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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】積層セラミックコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
H01G4/30 201K
H01G4/30 201L
H01G4/30 201N
H01G4/30 512
H01G4/30 515
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023021412
(22)【出願日】2023-02-15
(62)【分割の表示】P 2020005718の分割
【原出願日】2020-01-17
(65)【公開番号】P2023058665
(43)【公開日】2023-04-25
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100130638
【弁理士】
【氏名又は名称】野末 貴弘
(74)【代理人】
【氏名又は名称】西澤 均
(72)【発明者】
【氏名】橋本 憲
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-233696(JP,A)
【文献】特開2019-102578(JP,A)
【文献】特開2003-7566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/00-4/224
H01G 4/255-4/40
H01G 13/00-13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の誘電体層と複数の内部電極とを含み、前記誘電体層と前記内部電極の積層方向に相対する第1の主面および第2の主面と、前記積層方向と直交する幅方向に相対する第1の側面および第2の側面と、前記積層方向および前記幅方向と直交する長さ方向に相対する第1の端面および第2の端面とを有する積層体と、
前記内部電極と電気的に接続され、前記積層体の前記第1の端面および前記第2の端面にそれぞれ設けられた外部電極と、
を備え、
前記積層方向の最も外側に位置する2つの前記内部電極の一端同士を結ぶ直線と前記第1の主面および前記第2の主面のうちの一方の主面とを結ぶ第1の稜線部は第1の曲線を有し、前記第1の主面および前記第2の主面のうちの一方の主面と、前記第1の側面および前記第2の側面のうちの一方の側面とを結ぶ第2の稜線部は第2の曲線を有し、
前記積層方向に見たときに、全ての前記内部電極の端部は、前記第1の稜線部と重ならない位置にあり、
前記誘電体層は、前記積層方向の最も外側に位置する前記内部電極と前記積層体の前記第1の主面との間、および、前記積層方向の最も外側に位置する前記内部電極と前記積層体の前記第2の主面との間に位置する外層誘電体層と、前記積層方向に隣り合う複数の前記内部電極の間に位置する内層誘電体層からなり、
前記外層誘電体層の厚みは、前記第1の曲線の曲率半径より小さく、前記第1の曲線の曲率半径は、前記第2の曲線の曲率半径より10%以上大きいことを特徴とする積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
前記積層体を前記長さ方向の中央部の位置で切断して前記幅方向および前記積層方向で規定される断面を見たときに、前記積層方向の最も外側に位置する2つの前記内部電極の一端同士を結ぶ直線から複数の前記内部電極それぞれの端部までの前記幅方向における距離のばらつきは0.2以下であることを特徴とする請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項3】
前記直線の延長線と前記第2の曲線とが交差することを特徴とする請求項1または2に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項4】
前記第1の曲線の曲率半径は、前記積層体の前記積層方向の寸法が0.3mm、前記幅方向の寸法が0.3mmのときに、16μm以上28μm以下であり、前記積層体の前記積層方向の寸法が0.5mm、前記幅方向の寸法が0.5mmのときに、30μm以上50μm以下であり、前記積層体の前記積層方向の寸法が1.25mm、前記幅方向の寸法が1.25mmのときに、40μm以上200μm以下であり、前記積層体の前記積層方向の寸法が1.6mm、前記幅方向の寸法が1.6mmのときに、50μm以上200μm以下であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項5】
