(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】コンデンサおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 9/008 20060101AFI20241112BHJP
H01G 9/055 20060101ALI20241112BHJP
H01G 9/042 20060101ALI20241112BHJP
H01G 9/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
H01G9/008 303
H01G9/055 100
H01G9/008 305
H01G9/042 500
H01G9/00 290D
(21)【出願番号】P 2023050940
(22)【出願日】2023-03-28
【審査請求日】2024-04-26
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000228578
【氏名又は名称】日本ケミコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083725
【氏名又は名称】畝本 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100140349
【氏名又は名称】畝本 継立
(74)【代理人】
【識別番号】100153305
【氏名又は名称】畝本 卓弥
(74)【代理人】
【識別番号】100206933
【氏名又は名称】沖田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】前田 理帆グミラール
(72)【発明者】
【氏名】柏崎 悠汰
【審査官】清水 稔
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-067187(JP,A)
【文献】国際公開第2010/116668(WO,A1)
【文献】特開2018-120939(JP,A)
【文献】実開平03-043723(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/008
H01G 9/055
H01G 9/042
H01G 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材箔および該基材箔上に形成されたカーボン層を有する箔本体と、貫通孔と、該貫通孔の縁部から伸び前記箔本体に重ねられる箔片とを含む陰極箔と、
前記陰極箔に載置される平坦部と、前記平坦部から伸び前記貫通孔を通って前記陰極箔の前記平坦部が載置された面の反対面に重ねられた端子片とを含んで前記陰極箔に接続される引出し端子と
を備え、
前記箔片は、外縁に、前記基材箔が露出している基材露出端面を有し、
前記端子片と前記箔本体の間に配置された前記箔片の前記基材露出端面の一部が前記端子片と接触し、
前記基材露出端面は、ステッチ針の挿通により形成される切断面であり、
前記基材箔の表面が凹凸を有し、前記カーボン層が圧接されて前記凹凸に入り込んで
おり、
前記基材露出端面を有する前記箔片の前記外縁が、不規則に蛇行することで前記端子片と前記箔本体の間に配置されることを特徴とするコンデンサ。
【請求項2】
基材箔および該基材箔上に形成されたカーボン層を有する箔本体を含む陰極箔を作製または準備する工程と、
前記陰極箔に引出し端子の平坦部を配置する工程と、
ステッチ針を前記平坦部側から前記平坦部および前記陰極箔に挿通して、貫通孔および該貫通孔の縁部から伸びる箔片を前記陰極箔に形成するとともに、前記平坦部から伸び前記貫通孔を通る端子片を前記引出し端子に形成する工程と、
前記端子片および前記箔片を前記陰極箔の前記平坦部が載置された面の反対面に押圧して、前記陰極箔と前記引出し端子とを接続する工程と
を備え、
前記基材箔の表面が凹凸を有し、前記カーボン層が圧接されて前記凹凸に入り込んでおり、
前記ステッチ針の挿通により、前記基材箔が露出している基材露出端面が前記箔片の外縁に形成され
るとともに、不規則な前記箔片が形成され、
押圧前の前記箔片は、前記ステッチ針の挿通方向に一致またはほぼ一致する方向に伸びる直立部を含み、
前記端子片および前記箔片を押圧する工程において、前記直立部が伸びる方向に対して平行またはほぼ平行に前記箔片を押し潰して、前記基材露出端面の少なくとも一部を前記端子片に接触させ
、
押圧された前記箔片の前記基材露出端面は、不規則に蛇行することで前記端子片と前記箔本体の間に配置することを特徴とするコンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カーボン層を含む陰極箔を備えるコンデンサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサは、陽極箔と、陰極箔と、陽極箔および陰極箔の間に配置されたセパレータとを含み、電気を蓄えることが可能である。このようなコンデンサに関し、アルミニウム箔のみからなる陰極箔を含む基本的なコンデンサが知られている。また、近年、アルミニウム箔とアルミニウム箔上に形成されたカーボン層を含む陰極箔を備えるコンデンサが知られている(たとえば、特許文献1)。カーボン層は、たとえば、コンデンサの静電容量を高め、水素ガスの発生抑制という作用を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
陽極箔、陰極箔などの電極箔と引出し端子は、ステッチ接続などの接続手段により接続される。ステッチ接続を形成するためのステッチ接続処理では、互いに重ねられた引出し端子および電極箔に引出し端子側からステッチ針が挿通する。ステッチ針によって、引出し端子および電極箔を引き裂くことで、引出し端子に端子孔および端子片が形成され、電極箔に貫通孔および箔片が形成される。端子片は、電極箔の貫通孔を通って電極箔の背面から突出する。端子片および箔片は押圧されて、電極箔の背面に重ねられる。その結果、端子片と箔片や電極箔が押圧により金属接合され、または接触されることで電極箔と引出し端子とが接続される。
