(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】物品搬送設備
(51)【国際特許分類】
H04W 16/26 20090101AFI20241112BHJP
H04W 84/10 20090101ALI20241112BHJP
H04W 24/02 20090101ALI20241112BHJP
H04W 84/00 20090101ALI20241112BHJP
H04W 4/35 20180101ALI20241112BHJP
【FI】
H04W16/26
H04W84/10
H04W24/02
H04W84/00 110
H04W4/35
(21)【出願番号】P 2022085147
(22)【出願日】2022-05-25
【審査請求日】2024-02-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】井平 裕己
【審査官】桑原 聡一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-118841(JP,A)
【文献】特開2015-097346(JP,A)
【文献】特公平05-008893(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
規定の走行経路に沿って走行して物品を搬送する搬送車を複数備えると共に、複数の前記搬送車を制御する制御装置を備えた物品搬送設備であって、
前記走行経路に対する位置が固定され、前記制御装置と通信可能に接続された固定式アクセスポイントと、
複数の前記搬送車のそれぞれに搭載された無線通信用の移動式アクセスポイントと、を備え、
前記固定式アクセスポイント及び前記移動式アクセスポイントのそれぞれの無線通信用の電波が届く範囲を通信可能エリアとして、
前記固定式アクセスポイントが、当該固定式アクセスポイントの前記通信可能エリア内にある前記移動式アクセスポイントと無線により通信可能に接続され、複数の前記移動式アクセスポイントのそれぞれが、それぞれの前記移動式アクセスポイントの前記通信可能エリア内にある前記固定式アクセスポイント及び他の前記移動式アクセスポイントと無線により通信可能に接続されることで、前記固定式アクセスポイントと複数の前記移動式アクセスポイントとにより通信ネットワークが構成され、
前記制御装置と前記搬送車との通信データが、前記通信ネットワークを介して送受信さ
れ、
前記移動式アクセスポイントが搭載された複数の前記搬送車のうち、前記物品の搬送のためのタスクを割り当て済みの前記搬送車を実働搬送車とし、前記タスクを割り当てていない前記搬送車を待機搬送車として、
前記制御装置は、前記実働搬送車の移動により、前記固定式アクセスポイントの前記通信可能エリアと複数の前記移動式アクセスポイントの前記通信可能エリアとにカバーされていないエリアである非カバーエリアが生じる場合には、前記非カバーエリアを前記待機搬送車に搭載された前記移動式アクセスポイントの前記通信可能エリアによりカバーするように、前記待機搬送車の行き先を指定する、物品搬送設備。
【請求項2】
前記制御装置は、複数の前記搬送車のそれぞれが、前記固定式アクセスポイント及び自車以外の前記搬送車に搭載された前記移動式アクセスポイントの何れかの前記通信可能エリア内に存在するように、複数の前記搬送車の位置を制御する、請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項3】
前記制御装置は、前記固定式アクセスポイントの前記通信可能エリアと複数の前記移動式アクセスポイントの前記通信可能エリアとにより、前記走行経路の全体で通信経路が確保されるように、前記移動式アクセスポイントが搭載された複数の前記搬送車の行き先を指定する分散配置制御を行う、請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項4】
前記制御装置は、複数の前記搬送車のうちの1つとの通信不良が生じた場合には、当該通信不良が生じた前記搬送車を通信不良搬送車として、前記制御装置と前記通信不良搬送車との通信経路を形成可能な位置に、前記移動式アクセスポイントが搭載された前記搬送車を移動させるように、当該搬送車の行き先を指定する、請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項5】
前記制御装置は、前記待機搬送車を移動させることにより、前記非カバーエリアとは別の前記非カバーエリアである第2非カバーエリアが生じないことを条件として、前記待機搬送車の行き先を指定する、請求項
1に記載の物品搬送設備。
【請求項6】
複数の前記搬送車には、前記移動式アクセスポイントが搭載されたアクセスポイント搭載搬送車と、前記移動式アクセスポイントが搭載されていないアクセスポイント非搭載搬送車とが含まれ、
前記制御装置は、前記アクセスポイント搭載搬送車よりも優先して、前記アクセスポイント非搭載搬送車に前記物品の搬送のためのタスクを割り当てる、請求項1から
5の何れか一項に記載の物品搬送設備。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記走行経路の全体を複数の管理エリアに分割し、
複数の前記管理エリアのそれぞれに、前記移動式アクセスポイントが搭載された少なくとも1台の前記搬送車を管理搬送車として設定し、
前記管理搬送車を、設定した前記管理エリア内のみで移動させる、請求項1から
5の何れか一項に記載の物品搬送設備。
【請求項8】
規定の走行経路に沿って走行して物品を搬送する搬送車を複数備えると共に、複数の前記搬送車を制御する制御装置を備えた物品搬送設備であって、
前記走行経路に対する位置が固定され、前記制御装置と通信可能に接続された固定式アクセスポイントと、
複数の前記搬送車のそれぞれに搭載された無線通信用の移動式アクセスポイントと、を備え、
複数の前記搬送車には、前記移動式アクセスポイントが搭載されたアクセスポイント搭載搬送車と、前記移動式アクセスポイントが搭載されていないアクセスポイント非搭載搬送車とが含まれ、
前記固定式アクセスポイント及び前記移動式アクセスポイントのそれぞれの無線通信用の電波が届く範囲を通信可能エリアとして、
前記固定式アクセスポイントが、当該固定式アクセスポイントの前記通信可能エリア内にある前記移動式アクセスポイントと無線により通信可能に接続され、複数の前記移動式アクセスポイントのそれぞれが、それぞれの前記移動式アクセスポイントの前記通信可能エリア内にある前記固定式アクセスポイント及び他の前記移動式アクセスポイントと無線により通信可能に接続されることで、前記固定式アクセスポイントと複数の前記移動式アクセスポイントとにより通信ネットワークが構成され、
前記制御装置と前記搬送車との通信データが、前記通信ネットワークを介して送受信される、物品搬送設備。
【請求項9】
規定の走行経路に沿って走行して物品を搬送する搬送車を複数備えると共に、複数の前記搬送車を制御する制御装置を備えた物品搬送設備であって、
前記走行経路に対する位置が固定され、前記制御装置と通信可能に接続された固定式アクセスポイントと、
複数の前記搬送車のそれぞれに搭載された無線通信用の移動式アクセスポイントと、を備え、
前記固定式アクセスポイント及び前記移動式アクセスポイントのそれぞれの無線通信用の電波が届く範囲を通信可能エリアとして、
前記固定式アクセスポイントが、当該固定式アクセスポイントの前記通信可能エリア内にある前記移動式アクセスポイントと無線により通信可能に接続され、複数の前記移動式アクセスポイントのそれぞれが、それぞれの前記移動式アクセスポイントの前記通信可能エリア内にある前記固定式アクセスポイント及び他の前記移動式アクセスポイントと無線により通信可能に接続されることで、前記固定式アクセスポイントと複数の前記移動式アクセスポイントとにより通信ネットワークが構成され、
