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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】2次電池のインピーダンス測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/389 20190101AFI20241112BHJP
   G01R 27/02 20060101ALI20241112BHJP
   G01R 31/382 20190101ALI20241112BHJP
   G01R 31/385 20190101ALI20241112BHJP
   G01R 31/392 20190101ALI20241112BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20241112BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
G01R31/389
G01R27/02 A
G01R31/382
G01R31/385
G01R31/392
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H02J7/00 Y
【請求項の数】 38
(21)【出願番号】P 2022056503
(22)【出願日】2022-03-30
(65)【公開番号】P2023148466
(43)【公開日】2023-10-13
【審査請求日】2024-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】北川 昌明
(72)【発明者】
【氏名】石部 功
(72)【発明者】
【氏名】松川 和生
(72)【発明者】
【氏名】吉田 周平
(72)【発明者】
【氏名】内山 正規
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-90152(JP,A)
【文献】特開2007-57234(JP,A)
【文献】特開2016-123238(JP,A)
【文献】特開2014-102111(JP,A)
【文献】特開2014-32826(JP,A)
【文献】特開2022-7946(JP,A)
【文献】国際公開第2016/132586(WO,A1)
【文献】特開2008-243273(JP,A)
【文献】特開2014-99330(JP,A)
【文献】特開2012-122817(JP,A)
【文献】特開2011-254585(JP,A)
【文献】特開2016-90346(JP,A)
【文献】特開2016-70787(JP,A)
【文献】特開2013-50433(JP,A)
【文献】特開2020-53167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36
G01R 27/02
H01M 10/48
H02J 7/00
B60L 1/00
B60L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次電池(40、41、42)のインピーダンスを測定するインピーダンス測定装置であって、
測定条件が異なる複数の測定モードにより前記インピーダンスを測定可能な測定部(50)と、
前記インピーダンスに相関する相関パラメータと閾値との比較に基づいて、前記測定モードを切り替える切替部(70)と、
を備え
前記測定部は、前記2次電池から交流電流を出力させる電流生成部(51)と、前記交流電流に応答した前記2次電池の電圧を測定する電圧測定部(52)とを含み、
前記測定条件が異なる複数の測定モードは、前記測定条件として、前記電流生成部により前記交流電流を出力させて前記電圧測定部により前記2次電池の電圧を測定する回数が異なっている、2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項2】
2次電池(40、41、42)のインピーダンスを測定するインピーダンス測定装置であって、
測定条件が異なる複数の測定モードにより前記インピーダンスを測定可能な測定部(50)と、
前記インピーダンスに相関する相関パラメータと閾値との比較に基づいて、前記測定モードを切り替える切替部(70)と、
を備え、
前記測定部は、前記2次電池から交流電流を出力させる電流生成部と、前記交流電流に応答した前記2次電池の電圧を測定する電圧測定部とを含み、
前記測定条件が異なる複数の測定モードは、前記測定条件として、前記電圧測定部により測定された前記2次電池の電圧におけるカットオフ周波数よりも高い周波数成分をカットするローパスフィルタの前記カットオフ周波数が異なっている、2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項3】
2次電池(40、41、42)のインピーダンスを測定するインピーダンス測定装置であって、
測定条件が異なる複数の測定モードにより前記インピーダンスを測定可能な測定部(50)と、
前記インピーダンスに相関する相関パラメータと閾値との比較に基づいて、前記測定モードを切り替える切替部(70)と、
を備え、
前記測定部は、前記2次電池から交流電流を出力させる電流生成部と、前記交流電流に応答した前記2次電池の電圧を測定する電圧測定部とを含み、
前記測定条件が異なる複数の測定モードは、前記測定条件として、前記電圧測定部により測定された前記2次電池の電圧を補正する態様が異なっている、2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項4】
2次電池(40、41、42)のインピーダンスを測定するインピーダンス測定装置であって、
測定条件が異なる複数の測定モードにより前記インピーダンスを測定可能な測定部(50)と、
前記インピーダンスに相関する相関パラメータと閾値との比較に基づいて、前記測定モードを切り替える切替部(70)と、
を備え、
前記2次電池は、複数の電池セル(42A~42G)を含み、
前記測定部は、各電池セルから交流電流を出力させる各電流生成部と、各交流電流に応答した前記2次電池の電圧を測定する各電圧測定部とを含み、
前記測定条件が異なる複数の測定モードは、前記測定条件として、同時に動作させる前記電流生成部及び前記電圧測定部の数が異なっている、2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項5】
2次電池(40、41、42)のインピーダンスを測定するインピーダンス測定装置であって、
測定条件が異なる複数の測定モードにより前記インピーダンスを測定可能な測定部(50)と、
前記インピーダンスに相関する相関パラメータと閾値との比較に基づいて、前記測定モードを切り替える切替部(70)と、
を備え、
前記2次電池は、複数の電池セルを含み、
前記測定条件が異なる複数の測定モードは、前記測定条件として、前記インピーダンスを測定する対象とする前記電池セルの数が異なっている、2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項6】
前記測定条件が異なる複数の測定モードは、前記複数の電池セルのうち、所定電池セル(42D)の前記インピーダンスを測定する第1測定モードと、前記所定電池セルの数よりも多い数の電池セル(42A,42D,42G)の前記インピーダンスを測定する第2測定モードとを含んでいる、請求項に記載の2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項7】
前記所定電池セルは、前記複数の電池セルのうち、最も温度が高い又は最も温度が低い電池セルである、請求項に記載の2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項8】
前記所定電池セルは、前記複数の電池セルのうち、最も温度変化が大きい電池セルである、請求項に記載の2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項9】
前記複数の電池セルの残容量を均等化する均等化処理が実行され、
前記所定電池セルは、前記複数の電池セルのうち、前記均等化処理が実行された回数が最も多い又は最も少ない電池セルである、請求項に記載の2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項10】
前記所定電池セルは、前記複数の電池セルのうち、最も電圧変化が大きい電池セルである、請求項に記載の2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項11】
前記所定電池セルは、前記複数の電池セルのうち、最も抵抗値が高い電池セルである、請求項に記載の2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項12】
前記所定電池セルは、前記複数の電池セルのうち、所定位置に配置された電池セルである、請求項に記載の2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項13】
前記測定条件が異なる複数の測定モードは、前記測定条件として、さらに前記インピーダンスを測定する際に取得するデータ数が異なっている、請求項に記載の2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項14】
2次電池(40、41、42)のインピーダンスを測定するインピーダンス測定装置であって、
測定条件が異なる複数の測定モードにより前記インピーダンスを測定可能な測定部(50)と、
前記インピーダンスに相関する相関パラメータと閾値との比較に基づいて、前記測定モードを切り替える切替部(70)と、
を備え、
前記測定条件が異なる複数の測定モードは、前記測定条件として、前記インピーダンスを測定する際に取得するデータ数が異なっており、
前記測定条件が異なる複数の測定モードは、所定周波数について前記インピーダンスを測定する第1測定モードと、前記所定周波数の数よりも多い数の周波数について前記インピーダンスを測定する第2測定モードとを含んでいる、2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項15】
前記切替部は、前記2次電池が異常であると判定していない場合に前記測定モードを前記第1測定モードに切り替え、前記第1測定モードにおいて前記2次電池が異常であると判定した場合に前記測定モードを前記第2測定モードに切り替える、請求項14に記載の2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項16】
前記第2測定モードは、前記異常の内容に応じた測定範囲内の周波数について前記インピーダンスを測定するモードである、請求項15に記載の2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項17】
前記第2測定モードは、前記インピーダンスが所定条件を満たす前記周波数を探索するモードである、請求項15に記載の2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項18】
前記所定周波数は、前記インピーダンス以外の前記相関パラメータに基づいて設定される周波数である、請求項14~17のいずれか1項に記載の2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項19】
前記所定周波数は、前記インピーダンスに基づいて推定した前記2次電池の状態に基づいて設定される周波数である、請求項14~17のいずれか1項に記載の2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項20】
前記測定条件が異なる複数の測定モードは、所定周期で前記インピーダンスを測定する第1測定モードと、前記所定周期よりも短い周期で前記インピーダンスを測定する第2測定モードとを含んでいる、請求項13に記載の2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項21】
2次電池(40、41、42)のインピーダンスを測定するインピーダンス測定装置であって、
測定条件が異なる複数の測定モードにより前記インピーダンスを測定可能な測定部(50)と、
前記インピーダンスに相関する相関パラメータと閾値との比較に基づいて、前記測定モードを切り替える切替部(70)と、
