(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】車両用渋滞判断装置、および車両用表示制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 40/04 20060101AFI20241112BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20241112BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
B60W40/04
B60W50/14
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2023190332
(22)【出願日】2023-11-07
(62)【分割の表示】P 2020140156の分割
【原出願日】2020-08-21
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】奥野 竜也
(72)【発明者】
【氏名】三宅 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】白土 敏治
(72)【発明者】
【氏名】間根山 しおり
(72)【発明者】
【氏名】和泉 一輝
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-269683(JP,A)
【文献】特開2005-324661(JP,A)
【文献】特開2017-200786(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0300052(US,A1)
【文献】特開2019-036012(JP,A)
【文献】特開2017-142079(JP,A)
【文献】特開2019-212071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 40/04
B60W 50/14
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方側における他車両の走行速度あるいは前記車両の車速
が予め定めた第1の閾値を下回
ることにより渋滞の発生を示す第1の情報と、前記車両の自動運転機能による前記渋滞時における自動運転の開始可能条件である第2の閾値
を前記走行速度あるいは前記車両の車速が下回ることにより前記渋滞の発生を示す第2の情報と、を取得する取得部(50、81)と、
前記第1の閾値を使って前記渋滞の発生を判断する第1のアルゴリズムと、前記第2の閾値を使って前記渋滞の発生を判断する第2のアルゴリズムとを実行する制御部(160)と、を備え、
前記制御部は、前記第1のアルゴリズムの結果と、前記第2のアルゴリズムの結果とに基づいて、前記自動運転が不可の表示を表示部(120)にするか否かを判断する車両用渋滞判断装置。
【請求項2】
車両の情報を表示する表示部(120)を制御する車両用表示制御装置であって、
前記車両の前方側における他車両の走行速度あるいは前記車両の車速
が予め定めた第1の閾値を下回
ることにより渋滞の発生を示す第1の情報と、前記車両の自動運転機能による
前記渋滞時における自動運転の開始可能条件である第2の閾値
と前記走行速度あるいは前記車両の車速とをもとに前記自動運転の可否を示す第2の情報と、を取得する取得部(50、81)と、
前記走行速度あるいは前記車両の車速が、前記第1の情報における前記第1の閾値、または前記第2の情報における前記第2の閾値の少なくとも一方を下回っていない場合、前記表示部に前記自動運転が不可であることを示す表示を許可する表示制御部(160)と、を備える車両用表示制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動走行機能を有する車両に用いられる車両用渋滞判断装置、および車両用表示制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載された車両制御装置が知られている。特許文献1の車両制御装置では、例えば、高速道路走行において、VICS(Vehicle information and communication System 登録商標)等のシステムによって提供される渋滞情報から、渋滞の発生があり、且つ渋滞区間が所定距離以上であると判定すると、自動運転(渋滞する前方車両との距離を一定に保持して追従走行する制御)を開始し、自動運転が開始された後に、自動運転停止条件が満たされると自動運転を停止させるようにしている。
【0003】
これにより、運転者が自分で渋滞状況を判断して、自動運転用のスイッチ操作をするという煩わしさを感じることがなく、自動的に、渋滞に対応した自動運転を適切に開始および停止させることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、VICSによって得られた渋滞区間の開始地点から、すんなりと渋滞に対応した自動運転が開始されるかのように読み取れる。しかしながら、自動運転を制御する装置においては、自動運転を開始できるか否かの条件(例えば、自動運転開始可能とする車速条件等)が設けられている。この自動運転開始可能とする車速条件は、安全且つ確実な自動運転への移行を実現するために、例えば、VICSにおいて渋滞区間を把握するために設定された車速条件(例えば40km/h)よりも、更に低い車速(例えば、10km/h)として設定される場合がある。
【0006】
よって、走行中に、VICSによる渋滞区間に入っても、自動運転開始可能とする車速条件を満たさない間においては、自動運転は開始されない状況が発生し得るので、ユーザは、渋滞区間に入ったにも関わらず、自動運転が開始されないことについて、違和感を持つ可能性がある。
【0007】
本開示の目的は、上記問題に鑑み、渋滞状況を的確に判断することのできる車両用渋滞判断装置、および自動運転への移行をユーザに分かり易く伝えることのできる車両用表示制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0009】
第1の開示では、車両用渋滞判断装置であって、車両の前方側における他車両の走行速度あるいは車両の車速が予め定めた第1の閾値を下回ることにより渋滞の発生を示す第1の情報と、車両の自動運転機能による渋滞時における自動運転の開始可能条件である第2の閾値を走行速度あるいは車両の車速が下回ることにより渋滞の発生を示す第2の情報と、を取得する取得部(50、81)と、
第1の閾値を使って渋滞の発生を判断する第1のアルゴリズムと、第2の閾値を使って渋滞の発生を判断する第2のアルゴリズムとを実行する制御部(160)と、を備え、
