(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】電動車両および電動車両システム
(51)【国際特許分類】
B60L 53/66 20190101AFI20241112BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20241112BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
B60L53/66
B60L53/14
H02J7/00 P
(21)【出願番号】P 2022029650
(22)【出願日】2022-02-28
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堤 大介
【審査官】柳幸 憲子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-127296(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110816359(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 53/66
B60L 53/14
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の通信規格の少なくとも1つのバージョンに対応する電力スタンドからの充電、および、前記電力スタンドへの給電の少なくとも一方を含む電力制御が可能な電動車両であって、
前記所定の通信規格の複数のバージョンに対応する通信部と、
前記電動車両と前記電力スタンドとの間の電力制御プロトコル通信が前記所定の通信規格を用いて行われるように、前記通信部を制御する制御部と、を備え、
前記通信部は、前記複数のバージョンの各々に対応する過去の前記電力制御プロトコル通信の実績に関する情報を取得し、
前記複数のバージョンは、予め優先度が設定されており、
前記制御部は、前記電力制御プロトコル通信に用いられる前記バージョンを、
前記実績に関する情報と前記優先度
とに基づいて決定する、電動車両。
【請求項2】
前記複数のバージョンは、第1バージョンと、前記第1バージョンよりも優先度が低い第2バージョンとを含み、
前記制御部は、前記電力制御プロトコル通信において、前記第1バージョンを用いた通信が失敗した場合に、前記第2バージョンを用いた通信に切り替える制御を行う、請求項1に記載の電動車両。
【請求項3】
前記制御部は、前記電力制御プロトコル通信において、前記第1バージョンを用いた通信が失敗した場合に、前記第1バージョンよりも優先度が1段階低い前記第2バージョンを用いた通信に切り替える制御を行う、請求項2に記載の電動車両。
【請求項4】
前記実績に関する情報は、過去における前記電力制御プロトコル通信の可否に関する情報を含み、
前記複数のバージョンは、過去において前記電力制御プロトコル通信が可能であった前記バージョンと、過去において前記電力制御プロトコル通信が不可であった前記バージョンとを含み、
前記制御部は、過去において前記電力制御プロトコル通信が可能であった前記バージョンを、前記電力制御プロトコル通信に用いられる前記バージョンとして決定する、請求項
1~3のいずれか1項に記載の電動車両。
【請求項5】
前記制御部は、過去において前記電力制御プロトコル通信が可能であった前記バージョンが複数ある場合に、過去において前記電力制御プロトコル通信が可能であった前記複数のバージョンのうち最も優先度が高い前記バージョンを、前記電力制御プロトコル通信に用いられる前記バージョンとして決定する、請求項
4に記載の電動車両。
【請求項6】
前記制御部は、前記電力制御プロトコル通信において、過去において前記電力制御プロトコル通信が可能であった前記複数のバージョンを用いた通信が全て失敗した場合に、過去において前記電力制御プロトコル通信が不可であった前記バージョンを用いた通信に切り替える制御を行う、請求項
5に記載の電動車両。
【請求項7】
前記制御部は、過去において前記電力制御プロトコル通信が不可であった前記バージョンを用いた通信が成功した場合に、前記電力制御プロトコル通信が成功した前記バージョンに対応する前記電力制御プロトコル通信の可否に関する情報が更新されるように、前記通信部を制御する、請求項
6に記載の電動車両。
【請求項8】
前記通信部は、前記電力制御プロトコル通信の前記実績に関する情報が格納されている第1サーバと通信するように構成されており、
前記制御部は、前記電力制御プロトコル通信の前記実績に関する情報が前記第1サーバから取得されるように、前記通信部を制御する、請求項
1~
7のいずれか1項に記載の電動車両。
【請求項9】
前記通信部は、前記優先度に関する情報が格納されている第2サーバと通信するように構成されており、
前記制御部は、前記優先度に関する情報が前記第2サーバから取得されるように、前記通信部を制御する、請求項1~
8のいずれか1項に記載の電動車両。
【請求項10】
所定の通信規格の少なくとも1つのバージョンに対応する電力スタンドと、
前記電力スタンドからの充電、および、前記電力スタンドへの給電の少なくとも一方を含む電力制御が可能な電動車両と、を備え、
前記電動車両は、前記所定の通信規格の複数のバージョンに対応する通信部と、前記電動車両と前記電力スタンドとの間の電力制御プロトコル通信が前記所定の通信規格を用いて行われるように、前記通信部を制御する制御部と、を含み、
前記通信部は、前記複数のバージョンの各々に対応する過去の前記電力制御プロトコル通信の実績に関する情報を取得し、
前記複数のバージョンは、予め優先度が設定されており、
前記制御部は、前記電力制御プロトコル通信に用いられる前記バージョンを、
前記実績に関する情報と前記優先度
とに基づいて決定する、電動車両システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動車両および電動車両システムに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開2020-127296号公報(特許文献1)に記載の充電システムは、互いに電気的に接続される車両と充電器とを備える。車両は、規定の通信シーケンスに従ってメッセージの送受信を制御することによってバッテリを充電するCPUを備える。上記CPUは、充電器から受信したメッセージが予め定められた特定信号である場合に、特定信号が表す内容に拘わらず通信シーケンスを進める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、上記のように、車両のCPUは、充電器から受信したメッセージが予め定められた特定信号である場合に、特定信号が表す内容に拘わらず通信シーケンスを進める。しかしながら、上記特許文献1では、車両と充電器との間の充電プロトコル通信に用いられる通信規格について考慮されていない。たとえば、車両が所定の通信規格の複数のバージョンに対応可能な場合、複数のバージョンのうちの1つがランダムに選択されることに起因して、充電プロトコル通信に不適切なバージョンが充電プロトコル通信に用いられる場合がある。この場合、車両を充電することが困難になると考えられる。したがって、電動車両が所定の通信規格の複数のバージョンに対応している場合に、充電等の電力制御を適切に行うことが可能な電動車両が望まれている。
