(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】デフマウント構造
(51)【国際特許分類】
B60K 17/16 20060101AFI20241112BHJP
B62D 21/02 20060101ALI20241112BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20241112BHJP
B62D 5/06 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
B60K17/16 E
B62D21/02 Z
B62D5/04
B62D5/06
(21)【出願番号】P 2024509599
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2022014066
(87)【国際公開番号】W WO2023181284
(87)【国際公開日】2023-09-28
【審査請求日】2024-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183689
【氏名又は名称】諏訪 華子
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋本 康雄
(72)【発明者】
【氏名】高野 一郎
(72)【発明者】
【氏名】片村 弘基
(72)【発明者】
【氏名】上原 直哉
(72)【発明者】
【氏名】江崎 正明
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-201129(JP,U)
【文献】実開昭62-189230(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/16
B62D 21/02
B62D 5/04
B62D 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延在し車幅方向に間隔をあけて配置される一対のサイドメンバと、
車両前後方向に間隔をあけて配置され、前記一対のサイドメンバを車幅方向に接続する二つのクロスメンバと、
左右輪に駆動力を分配するデフギヤを内蔵し前記一対のサイドメンバ間における車幅方向の一方側に偏って配置されるケース部と前記ケース部の左右に延設される一対の軸部とを有するデフ装置と、
前記デフ装置を下方から支持する第一マウント装置と、
を備え、
前記第一マウント装置は、前記二つのクロスメンバ間において車両前後方向に直線状に延在して前記二つのクロスメンバを接続し、前記ケース部よりも車幅方向の他方側に配置されるとともに、車幅方向の他方側に位置する前記軸部を支持する
ことを特徴とする、デフマウント構造。
【請求項2】
前記デフ装置は、前記二つのクロスメンバ間における後方側に配置されている
ことを特徴とする、請求項1記載のデフマウント構造。
【請求項3】
前記第一マウント装置が、前記二つのクロスメンバの各々に両端が固定される支持アームと、前記軸部に固定されるブラケットと、前記支持アーム及び前記ブラケットを弾性的に接続するブッシュとを有する
ことを特徴とする、請求項1または2記載のデフマウント構造。
【請求項4】
前記ブッシュが、前記軸部よりも前方に配置される
ことを特徴とする、請求項3記載のデフマウント構造。
【請求項5】
前記ブッシュが、前記二つのクロスメンバの前後方向中央部に配置される
ことを特徴とする、請求項3または4記載のデフマウント構造。
【請求項6】
前記ケース部よりも車幅方向の一方側に配置され、車幅方向の一方側に位置する前記軸部を支持する第二マウント装置をさらに備える
ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のデフマウント構造。
【請求項7】
前記二つのクロスメンバ及び前記第一マウント装置及び前記第二マウント装置が、前記一対のサイドメンバよりも下方に配置される
ことを特徴とする、請求項6記載のデフマウント構造。
【請求項8】
前記二つのクロスメンバの各々が、前記一対のサイドメンバの各々から下方に延設される一対の縦部と、前記一対の縦部の間を車幅方向に接続する横部とを有し、
前記第一マウント装置が、前記二つのクロスメンバの各々における前記横部を接続する
ことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のデフマウント構造。
【請求項9】
前記一対のサイドメンバは、路面に対して水平に延びる第一延在部と、前記第一延在部の後方に連続して形成されるとともに前記第一延在部に対して下方に傾斜した第二延在部とを有し、
前記一対の縦部のうち、前側に位置する前縦部は前記第一延在部から延設され、後側に位置する後縦部は前記第一延在部と前記第二延在部との境界よりも後方の前記第二延在部から延設される
ことを特徴とする、請求項8記載のデフマウント構造。
【請求項10】
前記一対のサイドメンバ間であって前記二つのクロスメンバ間における前方側に配置されるパワーステアリング装置を備える
ことを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のデフマウント構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、車両のデフ装置を取り付けるためのデフマウント構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サイドメンバを備えた車両において、デフ装置(ディファレンシャル装置,差動装置)の近傍にクロスメンバを配置し、ブラケットを介してデフ装置をクロスメンバに取り付けるようにした取り付け構造が知られている。この種の取り付け構造では、例えばクロスメンバがデフ装置の前後に一対配置され、デフ装置が各クロスメンバに対してブラケットで支持されうる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、デフ装置のディファレンシャルギヤを内蔵するデフケースが、三本のブラケットによって前後のクロスメンバに支持されている。すなわち、デフ装置は、上面視において自身の重心に近い位置でブラケットに支持されている。それゆえ、車体ロール方向のモーメント荷重に対するデフ装置の変位を抑制しにくく、取り付け状態の安定性を向上させにくいという課題がある。
【0005】
本件の目的の一つは、上記のような課題に照らして創案されたものであり、簡素な構成でデフ装置の取り付け状態や支持状態の安定性を改善できるようにしたデフマウント構造を提供することである。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用効果であって、従来の技術では得られない作用効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示のデフマウント構造は、以下に開示する態様または適用例として実現でき、上記の課題の少なくとも一部を解決する。
開示のデフマウント構造は、車両前後方向に延在し車幅方向に間隔をあけて配置される一対のサイドメンバと、車両前後方向に間隔をあけて配置され、前記一対のサイドメンバを車幅方向に接続する二つのクロスメンバと、左右輪に駆動力を分配するデフギヤを内蔵し前記一対のサイドメンバ間における車幅方向の一方側に偏って配置されるケース部と前記ケース部の左右に延設される一対の軸部とを有するデフ装置と、前記デフ装置を下方から支持する第一マウント装置とを備える。前記第一マウント装置は、前記二つのクロスメンバ間において車両前後方向に直線状に延在して前記二つのクロスメンバを接続し、前記ケース部よりも車幅方向の他方側に配置されるとともに、車幅方向の他方側に位置する前記軸部を支持する。
【発明の効果】
【0007】
開示のデフマウント構造によれば、二つのクロスメンバを車両前後方向に接続する第一マウント装置でデフ装置の軸部を支持することで、簡素な構成でデフ装置の支持状態の安定性を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例としてのデフマウント構造を分解して示す斜視図である。
【
図2】
図1のデフマウント構造が適用された車両の下面図である。
【
図3】
図1のデフマウント構造が適用された車両の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