制御部は、第1のアルゴリズムの結果と、第2のアルゴリズムの結果とに基づいて、自動運転が不可の表示を表示部(120)にするか否かを判断することを特徴としている。
【0010】
この開示によれば、制御部は、第1のアルゴリズムと、第2のアルゴリズムとを実行して、渋滞の発生を判断するので、渋滞の発生状況を的確に判断することができる。
【0011】
また、第2の開示では、車両の情報を表示する表示部(120)を制御する車両用表示制御装置であって、
車両の前方側における他車両の走行速度あるいは車両の車速が予め定めた第1の閾値を下回ることにより渋滞の発生を示す第1の情報と、車両の自動運転機能による渋滞時における自動運転の開始可能条件である第2の閾値と走行速度あるいは車両の車速とをもとに自動運転の可否を示す第2の情報と、を取得する取得部(50、81)と、
走行速度あるいは車両の車速が、第1の情報における第1の閾値、または第2の情報における第2の閾値の少なくとも一方を下回っていない場合、表示部に自動運転が不可であることを示す表示を許可する表示制御部(160)と、を備えることを特徴としている。
【0012】
この開示によれば、表示制御部は、第1の情報から渋滞の発生があることが分かっても、第2の情報において、第2の閾値を下回っていなければ、自動運転には移行できないことを明確に知らせることができる。つまり、自動運転への移行について、ユーザに分かり易く伝えることができる。
【0013】
尚、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態における自動運転機能を有する車両に搭載される車両用渋滞判断装置、および車両用表示制御装置の構成を示す説明図である。
【
図2】VICSによる渋滞情報と、自動運転の可能レベル(レベル2、3)を示す説明図である。
【
図3】第1実施形態のHCU160が実施する表示制御の要領を示すフローチャート(前半)である。
【
図4】第1実施形態のHCU160が実施する表示制御の要領を示すフローチャート(後半)である。
【
図5】
図2の走行位置Aにおける表示状態を示す説明図である。
【
図6】
図2の走行位置Baにおける表示状態を示す説明図である。
【
図7】
図2の走行位置Bbにおける表示状態を示す説明図である。
【
図8】
図2の走行位置Cにおける表示状態を示す説明図である。
【
図9】
図2の走行位置Dにおける表示状態を示す説明図である。
【
図10】
図2の走行位置Eにおける表示状態を示す説明図である。
【
図11】第2実施形態における表示状態(一例)を説明する説明図である。
【
図12】第2実施形態における表示状態(他の例)を説明する説明図である。
【
図13】その他の実施形態における表示状態(一例)を説明する説明図である。
【
図14】その他の実施形態における表示状態(他の例)を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0016】
(第1実施形態)
第1実施形態の車両用渋滞判断装置100、および車両用表示制御装置101について、
図1~
図10を参照しながら説明する。第1実施形態の車両用渋滞判断装置100、および車両用表示制御装置101は、自動運転機能を有する車両に搭載(適用)されている。以下、車両用渋滞判断装置100を渋滞判断装置100と呼び、車両用表示制御装置101を表示制御装置101と呼ぶ。
【0017】
渋滞判断装置100、および表示制御装置101は、
図1に示すように、HCU(Human Machine Interface Control Unit)160を備えている。渋滞判断装置100は、渋滞の発生状況を判断し、また、表示制御装置101は、表示部(例えば、メータディスプレイ120)に、各種車両情報を表示する。各種車両情報は、例えば、車両走行情報(車速等)、高速道路走行時の渋滞発生時における渋滞の発生状況や自動運転の対応可否等である。
【0018】
渋滞判断装置100、および表示制御装置101は、車両に搭載されたDSM(Driver Status Monitor)20、ロケータ30、周辺監視センサ40、車載通信器50、第1自動運転ECU60、第2自動運転ECU70、および車両制御ECU80と、通信バス90等を介して接続されている。
【0019】
DSM20は、近赤外光源および近赤外カメラと、これらを制御する制御ユニットとを含む構成である。DSM20は、運転席のヘッドレスト部分に近赤外カメラを向けた姿勢にて、例えばステアリングコラム部の上面、またはインスツルメントパネルの上面等に設置されている。DSM20は、近赤外光源によって近赤外光を照射されたドライバの頭部を、近赤外カメラによって撮影する。近赤外カメラによる撮像画像は、制御ユニットによって画像解析される。制御ユニットは、ドライバのアイポイントの位置および視線方向等の情報を撮像画像から抽出し、抽出したドライバの状態情報(いねむり、脇見、病気発生等)を、通信バス90を通じて、HCU160等に提供する。
【0020】
ロケータ30は、複数の取得情報を組み合わせる複合測位により、自車位置情報等を生成する。ロケータ30は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機31、慣性センサ32、地図データベース(以下、「地
図DB」)33、およびロケータECU34等を備えている。
【0021】
GNSS受信機31は、複数の測位衛星からの測位信号を受信する。
【0022】
慣性センサ32は、車両に作用する慣性力を検出するセンサである。慣性センサ32は、例えばジャイロセンサおよび加速度センサを備える。
【0023】
地
図DB33は、不揮発性メモリであって、リンクデータ、ノードデータ、道路形状、構造物等の地図データを格納している。地図データは、道路形状および構造物の特徴点の点群からなる三次元地図であってもよい。尚、3次元地図は、REM(Road Experience Management)によって撮像画像をもとに生成されたものであってもよい。また、地図データには、交通規制情報、道路工事情報、気象情報、および信号情報等が含まれていてもよい。地
図DB33に格納された地図データは、後述の車載通信器50にて受信される最新の情報に基づいて、定期的または随時に更新される。
【0024】
ロケータECU34は、プロセッサ、メモリ、入出力インターフェース、およびこれらを接続するバス等を備えたマイクロコンピュータを主体として含む構成である。ロケータECU34は、GNSS受信機31で受信する測位信号、慣性センサ32の計測結果、および地
図DB33の地図データを組み合わせることにより、車両の位置(以下、自車位置)を逐次測位する。
【0025】
自車位置は、例えば緯度経度の座標で表される構成とすればよい。尚、自車位置の測位には、車両に搭載された車載センサ81(車速センサ等)から逐次出力される信号から求めた走行距離を用いる構成としてもよい。地図データとして、道路形状および構造物の特徴点の点群からなる3次元地図を用いる場合、ロケータECU34は、GNSS受信機31を用いずに、この3次元地図と、周辺監視センサ40での検出結果とを用いて、自車位置を特定する構成としてもよい。
