(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】撮像素子、積層型撮像素子及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
H10K 39/32 20230101AFI20241112BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20241112BHJP
H10K 30/60 20230101ALI20241112BHJP
H10K 30/30 20230101ALI20241112BHJP
H10K 30/81 20230101ALI20241112BHJP
H10K 30/85 20230101ALI20241112BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20241112BHJP
【FI】
H10K39/32
H01L27/146 E
H10K30/60
H10K30/30
H10K30/81
H10K30/85
H10K85/60
(21)【出願番号】P 2023094308
(22)【出願日】2023-06-07
(62)【分割の表示】P 2021167590の分割
【原出願日】2016-04-19
【審査請求日】2023-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2015101718
(32)【優先日】2015-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016007706
(32)【優先日】2016-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】氏家 康晴
(72)【発明者】
【氏名】村田 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 裕也
(72)【発明者】
【氏名】茂木 英昭
(72)【発明者】
【氏名】平田 晋太郎
【審査官】脇水 佳弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/163349(WO,A1)
【文献】特開2015-163595(JP,A)
【文献】特開2012-129276(JP,A)
【文献】特開2011-192966(JP,A)
【文献】特開2012-109388(JP,A)
【文献】特開2014-103133(JP,A)
【文献】特開2009-032854(JP,A)
【文献】特表2002-502120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 39/32
H01L 27/146
H10K 30/60
H10K 30/30
H10K 30/81
H10K 30/85
H10K 85/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、第1電極、第2電極、有機光電変換層及びキャリアブロッキング層を備えた撮像素子であって、
前記キャリアブロッキング層は、下記の
化1に示した構造式(3)を有する材料から成り、厚さが5×10
-9m乃至1.5×10
-7mであり、
前記有機光電変換層は、少なくとも波長が495nm乃至570nmの光を吸収し、前記有機光電変換層は、少なくともp型有機半導体とn型有機半導体とを含む、
下記の化2に示したキナクリドン(QD)と下記の化3に示したサブフタロシアニンクロライド(SubPc-Cl)とを蒸着速度比1:1で共蒸着し、または、下記の化4に示した2,9-ジメチルキナクリドンと下記の化3に示したサブフタロシアニンクロライド(SubPc-Cl)とを蒸着速度比1:1で共蒸着してなるものであり、
前記キャリアブロッキング層の厚さを150nmに換算したとき、前記キャリアブロッキング層の光吸収割合は、波長450nmにおいて3%以下、波長425nmにおいて30%以下、波長400nmにおいて80%以下である
撮像素子。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【請求項2】
前記第1電極は陽極を構成し、前記第2電極は陰極を構成し、
前記キャリアブロッキング層は、前記第1電極と前記有機光電変換層との間に設けられている請求項
1記載の撮像素子。
【請求項3】
前記第1電極及び前記第2電極は透明導電材料から成る請求項1
又は請求項2に記載の撮像素子。
【請求項4】
前記第1電極及び前記第2電極のいずれか一方は透明導電材料から成り、他方は金属材料から成る請求項1
又は請求項2に記載の撮像素子。
【請求項5】
前記第1電極は透明導電材料から成り、前記第2電極は、Al、Al-Si-Cu又はMg-Agから成る請求項
4に記載の撮像素子。
【請求項6】
前記第2電極は透明導電材料から成り、前記第1電極は、Al-Nd又はASCから成る請求項
4に記載の撮像素子。
【請求項7】
請求項1乃至請求項
6のいずれか1項に記載の撮像素子が、少なくとも2つ、積層されて成る積層型撮像素子。
【請求項8】
請求項1乃至請求項
6のいずれか1項に記載の撮像素子を、複数、備えた撮像装置。
【請求項9】
請求項
7に記載の積層型撮像素子を、複数、備えた撮像装置。
【請求項10】
前記有機光電変換層は、p型半導体とn型半導体の混合層である、請求項1
又は請求項2に記載の撮像素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像素子、積層型撮像素子及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な用途に対応するために、撮像素子の性能の向上、機能の多様化が図られ、また、進化を続けている。そして、次世代技術の1つとして、無機半導体材料による光電変換ではなく、有機半導体材料による光電変換を挙げることができる。尚、このような撮像素子を、『有機撮像素子』と呼ぶ。また、複数の有機半導体層を積層することで赤色、緑色及び青色に対応する分光感度を有する撮像素子(『積層型撮像素子』と呼ぶ)が開発されつつあり、注目されている。このような積層型撮像素子は、色分解光学系が不要であり、1つの画素から赤色、緑色及び青色に対応した3種類の電気信号(画像信号)が取り出せるので、光利用率が高く、開口が拡がり、モアレのような偽信号が発生し難い。通常のカラーフィルタを備えた撮像素子では、カラーフィルタの透過吸収により、透過光の約40%が失われると云われている。
【0003】
ところで、現在、シリコン(Si)を光電変換材料として用いた撮像素子が主流である。そして、記録密度向上のための画素の微細化が進み、画素サイズはほぼ1μmに到達している。Siの光吸収係数は可視光領域で103乃至104cm-1程度であり、撮像素子における光電変換層は、シリコン半導体基板において、通常、深さ3μm以上の所に位置する。ここで、画素サイズの微細化が進むと、画素サイズと光電変換層の深さのアスペクト比が大きくなる。その結果、隣接画素からの光漏れや、光の入射角が制限され、撮像素子の性能低下に繋がる。このような問題の解決策として、吸収係数の大きい有機材料が注目されている。有機材料の可視光領域における吸収係数は、105cm-1程度、あるいは、それ以上であり、有機撮像素子あるいは積層型撮像素子にあっては、光電変換層の厚さを薄くすることができ、偽色を抑えつつ、感度の向上、画素数の増加が可能と考えられ、開発が鋭意進められている。
【0004】
このように多くの利点があると考えられている有機撮像素子ではあるが、課題の1つとして、撮像モジュールの低容量化が挙げられる。ここで、撮像モジュールとは、有機撮像素子を内蔵し、光電変換して得られた電気信号を画像として出力する装置である。光照射により撮像素子を構成する光電変換層において得られた電荷は、電圧へと変換され、電気信号(画像信号)として出力される。このとき、有機撮像素子の電気容量に加え、フローティングディフュージョン(以下、『FD』と略す)、及び、FDに接続されているバッファーアンプ、FDに隣接しているリセットゲートと水平出力ゲート等の周辺構造も含めた電気容量の総量Cが大きい場合、1電荷当たりの電圧変化が小さくなるため、S/N比が小さくなり、画質が劣化してしまう。ここで、電気信号の電圧Vは、電荷量をQとしたとき、
V =Q/C
で表され、結局、有機撮像素子の電気容量が大きくなると、Vが小さくなり、その結果、電気信号が小さくなってしまう。尚、有機撮像素子の電気容量(具体的には、次に述べる有機層の電気容量)は、電気容量の総量Cの約半分を占めている。また、一般に、電気容量C0は、誘電率をε、面積をS0、厚さをd0としたとき、
C0=(ε・S0)/d0
で表されるため、有機撮像素子の低容量化を左右する因子として、画素面積、有機撮像素子を構成する材料の誘電率、有機撮像素子における有機層の厚さが挙げられる。そして、厚さによって低容量化を図る場合には、有機撮像素子の有機層の総膜厚を厚くする必要がある。
【0005】
有機層は、例えば、
図1Aに概念図を示すように、第1電極21と第2電極25とによって挟まれた、キャリアブロッキング層(第1キャリアブロッキング層)22、有機光電変換層23及び第2キャリアブロッキング層24の積層構造を有する。有機光電変換層23の厚さを厚くすることは可能である。しかしながら、有機光電変換層23は光電変換機能に関与する層であり、厚膜化、及び、或る特定の波長の光を光電変換するときの光電変換効率を低下させないことを両立させることは、困難な場合が多い。また、積層型撮像素子にあっては、有機光電変換層23を構成する材料の分光特性が所望の波長以外の光も吸収する場合、有機光電変換層23を厚くすると、下方に位置する撮像素子を構成する光電変換層が吸収すべき光を遮る虞がある。第2キャリアブロッキング層24は電子を輸送する機能を持ち合わせる必要があり、電子移動度の低い有機材料から成る第2キャリアブロッキング層24の厚さを厚くした場合、抵抗成分となり、高い光電変換効率を維持することが困難となる。
【0006】
