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7586309ポリウレタン樹脂組成物、硬化物、人工皮革、合成皮革、および皮革用表面処理剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】ポリウレタン樹脂組成物、硬化物、人工皮革、合成皮革、および皮革用表面処理剤
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/65 20060101AFI20241112BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20241112BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20241112BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20241112BHJP
   D06N 3/14 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C08G18/65 023
C08G18/08 019
C08G18/10
C08G18/44
D06N3/14 102
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023522724
(86)(22)【出願日】2022-05-19
(86)【国際出願番号】 JP2022020865
(87)【国際公開番号】W WO2022244850
(87)【国際公開日】2022-11-24
【審査請求日】2024-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2021084324
(32)【優先日】2021-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021099841
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022059722
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100211018
【弁理士】
【氏名又は名称】財部 俊正
(74)【代理人】
【識別番号】100211100
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 直樹
(72)【発明者】
【氏名】本田 康平
(72)【発明者】
【氏名】安在 浩直
(72)【発明者】
【氏名】重安 真治
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/039395(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/039396(WO,A1)
【文献】特開2021-070799(JP,A)
【文献】特開2019-006936(JP,A)
【文献】特開2019-131766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
D06N 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)と、鎖延長剤(G)と、の反応生成物と、
中和剤(F)と、を含むポリウレタン樹脂組成物であって、
前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)が、
平均水酸基官能基数が2を超えるポリカーボネートポリオール(B)を含むポリオール(A)と、
有機酸(C)と、
ポリイソシアネート(D)と、の反応生成物を含み、
前記ポリウレタン樹脂組成物中、ウレア基の全含有量が、前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)の質量と、前記鎖延長剤(G)の質量と、の総和に対して、0.01~0.80mmol/gであり、
前記ポリカーボネートポリオール(B)の下記式で算出されるみなし平均官能基数が2.0~3.90であり、
みなし平均官能基数=(ポリカーボネートポリオール(B)の平均水酸基価(mgKOH/g)×テトラヒドロフランを移動相としたGPC測定よってポリプロピレングリコール検量線から算出されるポリカーボネートポリオール(B)の数平均分子量(g/mol))/(56.11(KOHg/mol)×1000)
前記ポリカーボネートポリオール(B)の含有量が、前記ポリオール(A)の含有量の総和に対して、10.0質量%以上であり、
前記ポリカーボネートポリオール(B)が、ジオール(b-1)と、水酸基官能基数3以上の多価アルコール(b-2)と、炭酸エステル(b-3)とのエステル交換反応物であるポリカーボネートポリオール(α)、又は、ジオール(b-1)と、水酸基官能基数3以上の多価アルコール(b-2)と、ポリカーボネートポリオール(b-4)とのエステル交換反応物であるポリカーボネートポリオール(β)を含み、
前記多価アルコール(b-2)が、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、および、ソルビトール、からなる群より選択される1種以上であり、
前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)および前記鎖延長剤(G)に対する架橋密度が、0.02~0.47であり、
前記鎖延長剤(G)が、1個以上の一級または二級アミノ基を有するアミン化合物を含み、
前記ポリウレタン樹脂組成物中、前記アミン化合物由来のウレア基の含有量が、前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)の質量と、前記鎖延長剤(G)の質量と、の総和に対して0mmol/g超0.400mmol/g以下である、ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂組成物中、前記アミン化合物由来のウレア基の含有量が、前記ウレア基の全含有量に対して、0mol%超95mol%以下である、請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記鎖延長剤(G)が、水を含み、
前記ポリウレタン樹脂組成物中、前記水由来のウレア基の含有量が、前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)の質量と、前記鎖延長剤(G)の質量と、の総和に対して、0mmol/g超0.80mmol/g以下である、請求項1または2に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリオール(A)の平均水酸基価が、30~150mgKOH/gである、請求項1または2に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリカーボネートポリオール(B)の水酸基価が、40~500mgKOH/gである、請求項1または2に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリカーボネートポリオール(B)の数平均分子量が、400~4,000g/molである、請求項1または2に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項7】
前記有機酸(C)が、ジメチロール脂肪酸である、請求項1または2に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項8】
前記中和剤(F)が、塩基性中和剤である、請求項1または2に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項9】
前記ポリオール(A)が、ジオール(a-1)を含む、請求項1または2に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項10】
一液型である、請求項1または2に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項11】
硬化剤(X)をさらに含有する、請求項1または2に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項12】
二液型である、請求項11に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項13】
イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)と、鎖延長剤(G)と、の反応生成物を含むポリウレタン樹脂組成物の硬化物であって、
前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)が、
平均水酸基官能基数が2を超えるポリカーボネートポリオール(B)を含むポリオール(A)と、
有機酸(C)と、
ポリイソシアネート(D)と、の反応生成物を含み、
前記ポリウレタン樹脂組成物中、ウレア基の全含有量が、前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)の質量と、前記鎖延長剤(G)の質量と、の総和に対して、0.01~0.80mmol/gであり、
前記ポリカーボネートポリオール(B)の下記式で算出されるみなし平均官能基数が2.0~3.90であり、
みなし平均官能基数=(ポリカーボネートポリオール(B)の平均水酸基価(mgKOH/g)×テトラヒドロフランを移動相としたGPC測定よってポリプロピレングリコール検量線から算出されるポリカーボネートポリオール(B)の数平均分子量(g/mol))/(56.11(KOHg/mol)×1000)
前記ポリカーボネートポリオール(B)の含有量が、前記ポリオール(A)の含有量の総和に対して、10.0質量%以上であり、
前記ポリカーボネートポリオール(B)が、ジオール(b-1)と、水酸基官能基数3以上の多価アルコール(b-2)と、炭酸エステル(b-3)とのエステル交換反応物であるポリカーボネートポリオール(α)、又は、ジオール(b-1)と、水酸基官能基数3以上の多価アルコール(b-2)と、ポリカーボネートポリオール(b-4)とのエステル交換反応物であるポリカーボネートポリオール(β)を含み、
前記多価アルコール(b-2)が、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、および、ソルビトール、からなる群より選択される1種以上であり、
前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)および前記鎖延長剤(G)に対する架橋密度が、0.02~0.47であり、
前記鎖延長剤(G)が、1個以上の一級または二級アミノ基を有するアミン化合物を含み、
前記ポリウレタン樹脂組成物中、前記アミン化合物由来のウレア基の含有量が、前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)の質量と、前記鎖延長剤(G)の質量と、の総和に対して0mmol/g超0.400mmol/g以下である、硬化物。
【請求項14】
請求項1または2に記載のポリウレタン樹脂組成物の硬化物を含む、人工皮革、または合成皮革。
【請求項15】
請求項1または2に記載のポリウレタン樹脂組成物の硬化物を含む、皮革用表面処理剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリウレタン樹脂組成物、硬化物、人工皮革、合成皮革、および皮革用表面処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂組成物は、耐加水分解性、耐熱性、耐磨耗性、耐薬品性等に有利なことから、人工皮革、合成皮革、天然皮革等に用いられている。
【0003】
ここで、特許文献1は、有機ジイソシアネート(a1)、カーボネート骨格を有する高分子ポリオール(a2)、およびカルボキシル基含有低分子グリコール(a3)を反応させて、カルボキシル基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)を製造し、これとノニオン性極性基含有ポリイソシアネート(B)を混合してから、系中のカルボキシル基を中和剤(C)にて中和させ、その後前記混合物を水に乳化・水による鎖延長反応させる、水性一液コーティング剤用ポリウレタンエマルジョンの製造方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-247897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にかかるポリウレタンエマルジョンは、溶剤系ポリウレタン樹脂と比較してバランスの取れた機械物性が得られず、100%モジュラスの改善が求められていた。また、特許文献1にかかるポリウレタンエマルジョンは、高温環境下にさらされた際の形状安定性の点で改善の余地があった。
【0006】
そこで本開示の一態様は、100%モジュラスが低く、高い軟化温度を有する硬化物、および該硬化物を形成可能なポリウレタン樹脂組成物を提供することを目的とする。本開示の一態様は、上記ポリウレタン樹脂組成物の硬化物を含む、人工皮革または合成皮革、および皮革用表面処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の各態様は以下に示す実施形態を含む。
(1) イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)と、鎖延長剤(G)と、の反応生成物と、
中和剤(F)と、を含むポリウレタン樹脂組成物であって、
前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)が、
平均水酸基官能基数が2を超えるポリカーボネートポリオール(B)を含むポリオール(A)と、
有機酸(C)と、
ポリイソシアネート(D)と、の反応生成物を含み、
前記ポリウレタン樹脂組成物中、ウレア基の全含有量が、前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)の質量と、前記鎖延長剤(G)の質量と、の総和に対して、0.01~0.80mmol/gであり、
前記ポリカーボネートポリオール(B)のみなし平均官能基数が2.0~3.90である、ポリウレタン樹脂組成物。
(2) 前記鎖延長剤(G)が、
1個以上の一級または二級アミノ基を有するアミン化合物、および、
水、からなる群より選択される1種以上である、(1)に記載のポリウレタン樹脂組成物。
(3) 前記鎖延長剤(G)が、1個以上の一級または二級アミノ基を有するアミン化合物を含み、
前記ポリウレタン樹脂組成物中、前記アミン化合物由来のウレア基の含有量が、前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)の質量と、前記鎖延長剤(G)の質量と、の総和に対して0mmol/g超0.480mmol/g以下である、(1)または(2)に記載のポリウレタン樹脂組成物。
(4) 前記鎖延長剤(G)が、1個以上の一級または二級アミノ基を有するアミン化合物を含み、
前記ポリウレタン樹脂組成物中、前記アミン化合物由来のウレア基の含有量が、前記ウレア基の全含有量に対して、0mol%超95mol%以下である、(1)~(3)のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物。
(5) 前記鎖延長剤(G)が、水を含み、
前記ポリウレタン樹脂組成物中、前記水由来のウレア基の含有量が、前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)の質量と、前記鎖延長剤(G)の質量と、の総和に対して、0mmol/g超0.80mmol/g以下である、(1)~(4)のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物。
(6) 前記ポリカーボネートポリオール(B)の含有量が、前記ポリオール(A)の含有量の総和に対して、5.0質量%以上である、(1)~(5)のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物。
(7) 前記ポリオール(A)の平均水酸基価が、30~150mgKOH/gである、(1)~(6)のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物。
(8) 前記ポリカーボネートポリオール(B)が、
ジオール(b-1)と、多価アルコール(b-2)と、炭酸エステル(b-3)と、のエステル交換反応物を含む、または、
ジオール(b-1)と、多価アルコール(b-2)と、ポリカーボネートポリオール(b-4)と、のエステル交換反応物を含む、(1)~(7)のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物。
(9) 前記ポリカーボネートポリオール(B)の水酸基価が、40~500mgKOH/gである、(1)~(8)のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物。
(10) 前記ポリカーボネートポリオール(B)の数平均分子量が、400~4,000g/molである、(1)~(9)のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物。
(11) 前記有機酸(C)が、ジメチロール脂肪酸である、(1)~(10)のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂組成物。
(12) 前記中和剤(F)が、塩基性中和剤である、(1)~(11)のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物。
(13) 前記ポリオール(A)が、ジオール(a-1)を含む、(1)~(12)のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物。
