(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】処理装置、処理システム、処理方法及び処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 19/00 20110101AFI20241112BHJP
H04W 24/06 20090101ALI20241112BHJP
【FI】
G06T19/00 600
H04W24/06
(21)【出願番号】P 2023508347
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2021012686
(87)【国際公開番号】W WO2022201465
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】廣田 衛
【審査官】益戸 宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/195296(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0055490(US,A1)
【文献】特開2014-179833(JP,A)
【文献】特開2018-207249(JP,A)
【文献】特開2002-223218(JP,A)
【文献】特開2011-114416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 19/00
H04W 24/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業場における無線通信機器、無線通信機器搭載の移動装置、無線通信機器非搭載の前記移動装置、及び、前記作業場の構造体の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
各無線通信機器の通信状態を示す機器情報を取得する機器情報取得手段と、
取得した前記位置情報及び前記機器情報に基づいて、前記作業場の無線通信状態をシミュレートするシミュレート手段と、
前記位置情報に基づいた前記無線通信機器、前記移動装置及び前記構造体の配置位置、並びに、シミュレートされた前記無線通信状態を拡張現実装置に重畳させて表示させる制御を行う拡張現実制御手段と、
を備え
、
シミュレートされた前記無線通信状態に基づいて、前記無線通信状態を阻害する阻害要因を抽出する阻害要因抽出手段をさらに備え、
前記位置情報取得手段は、前記阻害要因の位置情報を取得し、
前記シミュレート手段は、無線の周波数または波長ごとにシミュレートし、
前記阻害要因抽出手段は、前記周波数または前記波長ごとに前記阻害要因を抽出し、
前記位置情報取得手段は、前記周波数または前記波長ごとに前記阻害要因の位置情報を取得し、
前記拡張現実制御手段は、前記周波数または前記波長ごとに区別して表示させ、阻害要因以外の前記無線通信機器、前記移動装置及び前記構造体を透過させて表示させる、
処理装置。
【請求項2】
シミュレートされた前記無線通信状態に基づいて、前記無線通信機器の移動先の候補となる候補位置を抽出する候補位置抽出手段をさらに備え、
前記シミュレート手段は、前記候補位置、前記移動装置及び前記構造体の前記配置位置、並びに、前記機器情報に基づいて、前記無線通信状態をシミュレートし、
前記拡張現実制御手段は、前記候補位置、前記移動装置及び前記構造体の前記配置位置、並びに、前記無線通信状態を前記拡張現実装置に表示させる、
請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記移動装置の位置情報は、UGVの移動範囲、前記UGVの大きさ、クレーンの移動範囲、前記クレーンの大きさ、台車の移動範囲及び前記台車の大きさのうち、少なくともいずれかを含む、
請求項1または2に記載の処理装置。
【請求項4】
作業場における無線通信機器、無線通信機器搭載の移動装置、無線通信機器非搭載の前記移動装置、及び、前記作業場の構造体の位置情報を記憶したデータベースと、
各無線通信機器の通信状態を示す機器情報を管理する無線管理装置と、
前記データベースから取得した前記位置情報及び前記無線管理装置から取得した前記機器情報に基づいて、前記作業場の無線通信状態をシミュレートする処理装置と、
前記位置情報に基づいた前記無線通信機器、前記移動装置及び前記構造体の配置位置、並びに、シミュレートされた前記無線通信状態を重畳させて表示する拡張現実装置と、
を備え
、
前記処理装置は、
シミュレートした前記無線通信状態に基づいて、前記無線通信状態を阻害する阻害要因を抽出し、
前記阻害要因の位置情報を取得し、
無線の周波数または波長ごとにシミュレーションし、
前記周波数または前記波長ごとに前記阻害要因を抽出し、
前記周波数または前記波長ごとに前記阻害要因の位置情報を取得し、
前記拡張現実装置は、
前記周波数または前記波長ごとに区別して表示し、阻害要因以外の前記無線通信機器、前記移動装置及び前記構造体を透過させて表示する、
処理システム。
【請求項5】
前記処理装置は、
前記シミュレートされた前記無線通信状態に基づいて、前記無線通信機器の移動先の候補となる候補位置を抽出し、
前記候補位置、前記移動装置及び前記構造体の前記配置位置、並びに、前記機器情報に基づいて、前記無線通信状態をシミュレートし、
前記拡張現実装置は、
前記候補位置、前記移動装置及び前記構造体の前記配置位置、並びに、前記無線通信状態を表示する、
請求項
4に記載の処理システム。
【請求項6】
前記移動装置の位置情報は、UGVの移動範囲、前記UGVの大きさ、クレーンの移動範囲、前記クレーンの大きさ、台車の移動範囲及び前記台車の大きさのうち、少なくともいずれかを含む、
請求項4または5に記載の処理システム。
【請求項7】
作業場における無線通信機器、無線通信機器搭載の移動装置、無線通信機器非搭載の前記移動装置及び前記作業場の構造体の位置情報を取得させる位置情報取得ステップと、
各無線通信機器の通信状態を示す機器情報を取得させる機器情報取得ステップと、
取得した前記位置情報及び前記機器情報に基づいて、前記作業場の無線通信状態をシミュレートさせるシミュレートステップと、
前記位置情報に基づいた前記無線通信機器、前記移動装置及び前記構造体の配置位置、並びに、シミュレートされた前記無線通信状態を拡張現実装置に重畳させて表示させる制御を行わせる拡張現実制御ステップと、
を備え
、
シミュレートされた前記無線通信状態に基づいて、前記無線通信状態を阻害する阻害要因を抽出させる阻害要因抽出ステップをさらに備え、
前記位置情報取得ステップにおいて、前記阻害要因の位置情報を取得させ、
前記シミュレートステップにおいて、無線の周波数または波長ごとにシミュレートさせ、
前記阻害要因抽出ステップにおいて、前記周波数または前記波長ごとに前記阻害要因を抽出させ、
前記位置情報取得ステップにおいて、前記周波数または前記波長ごとに前記阻害要因の位置情報を取得させ、
前記拡張現実制御ステップにおいて、前記周波数または前記波長ごとに区別して表示させ、阻害要因以外の前記無線通信機器、前記移動装置及び前記構造体を透過させて表示させる、