前記制御装置と前記搬送車との通信データが、前記通信ネットワークを介して送受信され、
前記制御装置は、
前記走行経路の全体を複数の管理エリアに分割し、
複数の前記管理エリアのそれぞれに、前記移動式アクセスポイントが搭載された少なくとも1台の前記搬送車を管理搬送車として設定し、
前記管理搬送車を、設定した前記管理エリア内のみで移動させる、物品搬送設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、規定の走行経路に沿って走行して物品を搬送する搬送車を複数備えると共に、複数の搬送車を制御する制御装置を備えた物品搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2022-45704号公報には、規定の走行経路(1)に沿って走行して物品(W)を搬送する搬送車(3)を複数備えた物品搬送設備(100)が開示されている(背景技術において括弧内の符号は参照する文献のもの。)。搬送車(3)は、物品搬送設備(100)の全体を管理する制御装置(H1)からの搬送指令に基づいて物品(W)を搬送する。制御装置(H1)と搬送車(3)とは、電波による無線通信可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、制御装置(H1)と搬送車(3)との間で電波による無線通信を行う場合、制御装置(H1)の側にアクセスポイントが接続され、搬送車(3)の側の通信部は、このアクセスポイントを介して制御装置(H1)と通信する。物品搬送設備(100)の規模が大きい場合には、1つのアクセスポイントによって全域に散らばった搬送車(3)と通信することは困難であり、中継用にアクセスポイントの子機が設置される場合がある。そして、物品搬送設備(100)の規模が大きくなるほど、この子機の必要台数も増加し、物品搬送設備(100)の設置コストを上昇させる場合がある。また、アクセスポイントの親機と子機とが有線接続される場合には、子機の台数だけでなく、配線も増加することになり、物品搬送設備の設置工事の際の工数も増大し、物品搬送設備(100)の設置コストを上昇させる場合がある。また、子機に不具合が生じると、当該子機の修復や交換が行われるまでの間、当該子機を介した通信ができなくなる場合がある。通信ができなくなることを抑制するために、子機の通信可能エリアを重複させるなどの冗長化を行うと、子機の台数が増加して物品搬送設備(100)の設置コストを上昇させる。
【0005】
上記背景に鑑みて、コストの上昇を抑えつつ、制御装置と搬送車との通信ネットワークを適切に構成することができる物品搬送設備の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記に鑑みた物品搬送設備は、1つの態様として、規定の走行経路に沿って走行して物品を搬送する搬送車を複数備えると共に、複数の前記搬送車を制御する制御装置を備えた物品搬送設備であって、前記走行経路に対する位置が固定され、前記制御装置と通信可能に接続された固定式アクセスポイントと、複数の前記搬送車のそれぞれに搭載された無線通信用の移動式アクセスポイントと、を備え、前記固定式アクセスポイント及び前記移動式アクセスポイントのそれぞれの無線通信用の電波が届く範囲を通信可能エリアとして、前記固定式アクセスポイントが、当該固定式アクセスポイントの前記通信可能エリア内にある前記移動式アクセスポイントと無線により通信可能に接続され、複数の前記移動式アクセスポイントのそれぞれが、それぞれの前記移動式アクセスポイントの前記通信可能エリア内にある前記固定式アクセスポイント及び他の前記移動式アクセスポイントと無線により通信可能に接続されることで、前記固定式アクセスポイントと複数の前記移動式アクセスポイントとにより通信ネットワークが構成され、前記制御装置と前記搬送車との通信データが、前記通信ネットワークを介して送受信され、前記移動式アクセスポイントが搭載された複数の前記搬送車のうち、前記物品の搬送のためのタスクを割り当て済みの前記搬送車を実働搬送車とし、前記タスクを割り当てていない前記搬送車を待機搬送車として、前記制御装置は、前記実働搬送車の移動により、前記固定式アクセスポイントの前記通信可能エリアと複数の前記移動式アクセスポイントの前記通信可能エリアとにカバーされていないエリアである非カバーエリアが生じる場合には、前記非カバーエリアを前記待機搬送車に搭載された前記移動式アクセスポイントの前記通信可能エリアによりカバーするように、前記待機搬送車の行き先を指定する。
【0007】
本構成によれば、複数の搬送車のそれぞれに搭載された移動式アクセスポイントと固定式アクセスポイントとを用いて通信ネットワークを構成している。このため、1つの固定式アクセスポイントでは電波が届かないような広い範囲に走行経路が設置されている場合であっても、固定式アクセスポイントの数を増やすことなく、当該広い範囲において搬送車と制御装置との通信経路をカバーする通信ネットワークを構成することができる。これにより、固定式アクセスポイントの数を少なく抑えることができる。従って、物品搬送設備の通信ネットワークを構成する場合に、固定式アクセスポイントの数、及び、固定式アクセスポイント同士が有線接続される場合には、固定式アクセスポイント間を接続するための配線を少なく抑えることができ、物品搬送設備の設置工事の簡略化を図ることもできる。また、移動式アクセスポイントとして機能する搬送車が、実働搬送車として物品搬送のために移動すると、非カバーエリアが生じる可能性があるが、本構成によれば、非カバーエリアが生じた場合、或いは生じると予想される場合に、当該非カバーエリアをカバーするように待機搬送車に搭載された移動式アクセスポイントが配置される。これにより、非カバーエリアが生じる可能性を低減できるため、走行経路を走行する搬送車が制御装置と通信できない事態が生じる可能性を低減できる。このように本構成によれば、コストの上昇を抑えつつ、制御装置と搬送車との通信ネットワークを適切に構成することができる物品搬送設備を実現することができる。
【0008】
また、上記に鑑みた物品搬送設備は、1つの態様として、規定の走行経路に沿って走行して物品を搬送する搬送車を複数備えると共に、複数の前記搬送車を制御する制御装置を備えた物品搬送設備であって、前記走行経路に対する位置が固定され、前記制御装置と通信可能に接続された固定式アクセスポイントと、複数の前記搬送車のそれぞれに搭載された無線通信用の移動式アクセスポイントと、を備え、複数の前記搬送車には、前記移動式アクセスポイントが搭載されたアクセスポイント搭載搬送車と、前記移動式アクセスポイントが搭載されていないアクセスポイント非搭載搬送車とが含まれ、前記固定式アクセスポイント及び前記移動式アクセスポイントのそれぞれの無線通信用の電波が届く範囲を通信可能エリアとして、前記固定式アクセスポイントが、当該固定式アクセスポイントの前記通信可能エリア内にある前記移動式アクセスポイントと無線により通信可能に接続され、複数の前記移動式アクセスポイントのそれぞれが、それぞれの前記移動式アクセスポイントの前記通信可能エリア内にある前記固定式アクセスポイント及び他の前記移動式アクセスポイントと無線により通信可能に接続されることで、前記固定式アクセスポイントと複数の前記移動式アクセスポイントとにより通信ネットワークが構成され、前記制御装置と前記搬送車との通信データが、前記通信ネットワークを介して送受信される。
【0009】
