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特許7586149外装部材、電子時計及び外装部材の製造方法
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  • 特許-外装部材、電子時計及び外装部材の製造方法 図1
  • 特許-外装部材、電子時計及び外装部材の製造方法 図2
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  • 特許-外装部材、電子時計及び外装部材の製造方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】外装部材、電子時計及び外装部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G04B 37/22 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
G04B37/22 Z
G04B37/22 Q
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022126728
(22)【出願日】2022-08-09
(65)【公開番号】P2024024134
(43)【公開日】2024-02-22
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】天野 正男
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-162545(JP,A)
【文献】特開平10-259487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶粒径が互いに異なる構成材料が複数の領域に区分されている表面を有する外装部材であって、
前記外装部材は環状形状を有し、
前記複数の領域の境界は、前記環状形状の周方向に沿って延在し、波形部分を含む曲線部分を有する外装部材。
【請求項2】
結晶粒径が互いに異なる構成材料が複数の領域に区分されている表面を有し、
前記複数の領域のうち第一の領域は、第一の金属材料により形成された領域であり、前記第一の領域とは異なる第二の領域は、前記第一の金属材料とは異なる第二の金属材料により形成された領域である外装部材。
【請求項3】
前記第一の金属材料は64チタン合金であり、前記第二の金属材料は純チタンである請求項記載の外装部材。
【請求項4】
前記複数の領域上に当該複数の領域を視認可能な被膜を有する請求項1又は2記載の外装部材。
【請求項5】
請求項1又は2記載の外装部材としてのベゼルを備える電子時計。
【請求項6】
上面側から見た場合の第一の領域において、上下方向に延在する柱状構造を第一の構成材料により形成する工程、
上面側から見た場合の前記柱状構造の空隙部分である第二の領域において、前記第一の構成材料とは変態温度の異なる第二の構成材料の粉粒体を前記空隙部分に充填する工程、
熱間等方圧加圧法により前記第二の構成材料を結合させて前記柱状構造に固着させる工程、
前記第一の構成材料の変態温度と前記第二の構成材料の変態温度との間の温度で加熱して、前記第一の構成材料と前記第二の構成材料とを異なる結晶成長率で結晶成長させる工程、
を含む外装部材の製造方法。
【請求項7】
前記柱状構造は、3Dプリンタによって形成される請求項記載の外装部材の製造方法。
【請求項8】
前記上面に、イオンプレーティングにより前記第一の領域と前記第二の領域とを視認可能な厚さで被膜を形成する工程を含む請求項記載の外装部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、外装部材、電子時計及び外装部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型の電子機器では、外装部材において携帯に適したサイズや形状の中で機能性とデザイン性との両立が要求される。従来、高級感を出すことのできる部材としてチタンやチタン合金などのチタン材が利用されている。しかしながら、チタン材には表面硬度が低いものが含まれ、使用に応じて傷が付いたり光沢感が低下したりして経年劣化しやすい。
【0003】
チタン材のデザイン性を損なわずに表面を硬化させる技術として、特許文献1には、チタン材の表面に酸素又は酸素及び窒素が拡散して固溶された硬化層を形成し、最外層のチタン酸化層を十分に薄くすることで、干渉縞の発生や濁りなどを抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/128160号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、表面の状態が単調になり、多様性に乏しいという課題があった。
