(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】空気調和システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/63 20180101AFI20241112BHJP
F24F 11/56 20180101ALN20241112BHJP
【FI】
F24F11/63
F24F11/56
(21)【出願番号】P 2023079104
(22)【出願日】2023-05-12
(62)【分割の表示】P 2019016016の分割
【原出願日】2019-01-31
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河合 智文
(72)【発明者】
【氏名】島村 豊
【審査官】塩田 匠
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-240067(JP,A)
【文献】特開2007-024420(JP,A)
【文献】特開2015-105763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内機を有する空気調和機と、前記室内機を操作可能な複数の操作手段とを具備する空気調和システムであって、
前記複数の操作手段は、ユーザの操作を受け付ける第1操作手段と、AIによる操作を行う第2操作手段とを含み、
前記室内機は、前記第1操作手段
から送信された第1操作信号による第1操作と前記第2操作手段
から送信された第2操作信号による第2操作との双方が所定時間内に行われた場合は、前記第2操作よりも優先して前記第1操作を受け付ける
とともに、
前記第2操作信号に対する拒否応答を前記第2操作手段へ送信し、前記所定時間が経過した後に、前記第2操作手段が送信する前記第2操作信号を受け付ける、
空気調和システム。
【請求項2】
前記第1操作手段は、少なくとも操作可能範囲が異なる2つの副操作手段を含み、
前記室内機は、前記異なる2つの副操作手段の双方から操作が行われた場合は、操作可能範囲が狭い方の副操作手段による操作を優先して受け付ける、
請求項1に記載の空気調和システム。
【請求項3】
前記第1操作手段は、前記室内機の本体に設けられることにより、または、前記室内機と赤外線通信を行うことにより、前記室内機が設置された部屋での操作が可能な第1副操作手段と、前記室内機と電波通信を行うことにより前記室内機が設置された部屋とは別の部屋からの操作が可能な第2副操作手段と、屋外からの操作が可能な第3副操作手段とを含み、
前記室内機は、
前記第1副操作手段による第3操作と前記第2副操作手段による第4操作との双方が前記所定時間内に行われた場合は、前記第4操作よりも優先して前記第3操作を受け付け、
前記第3操作と前記第3副操作手段による第5操作との双方が前記所定時間内に行われた場合は、前記第5操作よりも優先して前記第3操作を受け付け、
前記第4操作と前記第5操作との双方が前記所定時間内に行われた場合は、前記第5操作よりも優先して前記第4操作を受け付ける、
請求項
2に記載の空気調和システム。
【請求項4】
前記室内機は、前記第3操作を受け付けてから前記所定時間が経過するまでは、前記第4操作及び前記第5操作を受け付けない、
請求項3に記載の空気調和システム。
【請求項5】
前記室内機は、前記第4操作を受け付けてから前記所定時間が経過するまでは、前記第5操作を受け付けない、
請求項3に記載の空気調和システム。
【請求項6】
前記異なる2つの副操作手段の双方から操作が行われた場合は、操作可能範囲が広い方の副操作手段による操作を受け付けず、その旨を前記操作可能範囲が広い方の副操作手段に送信する、
請求項2から5のいずれか一項に記載の空気調和システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気調和システムに関する。
【背景技術】
【0002】
AI(Artificial Intelligence)を利用する空気調和システムが知られている。空気調和システムにAIを利用することにより、ユーザの好みや行動パターン等に応じた快適な空気調和空間を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、1つの空気調和システムが複数の操作手段を有する場合がある。空気調和システムにおける複数の操作手段として、例えば、室内機本体に設けられた操作ボタン、赤外線(IR)リモコン、他の部屋からも操作可能な電波(RF)リモコン、室内機に接続されたアダプタを介して室内機と通信する通信端末、及び、AI等が挙げられる。このように、1つの空気調和システムが複数の操作手段を有する場合に、2以上の操作手段によって操作が同時になされると、ユーザの意思に反する操作となってしまうことがある。例えば、空気調和機の温度設定に関し、ユーザによる赤外線リモコンによる手動操作によって設定温度を上げるように指示された直後に、AIによる自動操作によって設定温度を下げるように指示されると、ユーザの意思に反して設定温度が下げられてしまうため、ユーザが不快に感じることがある。