本構成によれば、複数の搬送車のそれぞれに搭載された移動式アクセスポイントと固定式アクセスポイントとを用いて通信ネットワークを構成している。このため、1つの固定式アクセスポイントでは電波が届かないような広い範囲に走行経路が設置されている場合であっても、固定式アクセスポイントの数を増やすことなく、当該広い範囲において搬送車と制御装置との通信経路をカバーする通信ネットワークを構成することができる。これにより、固定式アクセスポイントの数を少なく抑えることができる。従って、物品搬送設備の通信ネットワークを構成する場合に、固定式アクセスポイントの数、及び、固定式アクセスポイント同士が有線接続される場合には、固定式アクセスポイント間を接続するための配線を少なく抑えることができ、物品搬送設備の設置工事の簡略化を図ることもできる。また、本構成によれば、例えば、走行経路の全体で通信経路が確保されるようにアクセスポイント搭載搬送車の行き先を指定する分散配置制御を行ったり、アクセスポイント非搭載搬送車に物品の搬送のためのタスクを優先して割り当てたりするなど、搬送車の属性に応じた搬送車の制御を行い易い。このように本構成によれば、コストの上昇を抑えつつ、制御装置と搬送車との通信ネットワークを適切に構成することができる物品搬送設備を実現することができる。
【0010】
また、上記に鑑みた物品搬送設備は、1つの態様として、規定の走行経路に沿って走行して物品を搬送する搬送車を複数備えると共に、複数の前記搬送車を制御する制御装置を備えた物品搬送設備であって、前記走行経路に対する位置が固定され、前記制御装置と通信可能に接続された固定式アクセスポイントと、複数の前記搬送車のそれぞれに搭載された無線通信用の移動式アクセスポイントと、を備え、前記固定式アクセスポイント及び前記移動式アクセスポイントのそれぞれの無線通信用の電波が届く範囲を通信可能エリアとして、前記固定式アクセスポイントが、当該固定式アクセスポイントの前記通信可能エリア内にある前記移動式アクセスポイントと無線により通信可能に接続され、複数の前記移動式アクセスポイントのそれぞれが、それぞれの前記移動式アクセスポイントの前記通信可能エリア内にある前記固定式アクセスポイント及び他の前記移動式アクセスポイントと無線により通信可能に接続されることで、前記固定式アクセスポイントと複数の前記移動式アクセスポイントとにより通信ネットワークが構成され、前記制御装置と前記搬送車との通信データが、前記通信ネットワークを介して送受信され、前記制御装置が、前記走行経路の全体を複数の管理エリアに分割し、複数の前記管理エリアのそれぞれに、前記移動式アクセスポイントが搭載された少なくとも1台の前記搬送車を管理搬送車として設定し、前記管理搬送車を、設定した前記管理エリア内のみで移動させる。
【0011】
本構成によれば、複数の搬送車のそれぞれに搭載された移動式アクセスポイントと固定式アクセスポイントとを用いて通信ネットワークを構成している。このため、1つの固定式アクセスポイントでは電波が届かないような広い範囲に走行経路が設置されている場合であっても、固定式アクセスポイントの数を増やすことなく、当該広い範囲において搬送車と制御装置との通信経路をカバーする通信ネットワークを構成することができる。これにより、固定式アクセスポイントの数を少なく抑えることができる。従って、物品搬送設備の通信ネットワークを構成する場合に、固定式アクセスポイントの数、及び、固定式アクセスポイント同士が有線接続される場合には、固定式アクセスポイント間を接続するための配線を少なく抑えることができ、物品搬送設備の設置工事の簡略化を図ることもできる。また、本構成によれば、管理搬送車により常にそれぞれの管理エリア内における通信環境を良好な状態に維持しておくことができる。従って、通信ネットワークにおいて制御装置と搬送車との通信経路が途絶する可能性を低減することができ、良好な通信環境を維持し易い。このように本構成によれば、コストの上昇を抑えつつ、制御装置と搬送車との通信ネットワークを適切に構成することができる物品搬送設備を実現することができる。
【0012】
物品搬送設備のさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する例示的且つ非限定的な実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】物品搬送設備のシステム構成を示す模式的なブロック図
【
図4】固定アクセスポイントと移動アクセスポイントにより構成される物品搬送設備の通信ネットワークの一例を示す図
【
図5】非カバーエリアが生じた場合に通信経路を形成する例を示す図
【
図6】通信不良搬送車が生じた場合に通信経路を形成する例を示す図
【
図7】管理エリアが設定された物品搬送設備の一例を示す図
【
図8】固定アクセスポイントより構成される物品搬送設備の通信ネットワークの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面も参照して物品搬送設備の実施形態を説明する。
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る物品搬送設備100は、物品を搬送する搬送車30の走行経路10に沿って配置された走行レール20を備えている。また、
図2に示すように、走行レール20に沿って、給電線3が配置されている。物品搬送設備100には、複数の搬送車30が備えられ、それぞれの搬送車30は、走行レール20に案内されて規定の走行経路10に沿って走行する。本実施形態では、搬送車30による搬送対象の物品は、例えば、半導体基板を収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)や、ディスプレイの材料となるガラス基板等である。物品搬送設備100には、半導体基板を収容する収容庫(不図示)や、半導体基板に回路等を形成するための種々の処理を施す物品処理部Pも備えられている。例えば、走行経路10は、1つの環状の主経路10aと複数の物品処理部Pを経由する環状の副経路10bと、これら主経路10aと副経路10bとを接続する接続経路10cとを備えている。本実施形態では、搬送車30は、矢印で示す方向に一方通行で走行経路10を走行する。
【0015】
図2に示すように、本実施形態では、搬送車30は、走行部12と、本体部13とを備えた天井搬送車である。走行部12は、走行経路10に沿って天井から吊り下げ支持されて配置された一対の走行レール20に案内されて走行経路10に沿って走行する。本体部13は、走行レール20の下方に位置して走行部12に吊り下げ支持されている。図示及び詳細な説明は省略するが、本体部13には、本体部13に昇降自在に備えられて物品を吊り下げ状態で支持する物品支持部、物品を把持する把持部等も備えられている。搬送車30は、把持部により物品を把持し、物品支持部を上昇させた状態で走行して物品を搬送する。また、搬送車30は、走行経路10に沿って配設された給電線3から非接触で駆動用電力を受電する受電装置4を備えている。
【0016】
走行部12には、
図2に示すように、電動式の駆動モータ14にて回転駆動される一対の走行輪15が備えられている。走行輪15は、走行レール20のそれぞれの上面にて形成される走行面を転動する。また、走行部12には、上下方向Zに沿う軸心周り(上下軸心周り)で自由回転する一対の案内輪16が、一対の走行レール20における内側面に当接する状態で備えられている。また、走行部12は、走行用の駆動モータ14やその駆動回路等を備えて構成されており、搬送車30を走行レール20に沿って走行させる。本体部13には、物品支持部を昇降させるアクチュエータ、物品を把持する把持部を駆動するアクチュエータ等、及び、それらの駆動回路等が備えられている。