【0006】
この発明の目的は、より表面の多様性を広げることのできる外装部材、電子時計及び外装部材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明における第一の態様の外装部材は、
結晶粒径が互いに異なる構成材料が複数の領域に区分されている表面を有する外装部材であって、
前記外装部材は環状形状を有し、
前記複数の領域の境界は、前記環状形状の周方向に沿って延在し、波形部分を含む曲線部分を有する。
また、上記目的を達成するため、本発明における第二の態様の外装部材は、
結晶粒径が互いに異なる構成材料が複数の領域に区分されている表面を有し、
前記複数の領域のうち第一の領域は、第一の金属材料により形成された領域であり、前記第一の領域とは異なる第二の領域は、前記第一の金属材料とは異なる第二の金属材料により形成された領域である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従うと、外装部材の表面の多様性をより広げることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の外装部材の一例の全体斜視図である。
図2】外装部材の製造手順を示すフローチャートである。
図3】製造途中の状態を模式的に示す断面斜視図である。
図4】製造途中の状態を模式的に示す断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の外装部材1の一例の全体斜視図である。
外装部材1は、電子時計(電子腕時計)の上面周縁部や側面に沿って取り付けられるもの(ベゼル)であって略環状形状を有する。
【0011】
外装部材1の上面形状は、デザイン及び機能に応じて凹凸を有する。外装部材1の外縁は、平面視で凹凸を有する。外縁の凹部のうち少なくとも一部は、例えば、電子腕時計の側面に位置する押しボタンスイッチの平面視位置に対応している。また、外縁の凸部のうち一部には、高さ方向に窪んだ凹部11が位置する。凹部11は、ねじ止めのための孔部Hを有する。外装部材1の上面(本実施形態において上面は、電子時計に取り付けられるときに当該電子時計の表示面の上方から平面視して視認可能な面を意味しており、単一の平面には限られない)は、少なくとも内側から外側に向けてそれぞれ傾斜した形状部分を有している。
【0012】
外装部材1は、上面に見え方の異なる複数の領域、例えば、第一の領域R1と第二の領域R2とを有する。第一の領域R1は、平坦度合の高い(表面粗さの小さい)領域である。したがって、第一の領域R1では、光が鏡面反射されやすい。第二の領域R2は、第一の領域R1と比較して表面粗さの大きいマット状の表面を有する。したがって、第二の領域R2では、第一の領域R1よりも光が拡散反射しやすい。
【0013】
第一の領域R1と第二の領域R2とは、明確に区分されている。ここでは、第一の領域R1と第二の領域R2との境界は、曲線部分を有し、例えば、外装部材1の周方向に対して垂直方向に波状に振れながら(波形部分)周方向に沿って略環状に延在している。ここでいう曲線部分は、ユーザが曲線と視認できる範囲で微小な直線が折れ曲がってつながっているものを含んでもよい。境界は、複数列あってもよい。境界は、波の振れ幅と外装部材1の幅とに応じて部分的に外装部材1からはみ出して途切れていてもよい。また、境界は、途中で分岐、集合してもよい。すなわち、第二の領域R2は、周囲が第一の領域R1に囲まれて孤立した領域を含んでいてもよい。波状の振れ方は、規則的である必要はなく、デザインに応じて任意に定められてよい。第一の領域R1と第二の領域R2との間には、明確な高さ方向の差異(段差)はない。
【0014】
第一の領域R1の構成材料と第二の領域R2の構成材料とは異なる。例えば、第一の領域R1の構成材料は、64チタン合金(第一の構成材料、第一の金属材料;質量分率で6%のアルミニウムと4%のバナジウムが含まれるチタン合金)である。第二の領域R2の構成材料は、例えば、純チタン(第二の構成材料、第二の金属材料)である。第一の領域R1よりも第二の領域R2においてより結晶が成長して、結晶粒径が大きい(互いに異なる)ことにより、第二の領域R2の表面粗さが大きくなっている。その結果、第一の領域R1と第二の領域R2とでは、見え方に違いが生じる。
【0015】
次に、本実施形態の外装部材1の製造方法について説明する。
外装部材1は、第一の領域R1又は第二の領域R2のうち一方、ここでは第一の領域R1が形成された後に第二の領域R2が追加形成される。その後、両方の領域をまとめて加熱して結晶成長させる。
【0016】