【0005】
本開示は、複数の操作手段がある場合でも、空気調和機の操作に関しユーザが不快に感じることを防止できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の態様では、空気調和システムは、室内機を有する空気調和機と、前記室内機を操作可能な複数の操作手段とを有する。前記複数の操作手段は、ユーザの操作を受け付ける第1操作手段と、AIによる操作を行う第2操作手段とを含む。前記室内機は、前記第1操作手段による第1操作と前記第2操作手段による第2操作との双方が所定時間内に行われた場合は、前記第2操作よりも優先して前記第1操作を受け付ける。
【発明の効果】
【0007】
開示の態様によれば、複数の操作手段がある場合でも、空気調和機の操作に関しユーザが不快に感じることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例1の空気調和システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施例1のアダプタの構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施例1のサーバ装置の構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施例1の運転情報データの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施例1の体感温度設定予測モデルの生成または更新に使用される運転情報データの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施例1の優先順位テーブルの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施例1の空気調和システムの処理例の説明に供する図である。
【
図8】
図8は、実施例1の空気調和システムの処理例の説明に供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示の技術を図面に基づいて説明する。以下では、同一の構成には同一の符号を付す。
【0010】
[実施例1]
<空気調和システムの構成>
図1は、実施例1の空気調和システムの構成例を示す図である。
図1において、空気調和システム1は、室内機2と、アダプタ3と、ルータ4A,4Bと、サーバ装置5と、中継装置6と、通信端末7と、通信網8とを有する。アダプタ3と中継装置6とは、ルータ4A及び通信網8を介して相互に通信可能である。また、通信端末7と中継装置6とは、ルータ4B及び通信網8を介して相互に通信可能である。
【0011】
室内機2は、室内に配置され、室内の空気を加熱または冷却する空気調和機の一部である。空気調和機は、主に、室内機2と、屋外に配置される室外機(図示省略)とを有する。空気調和機のユーザは、リモコン9の操作により室内機2を遠隔操作することが可能である。リモコン9の一例として、赤外線リモコンまたは電波リモコンが挙げられる。室内機2は、本体2Aと、本体2Aを制御する制御部2Bとを有する。制御部2Bは、例えばCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、MCU(Micro Controller Unit)等のプロセッサにより実現される。本体2Aは、室内ファン及び室内熱交換器等を備え、室内熱交換器で冷媒と熱交換が行われた室内空気が本体2Aから吹き出されることで、部屋の暖房、冷房、除湿が行われる。また、本体2Aには、室内機2を直接操作可能な操作ボタンが設けられる。また、空気調和機の他の一部である室外機には、室外ファン、室外熱交換器、圧縮機、膨張弁等が備えられている。
【0012】
アダプタ3は、室内機2とルータ4Aとの間を無線通信で接続する通信機能と、室内機2をAI(Artificial Intelligence)制御する制御機能とを有する。アダプタ3は、室内機2毎に設置される。ルータ4Aは、例えばWLAN(Wireless Local Area Network)等を使用して、アダプタ3と無線通信で接続し、アダプタ3と通信網8とを接続する。通信網8の一例として、インターネット等が挙げられる。