(14) 一液型である、(1)~(13)のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物。
(15) 硬化剤(X)をさらに含有する、(1)~(13)のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物。
(16) 二液型である、(15)に記載のポリウレタン樹脂組成物。
(17) イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)と、鎖延長剤(G)と、の反応生成物を含むポリウレタン樹脂組成物の硬化物であって、
前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)が、
平均水酸基官能基数が2を超えるポリカーボネートポリオール(B)を含むポリオール(A)と、
有機酸(C)と、
ポリイソシアネート(D)と、の反応生成物を含み、
前記ポリウレタン樹脂組成物中、ウレア基の全含有量が、前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)の質量と、前記鎖延長剤(G)の質量と、の総和に対して、0.01~0.80mmol/gであり、
前記ポリカーボネートポリオール(B)のみなし平均官能基数が2.0~3.90である、硬化物。
(18) (1)~(17)のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物の硬化物を含む、人工皮革、または合成皮革。
(19) (1)~(17)のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物の硬化物を含む、皮革用表面処理剤。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、100%モジュラスが低く、高い軟化温度を有する硬化物、および該硬化物を形成可能なポリウレタン樹脂組成物を提供することができる。本開示の一態様によれば、上記ポリウレタン樹脂組成物の硬化物を含む人工皮革または合成皮革、および皮革用表面処理剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の各態様を実施するための例示的な実施形態についてさらに詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値または下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、個別に記載した上限値および下限値は任意に組み合わせ可能である。本明細書中、「硬化物」には、硬化膜の形態が含まれる。また、本明細書中、「硬化物」には、架橋等により硬化したもの、及び、溶媒が揮発して固化することにより硬化したもののいずれも含まれる。
【0011】
本開示の態様にかかるポリウレタン樹脂組成物は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)と、鎖延長剤(G)と、の反応生成物と、中和剤(F)と、を含む。イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)は、ポリオール(A)と、有機酸(C)と、ポリイソシアネート(D)と、の反応生成物を含む。ポリウレタン樹脂組成物中、ウレア基の全含有量は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)の質量と、鎖延長剤(G)の質量と、の総和に対して、0.01~0.80mmol/gであり、ポリカーボネートポリオール(B)のみなし平均官能基数が2.0~3.90である。本開示の態様にかかるポリウレタン樹脂組成物は、硬化剤をさらに含んでいてよい。
【0012】
以下、ポリウレタン樹脂組成物に含まれ得る成分について説明する。
【0013】
〔イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)〕
イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)は、ポリオール(A)と、有機酸(C)と、ポリイソシアネート(D)と、の反応生成物を含む。
【0014】
<ポリオール(A)>
ポリオール(A)は、平均水酸基官能基数が2を超えるポリカーボネートポリオール(B)を含む。ポリオール(A)は、ポリカーボネートポリオール(B)と、ポリカーボネートポリオール(B)とは異なるポリオール(B’)とを含んでいてよく、ポリカーボネートポリオール(B)のみを含んでいてもよい。
【0015】
(ポリカーボネートポリオール(B))
ポリカーボネートポリオール(B)としては例えば、以下の(α)~(β)のポリカーボネートポリオール、およびこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
(α) ジオール(b-1)と、多価アルコール(b-2)と、炭酸エステル(b-3)とのエステル交換反応物であるポリカーボネートポリオール(以下、「ポリカーボネートポリオール(α)」ともいう。)
(β) ジオール(b-1)と、多価アルコール(b-2)と、ポリカーボネートポリオール(b-4)とのエステル交換反応物であるポリカーボネートポリオール(以下、「ポリカーボネートポリオール(β)」ともいう。)
【0016】
ジオール(b-1)としては、例えば、脂肪族ジオールである、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ダイマー酸ジオールや、芳香族ジオールである、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール等、およびこれら任意の2種類の組み合わせが挙げられる。これらのうち、炭素数が2~9のジオールが好ましい。また、脂肪族ジオールが好ましく、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオールがより好ましい。これらは単独で用いても2種類以上併用してもよい。
【0017】
水酸基官能基数3以上の多価アルコール(b-2)としては、例えばトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール等、およびこれら任意の2種類の組み合わせが挙げられる。これらの中でもトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールが好ましい。
【0018】
炭酸エステル(b-3)としては、例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸メチルエチル、炭酸ジプロピル、炭酸ジブチル等のジアルキルカーボネート類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状アルキレンカーボネート類;ジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジアントリルカーボネート、ジフェナントリルカーボネート、ジインダニルカーボネート、テトラヒドロナフチルカーボネート等のジアリールカーボネート類;等、およびこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。入手のしやすさや重合反応の条件設定のしやすさの観点より、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジフェニル、炭酸ジブチル、エチレンカーボネートを用いることが好ましい。
【0019】
ポリカーボネートポリオール(b-4)は、水酸基官能基数が2以上のポリカーボネートポリオールであり、水酸基官能基数が2のポリカーボネートポリオール(b-4-1)(すなわち、ポリカーボネートジオール)であってもよく、水酸基官能基数が3以上のポリカーボネートポリオール(b-4-2)であってもよく、ポリカーボネートポリオール(b-4-1)およびポリカーボネートポリオール(b-4-2)から選択される2種以上の組み合わせであってもよい。
【0020】
ポリカーボネートポリオール(b-4-1)としては、例えば、例えば、炭酸エステル類と、ジオールとの反応で得られるものが挙げられる。
【0021】
炭酸エステル類としては、上記の炭酸エステル類の説明で挙げたものと同じものが挙げられる。
【0022】
ジオールとしては、上述のジオールの説明で挙げたものと同じものが挙げられる。その中でも、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、または2-メチル-1,8-オクタンジオールが好ましい。
【0023】
ポリカーボネートポリオール(b-4-2)としては、例えば、炭酸エステル類と、ジオールと、水酸基官能基数3以上の多価アルコールとの反応で得られるものが挙げられる。炭酸エステル類としては、例えば、上述のカーボネート類の説明で挙げたものと同じものが挙げられる。
【0024】
グリコールとしては、上述のジオールの説明で挙げたものと同じものが挙げられる。その中でも、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオールが好ましい。
【0025】
水酸基官能基数3以上の多価アルコールとしては、例えば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等、およびこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0026】
ポリカーボネートポリオール(b-4)の数平均分子量は、合成の容易さ、取り扱いやすさを考慮すると、400~5,000g/molであることが好ましく、500~3,000g/molであることがより好ましい。数平均分子量の測定方法の詳細は、後述する実施例に記載されるとおりであってよい。
【0027】
ジオール(b-1)と水酸基官能基数3以上の多価アルコール(b-2)とのモル比(ジオール(b-1)/多価アルコール(b-2))は、1/5~60/1であることが好ましく、1/3~40/1の範囲がより好ましい。水酸基官能基数3以上の多価アルコールを上記上限値以下で用いることによって、ポリカーボネートの重合反応中での架橋によるゲル化がさらに抑制されやすくなる。また、多価アルコール(b-2)を上記上限値以下で用いることによって、風合いがより向上する傾向がある。ジオール(b-1)と水酸基官能基数3以上の多価アルコール(b-2)とのモル比を上述した範囲とすることで、ポリカーボネートポリオール(B)を効率よく得ることができ、ポリウレタンとしたときに風合いと機械強度および高軟化温度を両立できる傾向にある。
【0028】
ジオール(b-1)と、多価アルコール(b-2)との合計と、炭酸エステル(b-3)と、の混合比率としては特に制限はないが、(ジオール(b-1)および多価アルコール(b-2)の合計):炭酸エステル(b-3)は、モル比で1:3~3:1が好ましく、モル比で1:2.5~2.5:1がより好ましい。前記混合比率とすることで、さらに効率よく所望のポリカーボネートポリオールを得ることができる。
【0029】
ジオール(b-1)および多価アルコール(b-2)の合計と、ポリカーボネートポリオール(b-4)と、の混合比率としては特に制限はないが、(ジオール(b-1)および多価アルコール(b-2)の合計):ポリカーボネートポリオール(b-1)は、モル比で1:50~50:1が好ましく、モル比で1:30~30:1がより好ましい。前記混合比率とすることで、さらに効率よく所望のポリカーボネートポリオールを得ることができる。
【0030】
(触媒)
ポリカーボネートポリオール(α)の作製の際には、触媒を用いることが好ましい。触媒としては公知のエステル交換触媒が挙げられる。触媒としては、例えば、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド等の金属アルコキシド類、リチウムアセチルアセトナート、アルミニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナート等の金属エノラート類、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の金属炭酸塩、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の金属カルボン酸塩、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン等の第三級アルキルアミン、ピリジン、ピラジン、キノリン等の環状アジン、N-メチルピロリジン、N-メチルピペリジン、N,N’-ジメチルピペラジン、N-メチルモルホリン、ジアザビシクロウンデセン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン等の第三級環状アミン、t-ブチルイミノトリス(ジメチルアミノ)ホスホラン(P1-t-Bu)、t-ブチルイミノトリ(ピロリジノ)ホスホラン、t-オクチルイミノトリス(ジメチルアミノ)ホスホラン(P1-t-Oct)、1-t-ブチル-2,2,4,4,4-ペンタキス(ジメチルアミノ)-2λ,4λ-カテナジ(ホスファゼン)(P2-t-Bu)、1-エチル-2,2,4,4,4-ペンタキス(ジメチルアミノ)-2λ、4λ-カテナジ(ホスファゼン)、1-t-ブチル-4,4,4-トリス(ジメチルアミノ)-2,2-ビス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]-2λ,4λ-カテナジ(ホスファゼン)(P4-t-Bu)、1-tert-オクチル-4,4,4-トリス(ジメチルアミノ)-2,2-ビス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]-2λ,4λ-カテナジ(ホスファゼン)(P4-t-Oct)等のホスファゼン類;およびこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。中でもポリカーボネートポリオールの収率がさらに向上することから、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、リチウムアセテート、リチウムアセチルアセトナート、またはP4-t-Buが好ましい。
【0031】
混合液中のエステル交換触媒の含有量は、反応温度を適切に制御しやすく、反応生成物の色数上昇をさらに抑えることができる観点から、混合液中のジオール(b-1)と多価アルコール(b-2)と炭酸エステル(b-3)との総量100質量部に対して、0.0001~0.1質量部であってよく、0.0005~0.01質量部であってもよい。エステル交換触媒の含有量は、ウレタン化反応の反応性の制御をさらに容易とする観点では、少ないほど好ましい。エステル交換触媒の含有量が多くなると、ウレタン化反応の反応性が高くなりやすい。混合液中のエステル交換触媒の含有量は、ウレタン化の反応制御をさらに容易とする観点では、混合液中の多価アルコール(b-2)とジオール(b-1)と炭酸エステル(b-3)との総量100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、0.002質量部以上であることがより好ましく、0.003質量部以上であることがさらに好ましい。混合液中のエステル交換触媒の含有量は、反応生成物の色数上昇をさらに抑えることができる観点では、混合液中の多価アルコール(b-2)とジオール(b-1)と炭酸エステル(b-3)との総量100質量部に対して、0.050質量部以下であることが好ましく、0.040質量部以下であることがより好ましく、0.030質量部以下であることがさらに好ましい。これらの観点から、混合液中のエステル交換触媒の含有量は、混合液中の多価アルコール(b-2)とジオール(b-1)と炭酸エステル(b-3)との総量100質量部に対して、0.001~0.050質量部であることが好ましく、0.002~0.040質量部であることがより好ましく、0.003~0.030質量部であることがさらに好ましい。
【0032】
混合液の加熱温度(反応温度)は、例えば、80~250℃であってよく、100~220℃であってもよい。反応温度が80℃以上であると、エステル交換反応がさらに進行し易く、所望のポリカーボネートポリオールがより得られやすい。反応温度が250℃以下であると、得られるポリカーボネートポリオール、および当該ポリカーボネートポリオールを含む組成物の色数がさらに抑えられる。また、エステル交換反応は、温度を一定に保って行なってもよいし、反応進行度に応じて段階的または連続的に昇温させながら行なってもよい。このとき、生成したアルコール、またはジオールを留出させることによって反応の進行を速めることができる。
【0033】
混合液の加熱は常圧下で行うこともできるが、反応後半において、減圧下(例えば101~0.1kPaの圧力下)で行うこともできる。これにより、生成した留出物の留出速度を速めることができ、反応の進行を速めることが可能となる。なお、本明細書中、常圧とは、101.325kPa±20.000kPaの圧力を意味する。所望のポリカーボネートポリオールを得られやすくする観点では、混合液の加熱は、101.325kPa±20.000kPaの圧力下で加熱すること(第1の加熱)と、ついで、10.000kPa以下の減圧下で加熱すること(第2の加熱)と、を含むことが好ましい。
【0034】
(触媒)
ポリカーボネートポリオール(β)の作製の際には、触媒を用いることが好ましい。触媒としては、ポリカーボネートポリオール(α)の作製の説明で挙げたものと同じものが挙げられる。中でもポリカーボネートポリオールの収率がさらに向上することから、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、リチウムアセテート、リチウムアセチルアセトナート、またはP4-t-Buが好ましい。
【0035】
