(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、粘着シート、積層体および該積層体を備えるディスプレイ
(51)【国際特許分類】
C09J 133/06 20060101AFI20241112BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20241112BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20241112BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C09J133/06
C09J11/06
C09J7/38
G02B5/30
(21)【出願番号】P 2023175423
(22)【出願日】2023-10-10
【審査請求日】2023-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2023151063
(32)【優先日】2023-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】古野 寛之
(72)【発明者】
【氏名】金塚 洋平
(72)【発明者】
【氏名】柏村 岳
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 好映
(72)【発明者】
【氏名】濱口 明日香
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2024/143341(WO,A1)
【文献】特表2023-538015(JP,A)
【文献】特表2011-516690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系ポリマー(A)および硬化剤(B)を含む粘着剤組成物であって、
アクリル系ポリマー(A)は下記モノマー(a1)と、モノマー(a2)と、モノマー(a3)と、モノマー(a4)と、その他モノマーとを含むモノマー混合物の共重合体であり、
下記式(1)を満足し、
(a2)の含有量は前記モノマー混合物100質量部中40~95質量部であり、
(a3)の含有量は前記モノマー混合物100質量部中10質量部以下であり、
(a4)の含有量は前記モノマー混合物100質量部中0.1~
5質量部
(ただし5質量部を除く)であり、
その他モノマーの含有量は前記モノマー混合物100質量部中15質量部以下であり、
硬化剤(B)の添加量はアクリル系ポリマー(A)100質量部に対し0.01~5質量部であり、
粘着剤組成物からなる粘着剤層のゲル分率が55~90%であることを特徴とする、粘着剤組成物。
(a1) ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上であって、官能基を有さない(メタ)アクリル酸エステルモノマー
(a2) 2-オクチル(メタ)アクリレート
(a3)カルボキシ基を有するモノマー
(a4)ヒドロキシ基を有するモノマー
式(1)1500≦Σ(T
2×MA/100)≦38000
T:(a1)のホモポリマーのガラス転移温度(K)
MA:モノマー混合物100質量部中の(a1)の含有量(質量部)
【請求項2】
硬化剤(B)がイソシアネート系硬化剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
更に有機シラン(C)を含むことを特徴とする請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記式(1)の上限が2400
0であることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
偏光板固定用に用いられることを特徴とする請求項1~4いずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
請求項1~4いずれか1項記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層を備えた、粘着シート。
【請求項7】
請求項1~4いずれか1項記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層と光透過性基材を備えることを特徴とする、積層体。
【請求項8】
請求項5記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層を備えることを特徴とする粘着剤層付き偏光板。
【請求項9】
請求項1~4いずれか1項記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層と光透過性基材と偏光板と光学素子とを備える、ディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板固定用に好適な粘着剤組成物、粘着シート、積層体および該積層体を備えるディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
電子計算機、電子時計、携帯電話、テレビジョン等の家庭用・業務用電化製品など様々な機器に使用される液晶ディスプレイ等の表示装置は、大型化が進んでおり、特に液晶テレビやプラズマテレビ等は大型化が顕著である。また、近年ではスマートフォンやタブレットをはじめとするタッチパネル方式の液晶ディスプレイが急速に普及しており、今後も大きな市場拡大が期待されている。一方で、液晶ディスプレイは、カーナビゲーションなど車載機器等にも使用されており、高温高湿雰囲気などの過酷な車内環境下で使用できる耐久性が必要とされている。そして、液晶ディスプレイには、様々な光学的機能を有する偏光板や位相差板等が用いられており、これらは粘着剤を介してガラスや透明なプラスチックを使用した液晶セル等の被着体に貼付される。
【0003】
前記偏光板は、一般にポリビニルアルコールフィルムがトリアセチルセルロース系フィルムやシクロオレフィン系フィルムにより、挟まれた構成の積層体である。そして、これらのフィルムは、それぞれ機械特性が異なるため加熱時の寸法変化率が異なる、そのため高温雰囲気下に置かれた場合、前記積層体に反りが生じることが多い。
【0004】
ここで例えば、偏光板/粘着剤層/ガラス(ガラスは液晶セルの表面部材)の液晶セル用部材を高温雰囲気に放置すると、偏光板の構成部材間の寸法変化率に由来する反りが発生したり、粘着剤層とガラスとの貼着界面に気泡(発泡)が発生したり、偏光板がガラスから浮き上がり剥がれるといった問題が発生する場合がある。また、反りに起因して液晶セル用部材の応力分布が不均一となり、応力が液晶セル用部材の周辺端部へ集中する結果、液晶セル用部材の四隅や周辺端部から光が漏れる、いわゆる「光漏れ現象」という問題が生じる場合がある。前記の問題は、高温高湿雰囲気でも同様に発生する。
【0005】
他方、液晶ディスプレイ等の製造工程では、偏光板を液晶セルなどの光学部品に貼合せるときに、貼合せ位置にずれが生じた場合など、貼合せてから一定の時間が経過した後に偏光板を剥離し、高価な液晶セルを再利用することが行われている。そのため、粘着剤には貼付から一定時間が経過した後に偏光板を液晶セルから再剥離できる特性(リワーク性)が求められている。
【0006】
また、粘着シートの作成時に都合よくコーティングするために、粘着剤は低粘度に希釈、調整され使用されるのが一般的である。その粘度調整の際に使用される溶剤に関してはコスト、ハンドリングの観点から出来るだけ含有量を減らすことが求められている。更に調整された溶液の不揮発分が低い場合には粘着剤をより厚く、均一に塗ることが困難になる傾向があるため、より高い不揮発分にできる低粘度の粘着剤が求められている。
【0007】
これらの問題を解決すべく、特許文献1では、芳香環含有モノマーを使用したアクリル系共重合体を含ませることにより、応力緩和性を高め、光漏れを防止する技術が開示されている。しかし、特許文献1に挙げられている芳香環含有モノマーを使用した粘着剤は、光漏れ評価において、白抜けが発生し、また光学特性が劣るという問題があった。また、発明者らが検討したところ、不揮発分を25%とすると粘度が高くなりすぎ、コーティングが困難になるため不揮発分を上げることができなかった。
【0008】
特許文献2では、再剥離性を付与するために、重量平均分子量50万以上の高分子量アクリル系重合体に対し、酸価が高く、重量平均分子量0.2~10万の低分子量アクリル系重合体をブレンドする技術が開示されている。しかし、特許文献2記載の粘着剤は、粘着剤の乾燥条件が制限されるという問題があった。
【0009】
特許文献3では、2種以上のモノマーを使用したブロックポリマーを使用することで、加熱や加湿条件下での耐久性や粘着特性を向上させる技術が開示されている。しかし、特許文献3記載の粘着剤は、加熱や加湿条件下での透過率が低下するという問題があった。
【0010】
特許文献4では、ガラス転移温度が-55℃以上0℃未満のアクリル系共重合体と、ガラス転移温度が0℃以上180℃以下のアクリル系共重合体とを含む、水分散型粘着剤によって、偏光解消を起こしにくく、かつ、リワーク性、リサイクル性を付与する技術が開示されている。しかし、特許文献4記載の粘着剤は、粘着剤に使用される種々の添加剤によって、長期にわたり貼付された後のリワーク性が不足するという問題があった。
【0011】
特許文献5では、ヒドロキシ基およびアルキレンオキシド基含有アクリル系共重合体と、多官能性イソシアネート系硬化剤によって、硬化状態で相互浸透ネットワーク構造を構築することで高温高湿環境下における浮き剥がれを抑制する技術が開示されている。しかし、特許文献5記載の粘着剤は、長期にわたり高温高湿環境下に放置された際、アルキレンオキシド基の分解が生じ、浮き、剥がれが生じるという問題があった。
【0012】
また、特許文献6では、水酸基およびカルボキシル基を含有するアクリル系共重合体とメルカプト基含有シラン化合物およびアルコールによって、高温高湿環境下で長期間置かれた際、粘着シートの浮き、剥がれを抑制する技術が開示されている。しかし、特許文献6記載の粘着剤は、揮発性の高いシラン化合物を使用しているため、粘着剤を塗工、乾燥させた際、シラン化合物が揮発し、塗工後の粘着剤層中に十分な量のシラン化合物が残存しないため、浮き剥がれが生じるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2007-169329号公報
【文献】特開2010-100710号公報
