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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】移植装置及び移植方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/08 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
A01G9/08 610
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022127833
(22)【出願日】2022-08-10
(65)【公開番号】P2024024882
(43)【公開日】2024-02-26
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】脇田 裕治
(72)【発明者】
【氏名】山田 尚矢
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-068180(JP,A)
【文献】特開2004-187661(JP,A)
【文献】国際公開第2019/230408(WO,A1)
【文献】特開平08-112038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/00-A01G 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の苗床片を配列状態にして載置可能な載置部と、
前記苗床片を把持可能に構成されると共に、前記載置部上に前記苗床片が載置された場合に当該苗床片により占有される空間域に対する進入及び前記空間域からの退出が可能に構成された把持部材と、
前記空間域に対する進入及び前記空間域からの退出が可能に構成されると共に、前記把持部材が前記空間域内に進入して前記苗床片を把持した状態で当該苗床片を把持した把持位置から移動するときに、前記空間域内における前記把持位置と隣り合う隣接位置に存在する前記苗床片を前記載置部に対して押さえつけ可能に構成された押さえ部材と、を備え
前記押さえ部材は、前記把持部材が苗床片を把持した状態で前記把持位置から移動する前に、前記隣接位置から離れた位置を始点にして前記空間域内を終点とする移動態様で、前記隣接位置に移動して隣接位置に存在する前記苗床片を前記載置部に対して押さえつけるように構成されており、
前記空間域内での前記終点は、鉛直方向をZ方向とした場合において、前記隣接位置に存在する前記苗床片のZ方向における上端と下端との中間の位置よりも下端側の位置であることを特徴とする移植装置。
【請求項2】
前記押さえ部材は、前記隣接位置に存在する前記苗床片を前記載置部に対して押さえつけるとき、点で接触する点接触態様、線で接触する線接触態様及び面で接触する面接触態様のうちの何れかの接触態様により前記苗床片に接触する接触部を有することを特徴とする請求項1に記載の移植装置。
【請求項3】
鉛直方向をZ方向とし、Z方向と直交する方向をX方向とし、Z方向及びX方向の双方と直交する方向をY方向とした場合、
前記載置部は、複数の前記苗床片をX方向及びY方向の二方向に沿う配列状態にして載置可能とされ、
前記把持部材は、前記苗床片を把持した状態で前記把持位置からY方向における一方側である-Y方向側に移動する構成とされ、
前記押さえ部材は、前記隣接位置に対してY方向における前記一方側とは反対の他方側である+Y方向とZ方向における鉛直下方である-Z方向に向けて移動する構成とされたことを特徴とする請求項1又は請求項に記載の移植装置。
【請求項4】
前記空間域内の+Y方向における端部でX方向に沿うように配列された複数の前記苗床片が各々存在する位置のうち少なくともX方向における両端の前記苗床片が存在する前記位置に対する進入及び前記位置からの退出が可能に構成されると共に、前記位置に存在する前記苗床片の前記位置からの変位を抑制可能に構成された端部押さえ機構を備えることを特徴とする請求項に記載の移植装置。
【請求項5】
載置部上に複数の苗床片が配列状態にして載置された場合に当該苗床片により占有される空間域内に、前記苗床片を把持可能に構成された把持部材を進入させ、当該把持部材により移植対象とする前記苗床片を把持させることと、
前記空間域内における前記把持部材が移植対象とする前記苗床片を把持する把持位置と隣り合う隣接位置に押さえ部材を移動させ、当該隣接位置に存在する前記苗床片を前記押さえ部材により前記載置部に対して押さえつけることと、
前記隣接位置に存在する前記苗床片を前記押さえ部材が前記載置部に対して押さえつけた状態において、前記把持部材を当該把持部材が移植対象とする前記苗床片を把持した状態のままで前記把持位置から移動させ、移植対象とする前記苗床片を前記隣接位置に存在する前記苗床片から分離させて移植先に移植することと、を備え
前記押さえ部材は、前記把持部材が苗床片を把持した状態で前記把持位置から移動する前に、前記隣接位置から離れた位置を始点にして前記空間域内を終点とする移動態様で、前記隣接位置に移動して隣接位置に存在する前記苗床片を前記載置部に対して押さえつけるように構成されており、
前記空間域内での前記終点は、鉛直方向をZ方向とした場合において、前記隣接位置に存在する前記苗床片のZ方向における上端と下端との中間の位置よりも下端側の位置であることを特徴とする移植方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の苗を移植する移植装置及び移植方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物の苗を移植する移植装置として、例えば特許文献1に記載の苗の移植装置が知られている。こうした移植装置において二方向に配列している複数の苗床片で構成された苗床から苗床片を分離させるときには、移動可能とされた保持部材が有する一対の把持爪により被移植物である苗床片が把持される。そして、その状態から保持部材が水平方向で苗床から離間する一方側に移動することにより、移植対象の苗床片は苗床から引き千切られるように分離される。なお、その際、苗床から分離される移植対象の苗床片に隣接する隣接苗床片の一方側の側面には、保持部材とは別構成の拘束部材が一方側から当接される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2019/230408号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の移植装置の場合、拘束部材は、隣接苗床片の一方側の側面に対し、ただ単に一方側から当接しているだけである。換言すると、隣接苗床片は、拘束部材に対し、ただ単に他方側から当接しているだけであって格別に移動を規制された状態にある訳ではない。そのため、把持爪により移植対象の苗床片を把持した保持部材が一方側に移動した際、隣接苗床片は、移動する移植対象の苗床片に引っ張られることにより、拘束部材を一方側に回り込んで変位する虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための移植装置及び移植方法の各態様を記載する。
[態様1]
複数の被移植物を配列状態にして載置可能な載置部と、
前記被移植物を把持可能に構成されると共に、前記載置部上に前記被移植物が載置された場合に当該被移植物により占有される空間域に対する進入及び前記空間域からの退出が可能に構成された把持部材と、
前記空間域に対する進入及び前記空間域からの退出が可能に構成されると共に、前記把持部材が前記空間域内に進入して前記被移植物を把持した状態で当該被移植物を把持した把持位置から移動するときに、前記空間域内における前記把持位置と隣り合う隣接位置に存在する前記被移植物を前記載置部に対して押さえつけ可能に構成された押さえ部材と、
