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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】切削インサート、ボディ及び切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 29/03 20060101AFI20241112BHJP
   B23B 27/14 20060101ALI20241112BHJP
   B23C 5/20 20060101ALI20241112BHJP
   B23B 51/00 20060101ALI20241112BHJP
   B23B 51/06 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
B23B29/03 Z
B23B27/14 C
B23C5/20
B23B51/00 T
B23B51/06 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024089380
(22)【出願日】2024-05-31
【審査請求日】2024-06-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000221144
【氏名又は名称】株式会社タンガロイ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】小川 篤
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-122908(JP,A)
【文献】特許第7416305(JP,B1)
【文献】特開2024-009552(JP,A)
【文献】特開2001-212712(JP,A)
【文献】特表2006-507138(JP,A)
【文献】特開平05-116019(JP,A)
【文献】特開2013-202770(JP,A)
【文献】特開2007-276083(JP,A)
【文献】特開2004-160606(JP,A)
【文献】特開平10-263917(JP,A)
【文献】特表2020-533186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/20
B23C 5/04
B23C 5/06
B23C 5/08
B23C 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削工具のボディに取り付けられる切削インサートであって、
互いに対向する一対の端面のうちの一方の端面からなり、第1すくい面を含む面として機能する略平行四辺形状の第1面と、
前記第1面を区画する辺のうちの互いに対向する一対の辺に沿って形成された一対の第1切れ刃と、
互いに対向する一対の側面からなり、第2すくい面を含む面として機能する略台形状の第2面と、
それぞれの前記第2面を区画する辺のうちの前記第1面と対向する面を区画していない辺に沿って形成された第2切れ刃と、
を有し、
前記第2面を区画する辺のうちの前記第1面と隣接する隣接辺と、前記第2面を区画する辺のうちの前記第1面と対向する面に隣接する隣接辺とが平行である、
切削インサート。
【請求項2】
前記第1すくい面は、前記第1切れ刃に沿って前記第1切れ刃と接続するように延在し、延在方向と直交する断面において湾曲状に凹むように形成された溝部からなり、
前記第面を当該切削インサートの180度回転対称軸に沿って上から見た場合に、前記第面が前記第1切れ刃よりも低い位置にない、
請求項1に記載の切削インサート。
【請求項3】
前記一対の端面で開口する貫通孔を有し、
前記貫通孔は、その両端に、前記端面へ向かって拡径する拡径部を有する、
請求項1または請求項2に記載の切削インサート。
【請求項4】
互いに対向する一対の端面のうちの一方の端面からなり、第1すくい面を含む面として機能する略平行四辺形状の第1面と、前記第1面を区画する辺のうちの互いに対向する一対の辺に沿って形成された一対の第1切れ刃と、互いに対向する一対の側面からなり、第2すくい面を含む面として機能する略台形状の第2面と、それぞれの前記第2面を区画する辺のうちの前記第1面と対向する面を区画していない辺に沿って形成された第2切れ刃と、を有し、前記第2面を区画する辺のうちの前記第1面と隣接する隣接辺と、前記第2面を区画する辺のうちの前記第1面と対向する面に隣接する隣接辺とが平行である、切削インサートが装着されるボディであって、
切削時の切れ刃として前記第1切れ刃が使用可能な第1姿勢で前記切削インサートが装着される第1取付座と、
切削時の切れ刃として前記第2切れ刃が使用可能な第2姿勢で前記切削インサートが装着される第2取付座と、
を有する、
ボディ。
【請求項5】
回転中心軸周りに回転可能なボディであって、
前記第1取付座及び前記第2取付座が前記回転中心軸に沿って配列されている、