前記幅方向において、前記第1の側面と前記内部電極との間、および、前記第2の側面と前記内部電極との間に位置するサイドマージン部は、樹脂およびガラスからなることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項6】
前記幅方向において、前記第1の側面と前記内部電極との間、および、前記第2の側面と前記内部電極との間に位置するサイドマージン部は、アルミナおよびガラスを含むセラミックからなることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項7】
前記サイドマージン部の前記幅方向における寸法は、5μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項またはに記載の積層セラミックコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
誘電体層と内部電極とが交互に複数積層された積層体と、積層体の両端面に外部電極が形成された構造の積層セラミックコンデンサが知られている。
【0003】
そのような積層セラミックコンデンサの1つとして、特許文献1には、積層体のうち、誘電体層と内部電極とが積層された積層部と、積層部の側面側に配置され、内部電極の周囲を覆うサイドマージン部との接合界面でのクラックや剥離を防止することができるとされている積層セラミックコンデンサが記載されている。また、特許文献1には、内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを複数積層して切断することにより得られる積層チップの側面に、未焼成のサイドマージン部を設けることによって、未焼成の積層体を作製する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-79977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、コンデンサの容量に寄与しないサイドマージン部は、その厚みを可能な限り薄くすることが好ましい。サイドマージン部の厚みを薄くすると、積層体の稜線部の曲率半径は小さくなるが、曲率半径が小さくなることにより、積層セラミックコンデンサの稜線部においてチッピングが生じやすくなる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、サイドマージン部の厚みを薄くした場合でも、チッピングを抑制することができる積層セラミックコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の積層セラミックコンデンサは、
積層された複数の誘電体層と複数の内部電極とを含み、前記誘電体層と前記内部電極の積層方向に相対する第1の主面および第2の主面と、前記積層方向と直交する幅方向に相対する第1の側面および第2の側面と、前記積層方向および前記幅方向と直交する長さ方向に相対する第1の端面および第2の端面とを有する積層体と、
前記内部電極と電気的に接続され、前記積層体の前記第1の端面および前記第2の端面にそれぞれ設けられた外部電極と、
を備え、
前記積層方向の最も外側に位置する2つの前記内部電極の一端同士を結ぶ直線と前記第1の主面および前記第2の主面のうちの一方の主面とを結ぶ第1の稜線部は第1の曲線を有し、前記第1の主面および前記第2の主面のうちの一方の主面と、前記第1の側面および前記第2の側面のうちの一方の側面とを結ぶ第2の稜線部は第2の曲線を有し、
前記積層方向に見たときに、全ての前記内部電極の端部は、前記第1の稜線部と重ならない位置にあり、
前記誘電体層は、前記積層方向の最も外側に位置する前記内部電極と前記積層体の前記第1の主面との間、および、前記積層方向の最も外側に位置する前記内部電極と前記積層体の前記第2の主面との間に位置する外層誘電体層と、前記積層方向に隣り合う複数の前記内部電極の間に位置する内層誘電体層からなり、