を備える移植装置。
【0006】
この構成によれば、例えば被移植物が弾性変形可能な苗床片であって且つ隣接する苗床片同士が切れ目と連結部が交互に連続する境界線で区切られている場合、移植対象の被移植物は次のようにして分離される。すなわち、載置部上に載置された複数の被移植物のうち、移植対象の被移植物は、その被移植物を把持した把持部材が把持位置から移動した際に、把持位置と隣り合う隣接位置に存在する他の被移植物から引き千切られる。そして、その際に隣接位置に存在する被移植物は、載置部に対して押さえ部材により押さえつけられた状態となることで、分離される方向に移動する移植対象の被移植物に共ずれする変位が抑制される。
【0007】
[態様2]
前記把持部材は、前記被移植物を把持した状態で前記把持位置から鉛直方向と交差する一方向における一方側に向けて移動し、前記押さえ部材は、前記隣接位置から離れた位置を始点にして前記隣接位置内を終点とする移動態様で、前記隣接位置に移動する[態様1]に記載の移植装置。
【0008】
この構成によれば、被移植物が弾性変形可能である場合、隣接位置の被移植物は、隣接位置から離れた位置を始点にして隣接位置内を終点とする移動態様で移動する押さえ部材により、隣接位置において載置部に対して押さえつけられる。そのため、隣接位置から離れた位置にある始点から隣接位置内にある終点まで押さえ部材を移動させることで、隣接位置の被移植物を、分離される移植対象の被移植物に共ずれして変位しないようにできる。
【0009】
[態様3]
前記終点は、鉛直方向をZ方向とした場合において、前記隣接位置内のZ方向における上端と下端との中間の位置よりも下端側の位置である[態様2]に記載の移植装置。
【0010】
この構成によれば、押さえ部材は、空間域内の隣接位置における上端と下端との中間の位置よりも下端側の位置を終点とする移動態様で移動することにより、隣接位置に存在する被移植物を載置部に対して押さえつけることができる。
【0011】
[態様4]
前記押さえ部材は、前記隣接位置に存在する前記被移植物を前記載置部に対して押さえつけるとき、点で接触する点接触態様、線で接触する線接触態様及び面で接触する面接触態様のうちの何れかの接触態様により前記被移植物に接触する接触部を有する[態様1]~[態様3]の何れか一つに記載の移植装置。
【0012】
この構成によれば、被移植物に接触する接触部として複数種の接触態様の接触部を採用できるので、設計の自由度が向上する。また、接触部が、一点ではなく複数点で接触する点接触態様、線で接触する線接触態様、面で接触する面接触態様の場合には、被移植物に対する接触部の摩擦係合力が一点での点接触態様の場合よりも、相対的に大きくなる。そのため、そのような摩擦係合力が大きな接触態様の接触部を有する押さえ部材の場合は、被移植物を押さえつける力が向上する。したがって、こうした場合には、移植対象の被移植物を把持した把持部材が把持位置から移動したときに、その移動に伴う引っ張り力により隣接位置に存在する被移植物が回動して変位する虞を低減できる。
【0013】
[態様5]
鉛直方向をZ方向とし、Z方向と直交する方向をX方向とし、Z方向及びX方向の双方と直交する方向をY方向とした場合、
前記載置部は、複数の前記被移植物をX方向及びY方向の二方向に沿う配列状態にして載置可能とされ、
前記把持部材は、前記被移植物を把持した状態で前記把持位置からY方向における一方側である-Y方向側に移動する構成とされ、
前記押さえ部材は、前記隣接位置に対してY方向における前記一方側とは反対の他方側である+Y方向とZ方向における鉛直下方である-Z方向に向けて移動する構成とされた[態様1]~[態様4]の何れか一つに記載の移植装置。
【0014】
この構成によれば、被移植物の上面に被移植物の苗が植え付けられている場合でも、押さえ部材により、被移植物を載置部に対して被移植物の上面の苗に触れずに押さえつけることができる。また、隣接位置に存在する被移植物は、押さえ部材により一方側の側面を押圧されたとき、その一方側の側面が他方側に窪むように弾性変形する。すると、そのように一方側の側面を弾性変形させて隣接位置に存在する被移植物と把持位置に存在する移植対象の被移植物との間には把持部材を一方側から進入可能とする隙間が形成される。したがって、載置部上の把持位置に存在する被移植物と隣接位置に存在する被移植物との間に形成される隙間に把持部材を一方側から進入させることで、移植対象の被移植物を把持部材により把持し易くできる。
【0015】
[態様6]
前記空間域内の+Y方向における端部でX方向に沿うように配列された複数の前記被移植物が各々存在する位置のうち少なくともX方向における両端の前記被移植物が存在する前記位置に対する進入及び前記位置からの退出が可能に構成されると共に、前記位置に存在する前記被移植物の前記位置からの変位を抑制可能に構成された端部押さえ機構を備える[態様5]に記載の移植装置。
【0016】
複数の被移植物がX方向及びY方向に沿う配列状態で隣り合う被移植物から引き千切られて分離される場合、空間域内の+Y方向における端部に位置する被移植物は、それよりも-Y方向側に位置する被移植物に比して共ずれし易い。すなわち、+Y方向における端部に位置する被移植物は、当該被移植物の四方で隣り合う他の被移植物と引き千切り可能な状態でつながる辺の数が、当該被移植物よりも-Y方向側に位置する被移植物に比して少ない。換言すると、+Y方向における端部に位置する被移植物は、当該被移植物に対して+Y方向側でつながる他の被移植物を有していない。そのため、+Y方向における端部に位置する被移植物は、それよりも例えば1つ又は2つだけ-Y方向側に位置する被移植物が把持部材により-Y方向に引っ張られた場合、+Y方向側でのつながりがない分、相対的に共ずれし易くなる。また、+Y方向における端部に位置する被移植物のうちX方向における両端の被移植物の場合は、そうした共ずれをして変位する可能性が更に高い。
【0017】
この点、上記の構成によれば、空間域内の+Y方向における端部でX方向に沿うように配列された複数の被移植物のうち少なくともX方向における両端の被移植物は、それらが存在する位置からの変位が端部押さえ機構により抑制される。そのため、こうした端部押さえ機構の作用により、+Y方向における端部でX方向に沿うように配列された複数の被移植物のうち少なくともX方向における両端の被移植物は、共ずれをして変位するのが抑制される。
【0018】
[態様7]
載置部上に複数の被移植物が配列状態にして載置された場合に当該被移植物により占有される空間域内に、前記被移植物を把持可能に構成された把持部材を進入させ、当該把持部材により移植対象とする前記被移植物を把持させることと、
前記空間域内における前記把持部材が移植対象とする前記被移植物を把持する把持位置と隣り合う隣接位置に押さえ部材を移動させ、当該隣接位置に存在する前記被移植物を前記押さえ部材により前記載置部に対して押さえつけることと、
前記隣接位置に存在する前記被移植物を前記押さえ部材が前記載置部に対して押さえつけた状態において、前記把持部材を当該把持部材が移植対象とする前記被移植物を把持した状態のままで前記把持位置から移動させ、移植対象とする前記被移植物を前記隣接位置に存在する前記被移植物から分離させて移植先に移植することと、
を備える移植方法。
【0019】
この構成によれば、上記[態様1]の移植装置と同様の効果を享受できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、移植対象の被移植物を把持した状態で把持部材が移動した場合に移植対象の被移植物に隣接する被移植物が共ずれして変位するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施形態の移植装置の概略構成を示す斜視図である。