【文献】特開2013-82772号公報
【文献】特開2014-1365号公報
【文献】特開2014-55299号公報
【文献】特開2004-59711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、上記諸問題を解決すべく、所定の不揮発分に調整した際の低粘度性に優れ、粘着シートに用いたときに、剥離性に優れ、高温環境下や高温高湿環境下に曝された後、被着体からの浮きや剥がれが発生しにくい粘着剤組成物およびそれを用いた粘着シートを提供することを目的とする。更に偏光板固定用に用いたとき、光漏れ評価が極めて少なく、高温高湿環境下に曝された場合においても高い透明性を維持できる良好な粘着力を有し、また、ガラス等の被着体を汚染することが無い粘着剤組成物およびそれを用いた粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、本発明に至った。
すなわち、アクリル系ポリマー(A)および硬化剤(B)を含む粘着剤組成物であって、アクリル系ポリマー(A)は下記モノマー(a1)と、モノマー(a2)とを含むモノマー混合物の共重合体であり、下記式(1)を満足し、(a2)の含有量は前記モノマー混合物100質量部中40~95質量部であり、硬化剤(B)の添加量はアクリル系ポリマー(A)100質量部に対し0.01~5質量部であり、粘着剤組成物からなる粘着剤層のゲル分率が55~90%であることを特徴とする、粘着剤組成物に関する。
(a1) ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上であって、官能基を有さない(メタ)アクリル酸エステルモノマー
(a2) 2-オクチル(メタ)アクリレート
式(1)1500≦Σ(T2×MA/100)≦38000
T:(a1)のホモポリマーのガラス転移温度(K)
MA:モノマー混合物100質量部中の(a1)の含有量(質量部)
【0016】
又本発明は、硬化剤(B)がイソシアネート系硬化剤を含むことを特徴とする前記粘着剤組成物に関する。
【0017】
又本発明は、更に有機シラン(C)を含むことを特徴とする前記粘着剤組成物に関する。
【0018】
又本発明は、アクリル系ポリマー(A)を構成するモノマー混合物100質量部中のカルボキシ基を有するモノマー(a3)の含有量が10質量部以下であることを特徴とする前記粘着剤組成物に関する。
【0019】
又本発明は、偏光板固定用に用いられることを特徴とする前記粘着剤組成物に関する。
【0020】
又本発明は、前記粘着剤組成物からなる粘着剤層を備えた、粘着シートに関する。
【0021】
又本発明は、前記粘着剤組成物からなる粘着剤層と光透過性基材を備えることを特徴とする、積層体に関する。
【0022】
又本発明は、前記粘着剤組成物からなる粘着剤層を備えることを特徴とする粘着剤層付き偏光板に関する。
【0023】
又本発明は、前記粘着剤組成物からなる粘着剤層と光透過性基材と偏光板と光学素子とを備える、ディスプレイに関する。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、所定の不揮発分に調整した際の低粘度性に優れ、粘着シートに用いたときに、再剥離性に優れ、高温環境下や高温高湿環境下に曝された後に、例えばガラスやプラスチックス等に被着体から浮きや剥がれが生じにくく、光漏れが生じにくい粘着剤組成物を提供できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の積層体を、部分的に示す概略断面図である。
【
図2】本発明の積層体の使用例であるディスプレイを、部分的に示す概略断面図である。
【
図3】本発明の粘着シートを、部分的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の粘着剤組成物、粘着シート、積層体およびディスプレイについて説明するが、これに限定されない。
なお、本明細書では、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルを含み、(メタ)アクリロキシ基とは、アクリロキシ基およびメタクリロキシ基を含む。モノマーとは、エチレン性不飽和基を有する単量体である。
また、本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値の範囲として含むものとする。また、「フィルム」や「シート」は、厚みによって区別されないものとする。換言すると、本明細書の「シート」は、厚みの薄いフィルム状のものも含まれ、本明細書の「フィルム」は、厚みのあるシート状のものも含まれるものとする。
更に、被着体とは、粘着シートの粘着剤層を貼り付ける相手方を指す。
本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。
【0027】
《粘着剤組成物》
本発明の粘着剤組成物は、アクリル系ポリマー(A)および硬化剤(B)を含む。
【0028】
<アクリル系ポリマー(A)>
アクリル系ポリマー(A)は、以下に記すモノマー(a1)と、モノマー(a2)とを含むモノマー混合物の共重合体である。
【0029】
[モノマー(a1)]
モノマー(a1)はホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上であって、官能基を有さない(メタ)アクリレートモノマーである。
ホモポリマーのガラス転移温度(℃)は、各種モノマーの販売元からの情報、もしくは「Polymer Handbook 3rd Edition」(A WILEY-INTERSCIENCE PUBLICATION、1989年)に記載された値から知ることができる。
【0030】
モノマー(a1)の例として、メチル(メタ)アクリレート、エチルメタクリレート、ter-ブチルメタクリレート、sec-ブチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
凝集力や接着力の向上の点で、モノマー(a1)は、メチル(メタ)アクリレート、エチルメタクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートおよびフェニル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれることが好ましい。
【0031】
アクリル系ポリマー(A)は、下記式(1)を満足する。
式(1) 1500≦Σ(T2×MA/100)≦38000
T:(a1)のホモポリマーのガラス転移温度(K)
MA:モノマー混合物100質量部中の(a1)の含有量(質量部)
アクリル系ポリマー(A)が式(1)を満足するようにモノマー(a1)の含有量を設定することで、粘着剤組成物の凝集力が向上し強靭な粘着剤層が得られるため、高温雰囲気下に曝された場合、浮きおよび剥がれを抑制でき、更に光学部材への貼り直しの際に必要な再剥離性も確保できる。
式(1)の下限は3900であることが好ましく、7100であることがより好ましい。また、式(1)の上限は32000であることが好ましく、24000であることがより好ましい。
【0032】
[モノマー(a2)]
モノマー(a2)は2-オクチル(メタ)アクリレートである。モノマー(a2)は生物由来材料の入手が可能なため、これらを用いることにより生物由来材料の比率を向上させることができる。また、粘着剤層の柔軟性が向上し、粘着剤層の基材に対する密着性がより向上し、高温雰囲気下または高温高湿雰囲気下に曝された場合、浮きおよび剥がれがより抑制できる。更に、モノマー(a2)を含むことで、アクリル系ポリマー(A)を高分子量としても、同程度の分子量のモノマー(a2)を含まないポリマーに比べて低粘度となる傾向があり、粘着剤組成物を高不揮発分としても粘度が上がり過ぎず取扱いが容易となる。
【0033】
モノマー(a2)の含有量はモノマー混合物100質量部中に40~95質量部である。好ましくは50~95質量部であり、より好ましくは60~90質量部であり、最も好ましくは70~85質量部である。モノマー(a2)の含有量を40~95質量部とすることで粘着剤組成物の粘度上昇を抑制でき接着性や高温雰囲気下または高温高湿雰囲気下に曝された場合の耐久性を両立できる。
【0034】
モノマー(a2)100質量%中での2-オクチルアクリレートの比率は75質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが最も好ましい。75質量%以上とすることで、各種光学部材への接着性を確保できるほか、偏光板を形成した場合に高温雰囲気下または高温高湿雰囲気下に曝された場合、浮きおよび剥がれがより抑制できる。
【0035】
[モノマー(a3)]
アクリル系ポリマー(A)を構成するモノマー混合物は、更にモノマー(a3)としてカルボキシ基を有するモノマーを含んでもよい。
【0036】
(a3)の含有量はモノマー混合物100質量部中に10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、0.5質量部未満が更に好ましく、0.1質量部以下が最も好ましい。10質量部以下とすることで粘着シートを透明電極に貼り付けた際の耐腐食性を向上させることができ、偏光板を形成した際に高温雰囲気下または高温高湿雰囲気下に曝された場合、浮きおよび剥がれがより抑制できる。
【0037】
カルボキシ基を有するモノマー(a3)としては分子内にカルボキシ基を有するモノマーであれば制限されず、具体的には、(メタ)アクリル酸、アクリル酸p-カルボキシベンジル、アクリル酸β-カルボキシエチル、マレイン酸、モノエチルマレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸等が挙げられる。
これらのうち、粘着力の観点で(メタ)アクリル酸が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
【0038】
[モノマー(a4)]
アクリル系ポリマー(A)を構成するモノマー混合物は、更にモノマー(a4)としてヒドロキシ基を有するモノマーを含むことができる。ヒドロキシ基を有するモノマーを含むことにより粘着剤の粘度上昇を抑制でき接着性や高温雰囲気下または高温高湿雰囲気下に曝された場合の耐久性を両立が容易となる。ヒドロキシ基を有するモノマー(a4)としては、分子内にヒドロキシ基を有するモノマーであれば制限されず、具体的には、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、等が挙げられ、これらの1種または2種以上を併用して用いることができる。
