(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】検出システム
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20241112BHJP
G01D 5/16 20060101ALI20241112BHJP
G01D 5/14 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
G01D5/245 110L
G01D5/16 E
G01D5/14 H
(21)【出願番号】P 2023206268
(22)【出願日】2023-12-06
(62)【分割の表示】P 2021100394の分割
【原出願日】2021-06-16
【審査請求日】2023-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2020119274
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】河野 司
(72)【発明者】
【氏名】小林 篤史
(72)【発明者】
【氏名】近江 徹哉
(72)【発明者】
【氏名】巻田 真宏
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 直樹
(72)【発明者】
【氏名】鄭 淅化
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特許第7435549(JP,B2)
【文献】特開2019-152640(JP,A)
【文献】特開2019-143991(JP,A)
【文献】特開2010-97726(JP,A)
【文献】特開平7-128566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/245
G01D 5/14-5/16
G01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の磁石(151~153)がストローク方向に沿って離間して配置されると共に前記複数の磁石のうちの隣同士の磁極面(154~156)が反対の極となるように配置された検出体(150)と、前記検出体の前記ストローク方向における位置を検出するリニアポジションセンサ(100)と、を含む検出システムであって、
前記リニアポジションセンサは、
前記複数の磁石の各磁極面に対してギャップ方向にギャップを持って配置され、前記ストローク方向における前記検出体に対する相対的な移動に伴って前記複数の磁石から受ける磁界の変化に基づいて、前記複数の磁石の位置に対応した位相の検出信号として、正弦関数を示す正弦信号及び余弦関数を示す余弦信号を取得する検出部(111)と、
前記検出部から前記正弦信号及び前記余弦信号を取得し、前記正弦信号及び前記余弦信号に基づいて逆正接関数を示すと共に前記検出体と前記検出部と相対的なストローク量に応じた逆正接信号を生成し、前記逆正接信号を前記検出体の位置を示す位置信号として取得する信号処理部(112)と、
を含み、
前記検出体は、前記複数の磁石が配置された一面(158)を有する磁性体のヨーク(157)を含み、
前記複数の磁石は、第1磁極面(154)を有する第1磁石(151)、第2磁極面(155)を有する第2磁石(152)、及び第3磁極面(156)を有する第3磁石(153)
のみからなり、前記第1磁石、前記第2磁石、前記第3磁石以外の磁石を含んでおらず、
前記第2磁石は、前記第1磁石と前記第3磁石との間に配置され、
前記第1磁石、前記第2磁石、及び前記第3磁石は、前記第1磁石と前記第2磁石との第1間隔と、前記第2磁石と前記第3磁石との第2間隔と、が異なるように、前記ヨークの前記一面に配置され
、
前記第2磁石と前記第1磁石との間、及び、前記第2磁石と前記第3磁石との間で主磁界を形成する検出システム。
【請求項2】
複数の磁石(151~153)がストローク方向に沿って離間して配置されると共に前記複数の磁石のうちの隣同士の磁極面(154~156)が反対の極となるように配置された検出体(150)と、前記検出体の前記ストローク方向における位置を検出するリニアポジションセンサ(100)と、を含む検出システムであって、
前記リニアポジションセンサは、
前記複数の磁石の各磁極面に対してギャップ方向にギャップを持って配置され、前記ストローク方向における前記検出体に対する相対的な移動に伴って前記複数の磁石から受ける磁界の変化に基づいて、前記複数の磁石の位置に対応した位相の検出信号として、正弦関数を示す正弦信号及び余弦関数を示す余弦信号を取得する検出部(111)と、
前記検出部から前記正弦信号及び前記余弦信号を取得し、前記正弦信号及び前記余弦信号に基づいて逆正接関数を示すと共に前記検出体と前記検出部と相対的なストローク量に応じた逆正接信号を生成し、前記逆正接信号を前記検出体の位置を示す位置信号として取得する信号処理部(112)と、
を含み、
前記検出体は、前記複数の磁石が配置された一面(158)を有する磁性体のヨーク(157)を含み、
前記複数の磁石は、第1磁極面(154)を有する第1磁石(151)、第2磁極面(155)を有する第2磁石(152)、及び第3磁極面(156)を有する第3磁石(153)
、前記第1磁石と前記第2磁石との間に配置された第1補助磁石(164)、前記第2磁石と前記第3磁石との間に配置された第2補助磁石(165)を含み、
前記第2磁石は、前記第1磁石と前記第3磁石との間に配置され、
前記第1磁石、前記第2磁石、及び前記第3磁石は、前記第1磁石と前記第2磁石との第1間隔と、前記第2磁石と前記第3磁石との第2間隔と、が異なるように、前記ヨークの前記一面に配置され
、
前記第2磁石と前記第1磁石との間、及び、前記第2磁石と前記第3磁石との間で主磁界を形成し、
前記第1補助磁石は、前記第1磁石の前記第1磁極面に対応する磁界を反発させると共に、前記第2磁石の前記第2磁極面に対応する磁界を反発させるように配置され、
前記第2補助磁石は、前記第2磁石の前記第2磁極面に対応する磁界を反発させると共に、前記第3磁石の前記第3磁極面に対応する磁界を反発させるように配置される検出システム。
【請求項3】
前記第1磁石は、一部が前記ヨークの前記一面のうちの一端部(160)から前記ストローク方向に沿って突出すると共に、前記第1磁極面が前記ストローク方向に対して垂直に配置され、
前記第3磁石は、一部が前記ヨークの前記一面のうちの前記一端部とは反対側の他端部(161)から前記ストローク方向に沿って突出すると共に、前記第3磁極面が前記ストローク方向に対して垂直に配置される請求項
1に記載の検出システム。
【請求項4】
前記ヨークは、前記ストローク方向において前記複数の磁石よりも外側に前記一面から前記ギャップ方向に沿って突出すると共に前記一面を基準として前記複数の磁石よりも高い突出部(168、169)を有する請求項1
または2に記載の検出システム。
【請求項5】
前記ギャップ方向において、前記ヨークの前記一面を基準として、前記第1磁石の前記第1磁極面の第1高さ、前記第2磁石の前記第2磁極面の第2高さ、及び前記第3磁石の前記第3磁極面の第3高さのうちの少なくとも1つの高さが他の高さと異なる請求項1ないし
4のいずれか1つに記載の検出システム。
【請求項6】
前記ストローク方向において、前記第1磁石の前記第1磁極面の第1幅、前記第2磁石の前記第2磁極面の第2幅、及び前記第3磁石の前記第3磁極面の第3幅のうちの少なくとも1つの幅が他の幅と異なる請求項1ないし
5のいずれか1つに記載の検出システム。
【請求項7】
前記検出部は、前記ギャップ方向及び前記ストローク方向に平行な一面(124)を有すると共に、前記一面の面方向のうちの一方向が前記正弦信号に対応する方向に設定されたセンサチップ(123)を含み、
前記センサチップは、前記一方向が前記ストローク方向に対して傾斜した状態で前記検出部に固定される請求項1ないし6のいずれか1つに記載の検出システム。
【請求項8】
前記複数の磁石は、プラスチックマグネット(159)に着磁されたことにより構成される請求項1ないし7のいずれか1つに記載の検出システム。
【請求項9】
前記検出体は
、前記ストローク方向における長さが前記ヨークよりも長いシャフト(166
)を含み、
前記ヨークは、前記シャフトの外周面(167)に固定される請求項1ないし8のいずれか1つに記載の検出システム。
【請求項10】
前記ヨークは、前記複数の磁石のうちの隣同士の間の一部が、前記一面の面方向において前記ストローク方向に対して垂直方向に突出した取付部(170)を有し、