【0017】
これらの駆動モータ14や、種々のアクチュエータ、これらを駆動する駆動回路等への電力は、給電線3から非接触で受電装置4に供給される。上述したように、受電装置4を介して搬送車30に駆動用電力を供給する給電線3は、走行経路10に沿って配設されている。本実施形態では、給電線3は、受電装置4に対して、走行経路10に沿った方向である経路方向Lに直交する経路幅方向H(ここでは、経路方向L及び上下方向Zの双方に直交する方向)の両側に配置されている。本実施形態では、HID(High Efficiency Inductive Power Distribution Technology)と称されるワイヤレス給電技術を用いて、搬送車30に駆動用電力を供給する。
【0018】
図示は省略するが、物品搬送設備100は、床面側に設置されて物品が載置される載置台を備えている。搬送車30は、物品保持部を下降させた状態で載置台との間で物品を移載する。載置台は、物品搬送設備100の複数箇所に配置されている。例えば、載置台は、
図1に示すそれぞれの物品処理部Pや、
図1における図外の物品保管庫に配置されている。
【0019】
図3に示すように、物品搬送設備100は、物品搬送設備100の全体を管理する制御装置としての設備制御装置50(MCP:Material Control Processor)を備えている。
設備制御装置50は、複数の搬送車30を制御する。それぞれの搬送車30は、設備制御装置50からの搬送指令に基づいて、物品を異なる載置台間で搬送する。搬送指令には、物品を受け取りに行く引き当て指令、受け取った物品を搬送先に搬送する搬送指令が含まれる。また、設備制御装置50は、搬送指令以外にも、搬送を伴わずに搬送車30を走行させる移動指令も搬送車30に送信する。移動指令には、例えば、他の搬送車30との干渉を回避するために搬送車30を移動させる指令や、後述するような通信を確保するために搬送車30を移動させる指令を含む。設備制御装置50は、搬送指令、移動指令の何れにおいても、搬送車30に行き先を指定する。
【0020】
それぞれの搬送車30には、通信部18が備えられており、設備制御装置50とそれぞれの搬送車30とは、ワイヤレス通信(例えば電波を用いた無線通信)によって通信可能に構成されている。詳細は後述するが、設備制御装置50と搬送車30とは、アクセスポイント(固定式アクセスポイント7、移動式アクセスポイント17)を介して通信する。
【0021】
また、それぞれの搬送車30には、位置検出部19が備えられており、搬送車30の位置(自車位置)の情報(自車位置情報)が位置検出部19によって取得される。この自車位置情報は、通信によって設備制御装置50に提供することができ、設備制御装置50は、物品搬送設備100における全ての搬送車30の位置を把握している。設備制御装置50は、それぞれの搬送車30の自車位置情報に基づき、移動距離や走行経路10の混み具合等も考慮して、物品を搬送する搬送車30を決定し、通信によって当該搬送車30に搬送指令を送る。それぞれの搬送車30は、車両制御装置11を備えており、搬送指令に基づいて自律制御により搬送車30を走行させ、指定された載置台の上方で停止して、物品保持部を昇降させることによって物品を移載する。
【0022】
位置検出部19は、例えばコードリーダを備えて構成されている。この場合、走行レール20に沿って、走行経路10を走行する搬送車30のコードリーダが読み取り可能な位置に、物品搬送設備100内における絶対位置である位置情報を示す標章が備えられている。位置検出部19は、コードリーダによってこの標章を読み取ることによって、位置情報を取得する。さらに、搬送車30には、走行輪15の回転量を検出するエンコーダが備えられていてもよい。位置情報を示す標章と標章との間においては、エンコーダによって検出された回転量に基づき、搬送車30の移動量を検出することができる。従って、このようなエンコーダが備えられている場合、このエンコーダも位置検出部19に含まれる。
【0023】
図4は、物品搬送設備100におけ
る通信ネットワークの一例を示している。
図4に示すように、物品搬送設備100には、固定式アクセスポイント7と、移動式アクセスポイント17とが備えられ、これら固定式アクセスポイント7と移動式アクセスポイント17とによって通信ネットワークが構成されている。固定式アクセスポイント7は、走行経路10に対する位置が固定されているアクセスポイントである。固定式アクセスポイント7は、設備制御装置50と通信可能に接続されている。本実施形態では、ハブ6を介して2つの固定式アクセスポイント7が設備制御装置50に有線接続されている形態を例示している。尚、ハブ6には、固定式アクセスポイント7以外の他の制御装置等が接続され、設備制御装置50と通信可能に接続されていてもよい。また、この形態に限らず、固定式アクセスポイント7は、設備制御装置50にワイヤレス接続(電波による無線、近距離無線通信、赤外線通信等も含む)されていてもよい。また、ここでは、固定式アクセスポイント7として、設備制御装置50と接続されたコアアクセスポイント7cを例示しているが、コアアクセスポイント7cに限らず、コアアクセスポイント7cと搬送車30との間の通信を中継するスレーブアクセスポイント7sを含んでいてもよい。また、設備制御装置50が、固定式アクセスポイント7(コアアクセスポイント7c)を内蔵していてもよい。
【0024】
移動式アクセスポイント17は、走行経路10に対する位置が固定されておらず、配置位置が移動するアクセスポイントである。移動式アクセスポイント17は、スレーブアクセスポイント7sとして機能し、コアアクセスポイント7cと搬送車30との間の通信、コアアクセスポイント7cと他のスレーブアクセスポイント7sとの間の通信、他のスレーブアクセスポイント7s同士の間の通信を中継する。本実施形態では、移動式アクセスポイント17は、複数の搬送車30のそれぞれに搭載されている。
【0025】
尚、
図3及び
図4に示すように、全ての搬送車30が移動式アクセスポイント17を搭載していなくてもよい。即ち、
図3に示すように、複数の搬送車30には、通信部18に移動式アクセスポイント17を含む搬送車30と、通信部18に移動式アクセスポイント17を含まない搬送車30とが含まれていてもよい。以下、これらを区別する場合には、移動式アクセスポイント17が搭載された搬送車30をアクセスポイント搭載搬送車30aと称する。また、図面においては、符号により区別はしていないが、移動式アクセスポイント17が搭載されていない搬送車30をアクセスポイント非搭載搬送車と称する。尚、物理的に(回路的に)移動式アクセスポイント17が搭載されていても、その機能が停止している場合には、アクセスポイント非搭載搬送車として扱うことができる。例えば、全ての搬送車30に物理的に移動式アクセスポイント17が搭載されており、その内の何台かについて移動式アクセスポイント17の機能を有効化して、アクセスポイント搭載搬送車30aとして運用することも好適である。全ての搬送車30がアクセスポイント搭載搬送車30aである場合、或いは、全ての搬送車30に物理的に移動式アクセスポイント17が搭載されて全ての搬送車30がアクセスポイント搭載搬送車30aとなり得る場合には、複数の通信経路を形成し易く、物品搬送設備100の通信の安定性を高め易い。
【0026】
ここで、これら固定式アクセスポイント7及び移動式アクセスポイント17のそれぞれの無線用通信用の電波が届く範囲を
図1や
