(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】制振装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20241112BHJP
F16F 15/073 20060101ALI20241112BHJP
E04B 1/98 20060101ALI20241112BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
F16F15/02 C
F16F15/073
E04B1/98 A
E04H9/02 341C
E04H9/02 341D
E04H9/02 341E
(21)【出願番号】P 2022096661
(22)【出願日】2022-06-15
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】杉田 朋哉
(72)【発明者】
【氏名】小林 礼奈
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-228686(JP,A)
【文献】特開昭47-040814(JP,A)
【文献】特表平10-504088(JP,A)
【文献】特開平06-240924(JP,A)
【文献】特開2013-170698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/02
F16F 15/073
E04B 1/98
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物
において、ウェブと前記ウェブに設けられるフランジとを有する骨組部材に設置される制振装置であって、
板ばねと、前記板ばねに設けられる錘と、前記板ばねの第1部位を支持する第1支持部と、前記板ばねの第2部位を支持する第2支持部と、前記板ばねの振動を減衰させる減衰部と、を備え、
前記錘は、前記板ばねにおいて前記第1支持部によって支持される前記第1部位と前記第2支持部によって支持される前記第2部位との間の中間部に配置さ
れ、
前記第1支持部および前記第2支持部は、前記フランジを挟持する挟持部を有する、
制振装置。
【請求項2】
前記板ばねにおいて前記第1部位の位置および前記第2部位の位置が変更可能であるように、前記第1支持部および前記第2支持部は、前記骨組部材に対して移動可能に固定される、
請求項1に記載の制振装置。
【請求項3】
前記錘は、前記板ばねに固定される主錘と、前記主錘に取り付けられる調整錘とを、備え、
前記主錘は、前記調整錘が取り付けられる複数の取付部を有する
請求項1に記載の制振装置。
【請求項4】
前記板ばねは、前記錘が前記板ばねに取り付けられていない状態で、前記板ばねの中間部が前記板ばねの両端よりも上に位置するように湾曲する、
請求項1に記載の制振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建築物の制振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の床の揺れを抑制する制振装置が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の制振装置は、台座に端部が固定された板ばねと、板ばねに設けられる錘と、板ばねを支持するダンパーと、移動可能な支点と、を有する。支点は、板ばねの端部と錘取付部との間の所定部分を支持する。板ばねに対して支点の位置を変更することによって、制振装置の固有振動数が調整される。この技術では、支点の位置の変更を可能とするために、板ばねの端部が固定される。特許文献2には、薄型の制振装置が開示されている。特許文献2の技術によれば、制振装置は、薄型であるが、オフィスのOAフロア等の下部スペースに置く構造を有し、梁に設置することまたは下階天井から設置または調整することは想定されていない。また、特許文献2の制振装置は、固有振動数を調整するための構造が複雑である。特許文献3には、アーム材の両端それぞれに取り付けられる質量体を有する制振装置が開示されている。2個の質量体それぞれが減衰材を介して梁のフランジに繋がり、質量体の位置調整ごとに減衰材の脱着が必要であるため、固有振動数の調整に手間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-240924号公報
【文献】特開2006-342879号公報
【文献】特開2008-286262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、従来の制振装置は、固有振動数および減衰力の調整が難しいものであったり、または、水平方向に大型化したりするといった問題がある。このように、従来構造において、小型化と、固有振動数および減衰力の調整の行い易さとは、両立し難い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記課題を解決する建築物の制振装置は、建築物の骨組部材に設置される制振装置であって、板ばねと、前記板ばねに設けられる錘と、前記板ばねの第1部位を支持する第1支持部と、前記板ばねの第2部位を支持する第2支持部と、前記板ばねの振動を減衰させる減衰部と、を備え、前記錘は、前記板ばねにおいて前記第1支持部によって支持される前記第1部位と前記第2支持部によって支持される前記第2部位との間の中間部に配置される。
【0006】
上記構成によれば、錘は、第1部位と第2部位との間に配置される。板ばねは2点で支持される。このような構造によって、制振装置を小型化し易く、かつ、固有振動数および減衰力を調整し易くできる。
【0007】
(2)上記(1)に記載の制振装置において、前記板ばねにおいて前記第1部位の位置および前記第2部位の位置が変更可能であるように、前記第1支持部および前記第2支持部は、前記骨組部材に対して移動可能に固定される。
【0008】
この構成によれば、錘から第1部位までの距離、および、錘から第2部位までの距離を容易に変更できる。このため、制振装置の固有周波数を簡単に調整できる。
【0009】
(3)上記(1)または(2)に記載の制振装置において、前記錘は、前記板ばねに固定される主錘と、前記主錘に取り付けられる調整錘とを、備え、前記主錘は、前記調整錘が取り付けられる複数の取付部を有する。
