IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

7586384導電性酸化第二スズ粒子を含む有機溶媒分散ゾル及びその製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-11
(45)【発行日】2024-11-19
(54)【発明の名称】導電性酸化第二スズ粒子を含む有機溶媒分散ゾル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 19/02 20060101AFI20241112BHJP
   B01J 13/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C01G19/02 Z
B01J13/00 C
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2024543885
(86)(22)【出願日】2024-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2024011858
【審査請求日】2024-08-06
(31)【優先権主張番号】P 2023060241
(32)【優先日】2023-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木全 政樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】山口 真人
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-252981(JP,A)
【文献】特開2006-176392(JP,A)
【文献】特開2008-50253(JP,A)
【文献】特開2005-296940(JP,A)
【文献】特開2015-189663(JP,A)
【文献】特開2004-14329(JP,A)
【文献】特開平9-80203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 1/00-23/08
B01J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4~50nmの平均一次粒子径を有する酸化第二スズ粒子(i)を核として、1~10nmの平均一次粒子径を有し且つ酸化アンチモン、酸化第二スズ、及び酸化ケイ素からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属酸化物粒子(ii)で被覆された変性金属酸化物粒子(iii)を含み、該変性金属酸化物粒子が有機溶媒に分散したゾルであって、平均一次粒子径は核粒子(i)≧被覆粒子(ii)の関係を有し、(酸化第二スズ以外の金属酸化物の合計質量)/(酸化第二スズの質量)が0.005~1.0であり、そして該ゾルは水溶解度0.1g/リットル以上のアミン(a)と、水溶解度0.1g/リットル未満のアミン(b)とを含む変性金属酸化物ゾル。
【請求項2】
動的光散乱法による平均粒子径が5~100nmである請求項1に記載の変性金属酸化物ゾル。
【請求項3】
核粒子としての酸化第二スズ粒子(i)が、水熱処理化酸化第二スズ粒子である請求項1に記載の変性金属酸化物ゾル。
【請求項4】
核粒子としての酸化第二スズ粒子(i)が、X線回折法による結晶化度が60%以上である請求項1に記載の変性金属酸化物ゾル。
【請求項5】
被覆粒子としての金属酸化物粒子(ii)が、酸化アンチモン粒子、又は酸化第二スズと酸化ケイ素が質量比で1:0.1~10.0の複合粒子である請求項1に記載の変性金属酸化物ゾル。
【請求項6】
アミン(a)が変性金属酸化物ゾル中に20~3,000ppmの割合で含有する請求項1に記載の変性金属酸化物ゾル。
【請求項7】
アミン(b)が変性金属酸化物ゾル中に1,000~30,000ppmの割合で含有する請求項1に記載の変性金属酸化物ゾル。
【請求項8】
アミン(a)が第1アミン、第2アミン、又はそれらの組み合わせからなるアミンである請求項1に記載の変性金属酸化物ゾル。
【請求項9】
アミン(b)が第3アミンである請求項1に記載の変性金属酸化物ゾル。
【請求項10】
アミン(a)がn-プロピルアミン、ジn-プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、ジn-ブチルアミン、及びジイソブチルアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種のアミンである請求項1に記載の変性金属酸化物ゾル。
【請求項11】
アミン(b)がトリn-ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリn-ペンチルアミン、及びトリイソペンチルアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種のアミンである請求項1に記載の変性金属酸化物ゾル。
【請求項12】
アミン(b)/アミン(a)の質量比が3.0~200である請求項1に記載の変性金属酸化物ゾル。
【請求項13】
変性金属酸化物粒子(iii)が式(1)~式(6):
【化1】
【化2】
〔式(1)中、R1はそれぞれアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はポリエーテル基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、ウレイド基、もしくはシアノ基を有する有機基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであって、R2はそれぞれアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、aは1~3の整数を示し、
式(2)及び式(3)中、R3及びR5はそれぞれ炭素原子数1~3のアルキル基、又は炭素原子数6~30のアリール基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、R4及びR6はそれぞれアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、Yはアルキレン基、NH基、又は酸素原子を示し、bは1~3の整数であり、cは0又は1の整数であり、dは1~3の整数である。
式(4)乃至式(6)中、X1、X2、及びX3はそれぞれ炭素原子数2~20のアルキレン基を示し、f、h、及びjはそれぞれ1~100の整数を示し、e、g、及びiはそれぞれ1~3の整数を示し、Y1、Y2、及びY3はそれぞれ水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数2~20のアルケニル基、炭素原子数6~30のアリール基又は(メタ)アクリル基を示す。〕
からなる群より選ばれた少なくとも1種の被覆剤で被覆されたものである、請求項1に記載の変性金属酸化物ゾル。
【請求項14】
有機溶媒がアルコール、ケトン、エステル、エーテル、アミド、炭化水素、シアノ基含有溶媒、ハロゲン含有溶媒、スルホニル基含有溶媒、カルボキシル基含有溶媒、又はそれらの混合溶媒から成る溶媒である請求項1に記載の変性金属酸化物ゾル。
【請求項15】
アルコールが炭素原子数1~20の1価アルコール、又は炭素原子数1~20の多価アルコールである請求項14に記載の変性金属酸化物ゾル。
【請求項16】
請求項1乃至請求項15の何れか1項に記載の変性金属酸化物ゾル中の変性金属酸化物粒子(iii)を含む帯電防止用組成物。
【請求項17】
請求項1乃至請求項15の何れか1項に記載の変性金属酸化物ゾル中の変性金属酸化物粒子(iii)を含む電子輸送材用組成物。
【請求項18】
下記(A)工程~(D)工程:
(A)工程:水溶解度0.1g/リットル以上のアミン(a)を含有し、4~50nmの平均一次粒子径を有する酸化第二スズ粒子(i)の水性ゾルを準備する工程、
(B)工程:水溶解度0.1g/リットル以上のアミン(a)を含有し、1~10nmの平均一次粒子径を有し且つ酸化アンチモン、酸化第二スズ、及び酸化ケイ素からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属酸化物粒子(ii)の水性ゾルを準備する工程、
(C)工程:(A)工程で得られた酸化第二スズの水性ゾルと、(B)工程で得られた変性金属酸化物の水性ゾルを、(酸化第二スズ以外の金属酸化物の合計質量)/(酸化第二スズの質量)が0.005~1.0の割合で混合し、4~50nmの平均一次粒子径を有する酸化第二スズ粒子(i)を核として、1~10nmの平均一次粒子径を有し且つ酸化アンチモン、酸化第二スズ、及び酸化ケイ素からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属酸化物粒子(ii)で被覆された変性金属酸化物粒子(iii)を製造し、水溶解度0.1g/リットル未満のアミン(b)を添加する工程、
(D)工程:(C)工程で得られた変性金属酸化物粒子(iii)の水性ゾルの水性媒体を炭素原子数1~5のアルコールに溶媒置換する工程、を含む請求項1乃至請求項15の何れか1項に記載の変性金属酸化物粒子の有機溶媒ゾルの製造方法。
【請求項19】
(A)工程が4~50nmの平均一次粒子径を有する酸化第二スズ粒子(i)の水性ゾルが、水溶解度0.1g/リットル以上のアミン(a)を添加し、その後に0.1~40MPaの圧力と100~350℃の温度で0.01~100時間の水熱処理を経る(A-1)工程である請求項18に記載の変性金属酸化物粒子(iii)の有機溶媒ゾルの製造方法。
【請求項20】
(D)工程の後に(E)工程及び/又は(F)工程:
(E)工程:変性金属酸化物粒子(iii)の有機溶媒ゾルに、式(1)~式(6)からなる群より選ばれた少なくとも1種の被覆剤を添加して変性金属酸化物粒子(iii)の表面処理を行う(E)工程、を追加する工程、
(F)工程:変性金属酸化物粒子(iii)の炭素原子数1~5のアルコール溶媒ゾルのアルコールを、(D)工程で用いた以外のアルコール、ケトン、エステル、エーテル、アミド、炭化水素、シアノ基含有溶媒、ハロゲン含有溶媒、スルホニル基含有溶媒、カルボキシル基含有溶媒、又はそれらの混合溶媒に溶媒置換する工程、を追加する請求項18に記載の変性金属酸化物粒子の有機溶媒ゾルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性酸化第二スズのコロイド粒子(変性酸化物粒子とも言う)を含む有機溶媒分散ゾルとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高純度酸化第二スズ自体は絶縁性であるが、インジウムやアンチモンがドープされることによって電子伝導性が出現することが知られている。また、酸化第二スズは酸素欠陥によっても電子伝導性を示すことも知られている。これらの酸化第二スズ粒子の性質を利用して透明導電性コート剤として、例えば、フィルムに塗布することによって透明導電性被膜が得られることが開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、水溶性アミンを含有し4~50nmの平均粒子径を有する酸化第二スズの水性ゾルを0.1~40MPaの圧力と100~350℃の温度で水熱処理を行って核粒子を含む水性ゾルを製造した後に、被覆粒子として5nm以下の平均粒子径を有する五酸化二アンチモンと二酸化ケイ素の複合体コロイド粒子の水性ゾル、又は水溶性アミンを含有し平均粒子径1~10nmの五酸化二アンチモンのコロイド粒子の水性ゾルを混合し、核粒子の表面を被覆粒子で被覆した変性金属酸化物ゾルが開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公昭35-6616号公報
【文献】特開2006-176392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、酸化第二スズ(i)を核として酸化アンチモン、酸化第二スズ、及び酸化ケイ素からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属酸化物粒子(ii)で被覆された変性金属酸化物粒子(iii)を含む有機溶媒ゾルであって、該変性金属酸化物粒子(iii)は高い導電性と高い屈折率を有しているものであって、それらが有機溶媒中に安定に分散していることによってコート剤として基材に塗布した時に透明性、粒子屈折率、及び塗膜比抵抗値を有することが可能な上記ゾルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1観点として、4~50nmの平均一次粒子径を有する酸化第二スズ粒子(i)を核として、1~10nmの平均一次粒子径を有し且つ酸化アンチモン、酸化第二スズ、及び酸化ケイ素からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属酸化物粒子(ii)で被覆された変性金属酸化物粒子(iii)を含み、該変性金属酸化物粒子が有機溶媒に分散したゾルであって、平均一次粒子径は核粒子(i)≧被覆粒子(ii)の関係を有し、(酸化第二スズ以外の金属酸化物の合計質量)/(酸化第二スズの質量)が0.005~1.0であり、そして該ゾルは水溶解度0.1g/リットル以上のアミン(a)と、水溶解度0.1g/リットル未満のアミン(b)とを含む変性金属酸化物ゾル、
第2観点として、動的光散乱法による平均粒子径が5~100nmである第1観点に記載の変性金属酸化物ゾル、
第3観点として、核粒子としての酸化第二スズ粒子(i)が、水熱処理化酸化第二スズ粒子である第1観点又は第2観点に記載の変性金属酸化物ゾル、
第4観点として、核粒子としての酸化第二スズ粒子(i)が、X線回折法による結晶化度が60%以上である第1観点乃至第3観点の何れか一つに記載の変性金属酸化物ゾル、
第5観点として、被覆粒子としての金属酸化物粒子(ii)が、酸化アンチモン粒子、又は酸化第二スズと酸化ケイ素が質量比で1:0.1~10.0の複合粒子である第1観点乃至第4観点の何れか一つに記載の変性金属酸化物ゾル、
第6観点として、アミン(a)が変性金属酸化物ゾル中に20~3,000ppmの割合で含有する第1観点乃至第5観点の何れか一つに記載の変性金属酸化物ゾル、
第7観点として、アミン(b)が変性金属酸化物ゾル中に1,000~30,000ppmの割合で含有する第1観点乃至第6観点の何れか一つに記載の変性金属酸化物ゾル、
第8観点として、アミン(a)が第1アミン、第2アミン、又はそれらの組み合わせからなるアミンである第1観点乃至第7観点の何れか一つに記載の変性金属酸化物ゾル、
第9観点として、アミン(b)が第3アミンである第1観点乃至第8観点の何れか一つに記載の変性金属酸化物ゾル、
第10観点として、アミン(a)がn-プロピルアミン、ジn-プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、ジn-ブチルアミン、及びジイソブチルアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種のアミンである第1観点乃至第9観点の何れか一つに記載の変性金属酸化物ゾル、
第11観点として、アミン(b)がトリn-ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリn-ペンチルアミン、及びトリイソペンチルアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種のアミンである第1観点乃至第10観点の何れか一つに記載の変性金属酸化物ゾル、
第12観点として、アミン(b)/アミン(a)の質量比が3.0~200である第1観点乃至第11観点の何れか一つに記載の変性金属酸化物ゾル、
第13観点として、変性金属酸化物粒子(iii)が式(1)~式(6):
【化1】
【化2】
〔式(1)中、R1はそれぞれアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はポリエーテル基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、ウレイド基、もしくはシアノ基を有する有機基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであって、R2はそれぞれアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、aは1~3の整数を示し、
式(2)及び式(3)中、R3及びR5はそれぞれ炭素原子数1~3のアルキル基、又は炭素原子数6~30のアリール基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、R4及びR6はそれぞれアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、Yはアルキレン基、NH基、又は酸素原子を示し、bは1~3の整数であり、cは0又は1の整数であり、dは1~3の整数である。
式(4)乃至式(6)中、X1、X2、及びX3はそれぞれ炭素原子数2~20のアルキレン基を示し、f、h、及びjはそれぞれ1~100の整数を示し、e、g、及びiはそれぞれ1~3の整数を示し、Y1、Y2、及びY3はそれぞれ水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数2~20のアルケニル基、又は(メタ)アクリル基を示す。〕
からなる群より選ばれた少なくとも1種の被覆剤で被覆されたものである、請求項1乃至請求項12の何れか一つに記載の変性金属酸化物ゾル、