触媒の使用量は、ジオール(b-1)と、多価アルコール(b-2)と、ポリカーボネートポリオール(b-4)との合計質量の0.0001~1質量%であってよく、好ましくは0.001~0.1質量%である。触媒量が下限値以上の場合は、反応時間が長くなることをさらに抑制できるため、得られるポリカーボネートポリオールがさらに着色しにくくなる。触媒量が上限値以下の場合は、濁度がさらに抑制される傾向となる。
【0036】
エステル交換反応の反応温度としては、70~250℃が好ましく、80~220℃がより好ましい。
【0037】
ポリカーボネートポリオール(B)のみなし平均官能基数の下限は、例えば、2.0以上、2.1以上、2.2以上、2.3以上、2.4以上、2.5以上であってよい。ポリカーボネートポリオール(B)のみなし平均官能基数の上限は、例えば、3.90以下、3.80以下、3.70以下、3.60以下、3.50以下、または3.40以下であってよい。みなし平均官能基数は、2.0~3.90であり、例えば、2.1~3.80、2.2~3.70、2.3~3.50又は2.5~3.40であってよい。みなし平均官能基数が3.90以下であると引張試験における破断時伸びがさらに向上し、みなし平均官能基数が2.0以上であると引張試験における破断時強度および軟化温度がさらに向上する傾向となる。
【0038】
みなし平均官能基数は下記式より定義される。
みなし平均官能基数=(ポリカーボネートポリオール(B)の平均水酸基価(mgKOH/g)×ポリカーボネートポリオール(B)のGPC測定よりPPG検量線から算出される数平均分子量(g/mol))/(56.11(KOHg/mol)×1000)
【0039】
ポリカーボネートポリオール(B)の平均水酸基価は、40~500mgKOH/gであることが好ましく、50~450mgKOH/gであることがより好ましく、50~300mgKOH/gであることがさらに好ましい。平均水酸基価が40mgKOH/g以上であると、ポリウレタン樹脂中のウレタン基濃度が低くなり過ぎず、引張試験における破断時強度がさらに向上する。平均水酸基価が500mgKOH/g以下であるとウレタン基濃度が高くなり過ぎず、引張試験における破断時伸びがさらに向上する。
【0040】
平均水酸基価は、JIS K1557-1に準拠し、アセチル化試薬を用いた方法にて測定される水酸基価である。測定方法の詳細は、後述する実施例において説明されるとおりである。
【0041】
ポリカーボネートポリオール(B)の数平均分子量は400~4,000g/molであることが好ましく、500~3000g/molであることがより好ましい。数平均分子量が400以上であるとポリウレタン中のウレタン基濃度が高くなり過ぎず、100%モジュラスがさらに向上する傾向となる。数平均分子量が4000g/mol以下であるとポリウレタン樹脂中のウレタン基濃度が低くなり過ぎず、引張試験における破断強度がさらに向上する。GPC(Gel Permeation Chromatography)測定より得られる数平均分子量の測定方法の詳細は、後述する実施例において説明されるとおりである。
【0042】
(ポリカーボネートポリオール(B)の含有量)
ポリカーボネートポリオール(B)の含有量は、ポリウレタン樹脂組成物中のポリオール(A)の含有量(またはポリオール(B’)の質量とポリカーボネートポリオール(B)の質量との合計)に対して、より高い軟化温度を有する硬化物の形成が可能になることから、5.0質量%以上、7.0質量%以上、10.0質量%以上、15.0質量%以上、または20.0質量%以上であってよく、100質量%以下であり、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、または80質量%以下であってよい。ポリカーボネートポリオール(B)の含有量は、ポリウレタン樹脂組成物中のポリオール(A)の含有量(またはポリオール(B’)の質量とポリカーボネートポリオール(B)の質量との合計)に対して、5.0~100質量%、8.0~95質量%、10~90質量%が好ましく、15~80質量%がより好ましく、20~70質量%がさらに好ましい。ポリカーボネートポリオール(B)の含有量が上記範囲であると、ポリウレタンフィルムとして使用された場合に、100%モジュラスと耐熱性がともにさらに良好なポリウレタンフィルムが得られやすい。また、ポリカーボネートポリオール(B)の含有量が100質量%以下であると、ハンドリング性にさらに優れたポリウレタンディスパージョンが得られやすい。さらに、ポリカーボネートポリオール(B)の含有量が100質量%以下であると、100%モジュラスにさらに優れたポリウレタンフィルムが得られやすい。
【0043】
(ポリオール(B’))
ポリカーボネートポリオール(B)とは異なるポリオール(B’)としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール(但し、ポリカーボネートポリオール(B)に該当する化合物は除く。)、ポリオレフィンポリオール等、およびこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0044】
ポリエステルポリオールとしては、グリコールとジカルボン酸とから得られるポリエステルポリオール、またはグリコールを開始剤としてラクトン類等の環状エステル化合物を開環付加重合することで得られるポリオールが好ましい。
【0045】
グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール、およびこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0046】
ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、アジピン酸、酒石酸、ピメリン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸等の多塩基酸、およびこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0047】
ラクトン類等の環状エステル化合物としては、例えば、β-プロピオラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、β-バレロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、α-カプロラクトン、β-カプロラクトン、γ-カプロラクトン、δ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、α-メチル-ε-カプロラクトン、β-メチル-ε-カプロラクトン、4-メチルカプロラクトン、γ-カプリロラクトン、ε-カプリロラクトン、ε-パルミトラクトン等、およびこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0048】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレンエーテルポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオール等、およびこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0049】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、カーボネート類と、グリコールとの反応で得られるものが挙げられる。カーボネート類およびグリコール類は、上記例示した化合物と同じ化合物であってよい。
【0050】
ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、水酸基末端ポリブタジエンやその水素添加物、水酸基含有塩素化ポリオレフィン等、およびこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0051】
ポリオール(B’)は、上述したポリオールから選ばれる1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0052】
ポリウレタン樹脂組成物から得られる被膜の各種耐久性及び密着性等を考慮すると、ポリオール(B’)は、ポリカーボネートポリオールを含むことが好ましく、ポリカーボネートジオールを含むことがより好ましい。
【0053】
ポリオール(B’)の数平均分子量は、300~10,000が好ましく、500~7,000であってもよく、800~5,000であってもよく、1000~3,000であってもよい。数平均分子量の測定方法の詳細は、後述する実施例に記載されるとおりであってよい。
【0054】
ポリオール(B’)は、ジオール(a-1)を含んでいてもよい。ジオール(a-1)としては、ポリエステルポリオールの説明で挙げたグリコールと同じものが挙げられる。ジオール(a-1)は、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオールおよび2-メチル-1,8-オクタンジオールからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0055】
ポリオール(B’)とジオール(a-1)とのモル比[ポリオール(B’)/ジオール(a-1)]は、10/0~1/20であることが好ましく、10/0~1/10であることがより好ましい。この範囲とすることで、100%モジュラスがさらに低く、かつ、さらに高い軟化温度を有するポリウレタン樹脂組成物が得られる。
【0056】
(ポリオール(A)の平均水酸基価)
ポリオール(A)の平均水酸基価は30~150mgKOHが好ましく、50~130mgKOHがより好ましく、60~120mgKOHがさらに好ましい。平均水酸基価が上記範囲であると、ポリウレタンフィルムとして使用された場合に、100%モジュラスと耐熱性がともにさらに良好なポリウレタンフィルムが得られやすい傾向がある。また、平均水酸基価が150mgKOH以下であると、100%モジュラスにさらに優れるポリウレタンフィルムが得られやすい。ポリオール(A)の平均水酸基価は、ポリオール(A)中に含まれる各成分それぞれの水酸基価から算出される。ポリオール(A)の平均水酸基価の具体的な算出方法の詳細は後述する実施例に記載されるとおりである。
【0057】
(架橋密度)
イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)および鎖延長剤(G)に対する架橋密度は0.02~0.47が好ましく、0.03~0.40がより好ましく、0.05~0.35がより好ましい。架橋密度が上記範囲であると、ポリウレタンフィルムとして使用された場合に、100%モジュラスと耐熱性がともにさらに良好なポリウレタンフィルムが得られやすい傾向がある。また、架橋密度が0.47以下であると、100%モジュラスにさらに優れるポリウレタンフィルムが得られやすい。
【0058】
<有機酸(C)>
有機酸(C)は、例えば、ポリイソシアネート(D)との反応により得られるイソシアネート基末端プレポリマー(E)に親水性を付与し、最終的に得られる樹脂組成物を水性にし得る親水性基含有モノマーであってよい。
【0059】
有機酸(C)は、例えば、活性水素基を1個以上有するものが挙げられる。有機酸としては、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、チオスルホン酸等、およびこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。これらの基は、独立で導入されてもよいし、キレートのように関連付けられてもよい。その中でも、カルボキシ基(-COOH)を有するジメチロール脂肪酸がより好ましい。
【0060】
ジメチロール脂肪酸は、例えば、下記式(c)で表される化合物であってよい。
【化1】
式(c)において、Rは脂肪族炭化水素基を示す。Rで表される脂肪族炭化水素基の炭素数は、例えば、1以上であってよく、10以下、6以下、または3以下であってよい。Rで表される脂肪族炭化水素基は、直鎖状であってよく、分岐を有していてもよい。Rで表される脂肪族炭化水素基は、例えば、-CH、-CHCH、-CHCHCH、またはCHCHCHCHCHCHCHであってよい。
【0061】
ジメチロール脂肪酸としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸(2,2-ジメチロールプロパン酸等)、ジメチロールブタン酸、ジメチロールペンタン酸、ジメチロールノナン酸等のジメチロールアルカン酸等、およびこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0062】
有機酸(C)の含有量は、ポリウレタン樹脂組成物中、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)の質量と鎖延長剤(G)の質量との総和を基準として、0.01mmol/g以上または0.10mmol/g以上であってよく、0.80mmol/g以下、または0.50mmol/g以下であってよい。
【0063】
<ポリイソシアネート(D)>
ポリイソシアネート(D)は、イソシアネート基(-N=C=O)を2個以上有する化合物である。ポリイソシアネート(D)のイソシアネート基の数は、例えば、6以下、4以下、または3以下であってよい。ポリイソシアネート(D)のイソシアネート基の数は、例えば、2~3であってよく、2であってよい。ポリイソシアネート(D)は、例えば、複数のイソシアネート基と、複数のイソシアネート基を連結する炭化水素基と、を有する化合物であってよい。
【0064】
ポリイソシアネート(D)としては、特に限定されず、従来公知の各種ポリイソシアネートが挙げられる。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素添化トリレンジイソシアネート、水素添化キシレンジイソシアネート、水素添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添化テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ナフチレン-1,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシジフェニル-4,4’-ジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;キシリレン-1,4-ジイソシアネート、キシリレン-1,3-ジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート等;これら有機ポリイソシアネートとアルコールとの反応から得られるアロファネート変性ポリイソシアネート等:ならびに、これらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0065】
ポリイソシアネート(D)は脂肪族ジイソシアネート、または脂環族ジイソシアネートであることが好ましく、脂環族ジイソシアネートであることがより好ましく、イソホロンジイソシアネートであることがさらに好ましい。
【0066】
ポリイソシアネート(D)が有するイソシアネート基の総モル数に対する、ポリオール(A)が有する水酸基の総モル数の比(水酸基/イソシアネート基)が、例えば、0.200以上、0.300以上または0.400以上であってよく、0.950以下、0.900以下、または0.800以下であってよい。
【0067】
<イソシアネート基末端プレポリマー(E)の一実施形態>
イソシアネート基末端プレポリマー(E)の一実施形態は、例えば、ポリオール(B’)と、該ポリオール(B’)とは異なるポリオールと、有機酸(C)と、ポリイソシアネート(D)との反応生成物を含み、ポリオール(B’)とは異なるポリオールが、平均水酸基官能基数が2を超えるポリカーボネートポリオール(B)であってよい。
【0068】
<イソシアネート基末端プレポリマー(E)の製造方法>
イソシアネート基末端プレポリマー(E)は、例えば、ポリイソシアネート(D)、ポリオール(A)および有機酸(C)を、イソシアネート基のモル数が水酸基のモル数よりも過剰となる条件で、必要に応じて希釈溶剤中で反応させることを含む方法によって製造することができる。このとき公知のウレタン化触媒を用いてもよい。反応温度は0~100℃が好ましく、特に好ましくは20~90℃である。
【0069】
〔中和剤(F)〕
中和剤(F)は、塩基性中和剤が好ましい。中和剤(F)としては、例えば、アンモニア、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-フェニルジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン、N-メチルモルホリン、2-アミノ-2-エチル-1-プロパノール、高級アルキル変性モルホリン等の有機アミン類;リチウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの無機アルカリ類;等、およびこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。また、塗膜の耐久性や平滑性向上の観点から、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の加熱によって解離する揮発性の高い中和剤が好ましい。
【0070】
中和剤は、トリアルキルアミンであってよい。トリアルキルアミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミンが挙げられる。
【0071】
また、ポリウレタン樹脂組成物の水分散安定性をさらに向上させるために、中和剤(F)が、アニオン性極性基化合物、およびカチオン性極性基含有化合物をさらに含んでいてもよい。
【0072】
アニオン性極性基含有化合物としては、例えば、活性水素基を1個以上有する有機酸と中和剤とからなるものが挙げられる。有機酸としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、チオスルホン酸塩等、およびこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。これらの基は、独立で導入されてもよいし、キレートのように関連付けられてもよい。