【0005】
本開示は、かかる課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、電動車両が所定の通信規格の複数のバージョンに対応している場合に、充電等の電力制御を適切に行うことが可能な電動車両および電動車両システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の局面に従う電動車両は、所定の通信規格の少なくとも1つのバージョンに対応する電力スタンドからの充電、および、電力スタンドへの給電の少なくとも一方を含む電力制御が可能な電動車両であって、所定の通信規格の複数のバージョンに対応する通信部と、電動車両と電力スタンドとの間の電力制御プロトコル通信が所定の通信規格を用いて行われるように、通信部を制御する制御部と、を備え、複数のバージョンは、予め優先度が設定されており、制御部は、電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンを、上記優先度に基づいて決定する。
【0007】
上記第1の局面に従う電動車両では、上記のように、制御部は、電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンを、上記優先度に基づいて決定する。これにより、上記優先度に基づいて所定の通信規格のバージョンが選択されるので、電力制御プロトコル通信に不適切なバージョンがランダムに選択される可能性を容易に低減することができる。したがって、電動車両が所定の通信規格の複数のバージョンに対応している場合に、適切なバージョンを容易に選択することができるとともに電力制御を適切に行うことができる。
【0008】
上記第1の局面に従う電動車両において、好ましくは、複数のバージョンは、第1バージョンと、第1バージョンよりも優先度が低い第2バージョンとを含み、制御部は、電力制御プロトコル通信において、第1バージョンを用いた通信が失敗した場合に、第2バージョンを用いた通信に切り替える制御を行う。このように構成すれば、優先度が比較的高い第1バージョンを用いた通信が失敗しても第2バージョンを用いた通信が可能であるので、第1バージョンのみにより通信を試みる場合に比べて、電力制御プロトコル通信が失敗するのをより確実に抑制することができる。
【0009】
この場合、好ましくは、制御部は、電力制御プロトコル通信において、第1バージョンを用いた通信が失敗した場合に、第1バージョンよりも優先度が1段階低い第2バージョンを用いた通信に切り替える制御を行う。このように構成すれば、第1バージョンの次に優先度が高い第2バージョンによる通信の可否を優先的に確認することができる。
【0010】
上記第1の局面に従う電動車両において、好ましくは、通信部は、複数のバージョンの各々に対応する過去の電力制御プロトコル通信の実績に関する情報を取得し、制御部は、電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンを、実績に関する情報と優先度とに基づいて決定する。このように構成すれば、優先度に加えて電力制御プロトコル通信の実績も考慮して電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンを決定することができる。その結果、優先度のみに基づいて電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンを決定する場合に比べて、電力制御プロトコル通信が失敗するのをより確実に抑制することができる。
【0011】
この場合、好ましくは、上記実績に関する情報は、過去における電力制御プロトコル通信の可否に関する情報を含み、複数のバージョンは、過去において電力制御プロトコル通信が可能であったバージョンと、過去において電力制御プロトコル通信が不可であったバージョンとを含み、制御部は、過去において電力制御プロトコル通信が可能であったバージョンを、電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンとして決定する。このように構成すれば、過去において電力制御プロトコル通信が不可であったバージョンが選択されるのを抑制することができるので、電力制御プロトコル通信が失敗するのをより一層確実に抑制することができる。
【0012】
上記実績に関する情報が電力制御プロトコル通信の可否に関する情報を含む電動車両において、好ましくは、制御部は、過去において電力制御プロトコル通信が可能であったバージョンが複数ある場合に、過去において電力制御プロトコル通信が可能であった複数のバージョンのうち最も優先度が高いバージョンを、電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンとして決定する。このように構成すれば、過去において電力制御プロトコル通信が可能であった複数のバージョンの中でも最も電力制御プロトコル通信に適切なバージョンを、電力制御プロトコル通信に用いることができる。
【0013】
この場合、好ましくは、制御部は、電力制御プロトコル通信において、過去において電力制御プロトコル通信が可能であった複数のバージョンを用いた通信が全て失敗した場合に、過去において電力制御プロトコル通信が不可であったバージョンを用いた通信に切り替える制御を行う。このように構成すれば、過去において電力制御プロトコル通信が不可であったバージョンに切り替えない場合に比べて、電力制御プロトコル通信が成功する可能性を高くすることができる。
【0014】
上記過去において電力制御プロトコル通信が不可であったバージョンを用いた通信に切り替える制御を行う電動車両において、好ましくは、制御部は、過去において電力制御プロトコル通信が不可であったバージョンを用いた通信が成功した場合に、電力制御プロトコル通信が成功したバージョンに対応する電力制御プロトコル通信の可否に関する情報が更新されるように、通信部を制御する。このように構成すれば、次回の電力制御プロトコル通信において、電力制御プロトコル通信の可否に関する最新の情報に基づいて、電力制御プロトコル通信に用いるバージョンを決定することができる。