ヒドロキシ基を有するモノマー(a4)のアルキル鎖の平均炭素数は2.5以上が好ましく3以上がより好ましい。これにより硬化剤との反応性が向上し粘着層に凝集力を与えることができ偏光板を形成した場合に高温雰囲気下または高温高湿雰囲気下に曝された場合の浮きおよび剥がれの抑制が容易となる。
【0039】
ヒドロキシ基を有するモノマー(a4)の含有量はモノマー混合物100質量部中に0.1~20質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましく、0.2~1.5質量部であることが最も好ましい。ヒドロキシ基含有モノマーの含有量を0.1~20質量部とすることで粘着剤組成物の粘度上昇を抑制でき光学部材への接着性や再剥離性、高温雰囲気下または高温高湿雰囲気下に曝された場合の耐久性を両立がより容易となる。
【0040】
[その他モノマー]
アクリル系ポリマー(A)を構成するモノマー混合物は任意成分として、前記(a1)~(a4)以外にその他モノマーを含有しても良い。例としては、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃未満である官能基を有さない(メタ)アクリル酸エステルモノマー(エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)クリレート、2-エチルヘキシル(メタ)クリレート、シクロヘキシル(メタ)クリレート、ドデシル(メタ)クリレート、オクタデシル(メタ)クリレート)、メトキシエチルアクリレート等のアルコキシ系(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレン等のビニル系モノマー、(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基を有するモノマー、窒素原子を含有するモノマー等が挙げられる。
【0041】
窒素原子含有モノマーの例として、N-ビニルラクタム類、ビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、(メタ)アクリロイルモルフォリン等の環状アミド類、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド等のN-ビニルカルボン酸アミド類、アクリロニトリル、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド等が挙げられる。N-ビニルラクタム類は環状のラクタム環を有する単量体であり、例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピペリドン、N-ビニル-ε-カプロラクタム、およびこれらの水素原子の1つまたは2つ以上が、置換基で置換された構造を有する化合物が挙げられる。置換基としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数3~20のカルボキシエステル基、炭素数1~20のアミノ基が挙げられ、ヒドロキシ基やカルボン酸(塩)基、スルホン酸(塩)基、次亜リン酸(塩)基等の酸性基は含まない。
これらの中でも、環状アミド類、N-ビニルラクタム類が好ましく、N-ビニルラクタム類がより好ましい。
【0042】
その他モノマーの含有量はモノマー混合物100質量部中25質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、15質量部以下であることが更に好ましく、10質量部以下であることが殊更に好ましく、5質量部以下であることが最も好ましい。
【0043】
(アクリル系ポリマー(A)の製造)
アクリル系ポリマー(A)は、前記モノマー混合物を重合し、製造することができる。
重合は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等公知の重合方法が可能であるが、溶液重合が好ましい。溶液重合で使用する溶媒は、例えば、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、キシレン、アニソール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が好ましい。重合温度は60~120℃の沸点反応が好ましい。また、重合時間は5~12時間程度が好ましい。
【0044】
重合に使用する重合開始剤は、ラジカル重合開始剤が好ましい。ラジカル重合開始剤は、過酸化物およびアゾ化合物が一般的である。
過酸化物は、例えば、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3等のジアルキルパーオキサイド;
t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシアセテート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等のパーオキシエステル;シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド;
2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレート、等のパーオキシケタール;
クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルシクロヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;
ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;
ビス(t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0045】
アゾ化合物は、例えば2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(略称:AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等の2,2’-アゾビスブチロニトリル;
2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等の2,2’-アゾビスバレロニトリル;
2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)等の2,2’-アゾビスプロピオニトリル;
1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)等の1,1’-アゾビス-1-アルカンニトリル等が挙げられる。
【0046】
重合開始剤は、前記モノマー混合物100質量部に対して、0.01~10質量部を使用することが好ましく、0.1~2質量部がより好ましい。
【0047】
(重量平均分子量(Mw))
アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は、80万~180万が好ましく、100万~170万がより好ましい。重量平均分子量を上述した範囲内にすることで光学部材への接着性や再剥離性、高温雰囲気下に曝された場合の耐久性を確保しやすくなる。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定するポリスチレン換算の値である。
【0048】
<硬化剤(B)>
本発明の粘着剤組成物は硬化剤(B)をアクリル系ポリマー(A)100質量部に対して0.01~5質量部含む。粘着剤組成物に配合する硬化剤としては上記モノマー(a3)のカルボキシ基および/またはモノマー(a4)のヒドロキシ基と熱等により反応して結合を形成するものが好ましい。硬化剤を上記比率で配合することにより粘着剤層の凝集力が向上し、光学部材への接着性や再剥離性、高温雰囲気下または高温高湿雰囲気下に曝された場合の耐久性を両立できる。硬化剤(B)の配合量はアクリル系ポリマー(A)100質量部に対して0.1~2質量部含むことが好ましい。
【0049】
硬化剤としては、エポキシ系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、オキサゾリン系硬化剤、アジリジン系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、金属キレート系硬化剤、メラミン系硬化剤等の公知の硬化剤の中から、粘着剤組成物中の重合体が有する官能基との反応性を考慮して適宜1種または2種以上選択できるが、再剥離性の観点でイソシアネート系硬化剤を含むことが好ましい。
【0050】
エポキシ系硬化剤は、例えばN,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、テトラグリシジル-3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、1、3-ビス(N、N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'-テトラグリシジルアミノフェニルメタン(以上、4官能エポキシ化合物の例)、グリセリンジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、等が挙げられ、これらを適宜1種または2種以上選択できる。
【0051】
イソシアネート系硬化剤は、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネートである。イソシアネートとしては例えば、芳香族ポリイソシアネート系、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、ならびにこれらのビュレット体、ヌレート体、およびアダクト体が好ましく、耐黄変性の観点から脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートならびにこれらのビュレット体、ヌレート体、およびアダクト体が更に好ましい。
【0052】
前記ビュレット体は、イソシアネートモノマーが自己縮合したビュレット結合を有する自己縮合物である。ビュレット体は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体が挙げられる。
【0053】
