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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】情報処理装置、運転診断方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20241112BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20241112BHJP
   B60W 40/09 20120101ALI20241112BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G08G1/09 D
B60W40/09
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022076204
(22)【出願日】2022-05-02
(65)【公開番号】P2023165315
(43)【公開日】2023-11-15
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫛引 有輝也
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-040533(JP,A)
【文献】国際公開第2021/002239(WO,A1)
【文献】特開2017-083989(JP,A)
【文献】特開2010-205160(JP,A)
【文献】特開2016-095739(JP,A)
【文献】特開2013-254443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60W 30/00 - 60/00
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行に係る走行情報と、前記車両に搭載されたカメラにより撮像された規制表示の撮像画像から情報化された規制表示の情報を取得する取得部と、
前記規制表示の情報化に失敗し、又は情報に異常値を含む欠損部がある場合、前記欠損部のデータを、前記欠損部の前又は後の情報化に成功した情報に設定する前処理部と、
前記情報化された前記規制表示の情報及び前記走行情報を基に前記規制表示に対する前記車両の運転診断を実行する診断部と、
を含み、
前記規制表示が、禁止行為に係る表示であり、
前記情報化された規制表示の情報は、禁止行為に係る表示の有無を1と0で表すフラグであり、
前記前処理部は、
前記欠損部がある場合、前記欠損部のデータを、前記欠損部の前又は後の情報化に成功した前記フラグの最大値に設定する情報処理装置。
【請求項2】
車両の走行に係る走行情報と、前記車両に搭載されたカメラにより撮像された規制表示の撮像画像から情報化された規制表示の情報を取得し、
前記規制表示の情報化に失敗し、又は情報に異常値を含む欠損部がある場合、前記欠損部のデータを、前記欠損部の前又は後の情報化に成功した情報に設定し、
前記情報化された前記規制表示の情報及び前記走行情報を基に前記規制表示に対する前記車両の運転診断を実行する
ことを含み、
前記規制表示が、禁止行為に係る表示であり、
前記情報化された規制表示の情報は、禁止行為に係る表示の有無を1と0で表すフラグであり、
前記設定することでは、
前記欠損部がある場合、前記欠損部のデータを、前記欠損部の前又は後の情報化に成功した前記フラグの最大値に設定する
処理をコンピュータが実行する運転診断方法。
【請求項3】
車両の走行に係る走行情報と、前記車両に搭載されたカメラにより撮像された規制表示の撮像画像から情報化された規制表示の情報を取得し、
前記規制表示の情報化に失敗し、又は情報に異常値を含む欠損部がある場合、前記欠損部のデータを、前記欠損部の前又は後の情報化に成功した情報に設定し、
前記情報化された前記規制表示の情報及び前記走行情報を基に前記規制表示に対する前記車両の運転診断を実行する
ことを含み、
前記規制表示が、禁止行為に係る表示であり、
前記情報化された規制表示の情報は、禁止行為に係る表示の有無を1と0で表すフラグであり、
前記設定することでは、
前記欠損部がある場合、前記欠損部のデータを、前記欠損部の前又は後の情報化に成功した前記フラグの最大値に設定する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、運転診断方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ウェアラブル端末で撮像された画像からの周囲画像を、他のウェアラブル端末に表示させる技術であって、ウェアラブル端末で撮像された画像の欠陥を補完する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2018/051815号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術を、走行車両において撮像された交通標識の読み取りに適用した場合、誤った標識の画像を補完する可能性がある。そのため、読み取った交通標識を基に車両の運転診断を行う場合、誤診断を起こす虞がある。
