(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】エネルギ利用情報システム、エネルギ利用情報処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20241112BHJP
G06Q 50/06 20240101ALI20241112BHJP
G06Q 30/0601 20230101ALI20241112BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q50/06
G06Q30/0601 312
(21)【出願番号】P 2022136848
(22)【出願日】2022-08-30
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】増田 泰造
(72)【発明者】
【氏名】関 康伸
(72)【発明者】
【氏名】粟野 宏基
(72)【発明者】
【氏名】中村 智子
(72)【発明者】
【氏名】金子 剛
(72)【発明者】
【氏名】米川 紘輔
【審査官】松浦 かおり
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-049399(JP,A)
【文献】特開2020-091771(JP,A)
【文献】特開2020-170419(JP,A)
【文献】特開2013-102673(JP,A)
【文献】特開2014-213843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された太陽光発電装置により発電された電力エネルギの発電又は使用に関する自然エネルギ利用情報を取得し、取得された該自然エネルギ利用情報の提供希望者と該自然エネルギ利用情報の取得希望者とをマッチングさせるマッチング処理部を具備
し、該取得希望者が取得を希望する取得希望自然エネルギ利用情報が提示され、該マッチング処理部は、提示された該取得希望自然エネルギ利用情報を提供できる可能性のある車両の所有者と該取得希望者とをマッチングさせるエネルギ利用情報システム。
【請求項2】
該自然エネルギ利用情報が、太陽光発電装置により発電された電力エネルギの発電量に関する情報を含む請求項1に記載のエネルギ利用情報システム。
【請求項3】
該自然エネルギ利用情報が、該電力エネルギの発電量に関する情報に加え、該車両に搭載されたバッテリの充電量に関する情報および該車両を駆動するために使用される該電力エネルギの消費量に関する情報の少なくとも一方を含む請求項2に記載のエネルギ利用情報システム。
【請求項4】
該マッチング処理部は、該取得希望自然エネルギ利用情報を各車両の表示画面又は各車両の所有者の携帯端末に表示させる請求項1に記載のエネルギ利用情報システム。
【請求項5】
該マッチング処理部は、該取得希望自然エネルギ利用情報における取得希望自然エネルギを取得可能な予定のある車両所有者と該取得希望者とをマッチングさせる請求項1に記載のエネルギ利用情報システム。
【請求項6】
該自然エネルギ利用情報が、カーボンクレジットによる取引対象であるCO
2
排出削減量に関する情報を含んでいる請求項1に記載のエネルギ利用情報システム。
【請求項7】
コンピュータが、車両に搭載された太陽光発電装置により発電された電力エネルギの発電又は使用に関する自然エネルギ利用情報を取得し、取得された該自然エネルギ利用情報の提供希望者と該自然エネルギ利用情報の取得希望者とをマッチングさせるようにしたエネルギ利用情報処理方法であって、該取得希望者に取得を希望する取得希望自然エネルギ利用情報を提示させ、提示された該取得希望自然エネルギ利用情報を提供できる可能性のある車両の所有者と該取得希望者とをマッチングさせるエネルギ利用情報処理方法。
【請求項8】
車両に搭載された太陽光発電装置により発電された電力エネルギの発電又は使用に関する自然エネルギ利用情報を取得し、取得された該自然エネルギ利用情報の提供希望者と該自然エネルギ利用情報の取得希望者とをマッチングさせるようにしたプログラムであって、該取得希望者に取得を希望する取得希望自然エネルギ利用情報を提示させ、提示された該取得希望自然エネルギ利用情報を提供できる可能性のある車両の所有者と該取得希望者とをマッチングさせるよう、コンピュータに機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエネルギ利用情報システム、エネルギ利用情報処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