【0005】
ところで、カーボン層は、アルミニウム箔などの金属箔よりも低い静止摩擦係数を有し、カーボン層を含む陰極箔は、金属箔のみからなる陰極箔よりも滑り易い。そのため、端子片を陰極箔に接続する際、より詳細には、重ねられた端子片および箔片が陰極箔を押圧する際、箔片が根本部分から箔片の先端方向に移動する。そのため、端子片および箔片の押圧力が押圧方向および箔片の移動方向に分散されるため、カーボン層を含む陰極箔では、金属箔のみからなる陰極箔よりも端子片を陰極箔に押し当てるための押圧力が減少する。押圧力の減少のため、端子片により陰極箔が固定しづらいという課題がある。
【0006】
また、端子片および箔片が陰極箔を押圧する際に、陰極箔と端子片の接触部が固定されていないと、陰極箔の被押圧部が伸びにくく、カーボン層から陰極箔の地金(つまり金属箔)が露出しにくい。端子片に対するカーボン層の接続力は、端子片に対する金属箔の接続力に比べて電気的および物理的に低いという課題がある。
【0007】
そこで、本開示は、たとえばカーボン層を含む陰極箔に適したステッチ接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の側面によれば、コンデンサは陰極箔と引出し端子とを備える。陰極箔は、基材箔および該基材箔上に形成されたカーボン層を有する箔本体と、貫通孔と、該貫通孔の縁部から伸び前記箔本体に重ねられる箔片とを含む。引出し端子は、前記陰極箔に載置される平坦部と、前記平坦部から伸び前記貫通孔を通って前記陰極箔の前記平坦部が載置された面の反対面に重ねられた端子片とを含んで前記陰極箔に接続される。前記箔片は、外縁に、前記基材箔が露出している基材露出端面を有し、前記端子片と前記箔本体の間に配置された前記箔片の前記基材露出端面の一部が前記端子片と接触し、前記基材露出端面は、ステッチ針の挿通により形成される切断面であり、前記基材箔の表面が凹凸を有し、前記カーボン層が圧接されて前記凹凸に入り込んでおり、前記基材露出端面を有する前記箔片の前記外縁が、不規則に蛇行することで前記端子片と前記箔本体の間に配置される。
【0011】
上記目的を達成するため、本開示の第2の側面によれば、コンデンサの製造方法は、基材箔および該基材箔上に形成されたカーボン層を有する箔本体を含む陰極箔を作製または準備する工程と、前記陰極箔に引出し端子の平坦部を配置する工程と、ステッチ針を前記平坦部側から前記平坦部および前記陰極箔に挿通して、貫通孔および該貫通孔の縁部から伸びる箔片を前記陰極箔に形成するとともに、前記平坦部から伸び前記貫通孔を通る端子片を前記引出し端子に形成する工程と、前記端子片および前記箔片を前記陰極箔の前記平坦部が載置された面の反対面に押圧して、前記陰極箔と前記引出し端子とを接続する工程とを備える。前記基材箔の表面が凹凸を有し、前記カーボン層が圧接されて前記凹凸に入り込んでおり、前記ステッチ針の挿通により、前記基材箔が露出している基材露出端面が前記箔片の外縁に形成されるとともに、不規則な前記箔片が形成され、押圧前の前記箔片は、前記ステッチ針の挿通方向に一致またはほぼ一致する方向に伸びる直立部を含み、前記端子片および前記箔片を押圧する工程において、前記直立部が伸びる方向に対して平行またはほぼ平行に前記箔片を押し潰して、前記基材露出端面の少なくとも一部を前記端子片に接触させ、押圧された前記箔片の前記基材露出端面は、不規則に蛇行することで前記端子片と前記箔本体の間に配置する。
【発明の効果】
【0013】
本開示の上記側面によれば、たとえば次のいずれかの効果が得られる。
【0014】
(1) 箔片の基材露出端面の一部が端子片に少なくとも接触するので、カーボン層を介さずに基材箔と端子片が直接接触し、金属系材料同士の接触により物理的および電気的な接続が安定する。
【0015】
(2) 箔片の外縁で基材箔と端子片とが直接接触することにより、押圧時の端子片と箔片の間の相対移動が抑制され、押圧力の分散が抑制される。
【0016】
(3) 陰極箔の性質に適したステッチ接続を実現できる。
【0017】
(4) カーボン層を含む陰極箔を備えるコンデンサの安定性または信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施の形態に係るコンデンサの端子接続部の一例を示す図である。
【
図2】
図1のIIA-IIA線断面を示す図である。
【
図3】電極箔への引出し端子の接続工程の一例を示す図である。
【
図4】押圧時の引出し端子および陰極箔の形状変化の第1のイメージを示す図である。
【
図5】押圧時の引出し端子および陰極箔の形状変化の第2のイメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、実施の形態に係るコンデンサの端子接続部の一例を示している。
図2は、
図1のIIA-IIA線断面を示している。
図1および
図2に示す構成は一例であって、斯かる構成に本開示の技術が限定されるものではない。端子接続部は、ステッチ接続により引出し端子4が陰極箔6に接続されている接続場所、つまり接続部10とその周囲部分を含むものとする。接続部10は、引出し端子4の端子片26が少なくとも平坦部28および陰極箔6に重ねられて引出し端子4が陰極箔6に接続されている領域であって、
図1において網掛けが付されている部分である。
図1に示されている破線は、引出し端子4の平坦部28の外縁、または陰極箔6の箔片20の外縁を表す。
図2に示されている断面は、端子片26の中央部を通る中央断面の一例である。
図2のBは、
図2のAに示されている領域IIBの拡大図である。
図2のBに示されている一点鎖線は、箔片20の傾斜、および接続部10の外側の陰極箔6の表面に平行な面を表す。
