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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】板状アルミナ含有インキ組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/17 20140101AFI20241112BHJP
   C09C 3/06 20060101ALI20241112BHJP
   C09C 1/40 20060101ALI20241112BHJP
   C09D 11/037 20140101ALI20241112BHJP
【FI】
C09D11/17
C09C3/06
C09C1/40
C09D11/037
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024534748
(86)(22)【出願日】2024-02-29
(86)【国際出願番号】 JP2024007464
【審査請求日】2024-06-11
(31)【優先権主張番号】P 2023039562
(32)【優先日】2023-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】糸谷 一男
(72)【発明者】
【氏名】飯田 正紀
(72)【発明者】
【氏名】林 正道
(72)【発明者】
【氏名】濱田 健一
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-550984(JP,A)
【文献】特開2014-218424(JP,A)
【文献】特表2020-510118(JP,A)
【文献】国際公開第2007/040206(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物層を形成する前のレーザー回折式粒度分布測定における体積基準のメディアン径D50が1μm以上5μm以下、アスペクト比が10以上50以下であり、かつ二酸化珪素からなる金属酸化物層を表層に有する板状アルミナ粒子と、酸化チタン粒子と、を含有する白色インキ組成物。
【請求項2】
前記板状アルミナ粒子のレーザー回折式粒度分布測定における体積基準の累積粒子径D100が15μm以下である請求項1に記載の白色インキ組成物。
【請求項3】
インキ組成物における板状アルミナ粒子の含有量がインキ組成物全量に対して1質量%以上15質量%以下である請求項1又は2に記載の白色インキ組成物。
【請求項4】
前記メディアン系D50が1.1μm以上4μm以下である、請求項1に記載の白色インキ組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状アルミナ含有インキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インキ組成物としては、例えば着色剤と、有機溶剤や水等の溶媒とを含有するものが知られており、前記着色剤として顔料を含有する顔料インキが広く使用されている。なかでも、白色顔料としては、隠蔽力や鮮明さに優れる酸化チタンを用いたものが多く使われている。
【0003】
筆記具用インキ組成物においては、アルミナを酸化チタン等の着色剤と併せて添加することがある(特許文献1、2)。アルミナを添加することで、例えば、ボールペンチップは、ボールとボールホルダーとを有しているが、筆記時にボールが回転することで発生する摩擦によるボール受け座(ボールとボールホルダーの接触部を示す)の摩耗を低減することができる。また、長距離筆記の際、ボールとボール受け座の摩擦力が、紙面とボールとの摩擦力よりも小さい為、線飛びを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-091944号公報
【文献】特開2020-203969号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Machida,S.et.al.CrystEngComm,2022,24,5405-5409
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アルミナは隠蔽力が低く、添加剤として加えた場合にインキ組成物本来の隠蔽力を低下させる恐れがあった。
【0007】
非特許文献1では、サブミクロンオーダーの板状NaNbOが隠蔽力に高いことが示されているが、アルミナを同様にサブミクロンオーダーとするも隠蔽力の改善が不十分であった。
【0008】
本発明の課題は、高い隠蔽力を達成できるアルミナ粒子を含有するインキ組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定粒子径及び厚みのアルミナ粒子を表面処理することで、隠蔽力に優れたインキ塗膜とすることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明は以下の通りである。