図2】移植装置を図1の場合とは反対方向から示す斜視図である。
図3】苗床支持部の概略構成を示す斜視図である。
図4】苗床の一部を破断して示す平面図である。
図5】苗床支持部と押さえ機構を斜め上方から示す斜視図である。
図6】苗床支持部と押さえ機構を後方側から示す背面図である。
図7】移植装置の電気的構成を示すブロック図である。
図8】押さえ部材が移動時の始点に位置する状態を示す正面図である。
図9図8における9-9線矢視の断面図である。
図10図9の状態から押さえ部材が+Y方向に移動した状態の断面図である。
図11図10における11-11線矢視の正面図である。
図12図11における12-12線矢視の断面図である。
図13図10の状態から押さえ部材が-Z方向に移動した状態の断面図である。
図14図13における14-14線矢視の正面図である。
図15図14における15-15線矢視の断面図である。
図16】把持部材が載置部上の空間域に進入した状態を示す断面図である。
図17図16における17-17線矢視の正面図である。
図18】把持部材が載置部上の苗床から分離した移植対象の苗床片を定植パネルに移植するときの動作を示す側面図である。
図19】苗床片の残り行数が3行になった場合の端部押さえ機構の対応を簡略的に示す平面図である。
図20】苗床片の残り行数が2行になった場合の端部押さえ機構の対応を簡略的に示す平面図である。
図21】苗床片の残り行数が1行半になった場合の端部押さえ機構の対応を簡略的に示す平面図である。
図22】苗床片の残り行数が1行になった場合の端部押さえ機構の対応を簡略的に示す平面図である。
図23】変更例の把持部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、移植装置及び移植方法の一実施形態について、図を参照して説明する。
<全体構成>
図1及び図2に示すように、移植装置11は、被移植物の一例である複数の苗床片Nで構成された苗床12を支持する苗床支持部13と、定植パネル14を支持するパネル支持部15と、を備えている。また、移植装置11は、苗床12から苗床片Nを分離して定植パネル14に移植する移植機構16と、苗床12から苗床片Nが分離される際に当該苗床片Nに隣接する苗床片Nを押さえつけるために駆動される押さえ機構17と、を備えている。なお、移植装置11は、鉛直方向であるZ方向に沿う複数本の柱と、Z方向と直交する左右方向であるX方向とZ方向及びX方向の双方と直交する前後方向であるY方向に沿う複数本の梁とで直方体形状の骨組み構造をなす不図示のフレーム構造体を備えている。そして、このフレーム構造体の内部空間に移植装置11における苗床支持部13、パネル支持部15、移植機構16及び押さえ機構17が設けられている。
【0023】
<苗床支持部>
図3に示すように、苗床支持部13は、移植装置11における不図示のフレーム構造体に水平に支持される方形枠状の固定枠18を備えている。固定枠18における平面視でY方向の中途から前方側となる-Y方向側の領域には、苗床12を構成する複数の苗床片Nを配列状態にして載置可能な矩形皿形状の載置部19が支持されている。苗床片Nの上面における略中央部には、平面視円形の凹部20が形成され、凹部20内には植物の苗21が植え付けられている。なお、図3においては、苗床12を構成する多数の苗床片Nのうちの一部である2つの苗床片Nについてだけ、その上面の凹部20から生育した苗21が上方に延びている状態を図示している。また、図3以外では図面の簡略化のために苗床片Nの上面側における苗21の図示を省略することもある。
【0024】
<端部押さえ機構>
一方、固定枠18における平面視でY方向の中途から後方側となる+Y方向側の領域には、苗床12における最も+Y方向側で且つX方向の両端に位置する苗床片Nを上方から押さえつける際に駆動される端部押さえ機構22が設けられている。端部押さえ機構22は、図3において二点鎖線で示す待機位置と図3において実線で示す押さえ位置との間で回動変位可能に構成された押さえアーム23と、押さえアーム23を回動させるときに駆動される端部押さえモータ24と、を備えている。押さえアーム23は、回動支点となる基端部とは反対側の先端部が側面視でL字状をなすように屈曲形成されている。そして、端部押さえ機構22は、押さえアーム23が待機位置から押さえ位置に回動したときに、その押さえアーム23の先端部で苗床12における最も+Y方向側で且つX方向の両端に位置する苗床片Nを載置部19に対して押さえつけるようになっている。すなわち、端部押さえ機構22は、苗床12における最も+Y方向側で且つX方向の両端に位置する苗床片Nが当該苗床片Nの存在する位置から変位するのを抑制可能に構成されている。
【0025】
<苗床>
図4に示すように、苗床12は、例えばポリウレタンからなる平面視四角形状の弾性変形可能な複数の苗床片Nが行方向及び列方向に並んだ構成をしている。すなわち、苗床12は、複数の行方向及び列方向に延びる境界線25によりマトリックス状に区切られた複数の苗床片Nにより構成されている。この場合、行方向は移植装置11の左右方向であり且つ幅方向でもあるX方向に一致し、列方向は移植装置11の前後方向であり且つ奥行方向でもあるY方向に一致する。本実施形態における苗床12は、一例として、5行12列の配列状態とされた合計60個の苗床片Nで構成されている。
【0026】
境界線25は、隣接する苗床片N同士の間を分離する切れ目26と、隣接する苗床片N同士の間を部分的に連結する連結部27とが、交互に連続した構成をしている。ここで、切れ目26は苗床12において隣接する苗床片N同士の間を上面から下面に至るまで完全に分離している。一方、連結部27は苗床12において隣接する苗床片N同士の間を上面から下面に至るまで鉛直方向であるZ方向の全域に亘って連結している。そして、苗床12から苗床片Nが分離されるときには、その苗床片Nが移植機構16の駆動に伴い隣接する苗床片Nから離れる方向に移動することにより、この連結部27の部分が引きちぎられる。なお、X方向に沿う境界線25とY方向に沿う境界線25とは、切れ目26の部分同士で平面視十字状に交差している。すなわち、苗床片Nは、X方向に沿う境界線25とY方向に沿う境界線25とが平面視十字状に交差する隅角部28の付近では、隣接する他の苗床片Nと連結されていない。
【0027】
<パネル支持部>
図1及び図2に示すように、パネル支持部15は、平面視で矩形状をなすトレイ部材であって、移植装置11における不図示のフレーム構造体に対して水平に支持されている。パネル支持部15は、苗床支持部13の載置部19との位置関係では、載置部19よりもZ方向では-Z方向であって且つY方向では-Y方向となる位置に平面視では載置部19とY方向で対向するように配置されている。そして、このパネル支持部15上に定植パネル14が載置状態で支持されている。
【0028】
<定植パネル>
定植パネル14は、平面視でパネル支持部15とほぼ大きさの矩形板状の部材であり、Z方向に貫通する円形の穴29が複数箇所に形成されている。これらの穴29は、苗床片Nの移植先となるものであり、その穴29の直径は、苗床片Nにおける側面のX方向及びY方向の各寸法よりは若干長く、苗床片Nにおける上面の対角線の長さよりも若干短い。すなわち、弾性変形可能な苗床片Nは、移植機構16の駆動に伴い定植パネル14の穴29内に収縮した状態で挿入された後、その収縮状態から復元したとき、その苗床片Nの各側面が穴29の内周面に対して摩擦係合する。なお、定植パネル14の穴29の直径は、苗床片Nにおける側面のX方向及びY方向の各寸法よりも若干短い構成でもよい。
【0029】
<移植機構>