前記外層誘電体層の厚みは、前記第1の曲線の曲率半径より小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の積層セラミックコンデンサは、積層方向の最も外側に位置する2つの内部電極の一端同士を結ぶ直線と、第1の主面および第2の主面のうちの一方の主面とを結ぶ第1の稜線部は第1の曲線を有し、第1の主面および第2の主面のうちの一方の主面と、第1の側面および第2の側面のうちの一方の側面とを結ぶ第2の稜線部は第2の曲線を有する。すなわち、サイドマージン部を形成する前の構造体の第1の稜線部の形状が曲線形状であるため、積層セラミックコンデンサの表面に位置する第2の稜線部の曲率半径を大きくすることができる。これにより、サイドマージン部の厚みを薄くした場合でも、チッピングを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態における積層セラミックコンデンサを模式的に示す斜視図である。
図2図1に示す積層セラミックコンデンサのII-II線に沿った模式的断面図である。
図3図1に示す積層セラミックコンデンサのIII-III線に沿った模式的断面図である。
図4】積層体を長さ方向の中央部の位置で切断して幅方向および積層方向で規定される断面を見たときの、内部電極の幅方向の端部の拡大図である。
図5】積層セラミックコンデンサの製造方法の一例を説明するための図であり、(a)は、導電膜が形成されたセラミックグリーンシートを示す概略図、(b)は、導電膜が形成されたセラミックグリーンシートを積層する様子を示す模式図である。
図6】積層セラミックコンデンサの製造途中に作製される未焼成の構造体の外観の一例を示す斜視図である。
図7】積層セラミックコンデンサの製造途中に作製される焼成後の構造体の側面図である。
図8】参考実施形態における積層セラミックコンデンサの断面図であって、積層体を長さ方向の中央部の位置で切断して幅方向および積層方向で規定される断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施形態を示して、本発明の特徴を具体的に説明する。
【0011】
図1は、第1の実施形態における積層セラミックコンデンサ10を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示す積層セラミックコンデンサ10のII-II線に沿った模式的断面図である。図3は、図1に示す積層セラミックコンデンサ10のIII-III線に沿った模式的断面図である。
【0012】
図1図3に示すように、積層セラミックコンデンサ10は、全体として直方体形状を有する電子部品であり、積層体11と、一対の外部電極20a、20bとを有している。一対の外部電極20a、20bは、図1に示すように、対向するように配置されている。
【0013】
ここでは、一対の外部電極20a、20bが対向する方向を積層セラミックコンデンサ10の長さ方向Lと定義し、後述する誘電体層12と内部電極13a、13bとが積層されている方向を積層方向Tと定義し、長さ方向Lおよび積層方向Tのいずれの方向にも直交する方向を幅方向Wと定義する。長さ方向L、積層方向T、および、幅方向Wのうちの任意の2方向は、互いに直交する方向である。
【0014】
なお、図3に示す断面図は、積層体11を長さ方向Lの中央部の位置で切断して幅方向Wおよび積層方向Tで規定される断面図である。積層体11の長さ方向Lの中央部の位置と、積層セラミックコンデンサ10の長さ方向Lの中央部の位置とは、同じ位置である。
【0015】
積層体11は、長さ方向Lに相対する第1の端面15aおよび第2の端面15bと、積層方向Tに相対する第1の主面16aおよび第2の主面16bと、幅方向Wに相対する第1の側面17aおよび第2の側面17bとを有する。
【0016】
積層体11の角部および稜線部は、丸みを帯びている。ここで、角部は、積層体11の3面が交わる部分であり、稜線部は、積層体11の2面が交わる部分である。
【0017】
積層セラミックコンデンサ10の長さ方向Lの寸法は、例えば0.4mm以上3.2mm以下であり、幅方向Wの寸法は、例えば0.2mm以上1.6mm以下であり積層方向Tの寸法は、例えば0.2mm以上1.6mm以下である。ただし、積層体11の寸法が上述した数値に限定されることはない。積層体11の寸法は、マイクロメータまたは光学顕微鏡で測定することができる。
【0018】
図2および図3に示すように、積層体11は、積層された複数の誘電体層12と複数の内部電極13a、13bと、サイドマージン部14とを含む。内部電極13a、13bには、第1の内部電極13aと第2の内部電極13bとが含まれている。図3に示すように、誘電体層12を介して第1の内部電極13aと第2の内部電極13bとが交互に複数積層されており、幅方向Wの両外側にサイドマージン部14が設けられている。
【0019】
誘電体層12は、図2および図3に示すように、積層方向Tの最も外側に位置する内部電極13a、13bよりも積層方向Tの外側に位置する外層誘電体層121と、積層方向Tに隣り合う2つの内部電極13a、13bの間に位置する内層誘電体層122とを含む。
