(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】サンプリング機能付き容器
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20241112BHJP
C12M 1/26 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C12M1/00 G
C12M1/26
(21)【出願番号】P 2023018320
(22)【出願日】2023-02-09
(62)【分割の表示】P 2018245178の分割
【原出願日】2018-12-27
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】籠田 将慶
(72)【発明者】
【氏名】原田 怜
(72)【発明者】
【氏名】藤枝 良至
(72)【発明者】
【氏名】長谷 政彦
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-519903(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0123848(US,A1)
【文献】特表2000-513569(JP,A)
【文献】国際公開第2015/147077(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0201894(US,A1)
【文献】特表2010-535338(JP,A)
【文献】特開2017-012051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12M 1/26
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納容器と、前記収納容器の2箇所のみを連通するサンプリング流路とを備えるサンプリング機能付き容器であって、
前記サンプリング機能付き容器内を閉鎖空間に維持しながら、前記収納容器に収納された内容物の一部を前記サンプリング流路に流入させた後に、前記サンプリング流路の一部を切り出すことにより、前記内容物の一部をサンプリングできる構造を有し、
前記サンプリング流路の構造は、分岐がなく、前記収納容器に連通する連通口を2つのみ有する構造であり、
前記サンプリング流路は、両端の前記連通口が前記収納容器内に挿し込まれ、前記両端の前記連通口を介して前記収納容器の前記2箇所のみと連通することを特徴とするサンプリング機能付き容器。
【請求項2】
前記サンプリング機能付き容器は、前記サンプリング流路の一部が熱融着しつつ切断することにより切り出されることで残った2つの切片の切断箇所を熱融着で無菌接続することにより、再生することができることを特徴とする請求項1に記載のサンプリング機能付き容器。
【請求項3】
前記サンプリング機能付き容器は、再生後のサンプリング機能付き容器であり、
前記サンプリング流路は、前記収納容器の前記2箇所のみを連通する再生前のサンプリング流路の一部が熱融着しつつ切断することにより切り出されることで残った2つの切片が熱融着で無菌接続された
、切断されていない状態にある再生後のサンプリング流路であることを特徴とする請求項1に記載のサンプリング機能付き容器。
【請求項4】
前記サンプリング流路は、分岐がない略環状の構造を有するサンプリング管であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のサンプリング機能付き容器。
【請求項5】
前記サンプリング流路に、前記内容物が前記サンプリング流路から前記収納容器に戻ることを防止する逆流防止弁が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のサンプリング機能付き容器。
【請求項6】
前記サンプリング流路に、前記内容物が前記サンプリング流路から前記収納容器に戻ることを防止するクランプバルブ又は電磁弁が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のサンプリング機能付き容器。
【請求項7】
前記サンプリング流路には、前記サンプリング流路に流入させる前記内容物の量を測定する目盛が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のサンプリング機能付き容器。
【請求項8】
前記収納容器は、樹脂フィルムを周縁部で貼り合わせたものであり、
前記サンプリング流路は、前記両端の前記連通口が前記収納容器の同一の端辺から前記収納容器内に挿し込まれ、前記両端の前記連通口を介して前記収納容器の前記端辺側の前記2箇所のみと連通することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のサンプリング機能付き容器。
【請求項9】
収納容器と、前記収納容器の少なくとも2箇所のみを連通するサンプリング流路とを備えるサンプリング機能付き容器を用いたサンプリング方法であって、
前記サンプリング流路の構造は、分岐がなく、前記収納容器に連通する連通口を2つのみ有する構造であり、
前記サンプリング流路は、両端の前記連通口が前記収納容器内に挿し込まれ、前記両端の前記連通口を介して前記収納容器の前記2箇所のみと連通し、
前記サンプリング機能付き容器内を閉鎖空間に維持しながら、前記収納容器に収納された内容物の一部を前記サンプリング流路に流入させた後に、前記サンプリング流路の一部を切り出すことにより、前記内容物の一部をサンプリングすることを特徴とするサンプリング方法。
【請求項10】