図1及び図2に示すように、移植機構16は、苗21が植え付けられた苗床片Nを移植する際に苗床片Nを把持するために駆動される移植ハンド30と、移植ハンド30を移動させるハンド移動機構31とを有している。移植ハンド30は、苗床片Nを把持するための閉じ動作及びその反対方向の開き動作が可能に構成された爪片形状をなす一対の把持部材32と、一対の把持部材32に閉じ動作及び開き動作をさせるときに駆動されるアクチュエーター33と、を備えている。
【0030】
<移植ハンド>
移植ハンド30が有する一対の把持部材32は、アクチュエーター33の駆動に基づき図1及び図2に示す開き動作した状態から、苗床片NをX方向の両側から挟んで閉じ動作することにより、被移植物である苗床片Nを把持可能に構成されている。一対の把持部材32は、各々が基端側を支点にして先端側を揺動させることで苗床片Nを把持可能に開閉動作する態様でも、両者が互いにZ方向に沿う平行な態様で向かい合ったままで接近及び離間することにより苗床片Nを把持可能に開閉動作する態様でもよい。
【0031】
<ハンド移動機構>
図1及び図2に示すように、ハンド移動機構31は、移植ハンド30をY方向に移動させる第1ハンド移動部41と、移植ハンド30をX方向に移動させる第2ハンド移動部42と、移植ハンド30をZ方向に移動させる第3ハンド移動部43と、を備えている。
【0032】
第1ハンド移動部41は、移植装置11における不図示のフレーム構造体にY方向が長手方向となるように水平に支持された直方体形状の第1ケース44を有している。また、第1ハンド移動部41は、第1ケース44内の図示しない駆動源の駆動力で第1ケース44の上面である+Z方向側の側面をY方向にスライド移動する側面視でL字形状の第1スライダー45を有している。
【0033】
第2ハンド移動部42は、第1ハンド移動部41の第1スライダー45における+Y方向側の側面にX方向が長手方向となるように水平に支持された直方体形状の第2ケース46を有している。そのため、第2ハンド移動部42は、第1ハンド移動部41の第1スライダー45がY方向に移動したとき、第1スライダー45と共に第2ハンド移動部42の全体がY方向に移動する。また、第2ハンド移動部42は、第2ケース46内の図示しない駆動源の駆動力で第2ケース46の+Y方向側の側面をX方向にスライド移動する正面視で矩形状の第2スライダー47を有している。
【0034】
第3ハンド移動部43は、第2ハンド移動部42の第2スライダー47における+Y方向側の側面にZ方向が長手方向となるように垂直に支持された直方体形状の第3ケース48を有している。そのため、第3ハンド移動部43は、第2ハンド移動部42の第2スライダー47がX方向に移動したとき、第2スライダー47と共に第3ハンド移動部43の全体がX方向に移動する。また、第3ハンド移動部43は、第3ケース48内の図示しない駆動源の駆動力で第3ケース48の+Y方向側の側面をZ方向にスライド移動する側面視でL字形状の第3スライダー49を有している。
【0035】
そして、第3ハンド移動部43の第3スライダー49における+Y方向側に水平に延びた部分の下面側には、移植ハンド30が第3スライダー49と共にZ方向に移動するように支持されている。そのため、移植ハンド30は、ハンド移動機構31における第1ハンド移動部41と第2ハンド移動部42と第3ハンド移動部43の駆動に伴い、前後方向であるY方向と左右方向であるX方向と上下方向であるZ方向に各々移動自在とされる。
【0036】
<押さえ機構>
図5及び図6に示すように、押さえ機構17は、載置部19上に載置された苗床片Nを載置部19に対して押さえつけ可能に構成された押さえ部材50と、その押さえ部材50を移動させるために駆動される押さえ移動機構51と、を備えている。
【0037】
<押さえ部材>
押さえ部材50は、例えば側面視でクランク形状をなすように折曲形成された帯板状の板金部材で構成される。なお、クランク形状に折曲形成した理由は、移植装置11の稼働時に周辺の他部材に押さえ部材50が干渉する虞を低減するためでもある。本実施形態の移植装置11では、複数の一例である6つの押さえ部材50が、X方向を長手方向とする支持板52に対してX方向に一定の間隔をおいて各々垂下状態に支持されている。押さえ部材50は、その横幅となるX方向の寸法が苗床片Nの側面の幅寸法よりも小さな幅狭となるように形成されている。そして、その押さえ部材50の下端部におけるX方向に離間した2箇所からは鉛直下方である-Z方向に突出する凸部53が載置部19に対して押さえつけられる苗床片Nに対して接触する際の接触部の一例として設けられている。
【0038】
<押さえ移動機構>
押さえ移動機構51は、押さえ部材50をY方向に移動させる第1押さえ移動部61と、押さえ部材50をX方向に移動させる第2押さえ移動部62と、押さえ部材50をZ方向に移動させる第3押さえ移動部63と、を備えている。
【0039】
<第1押さえ移動部>
第1押さえ移動部61は、移植装置11における不図示のフレーム構造体にY方向が長手方向となるように水平に支持された直方体形状の水平ケース64を有している。また、第1押さえ移動部61は、水平ケース64内の図示しない駆動源の駆動力で水平ケース64の上面である+Z方向側の側面をY方向にスライド移動するZ方向での平面視で矩形状をなす水平スライダー65を有している。
【0040】
<第2押さえ移動部>
第2押さえ移動部62は、第1押さえ移動部61の水平スライダー65上に固定された連結板66を介して水平スライダー65と一体的に移動するように支持された移動枠67を有している。連結板66はY方向からの正面視でL字状をなしている。移動枠67は、こうした連結板66における-X方向側の側面にZ方向及びX方向に沿うように支持されている。移動枠67は、下端部を連結板66に支持された状態で+Z方向に延びる+X方向側の垂直枠68と、その垂直枠68の上端から-X方向に延びる水平枠69と、水平枠69の-X方向側の端部から-Z方向に延びる-X方向側の垂直枠70と、を有する。垂直枠68、水平枠69及び垂直枠70は、それぞれ断面形状が略四角形の枠材で構成される。
【0041】
移動枠67における-X方向側の垂直枠70は、その下端部が苗床支持部13の固定枠18とZ方向で略同じ高さとなる高さ位置まで垂下されている。この-X方向側の垂直枠70における+X方向側の側面の下端部には、上側から掛止が可能とされる掛止爪部71が設けられている。一方、苗床支持部13の固定枠18における-X方向側の側面には、Y方向に延びるY方向レール72が設けられている。そして、この固定枠18側のY方向レール72に対して移動枠67側の掛止爪部71がY方向への摺動可能な状態で掛止されている。そのため、第2押さえ移動部62は、第1押さえ移動部61の水平スライダー65がY方向に移動したとき、水平スライダー65と共に移動枠67がY方向に移動する。
【0042】
移動枠67における水平枠69の下面側には、X方向に延びる所定長さのX方向レール73が設けられている。X方向レール73の下側には+X方向側の端部が下方へ直角に折り曲げられた正面視でL字形状をなす可動フレーム74が当該可動フレーム74の上側に設けた掛止爪75をX方向レール73に掛止させることによりX方向への移動自在に支持されている。一方、移動枠67の+X方向側の垂直枠68における-X方向側の側面には、シリンダ76が-X方向に延びるように片持ち支持されている。そして、そのシリンダ76におけるロッド77の先端が可動フレーム74における+X方向側の下方へ直角に折り曲げられた端部に連結されている。そのため、可動フレーム74は、シリンダ76の駆動に伴いロッド77が伸縮移動したとき、X方向に移動する。
【0043】
<第3押さえ移動部>
