(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】極端紫外線リソグラフィ用ペリクル
(51)【国際特許分類】
G03F 1/62 20120101AFI20241112BHJP
【FI】
G03F1/62
(21)【出願番号】P 2023118006
(22)【出願日】2023-07-20
【審査請求日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】10-2022-0093912
(32)【優先日】2022-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0058646
(32)【優先日】2023-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514205126
【氏名又は名称】エスアンドエス テック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ジュ-ヒ
(72)【発明者】
【氏名】パク,チョル-ギュン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ムン-ス
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドン-ホイ
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-515322(JP,A)
【文献】特開2022-029394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 1/62
G03F 1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極端紫外線露光光が透過するペリクル部を備える極端紫外線リソグラフィ用ペリクルであって、
前記ペリクル部は、EUV露光光の照射時に発生する熱を放射するための熱放射層を備え、
前記熱放射層は、金属及びシリコンを含み、
前記熱放射層は、金属の含有量がシリコンの含有量よりも多
く、
前記熱放射層は、金属:シリコン=1:0.6~0.99(at%)の含量比を有することを特徴とする極端紫外線リソグラフィ用ペリクル。
【請求項2】
前記熱放射層の前記金属は、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、プラチナ(Pt)、カドミウム(Cd)、ジルコニウム(Zr)、リチウム(Li)、セレン(Se)、イットリウム(Y)、ベリリウム(Be)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、ルテニウム(Ru)、ランタン(La)、セリウム(Ce)のうち1つ以上を含むことを特徴とする請求項
1に記載の極端紫外線リソグラフィ用ペリクル。
【請求項3】
前記熱放射層は、ホウ素(B)、炭素(C)、酸素(O)、窒素(N)のうち1つ以上をさらに含むことを特徴とする請求項
2に記載の極端紫外線リソグラフィ用ペリクル。
【請求項4】
前記ペリクル部は、
前記ペリクル部の最外面に配置され、前記ペリクル部の水素ラジカル反応を防止するための1つ以上のキャッピング層、及び、
前記熱放射層と前記キャッピング層との間に配置され、前記キャッピング層と前記熱放射層との間の
原子の拡散を防止するための補助層、
をさらに含むことを特徴とする請求項
2に記載の極端紫外線リソグラフィ用ペリクル。
【請求項5】
前記キャッピング層は、シリコン(Si)、ホウ素(B)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)のうち1つ以上を含み、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)のうち1つ以上をさらに含むことを特徴とする請求項
4に記載の極端紫外線リソグラフィ用ペリクル。
【請求項6】
前記補助層は、BC、BN、BNC、SiB、SiC、SiO、SiN、ACL(Amorphous Carbon Layer、非晶質炭素層)、B-ACL、MeSi(Meは金属)のうち1つを含み、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)のうち1つ以上をさらに含むことを特徴とする請求項
5に記載の極端紫外線リソグラフィ用ペリクル。
【請求項7】
複数の前記熱放射層及び複数の前記補助層が交互に積層されることを特徴とする請求項
4に記載の極端紫外線リソグラフィ用ペリクル。
【請求項8】
2つの前記熱放射層及び3つの前記補助層が交互に積層されることを特徴とする請求項
7に記載の極端紫外線リソグラフィ用ペリクル。
【請求項9】
前記ペリクル部は30nm以下の厚みを有することを特徴とする請求項
1に記載の極端紫外線リソグラフィ用ペリクル。
【請求項10】
前記熱放射層は15nm以下の厚みを有することを特徴とする請求項
9に記載の極端紫外線リソグラフィ用ペリクル。
【請求項11】
前記補助層は3nm以下の厚みを有することを特徴とする請求項
4に記載の極端紫外線リソグラフィ用ペリクル。
【請求項12】
前記キャッピング層は5nm以下の厚みを有することを特徴とする請求項
4に記載の極端紫外線リソグラフィ用ペリクル。
【請求項13】
前記ペリクル部は前記露光光に対して90%以上の透過率を有することを特徴とする請求項
1に記載の極端紫外線リソグラフィ用ペリクル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペリクルに関し、より詳しくは、EUVリソグラフィに用いられるEUV用フォトマスクに装着される極端紫外線リソグラフィ用ペリクルに関する。