【0010】
この構成によれば、板ばねに設けられる錘の重さを容易に変更できる。このため、制振装置の固有周波数を簡単に調整できる。
【0011】
(4)上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の制振装置において、前記板ばねは、前記錘が前記板ばねに取り付けられていない状態で、前記板ばねの中間部が前記板ばねの両端よりも上に位置するように湾曲する。
【0012】
この構成によれば、錘が取り付けられた状態において、板ばねの湾曲が小さくなる。このため、板ばねと第1支持部との接触部に生じる摩擦力、および、板ばねと第2支持部との接触部に生じる摩擦力が、小さくなる。その上、減衰材の設定時に第1支持部または第2支持部を移動させても、錘の位置は上下方向に大きく変位せず、減衰材に初期せん断変形が生じ難いため、減衰材の性能を安定して発揮させることができる。このため、調整時における固有振動数および制振効果が安定し、固有振動数および減衰力の調整が容易になる。
【0013】
(5)上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の制振装置において、前記骨組部材は、ウェブと、前記ウェブに設けられるフランジと、を有する部材であり、前記第1支持部および前記第2支持部は、前記フランジを挟持する挟持部を有する。
【0014】
この構成によれば、第1支持部および第2支持部を骨組部材に簡単に固定できる。また、制振装置を骨組部材に固定するにあたり、骨組部材へのボルト孔開け加工またはスチフナ取付け加工を必要としない。このため、既存の建築物への設置が容易である。
【発明の効果】
【0015】
本開示の制振装置は、建築物の骨組部材に設置するときの組立てが行い易い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】制振装置が設置された建築物の模式図である。
【
図2】第1実施形態に係る制振装置の正面図である。
【
図3】
図2の3-3線に沿う制振装置の断面図である。
【
図4】
図3の4-4線に沿う制振装置の断面図である。
【
図5】
図3の5-5線に沿う制振装置の断面図である。
【
図6】
図3の6-6線に沿う制振装置の断面図である。
【
図12】上下方向に引き延ばされた、板ばねの模式図である。
【
図15】制振装置の設置方法について、第1手順における制振装置の設置状態の模式図である。
【
図16】制振装置の設置方法について、第2手順における制振装置の設置状態の模式図である。
【
図17】制振装置の設置方法について、第3手順において減衰材が取り付けられた板ばねユニットの背面図である。
【
図18】制振装置の設置方法について、第4手順における制振装置の設置状態の模式図である。
【
図19】制振装置の設置方法について、第5手順における制振装置の設置状態の模式図である。
【
図20】制振装置の設置方法について、第6手順における制振装置の設置状態の模式図である。
【
図21】制振装置の設置方法について、第7手順における制振装置の設置状態の模式図である。
【
図22】制振装置の第1配置例を示す建築物の模式図である。
【
図23】制振装置の第2配置例を示す建築物の模式図である。
【
図24】第2実施形態に係る制振装置について、板ばねユニットの正面図である。
【
図25】第2実施形態に係る制振装置について、上主錘の平面図である。
【
図26】第3実施形態に係る制振装置について、板ばねの模式図である。
【
図29】板ばねユニットおよび第3調整錘の変形例の斜視図である。
【
図30】第1支持部の固定手段の変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
図1~
図23を参照して、第1実施形態に係る制振装置10を説明する。
【0018】
<制振装置>
制振装置10は建築物1の骨組部材2に設置される。建築物1の例として、住宅、一戸建てのオフィス、および、医療施設が挙げられる。本実施形態では、住宅を例に挙げる。制振装置10は、床の揺れを抑制する目的で骨組部材2に設置される。例えば、制振装置10は、建築物1内で人が移動することに伴って床が揺れ出すことを抑制し、または、床の揺れが共振によって大きくなることを抑制する。また、制振装置10は、地震または建築物外部の振動に起因する床の揺れを抑制する。建築物外部の振動の例として、大型車両が通過することに起因する振動、建築工事または建築物解体工事中に生じる振動等が挙げられる。主目的として、制振装置10は、骨組部材2の固有振動数付近の振動および共振を抑制する。制振装置10は、様々な寸法の骨組部材2に設置される。このため、制振装置10は、各種の骨組部材2の固有振動数付近の振動および共振を抑制できるように、制振装置10自体の固有振動数および減衰力を調整するための調整構造を有する。調整構造の1つは、調整錘22によって錘12を調整する構造である。調整構造の他の1つは、錘12と支点(第1支点PAおよび第2支点PB)との間の距離を調整する構造である。
【0019】
図1に示されるように、制振装置10は、骨組部材2に取り付けられる。制振装置10は、水平に配置される骨組部材2に取り付けられる。一例では、制振装置10は、2階以上の階の床に配置される骨組部材2に取り付けられる。骨組部材2は、梁3または桁4を含む。例えば、制振装置10は、フランジを有する骨組部材2に取り付けられる。骨組部材2は、ウェブ5と、ウェブ5に設けられるフランジと、を有する。骨組部材2の一例は、H形鋼である。制振装置10が設置される骨組部材2は、I形鋼または王形断面鋼材であってもよい。I形鋼の場合、I形鋼の上端および下端にフランジが取り付けられ、フランジ間に制振装置10が取り付けられる。王形断面は、Eを180度回転させた文字とEとを結合した形を示す。王形断面鋼材は、断面視において、H形鋼において上フランジと下フランジとの間に中間フランジが設けられた鋼材を示す。王形断面鋼材では、上フランジと中間フランジとの間、または、中間フランジと下フランジとの間に制振装置10が取り付けられる。
【0020】
図2に示されるように、制振装置10は、骨組部材2において上フランジ6Aと下フランジ6Bとの間に配置される。一例では、制振装置10は、骨組部材2において中間部に配置される。骨組部材2には、複数の制振装置10が設置されてもよい。
【0021】
例えば、