前記ヌレート体は、イソシアネートモノマーの3量体である。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、イソホロンジイソシアネートの3量体、トリレンジイソシアネートの3量体等が挙げられる。
【0054】
前記アダクト体は、イソシアネートモノマーと2官能以上の低分子活性水素含有化合物が反応した2官能以上のイソシアネート化合物である。アダクト体は、例えば、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとイソホロンジイソシアネートとを反応させた化合物、1,6-ヘキサンジオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物等が挙げられる。
【0055】
イソシアネート化合物は、十分な架橋構造を形成する観点から、3官能のイソシアネート化合物が好ましい。イソシアネート化合物は、イソシアネートモノマーと3官能の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体、およびヌレート体がより好ましい。イソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのヌレート体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのヌレート体が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体がより好ましい。
【0056】
オキサゾリン系硬化剤は、分子中に2個以上のオキサゾリン基を有するものであり低分子化合物であっても重合体であってもよい。低分子化合物のオキサゾリン系硬化剤としては、例えば、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリン、2,2’-ビス-(2-オキサゾリン)、2,2’-メチレン-ビス-(2-オキサゾリン)、2,2’-エチレン-ビス-(2-オキサゾリン)、2,2’-トリメチレン-ビス-(2-オキサゾリン)、2,2’-テトラメチレン-ビス-(2-オキサゾリン)、2、2’-ヘキサメチレン-ビス-(2-オキサゾリン)、2,2’-オクタメチレン-ビス-(2-オキサゾリン)、2,2’-エチレン-ビス-(4,4’-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-p-フェニレン-ビス-(2-オキサゾリン)、2,2’-m-フェニレン-ビス-(2-オキサゾリン)、2,2’-m-フェニレン-ビス-(4,4’-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-(1,3-フェニレン)-ビス-(2-オキサゾリン)、ビス-(2-オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス-(2-オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド等が挙げられる。重合体のオキサゾリン系硬化剤としては、その構成成分として付加重合性オキサゾリンを必須成分とする重合体が挙げられる。上記付加重合性オキサゾリンとしては、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリン等が挙げられる。
【0057】
アジリジン系硬化剤は、例えばN,N’-ジフェニルメタン-4,4'-ビス(1-アジリジンカルボキサイト)、トリス-2,4,6-(1-アジリジニル)-1、3、5-トリアジン、4,4’-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等が挙げられる。
【0058】
カルボジイミド化合物は、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネート化合物を脱炭酸縮合反応させることによって生成した高分子量ポリカルボジイミドが好ましい。前記高分子量ポリカルボジイミドの市販品は、日清紡績社のカルボジライトシリーズが好ましい。その中でもカルボジライトV-03、07、09は有機溶剤との相溶性に優れており好ましい。
【0059】
金属キレートは、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロムおよびジルコニウム等の多価金属と、アセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルとの配位化合物が好ましい。金属キレートは、例えば、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート等が挙げられる。
【0060】
メラミン系硬化剤は、例えば完全アルキルエーテル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、一部にイミノ基を有するイミノ基型メラミン樹脂等が代表的なものとして挙げられる。
【0061】
<有機シラン(C)>
本発明の粘着剤組成物は有機シラン(C)を含むことが好ましい。有機シラン(C)を含むことで、光学部材への接着性や再剥離性、高温雰囲気下または高温高湿雰囲気下に曝された場合の耐久性を両立が容易となる。有機シラン(C)はアクリル系ポリマー(A)100質量部に対して0.001~1質量部含むことが好ましく、0.005~0.8質量部含むことがより好ましい。上記範囲とすることで、光学部材への接着性や再剥離性、高温雰囲気下または高温高湿雰囲気下に曝された場合の耐久性を両立がよりより容易となる。
【0062】
有機シラン(C)としては、(メタ)アクリロキシ基を有するアルコキシシラン化合物、ビニル基を有するアルコキシシラン化合物、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物、メルカプト基を有するアルコキシシラン化合物、またはエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物等が挙げられ、このうちエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物が好ましい。
市販品として具体的には例えば、エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物としてはKBM-403(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、KBE-403(3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)、KBM-303(2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン)(以上、信越化学工業株式会社製)、その他の有機アミンとしてはBYK-325N(ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン)(ビックケミージャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0063】
また、本発明の粘着剤組成物は発明の効果を損ねない範囲で、その他化合物を含有することができる。その他化合物としては、塩素化ポリオレフィン、帯電防止剤、シリコーンオイル、粘着付与樹脂等が挙げられる。
【0064】
(塩素化ポリオレフィン)
塩素化ポリオレフィンとしては、塩素化ポリプロピレン、酸変性塩素化ポリプロピレン、アクリル変性塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、塩素化エチレン酢酸ビニルコポリマー等が挙げられ、アクリル系ポリマー等との相溶性がよく、効果的に極性を下げられる観点から、塩素化ポリプロピレン、または塩素化エチレン酢酸ビニルコポリマーが好ましい。
市販品として具体的には、例えば、スーパークロン 390S(塩素化ポリプロピレン、塩素含有率36%)、スーパークロン BX(塩素化EVA、塩素含有率18%)(以上、日本製紙株式会社製)が挙げられる。
【0065】
(帯電防止剤)
帯電防止剤としては例えば、無機塩、イオン液体、イオン固体、界面活性剤等が挙げられる。これらの中でもイオン液体が好ましい。なお「イオン液体」は、常温溶融塩ともいい、25℃で液体の性状を示す。
【0066】
無機塩は、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、過塩素酸リチウム、塩化アンモニウム、塩素酸カリウム、塩化アルミニウム、塩化銅、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、およびチオシアン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0067】
イオン液体は、カチオンとアニオンの塩であり、カチオンは、例えば、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、アンモニウムイオン等が好ましい。
イミダゾリウムイオンを含むイオン液体は、例えば、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1,3-ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、および1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0068】
ピリジニウムイオンを含むイオン液体は、例えば、1-メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ブチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ヘキシルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-オクチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ヘキシル-4-メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ヘキシル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロリン酸塩、1-オクチル-4-メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-オクチル-4-メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-メチルピリジニウムビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド、および1-メチルピリジニウムビス(パーフルオロブチルスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0069】
