(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/28 20060101AFI20241112BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20241112BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20241112BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
H01L23/28 K
H01L25/04 C
H01L23/36 A
(21)【出願番号】P 2023567451
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2021046597
(87)【国際公開番号】W WO2023112274
(87)【国際公開日】2023-06-22
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東畠 猛
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/094189(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3144633(JP,U)
【文献】特開2021-022603(JP,A)
【文献】特開2015-076511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L23/28 -23/31
H01L23/34 -23/36
H01L23/373-23/427
H01L23/44
H01L23/467-23/473
H01L25/00 -25/07
H01L25/10 -25/11
H01L25/16 -25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱板と、
前記放熱板の上に設けられた絶縁基板と、
前記絶縁基板の上に実装された半導体チップと、
前記絶縁基板及び前記半導体チップを囲むように前記放熱板の外周部にシリコーン接着剤により接着されたケースと、
前記絶縁基板の絶縁層の外周と前記ケースの内壁との間において前記放熱板の上に設けられたワイヤボンドとを備え
、
前記ワイヤボンドには始点と終点以外にステッチが設けられていないことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
放熱板と、
前記放熱板の上に設けられた絶縁基板と、
前記絶縁基板の上に実装された半導体チップと、
前記絶縁基板及び前記半導体チップを囲むように前記放熱板の外周部にシリコーン接着剤により接着されたケースと、
前記絶縁基板の絶縁層の外周と前記ケースの内壁との間において前記放熱板の上に設けられたワイヤボンドとを備え、
前記ワイヤボンドはループ状になっておらず始点から終点まで前記放熱板に接触していることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
前記ワイヤボンドは、平面視で前記絶縁層の外周に対して平行になるように配置されていることを特徴とする請求項1
又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ワイヤボンドは、前記ケースの内側に押し出された前記シリコーン接着剤を塞き止めることを特徴とする請求項1
~3の何れか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ワイヤボンドのワイヤ径は、前記絶縁層と前記放熱板との間隔を超えないことを特徴とする請求項1~
4の何れか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体チップに接続されたワイヤを更に備え、
前記ワイヤボンドのワイヤ径は前記ワイヤのワイヤ径と同じであることを特徴とする請求項1~
5の何れか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記絶縁基板の前記絶縁層の外周と前記ケースの内壁との距離が1.5mm以下であることを特徴とする請求項1~
6の何れか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体チップはワイドバンドギャップ半導体によって形成されていることを特徴とする請求項1~
7の何れか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁基板を囲むように放熱板の外周部にシリコーン接着剤によりケースが接着された半導体装置が用いられている。ケースの接着時に押し出されたシリコーン接着剤の流れ込みを止めるために、絶縁基板とケースとの間において放熱板の上にレジストの凸部を設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、液状のレジストを硬化させて凸部を製作するため、凸部の高さを確保することは難しい。従って、レジストの凸部ではシリコーン接着剤の流れ込みを十分に止めることはできなかった。このため、ケースの接着時に押し出されたシリコーン接着剤が絶縁基板の絶縁層の下に流れ込んでボイドが発生する場合があった。ボイドにより部分放電が発生し絶縁耐量が低下し、信頼性が損なわれるという問題があった。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は信頼性を向上することができる半導体装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る半導体装置は、放熱板と、前記放熱板の上に設けられた絶縁基板と、前記絶縁基板の上に実装された半導体チップと、前記絶縁基板及び前記半導体チップを囲むように前記放熱板の外周部にシリコーン接着剤により接着されたケースと、前記絶縁基板の絶縁層の外周と前記ケースの内壁との間において前記放熱板の上に設けられたワイヤボンドとを備え、前記ワイヤボンドには始点と終点以外にステッチが設けられていないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示では、ケースの内側に押し出されたシリコーン接着剤をワイヤボンドが塞き止める。これにより、シリコーン接着剤が絶縁基板の絶縁層の下に流れ込むのを防ぐことができる。このため、ボイドの発生とそれに伴う部分放電の発生を抑え、絶縁耐量の低下を防いで信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る半導体装置を示す平面図である。