前記取付部は、前記垂直方向において前記複数の磁石の一部と重なる重複部(171、172)を有する請求項1ないし9のいずれか1つに記載の検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、磁気感知素子と、磁極面が磁気感知素子と対向して配列された複数の磁気部材と、を備えた位置検出装置が、例えば特許文献1で提案されている。隣り合う磁気部材の各磁極面は、互いに反対の極である。また、隣り合う磁気部材は、相互に離間して等間隔に配置される。
【0003】
磁気感知素子及び各磁気部材は、各磁気部材の配列方向に沿ったストローク範囲を相対的に移動する。磁気感知素子は、位相が90°ずれた2相の出力信号を得る。磁気部材のサイズや各磁気部材のピッチは、ストローク範囲の全体の検出精度を確保するために調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ストローク範囲の全体の中で、特定の範囲や特定の位置の検出精度が要求される場合がある。ストローク範囲の全体の中で検出精度が要求される範囲や位置は、必要精度範囲あるいは必要精度位置である。
【0006】
しかし、上記従来の技術では、ストローク範囲の全体の検出精度を確保するために各磁気部材のサイズや各磁気部材のピッチが同一に調整される。このため、ストローク範囲の全体の中で必要精度範囲の検出精度を選択的に向上させることが難しい。
【0007】
本発明は上記点に鑑み、ストローク範囲の全体だけでなく、ストローク範囲の全体の中で必要精度範囲あるいは必要精度位置の検出精度を選択的に向上させることができる検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1、2に記載の発明では、検出システムは、リニアポジションセンサ(100)によって、検出体(150)のストローク方向における位置を検出する。検出体は、複数の磁石(151~153)がストローク方向に沿って離間して配置されると共に複数の磁石のうちの隣同士の磁極面(154~156)が反対の極となるように配置される。リニアポジションセンサは、検出部(111)及び信号処理部(112)を含む。
【0009】
検出部は、複数の磁石の各磁極面(154~156)に対してギャップ方向にギャップを持って配置される。検出部は、ストローク方向における検出体に対する相対的な移動に伴って複数の磁石から受ける磁界の変化に基づいて、複数の磁石の位置に対応した位相の検出信号として、正弦関数を示す正弦信号及び余弦関数を示す余弦信号を取得する。
【0010】
信号処理部は、検出部から正弦信号及び余弦信号を取得する。信号処理部は、正弦信号及び余弦信号に基づいて逆正接関数を示すと共に検出体と検出部と相対的なストローク量に応じた逆正接信号を生成し、逆正接信号を検出体の位置を示す位置信号として取得する。
【0011】
検出体は、複数の磁石が配置された一面(158)を有する磁性体のヨーク(157)を含む。
【0012】
請求項1に記載の発明では、複数の磁石は、第1磁極面(154)を有する第1磁石(151)、第2磁極面(155)を有する第2磁石(152)、及び第3磁極面(156)を有する第3磁石(153)のみからなり、第1磁石、第2磁石、第3磁石以外の磁石を含んでいない。
【0013】
請求項1に記載の発明では、第2磁石は、第1磁石と第3磁石との間に配置される。第1磁石、第2磁石、及び第3磁石は、第1磁石と第2磁石との第1間隔と、第2磁石と第3磁石との第2間隔と、が異なるように、ヨークの一面に配置され、第2磁石と第1磁石との間、及び、第2磁石と第3磁石との間で主磁界を形成する。
請求項2に記載の発明では、複数の磁石は、第1磁極面(154)を有する第1磁石(151)、第2磁極面(155)を有する第2磁石(152)、及び第3磁極面(156)を有する第3磁石(153)、第1磁石と第2磁石との間に配置された第1補助磁石(164)と、第2磁石と第3磁石との間に配置された第2補助磁石(165)を含む。
請求項2に記載の発明では、第2磁石は、第1磁石と第3磁石との間に配置される。第1磁石、第2磁石、及び第3磁石は、第1磁石と第2磁石との第1間隔と、第2磁石と第3磁石との第2間隔と、が異なるように、ヨークの一面に配置され、第2磁石と第1磁石との間、及び、第2磁石と第3磁石との間で主磁界を形成する。第1補助磁石は、第1磁石の第1磁極面に対応する磁界を反発させると共に、第2磁石の第2磁極面に対応する磁界を反発させるように配置される。第2補助磁石は、第2磁石の第2磁極面に対応する磁界を反発させると共に、第3磁石の第3磁極面に対応する磁界を反発させるように配置される。
【0014】
これによると、検出体の構成を変更することによって、検出部が複数の磁石から受ける磁界を調整することが可能になる。したがって、ストローク範囲の全体だけでなく、ストローク範囲の全体の中で必要精度範囲あるいは必要精度位置の検出精度を選択的に向上させることができる。
【0015】
なお、この欄及び特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係るリニアポジションセンサを用いたシステムの構成図である。
【
図2】検出体が直進あるいは往復する場合を示した図である。
【
図3】検出体が回転あるいは回動する場合を示した図である。
【
図4】第1実施形態に係るリニアポジションセンサの外観図である。
【
図5】磁気抵抗素子を用いた磁気検出方式を構成する部品の分解斜視図である。
【
図6】リニアポジションセンサの回路構成を示した図である。
【
図7】
図6に示された回路構成の信号処理の内容を示した図である。
【
図8】検出体のストローク量に対する位置信号を示した図である。
【
図9】第1実施形態に係る検出体の構成を示した図である。
【
図10】
図9に示された検出体のストローク量に対する誤差を示した図である。
【
図11】比較例として、
図9と異なる検出体の構成を示した図である。
【
図12】
図11に示された検出体のストローク量に対する誤差を示した図である。
【
図13】特定の範囲と特定の範囲との切替位置で必要精度位置が要求される例を示した図である。
【
図14】第2実施形態に係る検出体の構成を示した図である。
【
図15】
図14に示された検出体のストローク量に対する誤差を示した図である。
【
図16】比較例として、
図14と異なる検出体の構成を示した図である。
【
図17】
図16に示された検出体のストローク量に対する誤差を示した図である。
【
図18】比較例として、各磁極面の高さが同じ場合を示した図である。
【
図19】
図18に示された検出体のストローク量に対する誤差を示した図である。
【
図20】変形例として、磁石が3個の場合を示した図である。
【
図21】変形例として、磁石が3個の場合を示した図である。
【
図22】第3実施形態に係る検出体の構成を示した図である。
【
図23】
図22に示された検出体のストローク量に対する誤差を示した図である。
【
図24】比較例として、
図22と異なる検出体の構成を示した図である。
【
図25】
図24に示された検出体のストローク量に対する誤差を示した図である。
【
図26】比較例として、各磁極面の各幅が同じ場合を示した図である。
【
図27】
図26に示された検出体のストローク量に対する誤差を示した図である。
【
図28】第3実施形態に係る検出体の磁気ベクトルを示した図である。
【
図29】
図28に示された検出体における原点補正前と原点補正後の誤差を示した図である。
【
図30】比較例として、各磁極面の各幅が同じ場合の磁気ベクトルを示した図である。
【
図31】
図30に示された比較例における原点補正前と原点補正後の誤差を示した図である。
【
図32】変形例として、各磁石が非等間隔に配置された場合を示した図である。
【
図33】変形例として、各磁石の各高さが異なる場合を示した図である。
【
図34】第4実施形態に係るセンサチップを示した図である。
【
図35】
図34に示されたセンサチップの場合におけるストローク量に対する誤差を示した図である。
【
図36】比較例として、センサチップの一方向がギャップ方向に平行な場合を示した図である。
【
図37】
図36に示されたセンサチップの場合におけるストローク量に対する誤差を示した図である。
【
図38】第5実施形態に係る各磁石の構成を示した図である。
【
図39】変形例として、グラデーション着磁の場合を示した図である。
【
図40】変形例として、多極着磁の場合を示した図である。
【
図41】変形例として、各磁石が非等間隔に着磁された場合を示した図である。
【
図42】変形例として、プラスチックマグネットの形状を変更した場合を示した図である。
