(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】コンピュータ、車両、サーバ、モバイル端末、及び自動運転方法
(51)【国際特許分類】
G01C 21/36 20060101AFI20241112BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20241112BHJP
【FI】
G01C21/36
B60W60/00
(21)【出願番号】P 2022019540
(22)【出願日】2022-02-10
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮介
(72)【発明者】
【氏名】眞屋 朋和
(72)【発明者】
【氏名】岡田 強志
(72)【発明者】
【氏名】藤井 宏光
【審査官】田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-013374(JP,A)
【文献】特開平05-058252(JP,A)
【文献】国際公開第2021/131916(WO,A1)
【文献】特開2020-060418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1地点から第2地点までのルートを探索する探索部と、
前記探索部によって見つかったルートに従って車両の自動運転を行なう自動運転部と、
を含
むコンピュータであって、
前記探索部は、所定の条件が成立しない場合には、第1要件を満たすルートを探索する第1ルート探索を実行し、前記所定の条件が成立する場合には、第2要件を満たすルートを探索する第2ルート探索を実行し、
前記第1要件は、
前記第1地点から前記第2地点までのルート上に自動洗車機が存在することを含まず、
前記第2要件は、
前記第1地点から前記第2地点までのルート上に
所定数の自動洗車機が存在することを含
み、
前記コンピュータは、前記車両がサービスを提供するために行なう自動運転において前記所定の条件が成立する場合には、所定のサービスのうち前記車両が提供する前記サービスに応じた洗車方法を決定し、決定された洗車方法に従う洗車を、前記第2ルート探索によって見つかった前記ルート上の自動洗車機に要求するように構成され、
前記所定のサービスは、旅客輸送および物流を含む、コンピュータ。
【請求項2】
前記コンピュータは、前記車両が提供する前記サービスが旅客輸送である場合には、仕上げに水をはじくコーティングを行なう洗車方法を決定し、前記車両が提供する前記サービスが物流である場合には、仕上げの前記コーティングを行なわない洗車方法を決定するように構成される、請求項1に記載のコンピュータ。
【請求項3】
前記車両の前回洗車から所定時間経過した場合に前記所定の条件が成立
し、
前記コンピュータは、前記車両が提供する前記サービスの種類に基づいて前記所定時間を決定する、請求項1
または2に記載のコンピュータ。
【請求項4】
前記車両の前回洗車からの走行距離が所定値を超えた場合に前記所定の条件が成立
し、
前記コンピュータは、前記車両が提供する前記サービスの種類に基づいて前記所定値を決定する、請求項1
または2に記載のコンピュータ。
【請求項5】
前記車両は、
第1ユーザが前記車両を使用する第1使用期間において第1自動運転を実行した後、
引渡し期間を経て、第2ユーザが前記車両を使用する第2使用期間において第2自動運転を実行するように構成され、
前記コンピュータは、前記引渡し期間において、前記第1
自動運転の終了地点を前記第1地点、前記第2
自動運転の開始地点を前記第2地点
として前記第2ルート探索
を実行する、請求項1~
4のいずれか一項に記載のコンピュータ。
【請求項6】
前記第1要件及び前記第2要件の各々は、所定の時刻までに前記車両が前記第2地点に到達できることを含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載のコンピュータ。
【請求項7】
前記自動運転部は、前記第1ルート探索により前記第1要件を満たすルートが複数見つかった場合には、それらのルートの中から所定の第1優先基準に従って1つの走行ルートを決定し、決定された走行ルートに従って前記車両の自動運転を行なうように構成され、
前記自動運転部は、前記第2ルート探索により前記第2要件を満たすルートが複数見つかった場合には、それらのルートの中から所定の第2優先基準に従って1つの走行ルートを決定し、決定された走行ルートに従って前記車両の自動運転を行なうように構成される、請求項1~
6のいずれか一項に記載のコンピュータ。
【請求項8】
前記所定数は、2つ以上であり、
前記
コンピュータは、
前記第2ルート探索が実行された場合に、前記自動運転部が自動運転で前記車両を走行させるルート上に存在する自動洗車機の中から対象洗車機を決定し、
前記車両が接近した自動洗車機が前記対象洗車機に該当する場合に、
前記所定のサービスのうち前記車両が提供する前記サービスに応じた洗車方法を決定し、決定された洗車方法に従う洗車を前記対象洗車機に要求し、
前記対象洗車機による洗車が完了すると、前記車両の自動運転を再開するように構成される、請求項
1~7のいずれか一項に記載のコンピュータ。
【請求項9】
制御装置を備える車両であって、
前記車両は、
自動運転キットと、
前記制御装置と前記自動運転キットとの間での信号のやり取りを仲介する車両制御インターフェースとをさらに備え、
前記自動運転キットは、自動運転のための指令を、前記車両制御インターフェースを介して前記制御装置へ送るように構成され、
前記制御装置は、前記自動運転キットからの前記指令に従って前記車両を制御するように構成され、
前記制御装置は、前記車両の状態を示す信号を、前記車両制御インターフェースを介して前記自動運転キットへ送るように構成され、
前記自動運転キットが、請求項1~
8のいずれか一項に記載のコンピュータを含む、車両。
【請求項10】
前記コンピュータは、第1使用期間において、第1モバイル端末から第1信号を受信すると、前記車両が第1サービスを提供するために前記第1信号が示す目的地に向かう第1自動運転を行なうように前記車両を制御し、
前記コンピュータは、前記第1使用期間の経過後、引渡し期間において、サーバから第2信号を受信すると、前記第1自動運転の終了地点を前記第1地点、第2自動運転の開始地点を前記第2地点とする前記第2ルート探索、および前記第2ルート探索によって見つかったルートに従う前記車両の自動運転を実行し、
前記コンピュータは、前記引渡し期間の経過後、第2使用期間において、第2モバイル端末から第3信号を受信すると、前記車両が第2サービスを提供するために前記第3信号が示す目的地に向かう前記第2自動運転を行なうように前記車両を制御し、
前記第1自動運転および前記第2自動運転の各々においては、前記所定の条件が成立しない場合に前記第1ルート探索を実行し、前記所定の条件が成立する場合に前記第2ルート探索を実行する、請求項9に記載の車両。
【請求項11】
請求項1~
8のいずれか一項に記載のコンピュータを含む、サーバ。
【請求項12】
請求項1~
8のいずれか一項に記載のコンピュータを含む、モバイル端末。
【請求項13】
コンピュータが実行する自動運転方法であって、
前記自動運転方法は、
前記コンピュータが、所定の条件が成立するか否かを判断することと、
前記所定の条件が成立しない場合に、
前記コンピュータが、第1要件を満たすルートを探索する第1ルート探索を実行することと、
前記所定の条件が成立する場合に、
前記コンピュータが、第2要件を満たすルートを探索する第2ルート探索を実行することと、
前記コンピュータが、前記第1ルート探索又は前記第2ルート探索によって見つかったルート
に従う車両の自動運転
が実行されるように前記車両を制御することと、
を含み、
前記第1要件は、
第1地点から第2地点までのルート上に自動洗車機が存在することを含まず、
前記第2要件は、
前記第1地点から前記第2地点までのルート上に
所定数の自動洗車機が存在することを含
み、
前記自動運転方法は、
前記車両がサービスを提供するために行なう自動運転において前記所定の条件が成立する場合に、前記コンピュータが、所定のサービスのうち前記車両が提供する前記サービスに応じた洗車方法を決定することと、
前記コンピュータが、決定された前記洗車方法に従う洗車を、前記第2ルート探索によって見つかった前記ルート上の自動洗車機に要求することと、
をさらに含み、
前記所定のサービスは、旅客輸送および物流を含む、自動運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンピュータ、車両、サーバ、モバイル端末、及び自動運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-166760号公報(特許文献1)には、自動運転車両についてメンテナンスの要否を判定し、メンテナンスが必要と判定された場合に、メンテナンス作業のスケジュールを予約するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今後、自動運転技術がさらに進歩することにより、人が介在せずとも自動運転車両によって自動的にサービスを提供するシステムが実用化されると考えられる。こうしたシステムでは、自動運転車両の稼働率を上げるために長期間にわたって車両の自動運転が継続的に行なわれて、車両の洗浄が不十分になりやすくなる。車両の洗浄が不十分なると、故障の原因になったり、サービス利用者を不快にさせたりする可能性がある。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、適切な頻度で自動運転車両の洗車を行ないやすくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の観点に係るコンピュータは、第1地点から第2地点までのルートを探索する探索部と、探索部によって見つかったルートに従って車両の自動運転を行なう自動運転部とを含む。探索部は、所定の条件が成立しない場合には、第1要件を満たすルートを探索する第1ルート探索を実行するように構成される。探索部は、所定の条件が成立する場合には、第2要件を満たすルートを探索する第2ルート探索を実行するように構成される。第1要件は、ルート上に自動洗車機が存在することを含まない。第2要件は、ルート上に自動洗車機が存在することを含む。以下、上記所定の条件を、「洗車ルート探索条件」とも称する。
【0007】
上記構成によれば、洗車ルート探索条件が成立しない場合には、自動洗車機の位置を考慮せずに、自動運転のためのルートが探索される(第1ルート探索)。他方、洗車ルート探索条件が成立する場合には、自動洗車機を含むルートが探索され(第2ルート探索)、自動洗車機を含むルートに従って車両の自動運転が実行される。このため、自動運転中に自動洗車機で車両を洗車することができる。洗車が必要なタイミングで成立し、洗車が不要なタイミングでは成立しないように、上記洗車ルート探索条件が設定されることで、車両の稼働率の低下を抑制しつつ、車両の洗浄が不十分なることを抑制できる。上記コンピュータによれば、適切な頻度で自動運転車両の洗車を行ないやすくなる。
【0008】
なお、自動洗車機は、自動運転中の車両が自動運転のまま使用可能な洗車機である。自動洗車機は、ドライブスルー型洗車機であってもよいし、他のタイプの自動洗車機であってもよい。
【0009】
車両の前回洗車から所定時間経過した場合に洗車ルート探索条件が成立してもよい。こうした構成によれば、洗車が必要なタイミングで洗車ルート探索条件が成立しやすくなる。
【0010】
車両の前回洗車からの走行距離が所定値を超えた場合に洗車ルート探索条件が成立してもよい。こうした構成によれば、洗車が必要なタイミングで洗車ルート探索条件が成立しやすくなる。
