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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】失火検出システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/50 20160101AFI20241112BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20241112BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20241112BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
B60W20/50 ZHV
B60W10/06 900
B60W10/08 900
F02D45/00 368Z
F02D45/00 362
F02D45/00 374
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022034102
(22)【出願日】2022-03-07
(65)【公開番号】P2023129818
(43)【公開日】2023-09-20
【審査請求日】2024-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】日野下 美和
(72)【発明者】
【氏名】加藤 孝記
(72)【発明者】
【氏名】横井 利貴
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-029185(JP,A)
【文献】特開2015-174492(JP,A)
【文献】特開2013-142327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 - 6/547
B60W 10/00 - 20/50
F02D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと電動機とを備える車両に適用され、
前記エンジンを制御する第1制御装置と、
前記電動機を制御する第2制御装置と、を備え、
前記第1制御装置は、
クランクシャフトの角速度に基づいて前記エンジンの気筒に対する第1失火検出値を算出し、
前記第2制御装置は、
インプットシャフトの角速度に基づいて前記気筒に対する第2失火検出値を算出し、前記第2失火検出値を前記第1制御装置に送信し、
前記第1制御装置は、
前記第1失火検出値を算出したタイミングから所定のタイミング後で、前記第1失火検出値と前回又は今回受信した前記第2失火検出値とに基づいて、前記気筒に対する第3失火検出値を算出し、前記第3失火検出値と予め定められた失火判定値とに基づいて失火の有無を判定し、
前記第1制御装置は、さらに、
前記第3失火検出値の算出タイミングごとにカウンタの値を減少/増加させ、
前記第2失火検出値の受信タイミングごとに前記カウンタの値を増加/減少させ、
前記カウンタの値に基づいて、前回又は今回受信した前記第2失火検出値のいずれかを前記第3失火検出値の算出に用いるかを決定する
失火検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、失火検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、エンジンを制御するエンジンECU(Engine Control Unit)と、MG(モータジェネレータ)を制御するMGECUを備えるハイブリッド車両に適用される失火検出装置を開示している。失火検出装置は、MGECUで算出される失火検出パラメータとエンジンECUで算出される失火検出パラメータに基づいて失火検出を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-142327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係る技術では、エンジンECUとMGECUとの2つを用いて失火検出を行う場合、CAN(Controller Area Network)通信の遅れが発生する。通信遅れに対してエンジン回転数は大きく変動するため、各種情報を受信するタイミングがエンジン回転数によって変化し、エンジンECUとMGECUの同期ができない恐れがある。
