(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】床版設置装置および床版設置方法
(51)【国際特許分類】
E01D 24/00 20060101AFI20241112BHJP
E01D 21/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
E01D24/00
E01D21/00 B
(21)【出願番号】P 2023044483
(22)【出願日】2023-03-20
【審査請求日】2024-06-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002963
【氏名又は名称】弁理士法人MTS国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100144299
【氏名又は名称】藤田 崇
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕明
(72)【発明者】
【氏名】志賀 弘明
(72)【発明者】
【氏名】中村 信秀
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-028881(JP,A)
【文献】特開2019-173435(JP,A)
【文献】特開2022-097988(JP,A)
【文献】特開2021-070978(JP,A)
【文献】特開2019-214858(JP,A)
【文献】特開2018-100564(JP,A)
【文献】特開平11-131427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 24/00
E01D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の床版を設置する床版設置装置であって、
略鉛直方向に立設している4つの脚部を有してなり、該4つの脚部が側辺に位置して全体の形状が略直方体形状となっているフレーム本体部と、
前記フレーム本体部に支持されていて前記フレーム本体部を略水平方向に貫いて延びる天井長尺梁と、
を有し、
前記天井長尺梁の両端部は、それぞれ前記フレーム本体部から片持ちで張り出していて2つの片持ち張り出し部となっており、
前記天井長尺梁には、前記床版を支持した状態で、前記天井長尺梁の前記2つの片持ち張り出し部のうちの一方から前記2つの片持ち張り出し部のうちの他方まで移動可能な運搬機構が設けられており、
前記フレーム本体部の前記4つの脚部のうち、前記略直方体形状における側面を形成する隣り合う側辺に位置していて前記天井長尺梁が間に位置する2つの脚部の下部同士の間には、当該下部同士を連結する脚部連結部材が設けられて
おり、
前記フレーム本体部の前記4つの脚部のうち、前記略直方体形状における側面を形成する隣り合う側辺に位置していて前記天井長尺梁が間に位置しない2つの脚部の下部同士の間に、当該下部同士を連結する第2の脚部連結部材が備えられていることを特徴とする床版設置装置。
【請求項2】
前記4つの脚部はそれぞれ長手方向に伸縮可能であることを特徴とする請求項
1に記載の床版設置装置。
【請求項3】
前記運搬機構は、前記床版の吊り上げおよび吊り下げを行う手段を備えることを特徴とする請求項
1に記載の床版設置装置。
【請求項4】
前記フレーム本体部の前記4つの脚部には、前記橋梁の橋面に支持されて当該橋面上を移動できる移動手段がそれぞれ取り付けられていることを特徴とする請求項
1に記載の床版設置装置。
【請求項5】
前記運搬機構は、支持した前記床版を水平面内で回動させて向きを変えることができる回動手段を備えていることを特徴とする請求項
1に記載の床版設置装置。
【請求項6】
請求項1に記載の床版設置装置を用いて、橋梁の床版を設置する設置方法であって、
前記天井長尺梁の前記2つの片持ち張り出し部のうちの一方の下方まで前記床版を運搬する運搬工程と、
前記運搬工程で前記2つの片持ち張り出し部のうちの前記一方の下方まで運搬した前記床版を上昇させて、該床版を前記天井長尺梁の該一方の片持ち張り出し部に支持させる上昇支持工程と、
前記上昇支持工程で上昇させて支持させた前記床版を、前記天井長尺梁に沿って、前記2つの片持ち張り出し部のうちの前記一方から前記2つの片持ち張り出し部のうちの他方まで移動させる移動工程と、
前記移動工程で前記2つの片持ち張り出し部のうちの前記他方まで移動させた前記床版を下降させて、前記橋梁の所定の位置に設置する設置工程と、
を有することを特徴とする床版設置方法。
【請求項7】
橋梁の床版を設置する床版設置装置であって、略鉛直方向に立設している4つの脚部を有してなり、該4つの脚部が側辺に位置して全体の形状が略直方体形状となっているフレーム本体部と、前記フレーム本体部に支持されていて前記フレーム本体部を略水平方向に貫いて延びる天井長尺梁と、を有し、前記天井長尺梁の両端部は、それぞれ前記フレーム本体部から片持ちで張り出していて2つの片持ち張り出し部となっており、前記天井長尺梁には、前記床版を支持した状態で、前記天井長尺梁の前記2つの片持ち張り出し部のうちの一方から前記2つの片持ち張り出し部のうちの他方まで移動可能な運搬機構が設けられており、前記フレーム本体部の前記4つの脚部のうち、前記略直方体形状における側面を形成する隣り合う側辺に位置していて前記天井長尺梁が間に位置する2つの脚部の下部同士の間には、当該下部同士を連結する脚部連結部材が設けられている床版設置装置を用いて、前記橋梁の前記床版を設置する設置方法であって、
前記天井長尺梁の前記2つの片持ち張り出し部のうちの前記一方の下方まで前記床版を運搬する運搬工程と、