【0010】
(1) レーザー回折式粒度分布測定における体積基準のメディアン径D50が1μm以上5μm以下、アスペクト比が10以上50以下であり、かつ金属酸化物層を表層に有する板状アルミナ粒子を含有するインキ組成物。
【0011】
(2) 前記板状アルミナ粒子のレーザー回折式粒度分布測定における体積基準の累積粒子径D100が15μm以下である上記(1)に記載の組成物。
【0012】
(3) 前記金属酸化物が二酸化珪素である上記(1)または(2)に記載のインキ組成物。
【0013】
(4) さらに酸化チタン粒子を含む上記(1)~(3)のいずれか1つに記載のインキ組成物。
【0014】
(5) インキ組成物において前記板状アルミナ粒子を含有し、その含有量がインキ組成物全量に対して1質量%以上15質量%以下である上記(1)~(4)のいずれか1つに記載のインキ組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、特定粒子径及び厚みのアルミナ粒子を表面処理することで、高い隠蔽力を達成するインキ組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0017】
〔インキ組成物〕
本発明のインキ組成物は、特定の粒子径、アスペクト比を有するアルミナ粒子を含み、前記アルミナ粒子は表層に金属酸化物層を有することを特徴とする。
【0018】
(アルミナ粒子)
アルミナ粒子のD50は、1μm以上5μm以下であり、1.1μm以上4μm以下であるとより好ましい。D50が前記範囲内にあることで、後述する金属酸化物層を設けた際にドライハイド効果が発現しやすくなり、インキ塗膜の隠蔽性を向上することができる。
【0019】
アルミナ粒子のD100は特に制限されるものではないが、D100は15μm以下であると好ましい。D100が15μm以下であると、粗大なアルミナ粒子の割合が低減され、インキ塗膜とした際に均一で鮮やかな発色を得ることができる。
【0020】
本明細書において、D50、D100とは、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定された体積基準の累積粒度分布から算出された値を意味する。
【0021】
アルミナ粒子の厚みに対する平均粒子径(D50)の比率であるアスペクト比は、10以上50以下であり、12以上45以下であることが好ましく、15以上40以下であることがより好ましい。アルミナ粒子のアスペクト比が前記範囲内であると、インキ塗膜とした際に良好な隠蔽性能を得ることができる。
【0022】
アルミナ粒子は酸化アルミニウムであり、例えば、γ、δ、θ、κ等の各種の結晶形の遷移アルミナであっても、又は遷移アルミナ中にアルミナ水和物を含んでいてもよいが、より安定性に優れる点で、基本的にはα結晶形(α型)であることが好ましい。
【0023】
アルミナ粒子はさらにモリブデンを含んでいてもよく、また、本発明の効果を損なわない限り、原料又は形状制御剤由来の不純物を含んでもよい。
【0024】
本発明に用いられるアルミナ粒子は、D50及びアスペクト比の性能を満たすことができればどのような製造方法を用いてもよく、水熱法、フラックス法等の公知慣用の製造方法で製造することができる。より簡便に所望のアルミナ粒子を得る製造方法としては、モリブデン化合物及び形状制御剤の存在下、アルミニウム化合物を焼成する特開2016-222501号公報に記載の方法が挙げられる。
【0025】
(金属酸化物層)
アルミナ粒子に含まれる金属酸化物層は、酸化亜鉛、二酸化珪素、二酸化ジルコニウム、酸化チタンのいずれか1種以上であることが好ましい。多孔質構造を形成しアルミナ表面に空気を含有することでバインダーとの屈折率差がより大きくなる二酸化珪素であると特に好ましい。
【0026】
金属酸化物層は、単層であることが好ましい。単層であると、屈折率差による隠蔽力の向上により優れる。なお、単層とは1種類の成分からなることを意味し、例えば、酸化亜鉛の層と二酸化珪素の層と2種類の層が存在しないことを示す。
【0027】
金属酸化物層は、アルミナ粒子の表面の少なくとも一部に形成されていれば良いが、より好ましくは、アルミナ粒子の表面の全体に形成されていることが好ましい。なお、「アルミナ粒子の表面」とは、アルミナ粒子の表面の外側を意味する。よって、アルミナ粒子の表面の内側に形成される、ムライトやゲルマニウムを含む表層とは明確に区別される。
【0028】
金属酸化物層の厚みは、特に限定されるものではないが、隠蔽性とコストの観点から、0.1nm以上であるが、SEM画像では測定されない程度に薄いものである。
【0029】
アルミナ粒子のアルミナの量に対する金属酸化物層の金属酸化物の量は、特に限定されるものではないが、例えば5質量%以下であると好ましく、3質量%以下であるとさらに好ましく、0質量%より上であると好ましい。前記範囲内にあることで、インキ組成物とした際に隠蔽性に優れるため好ましい。