を備え、
前記測定条件が異なる複数の測定モードは、前記測定条件として、前記インピーダンスを測定する際に取得するデータ数が異なっており、
前記測定条件が異なる複数の測定モードは、所定周期で前記インピーダンスを測定する第1測定モードと、前記所定周期よりも短い周期で前記インピーダンスを測定する第2測定モードとを含んでいる、2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項22】
前記所定周波数は、前記インピーダンスが所定条件を満たす周波数である、請求項14に記載の2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項23】
前記切替部は、前記相関パラメータが前記閾値を超えた場合に、前記測定モードを切り替える、請求項1~22のいずれか1項に記載の2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項24】
前記切替部は、さらに前記2次電池における前記インピーダンス以外の特性と前記インピーダンスとの関係が変化した場合に、前記測定モードを切り替える、請求項1~23のいずれか1項に記載の2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項25】
前記切替部は、さらに前記2次電池の周囲の環境の状態に応じて、前記測定モードを切り替える、請求項1~24のいずれか1項に記載の2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項26】
2次電池(40、41、42)のインピーダンスを測定するインピーダンス測定装置であって、
測定条件が異なる複数の測定モードにより前記インピーダンスを測定可能な測定部(50)と、
前記インピーダンスに相関する相関パラメータと閾値との比較に基づいて、前記測定モードを切り替える切替部(70)と、
を備え、
前記測定部は、前記2次電池から交流電流を出力させる電流生成部と、前記交流電流に応答した前記2次電池の電圧を測定する電圧測定部とを含み、
前記測定条件が異なる複数の測定モードは、前記測定条件として、前記電圧測定部により測定された前記2次電池の電圧のアナログ値をAD変換したデジタル値のビット数が異なっており、
前記切替部は、さらに前記2次電池の周囲の環境の状態に応じて、前記測定モードを切り替える、2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項27】
2次電池(40、41、42)のインピーダンスを測定するインピーダンス測定装置であって、
測定条件が異なる複数の測定モードにより前記インピーダンスを測定可能な測定部(50)と、
前記インピーダンスに相関する相関パラメータと閾値との比較に基づいて、前記測定モードを切り替える切替部(70)と、
を備え、
前記測定部は、前記2次電池から交流電流を出力させる電流生成部と、前記交流電流に応答した前記2次電池の電圧を測定する電圧測定部とを含み、
前記測定条件が異なる複数の測定モードは、前記測定条件として、前記電流生成部により前記2次電池から出力させる前記交流電流の波形が異なっており、
前記切替部は、さらに前記2次電池の周囲の環境の状態に応じて、前記測定モードを切り替える、2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項28】
2次電池(40、41、42)のインピーダンスを測定するインピーダンス測定装置であって、
測定条件が異なる複数の測定モードにより前記インピーダンスを測定可能な測定部(50)と、
前記インピーダンスに相関する相関パラメータと閾値との比較に基づいて、前記測定モードを切り替える切替部(70)と、
を備え、
前記測定部は、前記2次電池から交流電流を出力させる電流生成部と、前記交流電流に応答した前記2次電池の電圧を測定する電圧測定部とを含み、
前記測定条件が異なる複数の測定モードは、前記測定条件として、前記電流生成部により前記2次電池から出力させる前記交流電流の大きさが異なっており、
前記切替部は、さらに前記2次電池の周囲の環境の状態に応じて、前記測定モードを切り替える、2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項29】
2次電池(40、41、42)のインピーダンスを測定するインピーダンス測定装置であって、
測定条件が異なる複数の測定モードにより前記インピーダンスを測定可能な測定部(50)と、
前記インピーダンスに相関する相関パラメータと閾値との比較に基づいて、前記測定モードを切り替える切替部(70)と、
を備え、
前記測定条件が異なる複数の測定モードは、前記測定条件として、前記測定部により前記インピーダンスを測定する温度が異なっており、
前記切替部は、さらに前記2次電池の周囲の環境の状態に応じて、前記測定モードを切り替える、2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項30】
2次電池(40、41、42)のインピーダンスを測定するインピーダンス測定装置であって、
測定条件が異なる複数の測定モードにより前記インピーダンスを測定可能な測定部(50)と、
前記インピーダンスに相関する相関パラメータと閾値との比較に基づいて、前記測定モードを切り替える切替部(70)と、
を備え、
前記測定条件が異なる複数の測定モードは、前記測定条件として、前記インピーダンスを測定する際に取得するデータ数が異なっており、
前記切替部は、さらに前記2次電池の周囲の環境の状態に応じて、前記測定モードを切り替える、2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項31】
前記切替部は、さらに所定スケジュールに基づいて、前記測定モードを切り替える、請求項1~30のいずれか1項に記載の2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項32】
前記切替部は、さらに前記2次電池の使用履歴に基づいて、前記測定モードを切り替える、請求項1~31のいずれか1項に記載の2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項33】
前記切替部は、所定情報に基づいて、前記測定モードを切り替える条件を変更可能である、請求項1~32のいずれか1項に記載の2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項34】
前記測定部は、所定情報に基づいて、前記測定条件が異なる複数の測定モードの内容を変更するモード変更部(54,56)を備えている、請求項1~33のいずれか1項に記載の2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項35】
前記所定情報は、前記2次電池の使用履歴である、請求項33又は34に記載の2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項36】
前記所定情報は、通信により前記インピーダンス測定装置の外部から取得される、請求項33又は34に記載の2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項37】
前記所定情報は、前記インピーダンス測定装置とインターネットを介して接続される外部サーバに保存されている、請求項36に記載の2次電池のインピーダンス測定装置。
【請求項38】
前記所定情報は、前記インピーダンス測定装置が外部に電気的に接続された状態でのみ取得される、請求項33又は34に記載の2次電池のインピーダンス測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次電池のインピーダンスを測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定範囲内の複数の周波数について2次電池の複素インピーダンスを測定し、測定結果に基づいて複素インピーダンス平面プロット(コールコールプロット、Bode plot等)を作成し、2次電池の電極及び電解質などの特性を把握する装置がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-180949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、2次電池の電極及び電解質などの特性を正確に把握するためには、複素インピーダンス平面プロットを高精度で作成することが望ましい。そのためには、より多くの周波数について2次電池の複素インピーダンスを測定するとともに、1つの周波数についての測定回数も多くする必要がある。その場合、測定に長時間を要するとともに、2次電池の消費電流が多くなるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、測定時間を短縮することができる、又は2次電池の消費電流を減少させることができる2次電池のインピーダンス測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の手段は、
2次電池(40、41、42)のインピーダンスを測定するインピーダンス測定装置であって、
測定条件が異なる複数の測定モードにより前記インピーダンスを測定可能な測定部(50)と、
前記インピーダンスに相関する相関パラメータと閾値との比較に基づいて、前記測定モードを切り替える切替部(70)と、
を備える。
【0007】
上記構成によれば、2次電池のインピーダンス測定装置は、2次電池のインピーダンスを測定する。ここで、測定部は、測定条件が異なる複数の測定モードにより前記インピーダンスを測定可能である。一般に、測定条件が異なれば、測定時間や2次電池の消費電流、測定に用いる機器の消費電流等が異なる。この点に関して、インピーダンスに相関する相関パラメータが存在し、選択すべき測定モードを相関パラメータから判定可能であることに、本願発明者は着目した。
【0008】
そして、切替部は、前記インピーダンスに相関する相関パラメータと閾値との比較に基づいて、前記測定モードを切り替える。このため、相関パラメータと閾値とを比較することにより、適切な測定モードに切り替えることができる。したがって、相関パラメータにかかわらず一律の測定モードで測定を行う場合と比較して、測定時間を短縮することができる、又は2次電池の消費電流を減少させることができる。なお、相関パラメータは、インピーダンスに相関する種々のパラメータの他、インピーダンスそのものも含むものとする。
【0009】
一般に、測定方法が異なれば、測定時間や2次電池の消費電流が異なる。この点、第2の手段では、前記測定条件が異なる複数の測定モードは、前記測定条件として、前記測定部により前記インピーダンスを測定する方法が異なっている。そして、切替部は、前記インピーダンスに相関する相関パラメータと閾値との比較に基づいて、前記測定モードを切り替える。このため、相関パラメータと閾値とを比較することにより、前記インピーダンスを測定する方法が異なっている複数の測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。
【0010】
第3の手段では、前記測定部は、前記2次電池から交流電流を出力させる電流生成部(51)と、前記交流電流に応答した前記2次電池の電圧を測定する電圧測定部(52)とを含み、前記測定条件が異なる複数の測定モードは、前記測定条件として、前記電流生成部により前記交流電流を出力させて前記電圧測定部により前記2次電池の電圧を測定する回数が異なっている。
【0011】
上記構成によれば、複数の測定モードにおいて、前記交流電流を出力させて前記2次電池の電圧を測定する回数を異ならせることにより、測定精度、測定時間、及び2次電池の消費電流を異ならせることができる。そして、相関パラメータと閾値とを比較することにより、前記交流電流を出力させて前記2次電池の電圧を測定する回数が異なっている複数の測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。
【0012】
第4の手段では、前記測定部は、前記2次電池から交流電流を出力させる電流生成部と、前記交流電流に応答した前記2次電池の電圧を測定する電圧測定部とを含み、前記測定条件が異なる複数の測定モードは、前記測定条件として、前記電圧測定部により測定された前記2次電池の電圧のアナログ値をAD変換したデジタル値のビット数が異なっている。