前記運搬工程で前記2つの片持ち張り出し部のうちの前記一方の下方まで運搬した前記床版を上昇させて、該床版を前記天井長尺梁の該一方の片持ち張り出し部に支持させる上昇支持工程と、
前記上昇支持工程で上昇させて支持させた前記床版を、前記天井長尺梁に沿って、前記2つの片持ち張り出し部のうちの前記一方から前記2つの片持ち張り出し部のうちの前記他方まで移動させる移動工程と、
前記移動工程で前記2つの片持ち張り出し部のうちの前記他方まで移動させた前記床版を下降させて、前記橋梁の所定の位置に設置する設置工程と、
を有することを特徴とする床版設置方法。
【請求項8】
前記移動工程で前記2つの片持ち張り出し部のうちの前記他方まで移動させた前記床版を、水平面内で回動させて所定の向きに変える回動工程を備え、
前記設置工程では、前記回動工程で所定の向きに変えた前記床版を下降させて、前記橋梁の所定の位置に設置することを特徴とする請求項
6または7に記載の床版設置方法。
【請求項9】
前記橋梁の既設床版を撤去する撤去工程を有し、
前記設置工程で前記床版を設置する前記所定の位置は、前記撤去工程で前記橋梁の前記既設床版を撤去した位置であることを特徴とする請求項
6または7に記載の床版設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床版設置装置および床版設置方法に関し、詳細には、安全性により配慮した床版設置装置および床版設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁の既設コンクリート床版を新設の床版に取り替える事例が増加しているが、既設コンクリート床版を新設の床版に取り替える際の工事において、門型フレームを橋軸方向に並べて配置してなる床版架け替え装置や床版設置装置が用いられることがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている床版架け替え装置は、橋軸方向前後の門型フレームを連結してなる門型構造体と、前記門型構造体の天井部に沿って橋軸方向に配設される2組のレールと、一方の組のレールに懸架され、床版の架け替え位置から橋軸方向に離れた位置に設定された搬入・搬出位置の新床版を吊上げて、前記架け替え位置まで移動可能な第1の吊上装置と、他方の組のレールに懸架され、前記架け替え位置の旧床版を吊上げて、前記搬入・搬出位置まで移動可能な第2の吊上装置と、前記第1及び第2の吊上装置にそれぞれ設けられて吊上げた床版を水平面内にて回転させて向きを変えることができる回転機構と、を含んで構成されており、大型の装置であり、総重量も大きいと考えられる。
【0005】
また、特許文献1に開示されている床版架け替え装置において、前記門型フレームを連結してなる前記門型構造体にはその天井部に沿って橋軸方向に配設される2組のレールが配設されていて、一方の組のレールには第1の吊上装置が懸架され、他方の組のレールには第2の吊上装置が懸架され、さらに前記第1及び第2の吊上装置には回転機構がそれぞれ設けられている。さらに、前記第1の吊上装置は新床版を吊上げ、前記第2の吊上装置は旧床版を吊上げる。このため、特許文献1に開示されている床版架け替え装置の前記門型構造体にはかなり大きな荷重が加わると考えられる。
【0006】
このため、本発明者は、門型フレームを橋軸方向前後に備えた略直方体形状の床版架け替え装置や床版設置装置に関し、装置全体の大きな総重量に対する対策や、装置の骨格部分であるフレーム本体部に加わる荷重に対してフレーム本体部の構造の安定性を向上させる対策を施すことが、安全性の向上のために必要であると考察した。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、安全性により配慮した床版設置装置および床版設置方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記課題を解決する発明であり、以下のような床版設置装置および床版設置方法である。
【0009】
即ち、本発明に係る床版設置装置の第1の態様は、橋梁の床版を設置する床版設置装置であって、略鉛直方向に立設している4つの脚部を有してなり、該4つの脚部が側辺に位置して全体の形状が略直方体形状となっているフレーム本体部と、前記フレーム本体部に支持されていて前記フレーム本体部を略水平方向に貫いて延びる天井長尺梁と、を有し、前記天井長尺梁の両端部は、それぞれ前記フレーム本体部から片持ちで張り出していて2つの片持ち張り出し部となっており、前記天井長尺梁には、前記床版を支持した状態で、前記天井長尺梁の前記2つの片持ち張り出し部のうちの一方から前記2つの片持ち張り出し部のうちの他方まで移動可能な運搬機構が設けられており、前記フレーム本体部の前記4つの脚部のうち、前記略直方体形状における側面を形成する隣り合う側辺に位置していて前記天井長尺梁が間に位置する2つの脚部の下部同士の間には、当該下部同士を連結する脚部連結部材が設けられていることを特徴とする床版設置装置である。
【0010】
ここで、本願において、「側辺」とは、略直方体形状における側辺のことであり、当該略直方体形状における側面の交線のことである。
【0011】
また、「前記フレーム本体部に支持され」とは、前記フレーム本体部に直接的に接して支持される場合だけでなく、前記フレーム本体部に支持される他の部材を介して、前記フレーム本体部に間接的に支持される場合も含む。本願の他の箇所の同様の記載も同様に解釈するものとする。
【0012】
本発明に係る床版設置装置の第2の態様は、前記第1の態様の床版設置装置において、前記フレーム本体部の前記4つの脚部のうち、前記略直方体形状における側面を形成する隣り合う側辺に位置していて前記天井長尺梁が間に位置しない2つの脚部の下部同士の間に、当該下部同士を連結する第2の脚部連結部材が備えられている、ように構成されている態様である。
