連動して冷却水を圧送するウォーターポンプと、前記内燃機関の冷却水温を検出する水温センサと、を備え、前記クラッチは、前記クランク軸及び前記出力軸の間でトルク伝達が可能な係合状態と、前記クランク軸及び前記出力軸の間でトルク伝達が不可能な開放状態と、に切り替え可能である車両に適用される制御装置であって、予め定められた条件が満たされたときに、前記クラッチを開放状態にし、且つ前記内燃機関の駆動を停止する機関停止処理を実行可能であり、前記条件は、前記水温センサが検出した冷却水温が、100度以上の温度として定められた第1温度以下であることを含む車両の制御装置である。
【0008】
上記構成によれば、少なくとも内燃機関の冷却水温が第1温度以下であることを条件に、機関停止処理が実行される。そのため、機関停止処理に伴ってウォーターポンプの駆動が停止しても、内燃機関のウォータジャケット内の冷却水が沸騰する可能性は低い。
【0009】
上記構成において、前記条件が満たされたときに、前記水温センサが検出した冷却水温が、前記第1温度よりも低い温度として定められた第2温度以上である場合には、前記クラッチを開放状態にして前記内燃機関を駆動させる冷却水流通処理を実行した後に、前記機関停止処理を実行する車両の制御装置としてもよい。
【0010】
上記構成によれば、内燃機関の冷却水温が第1温度よりも低いものの第2温度よりも高い場合には、機関停止処理の前に内燃機関が駆動される。このとき、ウォーターポンプも駆動されるので、内燃機関のウォータジャケット内の冷却水が流通し、冷えた冷却水が新たにウォータジャケット内に供給される。したがって、その後、機関停止処理が実行されても、内燃機関のウォータジャケット内の冷却水が沸騰する可能性は低い。
【0011】
上記構成において、前記冷却水流通処理を、前記条件が満たされたときに前記水温センサが検出した冷却水温が高いほど、長い時間実行する車両の制御装置としてもよい。
上記構成によれば、機関停止処理の条件が満たされたときの冷却水温が高いほど、冷却水流通処理において多くの冷却水が流通する。したがって、機関停止処理が実行される前に、内燃機関のウォータジャケット内の冷却水、ひいては内燃機関を、効果的に冷却できる。
【0012】
上記構成において、前記冷却水流通処理中は、前記内燃機関の機関回転数を、当該内燃機関が自立して駆動を継続可能な最小限のアイドル回転数に維持する車両の制御装置としてもよい。
【0013】
上記構成によれば、駆動輪のトルクに寄与しない冷却水流通処理中の内燃機関の機関回転数を最小限にできる。したがって、冷却水流通処理に伴う燃費の悪化を最小限にできる。
【0014】
上記構成において、前記第1温度と前記第2温度との差は、5度以下である車両の制御装置としてもよい。
上記構成によれば、燃費の悪化の原因となり得る冷却水流通処理の実行は、機関停止処理の条件が満たされたときの冷却水温が、第1温度に近い相当に高い場合に限られる。すなわち、冷却水流通処理の必要性が高い場合にのみ、当該冷却水流通処理を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】
図2は、車両の制御装置が実行する機関制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、車両の制御装置の一実施形態を、図面を参照して説明する。
<車両の駆動系の構成>
図1に示すように、車両500は、内燃機関10と、変速ユニット20と、左右の駆動輪30と、デファレンシャル40と、を備えている。内燃機関10は、走行用の駆動源である。内燃機関10は、出力軸としてクランク軸11を有している。
【0017】
変速ユニット20は、内燃機関10から各駆動輪30までの動力伝達経路上にある。変速ユニット20は、モータジェネレータ21、クラッチ22、トルクコンバータ23、自動変速機24、オイルポンプ25、及び油圧部26を備えている。
【0018】
