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  • -フレキシブル基板の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】フレキシブル基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/38 20060101AFI20241112BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
H05K3/38 C
H05K1/03 630H
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2023083624
(22)【出願日】2023-05-22
(62)【分割の表示】P 2018219415の分割
【原出願日】2018-11-22
(65)【公開番号】P2023101600
(43)【公開日】2023-07-21
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅川 吉幸
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-258398(JP,A)
【文献】特開2003-318533(JP,A)
【文献】特開2011-014642(JP,A)
【文献】特開2015-059233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/38
H05K 3/10 - 3/26
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドフィルムの表面に、前記ポリイミドフィルムと接するクロム含有金属層を含
む下地金属層を形成する工程と、
前記下地金属層に銅導体層を重畳して形成する工程と、
前記ポリイミドフィルム、前記下地金属層および前記銅導体層に対して、あらかじめ定め
られた加熱方法により熱を加え、前記クロム含有金属層を、前記ポリイミドフィルムと接
する第1金属層と、該第1金属層に重畳するように位置している第2金属層と、からなる
構成とする工程と、を包含し、
前記第1金属層におけるクロムの重量パーセントが、前記第2金属層におけるクロムの重
量パーセントよりも大きく、
前記加熱方法が、過熱水蒸気を前記ポリイミドフィルム、前記下地金属層および前記銅
導体層に吹き付ける過熱水蒸気処理である
ことを特徴とするフレキシブル基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル基板の製造方法に関する。さらに詳しくは、耐熱性に優れるフレキシブル基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネル、ノートパソコン、デジタルカメラ、携帯電話等には、耐熱性樹脂フィルム上に金属膜を被覆して得られる多種類のフレキシブル配線基板が用いられる。このフレキシブル配線基板には、耐熱性樹脂フィルムの片面若しくは両面に金属膜を成膜した金属膜付樹脂フィルムが多く用いられている。本明細書では、これらの金属膜付樹脂フィルムを「フレキシブル基板」と称することがある。
【0003】
この種のフレキシブル基板の製造方法として、従来、金属箔を接着剤により樹脂フィルムに貼り付けて製造する方法(3層基板の製造方法)、金属箔に熱硬化性樹脂溶液をコーティングしかつ乾燥させて製造する方法(キャスティング法)、金属箔に熱可塑性樹脂フィルムを貼り付け熱圧着させて製造する方法(ラミネート法)および、樹脂フィルムに真空成膜法若しくは真空成膜法と湿式めっき法により金属膜を成膜して製造する方法(メタライジング法)等が知られている。また、メタライジング法の真空成膜法には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームスパッタリング法等がある。
【0004】
ここで、真空成膜法において、一般にスパッタリング法は密着力に優れるが、基板を大気中で150℃に加熱し168時間保持した後測定するピール強度(以下耐熱ピール強度と称することがある)が低下することが知られている。
【0005】