処理方法。
【請求項8】
シミュレートされた前記無線通信状態に基づいて、前記無線通信機器の移動先の候補となる候補位置を抽出させる候補位置抽出ステップをさらに備え、
前記シミュレートステップにおいて、前記候補位置、前記移動装置及び前記構造体の前記配置位置、並びに、前記機器情報に基づいて、前記無線通信状態をシミュレートさせ、
前記拡張現実制御ステップにおいて、前記候補位置、前記移動装置及び前記構造体の前記配置位置、並びに、前記無線通信状態を前記拡張現実装置に表示させる、
請求項7に記載の処理方法。
【請求項9】
前記移動装置の位置情報は、UGVの移動範囲、前記UGVの大きさ、クレーンの移動範囲、前記クレーンの大きさ、台車の移動範囲及び前記台車の大きさのうち、少なくともいずれかを含む、
請求項7または8に記載の処理方法。
【請求項10】
作業場における無線通信機器、無線通信機器搭載の移動装置、無線通信機器非搭載の前記移動装置及び前記作業場の構造体の位置情報を取得させる位置情報取得ステップと、
各無線通信機器の通信状態を示す機器情報を取得させる機器情報取得ステップと、
取得した前記位置情報及び前記機器情報に基づいて、前記作業場の無線通信状態をシミュレートさせるシミュレートステップと、
前記位置情報に基づいた前記無線通信機器、前記移動装置及び前記構造体の配置位置、並びに、シミュレートされた前記無線通信状態を拡張現実装置に重畳させて表示させる制御を行わせる拡張現実制御ステップと、
をコンピュータに実行させる処理プログラム
であって、
シミュレートされた前記無線通信状態に基づいて、前記無線通信状態を阻害する阻害要因を抽出させる阻害要因抽出ステップをさらに備え、
前記位置情報取得ステップにおいて、前記阻害要因の位置情報を取得させ、
前記シミュレートステップにおいて、無線の周波数または波長ごとにシミュレートさせ、
前記阻害要因抽出ステップにおいて、前記周波数または前記波長ごとに前記阻害要因を抽出させ、
前記位置情報取得ステップにおいて、前記周波数または前記波長ごとに前記阻害要因の位置情報を取得させ、
前記拡張現実制御ステップにおいて、前記周波数または前記波長ごとに区別して表示させ、阻害要因以外の前記無線通信機器、前記移動装置及び前記構造体を透過させて表示させる、
ことをコンピュータに実行させる処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理装置、処理システム、処理方法及び処理プログラムが格納された非一時的なコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、地理的に離れた場所に位置するユーザが現実世界のビューを可能にする視覚システムにおいて、無線通信信号の強度を現実世界のビューに表示させることが開示されている。
【0003】
特許文献2には、無線通信システムに新たな電子機器を追加した場合の無線通信状態をシミュレートするシステムが開示されている。
【0004】
特許文献3には、無線通信機器の設置位置をアイコンとして表示させる表示装置上において、ユーザがアイコンを移動させるシステムが開示されている。
【0005】
特許文献4には、宅内に無線通信システムを構築するために、ユーザから入力された間取りに一致する間取りデータを抽出し、ユーザへ提示する間取り検索システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2019-512769号公報
【文献】特開2016-116079号公報
【文献】特開2011-114415号公報
【文献】特開2003-162553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1~4のシステムでは、工場における生産工程を考慮して、無線通信状態を管理することが困難である。生産工程では、位置を移動する移動装置を用いる。そして、移動装置が、工場内の無線通信の阻害要因となり得る。
【0008】
無線通信の最適化を行うための関連するソフトウェアは、ある程度、無線通信を最適化することができるかもしれない。しかしながら、そのようなソフトウェアは、工場において、移動装置を用いる生産工程の影響を考慮することが困難である。工場においては、無線通信機器を配置する上で、移動装置を用いる生産工程の生産性を向上させる必要があるとともに、移動装置の移動による無線通信状態への影響を低減する必要がある。
【0009】
工場内では3Dの空間的配置が重要となるので、無線通信の最適化に用いられる2Dのヒートマップ表示では、表示し得ない情報が多く存在する。例えば、無線通信機器から放出される電波は、構造物(壁、機材等)により構成される3D空間内で干渉する。さらに、無線通信機器を搭載または非搭載の移動装置は、3D空間内を移動する。また、作業者の視界内に位置する障害物と、無線通信における障害物とは、必ずしも一致するとは限らない。このため、無線通信における障害物を作業者へ表示させる手法が所望されている。
【0010】
本開示の目的は、このような課題を解決するためになされたものであり、例えば、無線通信状態を拡張現実装置に表示させ、無線通信機器を適切な位置に配置することにより、無線通信状態を向上させることができる処理装置、処理システム、処理方法及び処理プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係る処理装置は、作業場における無線通信機器、無線通信機器搭載の移動装置、無線通信機器非搭載の前記移動装置、及び、前記作業場の構造体の位置情報を取得する位置情報取得手段と、各無線通信機器の通信状態を示す機器情報を取得する機器情報取得手段と、取得した前記位置情報及び前記機器情報に基づいて、前記作業場の無線通信状態をシミュレートするシミュレート手段と、前記位置情報に基づいた前記無線通信機器、前記移動装置及び前記構造体の配置位置、並びに、シミュレートされた前記無線通信状態を拡張現実装置に重畳させて表示させる制御を行う拡張現実制御手段と、を備える。
【0012】
また、本開示に係る処理システムは、作業場における無線通信機器、無線通信機器搭載の移動装置、無線通信機器非搭載の前記移動装置、及び、前記作業場の構造体の位置情報を記憶したデータベースと、各無線通信機器の通信状態を示す機器情報を管理する無線管理装置と、前記データベースから取得した前記位置情報及び前記無線管理装置から取得した前記機器情報に基づいて、前記作業場の無線通信状態をシミュレートする処理装置と、前記位置情報に基づいた前記無線通信機器、前記移動装置及び前記構造体の配置位置、並びに、シミュレートされた前記無線通信状態を重畳させて表示する拡張現実装置と、を備える。
【0013】
さらに、本開示に係る処理方法は、作業場における無線通信機器、無線通信機器搭載の移動装置、無線通信機器非搭載の前記移動装置及び前記作業場の構造体の位置情報を取得させる位置情報取得ステップと、各無線通信機器の通信状態を示す機器情報を取得させる機器情報取得ステップと、取得した前記位置情報及び前記機器情報に基づいて、前記作業場の無線通信状態をシミュレートさせるシミュレートステップと、前記位置情報に基づいた前記無線通信機器、前記移動装置及び前記構造体の配置位置、並びに、シミュレートされた前記無線通信状態を拡張現実装置に重畳させて表示させる制御を行わせる拡張現実制御ステップと、を備える。