【0005】
本発明は、誤った運転診断を抑制することを可能とする情報処理装置、運転診断方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の情報処理装置は、車両の走行に係る走行情報と、前記車両に搭載されたカメラにより撮像された規制表示の撮像画像から情報化された規制表示の情報を取得する取得部と、前記規制表示の情報化に失敗し、又は情報に異常値を含む欠損部がある場合、前記欠損部のデータを、前記欠損部の前又は後の情報化に成功した情報に設定する前処理部と、前記情報化された前記規制表示の情報及び前記走行情報を基に前記規制表示に対する前記車両の運転診断を実行する診断部と、を含む。
【0007】
請求項1に記載の情報処理装置では、取得部が、車両の走行に係る走行情報と、前記車両に搭載されたカメラにより撮像された規制表示の撮像画像から情報化された規制表示の情報を取得する。ここで規制表示とは、例えば、制限速度に係る表示や、禁止行為に係る表示である。前処理部は、前記規制表示の情報化に失敗し、又は情報に異常値を含む欠損部がある場合、前記欠損部のデータを、前記欠損部の前又は後の情報化に成功した情報に設定する。ここで規制表示の情報化に失敗する、とは、例えば、規制表示の撮像画像から情報化された規制表示の情報の信頼度が閾値未満であることである。診断部は、前記情報化された前記規制表示の情報及び前記走行情報を基に前記規制表示に対する前記車両の運転診断を実行する。
【0008】
当該情報処理装置では、前記規制表示の情報化に失敗し、又は情報に異常値を含む欠損部がある場合、前記欠損部のデータを、前記欠損部の前又は後の情報化に成功した情報に設定する。そのため、当該情報処理装置によれば、誤った運転診断を抑制することができる。
【0009】
請求項2に記載の情報処理装置は、請求項1に記載の情報処理装置において、前記前処理部は、前記欠損部があり、かつ、前記欠損部の前又は後の情報化に成功した情報を基に行った運転診断の結果が良好である場合、前記欠損部のデータを、前記結果が良好であった際の前記規制表示の情報に設定する。
【0010】
請求項2に記載の情報処理装置では、前記欠損部があり、かつ、前記欠損部の前又は後の情報化に成功した情報を基に行った運転診断の結果が良好である場合、前記欠損部のデータを、前記結果が良好であった際の前記規制表示の情報に設定する。当該情報処理装置によれば、前記欠損部のデータを、前記欠損部の前又は後の情報化に成功した情報を基に行った運転診断の結果が良好であった際の前記規制表示の情報に設定する。そのため、誤った運転診断を更に抑制することができる。
【0011】
請求項3に記載の情報処理装置は、請求項1に記載の情報処理装置において、前記前処理部は、前記欠損部がある場合、前記欠損部のデータを、前記欠損部の前又は後の情報化に成功した情報の最大値に設定する。
【0012】
請求項3に記載の情報処理装置では、前記欠損部がある場合、前記欠損部のデータを、前記欠損部の前又は後の情報化に成功した情報の最大値に設定する。当該情報処理装置によれば、前記欠損部のデータを、前記欠損部の前又は後の情報化に成功した情報の最大値に設定する。そのため、誤った運転診断を更に抑制することができる。
【0013】
請求項4に記載の運転診断方法は、車両の走行に係る走行情報と、前記車両に搭載されたカメラにより撮像された規制表示の撮像画像から情報化された規制表示の情報を取得し、前記規制表示の情報化に失敗し、又は情報に異常値を含む欠損部がある場合、前記欠損部のデータを、前記欠損部の前又は後の情報化に成功した情報に設定し、前記情報化された前記規制表示の情報及び前記走行情報を基に前記規制表示に対する前記車両の運転診断を実行する処理をコンピュータが実行する。
【0014】
請求項4に記載の運転診断方法では、コンピュータが、車両の走行に係る走行情報と、前記車両に搭載されたカメラにより撮像された規制表示の撮像画像から情報化された規制表示の情報を取得する。コンピュータが、前記規制表示の情報化に失敗し、又は情報に異常値を含む欠損部がある場合、前記欠損部のデータを、前記欠損部の前又は後の情報化に成功した情報に設定する。コンピュータが、前記情報化された前記規制表示の情報及び前記走行情報を基に前記規制表示に対する前記車両の運転診断を実行する。
【0015】
当該運転診断方法では、前記規制表示の情報化に失敗し、又は情報に異常値を含む欠損部がある場合、前記欠損部のデータを、前記欠損部の前又は後の情報化に成功した情報に設定する。そのため、当該運転診断方法によれば、誤った運転診断を抑制することができる。
【0016】