【0030】
〔金属酸化物層の形成方法〕
金属酸化物層の形成方法は、特に制限されず公知の方法により形成することができる。例えば、二酸化珪素の場合、ケイ酸ソーダの溶液を添加し強酸によりpH調整後、乾燥させることで多孔質の二酸化珪素層を形成することができる。
【0031】
金属酸化物を有するアルミナ粒子の含有量は、用途に応じて適宜設定すればよいが、インキ組成物中の全質量に対して1~15質量%であると好ましく、3~12質量%であるとより好ましい。前記範囲内にあることで、優れた隠蔽力、発色性を兼備できるため好ましい。
【0032】
(酸化チタン粒子)
本発明のインキ組成物はさらに酸化チタン粒子を含むことができる。前記酸化チタン粒子は、特に制限されるものではなく、ルチル型、アナターゼ型のいずれも使用することができるが、平均粒子径は0.01μm以上であると良い。例えば、Bayertitan R-FD-1・R-KB-3・R-CK-20(以上、バイエル社製)、TIPAQUE R-630・R-615・R-830、LPTシリーズ(以上、石原産業株式会社製)、Unitane OR-342(A.C.C.社製)、Ti-pure R-900・R-901(Chemours社製)、ルクセレンシルクシリーズ(住友化学株式会社製)等、公知の酸化チタンを用いることができる。
【0033】
添加量は、インキ組成物中の全質量に対して0.001質量%以上10質量%以下であると好ましく、0.005質量%以上5質量%以下であるとさらに好まし、0.02質量%以上4質量%以下であると特に好ましい。前記範囲内にあると得られる塗膜の隠蔽性とL値が優れ、インキ吐出性能にも優れ好ましい。
【0034】
(有機溶剤)
本発明のインキ組成物は有機溶剤を含むことができ、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶剤、n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソヘプタン、n-オクタン、イソオクタンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどのシクロパラフィン系溶剤、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなどのグリコール系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤等が挙げられ、これらは1種または2種以上併用して用いても良い。水溶性であり、かつ、筆記性と安全性に優れるという観点において、グリコールエーテル系溶剤が好ましい。
【0035】
有機溶剤の含有量は特に制限されるものではないが、インキ塗膜の乾燥速度という観点から、インキ組成物中の全質量に対して10~90質量%であると好ましく、20~80質量%であるとより好ましい。
【0036】
(樹脂)
本発明のインキ組成物は樹脂を含んでいてもよく、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ケトン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、テルペン樹脂、アルキッド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、エチレンオキサイド重合体、アクリル樹脂、スチレン-アクリル樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂などが挙げられ、これらは1種または2種以上併用して用いても良い。
【0037】
樹脂の含有量は、インキ粘度やインキ漏れの観点から、インキ組成物中の全質量に対して、0.05~30質量%であると好ましく、0.1~25質量%であると特に好ましい。
【0038】
(分散剤)
本発明のインキ組成物は分散剤を含んでいてもよく、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンメチルエーテル、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド等のノニオン系界面活性剤;アルキル硫酸塩、N-アシルアミノ酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、アルキル燐酸塩等のアニオン系界面活性剤;アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤;アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイド、ホスファジルコリン等の両性系界面活性剤;アクリル系等の高分子型界面活性剤などが挙げられる。
【0039】
