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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】ヒータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/20 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
F01N3/20 K
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023131966
(22)【出願日】2023-08-14
【審査請求日】2023-08-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】横井 健
(72)【発明者】
【氏名】石川 直也
(72)【発明者】
【氏名】藤野 竜介
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-218916(JP,A)
【文献】特開2001-280121(JP,A)
【文献】国際公開第2016/024591(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00-3/38、 9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンの排気が流れる排気流路に設けられた触媒と、
前記排気流路において前記触媒の上流に設けられたヒータと、
前記ヒータに堆積した粒子状物質の堆積量を特定する特定部と、
前記車両が走行する状態が前記エンジンの排ガス量が低下したと推定される所定の状態であるか否かを判定する判定部と、
前記堆積量が所定量以上である場合、前記判定部が、前記所定の状態であると判定したことを条件として、前記ヒータに対して電力を供給させる供給制御部と、
を有するヒータ制御装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記車両が減速している場合に、前記所定の状態であると判定する、
請求項1に記載のヒータ制御装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記車両が停車しており、かつ前記エンジンが稼働している場合に、前記所定の状態であると判定する、
請求項1に記載のヒータ制御装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記車両の動力源として動作する第1モータの出力が増加し、かつ前記エンジンの出力が低下した場合に、前記所定の状態であると判定する、
請求項1に記載のヒータ制御装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記車両の動力源として動作する第1モータが駆動し、かつ前記エンジンが停止している場合に、前記所定の状態であると判定する、
請求項1に記載のヒータ制御装置。
【請求項6】
前記供給制御部は、前記判定部が前記所定の状態であると判定した場合に、前記エンジンを所定の回転数以上で回転させるために第2モータを回転させるとともに、前記ヒータに対して電力を供給させる、
請求項5に記載のヒータ制御装置。
【請求項7】
前記供給制御部は、前記エンジンの排ガス量が少ないほど前記ヒータに供給する電力を少なくさせる、
請求項1から6のいずれか一項に記載のヒータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の内燃機関の排気浄化装置は、選択還元触媒の上流に設けられた蓄熱材を加熱して、選択還元触媒に流入する排気ガスの温度を、選択還元触媒がNOx(酸化窒素)を浄化するために適した温度に昇温させることにより、NOxの排出を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-261423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来においては、ヒータが排気ガスと接触することにより、排気ガスに含まれる煤や炭化水素等の粒子状物質がヒータに固着する。