前記サンプリング方法によりサンプリングを少なくとも1回を行った後に、前記サンプリング機能付き容器において、前記サンプリング流路の一部が熱融着しつつ切断することにより切り出されることで残った2つの切片の切断箇所を熱融着で無菌接続することにより、前記サンプリング機能付き容器を再生し、再生後の前記サンプリング機能付き容器を用いて、前記サンプリング方法によりサンプリングを行うことを特徴とする請求項9に記載のサンプリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプリング機能付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、異物や菌等によるコンタミネーションを防ぐ必要がある細胞懸濁液、医薬関係の
液体、食品関係の液体等の内容物が収納された容器から、その内容物の検査等を目的とし
て、その容器を含む装置内を外部環境に対して閉鎖された閉鎖系に維持しながら、その内
容物の一部をサンプリングする技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、細胞を培養する培養容器及び培地を培養容器に追加する培地
供給容器を接続することで構築され、培養容器等の容器に末端が閉塞した管状のサンプル
取り出し流路を設けた閉鎖系の細胞培養用キットであって、容器内の内容物の一部をサン
プル取り出し流路に流入させ、流路を内容物で満たした状態において、流路を熱融着しつ
つ切断することにより、細胞培養用キット内を閉鎖系に維持しながら、その内容物の一部
をサンプリングできるキットが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、細胞を培養する培養容器と、培地等を貯蔵しておく培地貯蔵容
器と、細胞を注入する細胞注入容器と、培養後の細胞懸濁液を回収する細胞回収容器と、
が管によって連結され、さらにサンプリング専用容器が培養容器に管によって連結された
閉鎖系の細胞培養用キットであって、培養容器内の細胞懸濁液の一部を、管経由でサンプ
リング専用容器に移送することにより、細胞培養用キット内を閉鎖系に維持しながらサン
プリングできるキットが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-12051号公報
【文献】特開2018-61519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された細胞培養用キットの構造では、管状のサンプル
取り出し流路の末端が閉塞しているので、サンプル取り出し流路内に空気が入り込んでい
る状態では、培養容器等の容器内の内容物をサンプル取り出し流路に流入させることが難
しい。このため、容器内の内容物の一部をサンプル取り出し流路に流入させる際には、い
ったん、サンプル取り出し流路を特殊な補助具を用いて押し潰すことにより流路内の空気
を容器に移動させてから、容器に対して流路を開放するといった煩わしい操作が必要であ
った。
【0007】
一方、特許文献2に記載された細胞培養用キットの構造は、培養容器のような容器内の
内容物の一部をサンプリングするためのサンプリング専用容器が培養容器のような容器と
は別に設置され、サンプリング専用容器及びその他の容器を含む複数の容器が管によって
連結された複雑な構造となっている。このような構造では、培養容器のような容器内の内
容物の一部をサンプリング専用容器に取り出す際に、チューブポンプを用いて管経由でサ
ンプリング専用容器にその内容物の一部を移送するために、その内容物の一部を移送する
流路の制御が複雑になるおそれがある。従って、煩わしい操作や複雑な制御等を必要とせ
ずに、容易に、内容物が収納された容器を含む装置内を閉鎖系に維持しながら、その内容
物の一部をサンプリングできる技術が求められていた。
【0008】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、容易
に、その内容物が収納された容器内を外部環境に対して閉鎖された閉鎖空間に維持しなが
ら、その内容物の一部をサンプリングできるサンプリング機能付き容器を提供することに
ある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決すべく、本発明に係るサンプリング機能付き容器は、収納容器と、前記
収納容器の少なくとも2箇所を連通するサンプリング流路とを備えるサンプリング機能付
き容器であって、前記サンプリング機能付き容器内を閉鎖空間に維持しながら、前記収納
容器に収納された内容物の一部を前記サンプリング流路に流入させた後に、前記サンプリ
ング流路の一部を切り出すことにより、前記内容物の一部をサンプリングできる構造を有
することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、容易に、内容物が収納された容器内を閉鎖空間に維持しながら、その
内容物の一部をサンプリングできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係るサンプリング機能付き容器の一例を示す概略図である。
【
図2】
図1に示されるサンプリング機能付き容器を用いたサンプリング方法の一例を示す概略工程図である。
【
図3】本実施形態に係るサンプリング機能付き容器の他の例を示す概略図である。
【
図4】本実施形態に係るサンプリング機能付き容器の他の例を示す概略図である。
【
図5】
図4に示される例のサンプリング機能付き容器を用いたサンプリング方法における容器の固定方法の一例を示す模式図である。
【
図6】本実施形態に係るサンプリング機能付き容器の他の例を示す概略図である。
【
図7】本実施形態に係るサンプリング機能付き容器の他の例を示す概略図である。
【
図8】本実施形態に係るサンプリング機能付き容器の他の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るサンプリング機能付き容器の実施形態について説明する。
【0013】
本実施形態に係るサンプリング機能付き容器は、収納容器と、前記収納容器の少なくと
も2箇所を連通するサンプリング流路とを備えるサンプリング機能付き容器であって、前
記サンプリング機能付き容器内を閉鎖空間に維持しながら、前記収納容器に収納された内