請求項4に記載のボディ。
【請求項6】
互いに対向する一対の端面のうちの一方の端面からなり、第1すくい面を含む面として機能する略平行四辺形状の第1面と、前記第1面を区画する辺のうちの互いに対向する一対の辺に沿って形成された一対の第1切れ刃と、互いに対向する一対の側面からなり、第2すくい面を含む面として機能する略台形状の第2面と、それぞれの前記第2面を区画する辺のうちの前記第1面と対向する面を区画していない辺に沿って形成された第2切れ刃と、を有し、前記第2面を区画する辺のうちの前記第1面と隣接する隣接辺と、前記第2面を区画する辺のうちの前記第1面と対向する面に隣接する隣接辺とが平行である、切削インサートと、
切削時の切れ刃として前記第1切れ刃が使用可能な第1姿勢で前記切削インサートが装着される第1取付座と、切削時の切れ刃として前記第2切れ刃が使用可能な第2姿勢で前記切削インサートが装着される第2取付座と、を有する、ボディと、
を備える、
切削工具。
【請求項7】
前記切削インサートは、
前記第1すくい面が、前記第1切れ刃に沿って前記第1切れ刃と接続するように延在し、延在方向と直交する断面において湾曲状に凹むように形成された溝部からなり、前記第面を当該切削インサートの180度回転対称軸に沿って上から見た場合に、前記第面が前記第1切れ刃よりも低い位置にない、
請求項6に記載の切削工具。
【請求項8】
前記切削インサートは、
前記一対の端面で開口する貫通孔を有し、
前記貫通孔は、その両端に、前記端面へ向かって拡径する拡径部を有する、
請求項6または請求項7に記載の切削工具。
【請求項9】
前記ボディは回転中心軸周りに回転可能なボディであり、
前記ボディには、前記第1取付座及び前記第2取付座が前記回転中心軸に沿って配列されている、
請求項6に記載の切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削インサート、ボディ及び切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
切削工具として、回転するボディの外周側に、周方向に並ぶよう複数の切削インサートを備えた構成のものが知られている。それぞれの切削インサートは、ボディから取り外して交換することができる。例えば下記特許文献1に記載されているように、1つの切削インサートにおいて複数の切れ刃を設けておき、ボディに対する当該切削インサートの取り付け状態を変更することで、加工に用いられる切れ刃を切り換えることができるようなものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5779830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、ボディの回転中心軸に対し垂直な軸の周りに、切削インサートを180度回転させることにより、加工に用いられる切れ刃を変更し得る構成においては、対角の位置にある2つの切れ刃を切り換えて使用することができる。
【0005】
更に、切削インサートを裏返して取り付けることも可能な構成とすれば、計4つの切れ刃を切り換えて使用することも可能となる。しかしながら、そのような構成においては、切削インサートが厚くなり過ぎて、小径の加工を行うことが難しくなってしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、計4つの切れ刃を切り換えて使用可能としながらも、厚さを抑制することのできる切削インサート、ボディ及び切削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る切削インサートは、切削工具のボディに取り付けられる切削インサートであって、互いに対向する一対の端面のうちの一方の端面からなり、第1すくい面を含む面として機能する略平行四辺形状の第1面と、第1面を区画する辺のうちの互いに対向する一対の辺に沿って形成された一対の第1切れ刃と、互いに対向する一対の側面からなり、第2すくい面を含む面として機能する略台形状の第2面と、それぞれの第2面を区画する辺のうちの一辺に沿って形成された第2切れ刃と、を有する。
【0008】
上記構造の切削インサートでは、一方の端面からなる略平行四辺形状の第1面を区画する一対の辺に沿って形成された2つの第1切れ刃が使用可能であり、互いに対向する一対の側面からなる略台形状の第2面を区画する辺に沿って形成された2つの第2切れ刃が使用可能である。つまり、切削インサートをボディに取り付ける際の姿勢及び向き等を変更することで、計4つの切れ刃を切り換えて使用することが可能となっている。
【0009】
第1すくい面は、第1切れ刃に沿って延在し、延在方向と直交する断面において湾曲状に凹むように形成された溝部からなっていてもよい。
【0010】
一対の端面で開口する貫通孔を有し、貫通孔は、その両端に、端面へ向かって拡径する拡径部を有していてもよい。