【0020】
コンデンサ2は電子部品の一例であり、たとえば電解コンデンサである。コンデンサ2は、たとえばコンデンサ素子と、引出し端子4と、電解質と、絶縁性ゴムなどの封口部材と、アルミニウムケースなどの外装ケースとを含む。電解質が充填されたコンデンサ素子および引出し端子4の一部が外装ケースの内部に挿入され、封口部材が外装ケースの開口部に設置される。引出し端子4は、封口部材を貫通し、封口部材から突出する。
【0021】
コンデンサ素子は、陰極箔6と、陽極箔と、セパレータとを含む。セパレータが陰極箔6と陽極箔の間に配置されるように、陰極箔6、陽極箔およびセパレータは重ねられるとともに巻回されて、巻回素子が形成される。この巻回素子がコンデンサ素子を形成する。
【0022】
陰極箔6は、コンデンサ2の陰極を構成する。陰極箔6は、たとえば帯状の箔であって、基材箔12およびカーボン層14を有する箔本体16と、貫通孔18と、箔片20とを含む。
【0023】
基材箔12は、陰極箔6の地金であって、たとえば、アルミニウム箔、タンタル箔、ニオブ箔、チタン箔、ハフニウム箔、ジルコニウム箔、亜鉛箔、タングステン箔、ビスマス箔、アンチモン箔などの弁作用金属箔である。基材箔12の表面は、たとえばエッチングにより形成された凹凸を有し、基材箔12の表面積が拡大されている。基材箔12の表面は、たとえばトンネル状または海綿状のエッチングピットを含んでもよく、このトンネル状または海綿状のエッチングピットが凹凸を形成してもよい。
【0024】
カーボン層14は、たとえば基材箔12の両面に配置されている。カーボン層14は、基材箔12の一面にのみ配置されてもよい。カーボン層14は、部分的に凹凸の内部に侵入し、そのため基材箔12の凹凸に密着かつ係合している。つまり、カーボン層14は凹凸に係合する表面形状を有する。カーボン層14は基材箔12の外側に配置され、陰極箔6は基材箔12およびカーボン層14による二層構造または基材箔12の両面にカーボン層14を配置した三層構造を有している。カーボン層14は、主材として炭素材を含み、更に、添加剤としてバインダーおよび分散剤を含む。
【0025】
炭素材は、活性炭、カーボンブラック、カーボンナノホーン、無定形炭素、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化ケッチェンブラック、メソポーラス炭素、繊維状炭素などである。活性炭は、たとえば、やしがらなどの天然植物組織、フェノールなどの合成樹脂、石炭、コークスまたはピッチなどの化石燃料由来のものを原料として生成される。カーボンブラックは、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャネルブラックまたはサーマルブラックなどである。繊維状炭素は、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバなどである。カーボンナノチューブは、グラフェンシートが1層である単層カーボンナノチューブでも、2層以上のグラフェンシートが同軸状に丸まり、チューブ壁が多層をなす多層カーボンナノチューブ(MWCNT)でもよい。
【0026】
炭素材は、球状炭素であるカーボンブラックが好ましい。一次粒子径が平均100ナノメートル以下である球状のカーボンブラックを用いることにより、カーボン層14は密になる。また、陰極箔6の表面にエッチングにより形成された凹凸の開口径よりも小さな粒子径のカーボンブラックを用いることにより、カーボンブラックが凹凸の深部に入り込みやすく、カーボン層14は陰極箔6の基材箔12と密着し、カーボン層14と基材箔12との界面抵抗は下がり易くなる。炭素材は、球状炭素と黒鉛とを含む混合物が好ましい。黒鉛は、たとえば天然黒鉛、人造黒鉛、または黒鉛化ケッチェンブラックなどであり、鱗片状、鱗状、塊状、土状、球状または薄片状などの形状を有する。黒鉛は、鱗片状または薄片状であることが好ましく、黒鉛の短径と長径とのアスペクト比が1:5~1:100の範囲であることが好ましい。既述のアスペクト比を有する鱗片状または薄片状の黒鉛は、たとえばエッチングピットなどの凹凸に球状カーボンを押し込み、カーボン層14の一部がエッチングピットの内部にまで形成できる。そのため、アンカー効果により、カーボン層14が強固に基材箔12に密着できる。
【0027】
炭素材が黒鉛と球状炭素の混合物である場合において、黒鉛と球状炭素の併用による作用を得るため、黒鉛と球状炭素の混合物に対する黒鉛の質量比〔黒鉛の質量/(黒鉛の質量+球状炭素の質量)〕は、たとえば25%以上90%以下の範囲である。
【0028】
バインダーは、たとえばスチレンブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデンまたはポリテトラフルオロエチレンなどの樹脂系バインダーであって、炭素材を結合させる。分散剤は、たとえばカルボキシメチルセルロースナトリウムである。
【0029】
箔片20は貫通孔18の縁部22から伸びるとともに縁部22で折返されている。箔片20は、折返しにより箔本体16に重ねられている。箔片20は、箔本体16と同様に基材箔12およびカーボン層14を有し、外縁に基材露出端面24を有する。基材露出端面24は、カーボン層14に覆われておらず、基材箔12(つまり地金)が露出している。
図1に示すように、基材露出端面24は、たとえば、不規則(ランダム)に蛇行しており、接続部10に出入りする。そのため、基材露出端面24が接続部10に入っている部分(基材露出端面24の第1部分)では、基材露出端面24が引出し端子4の端子片26に接触する。基材露出端面24が接続部10から出ている部分(基材露出端面24の第2部分)では、基材露出端面24が引出し端子4の端子片26から離れ、露出する。つまり、基材露出端面24の一部が端子片26と箔本体16の間に配置され、端子片26に接触する。基材露出端面24は、たとえば、ステッチ針50(