【0011】
車両は、第1タスクのための第1自動運転を実行した後、第2タスクのための第2自動運転を実行するように構成されてもよい。第1タスクの終了地点を第1地点、第2タスクの開始地点を第2地点とするルート探索において洗車ルート探索条件が成立してもよい。こうした構成によれば、洗車が必要なタイミングで洗車ルート探索条件が成立しやすくなる。
【0012】
第1要件及び第2要件の各々は、所定の時刻までに車両が第2地点に到達できることを含んでもよい。こうした構成によれば、車両が目標時刻(所定の時刻)までに第2地点に到達しやすくなる。
【0013】
自動運転部は、第1ルート探索により第1要件を満たすルートが複数見つかった場合には、それらのルートの中から所定の第1優先基準に従って1つの走行ルートを決定し、決定された走行ルートに従って車両の自動運転を行なうように構成されてもよい。自動運転部は、第2ルート探索により第2要件を満たすルートが複数見つかった場合には、それらのルートの中から所定の第2優先基準に従って1つの走行ルートを決定し、決定された走行ルートに従って車両の自動運転を行なうように構成されてもよい。
【0014】
上記構成によれば、探索部によって複数のルートが見つかった場合に、自動的に1つの走行ルートが決定され、その走行ルートに従って車両の自動運転が実行される。このため、車両の自動運転を容易かつスムーズに実行することが可能になる。
【0015】
第1優先基準は、第2地点への到達時刻に関する基準を含んでもよい。第2優先基準は、自動洗車機の位置に関する基準と、第2地点への到達時刻に関する基準とを含んでもよい。
【0016】
上記構成によれば、車両が目標時刻までに第2地点に到達しやすくなる。また、上記構成によれば、適切な位置(あるいは、適切なタイミング)で車両を洗車しやすくなる。
【0017】
なお、走行ルートが自動的に決定されることは必須ではなく、探索部によって複数のルートが見つかった場合に、ユーザによって1つの走行ルートが選択されるようにしてもよい。
【0018】
上述したいずれかのコンピュータは、自動運転部が自動運転で車両を走行させるルート上に存在する自動洗車機に対して車両の洗車を要求する洗車部をさらに含んでもよい。こうした構成によれば、車両の自動運転中に自動洗車機によって車両の洗車を行ないやすくなる。
【0019】
洗車部は、第2ルート探索が実行された場合に、自動運転部が自動運転で車両を走行させるルート上に存在する自動洗車機の中から対象洗車機を決定するように構成されてもよい。洗車部は、車両が接近した自動洗車機が対象洗車機に該当する場合に、対象洗車機に対して車両の洗車を要求するように構成されてもよい。
【0020】
上記構成によれば、車両の自動運転ルート上に存在する自動洗車機の中から、車両のニーズに合った自動洗車機(対象洗車機)を選び、対象洗車機に車両の洗車を要求することが可能になる。
【0021】
本開示の第2の観点に係る車両は、制御装置を備える。車両は、自動運転キットと、制御装置と自動運転キットとの間での信号のやり取りを仲介する車両制御インターフェースとをさらに備える。自動運転キットは、自動運転のための指令を、車両制御インターフェースを介して制御装置へ送るように構成される。制御装置は、自動運転キットからの指令に従って車両を制御するように構成される。制御装置は、車両の状態を示す信号を、車両制御インターフェースを介して自動運転キットへ送るように構成される。そして、制御装置又は自動運転キットが、上述したいずれかのコンピュータを含む。
【0022】
上記車両は、前述したコンピュータを含むため、適切な頻度で自動運転車両の洗車を行ないやすくすることができる。
【0023】
本開示の第3の観点に係るサーバは、上述したいずれかのコンピュータを含む。
上記サーバは、前述したコンピュータを含むため、適切な頻度で自動運転車両の洗車を行ないやすくすることができる。
【0024】
本開示の第4の観点に係るモバイル端末は、上述したいずれかのコンピュータを含む。
上記モバイル端末は、前述したコンピュータを含むため、適切な頻度で自動運転車両の洗車を行ないやすくすることができる。
【0025】
本開示の第5の観点に係る自動運転方法は、判断ステップと、第1探索ステップと、第2探索ステップと、自動運転ステップとを含む。判断ステップでは、所定の条件が成立するか否かを判断する。第1探索ステップでは、所定の条件が成立しない場合に、第1要件を満たすルートを探索する第1ルート探索を実行する。第2探索ステップでは、所定の条件が成立する場合に、第2要件を満たすルートを探索する第2ルート探索を実行する。自動運転ステップでは、第1ルート探索又は第2ルート探索によって見つかったルートに従って車両の自動運転を行なう。第1要件は、ルート上に自動洗車機が存在することを含まない。第2要件は、ルート上に自動洗車機が存在することを含む。
【0026】
上記自動運転方法によっても、前述したコンピュータと同様、適切な頻度で自動運転車両の洗車を行ないやすくすることが可能になる。
【発明の効果】
【0027】
本開示によれば、適切な頻度で自動運転車両の洗車を行ないやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る車両の概略構成を示す図である。
【
図2】
図1に示した車両の制御システムの詳細を示す図である。
【
図3】本開示の実施の形態1に係る車両が備えるコンピュータ及び各種システムの詳細について説明するための図である。
【
図4】本開示の実施の形態1に係る自動運転方法を示すフローチャートである。
【
図5】本開示の実施の形態1に係る自動運転方法において、走行ルート決定に係る処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図6】
図5に示した第1ルート探索の詳細を示すフローチャートである。
【
図7】
図5に示した第2ルート探索の詳細を示すフローチャートである。
【
図9】
図4に示した自動運転制御に係る処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図10】
図4に示した洗車制御に係る処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図11】地図上における各自動洗車機の配置の一例を示す図である。
【
図12】
図11に示される地図上の各ルート候補について、サービス要件及び洗車要件の各々の成否を示す表である。
【
図13】本開示の実施の形態2に係る自動運転方法における走行ルート決定に係る処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図14】
図10に示した処理の変形例を示すフローチャートである。
【
図15】
図5に示した処理の変形例を示すフローチャートである。
【
図16】
図7に示した処理の変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0030】
[実施の形態1]
図1は、本開示の実施の形態に係る車両の概略構成を示す図である。
図1を参照して、車両1は、自動運転キット(以下、「ADK(Autonomous Driving Kit)」と表記する)200と、車両プラットフォーム(以下、「VP(Vehicle Platform)」と表記する)2とを備える。
【0031】
VP2は、ベース車両100の制御システムと、ベース車両100内に設けられた車両制御インターフェースボックス(以下、「VCIB(Vehicle Control Interface Box)」と表記する)111とを含む。VCIB111は、CAN(Controller Area Network)のような車内ネットワークを通じてADK200と通信してもよい。なお、
図1では、ベース車両100とADK200とが離れた位置に示されているが、ADK200は、実際にはベース車両100に取り付けられている。この実施の形態では、ベース車両100のルーフトップにADK200が取り付けられる。ただし、ADK200の取り付け位置は適宜変更可能である。
【0032】
ベース車両100は、たとえば市販されるxEV(電動車)である。xEVは、電力を動力源の全て又は一部として利用する車両である。この実施の形態では、ベース車両100としてBEV(電気自動車)を採用する。ただしこれに限られず、ベース車両100は、BEV以外のxEV(HEV、PHEV、FCEVなど)であってもよい。ベース車両100が備える車輪の数は、たとえば4輪である。ただしこれに限られず、ベース車両100が備える車輪の数は、3輪であってもよいし、5輪以上であってもよい。
【0033】
ベース車両100の制御システムは、統合制御マネージャ115に加えて、ベース車両100を制御するための各種システムおよび各種センサを含む。統合制御マネージャ115は、ベース車両100に含まれる各種センサからの信号(センサ検出信号)に基づいて、ベース車両100の動作に関わる各種システムを統合して制御する。
【0034】
この実施の形態では、統合制御マネージャ115が制御装置150を含む。制御装置150は、プロセッサ151、RAM(Random Access Memory)152、及び記憶装置153を含む。プロセッサ151としては、たとえばCPU(Central Processing Unit)を採用できる。RAM152は、プロセッサ151によって処理されるデータを一時的に記憶する作業用メモリとして機能する。記憶装置153は、格納された情報を保存可能に構成される。記憶装置153は、たとえばROM(Read Only Memory)及び書き換え可能な不揮発性メモリを含む。記憶装置153には、プログラムのほか、プログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、及び各種パラメータ)が記憶されている。この実施の形態では、記憶装置153に記憶されているプログラムをプロセッサ151が実行することで、各種の車両制御(たとえば、ADK200からの指示に従う自動運転制御)が実行される。ただし、これらの処理は、ソフトウェアではなく、専用のハードウェア(電子回路)によって実行されてもよい。なお、制御装置150が備えるプロセッサの数は任意であり、所定の制御ごとにプロセッサが用意されてもよい。
【0035】
ベース車両100は、ブレーキシステム121と、ステアリングシステム122と、パワートレーンシステム123と、アクティブセーフティシステム125と、ボディシステム126とを含む。これらのシステムは、統合制御マネージャ115によって統合制御される。この実施の形態では、各システムがコンピュータを備える。そして、システムごとのコンピュータが車内ネットワーク(たとえば、CAN)を通じて統合制御マネージャ115と通信する。以下では、各システムが備えるコンピュータを、「ECU(Electronic Control Unit)」と称する。
【0036】
ブレーキシステム121は、ベース車両100の各車輪に設けられた制動装置と、制動装置を制御するECUとを含む。この実施の形態では、制動装置として油圧式ディスクブレーキ装置が採用される。ベース車両100は、車輪速センサ127A,127Bを備える。車輪速センサ127Aは、ベース車両100の前輪に設けられ、前輪の回転速度を検出する。車輪速センサ127Bは、ベース車両100の後輪に設けられ、後輪の回転速度を検出する。ブレーキシステム121のECUは、車輪速センサ127A,127Bで検出された各車輪の回転方向及び回転速度を統合制御マネージャ115へ出力する。
【0037】