図3に示されるように、制振装置10は、上から見て骨組部材2のウェブ5の両側に配置される。1個の骨組部材2に設置される複数の制振装置10それぞれは、同じ固有振動数を有してもよい。1個の骨組部材2に設置される複数の制振装置10それぞれは、異なる固有振動数を有してもよい。複数の制振装置10それぞれは、異なる減衰力を有してもよいし、同じ減衰力を有してもよい。減衰力は、錘12および減衰材15Aによって調整される。
【0022】
図4、
図5および
図6に示されるように、制振装置10は、板ばね11と、板ばね11に設けられる錘12と、第1支持部13と、第2支持部14と、板ばね11の振動を減衰させる減衰部15と、を備える。制振装置10の説明において、制振装置10における正面は、縦方向DYから見た面を示す。縦方向DYは、板ばね11の長手に沿う横方向DXと上下方向DZとに直交する方向と定義される。
【0023】
<減衰部>
図5に示されるように、減衰部15は、骨組部材2と制振装置10の錘12との間に配置される。減衰部15は、骨組部材2と制振装置10の錘12との両者に接続される。一例では、減衰部15は、1または複数の減衰材15Aを有する。減衰材15Aは粘弾性部材によって構成される。具体的には、減衰材15Aは、ゴム、エラストマー、または、プラスチック樹脂によって構成される。減衰材15Aの大きさおよび厚さ、減衰材15Aの素材、並びに、減衰材15Aの個数は、設計予定の減衰力に応じて設定される。また、設置地域の環境に応じて減衰材15Aの素材が設定されてもよい。また、減衰材15Aの大きさおよび厚さ、減衰材15Aの素材、並びに、減衰材15Aの個数は、減衰力の調整時に変更されてもよい。減衰部15は、振動エネルギーを吸収する。減衰部15は、磁気ダンパーによって構成されてもよい。
【0024】
一例では、減衰部15は、骨組部材2のウェブ5と主錘21との間に配置される。減衰部15の第1面は、骨組部材2のウェブ5に接続される。減衰部15の第1面と反対側の第2面は、制振装置10の主錘21に接続される。
【0025】
<錘>
図4に示されるように、制振装置10が設置された状態において、錘12は、第1支点PAと第2支点PBとの間の中間部に配置される。第1支点PAおよび第2支点PBは、板ばね11を支持する点である。第1支点PAは、第1支持部13において板ばね11に接触する部位である。第2支点PBは、第2支持部14において板ばね11に接触する部位である。
【0026】
図7に示されるように、錘12は、板ばね11に固定される主錘21と、主錘21に取り付けられる調整錘22とを、備える。調整錘22は、重さが異なる複数種の調整錘22を含む。例えば、調整錘22は、第1調整錘23と、第2調整錘24と、第3調整錘25とを含む。一例では、第3調整錘25は、第1調整錘23よりも軽く、かつ、第2調整錘24よりも軽い。第3調整錘25として、厚みの違いによって重さが異なる複数種の第3調整錘25が用意されてもよい。
【0027】
<板ばねユニット>
図7を参照して、板ばねユニット18および調整錘22について説明する。
図7において、図の見易さを考慮して、板ばね11は2点鎖線で示される。本実施形態では、主錘21を有する板ばね11を「板ばねユニット18」という。主錘21は、板ばね11の中間部11Cに設けられる。中間部11Cは、板ばね11の両端から等距離にある部位を含む。主錘21は、錘本体26と、調整錘22が取り付けられる複数の取付部27と、を有する。一例では、取付部27は、第1取付部28と、第2取付部29とを有する。
【0028】
図7に示されるように、調整錘22は、ボルト30によって板ばねユニット18の主錘21に取り付けられる。具体的には、調整錘22は、第1取付部28または第2取付部29を介して主錘21に着脱可能に取り付けられる。調整錘22の取り付け個数の調整によって、板ばね11の設けられる錘12の重さが調整される。
【0029】
図8に示されるように、第1取付部28は、錘本体26の下に設けられる。第1取付部28は、調整錘22が収容される構造を有する。第1取付部28は、錘本体26の下面から離れたところに位置する底部31と、底部31を支持する2個の側部32とを有する。側部32は、錘本体26の側面から下に延びる。側部32には、ボルト30が挿通する側部貫通孔33が設けられる(
図7参照)。第1取付部28は、正面に開口する開口部34を有する。第1取付部28には、第1調整錘23が取り付けられる。第1調整錘23の側面には、ねじ孔23Aが設けられる(
図7参照)。第1調整錘23は、開口部34から第1取付部28に入れられる。第1調整錘23は、側部貫通孔33を通るボルト30によって第1取付部28の側部32に固定される。
【0030】
図9および
図10に示されるように、第2取付部29は、錘本体26の上に突出する。第2取付部29は、板材によって構成される。第2取付部29は、錘本体26の上面に固定される。第2取付部29は、ボルト30が挿通する複数の貫通孔35を有する。第2取付部29には、第2調整錘24が取り付けられる。第2調整錘24は、ボルト30が挿通するねじ孔24Aを有する(
図7参照)。第2調整錘24は、ボルト30によって第2取付部29に固定される。例えば、第2取付部29を間に挟むように2個の第2調整錘24が配置される。一方の第2調整錘24のねじ孔24Aと、第2取付部29の貫通孔35と、他方の第2調整錘24のねじ孔24Aと、を通るようにボルト30が挿し込まれる。これによって、2個の第2調整錘24が第2取付部29に固定される。
【0031】
第1取付部28の側部32には、1または複数の第3調整錘25が取り付けられてもよい。第3調整錘25は、ボルト30が挿通する貫通孔25Aを有する。第3調整錘25は、第1取付部28の側部32の外面に接触するように配置される(
図2参照)。第3調整錘25の貫通孔25Aと、側部貫通孔33と、第1調整錘23のねじ孔23Aとを通るようにボルト30が挿し込まれる。これによって、第3調整錘25が第1取付部28の側部32に固定される。
【0032】
一例では、ボルト30は、手または簡単な工具によって回し易い構造を有する。例えば、ボルト30として、蝶ボルトまたは六角穴付きボルトが使われる。このようなボルト30を用いることによって、手作業で簡単に建築物1の梁3に制振装置10に設置できる。
【0033】
<板ばね>