ところで、下記の構造式(1)、構造式(2)、構造式(3)の母骨格は、有機薄膜トランジスタ(有機TFT)材料として周知の材料であり、ベンゾチエノベンゾチオフェン(BTBT)系材料と呼ばれる。特開2010-232413には、BTBT系材料の有機TFT、静電誘導型トランジスタ、太陽電池への応用が開示されているが、撮像素子への応用については言及されていない。また、この特許公開公報では、BTBT系材料を活性層として用い、膜厚として、1nm乃至10μm、好ましくは5nm乃至5μm、より好ましくは10nm乃至3μmと、広い範囲での応用が開示されているが、実施例ではBTBT系材料の膜厚を250nmとしている。また、活性層自体に分光特性は求められていないし、電気容量に関して何ら言及されていない。国際公開WO2012/121393には、BTBT系材料を用いて液晶を発現させ、有機TFTに応用する技術が開示されている。しかしながら、この国際公開にも撮像素子に関する言及は無く、分光特性に触れられていないし、電気容量に関しても何ら言及されていない。
【0007】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2010-232413
【文献】国際公開WO2012/121393
【文献】特開2011-176259
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
有機撮像素子の第1キャリアブロッキング層は、屡々、電子ブロッキング層と称され、一般には、例えば、特開2011-176259に開示されているようなカルバゾール系材料や芳香族アミン系材料から構成されている。しかしながら、第1キャリアブロッキング層の厚さを厚くすることで低容量化を図る場合、カルバゾール系材料や芳香族アミン系材料から第1キャリアブロッキング層を構成したのでは、例えば、第1キャリアブロッキング層の厚さを厚くしたとき、後述するように、外部量子効率の低下、暗電流の増加が顕著であり、実用に適さないことが判明した。
【0010】
従って、本開示の目的は、外部量子効率の低下、暗電流の増加といった問題が生じ難い構成の撮像素子から構成された積層型撮像素子及び撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するための本開示の第1の態様に係る撮像素子は、少なくとも、第1電極、第2電極、有機光電変換層及びキャリアブロッキング層を備えており、キャリアブロッキング層は、下記の構造式(1)を有する材料から成り、厚さが5×10-9m乃至1.5×10-7m、好ましくは、5×10-9m乃至1.0×10-7mである。
【0012】
【0013】
ここで、
R1,R2は、それぞれ独立に、水素、アリール基、アルキル基から選ばれた基であり、アリール基は、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、ナフチルフェニル基、トリル基、キシリル基、炭素数が2乃至6のアルキル基を置換基とするフェニル基、アントラセニル基、アントラセニルフェニル基、フェナントリル基、フェナントリルフェニル基、ピレニル基、ピレニルフェニル基、テトラセニル基、テトラセニルフェニル基、フルオランテニル基、フルオランテニルフェニル基、ピリジニル基、ピリジニルフェニル基、キノリニル基、キノリニルフェニル基、アクリジニル基、アクリジニルフェニル基、インドール基、インドリルフェニル基、イミダゾール基、イミダゾリルフェニル基、ベンズイミダゾール基、ベンズイミダゾリルフェニル基、チエニル基、及び、チエニルフェニル基から成る群から選択された基であり、
アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、及び、ヘキシル基から成る群から選択された基であり、直鎖状のアルキル基であってもよいし、分岐型のアルキル基でもよい。
【0014】
上記の目的を達成するための本開示の第2の態様に係る撮像素子は、少なくとも、第1電極、第2電極、有機光電変換層及びキャリアブロッキング層を備えており、キャリアブロッキング層は、下記の構造式(2)を有する材料から成り、厚さが5×10-9m乃至1.5×10-7m、好ましくは、5×10-9m乃至1.0×10-7mである。
【0015】
【0016】
ここで、Ar1,Ar2は、それぞれ独立に、置換基を有することあるアリール基であり、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、ナフチルフェニル基、トリル基、キシリル基、炭素数が2乃至6のアルキル基を置換基とするフェニル基、アントラセニル基、アントラセニルフェニル基、フェナントリル基、フェナントリルフェニル基、ピレニル基、ピレニルフェニル基、テトラセニル基、テトラセニルフェニル基、フルオランテニル基、フルオランテニルフェニル基、ピリジニル基、ピリジニルフェニル基、キノリニル基、キノリニルフェニル基、アクリジニル基、アクリジニルフェニル基、インドール基、インドリルフェニル基、イミダゾール基、イミダゾリルフェニル基、ベンズイミダゾール基、ベンズイミダゾリルフェニル基、チエニル基、及び、チエニルフェニル基から成る群から選択されたアリール基である。
【0017】
上記の目的を達成するための本開示の第3の態様に係る撮像素子は、少なくとも、第1電極、第2電極、有機光電変換層及びキャリアブロッキング層を備えており、キャリアブロッキング層は、下記の構造式(3)を有する材料から成り、厚さが5×10-9m乃至1.5×10-7m、好ましくは、5×10-9m乃至1.0×10-7mである。
【0018】
【0019】
上記の目的を達成するための本開示の積層型撮像素子(縦分光方式の撮像素子)は、本開示の第1の態様~第3の態様に係る撮像素子が、少なくとも2つ、積層されて成る。
【0020】
上記の目的を達成するための本開示の第1の態様に係る撮像装置は、本開示の第1の態様~第3の態様に係る撮像素子を、複数、備えている。このような本開示の第1の態様に係る撮像装置にあっては、青色用撮像素子、緑色用撮像素子及び赤色用撮像素子が、ベイヤ配列のように平面に配されている構成を挙げることができる。また、上記の目的を達成するための本開示の第2の態様に係る撮像装置は、本開示の積層型撮像素子を、複数、備えている。
【発明の効果】
【0021】
本開示の第1の態様~第3の態様に係る撮像素子、本開示の積層型撮像素子を構成する撮像素子、本開示の第1の態様~第2の態様に係る撮像装置を構成する撮像素子(以下、これらの撮像素子を、総称して、『本開示の撮像素子等』と呼ぶ)において、キャリアブロッキング層は、可視光の吸収が少ない構造式(1)、構造式(2)あるいは構造式(3)を有する材料から構成されるので、キャリアブロッキング層を含む撮像素子あるいは光入射方向から見て下層にある撮像素子の光電変換を妨げず、良好な外部量子効率と分光特性を両立させることができる。しかも、暗電流を抑制することができ、また、暗電流の耐圧特性を改善することができる。更には、電気容量の低容量化が可能である。加えて、所謂残像特性の向上を図ることができる。そして、以上の結果として、綺麗な画出しが可能であり、しかも、残像が生じ難い撮像装置を実現することができる。尚、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また、付加的な効果があってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】
図2A及び
図2Bは、それぞれ、実施例1における評価用の撮像素子の模式的な一部断面図、及び、光電変換によって生成した正孔及び電子の流れを模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、実施例1の撮像装置の概念図である。
【
図4】
図4Aは、実施例1、並びに、比較例1A、比較例1B及び比較例1Cの撮像素子に波長560nm、2マイクロワット/cm
2の光を照射しながら、第2電極と第1電極との間に-2.6ボルトの電圧を印加したときの外部量子効率を求めた結果を示す図であり、
図4Bは、実施例1、並びに、比較例1A、比較例1B及び比較例1Cの撮像素子において、第1キャリアブロッキング層の厚さを100nmとし、第2電極と第1電極との間に-1ボルトから-10ボルトまでの電圧を印加して暗所で暗電流を測定した結果を示す図である。
【
図5】
図5は、構造式(3)を有する材料から成る薄膜の光吸収スペクトル(光吸収割合)を求めた結果を示す図である。
【
図6】
図6は、実施例2において、キャリア移動度とT0の値の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本開示を説明するが、本開示は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本開示の第1の態様~第3の態様に係る撮像素子、本開示の積層型撮像素子、本開示の第1の態様~第2の態様に係る撮像装置、全般に関する説明
2.実施例1(本開示の第1の態様~第3の態様に係る撮像素子、本開示の第1の態様に係る撮像装置)
3.実施例2(実施例1の変形)
4.実施例3(実施例1~実施例2の変形、本開示の積層型撮像素子、本開示の第2の態様に係る撮像装置)
5.その他
【0024】
〈本開示の第1の態様~第3の態様に係る撮像素子、本開示の積層型撮像素子、本開示の第1の態様~第2の態様に係る撮像装置、全般に関する説明〉
本開示の積層型撮像素子において、具体的には、青色の光(425nm乃至495nmの光)を吸収する有機光電変換層を備えた青色に感度を有する本開示の第1の態様~第3の態様に係る撮像素子(便宜上、『青色用撮像素子』と呼ぶ)、緑色の光(495nm乃至570nmの光)を吸収する有機光電変換層を備えた緑色に感度を有する本開示の第1の態様~第3の態様に係る撮像素子(便宜上、『緑色用撮像素子』と呼ぶ)、赤色の光(620nm乃至750nmの光)を吸収する有機光電変換層を備えた赤色に感度を有する本開示の第1の態様~第3の態様に係る撮像素子(便宜上、『赤色用撮像素子』と呼ぶ)の3種類の撮像素子が、垂直方向に積層された構成を挙げることができる。尚、これらの撮像素子の積層順は、光入射方向から青色用撮像素子、緑色用撮像素子、赤色用撮像素子の順、あるいは、光入射方向から緑色用撮像素子、青色用撮像素子、赤色用撮像素子の順であることが好ましい。これは、より短い波長の光がより入射表面側において効率良く吸収されるからである。赤色は3色の中では最も長い波長であるので、光入射面から見て赤色用撮像素子を最下層に位置させることが好ましい。あるいは又、シリコン半導体基板に赤色に感度を有する撮像素子を形成し、シリコン半導体基板の上に緑色用撮像素子、青色用撮像素子を形成する構成とすることもできるし、シリコン半導体基板に2種類の撮像素子を形成し、シリコン半導体基板の上に1種類の本開示の第1の態様~第3の態様に係る撮像素子を形成する構成とすることもできる。シリコン半導体基板に形成された撮像素子は、裏面照射型であることが好ましいが、表面照射型とすることもできる。尚、光電変換層を構成する無機系材料として、結晶シリコン以外にも、アモルファスシリコン、微結晶シリコン、結晶セレン、アモルファスセレン、及び、カルコパイライト系化合物であるCIGS(CuInGaSe)、CIS(CuInSe2)、CuInS2、CuAlS2、CuAlSe2、CuGaS2、CuGaSe2、AgAlS2、AgAlSe2、AgInS2、AgInSe2、あるいは又、III-V族化合物であるGaAs、InP、AlGaAs、InGaP、AlGaInP、InGaAsP、更には、CdSe、CdS、In2Se3、In2S3、Bi2Se3、Bi2S3、ZnSe、ZnS、PbSe、PbS等の化合物半導体を挙げることができる。加えて、これらの材料から成る量子ドットを無機光電変換層に使用することも可能である。また、本開示の第1の態様~第2の態様に係る撮像装置によって、単板式カラー固体撮像装置を構成することができる。