請求項5に記載のプログラムは、車両の走行に係る走行情報と、前記車両に搭載されたカメラにより撮像された規制表示の撮像画像から情報化された規制表示の情報を取得し、前記規制表示の情報化に失敗し、又は情報に異常値を含む欠損部がある場合、前記欠損部のデータを、前記欠損部の前又は後の情報化に成功した情報に設定し、前記情報化された前記規制表示の情報及び前記走行情報を基に前記規制表示に対する前記車両の運転診断を実行する処理をコンピュータに実行させるプログラムである。
【0017】
請求項5に記載のプログラムが実行されるコンピュータは、車両の走行に係る走行情報と、前記車両に搭載されたカメラにより撮像された規制表示の撮像画像から情報化された規制表示の情報を取得する。コンピュータが、前記規制表示の情報化に失敗し、又は情報に異常値を含む欠損部がある場合、前記欠損部のデータを、前記欠損部の前又は後の情報化に成功した情報に設定する。コンピュータが、前記情報化された前記規制表示の情報及び前記走行情報を基に前記規制表示に対する前記車両の運転診断を実行する。
【0018】
当該プログラムでは、前記規制表示の情報化に失敗し、又は情報に異常値を含む欠損部がある場合、前記欠損部のデータを、前記欠損部の前又は後の情報化に成功した情報に設定する。そのため、当該プログラムによれば、誤った運転診断を抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、誤った運転診断を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係る運転診断システムの概略構成を示す図である。
図2】本実施形態の車両のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】本実施形態の車載器のROMの構成を示すブロック図である。
図4】本実施形態の車載器のストレージの構成を示すブロック図である。
図5】本実施形態の車載器の機能構成を示すブロック図である。
図6】本実施形態のセンタサーバのハードウェア構成を示すブロック図である。
図7】本実施形態のセンタサーバの機能構成を示すブロック図である。
図8】本実施形態の車載器において実行される規制表示情報送信処理の流れを示すフローチャートである。
図9】本実施形態のセンタサーバにおいて実行される運転診断処理の流れを示すフローチャートである。
図10】本実施形態のセンタサーバにおいて実行される前処理部の処理の流れを示すフローチャートである。
図11】規制表示の情報が、制限速度標識である場合における、複数の規制表示の情報の一例を示す図である。
図12】規制表示の情報が、駐車禁止標識である場合における、複数の規制表示の情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の情報処理装置を含む運転診断システムについて説明する。運転診断システムは、車両において収集された交通標識の情報と、車両の走行情報とを用いて、運転診断を行うシステムである。
【0022】
(全体構成)
図1に示されるように、本実施形態の運転診断システム10は、車両12と、情報処理装置としてのセンタサーバ30と、を含んで構成されている。また、車両12には車載器20が搭載されている。車載器20及びセンタサーバ30は、ネットワークNを通じて相互に接続されている。なお、図1には、1のセンタサーバ30に対して、1台の車両12及び車載器20が図示されているが、車両12及び車載器20の数はこの限りではない。
【0023】
センタサーバ30は、例えば、車両12を製造する製造元、カーディーラー、又は任意の事業者に設置されている。
【0024】
(車両)
図2に示されるように、本実施形態に係る車両12は、車載器20と、複数のECU(Electronic Control Unit)22と、複数の車載機器24と、を含んで構成されている。
【0025】
車載器20は、CPU(Central Processing Unit)20A、ROM(Read Only Memory)20B、RAM(Random Access Memory)20C、ストレージ20D、無線通信I/F(Interface)20E及び車内通信I/F20Fを含んで構成されている。CPU20A、ROM20B、RAM20C、ストレージ20D、無線通信I/F20E及び車内通信I/F20Fは、内部バス20Gを介して相互に通信可能に接続されている。
【0026】
CPU20Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU20Aは、ROM20B又はストレージ20Dからプログラムを読み出し、RAM20Cを作業領域としてプログラムを実行する。
【0027】
ROM20Bは、各種プログラム及び各種データを記憶している。図3に示されるように、本実施形態のROM20Bには、制御プログラム100が記憶されている。制御プログラム100は、カメラの撮像画像から情報化された規制表示の情報をセンタサーバ30に送信するためのプログラムである。