第3押さえ移動部63は、第2押さえ移動部62の可動フレーム74における水平部分にZ方向が長手方向となるように垂直に支持された直方体形状の垂直ケース78を有している。そして、この垂直ケース78における-Y方向側の側面に、前述した複数の押さえ部材50を支持した支持板52が、垂直ケース78内の図示しない駆動源の駆動力によりZ方向にスライド移動するように設けられている。そのため、押さえ部材50は、押さえ移動機構51における第1押さえ移動部61と第2押さえ移動部62と第3押さえ移動部63の駆動に伴い、前後方向であるY方向と左右方向であるX方向と上下方向であるZ方向に各々移動自在とされる。
【0044】
また、第3押さえ移動部63における垂直ケース78の+Y方向側である背面側には、下端部が-Y方向側である前方へ直角に折り曲げられたストッパ部材79が、第2押さえ移動部62の可動フレーム74から垂下されている。ストッパ部材79における-Y方向側である前方へ直角に折り曲げられた下端部は、その先端部が押さえ部材50を支持した支持板52よりも-Y方向側である前方側の位置まで延びている。そのため、押さえ部材50は、第3押さえ移動部63の駆動に伴い鉛直下方である-Z方向に移動した場合において、支持板52の下端縁がストッパ部材79に上方側から当接したとき、その高さ位置よりも更に下方への移動が規制される。
【0045】
<電気的構成>
次に、移植装置11の電気的構成について説明する。
図7に示すように、移植装置11は、装置全体を統括的に制御する制御部80を備えている。制御部80は、CPU81、ROM82及びRAM83を備えている。CPU81は、中央処理装置として機能し、各種のプログラムを実行する。ROM82は、各種の情報や移植装置11全体の動作を制御するために用いられる移植用プログラム等を読み出し可能に記憶する。RAM83は、各種の情報を書き込み及び読み出し可能に記憶する。CPU81は、図示しないインターフェースを介して各種の情報が制御部80に入力された場合、ROM82に記憶された移植用プログラムを実行することにより、移植装置11の動作を制御するために必要とされる各種の演算を行う。そして、CPU81は、その演算において使用される各種の情報の読み出しをROM82に対して行ったり、その演算において使用される各種の情報の読み出し及び書き込みをRAM83に対して行ったりする。
【0046】
制御部80の入力側には、ユーザーが操作するための操作部84が電気的に接続されている。一方、制御部80の出力側には、第1ハンド移動部41、第2ハンド移動部42、第3ハンド移動部43、アクチュエーター33、第1押さえ移動部61,第2押さえ移動部62、第3押さえ移動部63、及び端部押さえモータ24が電気的に接続されている。そして、制御部80は、操作部84の操作に基づき、第1ハンド移動部41~第3ハンド移動部43、アクチュエーター33、第1押さえ移動部61~第3押さえ移動部63及び端部押さえモータ24の駆動をそれぞれ制御する。
【0047】
<作用>
次に、本実施形態の移植装置11の作用について、苗床12から被移植物である苗床片Nを分離して定植パネル14に移植する移植方法と共に説明する。
【0048】
<始点への移動>
図8及び図9に示すように、移植時には、まず、押さえ機構17における押さえ部材50を押さえ移動機構51の駆動に基づき移動経路の始点となる位置に移動させる。すなわち、押さえ部材50は、複数の苗床片Nの配列方向で行方向となるX方向では、図8に示すように、今回の移植動作で移植対象として分離する予定の移植苗床片NAに隣り合う隣接苗床片NBとY方向で向かい合う位置に移動される。因みに、本実施形態では、図8において右端から左側に3番目の苗床片を、今回の移植動作で分離予定の移植苗床片NAとして、以下説明する。また、押さえ部材50は、Y方向では、図9に示すように分離予定の移植苗床片NA及び隣接苗床片NBを含む複数の苗床片NがX方向に並ぶ位置から-Y方向に少し離れた位置に移動される。さらに、押さえ部材50は、Z方向では、その押さえ部材50の下端部が、載置部19上に載置された苗床片Nにおける上面と下面との中間よりも若干上側となる位置に移動される。換言すると、押さえ部材50は、移動経路の始点となる位置、すなわち、隣接苗床片NBが存在する隣接位置から離れた位置に移動される。
【0049】
<載置部上の空間域への進入>
次に、図10図11及び図12に示すように、押さえ部材50を、図10に二点鎖線で示す始点の位置から実線で示す中間点の位置まで白抜き矢印で示すように移動させる。すると、図11及び図12に示すように、押さえ部材50とはY方向で向かい合う位置にある隣接苗床片NB及び苗床片Nは、始点の位置から中間点の位置まで+Y方向に向けて移動した押さえ部材50により側面を押圧される。すなわち、隣接苗床片NB及び苗床片Nにおける一方側である-Y方向側の側面のうち、Z方向での中途から+Z方向側の側面部位が、押さえ部材50により他方側である+Y方向側に押圧される。
【0050】
換言すると、載置部19上に複数の被移植物である苗床片Nが配列状態にして載置された場合に当該苗床片Nにより占有される空間域Sに対して押さえ部材50を進入させる。そして、その空間域S内における隣接苗床片NBが存在する位置である隣接位置に押さえ部材50を移動させる。すると、隣接位置に存在する隣接苗床片NBは、押さえ部材50による+Y方向側の押圧力を受けてZ方向での中途から+Z方向側の部分が収縮した状態となる。
【0051】
また、その際に、隣接苗床片NBは、そのX方向の幅寸法が苗床片Nよりも幅狭である押さえ部材50に押圧されることから、その-Y方向側の側面が+Y方向側に窪むように弾性変形する。そのため、図11に示すように、押さえ部材50に押圧された隣接苗床片NBは、その隣接苗床片NBと隣り合う位置に存在する他の苗床片である分離予定の移植苗床片NAとの間に隙間85が形成される。なお、図12に示すように、押さえ部材50は、隣接苗床片NBにおけるZ方向での中途から+Z方向側の部分をY方向での中間位置近くまで-Y方向側から+Y方向側に押圧して収縮させる。
【0052】
<終点への移動>
次に、図13図14及び図15に示すように、押さえ部材50を、図13に二点鎖線で示す中間点の位置から実線で示す終点の位置まで白抜き矢印で示すように移動させる。すると、図14及び図15に示すように、押さえ部材50による押圧力を受けて収縮した状態にある隣接苗床片NBを含む苗床片Nは、中間点の位置から終点の位置まで移動した押さえ部材50により側面を鉛直下方である-Z方向に押圧される。すなわち、隣接位置にある隣接苗床片NBを含む収縮状態の苗床片Nは、その一方側である-Y方向側の側面を-Z方向に押圧する押さえ部材50により載置部19に対して押さえつけられる。その結果、そうした押さえ部材50による押さえつけ力により、隣接苗床片NBは、隣接位置からの移動が規制される。
【0053】
以上のように、押さえ部材50は、載置部19上の空間域S内で隣接苗床片NBが存在する隣接位置内を苗床片Nの移植時に押さえ部材50が移動する際の始点からの終点とした場合、次のような移動態様で移動する。すなわち、押さえ部材50は、始点を基準にして鉛直方向であるZ方向と交差する一方向における一方側である-Y方向側とは反対の他方側である+Y方向側であって且つ鉛直下方である-Z方向となる位置を終点とする移動態様でもって隣接位置に移動する。
【0054】
<苗床片の分離と移植>
次に、図16及び図17に示すように、把持部材32を、図16に二点鎖線で示す空間域S外の位置から実線で示す空間域S内の位置まで白抜き矢印で示すように移動させる。このとき、一対の把持部材32は苗床片NのX方向の幅寸法と対応した間隔をおいて開き動作した開き位置の状態にある。そのため、図17に示すように、把持部材32は、分離予定の移植苗床片NAと隣接苗床片NBとの間の隙間85を介して切れ目26内に容易に進入し、連結部27に当接した位置で停止する。そして次に、図16に実線で示す位置を把持位置として、この把持位置で、一対の把持部材32を閉じ動作させる。すると、分離予定の移植苗床片NAは、苗21が植え付けられている中央部分から-Y方向側に少し位置ずれした部分が把持部材32により把持されて収縮した状態となる。