ステアリングシステム122は、ベース車両100の操舵装置と、操舵装置を制御するECUとを含む。操舵装置は、たとえば、アクチュエータにより操舵角の調整が可能なラック&ピニオン式のEPS(Electric Power Steering)を含む。ベース車両100は、ピニオン角センサ128を備える。ピニオン角センサ128は、操舵装置を構成するアクチュエータの回転軸に連結されたピニオンギヤの回転角(ピニオン角)を検出する。ステアリングシステム122のECUは、ピニオン角センサ128で検出されたピニオン角を統合制御マネージャ115へ出力する。
【0038】
パワートレーンシステム123は、ベース車両100が備える車輪の少なくとも1つに設けられたEPB(Electric Parking Brake)と、ベース車両100のトラッスミッションに設けられたP-Lock装置と、シフトレンジを選択可能に構成されるシフト装置と、ベース車両100の駆動源と、パワートレーンシステム123に含まれる各装置を制御するECUとを含む。EPBは、前述の制動装置とは別に設けられ、電動アクチュエータによって車輪を固定状態にする。P-Lock装置は、たとえば、アクチュエータにより駆動可能なパーキングロックポールによってトランスミッションの出力軸の回転位置を固定状態にする。詳細は後述するが、この実施の形態では、ベース車両100の駆動源として、バッテリから電力の供給を受けるモータを採用する。パワートレーンシステム123のECUは、EPBとP-Lock装置との各々による固定化の有無、シフト装置によって選択されたシフトレンジ、並びにバッテリ及びモータ(後述する
図3参照)の各々の状態を、統合制御マネージャ115へ出力する。
【0039】
アクティブセーフティシステム125は、走行中の車両1について衝突の可能性を判定するECUを含む。ベース車両100は、車両1の前方及び後方を含む周辺状況を検出するカメラ129A及びレーダセンサ129B,129Cを備える。アクティブセーフティシステム125のECUは、カメラ129A及びレーダセンサ129B,129Cから受信した信号を用いて、衝突の可能性があるか否かを判定する。アクティブセーフティシステム125によって衝突の可能性があると判定された場合には、統合制御マネージャ115が、ブレーキシステム121に制動指令を出力して、車両1の制動力を増加させる。この実施の形態に係るベース車両100が初期(出荷時)からアクティブセーフティシステム125を備える。しかしこれに限られず、ベース車両に対して後付け可能なアクティブセーフティシステムが採用されてもよい。
【0040】
ボディシステム126は、ボディ系部品(たとえば、方向指示器、ホーン、及びワイパー)と、ボディ系部品を制御するECUとを備える。ボディシステム126のECUは、マニュアルモードでは、ユーザ操作に従ってボディ系部品を制御し、自律モードでは、ADK200からVCIB111及び統合制御マネージャ115を経て受信する指令に従ってボディ系部品を制御する。
【0041】
車両1は自動運転可能に構成される。VCIB111は、車両制御インターフェースとして機能する。車両1が自動運転で走行するときには、統合制御マネージャ115とADK200とがVCIB111を介して相互に信号のやり取りを行ない、ADK200からの指令に従って統合制御マネージャ115が自律モード(Autonomous Mode)による走行制御(すなわち、自動運転制御)を実行する。なお、ADK200は、ベース車両100から取り外すことも可能である。ベース車両100は、ADK200が取り外された状態でも、ユーザの運転によりベース車両100単体で走行することができる。ベース車両100単体で走行する場合には、ベース車両100の制御システムが、マニュアルモードによる走行制御(すなわち、ユーザ操作に応じた走行制御)を実行する。
【0042】
この実施の形態では、ADK200が、通信される各信号を定義するAPI(Application Program Interface)に従ってVCIB111との間で信号のやり取りを行なう。ADK200は、上記APIで定義された各種信号を処理するように構成される。ADK200は、たとえば、車両1の走行計画を作成し、作成された走行計画に従って車両1を走行させるための制御を要求する各種コマンドを、上記APIに従ってVCIB111へ出力する。以下、ADK200からVCIB111へ出力される上記各種コマンドの各々を、「APIコマンド」とも称する。また、ADK200は、ベース車両100の状態を示す各種信号を上記APIに従ってVCIB111から受信し、受信したベース車両100の状態を走行計画の作成に反映する。以下、ADK200がVCIB111から受信する上記各種信号の各々を、「APIシグナル」とも称する。APIコマンド及びAPIシグナルはどちらも、上記APIで定義された信号に相当する。ADK200の構成の詳細については後述する(
図2参照)。
【0043】
VCIB111は、ADK200から各種APIコマンドを受信する。VCIB111は、ADK200からAPIコマンドを受信すると、そのAPIコマンドを、統合制御マネージャ115が処理可能な信号の形式に変換する。以下、統合制御マネージャ115が処理可能な信号の形式に変換されたAPIコマンドを、「制御コマンド」とも称する。VCIB111は、ADK200からAPIコマンドを受信すると、そのAPIコマンドに対応する制御コマンドを統合制御マネージャ115へ出力する。
【0044】
統合制御マネージャ115の制御装置150は、ベース車両100の制御システムにおいて検出されたベース車両100の状態を示す各種信号(たとえば、センサ信号、又はステータス信号)を、VCIB111を介してADK200へ送る。VCIB111は、ベース車両100の状態を示す信号を統合制御マネージャ115から逐次受信する。VCIB111は、統合制御マネージャ115から受信した信号に基づいてAPIシグナルの値を決定する。また、VCIB111は、必要に応じて、統合制御マネージャ115から受信した信号をAPIシグナルの形式に変換する。そして、VCIB111は、得られたAPIシグナルをADK200へ出力する。VCIB111からADK200へは、ベース車両100の状態を示すAPIシグナルがリアルタイムで逐次出力される。
【0045】
この実施の形態において、統合制御マネージャ115とVCIB111との間では、たとえば自動車メーカーによって定義された汎用性の低い信号がやり取りされ、ADK200とVCIB111との間では、より汎用性の高い信号(たとえば、公開されたAPI(Open API)で定義された信号)がやり取りされる。VCIB111は、ADK200と統合制御マネージャ115との間で信号の変換を行なうことにより、ADK200からの指令に従って統合制御マネージャ115が車両制御を行なうことを可能にする。ただし、VCIB111の機能は、上記信号の変換を行なう機能のみには限定されない。たとえば、VCIB111は、所定の判断を行ない、その判断結果に基づく信号(たとえば、通知、指示、又は要求を行なう信号)を、統合制御マネージャ115とADK200との少なくとも一方へ送ってもよい。VCIB111の構成の詳細については後述する(
図2参照)。
【0046】
ベース車両100は、通信装置130をさらに備える。通信装置130は、各種通信I/F(インターフェース)を含む。制御装置150は、通信装置130を通じて車両1の外部の装置(たとえば、後述するモバイル端末UT及びサーバ500)と通信を行なうように構成される。通信装置130は、移動体通信網(テレマティクス)にアクセス可能な無線通信機(たとえば、DCM(Data Communication Module))を含む。通信装置130は移動体通信網を介してサーバ500と通信する。無線通信機は、5G(第5世代移動通信システム)対応の通信I/Fを含んでもよい。また、通信装置130は、車両1の周辺に存在する自動洗車機(後述する
図8参照)と無線通信を行なうための通信I/Fを含む。また、通信装置130は、車内又は車両周辺の範囲内に存在するモバイル端末UTと直接通信するための通信I/Fを含む。通信装置130とモバイル端末UTとは、無線LAN(Local Area Network)、NFC(Near Field Communication)、又はBluetooth(登録商標)のような近距離通信を行なってもよい。
【0047】
モバイル端末UTは、車両1を利用するユーザによって携帯される端末である。この実施の形態では、モバイル端末UTとして、タッチパネルディスプレイを具備するスマートフォンを採用する。ただしこれに限られず、モバイル端末UTとしては、任意のモバイル端末を採用可能であり、ラップトップ、タブレット端末、ウェアラブルデバイス(たとえば、スマートウォッチ又はスマートグラス)、又は電子キーなども採用可能である。
【0048】
上述の車両1は、MaaS(Mobility as a Service)システムの構成要素の1つとして採用され得る。MaaSシステムは、たとえばMSPF(Mobility Service Platform)を含む。MSPFは、各種モビリティサービス(たとえば、ライドシェア事業者、カーシェア事業者、保険会社、レンタカー事業者、タクシー事業者等により提供される各種モビリティサービス)が接続される統一プラットフォームである。サーバ500は、MSPFにおいてモビリティサービスのための情報の管理及び公開を行なうコンピュータである。サーバ500は、各種モビリティの情報を管理し、事業者からの要求に応じて情報(たとえば、API、及び、モビリティ間の連携に関する情報)を提供する。サービスを提供する事業者は、MSPF上で公開されたAPIを用いて、MSPFが提供する様々な機能を利用することができる。たとえば、ADKの開発に必要なAPIは、MSPF上に公開されている。
【0049】
サーバ500は、プロセッサ501、RAM502、記憶装置503、及びHMI(Human Machine Interface)504を含む。記憶装置503は、格納された情報を保存可能に構成される。記憶装置503には、プログラムのほか、プログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、及び各種パラメータ)が記憶されている。HMI(Human Machine Interface)504は入力装置及び表示装置を含む。HMI504は、タッチパネルディスプレイであってもよい。HMI504は、音声入力を受け付けるスマートスピーカを含んでもよい。
【0050】
図2は、車両1の制御システムの詳細を示す図である。
図1とともに
図2を参照して、ADK200は、車両1の自動運転を行なうための自動運転システム(以下、「ADS(Autonomous Driving System)」と表記する)202を含む。ADS202は、コンピュータ210と、HMI(Human Machine Interface)230と、認識用センサ260と、姿勢用センサ270と、センサクリーナ290とを含む。
【0051】
コンピュータ210は、プロセッサと、APIを利用した自動運転ソフトウェアを記憶する記憶装置とを備え、プロセッサによって自動運転ソフトウェアを実行可能に構成される。自動運転ソフトウェアにより、自動運転に関する制御(後述する
図4参照)が実行される。自動運転ソフトウェアは、OTA(Over The Air)によって逐次更新されてもよい。コンピュータ210は、通信モジュール210A及び210Bをさらに備える。
【0052】
HMI230は、ユーザとコンピュータ210とが情報をやり取りするための装置である。HMI230は、入力装置及び報知装置を含む。ユーザは、HMI230を通じて、コンピュータ210に指示又は要求を行なったり、自動運転ソフトウェアで使用されるパラメータ(ただし、変更が許可されているものに限る)の値を変更したりすることができる。HMI230は、入力装置及び報知装置の両方の機能を兼ね備えるタッチパネルディスプレイであってもよい。