アンモニウムイオンを含むイオン液体は、例えば、トリメチルヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジエチル-N-メチル-N-プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジエチル-N-メチル-N-ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジエチル-N-メチル-N-ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、およびトリ-n-ブチルメチルアンモニウムビストリフルオロメタンスルホンイミド等が挙げられる。
【0070】
その他、カチオンがピロリジニウムイオン、ホスホニウムイオン、およびスルホニウムイオン等である公知のイオン液体を適宜使用できる。
【0071】
イオン固体は、イオン液体同様、カチオンとアニオンの塩であるが、常圧下25℃において固体の性状を示す。カチオンは、例えば、アルカリ金属イオン、ホスホニウムイオン、ピリジニウムイオン、アンモニウムイオン等が好ましい。
【0072】
アルカリ金属イオンを含むイオン固体は、例えば、リチウムビスフルオロスルホニルイミド、リチウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、リチウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、リチウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、リチウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、ナトリウムビスフルオロスルホニルイミド、ナトリウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、ナトリウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、ナトリウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、ナトリウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、カリウムビスフルオロスルホニルイミド、カリウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、カリウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、カリウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、カリウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド等が挙げられる。
【0073】
ホスホニウムイオンを含むイオン固体は、例えば、テトラブチルホスホニウムビスフルオロスルホニルイミド、テトラブチルホスホニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、テトラブチルホスホニウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、テトラブチルホスホニウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、テトラブチルホスホニウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムビスフルオロスルホニルイミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、テトラオクチルホスホニウムビスフルオロスルホニルイミド、テトラオクチルホスホニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、テトラオクチルホスホニウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、テトラオクチルホスホニウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、テトラオクチルホスホニウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド等が挙げられる。
【0074】
ピリジニウムイオンを含むイオン固体は、例えば、1-ヘキサデシル-4-メチルピリジニウムビスフルオロスルホニルイミド、1-ヘキサデシル-4-メチルピリジニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、1-ヘキサデシル-4-メチルピリジニウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、1-ヘキサデシル-4-メチルピリジニウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、1-ヘキサデシル-4-メチルピリジニウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド等が挙げられる。
【0075】
アンモニウムイオンを含むイオン固体は、例えば、トリブチルメチルビストリフルオロメチルスルホニルイミド、トリブチルメチルビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、トリブチルメチルビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、トリブチルメチルムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、オクチルトリブチルビストリフルオロメチルスルホニルイミド、オクチルトリブチルビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、オクチルトリブチルビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、オクチルトリブチルムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、テトラブチルビスフルオロスルホニルイミド、テトラブチルビストリフルオロメチルスルホニルイミド、テトラブチルビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、テトラブチルビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、テトラブチルムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド等が挙げられる。
その他、カチオンがピロリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、およびスルホニウムイオン等である公知のイオン固体を適宜使用できる。
【0076】
界面活性剤は、非イオン性、アニオン性、カチオン性、および両性のタイプに分類できる。
【0077】
非イオン性界面活性剤は、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン脂肪酸エステル、肪酸ジエタノールアミド、ポリエーテルエステルアミド型、エチレンオキシド-エピクロルヒドリン型、およびポリエーテルエステル型等が挙げられる。
【0078】
アニオン性界面活性剤(ただし、イオン液体およびイオン固体を除く)は、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルホスフェート、およびポリスチレンスルホン酸型等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤は、例えば、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、および第4級アンモニウム塩基含有アクリレート重合体型等が挙げられる。
【0079】
両性界面活性剤は、例えば、アルキルベタインおよびアルキルイミダゾリウムベタイン、高級アルキルアミノプロピオン酸塩等のアミノ酸型両性界面活性剤、高級アルキルジメチルベタイン、および高級アルキルジヒドロキシエチルベタイン等のベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0080】
帯電防止剤は、単独または2種以上を使用できる。
【0081】
帯電防止剤を添加する場合の配合量は、アクリル系ポリマー(A)100質量部に対して、0.01~3質量部が好ましく、0.03~2質量部がより好ましく、0.06~1質量部が更に好ましい。帯電防止剤を適量配合すると高温高湿雰囲気下に曝された場合の再剥離性が低下し難くなり、粘着シート製造の時の歩留まりが向上する。
【0082】
(シリコーンオイル)
シリコーンオイルとしては例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、側鎖型タイプのポリエーテル変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、フロロアルキル変性シリコーンオイル、長鎖アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸アミド変性シリコーンオイル、ポリエーテル・長鎖アルキル変性シリコーンオイル・アラルキル変性シリコーンオイル、フェニル変性シリコーンオイル、両末端型のポリエーテル変性シリコーンオイル、ポリエーテル・メトキシ変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0083】
