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7586211車両通信システムおよび通信ネットワークの異常個所診断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】車両通信システムおよび通信ネットワークの異常個所診断方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 41/0677 20220101AFI20241112BHJP
   H04L 43/0817 20220101ALI20241112BHJP
   H04L 43/06 20220101ALI20241112BHJP
   H04L 12/28 20060101ALI20241112BHJP
   H04L 43/0811 20220101ALI20241112BHJP
【FI】
H04L41/0677
H04L43/0817
H04L43/06
H04L12/28 100A
H04L43/0811
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023039606
(22)【出願日】2023-03-14
(65)【公開番号】P2024130092
(43)【公開日】2024-09-30
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩原 裕也
【審査官】速水 雄太
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-243591(JP,A)
【文献】特開2018-061223(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0079842(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第113038421(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 41/0677
H04L 43/0817
H04L 43/06
H04L 12/28
H04L 43/0811
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバスと接続され、前記バスに接続された複数のECUと通信するCGWと、複数の前記ECUとを備え、
前記CGWは、
複数の前記ECUに対しテスターリクエスト信号を送信するテスターリクエスト信号送信部と、
複数の前記ECUから送信されたテスターレスポンス信号を受信し、前記テスターレスポンス信号を解読するテスターレスポンス信号解読部と、
前記テスターレスポンス信号の解読結果に基づいて通信ネットワーク異常を検出する異常検出部と、
通信ネットワーク異常の検出結果を示すレポートを生成するレポート作成部と、を備え、
前記ECUは、
前記CGWから前記テスターリクエスト信号を受信するテスターリクエスト信号受信部と、
当該ECUの通信ステータスを示す情報を生成する通信ステータス演算部と、
前記通信ステータスを示す前記テスターレスポンス信号を生成して前記CGWへ送信する機能と、を備え、
前記レポート作成部は、複数の前記ECUの全てに関するレポートを複数の前記ECUの全てに対し配信する、車両通信システム。
【請求項2】
前記テスターリクエスト信号は、前記CGWと接続された全ての前記ECUへ送信される信号である旨を示す識別子と、前記テスターレスポンス信号の要求を示す識別子と、を含む、請求項1記載の車両通信システム。
【請求項3】
前記テスターレスポンス信号は、前記テスターレスポンス信号を送信した前記ECUに割り当てられた識別子と、前記テスターリクエスト信号に対するレスポンス信号である旨を示す識別子と、前記通信ステータスを示す情報と、を含む、請求項1記載の車両通信システム。
【請求項4】
前記異常検出部は、前記テスターレスポンス信号に基づき、通信ネットワークに異常が検出されたときに、異常のある範囲を割り出し該当のDTCを立てる、請求項1記載の車両通信システム。
【請求項5】
複数のバスと接続され、前記バスに接続された複数のECUと通信するCGWと、複数の前記ECUとを備え、
前記CGWは、
複数の前記ECUに対しテスターリクエスト信号を送信するテスターリクエスト信号送信部と、
前記ECUの通信ステータスを示すテスターレスポンス信号を受信し、前記テスターレスポンス信号を解読するテスターレスポンス信号解読部と、
前記テスターレスポンス信号の解読結果に基づいて通信ネットワーク異常を検出する異常検出部と、
通信ネットワーク異常の検出結果を示すレポートを生成するレポート作成部と、を備え、
前記レポート作成部は、複数の前記ECUに関する前記レポートを複数の前記ECUに対し配信する、車両通信システム。
【請求項6】