この耐熱ピール強度の低下を抑制したフレキシブル基板に関して、特許文献1では、メタライジング法として、ポリイミド絶縁層上にクロム層をスパッタリングした後、銅をスパッタリングしてポリイミド絶縁層上へ導体層を形成する方法が開示されている。また、特許文献2では、ポリイミドフィルム上に、銅ニッケル合金をターゲットとしてスパッタリングにより形成された第一の金属薄膜と、銅をターゲットとしてスパッタリングにより形成された第二の金属薄膜の順に積層して形成されたフレキシブル回路基板用材料が開示されている。さらに特許文献3では、ポリイミドフィルム表面を改質した2層銅ポリイミド基板が開示され、特許文献4では、ポリイミド樹脂フィルムの表面を改質した金属被覆ポリイミド樹脂基板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平2-98994号公報
【文献】特許第3447070号公報
【文献】特開2007-318177号公報
【文献】国際公開第2010/098236号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および2では、耐熱ピール強度の低下を抑制するため、ポリイミドフィルムの表面にクロムまたはニッケル銅の金属層をスパッタリングにより形成している。しかし、これらの文献により得られるフレキシブル基板では、耐熱ピール強度の低下の抑制が不十分であった。また、特許文献3および4では、ポリイミドフィルムに金属層が形成される前に、ポリイミドフィルムの表面を改質することにより耐熱ピール強度の低下を抑制しているが、耐熱ピール強度の低下の抑制が十分とは言えず、加えてポリイミドフィルムの表面の改質のためのプラズマ処理等の工程にはコストがかかるという問題があった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、耐熱ピール強度の低下を抑制できるとともに、フレキシブル基板の製造コストを全体として抑制できるフレキシブル基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明のフレキシブル基板の製造方法は、ポリイミドフィルムの表面に、前記ポリイミドフィルムと接するクロム含有金属層を含む下地金属層を形成する工程と、前記下地金属層に銅導体層を重畳して形成する工程と、前記ポリイミドフィルム、前記下地金属層および前記銅導体層に対して、あらかじめ定められた加熱方法により熱を加え、前記クロム含有金属層を、前記ポリイミドフィルムと接する第1金属層と、該第1金属層に重畳するように位置している第2金属層と、からなる構成とする工程と、を包含し、前記第1金属層におけるクロムの重量パーセントが、前記第2金属層におけるクロムの重量パーセントよりも大きく、前記加熱方法が、過熱水蒸気を前記ポリイミドフィルム、前記下地金属層および前記銅導体層に吹き付ける過熱水蒸気処理であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1発明によれば、ポリイミドフィルムの表面に形成された下地金属層がクロム含有金属層を含んでおり、このクロム含有金属層のうち、ポリイミドフィルムと接している第1金属層におけるクロムの重量パーセントが、第2金属層におけるクロムの重量パーセントよりも大きいことにより、第1金属層への銅の拡散を抑制できる。耐熱ピール強度は、ポリイミドフィルムが銅により分解されることで低下するので、第1金属層への銅の拡散を抑制することで耐熱ピール強度の低下を抑制できる。また、第1金属層におけるクロムの重量パーセントを、第2金属層におけるクロムの重量パーセントよりも大きくすることは比較的容易にできるので、フレキシブル基板の製造コストを抑えながら耐熱ピール強度の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係るフレキシブル基板の断面部分拡大図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るフレキシブル基板の断面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るフレキシブル基板のTEMによる元素マッピングの測定図である。(図A)過熱水蒸気処理後のCr元素の分布状態を示す図である。(図B)過熱水蒸気処理前のCr元素の分布状態を示す図である。(図C)過熱水蒸気処理後のCu元素の分布状態を示す図である。(図D)過熱水蒸気処理前のCu元素の分布状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するためのフレキシブル基板10を例示するものであって、本発明はフレキシブル基板10を以下のものに特定しない。なお、各図面が示す部材の大きさまたは位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。