【0028】
図2に示されるように、RAM20Cは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。
【0029】
メモリであるストレージ20Dは、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、各種プログラム及び各種データを記憶している。図4に示されるように、本実施形態のストレージ20Dには、情報化された規制表示の情報のデータ群である規制情報DB(データベース)120が記憶されている。なお、ストレージ20Dが制御プログラム100及び規制情報DB120を記憶してもよい。
【0030】
図2に示されるように、無線通信I/F20Eは、センタサーバ30と通信するための無線通信モジュールである。当該無線通信モジュールは、例えば、5G、LTE、Wi-Fi(登録商標)等の通信規格が用いられる。無線通信I/F20Eは、ネットワークNに対して接続されている。
【0031】
車内通信I/F20Fは、各ECU22と接続するためのインタフェースである。当該インタフェースは、CANプロトコルによる通信規格が用いられる。車内通信I/F20Fは、外部バス20Hに対して接続されている。
【0032】
ECU22は、ADAS(Advanced Driver Assistance System)-ECU22A、ステアリングECU22B、ブレーキECU22C及びエンジンECU22Dを少なくとも含む。
【0033】
ADAS-ECU22Aは、先進運転支援システムを統括制御する。ADAS-ECU22Aには、車載機器24を構成する車速センサ24A、ヨーレートセンサ24B、及びカメラ24Cが接続されている。カメラ24Cは、車両12の周囲を撮像するカメラである。
【0034】
ステアリングECU22Bは、パワーステアリングを制御する。ステアリングECU22Bには、車載機器24を構成する舵角センサ24Dが接続されている。舵角センサ24Dはステアリングホイールの舵角を検出するセンサである。
【0035】
図5に示されるように、本実施形態の車載器20では、CPU20Aが、制御プログラム100を実行することで、取得部200、処理部210及び送信部220として機能する。
【0036】
取得部200は、車両情報を取得する機能を有している。車両情報は、車載機器24の状態、車載機器24から得られる車両12の状態、及び、車両12において撮像された撮像画像等の情報である。本実施形態における車両情報は、位置情報、車速、ヨーレート、又は舵角等の走行情報を含む。また、車両情報は、カメラ24Cにより撮像された車両12外部の撮像画像を含む。
【0037】
処理部210は、取得部200において取得された車両情報をストレージ20Dに記憶させたり、カメラ24Cにより撮像された撮像画像から、規制表示を認識することにより、規制表示の情報に情報化する機能を有している。具体的に、本実施形態の処理部210は、車両情報を、一旦ストレージ20Dに記憶させ、その後、センタサーバ30から要求があった場合に、送信部220によりセンタサーバ30に送信する。また、処理部210は、カメラ24Cにより撮像された撮像画像から、画像認識処理により、規制表示の情報に情報化すると共に、規制表示の情報の信頼度を導出する。
【0038】
より具体的には、処理部210は、撮像画像が表す規制表示である制限速度標識、又は禁止標識(一時停止標識、駐車禁止標識、若しくは転回禁止標識)を認識し、制限速度、又は禁止標識の有無を表すフラグに情報化する。
【0039】
送信部220は、ストレージ20Dに記憶された車両情報及び規制表示の情報を、センタサーバ30に送信する機能を有している。具体的に、本実施形態の送信部220は、センタサーバ30から要求があった場合に、ストレージ20Dに記憶された車両情報及び規制表示の情報をセンタサーバ30に送信する。
【0040】
(センタサーバ)
図6に示されるように、センタサーバ30は、CPU30A、ROM30B、RAM30C、ストレージ30D及び通信I/F30Eを含んで構成されている。CPU30A、ROM30B、RAM30C、ストレージ30D及び通信I/F30Eは、内部バス30Gを介して相互に通信可能に接続されている。CPU30A、ROM30B、RAM30C、ストレージ30D及び通信I/F30Eの機能は、上述した車載器20のCPU20A、ROM20B、RAM20C、ストレージ20D及び無線通信I/F20Eの機能と同じである。なお、通信I/F30Eは有線による通信を行ってもよい。CPU30Aはプロセッサの一例である。
【0041】
本実施形態のストレージ30Dには、プログラムとしての処理プログラム150、及び規制値情報DB160が記憶されている。なお、ROM30Bが処理プログラム150及び規制値情報DB160を記憶してもよい。
【0042】