複数のバスと接続され、前記バスに接続された複数のECUと通信するCGWと、複数の前記ECUとを備えた車両通信システムの通信ネットワークの異常個所診断方法であって、
前記CGWが、
複数の前記ECUに対しテスターリクエスト信号を送信し、
前記ECUの通信ステータスを示すテスターレスポンス信号を受信し、
前記テスターレスポンス信号を解読し、
前記テスターレスポンス信号の解読結果に基づいて通信ネットワーク異常を検出し、
通信ネットワーク異常の検出結果を示すレポートを生成し、
複数の前記ECUに関する前記レポートを複数の前記ECUに対し配信する、通信ネットワークの異常個所診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両通信システムおよび通信ネットワークの異常個所診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両機能拡充により、車両に搭載されるECU(Electronic Control Unit)の数が増加する傾向にあり、ECU同士の通信負荷も増加傾向にある。ECUの通信負荷を分散するために、セントラルゲートウェイ(CGW:Central Gateway)を導入した複数のCANバスによるネットワーク構成が主流化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-113860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のネットワーク構成において、同時に送受信するECU同士が異なるCANバスに繋がることがある。この様な状況でECUからの信号が途絶したときには、通信経路のどこで異常が発生しているのか判別することが困難であった。
【0005】
End to Endで通信診断をする方法もあるが、一方の途絶を他方が診断するため、その通信経路のどこに故障個所があるのか絞り込むことが困難であった。
通信経路上のどこで通信異常が発生しているか異常部位の特定が困難であると、メンテナンスや修理の際に、作業員が修理箇所になかなか辿り着かず、修理工数の増大につながる。
【0006】
本発明は上記事情を鑑みて成されたものであって、作業員による修理工程数を削減する車両通信システムおよび通信ネットワークの異常個所診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様による車両通信システムは、複数のバスと接続され、前記バスに接続された複数のECUと通信するCGWと、複数の前記ECUとを備え、前記CGWは、複数の前記ECUに対しテスターリクエスト信号を送信するテスターリクエスト信号送信部と、複数の前記ECUから送信されたテスターレスポンス信号を受信し、前記テスターレスポンス信号を解読するテスターレスポンス信号解読部と、前記テスターレスポンス信号の解読結果に基づいて通信ネットワーク異常を検出する異常検出部と、通信ネットワーク異常の検出結果を示すレポートを生成するレポート作成部と、を備え、前記ECUは、前記CGWから前記テスターリクエスト信号を受信するテスターリクエスト信号受信部と、当該ECUの通信ステータスを示す情報を生成する通信ステータス演算部と、前記通信ステータスを示す前記テスターレスポンス信号を生成して前記CGWへ送信する機能と、を備え、前記レポート作成部は、複数の前記ECUの全てに関するレポートを複数の前記ECUの全てに対し配信する。
【0008】
本発明の第2態様による通信ネットワークの異常個所診断方法は、複数のバスと接続され、前記バスに接続された複数のECUと通信するCGWと、複数の前記ECUとを備えた車両通信システムの通信ネットワークの異常個所診断方法であって、前記CGWが、複数の前記ECUに対しテスターリクエスト信号を送信し、前記ECUの通信ステータスを示すテスターレスポンス信号を受信し、前記テスターレスポンス信号を解読し、前記テスターレスポンス信号の解読結果に基づいて通信ネットワーク異常を検出し、通信ネットワーク異常の検出結果を示すレポートを生成し、複数の前記ECUに関する前記レポートを複数の前記ECUに対し配信する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業員による修理工程数を削減する車両通信システムおよび通信ネットワークの異常個所診断方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態の車両通信システムの一構成例を概略的に示すブロック図である。
図2図2は、図1に示すCGWの一構成例を概略的に示すブロック図である。
図3図3は、図1に示すECUの一構成例を概略的に示すブロック図である。
図4図4は、テスターリクエスト信号とテスターレスポンス信号との一例について説明するための図である。
図5図5は、一実施形態の車両通信システムのCGWの動作の一例について説明するためのフローチャートである。