図11に示されるように、板ばね11は、錘12が板ばね11に取り付けられていない状態で、中間部11Cが板ばね11の両端よりも上に位置するように湾曲する。板ばねユニット18においても、板ばね11の中間部11Cは、板ばね11の両端よりも上に位置する。
【0034】
図12は、板ばね11の一例を示す。
図12には、板ばね11の半分が示されている。
図12に示される板ばね11の図は、折り曲げが分かるように、上下方向DZに引き延ばした板ばね11の模式図である。
図12に示されるように、例えば、板ばね11は、両端部それぞれにおいて4か所の折り曲げによって湾曲するように構成される。4か所の折り曲げの角度Aは、中間部11Cから端部に向かうほど大きい。板ばね11の折り曲げの箇所は、板ばね11の左右それぞれにおいて3カ所以下であってもよい。例えば、板ばね11は、左右それぞれの1か所の折り曲げによって湾曲するように構成されてもよい。このような折り曲げ加工によれば、ロールによる折り曲げに比べて寸法のばらつきを少なくできる。
【0035】
板ばね11は、下方に突出する下方突出部を有してもよい。下方突出部は、板ばね11の両端それぞれに設けられる。下方突出部は、板ばね11が第1支持部13および第2支持部14によって支持された支持状態において、板ばね11の端部が第1支持部13または第2支持部14から外れることを抑制する。
【0036】
一例では、
図13に示されるように、板ばね11は、主錘21を貫通するように配置され、かつ、ボルト36によって主錘21に固定される。板ばね11と主錘21との結合方法はこれに限定されない。例えば、板ばね11は、溶接によって主錘21に固定されてもよい。
【0037】
<第1支持部および第2支持部>
第1支持部13は、板ばね11の第1部位11Aを支持する。第2支持部14は、板ばね11の第2部位11Bを支持する。第2部位11Bは、第1部位11Aから離れた別の部位である。板ばね11は、第1支持部13および第2支持部14によって支持される。第1支持部13は第1支点PAを有する。第2支持部14は第2支点PBを有する。
【0038】
板ばね11において第1部位11Aの位置および第2部位11Bの位置が変更可能であるように、第1支持部13および第2支持部14は、骨組部材2に対して移動可能に固定される。すなわち、板ばね11に対して第1支点PAおよび第2支点PBの位置は変更され得る。また、第1支持部13および第2支持部14は、フランジを挟持する挟持部16を有する。
【0039】
<第1支持部>
図14を参照して、第1支持部13を説明する。第2支持部14は、第1支持部13と同じ構造を有するため、第2支持部14の説明は省略される。以下の説明において、第1支持部13が骨組部材2に取り付けられた状態を「取付状態」という。
【0040】
第1支持部13は、支持本体部41と、上固定部42と、下固定部43とを備える。支持本体部41は、下板部46と、背板部47と、上板部48と、縦板部49と、腕部50と、を備える。下板部46は、下フランジ6Bに接触するように構成される。下板部46は、第1支持部13の取付状態においてウェブ5の近くに位置する内端46Aと、内端46Aと反対側の外端46Bとを有する。下板部46の外端46Bは、第1支持部13の取付状態において、下フランジ6Bの端の近くに配置される。
【0041】
上板部48は、下板部46に対向するように間隔をあけて下板部46の上に配置される。上板部48は、第1支持部13の取付状態においてウェブ5の近くに位置する内端48Aと、内端48Aと反対側の外端48Bとを有する。上板部48の外端48Bは、第1支持部13の取付状態において、上フランジ6Aの端の近くに配置される。上板部48は、第1支持部13の取付状態において、間隔をあけて上フランジ6Aの下に配置される(
図4参照)。
【0042】
背板部47は、上板部48と下板部46との間に配置されて上板部48と下板部46とを繋ぐ。背板部47は、第1支持部13の取付状態においてウェブ5に平行に配置される。一例では、背板部47は、下板部46の内端46Aと上板部48の内端48Aとを繋ぐ。
【0043】
縦板部49は、上板部48と下板部46との間に配置されて上板部48と下板部46とを繋ぐ。縦板部49は、背板部47に繋がる。縦板部49は、背板部47に直交し、かつ、上板部48および下板部46に直交する。縦板部49は、板ばね11が挿通するスリット49Aを有する。スリット49Aは、第1支持部13の取付状態において水平に延びる。スリット49Aは、縦板部49において上下方向DZの中間部に設けられる。スリット49Aは、縦板部49を貫通する。縦板部49は切欠部49Bを有する。切欠部49Bは、上板部48の下およびスリット49Aの上に設けられる。
【0044】
腕部50は、下固定部43を支持する。腕部50は、下板部46の外端46Bから下に延びる下垂部51と、下垂部51の下端から突出する内方突出部52とを有する。内方突出部52は、第1支持部13の取付状態において、間隔をあけて下フランジ6Bの下に位置するように、構成される。
【0045】
上固定部42は、支持本体部41の上板部48を上フランジ6Aに固定する。上固定部42は、第1固定ボルト55を有する。第1固定ボルト55は、手または簡単な工具によって回し易い構造を有する。例えば、第1固定ボルト55として、蝶ボルト、または、レバー付きのボルトが挙げられる。第1固定ボルト55は、上板部48に設けられるねじ孔48Cに下から挿通する。第1支持部13の取付状態において、第1固定ボルト55の先端部は上フランジ6Aに接触する。第1固定ボルト55の締め付けによって、第1支持部13の上部が上フランジ6Aに固定される。
【0046】
第1固定ボルト55の中間部分には、第1固定ボルト55の緩みを防止するための第1固定ナット57が配置される。第1固定ナット57の一例は蝶ナットである。第1固定ナット57は、第1固定ボルト55が締め付けられた状態で、上板部48の下面を押すように締められる(
図6参照)。
【0047】
下固定部43は、支持本体部41の下板部46を下フランジ6Bに固定する。下固定部43は、第2固定ボルト56を有する。第2固定ボルト56は、手または簡単な工具によって構造を有する。例えば、第2固定ボルト56として、蝶ボルト、または、レバー付きのボルトが挙げられる。
【0048】
第2固定ボルト56は、腕部50の内方突出部52に設けられるねじ孔52Aに下から挿通する。第1支持部13の取付状態において、第2固定ボルト56の先端部は下フランジ6Bに接触する。