【背景技術】
【0002】
微細なパターンを具現するために、波長13.5nmのEUV(Extreme Ultra-Violet)露光光を使用するEUVリソグラフィ技術が開発されている。リソグラフィ工程では、パターニングのための原版としてフォトマスク(Photomask)が使用される。フォトマスク上に粒子(particle)や異物などの不純物が付いていると、この不純物により露光光が吸収されたり反射されたりして、転写されたパターンが損傷される可能性がある。これは、半導体装置の性能や歩留まりの低下をもたらす。よって、フォトマスクの表面への不純物の付着を防ぐために、フォトマスクにペリクル(pellicle)を貼り付ける方法が使用されている。
【0003】
ペリクルはフォトマスクの表面上部に配置され、ペリクル上に不純物が付着しても、フォトリソグラフィ工程において焦点はフォトマスクのパターン上に位置しているため、ペリクル上の不純物は焦点が合わず、ウエハの表面に転写されない。最近、回路線幅の微細化に伴い、パターン損傷に影響を及ぼし得る不純物のサイズもまた小さくなっているため、フォトマスクの保護のためのペリクルの役割がますます重要になりつつある。
【0004】
一般的にペリクルは、EUV露光光に対する透過率を確保するための中心層と、この中心層を保護するためのキャッピング層とを備える。中心層は、金属とシリコンを含む材質から形成され、キャッピング層は、露光装置内で中心層が水素ラジカル反応を起こして損傷するのを防ぐために、水素ラジカルとの反応を起こさない材質から形成される。
【0005】
しかし、かかるペリクルには、露光工程において、継続的にEUV露光光が入射され、この露光光に因り薄膜に熱が発生する。ペリクルに発生した熱は、ペリクルの機械的強度を低下させ、ペリクル薄膜を破損させるため、薄膜の熱を効果的に放出させる方法が要望される。一般的に、EUVリソグラフィ工程では、250WのEUV露光光パワーが使用されてきたが、最近では、露光工程の生産性を向上させるために、EUV露光光のパワーを600W以上に高める方法が使用されている。これにより、ペリクルの放熱性能の改善がますます重要な問題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、要求される光学的透過率を確保しながらも、熱放射性能を改善した極端紫外線リソグラフィ用ペリクルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、極端紫外線露光光が透過するペリクル部を備える極端紫外線リソグラフィ用ペリクルであって、上記ペリクル部はEUV露光光の照射時に発生する熱を放射するための熱放射層を備え、上記熱放射層は金属及びシリコンを含み、上記熱放射層は金属の含有量がシリコンの含有量よりも多いことを特徴とする極端紫外線リソグラフィ用ペリクルを提示する。
【0008】
上記熱放射層は、金属:シリコン=1:0.6~0.99(at%、アトミックパーセント)の含量比を有することが好ましい。
【0009】
上記熱放射層の上記金属は、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、プラチナ(Pt)、カドミウム(Cd)、ジルコニウム(Zr)、リチウム(Li)、セレン(Se)、イットリウム(Y)、ベリリウム(Be)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、ルテニウム(Ru)、ランタン(La)、セリウム(Ce)のうち1つ以上を含む。
【0010】
上記熱放射層は、ホウ素(B)、炭素(C)、酸素(O)、窒素(N)のうち1つ以上をさらに含むことができる。
【0011】
上記ペリクル部は、上記ペリクル部の最外面に配置され、上記ペリクル部の水素ラジカル反応を防止するための1つ以上のキャッピング層、及び、上記熱放射層と上記キャッピング層との間に配置され、上記キャッピング層と上記熱放射層との間の拡散を防止するための補助層、をさらに含むことができる。
【0012】
上記キャッピング層は、シリコン(Si)、ホウ素(B)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)のうち1つ以上を含み、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)のうち1つ以上をさらに含む。
【0013】
上記補助層は、BC、BN、BNC、SiB、SiC、SiO、SiN、ACL(Amorphous Carbon Layer、非晶質炭素層)、B-ACL、MeSi(Meは金属)のうち1つを含み、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)のうち1つ以上をさらに含む。
【0014】
本発明の一実施例によれば、複数の上記熱放射層及び複数の上記補助層が交互に積層されることができる。
【0015】
好ましくは、2つの上記熱放射層及び3つの上記補助層が交互に積層される。
【0016】
上記ペリクル部は、30nm以下の厚みを有する。
【0017】
上記熱放射層は、15nm以下の厚みを有する。
【0018】
上記補助層は、3nm以下の厚みを有する。
【0019】
上記キャッピング層は、5nm以下の厚みを有する。
【0020】
上記ペリクル部は、上記露光光に対して90%以上の透過率を有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、中心層の機能をする熱放射層にシリコンと金属を含み、金属の含有量がシリコンよりも高く構成されている。これにより、90%以上の高透過率を確保しながらも、ペリクル部の熱放射性能が改善され、600W以上のEUV露光光パワーに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る極端紫外線リソグラフィ用ペリクルの基本構造を示す図である。