【0025】
積層型撮像素子を備えた本開示の第2の態様に係る撮像装置にあっては、ベイヤ配列の撮像素子を備えた撮像装置と異なり(即ち、カラーフィルタを用いて青色、緑色、赤色の分光を行うのではなく)、同一画素内で光の入射方向において、複数種の波長の光に対して感度を有する撮像素子を積層するので、感度の向上及び単位体積当たりの画素密度の向上を図ることができる。また、有機材料は光吸収係数が高いため、有機光電変換層の膜厚を従来のSi系光電変換層と比較して薄くすることができ、隣接画素からの光漏れや、光の入射角の制限が緩和される。更には、従来のSi系撮像素子では3色の画素間で補間処理を行って色信号を作成するために偽色が生じるが、積層型撮像素子を備えた本開示の第2の態様に係る撮像装置にあっては、偽色の発生が抑えられる。一方、本開示の第1の態様に係る撮像装置にあっては、カラーフィルタを用いることで、青色、緑色、赤色の分光特性への要求を緩和することができるし、また、高い量産性を有する。
【0026】
本開示の撮像素子等にあっては、第1電極は陽極を構成し、第2電極は陰極を構成し、キャリアブロッキング層は、第1電極と有機光電変換層との間に設けられている形態とすることができるが、このような形態に限定するものではない。
【0027】
上記の好ましい形態を含む本開示の撮像素子等において、キャリアブロッキング層は、有機光電変換層での光電変換機能を妨げないために、出来る限り可視光領域での光吸収割合が小さいことが好ましい。本開示の撮像素子等において、キャリアブロッキング層の光吸収割合は、キャリアブロッキング層の厚さを150nmに換算したとき、波長450nmにおいて3%以下、波長425nmにおいて30%以下、波長400nmにおいて80%以下である形態とすることができる。即ち、上記の構造式(1)、構造式(2)、構造式(3)を有する材料から構成されたキャリアブロッキング層は、分光特性にも優れている。一般に、有機化合物は、450nmより短波長側の波長領域での光吸収強度が高いものが多く、撮像素子の有機光電変換層で吸収すべき青色の光を吸収してしまうといった問題がある。然るに、本開示の撮像素子等にあっては、キャリアブロッキング層を構成する材料は、優れた光吸収特性を有し、撮像素子の光電変換機能を妨げることが無い。
【0028】
上記の各種好ましい形態を含む本開示の撮像素子等において、キャリアブロッキング層を構成する材料のキャリア移動度は、9×10-4cm2/V・s以上、好ましくは、9×10-3cm2/V・s以上、より好ましくは6×10-2cm2/V・s以上であることが望ましい。
【0029】
以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の撮像素子等において、第2電極と第1電極との間に-3ボルトを印加しながら、波長560nm、2マイクロワット/cm2の光を照射し、次いで、光の照射を中止したとき、光照射中止直前に第2電極と第1電極との間を流れる電流量をI0とし、光照射中止から電流量が(0.03×I0)となるまでの時間をT0としたとき、T0は10ミリ秒以下であることが望ましい。
【0030】
以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の撮像素子等において、光が照射され、有機光電変換層で光電変換しているとき、正孔(ホール)と電子がキャリア分離される。そして、正孔が取り出される電極を陽極、電子が取り出される電極を陰極とする。ここで、積層型撮像素子を構成する場合には、第1電極及び第2電極は透明導電材料から成る構成とすることができる。あるいは又、本開示の撮像素子等が、例えばベイヤ配列のように平面に配される場合には、第1電極及び第2電極のいずれか一方は透明導電材料から成り、他方は金属材料から成る構成とすることができ、この場合、光入射側に位置する第1電極は透明導電材料から成り、第2電極は、Al(アルミニウム)、Al-Si-Cu(アルミニウム、シリコン及び銅の合金)又はMg-Ag(マグネシウム及び銀の合金)から成る構成とすることができ、あるいは又、光入射側に位置する第2電極は透明導電材料から成り、第1電極は、Al-Nd(アルミニウム及びネオジウムの合金)又はASC(アルミニウム、サマリウム及び銅の合金)から成る構成とすることができる。尚、透明導電材料から成る電極を『透明電極』と呼ぶ場合がある。ここで、透明電極を構成する透明導電材料として、導電性のある金属酸化物を挙げることができ、具体的には、酸化インジウム、インジウム-錫酸化物(ITO,Indium Tin Oxide,SnドープのIn2O3、結晶性ITO及びアモルファスITOを含む)、酸化亜鉛にドーパントとしてインジウムを添加したインジウム-亜鉛酸化物(IZO,Indium Zinc Oxide)、酸化ガリウムにドーパントとしてインジウムを添加したインジウム-ガリウム酸化物(IGO)、酸化亜鉛にドーパントとしてインジウムとガリウムを添加したインジウム-ガリウム-亜鉛酸化物(IGZO,In-GaZnO4)、IFO(FドープのIn2O3)、酸化錫(SnO2)、ATO(SbドープのSnO2)、FTO(FドープのSnO2)、酸化亜鉛(他元素をドープしたZnOを含む)、酸化亜鉛にドーパントとしてアルミニウムを添加したアルミニウム-亜鉛酸化物(AZO)、酸化亜鉛にドーパントとしてガリウムを添加したガリウム-亜鉛酸化物(GZO)、酸化チタン(TiO2)、酸化アンチモン、スピネル型酸化物、YbFe2O4構造を有する酸化物を例示することができる。あるいは又、ガリウム酸化物、チタン酸化物、ニオブ酸化物、ニッケル酸化物等を母層とする透明電極を挙げることができる。透明電極の厚さとして、2×10-8m乃至2×10-7m、好ましくは3×10-8m乃至1×10-7mを挙げることができる。
【0031】
あるいは又、透明性が不要である場合、正孔を取り出す電極としての機能を有する陽極を構成する導電材料として、高仕事関数(例えば、φ=4.5eV~5.5eV)を有する導電材料から構成することが好ましく、具体的には、金(Au)、銀(Ag)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、鉄(Fe)、イリジウム(Ir)、ゲルマニウム(Ge)、オスミウム(Os)、レニウム(Re)、テルル(Te)を例示することができる。一方、電子を取り出す電極としての機能を有する陰極を構成する導電材料として、低仕事関数(例えば、φ=3.5eV~4.5eV)を有する導電材料から構成することが好ましく、具体的には、アルカリ金属(例えばLi、Na、K等)及びそのフッ化物又は酸化物、アルカリ土類金属(例えばMg、Ca等)及びそのフッ化物又は酸化物、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、タリウム(Tl)、ナトリウム-カリウム合金、アルミニウム-リチウム合金、マグネシウム-銀合金、インジウム、イッテリビウム等の希土類金属、あるいは、これらの合金を挙げることができる。あるいは又、陽極や陰極を構成する材料として、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、銅(Cu)、チタン(Ti)、インジウム(In)、錫(Sn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)等の金属、あるいは、これらの金属元素を含む合金、これらの金属から成る導電性粒子、これらの金属を含む合金の導電性粒子、不純物を含有したポリシリコン、炭素系材料、酸化物半導体、カーボン・ナノ・チューブ、グラフェン等の導電性物質を挙げることができるし、これらの元素を含む層の積層構造とすることもできる。更には、陽極や陰極を構成する材料として、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸[PEDOT/PSS]といった有機材料(導電性高分子)を挙げることもできる。また、これらの導電性材料をバインダー(高分子)に混合してペースト又はインクとしたものを硬化させ、電極として用いてもよい。
【0032】
第1電極や第2電極(陽極や陰極)の成膜方法として、乾式法あるいは湿式法を用いることが可能である。乾式法として、物理的気相成長法(PVD法)及び化学的気相成長法(CVD法)を挙げることができる。PVD法の原理を用いた成膜法として、抵抗加熱あるいは高周波加熱を用いた真空蒸着法、EB(電子ビーム)蒸着法、各種スパッタリング法(マグネトロンスパッタリング法、RF-DC結合形バイアススパッタリング法、ECRスパッタリング法、対向ターゲットスパッタリング法、高周波スパッタリング法)、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、分子線エピタキシー法、レーザー転写法を挙げることができる。また、CVD法として、プラズマCVD法、熱CVD法、有機金属(MO)CVD法、光CVD法を挙げることができる。一方、湿式法として、電解メッキ法や無電解メッキ法、スピンコート法、インクジェット法、スプレーコート法、スタンプ法、マイクロコンタクトプリント法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、ディップ法等の方法を挙げることができる。パターニングについては、シャドーマスク、レーザー転写、フォトリソグラフィー等の化学的エッチング、紫外線やレーザー等による物理的エッチング等を利用することができる。平坦化技術として、レーザー平坦化法、リフロー法、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法等を用いることができる。