【0049】
第1支持部13は、挟持部16を含む。挟持部16は、下フランジ6Bを挟持する。本実施形態では、挟持部16は、下板部46と、腕部50と、第2固定ボルト56とを備える。下板部46と第2固定ボルト56とが下フランジ6Bを挟むことによって、第1支持部13は下フランジ6Bに固定される。また、第2固定ボルト56の締め付けに起因する軸力によって、第1支持部13の下部は下フランジ6Bに強固に固定される。
【0050】
第2固定ボルト56の中間部分には、第2固定ボルト56の緩みを防止するための第2固定ナット58が配置される。第2固定ナット58の一例は蝶ナットである。第2固定ナット58は、第2固定ボルト56が締め付けられた状態で、内方突出部52の上面を押すように締められる。
【0051】
支持本体部41は、上固定部42と下固定部43とによって、骨組部材2に対して移動可能に骨組部材2に取り付けられる。一例では、支持本体部41は、1個の上固定部42と、2個の下固定部43とによって骨組部材2に取り付けられる。他の例では、支持本体部41は、2個の上固定部42と、1個の下固定部43とによって骨組部材2に取り付けられる。このように、支持本体部41は、3点接触によって骨組部材2に取り付けられる。これによって、支持本体部41は、ぐらつきがない安定した状態で骨組部材2に固定される。
【0052】
<制振装置の設置>
図15~
図21を参照して、制振装置10の設置方法について説明する。ここでは、既存の建築物1において、2階の床下の梁3に制振装置10が設置される例を説明する。なお、建築中の建築物1に制振装置10が設置される場合、天井7に作業開口部8を開ける作業は省略される。制振装置10の設置方法は、第1手順から第7手順を含む。
【0053】
図15に示されるように、第1手順において、1階の天井7に作業開口部8を形成する。作業開口部8は、梁3の下に設けられる。作業開口部8は、制振装置10の構成要素を挿入できる大きさに形成される。
【0054】
図16に示されるように、第2手順において、第1支持部13および第2支持部14を作業開口部8から床下空間Sに入れる。そして、第1支持部13および第2支持部14を梁3に固定する。第1支持部13および第2支持部14の固定位置は、後述する第4および第5手順における第1支持部13および第2支持部14に板ばねユニット18を設置しやすい位置とする。
【0055】
次に、
図17に示されるように、第3手順において減衰材15Aを板ばねユニット18の主錘21に取り付ける。例えば、両面テープまたは接着剤によって板ばねユニット18の主錘21の錘本体26の背面においてウェブ5に向かい合う面に減衰材15Aを取り付ける。また、後述する第7手順において梁3のウェブ5に接続する減衰材15Aの接着面にも、予め両面テープまたは接着剤を取り付けておく。減衰材15Aの取り付け作業は、第1手順の前に行われてもよいし、第2手順の前に行われてもよい。
【0056】
次に、
図18に示されるように、第4手順において、斜めにして板ばねユニット18を作業開口部8から床下空間Sに入れる。例えば、板ばね11の一方の端部を先に床下空間Sに入れ、その端部を第1支持部13の切欠部49Bに配置した上で、板ばねユニット18を押し込む。
【0057】
そして、
図19に示されるように、第5手順において、床下空間Sに後に入れられる板ばね11の端部を第2支持部14のスリット49Aに挿し込み、次いで、床下空間Sに先に入れられた板ばね11の端部を第1支持部13のスリット49Aに挿し込む。そして、第1支持部13、第2支持部14および板ばねユニット18を所定の位置に移動し、第1支持部13および第2支持部14を梁3に固定する。板ばねユニット18の主錘21と第1支持部13との距離と、主錘21と第2支持部14との距離とは等しい。また、第1支持部13と第2支持部14との間の間隔は予め設定されており、蓄積データに基づいて設定されてもよい。蓄積データは、第1支点PAと第2支点PBとの間の支点間距離と、錘12の重さと、減衰材15Aのせん断剛性および減衰性能と、梁3の固有振動数と減衰効果とをまとめたデータである。
【0058】
次に、
図20に示されるように、第6手順において、板ばねユニット18に調整錘22を取り付ける。板ばねユニット18に取り付けられる調整錘22は、蓄積データに基づいて予め設定されている。
【0059】
次に、
図21に示されるように、第7手順において、板ばねユニット18を梁3のウェブ5に近づく方向DAに押し込むことにより主錘21を減衰材15Aを介して梁3のウェブ5に接続する。例えば、板ばねユニット18の主錘21の減衰部15を梁3のウェブ5に、第3手順において減衰材15Aに取り付けられた両面テープによって接着する。
【0060】
この後、床の振動テストを行ってもよい。振動テストの結果に基づいて、板ばねユニット18に取り付ける調整錘22を増減してもよい。このときに、減衰材15Aを変更してもよいし、減衰材15Aの大きさを調整してもよい。また、第1支持部13と第2支持部14との間の間隔を変更してもよい。これら調整作業によって、床の振動の周波数のピークが十分に低減されるように制振装置10の固有振動数の調整が行われる。また、固有振動数およびその周辺の振動数における減衰力の調整が行われる。
【0061】
<制振装置の配置>
図22および
図23を参照して、制振装置10の配置の例を説明する。
図22に示されるように、一例では、制振装置10は、桁4と桁4とを連結する大梁3Aに設置される。
【0062】
1個の大梁3Aに2個の制振装置10が取り付けられてもよい。桁4と桁4との間に複数の大梁3Aが設けられている場合、複数の大梁3Aそれぞれに制振装置10が取り付けられてもよい。複数の大梁3Aそれぞれに設置される制振装置10の固有振動数は異ならせてもよい。これによって、床において、ピークが異なる複数の固有振動数を低減できる。また、減衰材15Aの温度特性によって制振装置10の特性が変わる場合、または、温度によって床の固有振動数が変動する場合にも、複数種の制振装置10が設けられることによって、減衰効果を発揮させることができる。なお、1個の制振装置10を用いる場合に比べて、固有振動数が異なる複数種の制振装置10を用いる場合のほうが、振動低減効果が高いことが知られている(日本機械学会論文集「多重吸振器の最適設計法」(1996年9月、62巻601号)参照)。