【0005】
本開示は、そのような課題を鑑みることによって、エンジンECUとMGECUの同期ができる失火検出システムを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の失火検出システムは、
エンジンと電動機とを備える車両に適用され、
前記エンジンを制御する第1制御装置と、
前記電動機を制御する第2制御装置と、を備え、
前記第1制御装置は、
クランクシャフトの角速度に基づいて前記エンジンの気筒に対する第1失火検出値を算出し、
前記第2制御装置は、
インプットシャフトの角速度に基づいて前記気筒に対する第2失火検出値を算出し、前記第2失火検出値を前記第1制御装置に送信し、
前記第1制御装置は、
前記第1失火検出値を算出したタイミングから所定のタイミング後で、前記第1失火検出値と前回又は今回受信した前記第2失火検出値とに基づいて、前記気筒に対する第3失火検出値を算出し、前記第3失火検出値と予め定められた失火判定値とに基づいて失火の有無を判定し、
前記第1制御装置は、さらに、
前記第3失火検出値の算出タイミングごとにカウンタの値を減少/増加させ、
前記第2失火検出値の受信タイミングごとに前記カウンタの値を増加/減少させ、
前記カウンタの値に基づいて、前回又は今回受信した前記第2失火検出値のいずれかを前記第3失火検出値の算出に用いるかを決定する。
【発明の効果】
【0007】
本開示により、エンジンECUとMGECUの同期ができる失火検出システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係る失火検出システムの構成を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態に係る失火検出システムにおける第1制御装置のエンジンの低回転領域での失火検出動作を示す図である。
図3】第1の実施形態に係る失火検出システムにおける第1制御装置のエンジンの高回転領域での失火検出動作を示す図である。
図4】第1の実施形態に係る失火検出システムにおける第1制御装置が前回又は今回受信したMG慣性トルク項のいずれかを合算トルク項の算出に用いるのか決定する動作を示す図である。
図5】第1の実施形態に係る失火検出システムにおける第1制御装置が第2制御装置から信号を受信した際にMG慣性トルク項を更新する対象の気筒No.を判定する動作を示す図である。
図6】本実施形態に係るコンピュータの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
まず、図1を用いて、第1の実施形態に係る失火検出システム100を説明する。
失火検出システム100は、車両に適用される。車両は、エンジン1、電動機2を備える例えばハイブリッド車両である。
【0010】
エンジン1は、ガソリンや軽油等を燃料として動力を出力する。エンジン1は、本実施形態では4個の気筒を有する4気筒エンジンである。なお、エンジン1は、4気筒エンジンに限られず、例えば6気筒、8気筒、16気筒等の各種エンジンであってもよい。
電動機2は、バッテリーに基づいて動力を出力する。また、電動機2は、車両の減速時にエネルギーを回生してバッテリーを充電する。電動機2は、MG(モータージェネレータ)とも呼ぶ。
【0011】
失火検出システム100は、第1制御装置3及び第2制御装置を備える。
第1制御装置3は、エンジン1を制御するEFI-ECU(Electronic Fuel Injection - Engine Control Unit)である。第1制御装置3は、第2制御装置4とCAN通信によってデータを送受する。第1制御装置3は、エンジンECUとも称される。
第2制御装置4は、電動機2を制御するMG-ECU(Motor Generator - Engine Control Unit)である。
【0012】