図4に示すように、通信可能エリアEとする。そして、固定式アクセスポイント7は、固定式アクセスポイント7の通信可能エリアE内にある移動式アクセスポイント17と無線により通信可能に接続されている。また、複数の移動式アクセスポイント17のそれぞれは、それぞれの移動式アクセスポイント17の通信可能エリアE内にある固定式アクセスポイント7、及び他の移動式アクセスポイント17と無線により通信可能に接続されている。これにより、固定式アクセスポイント7(本実施形態では、コアアクセスポイント7c)と、複数の移動式アクセスポイント17(本実施形態ではスレーブアクセスポイント7s)とにより通信ネットワークが構成される。
【0027】
即ち、少なくとも1つのアクセスポイントの通信可能エリアEに移動式アクセスポイント17が含まれていることにより、設備制御装置50と搬送車30との間で双方向通信が可能なように、通信ネットワークが構築される。
図5を参照して後述するように、移動式アクセスポイント17が他の移動式アクセスポイント17、及び固定式アクセスポイント7の何れの通信可能エリアEにも含まれない場合には、非カバーエリアFが生じることになる。
【0028】
尚、図が煩雑化することを抑制するため、
図1や
図4においては、一部の移動式アクセスポイント17を示している。従って、図上においては、複数の移動式アクセスポイント17のそれぞれが、それぞれの移動式アクセスポイント17の通信可能エリアE内にある固定式アクセスポイント7、及び他の移動式アクセスポイント17と無線により通信可能に接続されていない場合がある。
【0029】
これにより、固定式アクセスポイント7の通信可能エリアEの外に搬送車30が位置しても、少なくとも1つの移動式アクセスポイント17の通信可能エリアEの中に当該搬送車30が位置していれば、設備制御装置50と当該搬送車30との間の通信経路が形成される。つまり、設備制御装置50、コアアクセスポイント7c(ここでは固定式アクセスポイント7)、少なくとも1つのスレーブアクセスポイント7s(ここでは移動式アクセスポイント17)、当該搬送車30を繋ぐ通信経路が形成される。従って、設備制御装置50と当該搬送車30との間での通信が可能となる。即ち、複数の搬送車30のそれぞれに搭載された移動式アクセスポイント17と固定式アクセスポイント7とを用いて通信ネットワークを構成することで、1つの固定式アクセスポイント7では電波が届かないような広い範囲に走行経路10が設置されている場合であっても、固定式アクセスポイント7の数を増やすことなく、当該広い範囲において搬送車30と設備制御装置50との通信経路をカバーする通信ネットワークを構成することができる。
【0030】
図8は、比較例の物品搬送設備(第2物品搬送設備100B)における通信ネットワークの一例を示している。この通信ネットワークは、固定式アクセスポイント7によるコアアクセスポイント7cとスレーブアクセスポイント7sとにより形成されている。コアアクセスポイント7cとスレーブアクセスポイント7sとの間の接続は、有線であっても無線であってもよいが、この場合には、複数のスレーブアクセスポイント7sが、固定式アクセスポイント7として、比較例における第2物品搬送設備100Bの走行経路10に対して固定された位置に配置されている。物品搬送設備の規模が大きくなるほど、このスレーブアクセスポイント7sの必要台数も増加するため、物品搬送設備の設置コストを上昇させる場合がある。従って、比較例における第2物品搬送設備100Bでは、本実施形態の物品搬送設備100に比べて、設置コストが高くなる可能性がある。
【0031】
また、第2物品搬送設備100Bにおいて、コアアクセスポイント7cとスレーブアクセスポイント7sとが有線接続される場合には、スレーブアクセスポイント7sの台数だけでなく、コアアクセスポイント7cとスレーブアクセスポイント7sとをつなぐための配線も増加することになる。このため、物品搬送設備の設置工事の際の工数も増大し、物品搬送設備の設置コストを上昇させる場合がある。
【0032】
本実施形態の物品搬送設備100は、比較例の第2物品搬送設備100Bに対して、固定式アクセスポイント7の数を増やすことなく、広い範囲において搬送車30と設備制御装置50との通信経路をカバーする通信ネットワークを構成することができる。従って、固定式アクセスポイント7の数を少なく抑えることができる。また、移動式アクセスポイント17は有線接続ではなく、無線接続されるため、固定式アクセスポイント7間を接続するための配線を少なく抑えることができ、物品搬送設備100の設置工事の簡略化を図ることもできる。また、物品搬送設備100を拡張する場合においても、固定式アクセスポイント7(スレーブアクセスポイント7s)の配置や、配線を行うために、別途工事を行う必要がない。また、搬送車30の数が増加して、スレーブアクセスポイント7sの通信容量が不足するような場合にも、固定式アクセスポイント7を増やすことなく、移動式アクセスポイント17を搭載した搬送車30を増車することによって、通信ネットワークを増強することができる。例えば、搬送車30の数が増加し、1つのスレーブアクセスポイント7sを経由する通信が増加すると、当該スレーブアクセスポイント7sを経由する通信経路が混雑する場合がある。移動式アクセスポイント17を搭載した搬送車30を増車することによって、複数の通信経路を構成することも可能となるため、上記のように混雑した通信経路の迂回経路を構築することもできる。従って、本実施形態の物品搬送設備100は、通信ネットワークの混雑を抑制し、通信環境を改善させることもできる。
【0033】
スレーブアクセスポイント7sがコアアクセスポイント7cと無線接続される場合であっても、スレーブアクセスポイント7sが固定式アクセスポイント7であれば、少なくともコアアクセスポイント7cとスレーブアクセスポイント7sとの間の通信が常に確立されるように、これらを固定的に配置することができる。しかし、スレーブアクセスポイント7sが移動式アクセスポイント17の場合には、移動式アクセスポイント17の位置によって、コアアクセスポイント7cとの間の通信が途絶する可能性がある。つまり、通信経路が途切れる可能性がある。上述したように、設備制御装置50は、それぞれの搬送車30の自車位置情報を取得可能である。従って、設備制御装置50は、好ましくは、複数の搬送車30のそれぞれが、固定式アクセスポイント7及び自車以外の搬送車30に搭載された移動式アクセスポイント17の何れかの通信可能エリアE内に存在するように、複数の搬送車30の位置を制御する。
【0034】
固定式アクセスポイント7及び移動式アクセスポイント17により、設備制御装置50とそれぞれの搬送車30とをつなぐ通信ネットワークが構築されているため、それぞれの搬送車30が何れかの通信可能エリアE内に存在すれば、それぞれの搬送車30と設備制御装置50との通信が可能となる。
【0035】
また、上述したように、設備制御装置50は、搬送指令を搬送車30に与え、搬送車30は搬送指令に応じて、走行経路10上を移動する。この搬送車30がアクセスポイント搭載搬送車30aである場合、移動に伴ってこの搬送車30の通信可能エリアEも移動する。通信可能エリアEが移動することによって、
図5に示すように非カバーエリアFが生じるおそれがある。
【0036】
ここで、設備制御装置50からの搬送指令を受けた搬送車30を、物品の搬送のためのタスクを割り当て済みの実働搬送車30wとし、タスクを割り当てられていない搬送車30を待機搬送車30sとする(
図5参照)。また、ここでは、移動式アクセスポイント17として機能可能な搬送車30を対象とするため、移動式アクセスポイント17が搭載された複数の搬送車30(アクセスポイント搭載搬送車30a)の内で、物品の搬送のためのタスクを割り当て済みの搬送車30を実働搬送車30wとし、タスクを割り当てていない搬送車30を待機搬送車30sとして説明する。
【0037】