電装置を設置していて太陽光発電装置により発電された電力の売却を希望する売電者と、太陽光発電装置により発電された電力の買い取りを希望する電力買取者とをマッチングさせるようにした電力売買システムにおいて、発電電力を有価ポイントに換算し、有価ポイントを用いて売電者と電力買取者とをマッチングさせるようにした電力売買システムが公知である(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、現在問題となっている地球温暖化を防ぐための対策として、この太陽光発電のように自然エネルギを用いた発電の活用を広めることが急務であり、そのためには、車両に搭載された太陽光発電装置による発電、即ち、車両を利用した太陽光発電を促進する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明によれば、車両に搭載された太陽光発電装置により発電された電力エネルギの発電又は使用に関する自然エネルギ利用情報を取得し、取得された自然エネルギ利用情報の提供希望者と自然エネルギ利用情報の取得希望者とをマッチングさせるマッチング処理部を具備し、取得希望者が取得を希望する取得希望自然エネルギ利用情報が提示され、マッチング処理部は、提示された取得希望自然エネルギ利用情報を提供できる可能性のある車両の所有者と取得希望者とをマッチングさせるエネルギ利用情報システムが提供される。
更に、本発明によれば、コンピュータが、車両に搭載された太陽光発電装置により発電された電力エネルギの発電又は使用に関する自然エネルギ利用情報を取得し、取得された自然エネルギ利用情報の提供希望者と自然エネルギ利用情報の取得希望者とをマッチングさせるようにしたエネルギ利用情報処理方法であって、取得希望者に取得を希望する取得希望自然エネルギ利用情報を提示させ、提示された取得希望自然エネルギ利用情報を提供できる可能性のある車両の所有者と取得希望者とをマッチングさせるエネルギ利用情報処理方法が提供される。
更に、本発明によれば、車両に搭載された太陽光発電装置により発電された電力エネルギの発電又は使用に関する自然エネルギ利用情報を取得し、取得された自然エネルギ利用情報の提供希望者と自然エネルギ利用情報の取得希望者とをマッチングさせるようにしたプログラムであって、取得希望者に取得を希望する取得希望自然エネルギ利用情報を提示させ、提示された取得希望自然エネルギ利用情報を提供できる可能性のある車両の所有者と取得希望者とをマッチングさせるよう、コンピュータに機能させるプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0006】
車両に搭載された太陽光発電装置により発電された電力エネルギの発電又は使用に関する自然エネルギ利用情報の提供希望者とこの自然エネルギ利用情報の取得希望者とをマッチングさせるシステムを構築することによって、車両を利用した太陽光発電を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、エネルギ利用情報システムの全体図である。
【
図2】
図2は、管理サーバを図解的に示す図である。
【
図4】
図4は、企業等に設置されている通信機器を示す図である。
【
図5】
図5は、自然エネルギ利用情報の一覧表を示す図である。
【
図6】
図6は、取得希望自然エネルギ利用情報の一覧表を示す図である。
【
図7】
図7は、事前登録の手順を説明するための図である。
【
図8】
図8は、基礎情報の送信を行うためのフローチャートである。
【
図9】
図9は、自然エネルギ利用情報の算出を行うためのフローチャートである。
【
図10】
図10は、希望提供条件等の登録の手順を説明するための図である。
【
図11】
図11は、取得希望情報等の登録の手順を説明するための図である。
【
図12】
図12は、マッチング処理を行うためのフローチャートである。
【
図13】
図13は、マッチング処理の手順を説明するための図である。
【
図14】
図14は、マッチング処理の手順を説明するための図である。
【
図15】
図15は、マッチング処理の手順を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、エネルギ利用情報システムの全体図を示している。
図1を参照すると、1は通信ネットワーク、2は通信ネットワーク1の基地局、3は管理サーバ、4は自然エネルギ利用情報の取得を希望する企業、研究所或いは個人(以下、取得希望者と称する)、5は車両、6は車両の所有者が所有する携帯端末を夫々示している。
