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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】固体電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20241112BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20241112BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241112BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M10/052
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022081337
(22)【出願日】2022-05-18
(65)【公開番号】P2023169966
(43)【公開日】2023-12-01
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】坂本 竜斗
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-183025(JP,A)
【文献】特開2020-140932(JP,A)
【文献】国際公開第2016/190303(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に積層された複数の電極体を備える固体電池であって、
前記電極体は、正極集電層、正極活物質層、固体電解質層、負極活物質層および負極集電層を、前記厚さ方向において、この順に有し、
前記電極体の短辺方向に沿って、前記電極体の表面側および裏面側から、それぞれレーザー変位計を用いて、前記電極体までの距離を測定した場合に、
前記電極体のうねり高さは、前記電極体の厚さの差より大きく、
前記電極体のうねり回数(単位長さ当たり)は、0.23回/mm以上、0.40回/mm以下である、固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
固体電池は、正極活物質層および負極活物質層の間に固体電解質層を有する電池であり、可燃性の有機溶媒を含む電解液を有する液系電池に比べて、安全装置の簡素化が図りやすいという利点を有する。
【0003】
特許文献1には、2以上のモノポーラ構造の積層電池ユニットを有し、上記積層電池ユニットが、第1の集電体層、第1の活物質層、固体電解質層、第2の活物質層、第2の集電体層、第2の活物質層、固体電解質層、第1の活物質層、及び第1の集電体層がこの順に積層されてなる構成を有し、隣接して積層されている上記第1の集電体層と上記第1の活物質層とが、接着材によって互いに接着されている、全固体電池が開示されている。また、特許文献1には、1.0MPa以下の拘束圧で、積層電池ユニットを拘束することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-140932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
充放電を繰り返しても抵抗増加が少ない固体電池が望まれている。本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、充放電を繰り返しても抵抗増加が少ない固体電池を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示においては、厚さ方向に積層された複数の電極体を備える固体電池であって、上記電極体は、正極集電層、正極活物質層、固体電解質層、負極活物質層および負極集電層を、上記厚さ方向において、この順に有し、上記電極体の短辺方向に沿って、上記電極体の表面側および裏面側から、それぞれレーザー変位計を用いて、上記電極体までの距離を測定した場合に、上記電極体のうねり高さは、上記電極体の厚さの差より大きく、上記電極体のうねり回数(単位長さ当たり)は、0.23回/mm以上、0.40回/mm以下である、固体電池を提供する。
【0007】
本開示によれば、電極体のうねり高さが、電極体の厚さの差より大きく、さらに、電極体のうねり回数が所定の範囲にあることで、充放電を繰り返しても抵抗増加が少ない固体電池となる。
【発明の効果】
【0008】
本開示においては、充放電を繰り返しても抵抗増加が少ない固体電池を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示における固体電池を例示する概略断面図である。