ヒータに固着した粒子状物質を除去するためには、ヒータが高温になるまで電気で加熱することにより、焼きだしを実施することが考えられるが、消費電力が大きくなるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、固着した粒子状物質を除去するための消費電力を小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係るヒータ制御装置は、車両のエンジンの排気が流れる排気流路に設けられた触媒と、前記排気流路において前記触媒の上流に設けられたヒータと、前記ヒータに堆積した粒子状物質の堆積量を特定する特定部と、前記車両が走行する状態が前記エンジンの排ガス量が低下したと推定される所定の状態であるか否かを判定する判定部と、前記堆積量が所定量以上である場合、前記判定部が、前記所定の状態であると判定したことを条件として、前記ヒータに対して電力を供給させる供給制御部と、を有する。
【0007】
前記判定部は、前記車両が減速している場合に、前記所定の状態であると判定してもよい。
【0008】
前記判定部は、前記車両が停車しており、かつ前記エンジンが稼働している場合に、前記所定の状態であると判定してもよい。
【0009】
前記判定部は、前記車両の動力源として動作する第1モータの出力が増加し、かつ前記エンジンの出力が低下した場合に、前記所定の状態であると判定してもよい。
【0010】
前記判定部は、前記車両の動力源として動作する第1モータが駆動し、かつ前記エンジンが停止している場合に、前記所定の状態であると判定してもよい。
【0011】
前記供給制御部は、前記判定部が前記所定の状態であると判定した場合に、前記エンジンを所定の回転数以上で回転させるために第2モータを回転させるとともに、前記ヒータに対して電力を供給させてもよい。
【0012】
前記供給制御部は、前記エンジンの排ガス量が少ないほど前記ヒータに供給する電力を少なくさせてもよい。
【0013】
本発明の第2の態様に係るヒータ制御方法は、車両のエンジンの排気が流れる排気流路において、触媒の上流に設けられたヒータに堆積した粒子状物質の堆積量を特定する特定工程と、前記車両が走行する状態が前記エンジンの排ガス量が低下したと推定される所定の状態であるか否かを判定する判定工程と、前記堆積量が所定量以上である場合、前記判定工程において前記所定の状態であると判定したことを条件として、前記ヒータに対して電力を供給させる供給制御工程と、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、固着した粒子状物質を除去するための消費電力を小さくするという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る車両Sの概要を説明するための図である。
図2】ヒータ制御装置50の構成を示す図である。
図3】焼きだし処理をする動作を示すシーケンスである。
図4】排ガス量が低下したと推定される所定の状態であるか否かを判定する動作を示すシーケンスである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<車両Sの概要>
図1は、本実施形態に係る車両Sの概要を説明するための図である。図1に示す車両Sは、エンジン10と、過給機11と、吸気路12と、排気路13と、吸気圧センサ14と、クランクシャフト20と、第1モータ21と、第2モータ22と、クラッチ23と、ギア群24と、インバータ30と、バッテリ31と、ヒータ40と、浄化装置41と、触媒42と、触媒43と、差圧計44と、温度センサ45と、ヒータ制御装置50と、を備える。車両Sは、ヒータ40に堆積した煤、HC(炭化水素)等の粒子状物質を、ヒータ40を加熱することにより除去する機能を有する。
【0017】
エンジン10は、燃料と吸気(空気)の混合気を燃焼、膨張させて、動力を発生させる内燃機関である。過給機11は、例えば、ターボチャージャであり、排気の流れを利用して吸気の密度を高くする。過給機11は、排気路13に設けられたタービンTと吸気路12に設けられたコンプレッサCとを有する。タービンTは、排気路13を流れる排気を受けて回転する。コンプレッサCは、タービンTに連結軸を介して連結されており、タービンTとともに回転することで吸気を圧縮する。吸気路12は、エンジン10に供給される空気(吸気)が流れる通路である。排気路13は、エンジン10の排気が流れる通路である。吸気圧センサ14は、吸気路12に設けられ、エンジン10に供給される空気の空気圧(吸気圧)を検出する。