【0013】
本発明に係る床版設置装置の第3の態様は、前記第1の態様の床版設置装置において、前記橋梁は、橋軸方向に延びていて橋軸直角方向に隣り合う2つの橋桁を少なくとも有しており、前記フレーム本体部の前記脚部は、橋軸直角方向に隣り合う前記2つの橋桁の直上に位置している、ように構成されている態様である。
【0014】
ここで、本願において、橋梁の橋桁とは、橋軸方向に延びるように配置されていて床版を支持する桁部材のことであり、当該橋梁における主桁および縦桁を含み、また、工事用の仮設桁も含むものとする。
【0015】
本発明に係る床版設置装置の第4の態様は、橋軸方向に延びていて橋軸直角方向に隣り合う2つの橋桁を少なくとも有する橋梁の床版を設置する床版設置装置であって、略鉛直方向に立設している4つの脚部を有してなり、該4つの脚部が側辺に位置して全体の形状が略直方体形状となっているフレーム本体部と、前記フレーム本体部に支持されていて前記フレーム本体部を略水平方向に貫いて延びる天井長尺梁と、設置する前記床版を運搬する運搬車両と、を有し、前記天井長尺梁の両端部は、それぞれ前記フレーム本体部から片持ちで張り出していて2つの片持ち張り出し部となっており、前記天井長尺梁には、前記床版を支持した状態で、前記天井長尺梁の前記2つの片持ち張り出し部のうちの一方から前記2つの片持ち張り出し部のうちの他方まで移動可能な運搬機構が設けられており、前記運搬車両は、前記橋梁の橋面に支持されて当該橋面上を移動できる第1走行部および第2走行部を、走行する方向に対して直交する方向に所定の間隔を空けて備えており、前記フレーム本体部の前記4つの脚部は、橋軸直角方向に隣り合う前記2つの橋桁の直上に位置しており、前記運搬車両の前記第1走行部および前記第2走行部の間の前記所定の間隔は、橋軸直角方向に隣り合う前記2つの橋桁の間隔以上の長さであることを特徴とする床版設置装置である。
【0016】
ここで、「前記橋梁の橋面に支持され」とは、前記橋梁の橋面に直接的に接して支持される場合だけでなく、前記橋梁の橋面に支持される他の部材を介して、前記橋梁の橋面に間接的に支持される場合も含む。本願の他の箇所の同様の記載も同様に解釈するものとする。
【0017】
また、本願において、フレーム本体部の脚部が橋桁の直上に位置するとは、鉛直方向上方から見て、当該フレーム本体部の脚部の少なくとも一部が、当該橋桁の断面の中心位置(当該橋桁を長手方向と直交する平面で切断した断面についての図心)に重なる位置状態のことを意味する。
【0018】
本発明に係る床版設置装置の第5の態様は、前記第1の態様の床版設置装置において、前記運搬車両の前記第1走行部および前記第2走行部は、橋軸直角方向に隣り合う前記2つの橋桁の直上に位置している、ように構成されている態様である。
【0019】
本発明に係る床版設置装置の第6の態様は、前記第1~前記第5の態様のいずれかの態様の床版設置装置において、前記4つの脚部はそれぞれ長手方向に伸縮可能である、ように構成されている態様である。
【0020】
本発明に係る床版設置装置の第7の態様は、前記第1~前記第5の態様のいずれかの態様の床版設置装置において、前記運搬機構は、前記床版の吊り上げおよび吊り下げを行う手段を備える、ように構成されている態様である。
【0021】
本発明に係る床版設置装置の第8の態様は、前記第1~前記第5の態様のいずれかの態様の床版設置装置において、前記フレーム本体部の前記4つの脚部には、前記橋梁の橋面に支持されて当該橋面上を移動できる移動手段がそれぞれ取り付けられている、ように構成されている態様である。
【0022】
本発明に係る床版設置装置の第9の態様は、前記第1~前記第5の態様のいずれかの態様の床版設置装置において、前記運搬機構は、支持した前記床版を水平面内で回動させて向きを変えることができる回動手段を備えている、ように構成されている態様である。
【0023】
本発明に係る床版設置方法の第1の態様は、略鉛直方向に立設している4つの脚部を有してなり、該4つの脚部が側辺に位置して全体の形状が略直方体形状となっているフレーム本体部と、前記フレーム本体部に支持されていて前記フレーム本体部を略水平方向に貫いて延び、両端部がそれぞれ前記フレーム本体部から片持ちで張り出していて2つの片持ち張り出し部となっている天井長尺梁と、を備える床版設置装置を用いて、橋梁の床版を設置する設置方法であって、前記天井長尺梁の前記2つの片持ち張り出し部のうちの一方の下方まで前記床版を運搬する運搬工程と、前記運搬工程で前記2つの片持ち張り出し部のうちの前記一方の下方まで運搬した前記床版を上昇させて、該床版を前記天井長尺梁の該一方の片持ち張り出し部に支持させる上昇支持工程と、前記上昇支持工程で上昇させて支持させた前記床版を、前記天井長尺梁に沿って、前記2つの片持ち張り出し部のうちの前記一方から前記2つの片持ち張り出し部のうちの他方まで移動させる移動工程と、前記移動工程で前記2つの片持ち張り出し部のうちの前記他方まで移動させた前記床版を下降させて、前記橋梁の所定の位置に設置する設置工程と、を有することを特徴とする床版設置方法である。
【0024】