【0073】
カチオン性極性基含有化合物としては、例えば、
活性水素基を1個以上有する1級あるいは2級アミンと、
無機酸および有機酸の中和剤、4級化剤のいずれかから選択される1種以上と、からなるものが挙げられる。
【0074】
活性水素基を1個以上有する1級あるいは2級アミンとしては、例えば、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジプロピルエタノールアミン、N,N-ジフェニルエタノールアミン、N-メチル-N-エチルエタノールアミン、N-メチル-N-フェニルエタノールアミン、N,N-ジメチルプロパノールアミン、N-メチル-N-エチルプロパノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-メチルジプロパノールアミン、N-フェニルジエタノールアミン、N-フェニルジプロパノールアミン、N-ヒドロキシエチル-N-ヒドロキシプロピル-メチルアミン、N,N′-ジヒドロキシエチルピペラジン、トリエタノールアミン、トリスイソプロパノールアミン、N-メチル-ビス-(3-アミノプロピル)-アミン、N-メチル-ビス-(2-アミノプロピル)-アミン等;アンモニア、メチルアミン等の第1アミン、ジメチルアミン等の第2アミンにアルキレンオキサイドを付加させたもの;およびこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0075】
無機酸および有機酸としては、例えば、塩酸、酢酸、乳酸、シアノ酢酸、燐酸、硫酸等、およびこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0076】
4級化剤としては、例えば、硫酸ジメチル、塩化ベンジル、ブロモアセトアミド、クロロアセトアミド、臭化エチル、臭化プロピル、臭化ブチル等のハロゲン化アルキル等、およびこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0077】
また、その他のカチオン性極性基含有化合物として、第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩、ピリジニウム塩等のカチオン性化合物が挙げられる。
【0078】
中和剤の含有量は、ポリウレタン樹脂組成物中、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)の質量と鎖延長剤(G)の質量との総和を基準として、0.01mmol/g以上または0.10mmol/g以上であってよく、0.80mmol/g以下、または0.50mmol/g以下であってよい。
【0079】
(有機溶剤)
なお、イソシアネート基末端プレポリマー(E)合成時、イソシアネート基に対して不活性な有機溶剤にて、任意の固形分に希釈してもよい。この有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、スワゾール(丸善石油化学社製の芳香族系炭化水素溶剤)、ソルベッソ(エクソンモービル社製の芳香族系炭化水素溶剤)等の芳香族系溶剤;ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;シクロヘキサン、イソホロン等の脂環族炭化水素系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶剤;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコール-3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールエチル-3-エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル系溶剤;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;およびこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0080】
有機溶剤は、脱溶剤の際に容易に除去でき、且つイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)形成時に50~100℃まで昇温が可能な酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶剤が好ましく、特にアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤が好ましい。
【0081】
〔鎖延長剤(G)〕
鎖延長剤は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)と反応してポリウレタン樹脂を形成する化合物である。鎖延長剤としては、例えば、一級アミノ基(-NH)、二級アミノ基(-NH-)、またはヒドロキシ基(-OH)等のイソシアネート基と反応し得る官能基を有する化合物、または、水(HO)が挙げられる。
【0082】
鎖延長剤(G)は、一級アミノ基または二級アミノ基を1個以上有するアミン化合物および水からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0083】
鎖延長剤(G)としてのアミン化合物は、一級アミノ基および二級アミノ基からなる群より選択されるアミノ基を2個以上有するアミン化合物であってよく、一級アミノ基および二級アミノ基からなる群より選択されるアミノ基を1個と、水酸基(-OH)を1個以上有する化合物であってもよい。
【0084】
アミン化合物は、脂肪族ジアミンおよび脂環族ジアミンからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。アミン化合物は、例えば、式(g1):HN-R-NHで表される化合物であってよい。式(g1)において、Rは、脂肪族炭化水素基、または脂環式炭化水素基を示す。
【0085】
アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン、N-アミノエチル-N-エタノールアミン、モノエタノールアミン等、およびこれらの任意の2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0086】
鎖延長反応の際には、硬化触媒(重合触媒)が必要に応じて使用されてもよい。硬化触媒としては、例えば、ジオクチルチンジラウレート、ナフテン酸亜鉛、ビスマス化合物等の金属系触媒、あるいはトリエチレンジアミンやN-メチルモルホリン等のアミン系触媒等の通常の硬化触媒が挙げられる。硬化触媒を使用することで、反応速度をさらに速くし反応温度をさらに低くすることができる。
【0087】
イソシアネート基末端プレポリマー(E)が有するイソシアネート基に対する、アミン化合物が有する活性水素基(アミノ基および水酸基)の当量比(活性水素基/イソシアネート基)が、例えば、0~1.3であることが好ましく、0.05~1.1であることがより好ましく、0.10~0.9であることがさらに好ましい。この比が上記範囲であると、100%モジュラスと耐熱性に優れるポリウレタン樹脂が形成されやすい。
【0088】
<ポリウレタン樹脂組成物の製造方法>
ポリウレタン樹脂組成物は、例えば、イソシアネート基末端プレポリマー(E)を、中和剤(F)により中和し、イソシアネート基末端プレポリマー(E)の中和物を得る工程と、イソシアネート基末端プレポリマー(E)の中和物を水により乳化させ、鎖延長剤(G)と反応させることにより、ポリウレタン樹脂組成物を得る工程とを含む方法によって製造することができる。
【0089】
イソシアネート基末端プレポリマー(E)と鎖延長剤(G)とによる鎖延長反応を行う方法として、あらかじめ水に鎖延長剤(G)を溶解させておき、この鎖延長剤(G)の水溶液に、イソシアネート基末端プレポリマー(E)を仕込んで、乳化および鎖延長反応を行う方法、または、イソシアネート基末端プレポリマー(E)を水に乳化させた後、鎖延長剤(G)の水溶液を仕込んで鎖延長反応を行う方法等が挙げられる。
【0090】
(ウレア基の全含有量)
ウレア基の全含有量の下限は、ポリウレタン樹脂組成物中、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)の質量と鎖延長剤(G)の質量との総和に対して、0.01mmol/g以上であり、例えば、0.02mmol/g以上、0.05mmol/g以上、0.10mmol/g以上、0.13mmol/g以上、または0.15mmol/g以上であってよい。ウレア基の全含有量の上限は、ポリウレタン樹脂組成物中、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)の質量と鎖延長剤(G)の質量との総和に対して、0.80mmol/g以下であり、例えば、0.70mmol/g以下、0.60mmol/g以下、0.55mmol/g以下、0.50mmol/g以下、または0.45mmol/g以下であってよい。ウレア基の全含有量は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)の質量と、鎖延長剤(G)の質量と、の総和に対して、0.01~0.80mmol/gであり、例えば、0.05mmol/g以上0.75mmol/g以下、0.07mmol/g以上0.70mmol/g以下、0.13mmol/g以上0.60mmol/g以下、又は0.15mmol/g以上0.55mmol/g以下であってよい。ウレア基の全含有量が上記範囲であると、ポリウレタンフィルムとして使用された場合に、100%モジュラスと耐熱性がともにさらに良好なポリウレタンフィルムが得られやすい。また、ウレア基の全含有量が0.80mmol/g以下であると、100%モジュラスにさらに優れるポリウレタンフィルムが得られやすい。
【0091】
鎖延長剤(G)が一級または二級アミノ基を1個以上有するアミン化合物、および水以外のものを含まない場合(すなわち、鎖延長剤が、一級または二級アミノ基を1個以上有するアミン化合物及び水のみを含む場合)、ウレア基の全含有量は、アミン化合物由来のウレア基の含有量と、水由来のウレア基の含有量との総和と一致する。
【0092】
(アミン化合物由来のウレア基の含有量)
鎖延長剤(G)が、1個以上の一級もしくは二級アミノ基を有するアミン化合物を含んでいてもよい。このとき、ポリウレタン樹脂組成物中、アミン化合物由来のウレア基の含有量は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)の質量と鎖延長剤(G)の質量との総和に対して、例えば、0.01mmol/g以上、0.02mmol/g以上、0.03mmol/g以上、0.05mmol/g以上、0.10mmol/g以上、0.13mmol/g以上、または0.15mmol/g以上であってよい。アミン化合物由来のウレア基の含有量の上限は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)の質量と鎖延長剤(G)の質量との総和に対して、例えば、0.48mmol/g以下、0.45mmol/g以下、0.40mmol/g以下、0.34mmol/g以下、0.30mmol/g以下、0.25mmol/g以下、または0.23mmol/g以下であってよい。アミン化合物由来のウレア基の含有量は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)の質量と、鎖延長剤(G)の質量と、の総和に対して、例えば、0mmol/g以上0.480mmol/g以下、0.01mmol/g以上0.400mmol/g以下、0.05mmol/g以上0.340mmol/g以下、又は0.130mmol/g以上0.300mmol/g以下であってよい。アミン化合物由来のウレア基濃度が上記範囲であると、ポリウレタンフィルムとして使用された場合に、100%モジュラスと耐熱性がともにさらに良好なポリウレタンフィルムが得られやすい。また、アミン化合物由来のウレア基濃度が0.480mmol/g以下であると、100%モジュラスにさらに優れるポリウレタンフィルムが得られやすい。
【0093】
(水由来のウレア基の含有量)
鎖延長剤(G)が、水を含んでいてもよい。
水由来のウレア基の含有量の下限は、ポリウレタン樹脂組成物中、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)の質量と鎖延長剤(G)の質量との総和に対して、例えば、0.01mmol/g以上、0.02mmol/g以上、0.03mmol/g以上、0.05mmol/g以上、0.10mmol/g以上、0.13mmol/g以上、または0.15mmol/g以上であってよい。水由来のウレア基の含有量の上限は、ポリウレタン樹脂組成物中、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)の質量と鎖延長剤(G)の質量との総和に対して、0.80mmol/g以下であり、例えば、0.70mmol/g以下、0.60mmol/g以下、0.50mmol/g以下、0.40mmol/g以下、0.30mmol/g以下、または0.25mmol/g以下であってよい。水由来のウレア基の含有量は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)の質量と、鎖延長剤(G)の質量と、の総和に対して、例えば、0.01mmol/g以上0.80mmol/g以下、0.05mmol/g以上0.70mmol/g以下、0.10mmol/g以上0.60mmol/g以下、又は0.15mmol/g以上0.50mmol/g以下であってよい。水由来のウレア基濃度が上記範囲であると、ポリウレタンフィルムとして使用された場合に、100%モジュラスと耐熱性がともにさらに良好なポリウレタンフィルムが得られやすい。また、水由来のウレア基濃度が0.80mmol/g以下であると、100%モジュラスにさらに優れるポリウレタンフィルムが得られやすい。
【0094】
(ウレア基の全含有量に対するアミン化合物由来のウレア基の含有量)
アミン化合物由来のウレア基の含有量(アミン化合物由来のウレア基比率)の下限は、ウレア基の全含有量に対して、例えば、0mol%以上、5mol%以上、10mol%以上、15mol%以上、20mol%以上、25mol%以上、または30mol%以上であってよい。ウレア基の全含有量に対するアミン化合物由来のウレア基の含有量の上限は、例えば、95mol%以下、90mol%以下、85mol%以下、80mol%以下、75mol%以下、70mol%以下、または65mol%以下であってよい。ウレア基の全含有量に対するアミン化合物由来のウレア基の含有量は、ウレア基の全含有量に対して、例えば、0~95mol%、5~90mol%、10~85mol%、15~80mol%又は20~70mol%であってよい。ウレア基の全含有量に対するアミン化合物由来のウレア基の含有量が上記範囲であると、ポリウレタンフィルムとして使用された場合に、100%モジュラスと耐熱性がともにさらに良好なポリウレタンフィルムが得られやすい。また、アミン化合物由来のウレア基濃度が100mol%以下であると、軟化温度にさらに優れるポリウレタンフィルムが得られやすい。
【0095】
<硬化剤(X)>
ポリウレタン樹脂組成物は、硬化剤(X)をさらに含んでいてもよい。
硬化剤(X)は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)と、鎖延長剤(G)との反応生成物を硬化させて、ポリウレタン樹脂を形成する。ポリウレタン樹脂組成物が硬化剤(X)を含む場合、該硬化剤(X)は、二液システムの一液を構成する。ポリウレタン樹脂組成物が硬化剤(X)を含まない場合、当該ポリウレタン樹脂組成物は、一液システムとして好適である。
【0096】
硬化剤(X)としては、具体的には、有機ジイソシアネート類のウレタン変性体、ウレア変性体、アロファネート変性体、ビュレット変性体、ウレトジオン変性体、イソシアヌレート変性体等が挙げられる。これらの中でも、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)又はイソホロンジイソシアネート(IPDI)のトリマー体又はアダクト体が好ましい。
【0097】
<他の成分>
より物性を高め、また、各種物性を付加するために、ポリウレタン樹脂組成物は、各種添加剤を含んでいてもよい。各種添加剤としては、成膜剤、粘度調節剤、ゲル化防止剤、難燃剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、充填剤、内部離型剤、補強材、艶消し剤、導電性付与剤、帯電制御剤、帯電防止剤、滑剤、染料、顔料その他の加工助剤等が挙げられる。
【0098】
ポリウレタン樹脂組成物は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)と鎖延長剤(G)との反応生成物が中和剤(F)により中和されてなるエマルジョンであってもよい。
【0099】
このようにして得られたポリウレタン樹脂組成物は、水性ポリウレタン樹脂エマルジョンとして好ましく用いられる。そして、この水性ポリウレタン樹脂エマルジョンを硬化することにより、強靭で、100%モジュラスが低減され(風合いが良好であり)、高い軟化温度を有する塗膜やフィルム等の成形体を得ることができ、人工皮革、合成皮革等の皮革用途や、皮革用表面処理剤として好適に使用することができる。100%モジュラスは合成皮革に触れたときのしっとりとした、高級感のある感覚を定量する指標の一つであり、数値が低い程上記特性が良好なポリウレタン樹脂となる。
また、ポリウレタン樹脂組成物は、一液型であっても二液型であってもよいが、一液型であることが好ましい。
【0100】
〔硬化物〕
硬化物の一実施形態は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)と、鎖延長剤(G)と、の反応生成物を含むポリウレタン樹脂組成物の硬化物であって、