【0033】
有機光電変換層を、
(1)p型有機半導体から構成する。
(2)p型有機半導体層/n型有機半導体層の積層構造から構成する。p型有機半導体層/p型有機半導体とn型有機半導体との混合層(バルクヘテロ構造)/n型有機半導体層の積層構造から構成する。p型有機半導体層/p型有機半導体とn型有機半導体との混合層(バルクヘテロ構造)の積層構造から構成する。n型有機半導体層/p型有機半導体とn型有機半導体との混合層(バルクヘテロ構造)の積層構造から構成する。
(3)p型有機半導体とn型有機半導体の混合(バルクヘテロ構造)から構成する。
の3態様のいずれかとすることができる。
【0034】
p型有機半導体として、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、テトラセン誘導体、ペンタセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピセン誘導体、クリセン誘導体、フルオランテン誘導体、フタロシアニン誘導体、サブフタロシアニン誘導体、複素環化合物を配位子とする金属錯体等を挙げることができる。n型有機半導体として、フラーレン及びフラーレン誘導体、p型有機半導体よりもHOMO及びLUMOが大きい(深い)有機半導体、透明な無機金属酸化物を挙げることができる。n型有機半導体として、具体的には、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含有する複素環化合物、例えば、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、イソキノリン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンズオキサゾール、カルバゾール、ベンゾフラン、ジベンゾフラン等を分子骨格の一部に有する有機分子、有機金属錯体やサブフタロシアニン誘導体を挙げることができる。有機光電変換層の厚さは、限定するものではないが、例えば、1×10-8m乃至5×10-7m、好ましくは2.5×10-8m乃至3×10-7m、より好ましくは2.5×10-8m乃至2×10-7m、一層好ましくは1×10-7m乃至1.8×10-7mを例示することができる。尚、有機半導体は、p型、n型と分類されることが多いが、p型とは正孔を輸送し易いという意味であり、n型とは電子を輸送し易いという意味であり、無機半導体のように熱励起の多数キャリアとして正孔又は電子を有しているという解釈に限定されない。
【0035】
各種有機層の成膜方法として、乾式成膜法及び湿式成膜法を挙げることができる。乾式成膜法として、抵抗加熱あるいは高周波加熱を用いた真空蒸着法、EB蒸着法、各種スパッタリング法(マグネトロンスパッタリング法、RF-DC結合形バイアススパッタリング法、ECRスパッタリング法、対向ターゲットスパッタリング法、高周波スパッタリング法)、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、分子線エピタキシー法、レーザー転写法を挙げることができる。また、CVD法として、プラズマCVD法、熱CVD法、MOCVD法、光CVD法を挙げることができる。一方、湿式法として、スピンコート法、インクジェット法、スプレーコート法、スタンプ法、マイクロコンタクトプリント法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、ディップ法等の方法を用いることができる。パターニングについては、シャドーマスク、レーザー転写、フォトリソグラフィー等の化学的エッチング、紫外線やレーザー等による物理的エッチング等を利用することができる。平坦化技術として、レーザー平坦化法、リフロー法等を用いることができる。
【0036】
キャリアブロッキング層を成膜する際、構造式(1)、構造式(2)、構造式(3)を有する材料と、他の有機半導体材料(例えば、ペンタセン誘導体)とを共蒸着することも可能である。
【0037】
有機光電変換層と第2電極(陰極)との間に、第2キャリアブロッキング層を設けてもよい。尚、有機光電変換層と第1電極(陽極)との間に設けられたキャリアブロッキング層を、便宜上、『第1キャリアブロッキング層』と呼ぶ場合がある。第2キャリアブロッキング層に用いられる材料(第2キャリアブロッキング材料)は、第1キャリアブロッキング層に用いられる材料のイオン化ポテンシャルよりも大きい(深い)材料が好ましく、具体的には、例えば、ピリジン、キノリン、アクリジン、インドール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、フェナントロリンのような窒素(N)を含む複素環を分子骨格の一部に有する有機分子及び有機金属錯体であって、可視光領域の光吸収が少ない材料が好ましい。また、5×10-9m乃至2×10-8m程度の薄い膜で第2キャリアブロッキング層を形成する場合には、C60やC70に代表されるフラーレン類を用いることも可能である。但し、第2キャリアブロッキング層は、これらに限定されるものではない。
【0038】
また、第2キャリアブロッキング層と第2電極との間に、電子注入層を設けてもよい。電子注入層を構成する材料として、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)といったアルカリ金属及びそのフッ化物や酸化物、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)といったアルカリ土類金属及びそのフッ化物や酸化物を挙げることができる。
【0039】
撮像素子あるいは撮像装置には、その他、必要に応じて、オンチップ・マイクロ・レンズや遮光層を設けてもよいし、撮像素子を駆動するための駆動回路や配線が設けられている。必要に応じて、撮像素子への光の入射を制御するためのシャッターを配設してもよいし、撮像装置の目的に応じて光学カットフィルタを具備してもよい。更には、本開示の第1の態様に係る撮像装置における撮像素子の配列として、ベイヤ配列の他、インターライン配列、GストライプRB市松配列、GストライプRB完全市松配列、市松補色配列、ストライプ配列、斜めストライプ配列、原色色差配列、フィールド色差順次配列、フレーム色差順次配列、MOS型配列、改良MOS型配列、フレームインターリーブ配列、フィールドインターリーブ配列を挙げることができる。
【0040】
本開示の撮像素子を基板上に形成することができる。ここで、基板として、ポリメチルメタクリレート(ポリメタクリル酸メチル,PMMA)やポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)に例示される有機ポリマー(高分子材料から構成された可撓性を有するプラスチック・フィルムやプラスチック・シート、プラスチック基板といった高分子材料の形態を有する)を挙げることができる。このような可撓性を有する高分子材料から構成された基板を使用すれば、例えば曲面形状を有する電子機器への撮像素子の組込みあるいは一体化が可能となる。あるいは、基板として、各種ガラス基板や、表面に絶縁膜が形成された各種ガラス基板、石英基板、表面に絶縁膜が形成された石英基板、シリコン半導体基板、表面に絶縁膜が形成されたシリコン半導体基板、ステンレス鋼等の各種合金や各種金属から成る金属基板を挙げることができる。尚、絶縁膜として、酸化ケイ素系材料(例えば、SiOXやスピンオンガラス(SOG));窒化ケイ素(SiNY);酸窒化ケイ素(SiON);酸化アルミニウム(Al2O3);金属酸化物や金属塩を挙げることができる。また、表面にこれらの絶縁膜が形成された導電性基板(金やアルミニウム等の金属から成る基板、高配向性グラファイトから成る基板)を用いることもできる。基板の表面は、平滑であることが望ましいが、有機光電変換層の特性に悪影響を及ぼさない程度のラフネスがあっても構わない。基板の表面にシランカップリング法によるシラノール誘導体を形成したり、SAM法等によりチオール誘導体、カルボン酸誘導体、リン酸誘導体等から成る薄膜を形成したり、CVD法等により絶縁性の金属塩や金属錯体から成る薄膜を形成することで、電極と基板との間の密着性を向上させてもよい。
【0041】
場合によっては、電極を被覆層で被覆してもよい。被覆層を構成する材料として、酸化ケイ素系材料;窒化ケイ素(SiNY);酸化アルミニウム(Al2O3)等の金属酸化物高誘電絶縁膜にて例示される無機系絶縁材料だけでなく、ポリメチルメタクリレート(PMMA);ポリビニルフェノール(PVP);ポリビニルアルコール(PVA);ポリイミド;ポリカーボネート(PC);ポリエチレンテレフタレート(PET);ポリスチレン;N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン(AEAPTMS)、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)、オクタデシルトリクロロシラン(OTS)等のシラノール誘導体(シランカップリング剤);オクタデカンチオール、ドデシルイソシアネイト等の一端に電極と結合可能な官能基を有する直鎖炭化水素類にて例示される有機系絶縁材料(有機ポリマー)を挙げることができるし、これらの組み合わせを用いることもできる。尚、酸化ケイ素系材料として、酸化シリコン(SiOX)、BPSG、PSG、BSG、AsSG、PbSG、酸化窒化シリコン(SiON)、SOG(スピンオングラス)、低誘電率材料(例えば、ポリアリールエーテル、シクロパーフルオロカーボンポリマー及びベンゾシクロブテン、環状フッ素樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化アリールエーテル、フッ化ポリイミド、アモルファスカーボン、有機SOG)を例示することができる。絶縁層の形成方法として、例えば、上述した乾式成膜法、湿式成膜法を用いることが可能である。
【0042】
構造式(1)、構造式(2)、構造式(3)を有する材料からキャリアブロッキング層を形成することで、キャリアブロッキング層を厚膜化しても感度劣化が無い。その理由は、母骨格であるチエノアセン骨格が、キャリアブロッキング層中で重なり合い、厚膜化しても効率良くキャリアを輸送することが考えられる。一方、暗電流の低減、暗電流の耐圧特性に優れるが、その理由として、有機光電変換層のp型有機半導体とキャリアブロッキング層のエネルギーレベル、及び、構造式(1)、構造式(2)、構造式(3)を有する材料から成るキャリアブロッキング層を厚膜化する際の薄膜表面粗度、キャリアブロッキング層の応力等が関連しているものと推測される。