【0026】
周辺監視センサ40は、車両の周辺環境を監視する自律センサである。周辺監視センサ40は、車両の周囲の検出範囲から、歩行者、サイクリスト、人間以外の動物、および他車両等の移動物体、更に、路上の落下物、ガードレール、縁石、道路標識、走行区画線、中央分離帯等の路面表示、および道路脇の構造物等の静止物体などを検出可能である。周辺監視センサ40は、車両の周囲の物体を検出した検出情報を、通信バス90を通じて、第1自動運転ECU60、第2自動運転ECU70等に提供する。周辺監視センサ40は、物体検出のための検出構成として、例えば、フロントカメラ41、およびミリ波レーダ42を有している。
【0027】
フロントカメラ41は、車両の前方範囲を撮影した撮像データ、および撮像データの解析結果の少なくとも一方を、検出情報として出力する。
【0028】
ミリ波レーダ42は、例えば、車両の前後の各バンパーに互いに間隔を開けて複数配置されている。ミリ波レーダ42は、ミリ波または準ミリ波を、車両の前方範囲、前側方範囲、後方範囲および後側方範囲等へ向けて照射する。ミリ波レーダ42は、移動物体および静止物体等で反射された反射波を受信する処理により、検出情報を生成する。尚、地物の特徴点の点群を検出するLiDAR(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detection and Ranging)、超音波の反射波を受信するソナー等の他の検出構成が、周辺監視センサ40に含まれていてもよい。
【0029】
車載通信器50は、車両に搭載される通信モジュールである。車載通信器50は、LTE(Long Term Evolution)および5G等の通信規格に沿ったV2N(Vehicle to cellular Network)通信の機能を少なくとも有しており、車両の周囲の基地局等との間で電波を送受信する。車載通信器50は、路車間(Vehicle to roadside Infrastructure,以下「V2I」)通信、および車車間(Vehicle to Vehicle,以下「V2V」)通信等の機能を更に有していてもよい。車載通信器50は、V2N通信により、クラウドと車載システムとの連携(Cloud to Car)を可能にする。車載通信器50の搭載により、車両は、インターネットに接続可能なコネクテッドカーとなる。
【0030】
車載通信器50は、例えば、VICS(Vehicle information and communication System)を用いることによって、FM多重放送や道路に設けられたビーコンから、道路上の渋滞状況や交通規制等の道路交通情報を取得する。VICSにおいては、例えば、各種道路(一般道路や高速道路等)ごとに、予め判定速度(第1の閾値)が定められており、各種道路における走行車両の車速が判定速度を下回ると、渋滞の発生があると判定される。この判定速度は、例えば、一般道路では、10km/h、高速道路では、40km/h等の値が使用される。車載通信器50は、第1の閾値をもとにした、第1の情報(VICSによる渋滞の発生)を取得する取得部に対応する。
【0031】
また、車載通信器50は、例えば、DCM(Data Communication Module)、あるいは車車間通信を用いることによって、所定のセンタ基地局を介して、あるいは車車間で、複数の前方車両との通信を行う。そして、車載通信器50は、自車両の前方側を走行する車両の車速、および位置等の情報を入手することで、リアルタイムで、自車両の前方側における渋滞の発生状況(渋滞エリア)を取得する。DCM(あるいは車車間通信)においては、実際の渋滞の発生を把握するために、予め判定速度(第2の閾値)が定められており、取得した車速が判定速度を下回ると、渋滞の発生があると判定される。判定速度は、例えば、高速道路では、10km/h等の値が使用される。車載通信器50は、上記と同様に、第2の閾値をもとにした、第2の情報(DCMによる渋滞の発生)を取得する取得部に対応する。
【0032】
車載通信器50は、VICSやDCMに基づく渋滞情報を第2自動運転ECU70、およびHCU160等に提供する。
【0033】
第1自動運転ECU60、および第2自動運転ECU70は、それぞれメモリ61、71、プロセッサ62、72、入出力インターフェース、およびこれらを接続するバス等を備えたコンピュータを主体として含む構成である。第1自動運転ECU60、および第2自動運転ECU70は、車両の走行を部分的または実質全て制御する自動走行制御を実行可能なECUである。
【0034】
第1自動運転ECU60は、ドライバの運転操作を部分的に代行する部分的自動運転機能を備えている。第2自動運転ECU70は、ドライバの運転操作を代行可能な自動運転機能を備えている。一例として、米国自動車技術会の規定する自動運転レベルにおいて、第1自動運転ECU60は、レベル2以下の部分的な自動走行制御(高度運転支援)を可能にする。即ち、第1自動運転ECU60は、周辺監視がドライバに必要とされる自動走行制御を実施可能とする。換言すると、第1自動運転ECU60は、後述のセカンドタスクが禁止される自動運転を実施可能にする。
【0035】
例えば、第1自動運転ECU60は、車両の縦方向制御および横方向制御の一方、または両方を実行可能である。ここで縦方向は、車両の前後方向と一致する方向であり、横方向は、車両の幅方向と一致する方向である。第1自動運転ECU60は、縦方向制御として、車両の加減速の制御を実行し、また、横方向制御として、車両の操舵輪の舵角制御を実行する。
【0036】
第1自動運転ECU60は、メモリ61に記憶された運転支援プログラムが、複数の命令をプロセッサ62に実行させることで、上記の高度運転支援を実現する複数の機能部を構築する。
【0037】
第1自動運転ECU60は、周辺監視センサ40から取得する検出情報に基づき、車両の周囲の走行環境を認識する。一例として、第1自動運転ECU60は、車両が現在走行する車線(以下、現在車線)の左右の区画線または道路端の相対位置および形状を示す情報(車線情報)を、解析済みの検出情報として生成する。加えて、第1自動運転ECU60は、現在車線にて車両に先行する先行車の有無と、先行車が有る場合のその位置および速度と、を示す情報(先行車情報)を、解析済みの検出情報として生成する。尚、第1自動運転ECU60は、後述のMDエリア、ADエリア、並びにST区間、非ST区間を認識する構成であってもよい。
【0038】