モータジェネレータ21は、いわゆる三相交流電動機である。モータジェネレータ21は、出力軸21Aを有する。出力軸21Aは、クラッチ22を介してクランク軸11に連結している。すなわち、出力軸21Aは、クランク軸11から駆動輪30までの駆動力の伝達経路の一部である。
【0019】
モータジェネレータ21は、車両500が有するインバータ21Bを介して、車両500が有するバッテリ21Cに接続している。モータジェネレータ21は、電動モータ及び発電機として機能する。モータジェネレータ21は、電動モータとして機能しているときには、バッテリ21Cからの電力でクランク軸11にトルクを付与可能である。また、モータジェネレータ21が発電機として機能しているときには、バッテリ21Cに電力を供給する。
【0020】
クラッチ22は、クランク軸11及びモータジェネレータ21の出力軸21Aの間に介在している。クラッチ22は、油圧によって係合状態・開放状態が切り替え可能である。クラッチ22が係合状態の場合、クランク軸11及び出力軸21Aの間でトルク伝達が可能である。クラッチ22が開放状態の場合、クランク軸11及び出力軸21Aの間でトルク伝達が不可能である。
【0021】
トルクコンバータ23は、ロックアップクラッチ23A、入力軸23B、及び出力軸23Cを有している。入力軸23Bは、モータジェネレータ21の出力軸21Aにおけるクラッチ22とは反対側に連結している。ロックアップクラッチ23Aは、入力軸23Bと出力軸23Cとの間に介在している。ロックアップクラッチ23Aは、油圧によって係合状態・開放状態が切り替え可能である。ロックアップクラッチ23Aが係合状態のとき、入力軸23Bと出力軸23Cとが一体的に回転する。ロックアップクラッチ23Aが係合状態のとき、トルクコンバータ23は、入力軸23Bに入力されるトルクを変速して出力軸23Cから出力する。
【0022】
自動変速機24は、トルクコンバータ23の出力軸23Cに連結している。すなわち、自動変速機24は、トルクコンバータ23を介してクランク軸11に連結している。自動変速機24は、図示は省略するが、複数の歯車機構、複数の係合要素を有している。自動変速機24の係合要素は、例えばクラッチ機構やブレーキ機構である。自動変速機24の各係合要素は、油圧によって係合状態・開放状態が切り替え可能である。各係合要素の係合状態・開放状態が切り替わることにより、自動変速機24は、変速段を切り替え可能である。
【0023】
オイルポンプ25は、電動ポンプである。オイルポンプ25が発生した油圧は、変速ユニット20に供給される。具体的には、オイルポンプ25からが発生した油圧は、クラッチ22、トルクコンバータ23、ロックアップクラッチ23A、及び自動変速機24に供給される。
【0024】
油圧部26は、クラッチ22、トルクコンバータ23、ロックアップクラッチ23A、及び自動変速機24のそれぞれの油圧回路と、それらの作動油圧を制御するための各種の油圧制御弁と、を有している。油圧部26が制御されることで、例えば、クラッチ22の係合状態と開放状態とが切り替わる。なお、
図1では、油圧部26の油圧回路及び油圧制御弁の図示を省略している。
【0025】
デファレンシャル40は、自動変速機24と各駆動輪30とに連結している。すなわち、デファレンシャル40は、変速ユニット20と各駆動輪30との間に介在している。デファレンシャル40は、変速ユニット20から出力されたトルクを、左右の駆動輪30に分配する。デファレンシャル40は、左右の駆動輪30に回転速度の差が生じることを許容する。
【0026】
<内燃機関の冷却構造について>
車両500は、内燃機関10の冷却構造50を有している。冷却構造50は、ウォーターポンプ51と、冷却通路52と、ラジエータ53と、水温センサ54と、を有している。
【0027】
ウォーターポンプ51は、内燃機関10のクランク軸11と、ギアを介して機械的に連結している。そのため、ウォーターポンプ51は、クランク軸11の回転に連動して冷却水を吐出する。ウォーターポンプ51の吐出口は、冷却通路52の上流端に接続している。したがって、ウォーターポンプ51は、冷却通路52に冷却水を圧送する。冷却通路52の下流端は、ウォーターポンプ51の吸入口に接続している。すなわち、ウォーターポンプ51から吐出された冷却水は、再びウォーターポンプ51へと還流する。
