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特許7586151移動体の制御方法、制御システム及び制御プログラム
<図1>
  • 特許-移動体の制御方法、制御システム及び制御プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】移動体の制御方法、制御システム及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20241112BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20241112BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20241112BHJP
【FI】
G08G1/09 V
G08G1/16 A
B60W60/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022132630
(22)【出願日】2022-08-23
(65)【公開番号】P2024030072
(43)【公開日】2024-03-07
【審査請求日】2024-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山郷 成仁
(72)【発明者】
【氏名】市川 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】平野 麻衣子
(72)【発明者】
【氏名】足立 義貴
(72)【発明者】
【氏名】田口 康治
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-525586(JP,A)
【文献】特開2021-033612(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0196427(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転機能と被遠隔支援機能を有する移動体を制御する方法であって、
前記移動体の自動運転のための制御モードを選択するステップと、
選択された前記制御モードの情報を前記移動体に送信するステップと、
を含み、
前記制御モードは、第1モードと、前記第1モードよりも走行安全に関する制約が厳しい第2モードとを含み、
前記制御モードを選択するステップが、
前記移動体に対する遠隔支援が必要であるか否かを判定するステップと、
前記遠隔支援が必要でないと判定された場合は前記制御モードとして前記第1モードを選択し、前記遠隔支援が必要であると判定された場合は前記制御モードとして前記第2モードを選択するステップと、
を含むことを特徴とする移動体の制御方法。
【請求項2】
自動運転機能と被遠隔支援機能を有する移動体を制御する方法であって、
前記移動体の自動運転のための制御モードを選択するステップと、
選択された前記制御モードの情報を前記移動体に送信するステップと、
を含み、
前記制御モードは、第1モードと、前記第1モードよりも走行安全に関する制約が厳しい第2モードとを含み、
前記制御モードを選択するステップが、
前記移動体に対する遠隔支援に対応する遠隔支援側の状態を特定するステップと、
前記遠隔支援側の状態が前記遠隔支援に対応する準備ができているレディ状態であると特定された場合は前記制御モードとして前記第1モードを選択し、前記遠隔支援側の状態が前記遠隔支援に対応する準備ができていないアンレディ状態であると特定された場合は前記制御モードとして前記第2モードを選択するステップと、
を含むことを特徴とする移動体の制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、
前記制御モードは、更に、前記第1モードよりも前記制約が厳しく、かつ、前記第2モードよりも前記制約が緩い第3モードを含み、
前記アンレディ状態は、前記レディ状態への切り替えの準備ができているアヴェイラブル状態と、前記切り替えの準備ができていないアンアヴェイラブル状態とを含み、
前記遠隔支援側の状態を特定するステップは、前記遠隔支援側の状態が前記アンレディ状態であると特定された場合、前記遠隔支援側の状態が前記アヴェイラブル状態と前記アンアヴェイラブル状態のどちらであるのかを特定するステップを含み、
前記遠隔支援側の状態が前記アンレディ状態かつ前記アヴェイラブル状態であると特定された場合は前記制御モードとして前記第3モードが選択され、
前記遠隔支援側の状態が前記アンレディ状態かつ前記アンアヴェイラブル状態であると特定された場合は前記制御モードとして前記第2モードが選択される
ことを特徴とする移動体の制御方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の方法であって、
前記制御モードは、前記移動体を路肩又は路側帯に停止させる第4モードを更に含み、
前記遠隔支援側の状態は、前記遠隔支援に対応する準備ができているレディ状態と、前記遠隔支援に対応する準備ができていないアンレディ状態とを含み、
前記アンレディ状態は、前記レディ状態への切り替えの準備ができているアヴェイラブル状態と、前記切り替えの準備ができていないアンアヴェイラブル状態とを含み、
前記遠隔支援側の状態を特定するステップは、前記遠隔支援側の状態が前記アンレディ状態であると特定された場合、前記遠隔支援側の状態が前記アヴェイラブル状態と前記アンアヴェイラブル状態のどちらであるのかを特定するステップを含み、
前記制御モードを選択するステップにおいて、
前記遠隔支援側の状態が前記アンレディ状態かつ前記アヴェイラブル状態であると特定された場合は前記制御モードとして前記第2モードが選択され、
前記遠隔支援側の状態が前記アンレディ状態かつ前記アンアヴェイラブル状態であると特定された場合は前記制御モードとして前記第4モードが選択される
ことを特徴とする移動体の制御方法。
【請求項5】
自動運転機能と被遠隔支援機能を有する移動体を制御する方法であって、
前記移動体の自動運転のための制御モードを選択するステップと、
選択された前記制御モードの情報を前記移動体に送信するステップと、
を含み、
前記制御モードは、第1モードと、前記第1モードよりも走行安全に関する制約が厳しい第2モードと、前記第1モードよりも前記制約が厳しく、かつ、前記第2モードよりも前記制約が緩い第3モードとを含み、
前記制御モードを選択するステップが、
前記移動体に対する遠隔支援が必要であるか否かを判定するステップと、
前記移動体に対する遠隔支援に対応する遠隔支援側の状態を特定するステップと、
前記遠隔支援が必要であるか否かの判定結果と、前記遠隔支援側の状態の特定結果との組み合わせに対応する制御モードを、前記第1、第2及び第3モードを含む選択肢の内から選択するステップと、
を含むことを特徴とする移動体の制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、
前記遠隔支援側の状態は、前記遠隔支援に対応する準備ができているレディ状態と、前記遠隔支援に対応する準備ができていないアンレディ状態とを含み、
前記制御モードを選択するステップにおいて、
前記遠隔支援が必要でないと判定され、かつ、前記遠隔支援側の状態が前記レディ状態であると特定された場合、前記組み合わせに対応する制御モードとして前記第1モードが選択され、
前記遠隔支援が必要でないと判定され、かつ、前記遠隔支援側の状態が前記アンレディ状態であると特定された場合、前記組み合わせに対応する制御モードとして前記第3モードが選択される
ことを特徴とする移動体の制御方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の方法であって、
前記遠隔支援側の状態は、前記遠隔支援に対応する準備ができているレディ状態と、前記遠隔支援に対応する準備ができていないアンレディ状態とを含み、
前記制御モードを選択するステップにおいて、
前記遠隔支援が必要であると判定され、かつ、前記遠隔支援側の状態が前記レディ状態であると特定された場合、前記組み合わせに対応する制御モードとして前記第3モードが選択され、
前記遠隔支援が必要であると判定され、かつ、前記遠隔支援側の状態が前記アンレディ状態であると特定された場合、前記組み合わせに対応する制御モードとして前記第2モードが選択される
