(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】評価部材の衝突性能評価試験方法および衝突性能評価方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/20 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
G01N3/20
(21)【出願番号】P 2022074869
(22)【出願日】2022-04-28
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堺谷 智宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健太郎
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-265738(JP,A)
【文献】特開2004-168077(JP,A)
【文献】特開2004-114864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車車体用構造部材に対応する、天板部と、前記天板部の幅方向両端部にそれぞれ連続する一対の側壁部とを少なくとも有する形状に金属板材を加工した評価部材
を、移動部と固定部とを有する試験機を用い、前記移動部を前記固定部に対して移動させ
ることで、前記移動部と前記固定部との間で挟圧変形させる衝突性能評価試験方法であって、
円弧状または矩形の横断面を有し、その横断面の垂直方向を長手方向とする形状のパンチを前記移動部に接続し、
前記固定部として平坦な床面を用い、
前記評価部材を、前記側壁部の前記天板部側に対する逆側端部またはその逆側端部に連続するフランジ部
で前記固定部に、
前記評価部材の前記長手方向が前記パンチの前記長手方向と交差する向きで固定もしくは設置して実施することを特徴とする評価部材の衝突性能評価試験方法。
【請求項2】
請求項
1記載の衝突性能評価試験方法で前記評価部材の衝突性能評価試験を実施し、
前記評価部材の
挟圧変形による、前記評価部材の試験後の破断発生有無および/または試験中の破断の発生および進展挙動を、目視、撮影画像、試験荷重およびその他の測定結果の少なくとも一つから得られた情報に基づいて判定または評価することを特徴とする評価部材の衝突性能評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車車体用構造部材に対応する評価部材の衝突性能評価試験方法および衝突性能評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の分野では、乗員保護の観点から衝突安全基準の厳格化が進められており、高強度鋼の適用拡大や衝突安全性能に優れる車両開発が強く求められている。特に、欧米や中国の自動車業界においては脱炭素社会を目指す観点から、ガソリン車から電気自動車(EV)へのシフトが急速に進められており、日本においても今後EVの市場拡大が見込まれている。
【0003】
自動車車体用構造部材は衝突変形の観点から、キャビン周りに配置されるために高い耐荷重性能により衝突時に変形を許容しないキャビン骨格部材と、ある程度の耐荷重性能を持って変形を一部許容しながら衝突エネルギーを吸収するエネルギー吸収部材の2つに大別される。サイドシルのような部材は前者のキャビン骨格部材に該当し、特に側面衝突時に部材長手方向の曲げ変形モードに対し高い耐荷重性能を有することでキャビン内に衝突体を侵入させないことが求められる。しかしながら実際上従来のガソリン車においてサイドシルは、乗員障害値に影響がない範囲で部材の侵入を許容しつつ周辺構造に荷重を受け流すことでエネルギー吸収性能を高める設計となっているケースが多い。
【0004】
一方で、EVの車両設計、特にバッテリー周辺構造の設計においては、バッテリー積載による車両重量の増加によって、高いエネルギー吸収性能が必要な傾向となるにもかかわらず、バッテリー保護の観点から、バッテリー周辺構造自体は非常に堅牢で変形をほとんど許容させない構造で、エネルギー吸収性能への寄与は大きくない。さらに、航続距離の長距離化を目指す観点から、バッテリー積載領域をより広域化したプラットフォーム構造を採用するケースも多く、その場合は側面衝突時のエネルギー吸収の大部分をサイドシルが担うことになる。このような設計を前提とした場合に、サイドシルとしては、現行と同等またはそれ以上の高強度材により高い耐荷重を持ちつつも、大変形可能で高いエネルギー吸収性能を持つことが求められる。