【0013】
(第1実施形態)
図2には、本発明の第1実施形態に係るフレキシブル基板10の断面図を示す。図2に示すように、本発明に係るフレキシブル基板10は、ポリイミドフィルム11と、このポリイミドフィルム11の表面に形成されている下地金属層12と、この下地金属層12に重畳して形成されている銅導体層13と、を含んで構成されている。下地金属層12は、たとえば、ポリイミドフィルム11側に設けられているクロム含有金属層14および下地銅層15とから構成されている。なお本実施形態では、ポリイミドフィルム11の片面に下地金属層12等が形成されているが、特にこれに限定されず、ポリイミドフィルム11の両面に、下地金属層12等が形成されているものも、本発明に係るフレキシブル基板10に該当する。
【0014】
図1には、図2の円で囲んだ部分の拡大図を示す。本実施形態では、下地金属層12のクロム含有金属層14は、ポリイミドフィルム11と接する第1金属層14aと、この第1金属層14aに重畳するように位置している第2金属層14bとを有する構成である。そして、本発明に係るフレキシブル基板10では、第1金属層14aにおけるクロムの重量パーセントが、第2金属層14bにおけるクロムの重量パーセントよりも大きいことを特徴としている。
【0015】
ポリイミドフィルム11の表面に形成された下地金属層12のうち、ポリイミドフィルム11と接している第1金属層14aにおけるクロムの重量パーセントが、第2金属層14bにおけるクロムの重量パーセントよりも大きいことにより、後述するように第1金属層14aへの銅の拡散を抑制できる。
【0016】
フレキシブル基板10の耐熱ピール強度の低下の原因の一つは、ポリイミドフィルム11が銅により分解されることである。すなわち、導電性の高い銅が、ポリイミドフィルム11と直接接することを抑制できれば、耐熱ピール強度は高くなる。下地金属層12の少なくとも一部が、本実施形態ではクロム含有金属層14、具体的にはニッケルクロム合金層であることで、銅がポリイミドフィルム11と接触することを抑制できる。しかし、クロム含有金属層14が形成されているだけでは、フレキシブル基板10の温度が高くなると銅が次第にクロム含有金属層14内を拡散し、ポリイミドフィルム11に接するようになる。
【0017】
そのため、クロム含有金属層14の一部に、クロムが多い層、すなわち第1金属層14aを存在させる。フレキシブル基板10が高温になると、銅はクロム含有金属層14の中の酸素と結びつくことでクロム含有金属層14内に拡散する。この酸素がクロムと結びついている層、すなわちクロムが多い第1金属層14aが存在すると、この第1金属層14aによりフレキシブル基板10の温度が高くなっても銅の拡散が抑制され、耐熱ピール強度の低下を抑制できる。
【0018】
なお、第1金属層14aにおけるクロムの重量パーセントを、第2金属層14bにおけるクロムの重量パーセントよりも大きくする方法は後述するが、この方法は比較的容易に実施できるので、フレキシブル基板10の製造コストを抑えながら耐熱ピール強度の低下を抑制できる。
【0019】
また、本発明に係るフレキシブル基板10では、下地金属層12が、クロム含有金属層14、すなわちニッケルクロム合金層を含んでおり、このニッケルクロム合金層が、第1金属層14aおよび第2金属層14bから構成されていることが好ましい。ニッケルクロム合金は容易に入手できるので、より安価に耐熱ピール強度の低下を抑制できる。
【0020】
(ポリイミドフィルム11)
本実施形態に係るフレキシブル基板10に用いられているポリイミドフィルム11は、フィルム状の絶縁体である。たとえば、東レ・デュポン製カプトン(登録商標)100ENフィルム、または宇部興産製ユーピレックス(登録商標)25SGAなどが該当する。
【0021】
(下地金属層12)