【
図43】変形例として、プラスチックマグネットの形状を変更した場合を示した図である。
【
図44】上段は第6実施形態に係る検出体の構成を示した図であり、下段は比較例として各磁極面が同じ方向に向けられた構成を示した図である。
【
図45】第7実施形態に係る検出体の構成を示した図である。
【
図46】変形例として、1個の補助磁石を採用した場合を示した図である。
【
図47】変形例として、3個の磁石の間に補助磁石を採用した場合を示した図である。
【
図48】変形例として、多極磁石の補助磁石を採用した場合を示した図である。
【
図49】変形例として、多極磁石の補助磁石を採用した場合を示した図である。
【
図50】比較例として、各磁極面の各幅が同じ場合を示した図である。
【
図51】第8実施形態に係る検出体の構成を示した図である。
【
図52】検出体がシャフトを有する場合におけるストローク量に対する誤差を示した図である。
【
図53】比較例として、検出体がシャフトを有しない場合におけるストローク量に対する誤差を示した図である。
【
図54】最大ストローク量においてシャフトの長さに対する誤差を示した図である。
【
図55】第9実施形態に係る検出体の構成を示した図である。
【
図56】ヨークが突出部を有する場合におけるストローク量に対する誤差を示した図である。
【
図57】比較例として、ヨークが突出部を有する場合におけるストローク量に対する誤差を示した図である。
【
図58】検出体が磁石を複数有する場合を示した図である。
【
図59】第10実施形態に係る検出体の構成を示した斜視図である。
【
図62】
図59に示された検出体の場合におけるストローク量に対する誤差を示した図である。
【
図63】取付部が第2磁石の側に配置された場合におけるストローク量に対する誤差を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0018】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について図を参照して説明する。本実施形態に係るリニアポジションセンサは、検出体のストローク方向における位置を検出するセンサである。検出体は、例えば車両に搭載された可動部品である。以下、リニアポジションセンサを単にセンサと言う。
【0019】
図1に示されるように、センサ100は、車両の減速機を制御するシステムに採用される。減速機は、アクチュエータ10、ギア11、及び駆動部12を含む。アクチュエータ10は、ECU(Electronic Control Unit)200によって制御される。アクチュエータ10はECU200の制御に従って、減速機のギア11を回転させる。駆動部12は、ギア11の回転によって動作する部品である。駆動部12は、一定のストローク範囲を移動する検出体を含む。
【0020】
センサ100は、ストローク方向に沿って移動する検出体の現在の位置を検出する。具体的には、センサ100は、検出体のストローク量に比例する信号を取得することで、検出体の現在の位置を検出する。ECU200は、センサ100から検出体の現在の位置を取得する。ECU200は、センサ100の検出結果をアクチュエータ10の制御にフィードバックする。
【0021】
図2に示されるように、検出体150は、ストローク方向に沿って直進あるいは往復する場合がある。
図3に示されるように、検出体150は、ストローク方向に沿って回転あるいは回動する場合がある。検出体150は、ストローク方向に沿って特定の角度内で回動する場合もある。
【0022】
検出体150は、複数の磁石151~153を有する。各磁石151~153は、ストローク方向に沿って離間して配置される。各磁石151~153は、隣同士の磁極面154~156が反対の極となるように配置される。
【0023】
図4に示されるように、センサ100は、PPS等の樹脂材料が樹脂成形されたことによって形成されたケース101を備える。ケース101は、検出体150の側の先端部102、周辺機構に固定されるフランジ部103、及びハーネスが接続されるコネクタ部104を有する。センシング部分は、先端部102の内部に設けられる。
【0024】
また、先端部102が検出体150の各磁極面154~156に対して所定のギャップを持つように、センサ100がフランジ部103を介して周辺機構に固定される。したがって、検出体150がセンサ100に対して移動する。
【0025】
なお、検出体150の位置が固定され、センサ100がストローク方向に沿って移動しても良い。ストローク方向は、検出体150とセンサ100との相対的な移動方向である。よって、ストローク範囲も検出体150とセンサ100との相対的な移動範囲である。
【0026】
センサ100は、磁気抵抗素子を用いた磁気検出方式、または、ホール素子を用いた磁気検出方式を採用することができる。磁気抵抗素子を用いた磁気検出方式の場合、
図5に示されるように、センサ100は、モールドIC部105及びキャップ部106を備える。モールドIC部105は、キャップ部106に差し込まれる。これらは、ケース101の先端部102に収容される。
【0027】
モールドIC部105及びキャップ部106は一体化される。モールドIC部105の主な部分は、キャップ部106の中空部に位置する。キャップ部106は、ケース101の内部におけるモールドIC部105の位置を固定する。
【0028】
モールドIC部105は、図示しないリードフレーム、処理回路チップ、センサチップ、及びモールド樹脂部を有する。リードフレームは、複数のリード107~110を有する。複数のリード107~110は、電源電圧が印加される電源端子107、グランド電圧が印加されるグランド端子108、信号を出力するための第1出力端子109及び第2出力端子110に対応する。つまり、各リード107~110は、電源用、グランド用、及び信号用の4本である。各リード107~110の先端にはターミナルがそれぞれ接続される。ターミナルは、ケース101のコネクタ部104に位置する。また、ターミナルがハーネスに接続される。
【0029】
処理回路チップ及びセンサチップは、接着剤等によってリードフレームに実装される。処理回路チップは、センサチップの信号を処理する回路部を備える。センサチップは、外部から磁界の影響を受けたときに抵抗値が変化する磁気抵抗素子を含む。磁気抵抗素子は、例えばAMR、GMR、TMRである。
【0030】
モールド樹脂部は、各リード107~110の先端部分が露出するように、リードフレームの一部、処理回路チップ、及びセンサチップを封止する。モールド樹脂部は、キャップ部106の中空部に固定される形状に成形される。
【0031】
ホール素子を用いた磁気検出方式を採用した場合、モールドIC部105は、リードフレーム、ICチップ、及びモールド樹脂部を有する。リードフレームはICチップが実装されるアイランド部を含む。アイランド部は、平面部が検出体150のストローク方向に対して平行になるように配置される。ICチップは、複数のホール素子と信号処理回路部とを有する。つまり、ホール素子を用いた磁気検出方式では1チップ構成になっている。なお、複数のホール素子を複数のチップで構成しても構わない。素子と回路をどのようなチップ構成とするかは適宜選択すれば良い。
【0032】
次に、センサチップ及び処理回路チップあるいはICチップに構成された回路構成について説明する。
図6に示されるように、センサ100とECU200とがハーネス300を介して電気的に接続される。上述のように、モールドIC部105は4本のリード107~110を有するので、ハーネス300は4本の配線によって構成される。
【0033】
ECU200は、電源部201、制御部202、及びグランド部203を備えた電子制御装置である。電源部201は、センサ100に電源電圧を供給する回路部である。制御部202は、センサ100から入力する位置信号に応じて予め決められた制御を行う回路部である。なお、制御部202は、各出力端子109、110に対応した回路部として構成されていても良い。グランド部203はセンサ100のグランド電圧を設定する回路部である。
【0034】
センサ100は、検出部111及び信号処理部112を備える。検出部111は、センサチップを含む。信号処理部112は、処理回路チップに設けられる。検出部111及び信号処理部112は、ECU200から供給される電源電圧及びグランド電圧に基づいて動作する。
【0035】