図3)の挿通により形成される切断面である。
【0030】
図2のBに示されているように、接続部10において、箔片20は、接続部10の外側の陰極箔6の表面に対して傾斜角度θで傾斜している。基材露出端面24は、たとえば、傾斜角度θよりも小さい傾斜角度を有する。基材露出端面24の傾斜角度は、一定値でもよく、変動してもよい。基材露出端面24の傾斜角度は、
図2のBに示されているように、たとえば傾斜角度θから0度に向かって漸減する。
【0031】
陽極箔は、コンデンサ2の陽極を構成する。陽極箔は、たとえば既述の弁作用金属箔であって、帯状の箔である。陽極箔の表面には多孔質構造を有する拡面部が形成されている。多孔質構造は、たとえば、エッチングにより形成されたトンネル状のピット、海綿状のピット、または密集した紛体間の空隙により成る。拡面部の表面は、化成処理により形成された誘電体酸化皮膜を含んでいる。陽極箔は、陽極側の引出し端子にステッチ接続または他の接続手段により接続される。
【0032】
セパレータは、陽極箔と陰極箔6の間に配置され、陽極箔と陰極箔6の間の短絡を防止する。セパレータは、絶縁材料であって、セパレータ部材としてクラフトを含み、マニラ麻、エスパルト、ヘンプ、レーヨン、セルロース、これらの混合材などの他のセパレータ部材を含んでもよい。
【0033】
引出し端子4は、たとえばアルミニウムなどの導電性金属で形成されている。引出し端子4は、たとえば、リード線と端子部と端子片26とを含むリード端子である。端子部は、アルミニウム線から構成されており、略円柱形状の丸棒部と、アルミニウム線の一端側がプレス加工等された平坦部28から構成される。丸棒部と平坦部28の間には、丸棒部の厚みから平坦部28の厚みまで漸次厚みが減少する傾斜部が形成されている。リード線はたとえば金属線から構成されており、アーク溶接で丸棒部に接続されている。平坦部28は、陰極箔6に重ねられており、端子孔30を含む。端子孔30は、貫通孔18に重なる位置に配置される。端子片26は、平坦部28に形成され、平坦部28の端子孔30の縁部から伸び、貫通孔18を通って陰極箔6の平坦部28が載置された箔面とは反対面側に導出され、陰極箔6の反対面に圧接される。引出し端子4は、平坦部28および折り曲げられた端子片26の間に陰極箔6を挟むことにより接続部10で陰極箔6に接続される。
【0034】
ステッチ接続時の押圧力の方向(以下、「押圧方向」と言う)は、たとえば貫通孔18の貫通方向に平行である。基材露出端面24の傾斜角度が0度に向かって小さくなるにつれて、基材露出端面24と押圧方向との成す角度が直角に近づく。そのため、ステッチ接続時に基材露出端面24に加えられる押圧力が大きくなる。端子片26および基材露出端面24の弁作用金属の接触により、陰極箔6の滑りまたは相対移動が抑制されるとともに、基材露出端面24と端子片26との間の物理的および電気的な接続が強くなる。
【0035】
電解質は、電解液、ゲル電解質、導電性高分子を含む固体電解質などである。電解質が電解液またはゲル電解質と、導電性高分子を含む固体電解質とを備えて所謂ハイブリッド型の電解コンデンサが形成されてもよい。
【0036】
電解コンデンサの電解液は、溶媒と、溶媒に溶解された溶質とを含み、必要に応じて添加剤を含む。溶媒はプロトン性の極性溶媒または非プロトン性の極性溶媒の何れでもよい。プロトン性の極性溶媒は、たとえば、一価アルコール類、多価アルコール類、オキシアルコール化合物類、水などである。非プロトン性の極性溶媒は、たとえば、スルホン系、アミド系、ラクトン類、環状アミド系、ニトリル系、オキシド系などである。溶質は、アニオンおよびカチオンの成分を含み、典型的には、有機酸若しくはその塩、無機酸若しくはその塩、または有機酸と無機酸との複合化合物若しくはそのイオン解離性のある塩であり、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。アニオンとなる酸およびカチオンとなる塩基が溶質成分として別々に電解液に添加されてもよい。
【0037】
固体電解質を用いる場合は、たとえば、導電性ポリマーが電解質層に含有される。導電性ポリマーは共役系高分子またはドーピングされた共役系高分子である。共役系高分子は、公知の共役系高分子を特に限定なく使用することができる。共役系高分子は、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリチオフェンビニレンなどであり、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)などが好ましい。共役系高分子は、単独で用いられてもよく、2種類以上を組み合わせてもよく、または、2種以上のモノマーの共重合体であってもよい。
【0038】
図3は、コンデンサの製造工程のうち、電極箔への引出し端子の接続工程の一例を示している。
図4は、押圧時の引出し端子および陰極箔の形状変化の第1のイメージを示している。
図5は、押圧時の引出し端子および陰極箔の形状変化の第2のイメージを示している。
図4および
図5に示されている形状変化のイメージは一例である。
図4および
図5に示されている破線Pは、位置の基準を表し、
図4または
図5において、破線P上の位置は、互いに同じ位置である。
図4のCおよび
図5のCに示されている破線Jは、端子片26が平坦部28に直接接続されていることを表す。
図3、
図4および
図5に示す構成は一例であり、
図3、
図4および
図5に示されている構成により本開示の技術が限定されるものではない。
【0039】
コンデンサ2の製造工程は、本開示のコンデンサの製造方法の一例であって、たとえば陽極箔の作製工程、陰極箔6の作製工程、セパレータの作製工程、引出し端子4の作製工程、電極箔への引出し端子4の接続工程(以下、「端子接続工程」と言う)、コンデンサ素子の作製工程、コンデンサ素子の封入工程を含む。
【0040】