図5は、アクセスポイント搭載搬送車30aである第1搬送車31に物品の搬送のためのタスクが割り当てられた例を示している。第1搬送車31及び第2搬送車32は何れもアクセスポイント搭載搬送車30aであり、移動式アクセスポイント17として機能している。タスクの割り当て前には、第1搬送車31の通信可能エリアE内に第2搬送車32が存在し、第2搬送車32の通信可能エリアE内に第1搬送車31が存在しており、第1搬送車31及び第2搬送車32を経由する通信経路が確立されている。
【0038】
ここで、第1搬送車31に物品搬送のタスクが割り当てられ、第1搬送車31が実働搬送車30wとなって移動すると、第1搬送車31と共に通信可能エリアEも移動する。そして、第2搬送車32は、第1搬送車31と同じ方向に同じ速度で移動しない、例えば、停止しているとする。第1搬送車31の移動に伴って、第2搬送車32の位置は、第1搬送車31の通信可能エリアE外となり、同様に、第1搬送車31の位置も、第2搬送車32の通信可能エリアE外となる。その結果、元々、第1搬送車31によって形成されていた通信可能エリアEは非カバーエリアFとなり、第1搬送車31及び第2搬送車32を経由する通信経路が途絶することになる。
【0039】
そこで、設備制御装置50は、移動前に第1搬送車31が存在した位置に、待機搬送車30sであると共にアクセスポイント搭載搬送車30aである第3搬送車33を向かわせる。第3搬送車33の通信可能エリアEに第2搬送車32が位置し、第2搬送車32の通信可能エリアEに第3搬送車33が位置することで、第3搬送車33及び第2搬送車32を経由する通信経路が確立される。
【0040】
このように、設備制御装置50は、実働搬送車30wの移動により、固定式アクセスポイント7の通信可能エリアEと複数の移動式アクセスポイント17の通信可能エリアEとにカバーされていないエリアである非カバーエリアFが生じる場合には、非カバーエリアFを待機搬送車30sに搭載された移動式アクセスポイント17の通信可能エリアEによりカバーするように、待機搬送車30sの行き先を指定すると好適である。非カバーエリアFが生じた場合、或いは生じると予想される場合に、当該非カバーエリアFをカバーするように待機搬送車30sに搭載された移動式アクセスポイント17が配置されることで、非カバーエリアFが生じる可能性を低減できる。これにより、走行経路10を走行する搬送車30が設備制御装置50と通信できない事態が生じる可能性を低減できる。
【0041】
尚、上記の場合において、設備制御装置50は、待機搬送車30sを移動させることにより、第1搬送車31の移動に伴う非カバーエリアFとは別の非カバーエリアFである第2非カバーエリアが生じないことを条件として、待機搬送車30sの行き先を指定するとよい。待機搬送車30sを移動させることで、新たな非カバーエリアFが生じる事態を回避しながら、物品搬送設備100の全体をカバーできるように移動式アクセスポイント17を配置することができる。
【0042】
物品搬送設備100において搬送車30の主たる稼働目的は、物品の搬送である。従って、このように物品搬送のタスクを与えられることによって、頻繁にアクセスポイント搭載搬送車30aも移動する。このため、設備制御装置50は、固定式アクセスポイント7の通信可能エリアEと複数の移動式アクセスポイント17の通信可能エリアEとにより、走行経路10の全体で通信経路が確保されるように、移動式アクセスポイント17が搭載された複数の搬送車30(アクセスポイント搭載搬送車30a)の行き先を指定する分散配置制御を行うとよい。
【0043】
当然ながら、分散配置制御を行うことなく、非カバーエリアFが生じた場合、或いは、非カバーエリアFが生じると予想される場合に、都度、アクセスポイント搭載搬送車30aの行き先を指定して、非カバーエリアFを解消させてもよい。しかし、予め分散配置制御を行ってくことによって、迅速に非カバーエリアFを解消させることができる。或いは、予め分散配置制御を行ってくことによって、非カバーエリアFの発生を抑制することができる。即ち、走行経路10の全体で常に通信経路が確保されるべく、移動式アクセスポイント17の位置が分散するように、搬送車30の行き先が指定されることで、常に何れかのアクセスポイントと走行経路10を走行する搬送車30が設備制御装置50と通信可能な状態に維持し易い。換言すれば、設備制御装置50と搬送車30とが通信できない事態の発生を低減することができる。
【0044】
また、アクセスポイント搭載搬送車30aに搭載された移動式アクセスポイント17に不具合が生じた場合にも、通信経路が途切れる可能性がある。例えば、設備制御装置50は、複数の搬送車30のうちの1つとの通信不良が生じた場合には、当該通信不良が生じた搬送車30を通信不良搬送車30fとする(
図6参照)。
図6において、第1搬送車31が通信不良搬送車30fに相当する。
図6の上段は、第1搬送車31に対して、第3搬送車33、第2搬送車32を移動式アクセスポイント17として、固定式アクセスポイント7又は移動式アクセスポイント17からの通信経路が形成されている形態を例示している。この状態において、設備制御装置50と第1搬送車31との間で通信不良が生じた場合、設備制御装置50は、第1搬送車31を通信不良搬送車30fとする。
【0045】
上述したように、第1搬送車31までの通信経路には、第2搬送車32及び第3搬送車33が含まれている。設備制御装置50は、通信ができている搬送車30(この場合第3搬送車33)の位置と、通信不良搬送車30fの最後に確認できた位置との関係から、途絶したと想定される通信経路の位置(この場合、第2搬送車32)を特定することができる。また、通信部18の内、移動式アクセスポイント17のみに不具合が生じている場合には、例えば、アクセスポイントとしての機能を診断するための指令を第2搬送車32及び第3搬送車33に与え、診断結果を取得してもよい。
【0046】
設備制御装置50は、第2搬送車32の移動式アクセスポイント17に不具合が生じていると判定した場合には、第2搬送車32に代えて別のアクセスポイント搭載搬送車30aにより通信経路を形成させる。例えば、
図6の下段に示すように、設備制御装置50は、第2搬送車32を移動させると共に、第2搬送車32が存在した位置に第3搬送車33を走行させる。さらに、第3搬送車33が存在した位置にアクセスポイント搭載搬送車30aである第4搬送車34を走行させる。これにより、第1搬送車31に対して、第4搬送車34、第3搬送車33を移動式アクセスポイント17として、固定式アクセスポイント7又は移動式アクセスポイント17からの通信経路が形成される。
【0047】
即ち、設備制御装置50は、複数の搬送車30のうちの1つとの通信不良が生じた場合には、当該通信不良が生じた搬送車30を通信不良搬送車30fとして、固定式アクセスポイント7と通信不良搬送車30fとの通信経路を形成可能な位置に、移動式アクセスポイント17が搭載された搬送車30を移動させるように、当該搬送車30の行き先を指定すると好適である。通信不良搬送車30fが発生した場合、それに起因して通信経路の途絶が生じることが考えられる。設備制御装置50は、上述したように、途絶したと想定される通信経路の位置を特定することができる。さらに、設備制御装置50は、当該途絶したと想定される通信経路を再形成可能な位置に、移動式アクセスポイント17を配置することにより、途絶したと想定される通信経路を再形成させることができる。これにより、通信不良搬送車30fと設備制御装置50との間の通信を確保して、通信不良を解消させることができる。
【0048】