【0011】
本発明の一態様に係るボディは、互いに対向する一対の端面のうちの一方の端面からなり、第1すくい面を含む面として機能する略平行四辺形状の第1面と、第1面を区画する辺のうちの互いに対向する一対の辺に沿って形成された一対の第1切れ刃と、互いに対向する一対の側面からなり、第2すくい面を含む面として機能する略台形状の第2面と、それぞれの第2面を区画する辺のうちの一辺に沿って形成された第2切れ刃と、を有する切削インサートが装着されるボディであって、切削時の切れ刃として第1切れ刃が使用可能な第1姿勢で切削インサートが装着される第1取付座と、切削時の切れ刃として第2切れ刃が使用可能な第2姿勢で切削インサートが装着される第2取付座と、を有する。
【0012】
前記ボディは、回転中心軸周りに回転可能なボディであって、第1取付座及び第2取付座が前記回転中心軸に沿って配列されていてもよい。
【0013】
本発明の一態様に係る切削工具は、互いに対向する一対の端面のうちの一方の端面からなり、第1すくい面を含む面として機能する略平行四辺形状の第1面と、第1面を区画する辺のうちの互いに対向する一対の辺に沿って形成された一対の第1切れ刃と、互いに対向する一対の側面からなり、第2すくい面を含む面として機能する略台形状の第2面と、それぞれの第2面を区画する辺のうちの一辺に沿って形成された第2切れ刃と、を有する切削インサートと、切削時の切れ刃として第1切れ刃が使用可能な第1姿勢で切削インサートが装着される第1取付座と、切削時の切れ刃として第2切れ刃が使用可能な第2姿勢で切削インサートが装着される第2取付座と、を有する、ボディと、を備える。
【0014】
第1すくい面が、第1切れ刃に沿って延在し、延在方向と直交する断面において湾曲状に凹むように形成された溝部からなっていてもよい。
【0015】
切削インサートは、一対の端面で開口する貫通孔を有し、貫通孔は、その両端に、端面へ向かって拡径する拡径部を有していてもよい。
【0016】
ボディは回転中心軸周りに回転可能なボディであり、ボディには、第1取付座及び第2取付座が回転中心軸に沿って配列されていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、計4つの切れ刃を切り換えて使用可能としながらも、厚さを抑制することのできる切削インサート、ボディ及び切削工具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本実施形態に係る切削インサートを備えた切削工具の斜視図である。
図2図2は、本実施形態に係る切削インサートを備えた切削工具の正面図である。
図3図3は、本実施形態に係る切削インサートを備えた切削工具の側面図である。
図4図4は、第1姿勢の切削インサートの斜視図である。
図5図5は、第2姿勢の切削インサートの斜視図である。
図6図6は、切削インサートの他方の端面である他方の第1面から視た平面図である。
図7図7は、切削インサートの第2面から視た側面図である。
図8図8は、切削インサートの一方の端面である一方の第1面から視た平面図である。
図9図9は、切削インサートの第3面から視た側面図である。
図10図10は、図8におけるX-X断面図である。
図11図11は、図10におけるA部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0020】
本実施形態について説明する。本実施形態に係る切削工具10は、回転しながらパイプ等の内面を切削するための転削工具であって、「プルカウンターボーリング工具」とも称されるものである。尚、以下に説明する切削工具10の構成は、他の転削工具に対しても適用可能である。
【0021】
図1は、切削工具10の外観を示す斜視図である。図2は、図1の切削工具10を、回転中心軸AX1に沿って先端側から見て描いた正面図である。図3は、切削工具10の外観を示す側面図である。図1図3に示されるように、切削工具10は複数の切削インサート30を備えており、これらがボディ20に取り付けられた構成を有している。
【0022】
ボディ20は、切削工具10の本体部分であって、例えばアーバ等の保持具に装着された状態で、当該保持具ごと、不図示の工作機械によって把持される。ボディ20は略円筒形状を有しており、その中心軸は回転中心軸AX1と一致している。加工中においては、工作機械の駆動力により、ボディ20が回転中心軸AX1の周りにおいて回転する。図1及び図2においては、その回転方向が矢印により示されている。
【0023】
ボディ20は、複数の第1取付座810と、複数の第2取付座820とを有している。第1取付座810及び第2取付座820は、それぞれ周方向に例えば等間隔で並ぶように配置されている。なお、第1取付座810及び第2取付座820は、それぞれ周方向に不等間隔で並ぶように配置されていてもよい。第1取付座810及び第2取付座820は、回転中心軸AX1に沿って配列されている。第1取付座810は、ボディ20の先端部に設けられ、第2取付座820は、第1取付座810に対してボディ20の後端側に設けられている。