【0015】
上記第1の局面に従う電動車両において、好ましくは、通信部は、電力制御プロトコル通信の実績に関する情報が格納されている第1サーバと通信するように構成されており、制御部は、電力制御プロトコル通信の実績に関する情報が第1サーバから取得されるように、通信部を制御する。このように構成すれば、電動車両に上記実績に関する情報を格納する必要がない。その結果、電動車両の記憶装置等に上記実績に関する情報を格納する手間を省略することができる。また、電動車両の記憶装置等に格納されるデータ容量を小さくすることができる。
【0016】
上記第1の局面に従う電動車両において、好ましくは、通信部は、優先度に関する情報が格納されている第2サーバと通信するように構成されており、制御部は、優先度に関する情報が第2サーバから取得されるように、通信部を制御する。このように構成すれば、電動車両に上記優先度に関する情報を格納する必要がない。その結果、電動車両の記憶装置等に上記優先度に関する情報を格納する手間を省略することができる。また、電動車両の記憶装置等に格納されるデータ容量をより小さくすることができる。
【0017】
本開示の第2の局面に従う電動車両システムは、所定の通信規格の少なくとも1つのバージョンに対応する電力スタンドと、電力スタンドからの充電、および、電力スタンドへの給電の少なくとも一方を含む電力制御が可能な電動車両と、を備え、電動車両は、所定の通信規格の複数のバージョンに対応する通信部と、電動車両と電力スタンドとの間の電力制御プロトコル通信が所定の通信規格を用いて行われるように、通信部を制御する制御部と、を含み、複数のバージョンは、予め優先度が設定されており、制御部は、電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンを、優先度に基づいて決定する。
【0018】
上記第2の局面に従う電動車両システムでは、上記のように、制御部は、電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンを、上記優先度に基づいて決定する。これにより、上記優先度に基づいて所定の通信規格のバージョンが選択されるので、電力制御プロトコル通信に不適切なバージョンがランダムに選択される可能性を容易に低減することができる。したがって、電動車両が所定の通信規格の複数のバージョンに対応している場合に、適切なバージョンを容易に選択することができるとともに電力制御を適切に行うことが可能な電動車両システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、電動車両が所定の通信規格の複数のバージョンに対応している場合に、充電等の電力制御を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施の形態に係る電動車両、EVSE、および、サーバの構成を示す図である。
【
図2】第1および第2実施の形態に係る所定の通信規格の各バージョンと優先度との関係を示す図である。
【
図3】第1実施の形態に係る電動車両、EVSE、および、サーバ間のシーケンス制御を示す図である。
【
図4】第2実施の形態に係る電動車両、EVSE、および、サーバの構成を示す図である。
【
図5】第2実施の形態に係る所定の通信規格の各バージョンと電力制御プロトコル通信の実績との関係を示す図である。
【
図6】第2実施の形態に係る電動車両、EVSE、および、サーバ間のシーケンス制御を示す図である。
【
図7】第2実施の形態に係る所定の通信規格の各バージョンと電力制御プロトコル通信の実績との更新後の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0022】
[第1実施の形態]
図1は、本開示の第1実施の形態に係る電動車両10および電動車両システム1の概略的な構成を示す図である。
【0023】
電動車両システム1は、電動車両10と、EVSE(Electric Vehicle Supply Equipment)20とを備える。EVSE20は、本開示の「電力スタンド」の一例である。
【0024】
電動車両10は、EVSE20と所定の通信規格により通信可能に構成されている。所定の通信規格は、たとえば、CHAdeMO規格、GB/T規格、または、CSS(Communications Standards Summary)規格などを含む。
【0025】
サーバ100は、電動車両10とEVSE20との通信を管理するサーバである。サーバ100は、電動車両10およびEVSE20の各々と通信可能に構成されている。なお、サーバ100は、本開示の「第2サーバ」の一例である。
【0026】
サーバ100は、プロセッサ101と、メモリ102と、通信部103とを含む。プロセッサ101は、所定の情報処理を行う。メモリ102は、各種情報を保存可能に構成される。メモリ102には、プロセッサ101に実行されるプログラムのほか、プログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、及び各種パラメータ)が記憶されている。通信部103は、各種通信I/Fを含む。
【0027】
また、サーバ100は、登録された複数の電動車両10の情報(以下、「車両情報」とも称する)と、登録された各ユーザの情報(以下、「ユーザ情報」とも称する)と、登録されたEVSE20の情報(以下、「EVSE情報」とも称する)と、を管理するように構成される。ユーザ情報、車両情報、および、EVSE情報は、識別情報(ID)で区別されてメモリ102に記憶されている。
【0028】
ユーザIDは、ユーザを識別するための識別情報であり、ユーザに携帯される携帯端末16を識別する情報(端末ID)としても機能する。サーバ100は、携帯端末16から受信した情報をユーザIDごとに区別して保存するように構成される。ユーザ情報には、ユーザが携帯する携帯端末16の通信アドレスと、ユーザに帰属する電動車両10の車両IDとが含まれる。
【0029】
車両IDは、電動車両10を識別するための識別情報である。車両IDは、ナンバープレートであってもよいし、VIN(Vehicle Identification Number)であってもよい。車両情報には、各電動車両10の行動予定が含まれる。
【0030】
EVSE-IDは、EVSE20を識別するための識別情報である。EVSE情報には、各EVSE20の通信アドレスと、各EVSE20に接続された電動車両10の状態とが含まれる。また、EVSE情報には、互いに接続されている電動車両10とEVSE20との組合せを示す情報(たとえば、EVSE-IDと車両IDとの組合せ)も含まれる。
【0031】
