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7586349感光性樹脂組成物セット、光導波路及びその製造方法、光電気混載基板、シートセット、コア用樹脂組成物、クラッド用樹脂組成物、並びに樹脂シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物セット、光導波路及びその製造方法、光電気混載基板、シートセット、コア用樹脂組成物、クラッド用樹脂組成物、並びに樹脂シート
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/12 20060101AFI20241112BHJP
   G02B 6/13 20060101ALI20241112BHJP
   C08L 61/06 20060101ALI20241112BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20241112BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
G02B6/12 371
G02B6/13
C08L61/06
G03F7/004 501
G03F7/038 601
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023576808
(86)(22)【出願日】2023-01-17
(86)【国際出願番号】 JP2023001168
(87)【国際公開番号】W WO2023145537
(87)【国際公開日】2023-08-03
【審査請求日】2024-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2022011100
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】唐川 成弘
(72)【発明者】
【氏名】中原 祐一
(72)【発明者】
【氏名】山田 恵
(72)【発明者】
【氏名】海塩 洋
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-078924(JP,A)
【文献】国際公開第2005/080458(WO,A1)
【文献】特開2008-077057(JP,A)
【文献】特開2021-117330(JP,A)
【文献】国際公開第2020/121818(WO,A1)
【文献】特開2007-052120(JP,A)
【文献】特開2010-210851(JP,A)
【文献】特開2009-198767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12 - 6/14
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
G03C 3/00
G03F 7/004 - 7/04
G03F 7/06
G03F 7/075 - 7/115
G03F 7/16 - 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア用樹脂組成物とクラッド用樹脂組成物とを含む感光性樹脂組成物セットであって;
前記コア用樹脂組成物が、1分子当たり2個以上のフェノール性水酸基を有する(A)フェノール樹脂、(B)光酸発生剤及び(C)架橋剤を含み;
前記クラッド用樹脂組成物が、1分子当たり2個以上のフェノール性水酸基を有する(a)フェノール樹脂、(b)光酸発生剤及び(c)架橋剤を含み;
下記式(1)で表される開口数NAが、0.05より大きく、0.4未満である、感光性樹脂組成物セット。
【数1】
(式(1)において、
coreは、前記コア用樹脂組成物の硬化物の屈折率を表し、
cladは、前記クラッド用樹脂組成物の硬化物の屈折率を表す。)
【請求項2】
前記(C)架橋剤が、アミノ樹脂である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物セット。
【請求項3】
前記コア用樹脂組成物が、(D)2,500以上の重量平均分子量を有するポリマーを含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物セット。
【請求項4】
前記コア用樹脂組成物が、(E)下記式(E-1)で表される化合物を含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物セット。
【化1】
(式(E-1)において、Re1、Re2及びRe3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭化水素基を表す。Re1とRe2とは、結合して環を形成していてもよい。)
【請求項5】
光導波路の製造用の感光性樹脂組成物セットである、請求項1に記載の感光性樹脂組成物セット。
【請求項6】
波長1300nm~1320nmの光を伝送可能な光導波路の製造用の感光性樹脂組成物セットである、請求項1に記載の感光性樹脂組成物セット。
【請求項7】
シングルモードの光導波路の製造用の感光性樹脂組成物セットである、請求項1に記載の感光性樹脂組成物セット。
【請求項8】
コア層及びクラッド層を備えた光導波路であって;
前記コア層が、1分子当たり2個以上のフェノール性水酸基を有する(A)フェノール樹脂、(B)光酸発生剤及び(C)架橋剤を含むコア用樹脂組成物の硬化物を含み;
前記クラッド層が、1分子当たり2個以上のフェノール性水酸基を有する(a)フェノール樹脂、(b)光酸発生剤及び(c)架橋剤を含むクラッド用樹脂組成物の硬化物を含み;
下記式(1)で表される開口数NAが、0.05より大きく、0.4未満である、光導波路。
【数2】
(式(1)において、
coreは、前記コア用樹脂組成物の硬化物の屈折率を表し、
cladは、前記クラッド用樹脂組成物の硬化物の屈折率を表す。)
【請求項9】
波長1300nm~1320nmの光を伝送可能である、請求項8に記載の光導波路。
【請求項10】
シングルモードの光導波路である、請求項8に記載の光導波路。
【請求項11】
請求項8~10のいずれか一項に記載の光導波路を備えた光電気混載基板。
【請求項12】
クラッド用樹脂組成物を含む第一組成物層を形成する工程と、
前記第一組成物層に露光処理を施す工程と、
前記第一組成物層を硬化させる工程と、
前記第一組成物層上に、コア用樹脂組成物を含む第二組成物層を形成する工程と、
前記第二組成物層に露光処理を施す工程と、
前記第二組成物層に現像処理を施す工程と、
前記第二組成物層を硬化させる工程と、
前記第二組成物層上に、前記クラッド用樹脂組成物を含む第三組成物層を形成する工程と、
前記第三組成物層に露光処理を施す工程と、
前記第三組成物層を硬化させる工程と、をこの順に含む、光導波路の製造方法であって;
前記コア用樹脂組成物が、1分子当たり2個以上のフェノール性水酸基を有する(A)フェノール樹脂、(B)光酸発生剤及び(C)架橋剤を含み;
前記クラッド用樹脂組成物が、1分子当たり2個以上のフェノール性水酸基を有する(a)フェノール樹脂、(b)光酸発生剤及び(c)架橋剤を含み;
下記式(1)で表される開口数NAが、0.05より大きく、0.4未満である、光導波路の製造方法。
【数3】
(式(1)において、
coreは、前記コア用樹脂組成物の硬化物の屈折率を表し、
cladは、前記クラッド用樹脂組成物の硬化物の屈折率を表す。)
【請求項13】
コア用樹脂シートとクラッド用樹脂シートとを含むシートセットであって;
前記コア用樹脂シートが、1分子当たり2個以上のフェノール性水酸基を有する(A)フェノール樹脂、(B)光酸発生剤及び(C)架橋剤を含むコア用樹脂組成物を含むコア用樹脂組成物層を備え;
前記クラッド用樹脂シートが、1分子当たり2個以上のフェノール性水酸基を有する(a)フェノール樹脂、(b)光酸発生剤及び(c)架橋剤を含むクラッド用樹脂組成物を含むクラッド用樹脂組成物層を備え;
下記式(1)で表される開口数NAが、0.05より大きく、0.4未満である、シートセット。
【数4】
(式(1)において、
coreは、前記コア用樹脂組成物の硬化物の屈折率を表し、
cladは、前記クラッド用樹脂組成物の硬化物の屈折率を表す。)
【請求項14】
1分子当たり2個以上のフェノール性水酸基を有する(a)フェノール樹脂、(b)光酸発生剤及び(c)架橋剤を含むクラッド用樹脂組成物の硬化物を含むクラッド層中にコア層を形成するためのコア用樹脂組成物であって;
前記コア用樹脂組成物が、1分子当たり2個以上のフェノール性水酸基を有する(A)フェノール樹脂、(B)光酸発生剤及び(C)架橋剤を含み;
下記式(1)で表される開口数NAが、0.05より大きく、0.4未満である、コア用樹脂組成物。
【数5】
(式(1)において、
coreは、前記コア用樹脂組成物の硬化物の屈折率を表し、
cladは、前記クラッド用樹脂組成物の硬化物の屈折率を表す。)
【請求項15】
請求項14に記載の前記コア用樹脂組成物を含む樹脂組成物層を備える、樹脂シート。
【請求項16】
1分子当たり2個以上のフェノール性水酸基を有する(A)フェノール樹脂、(B)光酸発生剤及び(C)架橋剤を含むコア用樹脂組成物の硬化物を含むコア層を覆うクラッド層を形成するためのクラッド用樹脂組成物であって;
前記クラッド用樹脂組成物が、1分子当たり2個以上のフェノール性水酸基を有する(a)フェノール樹脂、(b)光酸発生剤及び(c)架橋剤を含み;
下記式(1)で表される開口数NAが、0.05より大きく、0.4未満である、クラッド用樹脂組成物。
【数6】
(式(1)において、
coreは、前記コア用樹脂組成物の硬化物の屈折率を表し、
cladは、前記クラッド用樹脂組成物の硬化物の屈折率を表す。)
【請求項17】
請求項16に記載の前記クラッド用樹脂組成物を含む樹脂組成物層を備える、樹脂シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物セット、光導波路及びその製造方法、光電気混載基板、シートセット、コア用樹脂組成物、クラッド用樹脂組成物並びに樹脂シートに関する。
【背景技術】
【0002】
5G通信、自動運転、IoT、人工知能、ビッグデータ等の技術進歩により通信の超高速化及び大容量化の要求が高まっている。その根幹を支える半導体パッケージは、従来、高周波電流を流すことにより高速通信に対応をしてきた。しかし、近年では、高速通信によるノイズの発生、通信の損失、及び発熱の課題が顕在化している。これらの課題を解決するために、電気配線基板に光回路を実装し、省エネルギーと低遅延かつ高速通信を実現する取り組みが近年盛んに行われている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-211540号公報
【文献】特許第5771978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に高速伝送が求められるデータセンターでは、シリコンフォトニクスの導入に関する研究が活発になされている。シリコンフォトニクスは、従来のLSI製造プロセスと整合性が高い。よって、シリコンフォトニクスを活用することにより、電子回路集積技術で培われた技術をもとに、ナノメートルサイズの細線導波路の形成が低コストで可能になると期待されている。
【0005】
例えば、シリコンフォトニクスによれば、細線導波路によってチップに光集積回路を形成することが期待される。このチップを搭載した光電気混載基板を製造する場合、チップ内の細線導波路から信号光をチップ外に取り出してチップ間の配線へと接続するために、光電気混載基板に光導波路を設けることが求められる。微細な光導波路を効率よく形成する観点から、光導波路を感光性樹脂組成物の硬化物によって形成することが望まれる。ところが、従来の感光性樹脂組成物を用いて形成される光導波路は、伝送損失が大きかった。
【0006】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、伝送損失の小さい光導波路を製造できる感光性樹脂組成物セット;伝送損失を小さくできる光導波路及びその製造方法;前記の光導波路を備える光電気混載基板;並びに、伝送損失の小さい光導波路を形成できるシートセット、コア用樹脂組成物、クラッド用樹脂組成物及び樹脂シート;を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、本発明者は、(A)フェノール樹脂、(B)光酸発生剤及び(C)架橋剤を含むコア用樹脂組成物と、(a)フェノール樹脂、(b)光酸発生剤及び(c)架橋剤を含むクラッド用樹脂組成物とを組み合わせて、特定の範囲の開口数NAを有する光導波路を製造した場合に、光の伝送損失を抑制できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
【0008】
〔1〕 コア用樹脂組成物とクラッド用樹脂組成物とを含む感光性樹脂組成物セットであって;
コア用樹脂組成物が、(A)フェノール樹脂、(B)光酸発生剤及び(C)架橋剤を含み;
クラッド用樹脂組成物が、(a)フェノール樹脂、(b)光酸発生剤及び(c)架橋剤を含み;
下記式(1)で表される開口数NAが、0.05より大きく、0.4未満である、感光性樹脂組成物セット。
【数1】
(式(1)において、
coreは、コア用樹脂組成物の硬化物の屈折率を表し、
cladは、クラッド用樹脂組成物の硬化物の屈折率を表す。)
〔2〕 (C)架橋剤が、アミノ樹脂である、〔1〕に記載の感光性樹脂組成物セット。
〔3〕 コア用樹脂組成物が、(D)2,500以上の重量平均分子量を有するポリマーを含む、〔1〕又は〔2〕に記載の感光性樹脂組成物セット。
〔4〕 コア用樹脂組成物が、(E)下記式(E-1)で表される化合物を含む、〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物セット。
【化1】
(式(E-1)において、Re1、Re2及びRe3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭化水素基を表す。Re1とRe2とは、結合して環を形成していてもよい。)
〔5〕 光導波路の製造用の感光性樹脂組成物セットである、〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物セット。
〔6〕 波長1300nm~1320nmの光を伝送可能な光導波路の製造用の感光性樹脂組成物セットである、〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物セット。
〔7〕 シングルモードの光導波路の製造用の感光性樹脂組成物セットである、〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物セット。
〔8〕 コア層及びクラッド層を備えた光導波路であって;
コア層が、(A)フェノール樹脂、(B)光酸発生剤及び(C)架橋剤を含むコア用樹脂組成物の硬化物を含み;
クラッド層が、(a)フェノール樹脂、(b)光酸発生剤及び(c)架橋剤を含むクラッド用樹脂組成物の硬化物を含み;
下記式(1)で表される開口数NAが、0.05より大きく、0.4未満である、光導波路。
【数2】
(式(1)において、
coreは、コア用樹脂組成物の硬化物の屈折率を表し、
cladは、クラッド用樹脂組成物の硬化物の屈折率を表す。)
〔9〕 波長1300nm~1320nmの光を伝送可能である、〔8〕に記載の光導波路。
〔10〕 シングルモードの光導波路である、〔8〕又は〔9〕に記載の光導波路。
〔11〕 〔8〕~〔10〕のいずれか一項に記載の光導波路を備えた光電気混載基板。
〔12〕 クラッド用樹脂組成物を含む第一組成物層を形成する工程と、
第一組成物層に露光処理を施す工程と、
第一組成物層を硬化させる工程と、
第一組成物層上に、コア用樹脂組成物を含む第二組成物層を形成する工程と、
第二組成物層に露光処理を施す工程と、
第二組成物層に現像処理を施す工程と、
第二組成物層を硬化させる工程と、
第二組成物層上に、クラッド用樹脂組成物を含む第三組成物層を形成する工程と、
第三組成物層に露光処理を施す工程と、
第三組成物層を硬化させる工程と、をこの順に含む、光導波路の製造方法であって;
コア用樹脂組成物が、(A)フェノール樹脂、(B)光酸発生剤及び(C)架橋剤を含み;
クラッド用樹脂組成物が、(a)フェノール樹脂、(b)光酸発生剤及び(c)架橋剤を含み;
下記式(1)で表される開口数NAが、0.05より大きく、0.4未満である、光導波路の製造方法。
【数3】
(式(1)において、
coreは、コア用樹脂組成物の硬化物の屈折率を表し、
cladは、クラッド用樹脂組成物の硬化物の屈折率を表す。)
〔13〕 コア用樹脂シートとクラッド用樹脂シートとを含むシートセットであって;
コア用樹脂シートが、(A)フェノール樹脂、(B)光酸発生剤及び(C)架橋剤を含むコア用樹脂組成物を含むコア用樹脂組成物層を備え;
クラッド用樹脂シートが、(a)フェノール樹脂、(b)光酸発生剤及び(c)架橋剤を含むクラッド用樹脂組成物を含むクラッド用樹脂組成物層を備え;
下記式(1)で表される開口数NAが、0.05より大きく、0.4未満である、シートセット。
【数4】
(式(1)において、
coreは、コア用樹脂組成物の硬化物の屈折率を表し、
cladは、クラッド用樹脂組成物の硬化物の屈折率を表す。)
〔14〕 (a)フェノール樹脂、(b)光酸発生剤及び(c)架橋剤を含むクラッド用樹脂組成物の硬化物を含むクラッド層中にコア層を形成するためのコア用樹脂組成物であって;
コア用樹脂組成物が、(A)フェノール樹脂、(B)光酸発生剤及び(C)架橋剤を含み;
下記式(1)で表される開口数NAが、0.05より大きく、0.4未満である、コア用樹脂組成物。
【数5】
(式(1)において、
coreは、コア用樹脂組成物の硬化物の屈折率を表し、
cladは、クラッド用樹脂組成物の硬化物の屈折率を表す。)
〔15〕 〔14〕に記載のコア用樹脂組成物を含む樹脂組成物層を備える、樹脂シート。
〔16〕 (A)フェノール樹脂、(B)光酸発生剤及び(C)架橋剤を含むコア用樹脂組成物の硬化物を含むコア層を覆うクラッド層を形成するためのクラッド用樹脂組成物であって;
クラッド用樹脂組成物が、(a)フェノール樹脂、(b)光酸発生剤及び(c)架橋剤を含み;
下記式(1)で表される開口数NAが、0.05より大きく、0.4未満である、クラッド用樹脂組成物。
【数6】
(式(1)において、
coreは、コア用樹脂組成物の硬化物の屈折率を表し、
cladは、クラッド用樹脂組成物の硬化物の屈折率を表す。)
〔17〕 〔16〕に記載のクラッド用樹脂組成物を含む樹脂組成物層を備える、樹脂シート。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、伝送損失の小さい光導波路を製造できる感光性樹脂組成物セット;伝送損失を小さくできる光導波路及びその製造方法;前記の光導波路を備える光電気混載基板;並びに、伝送損失の小さい光導波路を形成できるシートセット、コア用樹脂組成物、クラッド用樹脂組成物及び樹脂シート;を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る光導波路を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法の工程(I)を説明するための模式的な断面図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法の工程(III)を説明するための模式的な断面図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法の工程(IV)を説明するための模式的な断面図である。
図5図5は、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法の工程(V)を説明するための模式的な断面図である。
図6図6は、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法の工程(VI)を説明するための模式的な断面図である。
図7図7は、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法の工程(VII)を説明するための模式的な断面図である。
図8図8は、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法の工程(VIII)を説明するための模式的な断面図である。
図9図9は、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法の工程(X)を説明するための模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態及び例示物を示して、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に挙げる実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0012】
以下の説明において、別に断らない限り、用語「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸、メタクリル酸及びその組み合わせを包含し、用語「(メタ)アクリレート」はアクリレート、メタクリレート及びその組み合わせを包含する。
【0013】
[1.感光性樹脂組成物セットの概要]
本発明の一実施形態に係る感光性樹脂組成物セットは、コア用樹脂組成物とクラッド用樹脂組成物とを含む。コア用樹脂組成物及びクラッド用樹脂組成物は、コア用樹脂組成物の硬化物を含むコア層と、クラッド用樹脂組成物の硬化物を含むクラッド層とを備える光導波路の製造用に用いることができる。
【0014】
コア用樹脂組成物は、(A)フェノール樹脂、(B)光酸発生剤及び(C)架橋剤を含む。また、クラッド用樹脂組成物は、(a)フェノール樹脂、(b)光酸発生剤及び(c)架橋剤を含む。そして、コア用樹脂組成物の硬化物の屈折率ncoreと、クラッド用樹脂組成物の硬化物の屈折率ncladとから下記式(1)によって定義される開口数NAが、特定の範囲にある。
【0015】
【数7】
【0016】
本実施形態に係る感光性樹脂組成物セットによれば、伝送損失の小さい光導波路を製造できる。具体的には、コア用樹脂組成物の硬化物によってコア層を形成し、クラッド用樹脂組成物の硬化物によってクラッド層を形成した場合に、コア層及びクラッド層を備える光導波路を製造することができる。そうして製造される光導波路は、当該光導波路を伝送される光の伝送損失を抑制できる。
【0017】
コア用樹脂組成物及びクラッド用樹脂組成物は感光性の樹脂組成物であるので、通常は、露光及び現像を含む方法により、微細な光導波路を効率よく製造することが可能である。また、当該光導波路は、通常、優れた耐リフロー性を有することができる。
【0018】
[2.コア用樹脂組成物]
コア用樹脂組成物は、(A)フェノール樹脂、(B)光酸発生剤及び(C)架橋剤を含む。コア用樹脂組成物は感光性樹脂組成物でありうるので、露光及び現像を含む方法によって、所望のパターンを有するコア層の形成が可能である。コア層の「パターン」とは、別に断らない限り、厚み方向から見たコア層の形状を表す。
【0019】
具体的には、通常、光を照射された場合に(B)光酸発生剤は酸を発生しうる。この酸により、(C)架橋剤の架橋反応は、促進されることができる。よって、光を照射された部分(以下「露光部」ということがある。)でコア用樹脂組成物は現像液に対する溶解性を低下させられることができる。したがって、コア用樹脂組成物は、露光による潜像の形成が可能である。
【0020】
また、コア用樹脂組成物は、通常、現像液によって除去されることができる。特に、(A)フェノール樹脂は通常はアルカリ可溶性を有するので、コア用樹脂組成物は、アルカリ現像液によって良好に除去されることができる。よって、光を照射されていない部分(以下「非露光部」ということがある。)のコア用樹脂組成物を現像液によって除去して、潜像を現像することができる。「アルカリ可溶性」とは、当該アルカリ可溶性を有する成分がアルカリ水溶液(例えば、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液)に溶解可能である性質を表す。
【0021】
したがって、コア用樹脂組成物によれば、露光及び現像を含む方法によって、微細なパターンのコア層を形成することができる。このコア層は、クラッド用樹脂組成物の硬化物によって形成されたクラッド層と組み合わせて、当該コア層中を通るように光を伝送できる光導波路を製造できる。そして、前記の通り、当該コア層及びクラッド層を組み合わせて含む光導波路は、光の伝送損失を抑制できる。
【0022】
さらに、コア用樹脂組成物は、通常、解像性に優れる。さらに、コア用樹脂組成物の硬化物は、通常、破断点伸度等の機械的強度に優れ、また、耐リフロー性等の耐熱性に優れる。
【0023】
[2.1.(A)フェノール樹脂]
コア用樹脂組成物は、(A)成分としての(A)フェノール樹脂を含む。(A)フェノール樹脂は、適切な種類の現像液に溶解でき、特に、アルカリ性の現像液に良好に溶解できる。また、(A)フェノール樹脂は、好ましくは(C)架橋剤と反応して結合できるので、当該反応によって(C)架橋剤と反応してコア用組成物の現像液に対する溶解性を効果的に低下させることができる。
【0024】
(A)フェノール樹脂は、分子内にフェノール性水酸基を含有する。フェノール性水酸基とは、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香環に結合した水酸基を表す。(A)フェノール樹脂が有するフェノール性水酸基の数は、1分子あたり、1個でもよく、2個以上でもよい。中でも、(C)架橋剤による架橋反応を促進する観点、及び、架橋度を高めて硬化物の機械的強度を高める観点では、(A)フェノール樹脂は、1分子当たり2個以上のフェノール性水酸基を有することが好ましい。
【0025】