【0055】
次に、図18に示すように、隣接位置に存在する隣接苗床片NBを押さえ部材50により載置部19に対して押さえつけた状態において、移植対象として分離予定の移植苗床片NAを把持している把持部材32を載置部19から離れる方向に移動させる。すなわち、把持部材32を、載置部19上の空間域S内に対する進入方向であった+Y方向とは反対方向の-Y方向を空間域Sからの退出方向として、Z方向と交差する一方向であるY方向での一方側である-Y方向側に移動させる。
【0056】
すると、図18に示すように、分離する予定の移植苗床片NAは、把持部材32と一緒に-Y方向側に移動することで、押さえ部材50により隣接位置に押さえつけられた状態にある隣接苗床片NBから引き千切られるようにして分離される。その後、把持部材32は、苗床12から分離した移植苗床片NAを把持した状態で、定植パネル14における移植先の穴29の上方位置まで移動した後、その位置から下降することで、当該穴29に移植苗床片NAを移植する。
【0057】
なお、移植苗床片NAを把持した把持部材32が把持位置から-Y方向側に移動したとき、その移動に伴う引っ張り力が、隣接位置に存在する隣接苗床片NBに及ぶことがある。その場合、隣接苗床片NBが-Y方向側の側面に棒材や板材などからなる拘束部材を当接させただけであると、把持部材32と一緒に-Y方向側に移動する移植苗床片NAからの引っ張り力で、隣接苗床片NBが拘束部材を-Y方向側に回り込んで変位する虞がある。
【0058】
この点、本実施形態における押さえ部材50は、隣接苗床片NBの-Y方向側の側面に単に当接するのではなく、隣接苗床片NBを載置部19に対して押さえつけるようにしている。その結果、移植苗床片NAを把持した把持部材32が把持位置から-Y方向側に移動した場合でも、その移動に伴う引っ張り力により隣接苗床片NBが載置部19上の隣接位置から移植苗床片NAに共ずれして変位することが抑制される。しかも、その際に、押さえ部材50は、載置部19に対して隣接苗床片NBを、その上面ではなく側面を介して押さえつけるため、隣接苗床片NBの上面側に位置する苗21が押さえつけられる可能性も低い。
【0059】
また、押さえ部材50は、載置部19に対して隣接苗床片NBを押さえつけるとき、その下端部の二箇所の凸部53が、隣接位置に存在する隣接苗床片NBを複数点の一例である二点で接触する点接触態様で載置部19に対して押さえつける。そのため、例えば一点で接触する点接触態様で押さえつける構成では、その接触点を基準にして隣接苗床片NBが回動変位する虞があるのに対し、複数点での点接触態様であるため、そのような回動変位も抑制される。
【0060】
以上のように移植対象とする所定の苗床片Nの移植動作を終えた後、次には新たに別の苗床片Nを移植対象とする新たな移植動作が行われる。すなわち、1回の移植動作を終えた把持部材32は、図16に二点鎖線で示した空間域S外の位置までハンド移動機構31の駆動により戻される。また、押さえ部材50は、必要に応じて、次に移植対象として分離予定の移植苗床片NAと配列方向のX方向で隣り合う隣接位置に存在する隣接苗床片NBとY方向で向かい合う始点の位置まで、押さえ移動機構51の駆動により戻される。そして、図10図18に示した一連の移植動作及び押さえつけ動作が、新たに移植対象として分離予定の移植苗床片NA及びその隣接苗床片NBに対して同様に繰り返される。
【0061】
<端部苗床片の押さえつけ>
ところで、図19に示すように、苗床12を構成する複数の苗床片Nにおける二方向の配列方向のうち、X方向に沿う配列方向を行と称した場合において、その行数がY方向で残り3行となったときには、次のような問題がある。
【0062】
すなわち、既述したように、苗床12を構成する複数の苗床片Nは、行方向及び列方向で隣接する苗床片N同士が切れ目26と連結部27とが交互に連続した境界線25によりマトリックス状に区切られている。つまり、各苗床片Nは、隣り合う他の苗床片Nと当該苗床片Nの前後左右の各側面における各中央部でつながっている。そして、その苗床片Nに一つの方向から引っ張り力が作用したときに、当該苗床片Nが周りの複数の苗床片Nと1つ又は2つの側面でしかつながっていない場合には、その一つの方向からの引っ張り力に抗しきれずに共ずれして一つの方向に移動する虞がある。
【0063】
例えば、図19で把持部材32に把持された分離予定の移植苗床片NAに対して+Y方向側で隣接する苗床片NCは、移植苗床片NA以外では、+Y方向側で隣接する最終行の端部苗床片NDと-X方向側で隣接する苗床片NEとしか、つながっていない。換言すると、最終行から一つ手前の行で+X方向側の端部に位置する苗床片NCは、把持部材32と一緒に-Y方向側に移動する移植苗床片NAからの引っ張り力に抗し得る他の苗床片Nとのつながりを2つしか有していない。そのため、最終行から一つ手前の行で+X方向側の端部に位置する苗床片NCは、分離予定の移植苗床片NAが把持部材32に把持された状態で-Y方向側に移動したとき、その移植苗床片NAに引っ張られて-Y方向に共ずれする可能性がある。
【0064】
また、この場合において、最終行の端部苗床片NDは、最終行から一つ手前の行に位置する苗床片NC以外では、-X方向側で隣接する苗床片NFとしか、つながっていない。換言すると、最終行の端部苗床片NDは、把持部材32と一緒に-Y方向側に移動する分離予定の移植苗床片NAからの引っ張り力に抗し得る他の苗床片Nとのつながりを1つしか有していない。そのため、最終行の端部苗床片NDは、分離予定の移植苗床片NAが把持部材32に把持された状態で-Y方向側に移動したとき、その移植苗床片NAに苗床片NCを介して引っ張られる状態となり、特に-Y方向に共ずれし易い。
【0065】
そこで、本実施形態では、図19に示すように、端部押さえ機構22の押さえアーム23により、最終行の端部苗床片NDが載置部19に対して押さえつけられるようにしている。すなわち、押さえアーム23が、例えば図3に二点鎖線で示した待機位置から実線で示した押さえ位置に回動することにより、その先端部で端部苗床片NDの上面を鉛直下方に押圧する。その結果、移植苗床片NAが把持部材32と一緒に-Y方向側に移動するのに伴い、最終行から一つ手前の行の苗床片NC及び最終行の端部苗床片NDに-Y方向への引っ張り力が作用しても、それらの苗床片NC,NDは共ずれによる変位が抑制される。
【0066】
なお、その際、押さえアーム23の先端は、図19において丸印で示すように、端部苗床片NDの上面における中央位置よりも+Y方向側に少しずれた位置に接触して端部苗床片NDを載置部19に向けて押圧することが好ましい。そのようにすれば、押さえアーム23は端部苗床片NDの上面に植え付けられている苗21に接触せずに端部苗床片NDの上面を押圧できる可能性が高まる。
【0067】
次に、図20に示すように、苗床12を構成する複数の苗床片NのX方向に沿う行数がY方向で残り2行となった場合にも、残り3行の場合と同様に、最終行の端部苗床片NDが押さえアーム23により載置部19に対して押さえつけられる。なお、図20において最終行から一つ手前の行に位置する複数の苗床片NのうちでX方向の両端以外の位置に存在し且つ押さえ部材50により押さえつけられていない苗床片NGを把持部材32により把持して分離させるときには、次のようにしてもよい。すなわち、図20に二点鎖線の丸印で示すように、その苗床片NGと+Y方向側で隣接する最終行の苗床片NHを、端部押さえ機構22の押さえアーム23と同様に別途設けた押さえアーム23により載置部19に対して押さえつけるようにしてもよい。このようにすれば、最終行の両端以外の苗床片NHは、最終行から一つ手前の行に位置する苗床片NG以外では、つながる苗床片Nが+X方向側及び-X方向側で隣接する2つの苗床片Nだけになるが、押さえアーム23による押さえつけで、共ずれが抑制される。