電動車両10は、EVSE20からの充電(外部充電)およびEVSE20への給電(外部給電)を含む電力制御が可能に構成されている。電動車両10は、たとえば、PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)車、BEV(Battery Electric Vehicle)車、および、FCEV(Fuel Cell Electric Vehicle)車を含む。また、電動車両10は、個人が所有する車両(POV(Personally Owned Vehicle))と、MaaS(Mobility as a Service)事業者が管理する車両(MaaS車両)との少なくとも一方を含んでもよい。なお、電動車両10は、外部給電および外部充電の一方のみが可能に構成されていてもよい。
【0032】
電動車両10は、走行用モータ11と、バッテリ12と、通信部13と、ECU(Electronic Control Unit)14と、充放電器15とを備える。
【0033】
バッテリ12は、走行用モータ11へ電力を供給する。バッテリ12は、走行用の電力を蓄電する二次電池を含む。二次電池は、複数のリチウムイオン電池または複数のニッケル水素電池を含む組電池である。なお、二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタのような他の蓄電装置を採用してもよい。
【0034】
また、通信部13は、サーバ100およびEVSE20の各々と通信する。通信部13は、DCM(Data Communication Module)または5G(第5世代移動通信システム)対応の通信I/Fを含んでいてもよい。
【0035】
ECU14は、バッテリ12の電力制御(充電制御および放電制御)を行う。ECU14は、プロセッサ14aおよび記憶装置14bを含む。ECU14は、コンピュータまたはCPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶装置14bは、格納された情報を保存可能に構成される。記憶装置14bには、プログラムのほか、プログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、および、各種パラメータ)が記憶されている。記憶装置14bに記憶されているプログラムをプロセッサ14aが実行することで、ECU14における各種制御が実行される。なお、プロセッサ14aは、本開示の「制御部」の一例である。
【0036】
EVSE20は、車両用給電設備を意味する。電動車両10は、EVSE20に電気的に接続可能に構成される。たとえば、EVSE20につながる充電ケーブル30が電動車両10のインレットに接続されることによって、EVSE20と電動車両10との間で電力の授受を行うことが可能になる。電動車両システム1に管理されているEVSE20の数は任意であり、5個程度であってもよいし、10個以上であってもよいし、100個以上であってもよい。
【0037】
EVSE20は、DC方式のEVSEを含む。したがって、電動車両10からEVSE20へ直流電力が供給され、EVSE20に内蔵されるインバータによってDC/AC変換が行なわれる。電動車両10のバッテリ12の充放電電力を調整する充放電器15は、たとえばDC/DCコンバータによって充放電電力を調整するように構成される。ただし、EVSE20がDC方式であることは必須ではなく、AC方式であってもよい。
【0038】
また、EVSE20は、上記所定の通信規格の少なくとも1つのバージョンに対応する。第1実施の形態では、EVSE20は、上記所定の通信規格のバージョンA、バージョンB、および、バージョンCに対応している。また、第1実施の形態では、バージョンA、バージョンB、バージョンCの順に新しいバージョンである。
【0039】
また、電動車両10の通信部13は、上記所定の通信規格の複数のバージョンに対応している。第1実施の形態では、EVSE20は、上記所定の通信規格のバージョンA、バージョンB、および、バージョンCに対応している。なお、電動車両10およびEVSE20の各々に対応しているバージョンが互いに同じである例を記載したが、対応するバージョンが互いに異なっていてもよい。
【0040】
また、電動車両10のプロセッサ14aは、電動車両10とEVSE20との間の電力制御プロトコル通信が上記所定の通信規格を用いて行われるように、通信部13を制御する。具体的には、プロセッサ14aは、通信部13とEVSE20との間の電力制御プロトコル通信に用いられる上記所定の通信規格のバージョンを決定する制御を行う。上記バージョンの決定方法については、後に詳細に説明する。なお、第1実施の形態における電力制御プロトコル通信とは、電力制御を開始するために必要な電動車両10とEVSE20との間におけるプロトコルを決定するための通信を意味する。
【0041】
また、上記所定の通信規格の複数のバージョン(A~C)は、予め優先度(優先順位)が設定されている。たとえば、新しいバージョンの順(すなわち、A、B、Cの順)に優先度が高く設定されている。上記優先度に関する情報は、サーバ100のメモリ102に格納されている。具体的には、メモリ102には、優先度と所定の通信規格のバージョンとの関係が格納されている。メモリ102には、優先度と所定の通信規格のバージョンとが対応付けられたテーブルが格納されていてもよい。
【0042】
ここで、従来、EVSEから受信したメッセージが予め定められた特定信号である場合に特定信号が表す内容に拘わらず通信シーケンスを進める電動車両を備える充電システムが知られている。しかしながら、この充電システムは、電動車両とEVSEとの充電プロトコル通信に用いられる通信規格について考慮していない。たとえば、車両が所定の通信規格の複数のバージョンに対応可能な場合、複数のバージョンのうちの1つがランダムに選択されることに起因して、充電プロトコル通信に不適切なバージョンが充電プロトコル通信に用いられる場合がある。この場合、車両を充電することが困難になると考えられる。したがって、電動車両が所定の通信規格の複数のバージョンに対応している場合に、充電等の電力制御を適切に行うことが可能な電動車両(電動車両システム)が望まれている。
【0043】
そこで、第1実施の形態では、電動車両10のプロセッサ14aは、電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンを、上記優先度に基づいて決定する。具体的には、プロセッサ14aは、上記優先度に関する情報がサーバ100(メモリ102)から取得されるように、通信部13を制御する。そして、プロセッサ14aは、取得された上記優先度と複数のバージョン(A~C)との関係に関する情報に基づいて、電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンを選択する。