【0020】
より詳しくは、外層誘電体層121は、積層方向Tの最も外側に位置する内部電極13a、13bと、積層体11の第1の主面16aおよび第2の主面16bとの間に位置する層である。また、内層誘電体層122は、積層方向Tに隣り合う第1の内部電極13aと第2の内部電極13bとの間に位置する層である。外層誘電体層121の厚みは、例えば、5μm以上50μm以下であり、後述する第1の曲線18aの曲率半径より小さい方が好ましい。内層誘電体層122の厚みは、例えば、0.35μm以上1.8μm以下である。
【0021】
誘電体層12は、例えば、BaTiO3、CaTiO3、SrTiO3、CaZrO3などを主成分とするセラミック材料からなる。これらの主成分に、Mn化合物、Fe化合物、Cr化合物、Co化合物、Ni化合物などの副成分が含まれていてもよい。
【0022】
サイドマージン部14は、幅方向Wにおいて、積層体11の第1の側面17aと内部電極13a、13bとの間、および、積層体11の第2の側面17bと内部電極13a、13bとの間に位置する領域である。すなわち、積層体11の長さ方向Lおよび幅方向Wを含む任意の断面を積層方向Tから見たときに、サイドマージン部14は、第1の内部電極13aと第2の内部電極13bのいずれも存在しない領域である。
【0023】
幅方向Wにおけるサイドマージン部14の寸法L1(図3参照)、すなわち、サイドマージン部14の厚みは、5μm以上50μm以下である。
【0024】
一例として、サイドマージン部14は、樹脂およびガラスからなる。この場合、樹脂として、例えば、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を用いることができる。また、別の構成例として、サイドマージン部14は、アルミナおよびガラスを含むセラミックからなる。
【0025】
第1の内部電極13aは、積層体11の第1の端面15aに引き出されている一方で、第2の端面15bには引き出されていない。第2の内部電極13bは、積層体11の第2の端面15bに引き出されている一方で、第1の端面15aには引き出されていない。
【0026】
第1の内部電極13aは、第2の内部電極13bと対向する部分である対向電極部と、対向電極部から積層体11の第1の端面15aまで引き出された部分である引出電極部とを備えている。また、第2の内部電極13bは、第1の内部電極13aと対向する部分である対向電極部と、対向電極部から積層体11の第2の端面15bまで引き出された部分である引出電極部とを備えている。
【0027】
第1の内部電極13aの対向電極部と、第2の内部電極13bの対向電極部とが誘電体層12を介して対向することにより容量が形成され、これにより、コンデンサとして機能する。
【0028】
第1の内部電極13aおよび第2の内部電極13bは、例えば、Ni、Cu、Ag、Pd、およびAuなどの金属、またはAgとPdの合金などを含有している。第1の内部電極13aおよび第2の内部電極13bは、さらに誘電体層12に含まれるセラミックと同一組成系の誘電体粒子を含んでいてもよい。
【0029】
第1の内部電極13aおよび第2の内部電極13bの厚みは、例えば、0.3μm以上1.0μm以下である。また、第1の内部電極13aと第2の内部電極13bとを含む内部電極の積層枚数は、例えば、100枚以上800枚以下である。
【0030】
図4は、積層体11を長さ方向Lの中央部の位置で切断して幅方向Wおよび積層方向Tで規定される断面を見たときの、内部電極13a、13bの幅方向Wの端部の拡大図である。図3では、内部電極13a、13bの幅方向Wの端部の位置が揃っているように見えるが、実際には、拡大図である図4に示すように、内部電極13a、13bの幅方向Wの端部の位置はばらついている。
【0031】
図4では、一部の内部電極13a、13bの端部しか示していないが、本実施形態における積層セラミックコンデンサ10では、積層体11を長さ方向Lの中央部の位置で切断して幅方向Wおよび積層方向Tで規定される断面を見たときに、積層方向Tの最も外側に位置する2つの内部電極13a、13bの一端同士を結ぶ直線30から複数の内部電極13a、13bそれぞれの端部までの幅方向Wにおける距離のばらつきは0.2以下であることが好ましい。上記距離のばらつきとは、各内部電極13a、13bにおける上記距離の平均値からの偏差を、上記距離の平均値で除算した値である。例えば、上記直線30から、各内部電極13a、13bの端部までの幅方向Wにおける距離をそれぞれL1、L2、L3、…、Ln(nは内部電極13a、13bの総数)とし、全ての距離の平均値((L1+L2+L3+…+Ln)/n)をLaとしたときに、各内部電極13a、13bにおける上記距離の平均値からの偏差は、(L1-La)、(L2-La)、(L3-La)、…、(Ln-La)であり、ばらつきはそれぞれ、(L1-La)/La、(L2-La)/La、(L3-La)/La、…、(Ln-La)/Laである。これらのばらつきが全て0.2以下であることが好ましい。