本発明に係る床版設置方法の第2の態様は、前記第1の態様の床版設置装置を用いて、前記橋梁の前記床版を設置する設置方法であって、前記天井長尺梁の前記2つの片持ち張り出し部のうちの前記一方の下方まで前記床版を運搬する運搬工程と、前記運搬工程で前記2つの片持ち張り出し部のうちの前記一方の下方まで運搬した前記床版を上昇させて、該床版を前記天井長尺梁の該一方の片持ち張り出し部に支持させる上昇支持工程と、前記上昇支持工程で上昇させて支持させた前記床版を、前記天井長尺梁に沿って、前記2つの片持ち張り出し部のうちの前記一方から前記2つの片持ち張り出し部のうちの前記他方まで移動させる移動工程と、前記移動工程で前記2つの片持ち張り出し部のうちの前記他方まで移動させた前記床版を下降させて、前記橋梁の所定の位置に設置する設置工程と、を有することを特徴とする床版設置方法である。
【0025】
本発明に係る床版設置方法の第3の態様は、前記第4の態様の床版設置装置を用いて、前記橋梁の前記床版を設置する設置方法であって、前記天井長尺梁の前記2つの片持ち張り出し部のうちの前記一方の下方まで前記運搬車両で前記床版を運搬する運搬工程と、前記運搬工程で前記2つの片持ち張り出し部のうちの前記一方の下方まで運搬した前記床版を上昇させて、該床版を前記天井長尺梁の該一方の片持ち張り出し部に支持させる上昇支持工程と、前記上昇支持工程で上昇させて支持させた前記床版を、前記天井長尺梁に沿って、前記2つの片持ち張り出し部のうちの前記一方から前記2つの片持ち張り出し部のうちの前記他方まで移動させる移動工程と、前記移動工程で前記2つの片持ち張り出し部のうちの前記他方まで移動させた前記床版を下降させて、前記橋梁の所定の位置に設置する設置工程と、を有することを特徴とする床版設置方法である。
【0026】
本発明に係る床版設置方法の第4の態様は、前記第1~前記第3の態様のいずれかの態様の床版設置方法において、前記移動工程で前記2つの片持ち張り出し部のうちの前記他方まで移動させた前記床版を、水平面内で回動させて所定の向きに変える回動工程を備え、前記設置工程では、前記回動工程で所定の向きに変えた前記床版を下降させて、前記橋梁の所定の位置に設置する、ように構成されている態様である。
【0027】
本発明に係る床版設置方法の第5の態様は、前記第1~前記第3の態様のいずれかの態様の床版設置方法において、前記橋梁の既設床版を撤去する撤去工程を有し、前記設置工程で前記床版を設置する前記所定の位置は、前記撤去工程で前記橋梁の前記既設床版を撤去した位置である、ように構成されている態様である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、安全性により配慮した床版設置装置および床版設置方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る床版設置装置10を橋軸方向から見た正面図(
図2において矢視I方向から見た正面図)
【
図2】本発明の第1実施形態に係る床版設置装置10を橋軸直角方向から見た側面図(
図1において矢視II方向から見た側面図)
【
図3】本発明の第1実施形態に係る床版設置装置10の運搬車両24を橋軸方向から見た正面図(
図2において矢視III方向から見た正面図)
【
図4】本発明の第1実施形態に係る床版設置装置10を上方から見た平面図(
図2において矢視IV方向から見た平面図)
【
図5】本発明の第1実施形態に係る床版設置装置10を用いて新設床版30を設置する手順の1つのステップ(ステップS1)を模式的に示す模式図
【
図6】本発明の第1実施形態に係る床版設置装置10を用いて新設床版30を設置する手順の1つのステップ(ステップS2)を模式的に示す模式図
【
図7】本発明の第1実施形態に係る床版設置装置10を用いて新設床版30を設置する手順の1つのステップ(ステップS3)を模式的に示す模式図
【
図8】本発明の第1実施形態に係る床版設置装置10を用いて新設床版30を設置する手順の1つのステップ(ステップS4)を模式的に示す模式図
【
図9】本発明の第1実施形態に係る床版設置装置10を用いて新設床版30を設置する手順の1つのステップ(ステップS5)を模式的に示す模式図
【
図10】本発明の第1実施形態に係る床版設置装置10を用いて新設床版30を設置する手順の1つのステップ(ステップS6)を模式的に示す模式図
【
図11】本発明の第1実施形態に係る床版設置装置10を用いて新設床版30を設置する手順の1つのステップ(ステップS7)を模式的に示す模式図
【
図12】本発明の第1実施形態に係る床版設置装置10を用いて新設床版30を設置する手順の1つのステップ(ステップS8)を模式的に示す模式図
【
図13】本発明の第1実施形態に係る床版設置装置10を用いて新設床版30を設置する手順の1つのステップ(ステップS9)を模式的に示す模式図
【
図14】本発明の第1実施形態に係る床版設置装置10を用いて新設床版30を設置する手順の1つのステップ(ステップS10)を模式的に示す模式図
【
図15】本発明の第1実施形態に係る床版設置装置10を用いて新設床版30を設置する手順の1つのステップ(ステップS11)を模式的に示す模式図
【
図16】本発明の第2実施形態に係る床版設置装置40を橋軸方向から見た正面図(
図17において矢視XVI方向から見た正面図)
【
図17】本発明の第2実施形態に係る床版設置装置40を橋軸直角方向から見た側面図(
図16において矢視XVII方向から見た側面図)
【
図18】本発明の第2実施形態に係る床版設置装置40を用いて床版設置を行う際に用いる運搬車両48を橋軸方向から見た正面図(
図17において矢視XVIII方向から見た正面図)
【
図19】本発明の第2実施形態に係る床版設置装置40を上方から見た平面図(
図17において矢視XIX方向から見た平面図)
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
(1)第1実施形態
(1-1)構成
図1は本発明の第1実施形態に係る床版設置装置10を橋軸方向から見た正面図(
図2において矢視I方向から見た正面図)であり、