第14観点として、有機溶媒がアルコール、ケトン、エステル、エーテル、アミド、炭化水素、シアノ基含有溶媒、ハロゲン含有溶媒、スルホニル基含有溶媒、カルボキシル基含有溶媒、又はそれらの混合溶媒から成る溶媒である第1観点乃至第13観点の何れか一つに記載の変性金属酸化物ゾル、
第15観点として、アルコールが炭素原子数1~20の1価アルコール、又は炭素原子数1~20の多価アルコールである第14観点に記載の変性金属酸化物ゾル、
第16観点として、第1観点乃至第15観点の何れか一つに記載の変性金属酸化物ゾル中の変性金属酸化物粒子(iii)を含む帯電防止用組成物、
第17観点として、第1観点乃至第15観点の何れか一つに記載の変性金属酸化物ゾル中の変性金属酸化物粒子(iii)を含む電子輸送材用組成物、
第18観点として、下記(A)工程~(D)工程:
(A)工程:水溶解度0.1g/リットル以上のアミン(a)を含有し、4~50nmの平均一次粒子径を有する酸化第二スズ粒子(i)の水性ゾルを準備する工程、
(B)工程:水溶解度0.1g/リットル以上のアミン(a)を含有し、1~10nmの平均一次粒子径を有し且つ酸化アンチモン、酸化第二スズ、及び酸化ケイ素からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属酸化物粒子(ii)の水性ゾルを準備する工程、
(C)工程:(A)工程で得られた酸化第二スズの水性ゾルと、(B)工程で得られた変性金属酸化物の水性ゾルを、(酸化第二スズ以外の金属酸化物の合計質量)/(酸化第二スズの質量)が0.005~1.0の割合で混合し、4~50nmの平均一次粒子径を有する酸化第二スズ粒子(i)を核として、1~10nmの平均一次粒子径を有し且つ酸化アンチモン、酸化第二スズ、及び酸化ケイ素からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属酸化物粒子(ii)で被覆された変性金属酸化物粒子(iii)を製造し、水溶解度0.1g/リットル未満のアミン(b)を添加する工程、
(D)工程:(C)工程で得られた変性金属酸化物粒子(iii)の水性ゾルの水性媒体を炭素原子数1~5のアルコールに溶媒置換する工程、を含む第1観点乃至第15観点の何れか一つに記載の変性金属酸化物粒子の有機溶媒ゾルの製造方法、
第19観点として、(A)工程が4~50nmの平均一次粒子径を有する酸化第二スズ粒子(i)の水性ゾルが、水溶解度0.1g/リットル以上のアミン(a)を添加し、その後に0.1~40MPaの圧力と100~350℃の温度で0.01~100時間の水熱処理を経る(A-1)工程である第18観点に記載の変性金属酸化物粒子(iii)の有機溶媒ゾルの製造方法、
第20観点として、(D)工程の後に(E)工程及び/又は(F)工程:
(E)工程:変性金属酸化物粒子(iii)の有機溶媒ゾルに、式(1)~式(6)からなる群より選ばれた少なくとも1種の被覆剤を添加して変性金属酸化物粒子(iii)の表面処理を行う(E)工程、を追加する工程、
(F)工程:変性金属酸化物粒子(iii)の炭素原子数1~5のアルコール溶媒ゾルのアルコールを、(D)工程で用いた以外のアルコール、ケトン、エステル、エーテル、アミド、炭化水素、シアノ基含有溶媒、ハロゲン含有溶媒、スルホニル基含有溶媒、カルボキシル基含有溶媒、又はそれらの混合溶媒に溶媒置換する工程、を追加する第18観点又は第19観点に記載の変性金属酸化物粒子の有機溶媒ゾルの製造方法
を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明では核粒子となる酸化第二スズ粒子(i)と、酸化アンチモン、酸化第二スズ、及び酸化ケイ素からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属酸化物粒子(ii)を被覆粒子として上記核粒子の表面を被覆する変性金属酸化物粒子(iii)を用いる。
核粒子と被覆粒子は、共にコロイド状の金属酸化物粒子が安定に水性媒体に分散している水性ゾルを使用することができる。それら水性ゾルを混合することができる。例えば、核粒子(i)を含む水性ゾルに、被覆粒子(ii)を含む水性ゾルを添加することによって変性金属酸化物粒子(iii)を含む水性ゾルが得られる。これらの水性ゾルは安定に水性媒体に分散するためには水溶解度0.1g/リットル以上のアミン(a)を含有することが必要である。核粒子(i)を含む水性ゾル、被覆粒子(ii)を含む水性ゾルの両水性ゾルは両者を混合する前、又は後で陽イオン交換を行いそれらの一部は取り除かれるが、混合され変性金属酸化物粒子(iii)の水性ゾルは、その後に分散媒を水性媒体から有機溶媒に置換して変性金属酸化物粒子(iii)の有機溶媒ゾルを作成する段階で、水溶解度0.1g/リットル以上のアミン(a)と水溶解度0.1g/リットル未満のアミン(b)が共存することで、水性媒体を有機溶媒に置換することが可能となり凝集のない変性金属酸化物粒子(iii)の有機溶媒ゾルを製造することが可能である。
また、核粒子(i)は水熱処理を施すことも可能であり、水熱処理は、例えば、0.1~40MPaの圧力と100~350℃の温度で0.01~100時間の処理が行われるものであり、核粒子が水性媒体中に安定に分散していることが望ましく、そのために水溶解度0.1g/リットル以上のアミン(a)を必要とする。
【0008】
本発明では変性金属酸化物粒子(iii)が有機溶媒に分散したゾルである。水性媒体を有機溶媒に溶媒置換することによって、変性金属酸化物粒子(iii)が有機溶媒への分散性を向上するために水溶解度0.1g/リットル未満のアミン(b)を含有することが必要である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は4~50nmの平均一次粒子径を有する酸化第二スズ粒子(i)を核として、1~10nmの平均一次粒子径を有し且つ酸化アンチモン、酸化第二スズ、及び酸化ケイ素からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属酸化物粒子(ii)で被覆された変性金属酸化物粒子(iii)を含み、該変性金属酸化物粒子が有機溶媒に分散したゾルであって、平均一次粒子径は核粒子(i)≧被覆粒子(ii)の関係を有し、(酸化第二スズ以外の金属酸化物の合計質量)/(酸化第二スズの質量)が0.005~1.0であり、そして該ゾルは水溶解度0.1g/リットル以上のアミン(a)と、水溶解度0.1g/リットル未満のアミン(b)とを含む上記変性金属酸化物ゾルである。
【0010】
化学物質の水への溶解度を測定する方法としては、溶解度が低い場合はカラム溶出法、溶解度が高い場合にはフラスコ法等が用いられる。例えば、OECDテストガイドライン105(水への溶解度)で規定されている測定方法を用いることができる。
【0011】
上記酸化第二スズ以外の金属酸化物とは、金属成分がスズ以外の金属酸化物を示す。
酸化第二スズ粒子(i)、及び金属酸化物粒子(ii)の平均一次粒子径は透過型電子顕微鏡観察により測定することができる。
【0012】
上記変性金属酸化物粒子(iii)を含むゾルは動的光散乱法によって測定することができ、動的光散乱法による平均粒子径は5~100nm、又は10~60nm、又は10~50nmであることが好ましい。
【0013】
本発明の原料として用いられる4~50nmの平均一次粒子径を有する酸化第二スズ粒子(i)は、当該酸化第二スズ粒子(i)を含む水性ゾルとして準備することができる。
例えば、イオン交換法、解膠法、加水分解法、反応法等と呼ばれる方法により、約4~50nm程度の粒子径を有するコロイド粒子のゾルの形態で容易につくることができる。
【0014】
上記イオン交換法の例としては、スズ酸ナトリウムのようなスズ酸塩を水素型陽イオン交換樹脂で処理する方法、或いは上記塩化第二スズ、硝酸第二スズのような第二スズ塩を水酸基型陰イオン交換樹脂で処理する方法が挙げられる。上記解膠法の例としては、第二スズ塩を塩基で中和するか、或いはスズ酸を塩酸で中和させることにより得られる水酸化第二スズゲルを洗浄した後、酸又は塩基で解膠する方法が挙げられる。上記加水分解法の例としては、スズアルコキシドを加水分解する方法、或いは塩基性塩化第二スズ塩を加熱下に加水分解した後、不要の酸を除去する方法が挙げられる。上記反応法の例としては、金属スズ粉末と酸とを反応させる方法が挙げられる。
【0015】
また、原料となる上記酸化第二スズ粒子(i)を含む水性ゾルは、金属スズと過酸化水素水との反応によって得ることもできる。
【0016】
金属スズは粉末状又は粒状で用いることができる。例えば、インゴットを溶融し噴霧凝固させて得られるアトマイゼーション法による金属スズ粉末や、インゴットを旋盤やヤスリ等により切削し製造されたフレーク状金属スズ粉末を用いることができる。
【0017】
過酸化水素は、市販の35質量%濃度の水溶液を所望の濃度で用いることができる。例えば、1~30質量%、又は5~20質量%濃度のシュウ酸等の有機酸水溶液を準備し、その有機酸水溶液中に過酸化水素水及び金属スズを、同時に又は交互に添加してスズ酸の水溶液を得ることができる。撹拌機を備えた反応容器にシュウ酸等の有機酸水溶液を入れ、撹拌下に過酸化水素水と金属スズを各々、別々の添加口から同時に又は交互に添加する。酸化スズコロイドの凝集体を含むスラリーは酸性であるため、それら工程で使用される反応装置はガラス製反応装置やグラスライニング(ホウロウ)製反応装置を用いることが好ましい。
【0018】
過酸化水素水と金属スズとのH22/Snモル比は2~3に保持しつつシュウ酸等の有機酸水溶液中に添加する。より詳しくは、過酸化水素水及び金属スズの添加すべき全質量部に対して1/3~1/30質量部をそれぞれ分収して、シュウ酸等の有機酸水溶液中への過酸化水素水の添加とそれに続く金属スズの添加そして2~20分間反応を行う一連の工程を、3~30回繰り返す分割添加の方法が挙げられる。
【0019】
22/Snモル比が3を少し越えても反応は可能であるが、大幅に越えることは好ましくない。H22/Snモル比が2未満では酸化不充分となるため好ましくない。過酸化水素水と金属スズの添加時間は、0.4~10時間、好ましくは0.4~5時間をかけて添加することができる。この添加時間が0.4時間以下では発熱反応が激しくコントロールが出来なくなり、また未反応の金属スズが残存し易くなるため好ましくない。また、10時間以上でもよいが経済的ではないので好ましくない。
【0020】
シュウ酸等の有機酸水溶液中での金属スズ及び過酸化水素水の反応は30~95℃、好ましくは40~85℃で行われる。過酸化水素と金属スズとの反応は酸化反応であるため発熱反応となり、また過酸化水素の分解反応も同時に起こりこの反応も発熱反応であるため反応時の温度コントロールには注意が必要であり、必要に応じて冷却することができる。反応温度は30℃未満でもよいが、発熱反応であるために過剰の冷却が必要となり、反応に時間が懸かり過ぎ、経済的でない。反応温度が95℃以上では粗大なコロイド粒子が生成してしまうため好ましくない。
【0021】
得られた酸化第二スズコロイドの凝集体スラリー中から過剰な電解質(主にアニオン)を除去して、酸化第二スズコロイド粒子を解膠させてゾルを得る工程である。過剰な電解質を除去することにより酸化第二スズコロイド粒子が一次粒子に近い状態で分散したゾルを得ることができる。この洗浄は凝集沈降させ、上澄みをデカンテーションする方法、限外濾過法、イオン交換法等により行うことができるが、多量の電解質を含む場合は限外濾過を行い、その後に注水を行い、その後に再度の限外濾過を行う(限外濾過-注水-限外濾過)の繰り返しによる洗浄方法が特に好ましい。この工程により得られる酸化第二スズ複合コロイド粒子の平均一次粒子径は4~50nm、又は10~20nm(ナノメートル)である。
【0022】
酸化第二スズ水性ゾルを陰イオン交換する工程を付加することができる。この陰イオン交換処理により高濃度でも安定なゾルを得ることができる。陰イオン交換は市販の陰イオン交換樹脂を用いることができ、陰イオン交換樹脂は水酸基型に調製後に使用する。陰イオン交換樹脂を充填したカラムに酸化第二スズ水性ゾルを通液することにより容易に陰イオン交換できる。通液温度は0~60℃、通液速度は空間速度SV1~10時間が好ましい。
【0023】
陰イオン交換処理の前及び/又は後に、塩基性物質を酸化第二スズ水性ゾルに添加して安定性を向上させることができる。用いられる塩基性物質としては有機塩基が好ましく、例えば、水溶解度0.1g/リットル以上、0.1~5,000.0g/リットル、0.1~3,000.0g/リットル、0.1~2,000.0g/リットル、0.5~2,000.0g/リットル、1.0~2,000.0g/リットル、10.0~2,000.0g/リットル、又は100~1,000.0g/リットルのアミン(a)を用いることができる。
【0024】
アミン(a)は20~3,000ppm、又は20~1,000ppmの割合で添加することができる。アミン(a)は第1アミン、第2アミン、又はそれらの組み合わせからなるアミンを用いることができる。例えば、アミン(a)がn-プロピルアミン、ジn-プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、ジn-ブチルアミン、及びジイソブチルアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種のアミンを用いることができる。
【0025】
本発明では核粒子としての酸化第二スズ粒子(i)がX線回折法による結晶化度が60%以上、又は65%以上、100%以下が好ましいが、典型的には60~95%、又は65~95%の範囲である酸化第二スズ粒子を用いることができる。60%以上であることが好ましいが、典型的には60~99%、又は60~95%とすることができる。
【0026】
本発明では、上記の方法で製造されたSnO2濃度1~50質量%の酸化第二スズ水性ゾルを、そのまま使用することもできるが、加圧下で100~350℃、0.01~100時間の水熱処理によって水熱処理化酸化第二スズ粒子を製造することができる。水熱処理は、例えば、オートクレーブに上記の酸化第二スズ水性ゾルを入れ、0.1~40MPa(メガパスカル)の圧力と100~350℃の温度で、0.01~100時間の処理が施される。
【0027】
これら酸化第二スズゾルの媒体は、水、親水性有機溶媒のいずれでもよいが、媒体が水である水性ゾルが好ましい。また、ゾルのpHとしては、ゾルを安定ならしめる値がよく、通常、0.2~11.5程度がよい。本発明の目的が達成される限り、酸化第二スズゾルには、任意の成分、例えば、ゾルの安定化のためのアルカリ性物質、酸性物質、オキシカルボン酸等が含まれていてもよい。用いられる酸化第二スズゾルの濃度としては、酸化第二スズとして0.5~50質量%程度であるが、この濃度は低い方がよく、好ましくは1~30質量%である。
【0028】
酸化第二スズゾルは上記アミン等の有機塩基で安定化されたアルカリ性のゾルを用いるのが特に好ましく、上記アミンの添加は5~100℃ 、好ましくは室温(20℃)~60℃が好ましい。そしてこの混合は撹拌下で酸化第二スズゾルに上記アミンを加え、混合は充分行われる必要があり、0.5~3時間が好ましい。
【0029】
本発明に用いられる被覆粒子(ii)は、被覆粒子の水性ゾルを用いることができる。被覆粒子(ii)は、酸化アンチモン粒子(ii-1)単独の場合、又は酸化第二スズと酸化ケイ素の複合粒子(ii-2)が質量比で酸化第二スズ:二酸化ケイ素=1:0.1~10.0の複合粒子を用いることができる。
【0030】
アルキルアミン含有五酸化アンチモンコロイド粒子(ii-1)は酸化法、酸分解法等で得ることができる。酸分解法の例としてはアンチモン酸アルカリを無機酸と反応させた後にアミンで解膠する方法(特開昭60-41536号公報、特開昭61-227918号公報、特開2001-123115号公報)、酸化法の例とアミンやアルカリ金属の共存下で三酸化アンチモンを過酸化水素で酸化する方法(特公昭57-11848号公報、特開昭59-232921号公報)や三酸化アンチモンを過酸化水素で酸化した後、アミンやアルカリ金属を添加する方法で得ることができる。上記アミンは、例えば、水溶解度0.1g/リットル以上のアミン(a)を用いることができる。アミン(a)は20~3,000ppm、又は20~1,000ppmの割合で添加することができる。アミン(a)は第1アミン、第2アミン、又はそれらの組み合わせからなるアミンを用いることができる。例えば、アミン(a)がn-プロピルアミン、ジn-プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、ジn-ブチルアミン、及びジイソブチルアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種のアミンを用いることができる。
【0031】
アルキルアミン含有五酸化アンチモンコロイド粒子(ii-1)は、微小な五酸化アンチモンのコロイド粒子であり、その粒子径は電子顕微鏡観察によりオリゴマー又は一次粒子径が1~20nm程度である。アミン成分としてジイソプロピルアミン等のアルキルアミン塩が好ましく、アミン/Sb25のモル比は0.02~4.00である。
【0032】
上記の被覆物には、アミン含有五酸化アンチモンコロイド粒子に、更にアルキルアミン含有ニ酸化珪素粒子を加えることができる。
被覆ゾルとして用いることができる五酸化アンチモンとニ酸化珪素の複合体コロイドは下記に示す公知の方法(例えば、特公昭50-40119号公報)で得ることができる。即ち、ケイ酸アルカリ水溶液又はケイ酸液とアンチモン酸アルカリ水溶液とを混合した後、陽イオン交換樹脂により脱カチオンすることにより得ることができる。