【0053】
認識用センサ260は、車両1の外部環境を認識するための情報(以下、「環境情報」とも称する)を取得する各種センサを含む。認識用センサ260は、車両1の環境情報を取得し、コンピュータ210へ出力する。環境情報は、自動運転制御に用いられる。この実施の形態では、認識用センサ260が、車両1の周囲(前方及び後方を含む)を撮像するカメラと、電磁波又は音波によって障害物を検知する障害物検知器(たとえば、ミリ波レーダ及び/又はライダー)とを含む。コンピュータ210は、たとえば、認識用センサ260から受信する環境情報を用いて、車両1から認識可能な範囲に存在する人、物体(他の車両、柱、ガードレールなど)、及び道路上のライン(たとえば、センターライン)を認識できる。認識のために、人工知能(AI)又は画像処理用プロセッサが用いられてもよい。
【0054】
姿勢用センサ270は、車両1の姿勢に関する情報(以下、「姿勢情報」とも称する)を取得し、コンピュータ210へ出力する。姿勢用センサ270は、車両1の加速度、角速度、及び位置を検出する各種センサを含む。この実施の形態では、姿勢用センサ270が、IMU(Inertial Measurement Unit)及びGPS(Global Positioning System)センサを含む。IMUは、車両1の前後方向、左右方向、及び上下方向の各々の加速度、並びに車両1のロール方向、ピッチ方向、及びヨー方向の各々の角速度を検出する。GPSセンサは、複数のGPS衛星から受信する信号を用いて車両1の位置を検出する。自動車及び航空機の分野においてIMUとGPSとを組み合わせて高い精度で姿勢を計測する技術が公知である。コンピュータ210は、たとえば、こうした公知の技術を利用して、上記姿勢情報から車両1の姿勢を計測してもよい。
【0055】
センサクリーナ290は、車外で外気にさらされるセンサ(たとえば、認識用センサ260)の汚れを除去する装置である。たとえば、センサクリーナ290は、洗浄液及びワイパーを用いて、カメラのレンズ及び障害物検知器の出射口をクリーニングするように構成されてもよい。
【0056】
車両1においては、安全性を向上させるため、所定の機能(たとえば、ブレーキ、ステアリング、及び車両固定)に冗長性を持たせている。ベース車両100の制御システム102は、同等の機能を実現するシステムを複数備える。具体的には、ブレーキシステム121はブレーキシステム121A及び121Bを含む。ステアリングシステム122はステアリングシステム122A及び122Bを含む。パワートレーンシステム123は、EPBシステム123AとP-Lockシステム123Bとを含む。各システムがECUを備える。同等の機能を実現する複数のシステムのうち、一方に異常が生じても、他方が正常に動作することで、車両1において当該機能は正常に働く。
【0057】
VCIB111は、VCIB111AとVCIB111Bとを含む。VCIB111A及び111Bの各々はコンピュータを含む。コンピュータ210の通信モジュール210A、210Bは、それぞれVCIB111A、111Bのコンピュータと通信可能に構成される。VCIB111とVCIB111Bとは、相互に通信可能に接続されている。VCIB111A及び111Bの各々は、単独で動作可能であり、一方に異常が生じても、他方が正常に動作することで、VCIB111は正常に動作する。VCIB111A及び111Bはどちらも統合制御マネージャ115を介して上記各システムに接続されている。ただし、
図2に示すように、VCIB111AとVCIB111Bとでは接続先が一部異なっている。
【0058】
この実施の形態では、車両1を加速させる機能については、冗長性を持たせていない。パワートレーンシステム123は、車両1を加速させるためのシステムとして、推進システム123Cを含む。
【0059】
図3は、車両1が備えるコンピュータ210及び各種システムの詳細について説明するための図である。
図1及び
図2とともに
図3を参照して、車両1は、MG(Motor Generator)20と、ECU21と、PCU(Power Control Unit)22と、制動装置30と、ブレーキセンサ30aと、空気圧センサ30bと、有人センサ40と、バッテリ160と、ナビゲーションシステム(以下、「NAVI」とも称する)170と、リーダ180と、駆動輪Wとを備える。MG20、ECU21、及びPCU22は、推進システム123Cに含まれる。制動装置30及びブレーキセンサ30aは、ブレーキシステム121(
図1)に含まれる。
【0060】
バッテリ160は、推進システム123Cに電力を供給する。バッテリ160としては、公知の車両用蓄電装置(たとえば、液式二次電池、全固体二次電池、又は組電池)を採用できる。車両用二次電池の例としては、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池が挙げられる。バッテリ160は、接触充電(プラグイン充電)可能に構成される。
【0061】
バッテリ160には、監視モジュール160aが設けられている。監視モジュール160aは、バッテリ160の状態(たとえば、電圧、電流、及び温度)を検出する各種センサを含み、検出結果を統合制御マネージャ115へ出力する。監視モジュール160aは、上記センサ機能に加えて、SOC(State Of Charge)推定機能をさらに有するBMS(Battery Management System)であってもよい。制御装置150は、監視モジュール160aの出力に基づいてバッテリ160の状態(たとえば、温度、電流、電圧、及びSOC)を取得することができる。SOCは、蓄電残量を示し、たとえば、満充電状態の蓄電量に対する現在の蓄電量の割合を0~100%で表わしたものである。
【0062】
推進システム123Cは、バッテリ160に蓄えられた電力を用いて車両1の走行駆動力を発生させる。MG20は、たとえば三相交流モータジェネレータである。PCU22は、たとえば、インバータと、コンバータと、リレー(以下、「SMR(System Main Relay)」と称する)とを含む。PCU22は、ECU21によって制御される。SMRは、バッテリ160からMG20までの電路の接続/遮断を切り替えるように構成される。SMRは、車両1の走行時に閉状態(接続状態)にされる。
【0063】
MG20は、PCU22によって駆動され、車両1の駆動輪Wを回転させる。また、MG20は、回生発電を行ない、発電した電力をバッテリ160に供給する。PCU22は、バッテリ160から供給される電力を用いてMG20を駆動する。車両1が備える走行用のモータ(MG20)の数は任意であり、1つでも2つでも3つ以上でもよい。走行用のモータはインホイールモータであってもよい。
図3には、1つの駆動輪Wのみを模式的に示しているが、車両1における駆動輪Wの数及び駆動方式は任意である。車両1の駆動方式は、前輪駆動、後輪駆動、4輪駆動のいずれであってもよい。
【0064】
車両1が備える各車輪(駆動輪Wを含む)には、制動装置30と、制動装置30によって車輪に付与される制動力を検出するブレーキセンサ30aと、タイヤの空気圧を検出する空気圧センサ30bとが設けられている。ブレーキセンサ30aは、ブレーキパッド(又は、ホイールシリンダ)に加わる油圧を検出する油圧センサであってもよい。4つのブレーキセンサ30aによってそれぞれ検出された車輪ごとの制動力(たとえば、制動力に対応する油圧)は統合制御マネージャ115へ出力される。また、空気圧センサ30bの検出結果も、統合制御マネージャ115へ出力される。
【0065】
有人センサ40は、車両1の中に人が存在するか否かを検出するように構成される。より詳しくは、有人センサ40は、車両1の車内環境を認識するための情報を取得し、取得した情報を統合制御マネージャ115へ出力する。有人センサ40は、車内に向けたカメラ及び赤外線センサの少なくとも一方を含む。有人センサ40は、着座センサ及びシートベルトセンサの少なくとも一方をさらに含んでもよい。制御装置150は、有人センサ40の出力に基づいて、車両1が有人/無人のいずれの状態かを判別することができる。
【0066】
NAVI170は、タッチパネルディスプレイと、GPSモジュールと、記憶装置と(いずれも図示せず)を含んで構成される。記憶装置は、地図情報を記憶している。地図情報は、地図上における各自動洗車機の位置を示す。タッチパネルディスプレイは、車内のユーザからの入力を受け付けたり、地図及びその他の情報を表示したりする。GPSモジュールは、図示しないGPS衛星からの信号(以下、「GPS信号」と称する)を受信するように構成される。NAVI170は、GPS信号を用いて車両1の位置を特定することができる。NAVI170は、地図上に車両1の位置をリアルタイムで表示するように構成される。NAVI170は、地図情報を参照して、車両1の現在地から目的地までの最適ルート(たとえば、最短ルート)を見つけるための経路探索を行なうように構成される。NAVI170は、OTAによって地図情報を逐次更新してもよい。
【0067】
リーダ180は、画像から所定の識別情報を読み取るように構成される。より詳しくは、リーダ180は、画像を撮像し、画像から所定のコードを抽出し、デコード処理を行なう。画像から抽出されたコードは、上記デコード処理により所定の識別情報に変換される。そして、リーダ180は、画像から読み取った識別情報を統合制御マネージャ115へ出力する。ただし、リーダ180の読み取り方式は、上記に限られず任意である。たとえば、リーダ180は、RFID(Radio Frequency Identification)リーダであってもよい。
【0068】
車両1は、自律モードとマニュアルモードとを切替え可能に構成される。ADK200がVCIB111から受信するAPIシグナルには、車両1が自律モードとマニュアルモードとのいずれの状態かを示す信号(以下、「自律ステート」と表記する)が含まれる。ユーザは、所定の入力装置(たとえば、HMI230又はモバイル端末UT)を通じて、自律モードとマニュアルモードとのいずれかを選択できる。ユーザによっていずれかの運転モードが選択されると、選択された運転モードに車両1がなり、選択結果が自律ステートに反映される。ただし、車両1が自動運転可能な状態になっていなければ、ユーザが自律モードを選択しても自律モードに移行しない。また、ユーザによる運転モードの切替えが禁止されているときには、ユーザによる運転モードの選択は無効になる。車両1の運転モードの切替えは、統合制御マネージャ115によって行なわれてもよい。統合制御マネージャ115は、サーバ500からの指示に従って自律モードとマニュアルモードとを切り替えてもよい。
【0069】
この実施の形態では、車両管理者が、サーバ500を用いて車両1を管理する。この実施の形態では、車両1についてのみ言及するが、車両管理者は、サーバ500を用いて多数の車両を管理してもよい。車両管理者は、たとえば旅客輸送サービスを提供する。サーバ500は、ユーザごとのサービス利用料金を管理してもよい。なお、サービス(タスク)の種類は、旅客輸送に限られず適宜変更可能である。
【0070】
車両1は、運転者不在の状態で自動運転によってサービスを提供する。すなわち、車両1の中には車両管理者が存在しない。基本的にはサービス利用者のみが車両1に乗車し、サービス利用者が全員降車すると、車両1は無人状態になる。
【0071】
サーバ500は、車両1を利用中のユーザを特定し、そのユーザに関する情報を車両管理者に報知することができる。サーバ500は、記憶装置503に登録された各ユーザに関する情報(ユーザ情報)を管理する。ユーザを識別するための識別情報(ユーザID)がユーザごとに付与されており、サーバ500はユーザ情報をユーザIDで区別して管理している。この実施の形態では、サーバ500に登録された各ユーザがモバイル端末UTを携帯する。ユーザ情報は、個人情報(氏名、住所、年齢、サービス利用履歴など)と、ユーザが携帯するモバイル端末UTのアドレスとを含む。