【0028】
冷却通路52の一部は、内燃機関10のウォータジャケットWJである。ウォータジャケットWJは、内燃機関10におけるシリンダブロック及びシリンダヘッド等の内部に区画された空間である。
【0029】
ラジエータ53は、冷却通路52におけるウォータジャケットWJから視て下流側に位置している。ラジエータ53は、内燃機関10のウォータジャケットWJ等を流通することにより高温になった冷却水を冷やす熱交換器である。
【0030】
水温センサ54は、冷却通路52の途中に位置している。具体的には、水温センサ54は、ウォータジャケットWJの出口付近に位置している。水温センサ54は、冷却通路52を通過する冷却水温TWを検出する。すなわち、本実施形態では、水温センサ54は、内燃機関10の冷却水温TWを検出する。
【0031】
なお、冷却構造50は、冷却通路52から分岐して他の冷却対象物を経て再び冷却通路52に接続する分岐通路、及び分岐通路に流通する冷却水の量を調整するためのバルブなどを備えている。
図1では、分岐通路及びバルブ等の図示を省略して、ウォータジャケットWJ及びラジエータ53に関連する構造を模式的に図示している。
【0032】
<制御装置について>
車両500は、制御装置100を備えている。制御装置100は、水温センサ54が検出する冷却水温TWに関する信号を受信する。
【0033】
制御装置100は、内燃機関10を制御対象とする。制御装置100は、内燃機関10の燃焼の実施及び停止を制御する。すなわち、制御装置100は、内燃機関10の駆動及び停止を変更可能である。
【0034】
また、制御装置100は、内燃機関10を駆動源として走行するHV走行モードと、モータジェネレータ21のみを駆動源として走行するEV走行モードを選択可能である。制御装置100は、HV走行モードを選択する場合、クラッチ22を係合状態にする。また、制御装置100は、EV走行モードを選択する場合、クラッチ22を開放状態にして、内燃機関10の駆動を停止する。制御装置100は、車両500の要求出力、及びバッテリ21Cの充電容量等に基づいて、HV走行モード及びEV走行モードを選択する。
【0035】
制御装置100は、油圧部26を制御対象とする。上述したように、制御装置100は、油圧部26を制御することでクラッチ22の係合状態・開放状態を切り替える。また、制御装置100は、油圧部26を制御することで、自動変速機24における変速段を切り替え可能である。
【0036】
制御装置100は、予め定められた条件が満たされたときに、機関停止処理を実行可能である。制御装置100は、機関停止処理において、クラッチ22を開放状態にする。さらに、制御装置100は、機関停止処理において、内燃機関10の駆動を停止する。上記機関停止処理の実行条件は、HV走行モードからEV走行モードへの変更要求があること、水温センサ54が検出した冷却水温TWが、第1温度T1以下であること、を含む。第1温度T1は、100度以上の温度として予め定められている。本実施形態では、第1温度T1は107度である。
【0037】
制御装置100は、機関停止処理を実行するための上記条件が満たされたときに水温センサ54が検出した冷却水温TWが、第2温度T2以上である場合に、冷却水流通処理を実行可能である。制御装置100は、冷却水流通処理において、クラッチ22を開放状態にする。さらに、制御装置100は、冷却水流通処理において、内燃機関10を駆動させる。すなわち、冷却水流通処理では、内燃機関10のトルクが駆動輪30に伝達されない状態で、ウォーターポンプ51が駆動する。なお、制御装置100は、冷却水流通処理の実行後、上述の機関停止処理を実行する。
【0038】
第2温度T2は、第1温度T1よりも低い温度として予め定められている。また、第2温度T2は、第1温度T1との差が5度以下となるように定められている。本実施形態では、第2温度T2は105度である。制御装置100は、冷却水流通処理の実行中は、内燃機関10の機関回転数を、当該内燃機関10が自立して駆動を継続可能な最小限のアイドル回転数に維持する。アイドル回転数の一例は、数百rpm~千数百rpmである。