【0033】
アンチモン原料としては、好ましくはアンチモン酸カリウム水溶液を用いることができる。ニ酸化珪素原料としてはケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム及びこれらをカチオン交換して得られる活性ケイ酸を用いることができる。SiO2/Sb25のモル比は0.55~55である。粒子径は電子顕微鏡観察によりオリゴマー又は平均一次粒子が5nm以下、好ましくは1~5nmである。
【0034】
本発明の被覆ゾルに用いられる酸化第二スズと二酸化珪素複合体のコロイド粒子(ii-2)は下記に示す方法で得ることができる。
スズ酸塩及び珪酸塩を、SiO2/SnO2質量比として0.1~10の比率に含有する水溶液を調製し、得られた水溶液中に存在する陽イオンを除去する方法で得られる。このゾルに含まれるSnO2及びSiO2の合計の濃度は、通常40質量%以下、実用上好ましくは2質量%以上、好ましくは5~30質量%である。
【0035】
このゾルは、アルカリ成分を実質的に含有しないで安定に存在することができる。しかし、アルカリ成分を含有して安定化することも可能である。そのアルカリ成分は、アミン(a)として20~3,000ppm、又は20~1,000ppmの割合で添加することができる。アミン(a)は第1アミン、第2アミン、又はそれらの組み合わせからなるアミンを用いることができる。例えば、アミン(a)がn-プロピルアミン、ジn-プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、ジn-ブチルアミン、及びジイソブチルアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種のアミンを用いることができる。これらアルカリ成分をSnO2及びSiO2の合計量に対し約30質量%以下含有させることができる。また、これらは2種以上を混合して含有することができる。アミン(a)を20~3,000ppmの割合で添加することで、ゾル中に溶解したアミンが変性金属酸化物粒子表面に吸着して分散安定性が向上する。+
【0036】
このゾルは、1~9のpHを示し、無色透明乃至僅かにコロイド色を有する液である。そして、室温では3ヶ月以上、60℃でも1ヶ月以上安定であり、このゾル中に沈降物が生成することがなく、また、このゾルが増粘したり、ゲル化を起すようなことはない。
【0037】
このゾルの製造に用いられるスズ酸塩および珪酸塩の例としては、スズ酸ナトリウム(Na2SnO3・3H2O)及び珪酸ナトリウム(水ガラス)が好ましい。また、スズ酸、珪酸等をアルカリ金属水酸化物の水溶液に溶解したものも使用することができる。スズ酸塩、珪酸塩の各粉末を水に溶解させ水溶液を調製する方法や、スズ酸塩水溶液、及び珪酸塩水溶液を混合して水溶液を調製する方法や、スズ酸塩の粉末及び珪酸塩の水溶液を水に添加して水溶液を調製する方法等が挙げられる。スズ酸塩の水溶液としては、SnO2濃度0.1~30質量%程度が好ましいが、これ以上の濃度でも使用可能である。珪酸塩の水溶液としては、SiO2濃度が0.1~30質量%程度が好ましいが、これ以上の濃度でも使用可能である。
【0038】
水溶液の調製は攪拌下に、室温(約20℃)~100℃、好ましくは、室温(約20℃)~60℃位で行うのがよい。混合すべき水溶液は、SiO2/SnO2質量比として0.1~100が好ましい。続いて、ここで得られた水溶液中に存在する陽イオンを除去して水性ゾルが得られる。脱陽イオン処理の方法としては水素型イオン交換体と接触させる方法や塩析により行うことができる。ここで用いられる水素型陽イオン交換体としては、通常用いられるものであり、好都合には市販品の水素型陽イオン交換樹脂を用いることができる。
このゾルは、濃度が低いときには所望に応じ、この水性ゾルを通常の濃縮方法、例えば、蒸発法、限外濾過法等により、ゾルの濃度を高めることができる。特に、限外濾過法は好ましい。この濃縮においても、ゾルの温度は約100℃以下、特に60℃以下に保つことが好ましい。また、その下限は特に限定されるものではないが、10℃以上に保つことが好ましく、20℃以上に保つことがより好ましい。
【0039】
本発明によるアミン含有Sb25コロイド粒子(ii-1)によって表面が被覆された変成された酸化第二スズコロイド粒子(iii-1)はゾル中で負に帯電している。上記の酸化第二スズ粒子(i)は陽に帯電しており、Sb25コロイドは負に帯電している。従って、混合により陽に帯電している酸化第二スズコロイド粒子(i)の周りに負に帯電しているSb25のコロイド(ii-1)が電気的に引き寄せられ、そして陽帯電のコロイド粒子表面上に化学結合によってSb25のコロイドが結合し、この陽帯電の粒子を核としてその表面を負に帯電したSb25が覆ってしまうことによって、変性された酸化第二スズコロイド粒子(iii-1)が生成したものと考えられる。
【0040】
核ゾルとしての平均一次粒子径4~50nmの酸化第二スズコロイド粒子(i)と、被覆ゾルとしてのアミン含有Sb25コロイド(ii-1)とを混合するときに、核ゾルの金属酸化物(SnO2)100質量部に対し、被覆ゾルの金属酸化物が1質量部より少ないと、安定なゾルが得られない。このことは、Sb25のコロイドの量が不足するときには、この複合体のコロイド粒子による酸化第二スズコロイド粒子を核とするその表面の被覆が不充分となり、生成コロイド粒子の凝集が起こり易く、生成ゾルを不安定ならしめるものと考えられる。従って、混合すべきSb25コロイド粒子の量は、酸化第二スズコロイド粒子の全表面を覆う量より少なくてもよいが、安定な変性された酸化第二スズ粒子のゾルを生成せしめるに必要な最小量以上の量である。この表面被覆に用いられる量を越える量のSb25コロイド粒子が上記混合に用いられたときには、得られたゾルは、Sb25コロイドのゾルと、生じた変性された酸化第二スズコロイド粒子のゾルの安定な混合ゾルに過ぎない。
【0041】
上記酸化第二スズコロイド粒子(i)は陽に帯電しており、酸化第二スズとニ酸化珪素の複合体コロイド(ii-2)は負に帯電している。従って、混合によりこの陽に帯電している酸化第二スズコロイド粒子(i)の周りに負に帯電している酸化第二スズとニ酸化珪素の複合体コロイド(ii-2)が電気的に引き寄せられ、そして陽帯電のコロイド粒子表面上に化学結合によって酸化第二スズとニ酸化珪素の複合体コロイドが結合し、この陽帯電の粒子を核としてその表面を負に帯電した酸化第二スズとニ酸化珪素の複合体コロイドが覆ってしまうことによって、変性された酸化第二スズコロイド粒子(iii-2)が生成したものと考えられる。
【0042】
核ゾルとしての平均一次粒子径4~50nmの酸化第二スズコロイド粒子(i)と、被覆ゾルとしての酸化第二スズとニ酸化珪素の複合体コロイド(ii-2)とを混合するときに、核ゾルの金属酸化物(SnO2)100質量部に対し、被覆ゾルの金属酸化物が1質量部より少ないと、安定なゾルが得られない。このことは、酸化第二スズとニ酸化珪素の複合体コロイドの量が不足するときには、この複合体のコロイド粒子による酸化第二スズのコロイド粒子を核とするその表面の被覆が不充分となり、生成コロイド粒子の凝集が起こり易く、生成ゾルを不安定ならしめるものと考えられる。従って、混合すべき酸化第二スズとニ酸化珪素の複合体コロイド粒子の量は、酸化第二スズ又は酸化第二スズ-酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子の全表面を覆う量より少なくてもよいが、安定な変性された酸化第二スズコロイド粒子のゾルを生成せしめるに必要な最小量以上の量である。この表面被覆に用いられる量を越える量の酸化第二スズとニ酸化珪素の複合体コロイド粒子が上記混合に用いられたときには、得られたゾルは、酸化第二スズとニ酸化珪素の複合体コロイドのゾルと、生じた変性された酸化第二スズコロイド粒子のゾルの安定な混合ゾルに過ぎない。
【0043】
好ましくは、酸化第二スズコロイド粒子をその表面被覆によって変性するには、用いられる酸化第二スズとニ酸化珪素の複合体コロイドの量は、核ゾルの金属酸化物(SnO2)100質量部に対し、被覆ゾル中の金属酸化物として50質量部以下がよい。
【0044】
本発明のゾルは下記(A)工程~(D)工程:
(A)工程:水溶解度0.1g/リットル以上のアミン(a)を含有し、4~50nmの平均一次粒子径を有する酸化第二スズ粒子(i)の水性ゾルを準備する工程、
(B)工程:水溶解度0.1g/リットル以上のアミン(a)を含有し、1~10nmの平均一次粒子径を有し且つ酸化アンチモン、酸化第二スズ、及び酸化ケイ素からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属酸化物粒子(ii)の水性ゾルを準備する工程、
(C)工程:(A)工程で得られた酸化第二スズの水性ゾルと、(B)工程で得られた変性金属酸化物の水性ゾルを、(酸化第二スズ以外の金属酸化物の合計質量)/(酸化第二スズの質量)が0.005~1.0の割合で混合し、4~50nmの平均一次粒子径を有する酸化第二スズ粒子(i)を核として、1~10nmの平均一次粒子径を有し且つ酸化アンチモン、酸化第二スズ、及び酸化ケイ素からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属酸化物粒子(ii)で被覆された変性金属酸化物粒子(iii)を製造し、水溶解度0.1g/リットル未満のアミン(b)を添加する工程、
(D)工程:(C)工程で得られた変性金属酸化物粒子(iii)の水性ゾルの水性媒体を炭素原子数1~5のアルコールに溶媒置換する工程、を含む方法で得られる。
【0045】
本発明では(A)工程が4~50nmの平均一次粒子径を有する酸化第二スズ粒子(i)の水性ゾルが、水溶解度0.1g/リットル以上のアミン(a)を添加し、その後に0.1~40MPaの圧力と100~350℃の温度で0.01~100時間の水熱処理を経る(A-1)工程を用いることができる。
【0046】
本発明では(A)工程で得られた酸化第二スズ粒子(i)の水性ゾルと、(B)工程で得られた酸化アンチモン、酸化第二スズ、及び酸化ケイ素からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属酸化物粒子(ii)の水性ゾルの(C)工程での混合は、変性金属酸化物粒子(iii)が(酸化第二スズ以外の金属酸化物の合計質量)/(酸化第二スズの質量)が0.005~1.0、又は0.005~0.5、又は0.01~0.5、又は0.01~0.3、又は0.01~0.2、又は0.04~0.15となる関係で上記混合がされることが好ましい。
【0047】
(C)工程で用いられる水溶解度0.1g/リットル未満のアミン(b)は、水溶解度が0.1g/リットル未満、0.00001g/リットル以上~0.1g/リットル未満、0.00002g/リットル以上~0.1g/リットル未満、0.00003g/リットル以上~0.1g/リットル未満、0.00005g/リットル以上~0.1g/リットル未満、0.0001g/リットル以上~0.1g/リットル未満、0.001g/リットル以上~0.1g/リットル未満、0.01g/リットル以上~0.1g/リットル未満、0.00003g/リットル以上~0.08g/リットル、0.00003g/リットル以上~0.05g/リットル、0.00003g/リットル以上~0.03g/リットルの第3級アミンが挙げられ、例えば、トリn-ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリn-ペンチルアミン、及びトリイソペンチルアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種のアミンを例示することができる。
アミン(a)が変性金属酸化物ゾル中に20~3,000ppm、又は20~1,000ppmの割合で含有することができる。
アミン(b)は変性金属酸化物ゾル中に1,000~30,000ppm、又は1,000~10,000ppmの割合で含有することができる。
【0048】
(C)工程で添加する水溶解度0.1g/リットル未満のアミン(b)は(C)工程の水性ゾル中では変性金属酸化物粒子(iii)の表面に一部が吸着されていると考えられる。その後の(D)工程でゾルの分散媒を水性媒体から有機溶媒に溶媒置換する時に上記アミン(b)が存在していることで有機溶媒との相溶性が向上し変性金属酸化物粒子(iii)は凝集することなく有機溶媒に分散することができる。上記アミン(b)は有機溶媒中では変性金属酸化物粒子(iii)の表面から有機溶媒中に移行される。上記変性金属酸化物粒子(iii)の有機溶媒分散ゾル中ではアミン(a)とアミン(b)が分散媒中から検出することができる。変性金属酸化物粒子(iii)が有機溶媒に十分に分散しゾルが安定に存在することによって、それらを用いたコート剤を基材に塗布し硬化させた際に、基材上で変性金属酸化物粒子が偏在することがないので、高い屈折率と良好な導電性が得られるものである。このような変性金属酸化物粒子の屈折率としては、1.75~2.00の範囲であることが好ましい。
【0049】
上記(D)工程の炭素原子数1~5のアルコールは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0050】
本発明で得られる変性金属酸化物ゾルにおいて、アミン(b)/アミン(a)の質量比が3.0~200、又は3.0~100、又は3.0~60であることが好ましい。
【0051】
本発明では(D)工程の後に(E)工程及び/又は(F)工程:
(E)工程:変性金属酸化物粒子(iii)の有機溶媒ゾルに、式(1)~式(6)からなる群より選ばれた少なくとも1種の被覆剤を添加して変性金属酸化物粒子(iii)の表面処理を行う(E)工程、を追加する工程、
(F)工程:変性金属酸化物粒子(iii)の炭素原子数1~5のアルコール溶媒ゾルのアルコールを、(D)工程で用いた以外のアルコール、ケトン、エステル、エーテル、アミド、炭化水素、シアノ基含有溶媒、ハロゲン含有溶媒、スルホニル基含有溶媒、カルボキシル基含有溶媒、又はそれらの混合溶媒に溶媒置換する工程、を追加することができる。
【0052】
上記(E)工程の被覆剤において、式(1)~式(3)はシランカップリング剤であり、式(4)~式(6)はリン酸エステル系化合物であり、被覆剤としてシランカップリング剤、リン酸エステル系化合物、又はそれらの組み合わせを用いることができる。
例えば、(D)工程の後に(E)工程を行うこと、(D)工程の後に(F)工程を行うこと、(D)工程の後に(E)工程を行いその後に(F)工程を行うこともできる。
【0053】
上記シラン化合物としては式(1)乃至式(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のシラン化合物の加水分解物で被覆することができる。
【0054】
式(1)中、R1はそれぞれアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はポリエーテル基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、ウレイド基、もしくはシアノ基を有する有機基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであって、R2はそれぞれアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、aは1~3の整数を示す。
【0055】
式(2)及び式(3)中、R3及びR5はそれぞれ炭素原子数1~3のアルキル基、又は炭素原子数6~30のアリール基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、R4及びR6はそれぞれアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン基を示し、Yはアルキレン基、NH基、又は酸素原子を示し、bは1~3の整数であり、cは0又は1の整数であり、dは1~3の整数である。
【0056】
上記アルキル基は炭素原子数1~18のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基、1-エチル-2-メチル-n-プロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル-シクロブチル基、2,3-ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル基及び2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
また、アルキレン基は上述のアルキル基から誘導されるアルキレン基を挙げることができる。
【0058】
上記アリール基は炭素原子数6~30のアリール基であり、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ピレニル基等が挙げられる。
【0059】