【0009】
図2は、
図1に示される管理サーバ3を示している。
図2を参照すると、管理サーバ3内には、電子制御ユニット10が設けられている。この電子制御ユニット10はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス11によって互いに接続されたCPU(マイクロプロセッサ)12、ROMおよびRAMからなるメモリ13および入出力ポート14を具備する。また、
図2に示されるように、各種機器15が電子制御ユニット10に接続されており、また、電子制御ユニット10は通信ネットワーク1に接続されている。
【0010】
図3は、
図1に示される車両5の一例を図解的に示している。
図3を参照すると、20は車両5を駆動するための電気モータ、21は電気モータ20の駆動制御を行うための駆動制御装置、22はバッテリ、23は車両5の屋根上に設置された太陽光発電装置、例えば、太陽光発電パネル、24は太陽光発電装置23において発電された電力をバッテリ22の充電用と電気モータ20の駆動用とに分配制御するための電力分配制御装置、25は電子制御ユニットを夫々示す。
図3に示されるように、電子制御ユニット25はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス26によって互いに接続されたCPU(マイクロプロセッサ)27、ROMおよびRAMからなるメモリ28および入出力ポート29を具備する。また、
図3に示されるように、駆動制御装置21および電力分配制御装置24は電子制御ユニット25に接続されており、これら駆動制御装置21および電力分配制御装置24は電子制御ユニット25の出力信号に基づいて制御される。
【0011】
一方、
図3に示されるように、車両5には、車両5の周辺を検出するための車載カメラ、ライダ(LIDAR)、レーダ等からなる各種センサ30,GNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)受信装置31、地図データ記憶装置32、ナビゲーション装置33および表示画面を備えた表示部34が設けられている。GNSS受信装置31は、複数の人工衛星から得られる情報に基づいて、車両5の現在位置(例えば車両5の緯度及び経度)を検出することができる。従って、このGNSS受信装置31により車両5の現在位置を特定することができる。このGNSS受信装置31として、例えば、GPS受信装置が用いられる。
【0012】
これらの各種センサ30、GNSS受信装置31、地図データ記憶装置32、ナビゲーション装置33および表示部34は、電子制御ユニット
25に接続されている。また、車両5には、管理サーバ3と通信を行うための通信装置35が搭載されており、車両5および携帯端末6は、基地局2および通信ネットワーク1を介して管理サーバ3と通信可能である。
図3に示される例では、車両駆動部20、即ち、電気モータは、バッテリ22の充電電力により駆動されるか、或いは、電力分配制御装置24により分配された車両5の駆動用電力により駆動されるか、或いは、バッテリ22の充電電力および電力分配制御装置24により分配された車両5の駆動用電力の双方により駆動される。
【0013】
一方、
図3に示される例では、太陽光発電装置23の発電電圧および発電電流等が検出されており、電子制御ユニット
25では、これらの検出値に基づいて、太陽光発電装置23の発電電力が算出される。この場合、本発明による実施例では、この太陽光発電装置23の発電電力は、太陽光発電装置23による発電量と称される。また、
図3に示される例では、バッテリ22の端子電圧および温度等が検出されており、電子制御ユニット
25では、これらの検出値に基づいて、バッテリ22に充電されている電荷量が算出される。この場合、本発明による実施例では、このバッテリ22に充電されている電荷量は、バッテリ22の充電量と称される。また、
図3に示される例では、電気モータ20の駆動電圧および駆動電流等が検出されており、電子制御ユニット
25では、これらの検出値に基づいて、電気モータ20の駆動電力が算出される。この場合、本発明による実施例では、この電気モータ20の駆動電力は、車両5を駆動するために使用される電力エネルギの消費量と称される。
【0014】
一方、
図1に示される取得希望企業4内には通信機器が設置されており、この通信機器が
図4において符号40で示されている。