図2は本発明の第1実施形態に係る床版設置装置10を橋軸直角方向から見た側面図(
図1において矢視II方向から見た側面図)であり、
図3は本発明の第1実施形態に係る床版設置装置10の運搬車両24を橋軸方向から見た正面図(
図2において矢視III方向から見た正面図)であり、
図4は本発明の第1実施形態に係る床版設置装置10を上方から見た平面図(
図2において矢視IV方向から見た平面図)である。なお、
図1では運搬車両24の記載を省略しており、
図3では床版設置装置10のうち運搬車両24のみ記載している。
【0031】
本発明の第1実施形態に係る床版設置装置10は、フレーム本体部12、天井長尺梁14、運搬機構16および運搬車両24等を有してなる。床版設置装置10のフレーム本体部12および運搬車両24の大きさは、
図1、
図3および
図4に示すように、橋梁80の幅員方向については、どちらも、隣り合う主桁82の間隔(通常3~4m程度)と同程度の大きさであり、橋梁80の幅員方向について、床版設置装置10のフレーム本体部12および運搬車両24の大きさは、略同一の大きさである。
【0032】
フレーム本体部12は、4つの脚部12Aと、天井部12Bと、4つの梁部12Cと、を有してなり、フレーム本体部12は、運搬車両24を除く床版設置装置10の骨格を形作る部位である。フレーム本体部12は、略鉛直方向に立設している4つの脚部12Aを有してなり、該4つの脚部12Aが側辺に位置して全体の形状が略直方体形状となっている。フレーム本体部12において、4つの脚部12Aのそれぞれの上部に梁部12Cがそれぞれ連結し、それぞれの梁部12Cの内側の端部(脚部12Aとは反対側の端部)は天井部12Bに連結している。梁部12Cはヒンジ機構を介して水平面内を回動可能に天井部12Bに連結しており、梁部12Cがヒンジ機構を介して水平面内を回動して、隣り合う脚部12A同士の間の間隔を調整できるようになっている。フレーム本体部12の4つの脚部12Aのうち、略直方体形状における側面を形成する隣り合う側辺に位置していて天井長尺梁14が間に位置する2つの脚部12Aの間の間隔(橋軸直角方向に隣り合う2つの脚部12Aの間の間隔)は、橋軸直角方向に隣り合う2つの主桁82の間の間隔と同程度となるように調整されている。このため、フレーム本体部12の4つの脚部12Aを、
図1および
図4に示すように、隣り合う主桁82の直上に位置させることができ、本第1実施形態に係る床版設置装置10においては、フレーム本体部12の4つの脚部12Aを、
図1および
図4に示すように、隣り合う主桁82の直上に位置させている。このため、フレーム本体部12から橋梁80の橋面に加わる荷重(天井長尺梁14が新設床版30を支持している場合には、フレーム本体部12の総重量に新設床版30の重量を加えた荷重)は、新設床版30に曲げモーメントを発生させずに主桁82に鉛直力として伝達されるので、新設床版30にほとんど悪影響を与えない。
【0033】
4つの脚部12Aのそれぞれには、図示せぬ油圧ジャッキが内部に組み込まれており、4つの脚部12Aは、それぞれ伸縮ができるように構成されている。また、床版設置装置10には、4つの脚部12Aを同調させて伸縮するように制御する制御機構が設けられており、フレーム本体部12は、全体が一様に上下に伸縮するように構成されている。4つの脚部12Aを同調させて伸縮させる制御機構としては、一般的に用いられている公知の制御機構を用いることができる。床版設置装置10においては、4つの脚部12Aが同調して伸縮してフレーム本体部12の全体が一様に上下に伸縮することで、天井長尺梁14に取り付けられた運搬機構16に回動手段18を介して連結された連結部材20が上下に移動するように構成されており、これにより、連結部材20に連結された新設床版30が上昇および下降できるようになっている。したがって、フレーム本体部12を備える床版設置装置10は、新設床版30の吊り上げ及び吊り下げを行うクレーン装置ではなく、新設床版30のせり上げ及びせり下げを行うリフター装置であると言うことができる。
【0034】
また、4つの脚部12Aのそれぞれの下端部には、
図1、
図2および
図4に示すように、橋梁80の橋面に支持されて当該橋面上を移動できる移動手段22が着脱可能に取り付けられており、本第1実施形態に係る床版設置装置10のフレーム本体部12は橋梁80の橋面上を移動できるように構成されている。したがって、本第1実施形態に係る床版設置装置10のフレーム本体部12は、床版設置作業の進展に伴う床版設置位置の変更に対応して移動することができるようになっている。移動手段22は、例えばゴム製のタイヤを使用して構成することができる。また、移動手段22に自走機能を設けて、移動手段22を自走可能なように構成してもよい。また、本第1実施形態に係る床版設置装置10においては、
図1および
図4に示すように、フレーム本体部12の4つの脚部12Aの下端部にそれぞれ取り付けられた4つの移動手段22は主桁82の直上を移動する。
【0035】
天井長尺梁14は、フレーム本体部12の天井部12Bに支持されていてフレーム本体部12を略水平方向に貫いて延びる長尺の鋼部材であり、橋梁80の橋軸方向に延びている。天井長尺梁14の両端部はそれぞれフレーム本体部12から片持ちで張り出しており、新設床版30が搬入される搬入側に張り出した搬入側片持ち張り出し部14Aおよび新設床版30が設置される設置側に張り出した設置側片持ち張り出し部14Bとなっている。
【0036】
天井長尺梁14は、
図1に示すように、2つのI形鋼14Xが並行して配置されてなり、2つのI形鋼14Xの上フランジが天井部12Bに取り付けられて構成されている。I形鋼14Xの下フランジの上面には、