第1制御装置3は、エンジン1と連動するクランクシャフトの角速度をクランク角センサから取得する。また、第1制御装置3は、クランクの基準位置からの回転角度、すなわちエンジンクランク位置をクランク信号としてクランク角センサから取得する。クランク信号は、所定角度(30度CA)回転する期間を1周期とした信号である。クランク信号は、例えば1、2、・・・・、24と示される。クランク信号が1、7、13、19の場合、クランクの基準位置からの回転角度はそれぞれ、0度CA、180度CA、360度CA、540度CAである。第1制御装置3は、クランク信号を参照し、各気筒におけるピストンのTDC(Top Dead Center)タイミングで、クランクシャフトの角速度に基づいて各気筒の慣性トルク項(以下、エンジン慣性トルク項または第1失火検出値)を算出する。
【0013】
第2制御装置4は、電動機2と連動するインプットシャフトの角速度をセンサから取得する。第2制御装置4は、エンジン1のクランク信号を参照し、TDCタイミングで、インプットシャフトの角速度からエンジン1の各気筒の慣性トルク項(以下、MG慣性トルク項または第2失火検出値)を算出する。MG慣性トルク項は、MG慣性トルク項は、後述する失火判定においてエンジン慣性トルク項からダンパーの共振分を排除するための慣性トルク項である。そして、第2制御装置4は、クランク信号と算出された全気筒のMG慣性トルク項とを含む信号を、所定の間隔でCAN通信を用いて第1制御装置3に送信する。例えば、第2制御装置4は、16msecごとにクランク信号と全気筒のMG慣性トルク項とを含む信号を第1制御装置3に送信する。
【0014】
第1制御装置3は、CAN通信を用いて、第2制御装置4からクランク信号と算出された全気筒のMG慣性トルク項とを受信し、記憶する。この際、第1制御装置3は、第2制御装置4から前回受信したクランク信号と、受信した最新のクランク信号とに基づいて、MG慣性トルク項が新たに更新された気筒を判定する。
【0015】
第1制御装置3は、各気筒において、CAN通信の遅延を考慮し、エンジン慣性トルク項を算出したタイミングから所定のタイミング後、エンジン慣性トルク項と今回又は前回受信されたMG慣性トルク項とに基づいて合算トルク項(第3失火検出値とも称する)を算出する。所定のタイミング後とは、エンジン慣性トルク項を算出したTDCタイミングから2サイクル後(エンジンクランク位置が1440度CA)のTDCタイミングである。エンジン慣性トルク項を算出したTDCタイミングから2サイクル後のTDCタイミングまでの間には、第1制御装置3は、エンジン1の回転数によって第2制御装置4からMG慣性トルク項を1回又は2回受信する。具体的には、第1制御装置3は、前回又は今回受信されたMG慣性トルク項とのいずれかを合算トルクの算出に用いるかをカウンタ値に基づいて決定する。ここで、第1制御装置3は、合算トルク項を算出するタイミングでカウンタを減少/増加させ、MG慣性トルクの受信タイミングでカウンタを増加/減少させる。なお、第1制御装置3は、合算トルク項を算出するタイミングに限られず、クランクシャフトが所定角度ごと(例えばTDCタイミングごと)にカウンタ値を増加/減少させてもよい。
【0016】
第1制御装置3は、各気筒において、算出された合算トルク項と予め設定された失火判定トルクとに基づいてエンジン1の失火判定を行う。例えば、第1制御装置3は、算出された合算トルクが失火判定トルク以下になった場合、エンジン1が失火していると判定する。一方、第1制御装置3は、算出された合算トルクが失火判定トルクより大きい場合、エンジン1が失火していないと判定する。
【0017】
続いて、図2図3を用いて、第1制御装置3の失火検出動作の一例を説明する。
図2は、第1制御装置3のエンジン1の低回転領域での失火検出動作を示す図である。
図2に示すように、第1制御装置3は、エンジンクランク信号に基づくエンジンクランク位置を参照し、エンジン1の各気筒(気筒#1~気筒#4)のエンジン慣性トルク項を算出する。第1制御装置3は、TDCタイミングにおいて、各気筒のエンジン慣性トルク項を算出する。例えば、第1制御装置3は、エンジンクランク位置が0度CAの気筒#2のTDCタイミングで気筒#2のエンジン慣性トルク項A1を算出する。次に、第1制御装置3は、エンジンクランク位置が180度CAの気筒#1のTDCタイミングで気筒#1のエンジン慣性トルク項A2を算出する。次に、第1制御装置3は、エンジンクランク位置が360度CAの気筒#3のTDCタイミングで気筒#3のエンジン慣性トルク項A3を算出する。次に、第1制御装置3は、エンジンクランク位置が540度CAの気筒#4のTDCタイミングで気筒#4のエンジン慣性トルク項A4を算出する。