図6図6は、一実施形態の車両通信システムのECUの動作の一例について説明するためのフローチャートである。
図7図7は、一実施形態の車両通信システムにおける、通信ネットワークの異常部位の判断結果を例示する図である。
図8図8は、一実施形態の車両通信システムによる効果の一例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、一実施形態の車両通信システムおよび通信ネットワークの異常個所診断方法について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、一実施形態の車両通信システムの一構成例を概略的に示すブロック図である。
本実施形態の車両通信システムは、CGW10と、複数のECUA1-C3とを備えている。なお、本実施形態の車両通信システムは、CGW10と、バスによりCGW10と接続された複数のECUA1-C3とを備えた構成の通信システムに適用可能であって例えば二輪車両、三輪車両、四輪車両などの車両に適用できる。更に、当該構成の通信システムを備えた電子機器であれば、車両に限らず本願発明を適用しても構わない。
【0012】
CGW10は、少なくとも一つのプロセッサと、プロセッサにより実行されるプログラムが記録されたメモリと、を備え、ソフトウエアにより若しくはソフトウエアとハードウエアとの組み合わせにより、以下に説明する種々の機能を実現することができる。
【0013】
ECUA1-C3の各々は、少なくとも一つのプロセッサと、プロセッサにより実行されるプログラムが記録されたメモリと、を備え、ソフトウエアにより若しくはソフトウエアとハードウエアとの組み合わせにより、以下に説明する種々の機能を実現することができる。
【0014】
CGW10には複数のバス(幹線)BL1-BL3が接続されている。バスBL1-BL3から延びる複数の枝線にはECUA1-C3が接続され、CGW10とECUA1-C3とバスBL1-BL3を介して通信可能に接続されている。またCGW10は、外部装置と通信可能に構成されていてもよい。CGW10は、例えば、異なるデータ形式や通信プロトコルを扱う送信元と送信先との通信において、通信されるデータを通信先に対応した形式に変換して通信データを中継する中継装置である。
【0015】
CGW10とECUA1-C3との通信プロトコルは、例えばCAN(Control Area Network/登録商標)を採用することができる。なお、CGW10とECUA1-C3との通信プロトコルは、CANに限定されるものではなく、イーサネット(Ethernet/登録商標)、LIN、MOST、FlexRay等であってもよい。
【0016】
複数のECUA1-C3は、それぞれの機能に応じて異なるバスBL1-BL3に接続されてもよい。例えば、制御系のECUA1-C1がバスBL1に接続され、診断系のECUA2-C2がバスBL2に接続され、ローカル系のECUA3-C3がバスBL3に接続されてもよい。
【0017】
図2は、図1に示すCGWの一構成例を概略的に示すブロック図である。
CGW10は、制御部12と、通信部14と、メモリ16とを備えている。制御部12、通信部14およびメモリ16は、バスを介して通信可能に接続されている。
【0018】
通信部14は、CGW10と他の機器との間で通信を行う。本実施形態では、通信部14はCANプロトコルに従って通信を行う。
メモリ16は、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリ素子又は、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM、登録商標)若しくはフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ素子により構成され、制御プログラム及び処理時に参照するデータがあらかじめ記録されている。
【0019】
なお、メモリ16に記憶された制御プログラムは、CGW10が読み取り可能な記録媒体から読み出された制御プログラムを記憶したものであってもよい。また、図示しない通信ネットワークに接続されている図示しない外部コンピュータから制御プログラムをダウンロードし、メモリ16に記憶させたものであってもよい。
【0020】
制御部12は、CPUやMPUなどのプロセッサを少なくとも1つ含み、メモリ16に記憶されたプログラムを実行することにより種々の制御を行うことができる。
制御部12は、テスターリクエスト信号送信部12Aと、テスターレスポンス信号解読部12Bと、異常検出部12Cと、レポート作成部12Dと、を備えている。
【0021】