容物の一部を前記サンプリング流路に流入させた後に、前記サンプリング流路の一部を切
り出すことにより、前記内容物の一部をサンプリングできる構造を有することを特徴とす
る。
【0014】
ここで、「閉鎖空間」とは、サンプリング機能付き容器の外部環境の異物や菌等による
コンタミネーションを防ぐことができるようにその外部環境に対して閉鎖された空間を意
味し、例えば、その外部環境に対して密閉された密閉空間である。
【0015】
まず、本実施形態に係るサンプリング機能付き容器の一例を図示して説明する。
図1(a)は、本実施形態に係るサンプリング機能付き容器の一例を示す概略図であり
、
図1(b)は、
図1(a)のX部分の一例を示す写真である。
【0016】
本例のサンプリング機能付き容器1は、
図1(a)に示されるように、収納容器2と、
サンプリング管4とを備えている。サンプリング管4は、分岐がない略環状の構造を有し
、両端の連通口4aが収納容器2内に挿し込まれている。サンプリング管4は、両端部に
収納容器2の縁部2aの内側が接着することで収納容器2に接続され固定されている。サ
ンプリング管4が両端の連通口4aを介して収納容器2の2箇所と連通することにより、
収納容器2の2箇所が連通している。
【0017】
サンプリング機能付き容器1は、収納容器2及びサンプリング管4の接続箇所を含めて
外部環境に通じる隙間がないように構成され、密閉されている。また、サンプリング管4
は、軸方向の所望の箇所で熱融着しつつ切断することができる。これにより、サンプリン
グ機能付き容器1は、その容器内を密閉空間に維持しながら、収納容器2に収納された内
容液の一部をサンプリング管4に連通口4aから流入させた後に、サンプリング管4の一
部を切り出すことにより、サンプリングできる構造を有している。
【0018】
収納容器2は、収納された内容液及び空気の界面を外部から目視で認識できる程度の透
明性を有しており、外部から力を加えることにより自在に変形する柔軟性を有している。
サンプリング管4は、サンプリング管4に流入させる内容液及び空気の界面を外部から目
視で認識できる程度の透明性を有しており、外部から力を加えることにより自在に変形す
る柔軟性を有している。また、サンプリング管4には目盛4bが設けられている。
【0019】
続いて、
図1に示されるサンプリング機能付き容器を用いたサンプリング方法の一例を
説明する。
図2(a)~
図2(c)は、
図1に示されるサンプリング機能付き容器を用い
たサンプリング方法の一例を示す概略工程図である。
【0020】
本例のサンプリング方法においては、まず、
図2(a)に示されるように、サンプリン
グ機能付き容器1内を密閉空間に維持しながら、収納容器2に収納された内容液の一部を
サンプリング管4に一端の連通口4aから流入させる。サンプリング管4が両端の連通口
4aを介して収納容器2の2箇所を連通しているため、この際には、サンプリング管4内
の空気を他端の連通口(
図2(a)には図示せず)から押し出しながら、内容液の一部を
サンプリング管4に流入させることができる。よって、特殊な補助具を使用することなく
、収納容器2を傾けたり、しごいて変形させたりする等の簡単な操作により、内容液の一
部を流入させることができる。
【0021】
その内容液の一部をサンプリング管4に流入させるときには、サンプリング管4に流入
させる内容液の量を微調整することにより、目盛4bで測定される内容液の流入量を約1
00μLに微調整する。サンプリング管4が両端の連通口4aを介して収納容器2の2箇
所を連通しているため、この際には、サンプリング管4に流入させた内容液を空気により
一端の連通口4aを介して収納容器2に押し戻すこと等が可能である。よって、収納容器
2及びサンプリング管4を傾けたり、変形させたりする等の簡単な操作により、流入させ
る内容液の量を微調整することができる。
【0022】
次に、
図2(b)に示されるように、収納容器2に入っている空気をサンプリング管4
に一端の連通口4aから導入することにより、サンプリング機能付き容器1内を密閉空間
に維持しながら、サンプリング管4に流入させた約100μLの内容液をサンプリング管
4の軸方向の中央側に移動させ、サンプリング管4における内容液の両側に空気を導入す
る。サンプリング管4が両端の連通口4aを介して収納容器2の2箇所を連通しているた
め、この際には、サンプリング管4内の空気を他端の連通口4aから押し出しながら、流
入させた内容液を移動させることができる。よって、収納容器2及びサンプリング管4を
傾けたり、変形させたりする等の簡単な操作により、流入させた内容液をサンプリング管
4の軸方向の中央側に移動させ、サンプリング管4における内容液の両側に空気を導入す
ることができる。
【0023】
次に、
図2(c)に示されるように、サンプリング機能付き容器1内を密閉空間に維持
しながら、サンプリング管4を内容液の両側における空気が存在する箇所で熱融着しつつ
切断することで、サンプリング管4の一部4pを切り出すことにより、約100μLの内
容液をサンプリングする。この際には、サンプリング管4を内容液が存在する箇所で熱融
着しつつ切断する場合とは異なり、サンプルとなる約100μLの内容液の熱によるダメ
ージを軽減することができる。
【0024】
従って、本実施形態に係るサンプリング機能付き容器においては、サンプリング流路が
収納容器の少なくとも2箇所を連通しているため、上記の例のように、特殊な補助具を使
用することなく、簡単な操作により、サンプリング機能付き容器内を閉鎖空間に維持しな
がら、収納容器に収納された内容物の一部をサンプリング流路に流入させることができる
。さらに、サンプリング機能付き容器内を閉鎖空間に維持しながら、その内容物の一部を
サンプリング流路に流入させた後に、サンプリング流路の一部を切り出すことにより、そ
の内容物の一部をサンプリングできる。よって、容易に、内容物が収納された容器内を外
部環境に対して閉鎖された閉鎖系に維持しながら、その内容物の一部をサンプリングでき