本実施形態に係るフレキシブル基板10を構成する下地金属層12は、ポリイミドフィルム11の表面に直接形成されている。下地金属層12は、クロム含有金属層14と、下地銅層15とを含んで形成されるのが好ましい。クロム含有金属層14は、本実施形態ではニッケルクロム合金であるが、他にもクロム、クロム酸化物の中の少なくとも1種から選ばれるものを用いることができる。これらの下地金属層12は、乾式メッキであるスパッタリングにより形成されるのが好ましい。なお下地金属層12の形成は、真空蒸着、イオンプレーティングであっても問題ない。
【0022】
クロム含有金属層14は、ポリイミドフィルム11の構成材料である合成樹脂と比較的密着性が良好である。また下地銅層15は導電性が高い。下地金属層12がこのように2層で構成されていることにより、下地金属層12とポリイミドフィルム11との密着性が向上するとともに導電性が高まり、下地金属層12に重畳して設けられる銅導体層13の湿式メッキが容易に行われる。
【0023】
クロム含有金属層14の厚さは50オングストローム以上500オングストローム以下であることが好ましく、下地銅層15は、500オングストローム以上5000オングストローム以下であることが好ましい。
【0024】
クロム含有金属層14の厚さが50オングストローム未満である場合は、その後の各処理工程時に密着性の問題が生じやすい。また500オングストロームよりも厚い場合は、配線加工時にニッケルまたはクロムの除去が困難になるとともに、クロム含有金属層14にクラックまたはそりが生じやすくなり、この点において、ポリイミドフィルム11と下地金属層12との密着性の問題が生じやすくなる。また下地銅層15の厚さが500オングストローム未満である場合、ピンホールによる欠陥の軽減効果が少なくなるとともに、その後に行われる湿式メッキの際に通電不良を引き起こす可能性がある。また、5000オングストロームを超えると、下地銅層15にクラックまたはそりが生じやすくなり、この点においてポリイミドフィルム11と下地金属層12との密着性の問題を生じやすくなる。
【0025】
クロム含有金属層14におけるクロムの重量パーセントは12パーセント以上50パーセント以下であることが好ましい。このような構成であることにより、第1金属層14aへの銅の拡散抑制の確実性を上げることができる。
【0026】
クロムの重量パーセントが12パーセントよりも小さい場合、第1金属層14aへクロムが十分に移動せず、銅の移動の抑制が十分に行われない。またクロムの重量パーセントが50%よりも大きい場合は、スパッタリングの費用が大きくなる。
【0027】
(銅導体層13)
本実施形態にかかるフレキシブル基板10を構成する銅導体層13は、下地金属層12の表面に直接形成されている。本実施形態に係るフレキシブル基板10が、セミアディティブ法によりフレキシブル配線基板となる場合は、銅導体層13の厚さは2μm前後である。これはフレキシブル基板10のハンドリング性が良好になるからである。また、本実施形態に係るフレキシブル基板10が、サブトラクティブ法によりフレキシブル配線基板となる場合は、銅導体層13の厚さは8μm前後である。なお本発明に係るフレキシブル基板10は、これらの厚さに限定されない。本実施形態に係るフレキシブル基板10の製造方法で実施される湿式メッキは、公知の電気メッキである。
【0028】
(過熱水蒸気処理)
本実施形態に係るフレキシブル基板10には、銅導体層13が形成された後、過熱水蒸気を吹き付ける過熱水蒸気処理が行われる。この過熱水蒸気処理が行われることにより、下地金属層12を構成するクロム含有金属層14が、クロムの重量パーセントが第2金属層14bよりも多くなる第1金属層14aを有する構成となる。また、本実施形態では過熱水蒸気処理によりクロム含有金属層14が、クロムが多くなる第1金属層14aを有する構成となったが、たとえば真空炉での加熱により、酸素が多くなる第1金属層14aを有する構成とすることも可能である。
【0029】
過熱水蒸気の温度は200℃以上450℃以下が好ましい。温度が200℃よりも低いと、クロム含有金属層14の2つの金属層のクロムの濃度が変化せず、耐熱ピール強度の低下を抑制できないからである。また、温度が450℃よりも高い過熱水蒸気は取り扱いが難しく、過熱水蒸気処理の手間がかかりすぎる。
【0030】