図4を参照すると、この通信機器40内には、電子制御ユニット41が設けられている。この電子制御ユニット41もデジタルコンピュータからなり、双方向性バス42によって互いに接続されたCPU(マイクロプロセッサ)43、ROMおよびRAMからなるメモリ44および入出力ポート45を具備する。また、
図4に示されるように、各種機器46が電子制御ユニット41に接続されており、また、電子制御ユニット41は通信ネットワーク1に接続されている。従って、この通信機器40も通信ネットワーク1を介して管理サーバ3と通信可能である。
【0015】
さて、現在問題となっている地球温暖化を防ぐための対策として、太陽光発電装置23による発電のように自然エネルギを用いた発電の活用を広めることが急務であり、そのためには、車両5に搭載された太陽光発電装置23による発電、即ち、車両5を利用した太陽光発電を促進する必要がある。この場合、車両5に搭載された太陽光発電装置23による発電に対する関心を高める有効な手法として、車両5に搭載された太陽光発電装置23により発電された電力エネルギの発電又は使用に関する自然エネルギ利用情報の提供希望者とこの自然エネルギ利用情報の取得希望者とをマッチングさせるシステムを構築することが考えられ、このようなマッチングシステムの構築により、車両を利用した太陽光発電を促進することができるものと考えられる。
【0016】
そこで、本発明による実施例では、車両5に搭載された太陽光発電装置23により発電された電力エネルギの発電又は使用に関する自然エネルギ利用情報の提供希望者とこの自然エネルギ利用情報の取得希望者とをマッチングさせるシステムを構築するようにしている。この場合、自然エネルギ利用情報の提供希望者とこの自然エネルギ利用情報の取得希望者との間のマッチングは、提供希望者と取得希望者間で直接やり取りすることによって行うことも可能であるし、管理サーバ3において行うことも可能であるが、以下、管理サーバ3においてこのマッチングを行う場合を例にとって、本発明について説明する。
【0017】
このように管理サーバ3においてマッチングを行う場合には、管理サーバ3にマッチング処理サイトが設けられ、提供希望者により提供される提供希望自然エネルギ利用情報と取得希望者により提示される取得希望自然エネルギ利用情報とがこのマッチング処理サイトに集約される。この場合、本発明による実施例では、マッチング処理サイトに、
図5に示されるような提供希望自然エネルギ利用情報の一覧表と、
図6に示されるような取得希望自然エネルギ利用情報の一覧表とが作成される。このマッチング処理サイトには、自然エネルギ利用情報の提供希望者および自然エネルギ利用情報の取得希望者がアクセス可能である。次に、これらの自然エネルギ利用情報の一覧表について説明する。
【0018】
最初に、
図5について説明すると、
図5に示す提供希望自然エネルギ利用情報の一覧表には、No.1、No.2、No.3・・・で示される各車両5毎に、提供希望者と、提供希望自然エネルギ利用情報と、希望提供条件とが列挙されている。この場合、提供希望者は、車両5の所有者等である。一方、
図5に示される例では、提供希望自然エネルギ利用情報として、太陽光発電装置23による発電量と、バッテリ22の充電量と、車両5を駆動するために使用される電力エネルギの消費量とが列挙されている。また、
図5に示される例では、これらの発電量、充電量および消費量に加えて、CO
2排出削減量も列挙されている。
【0019】
この場合、本発明による実施例では、内燃機関に代え電気モータ20を用いて車両5を駆動した場合に削減されるCO
2排出量がCO
2排出削減量とされ、このCO
2排出削減量は、車両5を駆動するために使用される電力エネルギの消費量等から算出される。なお、この場合、車両5の所有者には、このCO
2排出削減量に相当する量のCO
2を排出可能とする権利が、取引可能なカーボンクレジットとして付与される。即ち、
図5に示される例では、カーボンクレジットによる取引対象であるCO
2排出削減量に関する情報も列挙されている。また、
図5に示される一覧表において、希望提供条件には、自然エネルギ利用情報を提供することに対する見返りとしての金銭的要求、ポイントその他の取得要求が提示される。
【0020】
なお、
図5の提供希望自然エネルギ利用情報に示される各値は、一定時間毎、例えば、10分毎の、或いは、1時間毎の、或いは1日毎の或る時刻における値を示している。また、
図5の一覧表に示される各値が、1日毎の或る時刻における値を示している場合、各値が、その時刻までの過去1日間の合計値を示している場合と、各値が、その時刻までの過去の全ての値の合計値を示している場合とがある。この場合、