第1自動運転ECU60は、先行車情報に基づいて、目標速度での車両の定速走行、または先行車への追従走行を実現するACC(Adaptive Cruise Control)制御を実行する。第1自動運転ECU60は、車線情報に基づいて、車両の車線内走行を維持するLTA(Lane Tracing Assist)制御を実行する。具体的には、第1自動運転ECU60は、加減速または舵角の制御指令を生成し、後述する車両制御ECU80へと逐次提供する。ACC制御が縦方向制御の一例であり、LTA制御が横方向制御の一例である。
【0039】
第1自動運転ECU60は、ACC制御およびLTA制御の両方を実行することで、レベル2の自動運転を実現する。尚、第1自動運転ECU60は、ACC制御およびLTA制御のいずれか一方を実行することで、レベル1の自動運転を実現可能であってもよい。
【0040】
一方、第2自動運転ECU70は、上記の自動運転レベルにおいて、レベル3以上の自動走行制御を可能にする。すなわち、第2自動運転ECU70は、周辺監視の中断がドライバに許可される自動運転を実施可能にする。換言すると、第2自動運転ECU70は、セカンドタスクが許可される自動運転を実施可能にする。
【0041】
ここでセカンドタスクとは、ドライバに対して許可される運転以外の行為であって、予め規定された特定行為である。第2自動運転ECU70によるレベル3の自動運転機能によって車両が自動走行する自動走行期間にて、この場合のドライバは、限定領域から出るときまたは緊急時において、自動運転システムから運転の制御権を引き継ぐ者(搭乗者)である。自動運転システムによる運転操作の実施要求、即ち、運転交代の要請(Take Over Request)が発生するまで、ドライバには、セカンドタスクの実施が法規的に許可され得る。
【0042】
セカンドタスクは、セカンダリアクティビティまたはアザーアクティビティ等と呼ばれ得る。セカンドタスクは、自動運転システムからの運転操作の引き継ぎ要求にドライバが対応することを妨げてはならないとされる。セカンドタスクとしては、例えば、動画等のコンテンツの視聴(映画鑑賞、テレビ鑑賞)、スマートフォン等の操作、読書、および食事等の行為が想定される。
【0043】
第2自動運転ECU70は、メモリ71に記憶された自動運転プログラムが、複数の命令をプロセッサ72に実行させることで、上記の自動運転を実現する複数の機能部を構築する。
【0044】
第2自動運転ECU70は、ロケータECU34から取得する自車位置および地図データ、周辺監視センサ40から取得する検出情報、車載通信器50から取得する通信情報(渋滞情報)等に基づき、車両の周囲の走行環境を認識する。例えば、第2自動運転ECU70は、車両の現在車線の位置、現在車線の形状、並びに車両周辺の移動体の相対位置および相対速度、渋滞状況等を認識する。
【0045】
加えて、第2自動運転ECU70は、車両の走行地域における手動運転エリア(MDエリア)および自動運転エリア(ADエリア)の判別、ADエリアにおけるST区間および非ST区間の判別を行い、その認識結果をHCU160に逐次提供する。
【0046】
MDエリアは、自動運転が禁止されるエリアである。換言すれば、MDエリアは、車両の縦方向制御、横方向制御および周辺監視の全てをドライバが実行すると規定されたエリアである。例えば、MDエリアは、走行路が一般道路であるエリアとされる。
【0047】
ADエリアは、自動運転が許可されるエリアである。換言すれば、ADエリアは、縦方向制御、横方向制御および周辺監視のうち1つ以上を、車両が代替可能なエリアである。例えば、ADエリアは、走行路が高速道路または自動車専用道路であるエリアとされる。
【0048】
ADエリアは、レベル2以下の自動運転が可能な非ST区間と、レベル3以上の自動運転が可能なST区間とに区分される。尚、本実施形態において、レベル1の自動運転が許可される非ST区間と、レベル2の自動運転が許可される非ST区間は、同等であるとする。
【0049】
ST区間は、例えば、渋滞が発生している走行区間(渋滞区間)であるとされる。また、ST区間は、例えば、高精度地図が整備された走行区間であるとされる。HCU160は、車両の走行速度が閾値(第2の閾値)範囲内である状態が所定期間継続している場合に、ST区間であると判断する。または、HCU160は、自車位置と、DCMによって車載通信器50から得られる渋滞情報とを用いてST区間であるか否かを判断してもよい。更には、HCU160は、車両の走行速度(渋滞走行区間条件)に加えて、走行道路が2車線以上である、自車両の周囲(同一レーン、および隣のレーン)に他車両がいる、走行道路に中央分離帯がある、また、高精度地図データを保有している等の条件(本開示の第3の情報に対応)をもって、ST区間であるか否かを判断してもよい。
【0050】
尚、HCU160は、渋滞区間に加えて、車両の周辺環境に関して渋滞以外の特定の条件が成立する区間(高速道路で渋滞を伴わない定速走行、追従走行、LTA(レーンキープ走行))等の可能な区間(本開示の第4の情報に対応)をST区間としてもよい。
【0051】
以上の第1、第2自動運転ECU60、70を含んで構成される自動運転システムにより、車両においてレベル2、およびレベル3相当の自動運転が少なくとも実行可能となる。以下において、レベル2相当の自動運転を実行している状態を「レベル2実行モード」、レベル3相当の自動運転を実行している状態を「レベル3実行モード」と表記する場合がある。
【0052】
車両制御ECU80は、車両の加減速制御、および操舵制御を行う電子制御装置である。車両制御ECU80としては、加減速制御を行うパワーユニット制御ECUおよびブレーキECU、更に、操舵制御を行う操舵ECU等がある。車両制御ECU80は、車両に搭載された車速センサ、舵角センサ等の各センサから出力される検出信号を取得し、電子制御スロットル、ブレーキアクチュエータ、EPS(Electric Power Steering)モータ等の各走行制御デバイスへ制御信号を出力する。車両制御ECU80は、車両の制御指示を第1自動運転ECU60、または第2自動運転ECU70から取得することで、当該制御指示に従う自動走行を実現するように、各走行制御デバイスを制御する。
【0053】
また、車両制御ECU80は、ドライバによる運転部材の運転操作情報を検出する車載センサ81と接続されている。車載センサ81は、例えば、アクセルペダルの踏込量を検出するペダルセンサ、およびステアリングの操舵量を検出するステアセンサ等を含んでいる。加えて、車載センサ81は、車両の走行速度を検出する車速センサ、走行駆動部(エンジンや走行モータ等)の作動回転数を検出する回転センサ、およびトランスミッションのシフト位置を検出するシフトセンサ等も含んでいる。車両制御ECU80は、検出されたこれら運転操作情報、車両作動情報等を、HCU160へと逐次提供する。
【0054】