【0013】
通信端末7の一例として、ユーザが利用するスマートフォン、タブレット端末等が挙げられる。ルータ4Bは、例えばWLAN等を使用して、通信端末7と無線通信で接続し、通信端末7と通信網8とを接続する。ユーザは、通信端末7を操作することにより、室内機2を操作することが可能である。
【0014】
サーバ装置5は、室内機2を制御するAIの学習モデルを生成する機能、及び、空気調和機の運転情報データを記憶するデータベース等を有する。サーバ装置5は、例えば、データセンタに設置されている。中継装置6は、通信網8に接続され、サーバ装置5と通信する機能を有する。中継装置6は、アダプタ3に適用される学習モデルの生成または更新に使用される運転情報データをアダプタ3から受信し、受信した運転情報データをサーバ装置5へ送信する。また、中継装置6は、サーバ装置5で生成または更新された学習モデルをサーバ装置5から受信し、受信した学習モデルをアダプタ3へ送信する。
【0015】
中継装置6は、第1の中継部6Aと、第2の中継部6Bと、第3の中継部6Cとを有する。第1の中継部6Aは、アダプタ3とサーバ装置5との間で、AI制御に関わる各種データを送信する。例えば、第1の中継部6Aは、アダプタ3から受信した運転情報データをサーバ装置5へ送信するとともに、運転情報データを用いてサーバ装置5が生成または更新した学習モデルをアダプタ3へ送信する。第2の中継部6Bは、ユーザが通信端末7を使用して設定した室内機2の運転条件(冷房/暖房といった運転モードや設定温度等)を取得し、取得した運転条件をアダプタ3経由で室内機2へ送信する。第3の中継部6Cは、通信網8を通して天気予報等の外部データを取得し、取得した外部データをサーバ装置5やアダプタ3へ送信する。
【0016】
<アダプタの構成>
図2は、実施例1のアダプタの構成例を示す図である。
図2において、アダプタ3は、第1の通信部11と、第2の通信部12と、記憶部13と、プロセッサ14とを有する。
【0017】
第1の通信部11は室内機2の制御部2Bと通信し、例えばUART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)等の通信IF(Interface)により実現される。第2の通信部12はルータ4Aと通信し、例えばWLAN用の通信IFにより実現される。記憶部13は、例えばHDD(Hard Disk Drive)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により実現され、データやプログラム等の各種情報を記憶する。プロセッサ14は、例えばCPU、MPU、MCU等により実現される。
【0018】
記憶部13は、運転情報メモリ13Aと、モデルメモリ13Bと、外部メモリ13Cとを有する。運転情報メモリ13Aは、室内機2から取得された運転情報データを一時記憶する。モデルメモリ13Bは、サーバ装置5から取得した学習モデルを記憶する。外部メモリ13Cは、外部データを記憶する。
【0019】
プロセッサ14は、プロセッサ14における機能ブロックとして、取得部14Aと、送信部14Bと、受信部14Cと、設定部14Dと、予測部14Eとを有する。
【0020】
取得部14Aは、設定温度や室内温度等の運転情報データを、所定の周期で(例えば5分毎に)室内機2から取得する。取得部14Aは、取得した運転情報データを運転情報メモリ13Aに記憶させる。なお、後に
図4を用いて説明するように、運転情報データは、運転情報データの取得年月日であるタイムスタンプを含んでいる。
【0021】
送信部14Bは、運転情報メモリ13Aに記憶された運転情報データを運転情報メモリ13Aから取得し、取得した運転情報データをサーバ装置5へ送信する。
【0022】
受信部14Cは、サーバ装置5から学習モデルを受信し、受信した学習モデルをモデルメモリ13Bに記憶させる。
【0023】
設定部14Dは、モデルメモリ13Bに記憶された学習モデルをモデルメモリ13Bから取得し、取得した学習モデルを予測部14Eに設定する。
【0024】
予測部14Eは、設定部14Dにより設定された学習モデルを用いて室内機2の制御部2Bを制御する。なお、予測部14Eは、学習モデルを用いて室内機2の本体2Aを直接制御しても良い。また、予測部14Eは、学習モデルに基づく制御態様を制御部2Bに送信することにより、制御部2Bを介して本体2Aを間接的に制御しても良い。
【0025】
<サーバ装置の構成>
図3は、実施例1のサーバ装置の構成例を示す図である。