る。
【0025】
また、特許文献1に記載された構造では、サンプル取り出し流路の押し潰し方を変える
等の操作により、サンプリングする量を微調整することが困難であり、特許文献2に記載
された構造でも、培養容器のような容器からサンプリング専用容器にサンプリングする量
を微調整することは困難であったのに対し、本実施形態に係るサンプリング機能付き容器
においては、サンプリング流路が収納容器の少なくとも2箇所を連通しているため、上記
の例のように、簡単な操作により、サンプリング流路に流入させる内容物の量を微調整す
ることができる。よって、容易に、サンプリングする量を微調整することができる。これ
により、例えば、収納容器から細胞懸濁液のような貴重な内容物の一部をサンプリングす
る場合等において、微小な量をサンプリングすることが容易となる。
【0026】
さらに、特許文献1に記載された構造では、サンプリングする内容物で満たした状態の
流路を熱融着しつつ切断する際にサンプル内の培地や細胞等が熱でダメージを受け、それ
らの正確な検査に支障をきたすおそれがあるのに対し、本実施形態に係るサンプリング機
能付き容器においては、上記の例のように、簡単な操作により、サンプリング流路に流入
させた内容物をサンプリング流路の軸方向の中央側に移動させ、サンプリング流路におけ
る内容物の両側に空気を導入することができる。これにより、サンプリング機能付き容器
内を閉鎖空間に維持しながら、サンプリング流路を内容物の両側における空気が存在する
箇所で熱融着しつつ切断することで、サンプリング流路の一部を切り出すことにより、そ
の内容物の一部をサンプリングすることができる。よって、容易に、サンプルの熱による
ダメージを軽減することができる。
【0027】
続いて、本実施形態に係るサンプリング機能付き容器の各構成を詳細に説明する。
【0028】
1.サンプリング流路
サンプリング流路は、収納容器の少なくとも2箇所を連通する中空の流路部材である。
また、サンプリング流路は、サンプリング機能付き容器内を閉鎖空間に維持しながら、サ
ンプリング流路の一部を切り出すことができるものである。なお、サンプリング機能付き
容器内を閉鎖空間に維持しながら、サンプリング流路の一部を切り出すことができるとは
、具体的には、そのサンプリング流路の一部を切り出すことで残るそのサンプリング流路
の残部内及び収納容器内を閉鎖空間に維持しながら、そのサンプリング流路の一部を切り
出すことができることを指す。
【0029】
サンプリング流路としては、上記のようなものであれば特に限定されないが、中でも、
軸方向の所望の箇所で熱融着しつつ切断することによりその一部を切り出すことができる
ものが好ましい。
【0030】
サンプリング流路としては、柔軟性を有しているものが好ましい。収納容器に収納され
た内容物の一部をサンプリング流路に流入させる場合、サンプリング流路で内容物を移動
させる場合、及びサンプリング流路の一部を切り出す場合等に自在に変形できるので作業
性を向上できるからである。
【0031】
サンプリング流路としては、サンプリング流路に流入させる内容物及び空気の界面を外
部から目視で認識できる程度の透明性を有するものが好ましい。サンプリング流路に流入
させた内容物を目視で認識しながらサンプリングを行うことができるので作業性を向上で
きるからである。
【0032】
サンプリング流路としては、目盛が設けられているものが好ましい。サンプリング流路
に流入させる内容物の量を測定できるからである。サンプリング流路としては、内容物が
サンプリング流路から収納容器に戻ることを防止する逆流防止弁が、例えば、連通口の箇
所等に設けられているものが好ましい。サンプリング流路に流入させる内容物の量を測定
する場合及びサンプリング流路で内容物を移動させる場合等に内容物がサンプリング流路
から収納容器に戻ることを防止できるので作業性を向上できるからである。また、サンプ
リング流路としては、内容物がサンプリング流路から収納容器に戻ることを防止するクラ
ンプバルブや電磁弁等が、例えば、連通口の箇所等に設けられているものが好ましい。ク
ランプバルブや電磁弁等でサンプリング流路の開閉を行ってサンプリング流路内の内容物
の流れを制御することで、内容物がサンプリング流路から収納容器に意図せず戻ることを
防止できるので、作業性が高まるからである。
【0033】
図3は、本実施形態に係るサンプリング機能付き容器の他の例を示す概略図である。本
例のサンプリング機能付き容器1について、
図1に示される容器とは異なる点を中心に説
明する。このため、特に説明しない構成は、
図1に示される容器と同様である。本例のサ
ンプリング機能付き容器1は、
図3に示されるように、サンプリング管の代わりに、互い
に連通する両端側の管14s及び中央側のサンプリング容器14cを有するサンプリング
流路14を備えている。サンプリング流路14は、分岐がない略環状の構造を有し、管1
4sの端の連通口14aが収納容器2内に挿し込まれている。サンプリング流路14は、
管14sの端部に収納容器2の縁部2aの内側が接着することで収納容器2に接続され固
定されている。サンプリング流路14が両端側の管14sの連通口14aを介して収納容
器2の2箇所と連通することにより、収納容器2の2箇所が連通している。サンプリング
機能付き容器1は、収納容器2及び管14sの接続箇所並びに管14s及びサンプリング
容器14cの接続箇所を含めて外部環境に通じる隙間がないように構成され、密閉されて
いる。また、サンプリング流路14は、管14s及びサンプリング容器14cの接続箇所
で熱融着しつつ切断することができる。これにより、サンプリング機能付き容器1は、そ
の容器内を密閉空間に維持しながら、収納容器2に収納された内容液(図示せず)の一部
を管14sの連通口14aから管14s経由でサンプリング容器14cに流入させた後に
、サンプリング容器14cを切り出すことにより、サンプリングできる構造を有している