検出部111は、各磁石151~153の各磁極面154~156に対してギャップ方向にギャップを持って配置される。検出部111は、第1検出部113及び第2検出部114を有する。第1検出部113は、検出体150の位置に対応した第1検出信号を出力するように構成される。第2検出部114は、検出体150の位置に対応した第2検出信号を出力するように構成される。各検出部113、114は、同じ構成であり、同じ検出信号を出力する。
【0036】
図7に示されるように、各検出部113、114は、4個の磁気検出素子及び温度検出素子を有する。なお、
図7では各検出部113、114のうちの1つを図示している。本実施形態では、各磁気検出素子は、検出体150の移動に伴って抵抗値が変化する。
【0037】
各磁気検出素子は、磁気抵抗素子が磁界の影響を受けたときの抵抗値の変化を電圧値として取得する。各検出部113、114は、各電圧値から位相が異なる複数の検出信号を生成する。異なる複数の検出信号は、正弦関数を示す正弦信号(sinθ)及び余弦関数を示す余弦信号(cosθ)である。
【0038】
正弦信号(sinθ)を取得するための磁気抵抗素子は、ギャップ方向に沿って形成される。余弦信号(cosθ)を取得するための磁気抵抗素子は、ストローク方向に沿って形成される。すなわち、素子の形成方向は90度異なる。
【0039】
各磁気検出素子のうちの1個は、Sin+の電圧信号を出力する。同様に、他の3個の磁気検出素子は、Sin-、Cos+、Cos-の各電圧信号を出力する。Sin+及びSin-の各電圧信号は、正弦信号であると共に、位相が逆である。Cos+及びCos-の各電圧信号は、余弦信号であると共に、位相が逆である。温度検出素子は、Tempの温度信号を出力する。
【0040】
Sin+、Sin-、Cos+、Cos-の各電圧信号及びTempの温度信号は、マルチプレクサ(MUX)によって順次信号が切り替えられ、アナログ処理及びAD変換される。ここで、Sin+の電圧信号とSin-の電圧信号との差動が演算される。これにより、Sin+の電圧信号とSin-の電圧信号とが逆相の関係から各電圧信号に含まれるノイズが除去されると共に、振幅が2倍の正弦信号(sinθ)が得られる。同様に、Cos+の電圧信号とCos-の電圧信号との差動が演算されることで、余弦信号(cosθ)が得られる。
【0041】
具体的には、検出体150がストローク方向に移動すると、各磁気検出素子の磁気ベクトルは、各磁石151~153から受ける磁界の変化に対応して変化する。すなわち、センサチップが受ける磁気ベクトルが回転する。これにより、各検出部113、114は、ストローク方向における検出体150に対する相対的な移動に伴って各磁石151~153から受ける磁界の変化に基づいて、各磁石151~153の位置に対応した位相の検出信号として正弦信号及び余弦信号を取得する。各検出部113、114は検出信号を信号処理部112に出力する。
【0042】
図6の信号処理部112は、検出部111から入力される検出信号を処理する回路部である。信号処理部112は、検出部111から検出信号を取得し、検出信号に基づいて検出体150の位置を示す位置信号を取得する。信号処理部112は、第1処理部120、第2処理部121、冗長判定部122を備える。
【0043】
ここで、第1検出部113及び第1処理部120が第1系統を構成する。また、第2検出部114及び第2処理部121が第2系統を構成する。つまり、各検出部113、114及び各処理部120、121は2重系を構成する。
【0044】
第1処理部120は、第1検出部113から第1検出信号を入力し、第1検出信号に基づいて検出体150の位置を取得する。第2処理部121は、第2検出部114から第2検出信号を入力し、第2検出信号に基づいて検出体150の位置を取得する。
【0045】
具体的には、各処理部120、121は、(余弦信号の信号値)/(正弦信号の信号値)を演算する。これにより、逆正接関数を示すと共に検出体150の位置に応じて信号値が一定の増加率で増加する逆正接信号が得られる。逆正接信号は、検出体150と検出部111との相対的なストローク量に応じた信号である。各処理部120、121は、逆正接信号を位置信号として取得する。
【0046】
図8に示されるように、第1処理部120は、逆正接信号を第1位置信号(O1)としてECU200に出力する。また、第2処理部121は、逆正接信号を反転させた第2位置信号(O2)をECU200に出力する。よって、検出部111や信号処理部112に異常が無ければ、第1処理部120の第1位置信号と第2処理部121の第2位置信号とを足すと一定値になる。
【0047】
図6の冗長判定部122は、第1処理部120によって取得された検出体150の位置と第2処理部121によって取得された検出体150の位置とが一致するか否かを判定する回路部である。2系統の信号処理結果が一致する場合、信号処理部112は、各位置信号をそのまま出力する。2系統の信号処理結果が一致しない場合、各系統のいずれか一方または両方に異常が発生している可能性がある。この場合、信号処理部112は、異常を示す異常信号をECU200に出力する。
【0048】
信号処理をまとめると、例えば
図7の内容となる。アナログ処理は、複数の検出信号を生成する処理である。なお、検出部111は温度を検出する機能を有していても良い。温度情報は温度補正Tempに用いられる。
【0049】
アナログ処理されたアナログ信号はAD変換されてデジタル信号に変換され、逆正接信号を生成するために演算処理される。アナログ処理及び演算処理では、センサ100のメモリに記憶された調整値が適宜利用される。演算処理によって取得された位置信号は、DAC、SENT、PWM等の出力形式に従ってECU200に出力される。
【0050】
なお、アナログ処理及び演算処理は信号処理部112で行われる。よって、AD変換を行うためのA/Dコンバータやメモリは信号処理部112に設けられている。以上が、本実施形態に係るセンサ100の構成である。
【0051】
次に、本実施形態に係る検出体150の構成について説明する。
図9に示されるように、検出体150は、第1磁石151、第2磁石152、第3磁石153、及びヨーク157を備える。ヨーク157は、一面158を有する磁性体の板である。ヨーク157は、駆動部12の可動部品に固定される。
【0052】
第1磁石151は、N極の第1磁極面154を有する。第2磁石152は、S極の第2磁極面155を有する。第3磁石153は、N極の第3磁極面156を有する。各磁石151~153は、焼結磁石である。各磁石151~153の材質は、例えば、フェライト、ネオジウムやサマリウムコバルト等の希土類である。各磁石151~153は、全て同じサイズである。
【0053】
各磁石151~153は、各磁極面154~156がセンサ100の側に向けられた状態で、ヨーク157の一面158に配置される。第2磁石152は、第1磁石151と第3磁石153との間に配置される。y方向におけるヨーク157の一面158の幅は、各磁石151~153と同じである。なお、y方向は、ヨーク157の一面158の面方向において、ストローク方向に対して垂直の方向である。
【0054】
ここで、第1磁石151と第3磁石153との間を0deg~360degと定義する。具体的には、ストローク方向において、第1磁石151の幅中心から第3磁石153の幅中心までの位置を0deg~360degとする。「360deg」は電気角である。つまり、検出体150のストローク量が電気角の角度で表される。したがって、電気角が長さに変換される。
【0055】
そして、各磁石151~153は、第1磁石151と第2磁石152との第1間隔x1と、第2磁石152と第3磁石153との第2間隔x2と、が異なる。すなわち、各磁石151~153は、非等間隔で配置される。本実施形態では、第1間隔x1が第2間隔x2よりも短い。
【0056】
発明者らは、上記の構成において、理想的な位置信号に含まれる誤差を調べた。理想的な位置信号とは、ストローク量に応じて信号値が一定の増加率で増加する信号である。誤差は、ストローク量に比例する理想的な信号値に対するズレ量である。なお、誤差は、検出体150のストローク量のフルスケールに対する割合として表される。誤差の結果を
図10に示す。
【0057】
図10に示されるように、第1間隔x1に対応する位置信号の誤差が、第2間隔x2に対応する位置信号の誤差よりも小さくなった。すなわち、第1間隔x1に対応するストローク範囲は、第2間隔x2に対応するストローク範囲よりも検出精度が高い。ギャップ方向における各磁極面154~156とセンサ100とのギャップを変化させた場合も、同じ結果になった。
【0058】