次に、渋滞判断装置100、表示制御装置101の構成について説明する。渋滞判断装置100は、取得部としての車載通信器50および車載センサ81と、制御部としてのHCU160とを備えている。また、表示制御装置101は、表示部としての複数の表示デバイスと、取得部としての車載通信器50および車載センサ81と、表示制御部としてのHCU160とを備えている。加えて、各装置100、101には、オーディオ装置140、操作デバイス150等が設けられている。
【0055】
複数の表示デバイスは、ヘッドアップディスプレイ(以下、HUD)110、メータディスプレイ120、およびセンタインフォメーションディスプレイ(以下、CID)130等を含んでいる。複数の表示デバイスには、電子ミラーシステムの各ディスプレイEMB(後方表示)、EML(左方表示)、EMR(右方表示)が更に含まれていてもよい。HUD110、メータディスプレイ120、およびCID130は、静止画または動画等の画像コンテンツを、視覚情報としてドライバに提示する表示部である。
【0056】
本実施形態では、メータディスプレイ120をメイン表示部(表示部)とし、CID130をサブ表示部として説明する。
【0057】
HUD110は、HCU160から取得する制御信号および映像データに基づき、ドライバ前方に結像される画像の光を、車両のフロントウィンドシールド等に規定された投影領域に投影する。フロントウィンドシールドにて車室内側に反射された画像の光は、運転席に着座するドライバによって知覚される。こうしてHUD110は、投影領域よりも前方の空間中に虚像を表示させる。ドライバは、HUD110によって表示される画角内の虚像を、車両の前景と重ねて視認する。
【0058】
メータディスプレイ120、およびCID130は、例えば、液晶ディスプレイまたはOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等を主体とする構成である。メータディスプレイ120、およびCID130は、HCU160から取得する制御信号および映像データに基づき、種々の画像を表示画面に表示させる。メータディスプレイ120は、例えば、運転席の正面に設置されている。CID130は、ドライバの前方において車幅方向の中央領域に設けられている。例えば、CID130は、インスツルメントパネルにおけるセンタクラスタの上方に設置されている。CID130は、タッチパネルの機能を有しており、例えばドライバ等による表示画面へのタッチ操作、およびスワイプ操作等を検出する。
【0059】
オーディオ装置140は、車室内に設置された複数のスピーカを有している。オーディオ装置140は、HCU160から取得する制御信号および音声データに基づき、報知音または音声メッセージ等を、聴覚情報としてドライバに提示する。すなわち、オーディオ装置140は、視覚情報と異なる態様の情報を提示可能な情報提示デバイスである。
【0060】
操作デバイス150は、ドライバ等によるユーザ操作を受け付ける入力部である。操作デバイス150には、例えば自動運転機能の各レベルの開始および停止に関連するユーザ操作等が入力される。操作デバイス150には、例えば、ステアリングホイールのスポーク部に設けられたステアスイッチ、ステアリングコラム部に設けられた操作レバー、ドライバの発話内容を認識する音声入力装置、およびCID130におけるタッチ操作用のアイコン(スイッチ)等が含まれる。
【0061】
HCU160は、上記の車載通信器50、車両制御ECU80(第1自動運転ECU60、および第2自動運転ECU70)等からの情報に基づき、渋滞発生の判断、およびドライバに対する情報提示(表示デバイスの表示)を制御する。HCU160は、メモリ161、プロセッサ162、入出力インターフェース、およびこれらを接続するバス等を備えたコンピュータを主体として含む構成である。
【0062】
メモリ161は、コンピュータにより読み取り可能なプログラムおよびデータ等を非一時的に格納または記憶する、例えば半導体メモリ、磁気媒体および光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。メモリ161は、後述の提示制御プログラム等、プロセッサ162によって実行される種々のプログラムを格納している。
【0063】
プロセッサ162は、演算処理のためのハードウエアである。プロセッサ162は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、およびRISC(Reduced Instruction Set Computer)-CPU等のうち、少なくとも一種類をコアとして含む。
【0064】
プロセッサ162は、メモリ161に格納された提示制御プログラムに含まれる複数の命令を、実行する。これによりHCU160は、ドライバへの提示制御ための機能部を、複数構築する。このようにHCU160では、メモリ161に格納された提示制御プログラムが複数の命令をプロセッサ162に実行させることで、複数の機能部が構築される。
【0065】
HCU160は、第1自動運転ECU60、または第2自動運転ECU70から、走行環境の認識結果を取得する。HCU160は、取得した認識結果に基づいて、車両の周辺状態を把握する。具体的には、HCU160は、ADエリアへの接近、ADエリアへの進入、ST区間(渋滞区間)への接近およびST区間への進入等を把握する。HCU160は、第1、第2自動運転ECU60、70から取得した認識結果に代えて、ロケータECU34や周辺監視センサ40等から直接取得した情報に基づいて周辺状態を把握してもよい。
【0066】
HCU160は、車載通信器50によるVICS情報に基づく渋滞発生の判断(第1のアルゴリズムの実行による渋滞判断)と、車載通信器50によるDCM情報、および車載センサ81(車速センサ)による車速情報を用いた渋滞発生の判断(第2のアルゴリズムの実行による渋滞判断)とを統合して、上記ST区間(渋滞区間)の把握を行う。
【0067】
HCU160は、DSM20、および車両制御ECU80等からの情報に基づいて、ドライバ状態を推定する。例えば、HCU160は、ドライバの各身体部位の運転動作への関与有無を、ドライバ状態として推定する。具体的には、HCU160は、DSM20から取得したドライバの視線方向に関する状態情報等に基づいて、ドライバの眼部が周辺監視を行っているか否かを判定する。また、HCU160は、車両制御ECU80から取得した操舵量に基づいて、ドライバがステアリングを手で把持しているか否かを判定する。また、HCU160は、車両制御ECU80から取得したアクセルペダルの踏込量に基づいて、ドライバがアクセルペダルに足を置いているか否かを判定する。
【0068】
更に、HCU160は、DSM20から取得したドライバの状態情報から、いねむり、脇見、病気の発生有無等を判定する。
【0069】