【0018】
また、第1制御装置3は、第2制御装置4からエンジンクランク信号に基づくエンジンクランク位置と各気筒におけるエンジン慣性トルク項を所定の間隔(例えば16msec間隔)で受信している。気筒#2のMG慣性トルク項B1、気筒#1のMG慣性トルク項B2、気筒#3のMG慣性トルク項B3及び気筒#4のMG慣性トルク項B4は、各気筒のTDCタイミングで第2制御装置4によって算出される。ここで、第2制御装置4から受信したエンジンクランク位置は、CAN通信の遅れによって第1制御装置3のエンジンクランク位置から所定のタイミング遅れている。
【0019】
第1制御装置3は、各気筒において、エンジン慣性トルク項の算出タイミングから2サイクル後(エンジンクランク位置が1440度CA)のタイミングで、エンジン慣性トルク項とMG慣性トルク項とを合算した合算トルク項を算出する。そして、第1制御装置3は、各気筒において、算出された合算トルク項と予め設定された失火判定トルクとに基づいて失火の有無を検出する。例えば、第1制御装置3は、エンジン慣性トルク項A1とMG慣性トルク項B1とを合算した気筒#2の合算トルクを算出し、失火の有無を検出する。次に、第1制御装置3は、エンジン慣性トルク項A2とMG慣性トルク項B2とを合算した気筒#1の合算トルクを算出し、失火の有無を検出する。次に、第1制御装置3は、エンジン慣性トルク項A3とMG慣性トルク項B3とを合算した気筒#3の合算トルクを算出し、失火の有無を検出する。次に、第1制御装置3は、エンジン慣性トルク項A4とMG慣性トルク項B4とを合算した気筒#4の合算トルクを算出し、失火の有無を検出する。
【0020】
ここで、エンジン1の低回転領域における動作では、第1制御装置3は、エンジン慣性トルク項の算出タイミングから合算トルク項の算出タイミングの間に、MG慣性トルク項を第2制御装置4から2回受信する。第1制御装置3は、今回受信したMG慣性トルク項はエンジン慣性トルク項に対応していないため、今回受信したMG慣性トルク項ではなく前回受信したMG慣性トルク項を用いて合算トルク項を算出する。
【0021】
また、図3は、第1制御装置3のエンジン1の高回転領域での失火検出動作を示す図である。
図3に示すように、第1制御装置3は、各気筒(気筒#1~気筒#4)において、エンジン慣性トルク項を算出したTDCタイミングから2サイクル後のTDCタイミングで、エンジン慣性トルク項とMG慣性トルク項とを合算した合算トルク項を算出する。そして、第1制御装置3は、各気筒において、算出された合算トルク項と予め設定された失火判定トルクとに基づいて失火の有無を検出する。
【0022】
エンジン1の高回転領域における動作では、図2で示すエンジン1の低回転領域における動作とは異なり、第1制御装置3は、エンジン慣性トルク項の算出タイミングから合算トルク項の算出タイミングの間に、MG慣性トルク項を第2制御装置4から1回受信する。そのため、第1制御装置3は、今回受信したMG慣性トルク項を用いて合算トルク項を算出する。
【0023】
つまり、図2及び図3で示すように、第1制御装置3は、エンジン慣性トルク項を算出したタイミングから合算トルクを算出するタイミングまでの間に、第2制御装置4からMG慣性トルク項を1回受信する場合と2回受信する場合がある。第1制御装置3は、第2制御装置4からMG慣性トルク項を1回受信する場合、今回受信したMG慣性トルク項を合算トルク項の算出に用いればよい。しかしながら、第1制御装置3は、MG慣性トルク項を2回受信する場合、今回受信したMG慣性トルク項ではなく前回受信したMG慣性トルク項を合算トルク項の算出に用いる必要がある。したがって、第1制御装置3は、前回又は今回受信したMG慣性トルク項のいずれかを合算トルク項の算出に用いるのかを決定する。
【0024】
続いて、図4を用いて、第1制御装置3が前回又は今回受信したMG慣性トルク項のいずれかを合算トルク項の算出に用いるのか決定する動作を説明する。