分散剤の含有量は、用いられる溶媒等のその他成分によって適宜決定されるが、分散安定性やインキ粘度の点から、インキ組成物中の全質量に対して、0.1~30質量%であると好ましく、0.5~20質量%であると特に好ましい。
【0040】
(その他添加剤)
必要に応じて、有機顔料、無機顔料、酸性染料、塩基性染料、直接染料等の着色剤;ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、サポニン、金属塩系化合物、リン酸エステル系化合物等の防錆剤;石炭酸、1,2-ベンズチアゾリン3-オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルフォニル)ピリジン等の防腐剤;シリコーン系、鉱物油系、ポリエーテル系、フッ素系等の消泡剤;酸化防止剤;安定剤;炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、酢酸ソーダ等の無機塩類、水溶性のアミン化合物等の有機塩基性化合物等等のpH調製剤などの添加剤を添加することもできる。
【0041】
〔インキ組成物の製法〕
本発明のインキ組成物は、特に制限されず公知の方法により製造することができる。前述の成分を適量配合し、プロペラ攪拌、ホモディスパー、またはホモミキサーなどの各種攪拌機やビーズミルなどの各種分散機などにて混合し、製造することができる。なお、着色剤として顔料を添加する場合は、ビーズミルやペイントコンディショナーなどの分散機を用いることが好ましい。
【0042】
(粘度)
インキ組成物の粘度は、特に制限されるものではないが、20℃、剪断速度5sec-1(静止時)におけるインキ粘度は、30,000mPa・s以下であると好ましく、25,000mPa・s以下であるとより好ましい。前記上限値以下であると、インキ吐出性や書き心地に優れ好ましい。また、インキ漏れ抑制の観点から500mPa・s以上であると好ましく、1,000mPa・s以上であるとより好ましい。
【0043】
〔用途〕
本発発明のインキ組成物を充填する筆記具の構造は特に制限されるものではない。本発明のインキ組成物は、隠蔽性が高いだけでなく、アルミナを用いることにより低摩耗性の効果も発現されると期待されることから、ボールとボール受け座を有するボールペン用インキとして好適に用いられる。本発明の筆記具を用いれば、隠蔽性を保持しつつ、安定して描線を実現することができる。
【0044】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
(アルミナの合成)
〔製造例1〕
水酸化アルミニウム(日本軽金属株式会社製、平均粒子径1μm)142.3gと、二酸化珪素(関東化学株式会社製、特級)3.7gと、三酸化モリブデン(太陽鉱工株式会社製)4.7gと、を乳鉢で混合し、混合物を得た。得られた混合物を坩堝に入れ、セラミック電気炉にて5℃/分の条件で1200℃まで昇温し、1200℃で10時間保持し焼成を行なった。その後5℃/分の条件で室温まで降温後、坩堝を取り出し、95gの薄青色の粉末を得た。
【0046】
続いて、得られた前記薄青色粉末の50gを0.5%アンモニア水の150mLに分散し、分散溶液を室温(25~30℃)で0.5時間攪拌後、ろ過によりアンモニア水を除き、水洗浄と乾燥を行う事で、粒子表面に残存するモリブデンを除去し、47gの薄青色の粉末を得た。得られた粉末はSEM観察により形状が板状であることが確認された。さらに、X線回折(XRD)測定を行ったところ、α-アルミナに由来する鋭いピーク散乱が現れ、α結晶構造以外のアルミナ結晶系ピークは観察されなく、緻密な結晶構造を有する板状アルミナ粒子であることを確認した。また、α化率は99%以上(ほぼ100%)であった。
【0047】
〔製造例2〕
水酸化アルミニウム(日本軽金属株式会社製、平均粒子径2μm)142.3gと、二酸化珪素(関東化学株式会社製、特級)2.8gと、三酸化モリブデン(太陽鉱工株式会社製)4.7gと、を乳鉢で混合し、混合物を得た。得られた混合物を坩堝に入れ、セラミック電気炉にて5℃/分の条件で1200℃まで昇温し、1200℃で10時間保持し焼成を行なった。その後5℃/分の条件で室温まで降温後、坩堝を取り出し、95gの薄青色の粉末を得た。
【0048】
続いて、得られた前記薄青色粉末の50gを0.5%アンモニア水の150mLに分散し、分散溶液を室温(25~30℃)で0.5時間攪拌後、ろ過によりアンモニア水を除き、水洗浄と乾燥を行う事で、粒子表面に残存するモリブデンを除去し、47gの薄青色の粉末を得た。得られた粉末はSEM観察により形状が多角板状であることが確認された。さらに、X線回折(XRD)測定を行ったところ、α-アルミナに由来する鋭いピーク散乱が現れ、α結晶構造以外のアルミナ結晶系ピークは観察されなく、緻密な結晶構造を有する板状アルミナ粒子であることを確認した。また、α化率は99%以上(ほぼ100%)であった。
【0049】
〔製造例3〕