【0068】
次に、図21に示すように、苗床12を構成する複数の苗床片NのX方向に沿う行数がY方向で残り1行半となった場合には次のようにされる。すなわち、最終行から一つ手前の行にX方向で一つおきに位置する複数の苗床片Nのうち所定の苗床片が移植苗床片NAとして把持部材32により把持される。図21の場合は、最終行から一つ手前の行において-X方向側の端部に位置する苗床片が移植苗床片NAとして把持部材32により把持されている。そして、この場合は、把持部材32に把持された移植苗床片NAとX方向で隣り合う位置に隣接苗床片NBは存在していない。
【0069】
そのため、この場合には、最終行に位置する複数の苗床片Nのうち、移植苗床片NAとX方向で一つ分だけ位置がずれた位置に存在する苗床片NIが、押さえ部材50により載置部19に対して押さえつけられる。また、この場合には、移植対象として把持部材32に把持された最終行から一つ手前の行の移植苗床片NAと+Y方向側で隣接する最終行の端部苗床片NDが、端部押さえ機構22の押さえアーム23により載置部19に対して押さえつけられる。また、図21内における左下部分に示すように、最終行の端部苗床片NDを押さえ機構17の押さえ部材50が載置部19に対して押さえつける状態になるときは、端部押さえ機構22の押さえアーム23は端部苗床片NDを押圧しない待機位置に回動する。
【0070】
また、図22に示すように、苗床12を構成する複数の苗床片NのX方向に沿う行数がY方向で残り1行となった場合には次のようにされる。すなわち、最終行に位置する複数の苗床片Nのうち所定の苗床片NAが移植対象として把持部材32により把持される。図22の場合は、最終行において+X方向側の端部に位置する端部苗床片NDが移植対象の移植苗床片NA(ND)として把持部材32により把持されている。そして、把持部材32により把持された端部の移植苗床片NA(ND)と配列方向であるX方向で隣り合う隣接苗床片NBは、押さえ部材50により載置部19に対して押さえつけられる。また、この場合は、移植苗床片NA(ND)を把持する把持部材32との干渉を避けるため、端部押さえ機構22の押さえアーム23は端部の移植苗床片NA(ND)を押圧しない待機位置に回動する。さらに、図22内における右下部分に示すように、最終行で-X方向側の端部苗床片NDを押さえ部材50が載置部19に対して押さえつける状態になるときは、-X方向側の押さえアーム23も端部苗床片NDを押圧しない待機位置に回動する。
【0071】
<効果>
(1)載置部19上に載置された複数の被移植物である苗床片Nのうち、分離予定の移植苗床片NAは、それを把持した把持部材32が把持位置から移動したときに、把持位置と隣り合う隣接位置に存在する隣接苗床片NBから引き千切られるように分離される。そして、その際に移植苗床片NAの隣接位置に存在する隣接苗床片NBは、当該隣接位置に対して押さえ部材50により押さえつけられた状態となることで、分離される-Y方向側に移動する移植苗床片NAに共ずれして変位することが抑制される。
【0072】
(2)苗床片Nが弾性変形可能である場合、隣接位置の隣接苗床片NBは、隣接位置から離れた位置を始点にして隣接位置内を終点とする移動態様で移動する押さえ部材50により、隣接位置において載置部19に対して押さえつけられる。そのため、隣接位置から離れた位置にある始点から隣接位置内にある終点まで押さえ部材50を移動させることで、隣接位置の隣接苗床片NBを、分離される移植苗床片NAに共ずれして変位しないようにできる。
【0073】
(3)押さえ部材50は、空間域S内の隣接位置における上端と下端との中間の位置よりも下端側の位置を終点とする移動態様で移動することにより、隣接位置に存在する隣接苗床片NBを載置部19に対して押さえつけることができる。
【0074】
(4)-Y方向側に移動して苗床12から分離される移植苗床片NAの隣接位置に存在する隣接苗床片NBは、その-Y方向側の側面を押さえ部材50により+Y方向側であって且つ-Z方向側となる方向に押圧されることで、載置部19に押さえつけられる。すなわち、隣接苗床片NBは、その上面ではなく側面を押さえ部材50に押圧されることで、分離予定の移植苗床片NAに共ずれして変位しないようにできる。したがって、隣接苗床片NBの上面に苗21が植え付けられている場合でも、押さえ部材50により、隣接苗床片NBを載置部19に対して上面の苗21に触れずに押さえつけることができる。
【0075】
(5)隣接位置に存在する隣接苗床片NBは、-Y方向側の側面が押さえ部材50により押圧されたときに+Y方向側に窪むように弾性変形する。そのため、隣接位置と隣り合う把持位置に存在する移植苗床片NAとの間には、把持部材32を-Y方向側から進入可能とする隙間85が形成される。したがって、載置部19上の空間域Sに把持部材32を進入させて把持位置に存在する移植苗床片NAを把持させるとき、その隙間85に把持部材32を-Y方向側から進入させることで、移植苗床片NAを把持部材32により把持し易くできる。
【0076】
(6)隣接位置に存在する隣接苗床片NBは、押さえ部材50の下端部における二箇所の凸部53による複数点での点接触態様で載置部19に対して押さえつけられる。そのため、把持位置で移植苗床片NAを把持した把持部材32が把持位置から移動したときに、その移動に伴う引っ張り力で隣接位置に存在する隣接苗床片NBが押さえ部材50を基準に回動して変位する虞を低減できる。
【0077】
(7)+Y方向における端部でX方向に沿う最終行に配列された複数の苗床片NのうちX方向で両端の端部苗床片NDは、端部押さえ機構22の押さえアーム23で載置部19に押さえつけられるため、移植苗床片NAに共ずれして変位するのを抑制できる。
【0078】
<変更例>
なお、上記の実施形態は以下に示す変更例のように変更してもよい。また、実施形態に含まれる構成と下記変更例に含まれる構成とを任意に組み合わせてもよいし、下記変更例に含まれる構成同士を任意に組み合わせてもよい。
【0079】
・一対の把持部材32は、移植苗床片NAと隣接苗床片NBとの間の隙間85に対し、例えば-Y方向側から進入する側方からの進入態様以外に、鉛直上方である+Z方向側から鉛直下方である-Z方向に下降して進入する上方からの進入態様でもよい。あるいは、一対の把持部材32は、隙間85に対して-Y方向側であると共に+Z方向側である斜め上方から進入する進入態様でもよい。その一方、一対の把持部材32は、移植苗床片NAを把持して隙間85から退出する場合には、上記実施形態におけるように-Y方向に退出する以外に、-Y方向側であると共に+Z方向側である斜め上方に退出する退出態様でもよい。
【0080】
図23に示すように、一対の把持部材32は、開閉方向において互いに対向する内側の面90に、把持部材32の長さ方向に沿う凸条91及び凹条92を設けてもよい。この場合、凸条91及び凹条92は、両把持部材32が閉じ動作したときに、一方の把持部材32における内側の面90の凸条91が他方の把持部材32における内側の面90の凹条92に対向する構成が好ましい。このような構成によれば、図23に示すように、一対の把持部材32を閉じ動作させて苗床片Nを把持したときに、苗床片Nが両把持部材32の内側の面90同士の間で位置ずれする虞を低減できる。さらには、一対の把持部材32が苗床片Nを把持した状態で載置部19上の空間域Sから退出するときに苗床片Nに加わる回転モーメントを受けることができるため、苗床片Nが把持部材32の内側の面90を基準に回転して変位する虞を低減できる。