【0044】
詳細には、プロセッサ14aは、複数のバージョン(A~C)のうち最も優先度が高いバージョンAを、電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンとして(最初に)選択する。
【0045】
また、第1実施の形態では、プロセッサ14aは、電力制御プロトコル通信において、バージョンAを用いた通信が失敗した場合に、バージョンAよりも優先度が1段階低いバージョンBを用いた通信に切り替える制御を行う。この場合におけるバージョンAおよびバージョンBは、それぞれ、本開示の「第1バージョン」および「第2バージョン」の一例である。なお、通信の「失敗」は、たとえば、車両からの要求信号に対して所定期間内に応答信号がEVSEから返って来ない場合や、リトライ動作をしてもEVSEから応答がない場合などを含む。
【0046】
その後、プロセッサ14aは、電力制御プロトコル通信において、バージョンBを用いた通信にも失敗した場合、バージョンBよりも優先度が1段階低いバージョンCを用いた通信に切り替える制御を行う。この場合におけるバージョンBおよびバージョンCは、それぞれ、本開示の「第1バージョン」および「第2バージョン」の一例である。
【0047】
(シーケンス制御)
次に、
図3のシーケンス図を参照して、電力制御プロトコル通信に用いる所定の通信規格のバージョンの決定方法を説明する。なお、
図3は、電力制御が始まるまでのプロトコル通信に用いるバージョンを決定する方法を説明するための図である。
【0048】
まず、ステップS1では、サーバ100は、電動車両10(通信部13)に、上記優先度に関する情報(優先度と所定の通信規格のバージョンとの関係に関する情報、
図2参照)を送信する。この際、電動車両10(プロセッサ14a)は、サーバ100(メモリ102)から上記優先度に関する情報が取得されるように、通信部13を制御する。
【0049】
次に、ステップS2では、プロセッサ14aは、ステップS1において取得された上記優先度に関する情報に基づいて、最も優先度が高いバージョン(バージョンA)を、EVSE20との通信に用いるバージョンとして選択する。
【0050】
これにより、ステップS3では、電動車両10(通信部13)とEVSE20との間においてバージョンAを用いた通信が開始される。その結果、電動車両10とEVSE20との間において、互いの情報の交換が可能となる。
【0051】
次に、ステップS4では、電動車両10(通信部13)は、EVSE20に、通信に用いられるバージョンの情報を送信する。具体的には、通信部13は、EVSE20に対する通信にバージョンAを用いることをEVSE20に伝達する。
【0052】
次に、ステップS5では、ステップS4において電動車両10からEVSE20に伝達された情報に基づいて、電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンが決定される。たとえば、電動車両10およびEVSE20は、ステップS2において選択されたバージョンAを互いに使用することにより電力制御プロトコル通信を行うことを決定してもよい。
【0053】
次に、ステップS6では、プロセッサ14aは、バージョンAを用いた電力制御プロトコル通信が失敗するか否かを判定(通信互換性を判定)する。具体的には、上記判定は、粘着チェック段階、絶縁試験段階、ハンドシェーク段階、および、電力制御諸元配置段階を含んでいてもよい。
【0054】
粘着チェック段階では、電動車両10に設けられる接触器が粘着していないか否かが判定される。絶縁試験段階では、互いに電気的に接続された状態の電動車両10とEVSE20との間の配線同士の絶縁性が判定される。ハンドシェーク段階では、電動車両10とEVSE20との間において、充電(放電)互換性情報や識別メッセージの交換が行われる。電力制御諸元配置段階では、電動車両10およびEVSE20は、各種の充電(放電)諸元メッセージを送受信して、双方に充電(放電)可能かを判断する。
【0055】
ステップS6において、電力制御プロトコル通信が失敗したと判定された場合(S6においてYes)、処理はステップS61に進む。ステップS6において、電力制御プロトコル通信が成功したと判定された場合(S6においてNo)、処理はステップS7に進む。
【0056】
ステップS61では、プロセッサ14aは、電力制御プロトコル通信の可否が確認されていないバージョンがあるか否かを判定する。ステップS61において、電力制御プロトコル通信の可否が確認されていないバージョンがあると判定された場合(S61においてYes)、処理はステップS62に進む。ステップS61において、電力制御プロトコル通信の可否が確認されていないバージョンがないと判定された場合(S61においてNo)、処理は終了する。具体的には、1回目のステップS61の時点では、バージョンBおよびCを用いた電力制御プロトコル通信の可否は確認されていない。したがって、処理はステップS61からステップS62に進む。
【0057】
ステップS62では、プロセッサ14aは、電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンを、電力制御プロトコル通信の可否が確認されていないバージョンのうち優先度が1段階下げられたバージョンに切り替える。すなわち、プロセッサ14aは、電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンを、電力制御プロトコル通信の可否が確認されていないバージョンのうち優先度が最も高いバージョンに切り替える。具体的には、ステップS6においてバージョンAによる電力制御プロトコル通信が失敗したと判定された場合、電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンは、バージョンAの次に優先度が高いバージョンBに切り替えられる。
【0058】
その後、処理はステップS2とS3との間に戻り、ステップS3以降の処理が繰り返される。具体的には、2回目のステップS6では、ステップS62において切り替えられたバージョンBによる電力制御プロトコル通信が失敗するか否かが判定される。その後、処理がステップS62に進んだ場合、電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンが、バージョンBの次に優先度が高いバージョンCに切り替えられる。
【0059】
その後、処理は再びステップS2とS3との間に戻る。3回目のステップS6では、ステップS62において切り替えられたバージョンCによる電力制御プロトコル通信が失敗するか否かが判定される。その後、処理がステップS61に進んだ場合、電力制御プロトコル通信の可否が確認されていないバージョンがないと判定されるので(S61においてNo)、処理は終了する。