【
図3】比較例1に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図4】実施の形態1に係る半導体装置の一部をワイヤボンドに沿って切り出した図である。
【
図5】実施の形態1と比較例2のワイヤボンドを対比させた図である。
【
図6】実施の形態2と比較例3の半導体装置の一部を対比させた図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態に係る半導体装置について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る半導体装置を示す平面図である。
図2は
図1のI-IIに沿った断面図である。放熱板1の材質はCu、Al、又はAlSiC複合材である。放熱板1の上に絶縁基板2が設けられている。絶縁基板2は、絶縁層2aと、絶縁層2aの下面に設けられた下面電極2bと、絶縁層2aの上面に設けられた上面電極2cとを有する。絶縁層2aの材質はAlN、Si
3N
4、Al
2O
3である。下面電極2bと上面電極2cの材質はCu、Alなどの金属である。下面電極2bがはんだ3により放熱板1の上面に接合されている。
【0011】
半導体チップ4が絶縁基板2の上に実装されている。半導体チップ4の下面電極は絶縁基板2の上面電極2cにはんだ5により接合されている。半導体チップ4の上面電極にワイヤ6が接合されている。
【0012】
PPS樹脂からなるケース7が、絶縁基板2及び半導体チップ4を囲むように放熱板1の外周部にシリコーン接着剤8により接着されている。封止剤9がケース7の内部に充填されている。
【0013】
ワイヤボンド10が、絶縁基板2の絶縁層2aの外周とケース7の内壁との間において放熱板1の上に設けられている。ワイヤボンド10は、平面視で絶縁層2aの外周に対して平行になるように配置されている。従来のレジストで形成した凸部の高さは10~50μmであるのに対し、ワイヤボンド10のワイヤ径は200~600μmである。ワイヤボンド10により十分な高さの凸部を簡単に形成することができる。
【0014】
続いて、本実施の形態の効果を比較例1と比較して説明する。
図3は、比較例1に係る半導体装置を示す断面図である。比較例1にはワイヤボンド10が設けられていない。シリコーン接着剤8は、放熱板1の外周部に塗布され、ケース7の接着時にケース7の内側と外側に押し出される。ケース7の内側に押し出されたシリコーン接着剤8が絶縁基板2の絶縁層2aの下に流れ込んでボイド11が発生する。ボイド11により部分放電が発生し絶縁耐量が低下し、信頼性が損なわれる。
【0015】
一方、本実施の形態では、ワイヤボンド10が、ケース7の内側に押し出されたシリコーン接着剤8を塞き止める。これにより、シリコーン接着剤8が絶縁基板2の絶縁層2aの下に流れ込むのを防ぐことができる。このため、ボイドの発生とそれに伴う部分放電の発生を抑え、絶縁耐量の低下を防いで信頼性を向上することができる。
【0016】
図4は、実施の形態1に係る半導体装置の一部をワイヤボンドに沿って切り出した図である。ワイヤボンド10のステッチ12を設けた部分は、ワイヤ径が小さくなってワイヤボンド10の高さが部分的に低くなる。その部分からシリコーン接着剤8が流れ込む可能性がある。そこで、ワイヤボンド10には始点と終点以外にステッチ12を設けないようにする。これにより、シリコーン接着剤8の流れ込みを防ぐことができる。この場合、始点と終点以外でワイヤボンド10は放熱板1にボンディングされておらず、一直線に張った状態で放熱板1の上に載っている。
【0017】
図5は、実施の形態1と比較例2のワイヤボンドを対比させた図である。比較例2ではワイヤボンド10がループ状になっている。このため、ワイヤボンド10と放熱板1との間の隙間13からシリコーン接着剤8が流れ込んでしまう。一方、実施の形態1では、ワイヤボンド10はループ状になっておらず始点から終点まで放熱板1に接触している。これによりワイヤボンド10と放熱板1との間の隙間13が無くなるため、シリコーン接着剤8の流れ込みを防ぐことができる。
【0018】
また、電流容量拡大に伴って半導体チップ4のサイズが拡大し、半導体チップ4を搭載する絶縁基板2のサイズも拡大している。そこで、絶縁基板2の絶縁層2aの外周とケース7の内壁との距離を1.5mm以下にする。この距離を短縮することによりサイズ拡大した絶縁基板2の搭載を可能とし、半導体装置の外形サイズを抑えつつ、電流容量を大きくすることができる。
【0019】
また、ワイヤボンド10のワイヤ径が、半導体チップ4に接続されたワイヤ6のワイヤ径と同じであることが好ましい。これにより、ワイヤボンド装置及びワイヤ材料を共通化できるため、導入費用の低減、段取り替え時間の抑制、材料費低減が期待できる。
【0020】
実施の形態2.
図6は、実施の形態2と比較例3の半導体装置の一部を対比させた図である。絶縁層2aと放熱板1との間隔は、下面電極2bの厚みとはんだ3の厚みの合計であり、300~600μmである。比較例3では、ワイヤボンド10のワイヤ径が絶縁層2aと放熱板1との間隔を超えている。ワイヤボンド10は、放熱板1に接合されるため、放熱板1と同電位である。従って、比較例3では絶縁基板2の上面電極2cから放熱板1までの絶縁距離が短くなり、絶縁耐量が低下する。一方、実施の形態2では、ワイヤボンド10のワイヤ径は、絶縁層2aと放熱板1との間隔を超えない。このため、絶縁耐量の低下を防いで信頼性を向上することができる。その他の構成及び効果は実施の形態1と同様である。
【0021】
なお、半導体チップ4は、珪素によって形成されたものに限らず、珪素に比べてバンドギャップが大きいワイドバンドギャップ半導体によって形成されたものでもよい。ワイドバンドギャップ半導体は、例えば、炭化珪素、窒化ガリウム系材料、又はダイヤモンドである。このようなワイドバンドギャップ半導体によって形成された半導体チップは、耐電圧性及び許容電流密度が高いため、小型化できる。この小型化された半導体チップを用いることで、この半導体チップを組み込んだ半導体装置も小型化・高集積化できる。また、半導体チップの耐熱性が高いため、ヒートシンクの放熱フィンを小型化でき、水冷部を空冷化できるので、半導体装置を更に小型化できる。また、半導体チップの電力損失が低く高効率であるため、半導体装置を高効率化できる。
【符号の説明】
【0022】
1 放熱板、2 絶縁基板、2a 絶縁層、4 半導体チップ、6 ワイヤ、7 ケース、8 シリコーン接着剤、10 ワイヤボンド、12 ステッチ