(A)フェノール樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。(A)フェノール樹脂の好ましい例としては、下記式(A-1)で表される構造を含む化合物、式(A-2)で表される構造を有する化合物、及び、式(A-3)で表される構造を有する化合物が挙げられる。以下の説明において、式(A-1)で表される構造を含む化合物、式(A-2)で表される構造を有する化合物、及び、式(A-3)で表される構造を有する化合物を、それぞれ、(A-1)成分、(A-2)成分及び(A-3)成分ということがある。これら(A-1)成分~(A-3)成分を用いた場合、光導波路の伝送損失を効果的に抑制でき、更に通常は、コア用樹脂組成物の解像性、並びに、コア用樹脂組成物の硬化物の機械的強度及び耐熱性を特に良好にできる。
【0026】
【化2】
【0027】
(式(A-1)中、Rは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表し、Xはそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。n1は、0~4の整数を表し、m1は1~200の整数を表す。*は結合手を表す。
式(A-2)中、Rは、下記式(r-1)で表される2価の基、下記式(r-2)で表される2価の基、下記式(r-3)で表される2価の基、又はこれらの組み合わせからなる2価の基を表し、X及びXは、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。n2及びn3は、それぞれ独立に0~4の整数を表す。
式(A-3)中、Rは、下記式(r-1)で表される2価の基、下記式(r-2)で表される2価の基、下記式(r-3)で表される2価の基、又はこれらの組み合わせからなる2価の基を表し、X及びXは、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。n4及びn5は、それぞれ独立に0~3の整数を表す。)
【0028】
【化3】
【0029】
(式(r-1)中、R11及びR12は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい1価の複素環基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、又はこれらの組み合わせからなる基を表し、R11及びR12は互いに結合して環を形成していてもよい。*は結合手を表す。
式(r-2)中、X11は、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基を表す。p1は、0~4の整数を表す。*は結合手を表す。
式(r-3)中、X12及びX13は、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基を表す。p2及びp3は、それぞれ独立に0~4の整数を表す。*は結合手を表す。)
【0030】
-(A-1)成分:式(A-1)で表される構造を含む化合物-
(A-1)成分は、下記式(A-1)で表される構造を含む化合物を表す。(A-1)成分は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
【化4】
【0032】
(式(A-1)中、Rは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表し、Xはそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。n1は、0~4の整数を表し、m1は1~200の整数を表す。*は結合手を表す。)
【0033】
式(A-1)中、Xは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。中でも、Xとしては、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子が好ましく、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基がより好ましく、置換基を有していてもよいアルキル基がさらに好ましい。
【0034】
アルキル基は、直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基であってもよい。また、環状のアルキル基は、単環、多環のいずれであってもよい。アルキル基としては、炭素原子数1~10のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基がさらに好ましい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、s-ブチル基、t-ブチル基、2-メチルプロピル基、3-ヘプチル基等が挙げられる。中でも、メチル基が特に好ましい。
【0035】
アリール基としては、炭素原子数6~30のアリール基が好ましく、炭素原子数6~20のアリール基がより好ましく、炭素原子数6~10のアリール基がさらに好ましい。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0036】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
【0037】
1価の複素環基としては、炭素原子数3~21の1価の複素環基が好ましく、炭素原子数3~15の1価の複素環基がより好ましく、炭素原子数3~9の1価の複素環基がさらに好ましい。1価の複素環基には、1価の芳香族複素環基(ヘテロアリール基)も含まれる。1価の複素環基としては、例えば、チエニル基、ピロリル基、フラニル基、フリル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジル基、ピラジニル基、トリアジニル基、ピロリジル基、ピペリジル基、キノリル基、及びイソキノリル基が挙げられる。中でも、ピロリジル基が好ましい。1価の複素環基とは、複素環式化合物の複素環から水素原子1個を除いた基をいう。
【0038】
が表すアルキル基、アリール基、及び1価の複素環基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、フッ素原子等のハロゲン原子、-OH、-O-C1-6アルキル基、-N(C1-6アルキル基)、C1-6アルキル基、C6-10アリール基、-NH、-NH(C1-6アルキル基)、-CN、-C(O)O-C1-6アルキル基、-C(O)H、-NO等が挙げられる。
【0039】
本明細書において、「置換基を有していてもよい」という表現は、特に断らない限り、無置換、若しくは置換基を有していることを意味する。置換基の数は、1でもよく、2以上でもよい。一例において、置換基の数は、通常1~5個(好ましくは1、2若しくは3個)でありうる。複数個の置換基を有する場合、それらの置換基は同一であっても、互いに異なっていてもよい。また、本明細書において、「Cp-q」(p及びqは正の整数であり、p<qを満たす。)という用語は、この用語の直後に記載された有機基の炭素原子数がp~qであることを表す。例えば、「C1-6アルキル基」という表現は、炭素原子数1~6のアルキル基を示す。
【0040】
式(A-1)中、Rは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表す。好ましくは、Rは、それぞれ独立に、式(r-1)で表される2価の基を表す。
【0041】
【化5】
【0042】
(式(r-1)中、R11及びR12は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい1価の複素環基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、又はこれらの組み合わせからなる基を表し、R11及びR12は互いに結合して環を形成していてもよい。*は結合手を表す。)
【0043】
式(r-1)中、R11及びR12は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい1価の複素環基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、又はこれらの組み合わせからなる基を表し、R11及びR12は互いに結合して環を形成していてもよい。中でも、水素原子、アルキル基が好ましい。
【0044】
11及びR12が表す置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、及び置換基を有していてもよい1価の複素環基は、式(A-1)中のXが表す置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、及び、置換基を有していてもよい1価の複素環基と同様でありうる。
【0045】
これらの組み合わせからなる基としては、例えば、アルキル基とカルボニル基との組み合わせからなる基、アリール基とカルボニル基との組み合わせからなる基、アルキル基とアミノ基とカルボニル基との組み合わせからなる基、アリール基とアミノ基とカルボニル基との組み合わせからなる基等が挙げられる。
【0046】
11及びR12は、互いに結合して環を形成していてもよい。R11及びR12が形成していてもよい環構造は、スピロ環及び縮合環も含む。この場合、R11及びR12は、シクロペンタン環を形成する基、シクロヘキサン環を形成する基、2,2-ジメチル-4-メチルシクロヘキサン環を形成する基、フルオレン環を形成する基、ピロリジン環を形成する基、又はγ-ラクタム環を形成する基であることが好ましい。
【0047】
式(r-1)で表される2価の基の具体例としては、以下の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
【0048】
【化6】
【0049】
【化7】
【0050】
式(A-1)中、Rは、それぞれ独立に、式(r-4)で表される2価の基であってもよい。
【0051】
【化8】
【0052】
(式(r-4)中、R13及びR14は、それぞれ独立にアルキレン基を表し、X14は、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基を表し、p4は、0~4の整数を表し、m2は1~3の整数を表す。*は結合手を表す。)
【0053】
式(r-4)中、R13及びR14は、それぞれ独立にアルキレン基を表す。アルキレン基の炭素原子数は、通常1以上であり、好ましくは18以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは6以下、特に好ましくは4以下である。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。
【0054】
式(r-4)中、X14は、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基を表す。X14は、式(A-1)中のXが表す置換基を有していてもよいアルキル基と同様でありうる。
【0055】
式(r-4)中、p4は、0~4の整数を表し、0~3の整数を表すことが好ましく、0又は1を表すことがより好ましく、0が特に好ましい。
【0056】
式(r-4)中、m2は、1~3の整数を表し、1~2の整数を表すことが好ましく、2が特に好ましい。
【0057】
式(A-1)中、Rは、それぞれ独立に、式(r-5)で表される2価の基であってもよい。
【0058】
【化9】
【0059】
(式(r-5)中、X15は、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基を表し、p5は、0~12の整数を表す。*は結合手を表す。)
【0060】
式(r-5)中、X15は、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基を表す。X15は、式(A-1)中のXが表す置換基を有していてもよいアルキル基と同様でありうる。
【0061】
式(r-5)中、p5は、0~12整数を表し、0~2の整数を表すことが好ましく、0又は1を表すことがより好ましく、0が特に好ましい。
【0062】
は、式(A-1)中のフェノール部位のOH基に対して、オルト位、メタ位、及びパラ位のいずれかに結合していることが好ましく、メタ位及びパラ位のいずれかに結合していることがより好ましく、メタ位及びパラ位に結合しているものが混在していることがさらに好ましい。式(A-1)中のフェノール部位のOH基に対してメタ位にRが結合した構造と、式(A-1)中のフェノール部位のOH基に対してパラ位にRが結合した構造とが(A-1)成分に含まれる場合、メタ位にRが結合した構造の質量をmとし、パラ位にRが結合した構造の質量をpとする。このとき、その混合比率(m:p)は、1:0.1~1:10が好ましく、1:0.1~1:5がより好ましく、1:0.1~1:2がさらに好ましく、1:0.5~1:1が特に好ましい。Rが式(r-1)で表される2価の基である場合に、混合比率(m:p)が前記範囲にあることが特に好ましい。
【0063】
式(A-1)中、n1は、0~4の整数を表し、0~3の整数を表すことが好ましく、0又は1を表すことがより好ましい。Rが式(r-1)で表される2価の基である場合、n1は1が特に好ましい。また、Rが式(r-4)で表される2価の基又は式(r-5)で表される2価の基である場合、n1は0が特に好ましい。
【0064】
式(A-1)中、m1は、1~200の整数を表す。詳細には、m1は、通常1以上であり、2以上でもよい。また、m1は、通常200以下、好ましくは150以下、より好ましくは100以下、特に好ましくは50以下である。
【0065】
(A-1)成分の具体例としては、下記式(A-1-1)~(A-1-3)で表される樹脂を挙げることができる。なお、式(A-1-1)で表される具体例中、フェノール部位のOH基に対して、メチレン基がメタ位に結合したものが60%、パラ位に結合したものが40%の割合で混在していることが好ましい。下記式(A-1-1)~(A-1-3)中、n6、n7及びn8は1~200の整数を表す。
【0066】
【化10】
【0067】
(A-1)成分は、市販品を用いてもよい。市販の(A-1)成分の具体例としては、旭有機材社製「TR4020G」(式(A-1-1)で表される樹脂);旭有機材社製「TR4050G」、「TR4080G」、「TR5020G」、「TR5050G」、「TR6020G」、「TR6050G」、「TR6080G」等のAVライトシリーズ;住友ベークライト社製フォトレジスト用樹脂シリーズ;群栄化学工業社製レヂトップシリーズ;DIC社製「PR-30-40P」、「PR-100L」、「PR-100H」、「PR-50」、「PR-55」、「PR-56-1」、「PR-56-2」、「WR-101」、「WR-102」、「WR-103」、「WR-104」等のフェノライトシリーズ;リグナイト社製「LF-100」、「LF-110」、「LF-120」、「LF-200」、「LF-400」、「LF-500」;明和化成社製フォトレジスト用ベース樹脂シリーズ、MEH-7851シリーズ;JFEケミカル社製J-DPPシリーズ;等が挙げられる。
【0068】
(A-1)成分の量の範囲は、(A)フェノール樹脂の全体100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。(A-1)成分の量が前記範囲にある場合、光導波路の伝送損失を効果的に抑制でき、更に通常は、コア用樹脂組成物の解像性、並びに、コア用樹脂組成物の硬化物の機械的強度及び耐熱性を特に良好にできる。
【0069】
(A-1)成分の量の範囲は、コア用樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。(A-1)成分の量が前記範囲にある場合、光導波路の伝送損失を効果的に抑制でき、更に通常は、コア用樹脂組成物の解像性、並びに、コア用樹脂組成物の硬化物の機械的強度及び耐熱性を特に良好にできる。
【0070】
-(A-2)成分:式(A-2)で表される構造を有する化合物-
(A-2)成分は、下記式(A-2)で表される構造を有する化合物を表す。(A-2)成分は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0071】
【化11】
【0072】
(式(A-2)中、Rは、下記式(r-1)で表される2価の基、下記式(r-2)で表される2価の基、下記式(r-3)で表される2価の基、又はこれらの組み合わせからなる2価の基を表し、X及びXは、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。n2及びn3は、それぞれ独立に0~4の整数を表す。)
【0073】
【化12】
【0074】
(式(r-1)中、R11及びR12は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい1価の複素環基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、又はこれらの組み合わせからなる基を表し、R11及びR12は互いに結合して環を形成していてもよい。*は結合手を表す。
式(r-2)中、X11は、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基を表す。p1は、0~4の整数を表す。*は結合手を表す。
式(r-3)中、X12及びX13は、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基を表す。p2及びp3は、それぞれ独立に0~4の整数を表す。*は結合手を表す。)
【0075】
式(A-2)中、Rは、式(r-1)で表される2価の基、式(r-2)で表される2価の基、式(r-3)で表される2価の基、又はこれらの組み合わせからなる2価の基を表す。式(r-1)で表される2価の基については上述したとおりである。
【0076】
式(r-2)~(r-3)中のX11、X12、及びX13は、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基を表す。X11~X13は、式(A-1)中のXが表す置換基を有していてもよいアルキル基と同様でありうる。
【0077】
式(r-2)~(r-3)中のp1、p2、及びp3は、それぞれ独立に0~4の整数を表し、0~3の整数を表すことが好ましく、0又は1を表すことがより好ましい。
【0078】
式(r-2)で表される2価の基の具体例としては、以下の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
【0079】
【化13】
【0080】
式(r-3)で表される2価の基の具体例としては、以下の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
【0081】
【化14】
【0082】
式(r-2)で表される2価の基と式(r-3)で表される2価の基との組み合わせからなる2価の基、式(r-1)で表される2価の基と式(r-2)で表される2価の基との組み合わせからなる2価の基、及び、式(r-1)で表される2価の基と式(r-3)で表される2価の基との組み合わせからなる2価の基の具体例としては、以下の基を挙げることができる。式中、「*」は結合手を表す。
【0083】
【化15】
【0084】
式(A-2)中、フェノール部位のOH基は、Rに対して、オルト位、メタ位、及びパラ位のいずれかに結合していることが好ましく、メタ位及びパラ位のいずれかに結合していることがより好ましく、パラ位に結合していることが特に好ましい。
【0085】
式(A-2)中、X及びXは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。X及びXは、それぞれ独立に、式(A-1)中のXと同様でありうる。
【0086】
式(A-2)中、n2及びn3は、それぞれ独立に0~4の整数を表し、式(A-1)中のn1と同様でありうる。
【0087】
(A-2)成分の具体例としては、以下の基を挙げることができる。
【0088】
【化16】
【0089】
【化17】
【0090】
【化18】
【0091】
【化19】
【0092】
【化20】
【0093】
【化21】
【0094】
【化22】
【0095】
【化23】
【0096】
【化24】
【0097】
【化25】
【0098】
(A-2)成分は、市販品を用いてもよい。市販の(A-2)成分の具体例としては、
旭有機材社製「BisP-E」、「Bis-AF」;本州化学社製「BisE」、「BisP-TMC」;三井化学ファイン社製「BisA」、「BisF」、「BisP-M」;本州化学社製「BisP-AP」、「BisP-MIBK」、「BisP-B」、「Bis-Z」、「BisP-CP」、「o,o’-BPF」、「BisP-IOTD」、「BisP-IBTD」、「BisP-DED」、「BisP-BA」;本州化学社製「Bis-C」、「Bis26X-A」、「BisOPP-A」、「BisOTBP-A」、「BisOCHP―A」、「BisOFP-A」、「BisOC-Z」、「BisOC-FL」、「BisOC-CP」、「BisOCHP-Z」、「メチレンビスP-CR」、「TM-BPF」、「BisOC-F」、「Bis3M6B-IBTD」、「BisOC-IST」、「BisP-IST」、「BisP-PRM」、「BisP-LV」等が挙げられる。
【0099】
(A-2)成分の量の範囲は、(A)フェノール樹脂の全体100質量%に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。(A-2)成分の量が前記範囲にある場合、光導波路の伝送損失を効果的に抑制でき、更に通常は、コア用樹脂組成物の解像性、並びに、コア用樹脂組成物の硬化物の機械的強度及び耐熱性を特に良好にできる。
【0100】
(A-2)成分の量の範囲は、コア用樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下である。(A-2)成分の量が前記範囲にある場合、光導波路の伝送損失を効果的に抑制でき、更に通常は、コア用樹脂組成物の解像性、並びに、コア用樹脂組成物の硬化物の機械的強度及び耐熱性を特に良好にできる。
【0101】
(A)フェノール樹脂の全体100質量%に対する(A-1)成分の質量をWa1とし、(A)フェノール樹脂の全体100質量%に対する(A-2)成分の質量をWa2としたとき、質量比Wa2/Wa1は、特定の範囲にあることが好ましい。具体的には、前記の質量比Wa2/Wa1は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上であり、好ましくは4以下、より好ましくは2以下、さらに好ましくは1以下である。質量比Wa2/Wa1が前記範囲にある場合、光導波路の伝送損失を効果的に抑制でき、更に通常は、コア用樹脂組成物の解像性、並びに、コア用樹脂組成物の硬化物の機械的強度及び耐熱性を特に良好にできる。
【0102】
-(A-3)成分:式(A-3)で表される構造を有する化合物-
(A-3)成分は、下記式(A-3)で表される構造を有する化合物を表す。(A-3)成分は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0103】
【化26】
【0104】
(式(A-3)中、Rは、前記式(r-1)で表される2価の基、前記式(r-2)で表される2価の基、前記式(r-3)で表される2価の基、又はこれらの組み合わせからなる2価の基を表し、X及びXは、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。n4及びn5は、それぞれ独立に0~3の整数を表す。)
【0105】
式(A-3)中、Rは、式(r-1)で表される2価の基、式(r-2)で表される2価の基、式(r-3)で表される2価の基、又はこれらの組み合わせからなる2価の基を表す。式(r-1)で表される2価の基、式(r-2)で表される2価の基、式(r-3)で表される2価の基、及びこれらの組み合わせからなる2価の基は、上述した通りである。
【0106】
式(A-3)中、フェノール部位のOH基は、Rに対して、オルト位、メタ位、及びパラ位のいずれかに結合していることが好ましく、メタ位及びパラ位のいずれかに結合していることがより好ましく、パラ位に結合していることが特に好ましい。
【0107】
式(A-3)中、X及びXは、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。X及びXは、それぞれ独立に、式(A-1)中のXと同様でありうる。
【0108】
式(A-3)中、n4及びn5は、それぞれ独立に0~3の整数を表す。n4及びn5は、それぞれ独立に、0又は1を表すことがより好ましく、0が特に好ましい。
【0109】
(A-3)成分の具体例としては、以下の基を挙げることができる。
【0110】
【化27】
【0111】
(A-3)成分は、市販品を用いてもよい。市販の(A-3)成分の具体例としては、田岡化学工業社製「TBIS-RX」等が挙げられる。
【0112】
(A-3)成分の量の範囲は、(A)フェノール樹脂の全体100質量%に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。(A-3)成分の量が前記範囲にある場合、光導波路の伝送損失を効果的に抑制でき、更に通常は、コア用樹脂組成物の解像性、並びに、コア用樹脂組成物の硬化物の機械的強度及び耐熱性を特に良好にできる。
【0113】
(A-3)成分の量の範囲は、コア用樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。(A-3)成分の量が前記範囲にある場合、光導波路の伝送損失を効果的に抑制でき、更に通常は、コア用樹脂組成物の解像性、並びに、コア用樹脂組成物の硬化物の機械的強度及び耐熱性を特に良好にできる。
【0114】
-(A-4)成分:(A-1)成分~式(A-3)成分以外の化合物-