【0014】
また、本開示に係る処理プログラムは、作業場における無線通信機器、無線通信機器搭載の移動装置、無線通信機器非搭載の前記移動装置及び前記作業場の構造体の位置情報を取得させる位置情報取得ステップと、各無線通信機器の通信状態を示す機器情報を取得させる機器情報取得ステップと、取得した前記位置情報及び前記機器情報に基づいて、前記作業場の無線通信状態をシミュレートさせるシミュレートステップと、前記位置情報に基づいた前記無線通信機器、前記移動装置及び前記構造体の配置位置、並びに、シミュレートされた前記無線通信状態を拡張現実装置に重畳させて表示させる制御を行わせる拡張現実制御ステップと、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、無線通信状態を向上させることができる処理装置、処理システム、処理方法及び処理プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態の概要に係る処理システムを例示した構成図である。
【
図2】実施形態の概要に係る処理装置を例示したブロック図である。
【
図3】実施形態の概要に係る処理方法を例示したフローチャート図である。
【
図4】実施形態1に係る処理システムを例示した構成図である。
【
図5】実施形態1に係るデータベースを説明するために例示した説明図である。
【
図6】実施形態1に係る処理装置を例示したブロック図である。
【
図7】実施形態1に係る拡張現実装置が表示する表示内容を例示した図である。
【
図8】実施形態1に係る拡張現実装置が表示する表示内容に対応した作業場を例示した図である。
【
図9】実施形態1に係る処理方法を例示したフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態について、図面を参照しながら説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0018】
(実施形態の概要)
本開示の実施形態の説明に先立って、本開示にかかる実施形態の概要について説明する。まず、実施形態の概要に係る<処理システム>を説明する。その後、実施形態の概要に係る<処理装置>及び<処理方法>を説明する。
【0019】
<処理システム>
図1は、実施形態の概要に係る処理システムを例示した構成図である。
図1に示すように、処理システム1は、処理装置10、データベース20、無線管理装置30及び拡張現実装置40を備えている。
【0020】
処理装置10は、データベース20から取得した作業場70における無線通信機器50、移動装置60及び作業場70の構造体80の位置情報、並びに、無線管理装置30から取得した機器情報に基づいて、作業場70の無線通信状態をシミュレートする。データベース20は、作業場70における無線通信機器50、無線通信機器搭載の移動装置60、無線通信機器非搭載の移動装置60、及び、作業場70の構造体80の位置情報を記憶する。無線管理装置30は、各無線通信機器50の通信状態を示す機器情報を管理する。拡張現実装置40は、無線通信機器50、移動装置60及び構造体80の位置情報に基づいた無線通信機器50、移動装置60及び構造体80の配置位置、並びに、シミュレートされた無線通信状態を重畳させて表示する。拡張現実装置40は、例えば、AR(Aumented Reality)グラス、スマートフォン・タブレット等のARデバイスである。
【0021】
<処理装置>
図2は、実施形態の概要に係る処理装置10を例示したブロック図である。
図2に示すように、処理装置10は、位置情報取得部11、機器情報取得部12、シミュレート部13及び拡張現実制御部14を備えている。位置情報取得部11、機器情報取得部12、シミュレート部13及び拡張現実制御部14は、それぞれ、位置情報取得手段、機器情報取得手段、シミュレート手段及び拡張現実制御手段としての機能を有している。
【0022】
位置情報取得部11は、作業場70における無線通信機器50、無線通信機器搭載の移動装置60、無線通信機器非搭載の移動装置60、及び、作業場70の構造体80の位置情報を取得する。位置情報取得部11は、例えば、データベース20から、これらの位置情報を取得する。機器情報取得部12は、各無線通信機器50の通信状態を示す機器情報を取得する。機器情報取得部12は、例えば、無線管理装置30から各無線通信機器50の機器情報を取得する。シミュレート部13は、取得した無線通信機器50、無線通信機器搭載の移動装置60、無線通信機器非搭載の移動装置60、及び、作業場70の構造体80の位置情報、並びに、取得した各無線通信機器50の機器情報に基づいて、作業場70の無線通信状態をシミュレートする。拡張現実制御部14は、無線通信機器50、移動装置60及び構造体80の位置情報に基づいた無線通信機器50、移動装置60及び構造体80の配置位置、並びに、シミュレートされた作業場70の無線通信状態を拡張現実装置40に重畳させて表示させる制御を行う。
【0023】
<処理方法>
図3は、実施形態の概要に係る処理方法を例示したフローチャート図である。
図3に示すように、本実施形態の処理方法は、位置情報取得ステップS11、機器情報取得ステップS12、シミュレートステップS13及び拡張現実制御ステップS14を備えている。
【0024】
図3のステップS11に示すように、位置情報取得ステップにおいて、作業場70における無線通信機器50、無線通信機器搭載の移動装置60、無線通信機器非搭載の移動装置60、及び、作業場70の構造体80の位置情報を取得させる。例えば、処理装置10の位置情報取得部11に、データベース20からこれらの位置情報を取得させる。
【0025】
次に、ステップS12に示すように、機器情報取得ステップにおいて、各無線通信機器50の通信状態を示す機器情報を取得させる。例えば、処理装置10の機器情報取得部12に、無線管理装置30から機器情報を取得させる。なお、ステップS11とステップS12の順序はこれに限らず、ステップS11において、機器情報取得ステップを行い、ステップS12において、位置情報取得ステップを行ってもよいし、位置情報取得ステップ及び機器情報取得ステップを並行して行ってもよい。
【0026】
次に、ステップS13に示すように、シミュレートステップにおいて、取得した無線通信機器50、無線通信機器搭載の移動装置60、無線通信機器非搭載の移動装置60、及び、作業場70の構造体80の位置情報、並びに、取得した各無線通信機器50の機器情報に基づいて、作業場の無線通信状態をシミュレートさせる。例えば、処理装置10のシミュレート部13に、取得した位置情報及び機器情報に基づいて、作業場70の無線通信状態をシミュレートさせる。
【0027】