テスターリクエスト信号送信部12Aは、複数のECUA1-C3の全てにするテスターリクエスト信号を生成し、生成したテスターリクエスト信号を送信する。具体的には、テスターリクエスト信号送信部12Aは、車両通信システムに搭載されたECUA1-C3の固有ID(CANID)を取得し、テスターリクエスト信号のフォーマットを取得する。ここで、テスターリクエスト信号送信部12Aは、複数のバスBL1-BL3の種別(制御CAN、診断CAN、ローカルCAN等)を指定し、指定された種別のテスターリクエスト信号フォーマットを用いて、テスターリクエスト信号を生成する。
【0022】
テスターリクエスト信号送信部12Aは、例えば車両の運転中に、定期的(例えば1秒周期)に、テスターリクエスト信号を送信してもよい。テスターリクエスト信号送信部12Aは、例えば、車両のイグニッションスイッチがオンされたことをトリガーとして、テスターリクエスト信号の周期的な送信を開始してもよい。また、テスターリクエスト信号送信部12Aは、例えば車両のメンテナンスや修理の際に、外部装置からの指令によりテスターリクエスト信号を送信してもよい。
【0023】
図4は、テスターリクエスト信号とテスターレスポンス信号との一例について説明するための図である。
テスターリクエスト信号は、一斉送信用IDと、リクエストサービスIDとを含む。一斉送信用IDは、CGW10からバスBL1-BL3に接続された全ての機器へ送信される信号である旨を示す識別子である。リクエストサービスIDは、テスターリクエスト信号の受信機器に対し、テスターレスポンス信号の要求を示す識別子である。
【0024】
テスターレスポンス信号解読部12Bは、複数のECUA1-C3から送信されたテスターレスポンス信号を受信し、テスターレスポンス信号を解読する。具体的には、テスターレスポンス信号解読部12Bは、車両通信システムに搭載されたECUA1-C3の固有IDを取得し、テスターレスポンス信号に含まれる固有IDに基づいて送信元のECUA1-C3を特定するとともに、テスターレスポンス信号の内容を解読する。
【0025】
複数のECUA1-C3から送信されるテスターレスポンス信号は単一のフォーマットであって、ECUA1-C3本体が正常であるか異常であるかを示す値を含む。
【0026】
図4に示すように、テスターレスポンス信号は、ECUA1-C3固有のIDと、レスポンスサービスIDと、サービスステータスとを含む。ECUA1-C3固有のIDは、ECUA1-C3の各々に割り当てられた識別子である。レスポンスサービスIDは、CGW10から送信されたテスターリクエスト信号に対するレスポンス信号である旨を示す識別子である。サービスステータスは、ECUA1-C3のそれぞれの通信ステータスが正常であるか異常であるかを示す値(通信ステータス情報)を含む。
【0027】
異常検出部12Cは、テスターレスポンス信号の解読結果に基づいて通信ネットワーク異常を検出する。具体的には、異常検出部12Cは、テスターレスポンス信号の固有ID比較し、通信ステータス異常の有無および異常部位を検出する。
【0028】
異常検出部12Cは、検出された異常の部位や種類に応じて、該当するDTC(diagnostic trouble code)を立てる。例えば、異常検出部12Cにより通信の途絶が検出されたときにはハーネス(CAN系、電源系、)やECU本体の修理が必要なため、異常検出部12Cは、途絶箇所から修理する範囲を割り出し該当のDTCを立てる。
【0029】
レポート作成部12Dは、通信ネットワーク異常の検出結果を示すレポートを生成する。レポート作成部12Dは、テスターレスポンス信号の解読結果および通信ステータス異常に関する情報(レポート)を全ECUA1-C3へ配信する。全てのECUA1-C3に送信されるレポートは単一フォーマットであって、例えば、ECUA1-C3それぞれが正常であるか異常であるか、途絶の有無、などの情報を含む。なお、レポート作成部12Dは、車両通信システムの外部装置にレポートを送信してもよい。
【0030】
図3は、図1に示すECUの一構成例を概略的に示すブロック図である。
ECUA1-C3の各々は、制御部22と、通信部24と、メモリ26と、を備えている。制御部22、通信部24およびメモリ26は、バスを介して通信可能に接続されている。
【0031】
通信部24は、CGW10と他の機器との間で通信を行う。本実施形態では、通信部24はCANプロトコルに従って通信を行う。
メモリ26は、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリ素子又は、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)若しくはフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ素子により構成され、制御プログラム及び処理時に参照するデータがあらかじめ記録されている。
【0032】
なお、メモリ26に記憶された制御プログラムは、CGW10により読み取り可能な記録媒体から読み出された制御プログラムがECUA1-C3に供給され、メモリ26に記憶されたものであってもよい。また、図示しない通信ネットワークに接続されている図示しない外部コンピュータから制御プログラムをダウンロードし、メモリ26に記憶させたものであってもよい。