【0018】
クランクシャフト20は、エンジン10内のピストン(不図示)の往復運動を回転運動に変えるための軸である。第1モータ21は、バッテリ31が出力した電気を、インバータ30を介して取得し、車両Sの駆動輪Wを駆動するための動力を発生させる動力源である。第2モータ22は、バッテリ31が出力した電気を、インバータ30を介して取得し、エンジン10を回転させるための動力を発生させる動力源である。第1モータ21及び第2モータ22は、車両Sがブレーキ(不図示)を用いて減速する場合に回生電力を発生し、インバータ30を介してバッテリ31に電力を供給する。
【0019】
クラッチ23は、第1モータ21と第2モータ22とをつなぐクラッチである。ギア群24は、外周に複数の凹凸の形状を有する複数のギアにより構成され、クランクシャフト20に取り付けられたリングギアを含む。ギア群24に含まれる、リングギアと異なる他の複数のギアは、外周の凹凸がリングギアの凹凸と噛み合うことで回転し、クランクシャフト20が発生する回転運動エネルギーを駆動輪Wに伝達する。
【0020】
インバータ30は、バッテリ31が出力した直流の電流を交流の電流に変換し、第1モータ21と第2モータ22とヒータ40とに出力する。バッテリ31は、充放電可能な蓄電池であり、第1モータ21、第2モータ22、ヒータ40及び車両Sが備える電装品(不図示)に電気を供給する。また、バッテリ31は、FC(Fuel Cell)スタック(不図示)が発電した電気と第1モータ21及び第2モータ22が発生した回生電力とを充電する。
【0021】
ヒータ40は、インバータ30を介してバッテリ31から供給された電気により排気を加熱する装置である。ヒータ40は、排気路13を流れる排気と熱交換することにより、触媒42に流入する排気を加熱する。浄化装置41は、エンジン10の排気を浄化するための装置であり、触媒42及び触媒43を収容する。
【0022】
触媒42は、例えば、DOC(Diesel Oxidation Catalyst)であり、エンジン10の排気に含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)を浄化する。具体的には、触媒42は、炭化水素を水と二酸化炭素に酸化し、一酸化炭素を二酸化炭素に酸化し、窒素酸化物を窒素に還元する。触媒43は、例えば、DPF(Diesel Particulate Filter)であり、エンジン10の排気に含まれる粒子状物質(PM;Particulate Matter)を捕集する。差圧計44は、排気路13におけるヒータ40の上流の排気圧とヒータ40の下流の排気圧との差圧を検出する。温度センサ45は、触媒42に流入する排気の温度を検出する。
【0023】
ヒータ制御装置50は、電子部品を含む筐体又は電子部品が実装されたプリント基板である。ヒータ制御装置50は、ヒータ40に堆積したPMを除去するために、ヒータ40を加熱させて当該PMを燃焼させる処理(いわゆる、焼きだし処理)を実行する。焼きだし処理においては、ヒータ40が、エンジン10の排気と熱交換をしながらPMを燃焼できる温度まで昇温するため、多くの電力を消費する。そこで、ヒータ制御装置50は、ヒータ40と熱交換をするエンジン10の排ガス量が低下したと推定される場合に焼きだし処理を実行する。
【0024】
ヒータ制御装置50がこのように動作することで、ヒータ40は、PMを燃焼させる温度にヒータ40を昇温させるまでの、排気とヒータ40との熱交換量を小さくすることができるので、焼きだし処理においての消費電力を小さくすることができる。
以下、ヒータ制御装置50の構成及び動作を詳細に説明する。
【0025】
<ヒータ制御装置50の構成>
図2は、ヒータ制御装置50の構成を示す図である。ヒータ制御装置50は、記憶部51と、制御部52と、を有する。制御部52は、取得部521と、特定部522と、判定部523と、供給制御部524と、を有する。
【0026】
記憶部51は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有する。記憶部51は、制御部52が実行するプログラムを記憶している。記憶部51は、ヒータ40の焼きだし処理を実行するための各種の情報を記憶している。一例として、記憶部51は、差圧計44が検出し得る差圧の範囲を複数に分割した分割範囲と、各分割範囲に対応するPMの堆積量を記憶している。記憶部51は、エンジン10の各排ガス量に対応する、焼きだし処理におけるヒータ40への供給電力量及び排気とヒータ40とを熱交換して排気を昇温させる昇温処理におけるヒータ40への供給電力量を記憶していてもよい。