次に、ステップS14に示すように、拡張現実制御ステップにおいて、無線通信機器50、移動装置60及び構造体80の位置情報に基づいた無線通信機器50、移動装置60及び構造体80の配置位置、並びに、シミュレートされた無線通信状態を拡張現実装置40に重畳させて表示させる制御を行わせる。例えば、処理装置10の拡張現実制御部14に、無線通信機器50、移動装置60及び構造体80の配置位置、並びに、無線通信状態を拡張現実装置40に表示させる制御を行わせる。このようにして、シミュレーションした無線通信状態を拡張現実装置40に表示させる。なお、上記処理方法を実行する処理プログラムをコンピュータにインストールし、コンピュータに処理方法を実行させてもよい。
【0028】
本実施形態の概要によれば、シミュレートした無線通信状態を拡張現実装置40に表示させることにより、工場等の作業場70内の無線通信状態を作業者に提示させることができる。よって、作業場70の無線通信状態を向上させることができる。
【0029】
(実施形態1)
次に、処理システム1の詳細を説明する。
図4は、実施形態1に係る処理システム1を例示した構成図である。
図4に示すように、処理システム1は、処理装置10、データベース20、無線管理装置30及び拡張現実装置40を備え、工場等の作業場70の無線通信状態に無線通信異常が発生した場合に、対処するように構成されている。図には、5つの無線通信機器50A~50Eが示されているが、無線通信機器50A~50Eの個数は限定しない。なお、無線通信機器50A~50Eを総称する場合に無線通信機器50と呼び、特定の無線通信機器50を指す場合に、符号を付する。
【0030】
無線管理装置30が管理する複数の無線通信機器50A~50Eのうち、無線通信機器50D及び50E間に無線通信異常が発生した場合に、処理装置10は、阻害要因を考慮した無線通信状態をシミュレートする。阻害要因は、例えば、無線通信機器搭載の移動装置60、無線通信機器非搭載の移動装置60及び作業場70の構造体80等である。拡張現実装置40は、シミュレートした無線通信状態に阻害要因の配置位置を重畳させて表示する。これにより、無線通信機器50の最適化を行う作業者は、作業場70の無線通信状態を目視でき、無線通信状態を容易に把握することができる。また、拡張現実装置40に阻害要因を強調表示させることにより、阻害要因を容易に把握することができる。
【0031】
処理装置10は、無線通信機器50Eの移動先の候補位置51a~51c及びその場合の無線通信状態を重畳させて拡張現実装置40に表示させる。これにより、作業者に阻害回避方法を提示することができる。また、候補位置ごとのシミュレート結果から作業者が移動先を選択する。作業者は、無線通信機器50Eの移動先の候補位置を、作業場70の生産効率を考慮して選択することができる。
【0032】
本実施形態の処理システム1の構成を、<データベース>、<無線管理装置>、<処理装置>及び<拡張現実装置>の順で説明し、その後、<処理方法>を説明する。
【0033】
<データベース>
図5は、実施形態1に係るデータベース20を説明するために例示した説明図である。
図4及び
図5に示すように、データベース20は、無線通信機器50の位置情報を記憶した無線通信機器データベース21と、阻害要因の位置情報を記憶した阻害要因データベース22と、を有している。
【0034】
無線通信機器データベース21は、無線通信機器50の位置情報を記憶する。無線通信機器50は、作業場70内に配置され、各無線通信機器50間、または、無線管理装置30との間で無線通信を行う。無線通信機器50は、無線ノード、無線中継器等、無線通信機能を有する機器を含む。無線通信機器50の位置情報は、例えば、無線通信機器50を作業場70内に配置する際に無線通信機器データベース21に登録される。位置情報は、作業場70内における座標、作業場70内を占める大きさ及び形状を含んでもよい。
【0035】
阻害要因データベース22は、無線通信を阻害する阻害要因の位置情報及び品目を記憶する。無線通信を阻害する阻害要因は、例えば、移動装置60及び作業場70に設置された各構造体80を含む。
【0036】
移動装置60は、作業場70内で移動する装置である。移動装置60は、無線通信機器50を搭載した無線通信機器搭載の移動装置60と、無線通信機器50を搭載しない無線通信機器非搭載の移動装置60とに分類される。無線通信機器搭載の移動装置60は、例えば、UGV及び無線操作される機器(ノイズ発生源)等である。無線通信機器非搭載の移動装置60は、例えば、クレーン及び台車等である。なお、移動装置60は、作業場70内で移動する装置であれば、UGV、クレーン、台車等に限らない。
【0037】
作業場70の構造体80は、例えば、作業場70を構成する壁及び作業員通路等の動線等である。阻害要因は、上記したものに限らない。阻害要因の位置情報は、作業場70内における座標、作業場70内を占める大きさ及び形状の他、移動装置60の移動範囲を含む。よって、移動装置60の位置情報は、UGVの移動範囲、UGVの大きさ、クレーンの移動範囲、クレーンの大きさ、台車の移動範囲及び台車の大きさのうち、少なくともいずれかを含む。
【0038】
このように、データベース20は、無線通信機器50、移動装置60及び構造体80の位置情報及び品目を記憶する。データベース20は、処理装置10からの要求に応じて、記憶した位置情報等を処理装置10に出力する。これにより、処理装置10は、無線回線で接続された阻害要因と、無線回線で接続されていない阻害要因とを動的なシミュレーションに取り込むことができる。また、データベース20は、処理装置10が処理した結果を記憶する。
【0039】
<無線管理装置>
図4に戻り、無線管理装置30は、作業場70における複数の無線通信機器50A~50Eを管理する。無線管理装置30は、複数の無線通信機器50と個別に無線回線を介して接続し、各無線通信機器50の通信状態を示す機器情報を取得する。機器情報は、各無線通信機器50の無線の強度、無線の方向、無線の周波数または波長等の情報を含む。
【0040】
また、無線管理装置30は、無線通信機器50における無線通信異常の発生を検出する。無線管理装置30は、各無線通信機器50から機器情報を得ている。よって、無線管理装置30は、どの無線通信機器50で無線通信異常が発生したかも検出することができる。例えば、無線管理装置30は、無線通信機器50A~50Cで正常疎通していることを検出する。一方、無線管理装置30は、無線通信機器50Dと無線通信機器50Eとの間に無線通信異常を検出する。無線管理装置30は、取得した機器情報を処理装置10に出力する。
【0041】
<処理装置>
図6は、実施形態1に係る処理装置10を例示したブロック図である。
図6に示すように、処理装置10は、位置情報取得部11、機器情報取得部12、シミュレート部13及び拡張現実制御部14に加えて、候補位置抽出部15、阻害要因抽出部16及び制御部17を有してもよい。候補位置抽出部15、阻害要因抽出部16及び制御部17は、それぞれ、候補位置抽出手段、阻害要因抽出手段及び制御手段としての機能を有している。
【0042】
位置情報取得部11が、データベース20から無線通信機器50及び阻害要因の位置情報を取得することは、実施形態の概要と同様である。阻害要因は、無線通信機器搭載の移動装置60、無線通信機器非搭載の移動装置60及び作業場70の構造体80を含む。
【0043】