ことを特徴とする移動体の制御方法。
【請求項8】
請求項5に記載の方法であって、
前記遠隔支援側の状態は、前記遠隔支援に対応する準備ができているレディ状態と、前記遠隔支援に対応する準備ができていないアンレディ状態とを含み、
前記アンレディ状態は、前記レディ状態への切り替えの準備ができているアヴェイラブル状態と、前記切り替えの準備ができていないアンアヴェイラブル状態とを含み、
前記遠隔支援側の状態を特定するステップは、前記遠隔支援側の状態が前記アンレディ状態であると特定された場合、前記遠隔支援側の状態が前記アヴェイラブル状態と前記アンアヴェイラブル状態のどちらであるのかを特定するステップを含み、
前記制御モードを選択するステップにおいて、
前記遠隔支援が必要でないと判定され、かつ、前記遠隔支援側の状態が前記アンレディ状態かつ前記アヴェイラブル状態であると特定された場合は前記組み合わせに対応する制御モードとして前記第3モードが選択され、
前記遠隔支援が必要でないと判定され、かつ、前記遠隔支援側の状態が前記アンレディ状態かつ前記アンアヴェイラブル状態であると特定された場合は前記組み合わせに対応する制御モードとして前記第2モードが選択される
ことを特徴とする移動体の制御方法。
【請求項9】
請求項5又は8に記載の方法であって、
前記遠隔支援側の状態は、前記遠隔支援に対応する準備ができているレディ状態と、前記遠隔支援に対応する準備ができていないアンレディ状態とを含み、
前記アンレディ状態は、前記レディ状態への切り替えの準備ができているアヴェイラブル状態と、前記切り替えの準備ができていないアンアヴェイラブル状態とを含み、
前記遠隔支援側の状態を特定するステップは、前記遠隔支援側の状態が前記アンレディ状態であると特定された場合、前記遠隔支援側の状態が前記アヴェイラブル状態と前記アンアヴェイラブル状態のどちらであるのかを特定するステップを含み、
前記制御モードは、前記移動体を路肩又は路側帯に停止させる第4モードを更に含み、
前記第4モードは、前記選択肢に含まれ、
前記制御モードを選択するステップにおいて、
前記遠隔支援が必要であると判定され、かつ、前記遠隔支援側の状態が前記アンレディ状態かつ前記アヴェイラブル状態であると特定された場合は前記組み合わせに対応する制御モードとして前記第2モードが選択され、
前記遠隔支援が必要であると判定され、かつ、前記遠隔支援側の状態が前記アンレディ状態かつ前記アンアヴェイラブル状態であると特定された場合は前記組み合わせに対応する制御モードとして前記第4モードが選択される
ことを特徴とする移動体の制御方法。
【請求項10】
自動運転機能と被遠隔支援機能を有する移動体を制御する装置であって、
前記移動体の自動運転のための制御モードを選択する処理と、
選択された前記制御モードの情報を前記移動体に送信する処理と、
を行うように構成されたプロセッサを備え、
前記制御モードは、第1モードと、前記第1モードよりも走行安全に関する制約が厳しい第2モードと、前記第1モードよりも前記制約が厳しく、かつ、前記第2モードよりも前記制約が緩い第3モードとを含み、
前記制御モードを選択する処理において、前記プロセッサが、
前記移動体に対する遠隔支援が必要であるか否かを判定する処理と、
前記移動体に対する遠隔支援に対応する遠隔支援側の状態を特定する処理と、
前記遠隔支援が必要であるか否かの判定結果と、前記遠隔支援側の状態の特定結果との組み合わせに対応する制御モードを、前記第1、第2及び第3モードを含む選択肢の内から選択する処理と、
を行うように構成されていることを特徴とする移動体の制御装置。
【請求項11】
自動運転機能と被遠隔支援機能を有する移動体を制御するプログラムであって、
前記移動体の自動運転のための制御モードを選択する処理と、
選択された前記制御モードの情報を前記移動体に送信する処理と、
をコンピュータに実行させ、
前記制御モードは、第1モードと、前記第1モードよりも走行安全に関する制約が厳しい第2モードと、前記第1モードよりも前記制約が厳しく、かつ、前記第2モードよりも前記制約が緩い第3モードとを含み、
前記制御モードを選択する処理において、
前記移動体に対する遠隔支援が必要であるか否かを判定する処理と、
前記移動体に対する遠隔支援に対応する遠隔支援側の状態を特定する処理と、
前記遠隔支援が必要であるか否かの判定結果と、前記遠隔支援側の状態の特定結果との組み合わせに対応する制御モードを、前記第1、第2及び第3モードを含む選択肢の内から選択する処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする移動体の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動運転機能と被遠隔支援機能を有する移動体を制御する方法、システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2021-022319号公報は、車両の走行装置の2つの運転モードを選択的に実行する車両制御装置を開示する。2つの運転モードは、自動運転モードと遠隔運転モードを含んでいる。従来の制御装置は、自動運転モードの選択中は制御装置が自律的に生成した操作情報に基づいて走行装置の制御を行う。一方、遠隔運転モードの選択中、従来の制御装置は、オペレータからの遠隔運転情報に基づいて走行装置の制御を行う。
【0003】
従来の制御装置は、また、車両の自動運転に関する経路情報に基づいて、自動運転モードを選択する区間(自動運転区間)と、遠隔運転モードを選択する区間(遠隔運転区間)とを予測する。そして、車両が遠隔運転区間に近づいた場合、従来の制御装置は、遠隔運転情報の要求をオペレータに対して行う。この要求に応答して遠隔運転情報が提供された場合、従来の制御装置は、車両の運転モードを自動運転モードから遠隔運転モードに切り替える。
【0004】
本開示に関連する技術分野の技術水準を示す文献としては、特開2021-022319号公報の他に、国際公開第2021/177052号、特開2019-191893号公報及び特開2017-174282号公報を例示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-022319号公報
【文献】国際公開第2021/177052号
【文献】特開2019-191893号公報
【文献】特開2017-174282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の制御装置では、車両の現在位置が自動運転区間にあり、かつ、遠隔運転区間から離れている場合、自動運転モードが選択される。ただし、このような場合であっても、遠隔運転に代表されるオペレータによる遠隔支援が必要となるケースが想定される。そして、この場合は、遠隔支援が必要であると判定されてから、これに応答して提供される遠隔支援に関する情報を車両が受信するまでの間、車両の自動運転をどのような態様で継続するのかが課題となる。
【0007】
特に、遠隔支援の要求への応答が即時に行われない場合は、遠隔支援の要因が存在する位置の手前で車両が一時停止する自動運転が行われると考えられる。つまり、この場合、車両は、遠隔支援の要因が存在する位置の手前で遠隔支援に関する情報の受信を待機することになる。しかしながら、待機時間の発生は車両の乗員に不安感を与え、又は、この車両の周囲の交通流に影響を及ぼすおそれがある。従って、このような不具合の発生を未然に防ぐための技術開発の余地があるといえる。
【0008】
本開示の1つの目的は、自動運転機能と被遠隔支援機能とを有する移動体の自動運転の最中に発生する突発的な遠隔支援の要求への対応を適切に対応することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の観点は、自動運転機能と被遠隔支援機能とを有する移動体を制御する方法であり、次の特徴を有する。
前記方法は、
前記移動体の自動運転のための制御モードを選択するステップと、
選択された前記制御モードの情報を前記移動体に送信するステップと、
を含む。
前記制御モードは、第1モードと、前記第1モードよりも走行安全に関する制約が厳しい第2モードとを含む。
前記制御モードを選択するステップは、
前記移動体に対する遠隔支援が必要であるか否かを判定するステップと、
前記遠隔支援が必要でないと判定された場合は前記制御モードとして前記第1モードを選択し、前記遠隔支援が必要であると判定された場合は前記制御モードとして前記第2モードを選択するステップと、