開示のデフマウント構造が適用された実施例を以下に説明する。以下の実施例はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施例で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。以下の実施例の構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。以下の説明では、車両の前進方向を前方(車両前方)とし、前方を基準に左右を定める。
【実施例】
【0010】
[1.構成]
図1は、実施例としてのデフマウント構造10を分解して示す斜視図である。デフマウント構造10は、フレーム1を有する車両に適用される。
図1に示すように、フレーム1には、一対のサイドメンバ2と二つのクロスメンバ3とが含まれる。サイドメンバ2は、車両前後方向(車長方向)に延在するフレームであり、車幅方向に間隔をあけて左右対称(面対称)に一対配置される。クロスメンバ3は、車両前後方向に間隔をあけて一対配置されるフレームであり、一対のサイドメンバ2を車幅方向に接続するように設けられる。二つのクロスメンバ3の形状は、同一であってもよいし相違していてもよい。これらのサイドメンバ2及びクロスメンバ3は、好ましくは中空の閉断面構造とされる。
【0011】
サイドメンバ2は、車室のフロアパネルを下方から支えるように延設されてもよい。この場合、
図1に示すように、サイドメンバ2のうち車室よりも前方側の部分には、上方に向かってクランク状に屈曲したキックアップ部が設けられてもよい。これにより、サイドメンバ2と前輪の車軸との距離(上下方向の離隔寸法)が確保されやすくなる。また、クロスメンバ3は、サイドメンバ2のキックアップ部に設けられてもよい。この場合、二つのクロスメンバ3は、車両の上面視において前輪の車軸を挟むように、車軸の前方側と後方側とに配置されてもよい。
【0012】
図1に示すサイドメンバ2は、路面に対して水平(平行)に延びる第一延在部31と、第一延在部31の後方に連続して形成されるとともに第一延在部31に対して下方に傾斜した第二延在部32とを有する。第一延在部31は、サイドメンバ2のキックアップ部のうち、前輪の車軸よりも上方で車両前後方向に延在する部位である。また、第二延在部32は、第一延在部31の後端から車両後方に向かって下り勾配に傾斜して延在する部位である。第二延在部32の後端よりも後方の部分は、例えばフロアパネルに沿ってほぼ水平に延設される。
【0013】
クロスメンバ3は、一対のサイドメンバ2よりも下方に配置されてもよく、
図1に示すように、一対の縦部4と横部5とを有するものであってもよい。縦部4は、一対のサイドメンバ2の各々から下方に延設される部位であり、横部5は、一対の縦部4の間を車幅方向に接続する部位である。横部5は、前輪の車軸よりも下方において略水平に配置される。前面視におけるクロスメンバ3の全体形状は、上方が開放されるように90度回転したコ字状に準えることができる。
【0014】
ここで、
図1に示すクロスメンバ3における一対の縦部4のうち、前側に位置するものを前縦部41と定義し、後側に位置するものを後縦部42と定義する。前縦部41の上端は、第一延在部31に接続され、後縦部42の上端は、第二延在部32に接続される。言い換えれば、前縦部41は第一延在部31から延設され、後縦部42は第二延在部32から延設される。つまり、後縦部42が延設される位置は、第一延在部31と第二延在部32との境界よりも後方である。これにより、例えば前面衝突時に第一延在部31と第二延在部32との境界部が上方に向かって「くの字状」に折れ曲がることを抑制できる。
【0015】
図2は、
図1のデフマウント構造10が適用された車両を下面側から見上げた状態を示す下面図であり、
図3はその右側面図である。車両の下面視において、一対のサイドメンバ2と二つのクロスメンバ3とで囲まれる領域には、デフ装置6が設けられる。デフ装置6は、左右輪に駆動力を分配するための差動装置(ディファレンシャル装置)であり、二つのクロスメンバ3間における後方側に配置される。デフ装置6の左側及び右側のそれぞれには、両端部に自在継手(例えばカルダンジョイントや等速ジョイント等)を有するドライブシャフト14が接続され、さらにその外側に左右輪の車軸が接続される。
【0016】