【0039】
<制御装置が実行する機関制御について>
以下、制御装置100が実行する機関制御について説明する。制御装置100は、HV走行モード選択中に、機関制御を繰り返し実行する。
【0040】
図2に示すように、制御装置100は、機関制御を実行すると、先ず、ステップS10の処理を実行する。ステップS10では、制御装置100は、水温センサ54が検出する冷却水温TWを取得する。制御装置100は、冷却水温TWが、第1温度T1より大きいか否かを判定する。冷却水温TWが第1温度T1より大きい場合(S10:YES)、制御装置100の処理は、ステップS11へ移行する。
【0041】
ステップS11では、制御装置100は、EV走行モードフラグをオフにする。なお、EV走行モードフラグは、HV走行モードからEV走行モードへの変更を許容しているか禁止しているかを示すフラグである。EV走行モードフラグがオンの場合、EV走行モードへの変更が許容されている状態である。EV走行モードフラグがオフの場合、EV走行モードへの変更が禁止されている状態である。ステップS11の後、制御装置100の処理は、ステップS12へ移行する。
【0042】
ステップS12では、制御装置100は、EV走行モードへの変更要求があるか否かに拘わらず、現状のHV走行モードを継続する。すなわち、制御装置100は、クラッチ22の係合状態を維持し、且つ内燃機関10の運転を継続する。その後、制御装置100は、機関制御を終了する。
【0043】
一方、冷却水温TWが、第1温度T1以下である場合(S10:NO)、制御装置100の処理は、ステップS13へ移行する。ステップS13では、制御装置100は、HV走行モードからEV走行モードへの変更を許容するために、EV走行モードフラグをオンにする。その後、制御装置100の処理は、ステップS14に移行する。
【0044】
ステップS14では、制御装置100は、EV走行モードへの変更要求があるか否かを判定する。EV走行モードへの変更要求がない場合(S14:NO)、制御装置100は、機関制御を終了する。EV走行モードへの変更要求がある場合(S14:YES)、制御装置100の処理は、ステップS15へ移行する。
【0045】
ステップS15では、制御装置100は、ステップS10で取得した冷却水温TWが、第2温度T2以上であるか否かを判定する。冷却水温TWが、第2温度T2以上の場合(S15:YES)、制御装置100の処理はステップS16へ移行する。
【0046】
ステップS16では、制御装置100は、冷却水流通処理を実行する。上述したように、冷却水流通処理では、制御装置100は、クラッチ22を開放状態にして、且つ内燃機関10を駆動させる。すなわち、制御装置100は、ウォーターポンプ51を駆動させる。また、制御装置100は、冷却水流通処理中の内燃機関10の機関回転数をアイドル回転数に維持する。
【0047】
ここで、制御装置100は、冷却水流通処理の実行時間をマップに基づいて算出する。マップは、予め制御装置100に記憶されている。当該マップは、水温センサ54が検出した冷却水温TWが高いほど、冷却水流通処理を長い時間実行するように設定されている。例えば、冷却水温TWが105度の場合、制御装置100は、冷却水流通処理を2秒間実行する。冷却水温TWが107度の場合、制御装置100は、冷却水流通処理を10秒間実行する。制御装置100は、ステップS10で取得した冷却水温TWをマップに当てはめて、冷却水流通処理の実行時間を決定する。その後、制御装置100の処理は、ステップS17へ移行する。
【0048】
一方で、ステップS15において否定判定の場合(S15:NO)、制御装置100の処理は、ステップS16の処理を経ることなく、直接ステップS17へ移行する。