【0024】
切削インサート30は、被削材を切削するための第1切れ刃511や第2切れ刃521等が形成された部材である。切削インサート30は上記のようにボディ20に複数装着されている。それぞれの切削インサート30の形状は互いに同一である。切削インサート30は、螺子50によってボディ20の第1取付座810及び第2取付座820に取り付けられている。切削インサート30は、第1取付座810において、第1姿勢でボディ20に装着され、第2取付座820において、第2姿勢でボディ20に装着されている。
【0025】
図4図11を参照しつつ必要に応じて図1図3も参照しながら、切削インサート30の構成について説明する。切削インサート30は、第1面110、第2面210、220、第3面310、320、第4面410、420および第5面120を有している。
【0026】
第1面110と第5面120は、切削インサート30の一対の端面であり、互いに対向した面である。第1面110は図4における紙面手前側の面であり、他方の第5面120は図4における紙面奥側の面である。第2面210、220、および第3面310、320は、切削インサート30のそれぞれ端面である第1面110と第5面120の間を繋ぐ側面であり、それぞれ互いに対向した面である。
【0027】
第1面110は、切削インサート30が第1取付座810に取り付けられたときは加工時においてすくい面(第1すくい面151、152)として機能する面を含む面であり、切削インサート30が第2取付座820に取り付けられたときは第2取付座820の第1取付面821に当接する着座面611として機能する面を含む面である。第5面120は、切削インサート30が第1取付座810に取り付けられたときは第1取付座810の第1取付面811に当接する着座面として機能する面である。
【0028】
第1面110は略平行四辺形状の面であり、4つの辺111、112、113、114によって区画されている。これらのうち、辺111及び辺113が互いに平行な一対の辺であり、辺112及び辺114が互いに平行な一対の辺である。辺111と辺112の延長線同士の交差角および辺113と辺114の延長線同士の交差角は鈍角であり、辺112と辺113の延長線同士の交差角および辺114と辺111の延長線同士の交差角は鋭角である。本実施形態では、辺111の長さと辺113の長さは同じ、辺112の長さと辺114の長さは同じであり、かつ、辺111、113の長さと辺112、114の長さは異なるが、辺111、112、113、114は全て同じ長さでもよい。
【0029】
第1面110と同様に、第5面120も略平行四辺形状の面であり、4つの辺121、122、123、124によって区画されている。これらのうち、辺121及び辺123が互いに平行な一対の辺であり、辺122及び辺124が互いに平行な一対の辺である。辺121と辺122の延長線同士の交差角および辺123と辺124の延長線同士の交差角は鈍角であり、辺122と辺123の延長線同士の交差角および辺124と辺121の延長線同士の交差角は鋭角である。本実施形態では、辺121の長さと辺123の長さは同じ、辺122の長さと辺124の長さは同じであり、かつ、辺121、123の長さと辺122、124の長さは異なるが、辺121、122、123、124は全て同じ長さでもよい。
【0030】
第1面110を区画する辺111、112、113、114と、第5面120を区画する辺121、122、123、124は、第1面110および第5面120と、第2面210、220、第3面310、320との交差稜線であるともいえる。
【0031】
第2面210、220は、互いに対向した面である。第2面210、220は、切削インサート30が第1取付座810に取り付けられたときは第1取付座810の第3取付面813に当接する面を含む面であり、かつ、加工時において第1逃げ面651、652として機能する。第2面210、220は、切削インサート30が第2取付座820に取り付けられたときは、第2取付座820の第3取付面823に当接する面を含む面であり、かつ加工時において第2すくい面621、622を含む面として機能する面を含む面である。
【0032】
一方の第2面210は、略台形状の面であり、4つの辺201、123、202、111によって区画されている。これらのうち、辺123及び辺111が互いに平行な辺である。一方の第2面210と同様に、他方の第2面220は略台形状の面であり、4つの辺203、121、204、113によって区画されている。これらのうち、辺121及び辺113が互いに平行な辺である。
【0033】
第3面310、320は、互いに対向した面である。第3面310、320は、切削インサート30が第1取付座810に取り付けられたときは第1取付座810の取付面に当接する面を含め面であり、切削インサート30が第2取付座820に取り付けられたときは加工時において第2逃げ面661、662として機能する面を含む面である。