(A)フェノール樹脂としては、(A-1)成分~式(A-3)成分以外の化合物を用いてもよい。(A-1)成分~式(A-3)成分以外の(A)フェノール樹脂(以下、「(A-4)成分」ということがある。)としては、例えば、丸善化学社製の「マルカリンカーM」(ポリパラヒドロキシスチレン)、JFEケミカル社製の「SPDI」などが挙げられる。
【0115】
(A)フェノール樹脂の重量平均分子量は、特段の制限はない。好ましい範囲を挙げると、(A)フェノール樹脂の重量平均分子量は、好ましくは150以上、より好ましくは160以上、特に好ましくは170以上であり、好ましくは15000未満、より好ましくは14000以下、特に好ましくは13000以下であり、2500未満でもよい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0116】
(A)フェノール樹脂のフェノール性水酸基当量は、好ましくは50g/eq.以上、より好ましくは100g/eq.以上であり、好ましくは3000g/eq.未満、より好ましくは1000g/eq.以下、さらに好ましくは500g/eq.以下、特に好ましくは300g/eq.以下である。(A)フェノール樹脂のフェノール性水酸基当量とは、フェノール性水酸基1当量あたりの(A)フェノール樹脂の質量を表す。
【0117】
コア用樹脂組成物の硬化物の屈折率ncoreは、例えば、(A)フェノール樹脂の組成によって調整しうる。通常は、屈折率の低い(A)フェノール樹脂を多く用いた場合にコア用樹脂組成物の硬化物の屈折率ncoreを低くでき、屈折率の高い(A)フェノール樹脂を多く用いた場合にコア用樹脂組成物の硬化物の屈折率ncoreを高くできる。(A)フェノール樹脂の具体的な屈折率は、Lorentz-Lorenz式によって計算できる。よって、Lorentz-Lorenz式に基づいて導出される(A)フェノール樹脂の屈折率に基づき、(A)フェノール樹脂の種類及び量を選択してもよい。Lorentz-Lorenz式については、例えば、「光学ポリマーの屈折率制御:理論予測と分子設計の手法」(安藤 慎治、「光学」2015年44巻8号、pp298-303)、「透明ポリマーの光学特性と高性能化」(谷尾 宜久、「工業材料」2021年3月号、pp.16-18)を参照しうる。例えば、フッ素原子を含むフェノール樹脂によれば、硬化物の屈折率ncoreを低くできる傾向がある。以下の説明では、フッ素原子を含むフェノール樹脂を「フッ素系フェノール樹脂」ということがある。
【0118】
コア用樹脂組成物の(A)フェノール樹脂は、クラッド用樹脂組成物に含まれるのと同じ1又は2以上のフェノール樹脂を含むことが好ましい。すなわち、1又は2以上のフェノール樹脂がコア用樹脂組成物及びクラッド用樹脂組成物の両方に含まれていることが好ましい。このようにコア用樹脂組成物及びクラッド用樹脂組成物が共通のフェノール樹脂を含む場合、コア層とクラッド層との親和性を高めることができる。よって、コア層とクラッド層との界面の平滑性を向上させられるので、当該界面での散乱による光の減衰を効果的に抑制でき、したがって、伝送損失を効果的に抑制できる。また、コア層とクラッド層との界面の密着性を高められるので、光導波路の機械的強度及び耐熱性を向上させることができる。さらに、通常は、コア層の熱膨張率とクラッド層の熱膨張率とを近づけることができるので、熱変化による光導波路の変形を抑制することができる。
【0119】
コア用樹脂組成物とクラッド用樹脂組成物との両方に共通して含まれるフェノール樹脂を「共通フェノール樹脂」ということがある。コア用樹脂組成物の(A)フェノール樹脂の全体100質量%に対して、当該(A)フェノール樹脂が含む共通フェノール樹脂の量の範囲は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上であり、通常100質量%以下、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、特に好ましくは95質量%以下である。共通フェノール樹脂の量が前記範囲にある場合、光導波路の伝送損失を効果的に抑制でき、更に通常は、コア用樹脂組成物の硬化物の機械的強度及び耐熱性を特に良好にできる。
【0120】
(A)フェノール樹脂の量の範囲は、コア用樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下であり、70質量%以下であってもよい。(A)フェノール樹脂の量が前記範囲にある場合、光導波路の伝送損失を効果的に抑制でき、更に通常は、コア用樹脂組成物の解像性、並びに、コア用樹脂組成物の硬化物の機械的強度及び耐熱性を特に良好にできる。
【0121】
[2.2.(B)光酸発生剤]
コア用樹脂組成物は、(B)成分としての(B)光酸発生剤を含む。(B)光酸発生剤は、紫外線等の活性光線の照射時に酸を発生させ、発生した酸により(C)架橋剤の架橋反応を促進できる。よって、露光によってコア用樹脂組成物の現像液に対する溶解性を効果的に低下させることができるので、露光によるネガ型のパターンの形成を効果的に進行させることができる。(B)光酸発生剤は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0122】
光酸発生剤としては、活性光線の照射により酸を発生する化合物を用いることができる。光酸発生剤としては、例えば、ハロゲン含有化合物、オニウム塩化合物、ジアゾケトン化合物、スルホン化合物、スルホン酸化合物、スルホンイミド化合物、ジアゾメタン化合物、オキシムエステル化合物等が挙げられる。中でも、オキシムエステル化合物が好ましい。
【0123】
光酸発生剤として好適に使用し得るハロゲン含有化合物としては、例えば、ハロアルキル基含有炭化水素化合物、ハロアルキル基含有複素環式化合物等が挙げられる。ハロゲン含有化合物の好適な具体例としては、2-[2-(フラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(4-メトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、1,10-ジブロモ-n-デカン、1,1-ビス(4-クロロフェニル)-2,2,2-トリクロロエタン、フェニル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、4-メトキシフェニル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、スチリル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、ナフチル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン等のs-トリアジン誘導体等を挙げることができる。ハロゲン含有化合物は市販品を用いることができ、市販品としては、例えば、三和ケミカル社製「TFE-トリアジン」、「TME-トリアジン」、「MP-トリアジン」、「MOP-トリアジン」、「ジメトキシトリアジン」(トリアジン骨格を有するハロゲン含有化合物系光酸発生剤)等が挙げられる。
【0124】
光酸発生剤として好適に使用し得るオニウム塩化合物としては、例えば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。オニウム塩化合物の好適な具体例としては、トリス(4-メチルフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(4-メチルフェニル)スルホニウムヘキサフルオロフォスホネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムp-トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムトリフリオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムp-トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-tert-ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4-tert-ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムp-トルエンスルホネート、4,7-ジ-n-ブトキシナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフリオロメタンスルホネート等が挙げられる。オニウム塩化合物は市販品を用いることができ、市販品としては、例えば、三和ケミカル社製「TS-01」、「TS-91」;サンアプロ社製「CPI-110A」、「CPI-210S」、「HS-1」、「LW-S1」、「IK-1」、「CPI-310B」;三新化学工業社製「SI-110L」、「SI-180L」、「SI-100L」等が挙げられる。
【0125】
光酸発生剤として好適に使用し得るジアゾケトン化合物としては、例えば、1,3-ジケト-2-ジアゾ化合物、ジアゾベンゾキノン化合物、ジアゾナフトキノン化合物等が挙げられる。ジアゾケトン化合物の好適な具体例としては、フェノール類の1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル化合物等が挙げられる。
【0126】
光酸発生剤として好適に使用し得るスルホン化合物としては、例えば、β-ケトスルホン化合物、β-スルホニルスルホン化合物、及びこれらの化合物のα-ジアゾ化合物等が挙げられる。スルホン化合物の好適な具体例としては、4-トリスフェナシルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェナシルスルホニル)メタン等が挙げられる。
【0127】
光酸発生剤として好適に使用し得るスルホン酸化合物としては、例えば、アルキルスルホン酸エステル類、ハロアルキルスルホン酸エステル類、アリールスルホン酸エステル類、イミノスルホネート類等が挙げられる。スルホン酸化合物の好適な具体例としては、ベンゾイントシレート、ピロガロールトリストリフルオロメタンスルホネート、o-ニトロベンジルトリフルオロメタンスルホネート、o-ニトロベンジルp-トルエンスルホネート等が挙げられる。
【0128】
光酸発生剤として好適に使用し得るスルホンイミド化合物の具体例としては、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルイミド等が挙げられる。
【0129】
光酸発生剤として好適に使用し得るジアゾメタン化合物の具体例としては、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。ジアゾメタン化合物は市販品を用いることができる。
【0130】
光酸発生剤として好適に使用し得るオキシムエステル化合物の具体例としては、ベンゼンアセトニトリル,2-メチル-α-[2-[[(プロピルスルホニル)オキシ]イミノ]-3(2H)-チエニリデン]、ベンゼンアセトニトリル,2-メチル-α-[2-[[[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ]イミノ]-3(2H)-チエニリデン]等が挙げられる。市販品としては、例えばBASF社製の「PAG103」、「PAG121」、「PAG169」、「PAG203」等が挙げられる。
【0131】
コア層とクラッド層との親和性を高める観点では、コア用樹脂組成物の(B)光酸発生剤は、クラッド用樹脂組成物に含まれるのと同じ1又は2以上の光酸発生剤を含むことが好ましい。すなわち、1又は2以上の光酸発生剤がコア用樹脂組成物及びクラッド用樹脂組成物の両方に含まれていることが好ましい。コア用樹脂組成物とクラッド用樹脂組成物との両方に共通して含まれる光酸発生剤を「共通光酸発生剤」ということがある。コア用樹脂組成物の(B)光酸発生剤の全体100質量%に対して、当該(B)光酸発生剤が含む共通光酸発生剤の量の範囲は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。
【0132】
(B)光酸発生剤の量の範囲は、感光性樹脂組成物としてのコア用樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1.5質量%以下である。
【0133】
[2.3.(C)架橋剤]
コア用樹脂組成物は、(C)成分としての(C)架橋剤を含む。(C)架橋剤は、架橋反応を生じることができる。この(C)架橋剤の架橋反応により、コア用樹脂組成物は現像液に対して不溶化したり、硬化してコア層を形成したりできる。ただし、(C)架橋剤には、(A)フェノール樹脂に該当するものは含めない。
【0134】
(C)架橋剤としては、アミノ樹脂が好ましい。アミノ樹脂は、(A)フェノール樹脂と組み合わせた場合に感光性に優れる感光性樹脂組成物を得ることができる。よって、コア用樹脂組成物の感光性を向上させることが可能である。
【0135】
また、(C)架橋剤としては、(A)フェノール樹脂と架橋反応を生じることができるものが好ましい。そのように(A)フェノール樹脂と架橋反応を生じることができる(C)架橋剤としては、例えば、分子中にアルコキシメチル基を含有する化合物が挙げられる。アルコキシメチル基は、下記式(C-1)で表される基を表す。式(C-1)中、「*」は、結合手を表す。
【0136】
【化28】
【0137】
式(C-1)中、R21は、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。アルキル基は、直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基であってもよい。また、環状のアルキル基は、単環、多環のいずれであってもよい。アルキル基としては、炭素原子数1~10のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1~4のアルキル基がさらに好ましい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、s-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。中でも、メチル基、ブチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。R21が表すアルキル基は、置換基を有していてもよい。
【0138】
アルコキシメチル基は、下記式(C-1’)で表されるアルコキシメチルアミノ基に含有されることが好ましい。よって、(C)架橋剤は、式(C-1’)で表されるアルコキシメチルアミノ基を含有することが好ましく、式(C-1’)で表されるアルコキシメチルアミノ基を分子中に2つ以上含有することがより好ましい。式中、「*」は結合手を表す。
【0139】
【化29】
【0140】
式(C-1’)中、R22は、式(C-1)中のR21と同じである。Rは、水素原子、又はアルコキシメチル基を表す。
【0141】
(C)架橋剤としては、分子中に2以上のアルコキシメチル基を含有するアミノ樹脂が特に好ましい。分子中に2以上のアルコキシメチル基を含有するアミノ樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂等が挙げられ、メラミン樹脂が好ましい。
【0142】
メラミン樹脂としては、例えば、下記式(C-2)で表される構造を有するメラミン樹脂が好ましい。
【0143】
【化30】
【0144】
式(C-2)中、X21、X22、X23及びX24は、それぞれ独立に、水素原子、又はアルコキシメチル基を表す。R50は、水素原子、アミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は式(C-1’)で表されるアルコキシメチルアミノ基を表す。但し、R50が水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す場合は、X21、X22、X23、及びX24の少なくとも2つは、アルコキシメチル基である。
【0145】
21~X24が表すアルコキシメチル基は、式(C-1)で表される基と同様でありうる。R50が水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す場合、X21~X24の少なくとも2つはアルコキシメチル基である。好ましくは、R50が水素原子、アミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す場合、X21~X24の2つ以上が、アルコキシメチル基である。X21~X24の少なくとも3つがアルコキシメチル基であることが好ましく、X21~X24の少なくとも4つがアルコキシメチル基であることがより好ましい。
【0146】
50は、水素原子、アミノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は式(C-1’)で表されるアルコキシメチルアミノ基を表す。R50は、置換基を有していてもよいアリール基、式(C-1’)で表されるアルコキシメチルアミノ基が好ましく、式(C-1’)で表されるアルコキシメチルアミノ基がより好ましい。R50が表す置換基を有していてもよいアルキル基は、式(A-1)中のXが表す置換基を有していてもよいアルキル基と同様でありうる。また、R50が表す置換基を有していてもよいアリール基は、式(A-1)中のXが表す置換基を有していてもよいアリール基と同様でありうる。
【0147】
式(C-2)で表される構造を有するメラミン樹脂は、式(C-2’)で表される構造を有するメラミン樹脂であることが好ましい。
【0148】
【化31】
【0149】
式(C-2’)中、X25、X26、X27、X28、X29及びX30は、それぞれ独立に、水素原子、又はアルコキシメチル基を表す。但し、X25、X26、X27、X28、X29及びX30の少なくとも2つは、アルコキシメチル基である。
【0150】
25~X30が表すアルコキシメチル基は、式(C-1)で表される基と同様でありうる。X25~X30の少なくとも2つは、アルコキシメチル基であり、X25~X30の少なくとも3つがアルコキシメチル基であることが好ましく、X25~X30の少なくとも4つがアルコキシメチル基であることがより好ましく、X25~X30のすべてがアルコキシメチル基であることがさらに好ましい。
【0151】
メラミン樹脂の具体例としては、以下のメラミン樹脂を挙げることができる。
【0152】
【化32】
【0153】
メラミン樹脂は、市販品を使用してよい。市販品としては、例えば、三和ケミカル社製の「MW-390」、「MW-100LM」、「MX-750LM」;オルネクスジャパン社製のサイメルシリーズ等が挙げられる。
【0154】
尿素樹脂としては、例えば、下記式(C-3)で表される構造及び下記式(C-4)で表される構造のいずれかを有する尿素樹脂が好ましい。
【0155】
【化33】
【0156】
式(C-3)中、X31、X32、X33及びX34は、それぞれ独立に水素原子、又はアルコキシメチル基を表す。但し、X31、X32、X33及びX34の少なくとも2つは、アルコキシメチル基である。X31~X34の少なくとも3つがアルコキシメチル基であることが好ましく、X31~X34の少なくとも4つがアルコキシメチル基であることがより好ましい。
式(C-4)中、X35、及びX36は、アルコキシメチル基を表す。
31~X36が表すアルコキシメチル基は、式(C-1)で表される基と同様でありうる。
【0157】
尿素樹脂は、市販品を使用してよい。市販品としては、例えば、三和ケミカル社製の「MX-270」、「MX-279」、「MX-280」;オルネクスジャパン社製のサイメルシリーズ等が挙げられる。
【0158】
(C)架橋剤は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0159】
(C)架橋剤の重量平均分子量は、特段の制限はない。好ましい範囲を挙げると、(C)架橋剤の重量平均分子量は、好ましくは150以上、より好ましくは160以上、特に好ましくは170以上であり、好ましくは15000未満、より好ましくは14000以下、特に好ましくは13000以下であり、2500未満でもよい。
【0160】
(C)架橋剤は、架橋反応を生じることができる基として、アルコキシメチル基等の架橋性基を含みうる。(C)架橋剤の架橋性基当量は、好ましくは50g/eq.以上、より好ましくは100g/eq.以上であり、好ましくは3000g/eq.未満、より好ましくは1000g/eq.以下、さらに好ましくは500g/eq.以下、特に好ましくは300g/eq.以下である。(C)架橋剤の架橋性基当量とは、架橋性基1当量あたりの(C)架橋剤の質量を表す。
【0161】
コア層とクラッド層との親和性を高める観点では、コア用樹脂組成物の(C)架橋剤は、クラッド用樹脂組成物に含まれるのと同じ1又は2以上の架橋剤を含むことが好ましい。すなわち、1又は2以上の架橋剤がコア用樹脂組成物及びクラッド用樹脂組成物の両方に含まれていることが好ましい。コア用樹脂組成物とクラッド用樹脂組成物との両方に共通して含まれる架橋剤を「共通架橋剤」ということがある。コア用樹脂組成物の(C)架橋剤の全体100質量%に対して、当該(C)架橋剤が含む共通架橋剤の量の範囲は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。
【0162】
(C)架橋剤の量の範囲は、コア用樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。(C)架橋剤の量が前記範囲にある場合、光導波路の伝送損失を効果的に抑制でき、更に通常は、コア用樹脂組成物の解像性、並びに、コア用樹脂組成物の硬化物の機械的強度及び耐熱性を特に良好にできる。
【0163】
[2.4.(D)ポリマー]
コア用樹脂組成物は、上述した(A)~(C)成分に組み合わせて、更に任意の成分として(D)ポリマーを含んでいてもよい。(D)成分としての(D)ポリマーは、通常2,500以上の重量平均分子量を有する。詳細には、(D)ポリマーの重量平均分子量の範囲は、通常2,500以上、より好ましくは5,000以上、特に好ましくは10,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下、更に好ましくは60,000以下である。コア用樹脂組成物が(D)ポリマーを含む場合、コア層の表面の平滑性を向上させたり、コア層とクラッド層と界面の平滑性を向上させたりできるので、光導波路の伝送損失を効果的に低くできる。さらに、通常は、コア用樹脂組成物の塗膜形成を容易にしたり、コア層の靭性を高めたりできる。また、(D)ポリマーによれば、通常、コア層の耐熱性及び柔軟性を効果的に高めたり、コア層の透明性を高めて伝送損失を効果的に抑制したりできる。ただし、(D)ポリマーには、上述した(A)~(C)成分に該当するものは含めない。
【0164】
(D)ポリマーは、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。(D)ポリマーの例としては、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂、などが挙げられる。中でも、アクリル樹脂が好ましい。
【0165】
アクリル樹脂は、アクリル酸、アクリレート、メタクリル酸、メタクリレート等のアクリル系単量体を重合して形成される構造を有する繰り返し単位を含有するポリマーでありえ、例えば、アクリル系単量体を重合させることによって製造しうる。アクリル樹脂は、アクリル系単量体の単独重合体であってもよく、2種類以上のアクリル系単量体の共重合体であってもよく、アクリル系単量体とアクリル系単量体以外の任意の単量体との共重合体であってもよい。アクリル樹脂を(D)ポリマーとして用いる場合、コア層の耐熱性及び柔軟性を効果的に高めたり、コア層の透明性を高めて光導波路の伝送損失を効果的に抑制したりできる。アクリル樹脂の具体例としては、東亜合成社製「アルフオン」(登録商標);根上工業社製「ART CURE」;綜研化学社製「アクトフロー」;などが挙げられる。
【0166】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX7553」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」;日鉄ケミカル&マテリアル社製の「FX280」及び「FX293」等が挙げられる。
【0167】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、例えば、デンカ社製の「電化ブチラール4000-2」、「電化ブチラール5000-A」、「電化ブチラール6000-C」、「電化ブチラール6000-EP」;積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ、KSシリーズ、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
【0168】
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としては、また、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006-37083号公報記載のもの)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等に記載のもの)等の変性ポリイミドが挙げられる。
【0169】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成工業社製のポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド「KS9100」、「KS9300」等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0170】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0171】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0172】