前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)が、
平均水酸基官能基数が2を超えるポリカーボネートポリオール(B)を含むポリオール(A)と、
有機酸(C)と、
ポリイソシアネート(D)と、の反応生成物を含み、
前記ポリウレタン樹脂組成物中、ウレア基の全含有量が、前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)の質量と、前記鎖延長剤(G)の質量と、の総和に対して、0.01~0.80mmol/gであり、
前記ポリカーボネートポリオール(B)のみなし平均官能基数が2.0~3.90である。
一実施形態にかかる硬化物は、上述したポリウレタン樹脂組成物が硬化してなるものであって、例えば、該組成物からは中和剤(F)の一部または全部、および水の一部または全部が除かれてなる。
【0101】
〔人工皮革または合成皮革〕
人工皮革または合成皮革の一実施形態は、ポリウレタン樹脂組成物の硬化物と、基材とを含む。一実施形態に係る人工皮革または合成皮革は、例えば、基材上に、ポリウレタン樹脂組成物の硬化物を形成することを含む方法によって製造することができる。また、一実施形態に係る人工皮革または合成皮革は、基材にポリウレタン樹脂組成物を含侵させ、当該ポリウレタン樹脂組成物を硬化させることを含む方法によって製造することができる。人工皮革において、基材は、例えば、編物又は織物等の基布であってよい。合成皮革において、基材は、不織布であってよい。
【0102】
〔皮革用表面処理剤〕
皮革用表面処理剤は、皮革又はその材料の表面を処理するために用いられる剤である。皮革用表面処理剤の適用対象の皮革は、例えば、合成皮革、人工皮革、又は天然皮革であってよい。
【実施例
【0103】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例における%、部表記は、特に断りのない限り質量基準である。
【0104】
<各組成の計算方法>
(みなし平均官能基数)
ポリカーボネートポリオール(B)のみなし平均官能基数はGPC(Gel Permeation Chromatography)測定より得られる数平均分子量と水酸基価から算出した。本来であれば、平均官能基数は真の数平均分子量と平均水酸基価から算出されるが、ポリカーボネートポリオール(B)の真の数平均分子量の算出が難しいため、GPC測定よりPPG検量線より換算される数平均分子量を用い、みなし平均官能基数として定義する。みなし平均官能基数は下記式より定義する。
みなし平均官能基数=(ポリカーボネートポリオール(B)の平均水酸基価(mgKOH/g)×ポリカーボネートポリオール(B)のGPC測定よりPPG検量線から算出される数平均分子量(g/mol))/(56.11(KOHg/mol)×1000)
【0105】
(ウレア基の全含有量)
ポリウレタン樹脂組成物中のウレア基は、イソシアネート基末端プレポリマー(E)中のイソシアネート基と、鎖延長剤(G)として含まれるアミン化合物および/または水との反応によって形成される。イソシアネート基と、鎖延長剤(G)との反応速度は、イソシアネート基とポリオール成分のヒドロキシ基との反応速度と比較して、非常に高いことが知られている。従って、ウレア基の全含有量はイソシアネート基末端プレポリマー(E)の未反応のイソシアネート基の含有量と一致する。以上より、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)の質量と、鎖延長剤(G)の質量と、の総和に対するウレア基の全含有量は、下記式で定義する。
ウレア基の全含有量(mmol/g)=水由来のウレア基の含有量(mmol/g)+アミン化合物由来のウレア基の含有量(mmol/g)
【0106】
本開示の一態様は水を溶媒とするため、アミン化合物由来のウレア基と水由来のウレア基が同時に生成する。アミン化合物由来のウレア基は水由来のウレア基と比べて反応速度が非常に高く、アミン化合物由来のアミンは全てウレア基として存在すると言える。
【0107】
上記ウレア基の全含有量は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)の質量と、鎖延長剤(G)の質量と、の総和に対する鎖延長剤(G)由来のウレア基の含有量ということもできる。
【0108】
(アミン化合物由来のウレア基の含有量)
アミン化合物由来のウレア基の含有量は、アミン化合物の仕込み量から算出されるアミン量より求めた。従って、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)の質量と鎖延長剤(G)の質量との総和に対するアミン化合物由来のウレア基の含有量は、下記式で定義する。
アミン化合物由来のウレア基の含有量(mmol/g)=アミン化合物の仕込み量(g)/アミン化合物の分子量(g/mol)×一分子当たりのアミノ基の数/(ポリオール(B’)の仕込み量(g)+ポリカーボネートポリオール(B)の仕込み量(g)+有機酸(ジメチロール脂肪酸)(C)の仕込み量(g)+ポリイソシアネート(D)の仕込み量(g)+鎖延長剤(G)の仕込み量(g))×1000
【0109】
水由来のウレア基は多段階反応により生成する。まず、水はイソシアネート基末端プレポリマー(E)のイソシアネートと反応し、カルバミン酸を形成後、脱炭酸を経て1級アミンとなる。次に生成した1級アミンが別のイソシアネート基末端プレポリマー(E)のイソシアネートと反応することでウレア基が生成する。従って、水によるウレア基は2つのイソシアネートを消費して生成する。
【0110】
(水由来のウレア基の含有量)
イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)の質量と鎖延長剤(G)の質量との総和に対する水由来のウレア基の含有量は、下記式で定義する。
水由来のウレア基の含有量(mmol/g)=[イソシアネート基末端プレポリマー(E)の未反応のイソシアネート基の含有量(mmol/g)×((ポリオール(B’)の仕込み量(g)+ポリカーボネートポリオール(B)の仕込み量(g)+有機酸(ジメチロール脂肪酸)(C)の仕込み量(g)+ポリイソシアネート(D)の仕込み量(g)+イソシアネート基測定前の有機溶剤の仕込み量(g))/(ポリオール(B’)の仕込み量(g)+ポリカーボネートポリオール(B)の仕込み量(g)+有機酸(ジメチロール脂肪酸)(C)の仕込み量(g)+ポリイソシアネート(D)の仕込み量(g)+鎖延長剤(G)の仕込み量(g))-アミン化合物由来のウレア基濃度(mmol/g)]/2
【0111】
イソシアネート基測定前の有機溶剤の仕込み量は、イソシアネート基末端プレポリマー(E)のイソシアネート基量測定時に含まれる有機溶剤の質量である。
【0112】
(ウレア基の全含有量に対するアミン化合物由来のウレア基の含有量)
ウレア基の全含有量に対するアミン化合物由来のウレア基の含有量(アミン化合物由来のウレア基比率)は、アミン化合物由来のウレア基の含有量を、ウレア基の全含有量で除することにより算出した。従って、ウレア基の全含有量に対するアミン化合物由来のウレア基の含有量は、下記式で定義する。
ウレア基の全含有量に対するアミン化合物由来のウレア基の含有量(mol%)=アミン化合物由来のウレア基の含有量(mmol/g)/ウレア基の全含有量(mmol/g)×100
【0113】
ウレア基の全含有量、アミン化合物由来のウレア基の含有量、水由来のウレア基の含有量及びウレア基の全含有量に対するアミン化合物由来のウレア基の含有量(アミン化合物由来のウレア基比率)は、H-NMR測定を用いて算出することもできる。
【0114】
(平均水酸基価)
平均水酸基価はポリオール(B’)とポリカーボネートポリオール(B)とを混合した際の水酸基価から算出した。従って、平均水酸基価は下記式より定義する。
平均水酸基価(mgKOH/g)=(ポリオール(B’)の平均水酸基価(mgKOH/g)×ポリオール(B’)の仕込み量(g)+ポリカーボネートポリオール(B)の平均水酸基価(mgKOH/g)×ポリカーボネートポリオール(B)の仕込み量(g))/(ポリオール(B’)の仕込み量(g)+ポリカーボネートポリオール(B)の仕込み量(g))
【0115】
(架橋密度)
イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(E)および鎖延長剤(G)に対する架橋密度はポリカーボネートポリオール(B)あるいはポリオール(B’)の3官能以上の多価アルコール由来の架橋量から算出した。従って、架橋密度は、下記式で定義する。なお、架橋を形成する成分が他にもある場合には、式中の分子の「ポリカーボネートポリオール(B)」、「多価アルコール」を当該他の成分に置き換えることで同様に算出できる。
【0116】
((ポリカーボネートポリオール(B)の場合))
架橋密度(mmol/g)=ポリカーボネートポリオール(B)の仕込み量(g)×ポリカーボネートポリオール(B)の平均水酸基価(mgKOH/g)/56.11/1000/ポリカーボネートポリオール(B)の官能基数×(ポリカーボネートポリオール(B)の官能基数-2)/(ポリオール(B’)の仕込み量(g)+ポリカーボネートポリオール(B)の仕込み量(g)+有機酸(ジメチロール脂肪酸)(C)の仕込み量(g)+ポリイソシアネート(D)の仕込み量(g)+鎖延長剤(G)の仕込み量(g))×1000
【0117】
((多価アルコールの場合))
架橋密度(mmol/g)=多価アルコールの仕込み量(g)/多価アルコールの分子量(g/mol)×(多価アルコールの官能基数-2)/(ポリオール(B’)の仕込み量(g)+ポリカーボネートポリオール(B)の仕込み量(g)+有機酸(ジメチロール脂肪酸)(C)の仕込み量(g)+ポリイソシアネート(D)の仕込み量(g)+鎖延長剤(G)の仕込み量(g))×1000
【0118】
(ポリカーボネートポリオール(B)の含有量)
ポリウレタン樹脂組成物中のポリカーボネートポリオール(B)の含有量はポリオール(B’)とポリカーボネートポリオール(B)とを混合した際の質量比から算出した。従って、ポリカーボネートポリオール(B)の含有量は下記式より定義する。
【0119】
ポリカーボネートポリオール(B)の含有量(質量%)=ポリカーボネートポリオール(B)の仕込み量(g)/(ポリオール(B’)の仕込み量(g)+ポリカーボネートポリオール(B)の仕込み量(g))×100
【0120】
(分析評価)
[イソシアネート基末端プレポリマー(E)の未反応のイソシアネート基の含有量]
イソシアネート基末端プレポリマー(E)の未反応のイソシアネート基の含有量はJIS-K6806に基づき測定した。
【0121】
[数平均分子量の測定]
以下の条件で、得られた組成物のGPC分析を行い、組成物の数平均分子量を測定した。結果を表1に示す。
【0122】
-条件-
(1)測定器:HLC-8420(東ソー社製)
(2)カラム:TSKgel(東ソー社製)
・G3000H-XL
・G3000H-XL
・G2000H-XL
・G2000H-XL
(3)移動相:THF(テトラヒドロフラン)
(4)検出器:RI(屈折率)検出器(HLC-8420付属品)
(5)温度:40℃
(6)流速:1.000ml/min
(7)検量線:以下の商品(いずれも三洋化成工業社製の2官能のポリオキシプロピレンポリオール)を用いて、検量線を得た。
・「サンニックスPP-200」(数平均分子量=200、平均官能基数:2)
・「サンニックスPP-400」(数平均分子量=400、平均官能基数:2)
・「サンニックスPP-1000」(数平均分子量=1000、平均官能基数:2)
・「サンニックスPP-2000」(数平均分子量=2000、平均官能基数:2)
・「サンニックスPP-3000」(数平均分子量=3200、平均官能基数:2)
・「サンニックスPP-4000」(数平均分子量=4160、平均官能基数:2)
(8)検量線の近似式:3次式
(9)サンプル溶液濃度:0.5質量%THF溶液
【0123】
[水酸基価(OHv)の測定]
JIS K1557-1に準拠し、アセチル化試薬を用いた方法にて得られた組成物の水酸基価を測定した。結果を表1に示す。
【0124】
[性状評価]
得られた組成物をサンプルとし、該サンプルを80℃で1時間加熱した後、25℃で3日間放置した。放置後のサンプルの状態を目視により確認し、上記温度で僅かでも流動性があれば液状とし、流動性がない場合には固体とした。
【0125】
[ポリカーボネートポリオールの合成1]
攪拌機、温度計、加熱装置、冷却器を組んだ1L二口ガラス製反応器(以下、反応器Aと称する)に、トリメチロールプロパン31.3g、1,6-ヘキサンジオール413.8g、炭酸ジエチル454.9g、およびリチウムアセチルアセトナート0.045gを混合し、常圧下、低沸点成分を除去しながら100~150℃で8時間反応させた。さらに反応温度を150℃としてフラスコ内の圧力を1kPaまで減圧し、さらに8時間反応を行うことでポリカーボネートポリオールを得た(PCP-1A)。
【0126】
[ポリカーボネートポリオールの合成2]
全ての操作はポリカーボネートポリオールの合成1と同様にして、ポリカーボネートポリオールを得た(PCP-1B)。
【0127】
[ポリカーボネートポリオールの合成3]
全ての操作はポリカーボネートポリオールの合成1と同様にして、ポリカーボネートポリオールを得た(PCP-1C)。
【0128】
[ポリカーボネートポリオールの合成4]
全ての操作はポリカーボネートポリオールの合成1と同様にして、ポリカーボネートポリオールを得た(PCP-1D)。
【0129】
[ポリカーボネートポリオールの合成5]
全ての操作はポリカーボネートポリオールの合成1と同様にして、ポリカーボネートポリオールを得た(PCP-1E)。
【0130】
[ポリカーボネートポリオールの合成6]
反応器Aに、トリメチロールプロパン74.4g、1,6-ヘキサンジオール393.2g、炭酸ジエチル432.4g、およびリチウムアセチルアセトナート0.045gを混合し、常圧下、低沸点成分を除去しながら100~150℃で8時間反応させた。さらに反応温度を150℃としてフラスコ内の圧力を1kPaまで減圧し、さらに8時間反応を行うことでポリカーボネートポリオールを得た(PCP-2A)。
【0131】
[ポリカーボネートポリオールの合成7]
反応器Aに、トリメチロールプロパン35.2g、1,6-ヘキサンジオール298.5g、炭酸ジエチル468.8g、およびリチウムアセチルアセトナート0.045gを混合し、常圧下、低沸点成分を除去しながら100~150℃で8時間反応させた。さらに反応温度を150℃としてフラスコ内の圧力を1kPaまで減圧し、さらに8時間反応を行うことでポリカーボネートポリオールを得た(PCP-3)。
【0132】
[ポリカーボネートポリオールの合成8]
反応器Aに、トリメチロールプロパン0.82g、1,6-ヘキサンジオール199.1g、炭酸ジエチル200.1g、およびリチウムアセチルアセトナート0.020gを混合し、常圧下、低沸点成分を除去しながら100~150℃で8時間反応させた。さらに反応温度を150℃としてフラスコ内の圧力を1kPaまで減圧し、さらに8時間反応を行うことでポリカーボネートポリオールを得た(PCP-4)。
【0133】
[ポリカーボネートポリオールの合成9]
反応器Aに、トリメチロールプロパン3.31g、1,6-ヘキサンジオール196.81g、炭酸ジエチル199.9g、およびリチウムアセチルアセトナート0.020gを混合し、常圧下、低沸点成分を除去しながら100~150℃で8時間反応させた。さらに反応温度を150℃としてフラスコ内の圧力を1kPaまで減圧し、さらに8時間反応を行うことでポリカーボネートポリオールを得た(PCP-5)。
【0134】
[ポリカーボネートポリオールの合成10]
反応器Aに、トリメチロールプロパン8.08g、1,6-ヘキサンジオール192.2g、炭酸ジエチル199.8g、およびリチウムアセチルアセトナート0.020gを混合し、常圧下、低沸点成分を除去しながら100~150℃で8時間反応させた。さらに反応温度を150℃としてフラスコ内の圧力を1kPaまで減圧し、さらに8時間反応を行うことでポリカーボネートポリオールを得た(PCP-6)。
【0135】
[ポリカーボネートポリオールの合成11]
反応器Aに、トリメチロールプロパン20.53g、1,6-ヘキサンジオール180.3g、炭酸ジエチル199.2g、およびリチウムアセチルアセトナート0.020gを混合し、常圧下、低沸点成分を除去しながら100~150℃で8時間反応させた。さらに反応温度を150℃としてフラスコ内の圧力を1kPaまで減圧し、さらに8時間反応を行うことでポリカーボネートポリオールを得た(PCP-7)。
【0136】
[ポリカーボネートポリオールの合成12]
反応器Aに、トリメチロールプロパン24.82g、1,6-ヘキサンジオール176g、炭酸ジエチル199.2g、およびリチウムアセチルアセトナート0.020gを混合し、常圧下、低沸点成分を除去しながら100~150℃で8時間反応させた。さらに反応温度を150℃としてフラスコ内の圧力を1kPaまで減圧し、さらに8時間反応を行うことでポリカーボネートポリオールを得た(PCP-8)。
【0137】
[ポリカーボネートポリオールの合成13]
反応器Aに、トリメチロールプロパン30.43g、1,6-ヘキサンジオール170.3g、炭酸ジエチル199.2g、およびリチウムアセチルアセトナート0.020gを混合し、常圧下、低沸点成分を除去しながら100~150℃で8時間反応させた。さらに反応温度を150℃としてフラスコ内の圧力を1kPaまで減圧し、さらに8時間反応を行うことでポリカーボネートポリオールを得た(PCP-9)。
【0138】
[ポリカーボネートポリオールの合成14]
反応器Aに、トリメチロールプロパン44.63g、1,6-ヘキサンジオール156.2g、炭酸ジエチル199.2g、およびリチウムアセチルアセトナート0.020gを混合し、常圧下、低沸点成分を除去しながら100~150℃で8時間反応させた。さらに反応温度を150℃としてフラスコ内の圧力を1kPaまで減圧し、さらに8時間反応を行うことでポリカーボネートポリオールを得た(PCP-10)
【0139】
【表1】
【0140】
・1,6-ヘキサンジオール:BASF-JAPAN社製