これは、第1間隔x1に形成される磁界と、第2間隔x2に形成される磁界と、がアンバランスになるためである。検出精度が要求される必要精度範囲が第1間隔x1に対応するストローク範囲であるとすると、ストローク範囲の全体の中で第1間隔x1に対応するストローク範囲の検出精度が向上したと言える。したがって、ストローク範囲の全体の中で必要精度範囲の検出精度を選択的に向上させることができる。
【0059】
比較例として、
図11に示されるように、第2間隔x2が第1間隔x1よりもわずかに大きい場合がある。この場合、
図12に示されるように、ストローク範囲の全体の誤差は、ギャップの違いにかかわらず、2箇所の誤差が、ほぼ0になった。
【0060】
検出精度が要求される必要精度位置が例えば6mm前後と16mm前後のストローク量であるとすると、ストローク範囲の全体の中で検出体150の2箇所の位置での検出精度が向上したと言える。これは、
図13に示されるように、特定の範囲である第1レンジ及び第2レンジと特定の範囲である中間位置との境界部における切替位置での検出精度が要求される場合に利用することができる。
【0061】
以上説明したように、本実施形態では、各磁石151~153が非等間隔に配置される。これにより、センサ100の検出部111が各磁石151~153から受ける磁界をアンバランスに調整することができる。したがって、ストローク範囲の全体の中で必要精度範囲あるいは必要精度位置の検出精度を選択的に向上させることができる。
【0062】
(第2実施形態)
本実施形態では、主に第1実施形態と異なる部分について説明する。
図14に示されるように、検出体150は、第1磁石151、第2磁石152、及びヨーク157を備える。ストローク方向におけるヨーク157の幅は、第1磁石151の端部から第2磁石152の端部までである。
【0063】
そして、ギャップ方向において、ヨーク157の一面158を基準として、第1磁石151の第1磁極面154の第1高さz1と、第2磁石152の第2磁極面155の第2高さz2と、が異なる。本実施形態では、第1高さz1が第2高さz2よりも低い。第1高さz1は、例えば2mmである。第2高さz2は、例えば3mmである。
【0064】
発明者らは、第1実施形態と同様に、位置信号の誤差を調べた。その結果を
図15に示す。
図15の矢印で示されるように、誤差は、ギャップの違いにかかわらず、18mmのストローク量で0になった。
【0065】
比較例として、
図16に示されるように、第1磁石151の第1高さz1が第2磁石152の第2高さz2よりも高い場合がある。第1高さz1は、例えば3mmである。第2高さz2は、例えば2mmである。この場合、
図17の矢印で示されるように、誤差は、ギャップの違いにかかわらず、11mmのストローク量で0になった。
【0066】
別の比較例として、
図18に示されるように、各磁石151、152の各高さが同じ場合がある。各磁石151、152の各高さは、例えば3mmである。この場合、
図19の矢印で示されるように、誤差は、ギャップの違いにかかわらず、14mmのストローク量で0となった。
【0067】
上記の各結果から、各磁石151、152の各高さが異なることで、検出精度が高い位置を調整できることがわかる。これは、各磁石151、152の各高さが異なることで、第1磁石151によって形成される磁界と、第2磁石152によって形成される磁界と、がアンバランスになるためである。すなわち、各磁石151、152の各高さが異なることに伴って、各磁石151、152が磁力を吸う量や吐き出す量がアンバランスになるためである。
【0068】
以上説明したように、各磁石151、152の各高さを異ならせることにより、ストローク範囲の全体の中で各磁石151、152のうちの高さが高い側における特定の位置の検出精度を向上させることができる。したがって、ストローク範囲の全体の中で必要精度位置の検出精度を選択的に向上させることができる。
【0069】
変形例として、
図20に示されるように、検出体150は、第3高さz3の第3磁石153を備えていても良い。この場合、ギャップ方向において、ヨーク157の一面158を基準として、各磁石151~153の各磁極面154~156のうちの少なくとも1つの高さが他の高さと異なる。例えば、第2磁石152の第2高さz2が、第1磁石151及び第3磁石153の各高さよりも高い。あるいは、第2磁石152の第2高さz2が、第1磁石151及び第3磁石153の各高さよりも低い。第1高さz1と第3高さz3とは同じである。なお、各磁石151~153の各高さが全て異なっていても良い。
【0070】
変形例として、
図21に示されるように、3個の磁石151~153は、各高さが異なると共に、非等間隔に配置されても良い。
図21には、第2磁石152の第2高さz2が第1磁石151及び第3磁石153の各高さよりも高い場合が示されている。もちろん、第2磁石152の第2高さz2が第1磁石151及び第3磁石153の各高さよりも低い場合や、各磁石151~153の各高さが全て異なっていても良い。
【0071】
(第3実施形態)
本実施形態では、主に第1、第2実施形態と異なる部分について説明する。
図22に示されるように、検出体150は、3個の磁石151~153及びヨーク157を有する。
【0072】
各磁石151~153は等間隔に配置される。ストローク方向における第1磁石151の幅中心から第3磁石153の幅中心までの距離は、例えば25mmである。ストローク方向における第1磁石151のうちの第2磁石152の側の端部から、第3磁石153のうちの第2磁石152の側の端部まで、の距離は例えば20mmである。
【0073】
そして、ストローク方向において、第1磁石151の第1磁極面154の第1幅x3、第2磁石152の第2磁極面155の第2幅x4、及び第3磁石153の第3磁極面156の第3幅x5のうちの少なくとも1つの幅が他の幅と異なる。本実施形態では、第2幅x4が、第1幅x3及び第3幅x5よりも小さい。第1幅x3と第3幅x5とは同じである。第2幅x4は、例えば3mmである。第1幅x3及び第3幅x5は、例えば5mmである。
【0074】
発明者らは、第1実施形態と同様に、位置信号の誤差を調べた。その結果を
図23に示す。
図23に示されるように、誤差は、ギャップの違いにかかわらず、ストローク範囲の全体で小さくなると共に、特定の位置で0になった。
【0075】
比較例として、
図24に示されるように、第2幅x4が、第1幅x3及び第3幅x5よりも大きい場合がある。第2幅x4は、例えば5mmである。第1幅x3及び第3幅x5は、例えば3mmである。この場合、
図25に示されるように、誤差は、ギャップの違いにかかわらず、10mm~12mmのストローク量の範囲の特定の位置で0になった。しかし、0mm~10mm及び12mm~22mmのストローク量の範囲では、ギャップが5mm及び7mmの場合の誤差が大きくなった。
【0076】
別の比較例として、
図26に示されるように、各磁石151~153の各幅が同じ場合がある。各磁石151~153の各幅は、例えば3mmである。この場合、
図27に示されるように、
図24の比較例よりもストローク範囲の全体で誤差が小さくなった。
【0077】
上記の結果によると、第2幅x4が、第1幅x3及び第3幅x5よりも大きい場合、第2磁石152に磁気ベクトルが強く引き寄せられたため、ストローク範囲のうち誤差が大きくなる範囲が生じた。これに対し、第2幅x4が、第1幅x3及び第3幅x5よりも小さい場合、第2磁石152に引き寄せられる磁気ベクトルが緩やかになる。その結果、10mm~12mmのストローク量の範囲だけでなく、0mm~10mm及び12mm~22mmのストローク量の範囲での検出精度が向上した。
【0078】
以上のように、各磁石151~153のストローク方向における幅を異ならせることで、ストローク範囲の全体の中で必要精度範囲の検出精度を選択的に向上させることができる。
【0079】
また、
図28に示されるように、ストローク方向における第1磁石151と第2磁石152との間において、ギャップの値にかかわらず磁気ベクトルがストローク方向に揃う位置がある。ストローク方向における第2磁石152と第3磁石153との間も同様である。
【0080】
通常、センサ100は、ギャップの値にかかわらず磁気ベクトルがストローク方向に揃う位置が検出範囲の原点及び終点になるように車両に搭載されるが、センサ100や検出体150の搭載ずれの可能性がある。搭載ずれは、ストロークの原点における位置信号に誤差を生じさせる。なお、ストローク方向において、ギャップの値にかかわらず磁気ベクトルがストローク方向に揃う位置は、ギャップ特性が無くなる位置に対応する。
【0081】