尚、以下において、眼部が周辺監視を行っている状態をアイズオン、行っていない状態をアイズオフと表記する場合がある。また、ステアリングを手で把持している状態をハンズオン、把持していない状態をハンズオフと表記する場合がある。加えて、アクセルペダルに足を置いている状態をレッグオン、置いていない状態をレッグオフと表記する場合がある。
【0070】
HCU160は、第1自動運転ECU60、および第2自動運転ECU70との共同により、自動運転に関する運転状態を判断する。具体的には、HCU160は、ドライバに対して許可する自動運転レベルと、実際に実行する自動運転レベルとを、運転状態として判断する。
【0071】
HCU160は、車両がMDエリアを走行している場合に、自動運転を許可できないと判断する。一方で、HCU160は、ADエリアを走行している場合に、レベル2以上の自動運転を許可できると判断する。更に、HCU160は、ADエリアのうち非ST区間を走行している場合に、レベル2の自動運転を許可できると判定し、ST区間を走行している場合には、レベル3の自動運転を許可できると判定する。
【0072】
以下において、レベル2の自動運転を許可した状態を、「レベル2許可状態」、レベル3の自動運転を許可した状態を、「レベル3許可状態」と表記する場合がある。また、自動運転自体が禁止された状態を、「自動運転禁止状態」と表記する場合がある。
【0073】
加えて、HCU160は、レベル2の自動運転を許可すると判断した場合には、レベル2においてハンズオフを許可するか否かを判定する。具体的には、HCU160は、LTAの実行状態、車両周辺の高精度地図データの有無、車線状態、ドライバの周辺監視状態、車両周辺の道路形状等に基づき、特定の条件が成立した場合に、ハンズオフ許可の判定を下す。
【0074】
特定の条件には、例えば、LTA制御が実行であること、車両周辺の高精度地図データが有ること、現在車線の左右の区画線のうち少なくとも一方を検出可能であること、ドライバが周辺監視を行っていると判断可能であること、走行区間が道路構造の複雑な区間(例えば合流区間や分岐区間等)でないことのうち少なくとも1つが含まれる。以下において、ハンズオフを許可した状態を「ハンズオフ許可状態」、ハンズオフを禁止した状態を「ハンズオフ禁止状態」と表記する場合がある。
【0075】
また、HCU160は、レベル2以下の自動運転において少なくともACCが実行されている場合、レッグオフを許可する。以下において、レッグオフを許可した状態を「レッグオフ許可状態」、レッグオフを禁止した状態を「レッグオフ禁止状態」と表記する場合がある。加えて、HCU160は、レベル3の自動運転が許可されている場合、アイズオフを許可する。すなわち、レベル3許可状態は、アイズオフ許可状態であるということもできる。
【0076】
HCU160は、車両の周辺状態、ドライバの状態、および現在許可されている自動運転レベル、および操作デバイス150への入力情報等に基づいて、実際に実行する自動運転レベルを判断する。即ち、HCU160は、現在許可されている自動運転レベルの開始指示が入力情報として取得された場合に、当該自動運転レベルの実行を決定する。
【0077】
HCU160は、自動運転に関するコンテンツの提示を制御する。具体的には、HCU160は、各種情報に基づき各表示デバイス110、120、130に提示させるコンテンツを選定する。
【0078】
HCU160は、各表示デバイス110、120、130に表示させるコンテンツの調停を行う。HCU160は、各種情報に基づき、各コンテンツの優先度を総合的に判断する。HCU160は、優先度が高いと判断したコンテンツを、提示対象のコンテンツとして選定する。加えて、HCU160は、各表示デバイス110、120、130に表示させる各コンテンツの表示サイズおよび表示レイアウトを、優先度に応じて逐次変更可能である。一例として、HCU160は、優先度の高いコンテンツほど、表示サイズを大きくする。別の一例として、HCU160は、優先度の高いコンテンツほど、各表示領域の手前側に位置させる。
【0079】
HCU160は、各表示デバイス110、120、130に提供する制御信号および映像データと、オーディオ装置140に提供する制御信号および音声データとを生成する。HCU160は、生成した制御信号および各データを各提示デバイスへと出力することで、各表示デバイス110、120、130にて情報提示を実施する。
【0080】
渋滞判断装置100、および表示制御装置101の構成は、以上のようになっており、以下、
図2~
図10を加えて、作動および作用効果について説明する。
【0081】
本実施形態は、主に、高速道路走行において、渋滞発生有無の判断と、渋滞発生時の自動運転レベル3(ドライバの周辺監視不要)への切替えのためのドライバへの情報提示の要領とを制御の対象としている。
【0082】
図2では、高速道路走行時のVICSによる渋滞情報(図中の太線部が渋滞発生区間)と、車速センサやDCMによる渋滞情報に対して、自動運転レベル2での対応が可能な区間、および自動運転レベル3での対応が可能な区間と、を模式的に示している。尚、
図2中の英文字は、時間経過に伴う走行位置(A、Ba、Bb、C・・・)を順に示している。
【0083】
HCU160は、VICSによる情報を車載通信器50より取得し、走行先(車両の前方側)の渋滞の有無を判断する(第1のアルゴリズムの実行)。つまり、HCU160は、VICS情報に基づいて、例えば、高速道路を走行している前方側の他車両の車速(走行速度)が、予め定めた第1の閾値(例えば、40km/h)を下回った場合に、渋滞の発生あり(第1の情報)と判断する。この渋滞情報から、HCU160は、走行先における渋滞の発生地点、および終了地点を把握することができる。
【0084】
また、HCU160は、車速センサやDCMによる情報を車載センサ81、車載通信器50より取得し、走行先(車両の前方側)の渋滞の有無を判断する(第2のアルゴリズムの実行)。つまり、HCU160は、車速センサやDCMによる情報において、例えば、高速道路を走行している自車、あるいは前方側の他車両の車速(走行速度)が、予め定めた第2の閾値(例えば、10km/h)を下回った場合に、渋滞の発生あり(第2の情報)と判断する。第2の情報に対応する渋滞の発生は、高速道路での渋滞走行時の自動運転レベル3の対応を許可する(可能とする)エリアを示すものとなる。
【0085】
HCU160は、渋滞の発生を示す第1の情報と、第2の情報とを統合して、渋滞の発生状況を把握して、以下で説明するように、ドライバへの情報提示(表示部での表示)を行う。
【0086】
HCU160は、表示部における表示状態を制御する。表示部は、ここでは、メータディスプレイ120を使用するものとして説明する。
図5に示すように、HCU160は、例えば、メータディスプレイ120の上側中央に車速値(
図5では、80km/h)を表示し、車速値の下側に車線(ここでは2つのレーン)、および車線における自車、先行車をリアルタイムで表示する。加えて、HCU160は、以下で説明するように、渋滞の発生状況に応じて、ドライバに提示すべき情報(