【0072】
モバイル端末UTには、車両1を利用するためのアプリケーションソフトウェア(以下、「モバイルアプリ」と称する)がインストールされている。ユーザが車両1を利用するときには、当該ユーザの識別情報(ユーザID)を含む画像をモバイル端末UTが表示する。そして、画像を表示したモバイル端末UTをユーザが車両1のリーダ180にかざすと、リーダ180が読み取ったユーザIDが車両1からサーバ500へ送信される。サーバ500は、受信したユーザIDに基づいて、ユーザ認証を行なうとともに、車両1を利用中のユーザを特定する。サーバ500は、車両管理者からの要求に応じて、ユーザIDに対応するユーザ情報を記憶装置503から取得し、HMI504に表示する。また、サーバ500は、車両1からの要求に応じて、車両1を利用中のユーザに関する情報を車両1へ送信する。
【0073】
この実施の形態では、ADK200のコンピュータ210が、探索部51と自動運転部52と洗車部53とを含む。探索部51は、第1地点から第2地点までのルートを探索するように構成される。詳しくは、探索部51は、所定の条件が成立しない場合には第1ルート探索(後述する
図5のS23参照)を実行し、上記所定の条件が成立する場合には第2ルート探索(後述する
図5のS24参照)を実行する。自動運転部52は、探索部51によって見つかったルートに従って車両1の自動運転を行なうように構成される。洗車部53は、自動運転部52が自動運転で車両1を走行させるルート上に存在する自動洗車機に対して車両1の洗車を要求するように構成される。この実施の形態では、プロセッサと、プロセッサにより実行されるプログラムとによって、探索部51、自動運転部52、及び洗車部53が具現化される。ただしこれに限られず、これら各部は、専用のハードウェア(電子回路)によって具現化されてもよい。
【0074】
サーバ500は、サービスの提供を開始するときに、自動運転開始を要求する信号(以下、「サービス要求信号」とも称する)を車両1へ送信する。サービス要求信号には、要求されるサービスに関する情報が含まれる。この実施の形態では、サービス要求信号が、車両1に要求する自動運転について、出発地と、出発地への到達時刻(以下、「要求出発時刻」とも称する)と、目的地と、目的地への到達時刻(以下、「要求到達時刻」とも称する)とを含む。サービス要求信号は、車両1の現在地を第1地点(開始地点)、上記目的地を第2地点(終了地点)とするルート探索及び自動運転を、車両1に要求する。さらに、サービス要求信号は、要求出発時刻までに出発地に到達し、出発地でユーザを乗せて、要求到達時刻までに目的地に到達することを、車両1に要求する。以下、サービス要求信号によって要求されることを、「サービス要件」とも称する。
【0075】
車両1がサービス要求信号を受信すると、統合制御マネージャ115が車両1を自律モードにした後、ADK200が、以下に説明する
図4に示す一連の処理を開始する。
図4は、実施の形態1に係る自動運転方法を示すフローチャートである。以下では、フローチャート中の各ステップを、単に「S」と表記する。
【0076】
図1~
図3とともに
図4を参照して、S11では、走行ルートが未定か否かを、コンピュータ210が判断する。走行ルートがまだ決まっていない場合には(S11にてYES)、コンピュータ210が、S12において走行ルートを決定する。S12の処理は、基本的には、車両1が停車している状態で実行される。
図5は、S12の詳細を示すフローチャートである。
【0077】
図1~
図3とともに
図5を参照して、S21では、コンピュータ210が、現在地、出発地、及び目的地を取得する。この実施の形態では、出発地及び目的地が、上記サービス要求信号によって示される。コンピュータ210は、たとえば姿勢用センサ270又はNAVI170の出力を用いて、車両1の現在地を取得してもよい。
【0078】
S22では、コンピュータ210が、時間T1が所定の閾値(以下、「Th1」と表記する)を超えたか否かを判断する。時間T1は、たとえばコンピュータ210の記憶装置に記憶されている。時間T1は、前回洗車からの経過時間に相当する。詳細は後述するが、車両1の洗車が行なわれるたびに、時間T1がリセットされ、時間T1の計測が開始される(
図10のS43)。
【0079】
Th1は、固定値であってもよいし、可変であってもよい。コンピュータ210は、気象情報と車両1のタスクの種類との少なくとも一方を用いてTh1を決定してもよい。
【0080】
車両1が必要とする洗車頻度は、天候によって変わる傾向がある。たとえば、雨が降っているときは、晴れているときと比べて、必要な洗車頻度が低くなる傾向がある。また、雨があがった後や、積雪が生じているときは、必要な洗車頻度が高くなる傾向がある。コンピュータ210は、車両1の洗車頻度が適切な頻度になるように、気象情報に基づいて適切なTh1を決定してもよい。コンピュータ210はインターネットを通じて気象情報を取得してもよい。
【0081】
車両が必要とする洗車頻度は、タスクの種類によっても変わる傾向がある。たとえば、旅客輸送タスクでは、物流タスクと比べて、必要な洗車頻度が高くなる傾向がある。コンピュータ210は、車両1の洗車頻度が適切な頻度になるように、車両1に要求されるタスクの種類に基づいて適切なTh1を決定してもよい。タスクの種類は、たとえばサービス要求信号によって示される。
【0082】
車両1が洗車されてからTh1を経過していない場合には(S22にてNO)、コンピュータ210は、S23において、後述する第1ルート探索(
図6参照)により車両1の走行ルートを決定する。他方、車両1が洗車されてからTh1を経過した場合には(S22にてYES)、コンピュータ210は、S24において、後述する第2ルート探索(
図7参照)により車両1の走行ルートを決定する。S22においてYESと判断されたことは、前回洗車から所定時間(Th1)経過したことを意味する。S23、S24のいずれかにおいて車両1の走行ルートが決定されると、処理は
図4のS13に進む。
【0083】
図6は、第1ルート探索の詳細を示すフローチャートである。
図1~
図3とともに
図6を参照して、S101では、コンピュータ210が、
図5のS21で取得された現在地と出発地と目的地とをつなぐルート(以下、「ルート候補」とも称する)のうち、サービス要求信号が示すサービス要件を満たすルートを探索する。S101のルート探索は、第1ルート探索に相当する。
【0084】
具体的には、コンピュータ210は、各ルート候補について、車両1が自動運転による走行で出発地に到達するまでにかかる第1走行時間と、ユーザが乗車するためにかかる乗車時間と、車両1が自動運転で出発地から目的地まで走行するためにかかる第2走行時間とを推定する。コンピュータ210は、ルート候補の中から、要求出発時刻までに出発地に到達することができ、かつ、要求到達時刻までに目的地に到達することができるルートを探索する。
【0085】
コンピュータ210は、交通情報(たとえば、渋滞情報)と走行距離とを用いて、第1走行時間及び第2走行時間の各々を推定してもよい。第1走行時間を推定するための走行距離は、車両1の現在地から出発地までの距離に相当する。第2走行時間を推定するための走行距離は、車両1の出発地から目的地までの距離に相当する。また、コンピュータ210は、乗車時間が、予め実験又はシミュレーションによって求めた所定時間になると推定してもよい。なお、走行時間及び乗車時間の各々の推定方法は上記に限られず任意である。たとえば、コンピュータ210は交通情報を用いずに走行距離のみから走行時間を推定してもよい。また、コンピュータ210は、出発地(乗車場所)及び/又はユーザの特性(年齢など)を用いて乗車時間を推定してもよい。
【0086】
S102では、コンピュータ210が、上記第1ルート探索(S101)によりサービス要件を満たすルートが見つかったか否かを判断する。サービス要件を満たすルートが見つからなかった場合には(S102にてNO)、S105において、その旨を示す信号(以下、「第1不適合通知」とも称する)が車両1の識別情報とともに車両1(通信装置130)からサーバ500へ送信される。S105の処理が実行されると、
図6に示す一連の処理とともに、
図4に示す一連の処理も終了する。この場合、車両1による自動運転は開始されない。第1不適合通知を受けたサーバ500は、車両1の代わりにサービスを提供させるために別の車両にサービス要求信号を送信してもよい。
【0087】
サービス要件を満たすルートが見つかった場合には(S102にてYES)、コンピュータ210が、S103において、見つかったルートを、車両1の走行ルートとして決定する。S101においてサービス要件を満たすルートが複数見つかった場合には、所定の優先基準(第1優先基準)に基づいて選ばれた1つのルートが、S103において、車両1の走行ルートとして決定される。この実施の形態では、目的地への到達時刻が早いルートが優先的に選ばれる。すなわち、サービス要件を満たすルートのうち目的地への到達時刻が最も早いルートが、車両1の走行ルートとして決定される。S103の処理が実行されると、
図6に示す一連の処理(
図5のS23)は終了し、処理が
図4のS13に進む。
【0088】
この実施の形態では、S101、S102、及びS105の処理が探索部51によって実行される。そして、S103の処理は、自動運転部52によって実行される。自動運転部52は、第1ルート探索によりサービス要件(第1要件)を満たすルートが複数見つかった場合には、それらのルートの中から所定の第1優先基準に従って1つの走行ルートを決定する(S103)。そして、自動運転部52は、後述する
図4のS16において、決定された走行ルートに従って車両1の自動運転を行なう。こうした処理により、車両1の自動運転を容易かつスムーズに実行することが可能になる。なお、第1優先基準は、目的地への到達時刻に関する基準に限られない。たとえば、車両1のエネルギー残量(たとえば、蓄電残量)が所定水準を下回っているときには、EVSE(Electric Vehicle Supply Equipment)の位置に関する基準が、第1優先基準として採用されてもよい。そして、車両1がEVSE(より特定的には、車両1が自動運転のまま使用可能なEVSE)から必要な給電を受けることができるルートが優先的に選ばれてもよい。
【0089】
図7は、第2ルート探索の詳細を示すフローチャートである。
図1~
図3とともに
図7を参照して、S201では、コンピュータ210が、ルート候補(
図5のS21で取得された現在地と出発地と目的地とをつなぐルート)のうち、サービス要求信号が示すサービス要件を満たし、かつ、所定の洗車要件を満たすルートを探索する。S201のルート探索は、第2ルート探索に相当する。サービス要件の成否判断は、基本的には、第1ルート探索(
図6のS101)と同じである。ただし、コンピュータ210は、S201においては、洗車に要する時間も考慮して、サービス要件を満たすか否かを判断する。
【0090】
洗車要件は、ルート上に所定数の自動洗車機が存在することである。この実施の形態では、所定数を1つ(固定値)とする。なお、ルート上に自動洗車機が存在することには、道路内に自動洗車機が存在することに加えて、道路の脇に設けられた敷地(たとえば、ガソリンスタンド又は充電ステーション)内に自動洗車機が存在することも含まれる。
【0091】
所定数は、1つに限定されず、2つ以上であってもよい。また、所定数は、状況に応じて可変であってもよい。たとえば、前回洗車からの経過時間(時間T1)が長くなるほど所定数を多くしてもよい。
【0092】