を含む。
【0010】
本開示の第2の観点は、自動運転機能と被遠隔支援機能とを有する移動体を制御する方法であり、次の特徴を有する。
前記方法は、
前記移動体の自動運転のための制御モードを選択するステップと、
選択された前記制御モードの情報を前記移動体に送信するステップと、
を含む。
前記制御モードは、第1モードと、前記第1モードよりも走行安全に関する制約が厳しい第2モードとを含む。
前記制御モードを選択するステップは、
前記移動体に対する遠隔支援に対応する遠隔支援側の状態を特定するステップと、
前記遠隔支援側の状態が前記遠隔支援に対応する準備ができているレディ状態であると特定された場合は前記制御モードとして前記第1モードを選択し、前記遠隔支援側の状態が前記遠隔支援に対応する準備ができていないアンレディ状態であると特定された場合は前記制御モードとして前記第2モードを選択するステップと、
を含む。
【0011】
本開示の第3の観点は、自動運転機能と被遠隔支援機能とを有する移動体を制御する方法であり、次の特徴を有する。
前記方法は、
前記移動体の自動運転のための制御モードを選択するステップと、
選択された前記制御モードの情報を前記移動体に送信するステップと、
を含む。
前記制御モードは、第1モードと、前記第1モードよりも走行安全に関する制約が厳しい第2モードと、前記第1モードよりも前記制約が厳しく、かつ、前記第2モードよりも前記制約が緩い第3モードとを含む。
前記制御モードを選択するステップは、
前記移動体に対する遠隔支援が必要であるか否かを判定するステップと、
前記移動体に対する遠隔支援に対応する遠隔支援側の状態を特定するステップと、
前記遠隔支援が必要であるか否かの判定結果と、前記遠隔支援側の状態の特定結果との組み合わせに対応する制御モードを、前記第1、第2及び第3モードを含む選択肢の内から選択するステップと、
を含む。
【0012】
本開示の第4の観点は、自動運転機能と被遠隔支援機能とを有する移動体を制御する装置であり、次の特徴を有する。
前記装置は、プロセッサを備える。
前記プロセッサは、
前記移動体の自動運転のための制御モードを選択する処理と、
選択された前記制御モードの情報を前記移動体に送信する処理と、
を行うように構成されている。
前記制御モードは、第1モードと、前記第1モードよりも走行安全に関する制約が厳しい第2モードと、前記第1モードよりも前記制約が厳しく、かつ、前記第2モードよりも前記制約が緩い第3モードとを含む。
前記制御モードを選択する処理において、前記プロセッサは、
前記移動体に対する遠隔支援が必要であるか否かを判定する処理と、
前記移動体に対する遠隔支援に対応する遠隔支援側の状態を特定する処理と、
前記遠隔支援が必要であるか否かの判定結果と、前記遠隔支援側の状態の特定結果との組み合わせに対応する制御モードを、前記第1、第2及び第3モードを含む選択肢の内から選択する処理と、
を行うように構成されている。
【0013】
本開示の第5の観点は、自動運転機能と被遠隔支援機能とを有する移動体を制御するプログラムであり、次の特徴を有する。
前記プログラムは、
前記移動体の自動運転のための制御モードを選択する処理と、
選択された前記制御モードの情報を前記移動体に送信する処理と、
をコンピュータに実行させる。
前記制御モードは、第1モードと、前記第1モードよりも走行安全に関する制約が厳しい第2モードと、前記第1モードよりも前記制約が厳しく、かつ、前記第2モードよりも前記制約が緩い第3モードとを含む。
前記制御モードを選択する処理において、前記プログラムは、
前記移動体に対する遠隔支援が必要であるか否かを判定する処理と、
前記移動体に対する遠隔支援に対応する遠隔支援側の状態を特定する処理と、
前記遠隔支援が必要であるか否かの判定結果と、前記遠隔支援側の状態の特定結果との組み合わせに対応する制御モードを、前記第1、第2及び第3モードを含む選択肢の内から選択する処理と、
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、移動体に対する遠隔支援が必要であるか否かの判定結果と、この遠隔支援に対応する遠隔支援側の状態の特定結果の少なくとも一方に基づいて、移動体の自動運転のための制御モードが選択される。そして、この選択された制御モードの情報が移動体に送信される。
【0015】
第1の観点において、移動体の自動運転のための制御モードは、第1モードと、第1モードよりも走行安全に関する制約が厳しい第2モードとを含んでいる。また、第1の観点では、移動体に対する遠隔支援が必要であるか否かの判定結果に応じて第1又は第2モードが選択される。そのため、第1の観点によれば、この判定結果に応じて、移動体の自動運転を適切に行うことが可能となる。
【0016】
第1の観点同様、第2の観点では、移動体の自動運転のための制御モードが第1及び第2モードを含んでいる。また、第2の観点では、移動体に対する遠隔支援に対応する遠隔支援側の状態の特定結果に応じて第1又は第2モードが選択される。そのため、第2の観点によれば、この特定結果に応じて、移動体の自動運転を適切に行うことが可能となる。
【0017】
第3~第5の観点では、制御モードが第1、第2及び第3モードを含んでいる。第3モードは、第1モードよりも走行安全に関する制約が厳しく、かつ、第2モードよりも走行安全に関する制約が緩い制御モードである。また、第3の観点では、移動体に対する遠隔支援が必要であるか否かの判定結果と、この遠隔支援に対応する遠隔支援側の状態の特定結果との組み合わせに対応する制御モードが、第1、第2及び第3モードを含む選択肢の内から選択される。そのため、第3~第5の観点によれば、判定結果と特定結果との組み合わせに応じて、移動体の自動運転を適切に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】移動体に対する遠隔支援を説明する図である。
図2】移動体の自動運転機能を説明する図である。
図3】実施形態において設定される車両制御モードの例を説明する図である。
図4】移動体に対する遠隔支援の必要性の有無の判定結果に基づいた車両制御モードの選択例を説明する図である。
図5】移動体に対する遠隔支援に対応する遠隔支援側の状態の特定結果に基づいた車両制御モードの選択例を説明する図である。
図6】移動体に対する遠隔支援に対応する遠隔支援側の状態の特定結果に基づいた車両制御モードの選択例を説明する図である。
図7】移動体に対する遠隔支援の必要性の有無の判定結果と、この遠隔支援に対応する遠隔支援側の状態の特定結果の組み合わせに基づいた車両制御モードの選択例を説明する図である。
図8】管理サーバの構成例を示すブロック図である。
図9】移動体の構成例を示すブロック図である。
図10】オペレータの端末の構成例を示すブロック図である。
図11】管理サーバ(プロセッサ)において実行される、実施形態に特に関連する処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態に係る移動体の制御方法、制御装置及び制御プログラムについて説明する。尚、実施形態に係る制御方法は、実施形態に係る制御装置において行われるコンピュータ処理により実現される。また、各図において、同一又は相当する部分には同一符号を付してその説明を簡略化し又は省略する。
【0020】
1.遠隔支援
図1は、移動体に対する遠隔支援を説明する図である。図1には、管理サーバ1と、車両2と、オペレータOPの端末(以下、「オペレータ端末」とも称す。)3と、が描かれている。
【0021】
管理サーバ1は、実施形態に係る制御装置の一例である。管理サーバ1は、遠隔支援サービスを管理する。管理サーバ1は、典型的に、遠隔支援サービスの事業者によって管理される。管理サーバ1は、車両2及びオペレータ端末3と通信する。
【0022】
車両2は、実施形態に係る制御装置により制御される移動体の一例である。車両2は、遠隔支援を受ける機能(被遠隔支援機能)を有している。車両2は、遠隔支援サービスの事業者が所有する車両でもよいし、この事業者との間で遠隔支援サービスの提供契約を行った法人又は個人が所有する車両でもよい。車両2は、被遠隔支援機能に加えて自動運転を行う機能(自動運転機能)を有している。この自動運転機能については後述される。
【0023】