アルケニル基としては炭素数2~10のアルケニル基であり、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチル-1-エテニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-エチルエテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-n-プロピルエテニル基、1-メチル-1-ブテニル基、1-メチル-2-ブテニル基、1-メチル-3-ブテニル基、2-エチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-3-ブテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-3-ブテニル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基、1-i-プロピルエテニル基、1,2-ジメチル-1-プロペニル基、1,2-ジメチル-2-プロペニル基、1-シクロペンテニル基、2-シクロペンテニル基、3-シクロペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、1-メチル-1-ペンテニル基、1-メチル-2-ペンテニル基、1-メチル-3-ペンテニル基、1-メチル-4-ペンテニル基、1-n-ブチルエテニル基、2-メチル-1-ペンテニル基、2-メチル-2-ペンテニル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
上記アルコキシ基は炭素原子数1~10のアルコキシ基が挙げられ、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチロキシ基、1-メチル-n-ブトキシ基、2-メチル-n-ブトキシ基、3-メチル-n-ブトキシ基、1,1-ジメチル-n-プロポキシ基、1,2-ジメチル-n-プロポキシ基、2,2-ジメチル-n-プロポキシ基、1-エチル-n-プロポキシ基、n-ヘキシロキシ基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
上記アシルオキシ基は炭素原子数2~10のアシルオキシ基は、例えば、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n-プロピルカルボニルオキシ基、i-プロピルカルボニルオキシ基、n-ブチルカルボニルオキシ基、i-ブチルカルボニルオキシ基、s-ブチルカルボニルオキシ基、t-ブチルカルボニルオキシ基、n-ペンチルカルボニルオキシ基、1-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、2-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、3-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1,1-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1,2-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、2,2-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1-エチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、n-ヘキシルカルボニルオキシ基、1-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基、2-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
上記ハロゲン基としてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0063】
ポリエーテル基を有する有機基としては、アルコキシ基を有するポリエーテルプロピル基が挙げられる。例えば、(CH3O)3SiC36(OC24)nOCH3が挙げられる。nは1~100、又は1~10の範囲で用いることができる。
【0064】
エポキシ基を有する有機基は、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、3-グリシドキシプロピル基等が挙げられる。
【0065】
上記(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基とメタクリロイル基の双方をあらわす。(メタ)アクリロイル基を有する有機基は、例えば、3-メタクリロキシプロピル基、3-アクリロキシプロピル基等が挙げられる。
【0066】
メルカプト基を有する有機基は、例えば、3-メルカプトプロピル基が挙げられる。
【0067】
アミノ基を有する有機基は、例えば、2-アミノエチル基、3-アミノプロピル基、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピル基、N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)アミノプロピル基、N-フェニル-3-アミノプロピル基、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピル基等が挙げられる。
【0068】
ウレイド基を有する有機基は、例えば、3-ウレイドプロピル基が挙げられる。
【0069】
シアノ基を有する有機基は、例えば、3-シアノプロピル基が挙げられる。
【0070】
上記式(2)及び式(3)はトリメチルシリル基をシリカ粒子の表面に形成できる化合物が好ましい。それら化合物としては以下に例示することができる。
【0071】
【化3】
【0072】
上記式中、R12はアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基が挙げられる。上記シラン化合物は、例えば、信越化学工業(株)製のシラン化合物を使用することができる。
【0073】
変性金属酸化物粒子(iii)の表面にヒドロキシル基、例えば、シリカ粒子であればシラノール基と上記シラン化合物が反応してシロキサン結合によりシリカ粒子の表面に上記シラン化合物を被覆する工程である。反応温度は20℃からその分散媒の沸点の範囲までの温度で行うことができるが、例えば、20℃~100℃の範囲で行うことができる。反応時間は0.1~6時間程度で行うことができる。
【0074】
上記シラン化合物は、変性金属酸化物粒子(iii)表面の被覆量として、シラン化合物中のケイ素原子の個数が0.1個/nm2~6.0個/nm2の被覆量に相当するシラン化合物を変性金属酸化物粒子(iii)のゾルに添加してシリカ粒子表面の被覆を行うことができる。
【0075】
上記シラン化合物の加水分解には水が必要であるが、水性媒体を有機溶媒に溶媒置換した時に溶媒中に残存する水分を用いることができる。例えば、0.01~1質量%に存在する水分を用いることができる。また、加水分解は触媒を用いて行うことも、触媒なしで行うこともできる。
【0076】
上記リン酸エステル化合物としては、リン酸エステルとしては式(4)乃至式(6)からなる群から選ばれる少なくとも1種のリン酸エステル化合物が挙げられる。
【0077】
式(4)乃至式(6)中、X1、X2、及びX3はそれぞれ炭素原子数2~20のアルキレン基を示し、f、h、及びjはそれぞれ1~100の整数を示し、e、g、及びiはそれぞれ1~3の整数を示し、Y1、Y2、及びY3はそれぞれ水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数2~20のアルケニル基、炭素原子数6~30のアリール基又は(メタ)アクリル基を示す。
【0078】
リン酸エステルとしては、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルを好ましく用いることができ、例えば、上記リン酸エステルは上記式(4)中の末端アルキル基(Y1)が炭素原子数6~10、又は12~15のアルキル基を示すリン酸エステルを用いることができる。これらの製品は、例えば、東邦化学工業(株)製、商品名フォスファノールRA-600、RS-610を用いることができる。
【0079】
炭素原子数2~20のアルキレン基は上述のアルキル基から誘導されるアルキレン基を例示することができ、炭素原子数2~20のアルケニル基、炭素原子数6~30のアリール基は上述の例示を挙げることができる。
【0080】
上記リン酸エステル化合物は変性金属酸化物粒子(iii)表面の被覆量として、リン酸エステル化合物中のリン原子の個数が0.1個/nm2~6.0個/nm2の被覆量に相当するリン酸エステル化合物を変性金属酸化物粒子(iii)のゾルに添加して変性金属酸化物粒子表面の被覆を行うことができる。
【0081】
本発明では(D)工程の後に下記(F)工程を追加することができる。
(F)工程:(D)工程で得られた変性金属酸化物粒子(iii)の炭素原子数1~5のアルコール溶媒ゾルのアルコールを、(D)工程で用いた以外のアルコール、ケトン、エステル、エーテル、アミド、炭化水素、シアノ基含有溶媒、ハロゲン含有溶媒、スルホニル基含有溶媒、カルボキシル基含有溶媒、又はそれらの混合溶媒に溶媒置換する工程
【0082】
(F)工程で用いることができる(D)工程で用いた以外のアルコールとしては、炭素原子数1~20、又は炭素原子数1~10の1価アルコール、又は炭素原子数1~20、又は炭素原子数1~10の多価アルコールであり、1価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソブタノール、n-ペンタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、1-オクタノール、1-ノナノール、1-デカノール、ベンジルアルコール、2-フェノキシエタノール、2-ベンジルオキシエタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール等が挙げられ、多価アルコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール等が挙げられる。
【0083】
ケトンとしては、炭素原子数1~20、又は炭素原子数1~10のケトンとして、脂肪族ケトンが好ましく用いることができる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロペンタノン、イソホロン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、メチル-n-アミルケトン、2-ヘプタノン、アセチルアセトン等が挙げられる。
【0084】
エステルとしては、炭素原子数1~20、又は炭素原子数1~10のエステルとして、脂肪族エステルが好ましく用いることができる。例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、フタル酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、酢酸ヘキシル、酢酸ベンジル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチルマレート、ジエチルフマレート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、トリアセチン、γ-ブチロラクトン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチルセロソルブアセテート、フェニルセロソルブアセテート、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、メチルラクテート、エチルラクテート、メチルヒドロキシアセテート、エチルヒドロキシアセテート、ブチルヒドロキシアセテート、メトキシメチルアセテート、メトキシエチルアセテート、メトキシブチルアセテート、エトキシメチルアセテート、エトキシエチルアセテート、メチル-3-ヒドロキシプロピオネート、エチル-3-ヒドロキシプロピオネート、メチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-メトキシプロピオネート、メチル-3-エトキシプロピオネート、エチル-3-エトキシプロピオネート、メチル-2-ヒドロキシプロピオネート、エチル-2-ヒドロキシプロピオネート、プロピル-2-ヒドロキシプロピオネート、メチル-2-メトキシプロピオネート、エチル-2-メトキシプロピオネート、エチル-2-エトキシプロピオネート、メチル-2-エトキシプロピオネート、メチル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオネート、エチル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオネート、メチル-2-メトキシ-2-メチルプロピオネート、エチル-2-エトキシ-2-メチルプロピオネート、2-ヒドロキシエチルプロピオネート、2-ヒドロキシ-2-メチルエチルプロピオネート、ヒドロキシエチルアセテート、メチル2-ヒドロキシ-3-メチルブタノエート、ピルビン酸エチル、メチルエチルカルビトール、ジエチルカルビトール、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
【0085】
エーテルとしては炭素原子数1~20、又は炭素原子数1~10のエーテルとして、脂肪族エーテルが好ましく用いることができる。例えば、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アニソール、4-メトキシトルエン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、2-(2-イソブトキシエトキシ)エタノール、ベンジルエチルエーテル等が挙げられる。
【0086】
アミドとしては炭素原子数1~20、又は炭素原子数1~10のアミドとして、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、N,N-ジメチルイソブチルアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチルホルムアミド、N-メチルホルムアニリド、N-メチルアセトアミドを挙げることができる。
【0087】
炭化水素としては炭素原子数6~18、又は炭素原子数6~40で且つパラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素、芳香族炭化水素、又はそれらの混合物が挙げられる。n-パラフィンとしては、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン等が挙げられ、i-パラフィンとしては、i-オクタン、i-ノナン、i-デカン等が挙げられ、芳香族炭化水素としては、トルエン、キシレン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、デシルベンゼン等が挙げられる。
【0088】
シアノ基含有溶媒としては、アセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリル等が挙げられる。
【0089】
ハロゲン含有溶媒としては、クロロホルム、クロロベンゼン等が挙げられる。
【0090】
スルホニル基含有溶媒としては、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0091】
カルボキシル基含有溶媒としては、ギ酸、酢酸、アクリル酸、メタクリル酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、乳酸、カプロン酸等が挙げられる。
【0092】
本発明では(D)工程において、変性金属酸化物粒子(iii)の表面をシラン化合物で被覆することができる。
【0093】
本発明では上記変性金属酸化物粒子(iii)有機溶媒ゾルと有機樹脂を含む被膜形成組成物が得られる。
【0094】
有機樹脂は熱硬化性又は光硬化性の樹脂を選択し混合することにより被膜形成組成物が得られる。そしてアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ラジカル発生剤系硬化剤(熱ラジカル発生剤、光ラジカル発生剤)、又は酸発生剤系硬化剤(熱酸発生剤、又は光酸発生剤)等の硬化剤を含み硬化物とすることができる。
【0095】
本組成物は有機樹脂と硬化剤を含む被膜形成組成物を基材に塗布又は充填して加熱、光照射、又はその組み合わせにより硬化物を形成することができる。有機樹脂(硬化性樹脂)は、エポキシ基又は(メタ)アクリロイル基等の官能基を有する樹脂や、イソシアネート系樹脂が挙げられる。例えば、光硬化性多官能アクリレートは好ましく用いることができる。
【0096】
多官能アクリレートとしては分子中に2官能、3官能、4官能、それ以上の官能基を有する多官能アクリレートが挙げられ、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これら多官能アクリレートは以下に記載することもできる。
【0097】
【化4】
【0098】
【化5】
【0099】
【化6】
【0100】
【化7】
【0101】
本発明の被膜形成組成物は界面活性剤(レベリング剤)を含むことができる。
【0102】
界面活性剤(レベリング剤)としてはアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及びシリコーン系界面活性剤を用いることができる。界面活性剤(レベリング剤)は、有機樹脂に対して0.01~5phr、又は0.01~1phrの範囲で添加することが可能である。
【0103】
本発明に用いられるアニオン界面活性剤としては、脂肪酸のナトリウム塩及びカリウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、α-スルホ脂肪酸エステル、α-オレフィンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸エステル塩、及びアルカンスルホン酸塩が挙げられる。