【0033】
制御部22は、CPUやMPUなどのプロセッサを少なくとも1つ含み、メモリ26に記憶されたプログラムを実行することにより種々の制御を行うことができる。
制御部22は、テスターリクエスト信号受信部22Aと、通信ステータス演算部22Bと、テスターレスポンス送信部22Cと、を備えている。
テスターリクエスト信号受信部22Aは、CGW10からテスターリクエスト信号を受信する。
【0034】
通信ステータス演算部22Bは、テスターリクエスト信号を取得し、CGW10から要求されたテスターレスポンス信号を生成するために、当該ECUA1-C3の通信ステータスを演算して指定する。通信ステータスは、例えば、通信が正常(OK)であるか異常(NG)であるかを示す値を含み、更に、異常である場合には異常部位(内部メモリ、通信インタフェース、等)を示す値を含む。
テスターレスポンス送信部22Cは、通信ステータス演算部22Bで演算された通信ステータスを示す情報を含むテスターレスポンス信号を生成して、CGW10へ送信する。テスターレスポンス信号は、CGW10から定期的に送信されるテスターリクエスト信号に対する応答として、ECUA1-C3から定期的に送信されてもよく、メンテナンスや修理の際にCGW10から送信されるテスターリクエスト信号に対する応答として、ECUA1-C3から送信されてもよい。
【0035】
次に、一実施形態の車両通信システムの動作による通信ネットワークの異常個所診断方法の一例について説明する。
図5は、一実施形態の車両通信システムのCGWの動作の一例について説明するためのフローチャートである。
【0036】
CGW10のテスターリクエスト信号送信部12Aが、全てのECUA1-C3へテスターリクエスト信号を送信する(ステップS1)。
テスターレスポンス信号解読部12Bは、テスタースレスポンス信号(単一フォーマット、本体の正常/異常、定期送信)を待機する(ステップS2)。
続いて、テスターレスポンス信号解読部12Bは、ECUA1-C3から受信したテスターレスポンス信号を解読し、受信した事項、および、受信できなかった事項を整理する(ステップS3)。このとき、テスターレスポンス信号解読部12Bは、テスターリクエスト信号が送信された時刻から所定時間待機した後、受信されなかったテスターレスポンス信号に関する事項(受信できなかった事項)を整理する。
【0037】
続いて、テスターレスポンス信号解読部12Bが整理した内容に基づいて、異常検出部12Cが異常の有無および部位を判定するとともに、レポート作成部12Dがレポート(単一フォーマット、各装置の正常/異常/途絶/設定なし、定期送信)を作成し、全ECUA1-C3へレポートを配信する(ステップS4)。なお、車両に選択的に設定される機能(オプション機能)については、予めCGW10のメモリ16に設定の有無が記録されており、レポート作成部12Dはメモリ16を参照して機能設定がないことによる応答の異常であるか、若しくは、装置自体等の異常による応答異常であるかを示すレポートを作成する。
【0038】
続いて、異常検出部12Cは通信の途絶の異常が有るときに(ステップS5、YES)、ハーネス(CAN系、電源系)の修理が必要なため、途絶箇所から修理する範囲を割り出し該当のDTC(diagnostic trouble code)を立てる(ステップS6)。なお、異常検出部12Cは、通信の途絶の異常に限らず他の通信ネットワーク異常の場合にも対応するDTCを立ててもよい。異常検出部12Cは、テスターレスポンス信号に基づいて、通信ステータスの異常が検出されたときに異常のある範囲を割り出し、該当するDTC(diagnostic trouble code)を立ててもよい。また、異常検出部12Cは通信ステータスの異常が検出されたときに、必要に応じて車両の機能の一部を制限する制御信号を、ECUA1-C3へ送信してもよい。
【0039】
図6は、一実施形態の車両通信システムのECUの動作の一例について説明するためのフローチャートである。
ECUA1-C3の各々は、テスターリクエスト信号受信部22AにてCGW10からテスターリクエスト信号を受信する(ステップS7)。テスターリクエスト信号受信部22Aは、CGW10から受信した信号に含まれているリクエストサービスIDに基づいて、受信した信号がテスターリクエスト信号であると識別することができる。
【0040】
続いて、通信ステータス演算部22BがECUA1-C3の通信ステータス(OK(正常)/NG(内部メモリ、通信インターフェース、等の通信ネットワークの異常部位を指定))を演算する(ステップS8)。通信ステータス演算部22Bは、先ずECUA1-C3それぞれにおいて自装置内で通信が正常に行われているか判定し、通信が正常に行われていないときに異常部位を指定して通信ステータス情報を生成する。
【0041】