オペレータOPは、車両2に対する遠隔支援を行う。オペレータOPは、遠隔支援サービスを提供する事業者の従業員でもよいし、この事業者との間で業務委託の契約を締結した法人の従業員又は個人でもよい。遠隔支援サービスに従事するオペレータOPの総人数は少なくとも2人である。車両2に対する遠隔支援に対応するオペレータOPの総人数は少なくとも1人であり、この少なくとも1人の対応者(担当者)の選定は、管理サーバ1において行われる。
【0024】
ここで、「少なくとも1人の対応者」とは、車両2に対する遠隔支援に対応する予定のオペレータOP(つまり、対応者の候補)が1人以上いることを意味する。車両2に対する遠隔支援の実行に際しては、少なくとも1人の対応者の候補の内から、少なくとも1人のオペレータOP(つまり、実務対応者)が選出される。この少なくとも1人の実務対応者の選定も、管理サーバ1において行われる。
【0025】
遠隔支援としては、認識支援及び判断支援が例示される。例えば、車両2が自動運転を行っている場合を考える。車両2の前方に存在する信号機に日光が当たっている場合、信号機の灯火状態の認識の精度が低下する。灯火状態を認識することができない場合、どのような行動をどのタイミングで実行すべきか判断することも困難となる。このような場合、オペレータOPによる灯火状態の認識支援、及び/又は、オペレータOPによる灯火状態の認識の結果に基づいた車両2の行動の判断支援が行われる。
【0026】
遠隔支援には、遠隔運転も含まれる。遠隔運転では、例えば、オペレータOPは、車両2の周囲が映るカメラ画像、車両2の室内が映るカメラ画像などを参考にして、操舵、加速、及び減速の少なくとも1つの車両2の運転操作を行う。
【0027】
図1には、管理サーバ1と車両2(より正確には、車両2に搭載される端末)の間でやり取りされるデータCOM12及びCOM21と、管理サーバ1とオペレータ端末3の間でやり取りされるデータCOM13及びCOM31とが描かれている。データCOM12は、管理サーバ1から車両2に送信される。データCOM21は、車両2から管理サーバ1に送信される。データCOM13は、管理サーバ1からオペレータ端末3に送信される。データCOM31は、オペレータ端末3から管理サーバ1に送信される。
【0028】
データCOM21としては、車両2を識別するデータ、車両2の周囲が映るカメラ画像のデータ、車両2の室内が映るカメラ画像のデータなどが例示される。データCOM21としては、車両2が遠隔支援を要求するときの各種データ(例えば、車両2を識別するデータ、カメラ画像のデータ、遠隔支援内容を示すデータなど)が例示される。データCOM13としては、車両2に対する遠隔支援に対応するオペレータOPの選定結果に対応するデータが例示される。データCOM31及びデータCOM12としては、オペレータOPによる認識支援及び判断支援のデータが例示される。車両2の遠隔運転が行われる場合、データCOM31及びデータCOM12には運転操作のデータが含まれている。
【0029】
2.自動運転機能
図2は、車両2の自動運転機能を説明する図である。図2には、車両2のデータ処理装置21が描かれている。データ処理装置21は、車両2の挙動を制御するコンピュータである。典型的に、データ処理装置21は、車両2に搭載されている。データ処理装置21の少なくとも一部の機能は、車両2の外部に設けられた外部装置の機能として実現されてもよい。つまり、データ処理装置21の少なくとも一部の機能は、車両2と外部装置とで分散的に実現されてもよい。
【0030】
データ処理装置21は、例えば、車両2の自動運転のための車両制御を行う。この車両制御では、例えば、車両2が目標軌道TRに追従するように、車両2の操舵、加速及び減速が制御される。目標軌道TRは、車両2が走行すべき軌道である。目標軌道TRは、例えば、車両2の出発地から目的地までの走行ルートに基づいて生成される。走行ルートは、例えば、ナビゲーションシステム(不図示)により演算される。目標軌道TRは、車両2の周辺情報に基づいて生成されてもよいし、走行ルートと周辺情報の組み合わせに基づいて生成されてもよい。
【0031】
目標軌道TRは、例えば、自動運転のための車両制御における目標制御値TCiの集合を含んでいる。目標制御値TCiとしては、車両2が通過すべき目標位置[Xi、Yi]が例示される。図2に示される例において、X方向は車両2の前方方向であり、Y方向はX方向と直交する平面方向である。但し、座標系(X,Y)は、図2で示された例に限られない。目標位置[Xi、Yi]は、目標軌道TR上に所定間隔(例えば、1~2m)で設定される。目標位置[Xi、Yi]は、例えば、現在時刻から数秒~数十秒先まで設定される。
【0032】
目標制御値TCiは、目標位置[Xi、Yi]と、目標位置[Xi、Yi]における車両2の目標速度[VXi、VYi]との組み合わせでもよい。目標速度[VXi、VYi]の代わりに、目標位置[Xi、Yi]における目標時刻が用いられてもよい。目標時刻が用いられる場合、目標制御値TCiは、目標時刻での車両2の方位を更に含んでいてもよい。目標制御値TCiは、目標位置[Xi、Yi]及び目標速度[VXi、VYi]に加えて、目標位置[Xi、Yi]における車両2の目標ヨー角、及び、目標位置[Xi、Yi]における車両2の目標加速度の少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0033】
目標軌道TRに車両2を追従させるため、自動運転のための車両制御では、目標制御値TCiに対応する目標車両状態と、車両2の現在の車両状態との間の偏差(例えば、位置偏差、速度偏差、時刻偏差、ヨー角偏差、速度偏差など)が計算される。この車両制御では、また、この偏差が減少するように車両2が有する走行装置(アクチュエータ)の制御指令値が計算される。つまり、制御指令値は、現在の車両状態を目標車両状態に制御するための指令値である。走行装置には、操舵装置、駆動装置及び制動装置が含まれる。そして、制御指令値に基づいて走行装置が制御される。
【0034】
3.車両制御モードMD
実施形態では、自動運転のための車両制御モードMDが設定される。車両制御モードMDの設定は管理サーバ1において行われる。車両制御モードMDの情報は、車両制御モードMDが設定される都度、管理サーバ1から車両2に送信される。車両2は、この車両制御モードMDの情報を参照して自動運転のための車両制御を行う。以下、管理サーバ1から車両2に送信される車両制御モードMDの情報を「モード情報MDE」とも称す。モード情報MDEは、図1に示したデータCOM12に含まれている。
【0035】
図3は、実施形態において設定される車両制御モードMDの例を説明する図である。図3に示される例では、効率重視モード(アグレッシブモード又はAGGモード)、標準モード(モデレートモード又はMDRモード)、準安全重視モード(セミコンサーバティブモード又はSCNモード)、安全重視モード(コンサーバティブモード又はCNSモード)及び安全停止モード(セーフストップモード)を含む5種類の車両制御モードMDが車両制御モードMDとして設定されている。
【0036】
安全停止モードを除く4種類の車両制御モードMDは、走行安全に関する制約の厳しさにおいて異なる。この制約は、安全重視モードにおいて最も厳しく、準安全重視モード、標準モード、効率重視モードの順に緩くなっている。尚、安全停止モードは、走行安全に関する制約に縛られない車両制御モードMDである。安全停止モードが設定される場合は、車両2を路肩又は路側帯に停止させる車両制御が行われる。
【0037】
「走行安全に関する制約の厳しさ」は、例えば、ナビゲーションシステムによって演算される走行ルートの複数の候補を、以下に例示する項目の少なくとも1つに着目することによって評価することができる。
【0038】
例えば、走行ルートの複数の候補が、一般道と高速道の両方を通るルートである場合を考える。この場合、一般道を通る距離の割合が高くなるほど走行安全のために車両が認識すべき情報量が増えることが予想される。また、高速道を通る距離の割合が高くなるほど、走行ルートを通る際に必要となる車線の総変更回数、右折及び左折といった進行方向の総変更回数が少なく済むことが予想される。そのため、一般道を通る距離の割合が高い走行ルートの候補は「走行安全に関する制約の厳しい」候補であると評価でき、一般道を通る距離の割合が低い走行ルートの候補は「走行安全に関する制約の緩い」候補であると評価できる。
【0039】