陽極箔の作製工程では、たとえば、既述の弁作用金属箔の表面に多孔質構造を有する拡面部を形成し、拡面部が形成された弁作用金属箔の表面に化成処理により誘電体酸化皮膜を形成する。拡面部は、直流エッチング、交流エッチング、または弁作用金属箔への金属粒子などの蒸着もしくは焼結により形成される。直流エッチングまたは交流エッチングでは、典型的には、塩酸などのハロゲンイオンを含む酸性水溶液中に漬けられた弁作用金属箔に直流電流または交流電流が印加される。誘電体酸化皮膜が形成された弁作用金属箔を裁断して、陽極箔が作製および準備される。
【0041】
陰極箔6の作製工程では、たとえば、エッチングにより既述の弁作用金属箔の表面に凹凸を形成して、基材箔12が作製される。陰極箔6のエッチングは、陽極箔のエッチングと同じでもよく、異なっていてもよい。基材箔12にカーボン層14を形成し、基材箔12およびカーボン層14を帯状に裁断して、貫通孔18および箔片20が形成される前の陰極箔6が作製および準備される。
【0042】
カーボン層14は、たとえば次のように形成される。既述の炭素材、バインダーおよび分散剤を希釈液に加え、ミキサー、ジェットミキシング(噴流衝合)、超遠心処理、超音波処理などの分散処理によりこれらを混合して、スラリーを形成する。希釈液は、たとえばアルコール、炭化水素系溶媒、芳香族系溶媒、アミド系溶媒、水およびこれらの混合物などである。アルコールは、たとえばメタノール、エタノールまたは2-プロパノールである。アミド系溶媒は、たとえばN-メチル-2-ピロリドン(NMP)またはN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)である。
【0043】
スラリーを基材箔12に塗布し、溶媒を揮発させてカーボン層14を形成し、カーボン層14をプレスする。プレスは、たとえば炭素材を凹凸の細孔にまで押し込むことができ、また、炭素材が凹凸の細孔より大きい場合においては炭素材を凹凸の凹凸面に沿って変形させることができる。炭素材を凹凸の細孔にまで押し込む、または、炭素材を凹凸の凹凸面に沿って変形させることで、たとえばカーボン層14と基材箔12との密着性および定着性を向上させる。炭素材が黒鉛を含む場合、プレスは、黒鉛を整列させるとともに、黒鉛を基材箔12の凹凸に沿うように変形させる。プレスは、黒鉛が凹凸に圧接されるときに球状炭素を凹凸の内部に押し込み、スラリーを基材箔12に密着させ、その結果、カーボン層14を基材箔12に密着させる。炭素材が球状炭素のみの場合、たとえば一次粒子径が平均100ナノメートル以下である球状炭素が凹凸に入り込み、カーボン層14と基材箔12との界面抵抗が低減できる。また、炭素材が球状炭素のみの場合、カーボン層14の表面の静止摩擦係数が向上し、端子片26を陰極箔6に押圧した際に滑りにくくなり、接続性が安定したステッチ接続が得られる。
【0044】
セパレータの作製工程では、既述のセパレータ部材を裁断して、セパレータが作製および準備される。
【0045】
引出し端子4の作製工程では、既述の導電性金属からなる略円柱形状の丸棒部の一方端側をたとえばプレスして平坦部28を形成する。丸棒部の平坦部28が形成されていない側とリード線をアーク溶接などにより接続して、端子片26および端子孔30が形成される前の引出し端子4を作製および準備する。
【0046】
端子接続工程では、引出し端子4を陰極箔6および陽極箔にそれぞれ接続する。
【0047】
図3のAに示すように、ステッチ接続前の陰極箔6が下型などの第1の型42の上に設置され、ステッチ接続前の引出し端子4(具体的には平坦部28)が陰極箔6の上面に重ねられる。上型などの第2の型44が引出し端子4(具体的には平坦部28)の上面に設置される。そのため、陰極箔6および引出し端子4が第1の型42および第2の型44の間に挟まれて、第1の型42および第2の型44により保持される。
【0048】
第1の型42は透孔46を有し、第2の型44は透孔48を有している。透孔48は透孔46よりも小さく、透孔46の真上に配置されている。ステッチ針50は透孔48の上に配置される。
【0049】
ステッチ針50は、たとえば、円柱状の軸部52と、鋭角且つ四角錐形の先端部54とを有する。先端部54の底面は、たとえば辺の長さがLの正方形または略正方形であり、軸部52の断面は、たとえば直径がL以下の円形または略円形である。
【0050】
ステッチ針50を
図3のAに示されているブロック矢印の向きに移動距離Mだけ移動させ、
図3のBに示すように、ステッチ針50が挿通位置56まで引出し端子4および陰極箔6に引出し端子4側から挿通される。挿通位置56は、たとえば、軸部52と重なる位置、または軸部52と先端部54の境界位置に設定される。ステッチ針50が引出し端子4および陰極箔6を切り裂き、引出し端子4に端子片26および端子孔30が形成され、陰極箔6に貫通孔18および箔片20が形成される。ステッチ針50の挿通により、陰極箔6が不規則(ランダム)に裂け、大きさや形状が不揃いな箔片20が形成される。つまり、ステッチ針50を陰極箔6に挿通して形成した箔片20は、貫通孔18から離れる方向に開拡するように変形する。通常は、第1の型42の透孔46の大きさを、箔片20が透孔46の内側にあたって箔片20が過度に広がらないように設定している。このようにすることで、箔片20の大きさや形状を揃えることができる。一方、本実施の形態においては、第1の型42の透孔46を箔片20が貫通孔18から離れる方向に開拡するように変形した場合に大きさや形状を調整することを行わないことで、大きさや形状が不揃いな箔片20が形成される。また、箔片20の外縁で基材箔12が露出して基材露出端面24が形成される。下降されたステッチ針50を上昇させて、ステッチ針50を引出し端子4および陰極箔6から抜き去る。
【0051】
ステッチ針50の挿通後であって押圧前の端子片26(以下、単に「押圧前の端子片26」と言う)は、