処理プログラム150は、センタサーバ30を制御するためのプログラムである。処理プログラム150の実行に伴い、センタサーバ30は、車両12から規制表示の情報を収集し、車両12の走行情報に対して運転診断を行うための各処理を実行する。
【0043】
規制値情報DB160には、車両12から収集した規制表示の情報及び信頼度が記憶されている。
【0044】
具体的には、各位置において情報化された、制限速度、又は一時停止標識、駐車禁止標識、若しくは転回禁止標識の有無を表すフラグが、信頼度と共に記憶されている。
【0045】
図7に示されるように、本実施形態のセンタサーバ30では、CPU30Aが、処理プログラム150を実行することで、収集部250、取得部260、前処理部270、及び診断部280として機能する。
【0046】
収集部250は、車両12の車載器20から、規制表示の情報を取得する機能を有している。収集部250は、取得した規制表示の情報を、信頼度、及び情報化された位置を示す位置情報と共に、規制値情報DB160に記憶させる。
【0047】
取得部260は、車両12の車載器20から、車両12の車両情報を取得する機能を有している。
【0048】
前処理部270は、規制表示の情報化に失敗し、又は情報に異常値を含む欠損部がある場合、当該欠損部のデータを、当該欠損部の前又は後の情報化に成功した情報に設定する。
【0049】
具体的には、前処理部270は、欠損部がある場合、当該欠損部のデータを、当該欠損部の前又は後の情報化に成功した情報の最大値に設定する。
【0050】
より具体的には、制限速度に係る標識の信頼度が、閾値(例えば、50%)以上である場合、情報化された制限速度を記録する。
【0051】
また、制限速度に係る標識の信頼度が、閾値(例えば、50%)未満である場合、規制表示の情報化に失敗した欠損部であると判断し、当該欠損部の制限速度を、当該欠損部の前又は後の情報化に成功した制限速度の最大値に設定する。
【0052】
また、前又は後の情報化に成功した制限速度との差分が、閾値(例えば、40km/h)以上である場合、情報に異常値を含む欠損部であると判断し、当該欠損部の制限速度を、当該欠損部の前又は後の情報化に成功した制限速度の最大値に設定する。
【0053】
また、前処理部270は、情報化された規制表示が、禁止行為に係る表示(一時停止標識、駐車禁止標識、転回禁止標識)である場合、情報化された禁止行為に係る表示の有無を表すフラグの信頼度が閾値(例えば、50%)以上であれば、禁止行為に係る表示の有無を表すフラグを記録する。
【0054】
また、情報化された禁止行為に係る表示の有無を表すフラグの信頼度が、閾値(例えば、50%)未満である場合、規制表示の情報化に失敗した欠損部であると判断し、当該欠損部のフラグを、当該欠損部の前又は後の情報化に成功したフラグの最大値(0又は1)に設定する。ここで、フラグが1の場合は、禁止行為に係る表示が有ることを表している。
【0055】
診断部280は、車両12の車載器20から取得した車両情報に含まれる走行情報に基づく車両の走行が、更新された規制値に基づく違反条件を満たした場合に、違反と診断する。
【0056】
具体的には、診断部280は、制限速度に係る標識の周辺で、制限速度を著しく超過して走行していることを違反条件として、車両12の運転が違反しているか診断する。
【0057】
例えば、車速>制限速度+超過速度を、違反条件とする。超過速度は、20km/h、30km/h、又は40km/hである。
【0058】
また、診断部280は、一時停止標識の周辺で、一時停止をしないことを違反条件として、車両12の運転が違反しているか診断する。
【0059】
例えば、一時停止標識に係るフラグが、オンである場合、違反と仮に診断し、車速が閾値(例えば、1km/h)未満となれば、違反との仮診断を削除し、違反していないと診断する。
【0060】
また、診断部280は、駐車禁止標識の周辺で、駐車したことを違反条件として、車両12の運転が違反しているか診断する。
【0061】
例えば、駐車禁止標識に係るフラグが、オンであり、車速が閾値(例えば、1km/h)未満となれば、違反と仮に診断し、車速が閾値(1km/h)未満である状態の継続時間が、閾値(例えば、180秒)未満であれば、違反との仮診断を削除し、違反していないと診断する。
【0062】
また、診断部280は、転回禁止標識の周辺で、転回したことを違反条件として、車両12の運転が違反しているか診断する。
【0063】
例えば、転回禁止標識に係るフラグが、オンである場合、違反と仮に診断し、車両12の最大ヨー角が閾値(例えば、150°)未満であり、かつ、車両12のステアリングホイールの最大舵角が閾値(例えば、400°)未満であれば、違反との仮診断を削除し、違反していないと診断する。
【0064】
(制御の流れ)
本実施形態の運転診断システム10で実行される処理の流れについて、図8図10のフローチャートを用いて説明する。車載器20における処理は、車載器20のCPU20Aが、取得部200、処理部210及び送信部220として機能することにより実行される。また、センタサーバ30における処理は、センタサーバ30のCPU30Aが収集部250、取得部260、前処理部270、及び診断部280として機能することにより実行される。