【0005】
一般的に、キャビン骨格部材は高強度な材料を用いることで高い耐荷重性能を持つものの、高強度材ゆえに延性が低い材料であることが多い。この場合、EVにおいて従来ガソリン車で想定されていた以上の大変形が部材単体に生じた際には、破断により衝突荷重が低下し、期待したエネルギー吸収量を発揮しきれない可能性がある。そのため、EVのキャビン骨格部材においては、曲げ変形モードで大変形した際の破断特性やエネルギー吸収特性に優れていることが求められる。また、材料開発段階において、上記のような衝突特性を簡便に評価できることが重要である。
【0006】
自動車車体用金属板材の衝突性能評価試験方法として、特許文献1には、金属板材からなる平坦な試験片をV字状に1次曲げ変形させ、次いで曲げ試験装置によって、その1次曲げ変形した試験片をその1次曲げ変形方向に対する交差方向に2次曲げ変形させる試験方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の方法は、部材軸方向の圧壊時の部材の破断について再現するための試験方法であり、上述のようにEVの側面衝突で想定されるような曲げ変形での大変形により破断するケースとは変形モードが異なると考えられる。
【0009】
それゆえ本発明は、前記課題を解決するため、EVの側面衝突で想定されるような曲げ変形での大変形により破断する際に発生する衝突破断特性を材料開発段階で簡便に実施し得る衝突性能の評価試験方法および評価方法を提案することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を有利に達成する本発明の評価部材の衝突性能評価試験方法は、
自動車車体用構造部材に対応する、天板部と、前記天板部の幅方向両端部にそれぞれ連続する一対の側壁部とを少なくとも有する形状に金属板材を加工した評価部材を、移動部と固定部とを有する試験機を用い、前記移動部を前記固定部に対して移動させることで、前記移動部と前記固定部との間で挟圧変形させる衝突性能評価試験方法であって、
円弧状または矩形の横断面を有し、その横断面の垂直方向を長手方向とする形状のパンチを前記移動部に接続し、
前記固定部として平坦な床面を用い、
前記評価部材を、前記側壁部の前記天板部側に対する逆側端部またはその逆側端部に連続するフランジ部で前記固定部に、前記評価部材の前記長手方向が前記パンチの前記長手方向と交差する向きで固定もしくは設置して実施することを特徴とする。
【0011】
また、上記目的を有利に達成する本発明の評価部材の衝突性能評価方法は、
前記衝突性能評価試験方法で前記評価部材の衝突性能評価試験を実施し、
前記評価部材の挟圧変形による、前記評価部材の試験後の破断発生有無および/または試験中の破断の発生および進展挙動を、目視、撮影画像、試験荷重およびその他の測定結果の少なくとも一つから得られた情報に基づいて判定または評価することを特徴とする。
【0012】
そして、上記目的を有利に達成する本発明を用いた自動車車体用構造部材は、
前記評価部材の衝突性能評価方法での評価に基づいて製造された自動車車体用構造部材であって、
前記評価部材の衝突性能評価方法を実施して破断発生リスクが低いと評価された評価部材に加工した金属板材を用いて製造されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の評価部材の衝突性能評価試験方法にあっては、自動車車体用構造部材に対応する、天板部と、前記天板部の幅方向両端部にそれぞれ連続する一対の側壁部とを少なくとも有する形状に金属板材を加工した評価部材に対し、移動部と固定部とを有する試験機を用い、前記評価部材を、前記側壁部の前記天板部側に対する逆側端部またはその逆側端部に連続するフランジ部で前記固定部に固定もしくは設置し、前記移動部を前記固定部に対して移動させることで、前記評価部材を挟圧変形させる。
【0014】
従って、本発明の評価部材の衝突性能評価試験方法によれば、自動車車体用構造部材に対応する評価部材に対し、EVの側面衝突時に想定される変形モードでの衝突破断特性や衝突性能の試験を、従来の評価試験と比較して簡便に実施することができる。