【0034】
一方の第3面310は略四角形状の面であり、4つの辺201、124、204、114によって区画されている。これらのうち、辺201及び辺204が互いに平行な辺であり、辺124及び辺114が互いに平行な辺である。一方の第3面310と同様に、他方の第3面320は略四角形状の面であり、4つの辺202、122、203、112によって区画されている。これらのうち、辺202及び辺203が互いに平行な辺であり、辺122及び辺112が互いに平行な辺である。
【0035】
第4面410、420は、第4面410、420は、互いに対向した面であり、第3面に含まれる面である。第4面は、切削インサートが第1取付面810に取り付けられたときは第1取付座810の取付面に当接しない面であるが当接する面であってもよく、切削インサートが第2取付面820に取り付けられたときは第2取付座820の取付面に当接しない面であるが当接する面であってもよい。
【0036】
一方の第4面410は、一方の第3面310における一方の第1面110側に設けられており、第1面110に対して垂直面とされている。また、一方の第4面410は、一方の第2面210から他方の第2面220へ向かって次第に幅寸法が小さくされている。他方の第4面420は、他方の第3面320における第1面110側に設けられており、第1面110に対して垂直面とされている。また、他方の第4面420は、他方の第2面220から一方の第2面210へ向かって次第に幅寸法が小さくされている。
【0037】
切削インサート30には、計4つの切れ刃(2つの第1切れ刃511、512と、2つの第2切れ刃521、522)が形成されている。
【0038】
切削インサート30に形成された計4つの切れ刃のうち、2つの第1切れ刃511、512は、いずれも第1面110を区画する辺に沿って設けられている(図4参照)。具体的には、第1切れ刃511は辺111に沿って、辺111と同じ位置に設けられており、第1切れ刃512は辺113に沿って、辺113と同じ位置に設けられている。切削インサート30では、それぞれの第1切れ刃511、512の長さは互いに同じである。
【0039】
切削インサート30に形成された計4つの切れ刃のうち、2つの第2切れ刃521、522は、第2面210、220を区画する辺に沿って設けられている。具体的には、第2切れ刃521は第2面210の辺201に沿って、辺201と同じ位置に設けられており、第2切れ刃522は第2面220の辺203に沿って、辺203と同じ位置に設けられている。それぞれの第2切れ刃521、522の長さは互いに同じである。
【0040】
尚、切削インサート30が有する複数の切れ刃のうち、加工中において実際に「切れ刃」として機能するのは1つだけである。第1切れ刃511、512、第2切れ刃521、522のうち、どれが「切れ刃」として機能するのかは、ボディ20に対する切削インサート30の取り付け状態によって変化する。
【0041】
切削インサート30は、ボディ20の第1取付座810に取り付けられた第1姿勢において、最も先端側にある第1切れ刃511または第1切れ刃512の一方が実際に「切れ刃」として機能する。切削インサート30は、第1切れ刃511が切れ刃として機能する場合、第1面110が後述の第1すくい面151を含む面となって実際に「すくい面」を含む面として機能し、第2面210が第1逃げ面651となって実際に「逃げ面」として機能する。また、切削インサート30は、第1切れ刃512が切れ刃として機能する場合、第1面110が後述の第1すくい面152を含む面となって実際に「すくい面」を含む面として機能し、第2面220が第1逃げ面652となって実際に「逃げ面」として機能する。
【0042】
切削インサート30は、ボディ20の第2取付座820に取り付けられた第2姿勢において、最も先端側にある第2切れ刃521または第2切れ刃522の一方が実際に「切れ刃」として機能する。切削インサート30は、第2切れ刃521が切れ刃として機能する場合、第2面210が後述の第2すくい面621を含む面となって実際に「すくい面」を含む面として機能し、第3面310が第2逃げ面661となって実際に「逃げ面」として機能する。また、切削インサート30は、第2切れ刃522が切れ刃として機能する場合、第2面220が後述の第2すくい面622を含む面となって実際に「すくい面」を含む面として機能し、第3面320が第2逃げ面662となって実際に「逃げ面」として機能する。
【0043】
切削インサート30は、貫通孔700を有している。この貫通孔700は、一方の端面である第1面110から他方の端面である第5面120にわたって形成されている。この貫通孔700は、開口部701、702が形成された第1面110および第5面120に対して垂直に形成されている。そして、貫通孔700の開口部701、702は、第1面110および第5面120で開口している。また、貫通孔700は、開口部701、702側に、第1面110および第5面120へ向かって次第に拡径する拡径部701a、702aを有している。