【0104】
例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩は、ナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩が挙げられ、C10~C16アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、C10~C16アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム等がある。
【0105】
高級アルコール硫酸エステル塩は、炭素原子数12のドデシル硫酸ナトリウム(ラウリル硫酸ナトリウム)、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアンモニウム等がある。
【0106】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩は、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンデシルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル硫酸ナトリウム等がある。
α-オレフィンスルホン酸塩は、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム等がある。
【0107】
アルカンスルホン酸塩は、2-エチルヘキシル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0108】
本発明に用いられるカチオン界面活性剤は、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アミン塩系剤があげられル。
【0109】
アルキルトリメチルアンモニウム塩は第4級アンモニウム塩であり、塩素イオンや臭素イオンを対イオンとして有する。例えば、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ヤシアルキルトリメチルアンモニウム、塩化アルキル(C16-18)トリメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0110】
ジアルキルジメチルアンモニウム塩は、親油性となる主鎖を2つ、メチル基を2つ有するものである。ビス(水素化牛脂)ジメチルアンモニウムクロリドが挙げ有れる。例えば、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジヤシアルキルジメチルアンモニウム、塩化ジ硬化牛脂アルキルジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0111】
アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩は、親油性となる主鎖を1つ、メチル基を2つ、ベンジル基を有する第4級アンモニウム塩であり塩化ベンザウコニウムが挙げられる。例えば、塩化アルキル(C8-18)ジメチルベンジルアンモニウムが挙げられる。
【0112】
アミン塩系剤としては、アンモニアの水素原子を1つ以上の炭化水素基で置換したもので、例えば、Nメチルビスヒドロキシエチルアミン脂肪酸エステル塩酸塩が挙げられる。
【0113】
本発明に用いられる両性界面活性剤は、N-アルキル-β-アラニン型のアルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルカルボキシベタイン型のアルキルベタイン、N,N-ジメチルドデシルアミンオキシド型のアルキルアミンオキシドが挙げられる。これらの例示として、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイドが挙げられる。
【0114】
本発明に用いられる非イオン界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミドから選ばれる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレンドデシルエーテル(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシアルキレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン-2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル等が挙げられる。
【0115】
ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルとしては、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル等がある。
【0116】
アルキルグルコシドとしては、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド等がある。
【0117】
ポリオキシエチレン脂肪酸エステルとしては、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールジオレート、ポリプロピレングリコールジオレート等がある。
【0118】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、ソルビタンモノカプリレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノミリステート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート、ソルビタンモノセスキオレート、及びこれらのエチレンオキシド付加物等がある。
【0119】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリイソステアレート等がある。
【0120】
また脂肪酸アルカノールアミドとしては、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、牛脂脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等がある。
【0121】
さらに、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等のポリオキシアルキルエーテル又はポリオキシアルキルグリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油エーテル、ソルビタン脂肪酸エステルアルキルエーテル、アルキルポリグルコシド、ソルビタンモノオレート、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0122】
シリコーン系界面活性剤を用いることができる。シリコーン系界面活性剤は、主鎖にシロキサン結合を含む繰り返し単位を有する化合物である。シリコーン系界面活性剤の重量平均分子量は500~50,000の範囲で用いることができる。これらは変性シリコーン系界面活性剤であってもよく、ポリシロキサンの側鎖及び/又は末端に有機基を導入した構造が挙げられる。有機基としては、アミノ基、エポキシ基、脂環式エポキシ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシル基、脂肪族エステル基、脂肪族アミド基、ポリエーテル基が挙げられる。シリコーン系界面活性剤としては、商品名、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH8400(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)、Silwet l-77、L-7280、L-7001、L-7002、L-7200、L-7210、L-7220、L-7230、L7500、L-7600、L-7602、L-7604、L-7605、L-7622、L-7657、L-8500、L-8610(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、KP-341、KF-6001、KF-6002(以上、信越シリコーン(株)製)、BYK307、BYK323、BYK330(以上、ビックケミー社製)等が挙げられる。例えば、ポリエーテル変性シリコーンとして商品名L-7001(DOWSIL社製)を好適に用いることができる。
【0123】
本発明では上記有機溶媒ゾルと有機樹脂を含む被膜形成組成物が得られる。被膜形成組成物は有機溶媒ゾル中の有機溶媒を除去して、変性金属酸化物粒子(iii)と有機樹脂を含む被膜形成組成物とすることができる。
【0124】
上記被膜形成組成物において熱硬化性被膜形成組成物の場合は、エポキシ基又は(メタ)アクリロイル基等の官能基含有樹脂に対して熱硬化剤を0.01~50phr、又は0.01~10phrの範囲で添加することが可能であり、例えば、エポキシ基又は(メタ)アクリロイル基等の官能基に対して熱硬化剤を0.5~1.5当量、好ましくは0.8~1.2当量の割合で含有することができる。硬化性樹脂に対する熱硬化剤の当量は、官能基に対する熱硬化剤の当量比で示される。
【0125】
熱硬化剤はフェノール樹脂、アミン系硬化剤、ポリアミド樹脂、イミダゾール類、ポリメルカプタン、酸無水物、熱ラジカル発生剤、熱酸発生剤等が挙げられる。特にラジカル発生剤系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤が好ましい。
【0126】
これら熱硬化剤は固体であっても溶剤に溶解することによって使用することはできるが、溶剤の蒸発により硬化物の密度低下や細孔の生成により強度低下、耐水性の低下を生ずるために、硬化剤自体が常温、常圧下で液状のものが好ましい。
【0127】
フェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等が挙げられる。
【0128】
アミン系硬化剤としては、例えば、ピペリジン、N,N-ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N-アミノエチルピペラジン、ジ(1-メチル-2-アミノシクロヘキシル)メタン、メンセンジアミン、イソフオロンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,3-ジアミノメチルシクロヘキサン、キシレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ジエチルトルエンジアミン等が挙げられる。これらの中で液状であるジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N-アミノエチルピペラジン、ジ(1-メチル-2-アミノシクロヘキシル)メタン、メンセンジアミン、イソフオロンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ジエチルトルエンジアミン等は好ましく用いることができる。
【0129】
ポリアミド樹脂としては、ダイマー酸とポリアミンの縮合により生成するもので、分子中に一級アミンと二級アミンを有するポリアミドアミンである。
【0130】
イミダゾール類としては、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、エポキシイミダゾールアダクト等が挙げられる。
【0131】
ポリメルカプタンは、例えば、ポリプロピレングリコール鎖の末端にメルカプタン基が存在するものや、ポリエチレングリコール鎖の末端にメルカプタン基が存在するものであり、液状のものが好ましい。
【0132】
酸無水物系硬化剤としては一分子中に複数のカルボキシル基を有する化合物の無水物が好ましい。これらの酸無水物系硬化剤としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテート、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、クロレンド酸無水物等が挙げられる。
【0133】
熱酸発生剤としてはスルホニウム塩、ホスホニウム塩が挙げられるが、スルホニウム塩が好ましく用いられる。例えば、以下の化合物を例示することができる。
【0134】
【化8】
【0135】
Rは炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~20アリール基が挙げられ、特に炭素数1~12のアルキル基が好ましい。
【0136】
これらの中でも常温、常圧で液状であるメチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(メチルナジック酸無水物、無水メチルハイミック酸)、水素化メチルナジック酸無水物、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸とヘキサヒドロ無水フタル酸の混合物が好ましい。これら液状の酸無水物は粘度が25℃での測定で10~1,000mPa・s程度である。
【0137】
熱ラジカル発生剤は、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、tert-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、過酸化ベンゾイル等が挙げられる。これらは東京化成工業(株)から入手することができる。
【0138】
また、上記硬化物を得る際、適宜、硬化助剤が併用されてもよい。硬化助剤としてはトリフェニルホスフィンやトリブチルホスフィン等の有機リン化合物、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、メチルトリフェニルホスホニウムリン酸ジエチル等の第4級ホスホニウム塩、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデカン-7-エン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデカン-7-エンとオクチル酸の塩、オクチル酸亜鉛、テトラブチルアンモニウムブロミド等の第4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの硬化助剤は、硬化剤1質量部に対して、0.001~0.1質量部の割合で含有することができる。
【0139】
組成物は、樹脂と硬化剤と所望により硬化助剤を混合し熱硬化性ワニスが得られる。これら混合は反応容器中で撹拌羽根やニーダーを用いて行うことができる。混合は加熱混合方法により行われ、60~100℃の温度で0.5~1時間行われる。
【0140】
得られた硬化性被膜形成組成物は熱硬化性コーティング組成物であり、例えば、液状封止材として用いるための適切な粘度を有する。液状の熱硬化性被膜形成組成物は、任意の粘度に調製が可能であり、キャスティング法、ポッティング法、ディスペンサー法、印刷法等によりLED等の透明封止材として用いるために、その任意箇所に部分的封止ができる。液状の熱硬化性組成物を上述の方法で液状のまま直接にLED等に実装した後、乾燥し、硬化することによりエポキシ樹脂硬化体が得られる。
【0141】
熱硬化性被膜形成組成物(熱硬化性コーティング組成物)は基材に塗布し、80~200℃の温度で加熱することにより硬化物が得られる。
【0142】
上記被膜形成組成物において光硬化性樹脂組成物の場合は、エポキシ基又は(メタ)アクリロイル基等の官能基含有樹脂に対して光硬化剤(光ラジカル発生剤、光酸発生剤)を0.01~50phr、又は0.01~10phrの範囲で添加することが可能であり、例えば、エポキシ基又は(メタ)アクリロイル基等の官能基に対して光硬化剤(光ラジカル発生剤、光酸発生剤)を0.5~1.5当量、好ましくは0.8~1.2当量の割合で含有することができる。硬化性樹脂に対する光硬化剤の当量は、官能基に対する光硬化剤の当量比で示される。
【0143】
光ラジカル発生剤は、光照射により直接又は間接的にラジカルを発生するものであれば特に限定されない。
【0144】