尚、「複数の搬送車30のうちの1つとの通信不良が生じた場合」は、当然ながら「複数の搬送車30のうちの少なくとも1つとの通信不良が生じた場合」も含む。つまり、「2台以上の搬送車30との通信不良が生じた場合」も含む。また、搬送車30との通信不良が生じている状況は、通信ができない期間のみに限らず頻繁に通信不良が発生する状況も含む。同様に、2台以上の搬送車30との間での通信不良は、同時に2台以上の搬送車30との通信不良が生じている場合に限らず、2台以上の搬送車30との通信不良が頻繁に生じるような状況も含む。また、設備制御装置50と通信不良搬送車30fとの通信経路を形成可能な位置に移動させる移動式アクセスポイント17が搭載された搬送車30も、1台に限らず、複数台であってもよい。つまり、設備制御装置50は、設備制御装置50と通信不良搬送車30fとの通信経路を形成可能な位置に、移動式アクセスポイント17が搭載された搬送車30を少なくとも1台移動させる構成であってもよい。
【0049】
物品搬送設備100では、様々な機器間において通信が行われていることが少なくはない。このため、電波の干渉等によって通信不良が生じる場合がある。つまり、スレーブアクセスポイント7sが故障しておらず、正常に動作している場合であっても、当該スレーブアクセスポイント7sを経由する通信経路において通信不良が生じる場合がある。このような場合、電波の干渉の状況に応じて、同じ搬送車30に限らず、異なる搬送車30との間でも通信不良が発生する場合がある。このような状況において、設備制御装置50が、通信不良が生じた搬送車30を通信不良搬送車30fとして、設備制御装置50と通信不良搬送車30fとの通信経路を形成可能な位置に、移動式アクセスポイント17が搭載された搬送車30を移動させると、当該移動式アクセスポイント17が搭載された搬送車30を経由する別の通信経路を構築することができる。上述したように、この場合において、移動させる対象の搬送車30,つまり、移動式アクセスポイント17が搭載された搬送車30は1台に限らず、複数台であってもよい。複数台の搬送車30を移動させることによって、複数の通信経路を形成することができるため、電波の干渉が生じているような場合に通信経路を確保し易くなり、電波干渉による影響を軽減させ易い。この場合、移動元の搬送車30は、電波の干渉等が少ないと想定されるような場所、つまり、通信不良の発生頻度が低い場所に位置している搬送車30であると好適である。
【0050】
このような通信不良については、物品搬送設備100の構造や、稼働状況、搬送車30の位置関係等によって、一定の傾向が観測される場合がある。例えば、人工知能(AI:Artificial Intelligence)を利用して電波干渉の発生し易さや、発生する箇所を学習させ、当該学習結果に基づいて、移動式アクセスポイント17が搭載された搬送車30を制御することも好適である。
【0051】
また、上述したように、複数の搬送車30には、移動式アクセスポイント17が搭載されたアクセスポイント搭載搬送車30aと、移動式アクセスポイント17が搭載されていないアクセスポイント非搭載搬送車とが含まれる。設備制御装置50は、アクセスポイント搭載搬送車30aよりも優先して、アクセスポイント非搭載搬送車に物品の搬送のためのタスクを割り当てることで、非カバーエリアFの発生を抑制することができる。物品搬送設備100において搬送車30の主たる用途は物品を搬送することである。アクセスポイント非搭載搬送車に比べて、アクセスポイント搭載搬送車30aが物品を搬送する機会が少なくなることで、アクセスポイント搭載搬送車30aが移動する機会も低くなる。従って、移動式アクセスポイント17が移動することによって、通信ネットワークにおいて設備制御装置50と搬送車30との通信経路が途切れる可能性を低減することができ、良好な通信環境を維持し易い。
【0052】
また、
図7に例示するように、走行経路10の全体が複数の管理エリアKに分割されていてもよい。そして、設備制御装置50は、複数の管理エリアKのそれぞれに、移動式アクセスポイント17が搭載された少なくとも1台の搬送車30を管理搬送車30kとして設定し、この管理搬送車30kを、設定した管理エリアK内のみで移動させてもよい。管理搬送車30kにより常にそれぞれの管理エリアK内における通信環境を良好な状態に維持しておくことができる。従って、通信ネットワークにおいて設備制御装置50と搬送車30との通信経路が途絶する可能性を低減することができ、良好な通信環境を維持し易い。
【0053】
上述したように、本実施形態では、走行経路10は、1つの環状の主経路10aと複数の物品処理部Pを経由する環状の副経路10bとを含んでいる。例えば、少なくとも1つの副経路10bが分割されることなく、1つの管理エリアKとして設定されていると、当該管理エリアKにおいて、管理搬送車30kを走行させ易い。副経路10bに比べて、主経路10aは広範囲であるため、
図7に例示した形態では、複数の管理エリアKに分割している。しかし、主経路10aも分割されることなく、1つの管理エリアKを形成していてもよい。この場合、例えば、複数の管理搬送車30kが分散配置されていると好適である。
【0054】
また、管理エリアK内において管理搬送車30kが1台のみ設定される場合には、当該管理エリアKの何れの端部に当該管理搬送車30kが位置していても、当該管理搬送車30kの通信可能エリアEの中に、当該管理エリアKの全体が含まれると好適である。例えば、1つの副経路10bに対してその全体が管理エリアKに設定され、管理搬送車30kが1台のみ割り当てられる場合、当該副経路10bのどこに管理搬送車30kが位置しても、当該副経路10bの全域が当該管理搬送車30kの通信可能エリアEに含まれていると好適である。
【0055】
〔その他の実施形態〕
以下、その他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0056】
(1)上記においては、搬送車30として、天井に設置された走行レール20に対して吊り下げ支持された天井搬送式の搬送車30を例示して説明した。しかし、搬送車30に移動式アクセスポイント17が搭載されている搬送車30を含んでいれば、搬送車30は、床面に設定された走行経路10に沿って走行する地上搬送式の物品搬送車であってもよい。
【0057】
(2)上記においては、通信不良搬送車30fが発生した場合に、設備制御装置50と通信不良搬送車30fとの通信経路を形成可能な位置に、移動式アクセスポイント17が搭載された搬送車30を移動させるように、当該搬送車30の行き先を指定する形態を例示した。しかし、通信不良搬送車30fや、通信経路の途中で不具合を生じていると予想される移動式アクセスポイント17を搭載した搬送車30を故障車両として走行経路10から待避させる形態であってもよい。
【0058】
(3)上記においては、走行経路10の全体を複数の管理エリアKに分割し、設備制御装置50が、複数の管理エリアKのそれぞれに、少なくとも1台のアクセスポイント搭載搬送車30aを管理搬送車30kとして設定して、当該管理搬送車30kを、設定した管理エリアK内のみで移動させる形態を例示した。しかし、このような管理エリアKや管理搬送車30kが設定されない形態を妨げるものではない。
【0059】
〔実施形態の概要〕
以下、上記において説明した物品搬送設備の概要について簡単に説明する。
【0060】