【
図2】
図1のペリクル部の第1実施例を示す図である。
【
図3】
図1のペリクル部の第2実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を詳しく説明する。
【0024】
図1は、本発明に係る極端紫外線リソグラフィ用ペリクルの基本構造を示す図である。ペリクル100は、ペリクル部20と支持部10とを含めて構成される。
【0025】
ペリクル部20は、波長13.5nmの極端紫外線露光光を透過させる機能をする。本発明のペリクル部20は、EUV露光光に対して90%以上の透過率を有する。
【0026】
支持部10は、ペリクル部20を支持する機能をする。支持部10は、透明基板をエッチングして得られる。
【0027】
図2は、
図1のペリクル部の第1実施例を示す図である。
【0028】
ペリクル部20は、熱放射層21、補助層23、及びキャッピング層25を含んで構成される。
【0029】
熱放射層21は、EUV露光光を透過率の損傷無しで最大限に透過させる中心層の機能をする。また、熱放射層21は、EUV露光光の照射時に発生する熱を放射する機能をする。熱放射層21は、1つの層で構成されることができ、2つ以上の層で構成されることもできる。
【0030】
熱放射層21は、金属及びシリコンを含む。上記金属は、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、プラチナ(Pt)、カドミウム(Cd)、ジルコニウム(Zr)、リチウム(Li)、セレン(Se)、イットリウム(Y)、ベリリウム(Be)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、ルテニウム(Ru)、ランタン(La)、セリウム(Ce)のうち1つ以上を含む。好ましくは、上記金属は、モリブデン(Mo)から構成される。熱放射層21は、ホウ素(B)、炭素(C)、酸素(O)、窒素(N)のうち1つ以上をさらに含むことができる。
【0031】
熱放射層21は、最大の透過率、特に90%以上の透過率を確保するために、可能な限り薄い厚みを有することが好ましい。このために、熱放射層21は、15nm以下の厚みを有し、好ましくは10nm以下の厚みを有する。
【0032】
キャッピング層25は、ペリクル部20の最外面に配置される。好ましくは
図2に示すように、キャッピング層25は、ペリクル部20の最下部及び最上部にそれぞれ配置される。ペリクル100が使用される露光装置の内部には、水素ラジカルが多量に存在し、これらの水素ラジカルはペリクル部20と反応してペリクル部20に損傷をもたらす。キャッピング層25は、水素ラジカル反応を防止し、ペリクル部20を保護する機能をする。
【0033】
キャッピング層25は、シリコン(Si)、ホウ素(B)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)のうち1つ以上を含む。キャッピング層25は、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)のうち1つ以上をさらに含むことができる。好ましくは、キャッピング層25はSiCから形成される。
【0034】
キャッピング層25は、水素ラジカル反応を抑制する機能を発揮する範囲内において、可能な限り薄い厚みにすることで、厚みの増加に因る透過率の低下を防ぐことが好ましい。このために、それぞれのキャッピング層25は、5nm以下の厚みを有する。
【0035】
補助層23は、熱放射層21とキャッピング層25との間に配置され、キャッピング層25と熱放射層21との間の熱的特性を補完する役割を果たす。
図2に示すように、一対のキャッピング層25が形成される場合、補助層23も一対が形成される。熱放射層21とキャッピング層25とが直接接するように構成される場合は、熱放射層21とキャッピング層25との間に熱膨張や拡散などの熱問題が発生する可能性がある。熱問題は、熱放射層21上にキャッピング層25を形成する過程で発生することもあり、ペリクル100の使用中にEUV露光光の照射によるエネルギーによって発生することもある。補助層23は、このような状況で発生する熱問題を防止する。また、補助層23は、ペリクル部20の機械的強度を補完する機能をする。
【0036】
補助層23は、BC、BN、BNC、SiB、SiC、SiO、SiN、ACL、B-ACL、MeSiのいずれか1つを含む。ここで、ACL(Amorphous Carbon Layer)は、非晶質炭素(Amorphous Carbon)を基本材質とする物質を意味する。B-ACLは、ACLにホウ素(B)が付加物質として含まれた材質、より具体的には、ACLとBとが化学的に結合した化合物を意味する。B-ACLは、ACLの全体構成元素の一部がBと結合している場合を含む。ホウ素(B)がACLに追加される場合、Bの含量が増えるほど薄膜の透過率が改善され強度が増加するが、熱安定性が低下する特性がある。特に、ACLに比べB-ACLは、モジュラス(Modulus)、即ち弾性率が高く、薄膜の引き裂き耐性が強い。その反面、B-ACL内の炭素(C)の含量が増えるほど熱安定性が向上する特性がある。従って、BとCの含量比は、ペリクルに求められる透過率、強度、及び熱安定性を考慮して適宜選択され得る。好ましくは、B-ACLは、B:C=1at%:0.5~15at%の組成比を有するように構成される。このような組成比の範囲内では、Bの追加による効果が発揮されながらも、Cの含量の過度な減少による熱安定性の低下は発生しない。また、ここでのMeは、金属物質について一般化した用語の表記として使用されている。例えば、Meは、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、プラチナ(Pt)、カドミウム(Cd)、ジルコニウム(Zr)、リチウム(Li)、セレン(Se)、イットリウム(Y)、ベリリウム(Be)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、ルテニウム(Ru)、ランタン(La)、セリウム(Ce)のうち1つ以上を含む物質であり得る。