過熱水蒸気を吹き付ける時間は、60秒以上180秒以下が好ましい。60秒よりも時間が短いと、クロム含有金属層14の2つの金属層のクロムの濃度が変化せず、耐熱ピール強度の低下を抑制できないからである。また、180秒よりも時間が長いと、フレキシブル基板10の生産性が低下する。
【0031】
図3には、過熱水蒸気処理を行う前後のフレキシブル基板10のTEMによる元素のマッピング測定図を示す。各図の丸の中の図は、図2に記載の丸の中を表したものであり、ハッチングの線の幅により、各元素の濃淡を表している。すなわちハッチングの線の幅が狭い部分は、幅の広い部分と比較して元素が多く、すなわち元素の体積パーセントが高くなっていることを表している。図3(A)、図3(B)は、過熱水蒸気処理の前後のクロム元素の分布状態を示しており、図3(C)、図3(D)は、過熱水蒸気処理の前後の銅元素の分布状態を示している。
【0032】
図3(B)に示すように、過熱水蒸気処理の前段階では、クロム元素はクロム含有金属層14内に一様に分布して存在している。過熱水蒸気処理の後段階では、クロム含有金属層14の第1金属層14a内にクロム元素が多く存在し、第2金属層14bには第1金属層14aよりも少ないクロム元素が存在している。
【0033】
図3(D)に示すように、過熱水蒸気処理の前段階では、銅元素は下地銅層15および銅導体層13に一様に存在している。過熱水蒸気処理の後段階では、第2金属層14bに銅元素が拡散しているが、第1金属層14aに銅は拡散していない。
【0034】
過熱水蒸気処理を行うことにより、上記のように第1金属層14a内のクロムの重量パーセントが、第2金属層14bのものよりも高くなっていることにより、銅元素の拡散が抑制され、耐熱ピール強度の低下が抑制される。
【0035】
第1金属層14aの厚さ(図1の紙面において上下の距離)は、過熱水蒸気処理の温度および時間により決定される。たとえば20オングストローム以上であれば銅元素の拡散を抑制できる。
【0036】
(実施例)
以下、本発明の実施例と比較例を示して説明する。なお、本発明に係るフレキシブル基板10は、以下の実施例になんら限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
ポリイミドフィルム11として、東レ・デュポン製カプトン(登録商標)100ENフィルムが用いられた。このポリイミドフィルム11の両面に、スパッタリングにより150オングストロームのクロム含有金属層14が形成され、このクロム含有金属層14に重畳して、200nmの下地銅層15が形成された。これらのクロム含有金属層14と下地銅層15は、下地金属層12を形成している。また実施例1では、クロム含有金属のクロムの割合は、20重量パーセントであり、他の金属のほとんどはニッケルである。この下地金属層12に重畳して、電気銅めっき処理により8μmの銅導体層13が形成された。この後、300℃の過熱水蒸気が約120秒間吹き付けられたあと、基板は室温まで冷却されることで、フレキシブル基板10が得られた。
【0038】
このフレキシブル基板10での第1金属層14aの厚さを測定した。また、このフレキシブル基板10から、塩化第2鉄エッチング液により1mm幅のピール強度測定用のパターンが作成された。そしてフレキシブル基板10の初期ピール強度を測定した。加えて、フレキシブル基板10は大気中で150℃に168時間の間、加熱保持されたあと、耐熱ピール強度を測定した。耐熱ピール強度については、初期ピール強度の75%割あれば良好であると判断した。その結果を表1に示す。
【0039】
実施例1では、初期ピール強度は510N/mであり、耐熱ピール強度は500N/mであり、強度保持率は98.0%であった。すなわち、耐熱ピール強度は初期ピール強度とほとんど変わらず良好な結果が得られた。
【0040】
(実施例2)
クロム含有金属層14のクロムが40重量パーセントである以外は、実施例1と同じ条件とした。測定結果を表1に示す。
【0041】
実施例2では、初期ピール強度は510N/mであり、耐熱ピール強度は500N/mであり、強度保持率は98.0%であった。すなわち、耐熱ピール強度は初期ピール強度とほとんど変わらず良好な結果が得られた。
【0042】
(実施例3)
クロム含有金属層14のクロムが100重量パーセントである以外は、実施例1と同じ条件とした。測定結果を表1に示す。
【0043】