【0060】
一方、ステップS7では、ステップS6において電力制御プロトコル通信が可能であると判定されたバージョンに基づいて、電動車両10とEVSE20との間における電力制御が開始される。
【0061】
[第2実施の形態]
次に、本開示の第2実施の形態に係る電動車両110(電動車両システム21)における制御について説明する。第2実施の形態では、上記優先度のみに基づいて電力制御プロトコル通信に用いられる所定の通信規格のバージョンが決定されている上記第1実施の形態とは異なり、上記優先度と電力制御プロトコル通信の実績とに基づいて上記バージョンが決定されている。なお、上記第1実施の形態と同じ構成については、上記第1実施の形態と同じ符号を付すとともに、詳細な説明は繰り返さない。
【0062】
図4は、本開示の第2実施の形態に係る電動車両110および電動車両システム21の概略的な構成を示す図である。
【0063】
電動車両システム21は、電動車両110と、EVSE20とを備える。
【0064】
サーバ200は、電動車両110とEVSE20との通信を管理するサーバである。サーバ200は、電動車両110およびEVSE20の各々と通信可能に構成されている。なお、サーバ200は、本開示の「第1サーバ」および「第2サーバ」の一例である。
【0065】
サーバ200は、プロセッサ201と、メモリ202と、通信部203とを含む。プロセッサ201は、所定の情報処理を行う。メモリ202は、各種情報を保存可能に構成される。メモリ202には、プロセッサ201に実行されるプログラムのほか、プログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、及び各種パラメータ)が記憶されている。通信部203は、各種通信I/Fを含む。
【0066】
サーバ200のメモリ202には、上記第1実施の形態の優先度に関する情報に加えて、電力制御プロトコル通信の実績に関する情報が格納されている。電力制御プロトコル通信の実績に関する情報は、過去(前回)における電力制御プロトコル通信の可否に関する情報を含む。具体的には、
図5に示すように、メモリ202には、バージョンA~Cの各々に対応する過去(前回)の電力制御プロトコル通信の可否に関する情報が格納されている。たとえば、メモリ202には、優先度と、バージョン情報と、上記実績とが対応付けられたテーブルが格納されていてもよい。なお、第2実施の形態では、一例として、過去におけるバージョンAを用いた電力制御プロトコル通信が失敗であるとともに、過去におけるバージョンBおよびCを用いた電力制御プロトコル通信が成功であるとする。
【0067】
図4に示すように、電動車両110は、通信部113と、ECU114とを備える。通信部113は、サーバ200およびEVSE20の各々と通信する。ECU114は、プロセッサ114aおよび記憶装置114bを含む。記憶装置114bに記憶されているプログラムをプロセッサ114aが実行することで、ECU114における各種制御が実行される。なお、プロセッサ114aは、本開示の「制御部」の一例である。
【0068】
プロセッサ114aは、上記電力制御プロトコル通信の実績に関する情報(
図5参照)がサーバ200(メモリ202)から取得されるように、通信部113を制御する。すなわち、通信部113は、プロセッサ114aによる制御(指令)に基づいて、バージョンA~Cの各々に対応する過去の電力制御プロトコル通信の実績に関する情報をメモリ202から取得する。
【0069】
第2実施の形態では、プロセッサ114aは、電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンを、上記実績に関する情報と上記優先度とに基づいて決定する。すなわち、プロセッサ114aは、上記優先度と過去(前回)における電力制御プロトコル通信の可否に関する情報とに基づいて、電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンを決定する。
【0070】
具体的には、プロセッサ114aは、過去(前回)において電力制御プロトコル通信が可能であったバージョン(以下において、実績が「可」のバージョンと称する)を、電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンとして決定する。詳細には、プロセッサ114aは、実績が「可」のバージョンが複数ある場合に、実績が「可」の複数のバージョンのうち最も優先度が高いバージョンを、電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンとして決定する。第2実施の形態では、上記のように、バージョンBおよびCの実績が「可」であるので、優先度が高いバージョンBが電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンとして(最初に)決定される。
【0071】
また、プロセッサ114aは、実績が「可」のバージョンによる電力制御プロトコル通信が失敗した場合に、上記失敗したバージョンよりも優先度が1段階低いバージョンを用いた通信に切り替える制御を行う。すなわち、プロセッサ114aは、バージョンBによる電力制御プロトコル通信が失敗した場合、電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンとしてバージョンCを次に選択する。
【0072】
また、プロセッサ114aは、電力制御プロトコル通信において、実績が「可」の複数のバージョンを用いた通信が全て失敗した場合に、過去において電力制御プロトコル通信が不可であったバージョン(以下において、実績が「不可」のバージョンと称する)を用いた通信に切り替える制御を行う。具体的には、プロセッサ114aは、バージョンBおよびCによる電力制御プロトコル通信が失敗した場合、電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンとしてバージョンAを次に選択する。なお、プロセッサ114aは、実績が「不可」のバージョンが複数ある場合、実績が「不可」の複数のバージョンの各々に基づく通信可否を優先度が高い順に確認する。
【0073】
また、プロセッサ114aは、実績が「不可」のバージョンを用いた電力制御プロトコル通信が成功した場合に、上記成功したバージョンに対応する電力制御プロトコル通信の可否に関する情報が更新されるように、通信部113を制御する。具体的には、バージョンAによる電力制御プロトコル通信が成功した場合は、サーバ200のメモリ202に格納されているバージョンAに対応する実績(可否)が「可」に変更される。
【0074】