【0063】
図23に示されるように、張出部9を有する建築物1において、建築物本体1Aから張出部9に亘って延びる大梁3A、および、張出部9の桁4に制振装置10が設置される。一例では、1個の桁4に複数の制振装置10が設置される。制振装置10は、桁4において大梁3Aと大梁3Aとの間に設置される。複数の制振装置10は、桁4の長手方向に並べられる。複数の大梁3Aそれぞれに設置される制振装置10の固有振動数は異ならせてもよい。このように、建築物1本体から張出部9に亘って延びる大梁3A、および、張出部9の桁4に制振装置10を取り付けられることによって、床および張出部9の振動を効果的に抑制できる。
【0064】
制振装置10は、小梁3Bに設けられてもよい。小梁3Bは、大梁3Aと大梁3Aとの間に設けられ、これら2個の大梁3Aを連結する。一例では、幾つかの小梁3Bそれぞれに制振装置10が設けられ、さらに、幾つかの大梁3Aそれぞれに制振装置10が設けられる。
【0065】
本実施形態の作用を説明する。
制振装置10の設置作業は、脚立に跨って行われる作業であり、作業者の負担が大きい。また、既存の建築物1において、制振装置10を設置する場合、天井7にあけた作業開口部8から設置作業を行う必要がある。この場合、作業者は上を向いて設置を行う必要があり、作業負担が大きい。また、制振装置10の設置後、制振装置10の固有振動数を調整する場合がある。このような場合でも、作業者は、上を向いて調整を行う必要があり、作業負担が大きい。
【0066】
本実施形態では、制振装置10は、板ばね11と、板ばね11に設けられる錘12と、第1支持部13と、第2支持部14と、板ばね11の振動を減衰させる減衰部15と、を備える。このように、制振装置10は、板ばね11を2つの支持部で支持する構造を有するため、板状の錘を有する制振装置10に比べて、平面視で小型化できる。また、構造がシンプルであるため、設置し易いといったメリットがある。また、板ばね11と第1支持部13と第2支持部14とは、互いに独立構造体であるため、個別に持ち上げることが可能である。このように、制振装置10の設置において、作業者の負担を軽減できる。また、制振装置10の錘12は、第1支持部13によって支持される第1部位11Aと、第2支持部14によって支持される第2部位11Bとの間の中間部に配置される。第1支持部13および第2支持部14の位置を変更するだけで簡単に制振装置10の固有振動数を調整できる。このため、設置後の固有振動数の調整が行い易く作業者の負担を軽減できる。
【0067】
本実施形態では、板ばね11は、梁3に直接または間接的に固定されない構造を有する。板ばね11は、第1支持部13および第2支持部14によって支持される。板ばね11の一方の端部は、第1支持部13に載せられる。板ばね11の他方の端部は、第2支持部14に載せられる。制振装置10の設置において、このように板ばね11の端部を固定する作業がない。このため、作業者の負担が軽減する。
【0068】
また、制振装置10は、複数の構成要素に分割されている。具体的には、制振装置10は、構成要素として、板ばね11を含む板ばねユニット18と、第1支持部13と、第2支持部14と、調整錘22とを備える。構成要素の個々の重さは、一体になっている制振装置10に比べて軽く、かつ、小さい。各構成要素は、個別に作業開口部8から床下空間Sに入れることができる。また、構成要素は、軽くかつ小さいため、取り扱い易く、作業者の負担を軽減する。また、構成要素は、重機または工具を用いずとも、手動で骨組部材2に取り付けることができる。この点でも作業者の作業負担が軽減される。また、構成要素は小さいため、作業開口部8の開口の大きさを小さくできる。これによって居住空間における天井デザインが損なわれることが抑制される。
【0069】
本実施形態の効果を説明する。
(1)制振装置10は、板ばね11と、板ばね11に設けられる錘12と、第1支持部13と、第2支持部14と、板ばね11の振動を減衰させる減衰部15と、を備える。錘12は、板ばね11において第1支持部13によって支持される第1部位11Aと第2支持部14によって支持される第2部位11Bとの間の中間部に配置される。
【0070】
この構成によれば、錘12は、第1部位11Aと第2部位11Bとの間に配置される。このように、板ばね11は2点で支持される。このような構造によって、平面視での面としての大きさを制限できる。この点で、板状の錘を有する装置に比べて、制振装置10を小型化できる。また、制振装置10の錘12は、第1支持部13によって支持される第1部位11Aと、第2支持部14によって支持される第2部位11Bとの間の中間部に配置される。このため、第1支持部13および第2支持部14の位置を変更するだけで簡単に制振装置10の固有振動数および減衰力を調整できる。このように、制振装置10は小型化し易く、かつ、制振装置10の設置後において固有振動数および減衰力を調整し易い。
【0071】
従来の1支点構造の制振装置では、支点位置の変更に基づいて固有振動数を変更することを実現するために、支点とは別の部分で板ばねが固定される。このため、従来の1点支持構造の制振装置の構造は複雑化している。この点、本実施形態の制振装置10は、2点支持構造であるため、板ばね11の固定構造を有しない。このため、1支点構造に比べて、構造がシンプルである。
【0072】
(2)板ばね11において第1部位11Aの位置および第2部位11Bの位置が変更可能であるように、第1支持部13および第2支持部14は、骨組部材2に対して移動可能に固定される。
【0073】
この構成によれば、錘12から第1部位11Aまでの距離、および、錘12から第2部位11Bまでの距離を容易に変更できる。すなわち、錘12から第1支点PAまでの距離、および、錘12から第2支点PBまでの距離を容易に変更できる。このため、制振装置10の固有周波数を簡単に調整できる。例えば、第1支持部13および第2支持部14の位置調整によって、床の揺れ具合に応じて制振装置10の固有振動数を調整できる。また、床の揺れが小さくなるように、第1支持部13および第2支持部14の位置を調整するといった調整作業も簡単にできる。
【0074】
(3)錘12は、板ばね11に固定される主錘21と、主錘21に取り付けられる調整錘22とを、備える。主錘21は、調整錘22が取り付けられる複数の取付部27を有する。
【0075】