図5では、「この先、渋滞があります」)を、車速値や、自車、先行車の表示を邪魔しない領域に表示する。
【0087】
以下、
図3、
図4のフローチャートに沿って、渋滞の発生状況に応じた、メータディスプレイ120における表示形態(情報提示)について説明する。
【0088】
(1)走行位置Aでの表示(
図2、
図5)
例えば、自車は、高速道路を80km/で走行しており、メータディスプレイ120には、車速値と、自車および先行車の画像が表示される。HCU160は、VICSより渋滞発生の情報を得ると、メータディスプレイ120に、例えば、「この先、渋滞があります」と表示し、ドライバに渋滞の発生を知らせる。このとき、自動運転レベルはレベル2である。
【0089】
(2)走行位置Baでの表示(
図2、
図6)
ステップS100で、車両が、VICSに基づく渋滞発生区間に入り、車速センサに基づく自車の車速が低下されると、HCU160は、メータディスプレイ120における車速値表示を変更し(例えば、40km/h程度)、更に、「渋滞域に入りました」と表示する(ドライバに知らせる)。ただし、この段階では、車速は、VICSにおいて渋滞を示す走行速度(40km/h)であり、渋滞時の自動運転レベル3を許可する車速条件(例えば、10km/hを下回る条件)を満たしていないことから、自動運転レベルとしては、レベル2が維持される。
【0090】
このとき、ステップS110で、併せて、HCU160は、メータディスプレイ120には、ドライバが違和感を持たないように、「自動運転レベル3への移行は不可」の表示を行う。ドライバの違和感というのは、VICS情報では渋滞区間に入っているのに、渋滞時の自動運転レベルがレベル3に移行していない、ということである。尚、渋滞発生情報は、VICSに基づくものに代えて、センサやカメラ等による車載センサ81によって得られるものとしてもよい。
【0091】
(3)走行位置Bbでの表示(
図2、
図7)
次に、ステップS120で、車両が、VICSに基づく渋滞発生区間に入り、更に、車速センサに基づく自車の車速が低下されると、HCU160は、メータディスプレイ120における車速値表示を変更する(例えば、10km/h)。このときの車速が、自動運転レベル3への移行を許可する車速を下回ると(第2の情報)、ステップS130で、HCU160は、メータディスプレイ120に、「自動運転レベル3への移行可」の表示を行うと共に、「自動運転レベル3を実行しますか?」の表示を行う(移行提案)。
【0092】
これに基づいて、ドライバが、操作デバイス150(ステアスイッチや操作レバー等)に対する入力操作を行うことで、渋滞時の自動運転レベル3が実行される(運転の主体がドライバから自動運転システムに移行される)。
【0093】
尚、上記のような表示形態に対して、HCU160は、自動運転レベル3への移行条件を満たしていない間は、メータディスプレイ120に、「自動運転レベル3への移行不可」の表示を行っておき、自動運転レベル3への移行条件を満たした段階で「自動運転レベル3への移行可」の表示を行うと共に、ドライバが移行のために操作デバイス150に対する入力操作を行うと、自動運転レベル3が実行されるようにしてもよい。
【0094】
(4)走行位置Cでの表示(
図2、
図8)
次に、ステップS140で、自動運転レベル3に移行されると、ステップS150で、HCU160は、メータディスプレイ120に、自動運転レベル3に対応する表示を行う。HCU160は、例えば、くつろいだ人の様子をイメージした画像を表示すると共に、自動運転レベル3が実行される間に、ドライバに許容されるセカンドタスクを表示する。セカンドタスクは、例えば、映画鑑賞、テレビ鑑賞、スマートフォン等の操作、および読書等である。
【0095】
(5)走行位置Dでの表示(
図2、
図9)
次に、ステップS160で、車速センサやDCMに基づく情報から、自車、および先行車の車速値が上がりつつあり、渋滞状況が緩和され始めてくると、ステップS170で、HCU160は、例えば、「自動運転レベル3対応可」という表示を点滅させて、渋滞に伴う自動運転レベル3が許可される区間からもうすぐ外れることを表示する。加えて、HCU160は、「自動運転解除します。運転を交代してください」と表示し、自動運転モードからドライバ運転モードに移行させる。ドライバは、操作デバイス150に対して、移行のための入力操作を行うと、自動運転レベル2へ移行される。
【0096】
(6)走行位置Eでの表示(
図2、
図10)
次に、ステップS180で、自動運転レベル2に移行されると、ステップS190で、VICSによる情報が「渋滞発生」であっても(渋滞が終了していないで場合でも)、ステップS200で、HCU160は、メータディスプレイ120に、車速値、自車および先行車の画像を表示すると共に、「自動運転レベル3不可」の表示を行う。ステップS200の後は、ステップS120に戻る。
【0097】
一方、ステップS180で、否定判定すると(ドライバが運転交代していないと)、ステップS210で、HCU160は、退避走行へ移行して、本制御フローを終了する。ドライバが運転交代していない場合というのは、例えば、ドライバが居眠りをしていたり、急病となっていたりする場合が考えられ、HCU160は、退避走行として、路肩等へ安全に車両を停車させる。
【0098】
また、ステップS190で否定判定すると(VICSによる情報が「渋滞発生なし」)、ステップS220で、この先もう一度、「渋滞の発生があり」となった場合は、ステップS200に移行して、HCU160は、「自動運転レベル3不可」の表示を継続させる。また、ステップS220で、否定判定すると、HCU160は本制御フローを終了する。
【0099】
以上のように、本実施形態では、渋滞判断装置100、表示制御装置101のHCU160は、車載通信器50によって取得された第1の情報(VICSによる渋滞情報)と、車載通信器50や車載センサ81によって取得された第2の情報(DCMや車速センサによる渋滞情報)とを統合して、第1のアルゴリズムによる渋滞発生の判断と、第2のアルゴリズムによる渋滞発生の判断とを行うようにしている。これにより、渋滞の発生状況を的確に判断することができる。
【0100】
また、HCU160は、第1のアルゴリズムの結果と、第2のアルゴリズムの結果とに基づいて、自動運転が不可の表示をメータディスプレイ(表示部)120にするか否かを判断する。これにより、自動運転が不可である旨をドライバに対して、明確に提示することができる。
【0101】
また、HCU160は、第1のアルゴリズムによって第1の閾値を満たしており、且つ、第2のアルゴリズムによって第2の閾値を満たしていない場合に、自動運転の不可の表示を行う。これにより、HCU160は、第1の情報から渋滞の発生があることが分かっても、第2の情報をもとに、第2の閾値を満たしていなければ、表示部120に自動運転が不可である旨を表示するので、ユーザには、まだ、自動運転には移行できないことを明確に知らせることができる。つまり、自動運転への移行について、ユーザに分かり易く伝えることができる。