【0065】
まず、車両12が走行しているときに、車載器20ではCPU20Aが図8に示す規制表示情報送信処理を実行する。
【0066】
図8のステップS100において、処理部210は、カメラ24Cにより撮像された車両12外部の撮像画像を取得する。
【0067】
ステップS102において、処理部210は、カメラ24Cにより撮像された撮像画像から、規制表示を認識することにより、規制表示の情報に情報化すると共に、規制表示の情報の信頼度を導出し、規制情報DB120に一旦記憶させる。
【0068】
ステップS104において、処理部210は、上記ステップS102の処理により規制表示が認識されたか否かを判定する。上記ステップS102の処理により規制表示が認識された場合には、ステップS106へ移行する。一方、上記ステップS102の処理により規制表示が認識されなかった場合には、規制表示情報送信処理を終了する。
【0069】
ステップS106では、送信部220は、上記ステップS102による認識結果として得られた規制表示の情報を、規制表示の情報の信頼度及び位置情報と共にセンタサーバ30に送信し、規制表示情報送信処理を終了する。
【0070】
センタサーバ30は、車載器20から受信した規制表示の情報を、信頼度及び情報化された位置の位置情報と共に、規制値情報DB160に記憶させる。
【0071】
また、車両12が走行しているときに、車載器20は、取得した車両情報をセンタサーバ30に送信する。このとき、センタサーバ30では、CPU30Aが図9に示す運転診断処理を繰り返し実行する。
【0072】
図9のステップS110において、取得部260は、車両12の車載器20から、車両12の車両情報を取得する。
【0073】
ステップS112において、前処理部270は、規制値情報DB160から、取得した車両情報に含まれる位置情報に対応する規制表示の情報、及び規制表示の情報の信頼度を取得する。ここでは、取得した車両情報に含まれる位置情報に対応する規制表示の情報が複数取得されるものとする。
【0074】
具体的には、規制表示が、制限速度標識である場合、前処理部270は、規制値情報DB160から、取得した車両情報に含まれる位置情報に対応する規制値である制限速度、及び制限速度に係る標識の信頼度を取得する。
【0075】
また、規制表示が、一時停止標識である場合、前処理部270は、規制値情報DB160から、取得した車両情報に含まれる位置情報に対応する規制値である一時停止標識に係るフラグ、及び一時停止標識の信頼度を取得する。
【0076】
また、規制表示が、転回禁止標識である場合、前処理部270は、規制値情報DB160から、取得した車両情報に含まれる位置情報に対応する規制値である転回禁止標識に係るフラグ、及び転回禁止標識の信頼度を取得する。
【0077】
また、規制表示が、駐車禁止標識である場合、前処理部270は、規制値情報DB160から、取得した車両情報に含まれる位置情報に対応する規制値である駐車禁止標識に係るフラグ、及び駐車禁止標識の信頼度を取得する。
【0078】
ステップS114において、前処理部270は、上記ステップS112で取得した規制表示の情報について、規制表示の情報化に失敗し、又は情報に異常値を含む欠損部がある場合、欠損部のデータを、欠損部の前又は後の情報化に成功した情報に設定する。
【0079】
上記ステップS114は、図10に示す処理ルーチンにより実現される。上記ステップS112で取得した複数の規制表示の情報のうち、各対象位置の規制表示の情報の各々について、図10に示す処理ルーチンが実行される。
【0080】
ステップS120において、前処理部270は、対象位置の規制表示の情報の信頼度が、閾値(例えば、50%)未満であるか、または、対象位置の前後の規制表示の情報との差分が、閾値(例えば、40km/h)以上であるか否かを判定する。対象位置の規制表示の情報の信頼度が、閾値(例えば、50%)未満である場合、または、対象位置の前後の規制表示の情報との差分が、閾値以上である場合、ステップS122へ移行する。一方、対象位置の規制表示の情報の信頼度が、閾値(例えば、50%)以上であり、かつ、対象位置の前後の規制表示の情報との差分が、閾値(例えば、40km/h)未満である場合、対象位置の規制表示の情報を変更せずに、当該処理ルーチンを終了する。
【0081】
ステップS122では、前処理部270は、対象位置の前又は後の規制表示の情報の信頼度が、閾値(例えば、50%)以上であるか否かを判定する。
【0082】
ステップS122では、前処理部270は、対象位置の前又は後の規制表示の情報の信頼度が、閾値以上である場合、ステップS124へ移行する。一方、対象位置の前及び後の双方の規制表示の情報の信頼度が、閾値未満である場合には、対象位置の規制表示の情報を更新せずに、当該処理ルーチンを終了する。