図2】本開示における電極体を例示する概略断面図である。
図3】本開示におけるうねり測定の測定箇所を説明する概略平面図である。
図4】本開示におけるうねり高さおよびうねり回数を説明する概略図である。
図5】本開示における電極体を例示する概略断面図である。
図6】本開示における電極体を例示する概略断面図である。
図7】本開示における電極体を例示する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示における固体電池について、詳細に説明する。
【0011】
図1は、本開示における固体電池を例示する概略断面図である。また、図2は、本開示における電極体を例示する概略断面図である。図1に示すように、固体電池100は、厚さ方向Dに積層された複数の電極体10を備える。また、図2に示すように、電極体10は、正極集電層1、正極活物質層2、固体電解質層3、負極活物質層4および負極集電層5を、厚さ方向Dにおいて、この順に有する。また、本開示においては、電極体の短辺方向に沿って、電極体の表面側および裏面側から、それぞれレーザー変位計を用いて、電極体までの距離を測定し、「電極体のうねり高さ」、「電極体の厚さの差」および「電極体のうねり回数(単位長さ当たり)」を求める。本開示においては、電極体のうねり高さが電極体の厚さの差より大きいことを特徴とする。また、本開示においては、電極体のうねり回数(単位長さ当たり)が、所定の範囲にあることを特徴とする。
【0012】
本開示によれば、電極体のうねり高さが、電極体の厚さの差より大きく、さらに、電極体のうねり回数が所定の範囲にあることで、充放電を繰り返しても抵抗増加が少ない固体電池となる。上述したように、特許文献1には、1.0MPa以下の拘束圧で、積層電池ユニットを拘束することが開示されている。拘束圧を低圧にすると、隣り合う電極体において、拘束圧が面方向において不均一になる。その結果、発熱に伴う温度ムラが生じ、抵抗増加が大きくなる。特に、耐久条件で充放電試験を行った場合に、抵抗増加が大きい。これに対して、本開示においては、電極体に所定のうねりを付与することで、隣り合う電極体において、接点が多くなるため、発熱に伴う温度ムラが生じにくくなる。その結果、充放電を繰り返しても抵抗増加が少ない固体電池となる。
【0013】
1.うねり測定
本開示においては、電極体の短辺方向に沿って、電極体の表面側および裏面側から、それぞれレーザー変位計を用いて、上記電極体までの距離を測定し、「電極体のうねり高さ」、「電極体の厚さの差」および「電極体のうねり回数(単位長さ当たり)」を求める。これらは、以下のようにして測定される。
【0014】
図3は、本開示におけるうねり測定の測定箇所を説明する概略平面図である。なお、図3においては、便宜上、固体電解質層の記載を省略している。また、図3では、厚さ方向(紙面奥行方向)において、正極活物質層の面積が、負極活物質層の面積よりも小さいため、正極活物質層を基準として、測定箇所を決定する。このように、正極活物質層の面積と、負極活物質層の面積とが異なる場合、相対的に面積が小さい層を基準として、測定箇所を決定する。次に、図3に示すように、正極活物質層を、電極体の短辺方向(搬送方向に直交する方向)に沿って4等分し、その等分により作成される3本の線分を測定対象とする。
【0015】
次に、電極体の表面側および裏面側から、それぞれレーザー変位計を用いて、電極体までの距離を測定する。具体的には、電極体を厚さ方向から平面視した場合に、同一箇所に対して、電極体の表面側からレーザー変位計を用いて電極体までの距離を測定し、電極体の裏面側からレーザー変位計を用いて電極体までの距離を測定する。これらの距離の差を、電極体の短辺方向に沿って連続的に求め、最大値および最小値の差を、「電極体の厚さの差」とする。また、これらの距離の平均を、電極体の短辺方向に沿って連続的に求め、その最大値および最小値の差を、「電極体のうねり高さ」とする。具体的には、図4に示すように、上記距離の平均を、電極体の短辺方向に沿って連続的に求めることで、うねりプロファイルを作成し、最大値および最小値の差を「電極体のうねり高さ」とする。また、うねりプロファイルに対して、5μmおきに傾きを求め、その符号が変わる回数を「電極体のうねり回数」とする。例えば、図4においては、電極体のうねり回数は7回となる。また、「電極体のうねり回数」を、測定箇所の長さで除することで、「電極体のうねり回数(単位長さ当たり)」を求める。
【0016】