【0102】
また、HCU160は、自動運転を終了した後に、第1の情報に基づく渋滞の発生が終了していない場合、自動運転の不可の表示を行う。これにより、ドライバに対する表示を、「自動運転可」とするのか、あるいは「自動運転不可」とするのか、頻繁に切替えることがなくなり、ドライバに煩わしさを与えることがない。
【0103】
また、HCU160は、第1の情報に基づく渋滞の発生がなくても、この先もう一度、第1の情報に基づく渋滞の発生がある場合は、自動運転の不可の表示を継続させる。これにより、上記と同様に、ドライバに対する表示を、「自動運転可」とするのか、あるいは「自動運転不可」とするのか、頻繁に切替えることがなくなり、ドライバに煩わしさを与えることがない。
【0104】
(第2実施形態)
第2実施形態における表示形態を
図11、
図12に示す。第2実施形態は、自動運転中において、ドライバに対して運転にかかわる情報を、メイン表示部であるメータディスプレイ120に加えて、サブ表示部であるCID130(あるいは、HUD110も可)にも表示するようにしたものである。
図11、
図12では、例えば、高速道路走行中で、自動運転レベル3に移行しようとしている状態(走行位置Bb)を示している(第1実施形態の
図7)。
【0105】
図11に示すように、例えば、走行位置Bbにおいて、メータディスプレイ120には、上記第1実施形態の
図7で説明した情報が表示されている。加えて、CID130には、ロケータ30による地図データ、地図データ上における走行中の高速道路、および現在の自車位置が表示されており、自動運転レベルに移行可能となるまでの、およその所要時間が表示されている。
図11は、メータディスプレイ120での表示内容と、CID130での表示内容が異なる場合を示している。
【0106】
尚、
図12に示すように、メータディスプレイ120と、CID130とで、表示内容を同一としてもよい。
【0107】
このように、自動運転中において、関連する種々の情報を複数の表示部を用いてドライバに表示することで、ドライバは、情報の把握洩れをなくして、更に、自動運転レベルに伴う周辺監視の要、不要の区別を確実に把握することができる。
【0108】
(第3実施形態)
第3実施形態は、自動運転の開始の条件を変更したものである。HCU160は、取得部としての周辺監視センサ40や、ロケータ30から、自動運転の開始可能条件として、第2の情報(車速値)とは異なる第3の情報を更に取得する。第3の情報は、上記で説明したように、例えば、走行車線(レーン)が2車線以上である、自車両の周囲(同一レーン、および隣のレーン)に他車両がいる、走行道路の中央に中央分離帯がある、また、高精度地図データを保有している等の情報である。
【0109】
HCU160は、第1の閾値(VICSによる渋滞情報)および第2の閾値(車速センサによる車速値)を満たしており、且つ、第3の情報も満たしている場合には、表示部に対して自動運転が可能なことを表示する、あるいは自動運転の開始を表示する。これにより、渋滞の発生状況を把握するにあたって、信頼性を向上させることができる。
【0110】
(第4実施形態)
第4実施形態は、更に、自動運転の開始の条件を変更したものである。HCU160は、取得部としての周辺監視センサ40から、渋滞時に限らない自動運転の開始条件である第4の情報を更に取得する。第4の情報は、上記で説明したように、例えば、高速道路で渋滞を伴わない定速走行、追従走行、LTA(レーンキープ走行)等の可能な区間を示す情報である。
【0111】
HCU160は、第4の情報が示す状態である場合には、第1、第2の情報に関わらず自動運転が可能なことを表示部に表示する。これにより、渋滞発生時での自動運転に限らず、多岐にわたる自動運転への移行をドライバに提示することができる。
【0112】
(その他の実施形態)
自動運転中においては、第1実施形態(
図8)で説明したように、セカンドタスクが許可されることから、例えば、複数の表示デバイスの一つ(CID130)に、
図13、
図14で示すような、テレビや映画の表示をしてもよい。
【0113】
また、第1実施形態(
図6、
図10)で説明した「自動運転レベル3不可」の表示に代えて、例えば、「周辺監視が必要」、あるいは「セカンドタスクが不可能」等のように、ドライバがしなければならないこと、あるいはドライバがしてはいけないこと等を表示するようにしてもよい。
【0114】
また、第1実施形態(
図7)で説明した「自動運転レベル3への移行可能」の表示に代えて、例えば、「周辺監視が不要」、あるいは「セカンドタスクが可能」等のように、ドライバがしなくてもよいこと、あるいはドライバができること等を表示するようにしてもよい。
【0115】
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、更に請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0116】
本開示に記載の制御部およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つないしは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ、およびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されるようにした。
【0117】
しかしながら、本開示に記載の制御部およびその手法は、一つ以上の専用ハードウエア理論回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。
【0118】
もしくは、本開示に記載の制御部およびその手法は、一つないしは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと、一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合せにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。
【0119】
また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0120】
50 車載通信器(取得部)
81 車載センサ(取得部)
100 車両用渋滞判断装置
101 車両用表示制御装置
120 メータディスプレイ(表示部)
130 センタインフォメーションディスプレイ(サブ表示部)
160 ヒューマンマシーンインターフェイスコントロールユニット(制御部、表示制御部)