デフ装置6は、ケース部7と一対の軸部8とを有する。ケース部7は、左右輪に駆動力を分配するデフギヤ(ディファレンシャルギヤ)を内蔵する容器状の部位であり、ケーシングやデフケースとも呼ばれる。ケース部7は、一対のサイドメンバ2間における車幅方向の一方側に偏って配置される。また、軸部8はケース部7の両側面から左右に延設された軸状の部位であり、アクスルシャフト部やドライブシャフト部とも呼ばれる。右側の軸部8の内部には、デフギヤを構成する右サイドギヤに接続された右アクスルシャフトが挿通され、左側の軸部8の内部には、デフギヤを構成する左サイドギヤに接続された左アクスルシャフトが挿通される。ケース部7の後端部には、デフ装置6に駆動力を入力する入力軸(例えばプロペラシャフト等)が接続される。
【0017】
図2中の一点鎖線Aは、下面視における二つのクロスメンバ3の中心(前方側のクロスメンバ3の後端と後方側のクロスメンバ3の前端との中間位置であって、車両前後方向の中心)である。また、
図2中の二点鎖線Bは、下面視における軸部8の中心〔あるいは、軸部8の内側に遊挿されるアクスルシャフト(右アクスルシャフト及び左アクスルシャフト)の中心〕である。デフ装置6の位置は、少なくとも二点鎖線B(軸部8の中心,アクスルシャフトの中心)が一点鎖線Aよりも後方側に位置するように設定される。好ましくは、一対の軸部8の全体が一点鎖線Aよりも後方側に位置するように設定される。より好ましくは、デフ装置6の全体が一点鎖線Aよりも後方側に収まるように配置される。
【0018】
図2中の一点鎖線Cは、下面視における一対のサイドメンバ2の中心(左側のサイドメンバ2の右端と右側のサイドメンバ2の左端との中間位置であって、車幅方向の中心)である。また、
図2中の二点鎖線Dは、下面視における入力軸の中心である。ケース部7の位置は、少なくとも二点鎖線D(入力軸の中心)が一点鎖線Cよりも一方側(
図2では紙面左側,車両右側)に位置するように設定される。好ましくは、ケース部7の全体が一点鎖線Cよりも一方側に収まるように配置される。なお、車幅方向の位置について、下面視で一点鎖線Cに対してデフ装置6のケース部7が偏って配置される側のことを「一方側」と呼び、逆側のことを「他方側」と呼ぶ。
【0019】
また、
図2に示す例では、デフ装置6の前方側の隣接位置にパワーステアリング装置9が配置されている。パワーステアリング装置9とは、人力によるステアリングの操舵力や舵角調節機構(転舵装置)の駆動力に補助力を付与することで、ステアリング操作に係る運転者の労力を軽減する装置である。ここでいうパワーステアリング装置9には、例えばEPS(電動パワーステアリング装置)やHPS(油圧パワーステアリング装置)等が含まれる。パワーステアリング装置9の位置は、下面視におけるパワーステアリング装置9の図心または重心が一点鎖線Aよりも前方側に位置するように設定される。好ましくは、パワーステアリング装置9の全体が一点鎖線Aよりも前方側に収まるように配置される。
【0020】
上記のデフ装置6は、複数のマウント装置11~13を介してフレーム1に取り付けられる。マウント装置11~13は、デフ装置6を下方から支持する部材である。
図1に示すように、本実施例のマウント装置11~13には、第一マウント装置11と第二マウント装置12と第三マウント装置13とが含まれる。本実施例のデフ装置6は、これらの三つのマウント装置11~13を介して、二つのクロスメンバ3の上に取り付けられる。
【0021】
第一マウント装置11は、ケース部7よりも車幅方向の他方側(
図2では紙面右側,車両左側)に配置されるマウント装置であって、一対の軸部8のうち車幅方向の他方側に位置する軸部8を支持するものである。第一マウント装置11は、少なくとも車両前後方向に延在して二つのクロスメンバ3を接続する形状を有する。本実施例の第一マウント装置11は、一対のサイドメンバ2よりも下方に配置される。また、
図1に示すように、第一マウント装置11には支持アーム21とブラケット22とブッシュ23とが設けられる。
【0022】
支持アーム21は、車両前後方向に延在し、二つのクロスメンバ3の各々に両端が固定される梁状の部材である。支持アーム21の前端部は前方側のクロスメンバ3の横部5に接続され、支持アーム21の後端部は後方側のクロスメンバ3の横部5に接続される。支持アーム21は、クロスメンバ3の横部5に対して直接的に取り付けられてもよいし、図示しない固定金具を介して間接的に取り付けられてもよい。支持アーム21は、二つのクロスメンバ3の各々における横部5を接続するように設けられる。
【0023】
ブラケット22は、デフ装置6の軸部8のうち、車幅方向の他方側に位置する軸部8に固定される部材である。