水酸化アルミニウム(日本軽金属株式会社製、平均粒子径12μm)50gと、二酸化珪素(関東化学株式会社製、特級)0.65gと、三酸化モリブデン(太陽鉱工株式会社
製)1.72gと、を乳鉢で混合し、混合物を得た。得られた混合物を坩堝に入れ、セラミック電気炉にて5℃/分の条件で1200℃まで昇温し、1200℃で10時間保持し焼成を行った。その後5℃/分の条件で室温まで降温後、坩堝を取り出し、34.2gの薄青色の粉末を得た。得られた粉末を乳鉢で、106μm篩を通るまで解砕した。
【0050】
続いて、得られた前記薄青色粉末を0.5%アンモニア水の150mLに分散し、分散溶液を室温(25~30℃)で0.5時間攪拌後、ろ過によりアンモニア水を除き、水洗浄と乾燥を行う事で、粒子表面に残存するモリブデンを除去し、33.5gの薄青色の粉末を得た。得られた粉末はSEM観察により形状が板状であり、凝集体が極めて少ないことが確認された。さらに、XRD測定を行ったところ、α-アルミナに由来する鋭いピーク散乱が現れ、α結晶構造以外のアルミナ結晶系ピークは観察されなく、緻密な結晶構造を有する板状アルミナ粒子であることを確認した。また、α化率は99%以上(ほぼ100%)であった。
【0051】
比較用として酸化チタン粒子(タイペークR-830、石原産業株式会社製)を準備した(T-1)。
【0052】
(粒度分布の計測)
板状アルミナ粒子0.05gを0.2%ヘキサメタリン酸水溶液50gに混合し、超音波ホモジナイザーを用いて5分間分散し、レーザー光散乱回折法粒度測定機(マイクロトラックベル社製、MT3300EXII)を用いて粒度分布の測定を行い、50%、100%体積平均径D50、D100(μm)を求めた。
【0053】
(平均厚さDの計測)
板状アルミナ粒子について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、50個の厚さを測定した平均値を採用し、平均厚さD(μm)とし、アスペクト比D50/Dを下記の式を用いて求めた。
【0054】
(アスペクト比D50/D)
アスペクト比=板状アルミナ粒子の粒子径D50/板状アルミナ粒子の平均厚さD
【0055】
(板状アルミナ粒子のα化率の分析)
板状アルミナ粒子を0.5mm深さの測定試料用ホルダーにのせ、一定荷重で平らになるよう充填し、それを広角X線回析装置(株式会社リガク製Rint-Ultma)にセットし、Cu/Kα線、40kV/30mA、スキャンスピード2度/分、走査範囲10~70度の条件で測定を行った。α-アルミナと遷移アルミナの最強ピーク高さの比よりα化率を求めた。
【0056】
〔製造例4~6〕
(金属酸化物層の形成)
上記製造例で得られた板状アルミナ粒子をイオン交換水中に分散し、撹拌しながら3号珪酸ソーダ(富士化学株式会社)を滴下した。アルミナ100質量部に対し、酸化ケイ素3質量部となるように添加した。
滴下後10分撹拌し、1M硫酸を滴下し、pHを6.0に調整した。その後、ろ過、イオン交換水にて洗浄し、150℃、5時間乾燥し、薄青色の粉末を得た。
【0057】
実施例、比較例に用いられるフィラーは表1の通りである。
【0058】
【表1】


【0059】
(インキ組成物の製造)
タイペークR-830(石原産業株式会社製)5.5質量部、プライマルASE-60(ダウケミカル社製)1.0質量部、精製グリセリン(新日本理化株式会社)6.5質量部、Joncryl70J(BASF社製)11.7質量部、イオン交換水12.9質量部を混合した。得られた混合液に表1に示すフィラーを4質量部添加し、さらに混合し、白色インキ組成物を得た。
【0060】
[隠蔽性の評価]
得られた白色インキ組成物を、色画用紙(こいくろ、プラス株式会社製)にバーコータRDS20を用いて塗膜を形成した。塗膜を一昼夜室温で乾燥させ、被塗膜面に対する隠蔽性をL値により判定した。L値はspectro-guide 45/0 gloss(BYK-Gardner GmbH製)にて測定した。L値89以上を被塗膜面を十分に隠蔽しており、良好な塗膜として〇、それ未満を隠蔽性が不十分として×とした。
【0061】
上記評価結果を表2に示した。
【0062】
【表2】


【0063】
実施例1、2および比較例1より、特定粒子径のアルミナ粒子に金属酸化物層を形成すると隠蔽性が良好となることが確認された。
【0064】
実施例1、2および比較例2より、金属酸化物層を形成することにより隠蔽性が良好となることが確認された。
【0065】
実施例1、2および比較例3より、金属酸化物層を形成したアルミナ粒子は酸化チタン粒子単独よりも隠蔽性が良好となることが確認された。
【要約】
高い隠蔽力を達成できるアルミナ粒子を含有するインキ組成物を提供することを目的とする。具体的には、レーザー回折式粒度分布測定における体積基準のメディアン径D50が1μm以上5μm以下、アスペクト比が10以上50以下であり、かつ金属酸化物層を表層に有する板状アルミナ粒子を含有するインキ組成物であることを特徴とする。