図1に示すように、運搬機構(ここでは電動トロリ)16の車輪が配置されており、天井長尺梁14の長手方向に沿って運搬機構16が移動できるようになっている。運搬機構16の下部には回動手段18が連結されていて運搬機構16は回動手段18を備えており、回動手段18の下部には連結部材20が連結されている。
【0037】
したがって、本第1実施形態に係る床版設置装置10は、連結部材20に連結させた新設床版30が、上昇、下降および移動(天井長尺梁14の長手方向に沿う移動および水平面内の回動)ができるように、構成されている。
【0038】
新設床版30は、運搬車両24によって搬入側片持ち張り出し部14Aの下方に搬入される。フレーム本体部12の脚部12Aを収縮させて、搬入側片持ち張り出し部14Aの下方において、運搬車両24上の新設床版30を上方の連結部材20に連結させる。そして、フレーム本体部12の脚部12Aを伸長させて、新設床版30を運搬車両24上からせり上げた後、連結部材20を介して新設床版30を支持した状態で、運搬機構16を天井長尺梁14の長手方向に沿って搬入側片持ち張り出し部14Aから設置側片持ち張り出し部14Bに移動させることにより、新設床版30を目標とする設置位置の上方まで移動させることができる。新設床版30を目標とする設置位置の上方まで移動させた後、新設床版30を回動手段18により水平面内で回動させて向きを適正な向きに変え、そして、フレーム本体部12の脚部12Aを収縮させて、新設床版30を下降させて、新設床版30を目標とする設置位置に設置することができる。設置側片持ち張り出し部14Bに移動させた新設床版30を下降させて橋梁80の主桁82上の所定に位置に設置するので、設置した新設床版30は、設置側の脚部12A(
図2および
図4において符号12A1を括弧書きで追記している)よりも設置側寄り(
図2および
図4において右方)に設置されるので、設置した新設床版30を足場として活用して、フレーム本体部12は次の設置位置へと前進する(
図2および
図4において右方に移動する)ことができる。
【0039】
運搬車両24は、第1走行部24Aおよび第2走行部24Bを備えており、橋梁80の橋面上を走行して、新設床版30を、天井長尺梁14の搬入側片持ち張り出し部14Aの下方まで運搬する役割を有する。運搬車両24の第1走行部24Aおよび第2走行部24Bの態様は特には限定されず、現場ごとに特化した態様にして、運搬車両24を現場ごとに特化した専用の台車としてもよいが、運搬車両24の第1走行部24Aおよび第2走行部24Bの態様を、ゴム製タイヤを使用した態様にしてもよく、この場合には、運搬車両24を、工事を行う現場である橋梁80上やその周辺領域のみを走行する専用台車として構成しなくてもよく、公道を走行することも可能な構成にすることができ、具体的には例えば、トレーラーやトラックを運搬車両24として使用することも可能である。
【0040】
本第1実施形態に係る床版設置装置10においては、運搬車両24は、第1走行部24Aおよび第2走行部24Bを、走行する方向に対して直交する方向に所定の間隔(橋軸直角方向に隣り合う2つの主桁82の間の間隔)と同程度の間隔を空けて備えており、
図3に示すように、運搬車両24の第1走行部24Aおよび第2走行部24Bは、主桁82の直上を走行することができ、本第1実施形態に係る床版設置装置10においては、運搬車両24の第1走行部24Aおよび第2走行部24Bは、主桁82の直上を走行するようにしている。このため、運搬車両24から橋梁80の橋面に加わる荷重(運搬車両24が新設床版30を支持している場合には、運搬車両24の総重量に新設床版30の重量を加えた荷重)は、新設床版30に曲げモーメントを発生させずに主桁82に鉛直力として伝達されるので、新設床版30にほとんど悪影響を与えない。
【0041】
以上説明したように、フレーム本体部12の4つの脚部12Aの下端部には、橋梁80の橋面に支持されて当該橋面上を移動できる移動手段22がそれぞれ取り付けられており、その4つの移動手段22は主桁82の直上を移動する。このため、フレーム本体部12から橋梁80の橋面に加わる荷重(天井長尺梁14が新設床版30を支持している場合には、フレーム本体部12の総重量に新設床版30の重量を加えた荷重)は、新設床版30に曲げモーメントを発生させずに主桁82に鉛直力として伝達されるので、新設床版30にほとんど悪影響を与えない。また、運搬車両24の第1走行部24Aおよび第2走行部24Bは、主桁82の直上を走行する。このため、運搬車両24から橋梁80の橋面に加わる荷重(運搬車両24が新設床版30を支持している場合には、運搬車両24の総重量に新設床版30の重量を加えた荷重)は、新設床版30に曲げモーメントを発生させずに主桁82に鉛直力として伝達されるので、新設床版30にほとんど悪影響を与えない。したがって、本第1実施形態に係る床版設置装置10の全重量に床版設置装置10が支持する新設床版30の重量を加えた総重量は、新設床版30に曲げモーメントを発生させずに主桁82に鉛直力として伝達されるので、新設床版30にほとんど悪影響を与えない。
【0042】
本第1実施形態に係る床版設置装置10においては、フレーム本体部12の4つの脚部12Aの下端部にそれぞれ設けた移動手段22ならびに運搬車両24の第1走行部24Aおよび第2走行部24Bは、橋梁80の橋面に接して移動する態様(前述したように例えばゴム製のタイヤが使用された態様)であるように構成することができるが、隣接する2つの主桁82の直上の橋面上に2本の軌条を設置し、その2本の軌条に沿って、フレーム本体部12の4つの脚部12Aの下端部にそれぞれ設けた移動手段22ならびに運搬車両24の第1走行部24Aおよび第2走行部24Bが走行する態様に構成してもよい。