。なお、サンプリング機能付き容器1は、取り出しポート8をさらに備えている。
【0034】
サンプリング流路としては、特に限定されず、例えば、
図1に示されるようなサンプリ
ング管でもよいが、
図3に示されるサンプリング流路のように互いに連通する両端側の管
及び中央側のサンプリング容器を有するものが好ましい。サンプリング容器は、収納容器
からその内容物の一部をサンプリング流路に流入させることを目的として収納容器と連通
する管(例えば、
図1に示されるサンプリング管や
図3に示されるサンプリング流路の両
端側の管等)とは異なり、サンプリング後の扱い方に応じて自由に設計できるため、サン
プリング後の所望の扱いを可能にするからである。具体的には、例えば、サンプリング容
器を管より柔軟な変形し易いものにすることにより、凍結する際に所望の形にして容積を
無駄にしないようにでき、検査等の際にサンプルを容易に取り出せるようにできるからで
ある。また、サンプリング容器を管より硬く変形しにくいものにすることにより、凍結す
る際に意図しない形になることを回避して輸送時の扱いを容易にでき、検査等の際に手で
持ち、又は装置に取り付ける時の扱いを容易にできるからである。なお、サンプリングす
る量が多い場合には、特に管でのサンプルの扱いが難しくなるので、これらの効果は顕著
となる。
【0035】
また、サンプリング流路の構造としては、特に限定されないが、例えば、
図1に示され
るサンプリング管のように、分岐がなく、収納容器に連通する連通口を2つのみ有する構
造の他、分岐があり、収納容器に連通する連通口を2つのみ有する構造、分岐があり、収
納容器に連通する連通口を3つ以上有する構造等が挙げられる。中でも、分岐がなく、収
納容器に連通する連通口を2つのみ有する構造が好ましい。容易な操作により、サンプリ
ングする量を調整できるからである。なお、分岐があり、収納容器に連通する連通口を2
つのみ有する構造、分岐があり、収納容器に連通する連通口を3つ以上有する構造等では
、多様な操作により、サンプリングする量を調整できる。
【0036】
図1に示されるサンプリング管や
図3に示されるサンプリング流路の両端側の管のよう
な、サンプリング流路が有する管の形状としては、特に限定されないが、例えば、円柱状
、楕円柱状、多角柱状等が挙げられる。また、サンプリング流路が有する管は、肉厚にす
ることで柔軟な変形し易いものとなり、肉薄にすることで硬く変形しにくいものとなる。
【0037】
サンプリング流路の連通口の径としては、特に限定されないが、1mm以上10mm以
下の範囲内であることが好ましく、中でも2mm以上4mm以下の範囲内であることが好
ましい。サンプルとして一般的に必要となる量を容易に流入させることができるからであ
る。また、出来るだけ小さくすることにより、流入させる量を微調整することが容易にな
り、例えば、数100μL程度の微小な量をサンプリングすることが多い細胞懸濁液を対
象とする場合等において、微小な量をサンプリングすることが容易になるからである。
【0038】
なお、サンプリング流路の連通口の径とは、連通口が真円である場合には、連通口の直
径を指すが、連通口が真円ではない場合には、連通口を同一面積の真円に換算した場合の
直径を指す。
【0039】
サンプリング流路の材料としては、特に限定されないが、例えば、熱融着しつつ切断で
きるような材料が好ましく、中でも、ポリエチレン若しくはポリプロピレン等のポリオレ
フィン樹脂、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、又はC-FLEX等が
好ましい。溶融温度が低く、かつ柔軟性が高いため、容易に熱融着しつつ切断できるから
である。
【0040】
また、サンプリング流路の材料としては、例えば、低温凍結保存に適した材料が好まし
く、中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂等が好ま
しい。低温耐久性に優れているからである。
【0041】
2.収納容器
収納容器は、少なくとも2箇所がサンプリング流路により連通されたものである。また
、収納容器は、サンプリング機能付き容器内を閉鎖空間に維持でき、内容物を無菌的に収
納できるものである。このような収容容器としては、収容容器の内部と外部環境とが無菌
フィルターを介して通じているものでもよい。外部環境から収容容器の内部への菌の混入
を防止でき、また無菌フィルターの孔径よりも大きな異物の外部環境から収容容器の内部
への混入を防止できるため、サンプリング機能付き容器内を閉鎖空間に維持でき、内容物
を無菌的に収納できるからである。
【0042】
収納容器としては、上記のようなものであれば特に限定されないが、柔軟性を有してい
るものが好ましい。収納容器に収納された内容物の一部をサンプリング流路に流入させる
場合等に自在に変形できるので作業性を向上できるからである。
【0043】
収納容器としては、収納された内容物及び空気の界面を外部から目視で認識できる程度
の透明性を有するものが好ましい。収納容器に収納された内容物を目視で認識しながらサ
ンプリングを行うことができるので作業性を向上できるからである。
【0044】
収納容器としては、例えば、樹脂フィルムを周縁部で貼り合わせることで作製されたバ
ッグ、プラスチック成型品等が挙げられるが、中でもバッグ等が好ましい。柔軟性が高い
ため作業性を向上できるからである。
【0045】
収納容器の材料としては、内容物を無菌的に収納できるものであれば特に限定されない
が、例えば、ポリエチレン若しくはポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビ
ニル、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、C-FLEX、又はポリスチレン等が挙げられ
る。
【0046】
また、収納容器の材料としては、例えば、低温凍結保存に適した材料が好ましく、中で