図3において、サーバ装置5は、通信部31と、記憶部32と、プロセッサ33とを有する。通信部31は中継装置6と通信し、例えば通信IFにより実現される。記憶部32は、例えばHDD、ROM、RAM等により実現され、データやプログラム等の各種情報を記憶する。プロセッサ33は、例えばCPU、MPU、MCU等により実現される。
【0026】
記憶部32は、データメモリ32Aと、モデルメモリ32Bとを有する。データメモリ32Aは、アダプタ3から受信された運転情報データを記憶する。モデルメモリ32Bは、サーバ装置5で生成または更新された学習モデルを記憶する。
【0027】
プロセッサ33は、プロセッサ33における機能ブロックとして、受信部33Aと、学習部33Bと、送信部33Cとを有する。
【0028】
受信部33Aは、複数の室内機2のそれぞれに接続された各アダプタ3から運転情報データを受信し、受信した運転情報データをデータメモリ32Aに記憶させる。
【0029】
学習部33Bは、データメモリ32Aに記憶された運転情報データを用いて機械学習を行い、学習結果に基づいて学習モデルを生成または更新する。学習部33Bは、生成または更新した学習モデルをモデルメモリ32Bに記憶させる。学習モデルの一例として、各家庭の空気調和機の運転状況に基づいてユーザの体感温度を予測し、予測した体感温度に応じて空気調和機を制御する「体感温度設定予測モデル」が挙げられる。
【0030】
送信部33Cは、モデルメモリ32Bに記憶されている学習モデルをモデルメモリ32Bから取得し、取得した学習モデルを中継装置6経由でアダプタ3へ送信する。
【0031】
<運転情報データの一例>
図4は、実施例1の運転情報データの一例を示す図である。運転情報データには、例えば、運転状態、運転モード、設定温度、室内温度(室温)、室内湿度、風量、風向、人感センサ、輻射センサ、室内熱交温度、室外温度(外気温)、圧縮機回転数、室外風量、運転電流、室外熱交温度、吐出温度、圧縮機温度、膨張弁開度、放熱器温度、起動失敗履歴、異常停止履歴、応急運転履歴、タイムスタンプ、空気調和機ID、設置場所、施設種類等がある。
【0032】
運転状態は、室内機2の運転のON-OFF状態を示す。運転モードは、室内機2の冷房や暖房等の動作モードを示す。設定温度は、ユーザによって設定された温度であり、室内機2が使用される室内の目標温度を示す。室内温度は、室内機2が使用される室内の実際の温度を示す。室内湿度は、室内機2が使用される室内の実際の湿度を示す。風量は、室内機2から吹き出される室内空気の風量を示す。風向は、室内機2から吹き出される室内空気の風向を示す。人感センサは、室内の人の有無や活動量のセンサによる検出結果を示す。輻射センサは、室内の床や壁の温度の検出結果を示す。室内熱交温度は、室内機2の本体2Aの一部をなす室内熱交換器の温度を示す。室外温度は、室外の実際の温度を示す。圧縮機回転数は、室内機2と冷媒配管で接続される室外機に備えられた圧縮機の運転回転数を示す。室外風量は、室外機に備えられる室外ファンによって生成される風量を示す。運転電流は、例えば、室内機2及び室外機等の空気調和機全体の運転電流を示す。室外熱交温度は、室外機に備えられる室外熱交換機の温度を示す。吐出温度は、圧縮機から吐出される冷媒の温度を示す。圧縮機温度は、圧縮機底部の温度を示す。膨張弁開度は、室外機に備えられる電子膨張弁の開度を示す。放熱器温度は、圧縮機を駆動制御するパワー半導体の温度を示す。起動失敗履歴は、圧縮機の起動の失敗の履歴を示す。異常停止履歴は、空気調和機の異常停止の履歴を示す。応急運転履歴は、応急運転の実施履歴を示す。タイムスタンプは、各々の運転情報データの取得日時を年月日時分秒で示す。空気調和機IDは、空気調和機を識別するために室内機2に付与されるIDを示す。設置場所は、空気調和機が設置された場所の住所を示す。施設種類は、空気調和機が設置された施設の種類(店舗、飲食店、工場等)を示す。
【0033】
図4に示す各運転情報データは、家庭用または業務用といった空気調和機の用途に応じて使い分けられる。家庭用の空気調和機に使用される運転情報データとしては、例えば、運転状態、運転モード、設定温度、室内温度、室内湿度、風量、風向、人感センサ、輻射センサ、タイムスタンプ、空気調和機ID、設置場所等がある。家庭用の空気調和機では、快適性や省エネ性を追求して、AIを用いて操作や提案が行われるため、例えば、設定温度、運転モード、室内や周囲環境等が家庭用に必要なデータとなる。
【0034】