そこで、ストロークの原点における位置信号の誤差を0にするための原点補正を行う。原点補正は、センサ100の搭載後に行う。原点補正を行うことで、ストロークの原点の誤差が0になるように位置信号に補正値を加える。補正値は、位置信号のオフセット値である。オフセット値は、ECU200のメモリに記憶される。オフセット値は、センサ100のメモリに記憶されても構わない。
【0082】
例えば、誤差を考慮しない磁気回路が構成された場合、
図28に示されるように、原点補正前では、ストロークの原点に大きな誤差が生じてしまう。よって、原点補正を行うことで、ストロークの原点の誤差は0になるが、ストローク量が大きくなるほど、誤差が大きくなってしまう。このため、使用電気角の範囲を広げることが難しい。使用電気角の範囲を広げた場合、誤差はさらに大きくなる。
【0083】
これに対し、
図29に示されるように、ストローク方向における各磁石151~153の幅が全て同じ構成とする。検出範囲の原点は第1磁石151と第2磁石152との中間に位置すると共に、検出範囲の終点は第2磁石152と第3磁石153との中間に位置する。この場合、
図30に示されるように、原点補正前では、誤差がストロークの原点に生じるが、
図28に示された場合よりも小さくなる。そして、原点補正後では、誤差はストロークの原点で0になる。誤差の最大幅も、原点補正前よりも小さくなる。したがって、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0084】
また、
図31に示されるように、ストローク方向における両サイドの磁石151、153の幅を第2磁石152の幅よりも大きくする。これにより、両サイドの磁石151、153の磁力線が相対的に第2磁石152に引き込まれなくなるので、磁気ベクトルがストローク方向に揃う位置が両サイドの磁石151、153の側にシフトする。このため、検出範囲の原点は第1磁石151と第2磁石152との中間位置よりも第1磁石151の側に位置すると共に、検出範囲の終点は第2磁石152と第3磁石153との中間位置よりも第3磁石153の側に位置する。つまり、使用電気角の範囲が広くなるので、検出範囲を広くすることができる。なお、検出体150が2個の磁石151、152を有する場合にも上記と同様に原点補正を行うことができる。
【0085】
変形例として、
図32に示されるように、3個の磁石151~153は、各幅が異なると共に、非等間隔に配置されても良い。さらに、各磁石151~153は、各高さが異なっていても良い。
【0086】
変形例として、
図33に示されるように、3個の磁石151~153は、各幅及び各高さが異なっていても良い。
【0087】
変形例として、検出体150は、2個の磁石151、152を備えていても良い。この場合、ストローク方向において、第1磁石151の第1磁極面154の第1幅x3と、第2磁石152の第2磁極面155の第2幅x4と、が異なる。さらに、2個の磁石151、152の各高さが異なっていても良い。
【0088】
(第4実施形態)
本実施形態では、主に第1~第3実施形態と異なる部分について説明する。
図34に示されるように、検出部111は、センサチップ123を備える。センサチップ123は、ギャップ方向及びストローク方向に平行な一面124を有する。センサチップ123は、一面124の面方向のうちの一方向が正弦信号に対応する方向に設定される。
【0089】
さらに、センサチップ123は、一方向がストローク方向あるいはギャップ方向に対して傾斜した状態で検出部111に固定される。すなわち、センサチップ123が一定角度だけ回転した状態である。
【0090】
発明者らは、第1実施形態と同様に、位置信号の誤差を調べた。なお、検出体150として、3個の磁石151~153を等間隔に配置したものを採用した。その結果を
図35に示す。
図35に示されるように、ストローク範囲の全体での検出範囲における誤差は、ギャップの違いにかかわらず、小さくなった。また、検出範囲のスタート位置は、センサチップ123を回転させない場合よりもストローク量が増加する側にずれた。
【0091】
比較例として、
図36に示されるように、センサチップ123の一方向がギャップ方向に平行な場合がある。すなわち、センサチップ123を回転させない場合がある。この場合、上記と同じストローク量の検出範囲とすると、
図37の破線で囲まれた部分に示されるように、検出範囲のスタート位置付近における誤差が、ギャップの違いにかかわらず、大きくなった。
【0092】
上記の結果によると、センサチップ123を回転させたことによって、ストローク範囲の全体の中で誤差が小さい範囲に検出範囲を移動させることができたと言える。これは、センサチップ123の回転に伴って、各磁気検出素子の検出方向の位相も回転したからである。
【0093】
以上のように、センサチップ123の向きを変更することによって、ストローク範囲の全体の中で必要精度範囲の検出精度を選択的に向上させることができる。
【0094】
変形例として、センサチップ123の向きを変更することは、上記各実施形態に示された構成や、上記各実施形態が組み合わされた構成に採用することができる。例えば、2個の磁石151、152を採用する場合、各磁石151~153の各高さや各幅が異なる場合、3個の各磁石151~153が非等間隔に配置される場合に適用できる。
【0095】
(第5実施形態)
本実施形態では、主に上記各実施形態と異なる部分について説明する。
図38に示されるように、3個の磁石151~153は、プラスチックマグネット159に着磁されたことにより構成される。プラスチックマグネット159は、例えば、フェライト、ネオジウムやサマリウムコバルト等の希土類を含む。
【0096】
プラスチックマグネット159は、磁石の微粒子が樹脂材料に混ぜられた樹脂成形品である。プラスチックマグネット159は、ヨーク157に固定される。各磁石151~153は、極異方着磁によって着磁される。なお、各磁石151~153は、等方性磁石として着磁されても良い。
【0097】
変形例として、
図39に示されるように、各磁石151~153は、グラデーション着磁されていても良い。グラデーション着磁とは、各磁石151~153の密度が異なるように各磁石151~153をプラスチックマグネット159に着磁する方法である。各磁石151~153の間の磁力の強さが連続的に変化するので、磁力を調整しやすい。
【0098】
変形例として、
図40に示されるように、各磁石151~153は、多極着磁されていても良い。これにより、グラデーション着磁と同様に、磁力を調整しやすくなる。
【0099】
変形例として、
図41に示されるように、各磁石151~153は、ストローク方向に非等間隔で着磁されていても良い。
【0100】
変形例として、
図42に示されるように、2個の磁石151、152の各高さが異なるようにプラスチックマグネット159が成形されていても良い。プラスチックマグネット159は、樹脂成形品であるので、様々な形状の磁石を容易に構成することができる。
【0101】
変形例として、
図43に示されるように、3個の磁石151~153の各幅が異なるようにプラスチックマグネット159が成形されていても良い。
【0102】
以上のように、各磁石151~153がプラスチックマグネット159に着磁されることで、各磁石151~153の磁力や位置を調整することが容易になる。また、プラスチックマグネット159は、
図41~
図43に示されるように、上記各実施形態の全てと組み合わせることができる。また、各実施形態が組み合わされた構成にも採用することができる。
【0103】
(第6実施形態)
本実施形態では、主に第1実施形態と異なる部分について説明する。
図44の上段に示されるように、第1磁石151は、一部がヨーク157の一面158のうちの一端部160からストローク方向に沿って突出する。また、第1磁石151は、第1磁極面154がストローク方向に対して垂直に配置される。
【0104】
第3磁石153は、一部がヨーク157の一面158のうちの一端部160とは反対側の他端部161からストローク方向に沿って突出する。また、第3磁石153は、第3磁極面156がストローク方向に対して垂直に配置される。
【0105】
つまり、第1磁極面154及び第3磁極面156は、第2磁極面155に対してストローク方向に反対の極になっているが、ギャップ方向に平行に配置される。このような場合も、隣同士の磁極面154~156が反対の極となる配置である。なお、各磁石151~153は、例えば、ストローク方向に非等間隔で配置される。また、第2磁石152は、第1磁石151及び第3磁石153よりも高さが高い。
【0106】