も、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂等が好ましい。低
温耐久性に優れているからである。さらに、収納容器の材料としては、例えば、サンプリ
ング流路と同一であるか、又はサンプリング流路と融着できるものが好ましい。サンプリ
ング流路を収納容器に接続する場合に接着剤を用いる必要がないので、接着剤による内容
物のコンタミネーションを回避できるからである。
【0047】
3.サンプリング機能付き容器
サンプリング機能付き容器は、収納容器と、収納容器の少なくとも2箇所を連通するサ
ンプリング流路とを備え、サンプリング機能付き容器内を閉鎖空間に維持しながら、収納
容器に収納された内容物の一部をサンプリング流路に流入させた後に、サンプリング流路
の一部を切り出すことにより、内容物の一部をサンプリングできる構造を有する。
【0048】
サンプリング機能付き容器内は、収納容器及びサンプリング管の接続箇所を含めてその
外部環境に対して閉鎖された閉鎖空間となっており、例えば、その接続箇所を含めてその
外部環境に通じる隙間がないように構成され、密閉された密閉空間となっている。また、
サンプリング機能付き容器の上記の構造は、具体的には、サンプリング機能付き容器内を
閉鎖空間に維持しながら、収納容器に収納された内容物の一部をサンプリング流路に流入
させることができ、かつその内容物の一部をサンプリング流路に流入させた後に、そのサ
ンプリング流路の一部を切り出すことで残るそのサンプリング流路の残部内及び収納容器
内を閉鎖空間に維持しながら、そのサンプリング流路の一部を切り出すことができる構造
を指す。このようなサンプリング機能付き容器の構造としては、収容容器の内部と外部環
境とが無菌フィルターを介して通じているものでもよい。外部環境から収容容器の内部へ
の菌の混入を防止でき、また無菌フィルターの孔径よりも大きな異物の外部環境から収容
容器の内部への混入を防止できるため、サンプリング機能付き容器内を閉鎖空間に維持で
き、内容物を無菌的に収納できるからである。
【0049】
図4は、本実施形態に係るサンプリング機能付き容器の他の例を示す概略図である。図
5(a)は、
図4に示される例のサンプリング機能付き容器を用いたサンプリング方法に
おける容器の固定方法の一例を示す模式図であり、
図5(b)は、
図5(a)に示された
固定方法において、サンプリング機能付き容器の固定用部材を固定治具に嵌め込む方法を
模式的に示す上面図である。
【0050】
本例のサンプリング機能付き容器1について、
図1に示される容器とは異なる点を中心
に説明する。このため、特に説明しない構成は、
図1に示される容器と同様である。本例
のサンプリング機能付き容器1は、
図4に示されるように、収納容器2におけるサンプリ
ング管4と接続する2箇所にそれぞれ設けられた2つの固定用部材6をさらに備えている
。固定用部材6は、収納容器2及びサンプリング管4より硬く、サンプリング管4より外
径が大きい円柱状の成型品であり、サンプリング管4を収納容器2に連通するための挿入
孔6hが設けられている。固定用部材6は、端が収納容器2内に挿し込まれており、挿入
部に収納容器2の縁部2aの内側が接着することで収納容器2に接続され固定されている
。サンプリング管4は、両端の連通口4aが2つの固定用部材6の挿入孔6hにそれぞれ
挿し込まれ、両端部に挿入孔6hの内側が接着することで2つの固定用部材6に接続され
固定されている。これにより、サンプリング管4が2つの固定用部材6を介して両端側で
収納容器2に接続され固定されている。サンプリング管4の両端の連通口4aは、挿入孔
6hを介して収納容器2内に挿し込まれている。これにより、サンプリング管4が両端の
連通口4aを介して収納容器2の2箇所と連通することで、収納容器2の2箇所が連通し
ている。なお、サンプリング機能付き容器1は、収納容器2における固定用部材6とは別
の箇所に設けられた取り出しポート8をさらに備えている。取り出しポート8も、固定用
部材6と同様の成型品であり、固定用部材6と同様に収納容器2に接続されている。
【0051】
本例のサンプリング機能付き容器1を用いたサンプリング方法では、
図5(a)及び図
5(b)に示されるように、固定治具30を用いて、固定治具30の凹部30aに2つの
固定用部材6及び取り出しポート8を嵌め込むことで、収納容器2やサンプリング管4よ
り硬い固定用部材6及び取り出しポート8を固定することにより、サンプリング管4を固
定できる。よって、内容液(図示せず)をサンプリング管4に流入させる場合やサンプリ
ング管4の一部の両端を熱融着しつつ切断する場合等に作業性を向上できる。
【0052】
図6は、本実施形態に係るサンプリング機能付き容器の他の例を示す概略図である。
本例のサンプリング機能付き容器1は、2つの固定用部材の代わりに、単一の固定用部
材6を備え、サンプリング管4が単一の固定用部材6を介して両端側で収納容器2に接続
され固定されている点において、
図4に示されるサンプリング機能付き容器とは異なる。
これにより、単一の固定用部材6は2つの固定用部材よりも固定治具の凹部に嵌め込み易
いので、固定する作業が容易になる。
【0053】
図7は、本実施形態に係るサンプリング機能付き容器の他の例を示す概略図である。
本例のサンプリング機能付き容器1は、2つのサンプリング管4を備え、2つのサンプ
リング管4がそれぞれ収納容器2の2箇所を連通している点において、
図6に示されるサ
ンプリング機能付き容器とは異なる。これにより、1つのサンプリング管4でサンプリン
グに失敗したとしても、他のサンプリング管4でサンプリングをやり直すことができる。
【0054】
サンプリング機能付き容器としては、
図4、
図6、及び
図7に示されるサンプリング機
能付き容器1のように、収納容器におけるサンプリング流路と接続する箇所に設けられた
固定用部材をさらに備え、サンプリング流路が固定用部材を介して収納容器に接続されて
いるものが好ましい。収納容器やサンプリング流路より硬い固定用部材を固定することに