別の例では、走行ルートの複数の候補が、市街地と郊外の両方を通るルートである場合を考える。この場合、市街地を通る距離の割合が高くなるほど走行安全のために車両が認識すべき情報量が増えることが予想される。そのため、市街地を通る距離の割合が高い走行ルートの候補は、「走行安全に関する制約の厳しい」候補であると評価できる。尚、市街地と郊外の区別は、地図情報(人口密度情報)に基づいて行うことができる。
【0040】
また別の例では、走行ルートの複数の候補が、走行ルートが通る地域における交通量(例えば、単位時間当たりの車両及び歩行者の通行量)の情報を含んでいる場合を考える。この場合、交通量が多くなるほど走行安全のために車両が認識すべき情報量が増えることが予想される。そのため、交通量が多い走行ルートの候補は、「走行安全に関する制約の厳しい」候補であると評価できる。尚、走行ルートが通る地域は、例えば、所定面積刻み(例えば、50~100m刻み)で地図を分割したときの単位区域を、この走行ルートに沿って繋げることで表すことができる。また、走行ルートが通る地域における交通量は、走行ルートに沿って繋げられた単位区域における交通量を足し合わせることで計算することができる。
【0041】
上述した一般道を通る距離の割合、市街地を通る距離の割合、走行ルートが通る地域における交通量といった評価項目によれば、走行ルートの複数の候補を「走行安全に関する制約の厳しさ」という観点でランク分けすることができる。実施形態では、このランクの高さに応じてこれらの候補を上述した4種類の車両制御モードMD(つまり、安全停止モードを除いた4種類の車両制御モードMD)に関連付ける処理が行われる。
【0042】
「走行安全に関する制約の厳しさ」の別の評価例としては、自動運転のための車両制御において使用される各種の制限値、閾値及び変数が挙げられる。
【0043】
車両制御において使用される各種制限値としては、速度、加速度(又は減速度)、ジャーク、操舵角速度といった目標制御値の上限又は下限が例示される。目標制御値の上限又は下限が多段階で設定されることで、「走行安全に関する制約の厳しさ」に違いを設けることができる。
【0044】
車両制御において使用される各種閾値としては、先行車両に追従する車両制御が行われるときの車間距離(又は車間時間)、障害物との衝突を回避する車両制御が行われるときの横方向のマージン距離、この障害物の横を通過するときの速度、この障害物の横を通過するときの現在走行中の車線からのはみ出し許容量などが例示される。車線を変更する車両制御の実行の可否判断に使用される距離(例えば、並走する2台の車両の間に割り込む車線変更を行うときの、これらの車両の間の距離)も、閾値の一例である。このような閾値が多段階で設定されることで、「走行安全に関する制約の厳しさ」に違いを設けることができる。
【0045】
車両制御において使用される各種変数としては、障害物との衝突リスク、車両の死角から移動物体が飛び出すリスクなどの計算に使用される変数が例示される。この変数としては、障害物又は移動物体の将来位置を予測するモデルに入力する変数(想定する加速度、許容誤差など)が例示される。車両制御において使用される変数には、車両により認識された物体やその状態(例えば、信号機とその灯火色)の認識結果の信頼度も含まれる。このような変数が多段階で設定されることで、「走行安全に関する制約の厳しさ」に違いを設けることができる。
【0046】
実施形態では、上述した各種の制限値、閾値及び変数が、それぞれ「走行安全に関する制約の厳しさ」という観点で事前に少なくとも4段階にランク分けされている。また、このランク分けされた各種の制限値、閾値及び変数が、上述した4種類の車両制御モードMDに関連付けられている。
【0047】
4.車両制御モードMDの選択例
実施形態では、上述した5種類の車両制御モードMD(つまり、安全停止モードを含む全ての車両制御モードMD)の選択が、車両2に対する遠隔支援の必要性NDSと、この遠隔支援に対応する遠隔支援側の状態CNDの少なくとも一方に基づいて行われる。
【0048】
4-1.遠隔支援の必要性NDS
必要性NDSの有無は、管理サーバ1において判定される。必要性NDSの有無を判定するための情報は、車両2、管理サーバ1又は任意の予測機から提供される。
【0049】
例えば、車両2は、車両2の周囲が映るカメラ画像に含まれる物体の認識を行う。また、車両2は、認識された物体の動作の検出を行う。例えば、周囲画像に含まれる物体の認識が困難な場合、車両2は管理サーバ1に対し、この物体の認識を行うことを要求する。尚、この要求情報を管理サーバ1が受信した場合、必要性NDSが有ると判定される。別の例では、物体の認識は行われたが、この物体の不自然な動作が検出された場合、車両2は管理サーバ1に対し、この物体の状態の確認を行うことを要求する。この要求情報を管理サーバ1が受信した場合も、必要性NDSが有ると判定される。
【0050】
車両2は、車両2の室内が映るカメラ画像に含まれる乗員(ドライバ)の状態の認識を行ってもよい。そして、ドライバの異常状態が認識された場合、車両2は管理サーバ1に対し、この異常状態の確認を行うことを要求してもよい。この要求情報を管理サーバ1が受信した場合も、必要性NDSが有ると判定される。車両2は、カメラ以外の認識センサからの情報に基づいて、車両2の周囲の物体の動作の検出を行ってもよい。そして、この物体の不自然な動作が検出された場合、車両2は管理サーバ1に対し、この物体の状態の確認を行うことを要求してもよい。この要求情報を管理サーバ1が受信した場合も、必要性NDSが有ると判定される。
【0051】
管理サーバ1は、車両2のカメラ画像(例えば、周囲画像、室内画像)や、カメラ画像以外の情報(例えば、カメラ以外の認識センサからの情報、車両2の内部センサからの情報)を適宜取得することができる。そのため、車両2が有する物体認識機能や、ドライバ状態認識機能が付与されている場合、管理サーバ1は、車両2のカメラ画像に含まれる物体の認識、この認識された物体の動作の検出や、車両2のドライバの状態の認識を行うことができる。そして、物体の不自然な動作が検出された場合、ドライバの異常状態が認識された場合、又は、車両2の異常状態が検出された場合、管理サーバ1は、必要性NDSが有ると判定する。
【0052】
任意の予測機は、例えば、管理サーバ1の内部に形成される。任意の予測機は、管理サーバ1の外部に形成されてもよい。任意の予測機は、例えば、車両2のカメラ画像の時系列データ、他車両のカメラ画像の時系列データ、交差点などに設置されたインフラカメラの画像の時系列データ、又は、遠隔支援サービスの提供履歴データ(例えば、時間帯及び場所)を用いた機械学習により、車両2に対する遠隔支援の発生を予測する。そして、車両2に対する遠隔支援の発生が予測された場合、任意の予測機は、予測情報を生成して管理サーバ1に送信する。この予測情報を受信した場合、管理サーバ1は、必要性NDSが有ると判定する。
【0053】
車両2、管理サーバ1又は任意の予測機から提供された情報に基づいて、管理サーバ1は必要性NDSの有無を判定する。そして、この判定の結果に基づいて、管理サーバ1は、上述した5種類の車両制御モードMDの内から1つの車両制御モードMDを選択する。
【0054】
図4は、必要性NDSの有無の判定結果に基づいた車両制御モードMDの選択例を説明する図である。図4に示される第1の例では、必要性NDSが無い(NO)と判定された場合にはAGGモードが選択され、必要性NDSが有る(YES)と判定された場合にはMDRモードが選択される。この例において、AGGモードは本開示の「第1モード」に該当し、MDRモードは本開示の「第2モード」に該当する。
【0055】
ここで、第1モードと第2モードの違いは、「安全に関する制約の厳しさ」である。即ち、第2モードは、第1モードよりも走行安全に関する制約が厳しい。そして、AGGモードとMDRモードの関係は、第1モードと第2モードの関係にある。
【0056】
図4に示される第2の例では、必要性NDSが無い(NO)と判定された場合にはMDRモードが選択され、必要性NDSが有る(YES)と判定された場合にはSCNモードが選択される。この例において、MDRモードは本開示の「第1モード」に該当し、SCNモードは本開示の「第2モード」に該当する。そして、MDRモードとCRモードの関係は、第1モードと第2モードの関係にある。
【0057】
4-2.遠隔支援側の状態CND