図5の提供希望自然エネルギ利用情報に示される各値が、或る時刻における過去1日間の合計値を示している場合には、
図5において、発電量、充電量、消費量およびCO
2排出削減量は、或る時刻における過去1日間の合計値を示していることになる。
【0021】
次に、
図6について説明すると、
図6に示す取得希望自然エネルギ利用情報の一覧表には、No.1、No.2、No.3・・・で示される各車両5毎に、取得希望者と、取得希望自然エネルギ利用情報と、希望取得条件とが列挙されている。この場合、取得希望者は、前述したように、自然エネルギ利用情報の取得を希望する企業、研究所或いは個人である。一方、図
6に示されるように、取得希望自然エネルギ利用情報は、太陽光発電装置23による発電量と、バッテリ22の充電量と、車両5を駆動するために使用される電力エネルギの消費量と、CO
2排出削減量からなる提供希望自然エネルギ利用情報の一部又は全てである。なお、取得希望自然エネルギ利用情報の欄に記載されている各括弧内のAt
1, Bt
1, Ct
1, Dt
1, Dt
5は取得希望量を表している。
【0022】
また、
図6に示される一覧表において、希望取得条件には、自然エネルギ利用情報を取得することに対する見返りとしての金銭的対価、ポイントその他の取得対価が提示される。また、取得希望者がCO
2を排出可能とする権利の取得を希望する場合には、取得希望者により、提供希望者から提示された提供可能なCO
2排出削減量の一部又は全部についての取得希望が提示され、提供希望者が提示された取得希望を認めると、取得希望者は、取得を希望したCO
2排出削減量に相当する量のCO
2を排出可能とする権利を、カーボンクレジットとして取得することができる。
【0023】
次に、
図7から
図9を参照しつつ、
図5に示される一覧表のうちの提供希望自然エネルギ利用情報の作成方法の一例について説明する。
図7は、管理サーバ3に対して行われる事前登録の手順を示している。
図7を参照すると、
図7のA1で示されるように、最初に、車両5の表示部34の表示画面上において、管理サーバ3の自然エネルギ利用情報の一覧表作成サイトにアクセスし、管理サーバ3の一覧表作成サイトに、車両の形式番号等、車体に関する情報を登録する。次いで、図
7のA2で示されるように、車両5の表示部34の表示画面上において、車両5の所有者名等に関する情報を登録する。これらの登録した情報は管理サーバ3の電子制御ユニット10のメモリ13内に記憶される。車両5の所有者名等に関する情報の登録が完了すると、
図7のA3で示されるように、管理サーバ3において車両5に対して車両IDが付与され、付与された車両IDが車両5に送信されて、車両5の電子制御ユニット25のメモリ28内に記憶される。
【0024】
図8は、提供希望自然エネルギ利用情報の算出のための基礎情報を車両5から管理サーバ3に送信するための基礎情報の送信ルーチンを示している。このルーチンは、車両5の使用が開始されると、車両5の電子制御ユニット25内において一定時間毎、例えば、1秒毎の割り込みにより実行される。
図8を参照すると、初めに、ステップ50において、太陽光発電装置23の発電電流Iaおよび発電電圧Vaが検出される。次いで、ステップ51では、検出された発電電流Iaおよび発電電圧Vaから太陽光発電装置23の発電電力Pa(kw)が算出される。次いで、ステップ52では、バッテリ22の端子電圧Vbおよび温度Tbが検出される。次いで、ステップ53では、電気モータ20の駆動電流Icおよび駆動電圧Vcが検出される。次いで、ステップ54では、検出された駆動電流Icおよび駆動電圧Vcから電気モータ20の駆動電力Pcが算出される。次いで、ステップ55では、各データ、即ち、算出された太陽光発電装置23の発電電力Pa、検出されたバッテリ22の端子電圧Vbおよび温度Tb、算出された電気モータ20の駆動電力Pcが車両IDと共に管理サーバ3に送信され、送信されたこれらのデータは管理サーバ3の電子制御ユニット10のメモリ13内に記憶される。
【0025】
図9は、提供希望自然エネルギ利用情報の算出ルーチンを示している。このルーチンは、管理サーバ3の電子制御ユニット10内において繰り返し実行される。
図9を参照すると、初めに、ステップ60において、車両5から送信された基礎情報を受信したか否かが判別される。基礎情報を受信したと判別されたときにはステップ61に進んで、太陽光発電装置23の発電電力Paの積算作業が行われ、発電電力Paの積算値がΣPaとされる。また、この発電電力Paの積算値ΣPaに基づいて、積算を開始してからの一定時間(例えば、1時間或いは1日)内における太陽光発電装置23の発電量(kwh)が算出される。次いで、ステップ62では、バッテリ22の端子電圧Vbおよび温度Tbに基づいて、バッテリ22の現在の充電量Qが算出される。