【0013】
上記構成によれば、複数の測定モードにおいて、前記電圧測定部により測定された前記2次電池の電圧のアナログ値をAD変換したデジタル値のビット数を異ならせることにより、測定精度及び測定時間を異ならせることができる。そして、相関パラメータと閾値とを比較することにより、前記2次電池の電圧のアナログ値をAD変換したデジタル値のビット数が異なっている複数の測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。
【0014】
第5の手段では、前記測定部は、前記2次電池から交流電流を出力させる電流生成部と、前記交流電流に応答した前記2次電池の電圧を測定する電圧測定部とを含み、前記測定条件が異なる複数の測定モードは、前記測定条件として、前記電圧測定部により測定された前記2次電池の電圧におけるカットオフ周波数よりも高い周波数成分をカットするローパスフィルタの前記カットオフ周波数が異なっている。
【0015】
上記構成によれば、複数の測定モードにおいて、前記電圧測定部により測定された前記2次電池の電圧におけるカットオフ周波数よりも高い周波数成分をカットするローパスフィルタの前記カットオフ周波数を異ならせることにより、測定精度及び測定時間を異ならせることができる。そして、相関パラメータと閾値とを比較することにより、ローパスフィルタの前記カットオフ周波数が異なっている複数の測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。
【0016】
第6の手段では、前記測定部は、前記2次電池から交流電流を出力させる電流生成部と、前記交流電流に応答した前記2次電池の電圧を測定する電圧測定部とを含み、前記測定条件が異なる複数の測定モードは、前記測定条件として、前記電流生成部により前記2次電池から出力させる前記交流電流の波形が異なっている。
【0017】
上記構成によれば、複数の測定モードにおいて、前記電流生成部により前記2次電池から出力させる前記交流電流の波形を異ならせることにより、測定精度及び2次電池の消費電流を異ならせることができる。そして、相関パラメータと閾値とを比較することにより、前記2次電池から出力させる前記交流電流の波形が異なっている複数の測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。
【0018】
第7の手段では、前記測定部は、前記2次電池から交流電流を出力させる電流生成部と、前記交流電流に応答した前記2次電池の電圧を測定する電圧測定部とを含み、前記測定条件が異なる複数の測定モードは、前記測定条件として、前記電流生成部により前記2次電池から出力させる前記交流電流の大きさが異なっている。
【0019】
上記構成によれば、複数の測定モードにおいて、前記電流生成部により前記2次電池から出力させる前記交流電流の大きさを異ならせることにより、測定精度及び2次電池の消費電流を異ならせることができる。そして、相関パラメータと閾値とを比較することにより、前記2次電池から出力させる前記交流電流の大きさが異なっている複数の測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。
【0020】
第8の手段では、前記測定部は、前記2次電池から交流電流を出力させる電流生成部と、前記交流電流に応答した前記2次電池の電圧を測定する電圧測定部とを含み、前記測定条件が異なる複数の測定モードは、前記測定条件として、前記電圧測定部により測定された前記2次電池の電圧を補正する態様が異なっている。
【0021】
上記構成によれば、複数の測定モードにおいて、前記電圧測定部により測定された前記2次電池の電圧を補正する態様を異ならせることにより、測定精度及び測定時間を異ならせることができる。そして、相関パラメータと閾値とを比較することにより、測定された前記2次電池の電圧を補正する態様が異なっている複数の測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。
【0022】
第9の手段では、前記測定条件が異なる複数の測定モードは、前記測定条件として、前記測定部により前記インピーダンスを測定する温度が異なっている。
【0023】
上記構成によれば、複数の測定モードにおいて、前記測定部により前記インピーダンスを測定する温度を異ならせることにより、測定精度及び測定時間を異ならせることができる。そして、相関パラメータと閾値とを比較することにより、前記インピーダンスを測定する温度が異なっている複数の測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。
【0024】
第10の手段では、前記2次電池は、複数の電池セル(42A~42G)を含み、前記測定部は、各電池セルから交流電流を出力させる各電流生成部と、各交流電流に応答した前記2次電池の電圧を測定する各電圧測定部とを含み、前記測定条件が異なる複数の測定モードは、前記測定条件として、同時に動作させる前記電流生成部及び前記電圧測定部の数が異なっている。
【0025】
上記構成によれば、複数の測定モードにおいて、同時に動作させる前記電流生成部及び前記電圧測定部の数を異ならせることにより、測定精度及び測定時間を異ならせることができる。そして、相関パラメータと閾値とを比較することにより、同時に動作させる前記電流生成部及び前記電圧測定部の数が異なっている複数の測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。
【0026】
インピーダンスを測定する電池セルの数が異なれば、測定時間や2次電池の消費電流が異なる。この点、第11の手段では、前記2次電池は、複数の電池セルを含み、前記測定条件が異なる複数の測定モードは、前記測定条件として、前記インピーダンスを測定する対象とする前記電池セルの数が異なっている。そして、切替部は、前記インピーダンスに相関する相関パラメータと閾値との比較に基づいて、前記測定モードを切り替える。このため、相関パラメータと閾値とを比較することにより、前記インピーダンスを測定する対象とする前記電池セルの数が異なっている複数の測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。
【0027】
第12の手段では、第2の手段において、前記2次電池は、複数の電池セルを含み、前記測定条件が異なる複数の測定モードは、前記測定条件として、さらに前記インピーダンスを測定する対象とする前記電池セルの数が異なっている。
【0028】
上記構成によれば、前記測定条件として、前記測定部により前記インピーダンスを測定する方法が異なっていることと、前記インピーダンスを測定する対象とする前記電池セルの数が異なっていることとを組み合わせることができる。したがって、相関パラメータと閾値とを比較することにより、前記インピーダンスを測定する方法が異なっており且つ前記インピーダンスを測定する対象とする前記電池セルの数が異なっている複数の測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。
【0029】
第13の手段では、前記測定条件が異なる複数の測定モードは、前記複数の電池セルのうち、所定電池セル(42D)の前記インピーダンスを測定する第1測定モードと、前記所定電池セルの数よりも多い数の電池セル(42A,42D,42G)の前記インピーダンスを測定する第2測定モードとを含んでいる。
【0030】
上記構成によれば、前記複数の電池セルのうち、所定電池セルの前記インピーダンスを測定する第1測定モードと、前記所定電池セルの数よりも多い数の電池セルの前記インピーダンスを測定する第2測定モードとで、測定精度、測定時間、及び2次電池の消費電流を異ならせることができる。そして、相関パラメータと閾値とを比較することにより、第1測定モード及び第2測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。なお、所定電池セルは、単数であってもよいし、複数であってもよい。
【0031】
複数の電池セルにおいて、最も温度が高い又は最も温度が低い電池セルは、他の電池セルよりも劣化しやすい。この点、第14の手段では、前記所定電池セルは、前記複数の電池セルのうち、最も温度が高い又は最も温度が低い電池セルである。こうした構成によれば、第2測定モードよりも測定する電池セルの数が少ない第1測定モードにおいて、劣化しやすい電池セルのインピーダンスを測定することができる。したがって、測定する電池セルの数を少なくしても、2次電池の劣化を監視する精度が低下することを抑制することができる。
【0032】
複数の電池セルにおいて、最も温度変化が大きい電池セルは、他の電池セルよりも劣化しやすい。この点、第15の手段では、前記所定電池セルは、前記複数の電池セルのうち、最も温度変化が大きい電池セルである。こうした構成によれば、第1測定モードにおいて測定する電池セルの数を少なくしても、2次電池の劣化を監視する精度が低下することを抑制することができる。
【0033】
複数の電池セルにおいて、均等化処理が実行された回数が最も多い電池セルは、他の電池セルよりも劣化した可能性がある。また、均等化処理が実行された回数が最も少ない電池セルは、他の電池セルよりも劣化して満充電容量が少なくなっている可能性がある。この点、第16の手段では、前記複数の電池セルの残容量を均等化する均等化処理が実行され、前記所定電池セルは、前記複数の電池セルのうち、前記均等化処理が実行された回数が最も多い又は最も少ない電池セルである。こうした構成によれば、第1測定モードにおいて測定する電池セルの数を少なくしても、2次電池の劣化を監視する精度が低下することを抑制することができる。
【0034】
複数の電池セルにおいて、最も電圧変化が大きい電池セルは、他の電池セルよりも劣化する可能性がある。この点、第17の手段では、前記所定電池セルは、前記複数の電池セルのうち、最も電圧変化が大きい電池セルである。こうした構成によれば、第1測定モードにおいて測定する電池セルの数を少なくしても、2次電池の劣化を監視する精度が低下することを抑制することができる。
【0035】
複数の電池セルにおいて、最も抵抗値が高い電池セルは、他の電池セルよりも劣化している可能性がある。この点、第18の手段では、前記所定電池セルは、前記複数の電池セルのうち、最も抵抗値が高い電池セルである。こうした構成によれば、第1測定モードにおいて測定する電池セルの数を少なくしても、2次電池の劣化を監視する精度が低下することを抑制することができる。
【0036】
複数の電池セルにおいて、所定位置に配置された電池セルは、他の電池セルよりも劣化している可能性がある。この点、第19の手段では、前記所定電池セルは、前記複数の電池セルのうち、所定位置に配置された電池セルである。こうした構成によれば、第1測定モードにおいて測定する電池セルの数を少なくしても、2次電池の劣化を監視する精度が低下することを抑制することができる。
【0037】
インピーダンスを測定する際に取得するデータ数が異なれば、測定時間や2次電池の消費電流が異なる。この点、第20の手段では、前記測定条件が異なる複数の測定モードは、前記測定条件として、前記インピーダンスを測定する際に取得するデータ数が異なっている。そして、切替部は、前記インピーダンスに相関する相関パラメータと閾値との比較に基づいて、前記測定モードを切り替える。このため、相関パラメータと閾値とを比較することにより、前記インピーダンスを測定する際に取得するデータ数が異なっている複数の測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。
【0038】
第21の手段では、第2の手段において、前記測定条件が異なる複数の測定モードは、前記測定条件として、さらに前記インピーダンスを測定する際に取得するデータ数が異なっている。
【0039】
上記構成によれば、前記測定条件として、前記測定部により前記インピーダンスを測定する方法が異なっていることと、前記インピーダンスを測定する際に取得するデータ数が異なっていることとを組み合わせることができる。したがって、相関パラメータと閾値とを比較することにより、前記インピーダンスを測定する方法が異なっており且つ前記インピーダンスを測定する際に取得するデータ数が異なっている複数の測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。
【0040】