図3のBに示すように、ステッチ針50の挿通方向に一致またはほぼ一致する方向(以下、「伸長方向」と言う)に伸びる直立部58を含む。ステッチ針50の挿通後であって押圧前の箔片20(以下、単に「押圧前の箔片20」と言う)は、伸長方向に伸びる直立部60を含む。つまり、ステッチ針50の挿通において端子片26および箔片20の変形量が抑制され、端子片26および箔片20の一部が引出し端子4の平坦部28に対してほぼ垂直に配置される。直立部58、60および不規則な箔片20を形成するため、ステッチ針50の形状、ステッチ針50の移動距離M、ステッチ針50の挿通速度、または平坦部28の厚みTなどが調整される。直立部58、60は、特別な調整を伴わずに形成されてもよい。
【0052】
ステッチ針50の挿通により形成される端子孔30が大きくなると、形成される端子片26が大きくなり、端子孔30から離れるように端子片26が反り易くなる。端子片26よりも薄い箔片20は、端子片26に応じて反ることになる。つまり、ステッチ針50の長さ方向に対して垂直方向に断面にしたときの辺の長さL(以下、単に「長さL」と言う)が小さくなると、押圧前の箔片20および端子片26が小さくなり、直立部58、60が形成され易くなる。移動距離Mが短くなると、挿通位置56におけるステッチ針50の辺の長さが小さくなり、直立部58、60が形成され易くなる。ステッチ針50の挿通速度が遅くなると、端子片26および箔片20がステッチ針50の挿通方向に伸び易くなり、直立部58、60が形成され易くなる。平坦部28の厚みTは、端子片26が伸びる方向に影響する。ステッチ針50の辺の長さLは、たとえば0.6~0.8ミリメートル(以下「mm」と言う)に調整されてもよい。平坦部28の厚みT(たとえば0.35mm)に対するステッチ針50の辺の長さLの比(以下、「L/T比」と言う)は、たとえば1.7~2.3に調整されてもよい。陰極箔6の厚み(たとえば0.02mm)に対するステッチ針50の辺の長さLの比は、たとえば30~40に調整されてもよい。
【0053】
成形型62は、たとえば平坦な押し当て面を上側に有し、透孔46の下側に配置される。成形型62を
図3のBに示されているブロック矢印の向きに上昇させ、押し当て面が引出し端子4および陰極箔6、特に端子片26および箔片20を陰極箔6側から押圧する。
図3のCに示されるように、端子片26および箔片20は第2の型44と成形型62の間に挟まれる。端子片26および箔片20が押圧により折返されて、引出し端子4が陰極箔6に接続される。
【0054】
端子片26および箔片20の直立部58、60が伸長方向に対して平行またはほぼ平行に押し潰される。そのため、
図4のAから
図4のCおよび
図5のAから
図5のCに示されているように、箔の滑り易さに無関係に、押圧時の箔片20の折返し位置64の移動量が小さくなる。つまり、カーボン層14による陰極箔6の滑りが抑制され、端子片26を陰極箔6に押し当てるための押圧力の減少量が抑制される。また、端子片26が小さい場合、端子孔30側への端子片26および平坦部28の伸び量Eが小さくなる。
【0055】
直立部60が伸長方向に対して平行またはほぼ平行に押し潰されるので、箔片20の非外縁部(外縁以外の部分)のカーボン層14に亀裂が生じ易くなり、基材箔12が露出し易くなる。非外縁部において露出する基材箔12は、端子片26に接続してもよく、陰極箔6の相対移動を抑制するとともに、箔片20と端子片26との間の物理的および電気的な接続を増加させてもよい。
【0056】
図4のAに示されているように、押圧前の箔片20が小さい場合、
図4のCに示されているように、箔片20の外縁が端子片26との接続部10に配置され、基材露出端面24が端子片26に接触かつ接続する。
図5のAに示されているように、押圧前の箔片20が大きい場合、
図5のCに示されているように、箔片20の先端が端子片26から突出して基材露出端面24が端子片26から離れた位置に配置される。つまり、
図4のCおよび
図5のCに示されている構造を有するコンデンサ2では、基材露出端面24が不規則(ランダム)に蛇行して接続部10に出入りすることになる。
【0057】
陽極箔の端子接続工程は、陰極箔6の端子接続工程と同じでもよく、異なっていてもよい。
【0058】
コンデンサ素子の作製工程では、第1のセパレータを陽極箔および陰極箔6の間に配置するとともに第2のセパレータを陽極箔または陰極箔6の外側に配置する。陽極箔、陰極箔6、第1および第2のセパレータを巻回して、コンデンサ素子が作製される。
【0059】
コンデンサ素子の封入工程では、電解液などの電解質が含浸されたコンデンサ素子が外装ケースの内部に挿入され、その後外装ケースの開口部に封口部材が取り付けられて、コンデンサ2が作製される。
【0060】
実施の形態によれば、たとえば以下の効果が得られる。
【0061】
(1) コンデンサ2において、箔片20の基材露出端面24が不規則に蛇行する。基材露出端面24を有する箔片20の外縁が、端子片26と陰極箔6との間に配置される部分と、端子片26と陰極箔6が積層しない部分とに配置され、基材露出端面24が部分的に端子片26に接触する。そのため、カーボン層14を介さずに基材箔12と端子片26が直接接触し、金属系材料同士の接触により物理的および電気的な接続が安定する。
【0062】
(2) ステッチ針50の挿通により直立部58、60および不規則な箔片20が形成され、カーボン層14による滑りが抑制され、端子片26を陰極箔6に押し当てるための押圧力の減少が抑制される。
【0063】
(3) ステッチ針50の挿通により露出する基材露出端面24が金属系材料同士の接触に利用されるので、端子接続工程における工程数の増加を回避することができる。
【0064】
(4) カーボン層14を含む陰極箔6の性質に適したステッチ接続を実現でき、カーボン層14を含む陰極箔6を備えるコンデンサ2の安定性または信頼性を高めることができる。
【0065】