【0037】
補助層23は、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)のうち1つ以上をさらに含むことができる。このような軽元素物質がさらに含まれる場合、これらの物質の含量は他の物質の含量よりも少ないことが好ましく、30at%以下の元素比を有することがより好ましい。
【0038】
補助層23は、熱問題を解決する範囲内で、可能な限り薄い厚みにすることで、厚みの増加による透過率の低下を防ぐことが好ましい。このために、補助層23は3nm以下の厚みを有する。
【0039】
ペリクル部20は、EUV露光光に対する透過率を高めるために、30nm以下の厚みを有する。より高い透過率を確保するために、本発明のペリクル部20は、25nm以下、好ましくは20nm以下の厚みを有する。本発明のペリクル部20は、波長13.5nmのEUV露光光に対して90%以上の透過率を有する。
【0040】
中心層の機能をする熱放射層21が、例えばMoSiで構成される場合、従来は一般的にMoに比べてSiの含有量が2倍になるように構成した。金属:シリコン=1:2の(at%)比率の熱放射層21は、EUV露光光のパワーが250Wの場合に適用可能な程度の熱放射性能を奏する。しかし、EUV露光光のパワーがこれよりも増加して、例えば600W以上の場合には、より高い熱放射性能が求められ、金属:シリコン=1:2の比率の熱放射層21は、かかる要件を満たすことができない。
【0041】
従来、熱放射性能の改善のための研究は、組成自体を変更する方式、例えば金属以外の追加物質を添加したり、相異なる2つ以上の金属を組み合わせるなどの方式でなされてきた。しかし、本発明の発明者らは、金属とシリコンの比率を調節することにより、ナノ単位の薄い薄膜として構成された熱放射層21の熱放射性能を改善できることを見出した。本発明の熱放射層21は、金属の含有量がシリコンの含有量よりも多いという特徴を有する。ここでの含有量は、at%を基準にした含有量のことである。金属に対するシリコンの含有量が2倍である従来の構成に比べ、本発明でのように、金属の含有量をシリコンの含有量よりも多くする場合、熱放射性能が改善された。
【0042】
具体的には、熱放射層21は、金属:シリコン=1:0.6~0.9(at%)の含量比を有する。この範囲よりもシリコンの含有量が少ない場合は、熱放射層21の透過率が低下して、90%以上のペリクル部20の透過率を確保することが困難になるため、透過率の確保のためには、熱放射層21の厚みを6nm以下にする必要がある。しかし、このように非常に薄い薄膜の熱放射層21は、製造及び機械的強度の確保が非常に難しい。また、この範囲よりもシリコンの含有量が多い場合は、熱放射性能の改善の度合いが不十分になる可能性がある。
【0043】
具体的には、熱放射層21は、金属:シリコン=1:0.6~0.99(at%)の含量比を有する。この範囲よりもシリコンの含有量が少ない場合は、熱放射層21の透過率が低下して、90%以上のペリクル部20の透過率を確保することが困難になるため、透過率の確保のためには、熱放射層21の厚みを10nm以下にする必要がある。しかし、このように非常に薄い薄膜の熱放射層21は、製造及び機械的強度の確保が非常に難しい。また、この範囲よりもシリコンの含有量が多い場合は、熱放射性能の改善の度合いが不十分になる可能性がある。
【0044】
図3は、
図1のペリクル部の第2実施例を示す図である。
【0045】
本発明のペリクル部20は、複数の熱放射層21と複数の補助層23とが交互に積層された構造を有することができる。キャッピング層25は、ペリクル部20の最外面に配置される。
図3の実施例において、ペリクル部20は、2つの熱放射層21及び3つの補助層23を備えた構造を有し、最上部と最下部のキャッピング層25を含めて、合計7つの層で構成されている。このように、熱放射層21が2つの場合、熱放射性能がさらに改善される。熱放射層21は、3つ以上又はそれ以上にすることができる。この場合、それぞれの熱放射層21の厚みは、ペリクル部20全体の厚みの過度な増加を防ぐために、可能な限り薄い厚みを有するように形成することが望ましい。
【0046】
以上、図面を参照しながら、本発明の構造を用いて本発明を具体的に説明したが、これは、本発明の例示及び説明をするための目的で用いられたもので、意味限定又は特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を制限するために用いられたものではない。従って、本発明の技術分野における通常の知識を有する者であれば、構造から様々な変形及び均等な別の構造が可能である点が理解できよう。また、本発明の真正な技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的事項によって定められるべきであろう。
【符号の説明】
【0047】
10:支持部
20:ペリクル部
21:熱放射層
23:補助層
25:キャッピング層
100:ペリクル