【0032】
例えば、誘電体層12とサイドマージン部14とを一体的に作製せずに、後述する製造方法のように、サイドマージン部14を別途形成することにより、内部電極13a、13bの端部が一定の範囲内に揃う構造が得られる。
【0033】
ここで、図3に示す断面、すなわち、積層体11を長さ方向Lの中央部の位置で切断して幅方向Wおよび積層方向Tで規定される断面を見たときに、積層方向Tの最も外側に位置する2つの内部電極13a、13bの一端同士を結ぶ直線30と、第1の主面16aおよび第2の主面16bのうちの一方の主面とを結ぶ第1の稜線部18は、曲率半径が10μm以上の第1の曲線18aを有する。図3では、積層方向Tの両外側に位置する第1の内部電極13aおよび第2の内部電極13bの、第1の側面17a側に位置する一端同士を結んだ直線30を示しているが、第2の側面17b側に位置する他端同士を結ぶ直線を引いた場合も同じである。すなわち、第2の側面17b側に位置する第1の稜線部18も、曲率半径が10μm以上の第1の曲線18aを有する。
【0034】
また、図3に示す断面を見たときに、第1の主面16aおよび第2の主面16bのうちの一方の主面と、第1の側面17aおよび第2の側面17bのうちの一方の側面とを結ぶ第2の稜線部19は、曲率半径が第1の曲線18aの曲率半径よりも小さい第2の曲線19aを有する。すなわち、内側に位置する第1の曲線18aの曲率半径は、外側に位置する第2の曲線19aの曲率半径よりも大きい。好ましくは、第1の曲線18aの曲率半径は、第2の曲線19aの曲率半径より10%以上大きい。図3に示す断面において、第2の稜線部19は4つ存在し、それぞれが曲率半径8μm以上の第2の曲線19aを有する。
【0035】
なお、これらの曲率半径は、積層体11の大きさに依存する。積層体11の積層方向Tの寸法が0.3mm、幅方向Wの寸法が0.3mmのときに、第2の曲線19aの曲率半径は13μm以上24μm以下であり、第1の曲線18aの曲率半径は16μm以上28μm以下である。また、積層体11の積層方向Tの寸法が0.5mm、幅方向Wの寸法が0.5mmのときに、第2の曲線19aの曲率半径は25μm以上42μm以下であり、第1の曲線18aの曲率半径は30μm以上50μm以下である。また、積層体11の積層方向Tの寸法が1.25mm、幅方向Wの寸法が1.25mmのときに、第2の曲線19aの曲率半径は33μm以上167μm以下であり、第1の曲線18aの曲率半径は40μm以上200μm以下である。また、積層体11の積層方向Tの寸法が1.6mm、幅方向Wの寸法が1.6mmのときに、第2の曲線19aの曲率半径は42μm以上167μm以下であり、第1の曲線18aの曲率半径は50μm以上200μm以下である。
【0036】
ここで、第1の稜線部18の第1の曲線18aの曲率半径、および、第2の稜線部19の第2の曲線19aの曲率半径は、積層体11を長さ方向Lの中央部の位置で切断、または、中央部の位置まで研磨して幅方向Wおよび積層方向Tで規定される断面を露出させて、その断面における第1の稜線部18および第2の稜線部19を走査型電子顕微鏡で観察することによって求める。曲線の曲率半径は、公知の方法により求めることができる。
【0037】
上述した直線30の延長線と第2の曲線19aとは交差する。すなわち、サイドマージン部14が存在することにより、第1の側面17aおよび第2の側面17bはそれぞれ、内部電極13a、13bの端部よりも幅方向Wの外側に位置する。したがって、積層方向Tの最も外側に位置する2つの内部電極13a、13bの一端同士を結ぶ直線30の延長線と第2の曲線19aとは交差する。
【0038】
ここで、サイドマージン部を形成する前の構造体の稜線部の形状が直角の形状である場合、サイドマージン部の厚みを薄くすると、積層セラミックコンデンサの表面の稜線部の曲率半径が小さくなり、チッピングが生じやすくなる。しかしながら、本実施形態における積層セラミックコンデンサ10は、サイドマージン部14を形成する前の構造体の第1の稜線部18の形状が曲線形状であるため、積層セラミックコンデンサ10の表面に位置する第2の稜線部19の曲率半径を大きくすることができる。したがって、サイドマージン部14の厚みを薄くした場合でも、チッピングを抑制することができる。