(5) 特に、拡面部を形成した基材箔12にカーボンを塗布し、押圧してカーボンを拡面部に押し込むカーボン層14を備える陰極箔6に対する引出し端子4との接続においては、基材箔12とカーボン層14との密着性を向上させつつ、引出し端子4との接続性を向上させることができる。カーボン層14を備える陰極箔6と引出し端子4とを接続する場合、陰極箔6と引出し端子4との接続箇所のカーボン層14を予め剥離させて基材箔12を露出させることで箔片20と陰極箔6の基材箔12とを接触させる場合がある。しかし、本実施の形態のように、基材箔12とカーボン層14との密着性を向上させるために、基材箔12に形成した拡面部でカーボンを押し込んだ構造のカーボン層14の場合、カーボンが拡面部の内部まで入り込んでいるため、陰極箔6の引出し端子4との接続予定部のカーボン層14をすべて剥離することができない。接続予定部のカーボン層14が残存した状態で接続を行うと、接続性が低下する。一方で、カーボンを塗布のみとし押圧を行わない場合は、カーボンが拡面層の内部まで入り難く、剥離により接続予定部のカーボン層14を除去することができ、陰極箔6と引出し端子4との接続性が安定するが、基材箔12とカーボン層14との密着性が低下する。本実施の形態によれば、基材箔12とカーボン層14の密着性の向上と、基材箔12の露出によるカーボン層14を含む陰極箔6を備えるコンデンサ2の安定性または信頼性の向上を両立することができる。
【実施例】
【0066】
陰極箔6またはステッチ針50の違いによる端子接続部の状態の違いを確認するため、実施例に係る試料を比較例1~5に係る試料と比較した。
【0067】
実施例に係る試料は既述の実施の形態に係るコンデンサ2で用いられる陰極箔6と引出し端子4とを接続したものであって、引出し端子4の平坦部28は0.35mmの厚みTを有し、陰極箔6は0.02mmの厚みを有する。実施例に係る試料を製造するため、端子接続工程では、0.8mmの辺の長さLを有するステッチ針50が使用された。
【0068】
比較例1に係る試料は、基材箔12およびカーボン層14を有する陰極箔6(以下、実施例および比較例において「カーボン含有箔」と言う)を含み、平坦部28は0.35mmの厚みTを有し、陰極箔6は0.02mmの厚みを有する。比較例1に係る試料を製造するため、端子接続工程では、1.0mmの辺の長さLを有するステッチ針50が使用された。ステッチ針50を除き、比較例1における端子接続工程は実施例における端子接続工程と同じである。つまり、比較例1の引出し端子4には、実施例の引出し端子4よりも大きな端子孔30が形成された。
【0069】
比較例2に係る試料および比較例3に係る試料は、カーボン層14を含まない陰極箔(以下、比較例において「アルミニウム箔」と言う)を含み、平坦部28は0.35mmの厚みTを有する。比較例2に係る試料を製造するため、端子接続工程では、0.8mmの辺の長さLを有するステッチ針50が使用された。比較例3に係る試料を製造するため、端子接続工程では、1.0mmの辺の長さLを有するステッチ針50が使用された。
【0070】
比較例4に係る試料は、カーボン含有箔を含み、平坦部28は0.29mmの厚みTを有し、陰極箔6は0.02mmの厚みを有する。比較例4に係る試料を製造するため、端子接続工程では、0.8mmの辺の長さLを有するステッチ針50が使用された。ステッチ針50を除き、比較例4における端子接続工程は実施例における端子接続工程と同じである。
【0071】
比較例5に係る試料は、カーボン含有箔を含み、平坦部28は0.35mmの厚みTを有し、陰極箔6は0.02mmの厚みを有する。比較例5に係る試料を製造するため、端子接続工程では、0.64mmの辺の長さLを有するステッチ針50が使用された。ステッチ針50を除き、比較例5における端子接続工程は実施例における端子接続工程と同じである。
【0072】
実施例に係る試料の端子接続部は、
図1に示されている端子接続部と同様の外観を有していた。すなわち、箔片20の外縁に形成された基材露出端面24が不規則に蛇行して接続部10に出入りしていた。しかしながら、比較例1に係る試料の端子接続部では、箔片20の外縁に形成された基材露出端面24が端子片26から離れて露出していた。実施例および比較例1の対比から、ステッチ針50により形成される端子孔30の大きさを調整することにより、基材露出端面24を不規則に蛇行させることができ、基材露出端面24の少なくとも一部を端子片26に接触かつ接続できることが確認された。
【0073】
以下に示されている表1は、実施例1に係る試料および比較例1~
5に係る試料の接触抵抗および接続強度の確認結果を示している。接触抵抗および接続強度は、実施例および比較例において、各5個の平均値を示している。接触抵抗は、引出し端子4と陰極箔の間の抵抗値であって、抵抗計により計測される。接続強度は、陰極箔6を固定し、陰極箔6の端から突出している引出し端子4のリード線の先端部を0.5センチメートル/秒の速度で、引出し端子4が陰極箔6の表面から離れる方向に移動させながら、接続部10を陰極箔6から引き剥がれるまで継続的にロードセルで応力を測定し、最も大きい力(N)を接続強度とした。
【表1】
【0074】
比較例2、3の接触抵抗からわかるように、陰極箔としてアルミニウム箔を用いた場合には、ステッチ針50により開けられる孔が小さくなり、形成される端子片26が小さくなっても、接触抵抗に与える影響は小さい。しかしながら、陰極箔としてカーボン含有箔を用いた試料では、実施例および比較例1の接触抵抗から、開けられる孔が小さくなると、予想に反して接触抵抗が約30%小さくなり改善されることが確認された。つまり、実施例に係る試料は、比較例1に係る試料に比べて、接続部10におけるエネルギー損失および発熱が少なく、電気的な接続に優れることが確認された。なお、端子片26をより小さくするためにステッチ針50の辺の長さLを実施例の0.8mmより小さい0.64mmにした比較例5は、ステッチ針50の辺の長さLが1.0mmの比較例1と同程度まで大きくなった。また、端子片26の大きさは、ステッチ針50の大きさだけではなく、端子片26を形成する引出し端子4の平坦部28の厚みTにも影響を受ける。平坦部28の厚みTが厚くなると、端子片26を構成する材料が多くなるため、端子片26が大きくなりやすく、反対に平坦部28の厚みTが薄くなると端子片26は小さくなる傾向になり、接触抵抗に影響を与える。実際、平坦部28の厚みTを実施例の0.35mmより小さい0.29mmまで薄くした比較例4は接触抵抗が大きくなった。従って、陰極箔としてカーボン含有箔を用いる場合の引出し端子4との接続においては、陰極箔としてアルミニウム箔を用いた場合と比較して、ステッチ針50の辺の長さと引出し端子4の平坦部28の厚みを調整することが重要であることがわかった。