【0026】
次いで、ステップ63では、電気モータ20の駆動電力Pcの積算作業が行われ、電気モータ20の駆動電力Pcの積算値がΣPcとされる。また、この電気モータ20の駆動電力Pcの積算値ΣPcに基づいて、積算を開始してからの一定時間(例えば、1時間或いは1日)内における電力エネルギの消費量(kwh)が算出される。一方、前述したように、本発明による実施例では、内燃機関に代え電気モータ20を用いて車両5を駆動した場合に削減されるCO
2排出量がCO
2排出削減量とされ、このCO
2排出削減量は、車両5を駆動するために使用される電力エネルギの消費量から算出される。従って、ステップ64では、ステップ73において算出された電気モータ20の駆動電力Pcの積算値ΣPcに基づいて、積算を開始してからの一定時間(例えば、1時間或いは1日)内におけるCO
2排出削減量Rが算出される。このようにして、
図5に示される一覧表のうちの提供希望者の欄および提供希望自然エネルギ利用情報の欄の作成が行われる。
【0027】
図10は、車両5において行われる管理サーバ3への希望提供条件等の登録の手順を示している。
図10を参照すると、
図10のC1で示されるように、例えば、車両5の所有者が、車両5の表示部34の表示画面上において、管理サーバ3の提供希望自然エネルギ利用情報の一覧表作成サイトにアクセスし、管理サーバ3の提供希望自然エネルギ利用情報の一覧表作成サイトに、提供希望者名、例えば、車両5の所有者名および希望提供条件を入力する。これらデータの入力が完了すると、
図10のC2では、入力データおよび車両IDが管理サーバ3に送信され、提供希望者および希望提供条件が
図6に示す取得希望自然エネルギ利用情報の一覧表に登録される。
【0028】
図11は、取得希望企業4内に設置された通信機器40(
図4)を用いて行われる管理サーバ3への取得希望情報等の登録の手順を示している。
図11を参照すると、
図11のD1で示されるように、例えば、取得希望者が、取得希望企業4内に設置された通信機器40(
図4)により、管理サーバ3の取得希望自然エネルギ利用情報の一覧表作成サイトにアクセスし、管理サーバ3の取得希望自然エネルギ利用情報の一覧表作成サイトに、取得希望名、提供希望自然エネルギ利用情報および希望取得条件を入力する。これらデータの入力が完了すると、
図11のD2では、これらの入力データが管理サーバ3に送信され、取得希望名、提供希望自然エネルギ利用情報および希望取得条件が
図6に示される取得希望自然エネルギ利用情報の一覧表に登録される。
【0029】
図12は、提供希望者と取得希望者とのマッチングを行うためのマッチング処理ルーチンを示している。このルーチンは、管理サーバ3の電子制御ユニット10内において一定時間毎、例えば、10分毎、1時間毎、或いは、24時間毎に実行される。なお、以下、
図5に示される提供希望自然エネルギ利用情報の一覧表と、
図6に示される取得希望自然エネルギ利用情報の一覧表とに基づき、提供希望者と取得希望者とのマッチングを行う場合を例にとって、このマッチング処理ルーチンについて説明する。
【0030】
図12を参照すると、初めに、ステップ100において、
図6に示される取得希望自然エネルギ利用情報の一覧表におけるNo.1の取得希望自然エネルギ利用情報が読み込まれる。次いで、ステップ101では、読み込まれたNo.1の取得希望自然エネルギ利用情報を満たす情報が、
図5に示される提供可能な提供希望自然エネルギ利用情報の一覧表の中から抽出され、抽出された提供可能な自然エネルギ利用情報の番号No.が記憶される。次いで、ステップ102では、抽出された提供可能な自然エネルギ利用情報の中で最初に抽出された番号No.の提供可能な自然エネルギ利用情報が読み込まれる。
【0031】
次いで、ステップ103では、最初に抽出された番号No.の提供可能な自然エネルギ利用情報の希望提供条件とNo.1の取得希望自然エネルギ利用情報の希望取得条件とが一致するか否かが判別される。希望提供条件と希望取得条件とが一致すると判別されたときにはステップ104に進んで、取得希望者と提供希望者の双方、或いは、少なくとも一方に、取引が成立した旨が連絡される。一方、希望提供条件と希望取得条件とが一致しないと判別されたときにはステップ105に進んで、抽出された全ての番号No.の提供可能な自然エネルギ利用情報について希望提供条件と希望取得条件とが一致するか否かの判別が完了したか否かが判別される。