【0083】
ステップS124では、前処理部270は、対象位置の前及び後の規制表示の情報のうちの最大値で、対象位置の規制表示の情報を更新して、当該処理ルーチンを終了する。
【0084】
図11は、規制表示の情報が、制限速度標識である場合において、上記ステップS112で取得した複数の規制表示の情報の例を示している。この例では、位置No「4」の規制表示の情報の信頼度が、30%であり、閾値未満であるため、位置No「4」の前及び後の情報化に成功した規制表示の情報のうちの最大値である、位置No「5」の制限速度で、位置No「4」の制限速度を更新する。
【0085】
また、図12は、規制表示の情報が、駐車禁止標識である場合において、上記ステップS112で取得した複数の規制表示の情報の例を示している。この例では、位置No「4」の規制表示の情報の信頼度が、30%であり、閾値未満であるため、位置No「4」の前及び後の情報化に成功した規制表示の情報のうちの最大値である、駐車禁止標識に係るフラグ「1」で、位置No「4」の駐車禁止標識に係るフラグを更新する。
【0086】
そして、図9のステップS116において、診断部280は、車両12の車載器20から取得した車両情報に含まれる走行情報に基づく車両の走行が、更新された規制値に基づく違反条件を満たした場合に、違反と診断し、運転診断処理を終了する。
【0087】
具体的には、診断部280は、規制表示の情報が、制限速度標識である場合において、制限速度に係る標識の周辺で、制限速度を著しく超過して走行していることを違反条件として、車両12の運転が違反しているか診断する。
【0088】
また、診断部280は、規制表示の情報が、一時停止標識である場合において、一時停止標識の周辺で、一時停止をしないことを違反条件として、車両12の運転が違反しているか診断する。
【0089】
また、診断部280は、規制表示の情報が、駐車禁止標識である場合において、駐車禁止標識の周辺で、駐車したことを違反条件として、車両12の運転が違反しているか診断する。
【0090】
また、診断部280は、規制表示の情報が、転回禁止標識である場合において、転回禁止標識の周辺で、転回したことを違反条件として、車両12の運転が違反しているか診断する。
【0091】
(実施形態のまとめ)
【0092】
本実施形態のセンタサーバ30は、規制表示の情報化に失敗し、又は情報に異常値を含む欠損部がある場合、当該欠損部のデータを、当該欠損部の前又は後の情報化に成功した情報に更新する。このように、欠損部のデータを、情報化に成功した情報で補完することにより、誤った運転診断を行うことを抑制することができる。
【0093】
[備考]
上記実施形態では、欠損部のデータを、当該欠損部の前又は後の情報化に成功した情報の最大値に設定していたが、この限りではない。欠損部があり、かつ、当該欠損部の前又は後の情報化に成功した情報を基に行った運転診断の結果が良好である場合、当該欠損部のデータを、結果が良好であった際の規制表示の情報に設定するようにしてもよい。例えば、制限速度が60km/hである位置において55km/hで走行している場合に、運転診断の結果が良好となる。ここで、制限速度が60km/hである位置の前又は後における欠損部の制限速度が40km/hである場合、診断結果が良好である位置における制限速度60km/hで当該欠損部の制限速度を更新すればよい。
【0094】
また、上記実施形態でCPU20A及びCPU30Aがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した各種処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、上述した各処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0095】
また、上記実施形態において、各プログラムはコンピュータが読み取り可能な非一時的記録媒体に予め記憶(インストール)されている態様で説明した。例えば、車載器20における制御プログラム100はROM20Bに予め記憶され、センタサーバ30における処理プログラム150はストレージ30Dに予め記憶されている。しかしこれに限らず、各プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0096】
上記実施形態で説明した処理の流れは、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【符号の説明】
【0097】
12 車両
20 車載器
30 センタサーバ(情報処理装置)
30A CPU(プロセッサ)
30D ストレージ(メモリ)
150 処理プログラム(プログラム)
250 収集部
260 取得部
270 前処理部
280 診断部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12