図3に示すように、ブラケット22は、軸部8から車両前方かつ下方に向かって延出する形状に形成される。なお、このブラケット22は、軸部8に対して直接的に取り付けられてもよいし、図示しない固定金具を介して間接的に取り付けられてもよい。
【0024】
ブッシュ23は、支持アーム21とブラケット22とを弾性的に接続する部材である。ブッシュ23は、例えば円筒状の内筒と、内筒の周囲に配置される大径の外筒と、内筒及び外筒によって囲まれる空間に介装される弾性部材とを有する。内筒及び外筒の一方(
図3では外筒)は支持アーム21に固定され、他方(
図3では内筒)はブラケット22に固定される。これにより、支持アーム21とブラケット22とが弾性部材を介して弾性的に接続される。本実施例のブッシュ23は、軸部8よりも前方に配置され、二つのクロスメンバ3の前後方向中央部に配置される。
図3に示すように、ブッシュ23の内筒及び外筒の中心位置は、側面視において一点鎖線Aを通る位置に設定される。
【0025】
第二マウント装置12は、ケース部7よりも車幅方向の一方側に配置されるマウント装置であって、一対の軸部8のうち車幅方向の一方側に位置する軸部8を支持するものである。第二マウント装置12は、デフ装置6と前方側のクロスメンバ3との間に介装される。本実施例の第二マウント装置12には、
図1に示すように、第二アーム24と第二ブラケット25と第二ブッシュ26とが設けられる。
【0026】
第二アーム24は、デフ装置6の軸部8のうち、車幅方向の一方側に位置する軸部8に固定される部材である。
図1に示すように、第二アーム24は、軸部8から車両前方かつ下方に向かって延出する形状に形成される。また、第二ブラケット25は、前方側のクロスメンバ3に固定される部材である。第二ブッシュ26は、第二アーム24と第二ブラケット25とを弾性的に接続する部材であり、上述のブッシュ23と同様に、内筒と外筒と弾性部材とを有する。内筒及び外筒の一方は第二アーム24に固定され、他方は第二ブラケット25に固定される。
【0027】
図2に示すように、二点鎖線D(ケース部7に接続される入力軸の中心)から第二ブッシュ26までの車幅方向の距離L
2は、二点鎖線Dからブッシュ23までの車幅方向の距離L
1よりも短く設定される。言い換えれば、ブッシュ23が右側のサイドメンバ2の近傍に配置されるのに対し、第二ブッシュ26は左側のサイドメンバ2の近傍に配置される。ブッシュ23及び第二ブッシュ26の車幅方向の離隔距離(ブッシュスパン)を大きくすることで、デフ装置6の支持状態が安定しやすくなる。
【0028】
第三マウント装置13は、ケース部7の後方部分を支持するものであり、デフ装置6と後方側のクロスメンバ3との間に介装される。本実施例の第三マウント装置13には、
図1に示すように、第三アーム27と第三ブラケット28と第三ブッシュ29とが設けられる。第三アーム27は、後方側のクロスメンバ3の上面に固定される部材である。第三ブラケット28は、ケース部7の後方部分に固定される部材であり、ケース部7から下方に向かって延出する形状に形成される。第三ブッシュ29は、第三アーム27と第三ブラケット28とを弾性的に接続する部材であり、上述のブッシュ23と同様に、内筒と外筒と弾性部材とを有する。内筒及び外筒の一方は第三アーム27に固定され、他方は第三ブラケット28に固定される。
【0029】
[2.作用,効果]
(1)本実施例のデフマウント構造10は、一対のサイドメンバ2と、二つのクロスメンバ3と、デフ装置6と、第一マウント装置11とを備える。デフ装置6は、左右輪に駆動力を分配するデフギヤを内蔵し一対のサイドメンバ2間における車幅方向の一方側に偏って配置されるケース部7と、ケース部7の左右に延設される一対の軸部8とを有する。また、第一マウント装置11は、車両前後方向に延在して二つのクロスメンバ3を接続し、ケース部7よりも車幅方向の他方側に配置されるとともに、車幅方向の他方側に位置する軸部8を支持する。
【0030】
このように、二つのクロスメンバ3を車両前後方向に接続する第一マウント装置11でデフ装置6の軸部8を支持することで、第一マウント装置11を二つのクロスメンバ3に対して安定的に固定することができる。したがって、簡素な構成でデフ装置6の取り付け状態や支持状態の安定性を改善できる。