(D)ポリマーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0173】
(D)ポリマーは、フェノール性水酸基又は架橋性基と反応して結合を形成しうる官能基を含まないことが好ましい。(D)ポリマーが官能基を含む場合でも、その官能基は少ないことが好ましい。よって、(D)ポリマーの官能基当量は、大きいことが好ましい。(D)ポリマーの官能基当量とは、官能基1当量あたりの(D)ポリマーの質量を表す。(D)ポリマーの官能基当量は、具体的には、好ましくは3000g/eq.以上、より好ましくは4000g/eq.以上、特に好ましくは5000g/eq.以上である。また、(D)ポリマーのフェノール性水酸基当量の範囲は、(D)ポリマーの官能基当量の範囲と同じでありうる。(D)ポリマーのフェノール性水酸基当量とは、フェノール性水酸基1当量あたりの(D)ポリマーの質量を表す。さらに、(D)ポリマーの架橋性基当量の範囲は、(D)ポリマーの官能基当量の範囲と同じでありうる。(D)ポリマーの架橋性基当量とは、架橋性基1当量あたりの(D)ポリマーの質量を表す。中でも、(D)ポリマーは、官能基を有さないことが好ましいから、フェノール性水酸基を有さないことが好ましく、また、架橋性基を有さないことが好ましい。
【0174】
コア層とクラッド層との親和性を高める観点では、コア用樹脂組成物の(D)ポリマーは、クラッド用樹脂組成物に含まれるのと同じ1又は2以上のポリマーを含むことが好ましい。すなわち、1又は2以上のポリマーがコア用樹脂組成物及びクラッド用樹脂組成物の両方に含まれていることが好ましい。コア用樹脂組成物とクラッド用樹脂組成物との両方に共通して含まれるポリマーを「共通ポリマー」ということがある。コア用樹脂組成物の(D)ポリマーの全体100質量%に対して、当該(D)ポリマーが含む共通ポリマーの量の範囲は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。
【0175】
(D)ポリマーの量の範囲は、コア用樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、0質量%でもよく、0質量%より大きくてもよく、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、特に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0176】
[2.5.(E)アミン系化合物]
コア用樹脂組成物は、上述した(A)~(D)成分に組み合わせて、更に任意の成分として(E)下記式(E-1)で表される化合物を含んでいてもよい。(E)成分としての(E)式(E-1)で表される化合物を、以下「(E)アミン系化合物」と呼ぶことがある。(E)アミン系化合物はコア用樹脂組成物においてクエンチャーとして機能して、(B)光酸発生剤が発生させた酸の樹脂組成物中における拡散速度を抑制できる。よって、(E)アミン系化合物によれば、コア用樹脂組成物の解像性を向上させることができる。ただし、(E)アミン系化合物には、上述した(A)~(D)成分に該当するものは含めない。
【0177】
【化34】
【0178】
式(E-1)において、Re1、Re2及びRe3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭化水素基を表す。炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。また、脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基であってもよく、不飽和脂肪族炭化水素基であってもよい。また、炭化水素基は、環を含んでいてもよい。よって、脂肪族炭化水素基は、脂環式炭化水素基であってもよい。炭化水素基の炭素原子数は、通常1以上、好ましくは2以上、特に好ましくは5以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、特に好ましくは12以下である。炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;並びに、これらを組み合わせた基などが挙げられる。また、Re1とRe2とは、結合して環を形成していてもよい。
【0179】
(E)アミン系化合物の例としては、アンモニア、第1級脂肪族アミン化合物、第2級脂肪族アミン化合物、第3級脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、などが挙げられる。
【0180】
第1級脂肪族アミン化合物としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、ペンチルアミン、tert-ペンチルアミン、シクロペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、セチルアミン等が挙げられる。
【0181】
第2級脂肪族アミン化合物としては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、ジセチルアミン、ピロリジン等が挙げられる。
【0182】
第3級脂肪族アミン化合物としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ-sec-ブチルアミン、トリペンチルアミン、トリシクロペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリドデシルアミン、トリセチルアミン、ジメチルエチルアミン、メチルエチルプロピルアミン等が挙げられる。
【0183】
芳香族アミン化合物としては、例えば、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ジフェニル(p-トリル)アミン、メチルジフェニルアミン、トリフェニルアミン、ナフチルアミン;アニリン;N-メチルアニリン、N-エチルアニリン、N-プロピルアニリン、N,N-ジメチルアニリン、2-メチルアニリン、3-メチルアニリン、4-メチルアニリン、エチルアニリン、プロピルアニリン、トリメチルアニリン、N,N-ジメチルトルイジン等のアニリン誘導体;ピロール;2H-ピロール、1-メチルピロール、2,4-ジメチルピロール、2,5-ジメチルピロール、N-メチルピロール等のピロール誘導体;などが挙げられる。
【0184】
コア層とクラッド層との親和性を高める観点では、コア用樹脂組成物の(E)アミン系化合物は、クラッド用樹脂組成物に含まれるのと同じ1又は2以上のアミン系化合物を含むことが好ましい。すなわち、1又は2以上のアミン系化合物がコア用樹脂組成物及びクラッド用樹脂組成物の両方に含まれていることが好ましい。コア用樹脂組成物とクラッド用樹脂組成物との両方に共通して含まれるアミン系化合物を「共通アミン系化合物」ということがある。コア用樹脂組成物の(E)アミン系化合物の全体100質量%に対して、当該(E)アミン系化合物が含む共通アミン系化合物の量の範囲は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。
【0185】
(E)アミン系化合物の量の範囲は、コア用樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、0質量%でもよく、0質量%より大きくてもよく、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。
【0186】
[2.6.(F)任意の添加剤]
コア用樹脂組成物は、上述した(A)~(E)成分に組み合わせて、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、更に任意の成分として(F)任意の添加剤を含んでいてもよい。この(F)任意の添加剤には、上述した(A)成分~(E)成分に該当するものは含めない。(F)任意の添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0187】
(F)任意の添加剤の例としては、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、老化防止剤、抗菌剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、密着性付与剤、チキソ性付与剤、離型剤、表面処理剤、分散剤、表面改質剤、安定剤、などが挙げられる。
【0188】
(F)任意の添加剤は、無機粒子を含んでいてもよい。例えば、金属酸化物のナノ粒子を含む場合、コア用樹脂組成物の硬化物の屈折率を高めることができる。ただし、光導波路の伝送損失を効果的に抑制する観点では、コア用樹脂組成物が含む無機粒子の量は少ないことが好ましい。具体的には、コア用樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、無機粒子の量の範囲は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下であり、理想的には0質量%である。よって、コア用樹脂組成物は、無機粒子を含まないことが好ましい。
【0189】
[2.7.(G)溶剤]
コア用樹脂組成物は、上述した(A)~(F)成分といった不揮発成分に組み合わせて、揮発成分としての(G)溶剤を含んでいてもよい。(G)成分としての(G)溶剤によれば、コア用樹脂組成物の粘度を調整できる。(G)溶剤としては、例えば、有機溶剤が挙げられる。
【0190】
(G)溶剤としては、例えば、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶剤;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素溶剤;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルジグリコールアセテート等のエステル溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル溶剤;オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素溶剤;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤が挙げられる。(G)溶剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0191】
溶剤の量は、コア用樹脂組成物の塗布性の観点から、適切に調整することが好ましい。
【0192】
[2.8.コア用樹脂組成物の製造方法]
コア用樹脂組成物は、当該コア用樹脂組成物に含まれるべき各成分を混合して製造できる。よって、コア用樹脂組成物は、(A)~(C)成分及び必要に応じて(D)~(G)成分を混合しして製造できる。混合の際、必要に応じて、三本ロール、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等の混練装置による混練を行ってもよく、スーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の撹拌装置による撹拌を行ってもよい。各成分の混合の順番に制限は無い。また、各成分を混合する過程で、冷却又は加熱を行ってもよい。
【0193】
[2.9.コア用樹脂組成物の特性]
コア用樹脂組成物は、好ましくは、優れた解像性を有する。例えば、後述する実施例の[樹脂組成物の解像性の評価]で説明する方法によって、コア用樹脂組成物を用いてL/S(ライン/スペース)が10μm/10μm、5μm/50μm及び3μm/3μmのライン層を形成する。この場合、いずれのライン層においても、ライン層のアスペクト比を、好ましくは0.6以上、より好ましくは1以上にできる。ここで、L/SにおいてL(ライン)はライン層の幅を表し、S(スペース)はライン層間の間隔を表す。また、ライン層のアスペクト比は、ライン層の「層厚み/ライン幅」で表される比を表す。このように優れた解像性を有するコア用樹脂組成物によれば、幅及び間隔の小さいコア層を形成することができ、光導波路の微細化を達成できる。
【0194】
上述したコア用樹脂組成物は、露光し、更に必要に応じて加熱することによって硬化できる。よって、コア用樹脂組成物からは、硬化物を得ることができる。通常、コア用樹脂組成物に含まれる成分のうち、(G)溶剤等の揮発成分は、乾燥又は硬化時の熱によって揮発しうるが、(A)~(F)成分といった不揮発成分は、揮発しない。よって、コア用樹脂組成物の硬化物は、コア用樹脂組成物の不揮発成分又はその反応生成物を含みうる。
【0195】
コア用樹脂組成物によれば、光導波路の形成に適した屈折率を有する硬化物を得ることができる。コア用樹脂組成物の硬化物の具体的な屈折率ncoreは、所望の開口度NAの光導波路が得られる範囲で、制限はない。例えば、測定波長1310nmにおけるコア用樹脂組成物の硬化物の屈折率ncoreは、好ましくは1.4500以上、より好ましくは1.5000以上、特に好ましくは1.6000以上であり、好ましくは1.7000以下、より好ましくは1.6500以下、特に好ましくは1.6150以下である。コア用樹脂組成物の屈折率は、後述する実施例の[樹脂組成物の硬化物の屈折率の測定]に記載の方法によって測定できる。
【0196】
コア用樹脂組成物によれば、機械的強度に優れた硬化物を得ることができる。例えば、後述する実施例の[樹脂組成物の硬化物の破断点伸度の測定]に記載の方法によって、硬化物の破断点伸度を測定した場合、好ましくは1%以上の破断点伸度を有することができる。
【0197】
コア用樹脂組成物によれば、耐熱性に優れた硬化物を得ることができる。例えば、後述する実施例に記載の条件で得た硬化物に「(リフロー後の外観の観察)」に記載の条件で加熱処理を行った場合に、ボイドの発生を抑制することができる。
【0198】
コア用樹脂組成物の硬化物によれば、当該硬化物の表面を高度に平滑にできる。よって、コア用樹脂組成物によれば、表面が平滑なコア層を形成して、伝送損失の効果的な抑制が可能である。例えば、後述する実施例に記載の条件でコア用樹脂組成物の硬化物によってコア層を形成した場合に、そのコア層の算術平均粗さを小さくできる。具体的には、コア層の算術表面粗さは、好ましくは200nm以下、より好ましくは180nm以下、特に好ましくは150nm以下である。下限は、特段の制限はなく、例えば、10nm以上でありうる。コア層の表面粗度は、後述する実施例の[コア層の表面粗度の測定]で説明する方法によって測定できる。
【0199】
コア用樹脂組成物は、光導波路のコア層の形成用の感光性樹脂組成物として用いうる。例えば、コア用樹脂組成物は、波長1300nm~1320nmの光を伝送可能な光導波路の形成のために用いうる。特に、コア用樹脂組成物は、シングルモードの光導波路の形成のために用いることが好ましく、例えば、波長1310nmの光に対してシングルモードの光導波路の形成のために用いることが好ましい。
【0200】
波長1300nm~1320nmの光の光導波路形成用に用いる観点から、コア用樹脂組成物の溶液は、波長1310nmにおける吸光度が小さいことが好ましい。通常、樹脂組成物の溶液の吸光度が小さい場合、その樹脂組成物の硬化物の吸光度が小さくなるため、樹脂組成物の溶液の波長1310nmにおける吸光度が小さいことが好ましい。例えば、後述する実施例に記載の条件で得たコア用樹脂組成物の20質量%溶液の吸光度は、小さいことが好ましい。具体例を挙げると、実施例の[樹脂組成物の溶液の吸光度の測定]で説明する方法で測定されるコア用樹脂組成物の溶液の光路長1cmでの吸光度は、好ましくは0.020以下、より好ましくは0.018以下、特に好ましくは0.015以下である。
【0201】
[3.クラッド用樹脂組成物]
クラッド用樹脂組成物は、(a)フェノール樹脂、(b)光酸発生剤及び(c)架橋剤を含む。クラッド用樹脂組成物は感光性樹脂組成物でありうるので、露光を含む方法によってクラッド層の形成が可能である。また、クラッド用樹脂組成物は、コア用樹脂組成物と同様に、露光及び現像を含む方法によって、所望のパターンを有するクラッド層を形成してもよい。クラッド層の「パターン」とは、別に断らない限り、厚み方向から見たクラッド層の形状を表す。
【0202】
クラッド層は、コア用樹脂組成物の硬化物によって形成されたコア層と組み合わせて、当該コア層中を通るように光を伝送できる光導波路を製造できる。そして、前記の通り、当該コア層及びクラッド層を組み合わせて含む光導波路は、光の伝送損失を抑制できる。
【0203】
さらに、クラッド用樹脂組成物は、通常、解像性に優れる。さらに、クラッド用樹脂組成物の硬化物は、通常、破断点伸度等の機械的強度に優れ、また、耐リフロー性等の耐熱性に優れる。
【0204】
[3.1.(a)フェノール樹脂]
クラッド用樹脂組成物は、(a)成分としての(a)フェノール樹脂を含む。クラッド用樹脂組成物の(a)フェノール樹脂としては、コア用樹脂組成物の(A)フェノール樹脂と同じ範囲のものを用いうる。また、クラッド用樹脂組成物に含まれる(a)フェノール樹脂の量の範囲は、コア用樹脂組成物に含まれる(A)フェノール樹脂の量の範囲と同じでありうる。よって、クラッド用樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対する(a)フェノール樹脂の量の範囲は、コア用樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対する(A)フェノール樹脂の量の範囲と同じでありうる。また、クラッド用樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対する(A-1)成分、(A-2)成分及び(A-3)成分の量の範囲は、それぞれ、コア用樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対する(A-1)成分、(A-2)成分及び(A-3)成分の量の範囲と同じでありうる。また、(a)フェノール樹脂の全体100質量%に対する(A-1)成分、(A-2)成分及び(A-3)成分の量の範囲は、それぞれ、(A)フェノール樹脂の全体100質量%に対する(A-1)成分、(A-2)成分及び(A-3)成分の量の範囲と同じでありうる。さらに、(a)フェノール樹脂における(A-1)成分と(A-2)成分との質量比Wa2/Wa1の範囲は、(A)フェノール樹脂における質量比Wa2/Wa1の範囲と同じでありうる。(a)フェノール樹脂によれば、(A)フェノール樹脂によってコア用樹脂組成物が得るのと同様の利点を、クラッド用樹脂組成物において得ることができる。
【0205】
クラッド用樹脂組成物が含む(a)フェノール樹脂と、コア用樹脂組成物が含む(A)フェノール樹脂とは、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0206】
コア用樹脂組成物の硬化物と同様に、クラッド用樹脂組成物の硬化物の屈折率ncladは、(a)フェノール樹脂の組成によって調整しうる。よって、(a)フェノール樹脂の具体的な種類及び量は、クラッド用樹脂組成物の硬化物の屈折率ncladの範囲に応じて設定しうる。したがって、(a)フェノール樹脂の組成を調整することによって所望の開口度NAを有する光導波路を得る観点では、クラッド用樹脂組成物の(a)フェノール樹脂の少なくとも一部は、コア用樹脂組成物の(A)フェノール樹脂とは異なることが好ましい。
【0207】
他方、コア層とクラッド層との親和性を高めて光導波路の伝送損失、機械的強度及び耐熱性を効果的に改善する観点では、クラッド用樹脂組成物の(a)フェノール樹脂の少なくとも一部は、コア用樹脂組成物の(A)フェノール樹脂とは同じであることが好ましい。すなわち、1又は2以上の共通フェノール樹脂がコア用樹脂組成物及びクラッド用樹脂組成物の両方に含まれていることが好ましい。
【0208】
よって、クラッド用樹脂組成物の(a)フェノール樹脂の全体100質量%に対して、当該(a)フェノール樹脂が含む共通フェノール樹脂(即ち、コア用樹脂組成物とクラッド用樹脂組成物との両方に共通して含まれるフェノール樹脂)の量は、100質量%以下であってもよいが、100質量%未満の特定の範囲にあることが好ましい。具体的には、(a)フェノール樹脂が含む共通フェノール樹脂の量の範囲は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上であり、好ましくは99.0質量%以下、より好ましくは98.5質量%以下、特に好ましくは98.0質量%以下である。
【0209】
コア用樹脂組成物の(A)フェノール樹脂とクラッド用樹脂組成物の(a)フェノール樹脂との好ましい組み合わせとしては、例えば、屈折率を高める作用を有する構造を含有するフェノール樹脂を含む(A)フェノール樹脂と、屈折率を高める作用を有する構造を含有する前記フェノール樹脂を含まない(a)フェノール樹脂と、の組み合わせが挙げられる。また、別の一例として、屈折率を下げる作用を有する構造を含有するフェノール樹脂(例えば、フッ素系フェノール樹脂)を含む(a)フェノール樹脂と、屈折率を下げる作用を有する構造を含有するフェノール樹脂を含まない(A)フェノール樹脂と、の組み合わせが挙げられる。いずれの組み合わせにおいても、(A)フェノール樹脂及び(a)フェノール樹脂は、1又は2以上の共通フェノール樹脂を含むことが好ましい。
【0210】
クラッド用樹脂組成物の(a)フェノール樹脂がフッ素系フェノール樹脂を含む場合、(a)フェノール樹脂の全体100質量%に対するフッ素系フェノール樹脂の量の範囲は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。
【0211】
また、クラッド用樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、クラッド用樹脂組成物に含まれるフッ素原子の質量の範囲は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、特に好ましくは0.03質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、更に好ましくは5質量%以下であり、1.0質量%以下、0.9質量%以下、0.8質量%以下などであってもよい。
【0212】
[3.2.(b)光酸発生剤]
クラッド用樹脂組成物は、(b)成分としての(b)光酸発生剤を含む。クラッド用樹脂組成物の(b)光酸発生剤としては、コア用樹脂組成物の(B)光酸発生剤と同じ範囲のものを用いうる。また、クラッド用樹脂組成物に含まれる(b)光酸発生剤の量の範囲は、コア用樹脂組成物に含まれる(B)光酸発生剤の量の範囲と同じでありうる。よって、クラッド用樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対する(b)光酸発生剤の量の範囲は、コア用樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対する(B)光酸発生剤の量の範囲と同じでありうる。(b)光酸発生剤によれば、(B)光酸発生剤によってコア用樹脂組成物が得るのと同様の利点を、クラッド用樹脂組成物において得ることができる。
【0213】
クラッド用樹脂組成物が含む(b)光酸発生剤と、コア用樹脂組成物が含む(B)光酸発生剤とは、同じでもよく、異なっていてもよい。コア層とクラッド層との親和性を高める観点では、クラッド用樹脂組成物の(b)光酸発生剤は、コア用樹脂組成物に含まれるのと同じ1又は2以上の共通光酸発生剤を含むことが好ましい。クラッド用樹脂組成物の(b)光酸発生剤の全体100質量%に対して、当該(b)光酸発生剤が含む共通光酸発生剤の量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。
【0214】
[3.3.(c)架橋剤]
クラッド用樹脂組成物は、(c)成分としての(c)架橋剤を含む。クラッド用樹脂組成物の(c)架橋剤としては、コア用樹脂組成物の(C)架橋剤と同じ範囲のものを用いうる。また、クラッド用樹脂組成物に含まれる(c)架橋剤の量の範囲は、コア用樹脂組成物に含まれる(C)架橋剤の量の範囲と同じでありうる。よって、クラッド用樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対する(c)架橋剤の量の範囲は、コア用樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対する(C)架橋剤の量の範囲と同じでありうる。(c)架橋剤によれば、(C)架橋剤によってコア用樹脂組成物が得るのと同様の利点を、クラッド用樹脂組成物において得ることができる。
【0215】
クラッド用樹脂組成物が含む(c)架橋剤と、コア用樹脂組成物が含む(C)架橋剤とは、同じでもよく、異なっていてもよい。コア層とクラッド層との親和性を高める観点では、クラッド用樹脂組成物の(c)架橋剤は、コア用樹脂組成物に含まれるのと同じ1又は2以上の共通架橋剤を含むことが好ましい。クラッド用樹脂組成物の(c)架橋剤の全体100質量%に対して、当該(c)架橋剤が含む共通架橋剤の量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。
【0216】
[3.4.(d)ポリマー]
クラッド用樹脂組成物は、上述した(a)~(c)成分に組み合わせて、更に任意の成分として(d)ポリマーを含んでいてもよい。クラッド用樹脂組成物の(d)成分としての(d)ポリマーとしては、コア用樹脂組成物の(D)ポリマーと同じ範囲のものを用いうる。また、クラッド用樹脂組成物に含まれる(d)ポリマーの量の範囲は、コア用樹脂組成物に含まれる(D)ポリマーの量の範囲と同じでありうる。よって、クラッド用樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対する(d)ポリマーの量の範囲は、コア用樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対する(D)ポリマーの量の範囲と同じでありうる。(d)ポリマーによれば、(D)ポリマーによってコア用樹脂組成物が得るのと同様の利点を、クラッド用樹脂組成物において得ることができる。