第22の手段では、第11の手段において、前記測定条件が異なる複数の測定モードは、前記測定条件として、さらに前記インピーダンスを測定する際に取得するデータ数が異なっている。
【0041】
上記構成によれば、前記測定条件として、前記インピーダンスを測定する対象とする前記電池セルの数が異なっていることと、前記インピーダンスを測定する際に取得するデータ数が異なっていることとを組み合わせることができる。したがって、相関パラメータと閾値とを比較することにより、前記インピーダンスを測定する対象とする前記電池セルの数が異なっており且つ前記インピーダンスを測定する際に取得するデータ数が異なっている複数の測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。
【0042】
第23の手段では、第12の手段において、前記測定条件が異なる複数の測定モードは、前記測定条件として、さらに前記インピーダンスを測定する際に取得するデータ数が異なっている。
【0043】
上記構成によれば、前記測定条件として、前記測定部により前記インピーダンスを測定する方法が異なっていることと、前記インピーダンスを測定する対象とする前記電池セルの数が異なっていることと、前記インピーダンスを測定する際に取得するデータ数が異なっていることとを組み合わせることができる。したがって、相関パラメータと閾値とを比較することにより、前記測定部により前記インピーダンスを測定する方法が異なっており、且つ前記インピーダンスを測定する対象とする前記電池セルの数が異なっており、且つ前記インピーダンスを測定する際に取得するデータ数が異なっている複数の測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。
【0044】
第24の手段では、前記測定条件が異なる複数の測定モードは、所定周波数について前記インピーダンスを測定する第1測定モードと、前記所定周波数の数よりも多い数の周波数について前記インピーダンスを測定する第2測定モードとを含んでいる。
【0045】
上記構成によれば、所定周波数について前記インピーダンスを測定する第1測定モードと、前記所定周波数の数よりも多い数の周波数について前記インピーダンスを測定する第2測定モードとで、測定精度、測定時間、及び2次電池の消費電流を異ならせることができる。そして、相関パラメータと閾値とを比較することにより、第1測定モード及び第2測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。なお、所定周波数は、単数であってもよいし、複数であってもよい。
【0046】
第25の手段では、第24の手段において、前記切替部は、前記2次電池が異常であると判定していない場合に前記測定モードを前記第1測定モードに切り替え、前記第1測定モードにおいて前記2次電池が異常であると判定した場合に前記測定モードを前記第2測定モードに切り替える。こうした構成によれば、第1測定モードにおいて前記2次電池が異常であると判定した場合に、第2測定モードに切り替えてより多くの周波数について2次電池のインピーダンスを測定することができ、測定精度を向上させることができる。一方、前記2次電池が異常であると判定していない場合は、第1測定モードでより少ない周波数について2次電池のインピーダンスを測定するため、測定時間及び2次電池の消費電流を減少させることができる。
【0047】
第26の手段では、前記第2測定モードは、前記異常の内容に応じた測定範囲内の周波数について前記インピーダンスを測定するモードである。こうした構成によれば、第2測定モードにおいて異常の内容に応じてインピーダンスを測定する周波数の範囲を設定することができ、異常の原因等を把握しやすくなる。
【0048】
第27の手段では、前記第2測定モードは、前記インピーダンスが所定条件を満たす前記周波数を探索するモードである。こうした構成によれば、前記2次電池が異常であると判定された場合に、前記インピーダンスが所定条件を満たす前記周波数を把握することができる。
【0049】
2次電池の特性は、インピーダンス以外の相関パラメータからも、ある程度予想することができる。この点、第28の手段では、前記所定周波数は、前記インピーダンス以外の前記相関パラメータに基づいて設定される周波数である。こうした構成によれば、2次電池の特性を予想した上で所定周波数を設定することができるため、前記インピーダンスを測定する際に取得するデータ数が第2測定モードよりも少ない第1測定モードであっても、測定精度が低下することを抑制することができる。
【0050】
2次電池の特性把握に適したインピーダンスの測定条件は、2次電池の状態に応じて変化する。そして、2次電池の状態は、インピーダンスに基づいて推定することができる。この点、第29の手段では、前記所定周波数は、前記インピーダンスに基づいて推定した前記2次電池の状態に基づいて設定される周波数である。こうした構成によれば、前記インピーダンスに基づいて2次電池の状態を推定した上で、第1測定モードにおける所定周波数を適切に設定することができる。したがって、前記インピーダンスを測定する際に取得するデータ数が第2測定モードよりも少ない第1測定モードであっても、測定精度が低下することを抑制することができる。
【0051】
第30の手段では、前記測定条件が異なる複数の測定モードは、所定周期で前記インピーダンスを測定する第1測定モードと、前記所定周期よりも短い周期で前記インピーダンスを測定する第2測定モードとを含んでいる。
【0052】
上記構成によれば、所定周期で前記インピーダンスを測定する第1測定モードと、前記所定周期よりも短い周期で前記インピーダンスを測定する第2測定モードとで、測定精度、測定時間、及び2次電池の消費電流を異ならせることができる。そして、相関パラメータと閾値とを比較することにより、第1測定モード及び第2測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。
【0053】
第31の手段では、前記所定周波数は、前記インピーダンスが所定条件を満たす周波数である。こうした構成によれば、第1測定モードにおいて前記インピーダンスが所定条件を満たす周波数についてインピーダンスを測定することができ、前記インピーダンスを測定する際に取得するデータ数が第2測定モードよりも少ない第1測定モードであっても、2次電池の特性を把握しやすくなる。
【0054】
第32の手段では、前記切替部は、前記相関パラメータが前記閾値を超えた場合に、前記測定モードを切り替える。こうした構成によれば、2次電池のインピーダンスに相関する相関パラメータが変化した場合に、測定モードを切り替えることができる。
【0055】
第33の手段では、前記切替部は、さらに前記2次電池における前記インピーダンス以外の特性と前記インピーダンスとの関係が変化した場合に、前記測定モードを切り替える。こうした構成によれば、2次電池のインピーダンスに関する特性が変化した場合に、測定モードを切り替えることができる。
【0056】
第34の手段では、前記切替部は、さらに前記2次電池の周囲の環境の状態に応じて、前記測定モードを切り替える。こうした構成によれば、2次電池の周囲の環境の状態が変化した場合であっても、適切な測定モードに切り替えることができる。
【0057】
第35の手段では、前記切替部は、さらに所定スケジュールに基づいて、前記測定モードを切り替える。こうした構成によれば、2次電池の状態にかかわらず、所定スケジュールに基づいて測定モードを切り替えることができる。
【0058】
2次電池の使用履歴に応じて、2次電池の特性は変化する。この点、第36の手段では、前記切替部は、さらに前記2次電池の使用履歴に基づいて、前記測定モードを切り替える。こうした構成によれば、2次電池の使用履歴を考慮して、適切な測定モードに切り替えることができる。
【0059】
第37の手段では、前記切替部は、所定情報に基づいて、前記測定モードを切り替える条件を変更可能である。こうした構成によれば、測定モードを切り替える条件を、一律ではなく、所定情報に基づいて変更することができる。
【0060】
第38の手段では、前記測定部は、所定情報に基づいて、前記測定条件が異なる複数の測定モードの内容を変更するモード変更部を備えている。こうした構成によれば、測定モードの内容を、一律ではなく、所定情報に基づいて変更することができる。
【0061】
第39の手段では、前記所定情報は、前記2次電池の使用履歴である。こうした構成によれば、2次電池の使用履歴を考慮して、測定モードを切り替える条件及び測定モードの内容の少なくとも一方を適切に変更することができる。
【0062】
第40の手段では、前記所定情報は、通信により前記インピーダンス測定装置の外部から取得される。こうした構成によれば、通信によりインピーダンス測定装置の外部から取得した所定情報を考慮して、測定モードを切り替える条件及び測定モードの内容の少なくとも一方を適切に変更することができる。
【0063】
第41の手段では、前記所定情報は、前記所定情報は、前記インピーダンス測定装置とインターネットを介して接続される外部サーバに保存されている。こうした構成によれば、インピーダンス測定装置とインターネットを介して接続された外部サーバから、所定情報を取得することができる。
【0064】
具体的には、第42の手段のように、前記所定情報は、前記インピーダンス測定装置が外部に電気的に接続された状態でのみ取得される、といった構成を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1】電源システムの電気回路図。
図2】電池測定部及び電池制御ECUのブロック図。
図3】測定モード切替の態様を示すタイムチャート。
図4】第1実施形態の各測定モードを示す図。
図5】温度と交流電流周波数とリチウム析出との関係を示す図。
図6】第2実施形態の各測定モードを示す模式図。
図7】第3実施形態の各測定モードを示す模式図。
図8】電池測定部の変更例のブロック図。
図9】電池測定部の変更例のブロック図。
図10】電池測定部の他の変更例のブロック図。
図11】電池測定部の他の変更例のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0066】
(第1実施形態)
以下、「2次電池のインピーダンス測定装置」を車両(例えば、ハイブリッド車や電気自動車)の電源システムに適用した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0067】
図1に示すように、電源システム10は、回転電機としてのモータ20と、モータ20に対して3相電流を流す電力変換器としてのインバータ30と、充放電可能な組電池40と、組電池40の状態を測定する電池測定部50と、組電池40を制御する電池制御ECU70と、モータ20などを制御する上位ECU60と、を備えている。
【0068】
モータ20は、車載主機であり、図示しない駆動輪と動力伝達可能とされている。本実施形態では、モータ20として、3相の永久磁石同期モータを用いている。インバータ30は、相巻線の相数と同数の上下アームを有するフルブリッジ回路により構成されており、各アームに設けられたスイッチ(半導体スイッチング素子)のオンオフにより、各相巻線において通電電流が調整される。
【0069】
インバータ30には、図示しないインバータ制御装置が設けられており、インバータ制御装置は、モータ20における各種の検出情報や、力行駆動及び発電の要求に基づいて、インバータ30における各スイッチのオンオフにより通電制御を実施する。これにより、インバータ制御装置は、組電池40からインバータ30を介してモータ20に電力を供給し、モータ20を力行駆動させる。また、インバータ制御装置は、駆動輪からの動力に基づいてモータ20を発電させ、インバータ30を介して、発電電力を変換して組電池40に供給し、組電池40を充電させる。
【0070】
組電池40は、インバータ30を介して、モータ20に電気的に接続されている。組電池40は、例えば百[V]以上となる端子間電圧を有し、複数の電池モジュール41が直列接続されて構成されている。電池モジュール41は、複数の電池セル42が直列接続されて構成されている。電池セル42(2次電池)として、例えば、リン酸鉄リチウムイオン電池(LFP電池)や、リチウムイオン蓄電池、ニッケル水素蓄電池を用いることができる。各電池セル42は、電解質と複数の電極とを有する蓄電池である。
【0071】