この構成によれば、板ばね11に設けられる錘12の重さを容易に変更できる。このため、制振装置10の固有周波数を簡単に調整できる。例えば、錘12の重さの調整によって、床の揺れ具合に応じて制振装置10の固有振動数を調整できる。また、床の揺れが小さくなるように錘12の重さを調整するといった調整作業も簡単にできる。
【0076】
(4)板ばね11は、錘12が板ばね11に取り付けられていない状態で、板ばね11の中間部11Cが板ばね11の両端よりも上に位置するように湾曲する。なお、錘12が板ばね11に取り付けられていない状態とは、板ばね11から主錘21および調整錘22がともに取り外された板ばね11の状態を示す。この構成によれば、錘12が取り付けられた状態において、板ばね11の湾曲が小さくなる。このため、板ばね11と第1支持部13との接触部に生じる摩擦力、および、板ばね11と第2支持部14との接触部に生じる摩擦力が、小さくなる。その上、減衰材15Aの設定時に第1支持部13または第2支持部14を移動させても、錘12の位置は上下方向DZに大きく変位せず、減衰材15Aに初期せん断変形が生じ難いため、減衰材15Aの性能を安定して発揮させることができる。このため、調整時における固有振動数および制振効果が安定し、制振装置10の固有振動数および減衰力の調整が容易になる。
【0077】
(5)骨組部材2は、ウェブ5と、ウェブ5に設けられるフランジと、を有する部材である。第1支持部13および第2支持部14はフランジを挟持する挟持部16を有する。この構成によれば、第1支持部13および第2支持部14を骨組部材2に簡単に固定できる。
【0078】
<第2実施形態>
図24および
図25を参照して、第2実施形態に係る制振装置10を説明する。本実施形態の制振装置10において第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0079】
本実施形態の制振装置10では、板ばねユニット18の主錘21が2個に分割される。主錘21は、上主錘121と、上主錘121の下に配置される下主錘122とを備える。板ばね11は、上主錘121と下主錘122との間に配置される。上主錘121と板ばね11と下主錘122とは、ボルト123によって締結される。上主錘121には、ボルト123が挿通する貫通孔121Aが設けられる。貫通孔121Aには、ボルト123の頭部が配置される凹部121Gが設けられる。板ばね11には、ボルト123が挿通する貫通孔が設けられる。下主錘122には、ボルト123が係合するねじ孔122Aが設けられる。
【0080】
上主錘121の下面121Bおよび側面121Cとの間には、第1C面121Dが設けられる。このように、上主錘121の角部121Eが鈍角に構成される。角部121Eは、さらに曲面に構成されてもよい。
【0081】
下主錘122の上面122Bおよび側面122Cとの間には、第2C面122Dが設けられる。このように、下主錘122の角部122Eが鈍角に構成される。角部122Eは、さらに曲面に構成されてもよい。下主錘122には、第1実施形態に示される第1取付部28が設けられる。
【0082】
上主錘121には、調整錘22が取り付けられる取付部27として、第3取付部129が設けられる。第3取付部129は、第1実施形態における第2取付部29に替わるものである。第3取付部129には、第2調整錘24が取り付けられる。
【0083】
第3取付部129は、上主錘121の側面121Cに設けられる。第3取付部129は、側面121Cから横方向DXに延びる基部129Aと、基部129Aから上に延びる突出部129Bを有する。突出部129Bは、上主錘121の上面121Fよりも上まで延びる。突出部129Bにはボルト30が挿通する貫通孔129Cが設けられる。
【0084】
本実施形態によれば、板ばね11の横方向DXの全長に対し主錘21の横方向DXの全長を大きくとり、主錘21の重さを大きくすることができる。そのため、制振装置10の制振効果を高めることができる。また、第3取付部129が上主錘121の側面121Cから突出することによって第2調整錘24をウェブ5側に設置する際に突出部129Bよりも高く持ち上げることなく第3取付部129の突出部129Bの間を通して設置できる。このため、作業者の負担が軽減する。
【0085】
建築物1の振動の大小に関わらず、各種の振動に起因して板ばね11が振動する。板ばね11が振動すると、板ばね11において上主錘121の角部121Eが接触する部分に力が集中し、その力と摩擦とによって板ばね11の根元が劣化する虞がある。同様に、板ばね11が振動すると、板ばね11において下主錘122の角部122Eが接触する部分に力が集中し、その力と摩擦とによって板ばね11の根元が劣化する虞がある。この点、上記のように、上主錘121には第1C面121Dが設けられる。下主錘122には第2C面122Dが設けられる。このため、板ばね11において上主錘121の角部121Eが接触する部分における摩耗および力の集中が低減される。板ばね11において下主錘122の角部122Eが接触する部分における摩耗および力の集中が低減される。
【0086】
<第3実施形態>
図26を参照して、第3実施形態に係る制振装置10を説明する。本実施形態の制振装置10において第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図26では、調整錘22は省略されている。
【0087】
図26は、板ばね11の湾曲構造の一例を示す。
板ばね11において、主錘21から出ている部分の正面視の形状は、次の式(1)を満たすように構成される。
【0088】
y=(W×x3)/(6×E×I)・・・(1)
【0089】
x軸およびy軸の原点は、板ばね11の固定端PFである。固定端PFは、主錘21に固定される部分における最外端に位置する。固定端PFは、主錘21から出ている部分における自由端PGの反対側の端である。Wは、主錘21および各種の調整錘22の総重量(N)である。Eは、板ばね11のヤング係数(N/mm2)である。Iは、板ばね11の断面2次モーメント(mm4)である。
【0090】
式(1)の形状の板ばね11を有する板ばねユニット18によれば、板ばね11において、主錘21から出ている部分のいずれの位置に支点をおいたとしても、板ばね11が概ねフラットにすることができる。このため、固有振動数の調整および減衰力の調整のときに、第1支持部13および第2支持部14を移動させて支点の位置を変更する場合でも、板ばね11の曲率または湾曲度が変化し難い。このようなことから、板ばね11の湾曲の変化を気にすることなく、固有振動数の調整作業および減衰力の調整作業を円滑に行うことができる。