上記の構成によると、第1磁石151の第1磁極面154から吐き出される磁気ベクトルは、ストローク方向に沿う。磁気ベクトルは、第1磁極面154から離れるに伴って少しずつ上向きになり、やがてギャップ方向に平行になる。そして、磁気ベクトルは、ギャップ方向に対して傾斜し、ストローク方向に平行になる。その後、磁気ベクトルは、第2磁石152に引き寄せられることでストローク方向に対して傾く。第3磁石153の第3磁極面156から吐き出される磁気ベクトルも同様である。
【0107】
これにより、第1磁石151よりも外側にギャップ方向に平行な磁気ベクトルを作ることができる。同様に、第3磁石153よりも外側にギャップ方向に平行な磁気ベクトルを作ることができる。このため、検出範囲は、第1磁石151から吐き出された磁気ベクトルがギャップ方向に平行になる位置から、第3磁石153から吐き出された磁気ベクトルがギャップ方向に平行になる位置まで、の範囲になる。一方、ストローク方向における検出体150の体格は、第1磁極面154から第3磁極面156までのサイズとなる。よって、検出範囲を体格よりも大きくすることができる。言い換えると、検出範囲を維持しつつ、検出体150を小型化することができる。
【0108】
比較例として、
図44の下段に示されるように、各磁石151~153の各磁極面154~156が全て同じ向きの場合、第1磁石151及び第3磁石153から吐き出される磁気ベクトルはギャップ方向に平行である。このため、当該磁気ベクトルよりも外側に第1磁石151の一部、第3磁石153の一部、及びヨーク157の一部が位置する。よって、比較例における検出範囲は、検出体150の体格よりも小さくなる。
【0109】
以上のように、第1磁石151の第1磁極面154及び第3磁石153の第3磁極面156をギャップ方向に平行に配置することで、検出体150の体格を小さくすることができる。
【0110】
変形例として、検出体150の体格の小型化は、上記各実施形態に示された構成や、各実施形態が組み合わされた構成に採用することができる。例えば、各磁石151~153の各高さは同じでも良い。各磁石151~153の各幅は異なっていても良い。また、センサチップ123の向きを変更する構成や、プラスチックマグネット159に各磁石151~153を着磁する構成にも適用できる。
【0111】
(第7実施形態)
本実施形態では、主に上記各実施形態と異なる部分について説明する。
図45に示されるように、検出体150は、第1磁石151、第2磁石152、第1補助磁石162、及び第2補助磁石163を備える。
【0112】
第1補助磁石162は、第1磁石151と第2磁石152との間のうちの第1磁石151の側に配置される。第1補助磁石162は、第1磁石151の第1磁極面154に対応する磁界を反発させる。
【0113】
第2補助磁石163は、第1磁石151と第2磁石152との間のうちの第2磁石152の側に配置される。第2補助磁石163は、第2磁石152の第2磁極面155に対応する磁界を反発させる。
【0114】
なお、各補助磁石151、152の各高さは、各磁石151、152と同じである。ストローク方向における各補助磁石151、152の各幅は、各磁石151、152の各幅よりも小さい。各補助磁石151、152のサイズは、各磁石151、152の間の磁路を調整できれば良いので、他のサイズでも構わない。
【0115】
各磁石151、152が離れて配置される場合、各磁石151、152の間の磁路の形成が難しくなる。また、必要精度範囲における検出精度にも影響する。しかし、上記の構成によると、各補助磁石151、152によって第1磁石151と第2磁石152との間の磁路が保たれる。よって、必要精度範囲における検出精度を向上させることができる。
【0116】
特に、磁気抵抗素子としてAMRを採用する場合、使用可能な電気角は180degである。AMRの場合、各磁石151、152の距離を大きくして検出範囲を広げると、各磁石151、152に閉ループが形成されることによって各磁石151、152の間の磁路の形成が難しくなる。しかし、各磁石151、152の間に各補助磁石151、152を配置して閉ループの磁界を反発させることで、各磁石151、152の間の本来の磁路を形成しやすくすることができる。
【0117】
変形例として、
図46に示されるように、各磁石151、152の間には1個の第3補助磁石164だけが配置されても良い。この場合、第3補助磁石164のN極が第1磁石151の側に配置され、S極が第2磁石152の側に配置される。
【0118】
変形例として、
図47に示されるように、検出体150が3個の磁石151~153を備える場合、第1磁石151と第2磁石152との間に第3補助磁石164が配置され、第2磁石152と第3磁石153との間に第4補助磁石165が配置されても良い。この場合、第3補助磁石164は、第1磁石151の第1磁極面154に対応する磁界を反発させると共に、第2磁石152の第2磁極面155に対応する磁界を反発させる。また、第4補助磁石165は、第2磁石152の第2磁極面155に対応する磁界を反発させると共に、第3磁石153の第3磁極面156に対応する磁界を反発させる。もちろん、各磁石151~153の間には、補助磁石162~165が複数配置されていても良い。
【0119】
変形例として、
図48に示されるように、第3補助磁石164及び第4補助磁石165として多極磁石が採用されても良い。多極磁石は、ストローク方向だけでなく、ギャップ方向にもN極及びS極が設けられた磁石である。したがって、第1磁石151から吐き出される磁気ベクトルの傾き、及び、第2磁石152に吸い込まれる磁気ベクトルの傾きをストローク方向に対して起き上がらせることができる。つまり、第1磁石151と第2磁石152との間の磁気ベクトルを寝かさないようにすることができる。第2磁石152と第3磁石153との間の磁気ベクトルについても同様である。よって、センサ100と検出体150とのギャップが大きい場合だけでなく、ギャップが小さい場合にも、必要精度範囲における検出精度を向上させることができる。
【0120】
また、
図49に示されるように、各磁石151~153及び各補助磁石151、152は、少なくとも、隣の磁石に対向する面がテーパ面になっていても良い。各磁石151~153は、ストローク方向における各磁極面154~156の幅が、ヨーク157に固定される面の幅よりも小さい。つまり、各磁石151~153の上辺は下辺よりも小さい。逆に、各補助磁石151、152は、ストローク方向におけるセンサ100の側の面幅が、ヨーク157に固定される面の幅よりも大きい。つまり、各補助磁石151、152の上辺は下辺よりも大きい。各磁石151~153及び各補助磁石151、152は、例えば四角錐台である。
【0121】
これにより、第1磁石151と第2磁石152との間、及び、第2磁石152と第3磁石153との間の磁気ベクトルをギャップ方向に任意に浮き上がらせることができる。言い換えると、第1磁石151と第2磁石152との間の磁界を第3補助磁石164の磁界によって反発させることができる。第2磁石152と第3磁石153との間の磁界を、第4補助磁石165の磁界によって反発させることができる。また、センサ100と検出体150とのギャップが小さい場合でも、第1磁石151と第2磁石152との間の磁束密度、第2磁石152と第3磁石153との間の磁束密度、各補助磁石151、152の上部の磁束密度を高くすることができる。よって、必要精度範囲における検出精度を向上させることができる。なお、
図48及び
図49に示された構成は、検出体150が第1磁石151、第2磁石152、第3補助磁石164を有して構成される場合にも適用できる。
【0122】
比較例として、
図50に示されるように、ストローク方向における各磁石151~153の幅が全て同じ構成では、第1磁石151と第2磁石152との間の磁力線は最短経路で到達しようとするため、磁気ベクトルが理想より寝てしまう。すなわち、磁気ベクトルはストローク方向に沿ってしまう。第2磁石152と第3磁石153との間の磁気ベクトルも同様である。このため、
図50に示された構成では、センサ100と検出体150とのギャップが大きい場合でしか検出精度が得られない。
【0123】
なお、本実施形態の記載と特許請求の範囲の記載との対応関係については、第3補助磁石164が特許請求の範囲の「第1補助磁石」に対応し、第4補助磁石165が特許請求の範囲の「第2補助磁石」に対応する。
【0124】
変形例として、検出体150が補助磁石162~165を有する構成は、上記各実施形態に示された構成や、上記各実施形態が組み合わされた構成に採用することができる。例えば、プラスチックマグネット159に各磁石151~153を着磁する場合、各補助磁石162~165に対応する着磁を行えば良い。