・1,4-ブタンジオール:富士フイルム和光純薬社製
・トリメチロールプロパン:Sigma-Aldrich社製
・炭酸ジエチル:Sigma-Aldrich社製
・リチウムアセチルアセトナート:Sigma-Aldrich社製
【0141】
(実施例1:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造1)
撹拌機、温度計、窒素シール管、および冷却器を装着した容量1Lの反応器(以下、反応器Bと称する)に、N-980N(東ソー社製:数平均分子量2000;水酸基価56.11mgKOH/g;1,6-ヘキサンジオール系ポリカーボネートジオール)77.6g、1,6-ヘキサンジオール3.04g、PCP-1Aを26.9g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.29g、イソホロンジイソシアネートを31.2g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.286mmol/gであった。次いで、トリエチルアミンを3.99g仕込んでカルボキシル基を中和した後、撹拌しながら水を320g仕込み、乳化させた。乳化後、KL-245を0.18g加え、30分以内にアミン水(水30g、イソホロンジアミン1.99gを配合)を仕込み、アミン鎖延長反応を40℃にて12時間行った。FT-IRによりイソシアネート基の存在が確認されなくなったところで撹拌を停止した。その後、2Lのナスフラスコに反応溶液を移し、減圧蒸留することで、アセトン75g、水50gを除去し、水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-1)を得た。
【0142】
(実施例2:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造2)
反応器Bに、N-980N 51.8g、1,6-ヘキサンジオール1.99g、PCP-1Aを53.8g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.29g、イソホロンジイソシアネートを31.2g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.268mmol/gであった。次いで、乳化および乳化後の操作は実施例1と同様にして水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-2)を得た。
【0143】
(実施例3:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造3)
反応器Bに、N-980N 25.9g、1,6-ヘキサンジオール0.95g、PCP-1Aを80.6g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.29g、イソホロンジイソシアネートを31.2g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.270mmol/gであった。次いで、乳化および乳化後の操作は実施例1と同様にして水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-3)を得た。
【0144】
(実施例4:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造4)
反応器Bに、N-980N 84.1g、1,6-ヘキサンジオール4.32g、PCP-2Aを15.6g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.29g、イソホロンジイソシアネートを31.2g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.284mmol/gであった。次いで、乳化および乳化後の操作は実施例1と同様にして水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-4)を得た。
【0145】
(実施例5:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造5)
反応器Bに、N-980N 70.4g、1,6-ヘキサンジオール2.37g、PCP-2Aを31.2g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.29g、イソホロンジイソシアネートを34.7g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.280mmol/gであった。次いで、乳化および乳化後の操作は実施例1と同様にして水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-5)を得た。
【0146】
(実施例6:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造6)
反応器Bに、N-980N 56.8g、1,6-ヘキサンジオール0.41g、PCP-2Aを46.8g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.29g、イソホロンジイソシアネートを34.7g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.355mmol/gであった。次いで、乳化および乳化後の操作は実施例1と同様にして水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-6)を得た。
【0147】
(実施例7:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造7)
反応器Bに、N-980N 78.9g、1,6-ヘキサンジオール3.40g、PCP-1Bを27.4g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.29g、イソホロンジイソシアネートを29.9g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.170mmol/gであった。次いで、トリエチルアミンを3.99g仕込んでカルボキシル基を中和した後、撹拌しながら水を320g仕込み、乳化させた。乳化後、KL-245を0.18g加え、30分以内にアミン水(水30g、イソホロンジアミン0.99gを配合)を仕込み、アミン鎖延長反応を40℃にて12時間行った。FT-IRによりイソシアネート基の存在が確認されなくなったところで撹拌を停止した。その後、2Lのナスフラスコに反応溶液を移し、減圧蒸留することで、アセトン75g、水50gを除去し、水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-7)を得た。
【0148】
(実施例8:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造8)
反応器Bに、N-980N 52.5g、1,6-ヘキサンジオール2.42g、PCP-1Bを54.9g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.29g、イソホロンジイソシアネートを29.9g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.169mmol/gであった。次いで、乳化および乳化後の操作は実施例7と同様にして水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-8)を得た。
【0149】
(実施例9:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造9)
反応器Bに、N-980N 75.7g、1,6-ヘキサンジオール3.26g、PCP-1Bを26.3g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.29g、イソホロンジイソシアネートを32.4g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.266mmol/gであった。次いで、トリエチルアミンを3.99g仕込んでカルボキシル基を中和した後、撹拌しながら水を320g仕込み、乳化させた。乳化後、KL-245を0.18g加え、30分以内にアミン水(水30g、イソホロンジアミン2.99gを配合)を仕込み、アミン鎖延長反応を40℃にて12時間行った。FT-IRによりイソシアネート基の存在が確認されなくなったところで撹拌を停止した。その後、2Lのナスフラスコに反応溶液を移し、減圧蒸留することで、アセトン75g、水50gを除去し、水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-9)を得た。
【0150】
(実施例10:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造10)
反応器Bに、N-980N 50.3g、1,6-ヘキサンジオール2.32g、PCP-1Bを52.6g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.29g、イソホロンジイソシアネートを32.4g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.263mmol/gであった。次いで、乳化および乳化後の操作は実施例9と同様にして水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-10)を得た。
【0151】
(実施例11:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造11)
反応器Bに、N-980N 84.6g、PCP-1Bを28.2g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.29g、イソホロンジイソシアネートを25.9g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.238mmol/gであった。次いで、乳化および乳化後の操作は実施例1と同様にして水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-11)を得た。
【0152】
(実施例12:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造12)
反応器Bに、N-980N 55.5g、PCP-1Bを55.5g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.29g、イソホロンジイソシアネートを27.6g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.231mmol/gであった。次いで、乳化および乳化後の操作は実施例1と同様にして水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-12)を得た。
【0153】
(実施例13:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造13)
反応器Bに、N-980N 27.4g、PCP-1Bを82.3g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.29g、イソホロンジイソシアネートを29.0g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.242mmol/gであった。次いで、乳化および乳化後の操作は実施例1と同様にして水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-13)を得た。
【0154】
(実施例14:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造14)
反応器Bに、N-980N 98.2g、PCP-1Cを10.9g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.29g、イソホロンジイソシアネートを27.6g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.322mmol/gであった。次いで、トリエチルアミンを3.99g仕込んでカルボキシル基を中和した後、撹拌しながら水を320g仕込み、乳化させた。乳化後、KL-245を0.18g加え、30分以内にアミン水(水30g、イソホロンジアミン3.98gを配合)を仕込み、アミン鎖延長反応を40℃にて12時間行った。FT-IRによりイソシアネート基の存在が確認されなくなったところで撹拌を停止した。その後、2Lのナスフラスコに反応溶液を移し、減圧蒸留することで、アセトン75g、水50gを除去し、水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-14)を得た。
【0155】
(実施例15:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造15)
反応器Bに、N-980N 76.9g、1,6-ヘキサンジオール3.70g、PCP-3を26.9g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.29g、イソホロンジイソシアネートを31.2g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.143mmol/gであった。次いで、乳化および乳化後の操作は実施例1と同様にして水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-15)を得た。
【0156】
(実施例16:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造16)
反応器Bに、N-980N 50.6g、1,6-ヘキサンジオール3.11g、PCP-3を53.7g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.29g、イソホロンジイソシアネートを31.2g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.223mmol/gであった。次いで、乳化および乳化後の操作は実施例1と同様にして水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-16)を得た。
【0157】
(実施例17:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造17)
反応器Bに、N-980N 54.6g、1,6-ヘキサンジオール2.45g、PCP-1Dを57.1g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.29g、ヘキサメチレンジイソシアネートを24.5g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.192mmol/gであった。次いで、乳化および乳化後の操作は実施例1と同様にして水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-17)を得た。
【0158】
(実施例18:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造18)
反応器Bに、プラクセル220(ダイセル社製:数平均分子量2000;水酸基価56.11mgKOH/g;ε-カプロラクトン開環重合系エステルポリオール;平均官能基数2) 51.3g、1,6-ヘキサンジオール2.44g、PCP-1Eを53.7g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.29g、イソホロンジイソシアネートを31.2g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.251mmol/gであった。次いで、乳化および乳化後の操作は実施例1と同様にして水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-18)を得た。
【0159】
(比較例1:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造19)
反応器Bに、N-980N 103.4g、1,6-ヘキサンジオール4.08g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.29g、イソホロンジイソシアネートを31.2g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.197mmol/gであった。次いで、乳化および乳化後の操作は実施例1と同様にして水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-19)を得た。
【0160】
(比較例2:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造20)
反応器Bに、N-980N 99.1g、1,6-ヘキサンジオール3.91g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.29g、イソホロンジイソシアネートを33.6g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.340mmol/gであった。次いで、乳化および乳化後の操作は実施例14と同様にして水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-20)を得た。