【0044】
この貫通孔700は、切削インサート30をボディ20に固定する際に螺子50が挿通される孔であり、開口部701、702のいずれか一方から螺子50が挿し込まれる。貫通孔700に挿通される螺子50は、その頭部50aが、拡径部701a、702aのいずれかに係合する。つまり、開口部701から螺子50を挿し込んだ場合は、螺子50の頭部50aが、開口部701側の拡径部701aに係合し、開口部702から螺子50を挿し込んだ場合は、螺子50の頭部50aが、開口部702側の拡径部702aに係合する。
【0045】
軸AX2は、貫通孔700の中心を通る軸である。この軸AX2は、切削インサート30の全体の外形の幾何中心を通っている。切削インサート30を軸AX2の周りに180度回転させると、回転後における切削インサート30の形状の全体が、回転前における切削インサート30の形状に重なる。切削インサート30の形状が、これまでに説明したような対称性を有していることにより、このような軸AX2が存在している。
【0046】
例えば、ボディ20の第1取付座810に装着されて第1姿勢とされて第1切れ刃511を実際の「切れ刃」として機能させている状態から、切削インサート30を軸AX2の周りに180度回転させた状態でボディ20の第1取付座810に取り付けた場合には、第1切れ刃512が実際の「切れ刃」として機能することとなる。
【0047】
切削インサート30は、第1面110に一対の溝部からなる第1すくい面151、152を有している。一方の第1すくい面151は、第1面110において、第1切れ刃511に沿って形成されており、他方の第1すくい面152は、第1面110において、第1切れ刃512に沿って形成されている。図11に示すように、一方の第1すくい面151は、第2面210、220と直交して軸AX2に沿う断面において、湾曲状に凹んだ形状とされている。同様に、他方の第1すくい面152は、第2面210、220と直交して中心軸AX2に沿う断面において、湾曲状に凹んだ形状とされている。すなわち、第1すくい面151、152は、それぞれ第1切れ刃511、512に沿って延在し、延在方向と直交する断面において湾曲状に凹むように形成されている。
第1すくい面151、152を上記のように形成された溝部から構成したことにより、第1面110がすくい面を含む面となる場合には、正のすくい角を付与することができる。また、第1面110が着座面611を含む面となる場合には、以下のメリットがある。すなわち、着座面611を軸AX2に沿って上から見た場合に着座面611が第1切れ刃511および第切れ刃512よりも低い位置にあると、第2取付座820の第1取付面821を凸状にしておかなければならなくなるところ、第1すくい面151、152を上記のような溝部から構成したことにより、着座面611を軸AX2に沿って上から見た場合に最外面(頂面)とすることができる。その結果、第2取付座820の第1取付面821を凸状にする必要がなくなって単純な平面にすることができ、ボディ20の製造コスト低減が図られる。
【0048】
図1及び図3に示すように、ボディ20に設けられた第1取付座810及び第2取付座820は、回転中心軸AX1に沿って配列されている。第1取付座810は、ボディ20の先端部に設けられ、第2取付座820は、第1取付座810に対してボディ20の後端側に設けられている。これにより、第1姿勢で装着された切削インサート30に対して、回転中心軸AX1の後方側に、第2姿勢で装着された切削インサート30が配置される。また、第1取付座810は、第2取付座820よりもボディ20の径方向内方側に形成されている。したがって、ボディ20の先端側において第1姿勢で装着された切削インサート30に対して、回転中心軸AX1の後方側において第2姿勢で装着された切削インサート30が径方向の外方側に配置される。
【0049】
切削インサート30が第1姿勢で装着されるボディ20の第1取付座810は、第1取付面811、第2取付面812、第3取付面813、第4取付面814を有している。第1取付面811は、第1取付座810における回転方向の後方側の取付面であり、この第1取付面811には、螺子50が螺合されるネジ穴(図示略)が形成されている。第2取付面812および第4取付面814は、第1取付座810における径方向の内方側の取付面である。第3取付面813は、第1取付座810における回転中心軸AX1の後方側の取付面である。
【0050】
切削インサート30が第2姿勢で装着されるボディ20の第2取付座820は、第1取付面821、第2取付面822、第3取付面823を有している。第1取付面821は、径方向の内方側の取付面であり、この第1取付面821には、螺子50が螺合されるネジ穴(図示略)が形成されている。第2取付面822は、第2取付座820における回転中心軸AX1の後方側の取付面である。第3取付面823は、第2取付座820における回転方向の後方側の取付面である。