ステップS17では、制御装置100は、機関停止処理を実行する。なお、ステップS16を経てステップS17に至った場合には、ステップS17の時点でクラッチ22は既に開放状態になっている。したがって、この場合、制御装置100は、機関停止処理においてクラッチ22を開放状態のまま維持し、且つ内燃機関10の駆動を停止する。一方、ステップS16を経ずにステップS17に至った場合には、制御装置100は、クラッチ22を開放状態にして、且つ内燃機関10の駆動を停止する。機関停止処理実行後、制御装置100は、機関制御を終了する。
【0049】
<本実施形態の作用>
車両500がHV走行モードで走行していると、内燃機関10の温度が上昇する。仮に、内燃機関10の温度が高い状態で内燃機関10の駆動を停止すると、その直後の内燃機関10の温度は依然として高い場合がある。そして、内燃機関10の駆動を停止してEV走行モードに変更された場合、クランク軸11は回転しない。これに伴い、ウォーターポンプ51が停止して、ウォータジャケットWJ内の冷却水の流通も止まる。この場合、ウォータジャケットWJ内を冷却水が流通していないにも拘らず、内燃機関10から冷却水が受熱する。これにより、冷却水が過熱されて沸騰するおそれがある。特に、ウォータジャケットWJは、いわゆるドリルパスと呼称されるような直径数mm程度の細い冷却水通路を有している。このようなドリルパス内に存在する冷却水は、体積に対して内燃機関10の壁に接する面積が大きい。つまり、冷却水の体積に対する受熱量が多くなるため、冷却水が沸騰する可能性がある。
【0050】
本実施形態では、制御装置100は、機関制御において、冷却水温TWが第1温度T1よりも大きい場合、内燃機関10駆動を継続させる。すなわち、制御装置100は、ウォーターポンプ51を駆動させ続ける。
【0051】
一方、本実施形態では、制御装置100は、冷却水温TWが第1温度T1以下である場合、EV走行モードフラグをオンにする。すなわち、制御装置100は、機関停止処理の実行が許容された状態にする。
【0052】
そして、本実施形態では、制御装置100は、冷却水温TWが第1温度T1以下、且つ第2温度T2以上の場合、先ず、冷却水流通処理を実行する。そして、その上で、制御装置100は機関停止処理を実行する。
【0053】
<本実施形態の効果>
(1)上記実施形態において、少なくとも、内燃機関10の冷却水温TWが第1温度T1以下であることを条件に、制御装置100は、EV走行モードフラグをオンにする。そして、EV走行モードフラグがオンの状態で、EV走行モードの変更要求がある場合、制御装置100は、機関停止処理を実行する。そのため、機関停止処理に伴ってウォーターポンプ51の駆動が停止しても、内燃機関10のウォータジャケットWJ内の冷却水が沸騰する可能性は低い。特に、上述したドリルパス等の内部の冷却水において効果的に沸騰を抑制できる。
【0054】
(2)上記実施形態において、EV走行モード変更要求がある場合には、冷却水温TWが、第1温度T1以下、且つ第2温度T2以上であることを条件に、制御装置100は冷却水流通処理を実行する。そして、制御装置100は、冷却水流通処理を実行した後、機関停止処理を実行する。
【0055】
このように、冷却水温TWが第1温度T1以下であっても、冷却水温TWが第2温度T2以上という相当に高い温度のときには、内燃機関10の駆動に伴いウォーターポンプ51も駆動される。そのため、内燃機関10のウォータジャケットWJ内の冷却水が流通し、冷えた冷却水が新たにウォータジャケットWJ内に供給される。したがって、その後、機関停止処理が実行されても、内燃機関10のウォータジャケットWJ内の冷却水が沸騰する可能性は低い。
【0056】
(3)上記実施形態において、制御装置100は、冷却水流通処理を、ステップS10において取得した冷却水温TWが高いほど、長い時間実行する。この構成によれば、機関停止処理の条件が満たされたときの冷却水温TWが高いほど、冷却水流通処理において多くの冷却水が流通する。したがって、機関停止処理が実行される前に、内燃機関10のウォータジャケットWJ内の冷却水、ひいては内燃機関10を、効果的に冷却できる。
【0057】