【0039】
すなわち、本実施形態における積層セラミックコンデンサ10は、サイドマージン部14の厚みを薄くし、かつ、チッピングの発生を抑制することができる。
【0040】
ここで、誘電体層12の厚み、および、第1の内部電極13aと第2の内部電極13bの各々の厚みは、以下の方法により測定することができる。
【0041】
まず、積層体11の長さ方向Lの中央部の位置において、積層方向Tおよび幅方向Wにより規定される断面、換言すると、積層体11の長さ方向Lと直交する面を長さ方向Lの中央部の位置まで研磨することによって、断面を露出させて、その断面を走査型電子顕微鏡で観察する。次に、露出させた断面の中心を通る積層方向Tに沿った中心線、および、この中心線から両側に等間隔に2本ずつ引いた線の合計5本の線上において、誘電体層12の厚みを測定する。この5つの測定値の平均値を、誘電体層12の厚みとする。
【0042】
なお、より正確に求めるためには、積層方向Tにおいて、積層体11を上部、中央部、および、下部に分けて、上部、中央部、および、下部のそれぞれにおいて、上述した5つの測定値を求め、求めた全ての測定値の平均値を、誘電体層12の厚みとする。
【0043】
上では、誘電体層12の厚みを測定する方法について説明したが、第1の内部電極13aおよび第2の内部電極13bの厚みも、誘電体層12の厚みを測定する方法に準じる方法で、誘電体層12の厚みを測定した断面と同じ断面について、走査型電子顕微鏡を用いて測定することができる。
【0044】
第1の外部電極20aは、積層体11の第1の端面15aに設けられている。本実施形態では、第1の外部電極20aは、積層体11の第1の端面15aの全体に形成されているとともに、第1の端面15aから、第1の主面16a、第2の主面16b、第1の側面17a、および、第2の側面17bに回り込むように形成されている。第1の外部電極20aは、第1の内部電極13aと電気的に接続されている。
【0045】
第2の外部電極20bは、積層体11の第2の端面15bに設けられている。本実施形態では、第2の外部電極20bは、積層体11の第2の端面15bの全体に形成されているとともに、第2の端面15bから、第1の主面16a、第2の主面16b、第1の側面17a、および、第2の側面17bに回り込むように形成されている。第2の外部電極20bは、第2の内部電極13bと電気的に接続されている。
【0046】
第1の外部電極20aおよび第2の外部電極20bは、例えば、下地電極層と、下地電極層上に配置されためっき層とを備える。
【0047】
下地電極層は、以下に説明するような、焼付け電極層、樹脂電極層、および、薄膜電極層などの層のうち、少なくとも1つの層を含む。
【0048】
焼付け電極層は、ガラスと金属とを含む層であり、1層であってもよいし、複数層であってもよい。焼付け電極層は、例えば、Cu、Ni、Ag、Pd、およびAuなどの金属、または、AgとPdの合金などを含む。
【0049】
焼付け電極層は、ガラスおよび金属を含む導電ペーストを積層体に塗布して焼き付けることによって形成される。焼き付けは、積層体の焼成と同時に行ってもよいし、積層体の焼成後に行ってもよい。
【0050】
樹脂電極層は、例えば、導電性粒子と熱硬化性樹脂とを含む層として形成することができる。樹脂電極層を形成する場合には、焼付け電極層を形成せずに、セラミック素体上に直接形成するようにしてもよい。樹脂電極層は、1層であってもよいし、複数層であってもよい。
【0051】
薄膜電極層は、例えば、金属粒子が堆積した1μm以下の層であり、スパッタ法または蒸着法などの既知の薄膜形成法により形成することができる。
【0052】
下地電極層上に配置されるめっき層は、例えば、Cu、Ni、Ag、Pd、およびAuなどの金属、またはAgとPdの合金などのうちの少なくとも1つを含む。めっき層は、1層であってもよいし、複数層であってもよい。ただし、めっき層は、Niめっき層とSnめっき層の2層構造とすることが好ましい。Niめっき層は、下地電極層が積層セラミックコンデンサ10を実装する際のはんだによって侵食されるのを防止する機能を果たす。また、Snめっき層は、積層セラミックコンデンサ10を実装する際のはんだの濡れ性を向上させる機能を果たす。
【0053】