【0043】
キャリアブロッキング層は、構造式(1)、構造式(2)、構造式(3)を有する材料層と、他の材料層との積層構造を有していてもよい。具体的には、例えば、電気的な接合を向上させるため、キャリアブロッキング層と電極(具体的には、第1電極)との間に、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物、スチリルアミン化合物に代表される芳香族アミン系材料、カルバゾール誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、テトラセン誘導体、ペンタセン誘導体、ピセン誘導体、クリセン誘導体、フルオランテン誘導体、フタロシアニン誘導体、サブフタロシアニン誘導体、ヘキサアザトリフェニレン誘導体、複素環化合物を配位子とする金属錯体、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸[PEDOT/PSS]、ポリアニリン、酸化モリブデン(MoOx)、酸化ルテニウム(RuOx)、酸化バナジウム(VOx)、酸化タングステン(WOx)等から成る材料層を形成してもよい。
【実施例1】
【0044】
実施例1は、本開示の第1の態様~第3の態様に係る撮像素子、及び、本開示の第1の態様に係る撮像装置に関する。
【0045】
概念図を
図1A及び
図1Bに示すように、実施例1の撮像素子11は、少なくとも、第1電極21、第2電極25、有機光電変換層23及びキャリアブロッキング層22を備えている。具体的には、第1電極21は陽極を構成し、第2電極25は陰極を構成し、キャリアブロッキング層22は、第1電極21と有機光電変換層23との間に設けられている。より具体的には、実施例1の撮像素子11は、少なくとも、第1電極(陽極)21、キャリアブロッキング層(第1キャリアブロッキング層22)、有機光電変換層23、第2電極(陰極)25が、順次、積層されて成る。尚、有機光電変換層23と第2電極25との間には、第2キャリアブロッキング層24が設けられている。そして、第1キャリアブロッキング層22は、上記の構造式(1)あるいは構造式(2)あるいは構造式(3)を有する材料から成り、厚さが、5×10
-9m乃至1.5×10
-7m、好ましくは5×10
-9m乃至1.0×10
-7m、より好ましくは、5×10
-8m乃至1.0×10
-7mである。
図1Aに示した撮像素子にあっては、第2電極側(陰極側)から光が入射する。一方、
図1Bに示した撮像素子にあっては、第1電極側(陽極側)から光が入射する。光電変換によって生成した正孔(丸印の中の「+」で示す)及び電子(丸印の中の「-」で示す)の流れを、模式的に
図2Bに示す。
【0046】
実施例1の撮像装置40は、実施例1の撮像素子11を、複数、備えている。具体的には、青色用撮像素子、緑色用撮像素子及び赤色用撮像素子が、ベイヤ配列のように平面に配されている。
【0047】
実施例1の撮像素子において、第1電極21及び第2電極25のいずれか一方は透明導電材料から成り、他方は金属材料から成る。ここで、
図1Aに示した撮像素子にあっては、第2電極側(陰極側)から光が入射するので、第2電極25は透明導電材料(例えば、ITO)から成り、第1電極21は、Al-Nd(アルミニウム及びネオジウムの合金)又はASC(アルミニウム、サマリウム及び銅の合金)から成る。一方、
図1Bに示した撮像素子にあっては、第1電極側(陽極側)から光が入射するので、第1電極21は透明導電材料(例えば、ITO)から成り、第2電極25は、Al(アルミニウム)、Al-Si-Cu(アルミニウム、シリコン及び銅の合金)又はMg-Ag(マグネシウム及び銀の合金)から成る。
【0048】
第2キャリアブロッキング層24は、例えば、前述した第2キャリアブロッキング材料から成るが、第2電極(陰極)が金属材料から成る場合、金属と配位する元素を含む材料を用いれば、第2電極との電気的接合がより良好になり、抵抗成分が減少することが期待される。例えば、ピリジン、キノリン、アクリジン、インドール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、フェナントロリンのような窒素(N)を含む複素環を分子骨格の一部に有する有機分子及び有機金属錯体であって、可視光領域の光吸収が少ない材料が好ましい。また、青色の光(425nm乃至495nmの光)を吸収する有機光電変換層を備えた青色に感度を有する青色用撮像素子における有機光電変換層23にあっては、p型有機半導体として、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、テトラセン誘導体、ピセン誘導体、クリセン誘導体、フルオランテン誘導体、複素環化合物を配位子とする金属錯体等を挙げることができるし、n型有機半導体として、フラーレン及びフラーレン誘導体、p型有機半導体よりもHOMO及びLUMOが大きい(深い)有機半導体、透明な無機金属酸化物を挙げることができる。n型有機半導体として、具体的には、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含有する複素環化合物、例えば、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、イソキノリン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンズオキサゾール、カルバゾール、ベンゾフラン、ジベンゾフラン等を分子骨格の一部に有する有機分子、有機金属錯体を挙げることができる。有機光電変換層の厚さは、限定するものではないが、例えば、1×10-8m乃至5×10-7m、好ましくは2.5×10-8m乃至3×10-7m、より好ましくは2.5×10-8m乃至2×10-7m、一層好ましくは1×10-7m乃至1.8×10-7mを例示することができる。緑色の光(495nm乃至570nmの光)を吸収する有機光電変換層を備えた緑色に感度を有する緑色用撮像素子における有機光電変換層23にあっては、p型有機半導体として、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、テトラセン誘導体、キナクリドン誘導体、フルオランテン誘導体、サブフタロシアニン誘導体、複素環化合物を配位子とする金属錯体等を挙げることができるし、n型有機半導体として、フラーレン及びフラーレン誘導体、p型有機半導体よりもHOMO及びLUMOが大きい(深い)有機半導体、透明な無機金属酸化物を挙げることができる。n型有機半導体として、具体的には、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含有する複素環化合物、例えば、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、イソキノリン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンズオキサゾール、カルバゾール、ベンゾフラン、ジベンゾフラン等を分子骨格の一部に有する有機分子、有機金属錯体やサブフタロシアニン誘導体を挙げることができる。有機光電変換層の厚さは、限定するものではないが、例えば、1×10-8m乃至5×10-7m、好ましくは2.5×10-8m乃至3×10-7m、より好ましくは2.5×10-8m乃至2×10-7m、一層好ましくは1×10-7m乃至1.8×10-7mを例示することができる。赤色の光(620nm乃至750nmの光)を吸収する有機光電変換層を備えた赤色に感度を有する赤色用撮像素子における有機光電変換層23にあっては、p型有機半導体として、ペンタセン誘導体、キナクリドン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体、フタロシアニン誘導体、サブフタロシアニン誘導体、複素環化合物を配位子とする金属錯体等を挙げることができるし、n型有機半導体として、フラーレン及びフラーレン誘導体、p型有機半導体よりもHOMO及びLUMOが大きい(深い)有機半導体、透明な無機金属酸化物を挙げることができる。n型有機半導体として、具体的には、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含有する複素環化合物、例えば、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、イソキノリン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンズオキサゾール、カルバゾール、ベンゾフラン、ジベンゾフラン等を分子骨格の一部に有する有機分子、有機金属錯体やサブフタロシアニン誘導体を挙げることができる。有機光電変換層の厚さは、限定するものではないが、例えば、1×10-8m乃至5×10-7m、好ましくは2.5×10-8m乃至3×10-7m、より好ましくは2.5×10-8m乃至2×10-7mを例示することができる。
【0049】
図2Aに模式的な一部断面図を示す評価用の撮像素子を以下の方法で作製した。尚、評価用の撮像素子を緑色用撮像素子とした。
【0050】
石英基板から成る基板20上に、スパッタリング装置を用いて、厚さ120nmのITO膜を成膜し、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術に基づき、ITO膜から成る第1電極(陽極)21を得た。次いで、基板20及び第1電極21上に絶縁層31を形成し、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術に基づき絶縁層31をパターニングすることで、1mm角の第1電極21を露出させた後、洗剤、アセトン、エタノールを用いて超音波洗浄を行った。そして、基板を乾燥後、更に、紫外線/オゾン処理を10分間行った。次いで、基板20を真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、蒸着槽を5.5×10-5Paに減圧した。
【0051】