(4)上記実施形態において、制御装置100は、冷却水流通処理中における内燃機関10の機関回転数を、当該内燃機関10が自立して駆動を継続可能な最小限のアイドル回転数に維持する。この構成によれば、駆動輪30のトルクに寄与しない冷却水流通処理中の内燃機関10の機関回転数を最小限にできる。したがって、冷却水流通処理に伴う燃費の悪化を最小限にできる。
【0058】
(5)上記実施形態において、第1温度T1と第2温度T2との差は、5度以下である。この構成によれば、燃費の悪化の原因となり得る冷却水流通処理の実行は、冷却水温TWが、第1温度T1に近い相当に高い場合に限られる。すなわち、制御装置100は、冷却水流通処理の必要性が高い場合にのみ、当該冷却水流通処理を実行できる。
【0059】
<変更例>
上記実施形態は以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で組み合わせて実施することができる。
【0060】
・車両500の全体構成は、上記実施形態の例に限定されない。車両500は、内燃機関10と、モータジェネレータ21と、クラッチ22と、ウォーターポンプ51と、水温センサ54と、を備えていればよい。
【0061】
・機関制御のステップS15において、制御装置100は、再び冷却水温TWを水温センサ54から取得してもよい。すなわち、制御装置100は、ステップS15において取得した冷却水温TWを判定に用いてもよい。
【0062】
・機関制御において、制御装置100は、ステップS15及びステップS16の処理を省略してもよい。すなわち、制御装置100は、冷却水温TWが第1温度T1以下であると判定した場合には、冷却水温TWの値に拘わらず、機関停止処理を実行にしてもよい。
【0063】
・制御装置100は、冷却水温TWの大小に拘わらず、冷却水流通処理の実行時間を、一律同じ時間に設定してもよい。その場合、上記実施形態において、制御装置100は、ステップS16において冷却水流通処理の実行時間の算出を省略する。
【0064】
・制御装置100は、冷却水温TWが予め定められた閾値以下になった場合に冷却水流通処理を終了してもよい。当該閾値は、例えば、ウォーターポンプ51が停止しても、冷却水が沸騰するおそれのない温度の上限値として定めればよい。この構成によれば、制御装置100は、冷却水温TWが十分に低くなるまで冷却水流通処理を実行できる。
【0065】
・冷却水流通処理中の機関回転数は、上記実施形態の例に限定さない。すなわち、アイドル回転数より大きくてもよい。冷却水流通処理中の機関回転数は、ウォーターポンプ51が駆動できる回転数であればよい。
【0066】
・第1温度T1と、第2温度T2との差は、5度より大きくてもよい。また、上記実施形態において、第1温度T1及び第2温度T2の値は、上記実施形態の例に限定されない。ただし、冷却水流通処理が過度に頻繁に実行されることを避けるうえでは、第1温度T1と、第2温度T2との差は、5度以下であることが好ましい。
【0067】
・制御装置100は、機関制御の実行開始の条件として、HV走行モードからEV走行モードへの変更要求があることを含んでいてもよい。その場合、制御装置100は、上記実施形態における機関制御のステップS11、ステップS13、ステップS14の処理を省略できる。
【0068】
・機関停止処理の実行条件は、水温センサ54が検出した冷却水温TWが、第1温度T1以下であること、を含んでれいばよい。すなわち、上記実施形態において、機関停止処理の実行条件として他の条件を含んでいてもよい。
【0069】
・機関停止処理は、必ずしもEV走行モードへの変更の際に実行される必要はない。例えば、車両500を停止させる際に、クラッチ22を開放状態にし、且つ内燃機関10の駆動を停止するのであれば、このときに上記機関停止処理を実行してもよい。
【符号の説明】
【0070】
T1…第1温度
T2…第2温度
TW…冷却水温
10…内燃機関
11…クランク軸
21…モータジェネレータ
21A…出力軸
22…クラッチ
30…駆動輪
51…ウォーターポンプ
54…水温センサ
100…制御装置
500…車両