光ラジカル発生剤としては、光ラジカル重合開始剤として、例えば、イミダゾール化合物、ジアゾ化合物、ビスイミダゾール化合物、N-アリールグリシン化合物、有機アジド化合物、チタノセン化合物、アルミナート化合物、有機過酸化物、N-アルコキシピリジニウム塩化合物、及びチオキサントン化合物等が挙げられる。アジド化合物としては、p-アジドベンズアルデヒド、p-アジドアセトフェノン、p-アジド安息香酸、p-アジドベンザルアセトフェノン、4,4’-ジアジドカルコン、4,4’-ジアジドジフェニルスルフィド、及び2,6-ビス(4’-アジドベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン等を挙げることができる。ジアゾ化合物としては、1-ジアゾ-2,5-ジエトキシ-4-p-トリルメルカプトベンゼンボロフルオリド、1-ジアゾ-4-N,N-ジメチルアミノベンゼンクロリド、及び1-ジアゾ-4-N,N-ジエチルアミノベンゼンボロフルオリド等を挙げることができる。ビスイミダゾール化合物としては、2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,5,4’,5’-テトラキス(3,4,5-トリメトキシフェニル)1,2’-ビスイミダゾール、及び2,2’-ビス(o-クロロフェニル)4,5,4’,5’-テトラフェニル-1,2’-ビスイミダゾール等を挙げることができる。チタノセン化合物としては、ジシクロペンタジエニル-チタン-ジクロリド、ジシクロペンタジエニル-チタン-ビスフェニル、ジシクロペンタジエニル-チタン-ビス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニル-チタン-ビス(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニル-チタン-ビス(2,4,6-トリフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニル-チタン-ビス(2,6-ジフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニル-チタン-ビス(2,4-ジフルオロフェニル)、ビス(メチルシクロペンタジエニル)-チタン-ビス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)、ビス(メチルシクロペンタジエニル)-チタン-ビス(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)、ビス(メチルシクロペンタジエニル)-チタン-ビス(2,6-ジフルオロフェニル)、及びジシクロペンタジエニル-チタン-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)等を挙げることができる。
【0145】
光ラジカル発生剤としては、また、1,3-ジ(tert-ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラキス(tert-ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3-フェニル-5-イソオキサゾロン、2-メルカプトベンズイミダゾール、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、及び2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン等を挙げることができる。
【0146】
これらの光ラジカル重合剤としては、例えば、BASF社製、商品名Irgacure TPO(成分は2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド)(c1-1-1)、IGM RESINS社製、商品名Omnirad819(成分はビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスピンオキサイド)(c1-1-2)、IGM RESINS社製、商品名Irgacure 184(成分は1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)(c1-1-3)として入手することができる。
【0147】
【化9】
【0148】
光酸発生剤は、光照射により直接又は間接的に酸を発生するものであれば特に限定されない。光酸発生剤の具体例としては、トリアジン系化合物、アセトフェノン誘導体化合物、ジスルホン系化合物、ジアゾメタン系化合物、スルホン酸誘導体化合物、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、セレニウム塩等のオニウム塩、メタロセン錯体、鉄アレーン錯体等を用いることができる。
【0149】
上記光酸発生剤として用いるオニウム塩は、ヨードニウム塩として、例えば、ジフェニルヨードニウムクロライド、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムメシレート、ジフェニルヨードニウムトシレート、ジフェニルヨードニウムブロミド、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムメシレート、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトシレート、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムクロリド、ビス(p-クロロフェニル)ヨードニウムクロライド、ビス(p-クロロフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、更にビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等のビス(アルキルフェニル)ヨードニウム塩、アルコキシカルボニルアルコキシ-トリアルキルアリールヨードニウム塩(例えば、4-[(1-エトキシカルボニル-エトキシ)フェニル]-(2,4,6-トリメチルフェニル)-ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等)、ビス(アルコキシアリール)ヨードニウム塩(例えば、(4-メトキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等のビス(アルコキシフェニル)ヨードニウム塩)が挙げられる。
【0150】
スルホニウム塩としては、トリフェニルスルホニウムクロリド、トリフェニルスルホニウムブロミド、トリ(p-メトキシフェニル)スルホニウムテトラフルオロボレート、トリ(p-メトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリ(p-エトキシフェニル)スルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムトリフレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等のトリフェニルスルホニウム塩や、(4-フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4-フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド-ビス-ヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド-ビス-ヘキサフルオロホスフェート、(4-メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート)等のスルホニウム塩が挙げられる。
【0151】
ホスホニウム塩としては、トリフェニルホスホニウムクロリド、トリフェニルホスホニウムブロミド、トリ(p-メトキシフェニル)ホスホニウムテトラフルオロボレート、トリ(p-メトキシフェニル)ホスホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリ(p-エトキシフェニル)ホスホニウムテトラフルオロボレート、4-クロロベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンジルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート等のホスホニウム塩が挙げられる。
【0152】
トリフェニルセレニウムヘキサフルオロホスフェート等のセレニウム塩、(η5又はη6-イソプロピルベンゼン)(η5-シクロペンタジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート等のメタロセン錯体が挙げられる。
【0153】
また、光酸発生剤としては以下の化合物も用いることができる。
【0154】
【化10】
【0155】
【化11】
【0156】
【化12】
【0157】
【化13】
【0158】
【化14】
【0159】
【化15】
【0160】
【化16】
【0161】
【化17】
【0162】
【化18】
【0163】
光酸発生剤としてはスルホニウム塩化合物、ヨードニウム塩化合物が好ましい。それらのアニオン種としてはCF3SO3 -、C49SO3 -、C817SO3 -、カンファースルホン酸アニオン、トシル酸アニオン、BF4 -、PF6 -、AsF6 -及びSbF6 -等が挙げられる。特に強酸性を示す六フッ化リン及び六フッ化アンチモン等のアニオン種が好ましい。
【0164】
本発明の被膜形成組成物は必要に応じて慣用の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、顔料、着色剤、増粘剤、増感剤、消泡剤、塗布性改良剤、潤滑剤、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、耐光安定剤等)、可塑剤、溶解促進剤、充填剤、帯電防止剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0165】
本発明の被膜形成組成物の塗布方法としては、例えば、フローコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、スクリーン印刷法、キャスト法、バーコーティング法、カーテンコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、ディッピング法、スリット法等を挙げることができる。
【0166】
本発明では光コーティング組成物(被膜形成組成物)を基板上に塗布し光照射により硬化することができる。また光照射の前後に加熱することもできる。
【0167】
塗膜の厚みは、硬化物の用途によって応じて、0.01μm~10mm程度の範囲から選択でき、例えばフォトレジストに用いる場合は0.05~10μm(特に0.1~5μm)程度とすることができ、プリント配線基板に用いる場合は5μm~5mm(特に100μm~1mm)程度とすることができ、光学薄膜に用いる場合は0.1~100μm(特に0.3~50μm)程度とすることができる。
【0168】
透明性被膜を得る場合に、被膜の可視光線透過率が80%以上、又は90%以上、典型的には90~96%とすることができる。
【0169】
光酸発生剤を用いる場合の照射又は露光する光は、例えば、ガンマー線、X線、紫外線、可視光線等であってもよく、通常、可視光又は紫外線、特に紫外線である場合が多い。光の波長は、例えば、150~800nm、好ましくは150~600nm、さらに好ましくは150~400nm程度である。照射光量は、塗膜の厚みにより異なるが、例えば、2~20,000mJ/cm2、好ましくは5~5,000mJ/cm2程度とすることができる。光源としては、露光する光線の種類に応じて選択でき、例えば、紫外線の場合は低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、重水素ランプ、ハロゲンランプ、レーザー光(ヘリウム-カドミウムレーザー、エキシマレーザー等)等を用いることができる。このような光照射により、上記組成物の硬化反応が進行する。
【0170】
熱酸発生剤を用いる場合や、光酸発生剤を用い光照射後に必要により行われる塗膜の加熱は、例えば、60~350℃、好ましくは100~300℃程度で行われる。加熱時間は、3秒以上(例えば、3秒~5時間程度)の範囲から選択でき、例えば、5秒~2時間、好ましくは20秒~30分程度で行うことができ、通常は1分~3時間(例えば、5分~2.5時間)程度で行うことができる。
【0171】
さらに、パターンや画像を形成する場合(例えば、プリント配線基板等を製造する場合)、基材上に形成した塗膜をパターン露光してもよく、このパターン露光は、レーザー光の走査により行ってもよく、フォトマスクを介して光照射することにより行ってもよい。このようなパターン露光により生成した非照射領域(未露光部)を現像剤で現像(又は溶解)することによりパターン又は画像を形成できる。
【0172】
現像液としてはアルカリ水溶液や有機溶剤を用いることができる。
【0173】
アルカリ水溶液としては水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物の水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、コリン等の水酸化四級アンモニウムの水溶液、エタノールアミン、プロピルアミン、エチレンジアミン等のアミン水溶液を挙げることができる。
【0174】
上記アルカリ現像液は10質量%以下の水溶液であることが一般的で、好ましくは0.1~3.0質量%の水溶液等が用いられる。さらに上記現像液にアルコール類や界面活性剤を添加して使用することもでき、これらはそれぞれ、現像液100質量部に対して、好ましくは0.05~10質量部である。
【0175】
この中で、水酸化テトラメチルアンモニウム0.1~2.38質量%水溶液を用いることができる。
【0176】
また、現像液としての有機溶剤は一般的な有機溶剤を用いることが可能であり、例えば、アセトン、アセトニトリル、トルエン、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテートプロピレングリコールブチルエーテルアセテート、乳酸エチル、シクロヘキサノン等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。特にプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等は好ましく使用することができる。
【0177】
本発明では現像後の基板との密着性を向上させる目的で、密着促進剤を添加することができる。これらの密着促進剤はトリメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルジフエニルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン等のクロロシラン類、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジフエニルジメトキシシラン、フエニルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン、N,N’-ビス(トリメチルシリル)ウレア、ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール等のシラザン類、ビニルトリクロロシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-(N-ピペリジニル)プロピルトリメトキシシラン等のシラン類、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、イミダゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、ウラゾール、チオウラシル、メルカプトイミダゾール、メルカプトピリミジン等の複素環状化合物や、1,1-ジメチルウレア、1,3-ジメチルウレア等の尿素、又はチオ尿素化合物を挙げることができる。上記密着促進剤のうち1種又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらの密着促進剤の添加量は固形分中で、通常18質量%以下、好ましくは0.0008~9質量%、より好ましくは0.04~9質量%である。
【0178】
本発明では増感剤を含んでいてもよい。使用できる増感剤としては、アントラセン、フェノチアゼン、ぺリレン、チオキサントン、ベンゾフェノンチオキサントン等が挙げられる。更に、増感色素としては、チオピリリウム塩系色素、メロシアニン系色素、キノリン系色素、スチリルキノリン系色素、ケトクマリン系色素、チオキサンテン系色素、キサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム塩系色素等が例示される。特に好ましいのは、アントラセン系の増感剤であり、カチオン硬化触媒(感放射性カチオン重合開始剤)と併用することにより、感度が飛躍的に向上すると共に、ラジカル重合開始機能も有しており、本発明のカチオン硬化システムとラジカル硬化システムを併用するハイブリッドタイプでは、触媒種をシンプルにできる。具体的なアントラセンの化合物としては、ジブトキシアントラセン、ジプロポキシアントラキノン等が有効である。増感剤の添加量は固形分中で、0.01~20質量%、好ましくは0.01~10質量%の割合で使用される。
【0179】
本発明の組成物を光ラジカル発生剤、熱ラジカル発生剤、光酸発生剤又は熱酸発生剤を用い光硬化又は熱硬化させることが可能である。光酸発生剤又は熱酸発生剤を用いる場合は、例えば、通常用いられるエポキシの硬化剤(例えば、アミンや酸無水物)を用いないか又はそれらを用いたとしても極端にそれらの含有量が少ないため、本組成物の保存安定性が良くなる。
【0180】
上記組成物は光カチオン重合性に適用することを見出した。従来品の液状エポキシ化合物(例えば、エポキシシクロヘキシル環を有する脂環式エポキシ化合物)よりも高い硬化速度を有する。硬化速度が速いため酸発生剤添加量の低減や、弱酸系酸発生剤の使用も可能である。酸発生剤の低減はUV照射後も酸活性種が残存することがあり金属腐食防止の上で重要である。硬化速度が速いため厚膜硬化が可能である。
【0181】
UV照射による硬化は熱に弱い材料(機材)に適用できる。
本発明では上記変性金属酸化物ゾル中の変性金属酸化物粒子(iii)を含み帯電防止用組成物を製造することができる。
また、本発明では上記変性金属酸化物ゾル中の変性金属酸化物粒子(iii)を含む電子輸送材用組成物を製造することができる。