結晶成長において、純チタンの変態温度よりも64チタン合金の変態温度の方が高い(変態温度が異なる)。したがって、これら2つの変態温度の間の温度で純チタンと64チタン合金とを加熱処理すると、これらの間で結晶の成長速度に顕著な差が生じる。すなわち、純チタンの第二の領域R2において顕著に結晶が成長する。これにより、第二の領域R2では、選択的に表面粗さが増す。
【0017】
図2は、外装部材1の製造手順を示すフローチャートである。
図3及び図4は、製造途中の状態を模式的に示す断面斜視図である。ここでは説明のため、外装部材1の1つ分の厚さの範囲の更に約1/4を切断した断面が示されている。
【0018】
工程P1では、純チタンの粉末(粉粒体。サイズは加工に適切なものが適宜用いられればよい。以下に同じ)と64チタン合金の粉末がそれぞれ用意され、まず、64チタン合金の粉末を用いて3Dプリンタにより平面視した場合の第一の領域R1において、柱状部分R1a(柱状構造)を含む円筒構造物S1が形成される。図3(a)に示すように、形成された円筒構造物S1では、柱状部分R1aは上下方向に延在する。平面視した場合の第二の領域R2は、柱状部分R1aの間に残る孔部状の隙間V2(空隙)となっている。この円筒構造物S1は、実際には高さ方向に外装部材1よりも十分に長く、後に高さ方向について一定の間隔で輪切りにして各々切削などにより整形することで、複数の外装部材1が得られる。なお、輪切りにされる厚さの同一の環状構造物を複数形成して積層することで円筒構造物S1が形成されてもよい。
【0019】
工程P2では、図3(b)に示すように、平面視した場合の第二の領域R2において、隙間V2に純チタン(Ti)の粉末が充填される。工程P3では、純チタン粉末が充填された円筒構造物S1が、熱間等方圧加圧法(HIP法;Hot Isostatic Pressing)により加圧及び加熱処理される。この処理では、純チタン粉末が一体化(結合)して円筒構造物S1に固着する。このとき、純チタン粉末の粒子間に存在した隙間などに応じて全体が収縮して、円筒構造物S1が一回り小さくなる。したがって、工程P1で形成される円筒構造物S1のサイズは、最終的な外装部材1のサイズよりも収縮分だけ大きく定められ、純チタン粉末の充填量も予め定められる。HIP処理を行う装置は、周知のものであってもよい。
【0020】
工程P4では、64チタン合金と純チタンとが領域を隔てて固着した円筒構造物S1が温度を定めて加熱処理される。この加熱処理では、加熱温度は、純チタンの変態温度と64チタン合金の変態温度との間の温度に定められる。これにより、変態温度が加熱温度よりも低い純チタンは、変態温度が加熱温度よりも高い64チタン合金よりも速く結晶の成長が進む(結晶成長率が高い)。その結果、図3(c)に示すように、純チタンの領域R2bはマット状になり、拡散反射がしやすくなる。64チタン合金は、結晶の成長が遅く、純チタンの結晶粒径が適宜なサイズになった状態での結晶粒径が純チタンの結晶粒径よりも小さい。加熱温度が上記範囲内で適宜変更設定されることで、両部材の結晶成長速度の差が変化する。したがって、64チタン合金の領域R1bにおける所望の光反射状態と、64チタン合金の領域R1bと純チタンの領域R2bとの所望の差異の大きさとに応じて加熱温度が調整されてもよい。
【0021】
工程P5では、64チタン合金の領域R1bと純チタンの領域R2bとが得られた円筒構造物S1が高さ方向について一定の間隔で輪切りにされて、複数の環状部材が得られる。輪切りの間隔(環状部材の高さ)は、外装部材1の高さより若干大きい程度であればよい。
【0022】
工程P6では、環状部材が切削及び研磨されて、外装部材の外形状が得られる。図4(a)に示すように、柱状の64チタン合金の領域R1b及び純チタンの領域R2bによる模様は、切削後も平面視で維持されて、外装部材の上面に第一の領域R1及び第二の領域R2が現れる。また、領域R1bと領域R2bとの位置関係及び外装部材の外形状に応じて、外装部材の側面(環状の内縁側や外縁側)にも模様が露出され得る。
【0023】
工程P7では、工程P5、P6などの処理で荒れた表面が適宜な温度に加熱されて各成分が再結晶化される。
【0024】
工程P8では、工程P7で再結晶化された後の表面を化学(エッチング)処理して外装部材の表面を溶解させる。この処理により、外装部材の表面の結晶模様を浮かび上がらせる。
【0025】
工程P9では、IP(イオンプレーティング)により表面が被膜(硬化膜)で被覆保護される。被膜は、各種チタン系のものである。図4(b)に示すように、被膜は、当該被膜を通して第一の領域R1及び第二の領域R2を視認可能な程度に薄く形成される。IP処理には周知の技術、例えば、AIP(アーク反応IP)処理などが用いられればよい。以上により、外装部材1が得られる。外装部材1は、電子時計の本体に対して孔部Hを貫通させたねじにより固定される。