【0043】
なお、隣接する2つの主桁82の直上を運搬車両24の第1走行部24Aおよび第2走行部24Bが走行するようにした方が新設床版30に与える悪影響は当然小さくなるが、運搬車両24の重量はフレーム本体部12の重量ほどには大きくないので、運搬車両24の第1走行部24Aおよび第2走行部24Bの間隔(走行する方向に対して直交する方向の間隔)を、隣接する2つの主桁82の間隔よりも大きくしても安全上問題がないことを確認できれば、当該構成を採用してもよい。運搬車両24の第1走行部24Aおよび第2走行部24Bの間隔を隣接する2つの主桁82の間隔よりも大きくした場合には、少なくとも第1走行部24Aおよび第2走行部24Bのうちの一方は主桁82の直上に位置させることができなくなるが、新設床版30の部位のうち、隣接する2つの主桁82の間に位置する新設床版30の部位の上に第1走行部24Aおよび第2走行部24Bの両方が位置することはなく、運搬車両24の全重量が、隣接する2つの主桁82の間に位置する新設床版30の部位に加わることはないので、この点では運搬車両24の重量による新設床版30に与える悪影響はある程度抑えられる。ただし、運搬車両24の第1走行部24Aおよび第2走行部24Bの間隔を隣接する2つの主桁82の間隔よりも大きくした場合、第1走行部24Aおよび第2走行部24Bのうちの少なくとも一方は、新設床版30の片持ち構造部分に荷重を加えることになる場合があるので、安全上問題がないことの確認を十分に行う。
【0044】
また、床版設置装置10の大きさは、
図1、
図3および
図4に示すように、橋梁80の幅員方向については、ほぼ1車線分の幅に収まる大きさであり、床版設置装置10は、1車線のみを車線規制して1車線ごとに施工を行う半断面施工に用いることができる場合がある。したがって、
図1に示すように、既設床版32の1車線を一般車両100に供用した状態で、床版設置装置10を用いて施工を行うことができる場合がある。
図1において、符号30Aは新設地覆を示し、符号32Aは既設地覆を示す。
【0045】
なお、本第1実施形態に係る床版設置装置10についての以上の説明では、橋梁80の2つの主桁82に着目して説明を行ったが、橋梁80が主桁82だけでなく橋軸方向に延びる縦桁や架設桁を有している場合には、橋軸方向に延びる桁部材(主桁82、縦桁、架設桁)を広く橋桁と捉え、その橋桁のうち2つの橋桁に着目して、本第1実施形態に係る床版設置装置10を、以上行った説明と同様に用いることができる。
【0046】
(1-2)床版設置方法
本発明の第1実施形態に係る床版設置装置10を用いて、新設床版30を目標とする設置地点に設置する手順について、
図5~
図15を参照しつつ説明する。ここでは、橋梁80において、目標とする設置地点に新設床版30を設置する場合について説明する。
【0047】
(ステップS1)
まず、橋梁80における所定の配置場所(目標とする設置地点の近傍の場所)に、
図5に示すように、搬入側片持ち張り出し部14Aが搬入側に、設置側片持ち張り出し部14Bが設置側に位置するように、床版設置装置10を配置する(ステップS1)。
【0048】
(ステップS2)
ステップS1で橋梁80における所定の配置場所に配置した床版設置装置10の天井長尺梁14の搬入側片持ち張り出し部14Aの下方に、
図6に示すように、運搬車両24で新設床版30を搬入する(ステップS2)。
【0049】
(ステップS3)
床版設置装置10のフレーム本体部12の脚部12Aを収縮させ、ステップS2で搬入した運搬車両24上の新設床版30を、
図7に示すように、連結部材20に固定して連結する(ステップS3)。
【0050】
(ステップS4)
床版設置装置10のフレーム本体部12の脚部12Aを伸長させてフレーム本体部12を立ち上げ、ステップS2で搬入した運搬車両24上の新設床版30を、
図8に示すように、連結部材20が上方から連結した状態で上昇させる(ステップS4)。
【0051】
(ステップS5)
ステップS4で、運搬車両24上の新設床版30を、連結部材20が上方から連結した状態で上昇させた後、運搬車両24を搬入側片持ち張り出し部14Aの下方から、搬入側の後方(
図9において左側方向)の地点に存在する新設床版30の積み込み地点(図示せず)に移動させるとともに、運搬機構16を天井長尺梁14に沿って移動させて、連結部材20を介して上昇させた新設床版30を、天井長尺梁14の設置側片持ち張り出し部14Bまで移動させる(ステップS5)。
【0052】
(ステップS6)
連結部材20を介して上昇させた新設床版30を、天井長尺梁14の設置側片持ち張り出し部14Bまで移動させた後、
図10に示すように、回動手段18により、連結部材20を介して上昇させた新設床版30を水平面内で90°回動させ、新設床版30の主鉄筋方向が橋梁80の橋軸直角方向となるようにする(ステップS6)。
【0053】
(ステップS7)
床版設置装置10のフレーム本体部12の脚部12Aを収縮させてフレーム本体部12を下方向に収縮させ、主鉄筋方向が橋梁80の橋軸直角方向となるように回動させた新設床版30を、
図11に示すように、橋梁80の目標とする設置地点に配置した後、新設床版30の連結部材20への固定を解除し、新設床版30と連結部材20との連結を解除して、目標とする設置地点に新設床版30を設置する(ステップS7)。
【0054】
(ステップS8)
図12に示すように、床版設置装置10のフレーム本体部12の脚部12Aを伸長させてフレーム本体部12を立ち上げる(ステップS8)。
【0055】
(ステップS9)
図13に示すように、回動手段18により、連結部材20を水平面内で90°回動させ、連結部材20の長辺方向が橋梁80の橋軸方向となるようにする(ステップS9)。