【0161】
(比較例3:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造21)
反応器Bに、N-980N 97.0g、1,6-ヘキサンジオール3.82g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.29g、イソホロンジイソシアネートを34.8g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.263mmol/gであった。次いで、トリエチルアミンを3.99g仕込んでカルボキシル基を中和した後、撹拌しながら水を320g仕込み、乳化させた。乳化後、KL-245を0.18g加え、30分以内にアミン水(水30g、イソホロンジアミン4.97gを配合)を仕込み、アミン鎖延長反応を40℃にて12時間行った。FT-IRによりイソシアネート基の存在が確認されなくなったところで撹拌を停止した。その後、2Lのナスフラスコに反応溶液を移し、減圧蒸留することで、アセトン75g、水50gを除去し、水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-21)を得た。
【0162】
(比較例4:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造22)
反応器Bに、N-980N 101.1g、1,6-ヘキサンジオール3.56g、トリメチロールプロパン2.15g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.43g、イソホロンジイソシアネートを35.6g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.275mmol/gであった。次いで、乳化および乳化後の操作は比較例5と同様にして水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-22)を得た。
【0163】
(比較例5:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造23)
反応器Bに、N-980N 101.9g、1,6-ヘキサンジオール0.69g、トリメチロールプロパン4.29g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.43g、イソホロンジイソシアネートを35.6g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.328mmol/gであった。次いで、乳化および乳化後の操作は比較例5と同様にして水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-23)を得た。
【0164】
(比較例6:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造24)
反応器Bに、N-980N 106.8g、1,6-ヘキサンジオール1.59g、トリメチロールプロパン2.06g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.43g、イソホロンジイソシアネートを32.0g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.305mmol/gであった。次いで、乳化および乳化後の操作は比較例5と同様にして水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-24)を得た。
【0165】
【表2】
【表3】
【0166】
【表4】
【0167】
水由来のウレア基の含有量は、NCO含有量を測定した結果から算出しており、NCO含有量の誤差に起因して、マイナスの算出値となり得る。表4において、水由来のウレア基の含有量の数値に関して、マイナスとなっている割合が「0.01」と表記されているが、これは小数第三位を四捨五入したものであり、実際には0.005程度である。
【0168】
(実施例19:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造25)
反応器Bに、N-980N 50.2g、1,6-ヘキサンジオール3.52g、PCP-5を53.7g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.29g、イソホロンジイソシアネートを31.2g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.207mmol/gであった。次いで、乳化および乳化後の操作は実施例1と同様にして水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-25)を得た。
【0169】
(実施例20:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造26)
反応器Bに、N-980N 50.6g、1,6-ヘキサンジオール3.16g、PCP-6を53.7g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.29g、イソホロンジイソシアネートを31.2g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.229mmol/gであった。次いで、乳化および乳化後の操作は実施例1と同様にして水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-26)を得た。
【0170】
(実施例21:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造27)
反応器Bに、N-980N 52.6g、1,6-ヘキサンジオール1.18g、PCP-7を53.7g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.29g、イソホロンジイソシアネートを31.2g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.253mmol/gであった。次いで、乳化および乳化後の操作は実施例1と同様にして水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-27)を得た。
【0171】
(実施例22:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造28)
反応器Bに、N-980N 52.4g、1,6-ヘキサンジオール1.31g、PCP-8を53.7g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.29g、イソホロンジイソシアネートを31.2g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.268mmol/gであった。次いで、乳化および乳化後の操作は実施例1と同様にして水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-28)を得た。
【0172】
(実施例23:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造29)
反応器Bに、N-980N 53.5g、1,6-ヘキサンジオール0.24g、PCP-9を53.7g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.29g、イソホロンジイソシアネートを31.2g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.205mmol/gであった。次いで、乳化および乳化後の操作は実施例1と同様にして水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-29)を得た。
【0173】
(比較例7:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造30)
反応器Bに、N-980N 50.0g、1,6-ヘキサンジオール3.71g、PCP-4を53.7g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.29g、イソホロンジイソシアネートを31.2g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.224mmol/gであった。次いで、乳化および乳化後の操作は実施例1と同様にして水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-30)を得た。
【0174】
(比較例8:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造31)
反応器Bに、N-980N 56.8g、PCP-10を53.7g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.29g、イソホロンジイソシアネートを31.2g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.186mmol/gであった。次いで、乳化および乳化後の操作は実施例1と同様にして水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-31)を得た。
【0175】
【表5】
【0176】
(実施例24:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造32)
反応器Bに、N-980N 51.2g、PCP-1Dを53.7g、1,6-ヘキサンジオール2.6g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.29g、イソホロンジイソシアネートを27.1g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.257mmol/gであった。次いで、トリエチルアミンを3.99g仕込んでカルボキシル基を中和した後、撹拌しながら水を320g仕込み、乳化させた。乳化後、KL-245を0.18g加え、30分以内にアミン水(水30g、イソホロンジアミン3.68gを配合)を仕込み、アミン鎖延長反応を40℃にて12時間行った。FT-IRによりイソシアネート基の存在が確認されなくなったところで撹拌を停止した。その後、2Lのナスフラスコに反応溶液を移し、減圧蒸留することで、アセトン75g、水50gを除去し、水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-32)を得た。
【0177】
(実施例25:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造33)
反応器Bに、実施例24と同様にしてイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを得た。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.241mmol/gであった。次いで、トリエチルアミンを3.99g仕込んでカルボキシル基を中和した後、撹拌しながら水を320g仕込み、乳化させた。乳化後、KL-245を0.18g加え、30分以内にアミン水(水30g、イソホロンジアミン2.67gを配合)を仕込み、アミン鎖延長反応を40℃にて12時間行った。FT-IRによりイソシアネート基の存在が確認されなくなったところで撹拌を停止した。その後、2Lのナスフラスコに反応溶液を移し、減圧蒸留することで、アセトン75g、水50gを除去し、水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-33)を得た。
【0178】
(実施例26:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造34)
反応器Bに、実施例24と同様にしてイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを得た。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.268mmol/gであった。次いで、トリエチルアミンを3.99g仕込んでカルボキシル基を中和した後、撹拌しながら水を320g仕込み、乳化させた。乳化後、KL-245を0.18g加え、30分以内にアミン水(水30g、イソホロンジアミン1.99gを配合)を仕込み、アミン鎖延長反応を40℃にて12時間行った。FT-IRによりイソシアネート基の存在が確認されなくなったところで撹拌を停止した。その後、2Lのナスフラスコに反応溶液を移し、減圧蒸留することで、アセトン75g、水50gを除去し、水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-34)を得た。
【0179】
(実施例27:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造35)
反応器Bに、実施例24と同様にしてイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを得た。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.259mmol/gであった。次いで、トリエチルアミンを3.99g仕込んでカルボキシル基を中和した後、撹拌しながら水を320g仕込み、乳化させた。乳化後、KL-245を0.18g加え、30分以内にアミン水(水30g、イソホロンジアミン0.97gを配合)を仕込み、アミン鎖延長反応を40℃にて12時間行った。FT-IRによりイソシアネート基の存在が確認されなくなったところで撹拌を停止した。その後、2Lのナスフラスコに反応溶液を移し、減圧蒸留することで、アセトン75g、水50gを除去し、水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-35)を得た。
【0180】
(実施例28:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造36)
反応器Bに、実施例24と同様にしてイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを得た。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.258mmol/gであった。次いで、トリエチルアミンを3.99g仕込んでカルボキシル基を中和した後、撹拌しながら水を320g仕込み、乳化させた。乳化後、KL-245を0.18g加え、30分以内にアミン水(水30g、イソホロンジアミン0.49gを配合)を仕込み、アミン鎖延長反応を40℃にて12時間行った。FT-IRによりイソシアネート基の存在が確認されなくなったところで撹拌を停止した。その後、2Lのナスフラスコに反応溶液を移し、減圧蒸留することで、アセトン75g、水50gを除去し、水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-36)を得た。
【0181】
(実施例29:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造37)
反応器Bに、実施例24と同様にしてイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを得た。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.271mmol/gであった。次いで、トリエチルアミンを3.99g仕込んでカルボキシル基を中和した後、撹拌しながら水を350g仕込み、乳化させた。乳化後、KL-245を0.18g加え、アミン延長反応を40℃にて12時間行った。FT-IRによりイソシアネート基の存在が確認されなくなったところで撹拌を停止した。その後、2Lのナスフラスコに反応溶液を移し、減圧蒸留することで、アセトン75g、水50gを除去し、水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-37)を得た。
【0182】
(実施例30:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造38)
反応器Bに、N-980N 55.8g、PCP-1Dを55.8g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.29g、イソホロンジイソシアネートを27.1g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、2時間45分反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.399mmol/gであった。次いで、トリエチルアミンを3.99g仕込んでカルボキシル基を中和した後、撹拌しながら水を320g仕込み、乳化させた。乳化後、KL-245を0.18g加え、30分以内にアミン水(水30g、イソホロンジアミン3.20gを配合)を仕込み、アミン鎖延長反応を40℃にて12時間行った。FT-IRによりイソシアネート基の存在が確認されなくなったところで撹拌を停止した。その後、2Lのナスフラスコに反応溶液を移し、減圧蒸留することで、アセトン75g、水50gを除去し、水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-38)を得た。
【0183】
(実施例31:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造39)