図4に示すように、第1制御装置3は、MG受取カウンタを用いて、前回受信したMG慣性トルク項と今回受信したMG慣性トルク項とのいずれかを合算トルク項の算出に用いるかを決定する。第1制御装置3は、合算トルク項を算出するタイミングでMG受取カウンタのカウンタ値を減少する。具体的には、第1制御装置3は、TDCタイミングでカウンタ値を1減少する。TDCタイミングは、タイミングT1、T3、T5、T6及びT8である。一方で、第1制御装置3は、第2制御装置4からMG慣性トルク項を受信したタイミングでカウンタ値を増加する。具体的には、第1制御装置3は、第2制御装置4からMG慣性トルク項を受信したMG受信タイミングでカウンタ値を1増加する。MG受信タイミングは、タイミングT2、T4及びT7である。
【0025】
なお、第1制御装置3は、合算トルク項を算出するタイミングでMG受取カウンタのカウンタ値を増加してもよい。一方で、第1制御装置3は、第2制御装置4からMG慣性トルク項を受信したタイミングでカウンタ値を減少させてもよい。
また、第1制御装置3は、合算トルク項を算出するタイミングに限られず、クランクシャフトが所定角度ごと(例えばTDCタイミングごと)にカウンタ値を増加/減少させてもよい。
【0026】
第1制御装置3は、TDCタイミングでは、2サイクル前のTDCタイミングで算出したエンジン慣性トルク項と、前回又は今回受信したMG慣性トルク項のいずれかと、を合算した合算トルク項を算出する。
【0027】
ここで、第1制御装置3は、MG受取カウンタの値に基づいて、前回又は今回受信したMG慣性トルク項のいずれかを合算トルクの算出に用いるかを決定する。
具体的には、第1制御装置3は、TDCタイミングでカウンタ値が1の場合、前回受信したMG慣性トルク項を合算トルク項の算出に用いる。つまり、第1制御装置3は、2サイクル前のTDCタイミングで算出したエンジン慣性トルク項と前回受信したMG慣性トルク項との合算トルク項を算出する。例えば、タイミングT5のTDCタイミングでは、カウンタ値は1である。よって、第1制御装置3は、タイミングT4で受信した今回のMG慣性トルク項ではなく、タイミングT2で受信した前回のMG慣性トルク項を合算トルク項の算出に用いる。第1制御装置3は、タイミングT5の2サイクル前のTDCタイミングであるタイミングT1で算出されたエンジン慣性トルク項とタイミングT2で受信した前回のMG慣性トルク項とを合算した合算トルク項を算出する。
【0028】
一方、第1制御装置3は、TDCタイミングでカウンタ値が0の場合、今回受信したMG慣性トルク項を合算トルク項の算出に用いる。つまり、第1制御装置3は、2サイクル前のTDCタイミングで算出したエンジン慣性トルク項と今回受信したMG慣性トルク項との合算トルク項を算出する。例えば、タイミングT6のTDCタイミングでは、カウンタ値は0である。よって、第1制御装置3は、タイミングT4で受信した今回のMG慣性トルク項を合算トルク項の算出に用いる。第1制御装置3は、タイミングT6の2サイクル前のTDCタイミングであるタイミングT3で算出されたエンジン慣性トルク項とタイミングT4で受信した今回のMG慣性トルク項とを合算した合算トルク項を算出する。また、タイミングT8のTDCタイミングでは、カウンタ値は0である。よって、第1制御装置3は、タイミングT7で受信した今回のMG慣性トルク項を合算トルク項の算出に用いる。第1制御装置3は、タイミングT8の2サイクル前のTDCタイミングであるタイミングT5で算出されたエンジン慣性トルク項とタイミングT7で受信した今回のMG慣性トルク項とを合算した合算トルク項を算出する。
【0029】
上述の動作に加えて、第1制御装置3は、第2制御装置4から信号を受信した際にMG慣性トルク項を更新する対象の気筒No.を判定する。図5を用いて、当該動作について説明する。
第1制御装置3は、第2制御装置4から、所定の間隔で(例えば16msecごと)にクランク信号(例えば、1)と全気筒のMG慣性トルク項とを含む信号を受信する。第1制御装置3は、受信された全気筒のMG慣性トルク項中から所定の気筒のMG慣性トルク項を更新し、クランク信号を記憶する。この際、図5に示すように、第1制御装置3は、前回更新時のクランク信号(前回更新時クランク信号)と最新のクランク信号(最新MGクランク信号)とに基づいて、MG慣性トルク項を更新する対象の気筒No.(更新対象気筒No.)を判断する。本図では、クランク信号は、1、2、・・・、24と示される。TDCタイミングは、クランク信号が1、7、13及び19の場合である。
【0030】