【0027】
制御部52は、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はECU(Electronic Control Unit)等のプロセッサである。制御部52は、記憶部51に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部521、特定部522、判定部523及び供給制御部524として機能する。なお、制御部52は、1つのプロセッサで構成されていてもよいし、複数のプロセッサ又は1以上のプロセッサと電子回路との組み合わせにより構成されていてもよい。
以下、制御部52により実現される各部の構成を説明する。
【0028】
取得部521は、一定時間が経過する時刻毎に、エンジン10の排ガス量、排気温度及び出力と、第1モータ21及び第2モータ22の出力と、ヒータ40の上流の排気圧とヒータ40の下流の排気圧との差圧と、車両Sの車速及び加減速度と、を取得する。一定時間は、例えば、0.1秒である。
【0029】
取得部521は、例えば、吸気圧センサ14が検出した、エンジン10に供給される空気の空気圧を取得して、エンジン10の排ガス量を算出することにより、エンジン10の排ガス量を取得する。取得部521は、例えば、温度センサ45が検出した、浄化装置41に流入する排気の温度を取得することにより、エンジン10の排気温度を取得する。取得部521は、例えば、エンジン回転数センサ(不図示)が検出したエンジン10の回転数を取得してエンジン10の出力を算出することにより、エンジン10の出力を取得する。
【0030】
取得部521は、例えば、バッテリ31が第1モータ21に出力した電力をインバータ30から取得して第1モータ21の出力を算出することにより、第1モータ21の出力を取得する。取得部521は、例えば、バッテリ31が第2モータ22に出力した電力をインバータ30から取得して第2モータ22の出力を算出することにより、第2モータ22の出力を取得する。
【0031】
取得部521は、例えば、差圧計44が検出した、排気路13におけるヒータ40の上流の排気圧とヒータ40の下流の排気圧との差圧を取得する。取得部521は、例えば、車両Sが備える車速センサ(不図示)が検出した車両Sの車速を取得する。取得部521は、例えば、車両Sが備える加速度センサ(不図示)が検出した車両Sの加減速度を取得する。取得部521は、所定時間(例えば、1秒)において車速センサが検出した車両Sの車速に基づいて、車両Sの加減速度を算出することにより、車両Sの加減速度を取得してもよい。
【0032】
特定部522は、車両Sのエンジン10の排気が流れる排気路13に設けられた触媒42の上流に設けられたヒータ40に堆積したPMの堆積量を特定する。特定部522は、例えば、一定時間が経過する時刻毎に、ヒータ40に堆積したPMの堆積量を特定する。特定部522は、例えば、記憶部51に記憶された差圧の分割範囲と各分割範囲に対応するPMの堆積量とを参照することにより、取得部521が差圧計44から取得した差圧が含まれる分割範囲を特定し、当該分割範囲に対応するPMの堆積量を特定する。
【0033】
判定部523は、車両Sが走行する状態が、エンジン10の排ガス量が低下したと推定される所定の状態であるか否かを判定する。判定部523は、例えば、一定時間が経過する時刻毎に、エンジン10の排ガス量が低下したと推定される所定の状態であるか否かを判定する。判定部523は、例えば、車両Sが減速している場合に、エンジン10の排ガス量が低下したと推定される所定の状態であると判定する。判定部523は、例えば、取得部521が取得した車両Sの加減速度が車両Sの減速を示す場合に、エンジン10の排ガス量が低下したと推定される所定の状態であると判定する。
【0034】
判定部523は、車両Sが停車しており、かつエンジン10が稼働している場合に、エンジン10の排ガス量が低下したと推定される所定の状態であると判定してもよい。判定部523は、例えば、取得部521が取得した車両Sの車速が0を示し、かつ取得部521が取得したエンジン10の回転数が0より大きい回転数を示す場合に、排ガス量が低下したと推定される所定の状態であると判定する。判定部523がこのように動作することで、車両Sがアイドル状態である場合に、エンジン10の排ガス量が低下した状態であると判定できる。