【0056】
(ステップS10)
図14に示すように、運搬機構16を天井長尺梁14に沿って移動させ、連結部材20を天井長尺梁14の搬入側片持ち張り出し部14Aに移動させ、次の新設床版30の設置に備える(ステップS10)。
【0057】
(ステップS11)
図15に示すように、床版設置装置10の全体を、移動手段22により、天井長尺梁14の設置側片持ち張り出し部14Bの方向に前進させ、天井長尺梁14の設置側片持ち張り出し部14Bが、次の新設床版30の目標とする設置位置の上方に位置するようにして次の新設床版30の設置に備える(ステップS11)。
【0058】
(2)第2実施形態
図16は本発明の第2実施形態に係る床版設置装置40を橋軸方向から見た正面図(
図17において矢視XVI方向から見た正面図)であり、
図17は本発明の第2実施形態に係る床版設置装置40を橋軸直角方向から見た側面図(
図16において矢視XVII方向から見た側面図)であり、
図18は本発明の第2実施形態に係る床版設置装置40を用いて床版設置を行う際に用いる運搬車両48を橋軸方向から見た正面図(
図17において矢視XVIII方向から見た正面図)であり、
図19は本発明の第2実施形態に係る床版設置装置40を上方から見た平面図(
図17において矢視XIX方向から見た平面図)である。なお、
図16では運搬車両48の記載を省略しており、
図18では床版設置装置40を用いて床版設置を行う際に用いる運搬車両48のみ記載し、床版設置装置40自体の記載は省略している。
【0059】
本発明の第2実施形態に係る床版設置装置40は、
図16、
図17および
図19に示すように、橋軸直角方向に隣り合う脚部42Aの下端部同士を脚部連結部材44で連結し、橋軸方向に隣り合う脚部42Aの下端部同士を脚部連結部材46で連結し、かつ、新設床版を運搬する運搬車両を構成に含んでいない床版設置装置である。これらの点以外は第1実施形態に係る床版設置装置10と同様であるので、対応する部材や部位等には同一の符号を付して説明は原則として省略する。
【0060】
本発明の第2実施形態に係る床版設置装置40は、橋軸直角方向に隣り合う脚部42Aの下部同士を脚部連結部材44で連結し、橋軸方向に隣り合う脚部42Aの下部同士を脚部連結部材46で連結しているので、略直方体形状であるフレーム本体部42が非常に安定した構造となっており、フレーム本体部42自体の安全性がより向上した構造となっている。なお、「橋軸直角方向に隣り合う脚部42A」は、「フレーム本体部42の4つの脚部42Aのうち、略直方体形状であるフレーム本体部42の側面を形成する隣り合う側辺に位置していて天井長尺梁14が間に位置する2つの脚部42A」と表現することもでき、「橋軸方向に隣り合う脚部42A」は、「フレーム本体部42の4つの脚部42Aのうち、略直方体形状であるフレーム本体部42の側面を形成する隣り合う側辺に位置していて天井長尺梁14が間に位置しない2つの脚部42A」と表現することもできる。
【0061】
また、第1実施形態に係る床版設置装置10の場合と同様に、本第2実施形態に係る床版設置装置40においても、フレーム本体部42の脚部42Aを主桁82の直上に配置することや床版設置装置40を使用する際に用いる運搬車両48(新設床版30を運搬させる運搬車両48)の第1走行部48Aおよび第2走行部48Bが主桁82の直上を走行するようにすることで、フレーム本体部42および運搬車両48の重量による新設床版30(橋梁80に設置した新設床版30)に与える悪影響を減じることができ、安全性をより向上させることができる。
【0062】
なお、本第2実施形態に係る床版設置装置40を用いて新設床版30を目標とする設置地点に設置する手順については、第1実施形態に係る床版設置装置10を用いて新設床版30を目標とする設置地点に設置する手順(前記「(1-2)床版設置方法」で前述した手順)と同様の手順で行うことができる。
【0063】
(3)補足
以上説明した第1および第2実施形態に係る床版設置装置10、40は、フレーム本体部12、42の脚部12A、42Aの伸縮によってフレーム本体部12、42全体が上下に伸縮し、それによって、新設床版30を連結固定する連結部材20が上下に移動して、新設床版30が上昇および下降するという構成になっているが、例えば、運搬機構16に吊り上げや吊り下げの機能を有する吊り手段(例えば電動チェーンブロック)を連結して、当該吊り手段によって新設床版30の上昇および下降をさせる構成にしてもよい。
【0064】
また、第1実施形態に係る床版設置装置10を用いて行う床版設置方法について、前記「(1-2)床版設置方法」で説明したが、既設床版を撤去する撤去工程を行った後、既設床版の撤去を行った位置に対して、第1実施形態に係る床版設置装置10または第2実施形態に係る床版設置装置40を用いて床版設置を行えば、床版取替を行ったことになる。つまり、第1実施形態に係る床版設置装置10および第2実施形態に係る床版設置装置40は、床版の設置だけでなく、床版の取り替えに用いることもできる。
【符号の説明】
【0065】
10、40…床版設置装置
12、42…フレーム本体部
12A、42A…脚部
12A1…設置側の脚部
12B…天井部
12C…梁部
14…天井長尺梁
14A…搬入側片持ち張り出し部
14B…設置側片持ち張り出し部
14X…I形鋼
16…運搬機構
18…回動手段
20…連結部材
22…移動手段
24、48…運搬車両
24A、48A…第1走行部
24B、48B…第2走行部
30…新設床版
30A…新設地覆
32…既設床版
32A…既設地覆
44、46…脚部連結部材
80…橋梁
82…主桁
100…一般車両