実施例3では、初期ピール強度は510N/mであり、耐熱ピール強度は500N/mであり、強度保持率は98.0%であった。すなわち、耐熱ピール強度は初期ピール強度とほとんど変わらず良好な結果が得られた。
【0044】
(実施例4)
クロム含有金属層14の膜厚が75オングストロームである以外は、実施例1と同じ条件とした。測定結果を表1に示す。
【0045】
実施例4では、初期ピール強度は510N/mであり、耐熱ピール強度は500N/mであり、強度保持率は98.0%であった。すなわち、耐熱ピール強度は初期ピール強度とほとんど変わらず良好な結果が得られた。
【0046】
(実施例5)
クロム含有金属層14の膜厚が300オングストロームである以外は、実施例1と同じ条件とした。測定結果を表1に示す。
【0047】
実施例5では、初期ピール強度は510N/mであり、耐熱ピール強度は500N/mであり、強度保持率は98.0%であった。耐熱ピール強度は初期ピール強度とほとんど変わらず良好な結果が得られた。
【0048】
(実施例6)
過熱水蒸気の温度が200℃である以外は、実施例1と同じ条件とした。測定結果を表1に示す。
【0049】
実施例6では、初期ピール強度は510N/mであり、耐熱ピール強度は400N/mであり、強度保持率は78.4%であった。すなわち、耐熱ピール強度は下がったものの、初期ピール強度の78%程度あり良好な結果が得られた。
【0050】
(実施例7)
過熱水蒸気の温度が350℃である以外は、実施例1と同じ条件とした。測定結果を表1に示す。
【0051】
実施例7では、初期ピール強度は510N/mであり、耐熱ピール強度は500N/mであり、強度保持率は98.0%であった。すなわち、耐熱ピール強度は初期ピール強度とほとんど変わらず良好な結果が得られた。
【0052】
(実施例8)
過熱水蒸気の温度が450℃である以外は、実施例1と同じ条件とした。測定結果を表1に示す。
【0053】
実施例8では、初期ピール強度は510N/mであり、耐熱ピール強度は510N/mであり、強度保持率は100.0%であった。すなわち、耐熱ピール強度は初期ピール強度と変わらず良好な結果が得られた。
【0054】
(実施例9)
ポリイミドフィルム11が、宇部興産製ユーピレックス(登録商標)25SGAである以外は実施例1と同じ条件とした。測定結果を表1に示す。
【0055】
実施例9では、初期ピール強度は550N/mであり、耐熱ピール強度は450N/mであり、強度保持率は81.8%であった。すなわち、耐熱ピール強度は初期ピール強度とほとんど変わらず良好な結果が得られた。
【0056】
(比較例1)
過熱水蒸気処理を行わない以外は実施例1と同じ条件とした。測定結果を表1に示す。
【0057】
比較例1では、初期ピール強度は510N/mであり、耐熱ピール強度は350N/mであり、強度保持率は68.6%であった。すなわち、耐熱ピール強度は初期ピール強度と比較して低下していた。
【0058】
(比較例2)
クロム含有金属層14のクロムが7重量パーセントである以外は、実施例1と同じ条件とした。測定結果を表1に示す。
【0059】
比較例2では、初期ピール強度は510N/mであり、耐熱ピール強度は300N/mであり、強度保持率は58.8%であった。すなわち、耐熱ピール強度は初期ピール強度と比較して低下していた。
【0060】
(比較例3)
クロム含有金属層14の膜厚が30オングストロームである以外は、実施例1と同じ条件とした。測定結果を表1に示す。
【0061】
比較例3では、初期ピール強度は510N/mであり、耐熱ピール強度は200N/mであり、強度保持率は39.2%であった。すなわち、耐熱ピール強度は初期ピール強度と比較して低下していた。
【0062】
(比較例4)
ポリイミドフィルム11が、宇部興産製ユーピレックス(登録商標)25SGAであることと、過熱水蒸気処理を行わないこと以外は実施例1と同じ条件とした。測定結果を表1に示す。
【0063】
比較例4では、初期ピール強度は600N/mであり、耐熱ピール強度は300N/mであり、強度保持率は50.0%であった。すなわち、耐熱ピール強度は初期ピール強度と比較して低下していた。
【0064】
【表1】
【符号の説明】
【0065】
10 フレキシブル基板
11 ポリイミドフィルム
12 下地金属層
13 銅導体層
14 クロム含有金属層
14a 第1金属層
14b 第2金属層
図1
図2
図3