シリコーンオイルを添加する場合の配合量は、アクリル系ポリマー(A)100質量部に対して1~10質量部が好ましく、1~5質量部がより好ましい。シリコーンオイルを適量配合すると高温高湿雰囲気下に曝された場合の再剥離性が低下し難くなり、粘着シート製造の時の歩留まりが向上する。
【0084】
(粘着付与樹脂)
粘着付与樹脂としては、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、合成炭化水素系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂(ロジン、重合ロジン、水添ロジン、及びそれらのグリセリン、ペンタエリスリトール等とのエステル、樹脂酸ダイマー等)、アクリル樹脂などが挙げられる。
【0085】
粘着付与樹脂を添加する場合の配合量は、アクリル系ポリマー(A)100質量部に対して20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下が更に好ましく、実質的に含まないことが最も好ましい。粘着付与樹脂の添加量をこのような範囲とすることで、高温雰囲気下においても粘着剤層軟化に起因する粘着力低下を防止することができ、更に光学部材への貼り直しの際に必要な再剥離性も確保できる。
【0086】
脂肪族系石油樹脂としては、日本ゼオン(株)製のクイントンB170、芳香族系石油樹脂としては、JXTG(製)の日石ネオポリマーL-90、脂肪族/芳香族系石油樹脂としては、三井化学(株)製のFTR6100、ロジン誘導体としては、アリゾナケミカル社製のSylvatacRE85、荒川化学工業(株)のスーパーエステルA-75などが挙げられる。
【0087】
合成炭化水素系樹脂は、例えば、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族/芳香族系石油樹脂、水素化石油系樹脂、クマロン-インデン樹脂、フェノール樹が挙げられる。
【0088】
テルペン系樹脂としては、例えば、α-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、ジペンテン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、酸変性テルペン樹脂、スチレン化テルペン樹脂、及びスチレン-脂肪族炭化水素系共重合体樹脂等が挙げられる。
【0089】
ロジン系樹脂としては、例えば、ロジンエステル、重合ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、マレイン酸変性ロジン、フマル酸変性ロジン、ロジンフェノール樹脂、天然ロジン等が挙げられる。
【0090】
粘着剤組成物の粘度は特に限定されないが、含有するアクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量に応じた所定の不揮発分に調整した際の粘度が、7000mPa・s以下であることが好ましい。
具体的には、アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量が150万以上である場合は不揮発分20.0±0.5%での粘度が7000mPa・s未満であることが好ましく、アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量が100万以上150万未満である場合は不揮発分25.0±0.5%での粘度が7000mPa・s未満であることが好ましく、アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量が100万未満である場合は不揮発分30.0±0.5%での粘度が7000mPa・s未満であることが好ましい。このような粘度であることでコーティング時のハンドリングが容易となり、欠陥の無い粘着剤層が得やすくなる。
【0091】
《粘着剤層》
本発明の粘着剤層は、ゲル分率が55~90質量%である。60~80質量%がより好ましい。ゲル分率が55質量%以上であると、粘着剤組成物の凝集力が向上し、強靭な粘着剤層が得られ、折り曲げ時に端部から粘着剤層がよりはみ出しにくくなる。55質量%以上であると、粘着剤の凝集力が向上し強靭な粘着剤層が得られるため、高温雰囲気下に曝された場合、浮きおよび剥がれを抑制でき、更に光学部材への貼り直しの際に必要な再剥離性も確保できる。90質量%以下であると柔軟な粘着剤層が得られやすく、粘着剤層の基材に対する密着性(以下、基材密着性という)がより向上し、高温雰囲気下または高温高湿雰囲気下に曝された場合、浮きおよび剥がれがより抑制できる。
一般に、ポリマーのゲル分率は架橋度に等しく、ポリマー中の架橋された部分が多いほど、ゲル分率が大きくなる。ゲル分率(架橋構造の導入量)は、架橋構造の導入方法や、架橋剤の種類および量等により所望の範囲に調整できる。
ゲル分率の測定方法は、実施例にて詳細を説明する。
【0092】
《粘着シート》
粘着シートは、本発明の粘着剤組成物からなる粘着剤層を備える。
【0093】
本発明の粘着シートは、粘着剤層の少なくとも片面に剥離フィルムが貼り合された構成が好ましい。具体的には、粘着剤層の両面に剥離フィルムが形成された構成あるいは粘着剤層の片面に剥離フィルムが形成され粘着剤のもう一方の面に光透過性基材を備える構成の何れかであり、かつ該粘着剤層が本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層である。
【0094】
<剥離フィルム>
剥離フィルムとしては、特に制限されないが、透明プラスチック基材を好適に用いることができる。透明プラスチック基材の素材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリサルフォン、ポリアリレート、ポリシクロオレフィン等のプラスチック材料等が挙げられる。なお、プラスチック材料は単独で又は2 種以上組み合わせて使用することができる。
【0095】
剥離フィルムとしては、前述のような透明プラスチック基材のなかでも、耐熱性が優れた透明プラスチック基材、すなわち、高温、高温高湿等の苛酷な条件下において、変形が抑制または防止されている透明プラスチック基材を好適に用いることができる。透明プラスチック基材としては、特に、PETフィルム又はシートが好適である。
【0096】
透明プラスチック基材の厚さは、特に限定されず、例えば、10~200μmが好ましく、25~150μmがより好ましい。
【0097】
本発明の粘着シートは、光学部材への接着性や再剥離性、高温雰囲気下または高温高湿雰囲気下に曝された場合の耐久性を有するため、LCDやOLED等の表示装置やタッチパネルのような入力装置といった光学ディスプレイ部材の形成や、それらの部材同士の貼り合わせのための粘着剤として好適であるが、偏光板に貼付した際の高温高湿環境下での耐久性に優れている為、粘着剤層の少なくとも一方の面は偏光板に貼付されていることが好ましい。光学部材としては特に限定されることなく、PETフィルム、COPフィルム、偏光板、位相差板、楕円偏光板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、赤外線/電磁波カットフィルム、前面用反射防止フィルム、表面保護フィルム、ITO(酸化インジウムスズ)層を有するフィルム、酸化亜鉛(ZnO)層を有するフィルム、金属ナノ粒子を塗布や印刷することで得られるフィルム、カーボンナノチューブを含む分散液を塗布や印刷することにより得られるフィルム、グラフェンを含む分散液を塗布や印刷することにより得られるフィルム、導電性高分子を含む分散液を塗布や印刷することにより得られるフィルム、SUS等で形成された金属板、金属メッシュ、更にはこれらが積層されているものが挙げられる。
【0098】
粘着剤組成物の塗工には、適当な液状媒体を添加して粘度を調整することもできる。具体的には、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、またはその他の炭化水素系溶剤等が挙げられる。ただし、水やアルコールは、アクリル系ポリマー(A)とイソシアネート系硬化剤(B)との反応阻害を引き起こす可能性があるため、慎重に使用する必要がある。
【0099】
塗工方法は特に制限は無く、マイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ-ター、スピンコーター等種々の塗工方法が挙げられる。また、乾燥硬化方法は特に制限はなく、熱風乾燥、赤外線、減圧法や活性エネルギー線を利用したものが挙げられるが、耐アウトガス性の観点で60~180℃での熱風もしくは蒸気加熱が好ましい。
【0100】
粘着剤層の厚みは、2~1000μmが好ましく、5~500μmがより好ましく10~100μmが更に好ましく20~50μmが最も好ましい。なお、粘着剤層は単層でも、2層以上の積層いずれの形態でもよい。
【0101】
《積層体》
積層体は、光透過性基材と粘着剤層を備え、前記粘着剤層は、本発明の粘着シートを用いて形成される。具体的には、例えば、本発明の粘着シートから剥離フィルムを剥離し、光透過性基材に粘着剤層を貼り付けて積層体を形成することができる。
【0102】
<光透過性基材>
光透過性基材としては透明プラスチック基材が用いられる。このような光透過性基材の素材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリシクロオレフィン(COP)、ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリプロピレン等のプラスチック材料等が挙げられる。特に、PETフィルム、またはPCが好ましく耐久性の面でPCが更に好ましい。
なお、プラスチック材料は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
また、光透過性基材は、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理等の物理的処理、下塗り処理等の化学的処理等の適宜な表面処理が施されていてもよい。
【0103】
《粘着剤層付き偏光板》
粘着剤層付き偏光板は、偏光板と粘着剤層を備え、前記粘着剤層は、本発明の粘着シートを用いて形成される。具体的には、例えば、本発明の粘着シートから剥離フィルムを剥離し、偏光板に粘着剤層を貼り付けて形成することができる。
【0104】
図1に、本発明の積層体を部分的に示す概略断面図の例を示す。
図1において3は光透過性基材(カバーパネル)、1は粘着剤層であり、4は偏光板である。
【0105】
図1で示される積層体では、光透過性基材(カバーパネル)が、粘着剤層を介して、偏光板に貼付されている。