その後、シャドーマスクを用いた真空蒸着法に基づき、構造式(3)を有する材料から成る第1キャリアブロッキング層22を、膜厚5nm、50nm、100nm、150nm、200nmの5水準の膜厚で第1電極21上に成膜した。引き続き、真空蒸着装置中でキナクリドン(QD)とサブフタロシアニンクロライド(SubPc-Cl)を、蒸着速度比1:1で、厚さ120nm、共蒸着し、有機光電変換層23を成膜した。有機光電変換層23は、p型有機半導体とn型有機半導体の混合層(バルクヘテロ構造)から構成されている。更に、引き続き、厚さ5nmのNBphenを真空蒸着し、第2キャリアブロッキング層24を形成した。その後、不活性雰囲気下、別のスパッタリング装置に搬入し、第2キャリアブロッキング層24上に、厚さ60nmのITOから成る第2電極(陰極)25を成膜した。その後、150゜Cの窒素雰囲気中で2時間30分のアニール処理を行い、
図2Aに模式的な一部断面図を示す実施例1の評価用の撮像素子を得た。
【0052】
【0053】
〈サブフタロシアニンクロライド(SubPc-Cl)〉
【化5】
【0054】
【0055】
〈比較例1A〉
下記の化合物-Aを用いて、膜厚5nm、50nm、100nmの3水準の膜厚で第1キャリアブロッキング層を成膜したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1Aの撮像素子を作製した。
【0056】
【0057】
〈比較例1B〉
下記の化合物-Bを用いて、膜厚5nm、50nm、100nmの3水準の膜厚で第1キャリアブロッキング層を成膜したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1Bの撮像素子を作製した。
【0058】
【0059】
〈比較例1C〉
下記の化合物-Cを用いて、膜厚5nm、50nm、100nmの3水準の膜厚で第1キャリアブロッキング層を成膜したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1Cの撮像素子を作製した。
【0060】
【0061】
実施例1、並びに、比較例1A、比較例1B及び比較例1Cの撮像素子に波長560nm、2マイクロワット/cm
2の光を照射しながら、第2電極(陰極)と第1電極(陽極)との間に-2.6ボルトの電圧(所謂逆バイアス電圧2.6ボルト)を印加し、外部量子効率(EQE)を求めた。その結果を、以下の表1及び
図4Aに示す。尚、
図4Aにおいては、実施例1、並びに、比較例1A、比較例1B及び比較例1Cの膜厚5nm、50nm、100nmのデータを示すが、実施例1のデータを「A」、比較例1Aのデータを「B」、比較例1Bのデータを「C」、比較例1Cのデータを「D」で示す。後述する
図4Bにおいても同様である。
【0062】
【0063】
有機EL素子及び有機薄膜太陽電池で用いられる芳香族アミン化合物及びカルバゾール誘導体を第1キャリアブロッキング層に用いた比較例1A、比較例1B及び比較例1Cでは、第1キャリアブロッキング層の厚さを50nm、100nmと厚くするに従い、外部量子効率が大幅に低下し、また、低容量化による有機モジュールの変換効率向上を達成できない。一方、構造式(3)を有する材料を第1キャリアブロッキング層に用いた実施例1の撮像素子にあっては、第1キャリアブロッキング層の厚さが5nm乃至200nmの範囲において、外部量子効率の低下が無く、撮像素子の厚膜化が可能であり、低容量化に有効なことが判った。
【0064】
実施例1、並びに、比較例1A、比較例1B及び比較例1Cの撮像素子の第2電極(陰極)と第1電極(陽極)との間に暗所において-2.6ボルトの電圧を印加して暗電流を測定した結果を、以下の表2に示す。また、表3に、第1キャリアブロッキング層の各膜厚における実施例1の暗電流値を基準とした場合の、比較例1A、比較例1B及び比較例1Cの暗電流の相対値を示す。
【0065】
【0066】
【0067】
表2及び表3の結果から、比較例1A、比較例1B及び比較例1Cでは、第1キャリアブロッキング層の厚さが厚くなるに従い、暗電流が増加する傾向が認められる。特に50nm、100nmの厚さでは実施例1と比較して2倍以上の暗電流値を示す。一方、構造式(3)を有する材料を第1キャリアブロッキング層として用いた実施例1の撮像素子にあっては、暗電流値は、第1キャリアブロッキング層の厚さが5nm乃至100nmの範囲では微増傾向にあるものの、十分低い値に抑えられていたが、150nm、200nmと厚くなるに従い、暗電流値は増大した。従って、これらの結果から、第1キャリアブロッキング層の厚さは、5nm乃至150nm以下、好ましくは5nm乃至100nmであることが望ましいことが判った。厚さが或る程度以上厚くなると、暗電流値が増加する原因は掴めていないが、厚膜化による第1キャリアブロッキング層表面のラフネスの増大や、応力の変化により、第1キャリアブロッキング層と有機光電変換層との界面状態の変化等が影響しているものと考えられる。以上の結果から、第1キャリアブロッキング層の厚さが5nm乃至150nmの範囲では、第1キャリアブロッキング層に構造式(3)を有する材料を用いた場合、大きなS/N比を取ることができ、低容量化に適した撮像素子の提供が可能である。
提供が可能である。
【0068】
更に、第1キャリアブロッキング層の厚さを100nmとした撮像素子の第2電極(陰極)と第1電極(陽極)との間に-1ボルトから-10ボルト(所謂逆バイアス電圧1ボルトから10ボルト)までの電圧を印加して暗所で暗電流を測定した結果を表4に示し、グラフ化した結果を
図4Bに示す。
【0069】
【0070】
比較例1A、比較例1B及び比較例1Cと比較して、実施例1では、印加電圧の絶対値が増加しても暗電流の増加分が少なく、暗電流の耐圧特性に優れていることが判る。つまり、第1キャリアブロッキング層に構造式(3)を有する材料を用いた場合、大きなS/N比を取ることができるだけでなく、撮像素子の高電圧駆動を可能にする暗電流の耐圧特性にも優れていることが判る。
【0071】
第1キャリアブロッキング層は、電気特性のみならず、厚膜化しても下方に位置する別の撮像素子を構成する有機光電変換層や無機光電変換層の光電変換を妨げないように、可視光領域の光を可能な限り吸収しないことが求められる。前述したとおり、一般に、有機化合物は、450nmより短波長側の波長領域での吸収強度が高いことが多く、撮像素子の有機光電変換層で吸収すべき青色の光を吸収してしまうといった問題がある。それ故、分光シミュレーション上、キャリアブロッキング層の光吸収割合は、波長450nmにおいて3%以下、波長425nmにおいて30%以下、波長400nmにおいて80%以下であることが好ましいと算出されている。
【0072】
構造式(3)を有する材料を薄膜化した場合の可視光領域での光吸収を測定するために分光測定を行った。具体的には、石英基板上に、厚さ50nmの構造式(3)の材料から成る薄膜を真空蒸着法に基づき成膜し、光透過率測定及び光反射率測定から算出した膜厚150nmの場合の光吸収スペクトル(光吸収割合)を求めた。その結果を
図5に示すが、構造式(3)を有する材料は、450nm、425nm、400nmにおける光吸収割合が、それぞれ、1.1%、25.5%、77.7%であり、3つの波長における光吸収割合の目標値を達成できることが判った。つまり、分光特性上も、構造式(3)を有する材料は、150nmまでの厚膜化が可能な材料であることが判る。即ち、構造式(3)を有する材料は、優れた光吸収特性を有し、撮像素子の光電変換機能を妨げることが無いことが判った。
【0073】
図3に、実施例1の撮像装置の概念図を示す。実施例1の撮像装置40は、半導体基板(例えばシリコン半導体基板)上に、上述した撮像素子11が2次元アレイ状に配列された撮像領域41、並びに、その周辺回路としての垂直駆動回路42、カラム信号処理回路43、水平駆動回路44、出力回路45及び制御回路46等から構成されている。尚、これらの回路は周知の回路から構成することができるし、また、他の回路構成(例えば、従来のCCD撮像装置やCMOS撮像装置にて用いられる各種の回路)を用いて構成することができることは云うまでもない。
【0074】
制御回路46は、垂直同期信号、水平同期信号及びマスタクロックに基づいて、垂直駆動回路42、カラム信号処理回路43及び水平駆動回路44の動作の基準となるクロック信号や制御信号を生成する。そして、生成されたクロック信号や制御信号は、垂直駆動回路42、カラム信号処理回路43及び水平駆動回路44に入力される。
【0075】
垂直駆動回路42は、例えば、シフトレジスタによって構成され、撮像領域41の各撮像素子11を行単位で順次垂直方向に選択走査する。そして、各撮像素子11における受光量に応じて生成した電流(信号)に基づく画素信号は、垂直信号線47を介してカラム信号処理回路43に送られる。
【0076】
カラム信号処理回路43は、例えば、撮像素子11の列毎に配置されており、1行分の撮像素子11から出力される信号を撮像素子毎に黒基準画素(図示しないが、有効画素領域の周囲に形成される)からの信号によって、ノイズ除去や信号増幅の信号処理を行う。カラム信号処理回路43の出力段には、水平選択スイッチ(図示せず)が水平信号線48との間に接続されて設けられる。
【0077】
水平駆動回路44は、例えばシフトレジスタによって構成され、水平走査パルスを順次出力することによって、カラム信号処理回路43の各々を順次選択し、カラム信号処理回路43の各々から信号を水平信号線48に出力する。
【0078】
出力回路45は、カラム信号処理回路43の各々から水平信号線48を介して順次供給される信号に対して、信号処理を行って出力する。
【0079】
ここで、有機光電変換層それ自体がカラーフィルタとしても機能するので、カラーフィルタを配設しなくとも色分離が可能である。
【0080】
以上のとおり、実施例1の撮像素子においては、有機光電変換層と第1電極との間に配されるキャリアブロッキング層は、可視光の吸収が少ない構造式(1)、構造式(2)あるいは構造式(3)を有する材料から構成されるので、キャリアブロッキング層を含む撮像素子、あるいは、光入射方向から見て下層にある撮像素子の光電変換を妨げず、良好な外部量子効率と分光特性を両立させることができる。しかも、暗電流を抑制することができ、また、暗電流の耐圧特性を改善することができる。即ち、キャリアブロッキング層は、光電流に関してはキャリア輸送層として機能する一方、暗電流に関してはキャリアブロッキング層として機能すると考えられる。更には、キャリアブロッキング層の膜厚を5nm乃至150nm、好ましくは5nm乃至100nmとすることで、従来の撮像素子の1つの課題であった電気容量の低容量化が可能となり、良好な分光特性も同時に確保することができる。そして、以上の結果として、綺麗な画出しが可能な撮像装置を実現することができる。
【実施例2】
【0081】