続いて、テスターレスポンス送信部22Cは、通信ステータス演算部22Bにより演算された通信ステータスを示す情報を含むテスターレスポンス信号をCGW10へ送信する(ステップS9)。
【0042】
図7は、一実施形態の車両通信システムにおける、通信ネットワークの異常部位の判断結果を例示する図である。
図7には、ECUA1、B1、C1の通信ステータスの複数の組み合わせと、対応する判断内容を一例として示している。
例えば、ECUA1、B1、C1の全ての通信ステータスがOK(正常)であるとき、異常検出部12Cは、車両通信システムが正常であると判定する。
【0043】
また、ECUA1、C1の通信ステータスがOK(正常)であり、ECUB1の通信ステータスがNG(異常)であるとき、異常検出部12Cは、ECUB1又はその枝線(バスBL1とECUB1との間に延びる通信線)に異常があると判定する。
また、ECUA1の通信ステータスがOK(正常)であり、ECUB1、C1の通信ステータスがNG(異常)であるとき、異常検出部12CはECUA1の後段の幹線に異常があると判定する。
【0044】
また、ECUA1の通信ステータスがNG(異常)であり、ECUB1、C1の通信ステータスがOK(正常)であるとき、異常検出部12CはECUA1又はその枝線(バスBL1とECUA1との間に延びる通信線)に異常があると判定する。
また、ECUA1、C1の通信ステータスがNG(異常)であり、ECUB1の通信ステータスがOK(正常)であるとき、異常検出部12Cは、ECUA1又はその枝線、若しくは、ECUC1又はその枝線(バスBL1とECUC1との間に延びる通信線)に異常があると判定する。
【0045】
また、ECUA1、B1の通信ステータスがNG(異常)であり、ECUC1の通信ステータスがOK(正常)であるとき、異常検出部12Cは、ECUA1又はその枝線、若しくは、ECUB1又はその枝線に異常があると判定する。
また、ECUA1、B1、C1の全ての通信ステータスがNG(異常)であるとき、異常検出部12Cは幹線(バスBL1)に異常があると判定する。
【0046】
上記のように、本実施形態の車両通信システムによれば、通信ネットワークに各装置が繋がっている状態にあるか判別できるとともに、通信ネットワークに繋がっていない部分がある場合、どの位置からネットワークと途絶されているか判別することができる。換言すると、例えばCGW10において通信の途絶が検出されたときに、CGW10は、CGW10とECUA1-C3との間の通信経路のどこで異常が発生しているか判別することができる。
【0047】
図8は、一実施形態の車両通信システムによる効果の一例について説明するための図である。
ここでは、ECUC1からECUB3への通信における失陥(途絶や異常値)を原因とする、ECUB3の制御異常が発生した場合に、本実施形態の車両通信システムにより異常部位を特定する際の調査工程の一例について説明する。
【0048】
(A)CGW10は、CGW10からテスターリクエスト信号が出力されていることを確認し、CGW10が正常に作動できているか判断する。
(B)CGW10は、バスBL1-BL3のそれぞれにテスターリクエスト信号が出力されているかを確認し、バスBL1-BL3の回路およびバスBL1-BL3の途中に取り付けられたジョイントコネクタが正常かを判断する。
【0049】
(C)CGW10は、全ECUA1-C3が信号を受信しているかを確認し、全ECUA1-C3が正常に作動できているかを判断する。
(D)CGW10は、全ECUA1-C3からテスターレスポンス信号が出力されているか確認し、全ECUA1-C3が正常に作動できているかを確認する。
【0050】
(E)CGW10は、バスBL1-BL3にテスターレスポンス信号が出力されているか確認し、バスBL1-BL3の回路およびバスBL1-BL3の途中に取り付けられたジョイントコネクタが正常かを判断する。
(F)CGW10は、CGW10が信号を受信しているか確認し、CGW10が正常に作動できているかを判断する。
【0051】
(G)CGW10は、ECUB3からのテスターレスポンスが受信できないことから、ECUB3との通信が途絶していることを検出する。
本実施形態の車両通信システムでは、CGW10が、以上の(A)-(G)の処理を行うことにより、自動で車両通信システムの通信ネットワークの異常部位を検出し、レポートを作成して出力することができる。
【0052】
一方で、例えば、上述のテスターリクエスト信号およびテスターレスポンス信号を用いずに車両通信システムの通信ネットワークの異常部位を検出する場合、メンテナンス作業員が下記(a)-(e)のどの要因によるものかを調査し、修理箇所を見つけ出す必要がある。
【0053】
(a)ECUC1から信号が出ているか確認し、ECUC1が正常に作動できているか判断する。
(b)ECUC1とCGWとの間の通信経路に信号が出ているか確認し、バスBL1の回路およびバスBL1の途中に取り付けられたジョイントコネクタが正常か判断する。