【0125】
(第8実施形態)
本実施形態では、主に上記各実施形態と異なる部分について説明する。
図51に示されるように、検出体150は、第1磁石151、第2磁石152、ヨーク157、及びシャフト166を備える。シャフト166は、駆動部12に含まれる磁性体の可動部品である。
【0126】
シャフト166は、ストローク方向における長さがヨーク157よりも長い。ストローク方向におけるシャフトの長さは例えば67mmであり、ヨーク157の長さは例えば27mmである。ヨーク157は、シャフト166の外周面167に固定される。
【0127】
発明者らは、第1実施形態と同様に、ヨーク157がシャフト166に固定される場合と、固定されない場合と、の位置信号の誤差をそれぞれ調べた。さらに、発明者らは、シャフト166の長さを変更したときの最大ストローク量における誤差の変化を調べた。これらの結果を
図52~
図54に示す。
【0128】
図52及び
図53に示されるように、シャフト166の有無によってストローク範囲の端の誤差に差が生じた。
図54は、ギャップが6mmに設定された際の誤差を示している。
図54に示されるように、シャフト166がヨーク157の長さに達するまでは、誤差はほぼ一定であった。しかし、シャフト166がヨークよりも長くなると、誤差が小さくなっていった。
【0129】
これは、シャフト166がストローク方向に長くなると、各磁石151、152から出る磁気ベクトルが各磁石151、152の近くのシャフト166に吸われるためである。これにより、
図51に示された破線の磁気ベクトルの曲率が実線の磁気ベクトルの曲率のように大きくなる。すなわち、磁気ベクトルが回転する範囲が広くなる。このため、使用電気角の範囲も広くなるので、検出範囲を広くすることができる。これに伴い、フルスケール誤差も小さくなるというメリットもある。
【0130】
以上のように、ヨーク157がシャフト166に固定されることによって、ストローク範囲の全体の中で必要精度範囲の検出精度を選択的に向上させることができる。
【0131】
変形例として、ヨーク157がシャフト166に固定される構成は、上記各実施形態に示された構成や、上記各実施形態が組み合わされた構成に採用することができる。
【0132】
(第9実施形態)
本実施形態では、主に上記各実施形態と異なる部分について説明する。
図55に示されるように、検出体150は、第2磁石152及びヨーク157を備える。ヨーク157は、突出部168、169を有する。突出部168、169は、ストローク方向において第2磁石152よりも外側に位置する。突出部168、169は、ヨーク157の一面158からギャップ方向に沿って突出する。
【0133】
また、突出部168、169は、ヨーク157の一面158を基準とした高さが第2磁石152よりも高い。ヨーク157の一面158を基準とした第2磁石152の高さは例えば3mmであり、突出部168、169の高さは例えば6mmである。
【0134】
発明者らは、第1実施形態と同様に、ヨーク157が突出部168、169を有する場合と、有しない場合と、の位置信号の誤差をそれぞれ調べた。これらの結果を
図56及び
図57に示す。
図56及び
図57に示されるように、ヨーク157が突出部168、169を有する場合は有しない場合よりもストローク範囲の端の誤差が小さくなった。
【0135】
これは、第2磁石152に吸い込まれる磁気ベクトルが突出部168、169に吸われるためである。これにより、
図55に示された破線の磁気ベクトルの曲率が実線の磁気ベクトルの曲率のように変化する。よって、使用電気角の範囲も広くなるので、ストローク範囲の全体あるいは必要精度範囲の検出精度を選択的に向上させることができる。
【0136】
変形例として、
図58に示されるように、検出体150は、2個の磁石151、152を備えていても良い。この場合、突出部168は第1磁石151の外側に配置され、突出部169は第2磁石152の外側に配置される。検出体150が3個の磁石151~153を有する場合、突出部169は第3磁石153の外側に配置される。ヨーク157が突出部168、169を有する構成は、上記各実施形態のうちの第6実施形態を除く構成や、各実施形態のうちの第6実施形態を除く構成の組み合わせに採用することができる。
【0137】
(第10実施形態)
本実施形態では、主に上記各実施形態と異なる部分について説明する。
図59~
図61に示されるように、検出体150は、第1磁石151、第2磁石152、及びヨーク157を備える。ヨーク157は、取付部170を有する。
【0138】
取付部170は、ヨーク157のうちの各磁石151、152の間の一部が、一面158の面方向においてストローク方向に対して垂直方向に突出した部分である。取付部170は、ヨーク157のうちの各磁石151、152の間の部分すなわち磁気飽和が発生しやすい部分に対し、磁気飽和を緩和させる。
【0139】
取付部170は、重複部171、172及び固定部173を有する。重複部171、172は、垂直方向において各磁石151、152の一部と重なる部分である。重複部171は、垂直方向において第1磁石151のうちの第2磁石152の側の端部と重なる。重複部172は、垂直方向において第2磁石152のうちの第1磁石151の側の端部と重なる。固定部173は、駆動部12の可動部品等に固定されるネジ孔174が形成された部分である。
【0140】
発明者らは、第1実施形態と同様に、ヨーク157が各磁石151、152の間に取付部170を有する場合と有さない場合との位置磁力の差を調べた。その結果を
図62に示す。また、ヨーク157が第2磁石152に対応する位置に取付部170を有する場合と有さない場合との位置磁力の差の差を調べた。その結果を
図63に示す。
【0141】
図62に示されるように、ヨーク157が各磁石151、152の間に取付部170を有する場合と有さない場合との位置磁力の差は、ストローク範囲の全体でほぼ一定になった。これは、取付部170によって各磁石151、152の間のヨーク157の断面積が大きくなったので、
図60の矢印及び
図61の矢印に示されるように、磁力線の一部が第2磁石152から取付部170を介して第1磁石151に流れたためである。このように、取付部170によって、ヨーク157のうちの各磁石151、152の間の磁気飽和を緩和することができる。取付部170は重複部171、172を有しているので、磁力線を取付部170に引き込みやすくなっていることも磁気飽和の緩和に効果がある。
【0142】
これに対し、
図63に示されるように、ヨーク157が第2磁石152に対応する位置に取付部170を有する場合と有さない場合との位置磁力の差は、第2磁石152に対応する位置で大きくなった。すなわち、磁力線が第2磁石152に対応する位置に流れやすくなったために、磁力が上がってしまった。これは、位置磁力の差は、取付部170が配置された位置のみで大きくなることを意味する。このように、ヨーク157における取付部170の位置が適切でない場合、磁気飽和を緩和する効果は得られない。
【0143】
以上のように、ヨーク157が取付部170を有することで、ヨーク157の内部の磁気特性を向上させることができる。したがって、必要精度範囲あるいは必要精度位置の検出精度を選択的に向上させることができる。なお、取付部170は重複部171、172を有していなくても良い。
【0144】
変形例として、取付部170は、ヨーク157のうちの各磁石151、152の間において、垂直方向の端部に2箇所設けられていても良い。
【0145】
変形例として、ヨーク157が取付部170を有する構成は、上記各実施形態に示された構成や、上記各実施形態が組み合わされた構成に採用することができる。例えば、検出体150が3個の磁石151~153を備える場合、取付部170は、ヨーク157のうちの各磁石151~153の隣同士の間の一部が、ヨーク157の一面158の面方向においてストローク方向に対して垂直方向に突出するように設けられる。
【0146】
(他の実施形態)
上記各実施形態で示されたセンサ100の構成は一例であり、上記で示した構成に限定されることなく、本発明を実現できる他の構成とすることもできる。例えば、センサ100の用途は車両用に限られず、可動部品の回転位置を検出するものとして産業用ロボットや製造設備等にも広く利用できる。また、センサ100は冗長機能を備えていなくても良い。
【符号の説明】
【0147】
111 検出部
112 信号処理部
150 検出体
151~153 磁石
154~156 磁極面
157 ヨーク