より、サンプリング流路を固定できるので、内容物をサンプリング流路に流入させる場合
やサンプリング流路の一部の両端を熱融着しつつ切断する場合等に作業性を向上できるか
らである。なお、収納容器がバックやブロー成形で形成された薄肉容器等の柔軟な変形し
易い容器である場合には、このような効果が顕著となる。さらに、例えば、固定用部材の
外径がサンプリング流路より大きく、固定用部材が、端が収納容器内に挿し込まれ、挿入
部に収納容器の縁部の内側が接着することで収納容器に接続されている場合等に、サンプ
リング流路が収納容器に接続される強度が高くなるからである。
【0055】
固定用部材としては、収納容器やサンプリング流路より硬いものであれば特に限定され
ないが、例えば、プラスチック成型品である。さらに、固定用部材としては、サンプリン
グ流路と一体成形されたものでもよい。固定用部材の形状としては、外径がサンプリング
流路より大きいものであれば特に限定されないが、例えば、円柱状、断面が舟形の柱状等
が挙げられる。
【0056】
サンプリング機能付き容器としては、
図6に示されるサンプリング機能付き容器1のよ
うに、固定用部材が単一の固定用部材であり、サンプリング流路が単一の固定用部材を介
して両端側で収納容器に接続されているものが好ましい。固定する作業が容易になるから
である。
【0057】
また、サンプリング機能付き容器としては、
図7に示されるサンプリング機能付き容器
のように、2つ以上のサンプリング流路を備え、2つ以上のサンプリング流路がそれぞれ
収納容器の2箇所を連通するものが好ましい。1つのサンプリング流路でサンプリングに
失敗したとしても、他のサンプリング流路でサンプリングをやり直すことができるからで
ある。なお、2つ以上のサンプリング流路を備える場合、やり直し用のサンプリング流路
の色や長さを他の流路と異なるものにすることで、判別し易くしてもよい。
【0058】
図8は、本実施形態に係るサンプリング機能付き容器の他の例を示す概略図である。
本例のサンプリング機能付き容器1は、サンプリング流路14が両端側の管14sの連
通口14aを介して収納容器2の上部の箇所及び下部の箇所と連通することにより、収納
容器2の上部の箇所及び下部の箇所が連通している点において、
図3に示されるサンプリ
ング機能付き容器とは異なる。このため、例えば、収納容器2に内容物として細胞懸濁液
を収納し、その細胞懸濁液の一部をサンプリングする場合において、細胞が沈殿し、収納
容器2の上部及び下部で細胞懸濁液が不均一となっていたとしても、それらの箇所で細胞
懸濁液を混合した上でサンプリングできるので、サンプリング誤差を少なくできる。
【0059】
サンプリング機能付き容器としては、特に限定されないが、例えば、
図8に示されるサ
ンプリング機能付き容器のように、サンプリング流路が、内容物が不均一となっている収
納容器の少なくとも2箇所を連通するものが好ましい。不均一となっている内容物を混合
した上でサンプリングできるので、サンプリング誤差を少なくできるからである。
【0060】
サンプリング機能付き容器としては、特に限定されないが、収納容器を1つ備え、サン
プリング流路が1つの収納容器の少なくとも2箇所を連通するものでもよいし、収納容器
を複数備え、サンプリング流路が一方の収納容器の少なくとも1箇所及び他方の収納容器
の少なくとも1箇所を連通するものでもよいが、収納容器を1つ備え、サンプリング流路
が1つの収納容器の少なくとも2箇所を連通するものが好ましい。
【0061】
サンプリング機能付き容器を用いてサンプリングする内容物としては、特に限定されず
、通常は、無菌的な取り扱いを必要とする溶液であり、例えば、細胞懸濁液、食品関係の
液体、医薬関係の液体等が挙げられる。食品関係の液体としては、例えば、飲料、調味料
等が挙げられる。医薬関係の液体としては、生理食塩水等の電解質輸液、ブドウ糖等の糖
質注射液、血液製剤、抗生物質、抗体等の蛋白質性医薬品、低分子蛋白質、ホルモン等の
ペプチド性医薬品、核酸医薬品、細胞医薬品、各種感染症を予防するワクチン、ステロイ
ド剤、インスリン、抗がん剤、蛋白質分解酵素阻害剤、鎮痛剤、解熱鎮痛消炎剤、麻酔剤
、脂肪乳剤、血圧降下剤、血管拡張剤、ヘパリン塩化ナトリウムや乳酸カリウム等の電解
質補正用注射液、ビタミン剤、造影剤等が挙げられる。内容物としては、中でも細胞懸濁
液が好ましい。容易に、サンプリングする量を微調整でき、又はサンプルの熱によるダメ
ージを軽減できることにより、特に有利な効果が得られるからである。
【0062】
サンプリング機能付き容器の用途としては、特に限定されないが、溶液を収容し、かつ
封止した容器において、外部環境からの異物や菌等によるコンタミネーションを防ぐため
に容器内を閉鎖空間に維持しながら、内容液を、簡便に、大きなダメージを与えずに、少
量でも高い精度でサンプリングして検査する用途等が好ましい。具体的には、例えば、細
胞を培養するための培養容器、培地を供給する培地供給容器、培養後の細胞懸濁液を回収
する細胞回収容器、培養中若しくは培養後の培地を回収する廃液容器、若しくは細胞の一
時保管容器等の細胞に関する容器全般、又は細胞培養用システム等が挙げられるが、中で
も細胞培養用システムが好ましい。
【0063】
細胞培養用システムは、例えば、培養容器、培地供給容器、細胞回収容器、又は廃液容
器等の複数容器が無菌的に接続され、コンタミネーションのリスクを低減するために外部
環境から閉鎖された閉鎖系のシステムである。サンプリング機能付き容器が細胞培養用シ
ステムに用いられる場合には、細胞培養用システムは、例えば、その複数容器のいずれか
に、サンプリング機能付き容器が無菌的に接続されているシステム、サンプリング機能付
き容器に無菌的に接続可能な接続口が設けられているシステム、その複数容器のいずれか
自体が、サンプリング機能付き容器と同一の構成を備え、サンプリング機能付き容器とし
て兼用されるシステム等になる。
【0064】
4.サンプリング方法