自動洗車機は、車両1が自動運転のまま使用可能な洗車機である。
図8は、自動洗車機の一例を示す図である。
図8を参照して、自動洗車機300は、たとえばドライブスルー型洗車機である。自動洗車機300は、車両1と通信可能に構成される。車両1が自動洗車機300に接近すると、車両1と自動洗車機300との間で無線通信が開始される。無線通信の方式は、無線LANを利用した方式であってもよい。ただしこれに限られず、無線通信の方式は任意である。車両1は自動洗車機300による誘導に従って移動する。自動洗車機300は車両1に移動の指示を出しながら車両1の洗車を行なう。車両1は、必要に応じて自動洗車機300に洗車方法を指定する。自動洗車機300は、車両1から洗車方法を指定された場合には、指定された洗車方法で車両1の洗車を行なう。
【0093】
再び
図1~
図3とともに
図7を参照して、S202では、コンピュータ210が、上記第2ルート探索(S201)によりサービス要件及び洗車要件の両方を満たすルートが見つかったか否かを判断する。サービス要件及び洗車要件の両方を満たすルートが見つからなかった場合には(S202にてNO)、S205において、その旨を示す信号(以下、「第2不適合通知」とも称する)が車両1の識別情報とともに車両1(通信装置130)からサーバ500へ送信される。S205の処理が実行されると、
図7に示す一連の処理とともに、
図4に示す一連の処理も終了する。この場合、車両1による自動運転は開始されない。第2不適合通知を受けたサーバ500は、車両1の代わりにサービスを提供させるために別の車両にサービス要求信号を送信してもよい。
【0094】
サービス要件及び洗車要件の両方を満たすルートが見つかった場合には(S202にてYES)、コンピュータ210が、S203において、見つかったルートを、車両1の走行ルートとして決定する。S201においてサービス要件及び洗車要件の両方を満たすルートが複数見つかった場合には、所定の優先基準(第2優先基準)に基づいて選ばれた1つのルートが、S203において、車両1の走行ルートとして決定される。この実施の形態では、第2優先基準が、自動洗車機の位置に関する洗車基準と、目的地への到達時刻に関する時間基準とを含む。まず、洗車基準により、現在地と出発地との間に自動洗車機が存在するルートが優先的に選ばれる。次に、時間基準により、目的地への到達時刻が早いルートが優先的に選ばれる。すなわち、S201において現在地と出発地との間に自動洗車機が存在するルートが複数見つかった場合には、それらのルートのうち、目的地への到達時刻が最も早いルートが、車両1の走行ルートとして決定される。S201において現在地と出発地との間に自動洗車機が存在するルートが見つからなかった場合には、S201において見つかったルートのうち、目的地への到達時刻が最も早いルートが、車両1の走行ルートとして決定される。
【0095】
続くS204では、コンピュータ210が、S203で決定された走行ルート上に存在する自動洗車機の少なくとも1つを、対象洗車機として設定する。この実施の形態では、走行ルート上に存在する自動洗車機のうち、現在地に最も近い1つの自動洗車機が、対象洗車機として設定される。ただしこれに限られず、対象洗車機の数及び決め方は適宜変更可能である。設定された対象洗車機は、コンピュータ210の記憶装置に記憶される。S204の処理が実行されると、
図7に示す一連の処理(
図5のS24)は終了し、処理が
図4のS13に進む。
【0096】
この実施の形態では、S201、S202、及びS205の処理が探索部51によって実行される。S203の処理は、自動運転部52によって実行される。そして、S204の処理は、洗車部53によって実行される。自動運転部52は、第2ルート探索によりサービス要件及び洗車要件(第2要件)を満たすルートが複数見つかった場合には、それらのルートの中から所定の第2優先基準に従って1つの走行ルートを決定する(S203)。そして、自動運転部52は、後述する
図4のS16において、決定された走行ルートに従って車両1の自動運転を行なう。こうした処理により、車両1の自動運転を容易かつスムーズに実行することが可能になる。
【0097】
再び
図1~
図3とともに
図4を参照して、S13では、コンピュータ210が、S12で決定された走行ルート上の自動洗車機に車両1が接近したか否かを判断する。コンピュータ210は、車両1の周辺の自動洗車機の位置と、車両1の現在位置とに基づいて、S13の判断を行なってもよい。コンピュータ210は、これらの位置をNAVI170から取得してもよい。また、コンピュータ210は、車両1と自動洗車機との無線通信が開始されたか否かに基づいて、車両1が自動洗車機に接近したか否かを判断してもよい。後述するS16で自動運転が開始される前においては、S13においてNOと判断され、処理がS16に進む。S16では、コンピュータ210が自動運転制御を実行する。
図9は、自動運転制御(S16)に係る処理の詳細を示すフローチャートである。
【0098】
図1~
図3とともに
図9を参照して、S31では、コンピュータ210が現在の車両1の情報を取得する。たとえば、コンピュータ210は、認識用センサ260及び姿勢用センサ270から車両1の環境情報及び姿勢情報を取得する。さらに、コンピュータ210はAPIシグナルを取得する。この実施の形態では、車両1が自律モード及びマニュアルモードのいずれである場合にも、車両1の状態を示すAPIシグナルがVCIB111からADK200へリアルタイムで逐次出力されている。自動運転制御の精度を向上させるために、自律モードにおいてはマニュアルモードよりも短い周期で統合制御マネージャ115からADK200に向けて車両1の状態が逐次送信されてもよい。コンピュータ210が取得するAPIシグナルには、自律ステートのほか、車輪速センサ127A,127Bで検出された各車輪の回転方向及び回転速度を示す信号などが含まれる。
【0099】
S32では、コンピュータ210が、S31で取得した車両1の情報に基づいて、
図4のS12で決定された走行ルートに従う走行計画を作成する。たとえば、コンピュータ210が、車両1の挙動(たとえば、車両1の姿勢)を計算し、車両1の状態及び外部環境に合った走行計画を作成する。走行計画は、車両1の次の動作(所定期間における車両1の挙動)を示すデータである。コンピュータ210は、
図4のS12で決定された走行ルートに従う車両1の走行が安定するように走行計画を作成する。すでに走行計画が存在する場合には、S32においてその走行計画が修正されてもよい。
【0100】
S33では、コンピュータ210が、S32で作成された走行計画から制御的な物理量(加速度、タイヤ切れ角など)を抽出する。S34では、コンピュータ210が、S33で抽出された物理量をAPI周期ごとに分割する。S35では、コンピュータ210が、S34で分割された物理量を用いてAPIソフトウェアを実行する。このようにAPIソフトウェアが実行されることにより、走行計画に従う物理量を実現するための制御を要求するAPIコマンド(推進方向コマンド、推進コマンド、制動コマンド、車両固定コマンドなど)がADK200からVCIB111へ送信される。VCIB111は、受信したAPIコマンドに対応する制御コマンドを統合制御マネージャ115へ送信し、統合制御マネージャ115は、その制御コマンドに従って車両1の自動運転制御を行なう。車両1の自動運転中は、統合制御マネージャ115(制御装置150)がADK200(コンピュータ210)からの指令に従って車両1の各種システム(たとえば、
図2に示したブレーキシステム121、ステアリングシステム122、パワートレーンシステム123、アクティブセーフティシステム125、及びボディシステム126)を制御する。
【0101】
S35の処理が実行されると、
図4のフローチャートに戻り、処理がS17に進む。この実施の形態では、コンピュータ210とVCIB111と統合制御マネージャ115とが協働して車両1を自動運転で走行させるための制御を実行する。車両1は、有人/無人のいずれの状態においても自動運転を行なうことができる。なお、自動運転制御は、
図9に示した制御に限られず、他の制御(公知の自動運転制御)が採用されてもよい。
【0102】
再び
図1~
図3とともに
図4を参照して、S17では、車両1のタスク(車両1によるサービス提供)が終了したか否かを、コンピュータ210が判断する。車両1が目的地に到達していない間は、S17においてNOと判断され、処理がS19に進む。S19では、車両1が自律モードであるか否かを、コンピュータ210が判断する。サービス提供中は、基本的には、車両1が自律モードに維持される。このため、S19においてYESと判断され、処理が最初のステップ(S11)に戻る。そして、S11及びS13~S16が繰返し実行され、S16の処理(
図9)により車両1の自動運転が継続される。
【0103】
自動運転中の車両1が、S12で決定された走行ルート上の自動洗車機に接近した場合には(S13にてYES)、コンピュータ210は、S14において、その自動洗車機が対象洗車機であるか否かを判断する。車両1が接近した自動洗車機が、
図7のS204で設定された対象洗車機に該当しない場合には、S14においてNOと判断され、処理がS16に進む。対象洗車機が設定されていない場合(たとえば、第1ルート探索により走行ルートが決定された場合)にも、S14においてNOと判断され、処理がS16に進む。
【0104】
車両1が接近した自動洗車機が、
図7のS204で設定された対象洗車機に該当する場合には、S14においてYESと判断され、処理がS15に進む。S15では、コンピュータ210が洗車制御を実行する。この実施の形態では、S13及びS14の処理が洗車部53によって実行される。
【0105】
図10は、S15の詳細を示すフローチャートである。
図1~
図3とともに
図10を参照して、S41では、コンピュータ210が洗車方法を決定する。コンピュータ210は、洗車方法として、車両1のタスクに応じた所定の方法を決定してもよい。たとえば、車両1のタスクが旅客輸送である場合には、仕上げに水をはじくコーティングを行ない、車両1のタスクが物流である場合には、仕上げのコーティングを行なわないようにしてもよい。また、車両1のタスクに応じて洗剤の種類が変更されてもよい。この実施の形態では、S41において、所定の洗剤を用いて車両1の車体表面を洗浄した後、その車体表面に仕上げのコーティングを行なうことが、洗車方法として決定される。
【0106】
S42では、対象洗車機が、S41で決定された洗車方法に従い、車両1の車体表面を洗浄する。具体的には、コンピュータ210が、S41で決定された方法に従う洗車を対象洗車機に要求する。これにより、対象洗車機によって車両1の車体表面(外側の面)が洗浄される。車両1の中に人がいない場合には、コンピュータ210は、対象洗車機による洗車中に車内のロボットクリーナを制御して、車内の清掃を行なってもよい。コンピュータ210は、有人センサ40の出力に基づいて、車両1の中に人がいるか否かを判断してもよい。
【0107】
対象洗車機による洗車(S42)が完了すると、コンピュータ210は、S43において、時間T1をリセットするとともに、時間T1の計測を開始する。これにより、タイマによる時間カウントが0(初期値)から開始され、時間の経過とともに時間T1が逐次更新される。この実施の形態では、車両1が直近に洗車されたタイミング(前回洗車時)からの経過時間が、時間T1によって示される。S43の処理が実行されると、
図4のフローチャートに戻り、処理がS16に進む。これにより、自動運転による車両1の走行が再開される。
【0108】
この実施の形態では、S41及びS42の処理が洗車部53によって実行される。S43の処理は、探索部51によって実行される。洗車部53は、第2ルート探索が実行された場合に、自動運転部52が自動運転で車両1を走行させるルート上に存在する自動洗車機の中から対象洗車機を決定する(