機器情報取得部12は、無線管理装置30から、各無線通信機器50の通信状態を示す機器情報に加えて、無線通信異常の発生及び無線通信異常を有する無線通信機器50の機器情報を取得する。
【0044】
シミュレート部13は、取得した無線通信機器50、移動装置60及び構造体80の位置情報、並びに、取得した各無線通信機器50の機器情報に基づいて、作業場70の無線通信状態をシミュレートする。取得した機器情報に、無線通信異常の発生及び無線通信異常を有する無線通信機器50の機器情報が含まれている場合には、シミュレート部13は、そのような機器情報を含めて作業場70の無線通信状態をシミュレートする。
【0045】
また、無線通信機器50が使用する無線の周波数または波長が無線通信機器50ごとに異なる場合には、シミュレート部13は、無線の周波数または波長ごとに無線通信状態をシミュレートしてもよい。無線の周波数または波長を、周波数等と呼ぶ。
【0046】
拡張現実制御部14は、無線通信機器50、移動装置60及び構造体80の位置情報に基づいた無線通信機器50、移動装置60及び構造体80の配置位置、並びに、シミュレートされた作業場70の無線通信状態を、拡張現実装置40に重畳させて表示させる制御を行う。
【0047】
シミュレート部13が無線通信異常の発生及び無線通信異常を有する無線通信機器50の機器情報を含めてシミュレートした場合には、拡張現実制御部14は、無線通信異常を有する無線通信機器50の配置位置及び無線通信異常の発生を含む無線通信状態を拡張現実装置40に表示させる。また、シミュレート部13が周波数等ごとに無線通信状態をシミュレートした場合には、拡張現実制御部14は、周波数等ごとに区別して無線通信状態を表示させる。
【0048】
機器情報取得部12が無線通信機器50から無線通信異常の発生及び無線通信異常を有する無線通信機器50の機器情報を取得した場合には、候補位置抽出部15は、シミュレートされた無線通信状態に基づいて、無線通信機器50の移動先の候補となる候補位置を抽出する。
【0049】
例えば、候補位置抽出部15は、作業場70において、無線の強度が大きい位置を候補位置として抽出してもよい。例えば、候補位置抽出部15は、無線通信異常を有する無線通信機器50Eの近傍のうち、無線の強度が大きい位置を抽出してもよいし、予め設定された無線通信機器50の複数の配置可能位置の中から、無線の強度、無線通信機器50Eからの距離等に基づいて候補位置を抽出してもよい。候補位置抽出部15は、複数の候補位置を抽出してもよい。
【0050】
候補位置抽出部15が候補位置を抽出した場合には、シミュレート部13は、抽出した無線通信機器50の候補位置、移動装置60及び構造体80の配置位置、並びに、機器情報に基づいて、作業場70の無線通信状態をシミュレートする。そして、拡張現実制御部14は、抽出した無線通信機器50の候補位置、移動装置60及び構造体80の配置位置、並びに、シミュレートされた無線通信状態を拡張現実装置40に表示させる。
【0051】
阻害要因抽出部16は、シミュレートされた無線通信状態に基づいて、作業場70の無線通信状態を阻害する阻害要因を抽出する。例えば、阻害要因抽出部16は、無線通信機器50Eに無線通信異常を引き起こす阻害要因として、無線通信機器50Eの近傍の移動装置60及び構造体80を抽出する。また、例えば、阻害要因抽出部16は、無線通信機器50Dと無線通信機器50Eとの間に無線通信異常を引き起こす阻害要因として、無線通信機器50Dと無線通信機器50Eとの間に配置された移動装置60及び構造体80を抽出する。
【0052】
抽出された阻害要因がデータベース20に記憶されていない場合には、位置情報取得部11は、抽出された阻害要因の位置情報を取得する。そして、位置情報取得部11は、データベース20に当該阻害要因を登録する。また、シミュレート部13が周波数等ごとに無線通信状態をシミュレートした場合には、阻害要因抽出部16は、周波数等ごとに阻害要因を抽出する。そして、位置情報取得部11は、周波数等ごとに阻害要因の位置情報を取得する。拡張現実制御部14は、周波数等ごとに区別して無線通信状態を拡張現実装置40に表示させる。その場合には、拡張現実制御部14は、周波数等ごとに、阻害要因以外の無線通信機器50、移動装置60及び構造体80を透過させて表示させてもよい。
【0053】
処理装置10は、例えば、コンピュータであり、制御部17は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサである。制御部17は、制御処理及び演算処理等を行う演算装置としての機能を有する。制御部17は、位置情報取得部11、機器情報取得部12、シミュレート部13、拡張現実制御部14、候補位置抽出部15及び阻害要因抽出部16等の各構成要素の動作を制御する。
【0054】
処理装置10は、図示しない記憶部、通信部及びインタフェース部を有してもよい。記憶部は、例えば、メモリ又はハードディスク等の記憶装置を有してもよい。記憶装置は、例えば、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)等である。記憶部は、制御部17によって実行される制御プログラム及び演算プログラム等を記憶するための機能を有する。また、記憶部は、処理データ等を一時的に記憶するための機能を有する。通信部は、他の装置と有線又は無線のネットワーク等を介して通信を行うために必要な処理を行う。通信部は、通信ポート、ルータ、ファイアウォール等を含み得る。インタフェース部は、例えばユーザインタフェース(User Interface)である。インタフェース部は、キーボード、タッチパネル又はマウス等の入力装置と、ディスプレイ又はスピーカ等の出力装置とを有する。インタフェース部は、ユーザ(オペレータ等)によるデータの入力の操作を受け付け、ユーザに対して情報を出力する。制御部17、記憶部、通信部及びインタフェース部は、データバスなどを介して相互に接続されている。
【0055】
処理装置10の各構成要素は、例えば、制御部17の制御によって、プログラムを実行させることによって実現できる。より具体的には、各構成要素は、記憶部に格納されたプログラムを、制御部17が実行することによって実現され得る。また、必要なプログラムを任意の不揮発性記録媒体に記録しておき、必要に応じてインストールすることで、各構成要素を実現するようにしてもよい。また、各構成要素は、プログラムによるソフトウェアで実現することに限ることなく、ハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアのうちのいずれかの組み合わせ等により実現してもよい。また、各構成要素は、例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)又はマイコン等の、ユーザがプログラミング可能な集積回路を用いて実現してもよい。この場合、この集積回路を用いて、上記の各構成要素から構成されるプログラムを実現してもよい。
【0056】
<拡張現実装置>
図7は、実施形態1に係る拡張現実装置40が表示する表示内容を例示した図である。