また、第一マウント装置11がケース部7よりも車幅方向の他方側で軸部8を支持するため、車体ロール方向のモーメント荷重に対するデフ装置6の変位を抑制でき、バランスよくデフ装置6を支持することができる。したがって、簡素な構成でデフ装置6の取り付け状態や支持状態の安定性を改善できる。
【0031】
(2)本実施例のデフマウント構造10では、デフ装置6が二つのクロスメンバ3間における後方側に配置される。このように、デフ装置6を二つのクロスメンバ3間における後方側に配置することで、前方側の空間を有効活用することができる。例えば、左右輪の操舵に係るパワーステアリング装置9をデフ装置6の前方側に無理なく配置できるとともに、パワーステアリング装置9とデフ装置6との干渉を抑制できる。つまり、パワーステアリング装置9との干渉によってデフ装置6の支持状態が不安定になるような事態が回避される。したがって、簡素な構成でデフ装置6の取り付け状態や支持状態の安定性を改善できる。
【0032】
(3)本実施例の第一マウント装置11は、
図1に示すように、二つのクロスメンバ3の各々に両端が固定される支持アーム21と、デフ装置6の軸部8に固定されるブラケット22と、支持アーム21及びブラケット22を弾性的に接続するブッシュ23とを有する。このように、支持アーム21の両端を二つのクロスメンバ3の各々に接続することで、支持アーム21の強度や剛性を高めることができ、デフ装置6の取り付け状態や支持状態の安定性を改善できる。特に、支持アーム21の一端のみをクロスメンバ3に接続するような片持ち構造と比較して、支持アーム21の耐久性を劇的に改善できる。また、二つのクロスメンバ3の相対的な移動や変形を支持アーム21で拘束することができる。したがって、フレーム1の強度や剛性を向上させることができる。
【0033】
(4)本実施例のブッシュ23は、
図2,
図3に示すように、デフ装置6の軸部8よりも前方に配置される。このような構成により、加速時におけるデフ装置6の持ち上がり移動を抑制できる。例えば、車両の加速時には、デフ装置6を
図3中の黒矢印方向に回転させる反力(モーメント)が発生し、デフ装置6の全体が持ち上がる方向に移動するおそれがある。一方、上記のデフマウント構造10によれば、デフ装置6の軸部8よりも前方に固定点が配置されるため、デフ装置6が持ち上がり方向へ移動しにくくなる。したがって、デフ装置6の上方にパワープラント(エンジン,変速機等)が配置されていたとしても、パワープラントとの干渉を防止できる。
【0034】
(5)本実施例のブッシュ23は、二つのクロスメンバ3の前後方向中央部に配置される。すなわち、
図3に示すように、ブッシュ23の内筒及び外筒の中心位置が、側面視において一点鎖線Aを通る位置に設定される。このような構成により、第一マウント装置11が負担する荷重を二つのクロスメンバ3の各々に均等に分配できる。したがって、簡素な構成でデフ装置6の取り付け状態や支持状態の安定性を改善できる。
【0035】
また、第一マウント装置11のうち、支持アーム21はクロスメンバ3に対して固定されるため、デフ装置6の振動によって動かない非可動部分となる。つまり、デフ装置6の振動によって動く可能性がある可動部分は、ブラケット22及びブッシュ23のみである。そして、ブッシュ23の位置をクロスメンバ3の前後方向中央部に設定することで、上記の可動部分のサイズがコンパクトになるため、デフ装置6の周囲に他の車載装置や部品等を配置しやすくすることができる。
【0036】
(6)本実施例のデフマウント構造10は、第二マウント装置12をさらに備える。第二マウント装置12は、ケース部7よりも車幅方向の一方側に配置され、車幅方向の一方側に位置する軸部8を支持している。このような構成により、デフ装置6をより安定的に支持することができ、簡素な構成でデフ装置6の取り付け状態や支持状態の安定性を改善できる。
【0037】
(7)本実施例では、
図1,
図3に示すように、二つのクロスメンバ3及び第一マウント装置11及び第二マウント装置12が一対のサイドメンバ2よりも下方に配置される。また、デフ装置6は、二つのクロスメンバ3間における後方側に配置される。このような構成により、一対のサイドメンバ2の離隔距離よりも車幅方向に長い車載装置や部品をデフ装置6の前方側に配置することが容易となる。したがって、デフ装置6の前方側の空間を有効活用する上で、その利便性を向上させることができる。
【0038】
(8)本実施例では、