【0026】
以上のように、本実施形態の外装部材1は、結晶粒径が互いに異なる構成材料が複数の領域(第一の領域R1及び第二の領域R2)に区分されている表面を有する。複数の構成材料が表面に区分されて露出して模様を生じることで、外装部材1は、機能性を維持したままその表面の多様性を広げることができる。これにより、外装部材1及び当該外装部材1が取り付けられる電子時計のデザインの幅を広げることができる。
【0027】
また、複数の領域の境界は、曲線部分を含む。これにより、外装部材1のデザインがより幅広く定められる。特に、芸術性の高いデザインなどを取り入れた外装部材1を得ることができる。
【0028】
また、外装部材1は環状形状を有し、複数の領域の境界は、環状形状の周方向に沿って延在し、曲線部分は波形部分を含んでいてもよい。このように境界を定めることにより周期的なデザインを組み込みやすく、外装部材1は、環状構造に適合した模様を得ることができる。
【0029】
また、複数の領域のうち第一の領域R1は、第一の金属材料(64チタン合金)により形成された領域であり、第一の領域R1とは異なる第二の領域R2は、第一の金属材料とは異なる第二の金属材料(純チタン)により形成された領域であってもよい。このように、金属結晶により、結晶の接蝶に応じて外装部材1の表面の鏡面度合を適切に調整することができるので、外装部材1をデザイン上美しい仕上がりにしやすい。
【0030】
また、第一の金属材料は64チタン合金であり、第二の金属材料は純チタンであってもよい。変態温度が異なるが類似した材質の2種類を組み合わせることで、外装部材1の形成や機能維、持が容易である。また、この外装部材1では、デザインが派手にならないようにしやすい。
【0031】
また、外装部材1は、複数の領域上にこれら複数の領域を視認可能な厚さの被膜を有していてもよい。チタンなどは経時的に損傷劣化しやすいので、外装部材1が被膜を有することで、より長期間安定して模様及び機能を維持することができる。
【0032】
また、電子時計が上記外装部材1としてのベゼルを備えることで、電子時計の雰囲気を多様に定めることができる。また、外装部材1だけで電子時計の高級感などを容易に得ることができる。
【0033】
また、本実施形態の外装部材1の製造方法は、上面側から見て第一の領域R1の形状部分を有し上下方向に延在する柱状部分R1aを第一の構成材料により形成する工程、柱状部分R1aの隙間V2のうち上面側から見て第二の領域の形状部分に、第一の構成材料とは変態温度の異なる第二の構成材料の粉末などを充填する工程、HIP処理により第二の構成材料を結合させて柱状部分R1aに固着させる工程、第一の構成材料の変態温度と第二の構成材料の変態温度との間の温度で加熱して、第一の構成材料と第二の構成材料とを異なる結晶成長率で結晶成長させる工程、を含む。このように結晶成長率の異なる材料及び条件で2種類の材質の結晶を成長させて、最終的に結晶粒径を異ならせることで、結晶成長率の高い部分をマット状に変化させる。このような製造方法によれば、柱状部分R1aさえ得られれば、その先の処理は容易に行われ得るので、デザインの幅を得ることができる。また、反射状態の差により模様を描出させるので、外装部材1の模様が派手にならず、電子時計の表示画面に対して存在感を主張し過ぎないようにしやすい。
【0034】
また、柱状部分R1aは、3Dプリンタによって形成されてもよい。これにより第一の領域R1が複雑であっても精度よく形成可能となるので、細かく精緻な模様を得ることができる。特に、従来複数の領域の境界をデザイン設計した通りに曲線状で量産するのは難しく、ましてや、当該境界を単一平面ではない上面に露出させて模様として利用するのは難しかった。3Dプリンタを利用することにより、曲線形状の境界を有する模様を上面に露出させることが可能となる。
【0035】
また、外装部材1の製造方法は、上面に、イオンプレーティングにより第一の領域R1と第二の領域R2とを視認可能な厚さの被膜を形成する工程を含んでもよい。これにより、デザインの可視性を保ちつつ、外装部材1の表面を保護し、経時的な劣化や損傷を抑えることができる。
【0036】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、2種類の構成材料として純チタン及び64チタン合金の組み合わせを例に挙げて説明したが、これに限られない。上記の加工が可能な材質であればよく、このような構成材料としては、例えば、コバリオン(登録商標)、ステンレス(SUS)、ジルコニウムなどが挙げられる。コバリオンは、加熱処理(工程P4)において結晶成長がほぼ進まず、かつエッチング(工程P8)でもほぼ溶解しない。したがって、コバリオンの領域は、64チタン合金の領域に比して、より鏡面性が高く、すなわち、光の鏡面反射の度合が高い。コバリオンと結晶成長が進む構成材料とを組み合わせることで、純チタンと64チタン合金との組み合わせに比して両領域のコントラストがより大きく明確になる。