【0217】
クラッド用樹脂組成物が含む(d)ポリマーと、コア用樹脂組成物が含む(D)ポリマーとは、同じでもよく、異なっていてもよい。コア層とクラッド層との親和性を高める観点では、クラッド用樹脂組成物の(d)ポリマーは、コア用樹脂組成物に含まれるのと同じ1又は2以上の共通ポリマーを含むことが好ましい。クラッド用樹脂組成物の(d)ポリマーの全体100質量%に対して、当該(d)ポリマーが含む共通ポリマーの量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。
【0218】
[3.5.(e)アミン系化合物]
クラッド用樹脂組成物は、上述した(a)~(d)成分に組み合わせて、更に任意の成分として(e)アミン系化合物(即ち、式(E-1)で表される化合物)を含んでいてもよい。クラッド用樹脂組成物の(e)成分としての(e)アミン系化合物としては、コア用樹脂組成物の(E)アミン系化合物と同じ範囲のものを用いうる。また、クラッド用樹脂組成物に含まれる(e)アミン系化合物の量の範囲は、コア用樹脂組成物に含まれる(E)アミン系化合物の量の範囲と同じでありうる。よって、クラッド用樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対する(e)アミン系化合物の量の範囲は、コア用樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対する(E)アミン系化合物の量の範囲と同じでありうる。(e)アミン系化合物によれば、(E)アミン系化合物によってコア用樹脂組成物が得るのと同様の利点を、クラッド用樹脂組成物において得ることができる。
【0219】
クラッド用樹脂組成物が含む(e)アミン系化合物と、コア用樹脂組成物が含む(E)アミン系化合物とは、同じでもよく、異なっていてもよい。コア層とクラッド層との親和性を高める観点では、クラッド用樹脂組成物の(e)アミン系化合物は、コア用樹脂組成物に含まれるのと同じ1又は2以上の共通アミン系化合物を含むことが好ましい。クラッド用樹脂組成物の(e)アミン系化合物の全体100質量%に対して、当該(e)アミン系化合物が含む共通アミン系化合物の量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。
【0220】
[3.6.(f)任意の添加剤]
クラッド用樹脂組成物は、上述した(a)~(e)成分に組み合わせて、更に任意の成分として(f)任意の添加剤を含んでいてもよい。クラッド用樹脂組成物の(f)成分としての(f)任意の添加剤としては、コア用樹脂組成物の(F)任意の添加剤と同じ範囲のものを用いうる。また、クラッド用樹脂組成物に含まれる(f)任意の添加剤の量の範囲は、コア用樹脂組成物に含まれる(F)任意の添加剤の量の範囲と同じでありうる。
【0221】
[3.7.(g)溶剤]
クラッド用樹脂組成物は、上述した(a)~(f)成分といった不揮発成分に組み合わせて、揮発成分としての(g)溶剤を含んでいてもよい。クラッド用樹脂組成物の(g)成分としての(g)溶剤としては、コア用樹脂組成物の(G)溶剤と同じ範囲のものを用いうる。また、クラッド用樹脂組成物に含まれる(g)溶剤の量の範囲は、コア用樹脂組成物に含まれる(G)溶剤の範囲と同じでありうる。(g)溶剤によれば、(G)溶剤によってコア用樹脂組成物が得るのと同様の利点を、クラッド用樹脂組成物において得ることができる。
【0222】
[3.8.クラッド用樹脂組成物の製造方法]
クラッド用樹脂組成物は、当該クラッド用樹脂組成物に含まれるべき各成分を混合して製造できる。よって、クラッド用樹脂組成物は、(a)~(c)成分及び必要に応じて(d)~(g)成分を混合しして製造できる。混合方法は、コア用樹脂組成物の製造と同じく行ってもよい。
【0223】
[3.9.クラッド用樹脂組成物の特性]
クラッド用樹脂組成物は、好ましくは、優れた解像性を有する。例えば、後述する実施例の[樹脂組成物の解像性の評価]で説明する方法によって、クラッド用樹脂組成物を用いてL/S(ライン/スペース)が10μm/10μm、5μm/50μm及び3μm/3μmのライン層を形成する。この場合、いずれのライン層においても、ライン層のアスペクト比を、好ましくは0.6以上、より好ましくは1以上にできる。
【0224】
上述したクラッド用樹脂組成物は、露光し、更に必要に応じて加熱することによって硬化できる。よって、クラッド用樹脂組成物からは、硬化物を得ることができる。通常、クラッド用樹脂組成物に含まれる成分のうち、(g)溶剤等の揮発成分は、乾燥又は硬化時の熱によって揮発しうるが、(a)~(f)成分といった不揮発成分は、揮発しない。よって、クラッド用樹脂組成物の硬化物は、クラッド用樹脂組成物の不揮発成分又はその反応生成物を含みうる。
【0225】
クラッド用樹脂組成物によれば、光導波路の形成に適した屈折率を有する硬化物を得ることができる。クラッド用樹脂組成物の硬化物の具体的な屈折率ncladは、所望の開口度NAの光導波路が得られる範囲で、制限はない。例えば、測定波長1310nmにおけるクラッド用樹脂組成物の硬化物の屈折率ncladは、好ましくは1.4000以上、より好ましくは1.5000以上、特に好ましくは1.5900以上であり、好ましくは1.6500以下、より好ましくは1.61000以下、特に好ましくは1.6006以下である。クラッド用樹脂組成物の屈折率は、後述する実施例の[樹脂組成物の硬化物の屈折率の測定]に記載の方法によって測定できる。
【0226】
クラッド用樹脂組成物によれば、機械的強度に優れた硬化物を得ることができる。例えば、後述する実施例の[樹脂組成物の硬化物の破断点伸度の測定]に記載の方法によって、硬化物の破断点伸度を測定した場合、好ましくは1%以上の破断点伸度を有することができる。
【0227】
クラッド用樹脂組成物によれば、耐熱性に優れた硬化物を得ることができる。例えば、後述する実施例に記載の条件で得た硬化物に「(リフロー後の外観の観察)」に記載の条件で加熱処理を行った場合に、ボイドの発生を抑制することができる。また、好ましくは、シリコンウエハ等の基材からの硬化物の剥離を抑制できる。
【0228】
クラッド用樹脂組成物は、光導波路のクラッド層の形成用の感光性樹脂組成物として用いうる。例えば、クラッド用樹脂組成物は、波長1300nm~1320nmの光を伝送可能な光導波路の形成のために用いうる。特に、クラッド用樹脂組成物は、シングルモードの光導波路の形成のために用いることが好ましく、例えば、波長1310nmの光に対するシングルモードの光導波路の形成のために用いることが好ましい。
【0229】
[4.コア用樹脂組成物の硬化物とクラッド用樹脂組成物の硬化物との関係]
上述したコア用樹脂組成物の硬化物及びクラッド用樹脂組成物の硬化物は、下記式(1)で表される開口数NAが特定の範囲に収まる屈折率ncore及び屈折率ncladを有する。
【0230】
【数8】
【0231】
式(1)において、ncoreはコア用樹脂組成物の硬化物の屈折率を表し、ncladはクラッド用樹脂組成物の硬化物の屈折率を表す。屈折率ncore及び屈折率ncladの測定波長は、光導波路を伝送される光の波長であり、例えば、1310nmである。前記の開口数NAは、具体的には、通常0.05より大きく、好ましくは0.06より大きく、特に好ましくは0.065より大きく、また、通常0.4未満、好ましくは0.35以下、更に好ましくは0.3以下、特に好ましくは0.2以下である。
【0232】
コア用樹脂組成物及びクラッド用樹脂組成物といった感光性樹脂組成物の硬化物の屈折率は、下記の方法によって測定できる。感光性樹脂組成物に3000mJの最適露光量で露光を実施し、その後、90℃3分の加熱を行う。さらに、現像液として23℃の2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液をスプレー圧0.1MPaにて30秒間のスプレーして現像を行う。この現像後、3J/cmの紫外線照射を行い、さらに190℃、90分間の加熱処理を窒素雰囲気下で行って、硬化物を得る。この硬化物の屈折率を、常温常圧(23℃1気圧)において測定する。具体的な測定方法は、実施例の[樹脂組成物の硬化物の屈折率の測定]で説明する方法を採用しうる。
【0233】
開口数NAが前記の範囲に収まる場合に、コア用樹脂組成物の硬化物を含むコア層とクラッド用樹脂組成物の硬化物を含むクラッド層とを備える光導波路は、光の伝送損失を抑制できる。例えば、前記の屈折率ncore及びncladの測定波長の光の伝送損失を、好ましくは2.0dB/cm以下、より好ましくは1.8dB/cm以下、特に好ましくは1.6dB/cm以下にできる。伝送損失の下限は、理想的には0.0dB/cmであるが、通常は0.1dB/cm以上である。
光導波路の伝送損失は、後述する実施例の[光導波路の評価]に記載の方法によって測定できる。
【0234】
また、前記の光導波路は、通常、耐熱性に優れ、よって優れた耐リフロー性を有することができる。具体的には、リフロー装置を用いて熱処理を施された場合に、光導波路は、通常、ボイドの形成を抑制できる。さらに、通常は、前記の熱処理を施された場合に、光導波路は、当該光導波路が設けられた基材(例えば、シリコンウエハ)からの剥離を抑制できる。
リフロー装置を用いた熱処理は、例えば、後述する実施例の[光導波路の評価]に記載の方法によって行いうる。
【0235】
前記の効果が得られる仕組みを、本発明者は、下記のとおりと推察する。ただし、本発明の技術的範囲は、下記の仕組みに制限されない。
【0236】
一般に、光導波路の伝送損失を生じる要素には、コア層に含まれる材料で光が吸収されることによる減衰と、コア層及びクラッド層の間の界面での光の反射時の減衰と、が含まれる。これに対し、(A)~(C)成分を組み合わせて含むコア用樹脂組成物の硬化物は、光の吸収を抑制できる。
【0237】
また、開口数NAが上述した特定の範囲にある場合、コア層とクラッド層との間の界面での反射時の減衰を抑制できる。
例えば、一般に、光導波路の形成時には、コア用樹脂組成物及びクラッド用樹脂組成物に熱が与えられる。よって、コア層及びクラッド層には熱履歴が与えられるが、この熱履歴が光導波路の一部で局所的に不均一になることがありうる。この場合、当該一部において、コア層とクラッド層との屈折率差が過小になって、その部分の界面での反射が不十分となりうる。しかし、開口数NAが上述した特定の範囲にある場合、熱履歴が不均一な部分が仮に生じても、コア層とクラッド層との屈折率差を安定して大きくできるので、界面での反射時の減衰を抑制できる。
【0238】
さらに、例えば、一般に、コア層及びクラッド層が樹脂組成物の硬化物で形成されている場合、取り扱い時に加えられた応力によって硬化物の一部又は全部の屈折率が変動しうる。仮に屈折率が変動してコア層とクラッド層との屈折率差が過小な部分が生じると、その部分では界面での反射が不十分となりうる。しかし、開口数NAが前記範囲の下限値以上である場合、取り扱い時に応力が加えられても、コア層とクラッド層との屈折率差を安定して大きくできる。よって、界面での反射時の減衰を抑制できる。
【0239】
また、前記の開口数NAが上記範囲の上限値以下である場合、コア用樹脂組成物の硬化物とクラッド用樹脂組成物の硬化物とは近い屈折率を有し、よって近い組成を有することができる。よって、製造時及び使用時に与えられる熱及び湿気等の影響による屈折率変動があっても、その変動はコア層とクラッド層とで同程度生じることができる。したがって、コア層とクラッド層との屈折率差の変動を抑制して、当該屈折率差を安定して大きくできるので、界面での反射時の減衰を抑制できる。また、コア用樹脂組成物の硬化物とクラッド用樹脂組成物の硬化物とが近い組成を有する場合、コア層とクラッド層との親和性を高めることができるので、界面の平滑性を高度に高めることができる。よって、微視的に見て界面への光の入射角が小さくなる部分が生じることを抑制できるので、コア層内の光がクラッド層に漏れ出すことを抑制でき、界面での反射時の減衰を抑制できる。
【0240】
さらに、一般に使用される集光モジュールの開口数は、比較的小さい。これに対し、前記の開口数NAを有する光導波路は、前記のように開口数が小さい集光モジュールに光を送出する際に、光漏れを抑制できる。したがって、光導波路の出射側での接続損失を抑制することが可能であるので、これによっても、伝送損失を抑制することができる。
したがって、伝送損失の抑制を達成することができる。
【0241】
また、コア用樹脂組成物の硬化物及びクラッド用樹脂組成物の硬化物は、通常、材料自体が高い耐熱性を有することができる。さらに、コア用樹脂組成物の硬化物及びクラッド用樹脂組成物の硬化物が高い親和性を有することができるので、コア層とクラッド層との密着を円滑に達成でき、よって、コア層とクラッド層との間の界面への空気の残留を抑制できる。さらに、コア層とクラッド層との密着を高くできるので、コア層とクラッド層との間の界面における剥離を抑制できる。したがって、熱処理時のボイドの形成を抑制できる。さらに、コア用樹脂組成物の硬化物及びクラッド用樹脂組成物の硬化物は高い機械的強度を有することができるので、樹脂破壊を伴う剥離(デラミネーション)の発生を抑制でき、よって、基材からの剥離を抑制できる。したがって、通常、高い耐熱性を有することができる。
【0242】
さらに、コア用樹脂組成物の硬化物とクラッド用樹脂組成物の硬化物とが近い組成を有する場合、コア層とクラッド層とは、線熱膨張係数(CTE)及び伸縮性等の特性が近いことができる。よって、長期耐熱試験及び湿熱試験等の耐久性試験においてコア層とクラッド層とは近い屈折率変動の挙動を示すことができる。したがって、光導波路の耐熱性及び耐湿熱性を向上させることができるので、前記の耐久性試験によって開口数NAが設計範囲から意図せず外れることを抑制し、よって伝送損失を抑制できる。
【0243】
光導波路の耐熱性及び耐湿熱性を向上させる観点では、コア用樹脂組成物の硬化物の線熱膨張係数とクラッド用樹脂組成物の硬化物の線熱膨張係数との差ΔCTEは、小さいことが好ましい。前記の線熱膨張係数の差ΔCTEの具体的な範囲は、好ましくは20ppm/℃以下、より好ましくは18ppm/℃以下、特に好ましくは15ppm/℃以下である。コア用樹脂組成物の硬化物の線熱膨張係数がクラッド用樹脂組成物の硬化物の線熱膨張係数より大きくてもよいが、クラッド用樹脂組成物の硬化物の線熱膨張係数がコア用樹脂組成物の硬化物の線熱膨張係数より大きいことが好ましい。コア用樹脂組成物の硬化物の線熱膨張係数とクラッド用樹脂組成物の硬化物の線熱膨張係数は、実施例の[樹脂組成物の硬化物の線熱膨張係数の測定]で説明する方法で測定できる。
【0244】
上述したコア用樹脂組成物及びクラッド用樹脂組成物を用いて製造される光導波路が伝送する光の波長は、さまざまに選択しうる。例を挙げると、伝送される光の好ましい波長の範囲は、840nm~860nm(例えば、850nm)、1300nm~1320nm(例えば、1310nm)、1540nm~1560nm(例えば、1550nm)などでありうる。中でも、上述したコア用樹脂組成物及びクラッド用樹脂組成物は、波長1300nm~1320nmの光を伝送可能な光導波路の製造用に用いることが好ましい。
【0245】
光導波路には、シングルモードの光導波路と、マルチモードの光導波路とがある。上述したコア用樹脂組成物及びクラッド用樹脂組成物は、シングルモードの光導波路の製造用に用いてもよく、マルチモードの光導波路の製造用に用いてもよい。中でも、上述したコア用樹脂組成物及びクラッド用樹脂組成物は、シングルモードの光導波路の製造用に用いることが好ましい。よって、例えば、前記の好ましい波長の範囲の光に対するシングルモードの光導波路の製造用に用いることが好ましい。
【0246】
[5.シートセット]
上述したコア用樹脂組成物及びクラッド用樹脂組成物といった感光性樹脂組成物は、樹脂シートとして用いてもよい。樹脂シートは、感光性樹脂組成物を含む樹脂組成物層を備えるシートである。よって、コア用樹脂組成物からは、当該コア用樹脂組成物を含む樹脂組成物層を備える樹脂シート(以下、「コア用樹脂シート」ということがある。)が得られる。また、クラッド用樹脂組成物からは、当該クラッド用樹脂組成物を含む樹脂組成物層を備える樹脂シート(以下、「クラッド用樹脂シート」ということがある。)が得られる。そして、それらのコア用樹脂シート及びクラッド用樹脂シートを含むシートセットを、光導波路の製造用のシートセットとして得ることができる。これらのシートセット、コア用樹脂シート及びクラッド用樹脂シートによれば、上述した感光性樹脂組成物セット、コア用樹脂組成物及びクラッド用樹脂組成物と同様の利点を得ることができ、更には、ラミネート法による光導波路の製造が可能となるので、光導波路の製造を簡単に行うことができる。
【0247】
[5.1.コア用樹脂シート]
コア用樹脂シートの樹脂組成物層は、通常はコア用樹脂組成物を含み、好ましくはコア用樹脂組成物のみを含む。コア用樹脂シートの樹脂組成物層の厚みは、コア層の厚みに応じて設定しうる。具体的な範囲を挙げると、コア用樹脂シートの樹脂組成物層の厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは3μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、特に好ましくは20μm以下である。
【0248】
コア用樹脂シートは、支持体を備えていてもよい。例えば、コア用樹脂シートは、支持体と、この支持体上に形成された樹脂組成物層とを備えていてもよい。支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、トリアセチルアセテートフィルム等が挙げられ、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。市販の支持体としては、例えば、王子製紙社製の製品名「アルファンMA-410」、「E-200C」、信越フィルム社製等のポリプロピレンフィルム、帝人社製の製品名「PS-25」等のPSシリーズなどのポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられる。ラミネート後の支持体の剥離を容易にするため、支持体の表面には、アルキッド系離型剤、シリコーンコート剤等の剥離剤が塗布されていてもよい。支持体の厚さは、5μm~100μmの範囲であることが好ましく、10μm~50μmの範囲であることがより好ましい。
【0249】
コア用樹脂シートは、樹脂組成物層を保護する保護フィルムを備えていてもよい。通常、保護フィルムは、樹脂組成物層の支持体とは反対側に設けられる。保護フィルムとしては、例えば、支持体と同様の材料により形成されたフィルムを用いうる。保護フィルムと樹脂組成物層との接着力は、支持体と樹脂組成物層との接着力よりも小さいことが好ましい。通常、コア用樹脂シートは、保護フィルムを剥離した後で使用される。
【0250】
コア用樹脂シートは、例えば、コア用樹脂組成物を支持体上に塗布して製造できる。塗布を円滑に行う観点から、溶剤を含むワニス状のコア用樹脂組成物を用意し、そのワニス状のコア用樹脂組成物を塗布してもよい。溶剤を含むコア用樹脂組成物を塗布した場合、必要に応じて、塗布の後に乾燥を行ってよい。
【0251】
コア用樹脂シートが備える樹脂組成物層は、溶剤を含んでいてもよいが、その溶剤の量は少ないことが好ましい。一例において、樹脂組成物層に含まれる溶剤の量の範囲は、樹脂組成物層の総量100質量%に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましい。
【0252】
[5.2.クラッド用樹脂シート]
クラッド用樹脂シートの樹脂組成物層は、通常はクラッド用樹脂組成物を含み、好ましくはクラッド用樹脂組成物のみを含む。クラッド用樹脂シートの樹脂組成物層の厚みは、クラッド層の厚みに応じて設定しうる。具体的な範囲を挙げると、クラッド用樹脂シートの樹脂組成物層の厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは7μm以上、更に好ましくは10μm以上であり、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下、特に好ましくは20μm以下である。
【0253】
クラッド用樹脂シートは、コア用樹脂組成物を含む樹脂組成物層の代わりにクラッド用樹脂組成物を含む前記の樹脂組成物層を備えること以外、コア用樹脂シートと同様でありうる。よって、クラッド用樹脂シートは、支持体を備えていてもよい。クラッド用樹脂シートの支持体は、コア用樹脂シートの支持体と同じでありうる。また、クラッド用樹脂シートは、保護フィルムを備えていてもよい。クラッド用樹脂シートの保護フィルムは、コア用樹脂シートの保護フィルムと同じでありうる。通常、クラッド用樹脂シートは、保護フィルムを剥離した後で使用される。
【0254】
クラッド用樹脂シートは、コア用樹脂組成物の代わりにクラッド用樹脂組成物を用いること以外は、コア用樹脂シートと同じ方法によって製造しうる。
【0255】
クラッド用樹脂シートが備える樹脂組成物層は、溶剤を含んでいてもよいが、その溶剤の量は少ないことが好ましい。一例において、クラッド用樹脂シートの樹脂組成物層に含まれる溶剤の量の範囲は、コア用樹脂シートの樹脂組成物層に含まれる溶剤の量の範囲と同じでありうる。
【0256】
[6.光導波路]
上述したコア用樹脂組成物、コア用樹脂シート、クラッド用樹脂組成物、クラッド用樹脂シート、感光性樹脂組成物セット及びシートセットは、光導波路の製造に用いることができる。以下、その光導波路の実施形態を、図面を用いて説明する。
【0257】
図1は、本発明の一実施形態に係る光導波路10を模式的に示す斜視図である。図1に示すように、光導波路10は、コア層100及びクラッド層200を備える。コア層100は、コア用樹脂組成物の硬化物を含み、好ましくはコア用樹脂組成物の硬化物のみを含む。また、クラッド層200は、クラッド用樹脂組成物の硬化物を含み、好ましくはクラッド用樹脂組成物の硬化物のみを含む。
【0258】
コア層100は、クラッド層200中に設けられる。よって、コア層100は、クラッド層200に覆われる。通常は、コア層100の全周面が、クラッド層200に覆われる。コア層100とクラッド層200とは、間に他の層を介することなく直接に接しており、よって、コア層100とクラッド層200との間には界面100Iが形成されうる。光(図示せず。)は、通常、前記の界面100Iで反射を繰り返しながら、コア層100の一端(入射側の端)100Aから他端(出射側の端)100Bまでコア層100内を伝送されることができる。
【0259】
光導波路10が伝送可能な光の波長は、さまざまに選択しうる。例を挙げると、伝送される光の好ましい波長の範囲は、840nm~860nm(例えば、850nm)、1300nm~1320nm(例えば、1310nm)、1540nm~1560nm(例えば、1550nm)などでありうる。中でも、光伝送路10を伝送される光の波長の範囲は、1300nm~1320nmが好ましい。
【0260】
光導波路10は、シングルモードの光導波路であってもよく、マルチモードの光導波路であってもよいが、シングルモードの光導波路であることが好ましい。中でも、光導波路10は、前記の好ましい波長の範囲の光に対するシングルモードの光導波路であることが好ましい。例えば、光導波路10は、1310nmの光に対するシングルモードの光導波路であることが好ましい。
【0261】
コア層100の幅Lは、光の伝送が可能な範囲で適切に設定することが望ましい。具体的なコア層100の線幅Lの範囲は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、特に好ましくは2μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、特に好ましくは20μm以下であり、10μm以下又は5μm以下であってもよい。コア層100の幅Lは、厚み方向から見た場合のコア層100の線幅(ライン)に相当する。
【0262】
コア層100の間隔Sは、光の伝送が可能な範囲で適切に設定することが望ましい。具体的なコア層100の間隔Sの範囲は、好ましくは50μm以上、より好ましくは70μm以上、特に好ましくは100μm以上であり、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下、特に好ましくは300μm以下である。コア層100の間隔Sは、厚み方向から見たコア層の間隔(スペース)に相当する。
【0263】
コア層100の厚みTは、光の伝送が可能な範囲で適切に設定することが望ましい。具体的なコア層100の厚みTの範囲は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、特に好ましくは2μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、特に好ましくは20μm以下であり、10μm以下であってもよい。
【0264】
クラッド層200の厚みは、通常、コア層100の厚みよりも大きい。クラッド層200の具体的な厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは7μm以上、特に好ましくは10μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは60μm以下、さらに好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、特に好ましくは20μm以下である。
【0265】