【0032】
抽出された全ての番号No.の提供可能な自然エネルギ利用情報について、希望提供条件と希望取得条件との条件一致判別が完了していないと判別されたときには、ステップ106に進み、抽出された次の番号No.の提供可能な自然エネルギ利用情報が読み込まれる。次いで、ステップ103に進み、抽出された次の番号No.の提供可能な自然エネルギ利用情報の希望提供条件とNo.1の取得希望自然エネルギ利用情報の希望取得条件とが一致するか否かが判別される。ステップ105において、抽出された全ての番号No.の提供可能な自然エネルギ利用情報について、希望提供条件と希望取得条件との条件一致判別が完了したと判別されたときには、ステップ107に進む。
【0033】
ステップ107では、
図6に示される取得希望自然エネルギ利用情報の一覧表にリストアップされた全ての番号No.の取得希望自然エネルギ利用情報について、このような条件一致判別が完了したか否かが判別される。全ての番号No.の取得希望自然エネルギ利用情報について、このような条件一致判別が完了していないと判別されたときには、ステップ108に進んで、
図6に示される取得希望自然エネルギ利用情報の一覧表における次のNo.の取得希望自然エネルギ利用情報が読み込まれる。次いで、ステップ101に進む。このようにして、
図6に示される取得希望自然エネルギ利用情報の一覧表における全ての取得希望自然エネルギ利用情報について、希望提供条件と希望取得条件とが一致するか否かの判別が行われる。
【0034】
なお、
図12に示される例では、希望提供条件と希望取得条件とが一致した場合についてのみ説明しているが、無論のこと、希望提供条件と希望取得条件とが一致しない場合に取得希望者と提供希望者とが交渉し得るようなマッチングシステムを構築することもできる。
【0035】
このように、本発明による実施例では、車両5に搭載された太陽光発電装置23により発電された電力エネルギの発電又は使用に関する自然エネルギ利用情報を取得し、取得された自然エネルギ利用情報の提供希望者と自然エネルギ利用情報の取得希望者とをマッチングさせるマッチング処理部が設けられている。この場合、本発明による実施例では、管理サーバ3の電子制御ユニット10がこのマッチング処理部を構成している。
また、本発明による実施例では、車両5に搭載された太陽光発電装置23により発電された電力エネルギの発電又は使用に関する自然エネルギ利用情報を取得し、取得された自然エネルギ利用情報の提供希望者と自然エネルギ利用情報の取得希望者とをマッチングさせるエネルギ利用情報処理方法が提供される。
また、本発明による実施例では、車両5に搭載された太陽光発電装置23により発電された電力エネルギの発電又は使用に関する自然エネルギ利用情報を取得し、取得された自然エネルギ利用情報の提供希望者と自然エネルギ利用情報の取得希望者とをマッチングさせるよう、コンピュータに機能させるプログラムが提供される。
【0036】
また、本発明による実施例では、自然エネルギ利用情報が、太陽光発電装置23により発電された電力エネルギの発電量に関する情報を含んでいる。また、本発明による実施例では、自然エネルギ利用情報が、電力エネルギの発電量に関する情報に加え、車両5に搭載されたバッテリ22の充電量に関する情報および車両5を駆動するために使用される電力エネルギの消費量に関する情報の少なくとも一方を含んでいる。また、本発明による実施例では、自然エネルギ利用情報が、カーボンクレジットによる取引対象であるCO2排出削減量に関する情報を含んでおり、マッチング処理部は、カーボンクレジットの取得者とカーボンクレジットを購入希望者とをマッチングさせる、
【0037】
また、本発明による実施例では、取得希望者が取得を希望する取得希望自然エネルギ利用情報が提示され、マッチング処理部は、取得希望者の取得希望自然エネルギ利用情報が提供希望者により提供された提供希望自然エネルギ利用情報の中に含まれているか否かを判別し、取得希望者の取得希望自然エネルギ利用情報が提供希望者により提供された提供希望自然エネルギ利用情報の中に含まれていると判別された場合には、取得希望者と提供希望者とをマッチングさせる。この場合、本発明による実施例では、マッチング処理部は、取得希望者と提供希望者とをマッチングさせたときには、取得希望者と提供希望者の少なくとも一方に、取引が成立した旨を連絡する。
【0038】