【0106】
<積層体および粘着剤付き偏光板の製造>
積層体および粘着剤付き偏光板の製造方法は、例えば、粘着剤層の両面に剥離フィルムを有する粘着シートから剥離フィルムを剥離し、それぞれ光透過性基材、もしくは偏光板に粘着剤層を貼り付けて形成することができる。また、粘着剤層の片面に剥離フィルム、もう一方の面に光透過性基材を備える粘着シートから剥離フィルムを剥離し、光透過性基材もしくは偏光板に粘着剤層を貼り付けて形成することができる。更に、光透過性基材上に粘着剤層を直接形成後、粘着剤層に、被着体、または別の粘着シートが備える粘着剤層を貼り付けて積層体を形成することもできる。
【0107】
《ディスプレイ》
ディスプレイは、光透過性基材、粘着剤層、偏光板および光学素子を備える。これにより、本発明のディスプレイは視認性に優れる。
光学素子としては、特に限定されず、例えば、液晶素子、有機EL素子等が挙げられる。
【0108】
図2に、本発明の粘着シートの使用例である、ディスプレイを部分的に示す概略断面図の例を示す。
図2において、3は光透過性基材(カバーパネル)、1は粘着剤層1、4は偏光板、5は粘着剤層2、6は窒化ケイ素等のバリア層、7は有機EL層、8はポリイミド等の支持体、9は有機ELセルである。なお、ディスプレイの構成が
図2に限定されることはない。
【0109】
図2で示されるディスプレイでは、光透過性基材(カバーパネル)が、本発明の粘着剤層(粘着剤層1)を介して、偏光板に貼付され、更に偏光板用粘着剤層(粘着剤層2)を介して有機ELセルに貼付されている。このように、本発明の粘着シートは、前記粘着剤組成物から形成された透明粘着剤層が、光透過性基材(カバーパネル)および偏光板に貼付され、更に偏光板用粘着剤層を介して積層体が有機ELに貼付される形態で用いることができる。
例えば、
図2において、本発明の粘着剤組成物は、粘着剤層1、および粘着剤層2のいずれにも用いることができる。
一般に、粘着剤層1と粘着剤層2を比較した場合、粘着剤層に要求される要求品質は粘着剤層1の方が要求は高く、本発明の粘着剤組成物は、基材への密着性および、接着性が良好であることから、粘着剤層1に用いられることが好ましい。このとき、粘着剤層2を形成するための粘着剤は、本発明の粘着剤組成物を用いてもよく、従来公知の粘着剤を用いてもよい。
【0110】
ディスプレイの使用用途としては、特に制限はないが、有機ELテレビをはじめ、有機ELスマートフォン、有機ELタブレット、有機ELスマートウォッチ等が挙げられる。
【実施例】
【0111】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。例中、特に断りのない限り、「部」とは「質量部」を、「%」とは「質量%」をそれぞれ示すものとする。また、表中の配合量は、質量部であり、溶剤以外は、不揮発分換算値である。尚、表中の空欄は配合していないことを表す。
なお、アクリル系ポリマーの重量平均分子量の測定方法は、下記に示す通りである。
【0112】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した。装置は、株式会社島津製作所製GPC装置:LC-GPCシステム「Prominence」を用いた。また、カラムには、東ソー社製:TSKgel α-Mを用い、2本を直列に連結した。溶離液として、N、N-ジメチルホルムアミド(DMF)を用い、40℃で測定した。Mwの決定は、標準物質としてMwが既知のポリスチレンを標準物質とした換算で行った。
重量平均分子量の測定結果を基に、下記基準でH、M、Lの区分に分類した。
H:分子量150万以上
M:分子量100万以上150万未満
L:分子量100万未満
【0113】
<アクリル系ポリマーの製造例>
(アクリル系ポリマー(A-1))
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下管を備えた反応装置を使用して、モノマー(a1)としてメチルアクリレート(MA、Tg=8℃)10部、モノマー(a2)として2-オクチルアクリレート(2OA)88.5部、モノマー(a4)として4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)1.5部、溶剤として酢酸メチル110部を反応槽に仕込み、窒素雰囲気下70℃にて5時間重合させ、重合中は酢酸エチルの滴下により適宜粘度を調整した。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで希釈し、不揮発分30.0±0.5%のアクリル系ポリマー溶液(A-1)を得た。又、得られたアクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)を表1に示す。
【0114】
(アクリル系ポリマー(A-2~A-34、A’-1~A’-4))
表1~4記載の組成および配合量(質量部)に変更した以外は、アクリル系ポリマー(A-1)の製造と同様の方法でアクリル系ポリマー(A-2~A-33、A’-1~A’-4)を合成した。又、得られたアクリル系ポリマーの重量平均分子量を表1~3に示す。
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
なお、略号は以下の通りである。
[モノマー(a1)]
MA:メチルアクリレート(アルキル基の炭素数1、Tg=8℃)
BzA:ベンジルアクリレート(Tg=6℃)
CHA:シクロヘキシルアクリレート(Tg=15℃)
IBXA:イソボロニルアクリレート(Tg=97℃)
MMA:メチルメタクリレート(アルキル基の炭素数1、Tg=105℃)
IBXMA:イソボロニルメタクリレート(Tg=180℃)
[モノマー(a2)]
2OA:2-オクチルアクリレート
2OMA:2-オクチルメタクリレート
[モノマー(a3)]
AA:アクリル酸
[モノマー(a4)]
HEA:ヒドロキシエチルアクリレート
4HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート
[その他モノマー]
2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート(アルキル基の炭素数8、Tg=-70℃)
DDA:ノルマルドデシルアクリレート(アルキル基の炭素数12、Tg=-23℃)
【0119】
実施例および比較例で使用した材料を下記に記す。
<硬化剤B>
[イソシアネート系硬化剤]
B-1:(「NP-1200」、三井化学社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体)
B-2:(「D-172N」、三井化学社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体)
B-3:(「D-160N」、三井化学社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン変性体)
B-4:(「デスモジュール2565」、コベストロ社製、イソホロンジイソシアネートのヌレート体)
B-5:(「コロネートL」、東ソー社製、トリメチロールプロパン変性トルエンジイソシアネート体)
[その他硬化剤]
B-6:ジルコニウムテトラアセチルアセトネート:(「オルガチックスZC-700」、マツモトファインケミカル社製)
B-7:N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン(TETRAD-X)
【0120】
<有機シラン(C)>
KBE-403:(3-グリシドオキシプロピルトリエトキシシラン、信越化学工業社製)
KBM-303:(〔2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル〕トリメトキシシラン、信越化学工業社製)
【0121】
<粘着付与樹脂>
SE10:(ハリタック SE10、水添ロジン、ハリマ化成株式会社製)
FTR6100:(FTR6100、脂肪族/芳香族系石油樹脂、三井化学株式会社製)
A-100:(スーパーエステルA-100、ロジン系樹脂、荒川化学工業株式会社製)
T130:(YSポリスターT130、テルペンフェノール樹脂、ヤスハラケミカル株式会社製)
【0122】
<実施例1>
アクリル系ポリマー(A-1)100部に対して、硬化剤(B)としてB-1(「NP-1200」、三井化学社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体)を0.4部、および有機シラン(C)としてKBE-403(3-グリシドオキシプロピルトリエトキシシラン、信越化学工業社製)を0.1部配合し、不揮発分25.0±0.5%となるように酢酸エチルで希釈し、粘着剤組成物を得た。
得られた粘着剤組成物を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製剥離性シート(セラピールMF:東レフィルム加工社製)上に、乾燥後の厚さが25μmになるようにコンマコーターを用いて塗工し、100℃で2分間乾燥することで粘着シートを得た。次いで、この粘着シートの粘着剤面に、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムという、製品名:A-4300、東洋紡績社製)の片面を貼り合せ、「剥離性シート/粘着剤層/シクロオレフィンフィルム」という構成からなる積層体を得た。次いで、得られた積層体を温度25℃相対湿度55%の条件で1週間熟成させて、積層体を得た(以下、積層体Aとする)。
また、PETフィルムの代わりに偏光板(層構成:トリアセチルセルロースフィルム/ポリビニルアルコールフィルム/ ポリメチルメタクリレートフィルム)を用いて、前記粘着剤層と偏光板のポリメチルメタクリレートフィルム面とが接するように貼り合わせ、「剥離性シート/粘着剤層/偏光板」という構成からなる粘着剤付き偏光板を得た。次いで、得られた粘着剤付き偏光板を温度25℃相対湿度55%の条件で1週間熟成させた。これを、積層体Bとした。
【0123】
<実施例2~51、比較例1~6>
表4に示すように、アクリル系ポリマー、硬化剤および有機シランの種類ならびに配合量を変更し、アクリル系ポリマーの重量平均分子量区分に応じ、これがHであれば不揮発分20.0±0.5%、Mであれば不揮発分25.0±0.5%となるように酢酸エチルで希釈し、Lであれば希釈しない、とした以外は、実施例1と同様にして、それぞれ粘着剤組成物、粘着シート積層体Aおよび積層体Bを得た。