図7のS204)。洗車部53は、車両1が接近した自動洗車機が対象洗車機に該当する場合に(
図4のS13及びS14の両方でYES)、対象洗車機に対して車両1の洗車を要求する(
図10のS42)。こうした構成によれば、自動運転ルート上に存在する自動洗車機の中から、車両1のニーズに合った自動洗車機(対象洗車機)を選び、対象洗車機に車両1の洗車を要求することが可能になる。
【0109】
再び
図1~
図3とともに
図4を参照して、自動運転(S16)によって車両1が出発地に到着したときには、車両1は停車してユーザの乗車を待つ。ユーザは、車両1に乗車する前に、リーダ180に対して前述のユーザ認証を行なう。この実施の形態では、ユーザ認証に成功したときに車両1のドア(乗降車口)が開く。そして、車両1に乗車したユーザがドアを閉じると、車両1は自動運転による走行を再開する。
【0110】
自動運転(S16)によって車両1が目的地に到着したときには、車両1は停車してユーザの降車を待つ。ユーザは、車両1を降車する前に、リーダ180に対して前述のユーザ認証を行なう。ユーザ認証に成功すると、車両1のドア(乗降車口)が開く。その後、ユーザが車両1を降車すると、S17においてYESと判断され、S18において、車両1がマニュアルモードになる。S17においてYESと判断されたことは、車両1のタスク(車両1によるサービス提供)が終了したことを意味する。
【0111】
車両1がマニュアルモードになると(S19にてNO)、S20において、自動運転終了を示す終了信号が車両1の識別情報とともに車両1(通信装置130)からサーバ500へ送信された後、
図4に示す一連の処理は終了する。
【0112】
以上説明したように、この実施の形態に係る自動運転方法は、
図4~
図7、
図9、及び
図10の各々に示した処理を含む。この実施の形態に係るコンピュータ210は、本開示に係る「コンピュータ」の一例に相当する。
【0113】
図5のS22では、所定の条件(洗車ルート探索条件)が成立するか否かを、コンピュータ210が判断する。具体的には、コンピュータ210は、前回洗車から所定時間(Th1)経過したか否かに基づいて、洗車ルート探索条件が成立するか否かを判断する。洗車ルート探索条件は、前回洗車から所定時間(Th1)経過した場合に成立する。
【0114】
洗車ルート探索条件が成立しない場合には(S22にてNO)、コンピュータ210が、
図5のS23(
図6)において第1ルート探索を実行する。第1ルート探索では、第1要件を満たすルートを探索する。第1要件は、サービス要件(所定の時刻までに車両1が目的地に到達できること)のみを含み、洗車要件(ルート上に自動洗車機が存在すること)を含まない(
図6のS101)。
【0115】
洗車ルート探索条件が成立する場合には(S22にてYES)、コンピュータ210が、
図5のS24(
図7)において第2ルート探索を実行する。第2ルート探索では、第2要件を満たすルートを探索する。第2要件は、サービス要件に加えて、洗車要件(ルート上に自動洗車機が存在すること)を含む(
図7のS201)。
【0116】
図4のS16では、コンピュータ210が、第1ルート探索又は第2ルート探索によって見つかったルートに従って車両1の自動運転を行なう。
【0117】
上記の自動運転方法によれば、適切な頻度で車両1(自動運転車両)の洗車を行ないやすくなる。このため、車両1(自動運転車両)の洗浄が不十分になることを抑制できる。
【0118】
以下、
図11及び
図12を参照して、上記自動運転方法の実施例について説明する。
図11は、地図上における各自動洗車機の配置の一例を示す図である。
図11中の「W」は、自動洗車機(たとえば、
図8に示した自動洗車機300)を意味する。
図12は、
図11に示される地図上の各ルート候補(RT-1~RT-22)について、サービス要件及び洗車要件の各々の成否を示す表である。
図12中のR1~R13及びR21~R23は、それぞれ
図11中の道路R1~R13及びR21~R23を意味する。以下に説明する実施例では、現在地と出発地との間に自動洗車機が存在しないものとする。また、
図11中の道路R5及びR6の各々が渋滞しているものとする。
【0119】
図11とともに
図12を参照して、
図11中の道路R5及びR6の各々は渋滞しているため、道路R5、R6のいずれかを含むルート(RT-2、RT-3、RT-6~RT-12、及びRT-18~RT-22)は、
図6のS101及び
図7のS201の各々において、サービス要件を満たさないと判断される。また、
図11中の道路R8及びR9を含むルート(RT-16及びRT-17)は、走行距離が長いため、
図6のS101及び
図7のS201の各々において、サービス要件を満たさないと判断される。
図11中の「サービス要件」において、「-」は、サービス要件を満たさないことを意味し、A、B、C、D、E、Fの各々は、サービス要件を満たすことを意味する。この実施例において、サービス要件を満たすルートを、目的地への到達時刻が早い順に並べると、RT-1(A)、RT-4(B)、RT-15(C)、RT-13(D)、RT-5(E)、RT-14(F)となる。このため、
図6のS103では、RT-1が、車両1の走行ルートとして決定される。
【0120】
図11中の「洗車要件」は、各ルート上の自動洗車機の数を示している。自動洗車機を含まないルート(RT-1~RT-3、RT-5、RT-11、RT-14、RT-15、RT-18、RT-21、及びRT-22)は、
図7のS201において洗車要件を満たさないと判断される。そして、RT-4及びRT-13の各々が、サービス要件を満たし、かつ、洗車要件を満たすと判断される。
図7のS203では、RT-4及びRT-13のうち、目的地への到達時刻が早いほうのRT-4が、車両1の走行ルートとして決定される。そして、
図7のS204においては、RT-4上の自動洗車機(詳しくは、道路R23上の自動洗車機)が、対象洗車機として設定される。
【0121】
以上、自動運転方法の実施例について説明した。続けて、上記実施例が変更された例について説明する。
【0122】
図12の第1変形例では、道路R5及びR6に加えて、道路R1が渋滞しているものとする。こうした例では、道路R1を含むルート(RT-1~RT-5)がサービス要件を満たさないと判断される。この場合、RT-13~RT-15がサービス要件を満たし、RT-13のみが、サービス要件及び洗車要件の両方を満たす。
図6のS103においては、サービス要件を満たすルート(RT-13~RT-15)のうち、目的地への到達時刻が最も早いRT-15が、車両1の走行ルートとして決定される。
図7のS203においては、RT-13が車両1の走行ルートとして決定される。
図7のS204においては、RT-13上の自動洗車機(詳しくは、道路R23上の自動洗車機)が、対象洗車機として設定される。
【0123】
図12の第2変形例では、
図11に示した現在地と出発地との間に1つの自動洗車機が存在し、ルートRT-1~RT-22の全てが洗車要件を満たす。こうした例では、サービス要件及び洗車要件の両方を満たすルート(RT-1、RT-4、RT-15、及びRT-13)のうち、目的地への到達時刻が最も早いRT-1が、
図7のS203において車両1の走行ルートとして決定される。そして、現在地と出発地との間に存在する自動洗車機が、
図7のS204において対象洗車機として設定される。
【0124】
[実施の形態2]
本開示の実施の形態2に係るコンピュータ及び自動運転方法について説明する。実施の形態2は実施の形態1と共通する部分が多いため、主に相違点について説明し、共通する部分についての説明は割愛する。
【0125】
実施の形態2では、第1ユーザと第2ユーザとで車両1がシェア(共用)される。実施の形態2に係る車両1も、実施の形態1と同様、
図1~
図3に示した構成を有する。第1ユーザ及び第2ユーザは別々にモバイル端末UTを携帯する。以下では、第1ユーザが携帯するモバイル端末UTを「第1モバイル端末」、第2ユーザが携帯するモバイル端末UTを「第2モバイル端末」と称する。
【0126】
第1使用期間においては、第1ユーザが所定の用途(第1用途)で車両1を使用する。第1使用期間においては、車両1が、第1ユーザからの要求に応じて、第1用途のための自動運転(第1自動運転)を実行する。この実施の形態では、第1用途(第1ユーザの車両用途)が第1タスクに相当する。また、第1使用期間の後に設定された第2使用期間においては、第2ユーザが所定の用途(第2用途)で車両1を使用する。第2使用期間においては、車両1が、第2ユーザからの要求に応じて、第2用途のための自動運転(第2自動運転)を実行する。この実施の形態では、第2用途(第2ユーザの車両用途)が第2タスクに相当する。さらに、使用期間の合間には、車両1を引き渡すための引渡し期間が設けられている。具体的には、第1使用期間の終了から第2使用期間の開始までの間に、第1ユーザから第2ユーザへ車両1を引き渡すための引渡し期間が設けられている。
【0127】
第1使用期間において、車両1に乗車した第1ユーザが第1モバイル端末に対して所定の操作を行なうと、車内の第1モバイル端末から車両1(通信装置130)へ第1サービス要求信号が送信される。第1サービス要求信号は、車両1に要求する自動運転について、目的地と、目的地への到達時刻(要求到達時刻)とを含む。第1サービス要求信号は、車両1の現在地を第1地点(開始地点)、上記目的地を第2地点(終了地点)とするルート探索及び自動運転を、車両1に要求する。さらに、第1サービス要求信号は、要求到達時刻までに目的地に到達することを、車両1に要求する。第1ユーザが第1モバイル端末に入力したサービス要件(たとえば、目的地及び要求到達時刻)が、第1サービス要求信号に含まれる。要求到達時刻は、第1使用期間内に設定される。車両1の現在地は、第1タスクの開始地点に相当する。
【0128】
車両1が上記第1サービス要求信号を受信すると、統合制御マネージャ115が車両1を自律モードにした後、ADK200が、
図4に示した一連の処理を開始する。ただし、
図4のS12では、
図5に示した処理の代わりに、以下に説明する
図13に示す一連の処理が実行される。
図13は、実施の形態2に係る自動運転方法における走行ルート決定に係る処理(
図4のS12)の詳細を示すフローチャートである。
図13に示す処理は、S21(
図5)に代えてS21A及びS21Bが採用されたこと以外は、
図5に示した処理と同じである。
【0129】
図1~
図3とともに
図13を参照して、S21Aでは、コンピュータ210が、現在地及び目的地を取得する。目的地は、上記第1サービス要求信号によって示される。コンピュータ210は、たとえば姿勢用センサ270又はNAVI170の出力を用いて、車両1の現在地を取得してもよい。
【0130】
S21Bでは、車両1の引渡しが要求されるか否かを、コンピュータ210が判断する。第1サービス要求信号は車両1の引渡しを要求しないため、S21BにおいてNOと判断され、処理がS22に進む。
【0131】
実施の形態2では、
図4のS23及びS24の各々において、車両1の現在地から目的地までのルートが探索される。そして、第1使用期間が終了すると、S17においてYESと判断され、S18~S20を経て
図4に示した一連の処理が終了する。
【0132】