遠隔支援側とは、管理サーバ1、オペレータOP及びオペレータ端末3を含む、車両2に対する遠隔支援を行うシステム全体を指す。遠隔支援側の状態CNDは、遠隔支援に対応する準備ができているレディ状態(RD状態)と、遠隔支援に対応する準備ができていないアンレディ状態(URD状態)とに大別される。アンレディ状態は、レディ状態への切り替えの準備ができているアヴェイラブル状態(AV状態)と、この替えの準備ができていないアンアヴェイラブル状態(UAV状態)とに細分化される。
【0058】
状態CNDが上述した3種類の状態の何れであるかの特定は、例えば、車両2に対する遠隔支援に対応する予定のオペレータOP(つまり、対応者の候補)の選定状態に基づいて行われる。具体的に、対応者の候補の選定が完了し、この候補からの承認信号が検出されている場合、状態CNDはレディ状態に該当すると特定される。対応者の候補の選定が完了しているが、この候補からの承認信号が検出されていない場合、状態CNDはアンレディ状態(アヴェイラブル状態)に該当すると特定される。対応者の候補の選定が完了しておらず、かつ、対応者の候補が不足している場合、状態CNDはアンレディ状態(アンアヴェイラブル状態)に該当すると特定される。
【0059】
別の例では、遠隔支援の実行に際して対応者の候補の内から選出されるオペレータOP(つまり、実務対応者)の状態に基づいて状態CNDが特定される。具体的に、実務対応者の選定が完了し、この実務対応者からの承認信号が検出されている場合、状態CNDはレディ状態に該当すると特定される。車両2が置かれている状況の把握が完了したか否かを実務対応者が管理サーバ1に通知する方式の場合、スイッチ、ボタンなどの通知装置からこの把握が完了したことを示す信号が検出されるまでは、状態CNDがアンレディ状態(アヴェイラブル状態)に該当すると特定される。車両2が置かれている状況の把握が可能であるか否かを実務対応者が管理サーバ1に通知する方式の場合において、スイッチ、ボタンなどの通知装置からこの把握が不可能であることを示す信号が検出されたときは、状態CNDがアンレディ状態(アンアヴェイラブル状態)に該当すると特定される。
【0060】
また別の例では、管理サーバ1と車両2の間の通信状態、管理サーバ1とオペレータOPの端末の間の通信状態に基づいて状態CNDが特定される。具体的に、管理サーバ1と車両2の間、又は、管理サーバ1とオペレータ端末3の間に通信遅延が生じている場合、この通信遅延のレベルに応じて状態CNDがアンレディ状態(アヴェイラブル状態又はアンアヴェイラブル状態)に該当すると特定される。
【0061】
更に別の例では、車両2の遠隔支援を行うシステムの状態に基づいて状態CNDが特定される。具体的に、システムの状態が正常の場合、状態CNDはレディ状態に該当すると特定される。システムの状態が異常の場合、異常のレベルに応じて状態CNDはアンレディ状態(アヴェイラブル状態又はアンアヴェイラブル状態)に該当すると特定される。
【0062】
上述した対応者の候補の選定状態、実務対応者の状態、管理サーバ1と車両2の間又は管理サーバ1とオペレータ端末3の間の通信状態、又は、車両2の遠隔支援を行うシステムの状態の情報に基づいて、管理サーバ1は、状態CNDが上述した3種類の状態の何れであるかの特定を行う。そして、この特定の結果に基づいて、管理サーバ1は、上述した5種類の車両制御モードMDの内から1つの車両制御モードMDを選択する。
【0063】
図5及び6は、状態CNDの特定結果に基づいた車両制御モードMDの選択例を説明する図である。図5に示される第1の例では、状態CNDがRD状態であると特定された場合はMDRモードが選択され、状態CNDがURD状態であると特定された場合はSCNモードが選択される。この例において、MDRモードは本開示の「第1モード」に該当し、SCNモードは本開示の「第2モード」に該当する。MDRモードとSCNモードの関係が第1モードと第2モードの関係にあることは既述のとおりである。
【0064】
図5に示される第2の例では、状態CNDがRD状態であると特定された場合はSCNモードが選択され、状態CNDがURD状態であると特定された場合はCNSモードが選択される。この例において、SCNモードは本開示の「第1モード」に該当し、CNSモードは本開示の「第2モード」に該当する。そして、SCNモードとCNSモードの関係は、第1モードと第2モードの関係にある。
【0065】
図6に示される第1の例では、状態CNDがRD状態であると特定された場合にはMDRモードが選択され、状態CNDがURD状態(AV状態)であると特定された場合にはSCNモードが選択され、状態CNDがURD状態(UAV状態)であると特定された場合にはCNSモードが選択される。この例において、MDRモードは本開示の「第1モード」に該当し、SCNモードは本開示の「第3モード」に該当し、CNSモードは本開示の「第2モード」に該当する。
【0066】
ここで、第1モード、第2モード及び第3モードの違いは、「安全に関する制約の厳しさ」である。即ち、第2モードは、第1モードよりも走行安全に関する制約が厳しい。また、第3モードは、第1モードよりも走行安全に関する制約が厳しく、第2モードよりも走行安全に関する制約が緩い。そして、MDRモードとCNSモードとSCNモードの関係は、第1モード、第2モード及び第3モードの関係にある。
【0067】
図6に示される第2の例では、状態CNDがRD状態であると特定された場合にはSCNモードが選択され、状態CNDがURD状態(AV状態)であると特定された場合にはCNSモードが選択され、状態CNDがURD状態(UAV状態)であると特定された場合にはセーフストップモードが選択される。この例において、SCNモードは本開示の「第1モード」に該当し、CNSモードは本開示の「第2モード」に該当し、セーフストップモードは本開示の「第4モード」に該当する。SCNモードとCNSモードの関係が第1モードと第2モードの関係にあることは既述のとおりである。
【0068】
4-3.必要性NDSと状態CNDの組み合わせ
図4に示した例では、遠隔支援の必要性NDSに基づいて車両制御モードMDが選択された。図5及び6に示した例では、遠隔支援側の状態CNDに基づいて車両制御モードMDが選択された。図7に示される例では、遠隔支援の必要性NDSと遠隔支援側の状態CNDの組み合わせに基づいて、車両制御モードMDが選択される。
【0069】
図7に示される第1の例では、必要性NDSが無い(NO)と判定された場合において、状態CNDがRD状態であると特定されたときにはMDRモードが選択され、状態CNDがURD状態(AV状態)であると特定されたときにはSCNモードが選択され、状態CNDがURD状態(UAV状態)であると特定されたときにはCNSモードが選択される。つまり、この第1の例は、必要性NDSが無い(NO)と判定された場合に、図6の第1の例を適用した例である。
【0070】
図7に示される第2の例では、必要性NDSが有る(YES)と判定された場合において、状態CNDがRD状態であると特定されたときにはSCNモードが選択され、状態CNDがURD状態(AV状態)であると特定されたときにはCNSモードが選択され、状態CNDがURD状態(UAV状態)であると特定されたときにはセーフストップモードが選択される。つまり、この第2の例は、必要性NDSが有る(YES)と判定された場合に、図6の第2の例を適用した例である。
【0071】
このように、実施形態によれば、車両2に対する遠隔支援の必要性NDSと、この遠隔支援に対応する遠隔支援側の状態CNDの少なくとも一方に基づいて車両制御モードMDが設定され、この車両制御モードMDに従って車両2の自動運転のための車両制御が行われる。そのため、例えば、必要性NDSが無し(NO)から有り(YES)に切り替わったときに、遠隔支援が開始されるまでの間の自動運転を適切に行うことが可能となる。必要性NDSが有り(YES)から無し(NO)に切り替わったときにも、自動運転の再開時の車両制御を適切に行うことが可能となる。
【0072】
また、実施形態によれば、必要性NDSが無し(NO)から有り(YES)に切り替わったときの遠隔支援側の状態CNDに応じて、遠隔支援が開始されるまでの間の自動運転を適切に行うことが可能となる。また、必要性NDSが有り(YES)から無し(NO)に切り替わったときの遠隔支援側の状態CNDに応じて、自動運転の再開時の車両制御を適切に行うことが可能となる。このことは、必要性NDSの切り替わりが頻繁に起こるようなときの自動運転の実行の安定性を高めることが期待される。故に、実施形態によれば、車両2の乗員に安心感を与え、又は、この車両2の周囲の交通流に与える影響を最小限に抑えることが期待される。