本開示においては、電極体のうねり高さが、電極体の厚さの差より大きいことを一つの特徴とする。両者の差は、例えば5μm以上であり、10μm以上であってもよく、15μm以上であってもよい。一方、両者の差は、例えば50μm以下である。また、本開示においては、電極体のうねり回数(単位長さ当たり)が、0.23回/mm以上、0.40回/mm以下であることを一つの特徴とする。電極体のうねり回数(単位長さ当たり)は、0.31回/mm以上、0.38回/mm以下であってもよい。
【0017】
2.電極体
本開示における電極体は、正極集電層、正極活物質層、固体電解質層、負極活物質層および負極集電層を、上記厚さ方向において、この順に有する。電極体は、第1集電層および第2集電層の間に、正極活物質層、固体電解質層および負極活物質層を有することが好ましい。第1集電層および第2集電層は、いずれも同じ極性を有する集電層であってもよく、互いに異なる極性を有する集電層であってもよい。
【0018】
図5に示す電極体10は、第1集電層および第2集電層が、いずれも正極集電層1である。すなわち、電極体10は、正極集電層1、正極活物質層2、固体電解質層3、負極活物質層4、負極集電層5、負極活物質層4、固体電解質層3、正極活物質層2および正極集電層1を、厚さ方向Dにおいて、この順に有している。また、図5に示すように、隣り合う電極体10において、一方の電極体10における第1集電層(正極集電層1)と、他方の電極体10における第2集電層(正極集電層1)とが接触している。なお、特に図示しないが、本開示における電極体は、第1集電層および第2集電層が、いずれも負極集電層であってもよい。この場合、図5に示す電極体10における各層の極性を逆にすればよい。
【0019】
図6に示す電極体10は、第1集電層が正極集電層1であり、第2集電層が負極集電層5である。すなわち、電極体10は、正極集電層1、正極活物質層2、固体電解質層3、負極活物質層4および負極集電層5を、厚さ方向Dにおいて、この順に有している。また、図6に示すように、隣り合う電極体10において、一方の電極体10における第1集電層(正極集電層1)と、他方の電極体10における第1集電層(正極集電層1)とが接触している。また、隣り合う電極体10において、一方の電極体10における第2集電層(負極集電層5)と、他方の電極体10における第2集電層(負極集電層5)とが接触している。
【0020】
図7に示す電極体10は、第1集電層が正極集電層1であり、第2集電層が負極集電層5である。すなわち、電極体10は、正極集電層1、正極活物質層2、固体電解質層3、負極活物質層4および負極集電層5を、厚さ方向Dにおいて、この順に有している。また、図7に示すように、隣り合う電極体10において、一方の電極体10における第1集電層(正極集電層1)と、他方の電極体10における第2集電層(負極集電層5)とが接触している。
【0021】
本開示における電極体は、正極集電層、正極活物質層、固体電解質層、負極活物質層および負極集電層を、上記厚さ方向において、この順に有する。
【0022】
正極活物質層は、少なくとも正極活物質を含有し、固体電解質、導電材およびバインダーの少なくとも一種をさらに含有していてもよい。正極活物質としては、例えば、LiCoO等の岩塩層状型活物質、LiMn等のスピネル型活物質、LiFePO等のオリビン型活物質が挙げられる。固体電解質としては、例えば、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、ハロゲン化物固体電解質等の無機固体電解質が挙げられる。導電材としては、例えばカーボン材料が挙げられ、バインダーとしては、例えばフッ素系バインダーが挙げられる。また、正極集電層の材料としては、例えば、SUS、アルミニウムが挙げられる。正極集電層の形状としては、例えば、箔状、メッシュ状が挙げられる。
【0023】
負極活物質層は、少なくとも負極活物質を含有し、固体電解質、導電材およびバインダーの少なくとも一種をさらに含有していてもよい。負極活物質としては、例えば、Li、Si、In、Al、Sn等の金属活物質、グラファイト等のカーボン活物質、チタン酸リチウム等の酸化物活物質が挙げられる。固体電解質、導電材およびバインダーについては、上記と同様である。また、負極集電層の材料としては、例えば、SUS、銅が挙げられる。負極集電層の形状としては、例えば、箔状、メッシュ状が挙げられる。また、固体電解質層は、少なくとも固体電解質を含有し、バインダーをさらに含有していてもよい。固体電解質およびバインダーについては、上記と同様である。
【0024】
3.固体電池
本開示における固体電池は、厚さ方向に積層された複数の電極体を備える。固体電池における電極体の数は、2以上であり、10以上であってもよく、50以上であってもよい。一方、固体電池における電極体の数は、例えば150以下である。