【0035】
判定部523は、車両Sの動力源として動作する第1モータ21の出力が増加し、かつエンジン10の出力が低下した場合に、エンジン10の排ガス量が低下したと推定される所定の状態であると判定してもよい。判定部523は、例えば、所定時間において、取得部521が取得した第1モータ21の出力が増加し、かつ取得部521が取得したエンジン10の出力が低下したことを特定した場合に、排ガス量が低下したと推定される所定の状態であると判定する。判定部523がこのように動作することで、例えば、高速道路において一定速度で走行する際に、車両Sがエンジン10の出力を低下させて第1モータ21の出力を増加させた状態を、エンジン10の排ガス量が低下したと推定される所定の状態であると判定できる。
【0036】
判定部523は、車両Sの動力源として動作する第1モータ21が駆動し、かつエンジン10が停止している場合に、エンジン10の排ガス量が低下したと推定される所定の状態であると判定してもよい。判定部523は、例えば、取得部521が取得した第1モータ21の出力が0より大きい値を示し、かつ取得部521が取得したエンジン10の出力が0を示す場合に、排ガス量が低下したと推定される所定の状態であると判定する。判定部523がこのように動作することで、車両Sがエンジン10を用いず、第1モータ21を用いて走行している状態(いわゆる、モータ走行をしている状態を)、エンジン10の排ガス量が低下したと推定される所定の状態であると判定できる。
【0037】
供給制御部524は、インバータ30を介してバッテリ31からヒータ40に電気を供給させることにより、ヒータ40を加熱させる。供給制御部524は、例えば、ヒータ40とエンジン10の排気とを熱交換して排気を昇温させる昇温処理、又はヒータ40に堆積したPMを除去するための焼きだし処理を実行させる場合にヒータ40を加熱させる。なお、焼きだし処理を行った際の排気温度(焼きだし温度とも呼ぶ)は、昇温処理を行った際の排気温度よりも高い。
【0038】
供給制御部524は、温度センサ45が検出した排気温度が触媒42の活性化温度に達していない場合、ヒータ40に昇温処理を実行させて、排気温度を活性化温度に昇温させる。供給制御部524がこのように動作することで、エンジン10の排気を効率よく浄化することができる。
【0039】
供給制御部524は、ヒータ40に堆積したPMの堆積量が所定量以上である場合、判定部523が、排ガス量が低下したと推定される所定の状態であると判定したことを条件として、ヒータ40に対して電力を供給させることにより、ヒータ40に焼きだし処理を実行させる。所定量は、ヒータ40と排気との熱交換効率の下限値として定められた値に対応する堆積量であり、実験又はシミュレーションにより決定された量である。供給制御部524がこのように焼きだし処理を実行させることで、ヒータ40と排気との熱交換の際に発生する熱損失を小さくすることができる。さらに、供給制御部524が、排ガス量が低下したと推定される所定の状態において焼きだし処理を実行させることで、ヒータ40を加熱させる際に排気を短時間で焼きだし温度まで昇温させることができるので、焼きだし処理における消費電力を小さくすることができる。
【0040】
供給制御部524は、例えば、エンジン10の排ガス量が少ないほどヒータ40に供給する電力を少なくさせる。供給制御部524は、例えば、取得部521が取得したエンジン10の排ガス量をエンジン10の最大排ガス量で除算した除算値を算出し、ヒータ40に供給可能な最大電力に当該除算値を乗算した乗算値を、ヒータ40に供給する電力値として特定する。そして、供給制御部524は、特定した電力値を、バッテリ31からインバータ30を介してヒータ40に供給させる。供給制御部524がこのように動作することで、エンジン10の排ガス量に適した電力で焼きだし処理を実行することができるため、不要な電力を消費することを抑制できる。
【0041】