光導波路10は、必要に応じて、コア層100及びクラッド層200以外の任意の要素を備えていてもよい。例えば、光導波路10は、基材300を備えていてもよい。基材300を備える光導波路10では、通常、基材300上にクラッド層200が設けられ、そのクラッド層200内にコア層100が設けられている。
【0266】
基材300としては、ガラス基板、金属基板、セラミックス基板、ウエハ、回路基板等の硬質の基板を用いてもよい。ウエハとしては、例えば、シリコンウエハ、ガリウムヒ素(GaAs)ウエハ、インジウムリン(InP)ウエハ、ガリウムリン(GaP)ウエハ、ガリウムナイトライド(GaN)ウエハ、ガリウムテルル(GaTe)ウエハ、亜鉛セレン(ZnSe)ウエハ、シリコンカーバイド(SiC)ウエハ等の半導体ウエハを用いてもよく、疑似ウエハを用いてもよい。疑似ウエハとしては、例えば、モールド樹脂と、そのモールド樹脂に埋め込まれた電子部品とを備える板状部材を用いうる。回路基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。なお、ここで回路基板とは、上記のような基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成された基板をいう。さらに、基板300としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエステル等のプラスチック材料で形成されたフィルムを用いてもよい。さらに、フレキシブル回路基板を基板300として採用してもよい。
【0267】
また、光導波路10は、任意の要素として、コア層100及びクラッド層200を保護する保護層(図示せず。)を備えていてもよい。保護層は、例えば、クラッド層200の基材300とは反対側の面を覆うように設けてもよい。
【0268】
光導波路10は、上述したように、小さい伝送損失を有することができる。また、光導波路10は、通常、優れた耐熱性を有しており、例えば優れた耐リフロー性を有することができる。さらに、光導波路10は、優れた解像性を有するコア用樹脂組成物及びクラッド用樹脂組成物を用いて形成できるので、コア層の微細配線化が可能であり、前記のように小さい線幅Lで形成することが可能である。
【0269】
光導波路10は、上述したコア用樹脂組成物及びクラッド用樹脂組成物を組み合わせて用いて製造できる。例えば、光導波路10は、
クラッド用樹脂組成物を含む第一組成物層を形成する工程(I)と、
第一組成物層に露光処理を施す工程(II)と、
第一組成物層を硬化させる工程(III)と、
第一組成物層上に、コア用樹脂組成物を含む第二組成物層を形成する工程(IV)と、
第二組成物層に露光処理を施す工程(V)と、
第二組成物層に現像処理を施す工程(VI)と、
第二組成物層を硬化させる工程(VII)と、
第二組成物層上に、クラッド用樹脂組成物を含む第三組成物層を形成する工程(VIII)と、
第三組成物層に露光処理を施す工程(IX)と、
第三組成物層を硬化させる工程(X)と、
をこの順に含む方法によって、製造できる。
【0270】
図2は、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法の工程(I)を説明するための模式的な断面図である。図2に示すように、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法は、クラッド用樹脂組成物を含む第一組成物層210を形成する工程(I)を含む。本実施形態では、基材300上に第一組成物層210を形成する例を示して説明する。
【0271】
第一組成物層210の形成方法に特に制限は無い。例えば、クラッド用樹脂組成物を基材300上に塗布することにより、第一組成物層210を形成してもよい。塗布を円滑に行う観点から、溶剤を含むワニス状のクラッド用樹脂組成物を用意し、そのワニス状のクラッド用樹脂組成物を塗布してもよい。
【0272】
塗布方式としては、例えば、グラビアコート方式、マイクログラビアコート方式、リバースコート方式、キスリバースコート方式、ダイコート方式、スロットダイ方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、カーテンコート方式、チャンバーグラビアコート方式、スロットオリフィス方式、スピンコート方式、スリットコート方式、スプレーコート方式、ディップコート方式、ホットメルトコート方式、バーコート方式、アプリケーター方式、エアナイフコート方式、カーテンフローコート方式、オフセット印刷方式、刷毛塗り方式、スクリーン印刷方式などが挙げられる。
【0273】
クラッド用樹脂組成物は、1回で塗布してもよく、複数回に分けて塗布してもよい。また、異なる塗布方式を組み合わせて実施してもよい。異物混入を避けるために、塗布は、クリーンルーム等の異物発生の少ない環境で実施することが好ましい。
【0274】
クラッド用樹脂組成物の塗布の後、必要に応じて、第一組成物層210の乾燥を行ってもよい。乾燥は、熱風炉、遠赤外線炉等の乾燥装置によって行いうる。乾燥条件は、クラッド用樹脂組成物の組成に応じて適切に設定することが好ましい。具体例を挙げると、乾燥温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは70℃以上、特に好ましくは80℃以上であり、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下、特に好ましくは120℃以下である。また、乾燥時間は、好ましくは30秒以上、より好ましくは60秒以上、特に好ましくは120秒以上であり、好ましくは60分以下、より好ましくは20分以下、特に好ましくは5分以下である。
【0275】
第一組成物層210の形成は、例えば、クラッド用樹脂シートを用いて行ってもよい。具体例を挙げると、クラッド用樹脂シートの樹脂組成物層を基材300にラミネートすることにより、基材300上に第一組成物層210を形成できる。ラミネートは、通常、樹脂シートの樹脂組成物層を加熱しながら基材300に圧着することによって行われる。このラミネートは、真空ラミネート法により、減圧下で行うことが好ましい。また、ラミネートの前に、必要に応じて、樹脂シート及び基材を加熱するプレヒート処理を行ってもよい。
【0276】
ラミネートの条件は、例えば、圧着温度(ラミネート温度)70℃~140℃、圧着圧力1kgf/cm~11kgf/cm(9.8×10N/m~107.9×10N/m)、圧着時間5秒間~300秒間の条件で行うことができる。また、ラミネートは、空気圧を20mmHg(26.7hPa)以下とした減圧下で行うことが好ましい。ラミネートは、バッチ式で行ってもよく、ロールを用いて連続式で行ってもよい。
【0277】
真空ラミネート法は、市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、ニッコー・マテリアルズ社製バキュームアップリケーター、名機製作所社製真空加圧式ラミネーター、日立インダストリイズ社製ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー社製真空ラミネーター等を挙げることができる。
【0278】
支持体を備えるクラッド用樹脂シートを用いて第一組成物層210を形成した場合、通常は、工程(IV)より前の適切な時期に支持体を剥離する。
【0279】
工程(I)において基材300上に形成される第一組成物層210は、通常はクラッド用樹脂組成物を含み、好ましくはクラッド用樹脂組成物のみを含む。
【0280】
本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法は、工程(I)の後で、第一組成物層210に露光処理を施す工程(II)を含む。この露光処理では、第一組成物層210に光を照射する。光が照射されると、第一組成物層210中において(b)光酸発生剤が酸を発生させる。露光処理に用いる光としては、クラッド用樹脂組成物の組成に応じた適切な活性光線を用いることが好ましい。活性光線の波長は、通常190nm~1000nm、好ましくは240nm~550nmであるが、これ以外の波長の光線を用いてもよい。活性光源の具体例としては、紫外線、可視光線、電子線、X線等が挙げられ、特に紫外線が好ましい。
【0281】
光の露光量は、工程(III)における第一組成物層210の硬化が進行できるように設定することが望ましい。一例において、具体的な露光量の範囲は、好ましくは10mJ/cm以上、より好ましくは50mJ/cm以上、特に好ましくは200mJ/cm以上であり、好ましくは10,000mJ/cm以下、より好ましくは8,000mJ/cm以下、更に好ましくは4,000mJ/cm以下、特に好ましくは1,000mJ/cm以下である。
【0282】
支持体を備えるクラッド用樹脂シートを用いて第一組成物層210を形成した場合、工程(II)において、第一組成物層210上に支持体(図示せず。)が存在していることがありうる。第一組成物層210上に支持体が存在している場合、その支持体を通して露光を行ってもよく、支持体を剥離した後で露光を行ってもよい。
【0283】
本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法は、工程(II)の後で、第一組成物層210を硬化させる工程(III)を含む。この工程(III)は、通常、第一組成物層210を熱処理することを含む。熱処理によれば、工程(II)で生じた酸を触媒として(c)架橋剤の架橋反応を進行させて、第一組成物層210を硬化させることができる。熱処理の条件は、クラッド用脂組成物中の樹脂成分の種類及び量に応じて選択してもよく、好ましくは150℃~250℃で20分間~180分間の範囲、より好ましくは160℃~230℃で30分間~120分間の範囲でありうる。熱処理は、窒素雰囲気等の不活性雰囲気で行うことが好ましい。
【0284】
図3は、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法の工程(III)を説明するための模式的な断面図である。工程(III)で第一組成物層210を硬化させることにより、図3に示すように、基材300上に硬化した第一組成物層220が得られる。この硬化した第一組成物層220は、クラッド層200の一部を形成するものであり、以下、「下層クラッド層」220ということがある。
【0285】
図4は、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法の工程(IV)を説明するための模式的な断面図である。本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法は、工程(III)の後で、図4に示すように、硬化した第一組成物層としての下層クラッド層220上に、コア用樹脂組成物を含む第二組成物層110を形成する工程(IV)を含む。
【0286】
第二組成物層110の形成方法に特に制限は無い。例えば、コア用樹脂組成物を下層クラッド層220上に塗布することにより、第二組成物層110を形成してもよい。塗布を円滑に行う観点から、溶剤を含むワニス状のコア用樹脂組成物を用意し、そのワニス状のコア用樹脂組成物を塗布してもよい。コア用樹脂組成物の塗布は、クラッド用樹脂組成物の塗布と同様に行いうる。また、コア用樹脂組成物の塗布の後、必要に応じて、第二組成物層110の乾燥を行ってもよい。第二組成物層110の乾燥は、第一組成物層210の乾燥と同じ方法及び条件を採用しうる。
【0287】
第二組成物層110の形成は、例えば、コア用樹脂シートを用いて行ってもよい。具体例を挙げると、コア用樹脂シートの樹脂組成物層を下層クラッド層220にラミネートすることにより、下層クラッド層220上に第二組成物層110を形成できる。コア用樹脂シートのラミネートは、クラッド用樹脂シートのラミネートと同様に行いうる。また、支持体を備えるコア用樹脂シートを用いて第二組成物層110を形成した場合、通常は、工程(VI)より前の適切な時期に支持体を剥離する。
【0288】
工程(IV)において下層クラッド層220上に形成される第二組成物層110は、通常はコア用樹脂組成物を含み、好ましくはコア用樹脂組成物のみを含む。
【0289】
図5は、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法の工程(V)を説明するための模式的な断面図である。本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法は、図5に示すように、工程(IV)の後で、第二組成物層110に露光処理を施す工程(V)を含む。
【0290】
工程(V)では、露光処理により、第二組成物層110に潜像を形成する。具体的には、露光処理では、第二組成物層110の特定の部分に選択的に光Pを照射する。よって、露光処理を施されると、第二組成物層110には、光を照射された露光部111と、光を照射されていない非露光部112とが設けられる。通常、コア用樹脂組成物はネガ型の感光性樹脂組成物として機能するので、露光部111によって、コア層に対応する潜像が形成される。
【0291】
選択的な露光を行う観点から、工程(V)での露光処理は、通常、マスク400を用いて行われる。具体的には、この露光処理では、透光部410及び遮光部420を備えるマスク400を介して、光Pを第二組成物層110に照射する。光Pは、透光部410を透過して露光部111へ入射するが、遮光部420を透過できないので非露光部112へは入射できない。よって、透光部410及び遮光部420に対応した露光部111及び非露光部112を第二組成物層110に設けることができる。マスク400は、図5に示すように第二組成物層110に密着させてもよく(接触露光法)、密着させずに平行光線を使用して露光を行ってもよい(非接触露光法)。
【0292】
一般に、マスク400の透光部410は、光導波路のコア層に対応した平面形状を有するように形成される。よって、マスク400の遮光部420は、光導波路のコア層が無い部分に対応した平面形状を有するように形成される。「平面形状」とは、別に断らない限り、厚み方向から見た形状を表す。コア層に対応した平面形状に形成された透光部410を、以下「マスクパターン」ということがある。
【0293】
工程(V)での露光処理において用いる光Pとしては、工程(II)における第一組成物層210に対する露光処理と同じ範囲の活性光線を用いうる。光Pの露光量は、工程(VII)での硬化後に所望のコア層を形成できるように設定することが好ましい。一例において、工程(V)での具体的な露光量の範囲は、工程(II)における第一組成物層210への露光量と同じ範囲でありうる。
【0294】
支持体を備えるコア用樹脂シートを用いて第二組成物層110を形成した場合、工程(V)において、第二組成物層110上に支持体(図示せず。)が存在していることがありうる。第二組成物層110上に支持体が存在している場合、その支持体を通して露光を行ってもよく、支持体を剥離した後で露光を行ってもよい。
【0295】
コア用樹脂組成物がネガ型の感光性樹脂組成物として機能するので、露光部111では、(B)光酸発生剤が酸を発生させる。そして、その酸が触媒として働くので、(C)架橋剤の架橋反応が進行して、現像液に対する溶解性が低下する。他方、非露光部112では、(B)光酸発生剤が酸を発生させないので、(C)架橋剤の架橋反応が進行しないか進行が小さく、よって、現像液に対する溶解性は高い。この露光部111と非露光部112との溶解性の差を利用して、この後の工程(VI)による現像処理が行われる。
【0296】
本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法は、工程(V)の後、工程(VI)の前に、第二組成物層110を加熱する工程(XI)を含んでいてもよい。工程(XI)による加熱によれば、(C)架橋剤の架橋反応を促進することができる。よって、現像液に対する露光部111の溶解性を速やかに低下させることができる。工程(XI)での加熱は、ホットプレートで行ってもよいし、オーブンで行ってもよい。加熱温度は、例えば、40℃以上110℃以下でありうる。また、加熱時間は、例えば、30秒以上60分以下でありうる。
【0297】
図6は、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法の工程(VI)を説明するための模式的な断面図である。本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法は、工程(V)の後に、第二組成物層110に現像処理を施す工程(VI)を含む。現像処理によれば、工程(V)で形成された潜像を現像することができる。コア用樹脂組成物がネガ型の感光性樹脂組成物として機能するので、図6に示すように、現像処理によって露光部111は除去されない一方で、非露光部112(図5参照)が除去される。現像後に残る第二組成物層110の露光部111は、工程(V)で用いたマスク400の透光部410(図5参照)のマスクパターンと同じ平面形状を有しうる。
【0298】
現像方法は、通常、第二組成物層110と現像液とを接触させるウエット現像法を行う。現像液としては、例えば、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤等が挙げられる。
【0299】
現像液としてのアルカリ性水溶液としては、例えば、アルカリ金属化合物の水溶液が挙げられる。アルカリ金属化合物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の、アルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム等の、アルカリ金属の炭酸塩又は重炭酸塩;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等の、アルカリ金属リン酸塩;ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等の、アルカリ金属ピロリン酸塩、などが挙げられる。また、アルカリ性水溶液としては、例えば、水酸化テトラアルキルアンモニウム等の、金属イオンを含有しない有機塩基の水溶液が挙げられる。アルカリ性水溶液は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、金属イオンを含有しない点で、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)の水溶液が好ましい。一例において、アルカリ性水溶液のpHの範囲は、好ましくは8以上、より好ましくは9以上であり、好ましくは14以下、より好ましくは12以下、特に好ましくは11以下である。また、上記アルカリ性水溶液の塩基濃度は、0.1質量%~10質量%であることが好ましい。
【0300】
現像液としての有機溶剤としては、例えば、アセトン、酢酸エチル、炭素原子数1~4のアルコキシ基を有するアルコキシエタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。有機溶剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。有機溶剤の濃度は、現像液全量に対して、通常2質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。現像液は、100質量%が有機溶剤であってもよい。単独で用いる有機溶剤系現像液としては、例えば、1,1,1-トリクロロエタン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、γ-ブチロラクトンが挙げられる。
【0301】
現像液は、必要に応じて、現像作用の向上のために、界面活性剤、消泡剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0302】
現像時間は、10秒~5分が好ましい。現像時の現像液の温度は、特に定めるものではないが、好ましくは20℃以上であり、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下である。
【0303】
現像方式としては、例えば、パドル法、スプレー法、浸漬法、ブラッシング法、スラッピング法、超音波法等が挙げられる。中でも、スプレー法が解像度向上のためには好適である。スプレー法を採用する場合のスプレー圧としては、0.05MPa~0.3MPaが好ましい。
【0304】
現像液を用いた現像後、更に、第二組成物層110のリンスを行ってもよい。リンスは、現像液とは異なる溶剤で行うことが好ましい。例えば、コア用樹脂組成物に含まれるのと同じ種類の溶剤又は水を用いて、リンスしてもよい。リンス時間は、5秒~1分が好ましい。
【0305】
本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法は、工程(VI)の後に、第二組成物層110を硬化させる工程(VII)を含む。この工程(VII)は、通常、第二組成物層110を熱処理することを含む。熱処理によれば、(C)架橋剤の架橋反応を進行させて、第二組成物層110を硬化させることができる。熱処理の条件は、コア用脂組成物中の樹脂成分の種類及び量に応じて選択してもよい。例えば、工程(VII)での熱処理の条件は、工程(III)での第一組成物層210への熱処理と同じ条件でありうる。
【0306】
図7は、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法の工程(VII)を説明するための模式的な断面図である。工程(VII)で第二組成物層110を硬化させることにより、図7に示すように、下層クラッド層220上に、硬化した第二組成物層としてのコア層100が得られる。
【0307】
図8は、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法の工程(VIII)を説明するための模式的な断面図である。図8に示すように、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法は、工程(VII)の後に、コア層100上にクラッド用樹脂組成物を含む第三組成物層230を形成する工程(VIII)を含む。第三組成物層230は、通常、コア層100の周面のうち、下層クラッド層220に接していない面の全体を覆うように形成される。よって、第三組成物層230は、コア層100を覆うように形成されるとともに、下層クラッド層220上にも形成される。
【0308】
第三組成物層230の形成方法に特に制限は無い。例えば、クラッド用樹脂組成物をコア層100上に塗布することにより、第三組成物層230を形成してもよい。クラッド用樹脂組成物をコア層100上に塗布するとき、そのクラッド用樹脂組成物は必要に応じて下層クラッド層220に塗布されてもよい。第三組成物層230を形成するためのクラッド用樹脂組成物の塗布は、第一組成物層210を形成するためのクラッド用樹脂組成物の塗布と同様に行いうる。また、クラッド用樹脂組成物の塗布の後、必要に応じて、第三組成物層230の乾燥を行ってもよい。第三組成物層230の乾燥は、第一組成物層210の乾燥と同じ方法及び条件を採用しうる。
【0309】
第三組成物層230の形成は、例えば、クラッド用樹脂シートを用いて行ってもよい。具体例を挙げると、クラッド用樹脂シートの樹脂組成物層をコア層100にラミネートすることにより、コア層100上に第三組成物層230を形成できる。クラッド用樹脂シートの樹脂組成物層をコア層100にラミネートするとき、そのクラッド用樹脂シートの樹脂組成物層は必要に応じて下層クラッド層220にラミネートされてもよい。第三組成物層230を形成するためのクラッド用樹脂シートのラミネートは、第一組成物層210を形成するためのクラッド用樹脂シートのラミネートと同様に行いうる。支持体を備えるクラッド用樹脂シートを用いて第三組成物層230を形成した場合、支持体は、任意の工程で剥離してもよい。
【0310】
工程(VIII)においてコア層100上に形成される第三組成物層230は、通常はクラッド用樹脂組成物を含み、好ましくはクラッド用樹脂組成物のみを含む。
【0311】
本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法は、工程(VIII)の後で、第三組成物層230に露光処理を施す工程(IX)を含む。この露光処理では、第三組成物層230に光を照射する。光が照射されると、第三組成物層230中において(b)光酸発生剤が酸を発生させる。第三組成物層230への露光処理は、第一組成物層210への露光処理と同様に行いうる。
【0312】
本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法は、工程(IX)の後で、第三組成物層230を硬化させる工程(X)を含む。この工程(X)は、通常、第三組成物層230を熱処理することを含む。熱処理によれば、工程(IX)で生じた酸を触媒として(c)架橋剤の架橋反応を進行させて、第三組成物層230を硬化させることができる。第三組成物層230への熱処理は、第一組成物層210への熱処理と同様に行いうる。
【0313】
図9は、本発明の一実施形態に係る光導波路の製造方法の工程(X)を説明するための模式的な断面図である。工程(X)で第三組成物層230を硬化させることにより、図9に示すように、コア層100上に硬化した第三組成物層240が得られる。この硬化した第三組成物層240は、クラッド層200の一部を形成するものであり、以下、「上層クラッド層」240ということがある。そして、この上層クラッド層240と下層クラッド層220とから、クラッド層200が形成される。したがって、下層クラッド層220及び上層クラッド層240を含むクラッド層200と、このクラッド層200内に設けられたコア層100とを備える光導波路10を得ることができる。
【0314】
光導波路10の製造方法は、上述した工程に組み合わせて、更に任意の工程を含んでいてもよい。
光導波路10の製造方法は、例えば、保護層(図示せず。)を形成する工程を含んでいてもよい。また、光導波路10の製造方法は、例えば、製造した光導波路10をダイシングする工程を含んでいてもよい。