【0015】
なお、本発明の評価部材の衝突性能評価試験方法においては、円弧状または矩形の横断面を有し、その横断面の垂直方向を長手方向とする形状のパンチを前記移動部に接続し、前記固定部として平坦な床面を用い、前記評価部材を、前記側壁部の前記天板部側に対する逆側端部またはその逆側端部に連続するフランジ部で前記固定部に、前記評価部材の前記長手方向が前記パンチの前記長手方向と交差する向きで固定もしくは設置する。このようにすれば、EVの側面衝突時に想定される曲げ変形の変形モードでの衝突破断特性や衝突性能の試験を簡便に実施することができる。
【0016】
また、本発明の評価部材の衝突性能評価方法にあっては、前記衝突性能評価試験方法で前記評価部材の衝突性能評価試験を実施し、前記評価部材の挟圧変形による、前記評価部材の試験後の破断発生有無および/または試験中の破断の発生および進展挙動を、目視、撮影画像、試験荷重およびその他の測定結果の少なくとも一つから得られた情報に基づいて判定または評価する。
【0017】
従って、本発明の評価部材の衝突性能評価方法によれば、自動車車体用構造部材に対応する評価部材に対し、EVの側面衝突時に想定される変形モードでの衝突破断特性や衝突性能の評価を、従来と比較して簡便に実施することができる。
【0018】
また、前記評価部材の衝突性能評価方法での評価に基づいて製造された自動車車体用構造部材にあっては、前記評価部材の衝突性能評価方法を実施して破断発生リスクが低いと評価された評価部材に加工した金属板材を用いて製造されている。
【0019】
従って、本発明を用いた自動車車体用構造部材によれば、EVの側面衝突時に想定される曲げ変形モードで大変形する際の破断特性やエネルギー吸収特性に優れた自動車車体用構造部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】(a),(b)および(c)は、本発明の一実施形態の評価部材の衝突性能評価試験方法に用いられる評価部材を示す端面図、側面図および斜視図である。
【
図2】(a)および(b)は、上記実施形態の評価部材の衝突性能評価試験方法に用いられる衝突性能評価試験機を示す端面図および側面図である。
【
図3】上記実施形態の評価部材の衝突性能評価試験方法で衝突性能試験を行った結果を示す特性線図である。
【
図4】(a)~(e)は、上記実施形態の評価部材の衝突性能評価試験方法で実施例3の評価部材について衝突性能試験を行った際の変形過程を順次に示す写真である。
【
図5】(a)~(e)は、上記実施形態の評価部材の衝突性能評価試験方法で実施例5の評価部材について衝突性能試験を行った際の変形過程を順次に示す写真である。
【
図6】(a)~(e)は、上記実施形態の評価部材の衝突性能評価試験方法で実施例1~5の評価部材についてそれぞれ衝突性能試験を行った際の試験後の外観破断状態を上部に、その外観破断状態の枠線部分を拡大したものを下部に示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態につき、図面に基づき詳細に説明する。ここに、
図1(a)、
図1(b)および
図1(c)は、本発明の一実施形態の評価部材の衝突性能評価試験方法に用いられる評価部材を示す端面図、側面図および斜視図である。本実施形態の衝突性能評価試験方法は、例えばサイドシル等の自動車用構造部材に対応する、長手方向に延在する中空断面を持つ評価部材Eの衝突性能評価試験を行うためのものである。
【0022】
この実施形態の衝突性能評価試験方法による評価部材の衝突性能評価試験では、天板部と、前記天板部の幅方向両端部にそれぞれ連続する一対の側壁部とを少なくとも有する断面形状に金属板材を加工した評価部材を、移動部と固定部とを有する試験機を用いて前記移動部を前記固定部に対し移動させることで挟圧変形させる。そしてその際の固定部に対する移動部の移動は、前記側壁部の前記天板部側に対する逆側端部またはその逆側端部に連続するフランジ部で前記評価部材を前記固定部に固定または設置して実施する。
【0023】
この衝突性能評価試験について詳細に説明すると、
図1(a),(b)および(c)に示すように、評価部材Eは、天板部1と、その天板部1の幅方向両端部にそれぞれ連続する一対の側壁部2と、それらの側壁部2の天板部1側に対する逆側端部にそれぞれ連続する一対のフランジ部3とで構成されるハット形の中空断面形状を、長手方向(