一方で、業務用の空気調和機に使用される運転情報データとしては、例えば、運転状態、運転モード、設定温度、室内温度、室内湿度、風量、風向、人感センサ、輻射センサ、室内熱交温度、室外温度、圧縮機回転数、室外風量、運転電流、室外熱交温度、吐出温度、圧縮機温度、膨張弁開度、放熱器温度、起動失敗履歴、異常停止履歴、応急運転履歴、タイムスタンプ、空気調和機ID、設置場所、施設種類等がある。業務用の空気調和機では、AIが各機器の故障やメンテナンスの必要性を予測する。例えば、業務用の空気調和機では、空気調和機内の各部品の運転状況や履歴が蓄積され、蓄積された運転状況や履歴に基づいて、AIが各部品の故障時期を予測する。なお、空気調和機に備えられる圧縮機やファンモータについては、空気調和機の停止中運転情報データが発生しないため、例えば、圧縮機回転数、室外風量、運転電流及び室外熱交温度のデータは空気調和機の停止中には取得しなくても良い。
【0035】
学習モデルが例えば体感温度設定予測モデルの場合、体感温度設定予測モデルの生成または更新には、設定温度、室内温度、室内湿度、室外温度等の時系列の運転情報データが使用される。
図5は、実施例1の体感温度設定予測モデルの生成または更新に使用される運転情報データの一例を示す図である。体感温度設定予測モデルに使用される運転情報データは、
図5に示すように、季節に応じて異なる。例えば、冬季の体感温度設定予測モデルでは、設定温度、室内温度、室内湿度及び室外温度等が使用される。一方で、夏季の体感温度設定予測モデルでは、冬季に使用される運転情報データに加えて、例えば、風量と人感センサの検出データ(人の有無や活動量)が使用される。
【0036】
上記のように、室内機2は、AIによる操作(以下では「AI操作」と呼ぶことがある)が可能である。また、室内機2の本体2Aには、室内機2を直接操作可能な操作ボタン(以下では「本体ボタン」と呼ぶことがある)が設けられる。また、室内機2は、リモコン9による操作が可能である。リモコン9は、例えば赤外線リモコンまたは電波リモコンである。また、室内機2は、通信端末7による操作が可能である。
【0037】
ここで、本体ボタン、赤外線リモコン、電波リモコン、及び、通信端末7は、ユーザの手による操作が可能なため、ユーザの操作を受け付ける操作手段(以下では「第1操作手段」と呼ぶことがある)である。一方で、アダプタ3は、AIによって室内機2を自動的に操作することが可能なため、アダプタ3は、AI操作を行う操作手段(以下では「第2操作手段」と呼ぶことがある)である。つまり、空気調和システム1は、室内機2を操作可能な複数の操作手段(第1操作手段及び第2操作手段)を有する。
【0038】
本体ボタンは、室内機2の本体2Aに設けられることにより、室内機2が設置された部屋での操作が可能な操作手段である。また、赤外線リモコンは、室内機2と赤外線通信を行うことにより、室内機2が設置された部屋での操作が可能な操作手段である。つまり、本体ボタン及び赤外線リモコンは、室内機2が設置された部屋での操作が可能な操作手段(以下では「第1副操作手段」と呼ぶことがある)である。
【0039】
電波リモコンは、電波通信により室内機2を操作するものであるため、室内機2が設置された部屋とは別の部屋からの操作も可能である。よって、電波リモコンは、室内機2と電波通信を行うことにより室内機2が設置された部屋とは別の部屋からの操作が可能な操作手段(以下では「第2副操作手段」と呼ぶことがある)である。
【0040】
通信端末7は、ユーザの外出先からの室内機2の操作を可能にする。よって、通信端末7は、屋外からの操作が可能な操作手段(以下では「第3副操作手段」と呼ぶことがある)である。
【0041】
このように、第1操作手段には、第1副操作手段、第2副操作手段、及び、第3副操作手段が含まれる。
【0042】
<空気調和システムの処理>
室内機2の制御部2Bには、
図6に示す優先順位テーブルPTが予め設定されている。
図6は、実施例1の優先順位テーブルの一例を示す図である。優先順位テーブルPTには、各操作手段と、各操作手段の優先順位と、各操作手段の操作主体と、各操作手段の操作可能範囲とが、互いに対応付けられて予め設定されている。優先順位テーブルPTにおける「操作可能範囲」のうち「設置部屋」は、対応する操作手段(本体ボタン及び赤外線リモコン)が、室内機2が設置された部屋での操作が可能な操作手段であることを示す。また、「別部屋」は、対応する操作手段(電波リモコン)が、同一の建物内で、室内機2が設置された部屋とは別の部屋からの操作が可能な操作手段であることを示す。また、「屋外」は、対応する操作手段(通信端末7)が、屋外からの操作が可能な操作手段であることを示す。
【0043】
優先順位テーブルPTに設定されているように、本体ボタン及び赤外線リモコンの優先順位(1位)は、電波リモコンの優先順位(2位)よりも高く、電波リモコンの優先順位(2位)は、通信端末7の優先順位(3位)よりも高く、通信端末7の優先順位(3位)は、アダプタ3の優先順位(4位)よりも高い。
【0044】