図8は、実施形態1に係る拡張現実装置40が表示する表示内容に対応した作業場70を例示した図である。
【0057】
図7及び
図8に示すように、作業場70には、無線通信機器50D及び50E、並びに、阻害要因が配置されている。阻害要因は、例えば、クレーン、壁、機材である。クレーンは、例えば、無線通信機器非搭載の移動装置60である。壁は、作業場70の構造体80である。機材は、作業場70の構造体80である。なお、機材は、無線通信機器搭載の移動装置60でもよいし、無線通信機器50でもよい。拡張現実装置40は、移動装置60の移動範囲61も表示する。
【0058】
無線通信機器50Dと無線通信機器50Eとの間で無線通信異常が発生している。無線通信機器50Eの移動先として、候補位置51a及び候補位置51bが抽出されている。作業者から見て、無線通信機器50E及び候補位置51bは、壁よりも手前に配置されている。候補位置51a、クレーン、機材及び無線通信機器50Dは、壁よりも向こう側に配置されている。
【0059】
拡張現実装置40は、処理装置10の拡張現実制御部14の制御により、無線通信機器50D及び50Eの配置位置、無線通信機器50Eの候補位置51a及び51b、移動装置60及び構造体80の配置位置、並びに、シミュレートされた無線通信状態を重畳させて表示する。処理装置10において、シミュレート部13が周波数等ごとにシミュレーションし、阻害要因抽出部16が周波数等ごとに阻害要因を抽出し、位置情報取得部11が周波数等ごとに阻害要因の位置情報を取得してもよい。その場合には、拡張現実装置40は、周波数等ごとに区別して表示する。例えば、移動装置60であるクレーンは、周波数Aに対して阻害要因であり、構造体80である機材は、周波数Bに対して阻害要因である。この場合には、拡張現実装置40は、クレーンと機材の色を区別して表示する。
【0060】
また、拡張現実装置40は、阻害要因以外の無線通信機器50、移動装置60及び構造体80を透過させて表示する。例えば、作業場70の構造体80の壁は、作業者から見て視線を遮るが、阻害要因でない。よって、拡張現実装置40は、阻害要因以外の構造体80である壁を透過させて表示する。また、壁は、無線通信機器50Dの阻害要因でない場合には、作業者から見て壁の向こう側に配置された無線通信機器50Dを透過させて表示する。
【0061】
<処理方法>
次に、実施形態1に係る処理方法を説明する。
図9は、実施形態1に係る処理方法を例示したフローチャート図である。
【0062】
図9のステップS21に示すように、無線通信異常の発生情報を取得する。例えば、機器情報取得部12は、無線通信機器50の無線通信異常を検出した無線管理装置30から無線通信異常の発生情報を取得する。
【0063】
次に、ステップS22に示すように、無線通信異常の発生時の無線通信状態を拡張現実装置40に表示させる。例えば、拡張現実制御部14は、無線通信異常の発生時の無線通信状態を拡張現実装置40に表示させる。なお、拡張現実制御部14は、無線通信異常の発生直前の無線通信状態を表示させてもよい。
【0064】
次に、ステップS23に示すように、無線通信異常を発生させた無線通信機器50の周辺の無線通信状態をシミュレートする。例えば、シミュレート部13は、無線通信異常を発生させた無線通信機器50を含めた位置情報及び機器情報に基づいて、無線通信状態をシミュレートする。
【0065】
次に、ステップS24に示すように、拡張現実制御部14は、拡張現実装置40にシミュレートした無線通信状態を表示させる。
【0066】
次に、ステップS25に示すように、無線通信異常を発生した無線通信機器50の移動先の候補位置を抽出する。例えば、候補位置抽出部15は、シミュレートされた無線通信状態に基づいて、無線通信機器の移動先として、複数の候補位置を抽出する。このように、本実施形態では、シミュレートされた無線通信状態に基づいて、無線通信機器50の移動先の候補となる候補位置を抽出させる候補位置抽出ステップをさらに備える。そして、機器情報取得ステップにおいて、機器情報取得部12に無線通信異常の機器情報を取得させる。
【0067】
次に、ステップS26に示すように、データベース20に登録済みでない阻害要因があるか確認する。ステップS26において、データベース20に登録済みでない阻害要因がある場合には、ステップS27に示すように、阻害要因をデータベース20に追加登録する。このように、本実施形態では、シミュレートされた無線状態に基づいて、無線通信状態を阻害する阻害要因を抽出させる阻害要因抽出ステップをさらに備える。そして、位置情報取得ステップにおいて、位置情報取得部11に阻害要因の位置情報を取得させる。
【0068】
一方、ステップS26において、データベース20に登録済みでない阻害要因がない場合には、ステップS28に示すように、拡張現実制御部14は、各候補位置を拡張現実装置40に表示させる。これに対して、作業者は、複数の候補位置から移動先を選択する。作業者は、複数の候補位置から生産工程・作業工程等への影響を考慮して候補位置を選択する。
【0069】
次に、ステップS29に示すように、シミュレート部13は、選択された候補位置へ無線通信機器50を移動した後の無線通信状態をシミュレートする。例えば、移動後の無線通信機器50同士の疎通をシミュレートする。このように、本実施形態では、無線通信機器50の候補位置、移動装置60及び構造体80の配置位置、並びに、機器情報に基づいて、無線通信状態をシミュレートさせる。
【0070】
次に、ステップS30に示すように、移動先を選択された候補位置に確定するか作業者に判断させる。例えば、拡張現実制御部14は、選択された候補位置に移動後のシミュレート結果を拡張現実装置40に表示させて作業者に判断させる。すわわち、無線通信機器50の候補位置、移動装置60及び構造体80の配置位置、並びに、無線通信状態を拡張現実装置40に表示させて判断させる。ステップS30において、移動先を、選択された候補位置に確定しない場合には、ステップS29に戻る。そして、シミュレート部13は、他の候補位置へ移動後の無線通信状態をシミュレートする。
【0071】
一方、ステップS30において、移動先を、選択された候補位置に確定した場合には、ステップS31に示すように、無線通信機器50を移動させる。
【0072】
次に、ステップS32に示すように、移動後の無縁通信状態を確認する。そして、ステップS33に示すように、機器情報取得部12は、新たな無線通信異常があるか判断する。ステップS33において、新たな無線通信異常がある場合には、ステップS21に戻る。ステップS33において、新たな無線通信異常がない場合には、処理を終了する。
【0073】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態では、移動装置60及び複数の無線通信機器50が配置された作業場70の無線通信環境及び無線通信異常を含む無線通信状態をシミュレーションする。そして、処理システム1は、シミュレーションした無線通信状態を拡張現実装置40に表示させる。よって、作業場70の無線通信機器50の適切な配置位置を作業者に提案することができる。
【0074】