図1に示すように、組電池40の正極側電源端子に接続される正極側電源経路L1には、インバータ30等の電気負荷の正極側端子が接続されている。同様に、組電池40の負極側電源端子に接続される負極側電源経路L2には、インバータ30等の電気負荷の負極側端子が接続されている。なお、正極側電源経路L1及び負極側電源経路L2には、それぞれリレースイッチSMR(システムメインリレースイッチ)が設けられており、リレースイッチSMRにより、通電及び通電遮断が切り替え可能に構成されている。
【0072】
電池測定部50(測定部)は、各電池セル42の蓄電状態(SOC:State Of Charge)及び劣化状態(SOH:State Of Health)などを測定する装置である。電池測定部50は、電池制御ECU70に接続されており、各電池セル42のインピーダンスなどを測定して出力する。電池測定部50は、測定条件が異なる複数の測定モードにより各電池セル42のインピーダンスを測定可能である。電池測定部50の構成については、後述する。
【0073】
電池制御ECU70(切替部)は、電池測定部50を制御して、選択した測定モードにより各電池セル42のインピーダンスを測定させる。電池制御ECU70は、インピーダンスに相関する相関パラメータと閾値との比較に基づいて、測定モードを切り替える(選択する)。なお、電池測定部50及び電池制御ECU70により、2次電池のインピーダンス測定装置が構成されている。
【0074】
上位ECU60は、各種情報に基づいて、インバータ制御装置に対して力行駆動及び発電の要求を行う。各種情報には、例えば、アクセル及びブレーキの操作情報、車速、組電池40の状態などが含まれる。また、上位ECU60は、電池制御ECU70から各電池セル42の状態を測定した結果等を入力する。
【0075】
次に、電池測定部50及び電池制御ECU70について詳しく説明する。図2に示すように、電池測定部50は、電池セル42毎の電池状態を測定可能に設けられている。電池測定部50は、第1電気経路81を介して各電池セル42に接続された交流電流生成部51と、第2電気経路82を介して各電池セル42に接続された電圧応答測定部52と、交流電流生成部51に接続された変調信号発生器53と、電圧応答測定部52及び変調信号発生器53に接続された演算処理部54と、演算処理部54に接続された通信部55と、を備えている。
【0076】
交流電流生成部51(電流生成部)は、測定対象である電池セル42を電源として、交流電流を出力させる。具体的に説明すると、交流電流生成部51は、変調信号発生器53から入力される指示信号に基づいて、交流電流を電池セル42から出力させる。交流電流が電池セル42から流れることにより、電池セル42の端子間電圧には、複素インピーダンス(インピーダンス)の情報を反映した応答信号(電圧変動)が生じる。電圧応答測定部52(電圧測定部)は、電池セル42の端子間において、電池セル42の複素インピーダンスの情報を反映した応答信号(電圧変動)を測定する。
【0077】
変調信号発生器53は、任意波形の交流信号を発生する発振器を備えている。そして、変調信号発生器53は、演算処理部54からの命令に従って、発振器に交流信号を発生させる。
【0078】
本実施形態における交流信号は、正弦波信号とされているが、交流信号であれば、任意に変更してよく、矩形波や三角波などであってもよい。また、交流信号には、直流バイアスがかけられており、電池セル42から流れる交流電流が負の電流(電池セル42に対して逆流)とならないようになっている。
【0079】
そして、変調信号発生器53は、交流信号をデジタル信号に変換して指示信号を生成し、指示信号に基づいて交流電流生成部51に交流電流を発生させるように指示(出力)する。
【0080】
演算処理部54は、CPU(演算装置)や記憶装置(各種メモリ)からなるマイコンを備えており、記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、各種機能を実現する。各種機能は、ハードウェアである電子回路によって実現されてもよいし、ハードウェア及びソフトウェアの双方によって実現されてもよい。
【0081】
演算処理部54は、電池セル42の複素インピーダンスを算出する機能を備えている。ここで、複素インピーダンスの算出方法の概要について説明する。演算処理部54は、複素インピーダンスの測定周波数を変調信号発生器53に指示する。変調信号発生器53は、交流電流生成部51を介して、演算処理部54の指示に基づいて、電池セル42から交流電流を発生させる。電圧応答測定部52は、電池セル42の端子間電圧を測定して、交流電流に応答する応答信号(電圧変動)を測定し、測定した応答信号を演算処理部54に出力する。
【0082】
演算処理部54は、応答信号に基づいて、電池セル42の複素インピーダンスに関する情報を算出する。演算処理部54は、これら一連の処理を、測定範囲内において予め決められた複数の測定周波数についての複素インピーダンスが算出されるまで繰り返す。また、演算処理部54は、算出結果を電池制御ECU70に通知する。電池制御ECU70は、算出結果に基づいて、例えば、複素インピーダンス平面プロット(コールコールプロット)を作成し、電極及び電解質などの特性を把握する。また、蓄電状態(SOC)や劣化状態(SOH)を把握する。
【0083】
なお、コールコールプロット全体を必ずしも作成する必要はなく、その一部に着目してもよい。例えば、走行時、一定の時間間隔で特定周波数の複素インピーダンスを測定し、特定周波数の複素インピーダンスの時間変化に基づいて、SOC、SOH及び電池温度等の走行時における変化を把握してもよい。または、1日毎、1週ごと、若しくは1年ごとといった時間間隔で特定周波数の複素インピーダンスを測定し、特定周波数の複素インピーダンスの時間変化に基づいて、SOH等の変化を把握してもよい。また、複素インピーダンス平面プロットは、コールコールプロットに限らず、Bode plot等を採用することもできる。
【0084】
ところで、複素インピーダンスの測定精度を確保するためには、電圧変動の測定値を平均化して(積分値にして)誤差を抑制する必要があり、測定周波数ごとに各交流信号について、それぞれある程度の波数を出力させ、その期間中、電圧変動を測定する必要がある。つまり、要求される精度があらかじめ決まっている場合、精度に応じた波数の交流信号を出力させる必要がある。ここで、測定周波数が異なれば、単位時間あたりの波数も異なる。したがって、測定周波数が、低周波数であれば、高周波数である場合に比較して、長時間の交流電流を出力させる必要があることとなる。つまり、測定周波数ごとに、必要となる出力期間が異なる。
【0085】
そこで、図3に示すように、電池制御ECU70は、通常時に測定精度が低い第1測定モードで複素インピーダンスを測定させ、その測定結果に基づいて電池セル42が異常であると判定した場合に、第1測定モードよりも測定精度が高い第2測定モードに切り替えて複素インピーダンスを測定させる。すなわち、通常時は測定精度が低い第1測定モードで複素インピーダンス(相関パラメータ)を測定し、電池セル42が異常であると判定した場合は測定精度が高い第2測定モードで詳細に複素インピーダンスを測定する。なお、第1測定モードで複素インピーダンスを測定する時期は任意である。また、第1測定モードにおいて電池セル42が異常であると判定した直後に第2測定モードで複素インピーダンスを測定させてもよいし、異常であると判定した所定時間後に第2測定モードで複素インピーダンスを測定させてもよい。
【0086】
詳しくは、図2に示すように、電池制御ECU70は、モード切替制御部71及び切替判定部72を備えている。切替判定部72は、第1測定モードで測定された電池セル42の複素インピーダンスが、正常範囲に含まれる場合に電池セル42が正常であると判定し、正常範囲に含まれない(閾値よりも大きい又は閾値よりも小さい)場合に電池セル42が異常であると判定する。モード切替制御部71は、電池セル42が正常であると判定された場合に第1測定モードに切り替えさせ、電池セル42が異常であると判定された場合に第2測定モード切り替えさせるように、通信部55を介して演算処理部54に指示する。
【0087】
具体的には、演算処理部54は、設定した測定周波数に基づいて、交流信号の出力期間を決定する。出力期間は、交流信号の波数を所定回数出力させるまでの期間であり、測定周波数に基づいて算出される。波数の回数を示す所定回数は、要求される測定精度に応じて予め決定されている。例えば、図4に示すように、第1測定モードでは所定回数は3であり、第2測定モードでは所定回数は9である。第2測定モードの所定回数は、第1測定モードの所定回数よりも多い。このように、第1測定モードと第2測定モードとでは、交流電流生成部51により交流電流を出力させて電圧応答測定部52により電池セル42の電圧を測定する回数が異なっている。すなわち、第1測定モードと第2測定モードとでは、複素インピーダンスを測定する方法が異なっている。このため、第2測定モードの測定時間は、第1測定モードの測定時間よりも長い。第2測定モードの測定精度は、第1測定モードの測定精度よりも高い。
【0088】
次に演算処理部54は、設定された測定周波数を変調信号発生器53に指示する。変調信号発生器53では、指示された測定周波数に従って、発振器に出力させる交流信号の周波数が設定される。そして、変調信号発生器53の発振器は、設定された測定周波数に従って、交流信号を生成する。変調信号発生器53は、生成した交流信号のアナログ信号をデジタル信号に変換して、交流信号を出力させる指示信号を交流電流生成部51に出力する。
【0089】
交流電流生成部51は、指示信号に基づいて電池セル42から交流電流を出力させる。電圧応答測定部52は、電池セル42の端子間電圧を測定して、交流電流に応答する応答信号(電圧変動)を測定し、測定した応答信号のアナログ値をデジタル値に変換して演算処理部54に出力する。
【0090】
演算処理部54は、交流電流及び電圧変動に基づいて、電池セル42の複素インピーダンスに関する情報を算出する。具体的に説明すると、演算処理部54は、交流電流の測定値を取得する。つまり、第1電気経路81に流れる交流電流を測定し、測定された交流電流を各交流信号の周波数(測定周波数)によって解析し、実際に流れた各交流信号(測定信号)を抽出して、取得する。
【0091】
そして、演算処理部54は、取得した交流信号に基づいて応答信号を解析し、応答信号の実部に比例した値と虚部に比例した値(複素インピーダンスに関する情報)を算出する。なお、応答信号の実部に比例した値と虚部に比例した値は、それぞれ各交流信号の出力開始時からの平均値(積分値)である。
【0092】
次に、演算処理部54は、各測定モードに応じた交流信号の出力期間が終了したか否かを判定する。第1測定モードでは出力期間は3つの交流信号を出力させるまでの期間であり、第2測定モードでは出力期間は9つの交流信号を出力させるまでの期間である。この判定結果が否定の場合、演算処理部54は、演算処理部54は、測定及び算出を継続する。一方、判定結果が肯定の場合、演算処理部54は交流信号の発生を停止させる。
【0093】
演算処理部54は、交流信号に対応する応答信号の実部及び虚部に比例した値を取得し、それらに基づいて、交流信号の測定周波数における複素インピーダンスの絶対値、位相のすべて若しくはいずれかを算出する。そして、演算処理部54は、算出した複素インピーダンスを電池制御ECU70に通知する。
【0094】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0095】
・インピーダンスに相関する相関パラメータ(インピーダンスそのものも含む)が存在し、選択すべき測定モードを相関パラメータから判定可能であることに、本願発明者は着目した。そして、電池制御ECU70は、インピーダンスに相関する相関パラメータと閾値との比較に基づいて、測定モードを切り替える。このため、相関パラメータと閾値とを比較することにより、適切な測定モードに切り替えることができる。具体的には、切替判定部72は、第1測定モードで測定された電池セル42の複素インピーダンスが、正常範囲に含まれない(閾値よりも大きい又は閾値よりも小さい)場合に電池セル42が異常であると判定する。そして、モード切替制御部71は、電池セル42が異常であると判定された場合に、第2測定モード切り替えさせるように演算処理部54に指示する。したがって、相関パラメータにかかわらず一律の測定モードで測定を行う場合と比較して、測定時間を短縮することができ、且つ電池セル42の消費電流を減少させることができる。