供給制御部524は、記憶部51に記憶された、ヒータ40を加熱させる目的とエンジン10の排ガス量とに対応するヒータ40への供給電力量を参照することにより、ヒータ40に供給する電力を決定してもよい。例えば、供給制御部524は、取得部521からエンジン10の排ガス量を取得する。供給制御部524は、温度センサ45が検出した排気温度と特定部522が特定したPMの堆積量とに基づいて、ヒータ40を加熱する目的(すなわち、焼きだし処理、昇温処理)を特定する。供給制御部524は、記憶部51を参照することにより、取得した排ガス量と特定した目的とに対応する供給電力量を特定し、特定した供給電力量をヒータ40に供給する電力に決定する。供給制御部524がこのように動作することで、ヒータ40に供給する電力を算出するための処理の負荷を軽減させることができる。
【0042】
エンジン10が停止している際にヒータ40を加熱すると、PMを燃焼できる温度にヒータ40を加熱することができたとしても、燃焼したPMをヒータ40の下流に移動させるための排気がヒータ40に流入されないため、堆積物を除去できない。そこで、供給制御部524は、エンジン10の停止時において、判定部523がエンジン10の排ガス量が低下した状態であると判定した場合に、エンジン10を所定の回転数以上で回転させるために第2モータ22を回転させるとともに、ヒータ40に対して電力を供給させる。所定の回転数は、燃焼したPMをヒータ40の下流に移動させるための排ガス量の下限値に対応する回転数であり、実験又はシミュレーションにより決定された回転数である。
【0043】
供給制御部524は、例えば、インバータ30を介してバッテリ31から第2モータ22に電力を供給し、第2モータ22を回転させることにより、クランクシャフト20により第2モータ22に連結されたエンジン10を回転させる。供給制御部524は、第2モータ22によりエンジン10を回転させるとともに、ヒータ40に対して電力を供給し、焼きだし処理を実行する。供給制御部524がこのように動作することで、車両Sが第1モータ21の出力により駆動(すなわち、モータ走行)をしている場合であっても、ヒータ40の焼きだし処理を実行することができる。
【0044】
なお、供給制御部524は、ヒータ40に堆積したPMの堆積量が所定量未満である場合、又はヒータ40に堆積したPMの堆積量が所定量以上であり、かつ判定部523が、排ガス量が低下したと推定される所定の状態ではないと判定した場合であっても、ヒータ40に対して電力を供給させてもよい。この場合、供給制御部524は、焼きだし処理ではなく、排気を昇温させるための昇温処理を実行するためにヒータ40に対して電力を供給させるため、焼きだし処理を実行するための電力量よりも小さい電力量をヒータ40に対して供給させる。
【0045】
<ヒータ制御装置50における処理シーケンス>
図3及び図4は、ヒータ制御装置50における処理シーケンスの例を示す図である。図3に示す処理シーケンスは、焼きだし処理をする動作を示すシーケンスであり、図4に示す処理シーケンスは、排ガス量が低下したと推定される所定の状態であるか否かを判定する動作を示すシーケンスである。図4に示す動作は、図3に示すS14の動作である。ヒータ制御装置50は、図3及び図4に示す処理シーケンスを一定時間毎に繰り返す。
【0046】
まず、焼きだし処理をする動作を説明する。図3において、取得部521は、差圧計44が検出した、ヒータ40の上流の排気圧とヒータ40の下流の排気圧との差圧を取得する(S11)。特定部522は、取得部521が取得した差圧に基づいてヒータ40に堆積したPMの堆積量を特定する(S12)。
【0047】
特定部522が特定した堆積量が閾値未満である場合(S13のNO)、又は堆積量が閾値以上であっても、判定部523が、排ガス量が低下したと推定される所定の状態ではないと判定した場合(S14のNO)、ヒータ制御装置50は、処理を終了する。特定部522が特定した堆積量が閾値以上であり(S13のYES)、かつ判定部523が、排ガス量が低下したと推定される所定の状態であると判定した場合(S14のYES)、取得部521は吸気圧センサ14が検出した空気圧を取得する(S15)。そして、取得部521は、取得した空気圧に基づいてエンジン10の排ガス量を特定する(S16)。
【0048】
供給制御部524は、エンジン10の排ガス量に基づいて、焼きだし処理を実行するためにヒータ40に供給する電力を決定し(S17)、インバータ30を介してバッテリ31からヒータ40に、決定した電力を供給する(S18)。
【0049】