第1使用期間が終了すると、引渡し期間が開始する。引渡し期間の開始タイミングで、サーバ500から車両1(通信装置130)へ第2サービス要求信号が送信される。第2サービス要求信号は、第1ユーザから第2ユーザへの車両1の引渡しを要求する。具体的には、第2サービス要求信号は、車両1に要求する自動運転について、目的地と、目的地への到達時刻(要求到達時刻)とを含む。第2サービス要求信号は、車両1の現在地を第1地点(開始地点)、上記目的地を第2地点(終了地点)とするルート探索及び自動運転を、車両1に要求する。さらに、第2サービス要求信号は、要求到達時刻までに目的地に到達するように無人状態で自動運転を行なうことを、車両1に要求する。第2サービス要求信号が要求するサービス要件(たとえば、目的地及び要求到達時刻)は、サーバ500によって設定される。要求到達時刻は、第2使用期間の開始時刻よりも前に設定される。目的地は、第2タスクの開始地点に設定される。車両1の現在地は、第1タスクの終了地点に相当する。
【0133】
車両1が上記第2サービス要求信号を受信すると、統合制御マネージャ115が車両1を自律モードにした後、ADK200が、
図4に示した一連の処理を開始する。そして、
図4のS12において、
図13に示した処理が実行される。第2サービス要求信号は車両1の引渡しを要求するため、S21BにおいてYESと判断され、処理がS24に進む。S21BにおいてYESと判断されることは、洗車ルート探索条件が成立することを意味する。第2サービス要求信号に応じたルート探索では、
図7のS204において、目的地(第2タスクの開始地点)に最も近い1つの自動洗車機が、対象洗車機として設定されてもよい。
【0134】
上記のように、実施の形態2では、第1タスクの終了地点を第1地点、第2タスクの開始地点を第2地点とするルート探索において洗車ルート探索条件が成立する。第1タスクの終了から第2タスクの開始までの間に洗車を行なうことで、第1ユーザが車両1を使用した後、次の利用者(第2ユーザ)に車両1を渡すまでに車両1をきれいにしておくことが可能になる。また、第2タスクの開始地点に近い位置で洗車を行なうことで、第2ユーザが車両1を受け取ったときの車両1の清浄度を高めることができる。
【0135】
車両1が目的地(第2タスクの開始地点)に到着すると、
図4のS17においてYESと判断され、S18~S20を経て
図4に示した一連の処理が終了する。その後、第2使用期間が開始する。第2ユーザは、第2タスクの開始地点で車両1に乗車する。
【0136】
第2使用期間においては、車両1に乗車した第2ユーザが第2モバイル端末に対して所定の操作を行なうと、車内の第2モバイル端末から車両1(通信装置130)へ第3サービス要求信号が送信される。第3サービス要求信号は、車両1に要求する自動運転について、目的地と、目的地への到達時刻(要求到達時刻)とを含む。第3サービス要求信号は、車両1の現在地を第1地点(開始地点)、上記目的地を第2地点(終了地点)とするルート探索及び自動運転を、車両1に要求する。さらに、第3サービス要求信号は、要求到達時刻までに目的地に到達することを、車両1に要求する。第2ユーザが第2モバイル端末に入力したサービス要件(たとえば、目的地及び要求到達時刻)が、第3サービス要求信号に含まれる。要求到達時刻は、第2使用期間内に設定される。車両1の現在地は、第2タスクの開始地点に相当する。
【0137】
車両1が上記第3サービス要求信号を受信すると、統合制御マネージャ115が車両1を自律モードにした後、ADK200が、
図4に示した一連の処理を開始する。第3サービス要求信号に応じた自動運転に係る処理は、基本的には、前述した第1サービス要求信号に応じた自動運転に係る処理と同じである。
【0138】
[他の実施の形態]
上記各実施の形態では、前回洗車から所定時間(Th1)経過した場合に洗車ルート探索条件が成立する(たとえば、
図5のS22参照)。しかしこれに限られず、車両1の前回洗車からの走行距離が所定値を超えた場合に洗車ルート探索条件が成立してもよい。
【0139】
たとえば、コンピュータ210は、
図10に示した処理に代えて、
図14に示す処理を実行してもよい。
図14は、
図10に示した処理の変形例を示すフローチャートである。
図14に示す処理は、S43(
図10)に代えてS43Aが採用されたこと以外は、
図10に示した処理と同じである。S43Aでは、コンピュータ210が、距離T2をリセットするとともに、距離T2の計測を開始する。距離T2は、たとえばコンピュータ210の記憶装置に記憶されている。車両1の洗車が行なわれるたびに、距離T2がリセットされ、距離T2の計測(累積)が開始される。距離T2は、車両1の前回洗車からの走行距離に相当する。車両1が直近に洗車されたタイミング(前回洗車時)を基準(ゼロ点)とする車両1の走行距離が、距離T2によって示される。
【0140】
さらに、コンピュータ210は、
図5に示した処理に代えて、
図15に示す処理を実行してもよい。
図15は、
図5に示した処理の変形例を示すフローチャートである。
図15に示す処理は、S22(
図5)に代えてS22Aが採用されたこと以外は、
図5に示した処理と同じである。S22Aでは、コンピュータ210が、
図14のS43Aで計測が開始された距離T2が所定の閾値(以下、「Th2」と表記する)を超えたか否かを判断する。Th2は、固定値であってもよいし、可変であってもよい。コンピュータ210は、気象情報と車両1のタスクの種類との少なくとも一方を用いてTh2を決定してもよい。
【0141】
車両1の前回洗車からの走行距離が長くなるほど車両1の清浄度は低下すると考えられる。このため、上記のように洗車ルート探索条件が設定されると、洗車が必要なタイミングで洗車ルート探索条件が成立しやすくなる。
【0142】
上記各実施の形態では、ルート探索で所定の要件を満たすルートが見つからなかった場合に(
図6のS102又は
図7のS202にてNO)、車両1による自動運転は開始されない。しかし、こうした構成は必須ではない。たとえば、所定の開始条件が成立する場合に、車両1による自動運転が開始されてもよい。
【0143】
コンピュータ210は、
図7に示した処理に代えて、
図16に示す処理を実行してもよい。
図16は、
図7に示した処理の変形例を示すフローチャートである。
図16に示す処理は、S205A及びS205Bが追加されたこと以外は、
図7に示した処理と同じである。
【0144】
図1~
図3とともに
図16を参照して、コンピュータ210は、S205において不適合通知をサーバ500へ送信した後、サーバ500からの返信を待つ。一方、車両1から不適合通知を受けたサーバ500は、要件を満たすルートが見つからない旨を示す信号をユーザ端末(たとえば、モバイル端末UT)へ送信する。ユーザ端末は、車両1を利用するユーザに帰属する端末である。ユーザ端末は、サーバ500から上記信号を受信すると、自動運転を許可するか否かの選択をユーザに要求する。また、ユーザが自動運転を許可する場合には、ユーザ端末は、S201で見つかった各ルート候補を、ルートごとの目的地到達時刻(予想時刻)とともに地図上に表示し、走行ルートとしていずれかのルートを選択することを、ユーザに要求する。ユーザ端末から要求された情報をユーザがユーザ端末に入力すると、ユーザの入力結果を示す信号がユーザ端末からサーバ500へ送信される。サーバ500は、ユーザ端末から上記信号を受信すると、ユーザの入力結果を示すユーザ信号をコンピュータ210へ送信する。
【0145】
コンピュータ210は、サーバ500から上記ユーザ信号を受信すると、S205Aにおいて、ユーザ信号(ユーザの入力結果)に基づいて、自動運転が許可されたか否かを判断する。ユーザが自動運転を許可した場合には(S205AにてYES)、コンピュータ210は、S205Bにおいて、ユーザが選んだルート(ユーザ信号が示すルート)を、走行ルートとして決定する。これにより、
図7に示す一連の処理(
図5のS24)は終了し、処理が
図4のS13に進む。この場合、
図4のS16によって、車両1による自動運転が開始される。他方、ユーザが自動運転を許可しなかった場合には(S205AにてNO)、
図7に示す一連の処理とともに
図4に示す一連の処理が終了する。この場合、車両1による自動運転は開始されない。
【0146】
なお、
図6に示した処理に、上記S205A及びS205Bに準ずるステップを追加してもよい。また、
図6のS103又は
図7のS203において所定の要件を満たすルートが複数見つかった場合に、ユーザによって1つの走行ルートが選択されるようにしてもよい。
【0147】
上記各実施の形態に係るコンピュータ210の機能(特に、
図3に示した探索部51、自動運転部52、及び洗車部53の機能)の少なくとも一部は、クラウドコンピューティングによってクラウド上に実装されてもよいし、制御装置150に実装されてもよい。たとえば、制御装置150が、コンピュータ210の代わりに
図4~
図7、
図9、及び
図10に示した処理を実行してもよい。こうした形態では、制御装置150が、本開示に係る「コンピュータ」の一例として機能する。
【0148】
上記各実施の形態に係るコンピュータ210の機能(特に、
図3に示した探索部51、自動運転部52、及び洗車部53の機能)の少なくとも一部は、モバイル端末UTに実装されてもよい。たとえば、モバイルアプリによって探索部51、自動運転部52、及び洗車部53が具現化されてもよい。モバイル端末UTは、コンピュータ210の代わりに
図4~
図7、
図9、及び
図10に示した処理を実行してもよい。モバイル端末UTは、必要に応じて、車両1及びサーバ500の各々から情報を取得してもよいし、車両1に車両制御を要求してもよい。こうした形態では、モバイル端末UTが、本開示に係る「コンピュータ」の一例として機能する。
【0149】
上記各実施の形態に係るコンピュータ210の機能(特に、
図3に示した探索部51、自動運転部52、及び洗車部53の機能)の少なくとも一部は、オンプレミスサーバ(サーバ500)に実装されてもよい。サーバ500は、コンピュータ210の代わりに
図4~
図7、
図9、及び
図10に示した処理を実行してもよい。サーバ500は、必要に応じて、車両1及びモバイル端末UTの各々から情報を取得してもよいし、車両1に車両制御を要求してもよい。こうした形態では、サーバ500が、本開示に係る「コンピュータ」の一例として機能する。
【0150】
車両の構成は、上記実施の形態で説明した構成(
図1~
図3参照)に限られない。ベース車両が後付けなしの状態で自動運転機能を有してもよい。自動運転のレベルは、完全自動運転(レベル5)であってもよいし、条件付きの自動運転(たとえば、レベル4)であってもよい。車両の構成は、無人走行専用の構成に適宜変更されてもよい。たとえば、無人走行専用の車両は、人が車両を操作するための部品(ステアリングホイールなど)を備えなくてもよい。
【0151】
車両は、ソーラーパネルを備えてもよいし、飛行機能を備えてもよい。車両は、走行中充電又は非接触充電のための充電器を備えてもよい。車両は、乗用車に限られず、バス又はトラックであってもよい。車両は、個人が所有する車両(POV)であってもよい。車両は、ユーザの使用目的に応じてカスタマイズされる多目的車両であってもよい。車両は、移動店舗車両、無人搬送車(AGV)、又は農業機械であってもよい。車両は、無人又は1人乗りの小型BEV(たとえば、マイクロパレット)であってもよい。
【0152】
上述した実施の形態及び各変形例は任意に組み合わせて実施されてもよい。
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示により示される技術的範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0153】
1 車両、2 VP、51 探索部、52 自動運転部、53 洗車部、100 ベース車両、102 制御システム、115 統合制御マネージャ、130 通信装置、150 制御装置、170 NAVI、180 リーダ、200 ADK、202 ADS、210 コンピュータ、300 自動洗車機、500 サーバ、UT モバイル端末。