【0315】
光導波路10の製造方法は、上述した工程を繰り返し行ってもよい。例えば、工程(I)~(XI)を繰り返し行って、基材300上に、厚み方向においてコア層とクラッド層とを交互に備える多層構造の光導波路を製造してもよい。
【0316】
[7.光電気混載基板]
本発明の一実施形態に係る光電気混載基板は、上述した光導波路を備える。通常、光電気混載基板は、光導波路と、電気回路基板とを備える。電気回路基板は、電子部品と、当該電子部品に接続された配線とを備えうる。電子部品としては、例えば、コンデンサ、インダクタ、抵抗等の受動部品;半導体チップ等の能動部品;等が挙げられる。そして、光導波路と電気回路基板の配線とは、光電変換素子を介して接続されうる。光電変換素子は、電気を光に変換可能な発光素子(例えば、面発光型発光ダイオード)、及び、光を電気に変換可能な受光素子(例えば、フォトダイオード)を組み合わせて含みうる。さらに、光電気混載基板は、光路調整のためにミラー等の光学素子を備えていてもよい。
【0317】
好ましい光電気混載基板の例としては、シリコンウエハに光集積回路を形成したチップを備えるものが挙げられる。このチップは、シリコンフォトニクスを用いた早期の実用化が期待されており、例えば半導体パッケージへの実装が予想される。このチップを備える光電気混載基板は、例えば、電気回路基板と、当該電気回路基板に実装されたチップと、光導波路とを備える。光導波路は、電気回路基板の配線とチップとを接続したり、複数のチップ間を接続したりするために用いうる。
【0318】
シリコンフォトニクスで製造されるチップでは、一般に、1310nm及び1550nmの波長の光が使用されることが多く、特に1310nmが主流である(吉田翔、菅沼大輔、石榑崇明、「Mosquito法によるシングルモードポリマー導波路の作製と低損失化」、第28回エレクトロニクス実装学会春季講演大会、2014年)。よって、光導波路は、1310nm及び1550nm又はそれに近い波長の光の伝送が可能であることが好ましく、例えば波長1300nm~1320nmの光を伝送可能であることが好ましい。上述した実施形態に係る光導波路によれば、これらの波長の光の伝送が可能である。
【0319】
一般に、シングルモードとマルチモードとでは、シングルモードの方が速い伝送を達成できる。よって、高速伝送の観点からは、光電気混載回路に適用する光導波路として、シングルモードの光導波路が好ましい。シングルモードの光導波路では、コア層の幅は小さいことが好ましい。例えば、10μm以下、又は5μm以下の幅のコア層を形成することが好ましい。また、このように幅が小さいコア層を備える光導波路は、光導波路を半導体パッケージに適用する場合に、パッケージのデザインの自由度を高める観点からも、好ましい。上述した実施形態に係る光導波路によれば、コア層の幅を前記のように小さくすることが可能である。
【0320】
また、シングルモードの光導波路は、一般に、開口数NAが小さいことが望まれる。上述した実施形態に係る光導波路は、小さい開口数NAを有することができるので、開口数NAの観点でも、シングルモードへの適用が可能である。
【0321】
他方、複数の光電気混載基板を接続する場合、それらの基板は、光ファイバーを介して接続されることがありうる。例えば、ラックに複数の光電気混載基板を設置し、それら光電気混載基板同士を光ファイバーで接続することがありうる。このように基板間を接続する光ファイバーは、マルチモードが主流である。そこで、その光ファイバーとの接続を可能にする観点では、光電気混載基板に設ける光導波路として、マルチモードの光導波路を採用してもよい。
【0322】
汎用性を高める観点では、光導波路は、シングルモード及びマルチモードのいずれにも適用可能であることが望ましい。更には、それら光導波路のコア層の最小幅を小さくして、コア層の線幅の自由度を高めることが望ましい。上述した実施形態に係る光導波路によれば、解像性に優れる感光性樹脂組成物としてのコア用樹脂組成物及びクラッド用樹脂組成物を用いることにより、高い微細配線形成能力を達成できるので、コア層の最小幅を小さくできる。また、上述した実施形態に係る光導波路によれば、シングルモード及びマルチモードのいずれの光導波路も得ることができる。よって、上述した実施形態に係る光導波路は、広範な範囲に適用が可能である。そして、そのように広範な範囲に適用可能でありながら、光の伝送損失を抑制できるので、上述した実施形態に係る光導波路は、光電気混載基板に適用するのに好適である。
【0323】
光導波路を接続する場合、それら接続される光導波路のモードは同じであることが好ましく、開口数NAは近いことが好ましい。例えば、開口数NA1を有する第一の光導波路から開口数NA2を有する第二の光導波路に光を送る場合、接続部における光漏れを抑制する観点では、NA1≧Na2であることが望ましい。よって、一つの光電気混載基板に設けた複数の光導波路を接続する場合、それらの光導波路は開口数NAを前記の通り適切に設定することが望ましい。
【0324】
また、光導波路と光ファイバーとを接続する場合、光導波路は、光ファイバーの開口数に応じた適切な範囲の開口数NAを有することが望ましい。例えば、開口数の大きいシングルモードの光ファイバーとしては、開口数が0.35のものが実用化されている。よって、シングルモードの光ファイバーとの接続を可能にする観点では、シングルモードの光導波路は、前記の光ファイバーの開口数と同程度以下の開口数NAを有することが望ましい。上述した実施形態に係る光導波路によれば、0.35以下の開口数NAにおいて伝送損失を抑制できるので、シングルモードの光ファイバーと接続する光導波路に好ましく適用できる。
【実施例
【0325】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。また、以下に説明する操作は、別途明示の無い限り、常温常圧(23℃1気圧)大気中で行った。
【0326】
(合成例1)
フラスコに4-ヒドロキシフェニルメタクリレート(精工化学社製)を100g、N,N-ジメチルアセトアミド300g、アゾビスイソブチロニトリル(東京化成社製)4.0gを混合して反応液を得た。この反応液を窒素雰囲気下にて80℃まで昇温し、8時間の重合反応を行った。その後、反応液にメタノールを200g添加して、攪拌した大量のイオン交換水に滴下した。析出した重合体をろ過、乾燥して重合体を得た。GPCにより重合体の重量平均分子量を測定したところ、ポリスチレン換算で20,000であった。
【0327】
[製造例1~13]
表1及び表2に示す量の材料を配合し、高速回転ミキサーを使用して混合して、樹脂組成物としての樹脂ワニスを得た。表1及び表2において、各成分の数値は、質量部を表す。また、表1及び表2において、略称の意味は、以下のとおりである。
【0328】
<(A)フェノール樹脂>
「TR4020G」:旭有機材社製、重量平均分子量:13000。
「BisP-E」:旭有機材社製、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン。
「Bis-AF」:旭有機材社製、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン。
「マルカリンカーM」:丸善石油化学社製、ポリパラヒドロキシスチレン。
「合成例1」:合成例1で合成したポリマー。
「J-DPP-85」:JFEケミカル社製、ジシクロペンタジエン骨格型フェノール。
「SPDI」:JFEケミカル社製、スピロビインダンフェノール。
「TBIS-RX」:田岡化学工業社製、スピロ[フルオレン-9,9’-キサンテン]-3’,6’-ジオール。
【0329】
<(B)光酸発生剤>
「PAG-103」:BASF社製、下記構造式の化合物。
【0330】
【化35】
【0331】
<(C)架橋剤>
「MW-390」三和ケミカル社製、ヘキサメトキシメチルメラミン。
【0332】
<(D)ポリマー>
「CB-3098」:綜研化学社製、フェノール性水酸基及びメトキシメチル基を含有しないアクリル樹脂。重量平均分子量3000。
【0333】
<(E)アミン化合物>
「トリオクチルアミン」:TCI社製、トリ-n-オクチルアミン。
【0334】
<(F)任意の成分>
「ZCR-1797H」:ビフェニル骨格を有する酸変性エポキシアクリレート、日本化薬社製(濃度70%の溶液)。
「FA-324A」:エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート、昭和電工社製。
「NC-3000H」:ビフェニル骨格エポキシ樹脂、日本化薬社製。
「Omnirad819」:フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、IGM社製。
【0335】
<(G)溶剤>
「MEK」:メチルエチルケトン、純正化学社製。
「シクロヘキサノン」:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬社製。
「PGMEAc」:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、関東化学社製。
【0336】
[樹脂シートの製造]
上述した製造例で製造した樹脂ワニスを用いて、異なる厚みを有する樹脂組成物層を備えた複数の樹脂シートを、下記の方法で製造した。
【0337】
支持体としてポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製「ルミラーT6AM」、厚み38μm、軟化点130℃)を用意した。樹脂ワニスを、かかる支持体に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが5μm、6.5μm、8μm、10μm、15μm又は20μmになるよう、ダイコーターにて均一に塗布し、80℃から110℃(最高温度110℃)で7分間乾燥して、樹脂組成物層を形成した。次に、カバーフィルム(二軸延伸ポリプロピレンフィルム、王子エフテックス社製「MA-411」)を樹脂組成物層の表面に配置し、80℃でラミネートすることにより、支持体/樹脂組成物層/カバーフィルムの三層構成の樹脂シートを製造した。
【0338】
[樹脂組成物の硬化物の屈折率の測定]
上述した製造例で製造した樹脂ワニスに含まれる樹脂組成物の硬化物の屈折率を、樹脂シートを用いて、下記の方法で測定した。
厚み6.5μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートから、カバーフィルムを剥離した。その後、樹脂シートをシリコンウェハに80℃でラミネートし、支持体を剥離して、シリコンウェハ上に、厚み6.5μmの樹脂組成物層を形成した。その後、投影露光装置(ウシオ電機社製「UFX-2240」)を用いて、3000mJの最適露光量で樹脂組成物層に露光を実施した。露光後、90℃3分の加熱を行った後に、現像液として23℃の2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液をスプレー圧0.1MPaにて樹脂組成物層に30秒間のスプレーして、スプレー現像を行った。スプレー現像後、樹脂組成物層に3J/cmの紫外線照射を行い、さらに190℃、90分間の加熱処理を窒素雰囲気下で行って、樹脂組成物の硬化物で形成されたサンプルを得た。得られたサンプルの屈折率n(1310nm)を、2010M型プリズムカプラ(メトリコン製)により1310nmレーザー光を用いて室温常圧下で測定した。
【0339】
[樹脂組成物の解像性の評価]
上述した製造例で製造した樹脂ワニスに含まれる樹脂組成物の解像性を、樹脂シートを用いて、下記の方法で評価した。
【0340】
厚さ18μmの銅層を備えるガラスエポキシ基板(銅張積層板)の銅層に対して、有機酸を含む表面処理剤(CZ8100、メック社製)による粗化処理を行って、基板を用意した。製造例1にて調製した樹脂シートからカバーフィルムを剥離し、先の基板に100℃でラミネートし、支持体を剥離して、樹脂組成物層を形成した。その後、投影露光装置(ウシオ電機社製「UFX-2240」)を用いて、3000mJの最適露光量で、樹脂組成物層全面に露光を実施した。露光後、樹脂組成物層に、90℃3分の加熱を行った後に、現像液として23℃の2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液をスプレー圧0.1MPaにて30秒間のスプレーして、スプレー現像を行った。現像後、樹脂組成物層に3J/cmの紫外線照射を行い、さらに190℃、90分間の加熱処理を窒素雰囲気下で行うことにより、銅張積層板に下層クラッド層を形成した。
【0341】
上述した各製造例で製造した厚み10μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートから、カバーフィルムを剥離した。樹脂シートの樹脂組成物層と下層クラッド層とが接するように、下層クラッド層上に樹脂シートを配置し、真空ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製「VP160」)を用いて積層して、下層クラッド層上に樹脂組成物層を形成した。積層条件は、真空引きの時間30秒間、圧着温度100℃、圧着圧力0.7MPa、加圧時間30秒間とした。これにより、銅張積層板と下層クラッド層と樹脂シートをこの順に備える積層体を得た。その後、支持体を剥離して、樹脂組成物層を露出させた。
【0342】
樹脂組成物層に、投影露光装置(ウシオ電機社製「UFX-2240」)を用いて、200mJから2000mJの最適露光量で、露光を実施した。露光は、L/S(ライン/スペース)10μm/10μmで直線を描画させる第一のマスクパターン、L/S(ライン/スペース)5μm/50μmで直線を描画させる第二のマスクパターン、及び、L/S(ライン/スペース)3μm/3μmで直線を描画させる第三のマスクパターンを有する石英ガラスマスクを使用して行った。露光後、90℃3分の加熱を行った後に、樹脂組成物層に現像液として23℃の2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液をスプレー圧0.1MPaにて30秒間のスプレーして、スプレー現像を行った。スプレー現像後、樹脂組成物層に3J/cmの紫外線照射を行い、さらに190℃、90分間の加熱処理を窒素雰囲気下で行って、シリコンウエハと下層クラッド層とライン層(樹脂組成物の硬化物で形成された層)とをこの順に備えるサンプルを得た。
【0343】
得られたサンプルを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し(倍率2000倍)、最小細線形成幅(形成できたライン層のうち、幅が最も小さいライン層の幅)を測定した。ライン層の厚みを最小細線形成幅で割り算して、アスペクト比を計算した。10μm以下のライン幅を有する全てのライン層でアスペクト比が1以上であれば解像性を「優」、10μm以下のライン幅を有する全てのライン層でアスペクト比が0.6以上1未満であれば解像性を「可」、10μm以下のライン幅を有するライン層の少なくとも1つのアスペクト比が0.6未満であれば解像性を「劣」と評価した。ここで、ライン幅とは、ライン層の幅を表す。
【0344】
[樹脂組成物の硬化物の破断点伸度の測定]
上述した製造例で製造した厚み15μmの樹脂組成物層を備える樹脂フィルムから、カバーフィルムを剥離した。その後、樹脂組成物層に1000mJの紫外線照射と窒素雰囲気下で190℃90分間の加熱とを行って、樹脂組成物層を熱硬化させた。その後、支持体を剥離して、樹脂組成物の硬化物で形成されたサンプルフィルムを得た。得られたサンプルフィルムを、日本工業規格(JIS K7127)に準拠して、テンシロン万能試験機(オリエンテック製「RTC-1250A」)により引っ張り試験を行い、破断点伸度を測定した。この破断点伸度が大きいほど、サンプルフィルムの強度が高く、よって硬化物が機械的強度に優れることを表す。
「優」:破断点伸度が1%以上。
「劣」:破断点伸度が1%未満。
【0345】
[樹脂組成物の溶液の吸光度の測定]
上述した製造例で製造した樹脂ワニスに含まれる樹脂組成物の溶液を調製し、その溶液の吸光度を下記の方法で測定した。
すなわち、製造例で製造した樹脂ワニスにMEK及びシクロペンタノンの混合溶媒(MEK:ペンタノン=1:1)を混合して、樹脂組成物の濃度20質量%の溶液を調製した。この溶液を1cmの石英セルに投入し、紫外可視近赤外分光光度計(日本文光株式会社製 V-770)により、波長1310nmにおける吸光度Absを測定した。
【0346】
[樹脂組成物の硬化物の線熱膨張係数の測定]
上述した製造例で製造した樹脂ワニスに含まれる樹脂組成物の硬化物の線熱膨張係数を、樹脂シートを用いて、下記の方法で測定した。
すなわち、製造例で製造した厚み15μmの樹脂組成物層を備える樹脂フィルムから、カバーフィルムを剥離した。その後、樹脂組成物層に1000mJの紫外線照射と窒素雰囲気下で190℃90分間の加熱とを行って、樹脂組成物層を熱硬化させた。その後、支持体を剥離して、評価用硬化物を得た。評価用硬化物を切断して、幅5mm、長さ15mmの試験片を得た。熱機械分析装置(リガク社製、Thermo Plus、TMA8310)を使用して、引張加重法で前記の試験片の熱機械分析を行った。前記の熱機械分析では、試験片を前記装置に装着後、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定における25℃から150℃までの平均線熱膨張率(ppm)を算出することにより、硬化物の線熱膨張係数を測定した。
【0347】
[樹脂組成物の硬化物の表面粗度の測定]
上述した製造例で製造した樹脂ワニスに含まれる樹脂組成物の硬化物の表面粗度を、樹脂シートを用いて、下記の方法で測定した。
すなわち、製造例で製造した厚み15μmの樹脂組成物層を備える樹脂フィルムから、カバーフィルムを剥離した。その後、樹脂組成物層とシリコンウエハとが接するように、4インチのシリコンウェハ上に樹脂シートを配置し、真空ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製「VP160」)を用いて積層した。積層条件は、真空引きの時間30秒間、圧着温度100℃、圧着圧力0.7MPa、加圧時間30秒間とした。その後、支持体を剥離し、投影露光装置(ウシオ電機社製「UFX-2240」)を用いて、3000mJの紫外線で露光を実施した。露光後、90℃3分の加熱を行った後に、樹脂組成物層に現像液として23℃の2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液をスプレー圧0.1MPaにて30秒間のスプレーして、スプレー現像を行った。スプレー現像後、クリーンオーブンに投入し、室温から190℃に昇温させ、190℃に到達した後に90分間の加熱処理を窒素雰囲気下で行って、樹脂組成物層を硬化させた。この硬化物の表面状態を非接触型干渉顕微鏡(WYKO Bruker AXS社製)にて評価して、硬化物の表面粗度として算術平均粗さRaを測定した。
【0348】
[樹脂組成物の組成及び物性]
上述した製造例で製造された樹脂組成物の組成及び物性を、下記の表1及び表2に示す。下記の表1及び表2において、試薬の量は、質量部を表す。また、下記の表1及び表2において、略称の意味は、下記のとおりである。
F含有量:樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対する、フッ素原子の量(質量%)。
n(1310nm):測定波長1310nmにおける樹脂組成物の硬化物の屈折率。
Abs:測定波長1310nmにおける樹脂組成物の溶液の吸光度。
CTE:樹脂組成物の硬化物の線熱膨張係数。
【0349】
【表1】
【0350】
【表2】
【0351】
[実施例1]
(1-1.下層クラッド層の形成)
製造例5で製造した厚み10μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートから、カバーフィルムを剥離した。樹脂組成物層とシリコンウエハとが接するように、4インチのシリコンウェハ上に樹脂シートを配置し、真空ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製「VP160」)を用いて積層した。積層条件は、真空引きの時間30秒間、圧着温度100℃、圧着圧力0.7MPa、加圧時間30秒間とした。その後、支持体を剥離して、シリコンウエハ及び樹脂組成物層を備える中間積層体Iを得た。
【0352】
中間積層体Iの樹脂組成物層に、投影露光装置(ウシオ電機社製「UFX-2240」)を用いて、3000mJの紫外線で露光を実施した。露光後、中間積層体Iをクリーンオーブンに投入し、室温から190℃に昇温させ、190℃に到達した後に90分間の加熱処理を窒素雰囲気下で行って、樹脂組成物層を硬化させた。樹脂組成物層の硬化により下層クラッド層が形成されて、シリコンウエハ及び下層クラッド層を備える中間積層体IIを得た。
【0353】
(1-2.コア層の形成)
製造例1で製造された厚み5μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートから、カバーフィルムを剥離した。樹脂組成物層と下層クラッド層とが接するように、中間積層体IIの下層クラッド層の表面に樹脂シートを配置し、真空ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製「VP160」)を用いて積層した。積層条件は、真空引きの時間30秒間、圧着温度100℃、圧着圧力0.7MPa、加圧時間30秒間とした。その後、支持体を剥離して、シリコンウエハ、下層クラッド層(下地クラッド層)及び樹脂組成物層をこの順で備える中間積層体IIIを得た。
【0354】
中間積層体IIIの樹脂組成物層に、投影露光装置(ウシオ電機社製「UFX-2240」)を用いて、200mJから2000mJの最適露光量で、紫外線による露光を実施した。露光は、L/S(ライン/スペース)5μm/100μmで長さが1cmの複数の直線を描画できるマスクパターン、L/S(ライン/スペース)5μm/100μmで長さが2cmの複数の直線を描画できるマスクパターン、及び、L/S(ライン/スペース)5μm/100μmで長さが3cmの複数の直線を描画できるマスクパターン、を有する石英ガラスマスクを使用して行った。この石英ガラスマスクのL/Sにおいて、ラインがコア層の幅に相当し、スペースがコア層間の間隔に相当する。露光後、90℃3分の加熱を行った後に、樹脂組成物層に現像液として23℃の2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液をスプレー圧0.1MPaにて30秒間のスプレーして、スプレー現像を行った。スプレー現像後、中間積層体IIIをクリーンオーブンに投入し、室温から190℃に昇温させ、190℃に到達した後に90分間の加熱処理を窒素雰囲気下で行って、樹脂組成物層を硬化させた。樹脂組成物層の硬化によりコア層が形成されて、シリコンウエハ、下層クラッド層及びコア層をこの順で備える中間積層体IVを得た。
【0355】
(1-3.上層クラッド層の形成)
製造例5で製造した厚み20μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートから、カバーフィルムを剥離した。樹脂組成物層とコア層とが接するように、中間積層体IVのコア層上に樹脂シートを配置し、真空ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製「VP160」)を用いて積層した。積層条件は、真空引きの時間30秒間、圧着温度100℃、圧着圧力0.7MPa、加圧時間30秒間とした。その後、支持体を剥離して、シリコンウエハ、下層クラッド層、コア層及び樹脂組成物層をこの順に備える中間積層体Vを得た。
【0356】
中間積層体Vの樹脂組成物層に、投影露光装置(ウシオ電機社製「UFX-2240」)を用いて、3000mJの紫外線で露光を実施した。露光後、中間積層体Vをクリーンオーブンに投入し、室温から190℃に昇温させ、190℃に到達した後に90分間の加熱処理を窒素雰囲気下で行って、樹脂組成物層を硬化させた。樹脂組成物層の硬化により上層クラッド層が形成されて、シリコンウエハ、下層クラッド層、コア層及び上層クラッド層をこの順に備える試料積層体を得た。
【0357】
この試料積層体において、下層クラッド層と上層クラッド層との組み合わせがクラッド層を構成していた。よって、そのクラッド層と、当該クラッド層中にあるコア層とを含む光導波路が得られた。また、この試料積層体において、コア層は、石英ガラスマスクが有していたマスクパターンに対応して長さ1cm、2cm及び3cmの直線状のパターンを有しており、それらのパターンに含まれるコア層の幅(ライン幅)及び間隔(スペース)はマスクパターンの幅(ライン幅)及び間隔(スペース)に一致していた。
【0358】
[実施例2]
(2-1.下層クラッド層の形成)
下層クラッド層形成用の樹脂シートとして、製造例3で製造した厚み10μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートを用いたこと以外は、実施例1の工程(1-1)と同じ方法により、シリコンウエハ及び下層クラッド層を備える中間積層体IIを製造した。
【0359】
(2-2.コア層の形成)
コア層形成用の樹脂シートとして、製造例8で製造した厚み5μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートを用いたこと以外は、実施例1の工程(1-2)と同じ方法により、前記の工程(2-1)で得た中間積層体IIの下層クラッド層上にコア層を形成して、シリコンウエハ、下層クラッド層及びコア層をこの順で備える中間積層体IVを得た。
【0360】
(2-3.上層クラッド層の形成)