【0037】
また、上記実施の形態では、64チタン合金の柱状構造の空隙に純チタンの粉末を充填してHIP処理を行ったが、逆であってもよい。すなわち、純チタンの柱状構造の空隙に64チタン合金の粉末が充填されてもよい。
【0038】
また、空隙に充填される微小な部材を粉末として説明したが、HIP処理による固着、結合が可能なサイズの範囲であれば粒体であってもよい。
【0039】
また、外装部材1における第一の領域R1と第二の領域R2との境界は、外装部材1の環状形状の周方向に主に沿った波状形状でなくてもよい。例えば、境界は、直線部分や折れ曲がり部分を有していてもよい。また、外装部材1は、円形状、楕円形状、方形状などの閉じた形状を主とする境界を有していてもよい。
【0040】
また、上記実施の形態では、外装部材1の上面は、2種類の領域の組み合わせであるものとして説明したが、3種類以上の領域の組み合わせであってもよい。この場合、例えば、2種類目以降の材質同士が接しないのであれば、互いに離隔された異なる空隙に各々別個の構成材料の粉末などを充填することができる。これにより、外装部材は、上記2種類の領域を有する外装部材1と同じように形成される。その結果、複数の第二の構成材料による互いに異なる結晶粒径を有する複数種類の第2の領域を有する外装部材1が得られる。
【0041】
また、柱状部分R1aは3Dプリンタにより形成されたものではなくてもよい。
【0042】
また、被膜の形成はIP以外の方法で行われてもよい。また、耐久性の高い材質が用いられている場合には、必ずしも被膜が形成されなくてもよい。また、被膜は、光透過性であって第一の領域R1と第二の領域R2が視認可能であれば、完全に透明ではなくてもよい。すなわち、被膜により上面が若干着色されてもよい。
【0043】
また、外装部材1が取り付けられる対象である電子時計は、その種別を問わない。また、電子時計は、スマートウォッチなどの多機能端末であってもよい。あるいは、電子時計ではなく他の携帯型の電子機器などであってもよい。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成、構造及びその製造方法などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
【0045】
[付記]
<請求項1>
結晶粒径が互いに異なる構成材料が複数の領域に区分されている表面を有する外装部材。
<請求項2>
前記複数の領域の境界は、曲線部分を含む請求項1記載の外装部材。
<請求項3>
当該外装部材は環状形状を有し、
前記境界は、前記環状形状の周方向に沿って延在し、前記曲線部分は波形部分を含む請求項2記載の外装部材。
<請求項4>
前記複数の領域のうち第一の領域は、第一の金属材料により形成された領域であり、前記第一の領域とは異なる第二の領域は、前記第一の金属材料とは異なる第二の金属材料により形成された領域である請求項1記載の外装部材。
<請求項5>
前記第一の金属材料は64チタン合金であり、前記第二の金属材料は純チタンである請求項4記載の外装部材。
<請求項6>
前記複数の領域上に当該複数の領域を視認可能な被膜を有する請求項1記載の外装部材。
<請求項7>
請求項1~6のいずれか一項に記載の外装部材としてのベゼルを備える電子時計。
<請求項8>
上面側から見た場合の第一の領域において、上下方向に延在する柱状構造を第一の構成材料により形成する工程、
上面側から見た場合の前記柱状構造の空隙部分である第二の領域において、前記第一の構成材料とは変態温度の異なる第二の構成材料の粉粒体を前記空隙部分に充填する工程、
熱間等方圧加圧法により前記第二の構成材料を結合させて前記柱状構造に固着させる工程、
前記第一の構成材料の変態温度と前記第二の構成材料の変態温度との間の温度で加熱して、前記第一の構成材料と前記第二の構成材料とを異なる結晶成長率で結晶成長させる工程、
を含む外装部材の製造方法。
<請求項9>
前記柱状構造は、3Dプリンタによって形成される請求項8記載の外装部材の製造方法。
<請求項10>
前記上面に、イオンプレーティングにより前記第一の領域と前記第二の領域とを視認可能な厚さで被膜を形成する工程を含む請求項9記載の外装部材の製造方法。
【符号の説明】
【0046】
1 外装部材
11 凹部
H 孔部
R1 第一の領域
R1a 柱状部分
R1b 領域
R2 第二の領域
R2b 領域
S1 円筒構造物
V2 隙間
図1
図2
図3
図4