【0096】
・測定条件が異なる第1測定モードと第2測定モードとは、測定条件として、電池測定部50によりインピーダンスを測定する方法が異なっている。そして、電池制御ECU70は、インピーダンスに相関する相関パラメータと閾値との比較に基づいて、測定モードを切り替える。このため、相関パラメータと閾値とを比較することにより、インピーダンスを測定する方法が異なっている第1測定モード及び第2測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。
【0097】
・第1測定モード及び第2測定モードにおいて、交流電流を出力させて電池セル42の電圧を測定する回数を異ならせることにより、測定精度、測定時間、及び電池セル42の消費電流を異ならせることができる。そして、相関パラメータと閾値とを比較することにより、交流電流を出力させて電池セル42の電圧を測定する回数が異なっている複数の測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。
【0098】
なお、第1実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0099】
・測定条件が異なる複数の測定モードは、測定条件として、電圧応答測定部52により測定された電池セル42の電圧のアナログ値をAD変換したデジタル値のビット数が異なっている、といった構成を採用することもできる。例えば、第2測定モードにおけるデジタル値のビット数を、第1測定モードにおけるデジタル値のビット数よりも多くすることができる。デジタル値のビット数は、変換するビット数が異なる複数のAD変換器を備えることにより異ならせてもよいし、デジタル値に変換する際にソフト処理によりビット数を異ならせてもよい。
【0100】
上記構成によれば、複数の測定モードにおいて、電圧応答測定部52により測定された電池セル42の電圧のアナログ値をAD変換したデジタル値のビット数を異ならせることにより、測定精度及び測定時間を異ならせることができる。そして、相関パラメータ(複素インピーダンス、電池セル42の蓄電状態(SOC)、電池セル42の劣化状態(SOH)、温度等)と閾値とを比較することにより、電池セル42の電圧のアナログ値をAD変換したデジタル値のビット数が異なっている複数の測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。なお、以降においても、相関パラメータは、複素インピーダンス、電池セル42の蓄電状態(SOC)、電池セル42の劣化状態(SOH)、温度等を含むものとする。
【0101】
例えば、電池セル42のSOCが所定範囲から外れている(第1閾値よりも少ない又は第2閾値よりも多い)場合に第1測定モードに切り替え、電池セル42のSOCが所定範囲である(第1閾値よりも多く且つ第2閾値よりも少ない)場合に第2測定モードに切り替えることができる。電池セル42のSOHが閾値よりも大きい場合に第1測定モードに切り替え、電池セル42のSOHが閾値よりも小さい場合に第2測定モードに切り替えることができる。また、電池セル42の温度が閾値よりも低い場合に第1測定モードに切り替え、電池セル42の温度が閾値よりも高い場合に第2測定モードに切り替えることができる。なお、以降においても、電池セル42のSOC,SOH,温度に関して、同様に第1測定モードと第2測定モードとを切り替え可能であるものとする。
【0102】
・電池測定部50は、電圧応答測定部52により測定された電池セル42の電圧におけるカットオフ周波数よりも高い周波数成分をカットするローパスフィルタを備えていてもよい。そして、測定条件が異なる複数の測定モードは、測定条件として、ローパスフィルタのカットオフ周波数が異なっている、といった構成を採用することもできる。例えば、第2測定モードにおけるカットオフ周波数を、第1測定モードにおけるカットオフ周波数よりも低くすることができる。
【0103】
上記構成によれば、複数の測定モードにおいて、ローパスフィルタのカットオフ周波数を異ならせることにより、測定精度及び測定時間を異ならせることができる。そして、相関パラメータと閾値とを比較することにより、ローパスフィルタのカットオフ周波数が異なっている複数の測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。
【0104】
・測定条件が異なる複数の測定モードは、測定条件として、交流電流生成部51により電池セル42から出力させる交流電流の波形が異なっている、といった構成を採用することもできる。例えば、交流電流の波形として、矩形波と正弦波とを採用することができる。
【0105】
上記構成によれば、複数の測定モードにおいて、交流電流生成部51により電池セル42から出力させる交流電流の波形を異ならせることにより、測定精度及び電池セル42の消費電流を異ならせることができる。そして、相関パラメータと閾値とを比較することにより、電池セル42から出力させる交流電流の波形が異なっている複数の測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。
【0106】
・測定条件が異なる複数の測定モードは、測定条件として、交流電流生成部51により電池セル42から出力させる交流電流の大きさ(振幅)が異なっている、といった構成を採用することもできる。例えば、第2測定モードにおける交流電流の大きさを、第1測定モードにおける交流電流の大きさよりも大きくすることができる。
【0107】
上記構成によれば、複数の測定モードにおいて、交流電流生成部51により電池セル42から出力させる交流電流の大きさを異ならせることにより、測定精度及び電池セル42の消費電流を異ならせることができる。そして、相関パラメータと閾値とを比較することにより、電池セル42から出力させる交流電流の大きさが異なっている複数の測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。例えば、第1測定モードでは交流電流の大きさを小さくして消費電流を減少させ、第2測定モードでは交流電流の大きさを大きくして測定精度を向上させることができる。
【0108】
・測定条件が異なる複数の測定モードは、測定条件として、電圧応答測定部52により測定された電池セル42の電圧を補正する態様が異なっている、といった構成を採用することもできる。例えば、電圧応答測定部52により測定された電池セル42の端子間電圧の補正の有無や精度、バスバー(配線)からの磁気的影響等の外部影響に対する補正の有無や精度を、複数の測定モードで異ならせることができる。また、特定の測定周波数について複素インピーダンスを測定する際(変化傾向を把握する際)に第1測定モードに切り替え且つ補正を行わず、複数の測定周波数について複素インピーダンスを測定する際(個々の複素インピーダンスの値を把握する際)に第2測定モードに切り替え且つ補正を行ってもよい。
【0109】
上記構成によれば、複数の測定モードにおいて、電圧応答測定部52により測定された電池セル42の電圧を補正する態様を異ならせることにより、測定精度及び測定時間を異ならせることができる。そして、相関パラメータと閾値とを比較することにより、測定された電池セル42の電圧を補正する態様が異なっている複数の測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。
【0110】
・電池測定部50は、電池セル42(電池モジュール41、組電池40)を冷却する冷却機構(冷却ファン、冷却水循環機構等)備えていてもよい。そして、測定条件が異なる複数の測定モードは、測定条件として、電池測定部50によりインピーダンスを測定する温度が異なっている、といった構成を採用することもできる。例えば、第1測定モードにおいて冷却機構をオフにし、第2測定モードにおいて冷却機構をオンにすることができる。
【0111】
上記構成によれば、複数の測定モードにおいて、電池測定部50によりインピーダンスを測定する温度を異ならせることにより、測定精度及び測定時間を異ならせることができる。そして、相関パラメータと閾値とを比較することにより、インピーダンスを測定する温度が異なっている複数の測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。
【0112】
・測定条件が異なる複数の測定モードは、測定条件として、同時に動作させる交流電流生成部51及び電圧応答測定部52の数が異なっている、といった構成を採用することもできる。例えば、第2測定モードにおいて同時に動作させる交流電流生成部51及び電圧応答測定部52の数を、第1測定モードにおいて同時に動作させる交流電流生成部51及び電圧応答測定部52の数よりも少なくすることができる。
【0113】
上記構成によれば、複数の測定モードにおいて、同時に動作させる交流電流生成部51及び電圧応答測定部52の数を異ならせることにより、測定精度及び測定時間を異ならせることができる。そして、相関パラメータと閾値とを比較することにより、同時に動作させる交流電流生成部51及び電圧応答測定部52の数が異なっている複数の測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。例えば、第1測定モードでは同時に動作させる交流電流生成部51及び電圧応答測定部52の数を多くして測定時間を短縮し、第2測定モードでは同時に動作させる交流電流生成部51及び電圧応答測定部52の数を少なくして測定精度を向上させることができる。
【0114】
図5に示すように、リチウムイオン電池では、温度が低く且つ交流電流の周波数が低い領域(危険領域)で電池セル42の充電又は放電を行うと、電極においてリチウムが析出しやすいことに、本願発明者は着目した。特に、交流電流の振幅が大きいほど、交流電流を流す時間が長いほど、リチウムが析出しやすくなる。なお、温度が高く且つ交流電流の周波数が高い領域(安全領域)で電池セル42の充電又は放電を行っても、電極においてリチウムは析出しにくい。
【0115】
そこで、電池制御ECU70は、電池セル42の温度及び複素インピーダンスの測定周波数が危険領域である場合に第1測定モードで複素インピーダンスを測定させ、電池セル42の温度及び複素インピーダンスの測定周波数が安全領域である場合に第2測定モードで複素インピーダンスを測定させてもよい。例えば、第1測定モードは、交流電流の振幅が第2測定モードの交流電流の振幅よりも小さく、且つ交流電流を流す時間が第2測定モードにおいて交流電流を流す時間よりも短い測定モードである。こうした構成によれば、危険領域で複素インピーダンスの測定を行う場合であっても、電池セル42の電極におけるリチウムの析出を抑制することができる。
【0116】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0117】
図6に示すように、電池モジュール41は、電池セル42として複数の電池セル42A~42Gを備えている。各電池セル42は、バスバー43により直列に接続されて積層されている。電池セル42A,42Gが電池モジュール41における両端の電池セル42であり、電池セル42Dが電池モジュール41における中央の電池セル42である。
【0118】
ここで、インピーダンスを測定する電池セル42の数が異なれば、測定時間や2次電池の消費電流が異なる。この点、測定条件が異なる複数の測定モードは、測定条件として、インピーダンスを測定する対象とする電池セル42の数が異なっている。そして、電池制御ECU70は、インピーダンスに相関する相関パラメータと閾値との比較に基づいて、測定モードを切り替える。このため、相関パラメータと閾値とを比較することにより、インピーダンスを測定する対象とする電池セル42の数が異なっている複数の測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。
【0119】
例えば、測定条件が異なる複数の測定モードは、複数の電池セル42のうち、電池セル42D(所定電池セル)のインピーダンスを測定する第1測定モードと、電池セル42A,42D,42G(所定電池セルの数よりも多い数の電池セル42)のインピーダンスを測定する第2測定モードとを含んでいる、といった構成を採用することができる。上記構成によれば、複数の電池セル42のうち、電池セル42Dのインピーダンスを測定する第1測定モードと、電池セル42A,42D,42Gのインピーダンスを測定する第2測定モードとで、測定精度、測定時間、及び2次電池の消費電流を異ならせることができる。