また、処理システム1は、無線通信異常の機器情報を取得した場合には、無線通信機器50の移動先の候補となる候補位置を抽出する。そして、無線通信機器50の候補位置、阻害要因の位置情報等に基づいて作業場70の無線通信状態をシミュレートする。シミュレートした結果を拡張現実装置40によって作業者に表示させるので、作業者は適切な移動先に無線通信機器50を移動させることができる。よって、作業場70の無線通信状態を向上させることができる。
【0075】
また、阻害要因を周波数等ごとに拡張現実装置40に表示させるので、周波数等ごとの無線通信状態を把握することができ、無線通信状態を周波数等ごとに向上させることができる。
【0076】
このように、本実施形態は、無線通信機器50の無線通信状態を可視化し、作業者に対して無線通信状態を改善することが予想される無線通信機器50の候補位置をシミュレーションすることができる。また、本実施形態は、作業者に対して拡張現実装置40を通して、移動先の候補位置と移動後の無線通信状態を提示するので、移動先の選択を支援することができる。
【0077】
よって、本実施形態では、インタラクティブな無線通信状態のシミュレーションと拡張現実装置40を用いた3次元空間への重畳による視覚的な提示によって、無線通信状態の最適化及び工場内での生産性の向上の2点を両立した工場内無線通信状態を向上させることができる。
【0078】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係る処理システムを説明する。前述の実施形態では、工場等の作業場70における処理システム1、処理装置10及び処理方法を説明したが、これらの処理システム1等は、工場等の作業場70に限定されない。例えば、処理システム1等は、家庭の宅内を作業場70として、家庭用の無線通信機器50にも適用することができる。宅内には、無線通信状態の阻害要因として、人型ロボット、掃除用ロボットが配置される場合がある。その場合には、それらを無線通信機器搭載の移動装置60としてシミュレーションの対象とする。これにより、処理システム1は、宅内の無線通信状態を向上させることができる。なお、宅内の阻害要因は、人型ロボット、掃除用ロボットに限定されない。
【0079】
また、処理システム1等は、複数の移動通信端末が利用する移動通信アンテナの設置場所にも適用することができる。移動通信アンテナでは、相互に他の移動通信端末が無線通信状態の阻害要因となり得る。よって、他の移動通信端末を阻害要因としてシミュレーションの対象とする。各移動通信端末が使用する周波数は異なる場合があるので、拡張現実装置40は、周波数ごとに区別して表示することができる。
【0080】
以上、実施形態1及び2を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上記実施形態1及び2に限られたものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることが可能である。例えば、実施形態1及び2の各構成を組み合わせた実施形態も、技術的思想の範囲に含まれる。
【0081】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0082】
(付記1)
作業場における無線通信機器、無線通信機器搭載の移動装置、無線通信機器非搭載の前記移動装置、及び、前記作業場の構造体の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
各無線通信機器の通信状態を示す機器情報を取得する機器情報取得手段と、
取得した前記位置情報及び前記機器情報に基づいて、前記作業場の無線通信状態をシミュレートするシミュレート手段と、
前記位置情報に基づいた前記無線通信機器、前記移動装置及び前記構造体の配置位置、並びに、シミュレートされた前記無線通信状態を拡張現実装置に重畳させて表示させる制御を行う拡張現実制御手段と、
を備えた処理装置。
(付記2)
シミュレートされた前記無線通信状態に基づいて、前記無線通信機器の移動先の候補となる候補位置を抽出する候補位置抽出手段をさらに備え、
前記シミュレート手段は、前記候補位置、前記移動装置及び前記構造体の前記配置位置、並びに、前記機器情報に基づいて、前記無線通信状態をシミュレートし、
前記拡張現実制御手段は、前記候補位置、前記移動装置及び前記構造体の前記配置位置、並びに、前記無線通信状態を前記拡張現実装置に表示させる、
付記1に記載の処理装置。
(付記3)
シミュレートされた前記無線通信状態に基づいて、前記無線通信状態を阻害する阻害要因を抽出する阻害要因抽出手段をさらに備え、
前記位置情報取得手段は、前記阻害要因の位置情報を取得する、
付記1または2に記載の処理装置。
(付記4)
前記シミュレート手段は、無線の周波数または波長ごとにシミュレートし、
前記拡張現実制御手段は、前記周波数または前記波長ごとに区別して表示させる、
付記1~3のいずれか1項に記載の処理装置。
(付記5)
前記シミュレート手段は、無線の周波数または波長ごとにシミュレートし、
前記阻害要因抽出手段は、前記周波数または前記波長ごとに前記阻害要因を抽出し、
前記位置情報取得手段は、前記周波数または前記波長ごとに前記阻害要因の位置情報を取得し、
前記拡張現実制御手段は、前記周波数または前記波長ごとに区別して表示させ、阻害要因以外の前記無線通信機器、前記移動装置及び前記構造体を透過させて表示させる、
付記3に記載の処理装置。
(付記6)
前記移動装置の位置情報は、UGVの移動範囲、前記UGVの大きさ、クレーンの移動範囲、前記クレーンの大きさ、台車の移動範囲及び前記台車の大きさのうち、少なくともいずれかを含む、
付記1~5のいずれか1項に記載の処理装置。
(付記7)
作業場における無線通信機器、無線通信機器搭載の移動装置、無線通信機器非搭載の前記移動装置、及び、前記作業場の構造体の位置情報を記憶したデータベースと、
各無線通信機器の通信状態を示す機器情報を管理する無線管理装置と、
前記データベースから取得した前記位置情報及び前記無線管理装置から取得した前記機器情報に基づいて、前記作業場の無線通信状態をシミュレートする処理装置と、
前記位置情報に基づいた前記無線通信機器、前記移動装置及び前記構造体の配置位置、並びに、シミュレートされた前記無線通信状態を重畳させて表示する拡張現実装置と、
を備えた処理システム。
(付記8)
前記処理装置は、
前記シミュレートされた前記無線通信状態に基づいて、前記無線通信機器の移動先の候補となる候補位置を抽出し、
前記候補位置、前記移動装置及び前記構造体の前記配置位置、並びに、前記機器情報に基づいて、前記無線通信状態をシミュレートし、
前記拡張現実装置は、
前記候補位置、前記移動装置及び前記構造体の前記配置位置、並びに、前記無線通信状態を表示する、
付記7に記載の処理システム。
(付記9)
前記処理装置は、
シミュレートした前記無線通信状態に基づいて、前記無線通信状態を阻害する阻害要因を抽出し、
前記阻害要因の位置情報を取得する、
付記7または8に記載の処理システム。
(付記10)
前記処理装置は、無線の周波数または波長ごとにシミュレーションし、
前記拡張現実装置は、前記周波数または前記波長ごとに区別して表示する、