なお、プロセッサ114aは、実績が「可」のバージョンを用いた通信が失敗した場合に、上記失敗したバージョンに対応する電力制御プロトコル通信の可否に関する情報が更新されるように、通信部113を制御する。具体的には、バージョンB(C)による電力制御プロトコル通信が失敗した場合は、サーバ200のメモリ202に格納されているバージョンB(C)に対応する実績(可否)が「不可」に変更される。
【0075】
(シーケンス制御)
次に、
図6のシーケンス図を参照して、電力制御プロトコル通信に用いる所定の通信規格のバージョンの決定方法を説明する。なお、
図6は、電力制御が始まるまでのプロトコル通信に用いるバージョンを決定する方法を説明するための図である。
【0076】
ステップS11~S13は、それぞれ、上記第1実施の形態のステップS1~S3(
図3参照)と同様であるので、ここでは説明は繰り返さない。
【0077】
ステップS14では、電動車両110(プロセッサ114a)は、電力制御が行われるEVSE20を特定する。たとえば、プロセッサ114aは、EVSE20から送信されるEVSE-IDやEVSE20の型番情報、または、GPS(Global Positioning System)機能等に基づき、EVSE20を特定してもよい。
【0078】
次に、ステップS15では、サーバ200は、ステップS14においてプロセッサ114aにより特定されたEVSE20に対応する過去(前回)における電力制御プロトコル通信の可否に関する情報(
図5参照)を、通信部113に送信する。すなわち、プロセッサ114aは、ステップS14において特定されたEVSE20に対応する電力制御プロトコル通信の可否に関する情報がサーバ200(メモリ202)から取得されるように、通信部113を制御する。
【0079】
次に、ステップS16では、プロセッサ114aは、ステップS15において取得された過去(前回)における電力制御プロトコル通信の可否に関する情報と上記優先度とに基づいて、電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンを決定する。具体的には、プロセッサ114aは、実績が「可」のバージョンBおよびCのうち最も優先度が高いバージョンBを、電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンとして決定する。なお、ステップS16の時点で実績が「可」のバージョンがない場合は、プロセッサ114aは、実績が「不可」のバージョンのうち優先度が最も高いバージョンを、電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンとして決定してもよい。
【0080】
次に、ステップS17では、ステップS16において決定されたバージョンによる、電動車両10(通信部113)とEVSE20との通信が開始される。
【0081】
次のステップS18およびS19は、それぞれ、上記第1実施の形態のステップS4およびS5(
図3参照)と同様であるので、ここでは説明は繰り返さない。
【0082】
次に、ステップS20では、プロセッサ114aは、バージョンBを用いた電力制御プロトコル通信が失敗するか否かを判定(通信互換性を判定)する。上記判定の具体例は、上記第1実施の形態と同様であるので、ここでは説明は繰り返さない。
【0083】
ステップS20において、電力制御プロトコル通信が失敗した場合(S20においてYes)、処理はステップS201に進む。ステップS20において、電力制御プロトコル通信が成功した場合(S20においてNo)、処理はステップS21に進む。
【0084】
ステップS201では、プロセッサ114aは、実績が「可」でかつ電力制御プロトコル通信の可否が確認されていないバージョンがあるか否を判定する。ステップS201において、実績が「可」でかつ電力制御プロトコル通信の可否が確認されていないバージョンがあると判定された場合(S201においてYes)、処理はステップS202に進む。ステップS201において、実績が「可」でかつ電力制御プロトコル通信の可否が確認されていないバージョンがないと判定された場合(S201においてNo)、処理はステップS203に進む。
【0085】
具体的には、1回目のステップS201の時点では、実績が「可」のバージョンBおよびCのうちバージョンBのみの電力制御プロトコル通信の可否が確認されている。すなわち、バージョンCを用いた電力制御プロトコル通信の可否は確認されていない。したがって、処理は、ステップS201からステップS202に進む。
【0086】
ステップS202では、プロセッサ114aは、電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンを、実績が「可」でかつ電力制御プロトコル通信の可否が確認されていないバージョンのうち優先度が1段階下げられたバージョンに切り替える。すなわち、ステップS202では、プロセッサ114aは、電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンを、実績が「可」でかつ電力制御プロトコル通信の可否が確認されていないバージョンのうち優先度が最も高いバージョンに切り替える。具体的には、ステップS20においてバージョンBによる電力制御プロトコル通信が失敗したと判定された場合、ステップS202では、電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンがバージョンBからバージョンCに切り替えられる。この場合のバージョンBおよびCは、それぞれ、本開示の「第1バージョン」および「第2バージョン」の一例である。
【0087】
その後、ステップS205では、プロセッサ114aは、サーバ200のメモリ202に格納されている電力制御プロトコル通信の実績が更新されるように、通信部113を制御する。具体的には、バージョンBによる電力制御プロトコル通信の実績が「否」に変更される。
【0088】
そして、処理はステップS16とS17との間に戻り、ステップS17以降の処理が繰り返される。この際、ステップS17では、ステップ202において切り替えられたバージョンによる通信が開始される。具体的には、2回目のステップS17では、バージョンCによる通信が開始される。また、2回目のステップS20では、バージョンCによる電力制御プロトコル通信が失敗するか否かが判定される。
【0089】
2回目のステップS201では、実績が「可」でかつ電力制御プロトコル通信の可否が確認されていないバージョンはないと判定される(S201においてNo)ので、処理はステップS203に進む。
【0090】