図1(b)の左右方向)に延在させた形状のものとされている。
【0024】
天板部1の幅および各縦壁部2の幅は40mm、各フランジ部3の幅は20mm、天板部1と2つの縦壁部2とのなす角はそれぞれ90°、2つの縦壁部2と2つのフランジ部3とのなす角はそれぞれ90°であり、天板部1と縦壁部2および縦壁部2とフランジ部3はそれぞれ、曲げ内半径Rが5mmのフィレット状の稜線部を介して接続されている。
【0025】
評価部材Eの材料は、引張強度が1180MPa級以上の例えば鋼板などの金属板材とし、板厚を1.4mmとした。また、評価部材Eは、上記断面形状を断面に対する垂直方向(長手方向)に80mm延在させた。そして上記評価部材Eを固定するため、寸法100mm×100mm×10mmの厚板状の設置用治具Jを用意して、評価部材Eを上記設置用治具J上に置き、評価部材Eのフランジ部3と設置用治具Jとを例えばアーク溶接などの溶接部Wで溶接接合した。
【0026】
図2(a)および
図2(b)は、上記実施形態の評価部材の衝突性能評価試験方法に用いられる衝突性能評価試験機を示す端面図および側面図である。この実施形態の衝突性能評価試験方法に用いられる衝突性能評価試験機は、設置用治具J上に接合された評価部材Eと、試験機の移動部Mと、試験機の固定部Fとを有して構成される。試験機の移動部Mと固定部Fは、例えば移動部としてのスライドを固定部としてのテーブルに対して油圧シリンダで昇降移動させるアムスラー式試験機の如き試験機で構成することができる。
【0027】
試験機の移動部Mには円弧状横断面形状の剛性の高いパンチPが接続されている。試験機の固定部Fは平坦な剛性の高い床面である。この実施形態の評価部材の衝突性能評価試験方法による衝突試験は、円弧状横断面を有し、その横断面の垂直方向を長手方向とする形状のパンチPを移動部Mに接続し、固定部Fとしての上記床面上に設置用治具Jが接する向きかつ、評価部材の長手方向がパンチPの長手方向と交差する向きで上記試験機に評価部材Eを設置して、上記パンチPを下降すなわち固定部に対し移動させ、評価部材Eを固定部Fとしての床面との間で挟圧させて行う。
【0028】
なお記載した評価部材Eの材質、板厚、寸法、断面形状、設置または固定方法、移動部Mや固定部Fの状態、パンチPの断面形状などは一例である。本実施形態の試験方法は、衝突性能を評価するための材料開発段階の試験として、より標準的で簡便な試験条件のものであるが、想定する衝突モードや境界条件に従って、例えばパンチPの断面形状を矩形にするなど、より特殊な条件に調整してもよい。
【0029】
また、評価部材Eの断面形状は、フランジ部3がなく、天板部1と縦壁部2だけで構成されていてもよい。そして、縦壁部2の天板部1側に対する逆側端部を固定部Fに直接接合もしくは固定するかまたは載置するのみでもよい。さらに、評価部材Eを固定部Fまたは設置用治具Jと接合する方法は,溶接以外にボルト締結や接着剤などの方法でもよい。また参考例として、評価部材Eを移動部M側に固定し、固定部F側の形状を平坦でなくパンチPのような円弧状断面形状などにしていてもよい。
【0030】
上記実施形態の評価部材の衝突性能評価試験方法に基づいて衝突試験を行った。特性の異なる2種類の引張強度1180MPa級鋼材(実施例1および実施例2)並びに、3種類の引張強度1470MPa級鋼材(実施例3~実施例5)の鋼板を用意し、それぞれについて曲げ加工とアーク溶接により評価部材Eを作製した。試験機のパンチPの移動速度は10mm/min.とし.移動ストロークは30mmとした。衝突試験中のパンチPおよび移動部Mにかかる反力とパンチPの移動ストロークを記録し、また衝突試験中の評価部材Eの変形および破断状態を観察評価するために1枚/sec.の間隔で写真撮影を行った。
【0031】
図3は、上記衝突試験中に採取したパンチ荷重とパンチストロークデータから作製した荷重―ストローク曲線(F-Sカーブ)の特性線図を示す。また、
図4(a)~(e)および
図5(a)~(e)は、実施例3および実施例5についての、
図3の上部に矢印で示した時点での変形過程の撮影写真を順次に示す。
【0032】