実施例2は、実施例1の変形である。実施例2においては、実施例1と同様に、シャドーマスクを用いた真空蒸着法に基づき、構造式(3)を有する材料から成り、膜厚5nmの第1キャリアブロッキング層22を第1電極21上に成膜した。そして、引き続き、真空蒸着装置中で、但し、実施例1とは異なり、2,9-ジメチルキナクリドン(下記の構造式を参照)とサブフタロシアニンクロライド(SubPc-Cl)を、蒸着速度比1:1で、厚さ120nm、共蒸着し、有機光電変換層23を成膜した。有機光電変換層23は、p型有機半導体とn型有機半導体の混合層(バルクヘテロ構造)から構成されている。以降、実施例1と同様にして、実施例2の評価用の撮像素子を得た。実施例2の評価用の撮像素子の断面構造は、
図2Aに示したと同様である。
【0082】
【0083】
〈比較例2B〉
上記の化合物-Bを用いて、膜厚5nmの第1キャリアブロッキング層を成膜したこと以外は、実施例2と同様にして、比較例2Bの撮像素子を作製した。
【0084】
〈比較例2C〉
上記の化合物-Cを用いて、膜厚5nmの第1キャリアブロッキング層を成膜したこと以外は、実施例2と同様にして、比較例2Cの撮像素子を作製した。
【0085】
〈比較例2D〉
下記の化合物-Dを用いて、膜厚5nmの第1キャリアブロッキング層を成膜したこと以外は、実施例2と同様にして、比較例2Dの撮像素子を作製した。
【0086】
【0087】
実施例2、比較例2B、比較例2C、比較例2Dの撮像素子において、第2電極(陰極)25と第1電極(陽極)21との間に-3ボルト(所謂逆バイアス電圧3ボルト)を印加しながら、波長560nm、2マイクロワット/cm2の光を照射し、次いで、光の照射を中止した(具体的には、シャッターを閉じた)。そして、光照射中止直前に第2電極と第1電極との間を流れる電流量をI0とし、光照射中止から電流量が(0.03×I0)となるまでの時間、即ち、I0の値に対して3%の値となるまでの時間をT0としたとき、T0の値(単位:ミリ秒)を測定した。その結果を、以下の表5に示す。尚、表5中、「残像比」は、実施例2のT0の値を「1」としたときの、各比較例のT0の相対値である。
【0088】
〈表5〉
T0 残像比
実施例2 8 1.0
比較例2B 28 3.4
比較例2C 27 3.3
比較例2D 30 3.7
【0089】
表5から、比較例2B、比較例2C及び比較例2Dの残像時間は、実施例2の残像時間と比較して3倍以上であり、第1キャリアブロッキング層に構造式(3)を有する材料を用いた場合、優れた残像特性を得られることが判った。また、表6に示すように、逆バイアス電圧3ボルトを印加したときの外部量子効率(EQE)も実施例2の方が優れた値を示す。つまり、構造式(3)を有する材料は、感度を確保しつつ、残像特性を改善できる材料である。
【0090】
〈表6〉
外部量子効率
実施例2 57.0%
比較例2B 56.7%
比較例2C 54.7%
比較例2D 56.4%
【0091】
また、構造式(3)を有する材料から成る第1キャリアブロッキング層を5nm、50nm、100nmと膜厚を変えた場合の外部量子効率(EQE)とT0(単位:ミリ秒)の値を表7に示す。表7から、第1キャリアブロッキング層の厚さが100nmまでは、残像時間T0に大きな変化はなく、構造式(3)を有する材料を第1キャリアブロッキング層として用いれば、残像特性の向上、量子効率の向上に加えて、所望の電気容量が確保可能となる。
【0092】
〈表7〉
実施例1の第1キャリアブロッキング層厚さ EQE T0
5nm 69.6% 8
50nm 67.9% 4
100nm 69.7% 6
【0093】
更には、第1電極(具体的には、厚さ100nmの白金/厚さ0.8nmの酸化モリブデンの積層構造を有する第1電極)と第2電極(具体的には、厚さ3nmの酸化モリブデン/厚さ100nmの金の積層構造を有する第2電極)との間に厚さ200nmの構造式(3)を有する材料から成る第1キャリアブロッキング層を形成した試験用の積層構造体を作製し、第2電極(陰極)と第1電極(陽極)との間に-1ボルトから-10ボルト(所謂逆バイアス電圧1ボルトから10ボルト)までの電圧を印加したときのキャリア移動度(単位:×10-2cm2/V・s)を求めた結果を、以下の表8に示すが、キャリア移動度は、逆バイアス電圧の値に対する依存性が無く、しかも、芳香族アミン系材料やカルバゾール系材料と比較して、3桁程度高いキャリア移動度を示した。
【0094】
〈表8〉
逆バイアス電圧 キャリア移動度
1ボルト 6.07
3ボルト 6.23
5ボルト 6.33
10ボルト 6.53
【0095】
また、第1電極(具体的には、厚さ100nmの白金/厚さ0.8nmの酸化モリブデンの積層構造を有する第1電極)と第2電極(具体的には、厚さ3nmの酸化モリブデン/厚さ100nmの金の積層構造を有する第2電極)との間に厚さ200nmの構造式(3)を有する材料及び芳香族アミン系材料から成る第1キャリアブロッキング層を形成した試験用の積層構造体を作製し、第2電極(陰極)と第1電極(陽極)との間に-1ボルト(所謂逆バイアス電圧1ボルト)までの電圧を印加したときのキャリア移動度(単位:cm
2/V・s)を求めた結果、及び、厚さ5nmの第1キャリアブロッキング層としてこれらの材料を用いた撮像素子におけるT
0の値(単位:ミリ秒)を、以下の表9に示す。更には、キャリア移動度とT
0の値の関係を
図6に示す。
【0096】
〈表9〉
キャリア移動度 T0
構造式(3) 6.07×10-2 8
芳香族アミン系材料(A) 1.00×10-6 28
芳香族アミン系材料(B) 7.43×10-7 30
芳香族アミン系材料(C) 1.00×10-5 27
【0097】
表9から、構造式(3)を有する材料は、芳香族アミン系材料と比較して、3桁程度高いキャリア移動度を示した。また、残像特性も格段に優れていることが判る。
【実施例3】
【0098】
実施例3は、実施例1~実施例2の撮像素子の変形であるが、本開示の積層型撮像素子及び本開示の第2の態様に係る撮像装置に関する。即ち、実施例3の積層型撮像素子(縦分光方式の撮像素子)は、実施例1~実施例2において説明した撮像素子が、少なくとも2つ、積層されて成る。また、実施例3の撮像装置は、このような積層型撮像素子を、複数、備えている。具体的には、実施例3の積層型撮像素子は、概念図を
図7Aに示すように、実施例1~実施例2において説明した青色用撮像素子、緑色用撮像素子及び赤色用撮像素子の3つの撮像素子(3つの副画素)が、垂直方向に積層された構成を有する。即ち、副画素を積層して1画素とする構造を有する積層型撮像素子を得ることができる。青色用撮像素子が最上層に位置し、緑色用撮像素子が中間に位置し、赤色用撮像素子が最下層に位置する。但し、積層順はこれに限定するものではない。
【0099】
あるいは又、概念図を
図7Bに示すように、実施例1~実施例2において説明した撮像素子(図示した例では、青色用撮像素子及び緑色用撮像素子)をシリコン半導体基板の上に設け、係る撮像素子の下方に位置するシリコン半導体基板の内部に1又は複数の撮像素子(図示した例では、赤色に感度を有する撮像素子)を設けることで、撮像素子が積層化された構造、即ち、副画素を積層して1画素とする構造を有する積層型撮像素子を得ることができる。尚、シリコン半導体基板に形成された撮像素子は、裏面照射型であることが好ましいが、表面照射型とすることもできる。シリコン半導体基板の内部に光電変換層を設ける代わりに、撮像素子を、エピタキシャル成長法にて半導体基板上に形成することもできるし、あるいは又、所謂SOI構造におけるシリコン層に形成することもできる。
【0100】
尚、実施例3の積層型撮像素子おいて、下方に位置する撮像素子の受光を妨げないように、上方に位置する撮像素子において、第1電極(陽極)は、例えばITOといった透明導電材料から成り、第2電極(陰極)も、例えば、ITOといった透明導電材料から成る。
【0101】
積層型撮像素子を備えた実施例3の撮像装置にあっては、カラーフィルタを用いて青色、緑色、赤色の分光を行うのではなく、同一画素内で光の入射方向において、複数種の波長の光に対して感度を有する撮像素子を積層するため、感度の向上及び単位体積当たりの画素密度の向上を図ることができる。また、有機材料は光吸収係数が高いため、有機光電変換層の膜厚を従来のSi系光電変換層と比較して薄くすることができ、隣接画素からの光漏れや、光の入射角の制限が緩和される。更には、従来のSi系撮像素子では3色の画素間で補間処理を行って色信号を作成するために偽色が生じるが、積層型撮像素子を備えた実施例3の撮像装置にあっては、偽色の発生が抑えられる。
【0102】
以上、本開示を好ましい実施例に基づき説明したが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例にて説明した撮像素子、積層型撮像素子、撮像装置の構造や構成、製造条件、製造方法、使用した材料は例示であり、適宜変更することができる。
【0103】
外部量子効率とキャリアブロッキング層の厚さといった観点から撮像素子を表現すると、本開示の撮像素子は、少なくとも、第1電極、第2電極、有機光電変換層及びキャリアブロッキング層を備えた撮像素子であって、キャリアブロッキング層は、厚さが5×10-9m乃至1.0×10-7m、好ましくは、5×10-8m乃至1.0×10-7mであり、波長560nm、2マイクロワット/cm2の光を照射しながら、第2電極(陰極)と第1電極(陽極)との間に-2.6ボルトの電圧(所謂逆バイアス電圧2.6ボルト)を印加したときの外部量子効率の値は0.6以上である。
【0104】
あるいは又、暗電流とキャリアブロッキング層の厚さといった観点から撮像素子を表現すると、本開示の撮像素子は、少なくとも、第1電極、第2電極、有機光電変換層及びキャリアブロッキング層を備えた撮像素子であって、キャリアブロッキング層は、5×10-9m乃至1.0×10-7m、好ましくは、5×10-8m乃至1.0×10-7mであり、第2電極(陰極)と第1電極(陽極)との間に-1ボルト乃至-10ボルトの電圧(所謂逆バイアス電圧1ボルト乃至10ボルト)を印加したときの暗電流の値は2.5×10-10アンペア/cm2以下である。
【0105】
あるいは又、残像特性とキャリアブロッキング層の厚さといった観点から撮像素子を表現すると、本開示の撮像素子は、少なくとも、第1電極、第2電極、有機光電変換層及びキャリアブロッキング層を備えた撮像素子であって、キャリアブロッキング層は、5×10-9m乃至1.0×10-7m、好ましくは、5×10-8m乃至1.0×10-7mであり、第2電極と第1電極との間に-3ボルト(所謂逆バイアス電圧3ボルト)を印加しながら、波長560nm、2マイクロワット/cm2の光を照射し、次いで、光の照射を中止したとき、光照射中止直前に第2電極と第1電極との間を流れる電流量をI0とし、光照射中止から電流量が(0.03×I0)となるまでの時間をT0としたとき、T0は10ミリ秒以下である。