制御部2Bは、複数の操作手段による操作が競合したときに、優先順位テーブルPTに設定された優先順位に従って、各操作手段からの操作を受け付ける。以下、空気調和システム1の処理の一例として、処理例1及び処理例2について説明する。
図7及び
図8は、実施例1の空気調和システムの処理例の説明に供する図である。
【0045】
<処理例1(
図7)>
図7において、ステップS101では、ユーザが第1操作手段(本体ボタン、赤外線リモコン、電波リモコン、または、通信端末7)を使用して室内機2に対する操作(ユーザ操作)を行うと、第1操作手段は、操作信号を室内機2へ送信する。室内機2の制御部2Bは、第1操作手段から送信された操作信号を受信し、操作信号による操作を受け付ける。また、制御部2Bは、操作信号を受信した時点を起点として、所定の長さの操作禁止期間P1を設ける。操作禁止期間P1の長さは、例えば、10秒間である。
【0046】
ステップS101で操作を受け付けた制御部2Bは、ステップS103において、受付応答を、操作信号の送信元の第1操作手段へ送信する。これにより、ステップS101で操作信号を送信した第1操作手段は、ステップS101で送信した操作信号による操作が室内機2に受け付けられたことを認識し、ユーザによる次の操作を待つ。
【0047】
ここで、操作禁止期間P1の間に、ステップS105において、第2操作手段(アダプタ3)が、AI操作として、AIにより生成された操作信号を室内機2へ送信する。室内機2の制御部2Bは、第2操作手段から送信された操作信号を受信する。しかし、制御部2BがステップS105で第2操作手段から操作信号を受信した時点は操作禁止期間P1に含まれる。また、優先順位テーブルPTより、第2操作手段(アダプタ3)の優先順位は、第1操作手段(本体ボタン、赤外線リモコン、電波リモコン、及び、通信端末7)の優先順位よりも低い。このため、制御部2Bは、第2操作手段からの操作を受け付けない(拒否する)。
【0048】
ステップS105で操作を拒否した制御部2Bは、ステップS107において、拒否応答を、操作信号の送信元の第2操作手段へ送信する。これにより、ステップS105で操作信号を送信した第2操作手段は、ステップS105で送信した操作信号による操作が室内機2に拒否されたことを認識することができるため、例えば、ステップS105で送信した操作信号と同一の操作信号を再送すれば良い。
【0049】
一方で、操作禁止期間P1の間に、ステップS109において、ユーザが、ステップS101で使用した第1操作手段と同一の第1操作手段を用いて室内機2に対する操作(ユーザ操作)を行うと、第1操作手段は、操作信号を室内機2へ送信する。室内機2の制御部2Bは、第1操作手段から送信された操作信号を受信する。ここで、制御部2BがステップS109で第1操作手段から操作信号を受信した時点は操作禁止期間P1に含まれる。しかし、ステップS101での操作信号の送信元と、ステップS109での操作信号の送信元とは、同一の第1操作手段であるため、優先順位テーブルPTにおける優先順位は同一である。このため、制御部2Bは、ステップS109で受信した操作信号による操作を受け付ける。
【0050】
ステップS109で操作を受け付けた制御部2Bは、ステップS111において、受付応答を、操作信号の送信元の第1操作手段へ送信する。これにより、ステップS109で操作信号を送信した第1操作手段は、ステップS109で送信した操作信号による操作が室内機2に受け付けられたことを認識し、ユーザによる次の操作を待つ。
【0051】
また、操作禁止期間P1が終了してから、ステップS113において、第2操作手段(アダプタ3)が、AI操作として、AIにより生成された操作信号を室内機2へ送信する。室内機2の制御部2Bは、第2操作手段から送信された操作信号を受信する。制御部2BがステップS113で第2操作手段から操作信号を受信した時点では操作禁止期間P1は終了しているため、制御部2Bは、ステップS113で受信した操作信号による操作を受け付ける。
【0052】
ステップS113で操作を受け付けた制御部2Bは、ステップS115において、受付応答を、操作信号の送信元の第2操作手段へ送信する。これにより、ステップS113で操作信号を送信した第2操作手段は、ステップS113で送信した操作信号による操作が室内機2に受け付けられたことを認識し、AIによる次の操作を待つ。
【0053】
以上のように、処理例1では、室内機2は、第1操作手段による操作(以下では「第1操作」と呼ぶことがある)と第2操作手段による操作(以下では「第2操作」と呼ぶことがある)との双方が所定時間内(操作禁止期間P1内)に行われた場合は、第2操作よりも優先して第1操作を受け付ける。
【0054】
また、処理例1では、室内機2は、第1操作を受け付けてから所定時間(操作禁止期間P1)が経過するまでは、第2操作を受け付けない。