なお、第1の外部電極20aおよび第2の外部電極20bは、上述した下地電極層を備えず、積層体11上に直接配置されるめっき層により構成されていてもよい。この場合、めっき層が直接、第1の内部電極13aまたは第2の内部電極13bと接続される。
【0054】
(積層セラミックコンデンサの製造方法の一例)
以下では、上述した構造を有する積層セラミックコンデンサ10の製造方法の一例について説明する。図5は、積層セラミックコンデンサ10の製造方法の一例を説明するための図であり、(a)は、導電膜が形成されたセラミックグリーンシートを示す概略図、(b)は、導電膜が形成されたセラミックグリーンシートを積層する様子を示す模式図である。
【0055】
まず初めに、外層誘電体層121を構成するためのセラミックグリーンシートと、内層誘電体層122を構成するためのセラミックグリーンシートを用意する。これらのセラミックグリーンシートは、公知のものを用いることができる。
【0056】
続いて、図5(a)に示すように、用意したセラミックグリーンシート50a、50bの表面に、内部電極用ペーストをストライプ状に印刷し、乾燥させる。セラミックグリーンシート50bは、セラミックグリーンシート50aと交互に積層されるものである。ここでは、内部電極用ペーストがストライプ状に伸びる方向をX方向とし、セラミックグリーンシート上でX方向と直交する方向をY方向とする。このようにして、第1の内部電極13a(第2の内部電極13b)となる導電膜52a(52b)が形成される。印刷方法は、スクリーン印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷など各種の方法を用いることができる。
【0057】
続いて、外層誘電体層121を構成するためのセラミックグリーンシートを積層した後、導電膜52a、52bが形成されたセラミックグリーンシート50a、50bを、図5(b)に示すように、互いにY方向にずらした状態で複数枚積層する。そして、その上に、外層誘電体層121を構成するためのセラミックグリーンシートを積層することにより、マザー積層体を得る。
【0058】
続いて、マザー積層体を、剛体プレス、静水圧プレスなどの方法によりプレスする。そして、プレスしたマザー積層体をチップ形状にカットすることにより、図6に示す構造体60を得る。
【0059】
図6に示すように、構造体60の一方の端面には、セラミックグリーンシート50aの導電膜52aのみが露出し、他方の端面には、セラミックグリーンシート50bの導電膜52bのみが露出している。また、構造体60の両側面には、セラミックグリーンシート50aの導電膜52aおよびセラミックグリーンシート50bの導電膜52bのそれぞれが露出している。
【0060】
続いて、構造体60を所定の焼成温度で焼成する。焼成温度は、誘電体層12や内部電極13a、13bの材料にもよるが、例えば、900℃以上1300℃以下である。
【0061】
続いて、焼成後の構造体の角部および稜線部が丸みを帯びた曲線形状となるように、例えば、サンドブラストやバレル研磨などを行う。ここでは、完成後の積層セラミックコンデンサ10において、上述した第1の稜線部18が第1の曲線18aを有する形状となるように処理する。なお、焼成前の構造体60に対して、角部および稜線部が丸みを帯びた曲線形状となるような処理を行ってから、焼成してもよい。
【0062】
続いて、サイドマージン部14を構成するためのサイドマージン部用セラミックグリーンシートを用意する。サイドマージン部用セラミックグリーンシートは、アルミナ、ガラス、有機バインダ、および、有機溶剤などを含むセラミックスラリーを用いて作製することができる。そして、用意したサイドマージン部用セラミックグリーンシートを構造体の内部電極が露出する側面と対向させ、押し付けて打ち抜くことにより、サイドマージン部14となる層を形成する。同様の方法により、反対側の側面にもサイドマージン部14となる層を形成する。なお、サイドマージン部14は、材料を吹き付けて形成してもよいし、塗工により形成してもよい。
【0063】
続いて、角部および稜線部が丸みを帯びた曲線形状となるような処理を行う。ここでは、完成後の積層セラミックコンデンサ10において、上述した第2の稜線部19が第2の曲線19aを有する形状となるように処理する。
【0064】
続いて、構造体の両端面それぞれに、外部電極用ペーストを塗布した後、所定の焼成温度で焼成する。焼成温度は、例えば、800℃以上900℃以下である。
【0065】
この後、必要に応じてめっき層を形成する。すなわち、外部電極20a、20bがめっき層を含む場合、下地電極層の上にめっき層を形成する。