図3より、(2)時点で縦壁部2が座屈変形してピーク荷重となり、(3)時点で断面が圧壊するまでは変形や荷重変動は同様である。しかしながら(4)時点で、曲線E3で示す実施例3では破断の発生がない一方で、曲線E5で示す実施例5では破断(BR)が発生し、破断部が板厚を貫通することで評価部材Eが分断して急激な荷重低下が発生し始めることがわかる。上記実施形態の評価部材の衝突性能評価試験方法での評価試験を用いた本発明の一実施形態の評価部材の衝突性能評価方法では、上記のように撮影写真と急激な荷重低下から破断発生を評価し、その破断が最初に発生した時点でのパンチストロークを破断ストロークとした。
【0033】
図6(a)~(e)は、実施例1~5についてそれぞれ、試験後の外観破断状態を上部に、その外観破断状態の枠線部分を拡大したものを下部にそれぞれ示す。また、以下の表1は、実施例1~5における材料の強度レベル(MPa級)、破断状態評価(破断ストローク(破断が発生する場合のみ)(mm))およびエネルギー吸収量(kJ)の一覧を示す。ここで、破断状態評価は、破断が発生したものを×、亀裂が発生するが板厚を貫通せず破断はしないものを△、亀裂や破断発生が確認されないものを〇として3段階で評価した。エネルギー吸収量は、破断ストロークまでのパンチ荷重をパンチストロークで積分して求めた。
【0034】
【0035】
この実施形態の評価部材の衝突性能評価方法によれば、同じ強度レベルで亀裂や破断発生やエネルギー吸収量が異なることが評価できた。また、強度レベル1470MPa級の実施例5で、破断発生が確認され、下位強度の実施例1や実施例2も含めてエネルギー吸収量が最も低くなることがわかり、1180MPa級材料から1470MPa級材料への高張力(ハイテン)化の観点で、実施例5の材料では破断リスクが高くエネルギー吸収量も低下する懸念がある一方、実施例3の材料では1180MPa級材料と同等な破断リスクでエネルギー吸収量の増加が期待できることが評価できた。
【0036】
従って、本実施形態の評価部材の衝突性能評価試験方法および衝突性能評価方法によれば、自動車車体用構造部材に対応する評価部材Eに対し、EVの側面衝突時に想定される変形モードでの衝突破断特性や衝突性能の試験を、従来の評価試験と比較して簡便に実施することができ、その試験結果に基づく衝突性能の評価も、従来と比較して簡便に実施することができる。
【0037】
そして、上記実施形態の評価部材の衝突性能評価方法での評価に基づいて製造された自動車車体用構造部材によれば、評価部材Eの衝突性能評価方法を実施して破断発生リスクが低いと評価された評価部材に加工した金属板材を用いて製造することから、EVの側面衝突時に想定される曲げ変形モードで大変形する際の破断特性やエネルギー吸収特性に優れた自動車車体用構造部材とすることができる。
【0038】
以上、図示例に基づき説明したが、本発明は上述の例に限定されるものでなく、例えば、上記実施形態では評価部材Eの2つのフランジ部3または縦壁部2を両方とも設置用治具Jを介してもしくは直接、試験機の移動部または固定部に固定もしくは設置しているが、例えば対応する自動車車体用構造部材の配置に応じて、2つのフランジ部3または縦壁部2の一方を、設置用治具Jに固定し、他方を設置用治具Jに載置のみして、その設置用治具Jを試験機の移動部または固定部に固定もしくは設置するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
かくして本発明の評価部材の衝突性能評価試験方法によれば、自動車車体用構造部材に対応する評価部材に対し、EVの側面衝突時に想定される変形モードでの衝突破断特性や衝突性能の試験を、従来の評価試験と比較して簡便に実施することができる。
【0040】
また、本発明の評価部材の衝突性能評価方法によれば、自動車車体用構造部材に対応する評価部材に対し、EVの側面衝突時に想定される変形モードでの衝突破断特性や衝突性能の評価を、従来と比較して簡便に実施することができる。
【0041】
そして本発明を用いた自動車車体用構造部材によれば、EVの側面衝突時に想定される曲げ変形モードで大変形する際の破断特性やエネルギー吸収特性に優れた自動車車体用構造部材を提供することができる。
【符号の説明】
【0042】
E 評価部材
E1~E5 実施例
F 固定部
J 設置用治具
P パンチ
M 移動部
W 溶接部
1 天板部
2 縦壁部
3 フランジ部