ただし、実施例18、24、27、28、29は参考例である。
【0124】
[ゲル分率測定方法]
上記で得られた粘着シートから30mm×100mmのゲル分率測定用サンプルを切り出し、剥離性シートを剥がして粘着剤層のフリーフィルムを得た。粘着剤層のゲル分率は、下記、式1によって表される様、粘着剤層を酢酸エチル中に50℃で1日間浸漬した後の不溶成分の、浸漬前の粘着剤層に対する質量分率(単位:質量%)として求めた。
(式1)
ゲル分率(質量%)=((X-Y)/X)×100
X=浸漬前の粘着剤層の質量(g)
Y=浸漬後の粘着剤層の質量(g)
【0125】
【0126】
《粘着剤組成物および積層体の物性値と評価》
本発明の粘着剤組成物の低粘度性および積層体の接着性(ガラス、アクリル板、ITO/PET)、耐熱性ならびに耐湿熱性評価、耐腐食性、光漏れ性、再剥離性の評価を下記の方法で行った。結果を表5に示す。
【0127】
<低粘度性>
実施例1~実施例46および比較例1~比較例6の粘着剤組成物について、Brookfield粘度計を用いて粘度を測定した(ローターNo.3、回転数12rpm)。以下の基準に基づいて低粘度性を評価した。
[評価基準]
◎:粘度が7000mPa・s未満(優良)
○:粘度が7000mPa・s以上8000mPa・s未満(良好)
△:粘度が8000mPa・s以上9000mPa・s未満(やや良好)
▲:粘度が9000mPa・s以上10000mPa・s未満(使用可)
×:粘度が10000mPa・s以上(使用不可)
【0128】
<接着性>
上記で得られた積層体Aを幅25mm×長さ100mmの大きさに準備し試験用積層体Aを作製した。前記試験用積層体Aの剥離性シートを剥がし、23℃、相対湿度50%雰囲気下で粘着剤層をガラス板に貼付け、JIS Z-0237に準じてロールで圧着した。圧着から24時間経過後、万能引張試験機にて粘着力(剥離角180°、剥離速度300mm/分;単位N/25mm幅)を測定した。
別途、被着体をガラス板から、アクリル板、ITO/PETフィルムにそれぞれ代えて前記同様に粘着力を測定した。なおITO/PETフィルムは、酸化インジウムスズを蒸着したPETフィルムであり、ITO蒸着面に試験用粘着シートを貼り付けた。以下の基準に基づいて粘着力により接着性を評価した。
[評価基準]
◎:粘着力が5.0N/25mm以上。(優良)
○:粘着力が3.0N/25mm以上、5.0N/25mm未満。(良好)
△:粘着力が2.0N/25mm以上、3.0N/25mm未満。(やや良好)
▲:粘着力が1.0N/25mm以上、2.0N/25mm未満。(使用可)
×:粘着力が1.0N/25mm未満。(不良)
【0129】
<耐熱性および耐湿熱性評価1>
上記で得られた積層体Aを、幅930mm、縦523mm(42インチ相当)の大きさに切り出した。次いで、切り出した積層体Aから剥離性シートを剥がしてITOスパッタガラス板(品種80Ω:日本板硝子社製)に、ラミネータを用いて貼着した。続いて、この積層体Aが貼り付けられたガラス板を50℃、5気圧の条件のオートクレーブ内に20分間保持して各部材を密着させることで測定試料を得た。この測定試料を、高温雰囲気での耐性評価として耐熱性を評価した。すなわち測定試料を105℃で1000時間放置した後に、発泡、浮き、剥がれの有無を目視で観察した。
また、測定試料を、高温高湿雰囲気での耐性評価として耐湿熱性を評価した。すなわち測定試料を85℃、相対湿度85%で500時間放置した後に発泡、浮き、剥がれの有無を目視で観察した。耐熱性および耐湿熱性は、いずれも以下の基準に基づいて評価した。
[評価基準]
◎:発泡、浮きおよび剥がれが全く認められない。(優良)
○:0.5mm以下の発泡、浮きおよび剥がれのいずれかが認められる。(良好)
△:0.5mmを超えて1mm以下の発泡、浮きおよび剥がれのいずれかが認められる。(やや良好)
▲:1mmを超えて1.5mm以下の発泡、浮きおよび剥がれのいずれかが認められる。(使用可)
×:全面的に発泡、浮きおよび剥がれのいずれかがある(使用不可)
【0130】
<耐腐食性>
膜厚5μmのITO透明導電膜を有するPETフィルム(IPF-05H125:グンゼ社製)幅40mm、長さ160mmのITO透明導電膜上に、幅40mm、長さ100mmに裁断し、上記積層体Aから剥離性シートを剥離して貼着した。続いて、この積層体を50℃、5気圧の条件のオートクレーブ内に20分間保持して各部材を密着させることでPETフィルム/粘着剤層/ITOフィルムの層構造を有する測定試料を得た。
この測定試料の両端に電極をつなぎ、初期の電気抵抗値を測定した。更に測定試料を85℃、相対湿度85%で1000時間放置した後、前記同様に経時後の電気抵抗値を測定した。耐腐食性の評価はいずれも以下の基準に基づいて評価した。なお、電気抵抗値の測定は、Laresta-GP MCP-T600(三菱化学社製)を使用した。
電気抵抗増加率=((経時後の電気抵抗値-初期の電気抵抗値)/初期の電気抵抗値)
[評価基準]
◎:電気抵抗増加率が0.5未満である。(優良)
○:電気抵抗増加率が0.5以上1.0未満である。(良好)
△:電気抵抗増加率が1.0以上1.5未満である。(やや良好)
▲:電気抵抗増加率が1.5以上2.0未満である。(使用可)
×:電気抵抗増加率が2.0以上である。(使用不可)
【0131】
<耐熱性および耐湿熱性評価2>
上記で得られた積層体Bを、幅930mm、縦523mm(42インチ相当)の大きさに切り出した。次いで、切り出した積層体Bから剥離性シートを剥がしてITOスパッタガラス板(品種80Ω:日本板硝子社製)に、ラミネータを用いて貼着した。続いて、この積層体Bが貼り付けられたガラス板を50℃、5気圧の条件のオートクレーブ内に20分間保持して各部材を密着させることで測定試料を得た。この測定試料を、高温雰囲気での耐性評価として耐熱性を評価した。すなわち測定試料を105℃で1000時間放置した後に、発泡、浮き、剥がれの有無を目視で観察した。
また、測定試料を、高温高湿雰囲気での耐性評価として耐湿熱性を評価した。すなわち測定試料を85℃、相対湿度95%で1000時間放置した後に発泡、浮き、剥がれの有無を目視で観察した。耐熱性および耐湿熱性は、いずれも以下の基準に基づいて評価した。
[評価基準]
◎:発泡、浮きおよび剥がれが全く認められない。(優良)
○:0.5mm以下の発泡、浮きおよび剥がれのいずれかが認められる。(良好)
△:0.5mmを超えて1mm以下の発泡、浮きおよび剥がれのいずれかが認められる。(やや良好)
▲:1mmを超えて1.5mm以下の発泡、浮きおよび剥がれのいずれかが認められる。(使用可)
×:全面的に発泡、浮きおよび剥がれのいずれかがある。(使用不可)
【0132】
<光漏れ性>
上記で得られた積層体Bを、幅930mm、縦523mm(42インチ相当)の大きさに切り出した。次いで、切り出した積層体Bから剥離性シートを剥がしてITOスパッタガラス板(品種80Ω:日本板硝子社製)の両面に、各々2枚の積層体Bをその偏光板の吸収軸が直交するようにラミネータを用いて貼着して圧着物を得た。続いて、圧着物を、50℃、5気圧の条件のオートクレーブ内に20分間保持させて各部材を密着させることで測定試料を得た。この測定試料を、105℃で1000時間放置した後、偏光板に光を透過させたときの光漏れを目視で観察した。光漏れ性は、以下の基準に基づいて評価した。
[評価基準]
◎:白抜けが認められない。(優良)
○:白抜けが1~2箇所認められる。(良好)
△:白抜けが3~5箇所認められる。(やや良好)
▲:白抜けが6~10箇所認められる。(使用可能)
×:白抜けが11箇所以上認められる。(使用不可)
【0133】
<再剥離性>
上記で得られた積層体Bを、幅100mm、縦100mmの大きさに切り出した。次いで、切り出した積層体Bから剥離性シートを剥がしてITOスパッタガラス板(品種80Ω:日本板硝子社製)にラミネータを用いて貼り付けた。続いて、50℃、5気圧の条件のオートクレーブ内に20分間保持させて各部材を密着させることで測定試料を得た。この測定試料を、105℃で7日放置した後に、23℃、相対湿度50%の環境下で、引張試験機(オリエンテック社製「テンシロン」)を用いて、180°方向に300mm/分の速度で引っ張る、剥離試験を行った。次いで、剥離後のガラス表面の曇りを目視で観察した。以上の評価を積層体1種につき5サンプルについて行い、下記基準で評価した。
[評価基準]
◎:5サンプルとも糊残り、曇りが認められない。(優良)
○:5サンプルのうち、1サンプルのみに測定面積の5%以下の糊残りもしくは曇りが認められる。(良好)
△:5サンプルのうち、2サンプルにそれぞれ測定面積の5%以下の糊残りもしくは曇りが認められる。(やや良好)
▲:5サンプルのうち、3サンプルにそれぞれ測定面積の5%以下の糊残りもしくは曇りが認められる。(使用可能)
×:5サンプルのうち、4サンプル以上にそれぞれ測定面積の5%以下の糊残りもしくは1サンプル以上に5%超の糊残りもしくは曇りが認められる。(使用不可)
【0134】
【0135】
表5に示すように、本発明の粘着剤組成物は、低粘度性、接着性(ガラス、アクリル板、ITO/PET)、耐熱性ならびに耐湿熱性評価、耐腐食性、光漏れ性、再剥離性の点で優れた結果であった。一方、比較例の粘着剤組成物は、低粘度性、接着性(ガラス、アクリル板、ITO/PET)、耐熱性ならびに耐湿熱性評価、耐腐食性、光漏れ性、再剥離性のすべてを満足することはできなかった。
これらの結果より、本発明の粘着剤組成物は、光学部材の貼り合せに好適に用いることができるといえる。
【符号の説明】
【0136】
図1、
図2、
図3の符号について下記に説明する。
1 粘着剤層1
2 剥離フィルム
3 フィルム基材(カバーパネル)
4 偏光板
5 粘着剤層2
6 バリア層
7 有機EL層
8 支持体
9 有機ELセル
【要約】
【課題】
本発明の課題は、所定の不揮発分に調整した際の低粘度性に優れ、粘着シートに用いた際に、剥離性に優れ、高温環境下や高温高湿環境下に曝された後、被着体からの浮きや剥がれが発生しにくい粘着剤組成物およびそれを用いた粘着シートを提供することである。
【解決手段】
特定のモノマー(a1)および(a2)をそれぞれ特定量含有するモノマー混合物の共重合体であるアクリル系ポリマー(A)および硬化剤(B)を含む粘着剤組成物であって、 硬化剤(B)の添加量はアクリル系ポリマー(A)100質量部に対し0.01~5質量部であり、粘着剤組成物からなる粘着剤層のゲル分率が55~90%であることを特徴とする、粘着剤組成物により解決される。
【選択図】
図1