【0066】
上述した製造方法により、サイドマージン部14がアルミナおよびガラスを含むセラミックからなる積層セラミックコンデンサ10が作製される。ただし、上述した製造方法は一例であって、積層セラミックコンデンサ10の製造方法が上述した製造方法に限定されることはない。
【0067】
(積層セラミックコンデンサの製造方法の別の一例)
積層セラミックコンデンサ10のサイドマージン部14が樹脂およびガラスからなる構成の場合には、以下の方法により製造することができる。ただし、角部および稜線部が丸みを帯びた、焼成後の構造体を得る工程までは、上述した製造方法と同じであるため、詳しい説明は省略する。
【0068】
角部および稜線部が丸みを帯びた、焼成後の構造体の両端面に、第1の外部電極20aおよび第2の外部電極20bを形成する。すなわち、焼成後の構造体の両端面の全体と、両主面および両側面の一部に、外部電極用ペーストを塗工して焼き付けることにより下地電極層を形成した後、下地電極層の上にめっき層を形成する。
【0069】
このとき、図7に示すように、焼成後の構造体70の側面には、第1の内部電極13aおよび第2の内部電極13bが露出しているので、ショートが生じないように、第1の外部電極20aおよび第2の外部電極20bを形成する。具体的には、第2の内部電極13bが引き出されていない領域に第1の外部電極20aを形成するとともに、第1の内部電極13aが引き出されていない領域に第2の外部電極20bを形成する。
【0070】
最後に、サイドマージン部14を形成するために、第1の内部電極13aおよび第2の内部電極13bが露出している構造体70の側面に、ガラスを含む樹脂を塗工する。例えば、ガラスを含む熱可塑性樹脂を塗工した後、加熱することによって、サイドマージン部14を形成する。なお、樹脂は、完成後の積層セラミックコンデンサ10において、上述した第2の稜線部19が第2の曲線19aを有する形状となるように塗工する。
【0071】
以上の方法により、サイドマージン部14が樹脂およびガラスからなる積層セラミックコンデンサ10が作製される。
【0072】
<参考実施形態>
第1の実施形態における積層セラミックコンデンサ10では、全ての内部電極13a、13bの端部が第1の稜線部18と重ならないように設けられている。
【0073】
これに対して、参考実施形態における積層セラミックコンデンサでは、積層方向の最も外側に位置する内部電極の端部は、第1の稜線部と重なる位置にある。
【0074】
図8は、参考実施形態における積層セラミックコンデンサ10Aの断面図であって、図3に示す断面図と同様に、積層体11を長さ方向Lの中央部の位置で切断して幅方向Wおよび積層方向Tで規定される断面図である。
【0075】
図8に示すように、積層方向の最も外側に位置する第1の内部電極13aおよび第2の内部電極13bの端部は、第1の稜線部18と重なる位置にある。すなわち、第1の実施形態における積層セラミックコンデンサ10と比べて、参考実施形態における積層セラミックコンデンサ10Aでは、積層方向Tのより外側に内部電極13a、13bを配置することができる。したがって、同一のサイズの積層セラミックコンデンサにおいて、内部電極13a、13bの枚数を多くすることができ、コンデンサの容量を大きくすることができる。
【0076】
また、参考実施形態における積層セラミックコンデンサ10Aでは、図8に示すように、積層方向Tの最も外側に位置する内部電極13a、13bの幅方向Wの寸法は、他の内部電極13a、13bの幅方向Wの寸法より小さい。したがって、サイドマージン部14の厚みが薄く、かつ、第2の稜線部19の曲率半径が大きい場合でも、積層方向Tの最も外側に位置する内部電極13a、13bの端部と第2の稜線部19との間の間隔が短くなることを抑制することができ、積層セラミックコンデンサ10Aの耐湿性を確保することができる。
【0077】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0078】
10、10A 積層セラミックコンデンサ
11 積層体
12 誘電体層
13a 第1の内部電極
13b 第2の内部電極
14 サイドマージン部
18 第1の稜線部
18a 第1の曲線
19 第2の稜線部
19a 第2の曲線
20a 第1の外部電極
20b 第2の外部電極
50a、50b セラミックグリーンシート
60 焼成前の構造体
70 焼成後の構造体
121 外層誘電体層
122 内層誘電体層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8