【0120】
電池モジュール41に含まれる電池セル42A~42Gのうち、中央の電池セル42Dは、周りに熱が逃げにくく最も温度が高くなる。このため、電池セル42Dは、他の電池セル42よりも劣化しやすい。この点、第1測定モードにおいてインピーダンスを測定する所定電池セルは、複数の電池セル42A~42Gのうち、最も温度が高い電池セル42Dである。こうした構成によれば、第2測定モードよりも測定する電池セル42の数が少ない第1測定モードにおいて、劣化しやすい電池セル42Dのインピーダンスを測定することができる。したがって、測定する電池セル42の数を少なくしても、電池モジュール41(組電池40)の劣化を監視する精度が低下することを抑制することができる。
【0121】
なお、第2実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。第1実施形態及び第2実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0122】
・複数の電池セル42において、最も温度が低い電池セル42A,42Gが、他の電池セル42よりも劣化しやすい場合もある。そこで、所定電池セルは、複数の電池セル42A~42Gのうち、最も温度が低い電池セル42A,42Gである、といった構成を採用することもできる。そして、第2測定モードにおいて、電池測定部50は電池セル42A,42D,42Gのインピーダンスを測定する。
【0123】
こうした構成によっても、第2測定モードよりも測定する電池セル42の数が少ない第1測定モードにおいて、劣化しやすい電池セル42A,42Gのインピーダンスを測定することができる。したがって、測定する電池セル42の数を少なくしても、電池モジュール41(組電池40)の劣化を監視する精度が低下することを抑制することができる。なお、第1測定モードにおいて電池セル42A,42Gのインピーダンスを測定し、電池セル42Aのインピーダンスと電池セル42Gのインピーダンスとの差の絶対値が閾値よりも大きい場合に、第2測定モードに切り替えて全ての電池セル42A~42Gのインピーダンスを測定してもよい。
【0124】
また、最も温度が高い電池セル42、又は最も温度が低い電池セル42は、電池セル42の温度を実測して決めてもよいし、予め試験等に基づいて設定しておいてもよい。
【0125】
・複数の電池セル42A~42Gにおいて、最も温度変化が大きい電池セル42Dは、他の電池セル42よりも劣化しやすい。そこで、所定電池セルは、複数の電池セル42A~42Gのうち、最も温度変化が大きい電池セル42Dである、といった構成を採用することもできる。こうした構成によれば、第1測定モードにおいて測定する電池セル42の数を少なくしても、2次電池の劣化を監視する精度が低下することを抑制することができる。なお、電池モジュール41の特性や配置環境に応じて、最も温度変化が大きい電池セル42が電池セル42D以外になることもある。また、最も温度変化が大きい電池セル42は、電池セル42の温度を実測して決めてもよいし、予め試験等に基づいて設定しておいてもよい。
【0126】
・複数の電池セル42A~42Gにおいて、電池セル42のSOCを均等化する均等化処理が実行される場合がある。この場合に、複数の電池セル42A~42Gにおいて、均等化処理が実行された回数が最も多い電池セル42は、他の電池セル42よりも劣化した可能性がある。また、均等化処理が実行された回数が最も少ない電池セル42は、他の電池セル42よりも劣化して満充電容量が少なくなっている可能性がある。そこで、所定電池セルは、複数の電池セル42A~42Gのうち、均等化処理が実行された回数が最も多い又は最も少ない電池セル42である、といった構成を採用することもできる。こうした構成によれば、第1測定モードにおいて測定する電池セル42の数を少なくしても、2次電池の劣化を監視する精度が低下することを抑制することができる。
【0127】
・複数の電池セル42A~42Gにおいて、最も電圧変化が大きい電池セル42は、他の電池セル42よりも劣化する可能性がある。そこで、所定電池セルは、複数の電池セル42A~42Gのうち、最も電圧変化が大きい電池セル42である、といった構成を採用することもできる。こうした構成によれば、第1測定モードにおいて測定する電池セル42の数を少なくしても、2次電池の劣化を監視する精度が低下することを抑制することができる。なお、最も電圧変化が大きい電池セル42として、SOCの変化が最も大きい電池セル42を採用してもよい。
【0128】
・複数の電池セル42A~42Gにおいて、最も抵抗値が高い電池セル42は、他の電池セル42よりも劣化している可能性がある。そこで、所定電池セルは、複数の電池セル42A~42Gのうち、最も抵抗値が高い電池セル42である、といった構成を採用することもできる。こうした構成によれば、第1測定モードにおいて測定する電池セル42の数を少なくしても、2次電池の劣化を監視する精度が低下することを抑制することができる。
【0129】
・複数の電池セル42A~42Gにおいて、中央(所定位置)に配置された電池セル42Dは、他の電池セル42よりも劣化している可能性がある。そこで、所定電池セルは、複数の電池セル42A~42Gのうち、中央に配置された電池セル42Dである、といった構成を採用することもできる。こうした構成によれば、第1測定モードにおいて測定する電池セル42の数を少なくしても、2次電池の劣化を監視する精度が低下することを抑制することができる。なお、電池モジュール41の特性や配置環境に応じて、中央以外に配置された電池セル42を所定電池セルとしてもよい。また、第1測定モードにおいて奇数番目又は偶数番目の電池セル42を所定電池セルとし、第2測定モードにおいて全ての電池セル42A~42Gのインピーダンスを測定してもよい。
【0130】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について、第1実施形態及び第2実現との相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態及び第2実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0131】
図7に示すように、電池測定部50は、測定周波数を変更しつつ電池セル42のインピーダンスを測定して、複素インピーダンス平面プロットを作成する。横軸は、インピーダンスの実数部であり、縦軸はインピーダンスの虚数部である。
【0132】
インピーダンスを測定する際に取得するデータ数が異なれば、測定時間や電池セル42の消費電流が異なる。この点、測定条件が異なる複数の測定モードは、測定条件として、インピーダンスを測定する際に取得するデータ数が異なっている。そして、電池制御ECU70は、インピーダンスに相関する相関パラメータと閾値との比較に基づいて、測定モードを切り替える。このため、相関パラメータと閾値とを比較することにより、インピーダンスを測定する際に取得するデータ数が異なっている複数の測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。
【0133】
例えば、測定条件が異なる複数の測定モードは、所定周波数についてインピーダンスを測定する第1測定モードと、所定周波数の数よりも多い数の周波数についてインピーダンスを測定する第2測定モードとを含んでいる、といった構成を採用することができる。図7の上段では、低周波数から高周波数まで広範囲の周波数についてインピーダンスを測定しており、第2測定モードは第1測定モードよりも多くの周波数についてインピーダンスを測定している。図7の中段では、ゼロクロス点付近の周波数についてインピーダンスを測定しており、第2測定モードは第1測定モードよりも多くの周波数についてインピーダンスを測定している。なお、ゼロクロス点における実数部は電池セル42において溶液中を電荷が移動する際の抵抗である溶液抵抗を主に表している。図7の下段では、円弧部の実数部における半径(直径)を推定するための周波数についてインピーダンスを測定しており、第2測定モードは第1測定モードよりも多くの周波数についてインピーダンスを測定している。なお、円弧部の実数部における直径は、電池セル42において電極から分子が溶液中に出る際の抵抗である反応抵抗を主に表している。
【0134】
上記構成によれば、所定周波数についてインピーダンスを測定する第1測定モードと、所定周波数の数よりも多い数の周波数についてインピーダンスを測定する第2測定モードとで、測定精度、測定時間、及び電池セル42の消費電流を異ならせることができる。そして、相関パラメータと閾値とを比較することにより、第1測定モード及び第2測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。例えば、第1測定モードでは少ない周波数についてインピーダンスを測定して測定時間及び消費電流を減少させ、第2測定モードでは多くの周波数についてインピーダンスを測定して測定精度を向上させることができる。
【0135】
なお、第3実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0136】
・電池制御ECU70は、電池セル42が異常であると判定していない場合に測定モードを第1測定モードに切り替え、第1測定モードにおいて電池セル42が異常であると判定した場合に測定モードを第2測定モードに切り替える、といった構成を採用することもできる。こうした構成によれば、第1測定モードにおいて電池セル42が異常であると判定した場合に、第2測定モードに切り替えてより多くの周波数について電池セル42のインピーダンスを測定することができ、測定精度を向上させることができる。一方、電池セル42が異常であると判定していない場合は、第1測定モードでより少ない周波数について電池セル42のインピーダンスを測定するため、測定時間及び電池セル42の消費電流を減少させることができる。
【0137】
・第2測定モードは、異常の内容に応じた測定範囲内の周波数についてインピーダンスを測定するモードである、といった構成を採用することもできる。こうした構成によれば、第2測定モードにおいて異常の内容に応じてインピーダンスを測定する周波数の範囲を設定することができ、異常の原因等を把握しやすくなる。例えば、異常の内容に応じて、図7の上段、中段、下段のように測定周波数の範囲を変更することができる。
【0138】
・第2測定モードは、インピーダンスが所定条件を満たす周波数を探索するモードである、といった構成を採用することもできる。こうした構成によれば、電池セル42が異常であると判定された場合に、インピーダンスが所定条件を満たす周波数を把握することができる。例えば、第2測定モードとして、図7の中段のようにインピーダンスがゼロクロス点となる周波数を探索するモードを採用することができる。
【0139】
・電池セル42の特性は、インピーダンス以外の相関パラメータからも、ある程度予想することができる。そこで、第1測定モードにおいてインピーダンス測定する所定周波数は、インピーダンス以外の相関パラメータに基づいて設定される周波数である、といった構成を採用することもできる。こうした構成によれば、電池セル42の特性を予想した上で所定周波数を設定することができるため、インピーダンスを測定する際に取得するデータ数が第2測定モードよりも少ない第1測定モードであっても、測定精度が低下することを抑制することができる。例えば、インピーダンス以外の相関パラメータとして、電池セル42の蓄電状態(SOC)、電池セル42の劣化状態(SOH)、温度等を採用することができる。
【0140】
・電池セル42の特性把握に適したインピーダンスの測定条件は、電池セル42の状態に応じて変化する。そして、電池セル42の状態は、インピーダンスに基づいて推定することができる。そこで、所定周波数は、インピーダンスに基づいて推定した電池セル42の状態に基づいて設定される周波数である、といった構成を採用することもできる。例えば、複素インピーダンス平面プロットにおけるインピーダンス曲線の形状や位置に基づいて電池セル42の温度を推定し、推定した電池セル42の温度に基づいて所定周波数を設定することができる。こうした構成によれば、インピーダンスに基づいて電池セル42の状態を推定した上で、第1測定モードにおける所定周波数を適切に設定することができる。したがって、インピーダンスを測定する際に取得するデータ数が第2測定モードよりも少ない第1測定モードであっても、測定精度が低下することを抑制することができる。