【0091】
<変形例>
上記実施形態は、制振装置10が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。制振装置10は、上記実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、省略した形態、または、実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に実施形態の変形例を示す。
【0092】
(1)
図27および
図28を参照して、第1支持部13および第2支持部14の変形例を説明する。第2支持部14の構造は、第1支持部13と同じ構造を有するため、第2支持部14についての説明を省略する。
【0093】
第1支持部13は、板ばねユニット18の位置を調整する位置調整部130を有する。位置調整部130は、板ばね11を押す押圧部131と、押圧部131を支持する押圧支持部132とを備える。押圧部131は、ボルト133と、ボルト133を固定するためのナット134とを備える。押圧支持部132は、支持本体部41に設けられる。押圧支持部132は、支持本体部41におけるスリット49Aの端の近くに設けられる。押圧支持部132は、板ばね11に沿うように、支持本体部41から制振装置10の中央に向かって横方向DXに突出する。押圧支持部132には、ボルト133が係合するねじ孔132Aが設けられる。ボルト133は、ねじ孔132Aに係合した状態で、ボルト133がねじ込まれることによって、ボルト133の端部が板ばね11の正面側の端面に接触するように配置される。
【0094】
位置調整部130は、制振装置10の設置の第7手順において使用される。第1実施形態では、手で板ばね11を押すことで、板ばねユニット18の主錘21を減衰材15Aを介して梁3のウェブ5に接続する。これに対して、本実施形態では、位置調整部130のボルト133を回転させることによって板ばねユニット18を移動させる。板ばねユニット18を移動させるとき、第1支持部13の位置調整部130のボルト133と第2支持部14の位置調整部130のボルト133とを同時にまたは交互に同じ回転数だけ回す。板ばねユニット18の主錘21が減衰材15Aを介して梁3のウェブ5に接続された後、ボルト133が板ばね11から離れるようにボルト133を回してもよい。
【0095】
位置調整部130を使用することによって、横方向DXにおいて減衰材15Aを均等に押すことができる。これによって、減衰材15Aにおいて梁3に対して不十分な接着部分を少なくするとともに、減衰材15Aの厚み方向における初期の偏心応力を生じにくくすることで、減衰材15Aの性能低下を小さくできる。
【0096】
(2)
図29を参照して、第1実施形態に示される第3調整錘25の変形例を説明する。第1実施形態では、第3調整錘25は、ボルト30が挿通する貫通孔25Aを有する。これに対して、変形例にかかる第3調整錘125は、ボルト30が挿通するスリット125Aを有する。この場合、ボルト30を板ばねユニット18に取り付けた状態で、スリット125Aにボルト30が挿し込まれるように、第3調整錘125を板ばねユニット18に取り付けることができる。板ばねユニット18に第3調整錘125を配置した後、ボルト30を締め付ける。
【0097】
板ばねユニット18を床下空間Sに配置した後でボルト30を板ばねユニット18にねじ入れる作業は困難を伴う。この点、上記構成によれば、板ばねユニット18にボルト30を取り付けた後に第3調整錘125を取り付けることができるため、板ばねユニット18を床下空間Sに入れる前に、板ばねユニット18にボルト30を取り付けることができる。このため、制振装置10の設置作業における作業者の負担を軽減できる。
【0098】
(3)
図30を参照して、制振装置10の変形例を示す。
図30は、変形例について、
図3の6-6線に沿う線と同じ線で切った、制振装置10の断面図である。第1支持部13および第2支持部14の固定手段は、実施形態に示される例に限定されない。実施形態では、第2固定ボルト56によって第1支持部13の下板部46が下フランジ6Bに固定される。これに対して、変形例では、第1支持部13は、万力80によって下フランジ6Bに固定される。第2支持部14も第1支持部13と同様に万力80によって下フランジ6Bに固定される。万力80は、挟持部16の一例である。
【0099】
本明細書には以下の技術を開示する。
[付記1]
建築物の骨組部材に設置される制振装置であって、板ばねと、前記板ばねに設けられる錘と、前記板ばねの第1部位を支持する第1支持部と、前記板ばねの第2部位を支持する第2支持部と、前記板ばねの振動を減衰させる減衰部と、を備え、前記錘は、前記板ばねにおいて前記第1支持部によって支持される前記第1部位と前記第2支持部によって支持される前記第2部位との間の中間部に配置される、制振装置。
【0100】
[付記2]
前記板ばねにおいて前記第1部位の位置および前記第2部位の位置が変更可能であるように、前記第1支持部および前記第2支持部は、前記骨組部材に対して移動可能に固定される、付記1に記載の制振装置。
【0101】
[付記3]
前記錘は、前記板ばねに固定される主錘と、前記主錘に取り付けられる調整錘とを、備え、前記主錘は、前記調整錘が取り付けられる複数の取付部を有する、付記1に記載の制振装置。
【0102】
[付記4]
前記板ばねは、前記錘が前記板ばねに取り付けられていない状態で、前記板ばねの中間部が前記板ばねの両端よりも上に位置するように湾曲する、付記1に記載の制振装置。
【0103】
[付記5]
前記骨組部材は、ウェブと、前記ウェブに設けられるフランジと、を有する部材であり、前記第1支持部および前記第2支持部は、前記フランジを挟持する挟持部を有する、付記1に記載の制振装置。
【符号の説明】
【0104】
PA…第1支点、PB…第2支点、1…建築物、2…骨組部材、5…ウェブ、10…制振装置、11…板ばね、11A…第1部位、11B…第2部位、11C…中間部、12…錘、13…第1支持部、14…第2支持部、15…減衰部、16…挟持部、21…主錘、22…調整錘、27…取付部。