【0055】
こうすることで、ユーザの操作を受け付ける操作手段(第1操作手段)と、AI操作を行う操作手段(第2操作手段)という複数の操作手段がある場合でも、第1操作手段による操作が優先して受け付けられるため、空気調和機の操作に関しユーザが不快に感じることを防止できる。
【0056】
<処理例2(
図8)>
図8において、ステップS201では、ユーザが第1副操作手段(本体ボタンまたは赤外線リモコン)を使用して室内機2に対する操作を行うと、第1副操作手段は、操作信号を室内機2へ送信する。室内機2の制御部2Bは、第1副操作手段から送信された操作信号を受信し、操作信号による操作を受け付ける。また、制御部2Bは、操作信号を受信した時点を起点として、所定の長さ(例えば、10秒間)の操作禁止期間P2を設ける。
【0057】
ステップS201で操作を受け付けた制御部2Bは、ステップS203において、受付応答を、操作信号の送信元の第1副操作手段へ送信する。これにより、ステップS201で操作信号を送信した第1副操作手段は、ステップS201で送信した操作信号による操作が室内機2に受け付けられたことを認識し、ユーザによる次の操作を待つ。
【0058】
ここで、操作禁止期間P2の間に、ステップS205において、別のユーザが第2副操作手段(電波リモコン)を使用して室内機2に対する操作を行うと、第2副操作手段は、操作信号を室内機2へ送信する。室内機2の制御部2Bは、第2副操作手段から送信された操作信号を受信する。しかし、制御部2BがステップS205で第2副操作手段から操作信号を受信した時点は操作禁止期間P2に含まれる。また、優先順位テーブルPTより、第2副操作手段(電波リモコン)の優先順位は、第1副操作手段(本体ボタン及び赤外線リモコン)の優先順位よりも低い。このため、制御部2Bは、第2副操作手段からの操作を受け付けない(拒否する)。
【0059】
ステップS205で操作を拒否した制御部2Bは、ステップS207において、拒否応答を、操作信号の送信元の第2副操作手段へ送信する。これにより、ステップS205で操作信号を送信した第2副操作手段は、ステップS205で送信した操作信号による操作が室内機2に拒否されたことを認識することができるため、例えば、第2副操作手段に対するユーザの再操作を音声や画面表示等でユーザに促しても良い。
【0060】
また、操作禁止期間P2の間に、ステップS209において、別のユーザが第3副操作手段(通信端末7)を使用して室内機2に対する操作を行うと、第3副操作手段は、操作信号を室内機2へ送信する。室内機2の制御部2Bは、第3副操作手段から送信された操作信号を受信する。しかし、制御部2BがステップS209で第3副操作手段から操作信号を受信した時点は操作禁止期間P2に含まれる。また、優先順位テーブルPTより、第3副操作手段(通信端末7)の優先順位は、第1副操作手段(本体ボタン及び赤外線リモコン)の優先順位よりも低い。このため、制御部2Bは、第3副操作手段からの操作を受け付けない(拒否する)。
【0061】
ステップS209で操作を拒否した制御部2Bは、ステップS211において、拒否応答を、操作信号の送信元の第3副操作手段へ送信する。これにより、ステップS209で操作信号を送信した第3副操作手段は、ステップS209で送信した操作信号による操作が室内機2に拒否されたことを認識することができるため、例えば、第3副操作手段に対するユーザの再操作を音声や画面表示等でユーザに促しても良い。
【0062】
また、操作禁止期間P2が終了してから、ステップS213において、別のユーザが第2副操作手段(電波リモコン)を使用して室内機2に対する操作を行うと、第2副操作手段は、操作信号を室内機2へ送信する。室内機2の制御部2Bは、第2副操作手段から送信された操作信号を受信し、操作信号による操作を受け付ける。また、制御部2Bは、操作を受け付けた時点を起点として、所定の長さ(例えば、10秒間)の操作禁止期間P3を設ける。
【0063】
ステップS213で操作を受け付けた制御部2Bは、ステップS215において、受付応答を、操作信号の送信元の第2副操作手段へ送信する。これにより、ステップS213で操作信号を送信した第2副操作手段は、ステップS213で送信した操作信号による操作が室内機2に受け付けられたことを認識し、ユーザによる次の操作を待つ。
【0064】