【0025】
本開示における固体電池は、厚さ方向に積層された複数の電極体を密封する外装体を備えていてもよい。外装体は、ラミネート型外装体であってもよく、ケース型外装体であってもよい。また、固体電池は、積層された複数の電極体に対して、厚さ方向に拘束圧を付与する拘束治具を備えていてもよい。拘束圧は、例えば、0.1MPa以上、20MPa以下であり、0.1MPa以上、1.0MPa以下であってもよい。本開示における固体電池は、例えば、低い拘束圧で拘束した場合であっても、充放電を繰り返しても抵抗増加が少ない。
【0026】
本開示における固体電池は、典型的にはリチウムイオン二次電池である。固体電池の用途としては、例えば、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。特に、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)または電気自動車(BEV)の駆動用電源に用いられることが好ましい。また、本開示における固体電池は、車両以外の移動体(例えば、鉄道、船舶、航空機)の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。
【0027】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【実施例
【0028】
[実施例1]
(被覆層を有する正極活物質の作製)
正極活物質(Li1.15Ni1/3Co1/3Mn1/3を主相とする粒子)に、転動流動式コーティング装置(パウレック社製)を用いて、大気雰囲気下においてニオブ酸リチウムをコーティングし、大気雰囲気下で焼成を行った。これにより、ニオブ酸リチウムの被覆層を有する正極活物質を得た。
【0029】
(正極活物質層の作製)
ポリプロピレン製容器に、正極活物質、硫化物固体電解質(LiS-P系ガラスセラミック)、バインダー(PVDF)、導電材(VGCF、昭和電工社製)および分散媒を加え、超音波分散装置(エスエムテー社製UH-50)で30秒間撹拌した。次に、容器を振とう機(柴田科学社製TTM-1)で3分間振とうさせ、さらに超音波分散装置で30秒間撹拌した。次に、振とう機で3分間振とうさせ、スラリーを得た。得られたスラリーを、アプリケーターを使用してブレード法にて基材(アルミニウム箔)上に塗工した。次に、自然乾燥し、さらに、100℃のホットプレート上で30分間乾燥させた。これにより、基材としてのアルミニウム箔上に、正極活物質層を形成した。スラリーの塗布量は、後述する緻密化後の状態で、正極活物質層の厚さが15μmになるように調整した。
【0030】
(負極の作製)
ポリプロピレン製容器に、負極活物質(LTO粒子)、硫化物固体電解質(LiS-P系ガラスセラミック)、バインダー(PVDF)、導電材(VGCF、昭和電工社製)および分散媒を加え、超音波分散装置(エスエムテー社製UH-50)で30秒間撹拌し、スラリーを得た。得られたスラリーを、アプリケーターを使用してブレード法にて負極集電層(銅箔)上に塗工した。次に、自然乾燥し、さらに、100℃のホットプレート上で30分間乾燥させた。これにより、負極集電層(銅箔)の一方の表面上に負極活物質層を形成した。同様の操作により、負極集電層(銅箔)の他方の表面上にも、負極活物質層を形成した。このようにして、負極集電層(銅箔)の両面に、それぞれ負極活物質層が配置された負極を得た。
【0031】
(固体電解質層の作製)
ポリプロピレン製容器に、硫化物固体電解質(LiS-P系ガラスセラミック)、バインダー(BR)および分散媒(ヘプタン)を加え、超音波分散装置(エスエムテー社製UH-50)で30秒間撹拌した。次に、容器を振とう機(柴田科学社製TTM-1)で30分間振とうさせ、さらに超音波分散装置で30秒間撹拌した。次に、振とう機で3分間振とうさせスラリーを得た。得られたスラリーを、アプリケーターを使用してブレード法にて基材(アルミニウム箔)上に塗工した。次に、自然乾燥し、さらに、100℃のホットプレート上で30分間乾燥させた。これにより、基材としてのアルミニウム箔上に、固体電解質層を形成した。
【0032】
(カーボン層を有する正極集電層の作製)
導電材(アセチレンブラック、AB)と、バインダー(アクリル系バインダー)とを、体積比で、導電材:バインダー=40:60になるように秤量した。次に、これらに分散媒(酢酸エチル)を加え、スラリーを得た。得られたスラリーを、アプリケーターを使用してブレード法にて正極集電層(アルミニウム箔)上に塗工した。次に、100℃で1時間乾燥させた。これにより、カーボン層(厚さ2μm)を有する正極集電層を得た。得られた正極集電層を69.0mm×73.0mmになるように裁断した。なお、カーボン層のサイズは、69.0mm×71.0mmであった。