付記7~9のいずれか1項に記載の処理システム。
(付記11)
前記処理装置は、
無線の周波数または波長ごとにシミュレーションし、
前記周波数または前記波長ごとに前記阻害要因を抽出し、
前記周波数または前記波長ごとに前記阻害要因の位置情報を取得し、
前記拡張現実装置は、
前記周波数または前記波長ごとに区別して表示し、阻害要因以外の前記無線通信機器、前記移動装置及び前記構造体を透過させて表示する、
付記9に記載の処理システム。
(付記12)
前記移動装置の位置情報は、UGVの移動範囲、前記UGVの大きさ、クレーンの移動範囲、前記クレーンの大きさ、台車の移動範囲及び前記台車の大きさのうち、少なくともいずれかを含む、
付記7~11のいずれか1項に記載の処理システム。
(付記13)
作業場における無線通信機器、無線通信機器搭載の移動装置、無線通信機器非搭載の前記移動装置及び前記作業場の構造体の位置情報を取得させる位置情報取得ステップと、
各無線通信機器の通信状態を示す機器情報を取得させる機器情報取得ステップと、
取得した前記位置情報及び前記機器情報に基づいて、前記作業場の無線通信状態をシミュレートさせるシミュレートステップと、
前記位置情報に基づいた前記無線通信機器、前記移動装置及び前記構造体の配置位置、並びに、シミュレートされた前記無線通信状態を拡張現実装置に重畳させて表示させる制御を行わせる拡張現実制御ステップと、
を備えた処理方法。
(付記14)
シミュレートされた前記無線通信状態に基づいて、前記無線通信機器の移動先の候補となる候補位置を抽出させる候補位置抽出ステップをさらに備え、
前記シミュレートステップにおいて、前記候補位置、前記移動装置及び前記構造体の前記配置位置、並びに、前記機器情報に基づいて、前記無線通信状態をシミュレートさせ、
前記拡張現実制御ステップにおいて、前記候補位置、前記移動装置及び前記構造体の前記配置位置、並びに、前記無線通信状態を前記拡張現実装置に表示させる、
付記13に記載の処理方法。
(付記15)
シミュレートされた前記無線通信状態に基づいて、前記無線通信状態を阻害する阻害要因を抽出させる阻害要因抽出ステップをさらに備え、
前記位置情報取得ステップにおいて、前記阻害要因の位置情報を取得させる、
付記13または14に記載の処理方法。
(付記16)
前記シミュレートステップにおいて、無線の周波数または波長ごとにシミュレートさせ、
前記拡張現実制御ステップにおいて、前記周波数または前記波長ごとに区別して表示させる、
付記13~15のいずれか1項に記載の処理方法。
(付記17)
前記シミュレートステップにおいて、無線の周波数または波長ごとにシミュレートさせ、
前記阻害要因抽出ステップにおいて、前記周波数または前記波長ごとに前記阻害要因を抽出させ、
前記位置情報取得ステップにおいて、前記周波数または前記波長ごとに前記阻害要因の位置情報を取得させ、
前記拡張現実制御ステップにおいて、前記周波数または前記波長ごとに区別して表示させ、阻害要因以外の前記無線通信機器、前記移動装置及び前記構造体を透過させて表示させる、
付記15に記載の処理方法。
(付記18)
前記移動装置の位置情報は、UGVの移動範囲、前記UGVの大きさ、クレーンの移動範囲、前記クレーンの大きさ、台車の移動範囲及び前記台車の大きさのうち、少なくともいずれかを含む、
付記13~17のいずれか1項に記載の処理方法。
(付記19)
作業場における無線通信機器、無線通信機器搭載の移動装置、無線通信機器非搭載の前記移動装置及び前記作業場の構造体の位置情報を取得させる位置情報取得ステップと、
各無線通信機器の通信状態を示す機器情報を取得させる機器情報取得ステップと、
取得した前記位置情報及び前記機器情報に基づいて、前記作業場の無線通信状態をシミュレートさせるシミュレートステップと、
前記位置情報に基づいた前記無線通信機器、前記移動装置及び前記構造体の配置位置、並びに、シミュレートされた前記無線通信状態を拡張現実装置に重畳させて表示させる制御を行わせる拡張現実制御ステップと、
をコンピュータに実行させる処理プログラムが格納された非一時的なコンピュータ可読媒体。
(付記20)
シミュレートされた前記無線通信状態に基づいて、前記無線通信機器の移動先の候補となる候補位置を抽出させる候補位置抽出ステップをさらに備え、
前記シミュレートステップにおいて、前記候補位置、前記移動装置及び前記構造体の前記配置位置、並びに、前記機器情報に基づいて、前記無線通信状態をシミュレートさせ、
前記拡張現実制御ステップにおいて、前記候補位置、前記移動装置及び前記構造体の前記配置位置、並びに、前記無線通信状態を前記拡張現実装置に表示させる、
ことをコンピュータに実行させる請求項19に記載の処理プログラムが格納された非一時的なコンピュータ可読媒体。
(請求項21)
シミュレートされた前記無線通信状態に基づいて、前記無線通信状態を阻害する阻害要因を抽出させる阻害要因抽出ステップをさらに備え、
前記位置情報取得ステップにおいて、前記阻害要因の位置情報を取得させる、
ことをコンピュータに実行させる請求項19または20に記載の処理プログラムが格納された非一時的なコンピュータ可読媒体。
(付記22)
前記シミュレートステップにおいて、無線の周波数または波長ごとにシミュレートさせ、
前記拡張現実制御ステップにおいて、前記周波数または前記波長ごとに区別して表示させる、
ことをコンピュータに実行させる付記19~21のいずれか1項に記載の処理プログラムが格納された非一時的なコンピュータ可読媒体。
(付記23)
前記シミュレートステップにおいて、無線の周波数または波長ごとにシミュレートさせ、
前記阻害要因抽出ステップにおいて、前記周波数または前記波長ごとに前記阻害要因を抽出させ、
前記位置情報取得ステップにおいて、前記周波数または前記波長ごとに前記阻害要因の位置情報を取得させ、
前記拡張現実制御ステップにおいて、前記周波数または前記波長ごとに区別して表示させ、阻害要因以外の前記無線通信機器、前記移動装置及び前記構造体を透過させて表示させる、
ことをコンピュータに実行させる付記21に記載の処理プログラムが格納された非一時的なコンピュータ可読媒体。
(付記24)
前記移動装置の位置情報は、UGVの移動範囲、前記UGVの大きさ、クレーンの移動範囲、前記クレーンの大きさ、台車の移動範囲及び前記台車の大きさのうち、少なくともいずれかを含む、
付記19~23のいずれか1項に記載の処理プログラムが格納された非一時的なコンピュータ可読媒体。
【0083】
上述の例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【符号の説明】
【0084】
1 処理システム
10 処理装置
11 位置情報取得部
12 機器情報取得部
13 シミュレート部
14 拡張現実制御部
15 候補位置抽出部
16 阻害要因抽出部
17 制御部
20 データベース
21 無線通信機器データベース
22 阻害要因データベース
30 無線管理装置
40 拡張現実装置
50、50A、50B、50C、50D、50E 無線通信機器
51a、51b、51c 候補位置
60 移動装置
61 移動範囲
70 作業場
80 構造体