【0081】
図23に示す変更例において、一方の把持部材32における内側の面90と他方の把持部材32における内側の面90の両方に、閉じ動作したときに互いに対向する凸条91と凸条91を同じように設けてもよい。又は、一方の把持部材32における内側の面90と他方の把持部材32における内側の面90の両方に、閉じ動作したときに互いに対向する凹条92と凹条92を同じように設けてもよい。
【0082】
図23に示す変更例において、対をなす把持部材32の開閉方向において互いに対向する内側の面90には、把持部材32の長さ方向に沿う複数の溝及び把持部材32の長さ方向と交差する方向に沿う溝のうち少なくとも一方の溝を設けてもよい。あるいは、把持部材32の内側の面90は、平滑面の場合よりも摩擦抵抗が大きくなる粗面に形成してもよい。
【0083】
・最も+Y方向側でX方向に沿う最終行に配列された複数の苗床片NのうちでX方向の両端に位置する端部苗床片NDが当該端部苗床片NDの存在する位置から変位するのを抑制可能に構成された端部押さえ機構22は省略してもよい。
【0084】
・端部押さえ機構22の押さえアーム23は、端部押さえモータ24の駆動によることなく、手動により、待機位置と押さえ位置との間で回動可能とされてもよい。
・端部押さえ機構22は、押さえアーム23の先端を苗床片Nの上面における植物の苗21が植え付けられる凹部20に挿入して引っ掛け状態とすることにより、その苗床片Nが共ずれして変位するのを抑制する構成としてもよい。
【0085】
・端部押さえ機構22は、押さえアーム23の先端に苗床片Nを把持可能な把持機構を備え、その把持機構に苗床片Nが把持されることにより、その苗床片Nが共ずれして変位するのを抑制する構成としてもよい。
【0086】
・把持部材32は、移植苗床片NAを把持するために載置部19上の空間域Sに対し、Y方向における-Y方向側から+Y方向側に移動して進入するのではなく、鉛直上方の+Z方向側から鉛直下方の-Z方向に移動して進入する構成でもよい。
【0087】
・載置部19上の空間域Sに対する把持部材32と押さえ部材50の進入する順序を、上記実施形態の場合とは逆にしてもよい。すなわち、先ず、把持部材32が空間域S内に進入して分離予定の移植苗床片NAを把持位置で把持した状態となり、次に、押さえ部材50が空間域S内に進入して隣接位置に存在する隣接苗床片NBを載置部19に対して押さえつける構成でもよい。
【0088】
・空間域S内に進入した押さえ部材50により押さえつけられる隣接苗床片NBが存在する隣接位置は、把持部材32により移植苗床片NAが把持される把持位置と苗床片Nの配列方向であるX方向又はY方向で隣り合う位置に限らない。例えば、図21で押さえ部材50により押さえつけられる苗床片NIが存在する位置も隣接位置に含まれる。すなわち、本明細書において記載する隣接位置には、把持位置と前後左右方向で隣り合う位置に限らず、把持位置に対して当該把持位置に存在する苗床片Nの四隅の隅角部28を挟んで斜め方向で隣り合う位置も含まれる。
【0089】
・押さえ部材50の数量は、X方向に配列された複数の苗床片Nのうち移植対象として分離される移植苗床片NAと隣り合う隣接苗床片NBを押さえつけるのに必要十分な数量であればよい。すなわち、把持部材32に把持されて分離方向に移動する移植苗床片NAの片側又は両側の隣接苗床片NBを押さえつけ得る1つ又は2つの押さえ部材50が設けられていればよい。
【0090】
・例えばX方向で二つおき等の複数おきに位置する複数の移植苗床片NAを複数の把持部材32により同時に把持して分離させると共に、それら複数の移植苗床片NA同士の間に横並びで位置する複数の隣接苗床片NBを複数の押さえ部材50で押さえてもよい。この場合、押さえ部材50は、複数の押さえ部材50を一定間隔おきに垂下状態にして支持可能であって且つ移動自在とされた複数の支持板52とのセット単位で空間域Sに対する進入及び退出が可能とされる構成が好ましい。
【0091】
・押さえ部材50における移動経路の始点となる位置は、Z方向では載置部19よりも+Z方向側であって且つY方向では隣接苗床片NBよりも-Y方向側の位置であればよく、載置部19上に載置された苗床片Nにおける上面と下面との間の位置に限らない。
【0092】
・押さえ部材50は、隣接苗床片NBの一方側である-Y方向側の側面を押圧するのではなく、その隣接苗床片NBの上面を鉛直下方に向けて押圧することで、隣接苗床片NBを載置部19に対して押さえつける構成でもよい。
【0093】
・押さえ部材50は、隣接苗床片NBの一方側である-Y方向側の側面を押圧するのではなく、その隣接苗床片NBの-Y方向側の側面以外の他の側面を押圧することで、隣接苗床片NBを載置部19に対して押さえつける構成でもよい。
【0094】
・押さえ部材50は、押さえ移動機構51の駆動によることなく、手動により、始点と終点との間を移動可能とされてもよい。
・押さえ部材50は、始点から+Y方向に移動して中間点の位置に至った後に-Z方向に移動して終点に至る屈曲した移動経路を移動する以外に、始点から中間点の位置を経由せずに始点から斜め下方の終点の位置に向けて移動する移動態様でもよい。例えば、押さえ部材50は、終点の位置に対して-Y方向側であると共に+Z方向側である斜め上方に位置する始点から、+Y方向側であると共に-Z方向側である斜め下方に向けて移動することで、隣接苗床片NBを載置部19に押さえつける構成でもよい。なお、押さえ部材50が載置部19上の空間域Sに対して進入するときの移動軌跡及びその空間域Sから退出するときの移動軌跡は、斜め方向に延びる直線的な軌跡でも円弧を描く曲線的な軌跡でもよい。
【0095】
・押さえ部材50が苗床片Nに対する接触部として有する凸部53は、押さえ部材50の下端部の一箇所だけにある構成でもよい。すなわち、押さえ部材50の接触部は、一点で接触する点接触態様で隣接苗床片NBに接触する構成でもよい。
【0096】
・押さえ部材50が苗床片Nに対する接触部として有する凸部53は、押さえ部材50の下端部の三箇所や四箇所など二箇所以外の複数箇所にある構成でもよい。
・押さえ部材50が例えば凸部53の形態で有する接触部の苗床片Nに対する接触態様は、点接触態様以外に、線で接触する線接触態様や、面で接触する面接触態様でもよい。すなわち、押さえ部材50における苗床片Nに対する接触部は、苗床片Nに線接触可能な形態の凸条や、苗床片Nに面接触可能な形態の凸面部であってもよい。
【0097】
・押さえ部材50は、側面視でクランク形状をなすように折曲形成された帯板形状ではなく、折り曲げられていない平板形状の板金部材でもよい。または、押さえ部材50は、板金部材ではなく、棒状部材や筒状部材などでもよい。
【0098】
・載置部19上に複数の苗床片Nが少なくとも一方向に配列状態とされることによって構成される苗床12は、例えば左右方向であるX方向に沿う1行の配列状態とされる複数の苗床片Nで構成されてもよい。
【0099】
・被移植物である苗床片Nは、平面視において四角形状以外の多角形状でも円形状でも楕円形状でもよい。また、その素材は、把持部材32により把持されたり押さえ部材50により押さえつけられたりした際に収縮する素材であれば、ポリウレタン以外でもよい。
【符号の説明】
【0100】
11…移植装置
19…載置部
22…端部押さえ機構
32…把持部材
50…押さえ部材
53…接触部の一例である凸部
N,NC,NE,NF,NG,NH,NI…苗床片
NA…移植苗床片
NB…隣接苗床片
ND…端部苗床片
S…空間域
図1
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