例えば、第1制御装置3は、前回更新時クランク信号が2、かつ最新MGクランク信号が1の信号の場合、全ての気筒(気筒#1~気筒#4)のMG慣性トルク項が更新対象であるという判断する。また、第1制御装置3は、前回更新時クランク信号が2、かつ最新MGクランク信号が3の信号の場合、全ての気筒(気筒#1~気筒#4)のMG慣性トルク項が更新対象外であるという判断する。また、第1制御装置3は、前回更新時クランク信号が1、かつ最新MGクランク信号が7の場合、気筒#1のMG慣性トルク項が更新対象であるという判断する。また、第1制御装置3は、前回更新時クランク信号が1、かつ最新MGクランク信号が13の場合、気筒#1及び気筒#3のMG慣性トルク項が更新対象であるという判断する。また、第1制御装置3は、前回更新時クランク信号が1、かつ最新MGクランク信号が19の信号の場合、気筒#1、気筒#3及び気筒#4のMG慣性トルク項が更新対象であるという判断する。ここで、第1制御装置3は、前回更新時クランク信号と最新MGクランク信号とが同じ場合処理を行わない。
したがって、第1の実施形態に係る失火検出システム100の第1制御装置3は、第2制御装置4から信号を受信した際に最新のMG慣性トルク項をリアルタイムで判定することができる。
【0031】
上述の説明より、失火検出システム100では、第1制御装置3は、クランクシャフトの角速度に基づいてエンジンの各気筒に対するエンジン慣性トルク項を算出する。また、第2制御装置4は、インプットシャフトの角速度に基づいて各気筒に対するMG慣性トルク項を算出し、MG慣性トルク項を前記第1制御装置に送信する。第1制御装置3は、エンジン慣性トルク項を算出したタイミングから所定のタイミング後で、エンジン慣性トルク項と第2制御装置4から前回又は今回受信したMG慣性トルク項とに基づいて、エンジン1の各気筒の合算トルク項を算出する。そして、第1制御装置3は、合算トルク項と予め定められた失火判定値とに基づいて失火の有無を検出する。さらに、第1制御装置3は、カウンタ値に基づいて、前回又は今回受信した前記第2失火検出値のいずれかを合算トルク項の算出に用いるかを決定する。
【0032】
したがって、失火検出システム100では、第1制御装置3は、CAN通信の遅れを考慮し、第2制御装置4と同期して失火の有無を判定できる。さらに、失火検出システム100は、失火判定の精度を向上することができる。
【0033】
<ハードウェア構成>
続いて、図6を用いて、第1の実施形態に係る失火検出システム100に係る第1制御装置3及び第2制御装置4を実現するコンピュータ1000のハードウェア構成例を説明する。図6においてコンピュータ1000は、プロセッサ1001と、メモリ1002とを有している。プロセッサ1001は、例えば、マイクロプロセッサ、MPU(Micro Processing Unit)、又はCPU(Central Processing Unit)であってもよい。プロセッサ1001は、複数のプロセッサを含んでもよい。メモリ1002は、揮発性メモリ及び不揮発性メモリの組み合わせによって構成される。メモリ1002は、プロセッサ1001から離れて配置されたストレージを含んでもよい。この場合、プロセッサ1001は、図示されていないI/Oインターフェースを介してメモリ1002にアクセスしてもよい。
【0034】
また、上述の実施形態における各構成は、ハードウェア又はソフトウェア、もしくはその両方によって構成され、1つのハードウェア又はソフトウェアから構成してもよいし、複数のハードウェア又はソフトウェアから構成してもよい。上述の実施形態における各構成の機能(処理)を、コンピュータにより実現してもよい。例えば、メモリ1002に実施形態における方法を行うためのプログラムを格納し、各機能を、メモリ1002に格納されたプログラムをプロセッサ1001で実行することにより実現してもよい。
【0035】
これらのプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0036】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 エンジン
2 電動機
3 第1制御装置
4 第2制御装置
100 失火検出システム
1000 コンピュータ
1001 プロセッサ
1002 メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6