バインダー成分となる樹脂ワニスに対して上記変性金属酸化物ゾルに由来する変性金属酸化物粒子(iii)の配合量を300phrとしたコート剤を、基板上に乾燥後の被膜が1.0μmの膜厚になる様に塗布した時に1,000Vの電圧を印加して10~500ギガΩ/□の表面抵抗値を示す。
【実施例
【0182】
ゾル(分散液)の諸物性は、以下の測定方法により求めた。
【0183】
〔平均一次粒子径〕
透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製 商品名JEM-F200)を用いて粒子を撮影し、任意の粒子500個の円相当の一次粒子径の平均値を、平均一次粒子径とした。
【0184】
〔動的光散乱による平均粒子径(動的光散乱法粒子径)〕
ゾルを分散溶媒で希釈し、溶媒のパラメーターを用いて、動的光散乱法測定装置:Malvern Instruments Ltd製、商品名ゼータ-サイザーで測定した。
【0185】
〔安定性〕
分散液を50℃、1週間の条件下で保存した後、保存試験の前に比べて動的光散乱法(DLS)粒子径が1.2倍未満のサンプルは変化しないものとして「○」、保存試験の前に比べて動的光散乱法(DLS)粒子径が1.2倍以上に変化したものを「×」とした。
【0186】
〔アミン量の測定〕
実施例および比較例で得られたゾル中のアミン量について、以下の1)~3)の手順で測定した。
1)検量線用の標準試料の調製
イソプロピルアミン及びジイソプロピルアミンの濃度がそれぞれ10ppm、100ppm、1000ppmとなるように3mM硝酸で希釈することで、イソプロピルアミン及びジイソプロピルアミンの標準試料を調製した。
トリ-n-ペンチルアミン濃度が100ppm、1,000ppm、1質量%となるように、20質量%のアセトニトリルを含む3mM硝酸で希釈することで、トリ-n-ペンチルアミンの標準試料を調製した。
2)実施例および比較例で得られたゾル中のアミン量を定量するための試料の調製
実施例および比較例で得られたゾルを、コロイド粒子の濃度が3質量%となるように純水で希釈した。希釈後のゾル8.5gに1M硝酸を0.2mL添加した後、室温で24時間静置することで、粒子表面に吸着しているアミンを粒子表面から引き剥がした。次いで、得られた溶液を分画分子量10,000Daの遠心式限外ろ過フィルタユニットを用いて遠心分離することで、ろ液を回収した。回収したろ液を純水で10倍希釈することで、実施例および比較例で得られたゾル中のアミン量を定量するための試料を調製した。
3)実施例および比較例で得られたゾル中のアミン量の算出
イオンクロマトグラフ装置(メトロームジャパン(株)製、Metrohm Compact IC 761)を用いて、1)及び2)で調製した試料を測定した。1)で調製したイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、及びトリ-n-ペンチルアミンの標準試料のピーク積分強度を、それぞれのアミン濃度に対してプロットすることで検量線を作成した。作成した検量線を用いて、2)で調製した試料中に含まれるアミン量を算出した。
【0187】
〔結晶化度の測定〕
実施例および比較例で得られたゾル中の変性金属酸化物粒子の結晶化度について、以下の1)~3)の手順で測定した。
1)実施例および比較例で得られたゾル中の変性金属酸化物粒子のX線回折測定
実施例で得られた変性金属酸化物粒子が分散したゾルを60℃で1時間真空乾燥した。得られた乾燥粉末を乳鉢に入れ、乳棒で粉砕した。粉砕した粒子を、タングステン粉末(富士フイルム和光純薬(株)製、タングステンとして99.9質量%以上含有)と50:50の質量比で混合した。X線回折装置((株)リガク製、商品名MiniFlex600)を用いて、混合した粉末のX線回折を測定した。
2)酸化スズ(IV)標準試料のX線回折測定
酸化スズ(IV)粉末(関東化学(株)製、SnO2として99.0質量%以上含有)とタングステン粉末(富士フイルム和光純薬(株)製、タングステンとして99.9質量%以上含有)と50:50の質量比で混合した。X線回折装置((株)リガク製、商品名MiniFlex600)を用いて、混合した粉末のX線回折を測定した。
3)結晶化度の算出
1)で測定した変性金属酸化物粒子に含まれる酸化スズ(IV)(110)、(101)、(200)、(211)及び(220)のピーク積分強度の総和AS1、及びタングステン(110)ピーク積分強度AW1を算出した。次いで、2)で測定した、酸化スズ(IV)(110)、(101)、(200)、(211)及び(220)のピーク積分強度の総和AS2、及びタングステン(110)ピーク積分強度AW2を算出した。以下の計算式から、実施例および比較例で得られた変性金属酸化物粒子の結晶化度を算出した。
結晶化度=(AS1/AW1)/(AS2/AW2
【0188】
〔屈折率の測定〕
実施例および比較例で得られたゾル中の変性金属酸化物の屈折率について、以下の1)~3)の手順で測定した。
1)変性金属酸化物メタノール分散ゾル配合ワニスの調製
3-グリシドキシプロピルトリメトシキシシラン(モメンティブ社製、商品名SILQUEST A-187T)20.00gをポリ容器に秤量し、ここにメタノール18.57g、0.01N塩酸水溶液4.57gを添加し、室温で5時間撹拌した。予め調製した2,4-ペンタンジオン酸アルミニウム(Al(acac)3)のメタノール溶液(10質量%Al(acac)3)6.00gを硬化剤として添加し、10分間撹拌することで、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランの部分加水分解物(濃度:43質量%)を調製した。
全量で25.00g、最終的な溶媒組成が質量比で水/水以外の溶媒の合計=1/4、メタノール分散ゾル中の変性金属酸化物の配合量が50phr、100phr、150phrとなるように、調製した3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランの部分加水分解物、変性金属酸化物分散ゾル、水、メタノール、レベリング剤(DOWSIL商品名 L-7604)のメタノール溶液(10質量%L-7604)0.25gを褐色瓶に秤量し、室温で30分間撹拌することで、変性金属酸化物メタノール分散ゾル配合ワニス(固形分濃度は10.0質量%、変性金属酸化物の配合量:50phr、100phr、150phr)を調製した。
2)粒子配合膜の調製
1)で得られた変性金属酸化物メタノール分散ゾル配合ワニスをUV-O3処理したSi基板上に約0.5mL滴下し、スピンコーター(ミカサ(株)製、商品名Opticoat MS-B100)を用いて、塗布後の膜厚が1.0μmとなるように塗布した。その後、ホットプレート上で80℃で5分間ベークし、オーブン内で120℃で1時間熱処理することで粒子配合膜(粒子の配合量:50phr、100phr、150phr)を調製した。
3)粒子配合膜の屈折率測定、粒子の屈折率算出
2)で得られた粒子配合膜(粒子の配合量:50phr、100phr、150phr)の屈折率を、エリプソメーター(ジェー・エー・ウーラム・ジャパン(株)製 商品名多入射角分光エリプソメーター VASE)で測定した。別途3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランの部分加水分解物のみで同様に調製した粒子を含まない膜の屈折率も測定した。測定した配合膜の屈折率を、粒子の配合量に対してプロットし、粒子の配合量が100質量%となるように外挿することで粒子の屈折率を求めた。
【0189】
〔比抵抗値の測定〕
実施例および比較例で得られた粒子を配合した膜の比抵抗値について、以下の1)~3)の手順で測定した。
1)変性金属酸化物分散ゾル配合ワニスの調製
3-グリシドキシプロピルトリメトシキシシラン(モメンティブ社製、商品名SILQUEST A-187T)37.50gをポリ容器に秤量し、ここに0.01N塩酸水溶液8.57gを添加し、室温で24時間撹拌した。得られた溶液を4.61gポリ容器に秤量し、2,4-ペンタンジオン酸アルミニウム(Al(acac)3)0.23gを硬化剤として添加し、レベリング剤(DOWSIL商品名 L-7604)のメタノール溶液(10質量%L-7604)0.50gを添加した。次いで、最終的な溶媒組成が質量比で水/水以外の溶媒の合計=1/4、変性金属酸化物の配合量が300phrとなるように、実施例および比較例で得られた変性金属酸化物分散ゾル、水、およびメタノールを添加し、室温で24時間撹拌することで、変性金属酸化物分散ゾル配合ワニス(固形分濃度は15.0質量%、変性金属酸化物の配合量300phr)を調製した。
2)粒子配合膜の調製
1)で得られた変性金属酸化物分散ゾル配合ワニスをUV-O3処理した石英基板上に約1mL滴下し、卓上型ワイヤーバーコーター((株)エムエステー製、商品名PM-9050MC)を用いて、乾燥後の膜厚が1.0μmとなるように塗布した。その後、ホットプレート上で80℃で15分間ベークし、オーブン内で120℃で2時間熱処理することで粒子配合膜を調製した。
3)粒子配合膜の比抵抗値測定
2)で得られた粒子配合膜(粒子の配合量:300phr)の表面抵抗値を、電圧1,000V、時間10秒の条件にて、抵抗率計(三菱ケミカル(株)製 商品名Hiresta-UP MCP-HT450)で測定した。単位はΩ/□(オームパースクエア)で示した。
【0190】
〔酸化第二スズ及びそれ以外の金属酸化物の定性及び定量〕
実施例および比較例で得られた粒子を配合中に含まれる酸化第二スズ及びそれ以外の金属酸化物の定性及び定量について、以下の1)~3)の手順で測定した。
1)標準試料の蛍光X線分析
酸化スズ(IV)粉末(関東化学(株)製、SnO2として99.0質量%以上含有)、酸化アンチモン(V)粉末(Sigma-Aldrich、Sb25として99.9質量%以上含有)、及びシリカ粉末(日産化学(株)製、商品名ST-XSを60℃で1時間真空乾燥した後、得られた乾燥粉末を乳鉢に入れ、乳棒で粉砕したもの)を、質量比でSnO2/Sb25/SiO2=1/1/1となるように混合した。得られた粉末を、蛍光X線分析装置((株)リガク製、商品名Supermini200)を用いて測定した。酸化スズ(IV)に由来するピーク積分強度ASn1、酸化アンチモン(V)に由来するピーク積分強度ASb1、及びシリカに由来するピーク積分強度ASi1を算出した。
2)実施例および比較例で得られたゾル中の変性金属酸化物の蛍光X線分析
実施例および比較例で得られた変性金属酸化物が分散したゾルを60℃で1時間真空乾燥した。得られた乾燥粉末を乳鉢に入れ、乳棒で粉砕した。粉砕した粒子を、蛍光X線分析装置((株)リガク製、商品名Supermini200)を用いて測定した。
3)酸化第二スズ及びそれ以外の金属酸化物の定性及び定量
2)で測定した蛍光X線のピーク波長が、1)で測定した標準試料のピーク波長と同一であった場合、そのピーク波長に由来する金属酸化物が含まれていると判断した。次いで、2)で測定した蛍光X線の酸化スズ(IV)に由来するピーク積分強度ASn2、酸化アンチモン(V)に由来するピーク積分強度ASb2、及びシリカに由来するピーク積分強度ASi2を算出した。以下の計算式から、実施例および比較例で得られた変性金属酸化物に含まれる酸化第二スズ及びそれ以外の金属酸化物を定量した。
酸化第二スズ含有量=(ASn2/ASn1)/ATOTAL
酸化アンチモン(V)含有量=(ASb2/ASb1)/ATOTAL
シリカ含有量=(ASi2/ASi1)/ATOTAL
ここで、ATOTAL=(ASn2/ASn1)+(ASb2/ASb1)+(ASi2/ASi1
【0191】
(参考例1)核となる酸化第二スズ複合酸化物コロイド粒子(i)の調製
しゅう酸((COOH)2・2H2O)37.5kgを純水363kgに溶解し、これを攪拌下70℃まで加温し、35%過酸化水素水170kgと金属スズ75kgを添加した。過酸化水素水と金属スズの添加は交代に行った。初めに35%過酸化水素水10kgを、次いで、金属スズ5kgを添加した。反応が終了するのを待って(5~10分)、この操作を繰り返した。全量添加後、更に35%過酸化水素水10kgを追加した。添加に要した時間は3時間で、添加終了後、更に95℃で1時間加熱し、反応を終了させた。
得られたゾル629kgに35%過酸化水素水231kg、純水52kgを添加し、SnO2として10質量%、仕込み時のしゅう酸に対してH22/(COOH)2モル比8.0になるように希釈し、95℃で5時間熟成を行った。この操作により含有するしゅう酸を過酸化水素との反応により炭酸ガスと水に分解させた。得られた酸化第二スズスラリーを約40℃まで冷却後、イソプロピルアミン(水溶解度1,000g/L、Chemical Bookに記載のデータより引用した。これは以下のURLのWebサイトを参照できる。https://www.chemicalbook.com/ProductList_En.aspx?kwd=isopropylamine)を2.7kg添加、解膠した後、白金系触媒(N-220(ズードケミー触媒(株)製))を約15L充填した触媒塔に通液、循環し、過剰な過酸化水素の分解処理を行った。通液速度は約30L/min.で5時間、循環を行い、更に陰イオン交換樹脂を充填したカラムに通液した後、限外濾過膜法で濃縮した。得られたゾルは酸化第二スズコロイド粒子(i)の水分散ゾルであり、pH11.0、SnO2濃度10.0質量%、透過型電子顕微鏡による観察で一次粒子径は10~15nmであった。
【0192】
(参考例2)被覆物となる二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物コロイド粒子(ii―2)の調製
JIS3号珪酸ナトリウム(SiO2換算で29.8質量%含有)77.2gを純水668.8gに溶解し、次いで、スズ酸ナトリウムNaSnO3・H2O(SnO2換算で55.1質量%含有)20.9gを溶解した。得られた水溶液を水素型陽イオン交換樹脂が充填したカラムに通液した。次いで、得られた水分散ゾルにジイソプロピルアミン(水溶解度100g/L、Chemical Bookに記載のデータより引用した。これは以下のURLのWebサイトを参照できる。https://www.chemicalbook.com/ProductList_En.aspx?kwd=108-18-9)を7.2g添加した。得られたゾルは二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物コロイド粒子(ii-2)の水分散ゾルであり、pH8.0、全金属酸化物濃度(SnO2、及びSnO2)2.5質量%、透過型電子顕微鏡による観察で一次粒子径は1~4nmであった。
【0193】
(参考例3)被覆物となる五酸化アンチモンコロイド粒子(ii-1)の調製
100Lのベッセルに三酸化アンチモン(Sb23として99.5質量%含有)を12.5kg、純水66.0kgおよび水酸化カリウム(KOHとして95質量%含有)12.5kgを添加し、攪拌下で、35%過酸化水素を8.4kg徐々に添加した。得られたアンチモン酸カリウムの水溶液17.6kgを2.2質量%に希釈し、水素型陽イオン交換樹脂を充填したカラムに通液した。イオン交換後のアンチモン酸の溶液にジイソプロピルアミンを攪拌下で0.25kg添加した。得られたゾルは五酸化アンチモンコロイド粒子(ii-1)の水分散ゾルであり、pH10.8、Sb25濃度1.5質量%、透過型電子顕微鏡による観察で一次粒子径は1~10nmであった。
【0194】
(製造例1)二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-2-1)の調製
参考例1で調製したアルカリ性の酸化第二スズコロイド粒子(i)の水分散ゾルを処理温度310℃、処理圧力20MPa、平均流速0.6L/minで連続的に水熱処理を行った。次いで、攪拌下で、得られたアルカリ性の酸化第二スズコロイド粒子の水分散ゾル1,000g(SnO2として100g)に、参考例2で調製した二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物コロイド粒子(ii-2)の水分散ゾル400g(全金属酸化物濃度(SnO2、及びSnO2)として10g、核粒子に対して10質量%)を添加した後、95℃で2時間熟成し、二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-2-1)の水分散ゾルを得た。次いで、得られた水分散ゾルを、水素型陽イオン交換樹脂を充填したカラムに通液した。得られた水分散ゾルに、トリ-n-ペンチルアミン(水溶解度0.02g/L、Ambeed社のホームページに記載のデータより引用した。これは以下のURLのWebサイトを参照できる。https://www.ambeed.com/products/621-77-2.html)3.5gを添加し、限外濾過膜法で濃縮した。得られたゾルは二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-2-1)の水分散ゾルであり、pH5.5、全金属酸化物(SnO2、及びSiO2)濃度30.5質量%、動的光散乱法(DLS)による平均粒子径(動的光散乱法粒子径)19nm、(酸化第二スズ以外の金属酸化物の合計質量)/(酸化第二スズの質量)=0.065であった。
【0195】
(製造例2)二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-2-2)の調製