【0073】
5.システムの構成例
図8~10を参照しながら遠隔支援システムの構成例を説明する。図8は、管理サーバ1の構成例を示すブロック図である。図9は、車両2の構成例を示すブロック図である。図10は、オペレータ端末3の構成例を示すブロック図である。
【0074】
5-1.管理サーバ1の構成例
図8に示される例では、管理サーバ1は、データ処理装置11と、データベース12と、通信装置13とを含んでいる。尚、データベース12及び通信装置13と、データ処理装置11とは所定のネットワークで接続されている。
【0075】
データ処理装置11は、少なくとも1つのプロセッサ14と、少なくとも1つのメモリ15と、を備えている。プロセッサ14は、CPU(Central Processing Unit)を含んでいる。メモリ15は、DDRメモリなどの揮発性のメモリであり、プロセッサ14が使用する各種プログラムの展開及び各種データの一時保存を行う。プロセッサ14が使用する各種プログラムには、実施形態に係る制御プログラムが含まれている。プロセッサ14が使用する各種データには、データベース12に格納されたデータが含まれている。
【0076】
データベース12に格納されるデータとしては、必要性NDSの有無の判定に使用されるデータDNDSが例示される。データDNDSは、例えば、車両2のカメラ画像(例えば、周囲画像、室内画像)のデータ、このカメラ画像の時系列データ、カメラ画像以外のデータ、及び、このカメラ画像以外の時系列データを含んでいる。データDNDSには、上述した任意の予測機から受信した予測情報のデータも含まれる。管理サーバ1がこの任意の予測機としての機能を有する場合、データDNDSには、他車両のカメラ画像の時系列データ、インフラカメラの画像の時系列データ、及び、遠隔支援サービスの提供履歴データも含まれる。
【0077】
データベース12に格納されるデータの別の例としては、また、遠隔支援側の状態CNDの特定に使用されるデータDCNDが挙げられる。データDCNDは、例えば、車両2に対する遠隔支援に対応する予定のオペレータOP(つまり、対応者の候補)の選定状態のデータ、及び、この候補からの承認信号の受信の有無に関するデータを含んでいる。別の例では、データDCNDには、遠隔支援の実行に際して対応者の候補の内から選出されるオペレータOP(つまり、実務対応者)の状態のデータ、及び、この実務対応者からの承認信号の受信の有無に関するデータも含まれる。車両2が置かれている状況の把握が完了したか否かを実務対応者が管理サーバ1に通知する方式の場合、データDCNDには、この把握が完了したことを示す信号の受信の有無に関するデータや、この把握が不可能であることを示す信号の受信の有無に関するデータも含まれる。
【0078】
また別の例では、データDCNDには、管理サーバ1と車両2の間の通信状態のデータや、管理サーバ1とオペレータOPの端末の間の通信状態のデータが含まれている。更に別の例では、車両2の遠隔支援を行うシステムの状態のデータが、データDCNDに含まれている。
【0079】
通信装置13は、通信回線網を介して外部装置と接続する。通信回線網は特に限定されず、有線及び無線のネットワークを使用できる。通信回線網は、例えば、インターネット回線、WWW(World Wide Web)、電話回線、LAN(Local Area Network)、SAN(Storage Area Network)、DTN(Delay Tolerant Network)が例示される。無線通信としては、例えば、WiFi(Wireless Fidelity)、Bluetooth(登録商標)が例示される。無線通信は、管理サーバ1が直接通信する形態(Ad Hoc通信)でもよいし、アクセスポイントを介した間接通信でもよい。通信装置13の通信先には、車両2及びオペレータ端末3が含まれている。
【0080】
5-2.車両2の構成例
図9に示される例では、車両2は、データ処理装置21と、カメラ22と、センサ類23と、通信装置24と、走行装置25とを含んでいる。尚、カメラ22、走行装置25等の要素と、データ処理装置21とは所定のネットワークで接続されている。
【0081】
データ処理装置21は、車両2が取得した各種データを処理するためのコンピュータである。データ処理装置21は、少なくとも1つのプロセッサ26と、少なくとも1つのメモリ27とを備える。プロセッサ26は、CPUを含んでいる。メモリ27は、プロセッサ26が使用する各種プログラムの展開及び各種データの一時保存を行う。データ処理装置21が取得した各種データは、メモリ27に格納される。
【0082】
プロセッサ26は、メモリ27に格納されたプログラムを実行することによって、ナビゲーションシステムによって逐次演算される走行ルートの複数の候補を「走行安全に関する制約の厳しさ」という観点でランク分けする処理を行う。プロセッサ26は、また、管理サーバ1からモード情報MDEを受信した場合、メモリ27に格納されたプログラムを実行することによって、ランク分けされた走行ルートの候補の内からこのモード情報MDEに対応する候補を選択する処理を行う。
【0083】
プロセッサ26は、また、メモリ27に格納されたプログラムを実行することによって、車両2の自動運転のための車両制御において使用される各種の制限値、閾値及び変数の設定を行う。管理サーバ1からモード情報MDEを受信した場合、プロセッサ26は、このモード情報MDEに対応する各種の制限値、閾値及び変数の設定を行う。尚、これらの制限値、閾値及び変数が、それぞれ「走行安全に関する制約の厳しさ」という観点で事前に少なくとも4段階にランク分けされていることは既述のとおりである。
【0084】
プロセッサ26は、また、メモリ27に格納されたプログラムを実行することによって、車両2の遠隔支援のための制御を行う。例えば、車両2は、メモリ27に格納されたプログラムを実行することによって、遠隔支援が必要であるか否かを判定する。遠隔支援が必要であると判定した場合、プロセッサ26は、遠隔支援の要求情報を生成し、通信装置24を介して管理サーバ1に送信する。
【0085】
カメラ22は、車両2の周囲及び車両2の室内を撮像する。センサ類23は、カメラ以外の認識センサ(外部センサ)を含んでいる。この認識センサとしては、LiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)やレーダが例示される。センサ類23は、また、車両2の内部センサを含んでいる。この内部センサとしては、車速センサ、加速度センサ、及びヨーレートセンサが例示される。センサ類23は、また、車両2の位置情報を取得するセンサ(GPSセンサ)を含んでいる。
【0086】
通信装置24は、無線ネットワークの基地局との間で無線通信を行う。この無線通信の通信規格としては、4G、LTE、または5G等の移動体通信の規格が例示される。通信装置24の接続先には、管理サーバ1が少なくとも含まれる。管理サーバ1との通信において、通信装置24は、カメラ22及びセンサ類23から受信した各種データを管理サーバ1に送信する。遠隔支援の要求情報が生成された場合、通信装置24は、この要求情報のデータを管理サーバ1に送信する。通信装置24は、また、モード情報MDEのデータを管理サーバ1から受信する。
【0087】
走行装置25は、例えば、駆動装置と、ステアリング装置と、ブレーキ装置とを含んでいる。駆動装置は、車両2のタイヤを駆動する。ステアリング装置は、車両2のタイヤを転舵する。ブレーキ装置は、車両2に制動力を付与する。車両2の加速は、駆動装置の制御によって行われる。車両2の減速は、ブレーキ装置の制御によって行われる。駆動装置がモータの場合、モータの制御による回生ブレーキを利用して車両2の制動が行われてもよい。車両2の操舵は、ステアリング装置の制御によって行われる。
【0088】
5-3.オペレータ端末3の構成例
図10に示される例では、オペレータ端末3は、データ処理装置31と、ディスプレイ32と、入力装置33と、通信装置34とを含んでいる。尚、ディスプレイ32、入力装置33等の要素と、データ処理装置31とは所定のネットワークで接続されている。
【0089】