ここで、操作禁止期間P3の間に、ステップS217において、別のユーザが第3副操作手段(通信端末7)を使用して室内機2に対する操作を行うと、第3副操作手段は、操作信号を室内機2へ送信する。室内機2の制御部2Bは、第3副操作手段から送信された操作信号を受信する。しかし、制御部2BがステップS217で第3副操作手段から操作信号を受信した時点は操作禁止期間P3に含まれる。また、優先順位テーブルPTより、第3副操作手段(通信端末7)の優先順位は、第2副操作手段(電波リモコン)の優先順位よりも低い。このため、制御部2Bは、第3副操作手段からの操作を受け付けない(拒否する)。
【0065】
ステップS217で操作を拒否した制御部2Bは、ステップS219において、拒否応答を、操作信号の送信元の第3副操作手段へ送信する。これにより、ステップS217で操作信号を送信した第3副操作手段は、ステップS217で送信した操作信号による操作が室内機2に拒否されたことを認識することができるため、例えば、第3副操作手段に対するユーザの再操作を音声や画面表示等でユーザに促しても良い。
【0066】
また、操作禁止期間P3が終了してから、ステップS221において、別のユーザが第3副操作手段(通信端末7)を使用して室内機2に対する操作を行うと、第3副操作手段は、操作信号を室内機2へ送信する。室内機2の制御部2Bは、第3副操作手段から送信された操作信号を受信する。制御部2BがステップS221で第3副操作手段から操作信号を受信した時点では操作禁止期間P3は終了しているため、制御部2Bは、ステップS221で受信した操作信号による操作を受け付ける。
【0067】
ステップS221で操作を受け付けた制御部2Bは、ステップS223において、受付応答を、操作信号の送信元の第3副操作手段へ送信する。これにより、ステップS221で操作信号を送信した第3副操作手段は、ステップS221で送信した操作信号による操作が室内機2に受け付けられたことを認識し、ユーザによる次の操作を待つ。
【0068】
以上のように、処理例2では、室内機2は、第1副操作手段による操作(以下では「第3操作」と呼ぶことがある)と第2副操作手段による操作(以下では「第4操作」と呼ぶことがある)との双方が所定時間内(操作禁止期間P2内)に行われた場合は、第4操作よりも優先して第3操作を受け付ける。また、室内機2は、第3操作と第3副操作手段による操作(以下では「第5操作」と呼ぶことがある)との双方が所定時間内(操作禁止期間P2内)に行われた場合は、第5操作よりも優先して第3操作を受け付ける。また、室内機2は、第4操作と第5操作との双方が所定時間内(操作禁止期間P3内)に行われた場合は、第5操作よりも優先して第4操作を受け付ける。
【0069】
また、処理例2では、室内機2は、第3操作を受け付けてから所定時間(操作禁止期間P2)が経過するまでは、第4操作及び第5操作を受け付けない。
【0070】
また、処理例2では、室内機2は、第4操作を受け付けてから所定時間(操作禁止期間P3)が経過するまでは、第5操作を受け付けない。
【0071】
こうすることで、ユーザの操作を受け付ける操作手段(第1操作手段)の中に、室内機2が設置された部屋での操作が可能な操作手段(第1副操作手段)と、室内機2が設置された部屋とは別の部屋からの操作が可能な操作手段(第2副操作手段)と、屋外からの操作が可能な操作手段(第3副操作手段)という複数の操作手段がある場合でも、空気調和機の操作に関しユーザが不快に感じることを防止できる。
【0072】
以上、実施例1について説明した。
【0073】
[実施例2]
実施例1では、アダプタ3は、室内機2の運転情報データを中継装置6経由でサーバ装置5へ送信する場合を一例として説明したが、アダプタ3は、運転情報データを中継装置6を経由することなく、直接、サーバ装置5へ送信しても良い。
【0074】
また、図示した各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。各構成要素の分散・統合の具体的形態は図示のものに限定されず、各構成要素の全部または一部を、例えば各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。
【0075】
また、制御部2Bまたはアダプタ3での上記説明における各処理の全部または一部は、各処理に対応するプログラムを制御部2Bまたはアダプタ3が有するプロセッサに実行させることによって実現しても良い。例えば、上記説明における各処理に対応するプログラムがメモリに記憶され、プログラムがプロセッサによってメモリから読み出されて実行されても良い。また、プログラムは、任意のネットワークを介して制御部2Bまたはアダプタ3に接続されたプログラムサーバに記憶され、そのプログラムサーバから制御部2Bまたはアダプタ3にダウンロードされて実行されても良い。
【0076】
以上、実施例2について説明した。
【符号の説明】
【0077】
1 空気調和システム
2 室内機
2B 制御部
3 アダプタ
7 通信端末
9 リモコン