図1に示すように、二つのクロスメンバ3の各々が一対の縦部4と横部5とを有する。また、第一マウント装置11は、二つのクロスメンバ3の各々における横部5を接続するように設けられる。このように、クロスメンバ3の下端部を第一マウント装置11で接続することで、サイドメンバ2の下方にデフ装置6が配置されるスペースを十分に確保することができる。また、第一マウント装置11は、例えば車両の衝突時に入力される外力に対して、サイドメンバ2やクロスメンバ3の形状を効率よく保持する突っ支い棒として機能しうる。したがって、フレーム1の形状安定性を向上させることができる。
【0039】
(9)本実施例のデフマウント構造10は、
図1に示すように、路面に対して水平(平行)に延びる第一延在部31と、第一延在部31の後方に連続して形成されるとともに第一延在部31に対して下方に傾斜した第二延在部32とを有する。また、一対の縦部4のうち、前側に位置する前縦部41は第一延在部31から延設され、後側に位置する後縦部42は第二延在部32から延設される。つまり、後縦部42が延設される位置は、第一延在部31と第二延在部32との境界よりも後方である。このような構成により、前面衝突時における衝突荷重を支持アーム21によって支えることができ、第一延在部31と第二延在部32との境界部における上方へのくの字折れを防止することができる。
【0040】
(10)本実施例では、
図2に示すように、デフ装置6の前方側の隣接位置にパワーステアリング装置9が配置される。パワーステアリング装置9は、一対のサイドメンバ2間であって、二つのクロスメンバ3間における前方側(一点鎖線Aよりも前方側)に配置される。このような構成により、デフ装置6の前方側の空間を有効活用できるとともに、ステアリング操作に係る運転者の労力を軽減できる。
【0041】
[3.その他]
上記の実施例では、支持アーム21とブラケット22とブッシュ23とを有する第一マウント装置11を例示したが、第一マウント装置11の構成はこれに限定されない。第一マウント装置11は、少なくとも車両前後方向に延在して二つのクロスメンバ3を接続するものであればよく、かつ、ケース部7よりも車幅方向の他方側に配置されるとともに、車幅方向の他方側に位置する軸部8を支持するものであればよい。このような構成により、上記の実施例と同様の作用効果を獲得しうる。
【0042】
また、上記の実施例では、デフ装置6の前方側にパワーステアリング装置9が配置された構造を例示したが、パワーステアリング装置9は省略してもよく、他の車載装置や部品に置換してもよい。少なくとも、デフ装置6を二つのクロスメンバ3間における後方側に配置することで、デフ装置6の前方側に空間を確保でき、その空間を有効活用することができる。
【0043】
上記の実施例のデフ装置6は、三つのマウント装置11~13を介して二つのクロスメンバ3の上に取り付けられているが、マウント装置の個数は三つに限られず、固定先もクロスメンバ3に限られない。複数のマウント装置には、少なくとも、車両前後方向に延在して二つのクロスメンバ3を接続し、デフ装置6のケース部7よりも車幅方向の他方側に配置されるとともに、車幅方向の他方側に位置する軸部8を支持する第一マウント装置11が含まれていればよく、その他のマウント装置の配置や構成は上述したものに限られない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本件は、デフ装置(ディファレンシャル装置,差動装置)が取り付けられる車体の製造産業に利用可能であり、デフ装置及び車体を含む車両の製造産業にも利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 フレーム
2 サイドメンバ
3 クロスメンバ
4 縦部
5 横部
6 デフ装置
7 ケース部
8 軸部
9 パワーステアリング装置
10 デフマウント構造
11 第一マウント装置(マウント装置)
12 第二マウント装置(マウント装置)
13 第三マウント装置(マウント装置)
14 ドライブシャフト
21 支持アーム
22 ブラケット
23 ブッシュ
24 第二アーム
25 第二ブラケット
26 第二ブッシュ
27 第三アーム
28 第三ブラケット
29 第三ブッシュ
31 第一延在部
32 第二延在部
41 前縦部
42 後縦部
A 一点鎖線
B 二点鎖線
C 一点鎖線
D 二点鎖線
L1 距離
L2 距離