上層クラッド層形成用の樹脂シートとして、製造例3で製造した厚み20μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートを用いたこと以外は、実施例1の工程(1-3)と同じ方法により、前記の工程(2-2)で得た前記中間積層体IVのコア層上に上層クラッド層を形成して、シリコンウエハ、下層クラッド層、コア層及び上層クラッド層をこの順に備える試料積層体を製造した。
【0361】
[実施例3]
(3-1.下層クラッド層の形成)
実施例1の工程(1-1)と同じ方法により、シリコンウエハ及び下層クラッド層を備える中間積層体IIを製造した。
【0362】
(3-2.コア層の形成)
製造例2で製造された樹脂ワニスを、前記の工程(3-1)で得た中間積層体IIの下層クラッド層の表面に、スピンコーター(ミカサ社製「MS-B100」)を用いて塗布し、ホットプレート上で110℃3分間の加熱乾燥を行って、厚み3μmの樹脂組成物層を形成した。これにより、シリコンウエハ、下層クラッド層(下地クラッド層)及び樹脂組成物層をこの順で備える中間積層体IIIを得た。
【0363】
中間積層体IIIの樹脂組成物層に、投影露光装置(ウシオ電機社製「UFX-2240」)を用いて、200mJから2000mJの最適露光量で、露光を実施した。露光は、L/S(ライン/スペース)3μm/100μmで長さが1cmの複数の直線を描画できるマスクパターン、L/S(ライン/スペース)3μm/100μmで長さが2cmの複数の直線を描画できるマスクパターン、及び、L/S(ライン/スペース)3μm/100μmで長さが3cmの複数の直線を描画できるマスクパターン、を有する石英ガラスマスクを使用して行った。露光後、90℃3分の加熱を行った後に、樹脂組成物層に現像液として23℃の2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液をスプレー圧0.1MPaにて30秒間のスプレーして、スプレー現像を行った。スプレー現像後、中間積層体IIIをクリーンオーブンに投入し、室温から190℃に昇温させ、190℃に到達した後に90分間の加熱処理を窒素雰囲気下で行って、樹脂組成物層を硬化させた。樹脂組成物層の硬化によりコア層が形成されて、シリコンウエハ、下層クラッド層及びコア層をこの順で備える中間積層体IVを得た。
【0364】
(3-3.上層クラッド層の形成)
実施例1の工程(1-3)と同じ方法により、前記の工程(3-2)で得た中間積層体IVのコア層上に上層クラッド層を形成して、シリコンウエハ、下層クラッド層、コア層及び上層クラッド層をこの順に備える試料積層体を得た。
【0365】
[実施例4]
(4-1.下層クラッド層の形成)
下層クラッド層形成用の樹脂シートとして、製造例6で製造した厚み10μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートを用いたこと以外は、実施例1の工程(1-1)と同じ方法により、シリコンウエハ及び下層クラッド層を備える中間積層体IIを製造した。
【0366】
(4-2.コア層の形成)
実施例3の工程(3-2)と同じ方法により、前記の工程(4-1)で得た中間積層体IIの下層クラッド層上にコア層を形成して、シリコンウエハ、下層クラッド層及びコア層をこの順で備える中間積層体IVを得た。
【0367】
(4-3.上層クラッド層の形成)
上層クラッド層形成用の樹脂シートとして、製造例6で製造した厚み20μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートを用いたこと以外は、実施例1の工程(1-3)と同じ方法により、前記の工程(4-2)で得た中間積層体IVのコア層上に上層クラッド層を形成して、シリコンウエハ、下層クラッド層、コア層及び上層クラッド層をこの順に備える試料積層体を得た。
【0368】
[実施例5]
(5-1.下層クラッド層の形成)
樹脂組成物層の形成を、製造例4で製造した樹脂ワニスを用いて下記の方法で行ったこと以外は、実施例1の工程(1-1)と同じ方法により、シリコンウエハ及び下層クラッド層を備える中間積層体IIを製造した。
【0369】
製造例4で製造した樹脂ワニスを用いた樹脂組成物層の形成は、下記の方法によって行った。すなわち、製造例4で製造した樹脂ワニスを、4インチのシリコンウェハ上に、スピンコーター(ミカサ社製「MS-B100」)を用いて塗布し、ホットプレート上で110℃3分間の加熱乾燥を行って、厚み10μmの樹脂組成物層を形成した。
【0370】
(5-2.コア層の形成)
コア層形成用の樹脂シートとして、製造例1で製造した厚み8μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートを用いた。また、石英ガラスマスクを、L/S(ライン/スペース)8μm/100μmで長さが1cmの複数の直線を描画できるマスクパターン、L/S(ライン/スペース)8μm/100μmで長さが2cmの複数の直線を描画できるマスクパターン、及び、L/S(ライン/スペース)8μm/100μmで長さが3cmの複数の直線を描画できるマスクパターン、を有する石英ガラスマスクに変更した。以上の事項以外は実施例1の工程(1-2)と同じ方法により、前記の工程(5-1)で得た中間積層体IIの下層クラッド層の表面にコア層を形成して、シリコンウエハ、下層クラッド層及びコア層をこの順で備える中間積層体IVを得た。
【0371】
(5-3.上層クラッド層の形成)
樹脂組成物層の形成を、製造例4で製造した樹脂ワニスを用いて下記の方法で行ったこと以外は、実施例1の工程(1-3)と同じ方法により、前記の工程(5-2)で得た中間積層体IVのコア層上に上層クラッド層を形成して、シリコンウエハ、下層クラッド層、コア層及び上層クラッド層をこの順に備える試料積層体を得た。
【0372】
製造例4で製造した樹脂ワニスを用いた樹脂組成物層の形成は、下記の方法によって行った。すなわち、製造例4で製造した樹脂ワニスを、中間積層体IVのコア層の表面にスピンコーター(ミカサ社製「MS-B100」)を用いて塗布し、ホットプレート上で110℃3分間の加熱乾燥を行って、厚み20μmの樹脂組成物層を形成した。
【0373】
[実施例6]
(6-1.下層クラッド層の形成)
実施例1の工程(1-1)と同じ方法により、シリコンウエハ及び下層クラッド層を備える中間積層体IIを製造した。
【0374】
(6-2.コア層の形成)
樹脂ワニスの塗布厚みを変更してコア層の厚みを5μmに変更した。また、石英ガラスマスクを、L/S(ライン/スペース)8μm/100μmで長さが1cmの複数の直線を描画できるマスクパターン、L/S(ライン/スペース)8μm/100μmで長さが2cmの複数の直線を描画できるマスクパターン、及び、L/S(ライン/スペース)8μm/100μmで長さが3cmの複数の直線を描画できるマスクパターン、を有する石英ガラスマスクに変更した。以上の事項以外は実施例3の工程(3-2)と同じ方法により、前記の工程(6-1)で得た中間積層体IIの下層クラッド層の表面にコア層を形成して、シリコンウエハ、下層クラッド層及びコア層をこの順で備える中間積層体IVを得た。
【0375】
(6-3.上層クラッド層の形成)
実施例1の工程(1-3)と同じ方法により、前記の工程(6-2)で得た中間積層体IVのコア層上に上層クラッド層を形成して、シリコンウエハ、下層クラッド層、コア層及び上層クラッド層をこの順に備える試料積層体を得た。
【0376】
[実施例7]
(7-1.下層クラッド層の形成)
実施例1の工程(1-1)と同じ方法により、シリコンウエハ及び下層クラッド層を備える中間積層体IIを製造した。
【0377】
(7-2.コア層の形成)
樹脂ワニスの塗布厚みを変更してコア層の厚みを3μmに変更した。また、石英ガラスマスクを、L/S(ライン/スペース)4.5μm/100μmで長さが1cmの複数の直線を描画できるマスクパターン、L/S(ライン/スペース)4.5μm/100μmで長さが2cmの複数の直線を描画できるマスクパターン、及び、L/S(ライン/スペース)4.5μm/100μmで長さが3cmの複数の直線を描画できるマスクパターン、を有する石英ガラスマスクに変更した。以上の事項以外は実施例3の工程(3-2)と同じ方法により、前記の工程(7-1)で得た中間積層体IIの下層クラッド層の表面にコア層を形成して、シリコンウエハ、下層クラッド層及びコア層をこの順で備える中間積層体IVを得た。
【0378】
(7-3.上層クラッド層の形成)
実施例1の工程(1-3)と同じ方法により、前記の工程(7-2)で得た中間積層体IVのコア層上に上層クラッド層を形成して、シリコンウエハ、下層クラッド層、コア層及び上層クラッド層をこの順に備える試料積層体を得た。
【0379】
[実施例8]
(8-1.下層クラッド層の形成)
下層クラッド層形成用の樹脂シートとして、製造例6で製造した厚み10μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートを用いたこと以外は、実施例1の工程(1-1)と同じ方法により、シリコンウエハ及び下層クラッド層を備える中間積層体IIを製造した。
【0380】
(8-2.コア層の形成)
樹脂ワニスの塗布厚みを変更してコア層の厚みを3μmに変更した。また、石英ガラスマスクを、L/S(ライン/スペース)4.5μm/100μmで長さが1cmの複数の直線を描画できるマスクパターン、L/S(ライン/スペース)4.5μm/100μmで長さが2cmの複数の直線を描画できるマスクパターン、及び、L/S(ライン/スペース)4.5μm/100μmで長さが3cmの複数の直線を描画できるマスクパターン、を有する石英ガラスマスクに変更した。以上の事項以外は実施例3の工程(3-2)と同じ方法により、前記の工程(8-1)で得た中間積層体IIの下層クラッド層の表面にコア層を形成して、シリコンウエハ、下層クラッド層及びコア層をこの順で備える中間積層体IVを得た。
【0381】
(8-3.上層クラッド層の形成)
上層クラッド層形成用の樹脂シートとして、製造例6で製造した厚み20μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートを用いたこと以外は、実施例1の工程(1-3)と同じ方法により、前記の工程(8-2)で得た中間積層体IVのコア層上に上層クラッド層を形成して、シリコンウエハ、下層クラッド層、コア層及び上層クラッド層をこの順に備える試料積層体を得た。
【0382】
[実施例9]
(9-1.下層クラッド層の形成)
実施例1の工程(1-1)と同じ方法により、シリコンウエハ及び下層クラッド層を備える中間積層体IIを製造した。
【0383】
(9-2.コア層の形成)
コア層形成用の樹脂シートとして、製造例1で製造した厚み15μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートを用いた。また、石英ガラスマスクを、L/S(ライン/スペース)15μm/100μmで長さが1cmの複数の直線を描画できるマスクパターン、L/S(ライン/スペース)15μm/100μmで長さが2cmの複数の直線を描画できるマスクパターン、及び、L/S(ライン/スペース)15μm/100μmで長さが3cmの複数の直線を描画できるマスクパターン、を有する石英ガラスマスクに変更した。以上の事項以外は実施例1の工程(1-2)と同じ方法により、前記の工程(9-1)で得た中間積層体IIの下層クラッド層の表面にコア層を形成して、シリコンウエハ、下層クラッド層及びコア層をこの順で備える中間積層体IVを得た。
【0384】
(9-3.上層クラッド層の形成)
実施例1の工程(1-3)と同じ方法により、前記の工程(9-2)で得た中間積層体IVのコア層上に上層クラッド層を形成して、シリコンウエハ、下層クラッド層、コア層及び上層クラッド層をこの順に備える試料積層体を得た。
【0385】
[実施例10]
(10-1.下層クラッド層の形成)
下層クラッド層形成用の樹脂シートとして、製造例12で製造した厚み10μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートを用いたこと以外は、実施例1の工程(1-1)と同じ方法により、シリコンウエハ及び下層クラッド層を備える中間積層体IIを製造した。
【0386】
(10-2.コア層の形成)
コア層形成用の樹脂シートとして、製造例10で製造した厚み5μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートを用いたこと以外は、実施例1の工程(1-2)と同じ方法により、前記の工程(10-1)で得た中間積層体IIの下層クラッド層の表面にコア層を形成して、シリコンウエハ、下層クラッド層及びコア層をこの順で備える中間積層体IVを得た。
【0387】
(10-3.上層クラッド層の形成)
上層クラッド層形成用の樹脂シートとして、製造例12で製造した厚み20μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートを用いたこと以外は、実施例1の工程(1-3)と同じ方法により、前記の工程(10-2)で得た中間積層体IVのコア層上に上層クラッド層を形成して、シリコンウエハ、下層クラッド層、コア層及び上層クラッド層をこの順に備える試料積層体を得た。
【0388】
[実施例11]
(11-1.下層クラッド層の形成)
下層クラッド層形成用の樹脂シートとして、製造例12で製造した厚み10μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートを用いたこと以外は、実施例1の工程(1-1)と同じ方法により、シリコンウエハ及び下層クラッド層を備える中間積層体IIを製造した。
【0389】
(11-2.コア層の形成)
コア層形成用の樹脂シートとして、製造例11で製造した厚み5μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートを用いたこと以外は、実施例1の工程(1-2)と同じ方法により、前記の工程(11-1)で得た中間積層体IIの下層クラッド層の表面にコア層を形成して、シリコンウエハ、下層クラッド層及びコア層をこの順で備える中間積層体IVを得た。
【0390】
(11-3.上層クラッド層の形成)
上層クラッド層形成用の樹脂シートとして、製造例12で製造した厚み20μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートを用いたこと以外は、実施例1の工程(1-3)と同じ方法により、前記の工程(11-2)で得た中間積層体IVのコア層上に上層クラッド層を形成して、シリコンウエハ、下層クラッド層、コア層及び上層クラッド層をこの順に備える試料積層体を得た。
【0391】
[実施例12]
(12-1.下層クラッド層の形成)
実施例1の工程(1-1)と同じ方法により、シリコンウエハ及び下層クラッド層を備える中間積層体IIを製造した。
【0392】
(12-2.コア層の形成)
支持体として、粗面を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製「PTH-25」、厚み25μm)を用意した。製造例1で製造した樹脂ワニスを、かかる支持体の粗面に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが10μmになるよう、ダイコーターにて均一に塗布し、80℃から110℃(最高温度110℃)で7分間乾燥して、樹脂組成物層を形成した。次に、カバーフィルム(二軸延伸ポリプロピレンフィルム、王子エフテックス社製「MA-411」)を樹脂組成物層の表面に配置し、80℃でラミネートすることにより、支持体/樹脂組成物層/カバーフィルムの三層構成の樹脂シートを製造した。こうして製造された樹脂シートが備える樹脂組成物層の支持体側の面は、支持体の粗面に押圧されることで粗度が大きくなっていた。よって、前記の樹脂シートを、以下「粗化樹脂シート」ということがある。
【0393】
コア層形成用の樹脂シートとして、前記の粗化樹脂シートを用いた。また、石英ガラスマスクを、L/S(ライン/スペース)10μm/100μmで長さが1cmの複数の直線を描画できるマスクパターン、L/S(ライン/スペース)10μm/100μmで長さが2cmの複数の直線を描画できるマスクパターン、及び、L/S(ライン/スペース)10μm/100μmで長さが3cmの複数の直線を描画できるマスクパターン、を有する石英ガラスマスクに変更した。以上の事項以外は実施例1の工程(1-2)と同じ方法により、前記の工程(12-1)で得た中間積層体IIの下層クラッド層の表面にコア層を形成して、シリコンウエハ、下層クラッド層及びコア層をこの順で備える中間積層体IVを得た。
【0394】
(12-3.上層クラッド層の形成)
実施例1の工程(1-3)と同じ方法により、前記の工程(12-2)で得た中間積層体IVのコア層上に上層クラッド層を形成して、シリコンウエハ、下層クラッド層、コア層及び上層クラッド層をこの順に備える試料積層体を得た。
【0395】
[実施例13]
下層クラッド層の形成、コア層の形成、及び、上層クラッド層の形成の工程それぞれでクリーンオーブン内で樹脂組成物層を硬化させる際に、加熱処理の条件を下記のように変更した。すなわち、室温から100℃に昇温させ、100℃に到達した後に60分間の加熱処理してから、190℃まで昇温させ、190℃に到達した後に90分間の加熱処理を窒素雰囲気下で行って、樹脂組成物層を硬化させた。以上の事項以外は実施例12と同様の操作を行って、シリコンウエハ、下層クラッド層、コア層及び上層クラッド層をこの順に備える試料積層体を得た。この実施例13では、加熱処理による樹脂組成物の硬化条件が変更されたことにより、支持体の粗面の形状がコア層の表面により大きく反映された。よって、コア層の表面粗度は、実施例12より大きくなっていた。
【0396】
[比較例1]
(C1-1.下層クラッド層の形成)
下層クラッド層形成用の樹脂シートとして、製造例3で製造した厚み10μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートを用いたこと以外は、実施例1の工程(1-1)と同じ方法により、シリコンウエハ及び下層クラッド層を備える中間積層体IIを製造した。
【0397】
(C1-2.コア層の形成)
実施例1の工程(1-2)と同じ方法により、前記の工程(C2-1)で得た中間積層体IIの下層クラッド層上にコア層を形成して、シリコンウエハ、下層クラッド層及びコア層をこの順で備える中間積層体IVを得た。
【0398】
(C1-3.上層クラッド層の形成)
上層クラッド層形成用の樹脂シートとして、製造例3で製造した厚み20μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートを用いたこと以外は、実施例1の工程(1-3)と同じ方法により、前記の工程(C1-2)で得た前記中間積層体IVのコア層上に上層クラッド層を形成して、シリコンウエハ、下層クラッド層、コア層及び上層クラッド層をこの順に備える試料積層体を製造した。
【0399】
[比較例2]
(C2-1.下層クラッド層の形成)
下層クラッド層形成用の樹脂シートとして、製造例7で製造した厚み10μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートを用いたこと以外は、実施例1の工程(1-1)と同じ方法により、シリコンウエハ及び下層クラッド層を備える中間積層体IIを製造した。
【0400】
(C2-2.コア層の形成)
コア層形成用の樹脂シートとして、製造例8で製造した厚み5μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートを用いたこと以外は、実施例1の工程(1-2)と同じ方法により、前記の工程(C2-1)で得た中間積層体IIの下層クラッド層上にコア層を形成して、シリコンウエハ、下層クラッド層及びコア層をこの順で備える中間積層体IVを得た。
【0401】
(C2-3.上層クラッド層の形成)
上層クラッド層形成用の樹脂シートとして、製造例7で製造した厚み20μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートを用いたこと以外は、実施例1の工程(1-3)と同じ方法により、前記の工程(C2-2)で得た前記中間積層体IVのコア層上に上層クラッド層を形成して、シリコンウエハ、下層クラッド層、コア層及び上層クラッド層をこの順に備える試料積層体を製造した。
【0402】
[比較例3]
下層クラッド層形成用の樹脂シートとして、製造例13で製造した厚み10μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートを用いた。また、上層クラッド層形成用の樹脂シートとして、製造例13で製造した厚み20μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートを用いた。以上の事項以外は、実施例1と同じ方法により、シリコンウエハ、下層クラッド層、コア層及び上層クラッド層をこの順に備える試料積層体を製造した。
【0403】
[コア層の表面粗度の測定]
上述した実施例及び比較例において、コア層の形成後、上層クラッド層の形成前に、コア層の表面粗度として算術平均粗さRaを測定した。測定は、表面粗さ計(ビーコインスツルメンツ社製「WYKO NT3300」)を用いて、VSIモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして得られる数値によりRa値を求めた。各サンプルについて、無作為に選んだ10点の平均値を求めることにより測定した。
【0404】
[光導波路の評価]
(校正用の光学系の光伝送損失の測定)
後述する試験用基板の伝送損失測定用の光学系から試験用基板及び集光モジュールを除いた構成の光学系の伝送損失を測定した。すなわち、暗幕で覆われた除振台で、光ファイバ(入射ファイバ)を介して光源(1310nm光源、THORLABS社製「LPSC-1310-FC」)と受光器(キーサイト社製の光パワーメータ「N7742」)とを接続して、校正用の光学系を得た。光源を発光させて、受光器に進入した光の強度を当該受光器で測定して、この校正用の光学系の損失を測定した。
【0405】
(試験用基板の準備)
実施例及び比較例で製造した試料積層体から、コア層が形成された部分でコア層及びその周囲のクラッド層を切り取って、光伝送路を備える試験用基板を得た。
【0406】
(光伝送損失の測定)
暗幕で覆われた除振台上に、試験用基板を設置した。試験用基板の光導波路の一端(入射端)に、集光モジュール(開口数0.18)を接続し、更にその集光モジュールに光ファイバ(入射ファイバ)を介して光源(1310nm光源、THORLABS社製「LPSC-1310-FC」)を接続した。また、試験用基板の光導波路の他端(出射端)に、別の集光モジュール(開口数0.18)を接続し、更にその集光モジュールに光ファイバ(出射ファイバ)を介して受光器(キーサイト社製の光パワーメータ「N7742」)を接続した。以上の操作により、光源から発せられた光が光ファイバ(入射ファイバ)、集光モジュール、光導波路、集光モジュール、及び光ファイバ(出射ファイバ)をこの順に透過した後、受光器に進入する光学系を得た。以下、この光学系を試料光学系と呼ぶことがある。光源を発光させて、受光器に進入した光の強度を当該受光器で測定して、試料光学系の損失を測定した。
試料光学系の損失から、校正用の光学系の損失を引き算して、試験用基板に含まれる光導波路の損失を求めた。
【0407】
(光導波路の伝送損失(dB/cm)の測定)
前記の光導波路の損失の測定を、長さ1cmの光導波路、長さ2cmの光導波路、及び、長さ3cmの光導波路のそれぞれについて行った。そして、測定結果を、光導波路の長さを横軸、光導波路の損失を縦軸とした座標系にプロットして、測定結果を表す3点の座量を得た。これら3点の近似直線を最小二乗法で計算し、その近似直線の傾きを、光導波路の単位距離当たりの損失(伝送損失)として求めた。
【0408】
(モードの確認)
受光器を取り外し、代わりに赤外カメラ(InGaAsカメラ、100倍の対物レンズ付き)をセットした。光源を発光させて、光ファイバ(出射ファイバ)の端部から発せられる光を赤外カメラで撮影した。真円状の光の縁が一つのみ観察された場合、シングルモードと判定した。また、複数の縁が観察された場合、マルチモードと判定した。
【0409】
(リフロー後の外観の観察)
試験用基板にリフロー装置(アントム株式会社製「HAS6116」)を用いて5回加熱処理を行った(リフロー温度プロファイルはIPC/JEDEC J-STD-020Cに準拠)。処理後の試験用基板を観察して、基板内にボイド及び剥離が無い場合、耐リフロー性を「優」と判定した。また、基板内にボイド又は剥離がある場合、耐リフロー性を「劣」と判定した。
【0410】
[結果]
上述した実施例及び比較例の結果を、下記の表3及び表4に示す。下記の表3及び表4において、略称の意味は、下記のとおりである。
NA:光導波路の開口数
ΔCTE:コア用樹脂組成物の硬化物の線熱膨張係数とクラッド用樹脂組成物の硬化物の線熱膨張係数との差。
モードの欄で「S」:シングルモード。
モードの欄で「M」:マルチモード。
【0411】
【表3】
【0412】
【表4】
【0413】
[検討]
コア層が小さく、開口数NAが小さい実施例1及び3~7では、シングルモードが確認された。なお、上記の実施例及び比較例とは別に、開口数NAが0.05未満の光導波路を製造したが、プロセスの変動で光導波路内の屈折率が変化し、導光が確認できなかった。
【0414】
開口数NAが0.4以上の比較例1及び2では、伝送損失が顕著になり、ノイズが多く伝送損失の値の測定ができなかった。
【符号の説明】
【0415】
10 光導波路
100 コア層
110 第二組成物層
111 露光部
112 非露光部
200 クラッド層
210 第一組成物層
220 硬化した第一組成物層(下層クラッド層)
230 第三組成物層
240 硬化した第三組成物層(上層クラッド層)
300 基材
400 マスク
410 透光部
420 遮光部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9