【0033】
(固体電池の作製)
負極の両面に、それぞれ、固体電解質層を配置し、線圧1.6t/cmでプレスした。次に、固体電解質層から基材(アルミニウム箔)を剥がし、固体電解質層A、負極および固体電解質層Bを有する積層体Xを得た。次に、固体電解質層Aおよび固体電解質層Bの表面に、それぞれ、正極活物質層を配置し、線圧1.6t/cmでプレスした。次に、正極活物質層から基材(アルミニウム箔)を剥がし、積層体Yを得た。次に、積層体Yを線圧5t/cmでプレスして緻密化した。これにより、正極活物質層A、固体電解質層A、負極、固体電解質層Bおよび正極活物質層Bを有する前駆積層体を得た。次に、正極を70.0mm×70.0mmになるようにレーザートリミングし、負極を72.0mm×72.0mmになるように裁断した。次に、正極活物質層Aおよび正極活物質層Bに、それぞれ、カーボン層を有する正極集電層を配置し、140℃、5MPaの条件でプレスし、電極体を得た。得られた電極体を20個積層し、溶接により端子を設置し、ラミネートセルに封入することで、固体電池を得た。
【0034】
[実施例2~5および比較例1~3]
積層体Yを緻密化する際に、その条件(ロール剛性、回数)を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、電極体および固体電池を得た。
【0035】
[比較例4]
正極集電層(アルミニウム箔)の両面に、カーボン層(厚さ2μm)を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、カーボン層を有する正極集電層を得た。次に、カーボン層を有する正極集電層を、積層体Yにおける正極活物質層Aに配置し、正極活物質層Bに配置しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、電極体を得た。得られた電極体を20個積層し、露出している正極活物質層Bに、カーボン層を有する正極集電層を配置し、溶接により端子を設置し、ラミネートセルに封入することで、固体電池を得た。
【0036】
[評価]
[うねり測定]
実施例1~5および比較例1~4で得られた電極体に対して、うねり測定を行った。測定条件は、上述した通りである。その結果を表1に示す。なお、うねり回数(単位長さ当たり)については、測定箇所である3本の線分のうち、うねり回数が最も多い線分に対する値を採用した。
【0037】
(抵抗測定)
実施例1~5および比較例1~4で得られた固体電池の抵抗を測定した。具体的には、電流値1Cで2.95VまでCCCV充電(カット電流値:0.01C)を行い、次に、電流値1Cで1.50VまでCCCV放電(カット電流値:0.01C)を行った。次に、電流値45C、1.5V~2.8V、40℃の条件で、CC充放電を500回繰り返した(耐久試験)。次に、固体電池の電圧を2.36Vに調整し、電流値2C、10秒間の条件でCC充電し、そのときの電圧変化から抵抗を算出した。その結果を表1に示す。実施例1~5および比較例1~4における抵抗値は、実施例1における抵抗値を1とした場合の相対値である。
【0038】
【表1】
【0039】
表1に示すように、実施例1~5では、比較例1~4に比べて、抵抗値が低いことが確認された。比較例1では、うねり高さが電極体の厚さの差より小さく、隣り合う電極体における接点が少ないため、発熱に伴う温度ムラが大きくなり、抵抗値が高くなったと推測される。また、比較例2では、うねり高さが電極体の厚さの差より大きいものの、うねり回数が少なく、発熱に伴う温度ムラを十分に抑制できず、抵抗値が高くなったと推測される。一方、比較例3では、うねり回数が多いため、充放電に伴い、電極体を構成する層間に剥がれが生じ、抵抗値が高くなったと推測される。また、比較例4では、隣り合う電極体の間に存在する正極集電層が1つであるため、充放電に伴い、正極集電層と、正極活物質層との間に剥がれが生じ、抵抗値が高くなったと推測される。このように、電極体のうねり高さが、電極体の厚さの差より大きく、さらに、電極体のうねり回数(単位長さ当たり)が所定の範囲にあることで、充放電を繰り返しても抵抗増加が少ない固体電池となることが確認された。
【符号の説明】
【0040】
1 … 正極集電層
2 … 正極活物質層
3 … 固体電解質層
4 … 負極活物質層
5 … 負極集電層
10 … 電極体
100 … 固体電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7