サンプリング機能付き容器を用いたサンプリング方法は、サンプリング機能付き容器内
を閉鎖空間に維持しながら、収納容器に収納された内容物の一部をサンプリング流路に流
入させた後に、サンプリング流路の一部を切り出すことにより、内容物の一部をサンプリ
ングする。
【0065】
サンプリング方法としては、特に限定されないが、例えば、
図2(a)~
図2(c)に
示される方法のように、収納容器に収納された内容物の一部をサンプリング流路に流入さ
せた後に、サンプリング流路に流入させた内容物をサンプリング流路の軸方向の中央側に
移動させ、サンプリング流路を内容物の両側における空気が存在する箇所で熱融着しつつ
切断し、サンプリング流路の一部を切り出す方法でもよいし、収納容器に収納された内容
物の一部をサンプリング流路に流入させた後に、サンプリング流路を内容物が存在する2
箇所で熱融着しつつ切断し、サンプリング流路の一部を切り出す方法でもよいが、サンプ
リング流路を内容物の両側における空気が存在する箇所で熱融着しつつ切断し、サンプリ
ング流路の一部を切り出す方法が好ましい。サンプルの熱によるダメージを軽減できるか
らである。
【0066】
サンプリング流路の一部を切り出す方法としては、特に限定されないが、例えば、サン
プリング流路の一部の両端を熱融着しつつ切断する方法等が挙げられる。なお、サンプリ
ング流路の一部の両端を熱融着しつつ切断する方法は、全てを手作業で行ってもよいが、
サンプリング流路を固定しながら、所望の箇所を両端とするサンプリング流路の一部を熱
融着しつつ切断する作業を行う治具を用いて行ってもよい。
【0067】
サンプリング方法としては、特に限定されないが、サンプリング機能付き容器を用いて
、サンプリングを少なくとも1回を行った後に、そのサンプリング機能付き容器において
、サンプリング流路の一部が切り出されることで残ったその2つの切片の切断箇所を無菌
接続することにより、そのサンプリング機能付き容器を再生し、再生後のサンプリング機
能付き容器を用いて、サンプリングを行う方法でもよい。1つのサンプリング機能付き容
器で複数回のサンプリングを行うことができるからである。
【0068】
なお、2つの切片の切断箇所を無菌接続する方法としては、特に限定されないが、例え
ば、一般的な無菌接続ポートや無菌接続装置を使用する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例を挙げて、本実施形態に係るサンプリング機能付き容器をさらに、具体的
に説明する。
【0070】
[実施例]
実施例のサンプリング機能付き容器1は、
図1(a)に示されるように、生産日本社製
ユニパックF-4のフィルムを熱シールすることにより作製した収納容器2と、サンプリ
ング管4(QOSINA社製T4306)とを備えている。サンプリング管4は、分岐が
ない略環状の構造を有し、両端の連通口4aが収納容器2内に挿し込まれている。サンプ
リング管4は、両端部に収納容器2の縁部2aの内側が接着することで収納容器2に接続
され固定されている。サンプリング管4が両端の連通口4aを介して収納容器2の2箇所
と連通することにより、収納容器2の2箇所が連通している。
【0071】
サンプリング機能付き容器1は、収納容器2及びサンプリング管4の接続箇所を含めて
外部環境に通じる隙間がないように構成され、密閉されている。また、サンプリング管4
は、軸方向の所望の箇所で熱融着しつつ切断することができる。これにより、サンプリン
グ機能付き容器1は、その容器内を密閉空間に維持しながら、収納容器2に収納された内
容液の一部をサンプリング管4に連通口4aから流入させた後に、サンプリング管4の一
部を切り出すことにより、サンプリングできる構造を有している。
【0072】
収納容器2は、収納された内容液及び空気の界面を外部から目視で認識できる程度の透
明性を有しており、外部から力を加えることにより自在に変形する柔軟性を有している。
サンプリング管4は、サンプリング管4に流入させる内容液及び空気の界面を外部から目
視で認識できる程度の透明性を有しており、外部から力を加えることにより自在に変形す
る柔軟性を有している。また、サンプリング管4には目盛4bが設けられている。
【0073】
本例のサンプリング方法においては、まず、
図2(a)に示されるように、収納容器2
を傾けるだけで、サンプリング機能付き容器1内を密閉空間に維持しながら、収納容器2
に収納された内容液(水)の一部をサンプリング管4に一端の連通口4aから流入させた
。
【0074】
その内容液の一部をサンプリング管4に流入させるときには、収納容器2及びサンプリ
ング管4を傾けるだけで、サンプリング管4に流入させる内容液の量を微調整することに
より、目盛4bで測定される内容液の流入量を約100μLに微調整した。
【0075】
次に、
図2(b)に示されるように、収納容器2及びサンプリング管4を傾けるだけで
、収納容器2に入っている空気をサンプリング管4に一端の連通口4aから導入すること
により、サンプリング機能付き容器1内を密閉空間に維持しながら、サンプリング管4に
流入させた約100μLの内容液をサンプリング管4の軸方向の中央側に移動させ、サン
プリング管4における内容液の両側に空気を導入した。
【0076】
次に、
図2(c)に示されるように、サンプリング機能付き容器1内を密閉空間に維持
しながら、サンプリング管4を内容液の両側における空気が存在する箇所で熱融着しつつ
切断することで、サンプリング管4の一部4pを切り出すことにより、約100μLの内
容液をサンプリングした。
【0077】
以上、本発明に係るサンプリング機能付き容器の実施形態について詳細に説明したが、
本発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載さ
れた本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0078】
1 サンプリング機能付き容器
2 収納容器
4 サンプリング管