製造例1において、二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物コロイド粒子の水分散ゾルの添加量を800g(全金属酸化物濃度(SnO2、及びSnO2)として20g、核粒子に対して20質量%)に変更した以外は、製造例1と同様にゾルを作製した。得られたゾルは二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-2-2)の水分散ゾルであり、pH5.5、全金属酸化物(SnO2、及びSiO2)濃度30.5質量%、動的光散乱法(DLS)による平均粒子径(動的光散乱法粒子径)25nm、(酸化第二スズ以外の金属酸化物の合計質量)/(酸化第二スズの質量)=0.125であった。
【0196】
(製造例3)五酸化アンチモンコロイド粒子で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-1-1)の調製
参考例1で調製したアルカリ性の酸化第二スズコロイド粒子(i)の水分散ゾルを処理温度310℃、処理圧力20MPa、平均流速0.6L/minで連続的に水熱処理を行った。次いで、攪拌下で、得られたアルカリ性の酸化第二スズコロイド粒子の水分散ゾル1,200g(SnO2として120g)に、参考例3で調製した五酸化アンチモンコロイド粒子(ii-1)の水分散ゾル400g(Sb25として6.0g、核粒子に対して5.0質量%)を添加した後、95℃で2時間熟成し、五酸化アンチモンコロイド粒子で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-1-1)の水分散ゾルを得た。次いで、得られた水分散ゾルを、水素型陽イオン交換樹脂を充填したカラムに通液した。得られた水分散ゾルに、トリ-n-ペンチルアミン3.8gを添加し、限外濾過膜法で濃縮した。得られたゾルは五酸化アンチモンコロイド粒子で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-1-1)の水分散ゾルであり、pH4.2、全金属酸化物(SnO2、及びSb25)濃度20.5質量%、動的光散乱法(DLS)による平均粒子径(動的光散乱法粒子径)20nm、(酸化第二スズ以外の金属酸化物の合計質量)/(酸化第二スズの質量)=0.05であった。
【0197】
(製造例4)二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-2-3)の調製
製造例1において、水熱処理温度を240℃に、処理圧力を7.0MPaに変更した以外は、製造例1と同様にゾルを作製した。得られたゾルは二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-2-3)の水分散ゾルであり、pH5.5、全金属酸化物(SnO2、及びSiO2)濃度30.5質量%、動的光散乱法(DLS)による平均粒子径(動的光散乱法粒子径)23nm、(酸化第二スズ以外の金属酸化物の合計質量)/(酸化第二スズの質量)=0.125であった。
【0198】
(製造例5)二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-2-4)の調製
製造例1において、水熱処理温度を150℃に、処理圧力を1.0MPaに変更した以外は、製造例1と同様にゾルを作製した。得られたゾルは二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-2-4)の水分散ゾルであり、pH5.5、全金属酸化物(SnO2、及びSiO2)濃度30.5質量%、動的光散乱法(DLS)による平均粒子径(動的光散乱法粒子径)21nm、(酸化第二スズ以外の金属酸化物の合計質量)/(酸化第二スズの質量)=0.125であった。
【0199】
(製造例6)二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-2-5)の調製
製造例1において、水熱処理を行わない以外は、製造例1と同様にゾルを作製した。得られたゾルは二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-2-5)の水分散ゾルであり、pH5.5、全金属酸化物(SnO2、及びSiO2)濃度30.5質量%、動的光散乱法(DLS)による平均粒子径(動的光散乱法粒子径)20nm、(酸化第二スズ以外の金属酸化物の合計質量)/(酸化第二スズの質量)=0.125であった。
【0200】
(比較製造例1)二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-3)の調製
製造例1において、トリ-n-ペンチルアミンを添加しない以外は、製造例1と同様にゾルを作製した。得られたゾルは二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-3)の水分散ゾルであり、pH4.2、全金属酸化物(SnO2、及びSiO2)濃度20.5質量%、動的光散乱法(DLS)による平均粒子径(動的光散乱法粒子径)28nm、(酸化第二スズ以外の金属酸化物の合計質量)/(酸化第二スズの質量)=0.125であった。
【0201】
(実施例1)
製造例1で得られた二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-2-1)の水分散ゾル100gを、ロータリーエバポレーターを用いてメタノールに置換して、二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-2-1)のメタノール分散ゾルを得た。得られたゾルは、pH4.7(メタノールと同質量の水で希釈)、全金属酸化物(SnO2、及びSiO2)濃度20.5質量%、動的光散乱法(DLS)による平均粒子径(動的光散乱法粒子径)16nm、ゾルの安定性試験結果は「〇」、粒子(iii-2-1)のメタノール分散ゾルに残存するトリ-n-ペンチルアミンは3,900ppm、ジイソプロピルアミンは180ppm、イソプロピルアミンは24ppm、核粒子(i)の結晶化度は92%、粒子(iii-2-1)の屈折率は1.91、粒子(iii-2-1)配合塗膜の比抵抗値は1.1×1011Ω/□であった。アミン(b)/アミン(a)の質量比が19.1であった。
【0202】
(実施例2)
製造例2で得られた二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-2-2)の水分散ゾル100gを、ロータリーエバポレーターを用いてメタノールに置換して、二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-2-2)のメタノール分散ゾルを得た。得られたゾルは、pH4.8(メタノールと同質量の水で希釈)、全金属酸化物(SnO2、及びSiO2)濃度20.5質量%、動的光散乱法(DLS)による平均粒子径(動的光散乱法粒子径)21nm、ゾルの安定性試験結果は「〇」、粒子(iii-2-2)のメタノール分散ゾルに残存するトリ-n-ペンチルアミンは4,200ppm、ジイソプロピルアミンは190ppm、イソプロピルアミンは22ppm、核粒子(i)の結晶化度は91%、粒子(iii-2-2)の屈折率は1.87、粒子(iii-2―2)配合塗膜の比抵抗値は1.9×1011Ω/□であった。アミン(b)/アミン(a)の質量比が19.8であった。
【0203】
(実施例3)
製造例3で得られた二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-1-1)の水分散ゾル100gを、ロータリーエバポレーターを用いてメタノールに置換して、二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-1-1)のメタノール分散ゾルを得た。得られたゾルは、pH5.2(メタノールと同質量の水で希釈)、全金属酸化物(SnO2、及びSb25)濃度30.5質量%、動的光散乱法(DLS)による平均粒子径(動的光散乱法粒子径)16nm、ゾルの安定性試験結果は「〇」、粒子(iii-1-1)のメタノール分散ゾルに残存するトリ-n-ペンチルアミンは1500ppm、ジイソプロピルアミンは40ppm、核粒子(i)の結晶化度は92%、粒子(iii-1-1)の屈折率は1.93、粒子(iii-1-1)配合塗膜の比抵抗値は6.1×1010Ω/□であった。アミン(b)/アミン(a)の質量比が37.5であった。
【0204】
(実施例4)
製造例4で得られた二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-2-3)の水分散ゾル100gを、ロータリーエバポレーターを用いてメタノールに置換して、二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-2-3)のメタノール分散ゾルを得た。得られたゾルは、pH5.1(メタノールと同質量の水で希釈)、全金属酸化物(SnO2、及びSiO2)濃度30.5質量%、動的光散乱法(DLS)による平均粒子径(動的光散乱法粒子径)19nm、ゾルの安定性試験結果は「〇」、粒子(iii-2-3)のメタノール分散ゾルに残存するトリ-n-ペンチルアミンは3,900ppm、ジイソプロピルアミンは180ppm、イソプロピルアミンは41ppm、核粒子(i)の結晶化度は85%、粒子(iii-2-3)の屈折率は1.85、粒子(iii-2-3)配合塗膜の比抵抗値は4.3×1011Ω/□であった。アミン(b)/アミン(a)の質量比が17.6であった。
【0205】
(実施例5)
製造例5で得られた二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-2-4)の水分散ゾル100gを、ロータリーエバポレーターを用いてメタノールに置換して、二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-2-4)のメタノール分散ゾルを得た。得られたゾルは、pH5.2(メタノールと同質量の水で希釈)、全金属酸化物(SnO2、及びSiO2)濃度30.5質量%、動的光散乱法(DLS)による平均粒子径(動的光散乱法粒子径)19nm、ゾルの安定性試験結果は「〇」、粒子(iii-2-4)のメタノール分散ゾルに残存するトリ-n-ペンチルアミンは4,000ppm、ジイソプロピルアミンは160ppm、イソプロピルアミンは93ppm、核粒子(i)の結晶化度は77%、粒子(iii-2-4)の屈折率は1.83、粒子(iii-2-4)配合塗膜の比抵抗値は8.3×1011Ω/□であった。アミン(b)/アミン(a)の質量比が15.8であった。
【0206】
(実施例6)
製造例6で得られた二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-2-5)の水分散ゾル100gを、ロータリーエバポレーターを用いてメタノールに置換して、二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-2-5)のメタノール分散ゾルを得た。得られたゾルは、pH4.7(メタノールと同質量の水で希釈)、全金属酸化物(SnO2、及びSiO2)濃度30.5質量%、動的光散乱法(DLS)による平均粒子径(動的光散乱法粒子径)21nm、ゾルの安定性試験結果は「〇」、粒子(iii-2-5)のメタノール分散ゾルに残存するトリ-n-ペンチルアミンは3,500ppm、ジイソプロピルアミンは140ppm、イソプロピルアミンは160ppm、核粒子(i)の結晶化度は68%、粒子(iii-2-5)の屈折率は1.81、粒子(iii-2-5)配合塗膜の比抵抗値は1.2×1012Ω/□であった。アミン(b)/アミン(a)の質量比が11.7であった。
【0207】
(実施例7)
製造例2で得られた二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-2-2)の水分散ゾル100gを、ロータリーエバポレーターを用いてエタノールに置換して、二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-2-2)のエタノール分散ゾルを得た。得られたゾルは、pH5.0(エタノールと同質量の水で希釈)、全金属酸化物(SnO2、及びSiO2)濃度20.5質量%、動的光散乱法(DLS)による平均粒子径(動的光散乱法粒子径)22nm、ゾルの安定性試験結果は「〇」、粒子(iii-2-2)のエタノール分散ゾルに残存するトリ-n-ペンチルアミンは4,400ppm、ジイソプロピルアミンは180ppm、イソプロピルアミンは19ppm、核粒子(i)の結晶化度は91%、粒子(iii-2-2)の屈折率は1.87、粒子(iii-2-2)配合塗膜の比抵抗値は2.6×1011Ω/□であった。アミン(b)/アミン(a)の質量比が22.1であった。
【0208】
(実施例8)
製造例2で得られた二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-2-2)の水分散ゾル100gを、ロータリーエバポレーターを用いて2-プロパノールに置換して、二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-2-2)の2-プロパノール分散ゾルを得た。得られたゾルは、pH5.2(2-プロパノールと同質量の水で希釈)、全金属酸化物(SnO2、及びSiO2)濃度15.0質量%、動的光散乱法(DLS)による平均粒子径(動的光散乱法粒子径)22nm、ゾルの安定性試験結果は「〇」、粒子(iii-2-2)の2-プロパノール分散ゾルに残存するトリ-n-ペンチルアミンは4,800ppm、ジイソプロピルアミンは170ppm、イソプロピルアミンは19ppm、核粒子(i)の結晶化度は92%、粒子(iii-2-2)の屈折率は1.87、粒子(iii-2-2)配合塗膜の比抵抗値は2.3×1011Ω/□であった。アミン(b)/アミン(a)の質量比が25.4であった。
【0209】
(実施例9)
製造例3で得られた五酸化アンチモンコロイド粒子で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-1-1)の水分散ゾル14.6gを、ロータリーエバポレーターを用いてエタノールに置換して、全金属酸化物(SnO2、及びSiO2)濃度15.0質量%の五酸化アンチモンコロイド粒子で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-1-1)のエタノール分散ゾル20.0gを得た。得られたゾルに表面修飾剤としてエタノールで質量比が30%になるよう希釈したポリオキシエチレンアルキルエーテルフォスフェート(東邦化学工業(株)製:RS-710)1.00gを撹拌下で添加し、90℃で5時間還流加熱を行うことで粒子を表面修飾した。得られた表面修飾エタノール分散ゾルにプロピレングリコールモノメチルエーテルを12.0g添加し、ロータリーエバポレーターを用いてエタノールを蒸発させ、五酸化アンチモンコロイド粒子で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-1-1)のプロピレングリコールモノメチルエーテル分散ゾル15.0gを得た。得られたゾルは、pH4.7(メタノールと同質量の水で希釈)、全金属酸化物(SnO2、及びSiO2)濃度20.0質量%、動的光散乱法(DLS)による平均粒子径(動的光散乱法粒子径)25nm、ゾルの安定性試験結果は「〇」、粒子(iii-1-1)のプロピレングリコールモノメチルエーテル分散ゾルに残存するトリ-n-ペンチルアミンは4,900ppm、ジイソプロピルアミンは240ppm、イソプロピルアミンは25ppm、核粒子(i)の結晶化度は92%、粒子(iii-1-1)の屈折率は1.91、粒子(iii-1-1)配合塗膜の比抵抗値は8.0×1011Ω/□であった。アミン(b)/アミン(a)の質量比が18.5であった。
【0210】
(比較例1)
比較製造例1で得られた二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物で被覆された酸化第二スズコロイド粒子(iii-3)の水分散ゾル100gを、ロータリーエバポレーターを用いてメタノールに置換したところ、置換の途中でゾルが増粘・ゲル化した。
【0211】
(比較例2)
参考例1において核となる酸化第二スズ複合酸化物コロイド粒子(i)の調製時に、イロプロピルアミンを添加しない以外は、参考例1と同様にゾルを作製した。酸化第二スズスラリーは解膠せず、水分散ゾルを得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0212】
本発明の変性金属酸化物粒子は高い導電性と高い屈折率を有しているものであって、それらが有機溶媒中に安定に分散していることによってコート剤として基材に塗布した時に透明性、高い粒子屈折率、及び良好な塗膜比抵抗値を有することが可能な上記ゾルを提供することができる。
【要約】
変性金属酸化物粒子を用いたコート剤を基材に塗布した時に透明性、高い粒子屈折率、及び良好な塗膜比抵抗値を有することが可能な変性金属酸化物粒子ゾルとして、4~50nmの平均一次粒子径を有する酸化第二スズ粒子(i)を核として、1~10nmの平均一次粒子径を有し且つ酸化アンチモン、酸化第二スズ、及び酸化ケイ素からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属酸化物粒子(ii)で被覆された変性金属酸化物粒子(iii)を含み、該変性金属酸化物粒子が有機溶媒に分散したゾルであって、平均一次粒子径は核粒子(i)≧被覆粒子(ii)の関係を有し、(酸化第二スズ以外の金属酸化物の合計質量)/(酸化第二スズの質量)が0.005~1.0であり、そして該ゾルは水溶解度0.1g/リットル以上のアミン(a)と、水溶解度0.1g/リットル未満のアミン(b)とを含む変性金属酸化物ゾルを提供する。