反応器Bに、N-980N 55.8g、PCP-1Dを55.8g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.29g、イソホロンジイソシアネートを27.1g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、4時間15分反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.345mmol/gであった。次いで、トリエチルアミンを3.99g仕込んでカルボキシル基を中和した後、撹拌しながら水を320g仕込み、乳化させた。乳化後、KL-245を0.18g加え、30分以内にアミン水(水30g、イソホロンジアミン2.77gを配合)を仕込み、アミン鎖延長反応を40℃にて12時間行った。FT-IRによりイソシアネート基の存在が確認されなくなったところで撹拌を停止した。その後、2Lのナスフラスコに反応溶液を移し、減圧蒸留することで、アセトン75g、水50gを除去し、水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-39)を得た。
【0184】
(比較例9:ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造40)
反応器Bに、N-980N 55.8g、PCP-1Dを55.8g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.29g、イソホロンジイソシアネートを27.1g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、1時間20分反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.780mmol/gであった。次いで、トリエチルアミンを3.99g仕込んでカルボキシル基を中和した後、撹拌しながら水を320g仕込み、乳化させた。乳化後、KL-245を0.18g加え、30分以内にアミン水(水30g、イソホロンジアミン6.25gを配合)を仕込み、アミン鎖延長反応を40℃にて12時間行った。FT-IRによりイソシアネート基の存在が確認されなくなったところで撹拌を停止した。その後、2Lのナスフラスコに反応溶液を移し、減圧蒸留することで、アセトン75g、水50gを除去し、水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-40)を得た。
【0185】
【表6】
【0186】
・トリメチロールプロパン:Sigma-Aldrich社製
・1,6-ヘキサンジオール:BASF-JAPAN社製
・2,2-ジメチロールプロピオン酸:東京化成工業社製
・イソホロンジイソシアネート:エボニック社製
・ヘキサメチレンジイソシアネート:東京化成工業社製
・アセトン:KHネオケム社製
・トリエチルアミン:キシダ化学社製
・イソホロンジアミン:東京化成工業社製
・ネオスタンU-600:日東化成株式会社製
・KL-245:Evonik社製
・水:精製水
【0187】
<引張特性試験用フィルム作製方法>
実施例1~31および比較例1~9で得られたPUD-1~PUD-40水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物100部に対してジプロピレングリコールジメチルエーテルを14.0部添加し、混合して主剤を得た。その主剤を乾燥膜厚が約100μmとなるように塗布し、25℃で2日間、80℃で2時間、乾燥させることにより硬化物を作製した。この硬化物を用いて、物性の評価を行った。結果を表7~10に示す。
【0188】
[評価試験1]
[引張特性]
得られた硬化物を、JIS K7321に準拠して引張特性を測定した。(100%モジュラス、破断時強度、破断時伸び)
・試験装置:テンシロンUTA-500(エー・アンド・デー社製)
・測定条件:25℃×50%RH
・ヘッドスピード:200mm/分
・ダンベル4号
【0189】
[軟化温度]
得られたフィルムからダンベルを用いて試験片を得た後、試験片に2cmの標線を記し、標線中央部の厚みを測定した。試験片の一方のつかみ部に所定重量のおもりを取り付け、もう一方のつかみ部をダブルクリップで挟み込み、クリップが上側となるように乾燥機内に吊り下げた後、乾燥機内を昇温し標線間距離を観測、標線間距離が4cmとなったときの温度を軟化温度として読み取った。
・処理装置:送風定温乾燥機DRK633DA(アドバンテック社製)
・おもり重量:標線中央部厚み(μm)×0.05g
・ダンベル2号(JIS K6251準拠)
・昇温速度:5℃/分
【0190】
[評価基準]
100%モジュラス、破断時強度、破断時伸び、および軟化温度の各物性値を、A、B、CおよびD(A:非常に良好、B:良好、C:普通、D:不良)で評価した。さらに、総合評価はA、BおよびD(A:非常に良好、B:良好、D不良)とした。
【0191】
<100%モジュラス>
A:4.0MPa未満
B:4.0MPa以上5.0MPa未満
D:5.0MPa以上
<破断時強度>
A:30MPa以上
C:30MPa未満
<破断時伸び>
A:450MPa以上
C:450MPa未満
<軟化温度>
A:120℃以上
B:120℃未満90℃以上
D:90℃未満
<総合評価>
A:各物性値の評価がAのみ
B:各物性値の評価がDを含まず、少なくとも1つのBまたはCを含む
D:各物性値の評価がDを含む
【0192】
【表7】
【0193】
【表8】
【0194】
【表9】
【0195】
【表10】
【0196】
[ポリカーボネートポリオールの製造2-1]
攪拌機、温度計、加熱装置、冷却器を組んだ1L二口ガラス製反応器に、トリメチロールプロパン31.3g、1,6-ヘキサンジオール413.8g、炭酸ジエチル454.9g、およびリチウムアセチルアセトナート0.045gを混合し、常圧下、低沸点成分を除去しながら100~150℃で8時間反応させた。さらに反応温度を150℃としてフラスコ内の圧力を1kPaまで減圧し、さらに8時間反応を行うことでポリカーボネートポリオールを得た(PCP-1F)。
【0197】
[ポリカーボネートポリオールの製造2-2]
攪拌機、温度計、加熱装置、冷却器を組んだ1L二口ガラス製反応器に、トリメチロールプロパン74.4g、1,6-ヘキサンジオール393.2g、炭酸ジエチル432.4g、およびリチウムアセチルアセトナート0.045gを混合し、常圧下、低沸点成分を除去しながら100~150℃で8時間反応させた。さらに反応温度を150℃としてフラスコ内の圧力を1kPaまで減圧し、さらに8時間反応を行うことでポリカーボネートポリオールを得た(PCP-2B)。
【0198】
ポリカーボネートポリオールの製造2-1~2-2を表11にまとめて示す。
【0199】
【表11】
【0200】
・1,6-ヘキサンジオール:BASF-JAPAN社製
・トリメチロールプロパン:Sigma-Aldrich社製
・炭酸ジエチル:Sigma-Aldrich社製
・リチウムアセチルアセトナート:Sigma-Aldrich社製。
【0201】
(実施例63:水性ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造2-1)
撹拌機、温度計、窒素シール管、および冷却器を装着した容量1Lの反応器(以下、反応基Aと称する)に、N-980N(東ソー社製:数平均分子量2000;水酸基価56.11mgKOH/g;1,6-ヘキサンジオール系ポリカーボネートジオール)51.1g、1,6-ヘキサンジオール3.07g、PCP-1Fを51.9g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.43g、イソホロンジイソシアネートを34.6g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.356mmol/gであった。次いで、トリエチルアミンを4.10g仕込んでカルボキシル基を中和した後、撹拌しながら水を320g仕込み、乳化させた。乳化後、KL-245を0.18g加え、30分以内にアミン水(水30g、イソホロンジアミン2.04g、モノエタノールアミン1.83gを配合)を仕込み、アミン鎖延長反応を40℃にて12時間行った。FT-IRによりイソシアネート基の存在が確認されなくなったところで撹拌を停止した。その後、2Lのナスフラスコに反応溶液を移し、減圧蒸留することで、アセトン75g、水50gを除去し、水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-41)を得た。
【0202】
(実施例64:水性ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造2-2)
反応器Aに、N-980N 26.6g、PCP-1Fを79.8g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.29g、イソホロンジイソシアネートを30.5g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.349mmol/gであった。次いで、トリエチルアミンを3.99g仕込んでカルボキシル基を中和した後、撹拌しながら水を320g仕込み、乳化させた。乳化後、KL-245を0.18g加え、30分以内にアミン水(水30g、イソホロンジアミン1.99g、モノエタノールアミン1.78gを配合)を仕込み、アミン鎖延長反応を40℃にて12時間行った。FT-IRによりイソシアネート基の存在が確認されなくなったところで撹拌を停止した。その後、2Lのナスフラスコに反応溶液を移し、減圧蒸留することで、アセトン75g、水50gを除去し、水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-42)を得た。
【0203】
(実施例65:水性ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造2-3)
反応器Aに、N-980N 81.1g、1,6-ヘキサンジオール4.33g、PCP-2Aを15.1g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.29g、イソホロンジイソシアネートを36.5g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.371mmol/gであった。次いで、トリエチルアミンを3.99g仕込んでカルボキシル基を中和した後、撹拌しながら水を320g仕込み、乳化させた。乳化後、KL-245を0.18g加え、30分以内にアミン水(水30g、イソホロンジアミン1.99g、モノエタノールアミン1.43gを配合)を仕込み、アミン鎖延長反応を40℃にて12時間行った。FT-IRによりイソシアネート基の存在が確認されなくなったところで撹拌を停止した。その後、2Lのナスフラスコに反応溶液を移し、減圧蒸留することで、アセトン75g、水50gを除去し、水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-43)を得た。
【0204】
(比較例19:水性ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造2-4)
反応器Aに、N-980N 103.1g、トリメチロールプロパンを3.00g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.43g、イソホロンジイソシアネートを34.6g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.361mmol/gであった。次いで、トリエチルアミンを4.10g仕込んでカルボキシル基を中和した後、撹拌しながら水を320g仕込み、乳化させた。乳化後、KL-245を0.18g加え、30分以内にアミン水(水30g、イソホロンジアミン2.04g、モノエタノールアミン1.83gを配合)を仕込み、アミン鎖延長反応を40℃にて12時間行った。FT-IRによりイソシアネート基の存在が確認されなくなったところで撹拌を停止した。その後、2Lのナスフラスコに反応溶液を移し、減圧蒸留することで、アセトン75g、水50gを除去し、水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-44)を得た。
【0205】
(比較例20:水性ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造2-5)
反応器Aに、N-980N 102.0g、1,6-ヘキサンジオール4.02g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.43g、イソホロンジイソシアネートを34.6g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.356mmol/gであった。次いで、トリエチルアミンを4.10g仕込んでカルボキシル基を中和した後、撹拌しながら水を320g仕込み、乳化させた。乳化後、KL-245を0.18g加え、30分以内にアミン水(水30g、イソホロンジアミン2.04g、モノエタノールアミン1.83gを配合)を仕込み、アミン鎖延長反応を40℃にて12時間行った。FT-IRによりイソシアネート基の存在が確認されなくなったところで撹拌を停止した。その後、2Lのナスフラスコに反応溶液を移し、減圧蒸留することで、アセトン75g、水50gを除去し、水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-45)を得た。
【0206】
(比較例21:水性ポリウレタン樹脂エマルジョンの製造2-6)
反応器Aに、N-980N 97.6g、1,6-ヘキサンジオール3.85g、アセトン75g、2,2-ジメチロールプロパン酸を5.43g、イソホロンジイソシアネートを37.1g仕込み、60℃に加温し、同温度で30分撹拌した後、U-600を0.12g加え、5時間反応させた。ウレタン化終了時の未反応のイソシアネート基含有量は、上記仕込み量に対して、0.420mmol/gであった。次いで、トリエチルアミンを4.10g仕込んでカルボキシル基を中和した後、撹拌しながら水を320g仕込み、乳化させた。乳化後、KL-245を0.18g加え、30分以内にアミン水(水30g、イソホロンジアミン4.09g、モノエタノールアミン1.83gを配合)を仕込み、アミン鎖延長反応を40℃にて12時間行った。FT-IRによりイソシアネート基の存在が確認されなくなったところで撹拌を停止した。その後、2Lのナスフラスコに反応溶液を移し、減圧蒸留することで、アセトン75g、水50gを除去し、水性ポリウレタン樹脂エマルジョン組成物(PUD-46)を得た。
【0207】
実施例63~65(PUD41~43)および比較例19~21(PUD44~46)を表12にまとめて示す。
【0208】
【表12】
【0209】
・トリメチロールプロパン:Sigma-Aldrich社製
・1,6-ヘキサンジオール:BASF-JAPAN社製
・2,2-ジメチロールプロピオン酸:東京化成社製
・イソホロンジイソシアネート:エボニック社製
・アセトン:KHネオケム社製
・トリエチルアミン:キシダ化学社製
・イソホロンジアミン:東京化成社製
・モノエタノールアミン:富士フイルム和光純薬社製
・ネオスタンU-600:日東化成株式会社製
・KL-245:Evonik社製
・水:市水
【0210】
さらに、200mLガラス瓶に実施例63~65および比較例19~21で得られたポリオール成分であるPUD-41~PUD-46、ポリイソシアネート成分である硬化剤(X)、および成膜助剤を表13に記載の配合量で投入し、混合して配合液を得た。その配合液を乾燥膜厚が約100μmとなるように離型紙上に塗布し、25℃で1日間、80℃で2時間、乾燥させることにより硬化物を作製した。この硬化物を用いて、物性の評価を行った。結果を表13に示す。表中の仕込単位はグラムである。
・ジプロピレングリコールジメチルエーテル:富士フイルム和光純薬社製
・アクアネート200:東ソー社製(ノニオン型水分散性ポリイソシアネート、NCO含有量=11.9%)
【0211】
[評価試験2-1]
[引張特性]
得られた硬化物を、JIS K7321に準拠して引張特性を測定した。(100%モジュラス、破断時強度、破断時伸び)
・試験装置:テンシロンUTA-500(エー・アンド・デー社製)
・測定条件:25℃×50%RH
・ヘッドスピード:200mm/分
・ダンベル4号
【0212】
[軟化温度]
得られたフィルムからダンベルを用いて試験片を得た後、試験片に2cmの標線を記し、標線中央部の厚みを測定した。試験片の一方のつかみ部に所定重量のおもりを取り付け、もう一方のつかみ部をダブルクリップで挟み込み、クリップが上側となるように乾燥機内に吊り下げた後、乾燥機内を昇温し標線間距離を観測、標線間距離が4cmとなったときの温度を軟化温度として読み取った。
・処理装置:送風定温乾燥機DRK633DA(アドバンテック社製)
・おもり重量:標線中央部厚み(μm)×0.05g
・ダンベル2号(JIS K6251準拠)
・昇温速度:5℃/分
【0213】
[評価基準]
100%モジュラス、破断時強度、破断時伸び、および軟化温度の各物性値を、A、B、CおよびD(A:非常に良好、B:良好、C:普通、D:不良)で評価した。さらに、総合評価はA、BおよびD(A:非常に良好、B:良好、D不良)とした。
<100%モジュラス>
A:5.0MPa未満
B:5.0MPa以上6.5MPa未満
D:6.5MPa以上
<破断時強度>
A:30MPa以上
C:30MPa未満
<破断時伸び>
A:250MPa以上
C:250MPa未満
<軟化温度>
A:230℃以上
B:230℃未満210℃以上
D:210℃未満
<総合評価>
A:各物性値の評価がAのみ
B:各物性値の評価がDを含まず、少なくとも1つのBまたはCを含む
D:各物性値の評価がDを含む
【0214】
【表13】
【0215】
・アクアネート200:東ソー社製(ノニオン型水分散性ポリイソシアネート、NCO含有量=11.9%)
・ジプロピレングリコールジメチルエーテル:富士フイルム和光純薬社製