【0106】
あるいは又、光吸収割合とキャリアブロッキング層の厚さといった観点から撮像素子を表現すると、本開示の撮像素子は、少なくとも、第1電極、第2電極、有機光電変換層及びキャリアブロッキング層を備えた撮像素子であって、キャリアブロッキング層は、5×10-9m乃至1.0×10-7m、好ましくは、5×10-8m乃至1.0×10-7mであり、キャリアブロッキング層の光吸収割合は、波長450nmにおいて3%以下、波長425nmにおいて30%以下、波長400nmにおいて80%以下である。
【0107】
あるいは又、キャリア移動度とキャリアブロッキング層の厚さといった観点から撮像素子を表現すると、本開示の撮像素子は、少なくとも、第1電極、第2電極、有機光電変換層及びキャリアブロッキング層を備えた撮像素子であって、キャリアブロッキング層は、5×10-9m乃至1.0×10-7m、好ましくは、5×10-8m乃至1.0×10-7mであり、キャリアブロッキング層を構成する材料のキャリア移動度は、9×10-4cm2/V・s以上、好ましくは、9×10-3cm2/V・s以上、より好ましくは6×10-2cm2/V・s以上である。
【0108】
尚、本開示は、以下のような構成を取ることもできる。
[A01]《撮像素子:第1の態様》
少なくとも、第1電極、第2電極、有機光電変換層及びキャリアブロッキング層を備えた撮像素子であって、
キャリアブロッキング層は、下記の構造式(1)を有する材料から成り、厚さが5×10
-9m乃至1.5×10
-7m、好ましくは、5×10
-9m乃至1.0×10
-7mである撮像素子。
【化12】
ここで、
R
1,R
2は、それぞれ独立に、水素、アリール基、アルキル基から選ばれた基であり、アリール基は、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、ナフチルフェニル基、トリル基、キシリル基、炭素数が2乃至6のアルキル基を置換基とするフェニル基、アントラセニル基、アントラセニルフェニル基、フェナントリル基、フェナントリルフェニル基、ピレニル基、ピレニルフェニル基、テトラセニル基、テトラセニルフェニル基、フルオランテニル基、フルオランテニルフェニル基、ピリジニル基、ピリジニルフェニル基、キノリニル基、キノリニルフェニル基、アクリジニル基、アクリジニルフェニル基、インドール基、インドリルフェニル基、イミダゾール基、イミダゾリルフェニル基、ベンズイミダゾール基、ベンズイミダゾリルフェニル基、チエニル基、及び、チエニルフェニル基から成る群から選択された基であり、アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、及び、ヘキシル基から成る群から選択された基であり、直鎖状のアルキル基であってもよいし、分岐型のアルキル基でもよい。
[A02]《撮像素子:第2の態様》
少なくとも、第1電極、第2電極、有機光電変換層及びキャリアブロッキング層を備えた撮像素子であって、
キャリアブロッキング層は、下記の構造式(2)を有する材料から成り、厚さが5×10
-9m乃至1.5×10
-7m、好ましくは、5×10
-9m乃至1.0×10
-7mである撮像素子。
【化13】
ここで、Ar
1,Ar
2は、それぞれ独立に、置換基を有することあるアリール基であり、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、ナフチルフェニル基、トリル基、キシリル基、炭素数が2乃至6のアルキル基を置換基とするフェニル基、アントラセニル基、アントラセニルフェニル基、フェナントリル基、フェナントリルフェニル基、ピレニル基、ピレニルフェニル基、テトラセニル基、テトラセニルフェニル基、フルオランテニル基、フルオランテニルフェニル基、ピリジニル基、ピリジニルフェニル基、キノリニル基、キノリニルフェニル基、アクリジニル基、アクリジニルフェニル基、インドール基、インドリルフェニル基、イミダゾール基、イミダゾリルフェニル基、ベンズイミダゾール基、ベンズイミダゾリルフェニル基、チエニル基、及び、チエニルフェニル基から成る群から選択されたアリール基である。
[A03]《撮像素子:第3の態様》
少なくとも、第1電極、第2電極、有機光電変換層及びキャリアブロッキング層を備えた撮像素子であって、
キャリアブロッキング層は、下記の構造式(3)を有する材料から成り、厚さが5×10
-9m乃至1.5×10
-7m、好ましくは、5×10
-9m乃至1.0×10
-7mである撮像素子。
【化14】
[A04]
少なくとも、第1電極、第2電極、有機光電変換層及びキャリアブロッキング層を備えた撮像素子であって、
キャリアブロッキング層は、厚さが5×10
-9m乃至1.0×10
-7m、好ましくは、5×10
-8m乃至1.0×10
-7mであり、
波長560nm、2マイクロワット/cm
2の光を照射しながら、第2電極(陰極)と第1電極(陽極)との間に-2.6ボルトの電圧を印加したときの外部量子効率の値は0.6以上である撮像素子。
[A05]
少なくとも、第1電極、第2電極、有機光電変換層及びキャリアブロッキング層を備えた撮像素子であって、
キャリアブロッキング層は、5×10
-9m乃至1.0×10
-7m、好ましくは、5×10
-8m乃至1.0×10
-7mであり、
第2電極(陰極)と第1電極(陽極)との間に-1ボルト乃至-10ボルトの電圧を印加したときの暗電流の値は2.5×10
-10アンペア/cm
2以下である撮像素子。
[A06]
少なくとも、第1電極、第2電極、有機光電変換層及びキャリアブロッキング層を備えた撮像素子であって、
キャリアブロッキング層は、5×10
-9m乃至1.0×10
-7m、好ましくは、5×10
-8m乃至1.0×10
-7mであり、
第2電極と第1電極との間に-3ボルトを印加しながら、波長560nm、2マイクロワット/cm
2の光を照射し、次いで、光の照射を中止したとき、光照射中止直前に第2電極と第1電極との間を流れる電流量をI
0とし、光照射中止から電流量が(0.03×I
0)となるまでの時間をT
0としたとき、T
0は10ミリ秒以下である撮像素子。
[A07]
少なくとも、第1電極、第2電極、有機光電変換層及びキャリアブロッキング層を備えた撮像素子であって、
キャリアブロッキング層は、5×10
-9m乃至1.0×10
-7m、好ましくは、5×10
-8m乃至1.0×10
-7mであり、
キャリアブロッキング層の光吸収割合は、波長450nmにおいて3%以下、波長425nmにおいて30%以下、波長400nmにおいて80%以下である撮像素子。
[A08]
少なくとも、第1電極、第2電極、有機光電変換層及びキャリアブロッキング層を備えた撮像素子であって、
キャリアブロッキング層は、5×10
-9m乃至1.0×10
-7m、好ましくは、5×10
-8m乃至1.0×10
-7mであり、
キャリアブロッキング層を構成する材料のキャリア移動度は、9×10
-4cm
2/V・s以上、好ましくは、9×10
-3cm
2/V・s以上、より好ましくは6×10
-2cm
2/V・s以上である撮像素子。
[A09]第1電極は陽極を構成し、第2電極は陰極を構成し、
キャリアブロッキング層は、第1電極と有機光電変換層との間に設けられている[A01]乃至[A08]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[A10]キャリアブロッキング層の光吸収割合は、波長450nmにおいて3%以下、波長425nmにおいて30%以下、波長400nmにおいて80%以下である[A01]乃至[A09]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[A11]キャリアブロッキング層を構成する材料のキャリア移動度は、9×10
-4cm
2/V・s以上、好ましくは、9×10
-3cm
2/V・s以上、より好ましくは6×10
-2cm
2/V・s以上である[A01]乃至[A10]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[A12]第2電極と第1電極との間に-3ボルトを印加しながら、波長560nm、2マイクロワット/cm
2の光を照射し、次いで、光の照射を中止したとき、光照射中止直前に第2電極と第1電極との間を流れる電流量をI
0とし、光照射中止から電流量が(0.03×I
0)となるまでの時間をT
0としたとき、T
0は10ミリ秒以下である[A01]乃至[A11]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[A13]第1電極及び第2電極は透明導電材料から成る[A01]乃至[A12]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[A14]第1電極及び第2電極のいずれか一方は透明導電材料から成り、他方は金属材料から成る[A01]乃至[A12]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[A15]第1電極は透明導電材料から成り、第2電極は、Al、Al-Si-Cu又はMg-Agから成る[A14]に記載の撮像素子。
[A16]第2電極は透明導電材料から成り、第1電極は、Al-Nd又はASCから成る[A14]に記載の撮像素子。
[B01]《積層型撮像素子》
[A01]乃至[A16]のいずれか1項に記載の撮像素子が、少なくとも2つ、積層されて成る積層型撮像素子。
[C01]《撮像装置:第1の態様》
[A01]乃至[A16]のいずれか1項に記載の撮像素子を、複数、備えた撮像装置。
[C02]《撮像装置:第2の態様》
[B01]に記載の積層型撮像素子を、複数、備えた撮像装置。
【符号の説明】
【0109】
11・・・撮像素子、20・・・基板、21・・・第1電極(陽極)、22・・・キャリアブロッキング層(第1キャリアブロッキング層)、23・・・有機光電変換層、24・・・第2キャリアブロッキング層、25・・・第2電極(陰極)、31・・・絶縁層、40・・・撮像装置、41・・・撮像領域、42・・・垂直駆動回路、43・・・カラム信号処理回路、44・・・水平駆動回路、45・・・出力回路、46・・・制御回路、47・・・垂直信号線、48・・・水平信号線