【0075】
カーボン含有箔を用いたコンデンサでは、実施例および比較例1の接続強度から、開けられる孔が小さくなっても、予想に反して接続強度がほぼ変わらないことが確認された。カーボン含有箔を用いたコンデンサでは、接触抵抗および接続強度に関し、予想に反する予期せぬ有利な効果が得られた。
【0076】
実施の形態および実施例の特徴事項や変形例を以下に列挙する。
【0077】
(1) コンデンサ素子、引出し端子4、外装ケース、封口部材、電解質などは実施の形態で述べたものに限定されない。これらの素材は、アルミ電解コンデンサまたは類似のコンデンサで採用されている他の素材でもよい。たとえば、引出し端子4はタブ端子でもよく、封口部材は外部端子を取り付けたフェノール積層板でもよい。コンデンサ素子に電解液を含浸させた後、コンデンサ素子から導出した引出し端子4を封口部材の外部端子に接続してもよく、コンデンサ素子および封口部材を外装ケースに挿入して、封口部材で封止した構造としてもよい。コンデンサ素子は、たとえば平坦な複数の陽極箔、陰極箔6およびセパレータが積層された積層素子でもよい。カーボン層14の素材は実施の形態で述べたものに限定されない。カーボン層14を形成する素材は、カーボンを含む任意の導電性部材でもよい。また、基材箔12に対するカーボン層14の密着または係合状態は、実施の形態で述べたものに限定されない。
【0078】
(2) 実施の形態および実施例では、引出し端子4が陰極箔6の上に配置され、ステッチ針50が上から引出し端子4および陰極箔6を刺し、成形型62が下から引出し端子4および陰極箔6を押圧している。引出し端子4、陰極箔6、ステッチ針50および成形型62がたとえば実施の形態で述べたこれらの配置に対して上下逆になるように、または任意の角度ほど回転させて配置されてもよい。
【0079】
(3) 実施の形態および実施例では、陰極箔6と引出し端子4の両方を第1の型42と第2の型44に挟んで保持した状態で、ステッチ針50を引出し端子4および陰極箔6に挿通し、端子片26および箔片20を押圧して、接続部10を形成したが、これに限らない。たとえば、陰極箔6と引出し端子4の両方を第1の型42と第2の型44に挟んで保持した状態で、ステッチ針50を引出し端子4および陰極箔6に挿通した後、第1の型42と第2の型44による保持を解除し、陰極箔6と引出し端子4を次の工程に送り、箔片20および端子片26が形成された面側と、引出し端子4側から挟むように平坦な押し当て面を備える成形型で押圧して接続部10を形成してもよい。
【0080】
(4) 実施の形態および実施例では、ステッチ針50が鋭角且つ四角錐形の先端部54を有している。しかしながら、先端部54は、円錐形または他の角錐形でもよい。先端部54は、正角錐形または非-正角錐形でもよい。正角錐は、底面が正多角形で、頂点からの垂線が底面の中心を通る角錐として定義される。非-正角錐は、正角錐以外の角錐として定義される。また、先端部54は、底面に平行な断面において、不規則な断面形状を有していてもよい。不規則な形状を有する先端部54の挿通により、一層不規則な箔片20が形成されてもよい。
【0081】
(5) 実施の形態および実施例では、直立部58および直立部60が形成されたが、いずれか一方が形成されてもよい。
【0082】
(6) 実施の形態および実施例では、挿通位置56が軸部52と重なる位置、または軸部52と先端部54の境界位置に設定された。しかしながら、挿通位置56は先端部54と重なる位置に設定されてもよい。ステッチ針50が挿通位置56まで引出し端子4および陰極箔6に挿通され、挿通位置56の断面の大きさに応じた貫通孔18および端子孔30が形成されてもよい。先端部54と重なる位置に挿通位置56を設定する場合、先端部54の底面における辺の長さに代えて、挿通位置56の断面における辺の長さが「辺の長さL」として設定されてもよく、直立部58、60および不規則な箔片20を形成するように、挿通位置56の断面における辺の長さLが調整されてもよい。
【0083】
以上説明したように、本開示の最も好ましい実施の形態などについて説明したが、本開示は、上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、または明細書に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能であることは勿論であり、斯かる変形や変更が、本開示の範囲に含まれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本開示の技術は、カーボン層を含む陰極箔と引出し端子の接続およびこれらを含むコンデンサに用いることができ、有用である。
【符号の説明】
【0085】
2 コンデンサ
4 引出し端子
6 陰極箔
10 接続部
12 基材箔
14 カーボン層
16 箔本体
18 貫通孔
20 箔片
22 縁部
24 基材露出端面
26 端子片
28 平坦部
30 端子孔
42 第1の型
44 第2の型
46、48 透孔
50 ステッチ針
52 軸部
54 先端部
56 挿通位置
58、60 直立部
62 成形型
64 折返し位置