【0051】
次に、ボディ20に対する切削インサート30の取り付けについて説明する。
【0052】
(第1取付座810への取り付け)
(1)第1切れ刃511を使用する場合
切削インサート30を第1取付座810に装着させて第1切れ刃511を実際の「切れ刃」として用いる場合、第1切れ刃511をボディ20の先端側へ向けて第1姿勢とした切削インサート30を第1取付座810に嵌め込む。これにより、切削インサート30の第5面120を第1取付面811に当接させ、第3面310および第4面410を第2取付面812および第4取付面814に当接させ、第2面220を第3取付面813に当接させる。
【0053】
この状態において、切削インサート30の貫通孔700に対して、その開口部701から螺子50を挿し込み、第1取付座810の第1取付面811のネジ穴にねじ込む。これにより、第1切れ刃511が実際の「切れ刃」として用いられる第1姿勢で切削インサート30がボディ20の第1取付座810に装着される。
【0054】
(2)第1切れ刃512を使用する場合
切削インサート30を第1取付座810に装着させて第1切れ刃512を実際の「切れ刃」として用いる場合、第1切れ刃512をボディ20の先端側へ向けて第1姿勢とした切削インサート30を第1取付座810に嵌め込む。これにより、切削インサート30の第5面120を第1取付面811に当接させ、第3面320および第4面420を第2取付面812および第4取付面814に当接させ、第2面210を第3取付面813に当接させる。
【0055】
この状態において、切削インサート30の貫通孔700に対して、その開口部701から螺子50を挿し込み、第1取付座810の第1取付面811のネジ穴にねじ込む。これにより、第1切れ刃512が実際の「切れ刃」として用いられる第1姿勢で切削インサート30がボディ20の第1取付座810に装着される。
【0056】
(第2取付座820への取り付け)
(1)第2切れ刃521を使用する場合
切削インサート30を第2取付座820に装着させて第2切れ刃521を実際の「切れ刃」として用いる場合、第2切れ刃521をボディ20の先端側へ向けて第2姿勢とした切削インサート30を第2取付座820に嵌め込む。これにより、切削インサート30の第1面110を第1取付面821に当接させ、第4面420を第2取付面822に当接させ、第2面220を第3取付面823に当接させる。
【0057】
この状態において、切削インサート30の貫通孔700に対して、その開口部702から螺子50を挿し込み、第2取付座820の第1取付面821のネジ穴にねじ込む。これにより、第2切れ刃521が実際の「切れ刃」として用いられる第2姿勢で切削インサート30がボディ20の第2取付座820に装着される。
【0058】
(2)第2切れ刃522を使用する場合
切削インサート30を第2取付座820に装着させて第2切れ刃522を実際の「切れ刃」として用いる場合、第2切れ刃522をボディ20の先端側へ向けて第2姿勢とした切削インサート30を第2取付座820に嵌め込む。これにより、切削インサート30の第1面110を第1取付面821に当接させ、第4面410を第2取付面822に当接させ、第2面210を第3取付面823に当接させる。
【0059】
この状態において、切削インサート30の貫通孔700に対して、その開口部702から螺子50を挿し込み、第2取付座820の第1取付面821のネジ穴にねじ込む。これにより、第2切れ刃522が実際の「切れ刃」として用いられる第2姿勢で切削インサート30がボディ20の第2取付座820に装着される。
【0060】
以上、説明したように、本実施形態に係る切削インサート30によれば、一方の端面からなる略平行四辺形状の第1面110を区画する一対の辺111、113に沿って形成された2つの第1切れ刃511、512が使用可能であり、互いに対向する一対の側面からなる略台形の第2面210、220を区画する辺201、203に沿って形成された2つの第2切れ刃521、522が使用可能である。つまり、切削インサート30をボディ20に取り付ける際の姿勢及び向き等を変更することで、計4つの切れ刃を切り換えて使用することが可能となっている。
【0061】