1つの好適な態様として、物品搬送設備は、規定の走行経路に沿って走行して物品を搬送する搬送車を複数備えると共に、複数の前記搬送車を制御する制御装置を備えた物品搬送設備であって、前記走行経路に対する位置が固定され、前記制御装置と通信可能に接続された固定式アクセスポイントと、複数の前記搬送車のそれぞれに搭載された無線通信用の移動式アクセスポイントと、を備え、前記固定式アクセスポイント及び前記移動式アクセスポイントのそれぞれの無線通信用の電波が届く範囲を通信可能エリアとして、前記固定式アクセスポイントが、当該固定式アクセスポイントの前記通信可能エリア内にある前記移動式アクセスポイントと無線により通信可能に接続され、複数の前記移動式アクセスポイントのそれぞれが、それぞれの前記移動式アクセスポイントの前記通信可能エリア内にある前記固定式アクセスポイント及び他の前記移動式アクセスポイントと無線により通信可能に接続されることで、前記固定式アクセスポイントと複数の前記移動式アクセスポイントとにより通信ネットワークが構成され、前記制御装置と前記搬送車との通信データが、前記通信ネットワークを介して送受信される。
【0061】
本構成によれば、複数の搬送車のそれぞれに搭載された移動式アクセスポイントと固定式アクセスポイントとを用いて通信ネットワークを構成している。このため、1つの固定式アクセスポイントでは電波が届かないような広い範囲に走行経路が設置されている場合であっても、固定式アクセスポイントの数を増やすことなく、当該広い範囲において搬送車と制御装置との通信経路をカバーする通信ネットワークを構成することができる。これにより、固定式アクセスポイントの数を少なく抑えることができる。従って、物品搬送設備の通信ネットワークを構成する場合に、固定式アクセスポイントの数、及び、固定式アクセスポイント同士が有線接続される場合には、固定式アクセスポイント間を接続するための配線を少なく抑えることができ、物品搬送設備の設置工事の簡略化を図ることもできる。このように本構成によれば、コストの上昇を抑えつつ、制御装置と搬送車との通信ネットワークを適切に構成することができる物品搬送設備を実現することができる。
【0062】
また、前記制御装置は、複数の前記搬送車のそれぞれが、前記固定式アクセスポイント及び自車以外の前記搬送車に搭載された前記移動式アクセスポイントの何れかの前記通信可能エリア内に存在するように、複数の前記搬送車の位置を制御すると好適である。
【0063】
固定式アクセスポイント及び移動式アクセスポイントにより、制御装置と各搬送車とをつなぐ通信ネットワークが構築されているため、各搬送車が固定式アクセスポイント及び自車以外の移動式アクセスポイントの何れかの通信エリア内に存在すれば、各搬送車と制御装置との通信が可能となる。従って、制御装置により各搬送車の位置が上記のように制御されることにで、全ての搬送車が通信ネットワークを介して制御装置と通信可能な状態を維持し易い。
【0064】
また、前記制御装置は、前記固定式アクセスポイントの前記通信可能エリアと複数の前記移動式アクセスポイントの前記通信可能エリアとにより、前記走行経路の全体で通信経路が確保されるように、前記移動式アクセスポイントが搭載された複数の前記搬送車の行き先を指定する分散配置制御を行うと好適である。
【0065】
本構成によれば、走行経路の全体で常に通信経路が確保されるべく、移動式アクセスポイントの位置が分散するように、搬送車の行き先が指定される。従って、常に何れかのアクセスポイントと走行経路を走行する搬送車が制御装置と通信可能となり、制御装置と搬送車とが通信できない事態の発生を低減できる。
【0066】
また、前記制御装置は、複数の前記搬送車のうちの1つとの通信不良が生じた場合には、当該通信不良が生じた前記搬送車を通信不良搬送車として、前記制御装置と前記通信不良搬送車との通信経路を形成可能な位置に、前記移動式アクセスポイントが搭載された前記搬送車を移動させるように、当該搬送車の行き先を指定すると好適である。
【0067】
通信不良搬送車が発生した場合、それに起因して通信経路の途絶が生じることが考えられる。制御装置は、通信ができている搬送車の位置と、通信不良車の最後に確認できた位置との関係から、途絶したと想定される通信経路の位置を特定することができる。本構成によれば、制御装置が、当該途絶したと想定される通信経路を再形成可能な位置に、移動式アクセスポイントを配置することにより、途絶したと想定される通信経路を再形成させることができる。これにより、通信不良搬送車と制御装置との間の通信を確保して、通信不良を解消させることができる。
【0068】
また、前記移動式アクセスポイントが搭載された複数の前記搬送車のうち、前記物品の搬送のためのタスクを割り当て済みの前記搬送車を実働搬送車とし、前記タスクを割り当てていない前記搬送車を待機搬送車として、前記制御装置は、前記実働搬送車の移動により、前記固定式アクセスポイントの前記通信可能エリアと複数の前記移動式アクセスポイントの前記通信可能エリアとにカバーされていないエリアである非カバーエリアが生じる場合には、前記非カバーエリアを前記待機搬送車に搭載された前記移動式アクセスポイントの前記通信可能エリアによりカバーするように、前記待機搬送車の行き先を指定すると好適である。
【0069】
移動式アクセスポイントとして機能する搬送車が、実働搬送車として物品搬送のために移動すると、非カバーエリアが生じる可能性がある。本構成によれば、非カバーエリアが生じた場合、或いは生じると予想される場合に、当該非カバーエリアをカバーするように待機搬送車に搭載された移動式アクセスポイントが配置される。これにより、非カバーエリアが生じる可能性を低減できるため、走行経路を走行する搬送車が制御装置と通信できない事態が生じる可能性を低減できる。
【0070】
また、前記の構成において、前記制御装置は、前記待機搬送車を移動させることにより、前記非カバーエリアとは別の前記非カバーエリアである第2非カバーエリアが生じないことを条件として、前記待機搬送車の行き先を指定すると好適である。
【0071】
この構成によれば、待機搬送車を非カバーエリアにおける通信経路を形成させるために移動させることで、新たな非カバーエリアが生じる事態を回避しながら、物品搬送設備の全体をカバーできるように移動アクセスポイントを配置することができる。
【0072】
また、複数の前記搬送車には、前記移動式アクセスポイントが搭載されたアクセスポイント搭載搬送車と、前記移動式アクセスポイントが搭載されていないアクセスポイント非搭載搬送車とが含まれ、前記制御装置は、前記アクセスポイント搭載搬送車よりも優先して、前記アクセスポイント非搭載搬送車に前記物品の搬送のためのタスクを割り当てると好適である。
【0073】
物品搬送設備において搬送車の主たる用途は物品を搬送することである。この構成によれば、アクセスポイント非搭載搬送車に比べて、アクセスポイント搭載搬送車が物品を搬送する機会が少なくなるので、移動する機会も低くなる。従って、移動式アクセスポイントが移動することによって、通信ネットワークにおいて制御装置と搬送車との通信経路が途絶する可能性を低減することができ、良好な通信環境を維持し易い。
【0074】
また、前記制御装置は、前記走行経路の全体を複数の管理エリアに分割し、複数の前記管理エリアのそれぞれに、前記移動式アクセスポイントが搭載された少なくとも1台の前記搬送車を管理搬送車として設定し、前記管理搬送車を、設定した前記管理エリア内のみで移動させると好適である。
【0075】
本構成によれば、管理搬送車により常にそれぞれの管理エリア内における通信環境を良好な状態に維持しておくことができる。従って、通信ネットワークにおいて制御装置と搬送車との通信経路が途絶する可能性を低減することができ、良好な通信環境を維持し易い。
【符号の説明】
【0076】
7 :固定式アクセスポイント
10 :走行経路
17 :移動式アクセスポイント
30 :搬送車
30a :アクセスポイント搭載搬送車
30f :通信不良搬送車
30k :管理搬送車
30s :待機搬送車
30w :実働搬送車
50 :設備制御装置(制御装置)
100 :物品搬送設備
E :通信可能エリア
F :非カバーエリア
K :管理エリア