次に、判定部523が、排ガス量が低下したと推定される所定の状態であるか否かを判定する動作を説明する。図4において、取得部521は、車両Sの加減速度を取得する(S21)。取得部521が取得した加減速度が車両Sの減速を示す場合(S22のYES)、判定部523は、排ガス量が低下したと推定される所定の状態であると判定する(S30)。
【0050】
取得部521が取得した加減速度が車両Sの減速を示さない場合(S22のNO)、取得部521は、車両Sの車速(S23)とエンジン10の回転数(S24)とを取得する。判定部523は、車両Sの車速が0であり、かつエンジン10の回転数が0より大きい場合、車両Sがアイドル状態であると特定し(S25のYES)、排ガス量が低下したと推定される所定の状態であると判定する(S30)。判定部523が、車両Sがアイドル状態ではないと特定した場合(S25のNO)、取得部521は、第1モータ21の出力とエンジン10の出力とを取得する(S26)。
【0051】
判定部523は、前の時刻と現在の時刻とにおける、エンジン10の出力と第1モータ21の出力とを参照することにより、エンジン10の出力が低下し、かつ第1モータ21の出力が増加した状態であることを特定した場合(S27のYES)、排ガス量が低下したと推定される所定の状態であると判定する(S30)。エンジン10の出力が低下し、かつ第1モータ21の出力が増加した状態ではないことを特定した場合(S27のNO)、判定部523は、エンジン10が停止中であるか否か、及び第1モータ21が駆動中であるか否かを特定する(S28)。
【0052】
エンジン10が停止中であり、かつ第1モータ21が駆動中である場合(S28のYES)、供給制御部524は、第2モータ22を駆動させ(S29)、判定部523は、排ガス量が低下したと推定される所定の状態であると判定する(S30)。エンジン10が動作中、又は第1モータ21が停止中である場合(S28のNO)、判定部523は、排ガス量が低下したと推定される所定の状態ではないと判定する(S31)。
【0053】
<ヒータ制御装置50による効果>
以上説明したように、ヒータ制御装置50は、ヒータ40に堆積したPMの堆積量を特定する特定部522と、車両Sが走行する状態に基づいてエンジン10の排ガス量が低下したと推定される所定の状態であるか否かを判定する判定部523と、ヒータ40に対して電力を供給させる供給制御部524と、を有する。そして、供給制御部524は、特定部522が特定した堆積量が所定量以上である場合、判定部523が、排ガス量が低下したと推定される所定の状態であると判定したことを条件として、ヒータ40に対して電力を供給させる。
【0054】
ヒータ制御装置50がこのように構成されることで、ヒータ40に堆積したPMを燃焼させて除去するための焼きだし処理を、エンジン10の排ガス量が低下したと推定される所定の状態において実行することができる。その結果、ヒータ40と熱交換をするエンジン10の排気が少ないと推定される状態でヒータ40を加熱することができるため、焼きだし処理において消費する電力を小さくすることができる。
【0055】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0056】
10 エンジン
11 過給機
12 吸気路
13 排気路
14 吸気圧センサ
20 クランクシャフト
21 第1モータ
22 第2モータ
23 クラッチ
24 ギア群
30 インバータ
31 バッテリ
40 ヒータ
41 浄化装置
42 触媒
43 触媒
44 差圧計
45 温度センサ
50 ヒータ制御装置
51 記憶部
52 制御部
521 取得部
522 特定部
523 判定部
524 供給制御部
【要約】
【課題】固着した粒子状物質を除去するための消費電力を小さくする。
【解決手段】ヒータ制御装置50は、車両のエンジン10の排気が流れる排気流路に設けられた触媒と、排気流路において触媒の上流に設けられたヒータ40と、ヒータ40に堆積した粒子状物質の堆積量を特定する特定部522と、車両が走行する状態が、エンジン10の排ガス量が低下したと推定される所定の状態であるか否かを判定する判定部523と、堆積量が所定量以上である場合、判定部523が、所定の状態であると判定したことを条件として、ヒータ40に対して電力を供給させる供給制御部524と、を有する。
【選択図】図2

図1
図2
図3
図4