ステップS203では、プロセッサ114aは、過去(前回)の実績が「不可」でかつ電力制御プロトコル通信の可否が確認されていないバージョンがあるか否かを判定する。ステップS203において、過去の実績が「不可」でかつ電力制御プロトコル通信の可否が確認されていないバージョンがあると判定された場合(S203においてYes)、処理はステップ194に進む。ステップS203において、過去の実績が「不可」でかつ電力制御プロトコル通信の可否が確認されていないバージョンがないと判定された場合(S203においてNo)、処理は終了する。
【0091】
ステップS204では、プロセッサ114aは、電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンを、過去(前回)の実績が「不可」でかつ電力制御プロトコル通信の可否が確認されていないバージョンのうち優先度が最も高いバージョンに切り替える。具体的には、ステップS204では、プロセッサ114aは、電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンを、バージョンCからバージョンAに切り替える。
【0092】
その後、処理はステップS205に進み、バージョンCによる電力制御プロトコル通信の実績が「否」に変更される。
【0093】
そして、処理はステップS16とS17との間に再び戻り、ステップS17以降の処理が繰り返される。この際、ステップS17では、ステップ204において切り替えられたバージョンによる通信が開始される。具体的には、3回目のステップS17では、バージョンAによる通信が開始される。また、3回目のステップS20では、バージョンAによる電力制御プロトコル通信が失敗するか否かが判定される。
【0094】
3回目のステップS201では、実績が「可」でかつ電力制御プロトコル通信の可否が確認されていないバージョンはないと判定されるので、処理はステップS203に進む。また、2回目のステップS203では、実績が「不可」でかつ電力制御プロトコル通信の可否が確認されていないバージョンはないと判定されるので、処理は終了する。
【0095】
なお、2回目のステップS203において実績が「不可」でかつ電力制御プロトコル通信の可否が確認されていないバージョン(仮にバージョンDとする)がある場合は、処理はステップS204に進む。この場合のバージョンAおよびDは、それぞれ、本開示の「第1バージョン」および「第2バージョン」の一例である。
【0096】
一方、ステップS21では、ステップS20において電力制御プロトコル通信が可能であることが確認されたバージョンに基づいて、電動車両110とEVSE20との間における電力制御が開始される。
【0097】
そして、ステップS22では、プロセッサ114aは、サーバ200のメモリ202に格納されている電力制御プロトコル通信の実績が更新されるように、通信部113を制御する。具体的には、過去における実績が「不可」であるバージョンAを用いた電力制御プロトコル通信がステップS20において成功したと判定された場合(S201においてNo)、バージョンAによる電力制御プロトコル通信の実績が「可」に変更(
図7参照)される。
【0098】
なお、第2実施の形態のその他の構成については、上記第1実施の形態と同様である。
【0099】
以上のように、上記第1および第2実施の形態においては、プロセッサ14a(114a)は、電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンを、上記優先度に基づいて決定する。これにより、優先度が低く電力制御プロトコル通信に不適切なバージョンが電力制御プロトコル通信に用られることを極力抑制することができる。
【0100】
また、上記第1および第2実施の形態では、電力制御プロトコル通信が失敗した場合に、優先度が低いバージョンを用いるように切り替え制御が行われる例を示したが、本開示はこれに限られない。優先度に基づいて最初に選択されたバージョンの電力制御プロトコル通信が失敗した場合に、そのまま処理が終了されてもよい。
【0101】
また、上記第1および第2実施の形態では、電力制御プロトコル通信が失敗した場合に、優先度が1段階低いバージョンを用いるように切り替え制御が行われる例を示したが、本開示はこれに限られない。電力制御プロトコル通信が失敗した場合に、優先度が2段階以上低いバージョンを用いるように切り替え制御が行われてもよい。
【0102】
また、上記第2実施の形態では、前回における電力制御プロトコル通信の可否に基づいて電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンを決定する例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、前回までにおける電力制御プロトコル通信の成功率が所定の値以上であるか否かに基づいて、電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンを決定してもよい。
【0103】
また、上記第2実施の形態では、実績が「可」の複数のバージョンを用いた通信が全て失敗した場合に、実績が「不可」のバージョンを用いた通信に切り替えられる例を示したが、本開示はこれに限られない。実績が「不可」のバージョンを用いた通信への切り替えは行われなくてもよい。
【0104】
また、上記第2実施の形態では、優先度に関する情報と電力制御プロトコル通信の実績に関する情報とがサーバ200に格納されている例を示したが、本開示はこれに限られない。優先度に関する情報と電力制御プロトコル通信の実績に関する情報とが、互いに別個のサーバに格納されていてもよい。
【0105】
また、上記第1および第2実施の形態では、通信部13(113)およびEVSE20の各々が3つのバージョン(A~C)に対応している例を示したが、本開示はこれに限られない。通信部13(113)が、2つまたは4つ以上のバージョンに対応していてもよい。また、EVSE20が、1つ、2つ、または、4つ以上のバージョンに対応していてもよい。
【0106】
また、上記第1および第2実施の形態では、電力制御を開始するための電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンを優先度に基づいて決定する例を示したが、本開示はこれに限られない。電力制御が行われる間の電力制御プロトコル通信に用いられるバージョンを優先度に基づいて決定してもよい。
【0107】
上記の各種変形例は任意に組み合わせて実施されてもよい。
【0108】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0109】
1、21 電動車両システム,10、110 電動車両,13、113 通信部,20 EVSE(電力スタンド),14a、114a プロセッサ(制御部),100、200 サーバ(第1サーバ)(第2サーバ),A~C バージョン。