このように車両5に搭載された太陽光発電装置23により発電された電力エネルギの発電又は使用に関する自然エネルギ利用情報の提供希望者とこの自然エネルギ利用情報の取得希望者とをマッチングさせるシステムを構築すると、車両5に搭載された太陽光発電装置23による発電に対する関心を高めることができ、それにより、車両を利用した太陽光発電を促進することができる。従って、本発明は、太陽光をはじめとする自然エネルギの利用促進により、脱炭素、カーボンニュートラル、持続可能な社会(SDGs)に貢献するものであると言える。
【0039】
次に、管理サーバ3の取得希望自然エネルギ利用情報の一覧表作成サイトに登録された取得希望自然エネルギ利用情報に基づき、提供希望者が、この取得希望自然エネルギ利用情報を提供し得ると判断したときに、提供希望者が、取得希望者に、この取得希望自然エネルギ利用情報の提供の申し出を行うようにした実施例について説明する。
【0040】
図13は、このような場合に提供希望者と取得希望者とのマッチング処理を行うための手順の一例を示している。
図13を参照すると、この例では、管理サーバ3の取得希望自然エネルギ利用情報の一覧表作成サイトに登録された取得希望自然エネルギ利用情報に基づき、最初に、
図13のE1において、取得希望者による取得希望自然エネルギ利用情報を提供し得ると判断した提供希望者が、車両5の表示部34の表示画面上において、或いは、車両5の所有者が所有する携帯端末6により、希望取得条件と共に取得希望自然エネルギ利用情報を提供可能である旨の表明、即ち、提供の申し出を管理サーバ3に送信する。管理サーバ3が提供の申し出を受信すると、
図13のE2では、管理サーバ3において、
図12に示されるようなマッチング処理ルーチンを用いて、提供希望者と取得希望者とのマッチング処理が行われる。
【0041】
図14は、提供希望者と取得希望者とのマッチング処理を行うための手順の別の例を示している。
図14を参照すると、この例では、最初に、
図14のF1において、管理サーバ3の取得希望自然エネルギ利用情報の一覧表作成サイトに登録された取得希望自然エネルギ利用情報が、管理サーバ3から車両5或いは、車両5の所有者が所有する携帯端末6に送信され、これらのデータが、車両5の表示部34の表示画面上、或いは、携帯端末6上に表示される。
図14のF2では、この表示された取得希望自然エネルギ利用情報を提供し得ると判断した提供希望者が、車両5の表示部34の表示画面上において、或いは、車両5の所有者が所有する携帯端末6により、希望取得条件と共に取得希望自然エネルギ利用情報を提供可能である旨の表明、即ち、提供の申し出を管理サーバ3に送信する。管理サーバ3が提供の申し出を受信すると、
図14のF3では、管理サーバ3において、
図12に示されるようなマッチング処理ルーチンを用いて、提供希望者と取得希望者とのマッチング処理が行われる。
【0042】
図15は、提供希望者と取得希望者とのマッチング処理を行うための手順の更に別の例を示している。この例は、提供希望者の取得予定のある提供可能な自然エネルギ利用情報について提供希望者と取得希望者とのマッチング処理が行われる場合を示している。
図15を参照すると、この例では、
図15のG1において、提供希望者が、車両5の表示部34の表示画面上において、管理サーバ3の自然エネルギ利用情報の一覧表作成サイトにアクセスし、提供希望者が、取得予定のある提供可能な自然エネルギ利用情報および希望提供条件を入力する。これらデータの入力が完了すると、
図15のG2において、これらのデータが管理サーバ3に送信される。その後、
図15のG3では、管理サーバ3において、
図12に示されるようなマッチング処理ルーチンを用いて、提供希望者と取得希望者とのマッチング処理が行われる。
【0043】
このように、
図13から
図15に示される例では、取得希望者が取得を希望する取得希望自然エネルギ利用情報が提示され、マッチング処理部は、取得希望自然エネルギ利用情報に基づいて取得希望自然エネルギ利用情報を
提供できる可能性のある車両の所有者と取得希望者とをマッチングさせる。この場合、
図14に示される例では、マッチング処理部は、取得希望自然エネルギ利用情報を各車両5の表示画面又は各車両5の所有者の携帯端末6に表示させ、取得希望自然エネルギ利用情報を
提供できる可能性のある車両5の所有者と取得希望者とをマッチングさせる。また、
図15に示される例では、マッチング処理部は、取得希望自然エネルギを取得可能な予定のある車両所有者と取得希望者とをマッチングさせる。
【符号の説明】
【0044】
1 通信ネットワーク
3 管理サーバ
5 車両
23 太陽光発電装置