【0141】
・測定条件が異なる複数の測定モードは、所定周期でインピーダンスを測定する第1測定モードと、所定周期よりも短い周期でインピーダンスを測定する第2測定モードとを含んでいる、といった構成を採用することもできる。
【0142】
上記構成によれば、所定周期でインピーダンスを測定する第1測定モードと、所定周期よりも短い周期でインピーダンスを測定する第2測定モードとで、測定精度、測定時間、及び電池セル42の消費電流を異ならせることができる。そして、相関パラメータと閾値とを比較することにより、第1測定モード及び第2測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。例えば、測定時間が同一の場合、第1測定モードでは長周期でインピーダンスを測定することにより消費電流を減少させ、第2測定モードでは短周期でインピーダンスを測定することにより精度を向上させることができる。また、測定回数が同一の場合、第2測定モードでは短周期でインピーダンスを測定することにより測定時間を短縮することができる。
【0143】
・所定周波数は、インピーダンスが所定条件を満たす周波数である、といった構成を採用することもできる。例えば、所定周波数として、図7の中段のようにインピーダンスがゼロクロス点となる周波数を採用することができる。こうした構成によれば、第1測定モードにおいてインピーダンスが所定条件を満たす周波数についてインピーダンスを測定することができ、インピーダンスを測定する際に取得するデータ数が第2測定モードよりも少ない第1測定モードであっても、電池セル42の特性を把握しやすくなる。なお、インピーダンスが所定条件を満たす周波数は、電池セル42のインピーダンスを測定して探索してもよいし、予め試験等に基づいて設定しておいてもよい。
【0144】
なお、第1~第3実施形態及びそれらの変更例を、以下のように変更して実施することもできる。第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0145】
・電池制御ECU70は、さらに電池セル42におけるインピーダンス以外の特性とインピーダンスとの関係が変化した場合に、測定モードを切り替える、といった構成を採用することもできる。例えば、複素インピーダンス平面プロットにおけるインピーダンス曲線の形状や位置と電池セル42の温度との関係が変化した場合に、測定モードを切り替えることができる。こうした構成によれば、電池セル42のインピーダンスに関する特性が変化した場合に、測定モードを切り替えることができる。
【0146】
・電池制御ECU70は、さらに電池セル42の周囲の環境の状態に応じて、測定モードを切り替える、といった構成を採用することもできる。こうした構成によれば、電池セル42の周囲の環境の状態が変化した場合であっても、適切な測定モードに切り替えることができる。例えば、電池セル42(電池モジュール41、組電池40)の外圧や外気温に応じて、測定モードを切り替えることができる。
【0147】
・電池制御ECU70は、さらに所定スケジュールに基づいて、測定モードを切り替える、といった構成を採用することもできる。こうした構成によれば、電池セル42の状態にかかわらず、所定スケジュールに基づいて測定モードを切り替えることができる。例えば、一定充放電間隔や一定の時間間隔で電池セル42のインピーダンスを測定する場合に第1測定モードに切り替え、電源システム10の起動時及び終了時に第2測定モードに切り替えることができる。
【0148】
・電池制御ECU70は、さらに電池セル42の使用履歴に基づいて、測定モードを切り替える、といった構成を採用することもできる。こうした構成によれば、電池セル42の使用履歴を考慮して、適切な測定モードに切り替えることができる。例えば、通常時に第1測定モードに切り替え、大電力(所定電力を超える電力)での放電が所定時間を超えて続いた場合に第2測定モード切り替えることができる。
【0149】
・電池制御ECU70は、所定情報に基づいて、測定モードを切り替える条件を変更可能である、といった構成を採用することもできる。こうした構成によれば、測定モードを切り替える条件を、一律ではなく、所定情報に基づいて変更することができる。例えば、電池制御ECU70は、インピーダンスに相関する相関パラメータと閾値との比較に基づいて測定モードを切り替えるという構成において、所定情報に基づいて閾値を変更可能とすることができる。
【0150】
・電池測定部50は、所定情報に基づいて、測定条件が異なる複数の測定モードの内容を変更するモード変更部を備えている、といった構成を採用することもできる。こうした構成によれば、測定モードの内容を、一律ではなく、所定情報に基づいて変更することができる。例えば、図8に示すように、モード変更部は、演算処理部54に接続された記憶部56と、演算処理部54とにより実現することができる。記憶部56は、測定条件が異なる複数の測定モードの内容を記憶しており、測定モードの内容を書き換え可能である。演算処理部54は、通信部55,83を介した通信によりモード関連情報記憶部84から測定条件が異なる複数の測定モードの内容を読み込み、記憶部56に記憶されている測定モードの内容を書き換える。
【0151】
なお、記憶部56を外部と接続不能とする(スタンドアローンにする)こともできる。こうした構成によれば、初期設定において記憶部56に所定情報を記憶させた後に、ハッキング等により所定情報が取得させられることを抑制することができ、ひいては測定モードを切り替える条件及び測定モードの内容の少なくとも一方が意図せず変更されることを抑制することができる。
【0152】
・上記所定情報は、電池セル42の使用履歴である、といった構成を採用することができる。こうした構成によれば、電池セル42の使用履歴を考慮して、測定モードを切り替える条件及び測定モードの内容の少なくとも一方を適切に変更することができる。
【0153】
図8において、モード関連情報記憶部84は、2次電池のインピーダンス測定装置(電池測定部50及び電池制御ECU70)の外部に配置されていてもよい。すなわち、所定情報は、通信によりインピーダンス測定装置の外部から取得される、といった構成を採用することもできる。こうした構成によれば、通信によりインピーダンス測定装置の外部から取得した所定情報を考慮して、測定モードを切り替える条件及び測定モードの内容の少なくとも一方を適切に変更することができる。例えば、モード関連情報記憶部84は、市場の車両に搭載された組電池40のインピーダンスを測定した結果等のビッグデータに基づいて、所定情報を更新することができる。
【0154】
具体的には、モード関連情報記憶部84は、電池測定部50とインターネットを介して接続された外部サーバに設けられていてもよい。すなわち、所定情報は、電池測定部50(2次電池のインピーダンス測定装置)とインターネットを介して接続される外部サーバに保存されている、といった構成を採用することもできる。こうした構成によれば、電池測定部50とインターネットを介して接続された外部サーバから、所定情報を取得することができる。また、所定情報は、インピーダンス測定装置が外部に電気的に接続された状態でのみ取得される、といった構成を採用することもできる。例えば、インピーダンス測定装置にサービスツールが接続された状態でのみ、所定情報を取得可能としてもよい。
【0155】
図9に示すように、電池測定部50は、電池セル42毎に交流電流生成部51及び電圧応答測定部52を備えていてもよい。そして、複数の電池セル42を測定対象として、電池セル42に個別に交流電流を流し、又は複数の電池セル42に同時に交流電流を流し、各電圧応答測定部52により各電池セル42の電圧変動を測定してもよい。
【0156】
図10に示すように、電池測定部50は、複数の電池セル42に対して1つの交流電流生成部51を備え、電池セル42毎に電圧応答測定部52を備えていてもよい。そして、複数の電池セル42を測定対象として、複数の電池セル42にまとめて交流電流を流し、各電圧応答測定部52により各電池セル42の電圧変動を測定してもよい。
【0157】
図11に示すように、電池測定部50は、複数の電池セル42に対して1つの交流電流生成部51と1つの電圧応答測定部52とを備えていてもよい。そして、複数の電池セル42を測定対象として、複数の電池セル42にまとめて交流電流を流し、電圧応答測定部52により複数の電池セル42の電圧変動をまとめて測定してもよい。
【0158】
・電池モジュール41全体に交流電流を流し、各電池セル42の電圧変動を測定してもよいし、電池モジュール41全体の電圧変動を測定してもよい。また、組電池40全体に交流電流を流し、各電池セル42の電圧変動を測定してもよいし、組電池40全体の電圧変動を測定してもよい。
【0159】
なお、第1実施形態及びその変更例と、第2実施形態及びその変更例と、第3実施形態及びその変更例とを組み合わせて実施することもできる。
【0160】
・第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせた場合は、測定条件として、電池測定部50によりインピーダンスを測定する方法が異なっていることと、インピーダンスを測定する対象とする電池セル42の数が異なっていることとを組み合わせることができる。したがって、相関パラメータと閾値とを比較することにより、インピーダンスを測定する方法が異なっており且つインピーダンスを測定する対象とする電池セル42の数が異なっている複数の測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。
【0161】
・第1実施形態と第3実施形態とを組み合わせた場合は、測定条件として、電池測定部50によりインピーダンスを測定する方法が異なっていることと、インピーダンスを測定する際に取得するデータ数が異なっていることとを組み合わせることができる。したがって、相関パラメータと閾値とを比較することにより、インピーダンスを測定する方法が異なっており且つインピーダンスを測定する際に取得するデータ数が異なっている複数の測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。
【0162】
・第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせた場合は、測定条件として、インピーダンスを測定する対象とする電池セル42の数が異なっていることと、インピーダンスを測定する際に取得するデータ数が異なっていることとを組み合わせることができる。したがって、相関パラメータと閾値とを比較することにより、インピーダンスを測定する対象とする電池セル42の数が異なっており且つインピーダンスを測定する際に取得するデータ数が異なっている複数の測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。
【0163】
・第1実施形態と第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせた場合は、測定条件として、電池測定部50によりインピーダンスを測定する方法が異なっていることと、インピーダンスを測定する対象とする電池セル42の数が異なっていることと、インピーダンスを測定する際に取得するデータ数が異なっていることとを組み合わせることができる。したがって、相関パラメータと閾値とを比較することにより、電池測定部50によりインピーダンスを測定する方法が異なっており、且つインピーダンスを測定する対象とする電池セル42の数が異なっており、且つインピーダンスを測定する際に取得するデータ数が異なっている複数の測定モードのうち、適切な測定モードに切り替えることができる。
【0164】
・インピーダンスに相関する相関パラメータと閾値との比較に基づいて、測定モードを切り替える切替部を、電池測定部50の内部(例えば演算処理部54)に設けることもできる。その場合、電池測定部50により、2次電池のインピーダンス測定装置が構成される。また、交流電流生成部51を車外の充電器等に設けることもできる。
【0165】
・電源システム10を、車両に限らず、電動航空機や、電動船舶等に搭載することもできる。
【符号の説明】
【0166】
40…組電池、41…電池モジュール、42…電池セル、50…電池測定部、70…電池制御ECU。
図1
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図11