また、切削インサート30は、第1面110が、第1切れ刃511、512に沿う溝部からなる第1すくい面151、152を有している。このように、第1面110における第1切れ刃511、512に沿う部分に溝部からなる第1すくい面151、152を形成したことにより、第1切れ刃511、512を実際の切れ刃として使用する際に正のすくい角を付与して切れ味を向上させて切削抵抗を下げることができる。一方、切削インサート30を第1面110の一部を着座面611となるように使用する際には、以下のメリットがある。すなわち、着座面611を軸AX2に沿って上から見た場合に着座面611が第1切れ刃511および第切れ刃512よりも低い位置にあると、第2取付座820の第1取付面821を凸状にしておかなければならなくなるところ、第1すくい面151、152を上記のような溝部から構成したことにより、着座面611を軸AX2に沿って上から見た場合に最外面(頂面)とすることができる。その結果、第2取付座820の第1取付面821を凸状にする必要がなくなって単純な平面にすることができ、ボディ20の製造コスト低減が図られる。
【0062】
また、切削インサート30の貫通孔700は、端面である第1面110および第5面120へ向かって拡径する拡径部701a、702aを有している。したがって、切削インサート30をボディ20に固定するために貫通孔700へ通してボディ20に締結する螺子50の頭部50aが拡径部701a、702aに収容され、この拡径部701a、702aで係合する。これにより、端面である第1面110および第5面120からの頭部50aの出っ張りを抑えつつ、切削インサート30をボディ20へ強固に固定できる。
【0063】
そして、本実施形態に係るボディ20及び切削工具10によれば、ボディ20の第1取付座810及び第2取付座820にそれぞれ切削インサート30を装着させることにより、第1姿勢の切削インサート30の第1切れ刃511、512及び第2姿勢の切削インサート30の第2切れ刃521、522で同時に切削可能である。
【0064】
特に、ボディ20には、第1取付座810及び第2取付座820が回転中心軸AX1に沿って前後に配列されているので、切削インサート30を先端側及び後端側に装着させることができる。これにより、例えば、一度の切削加工によって、先端側の切削インサート30で粗削り加工を行うとともに、後端側の切削インサート30で仕上げ加工を行うことができる。また、前後に切削インサート30を装着させることにより、工具全体としての切れ刃の刃長を長くでき、高切込みの加工に対応できる。
【0065】
本実施形態では、第1取付座810に装着された際の切削インサート30の第1姿勢は、切削インサート30の厚み方向が回転方向に沿う方向とされる平置き姿勢であり、第2取付座820に装着された際の切削インサート30の第2姿勢は、切削インサート30の幅方向が回転方向に沿う方向とされる縦置き姿勢である。これにより、切削インサート30を縦置き姿勢である第2姿勢で装着させる第2取付座820では、第1取付面821と切削インサート30との間にシム板を介在させてねじ止めすることにより、切削インサート30の装着位置をボディ20の径方向外方へ容易に移動させることができる。つまり、第1取付面821と切削インサート30との間にシム板を介在させることにより、工具径を容易に調整できる。
【0066】
本実施形態では、切削インサート30は、端面である第1面110および第5面120と直交する方向の厚みよりも、第2面210、220と直交する方向の幅寸法が大きくされている。このため、ボディ20に対し、切削インサート30を縦置き姿勢の第2姿勢で装着させる第2取付座820を先端側に設け、切削インサート30を平置き姿勢の第1姿勢で装着させる第1取付座810を後端側に設けるようにすれば、より大きな切削抵抗を受ける先端側に、高い耐久性を持たせることができる縦置き姿勢の切削インサート30を配置して工具寿命を延ばすこともできる。
【0067】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0068】
10 切削工具
20 ボディ
30 切削インサート
110 第1面
111、113 辺
151、152 第1すくい面
201、203 辺
210、220 第2面
511、512 第1切れ刃
521、522 第2切れ刃
611 着座面
621、622 第2すくい面
700 貫通孔
701a、702a 拡径部
810 第1取付座
820 第2取付座
【要約】
【課題】計4つの切れ刃を切り換えて使用可能としながらも、厚さを抑制することのできる切削インサート、ボディ及び切削工具を提供する。
【解決手段】切削工具10のボディ20に取り付けられる切削インサート30であって、互いに対向する一対の端面のうちの一方の端面からなり、第1すくい面151,152を含む面として機能する略平行四辺形状の第1面110と、第1面110を区画する辺のうちの互いに対向する一対の辺111、113に沿って形成された一対の第1切れ刃511、512と、互いに対向する一対の側面からなり、第2すくい面621、622を含む面として機能する略台形状の第2面210、220と、それぞれの第2面210、220を区画する辺のうちの一辺201、203に沿って形成された第2切れ刃521、522と、を有する。
【選択図】図1
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