(c)CGW10がバスBL1からバスBL3へルーティングしているか確認し、CGW10が正常に作動できているか判断する。
【0054】
(d)CGW10とECUB3との間の通信経路に信号が出ているか確認し、バスBL3の回路およびバスBL3の途中に取り付けられたジョイントコネクタが正常か判断する。
(e)ECUB3が信号を受信しているか確認し、ECUB3が正常に作動できているか判断する。
【0055】
すなわち、本実施形態の車両通信システムおよび通信ネットワークの異常個所診断方法では、CGW10にて通信経路上のどこで通信異常が発生しているのか異常部位の特定し、メンテナンスや修理の際に作業員が修理箇所をすぐに特定することができるため、修理箇所を見つけるために多数の工程を試みる必要がなくなり、修理工数を削減できる。
【0056】
以上により、本実施形態によれば、作業員による修理工程数を削減する車両通信システムおよび通信ネットワークの異常個所診断方法を提供することができる。
【0057】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0058】
例えば上記実施形態では、CGW10がバスBL1-BL3を介して接続された全てのECUA1-C3へテスターリクエスト信号を送信していたが、例えば異常検出を行うネットワークの範囲が予め決められていたり、テスターリクエスト信号を受け付けないように設定されたECUがあったりする場合には、CGW10は、予め設定された一部のECUを除いて、他の複数のECUへテスターリクエスト信号を送信してもよい。そして、CGW10は、予め設定された一部のECUを除いて、他の複数のECUへレポートを送信してもよい。その場合であっても、上述の実施形態と同様に、作業員による修理工程数を削減することができる。
[付記1]
複数のバスと接続され、前記バスに接続された複数のECUと通信するCGWと、複数の前記ECUとを備え、
前記CGWは、
複数の前記ECUに対しテスターリクエスト信号を送信するテスターリクエスト信号送信部と、
複数の前記ECUから送信されたテスターレスポンス信号を受信し、前記テスターレスポンス信号を解読するテスターレスポンス信号解読部と、
前記テスターレスポンス信号の解読結果に基づいて通信ネットワーク異常を検出する異常検出部と、
通信ネットワーク異常の検出結果を示すレポートを生成するレポート作成部と、を備え、
前記ECUは、
前記CGWから前記テスターリクエスト信号を受信するテスターリクエスト信号受信部と、
当該ECUの通信ステータスを示す情報を生成する通信ステータス演算部と、
前記通信ステータスを示す前記テスターレスポンス信号を生成して前記CGWへ送信する機能と、を備える、
車両通信システム。
[付記2]
前記テスターリクエスト信号は、前記CGWと接続された全ての前記ECUへ送信される信号である旨を示す識別子と、前記テスターレスポンス信号の要求を示す識別子と、を含む、付記1記載の車両通信システム。
[付記3]
前記テスターレスポンス信号は、前記テスターレスポンス信号を送信した前記ECUに割り当てられた識別子と、前記テスターリクエスト信号に対するレスポンス信号である旨を示す識別子と、前記通信ステータスを示す情報と、を含む、付記1記載の車両通信システム。
[付記4]
前記レポート作成部は、複数の前記ECUの全てに関するレポートを複数の前記ECUの全てに対し配信する、付記1記載の車両通信システム。
[付記5]
前記異常検出部は、前記テスターレスポンス信号に基づき、通信ネットワークに異常が検出されたときに、異常のある範囲を割り出し該当のDTCを立てる、付記1記載の車両通信システム。
[付記6]
複数のバスと接続され、前記バスに接続された複数のECUと通信するCGWと、複数の前記ECUとを備えた車両通信システムの通信ネットワークの異常個所診断方法であって、
前記CGWが、
複数の前記ECUに対しテスターリクエスト信号を送信し、
前記ECUの通信ステータスを示すテスターレスポンス信号を受信し、
前記テスターレスポンス信号を解読し、
前記テスターレスポンス信号の解読結果に基づいて通信ネットワーク異常を検出し、
通信ネットワーク異常の検出結果を示すレポートを生成し、
複数の前記ECUに関する前記レポートを複数の前記ECUに対し配信する、通信ネットワークの異常個所診断方法。
【符号の説明】
【0059】
10…CGW
12…制御部
12A…テスターリクエスト信号送信部
12B…テスターレスポンス信号解読部
12C…異常検出部
12D…レポート作成部
14…通信部
16…メモリ
22…制御部
22A…テスターリクエスト信号受信部
22B…通信ステータス演算部
22C…テスターレスポンス送信部
24…通信部
26…メモリ
BL1-BL3…バス
A1-C3…ECU

図1
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図8