データ処理装置31は、車両2が取得した各種データを処理するためのコンピュータである。データ処理装置31は、少なくとも1つのプロセッサ35と、少なくとも1つのメモリ36とを備える。プロセッサ35は、CPUを含んでいる。メモリ36は、プロセッサ35が使用する各種プログラムの展開及び各種データの一時保存を行う。データ処理装置31が取得した各種データや、入力装置33からの入力信号に基づいて生成された各種データはメモリ36に格納される。前者のデータとしては、管理サーバ1から受信した車両2のカメラ画像のデータが例示される。後者のデータとしては、認識支援及び判断支援のデータが例示される。車両2の遠隔運転が行われる場合、後者のデータには、運転操作のデータも含まれる。
【0090】
ディスプレイ32は、車両2に対する遠隔支援を行うためのカメラ画像が出力される装置である。ディスプレイ32の総数は少なくとも1である。車両2の周囲のカメラ画像や、車両2の室内のカメラ画像を別々に出力するために、ディスプレイ32の総数は少なくとも2であることが望ましい。
【0091】
入力装置33は、オペレータOPにより操作される装置である。入力装置33は、例えば、オペレータOPによる入力を受け付ける入力部と、この入力に基づいて認識支援及び判断支援のデータを生成及び出力する制御回路と、を備えている。入力部としては、タッチパネル、マウス、キーボード、ボタン及びスイッチが例示される。オペレータOPによる入力としては、ディスプレイ32に出力されたカーソルの移動操作と、ディスプレイ32に出力されたボタンの選択操作と、が例示される。
【0092】
車両2の遠隔運転が行われる場合、入力装置33は走行用の入力装置を備えていてもよい。この走行用の入力装置としては、ステアリングホイール、シフトレバー、アクセルペダル及びブレーキペダルが例示される。
【0093】
通信装置34は、通信回線網を介して外部装置と接続する。通信回線網は特に限定されず、有線及び無線のネットワークを使用できる。通信装置34の通信先には、管理サーバ1が少なくとも含まれる。管理サーバ1との通信において、通信装置34は、遠隔支援側の状態CNDの特定に使用される各種データを管理サーバ1に送信する。この各種データとしては、車両2に対する遠隔支援に対応する予定のオペレータOPの承認信号、遠隔支援の実行に際して対応者の候補の内から選出されるオペレータOPの状態のデータなどが例示される。車両2に対する遠隔支援が行われる場合、通信装置34は、認識支援及び判断支援のデータなどを管理サーバ1に送信する。通信装置34は、また、車両2のカメラ画像のデータなどを管理サーバ1から受信する。
【0094】
6.データ処理例
図11は、管理サーバ1(プロセッサ14)において実行される、実施形態に特に関連する処理の流れを示すフローチャートである。尚、説明の重複を省くため、図11では、図7で説明した必要性NDSと状態CNDの組み合わせに基づいた車両制御モードMDの選択処理例について説明する。図11に示されるルーチンは、例えば、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0095】
図11に示されるルーチンでは、まず、車両2に対する遠隔支援の必要性NDSが有るか否かが判定される(ステップS1)。必要性NDSが有るか否かの判定は、データベース12に格納されたデータDNDSに基づいて行われる。ステップS1の判定結果が肯定的な場合(つまり、必要性NDSが有り(YES)の場合)は、ステップS2以降の処理が行われる。ステップS1の判定結果が否定的な場合(つまり、必要性NDSが有り(NO)の場合)は、ステップS7以降の処理が行われる。
【0096】
ステップS2の処理では、遠隔支援側の状態CNDがRD状態であるか否かが判定される。状態CNDの特定は、データベース12に格納されたデータDCNDに基づいて行われる。尚、車両2に対する遠隔支援に対応する準備ができている状態がRD状態であることについては既述のとおりである。
【0097】
ステップS2の判定結果が肯定的な場合(つまり、状態CNDがRD状態である場合)は、車両制御モードMDとしてSCNモードが選択される(ステップS3)。ステップS2の判定結果が否定的な場合(つまり、状態CNDがURD状態である場合)は、ステップS4以降の処理が行われる。尚、車両2に対する遠隔支援に対応する準備ができていない状態がURD状態であることについては既述のとおりである。
【0098】
ステップS4の処理では、遠隔支援側の状態CNDがAV状態であるか否かが判定される。状態CNDの特定は、ステップS2の処理において既に行われている。ステップS4の処理は、ステップS2の処理結果を利用して行われる。尚、RD状態への切り替えの準備ができている状態がAV状態であることは既述のとおりである。
【0099】
ステップS4の判定結果が肯定的な場合(つまり、状態CNDがAV状態である場合)は、車両制御モードMDとしてCNSモードが選択される(ステップS5)。ステップS4の判定結果が否定的な場合(つまり、状態CNDがUAV状態である場合)は、車両制御モードMDとして安全停止モードが選択される(ステップS6)。尚、RD状態への切り替えの準備ができていない状態がUAV状態であることは既述のとおりである。
【0100】
ステップS7の処理では、遠隔支援側の状態CNDがRD状態であるか否かが判定される。つまり、ステップS7の処理の内容は、ステップS2のそれと同じである。ステップS7の判定結果が肯定的な場合(つまり、状態CNDがRD状態である場合)は、車両制御モードMDとしてMDRモードが選択される(ステップS8)。ステップS7の判定結果が否定的な場合(つまり、状態CNDがURD状態である場合)は、ステップS9以降の処理が行われる。
【0101】
ステップS9の処理では、遠隔支援側の状態CNDがAV状態であるか否かが判定される。つまり、ステップS9の処理の内容は、ステップS4のそれと同じである。ステップS9の判定結果が肯定的な場合(つまり、状態CNDがAV状態である場合)は、車両制御モードMDとしてSCNモードが選択される(ステップS10)。ステップS9の判定結果が否定的な場合(つまり、状態CNDがUAV状態である場合)は、車両制御モードMDとしてCNSモードが選択される(ステップS11)。
【0102】
ステップS3、S5、S6、S8、S10又はS11の処理に続いて、これらのステップの処理において選択された車両制御モードMDの情報(つまり、モード情報MDE)が、車両2に送信される(ステップS12)。
【0103】
7.効果
以上説明した実施形態によれば、車両2に対する遠隔支援の必要性NDSと、この遠隔支援に対応する遠隔支援側の状態CNDの少なくとも一方に基づいて車両制御モードMDが設定され、この車両制御モードMDの情報に従って車両2の自動運転のための車両制御が行われる。そのため、例えば、必要性NDSが無し(NO)から有り(YES)に切り替わったときに、車両2に対する遠隔支援が開始されるまでの間の自動運転を適切に行うことが可能となる。必要性NDSが有り(YES)から無し(NO)に切り替わったときにも、自動運転の再開時の車両制御を適切に行うことが可能となる。
【0104】
また、実施形態によれば、必要性NDSが無し(NO)から有り(YES)に切り替わったときの遠隔支援側の状態CNDに応じて、遠隔支援が開始されるまでの間の自動運転を適切に行うことが可能となる。また、必要性NDSが有り(YES)から無し(NO)に切り替わったときの遠隔支援側の状態CNDに応じて、自動運転の再開時の車両制御を適切に行うことが可能となる。このことは、必要性NDSの切り替わりが頻繁に起こるようなときの自動運転の実行の安定性を高めることが期待される。故に、実施形態によれば、車両2の乗員に安心感を与え、又は、この車両2の周囲の交通流に与える影響を最小限に抑えることが期待される。
【符号の説明】
【0105】
1 管理サーバ
2 車両
3 オペレータ端末
11,21,31 データ処理装置
13,24,34 通信装置
14,26,35 プロセッサ
15,27,36 メモリ
MD 車両制御モード
CND 遠隔支援側の状態
MDE モード情報
NDS 遠隔支援の必要性
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
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図10
図11